とある後日の幻想創話(イマジンストーリー)4

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192 : ◆A0cfz0tVgA [saga]:2015/07/27(月) 01:19:53.09 ID:rwjASv/Y0
>>190
薄い本が厚くなるな……これ以上は厚くならないか

>>191
虹彩が赤い人の数は人類の人口の0.001%程度。アルビノの人間がそれ該当するそうです
スカーレット姉妹はアルビノではないので、それにも拘わらず虹彩が赤いのは非常に珍しいということですね
193 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/07/27(月) 01:20:58.71 ID:rwjASv/Y0
これから投下を開始します
194 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/07/27(月) 01:22:39.29 ID:rwjASv/Y0





――――PM2:13





195 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/07/27(月) 01:25:49.86 ID:rwjASv/Y0

『授業中、申し訳ありません。 至急お伝えしたいことがあり、ご連絡させていただきました』

レミリア(……いきなり何かしら)


レミリアが通う学校の職員室。
教師から受け取った受話器を耳に押し当てたその時、フランドールが通う学校の人間は不意にそう口にした。


何が起こっているのか上手く飲み込めないこの状況。
此方の質問を待たずに話を進めようとする相手に文句をぶつけたくなるが、レミリアは済んでの所で留まる。
周りに教師達がいるのだ。変に騒ぎ立てれば碌でもないことになるのは目に見えている。
彼女はふつふつと湧き上がる怒りを収めつつ、相手の言葉を待つ。



学校側『本日行われた『身体検査』の結果、フランドールさんが超能力を修得していると判明しました』

学校側『能力名は『物質崩壊』。 念動力系の能力に分類され、『強度』は『4』です』

レミリア「……そうですか。 ご連絡ありがとうございます」

196 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/07/27(月) 01:28:47.38 ID:rwjASv/Y0

矢継ぎ早に説明する相手に対し、レミリアは努めて冷静に返答する。
何故なのかはわからないが、察するにどうやら学校側は相当焦っているようだ。
社会人としては考えられない礼を失する態度から、そのことを読み取ることができる。
いや、直接レミリアの学校へ連絡してくること自体が既に異常と言えるだろう。


だが、そのことを指摘するのは尚早だ。
相手の不可解な反応に違和感を覚えながらも、レミリアは静かに話を聞き続けた。



学校側『はい。 ですが、本日貴方にご連絡させていただいた理由はそれだけではございません』

学校側『フランドールさんの今後について、保護者でいらっしゃる貴方にご協力をお願いしたいのです』

レミリア「協力……?」

学校側『フランドールさんの能力ですが、少し危険なものであることがわかっていまして……』

学校側『使い方を間違えると、大事故に繋がる可能性が示唆されています』

学校側『フランドールさんは能力に目覚めたばかり……能力を使う上で注意すべきことをしっかり理解しているとは言い難い』

学校側『そしてもう一つ、彼女の能力は今後も伸び代があると判断されております』

学校側『以上のことから、私達の方でフランドールさんに超能力を扱う上での必要な教育を施すこと、
そして超能力の向上を図るために個別のカリキュラム考案したのですが……問題が生じまして』

197 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/07/27(月) 01:31:42.10 ID:rwjASv/Y0

そこで電話口の人間は声のトーンを低くして言い淀む。


何故、学校側がなりふり構わず自分に連絡をしてきたのか。
その理由を、レミリアは今までの話の流れからある程度察することができた。
学校側の行動とフランドールの性格。それから導き出される答えは一つ。



レミリア「……妹がその案を拒絶した。 そういうことですか?」

学校側『! ……お察しの通りです』

レミリア「まったく、あの子ときたら……要件というのはあの子にその案を飲むよう、
     私に説得して欲しいということですか」

学校側『そうです。 ある程度の猶予を与えるので、もう一度よく考えるようには言い渡したのですが、
    このままだと返答の内容が変わるとは思えませんので』

学校側『フランドールさんのためでもありますから、おいそれと引き下がるわけにも参りませんし……』

学校側『出来るだけ早めに、良いお返事を頂きたいのです』

レミリア(なるほど……)

198 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/07/27(月) 01:33:14.80 ID:rwjASv/Y0

レミリアはここで学校側が言いたいことを完全に理解する。


要は、学校側は自分達の口では説得できなかったから、その役目を自分に任せようというのだ。
確かに自分はフランドールの保護者である。保護者の立場を使って、フランドールを説得することは可能だろう。
都合良く利用されているようで少し気にいらないが、だからと言って断ってしまうのも考え物だ。


レミリアはフランドールの姉であると同時に、保護者としての立場も有している。
ここで学校側の提案を拒絶するということは、その立場を放棄することと同じ。
そして、レミリアとフランドールが同じ屋根の下で共に暮らしていられるのはその立場があってこそ。
本当であればフランドールは、学校付属の寮に暮さねばならないのだから。



レミリア(向こうの提案を断るのは無理ね。 あの子が私の眼の届かない所に行ってしまうのは危険だわ)

レミリア(ここは科学の街。 私たち魔術側の人間にとっては、敵地の真っただ中にいるようなもの)

レミリア(わざわざ孤立するような状況を造るのは愚策もいいところね……)

199 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/07/27(月) 01:34:22.96 ID:rwjASv/Y0

レミリアは静かに、そして素早く考えを巡らせる。


レミリアとフランドールは、元を正せば魔術の領域に属する人間だ。
超能力開発を受けた時点で魔術を捨てたも同然なのだが、それでも立つ位置が変わったというわけではない。
例え魔術を使えなくなったとしても、『魔術を知っている』という点は変わらないのだ。
彼女達はどう頑張っても、『魔術を知らない真っ当な科学側の人間』になることはできない。


それを考えると、『科学』と『魔術』の間にある確執は避けられない問題だ。
この二つの陣営が長年にわたって戦争状態にあるということは、レミリアも父親からよく聞かされていた。
今でこそ互いに不干渉を貫いているが、過去に於いては血生臭い争いを何度も繰り返していたと聞く。
レミリアにとっては心底どうでもいいことなのだが、だからと言って無関係を貫くことなどできはしない。


『科学』と『魔術』が敵対している以上、本人に意思とは無関係に彼女達は『学園都市の敵』である。
今は平穏を享受しているが、実際はいつ学園都市の尖兵に攻撃を仕掛けられるかわからないのだ。
レミリアは自傷覚悟であればある程度身を守ることができるが、フランドールは何の力を持たない一般人に等しい存在。
互いに離ればなれになるのは、二人にとって何の良い結果も齎さない。


故に、レミリアに学校側の要求を断るという選択肢は存在しなかった。

200 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/07/27(月) 01:34:55.78 ID:rwjASv/Y0

レミリア「わかりました。 その依頼、お受けします」

学校側『おぉ、ありがとうございます!』

レミリア「いえ、妹のためでもありますし、私は無能力者ですから……能力関係についてはお任せします」

レミリア「あの子が私の言うことを素直に聞いてくれるかはわかりませんが」

学校側『説得できなかった場合についての対処は考えておりますので、例えそうなっても気に病む必要はございません』

レミリア「えぇ」



電話越しでも伝わるほどの大袈裟な感謝の言葉を聞きながらも、レミリアの心中は冷静そのものであった。


他者に感謝されることが嫌いというわけではない。
寧ろ他者からの好意は自身のパラメータとなる重要なものであり、
一族の名を背負っている彼女にとっては『名声』の面で好ましいことである。


それにも拘らず愉悦を得ることができなかったのは、心にしこりの様なものが残っていたからだ。
話の始まりから抱いていた『あの疑問』。それを解消するべく、レミリアは電話越しの相手に質問をぶつける。

201 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/07/27(月) 01:36:45.18 ID:rwjASv/Y0

レミリア「……一つだけ、尋ねてもよろしいでしょうか?」

学校側『何でしょう?』

レミリア「貴方の言動から、何やら随分と急いでいる印象を受けたのですが……それは何故?」

学校側『いえ、それはですね……』

レミリア「私としては、本来なら個別授業を受けるかどうかはフラン本人が判断すべきことだと思います」

レミリア「あの子も馬鹿ではありませんから、そちらの厚意には気付いているはず……」

レミリア「じっくり話し合いさえすれば、自分から納得して個人授業を受けるでしょう」

レミリア「それなのに貴方達はあの子との対話を早々に諦め、私という身内に縋りついた」

レミリア「傍から見れば、教師としての義務を放棄したようにも捉えられますが……?」



相手の言い訳を許さないかのように、レミリアは言葉を覆い被せていく。
こうして自身の考えを口にしていくにつれて、学校側の行動の中にある不可解な点が徐々に明白になってきた。


そもそも、話の展開が急過ぎるのだ。
フランドールが超能力を会得していることが発覚したのは、恐らく昼頃のこと。
それから数時間の内にフランドールへの個別授業の案が学校の中から出て、
それを本人に提案した所拒絶され、さらにその説得の御鉢がレミリアに回ってきたのである。


普通であれば、数日かかって展開される話であるはず。
それを考えると、学校側がどれほど焦っているのかが改めて理解できるだろう。

202 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/07/27(月) 01:37:30.04 ID:rwjASv/Y0


学校側『えー、それは……』

レミリア「……」



言葉が詰まり、中々二の句が継げない学校側。
その様子に対し、レミリアの心の中にある猜疑心が急速に膨れ上がっていく。


質問に答えられない時というのは、『答えると自身の都合が悪くなる』、
そして『その場凌ぎの言い訳を考えている』時と相場は決まっている。


つまり、学校側はレミリアに対し何らかの後ろ暗いものがあるということだ。
無論、それなりに歳を食った大人であれば息を吐くように嘘八百を並べることができるのだろうが、
レミリアと相対している大人はそれだけの機転は持ち合わせていなかったらしい。
ただ単純に、子供であるレミリアに急所を突かれるとは予想していなかっただけかもしれないが。

203 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/07/27(月) 01:38:19.72 ID:rwjASv/Y0

レミリア「……結構です」

学校側『はい?』

レミリア「先ほどの質問については、お答えしなくて結構です」

学校側『し、しかし……』

レミリア「答えられないというのであれば、これ以上詮索はしません」

レミリア「貴方も組織に属する人間です。 しがらみで思うように動けないこともあるでしょうから」

学校側『……』



レミリアは電話越しの相手に労わり言葉を投げかける。
しかし実際の所、その言葉に相手を思いやるような感情は乗せられていなかった。


今の彼女の内にあるのは、学校に対する『不信』のみ。
『相手は自分達に何かを隠している』という、断定こそはできないが半ば確信めいた考えがあり、
そして彼らが隠しているであろう『何か』についても、彼女はある程度察知していた。

204 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/07/27(月) 01:39:05.97 ID:rwjASv/Y0

レミリア(大方、フランの能力を狙っているんでしょうね)



学校側が今、何を考えて行動しているのか。どうしてこれほどにまで焦っているのか。
学園都市に蔓延する『超能力至上主義』。全てにおいて超能力を優先するその価値観を鑑みれば、理由など容易に推し測れるだろう。


『一人の超能力者の価値』は『幾千の無能力者の価値』よりも遥かに勝る。
学校側にとって能力者の生徒が居るのと居ないのとでは、得られる恩恵は雲泥の差があるのだ。
つまり彼らとしては、能力者であるフランドールは垂涎ものの存在なのである。


故に彼らはどんな手を使ってでも、彼女を手に入れたいと考える。
――――例えば、『身内を利用して彼女を説得する』等の方法を使ってだ。

205 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/07/27(月) 01:39:55.86 ID:rwjASv/Y0

レミリア(何ともまぁ、随分と姑息な手を使うものね。 倫理に欠けた狂人には相応しいのかもしれないけど)



レミリアは相手の愚劣な考えを、心の中で侮蔑した。
妹を、フランドールをただの『超能力を持った人間』として扱うとは。


本当であれば自身の手で八つ裂きにしてやりたいところだが、無能力者である彼女にそんな力があるはずもない。
正確には手段はあるのだが、諸刃の刃であるそれを使ってまで奴等を粛清するのは余りにも危険過ぎる。


直接指摘して釘を刺すことも考えたが、狂科学者たちがこちらの発言を意に介すとも思えない。
加えて、此方の不信は明確な根拠が無い直感的なものであるため、指摘してもはぐらかされるだけだろう。
故に、彼女はその意思を声色に乗せることだけでしか表示することができないのだ。

206 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/07/27(月) 01:40:37.58 ID:rwjASv/Y0

レミリア「フランの説得は、先ほど申し上げたようにきちんと行います。 断るつもりはありませんのでご安心を」

レミリア「能力を手に入れた人が道を踏み外すのを、私も何度か見てきていますので……」

レミリア「それと、あの子のことをいち早く教えてくれたことには心から感謝しています」

レミリア「今後も、『あの子のことを大切にしてくださいね?』」

学校側『……了解しました。 それでは吉報をお待ちしております』

レミリア「えぇ。 それでは」ガチャン!



レミリアは相手が通話を切るのを待たずに、少々乱暴に受話器を置く。
プラスチック同士がぶつかる軽い音が職員室に響き渡った。

207 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/07/27(月) 01:41:38.09 ID:rwjASv/Y0
今日はここまで
質問・感想があればどうぞ
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/27(月) 11:56:38.24 ID:OYltEQ6yo
乙です
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/27(月) 13:55:07.67 ID:kP7yTTno0
ギスゥ
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/27(月) 19:46:34.81 ID:UICO+1DR0


16歳フランが能力を使えていた以上何らかの訓練はやったものと推測できるが‥無能教員が説得したとはちょっと考えにくいな
211 : ◆A0cfz0tVgA [saga]:2015/08/09(日) 23:54:57.82 ID:3HuzRGYm0
これから投下を開始します
212 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/09(日) 23:57:27.58 ID:3HuzRGYm0





――――PM 7:23





213 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/09(日) 23:59:24.28 ID:3HuzRGYm0

レミリア(……帰ってこないわね)ジュー



レミリアはフライパンを揺すりながら、未だに帰ってこないフランドールを考える。


彼女は今、料理の真っ最中。
部屋の中には香ばしい肉が焼ける匂いが漂い、そこにいる者の胃袋を刺激する。
彼女がフライパンを勢い良く振り上げると、中から挽肉の大きな団子が宙へと舞い上がった。


今日の料理はハンバーグ。フランドールの好物の一つである。


本当であれば、今日造る料理をハンバーグにするつもりは全く無かった。
そもそも無能力者(フランドールは本日晴れて能力者になったが)であり、
奨学金をあまり多くもらえない彼女達にとって、肉料理などそう頻繁に食べられるものではない。
貧乏学生の例に漏れず、もやしやキャベツ、そして特売の卵を用いた健康的とは言い難い格安料理を作る予定だった。
勿論亡くなった両親の遺産はあるにはあるが、それについては成人するまでなるべく手を付けないようにしていた。

214 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/10(月) 00:00:43.56 ID:Ns/1g1At0

では何故路線変更をしたのかというと、言ってしまえばフランドールのご機嫌取りのためである。
反抗期なのかは定かではないが、フランドールは最近目立って姉に不平不満を漏らすことが多くなった。
言葉上は普通であるが、声の端々に棘が混ざり始めている。


一応保護者の立場であり、彼女の親代わりを務めている以上、
フランドールとの仲が悪くなるのは絶対に避けたいことであり、何とか仲を取り持ちたい。
しかし反抗期の子供の対処法を、同じ子供であるレミリアが知るはずもなく、
精々できることと言えば物を使って釣り上げることぐらいであった。



レミリア(変な意固地を出して門限までに帰ってこない、なんてことにならなければいいけど)

レミリア(あの子ったら、ケータイも持たずに出て行ってしまったし……)



フランドールが部屋に携帯電話を置いていってしまったことから、今彼女と連絡を取る術は皆無である。
不機嫌な状態のまま家を飛び出してしまったことを考えると、連絡が取れないというのは不安要素でしかない。
変な気を起こして危険地帯に入り込み、事件に巻き込まれてしまったとしても、彼女は姉に助けを求めることができないのだから。

215 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/10(月) 00:02:35.46 ID:Ns/1g1At0

こちらからフランドールを探しに行くことはできる。
しかし彼女がどこにいるのかわからない以上、門限まで見つけることができないか、入れ違いになる可能性の方が高い。
それよりであれば、こちらは動かずに待っている方が賢い選択だろう。
無論、これはフランドールに今日中に家に帰ってくる意思があればの話になるが。



レミリア「結局、無事に帰ってくるのを待つしかないか……っと」



程良い焦げ目が付いたハンバーグを再びひっくり返しながら、レミリアはそう結論付けた。



レミリア(そろそろかしら……)



火の通り具合を見るべく、レミリアはハンバーグを爪楊枝で少し突く。
すると穴が空いた場所から、透明な肉汁が弾けながら飛び出してきた。
どうやら良く火が通っているようだ。これ以上焼くと表面が焦げてしまいそうなので、そろそろ頃合いだろう。


少し大き目の皿を棚から取り出すと、予め刻んでおいたキャベツを手早く敷き、
さらに惣菜のマッシュポテトとミニトマトを数個添える。
そしてフライパンをコンロから引き上げると、中に入っている大きなハンバーグを静かに皿に移した。
仕上げに残った肉汁をその上に少しかけて完成。パチパチという軽い音と共に、微かな白い蒸気が立ちあがる。

216 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/10(月) 00:04:05.47 ID:Ns/1g1At0

レミリア「ん〜〜〜……我ながらカンペキね」



料理の出来栄えを見て、レミリアはそう自賛する。思わず写真に撮ってしまいたい衝動に駆られた。


今でこそ彼女は人並みに料理を作ることができるが、学園都市に来た当初といえば、それはもう散々であった。
何故かと言えば、イギリスに居た頃は館のメイドが作ってくれていたこともあり、
彼女自ら料理をしたことなど一度も無かったからである。
そして学園都市に来て間もなく、『ここで暮らすためには自炊することも必要だろう』と考えて行動を起こした結果、物の見事に失敗。
施行錯誤の末できたヨクワカラナイモノを、冷たい目線を向ける妹の前で泣く泣く食したのは今でも鮮明に覚えている。


そんな時代と比べれば、今のレミリアの料理の腕は格段に向上している。
少なくとも、友人を呼んで料理を振る舞う位は出来るだろう。



レミリア(今度、誰かを呼んで料理を御馳走するのもいいかもしれないわね)



そんなことを考えつつ、彼女は料理が入った皿を運んで行った。

217 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/10(月) 00:06:22.90 ID:Ns/1g1At0





――――PM 8:35





218 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/10(月) 00:07:57.40 ID:Ns/1g1At0

レミリア「……遅い」



8時半頃を指し示している時計を見やり、レミリアは少し苛立ちながら呟く。
眼前に据えられたテレビには、中年の男性が黒板に向かって文字を書き連ねる様子が映し出されている。
内容は高校数学。レミリアはその番組を見つつ、今日自身に課せられた宿題を片付けていた。


学園都市のテレビ番組は、外部のそれと比較して教育系のものに偏っており、
その反面娯楽番組は非常に少なく、放送時間も限られている。
特に小中高それぞれの学校で学ぶ授業を解説する『教育番組』が一際多く存在し、
ゴールデンタイムと呼ばれる時間帯でも平然と高校の数学解説をやっていたりする。


教育番組がテレビを席巻してしまっているのは、学園都市の方針によるところが大きい。
この街では教育には関係の無い、娯楽に関わる商品には法外な税金がかかる。
しかしその代わり、勉学に関わる商品についてはほぼ無税と言っても差し支えないほど税金が低い。
詰まる所、教育番組は無料で視聴できるが、本格的な娯楽番組を見たい場合は別途で受信料が必要となるのである。


『学生の本分は勉強である』という、大人にとって至極真っ当な正論を反映した結果であった。

219 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/10(月) 00:09:38.69 ID:Ns/1g1At0

レミリア(宿題が終わっちゃったから、やることが無くなってしまったわ)ピッ

レミリア(それに、料理もすっかり冷めてしまったし……)



レミリアは味気のない番組を流し続けるテレビを消すと、テーブルの上に広がる料理を見て眼を細める。


料理をテーブルに運び、フランドールの帰宅を待つこと1時間。
折角作った妹用のハンバーグはすっかり冷めてしまい、油が固形化して白くなっているという有様だ。
電子レンジを使って温めればそれでいいのだが、彼女としては出来たてを食べさせたかったこともあり、
何とも言い難い無念を心の中でひしひしと感じていた。



レミリア(門限まで後少し……まだ余裕はあるけど、どうしたものかしら)



マンションの中央エレベーターが休止するまで残り30分。妹が帰ってくる気配は未だに無い。
少し待てば頭を冷やして戻ってくるだろうと考えたのだが、どうやら見通しが甘かったらしい。
フランドールの心中は、レミリアが思ったよりも荒れていたようだ。

220 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/10(月) 00:10:30.85 ID:Ns/1g1At0

これは非常に不味い。
門限を過ぎたら最後、フランドールは明日までこの建物から閉め出されることになり、
逆にレミリアはこの建物から一歩も外に出ることができなくなるのだ。
果たして、家に帰ることができなくなった妹は一体どのような行動を取るのだろうか。



レミリア(最悪、『警備員』に連絡した方が良いかしら……?)



レミリアは最終手段として、『警備員』を利用する案を思いつく。
もしもフランドールが帰ってこなかった時は、『警備員』に保護してもらおうという考えだ。
最も安全で確実な方法である。しかし、その案を考えた当人の表情は優れなかった。


彼女としては、出来るだけ『警備員』や『風紀委員』といった公安機関のお世話にはなりたくない。
理由は様々ではあるが、敢えて挙げるとするならば『自身が魔術師の端くれだから』である。
科学と魔術は互いに相反するもの。彼女の立場で考えると、敵陣のど真ん中に入り込んでいるようなものだ。
そんな場所で目立つ行動を取るのは、どう考えても賢いとは言えない。

221 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/10(月) 00:12:15.12 ID:Ns/1g1At0

彼女の用心深さをただの杞憂だとする人がいるかもしれない。それは一理ある。
科学が全てを占めるこの街に於いて、『魔術』などただの空想上の産物に過ぎない。
現に、レミリア達が街に住み始めてから一度も『魔術』という言葉を耳にしたことは無かった。


おそらく、この街に『レミリアが魔術師であること』を見抜ける人間はいない。
彼らにとって、魔術は『存在しないもの』なのだ。魔術が存在しないのならば、当然魔術師も存在しない。
『存在しない存在』を見抜くことなどできはしないのだから。


だがそれは所詮『おそらく』であり、絶対確実とは言えないものだ。
もしかしたらこの街の何処かに、自分達と同じように潜入している魔術師が居るかもしれない。
そして、その人物とばったり出くわしてしまったら。そうでなくとも、自分達のことを知られてしまったら。
その時点で今までの平穏は脆く崩れ去り、最悪破滅を迎える可能性すらある。


故に、例えそれがほんの僅かな可能性であったとしても、ゼロでは無い以上用心するに越したことは無い。



レミリア(でも、万が一の時に何も出来なかったら本末転倒だし、今回ばかりはしょうがないかしらね)



しかし『警備員』の手を借りなかったがために、フランドールの身に何かがあってしまっては意味が無い。
本当に必要な時に限っては、多少のリスクには眼を瞑る必要があるだろう。


そう判断したレミリアは、『警備員』に連絡を取るべく受話器を手に取ろうとした。ところが――――

222 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/10(月) 00:13:53.53 ID:Ns/1g1At0

ガチャッ!



その行動を遮るようにして、玄関先から扉が開く音が聞こえてきた。



レミリア(……帰って来たみたいね)



音を出した人物に当たりを付けた彼女は、受話器にのばした手を引く。


おそらく、フランドールが戻ってきたのだろう。
彼女が家を飛び出してから3時間余り。その間何をしていたのかは知る由もないが、
おそらくこの周辺をただ歩き回っていたのだろうとレミリアは想像した。


フランドールは財布も持たずに飛び出していっていたので、何処かの店で暇つぶしをすることは出来ない。
ホテルに泊まって一夜を過ごすなど、尚更あり得ないことである。
また特別に親密な友人を持たない彼女が、その友人の家に転がり込むとは思えない。
何よりも、彼女の友人が居るであろう学校の寮と自宅は、歩いて向かうには距離が離れ過ぎている。


故に家を飛び出したフランドールが最終的に取る行動は、次の日の朝になるまでこの街の何処かで野宿をするか、
もしくは大人しく自宅に戻るかのどちらかに帰結するのは必然であった。
もっとも、野宿をした場合はレミリアから依頼を受けた『警備員』が彼女を補導し、
自宅に連れてくることになっていたはずなので、どちらにしても結果は変わらなかったのだが。

223 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/10(月) 00:14:49.00 ID:Ns/1g1At0

レミリア「フラン、今までどこに――――」



レミリアは玄関に赴き、帰宅したフランドールを迎え入れる。
感情のままに行動した不出来な妹を刺激しないように、穏やかな口調を装いつつ。
しかしその言葉は、最後まで紡がれることはなかった。



フラン「……」

レミリア「フラン、貴方……」



レミリアはフランドールを見て、その場に棒立ちになる。
目の前に立つ妹の姿は、自身が想像していたものとはかけ離れたものだったからだ。


顔、腕、足……全身に見られる擦り傷と打撲。
血こそは流れていなかったが、赤く腫れ上がったそれは元から色白の彼女の肌にはあまりにも目立ち、
特に顔の傷は実際の怪我の度合い以上に、見た目の痛々しさを強調している。
彼女が着ている服は何故か灰色に染まっており、何処かに引っかけたかのように破れている箇所もあった。
これではもはや、その服を着ることは二度と出来ないだろう。


しかしそれ以上に、レミリアの視線を引いたのが『眼』だ。
普段の快活な彼女の様子からは考えられない『座った眼』。家を飛び出す前とは違った、覇気のない眼だ
それが生み出す周りの全てを拒絶するかのような眼光は、レミリアの体に深く突き刺さり、その場に縫い付けた。

224 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/10(月) 00:18:27.90 ID:Ns/1g1At0

レミリア「何が――――」

フラン「――――」ダッ!



数瞬の後、金縛りから解かれたレミリアは重苦しくその口を開く。
しかし事情を聞くより先に、フランドールはその追求から逃れるようにして足早に姉の脇を通り過ぎた。


そして彼女は自身の部屋に飛び込み、そのまま部屋の鍵をかけてしまう。



レミリア「フラン! 何があったの、フラン!」



レミリアは慌ててそれを追いかけ、フランドールに対し扉越しに声をかけるが時既に遅く。
部屋に閉じこもった妹は、沈黙を保ったまま取り合おうともしない。
姉の侵入を拒む木製の扉は、その時に限っては重く頑丈な石扉のように思えた。

225 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/10(月) 00:19:04.08 ID:Ns/1g1At0

一体、妹の身に何があったのか――――
扉の前に立ち尽くすレミリアの頭の中に、様々な仮定が思い起こされる。
しかし仮定が確証に至ることはなく、その思考は濃霧の中を歩くかのように定まらず、彷徨っていた。


妹の口から語られない限り、真実を知ることは出来ない。だが、少なくともこれだけは言えることがある。
それは彼女の身に起こったことは、『決して良いものではない』ということ。
どの程度『良くない』のかはわからない。ただ、それが軽いものであることを願うしかない。



レミリア「……」



どうすることも出来なくなったレミリアは、妹をそのままにして居間に戻る。


戻って眼に付いたのは、テーブルの上に並べられた2皿の料理。
一つは自分の、もう一つは妹の分。すっかり冷め切ってしまった料理の姿は彼女の心に寂寥をもたらした。
無言のまま椅子に座ってナイフとフォークを手に取り、ナイフでハンバーグを丁寧に切り分け、その一切れを口に含む。

226 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/10(月) 00:19:38.32 ID:Ns/1g1At0

レミリア「……冷たくて、美味しくないわね」



口の中に入れた肉塊を噛みしめながら、ぽつりと言葉を漏らす。


不味い。とてもではないが、『美味しい』と言える代物ではない。
口の中に広がる塩の味と、凝固した油のぬるぬるとした舌触り。
もそもそした食感のそれを、しっかり味わって食べようとは到底思えなかった。


ただ、この料理を『不味い』と思える理由には、味や食感以外にも何かある気がする。
レミリアはその理由をぼんやりと考えつつ、冷めた料理を最後まで食し続けた。

227 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/10(月) 00:20:16.21 ID:Ns/1g1At0
今日はここまで
質問・感想があればどうぞ
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/10(月) 00:25:21.81 ID:pIzWBcAOo
乙です
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/10(月) 01:50:28.49 ID:a8CJG0uw0

マジで何してきたんやらな
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/10(月) 08:06:21.12 ID:7B7qUe+D0

一人、冷や飯を食う破目になるとは哀しいもんだ
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/11(火) 07:59:31.10 ID:a9/8UjU60
破壊系の能力ってのは狂わせるねぇ
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/11(火) 19:15:00.42 ID:Ia3pGGtM0
フラン「正当なる防衛だよ」(某金髪ロールピザ(当時)男風)
233 : ◆A0cfz0tVgA [saga]:2015/08/24(月) 00:10:54.91 ID:KRW/N0gR0
これから投下を開始します
234 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/24(月) 00:11:48.78 ID:KRW/N0gR0

フラン「……」



レミリアが冷めたハンバーグを一人で食べている頃。
フランドールは自室のベッドに上に蹲り、身じろぎ一つせずにいた。


部屋に明かりは付いておらず、カーテンまでも閉めきっており、一寸先も見えない暗闇である。
更には、今夜は新月のために月明かりが入り込むこともない。
闇に眼を慣らしたとしても、辛うじて物の輪郭がわかる程度にしかならないだろう。
もっとも、顔を伏せてしまっている彼女にとってはあまり関係のないことなのかもしれない。


顔はほぼ全てが膝の下に隠れており、その全貌をうかがい知ることはできない。
また彼女は家に帰ってから着替えもせずにいるため、衣類はぼろぼろのままだ。
それを身に纏っている後ろ姿は、心なしか見た目以上に小さく見える。


どうして、彼女はこのような姿になってしまったのか。
その理由を知るには、彼女が家を飛び出したその後について詳しく読み解くしかないだろう。

235 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/24(月) 00:17:33.23 ID:KRW/N0gR0





――――PM 6:22





236 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/24(月) 00:18:42.26 ID:KRW/N0gR0

フラン(あ〜……どうしよ)



街の中を一人で歩きながら、フランドールは一人頭の中で悶絶していた。


姉の追及を振り切るように家を飛び出してから数十分。
目的地も定めずに無我夢中で走り回った結果、彼女はいつの間にか街のど真ん中にいた。
周囲には授業や仕事帰りの人、そして夕飯の材料を買い求めている人でごった返している。
誰も彼もフランドールのことを眼に止めることはなく、追い立てられるように足早に歩いていた。


その光景を見て彼女は急激に孤独感じることになったが、この事態を引き起こしたのは彼女自身。
責めるべきは他者ではなく、姉から逃げ出した自分本人であることは疑いようもない。
しかし『自省』などという大人な判断が出来ない彼女には、レミリアに対してぶつくさと不平不満をぶつけることしか出来なかった。


そんな子供な行為暫くしていたフランドールではあるが、やがてその『不満』は次第に『焦り』へと変化してくる。
姉に対して粗暴な口利きをしてしまったという事実。それによる後悔が首を擡げてきたのである。

237 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/24(月) 00:19:53.59 ID:KRW/N0gR0

レミリアは彼女にとって、口うるさくはあるが頼りになる姉だ。
家の管理をしているのは彼女だし、フランドールが通う学校からの連絡を受け取っているのも彼女である。
言ってしまえば、レミリアはフランドールの親代わりであり、
フランドールがこの学園都市で暮らしていけるのは、全てレミリアのおかげなのだ。


何から何まで世話になっている姉に対し、何の感謝の念も抱かないなどという恩知らずな性格はしていない。
彼女自身は自覚していないが、心の何処かで姉に対し羨望のようなものをもっている。
その想いが、幼いながらも彼女に自責の念のようなものを抱かせたのだろう。



フラン「うぅ〜……」



顔を俯き、時々低い唸り声を上げながら街の中をフランドールは歩く。
端から見れば少々不審に見える姿であったが、そんな彼女の様子を気にかける者はいなかった。
しかしそのおかげで、彼女は『姉への釈明』についての思考に集中することが出来たのだが。

238 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/24(月) 00:20:58.72 ID:KRW/N0gR0

フラン(早くお姉さまに謝らないと何言われるか……でも、今戻るのは気が引けるし……)



今すぐ家に帰り、姉に対して謝罪するのか。
それとも、ほとぼりが冷めるまで待つのか。


彼女の思考はこの二つの選択肢の内、どちらを選ぶのかで判断をしかねていた。
普通に考えれば直ちに姉の元へ参じ、自身の非礼をわびるのが最良だろう。
己の失敗の後始末を先延ばしにすれば、手痛いしっぺ返しを食うのが当たり前である。


しかし再三言うように、幼子のフランドールにそのような大人びた判断が出来るはずもない。
仮に頭の中では理解していたとしても、『姉に対する恐怖』が行動を躊躇させてしまうだろう。
従って彼女に出来ることは、後ろめたさを感じながらも街中を徘徊することしかなかった。

239 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/24(月) 00:21:34.31 ID:KRW/N0gR0

フラン(もう少ししたら、戻ろうかな……でも……)



戻らなければならないと心の底で理解しつつも、覚悟ができずに踏みとどまる。
そんなことを繰り返して、どれだけの時間が経ったのだろうか。
時計も携帯電話も持たない今の彼女に、それを知る術はない。



フラン「……あ」



それからさらに、いくらかの時間が経った頃。
ふと無意識に顔を上げると、空が夕日に紅く染まっている光景が目の前に広がっていた。


見渡す限り立ち並ぶ高層ビル群の彼方に、輝きが鈍った太陽がぷかりと浮かんでいる。
ビルの隙間からこっそり街を覗き込んでいるように見え、
太陽がこの街から離れることを名残惜しんでいるように思えた。

240 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/24(月) 00:22:20.55 ID:KRW/N0gR0

フラン「きれい……」



ぽつりと、そんな言葉をフランドールは漏らす。
毎日見ているはずの夕暮れだというのに、今この瞬間においては、
心深く染み入る『何か』をそれから感じ取ることができた。


こんな風に茫然と空を見つめたのは、果たしていつ以来のことだろうか。
普段は全く気に留めなかったが、いざこうしてみると改めて空の大きさを身に沁みて感じ取ることが出来る。
それと同時に、自身が持っている悩みが見る見るうちに縮こまり、まるでくだらないもののように思えた。


『今は昔と比べて、空が狭くなった』と人は言う。
確かに、天高く聳え立つビルにより、目に見えるものは減ったかもしれない。
しかし、それでも空は、地上が如何に変わろうとも変わらずそこに在り続けているのだ。

241 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/24(月) 00:22:48.73 ID:KRW/N0gR0

フラン「……暗くなっちゃった」



結局フランドールは、太陽が完全に沈み行くまでそれを眺めていた。


足元を見ると、自身の影法師は既に無く、形のはっきりしない冥暗が映るのみ。
周囲では闇に沈む町を照らそうと、街灯の明かりがぽつぽつと付き始めている。


これより先は夜の時間。
昼間の活気に満ちたものとは違う、妖しい雰囲気が漂う『宵闇の街』が現出する。


そしてその世界において、フランドールの存在はあまりにも不釣り合いだ。
高校生や大学生といった、有る程度年を重ねた青年たちならまだしも、
年端もいかない小学生、しかも女の子が歩き回って良い場所ではない。
この街は、弱者に対してはそれほど優しくはないのだ。

242 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/24(月) 00:23:32.78 ID:KRW/N0gR0

そのことについては、フランドール自身も理解していた。
夜の街がどれほど危険なのかは、学校の先生から再三聞かされている。
そして犯罪に巻き込まれた生徒達が、一体どのような末路を迎えたのかについても。
子供達の事を考え、詳しく内容が語られることはなかったが、『それ』がどれほど恐ろしいことなのかは知っていた。


そして今、自分は犠牲になった生徒達と同じ『一人で夜の街にいる』という状況下にある。
自身を守る『盾(大人たち)』はこの場に無い。言うなれば、今の自分は暗い森に迷い込んだ脆弱な兎である。
『腹を空かせた狼(犯罪者)』に狙われたら最後、抵抗も出来ずに餌食となるしかないだろう。


その事実に気づいたフランドールは、急に強烈な不安に駆られた。
先ほどまでは全く気にしていなかったというのに、自覚した途端に恐怖が首を擡げてきたのだ。
まるで、不意に獰猛な肉食獣と相対した時のような。突然の出来事に一瞬呆けるが、
状況を理解した時に改めて襲い来る『あの恐怖』と似ていた。

243 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/24(月) 00:24:02.91 ID:KRW/N0gR0

フラン「早く、帰らないと――――」



誰かに聴かせると言うこともなく、ぽつりと言葉を漏らす。


その言葉が出た理由は、自身の中の不安を少しでも吐き出すため。
居るはずのない『誰か』と会話することで、平静を保とうとする無意識の行動である。
しかし、それは所詮付け焼き刃に過ぎない。心の中の不安は吐き出した以上に大きく膨れあがっていった。


やがてフランドールは、ゆっくりと自宅へ足を向け始める。
最早彼女の中には、姉に対する後ろめたさは微塵も残っていない。
『その程度のこと』など、自身に迫る危険に比べれば実に些細な問題である。
その代わりとにかくここから離れ、安全な場所へ行きたいという思いが強く支配していた。


彼女の足は迷いを見せることなく、帰路の道を進んでいく。だが――――

244 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/24(月) 00:25:21.71 ID:KRW/N0gR0










「よう、お嬢ちゃん。 俺達とイイことしない?」










少し、行動に移すのが遅かったようだ。


思わず足を止め、声をする方を見やるとそこには。
下卑た笑いを浮かべた男達がこちらを見ていた。

245 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/08/24(月) 00:26:53.79 ID:KRW/N0gR0
今日はここまで
質問・感想があればどうぞ

246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/24(月) 00:31:07.99 ID:9A/IwvZyO
乙です
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/24(月) 23:38:49.63 ID:kCwhG4/o0
罪袋とどっちがマシだろうか
248 : [sage]:2015/08/25(火) 17:30:27.96 ID:4yFXt0p10
不っ吉な夜が〜迫って来たら〜♪(ネズミー音楽verVILLANS感)
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/04(金) 01:44:02.37 ID:w6VCVaNh0
同人誌みたいに
250 : ◆A0cfz0tVgA [saga]:2015/09/07(月) 00:15:05.06 ID:bBfa6yub0
休日だというのに筆が進まない。書き溜めがががg



これから投下を開始します
251 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/07(月) 00:16:13.07 ID:bBfa6yub0





     *     *     *






252 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/07(月) 00:16:43.36 ID:bBfa6yub0

「ちっ、暴れんじゃねぇよ!」

フラン「いやっ、離して!」



それから数分後。
フランドールは男たち3人に、半ば誘拐される形で人の気配がない路地裏へと連れ込まれた。


周囲には見上げるほどの高さの高層ビルが建ち並び、空を非常に狭く見せている。
その空には星が瞬き始めているが、月はその顔を覗かせていない。
それもそのはず、今宵は『新月』。月が空から姿を消す日である。
故に月明かりに照らされない路地裏はいつも以上に闇が深く、人の本能に原初の恐怖を訴えかける。



フラン「きゃっ!」ドサッ!



人の眼が届かない場所に辿り着くと、フランドールの腕を引っ張っていた男は彼女を乱暴に前に突き出す。
その勢いのままフランドールは前につんのめり、その膝と手を地面に突いた。
手の平が強く擦れ、僅かに血が滲み出す。服には土埃が付き、真紅の衣装の所々を灰色に彩った。

253 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/07(月) 00:17:31.11 ID:bBfa6yub0

男1「さて、と。 どうする?」

男2「どうするってお前、そんなもん決まってるだろ」

男1「俺が聞いてるのはどんなシチュがいいかってことさ」

男2「シチュって言われてもな……いつも通りじゃダメなのかよ?」

男1「3人でマワして終わりじゃ飽きるだろ? 偶には変わったことしないとな」

男2「まぁ……お前がそう言うなら別にいいけどさ」



フランドールをそっちのけで楽しげに会話を進める男たち。
会話の内容はほとんどわからなかったが、自分に『何か』をしようと相談していると言うこと、
そしてそれは碌でもないことであるというだけは理解できた。

254 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/07(月) 00:18:47.43 ID:bBfa6yub0

フラン(どうにかして逃げないと……!)



フランドールは逃げる算段を立てるが、現状では難しいと言わざるを得ない。


人がいる大通りからはそれほど離れてはいない。
全力で走れば、比較的簡単にたどり着くことができるだろう。
しかし、男3人を振り切ってとなるとその難度は跳ね上がる。
未熟な小学生のフランドールの足では、男達の足からは逃げられない。


加えて用心深いことに、男たちはフランドールの逃げようとした時に対処出来るように策を立てていた。
ガタイの良い男2人が正面と背後に1人ずつ。彼女を挟むようにして仁王立ちしている。
彼らの脇をくぐり抜けるのは至難の技だろう。


そして残った1人は、フランドールにほぼ密着するにまで近づいており、ほとんど彼女を真下に見下ろす形になっている。
ここまで近づかれては、少しでも不審な動きをした時点で容易く取り押さえられてしまう。


それは正に二重の檻。
この手慣れた手口を見るに、おそらく男たちは過去に同じ手段を使って、
数多くの女性たちを毒牙にかけてきたのだろう。

255 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/07(月) 00:20:15.57 ID:bBfa6yub0

男1「一斉にぶち込むか、両手に茎にするか……お前はどっちがいい?」

男2「好きにしろよ。 俺は別にヤれればそれで良いし」

男1「なんだよ、つまんねぇな。 こんなカワイイ娘とヤれる機会なんて滅多にねぇんだぞ?」

男2「別に俺はロリコンじゃねーし。 むしろ熟女派だし」

男1「いままで散々JC相手にしてきたくせに、何を今更言い逃れしてるんだよ」

男3「良いからさっさとしろよ〜。 こちとらこの日のために1週間も溜めて来てるんだからさぁ〜」

男2「うるせーよ、この性欲魔人」

男1「あ〜、もうその時その時で考えるか」

男2「仕込みは任せたぜ」



一通りの相談が終わると、フランドールの目の前に立っていた男が再び彼女に向き直る。
彼の眼は完全に獲物の品定めをする獣のそれであり、他の2人も同様である。

256 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/07(月) 00:21:33.53 ID:bBfa6yub0

男1「さて、痛い目に会いたくなかったら脱ぎな。 脱がねぇなら俺が脱がせてやる」

男1「ま、そうなったらそのきれ〜な服は使い物にならなくなるけどな」

フラン「……」

男1「……おい、聞いてるのか?」



フランドールは俯いたまま、沈黙を貫いている。
恐怖で足が竦んでいるのか、それとも男達に対する精一杯の抵抗か。
顔が見えないこの状況では、そのどちらとも取れなかった。



男1(へっ、健気でやんの。 俺としては無理矢理の方が好みだけどな)



しかしその行動は、男の劣情を更に刺激させる結果にしかならなかったようだ。
彼は内心舌なめずりしつつ、フランドールに手を伸ばす。

257 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/07(月) 00:29:42.57 ID:bBfa6yub0

どこから先に手を付けようか?
上着を無理矢理破き、幼い乳房を弄り回してみようか?


下着を脱がせて、そのまま本番に突入するのも良いかもしれない。
その場合は少女が泣き叫ぶ事になるだろうが、この場所なら多少声が大きくなろうとも誰かの耳に届くことはないだろう。
つまりは、『全ての事が終わるまで』自分たちを邪魔する者はいないということだ。



男1「さぁて、先ずは――――」










ブンッ! ドガッ!

258 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/07(月) 00:30:16.15 ID:bBfa6yub0

突如、その言葉を遮るように周囲に何かがぶつかる鈍い音が響く。
周りで待機していた他の男達は反応することが出来ず、ただ呆然とその音がした方を注視した。
視線の先にはフランドールと男が相も変わらず立っている。
少女は俯いたまま顔は見せず、男はその少女に手を伸ばしたままだ。


ただ、一つだけ変化があった。フランドールの右足が、思いっきり振り上げられているという変化が。
そしてその足の先は、男の秘部へと深く突き刺さっていた。



男1「――――」ドサッ!



急所を蹴り上げられた男は、無言のまま前のめりになりながらその場に崩れ落ちる。
手の平を突いて受け身を取ることもなく、豪快に倒れ伏した。

259 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/07(月) 00:31:33.01 ID:bBfa6yub0

男2「おい――――」

フラン「――――!!!」



そんな仲間の姿を見た男の1人が、慌てて声をかけようとする。
想定外且つ衝撃的な光景を前に、彼の頭の中から少女の存在が完全に消し飛んだ。


その瞬間をフランドールは見逃さない。
極限の状況で思いついた、咄嗟の打開策。そして、それにより生み出された光明。
これを逃せば、この先自分を待ち受けているものは破滅だけである。
彼女は弾けるようにして、この場から逃走を開始した。しかし――――



男3「おぉっと! 逃がさないよ〜ん」

フラン「っ!?」

260 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/07(月) 00:32:03.82 ID:bBfa6yub0

それよりも先に、もう一人の男がフランドールの腕を掴み取る。
まるで彼女がどんな行動を取るのか、予め判っていたかのような素早い動きだ。
唯一の脱出の機会を潰された彼女は、驚愕と恐怖で全身が硬直した。



男3「ん〜? なんだか随分と驚いてるみたいだけど、そんなに意外だった?」

男3「君は俺達を不意打ち驚かせてる隙に逃げるつもりだったみたいだけど、残念だったね〜お見通しなんだよね」

フラン「……っ」



男は口角を釣り上げ、ニタニタしながらフランドールを見下ろしている。


随分と軽い言動を繰り返していて、仲間の内からも残念な印象持たれていた様子から3人の中で一番警戒していなかったが、
その予想に反して、どうやらこの男がで一番厄介な存在だったようだ。

261 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/07(月) 00:33:53.71 ID:bBfa6yub0

男3「にしても、あいつも馬鹿だな〜。 不用意に近づけば、手痛い反撃を食らうのは判りきったことなのにさ」

男3「『窮鼠猫を噛む』って諺知ってる? 獲物を追い詰めた時は、今まで以上に警戒しなきゃならないんだよね〜」

男3「ほんと、この言葉を造った昔の人達には頭が下がるよね〜」



男は蘊蓄を長々と垂れているが、フランドールにとっては至極どうでも良いことである。
この場から逃げ出す千載一遇の機会を逃した――――その事実だけが、彼女の心に暗澹たる影を齎していた。


これから自分はどうなってしまうのか。
きっと、自身の予想以上に酷い目に会わされるに違いない。
何故なら、男達に反抗してしまったのだから――――


最早フランドールに抵抗する意志は無く、自身が行ったことに対して後悔し、これから降りかかる悲劇に恐怖するのみ。
そんな彼女の心境を知ってか、男は彼女の腕をしっかりと捉えつつも気の抜けた声で仲間に呼びかけた。

262 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/07(月) 00:38:50.28 ID:bBfa6yub0

男3「お〜い。 そっちは大丈夫か〜?」

男1「」ピクピク

男2「駄目だな、完全にイッちまってやがる。 こりゃ暫らく目ぇ覚まさねーぞ」

男3「あらら、残念。 で、どうする? 俺達2人で楽しんじゃう〜?」

男2「それもそうだな。 こいつには悪いが、起きるまで待ってると流石に誰か来るかもしれねーしな」

男2「それに――――」



ガッ!



フラン「あぐっ!」

男2「ダチに手を出したツケは、さっさと払ってもらわないとなぁっ!」

263 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/07(月) 00:40:22.50 ID:bBfa6yub0

男は拳を握りしめ、フランドールを思いっきり殴りつける。
そして尻餅就いた彼女を、今度はそのまま勢いよく足蹴にし始めた。


彼の顔に浮かぶのは怒り、そして愉悦。
前者は仲間を傷つけられたことに対しての、後者はそれを行った者に報復できていることに対してのものだ。


仲間を傷つけられたことは、彼等の完全な自業自得である。
しかし、暴力をふるう彼にとっては自身に行いの善悪などどうでも良く、
『自分達に刃向かった』という事実のみが彼等の感情を扇動し、激高させる理由となっていた。



男2「オラァ! さっきまでの威勢はどうしたよ、オイ!?」

男3「ヒュウッ! 激しくやるね〜」

男2「自分の立場は徹底的に教え込まないとな。 どうだ、お前もやるか?」

男3「流石にリンチしたら死んじゃうでしょ」

男2「この程度じゃ死にゃしねーよ。 ま、骨の一本ぐらいは折れるかもしれねーけどな」ガシッ!

フラン「っ! ぅうっ!」

264 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/07(月) 00:42:21.22 ID:bBfa6yub0

男がそんなことを呟くのを耳の端に聴きながら、フランドールはただひたすら痛みに耐える。


名も知らぬ男から向けられる、一方的な『敵意』と『暴力』。
それは彼女が今まで生きてきた中で初めて自身に向けられたものであり、故に彼女を心の底から恐れさせた。
親に叱られた時とも、姉を怒らせた時とも違うその『恐怖』は、幼子の精神を劇毒のように蝕んでいく。


親であれば、きちんと反省すれば許してくれた。姉であれば、素直に謝罪すれば怒りを収めてくれた。
しかしこの男には、反省も謝罪も全く意味を成さないだろう。
それをした所で、この暴力は収まらないことを彼女は直感的に理解していた。


暴力を一方的に受け続けるしかないという『絶望』。
そして、この状況を生み出してしまったことに対する『後悔』。
彼女の心の内にあるのは、この二つの感情のみ。

265 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/07(月) 00:44:10.00 ID:bBfa6yub0

ガッ! ガシッ!



フラン「ぁ! ぐっ!」



暴力の嵐は収まらない。
男の蹴りは少女の絹肌に数多の傷を刻み、蹂躙し続ける。
既にフランドールの姿は、服の汚れと体の傷で眼にも当てられない。
痛みに次ぐ痛みで意識は朦朧とし、まともな思考も出来なくなっていていた。


――――正常な判断力を失った脳は、本能に従う。
身体に絶え間なく加えられる苦痛。そして、極限にまで追いやられた精神状態。
それらの要素は、彼女に『死』の気配を感じさせるには十分なものだ。



フラン(――――嫌だ)



そしてその『死』は、フランドールの『生への欲求』を煽り立てる。
それは生物であれば誰しもが持つ、至極当たり前のもの。


しかし子供の場合、その欲求は大人のそれよりも貪欲だ。
『生への欲求』は『死への恐怖』を瞬く間に押し流し、彼女を『逃避』へと走らせる。
そこに理屈も打算もない。それが可能かどうかは別であり、『ただ本能のままに行動する』だけだ。

266 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/07(月) 00:44:41.52 ID:bBfa6yub0









死にたくない










267 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/07(月) 00:45:12.02 ID:bBfa6yub0










死にたくない死にたくない死にたくない










268 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga !red_res]:2015/09/07(月) 00:46:42.48 ID:bBfa6yub0










死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
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死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない










269 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga !red_res]:2015/09/07(月) 00:47:46.68 ID:bBfa6yub0










フラン(死にたくないっ!)










ビシィッ!!!

270 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/07(月) 00:48:45.16 ID:bBfa6yub0
中途半端ですが、今日はここまで
質問・感想があればどうぞ
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/07(月) 00:53:00.54 ID:eg3Q/xSVO
乙です
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/07(月) 12:32:11.12 ID:8FPE1tuA0
幼女にはちょいとキツめのイヤボーンでしたか
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/08(火) 19:27:08.55 ID:rVnmnFLb0
東方新作では世界観を崩壊させそうな奴が複数
禁書新巻には作中最強を更新するキャラが複数

このインフレ被りはただの偶然‥だと信じたい
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/10(木) 23:07:08.76 ID:+AS4iuvI0
マジかよスキルアウト(と、思われる不良)最低だな
275 : ◆A0cfz0tVgA [saga]:2015/09/14(月) 00:51:30.98 ID:jW3WNHzu0
>>272
命の危機に能力が覚醒する展開。形は違えどよくある話
仕方ないじゃない、使いやすいんだもの

>>273
オティヌスの世界破壊に比べれば惑星を投げるなんて大したことじゃないからへーきへーき
というか、このままだと強さの順が『ヘカT<オティ』になってしまう不具合。仮にも神なのに……
僧正みたいに魔神しちゃう案もあるけど、間違いなく上里に追放されて過去の人になってる可能性が……

>>274
幼女に暴行する奴はギルティですね
276 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/14(月) 00:52:30.25 ID:jW3WNHzu0

男2「――――んあ?」



周囲に聞き慣れない、とても大きな音が響く。固いものが割れた時のような乾いた音だ。
本来なら聞こえるはずのないもの。しかしそれは、幻聴と片付けるには余りにも大きすぎた。



男2(まさか、誰かいるのか?)



一つの可能性を考慮した男は、その音の出所を探るべく周囲を見渡す。
この路地はただの一本道。視界は開けており、陰に隠れられそうな大きな物は置かれていない。
誰かがいれば、直ぐに眼に付くはずである。

277 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/14(月) 00:53:42.98 ID:jW3WNHzu0

男2(――――!?)



しかし男が視界に納めたものは『人間』ではなく、『それ以上に恐ろしいもの』であった。


それは『亀裂』。
周囲に立ち並ぶビルの壁に、蜘蛛の巣のように黒い紋様がビッシリと描かれているではないか。
しかも、その亀裂は一刻一刻と広がりを見せている。まるで壁を蝕むかのように。


一体何故、急にこのような現象が起こったのか?ただの老朽化として片付けるには余りにも異質すぎる。
男は亀裂の原因を探るべく、罅の後を眼で追いかける。
すると、その先にあったのは、自分が足蹴にしていた少女の姿。
蹲る彼女が手を突いている地面からだった。



男2「まさか、お前が――――!?」

男3「ちょっと、速く逃げないと不味いんじゃないのコレ!?」

278 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/14(月) 00:54:13.06 ID:jW3WNHzu0

ビシッ! ビシシィッ!



騒ぐ男達を尻目に、亀裂は更なる音を立てて広がりを見せた。
罅の隙間から粉が吹き始め、小さな破片が飛び散り始めている。


ビルが倒壊するのは時間の問題。冷静に考える余裕すらないだろう。
もはや少女の存在など、彼等の頭の中から完全に頭から抜け落ちていた。



男2「う、うおぉぉぉぉぉ!!!」

男3「おい、置いてくなよ! って、こいつ重……!」



命の危険を感じた男達は、倒れた仲間を担ぎ上げて脱兎の如くこの場から逃げ出した。

279 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/14(月) 00:56:12.15 ID:jW3WNHzu0





     *     *     *





280 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/14(月) 00:57:18.15 ID:jW3WNHzu0

フラン「――――」



ビルの亀裂が広がる中、その場に一人残されたフランドールは力なく立ち上がる。


既にビルの倒壊は秒読み段階。画礫が何時降り注いでもおかしくはない。
今の彼女は、正しく命の危機に瀕していた。


ビルの倒壊に巻き込まれて生きていられる人間など、学園都市の中でもごく一部に限られる。
多少の崩落であれば、落下する画礫を『念動力』であれば制止させ、
『発火能力』であれば灰燼と化し、『発電能力』や『空力使い』であれば磁力や風で弾き飛ばせただろう。
しかし、総重量数万トンにも及ぶ大量の画礫全てとなると、一介の超能力者では不可能だ。

281 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/14(月) 00:58:28.46 ID:jW3WNHzu0

バキィッ!



今までよりも一際大きい音が鳴ったと思うと、上空から人の頭部ほどの大きさを持つコンクリートの塊が、
フランドール目掛けて真っ直ぐに落下してきた。


コンクリートはとても重い物質だ。例え小振りなものであったとしても、
それなりの高さから落下すれば容易に人を殺せる凶器となる。
ましてや、今落下してくるものは少なくとも十数キロはあるであろう代物。
それが10メートル以上の上空から落下してきているのだ。
もしもそれが直撃でもすれば、少女の頭はトマトが鉄球に押しつぶされるかのように粉砕され、
辺り一面は『少女の頭だったもの』で紅く塗りつぶされる事になるだろう。


しかし、自身がそのような危機的状況にあることを自覚していないのか、
フランドールは相変わらず顔を下に向けたままだ。
前髪に隠されているために、その表情の全てを窺い知ることは出来なかったが、
少なくとも良い表情は浮かべていないと言い切れた。


灰色の石塊が迫る。
無垢な少女の頭蓋を、その頑強なる身で圧砕するために。
既にその結末は目の前。最早フランドールにはそれを回避することは出来ない。


そして、灰色の凶器がその頭に触れ――――

282 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/14(月) 01:01:25.20 ID:jW3WNHzu0










バシュンッ!



気の抜けるような音と共に、石塊は文字通り『粉砕』された。










283 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/14(月) 01:02:39.77 ID:jW3WNHzu0

フランドールの頭にかつて石塊だったものが、粉塵となって降り注ぐ。
それをまともに被った彼女の髪は、金色からくすんだ灰色へと変わっていった。
しかし彼女にそれを気にするような様子は見られず、そのままふらふらと歩き始める。


建物が限界に近づいてきたのか、次々と大小様々な石塊が降り注ぐ。
しかし、その何れもフランドールの体を傷つけることは叶わない。
触れた傍から砕かれ、粉となって散っていく。


この現象の原因は、彼女が身につけた能力にある。
本人は未だ気づいていない、学園都市の技術により植え付けられた異能の力。
その力の効果は『触れたもの全てを分解する』というもの。
聞くだけにも末恐ろしい能力を、フランドールはこの状況において開花させたのだ。
しかし、本人としてはその力を自分の意志で扱っているわけではない。
それは言ってしまえば、防衛本能に過ぎないものだ。


自身に宿っていると聞かされていた超能力。
それを極限状態の中で無意識に理解した。それだけのことに過ぎない。



ゴゴゴゴゴ…………!



廃ビルが本格的に崩壊を始める。
人の手で生み出され、そして人から捨てられたその歴史に幕を閉じる。
その崩落の最中、フランドールはその場から忽然と姿を消した。

284 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/14(月) 01:05:10.70 ID:jW3WNHzu0
短いですが今日はここまで。
質問・感想があればどうぞ
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/14(月) 01:07:56.64 ID:KREGdvJfO
乙です
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/14(月) 04:30:35.17 ID:IqIIBnOJ0
乙!
女子の憧れシンデレラ。だが王子が居なければ灰も被り損だろう
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/16(水) 02:00:33.03 ID:FmVdqXHZ0
二度三度と襲われなくて良かったね
288 : ◆A0cfz0tVgA [saga]:2015/09/28(月) 00:03:42.72 ID:q27/xudW0
これから投下を開始します
289 : ◆A0cfz0tVgA [saga]:2015/09/28(月) 00:04:38.93 ID:q27/xudW0





     *     *     *





290 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/28(月) 00:05:15.46 ID:q27/xudW0

フラン「……」



家に帰宅してそれなりの時間が経った頃。
フランドールは未だに自身のベッドの上で蹲っていた。
初めの頃と姿勢が全く変わっておらず、まるで一つの石像のようである。



フラン「……っ」ギュッ



唐突に、彼女は自信の服を強く握りしめる。まるで、何かに耐えるように。


その理由は、彼女は再び恐怖していたからだ。
この街の薄暗がりの中、心ない男達に暴力をふるわれたことに対して。

291 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/09/28(月) 00:05:49.23 ID:q27/xudW0

あの災難から逃れ、家に帰り着くまでの間はその恐怖をすっかりと忘れていた。
その代わり道中の記憶は全く無く、言ってしまえば放心状態で帰巣本能に従いながら歩いていたことになる。
そして我が家に辿り着き、玄関先にいた姉を見て我に返り、
逃げるようにして自身の部屋に閉じこもったその時、再度その恐怖を思い出したのである。



フラン(どうして、こんな事になっちゃったんだろ……)

フラン(先生の言うことを聞かなかったから? お姉さまから逃げ出したから?)

フラン(それとも……)



自身が巻き込まれた不幸。その原因を、彼女は自問自答する。
人は自信に降りかかる災難に、何かしらの理由を求めようとするが、それはある種の危機回避によるもの。
災難の原因を理解すれば、それを解決し、災難を回避することが出来るから。


それでは、フランドールが今回の災難を回避するためには、一体何が必要だったのか?

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