「『須賀京太郎』とは、あなたのそうぞう上の存在に過ぎないのではないでしょうか」

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271 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 10:49:05.84 ID:aab2LhjRo
乙です
272 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 12:52:02.95 ID:scOzsNiIo
こうやって矛盾点を徐々に突いていくのはやっぱ痺れるな
273 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 18:58:34.43 ID:QE24juTZo
>>270
俺も思った
本編もそうだし、あの頃はそのSSも多かったしな
274 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 19:44:17.67 ID:ezhhKAlto
三つ編み原村さんの「嫌です」と、スケッチブックまほは違和感ないかも。
275 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/18(月) 21:56:32.12 ID:2gv2FeKHO
絶望先生思い出した
276 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/18(月) 22:59:19.03 ID:QQkzikRVo
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/31(日) 09:33:25.82 ID:a3WjVfg8o
待ってます
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:20:09.11 ID:jaVggvmMo
話が動くところまで書けるか分からないけどとりあえず進める

しかし予想外に見てくれてる人が居るんな……
嬉しいけど、予防線を張りたい衝動もあったりなかったり
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:21:34.20 ID:jaVggvmMo






「お帰り。早かったな」


家に帰ると、お父さんが受話器を耳に当てていた。


「ただいま」


ぼんやりとしたまま、私も挨拶を返す。







その日は、結局話し合いの体をなさず、うやむやの内に解散となった。


誰も彼もが混乱して、収拾がつかなくなっていた。


部長が解散、と言った声に、疲弊がわずかに見えたのは気のせいじゃなかったと思う。




私は、安堵と同時に押し寄せてきた急激な疲れが頭を靄がからせて、熱に浮かされたようにゆらゆらと揺れる。
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:23:17.39 ID:jaVggvmMo




分かってる。


京ちゃんの存在が証明されたのではないということくらい。


ここから何をすれば良いのかも分かっていないことくらい。


それでも、何処にもなかった手掛かりの欠片がようやく見つかった。


京ちゃんの存在に関わりがあるとしか思えない事象を、ようやく見つけたのだ。


今少し、この安堵に身を委ねていたかった。


281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/31(日) 21:29:05.89 ID:6MeBiFiTo
来たか良かった
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:31:06.03 ID:jaVggvmMo


「ああ、咲が帰って来た」


私の名前が出たことに反応して、お父さんを見る。

それに気づいて、お父さんは受話器を指す。


「かーさん」


ああ、お母さんか。

インターハイの間に、お父さん達にも色々あったらしい。

私がこちらに帰ってくるまでに数度、お父さんとお母さんが連絡を取っていたとお姉ちゃんから聞いている。


そうか、お母さんと話してるのか。

ぼんやりとしたまま、自分の部屋に足を向けて──
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:33:50.72 ID:jaVggvmMo




「──お父さんっ」

「うおっ!?」


私が飛びつくように声を掛けると、お父さんはビクリと肩を跳ねる。


「びびったじゃねーか、まだ居たのか。どーし」

「お姉ちゃん居るっ!?」

「……かーさんなら今繋がってるけど」

「いまは、おかーさんじゃなくてっ」


284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:38:12.06 ID:jaVggvmMo



お父さんが受話機越しに二言三言声を交わした後、私に渡す。

受話機を耳に当てる。


「お姉ちゃん?」

「……お母さん、泣いてたよ」


あぁ。

間違いない、お姉ちゃんの声だ。

それだけのことにとてつもない安心を感じる。


そして、言葉の意味が思考に届く。


「えぇっ、ちが、私はそういうつもりじゃ」

「うそ」


笑いを含んだ声が、受話機から届く。


「え」

「泣いてないよ、ちょっと拗ねてたけどね」

「っ、もう!」

「ふふ」


からかいの言葉にむくれて見せるも、そうした応対のひとつひとつが嬉しい。

285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:43:39.54 ID:jaVggvmMo



宮永照。


高校麻雀界のトップを行く白糸台高校、そのエース。


それが、私のお姉ちゃん。




私とお姉ちゃんは、とある事情があって長く絶縁状態になっていた。

仲直りしたのはつい最近のことで、インターハイに出ることがなければ、きっとそれも無し得なかっただろう。



「久しぶり……でもないか。2日ぶりだね、咲」



まだ2日なんだ。


もう数日が過ぎたかのような感覚だった。

286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:46:28.36 ID:jaVggvmMo


「お姉ちゃん」

「?」

「会えないかな」

「2日前に会ったばかりだけど?」

「それでも、聞いてほしいことがあるの」


お姉ちゃんに聞いてほしかった。

数年間、音信不通で、空白の方が多くなっている今でも。

多分、私が最も信頼しているのはお姉ちゃんだ。



会いたい、話を聞いてほしい。

笑われるだろうか。

お姉ちゃんも、私が変だと思うだろうか。




───それでも。

287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:50:10.80 ID:jaVggvmMo


「……咲たちのおかげで」

「?」

「今は、毎日ミーティングや猛特訓でスケジュールが埋まっている」

「そっか……」


288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:50:53.67 ID:jaVggvmMo





「だから、私は行けないけど」



「咲が来るなら、話を聞いてあげる」



289 :しばし中断 [saga]:2016/01/31(日) 21:51:45.97 ID:jaVggvmMo



「──うん! 行く、行くよ!」

「そう」




静かだけど、お姉ちゃんが微笑んでいるのが分かった。


290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/31(日) 22:04:28.88 ID:6MeBiFiTo
一旦乙です
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/31(日) 23:29:25.28 ID:a3WjVfg8o

てるーいいね
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/31(日) 23:56:56.44 ID:jaVggvmMo
ちと無理ぽいのでまた後日ということで
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/31(日) 23:58:28.05 ID:rSBTbhu9o
おつー
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/01(月) 00:45:31.21 ID:P+oIgX2Ao
乙乙
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/01(月) 01:39:26.37 ID:Dpg1h3lto
おつおつー
このあとどうなるのか楽しみすぎる!
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/01(月) 06:05:29.11 ID:U1zsDbzvo
乙です
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/01(月) 07:06:45.54 ID:z3vWJJqSO

照は覚えてくれてるんかな
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/01(月) 10:02:04.70 ID:NsEezt+AO
>>297
電話口で何も言わないってことは京太郎自体をまず知らない可能性もあるぞ
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/01(月) 20:23:11.78 ID:etoJD0ydo
方向音痴っぽい咲が自力で白糸台に辿り着ける可能性は?
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/01(月) 20:30:54.03 ID:mxE60KfUo
迷子になってる時に京ちゃんらしき人が助けてくれる...
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/02(火) 11:25:13.46 ID:g3cg/nQAO
乙乙
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/02(火) 21:05:53.55 ID:1IZLQUS3o
乙ー
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/12(金) 19:03:52.78 ID:B8WMzct3o
待ってるよ
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/02/24(水) 01:14:11.92 ID:DvjTT+jto
あー今日進めたかったけど流石にもう寝ないと無理だ
前回から間が大分空いているけれど26か27に投下で……
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/24(水) 01:51:14.10 ID:39gmksNMo
おう、あくしろよ
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/26(金) 09:34:14.54 ID:xKJ6bq1N0
待ってます
307 :途中まで投稿 続きは夜に [saga]:2016/02/27(土) 12:15:54.56 ID:od5pT+3ao







「───で、まさか翌日に来るとは思わなかったけど」

「えへへ……」





308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 12:16:49.30 ID:od5pT+3ao


東京駅近くの、有名な喫茶店。

日はまだ高くとも今は夕方で、店内は色々な格好の人で埋まっている。


ちなみにお姉ちゃんは制服で、私は私服だった。

部活終わりに迎えに来てくれたのだ。


「でも、迷子癖は相変わらずなんだね」

「む、昔よりはマシになったし……」


お姉ちゃんを待っている間、お土産を見るついでに軽く迷子になった。

待ち合わせ場所に向かう途中のお姉ちゃんが通りがかったため、事なきを得たのだけど。

その時のお姉ちゃんの飽きれ顔が想起される。
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 12:18:35.99 ID:od5pT+3ao


「インターハイ後に会ったときには、結構普通だったのに」


ショートケーキにフォークを通しながら、お姉ちゃんが言う。

あの時は、皆が居たから迷子になることが少なかった。

部長や染谷先輩の後ろについて行き、和ちゃんや優希ちゃんの横を歩き、京ちゃんに背中を押されて───


「ねえ、お姉ちゃん」

「なに?」

「京ちゃん──須賀京太郎を、覚えてる?」

「……私が、長野に居た頃の知り合い?」

「ううん」


ショックはない。

京ちゃんとお姉ちゃんはインターハイ後に会っている。

けれど、部活の皆が覚えていないのだから、お姉ちゃんも覚えてはいないだろうと思っていた。


「私が、今日来たのは」

310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 12:19:14.49 ID:od5pT+3ao






「その、須賀京太郎という、男の子のことなの」





311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 12:20:12.85 ID:od5pT+3ao


私は話す。


出会った頃の話、中学校での出来事、高校でのやり取り。


インターハイの間と、お姉ちゃんに紹介した時のことと、その後のこと。


京ちゃんとの記憶と──消し去られたその存在について。


お姉ちゃんは、言葉を挟むことなく、黙々とケーキを消費する。


居なくなってからのことを話した時には、僅かな鈍痛を伴った。


理由は分からない。


取り返しの付かない状況に陥ったような、そんな感覚を思い出すからだろうか。


実際、もう二度と、取り返しの付くことは無いと思った。


もう、二度と。


でも──

312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 12:24:07.16 ID:od5pT+3ao



「──昨日、ようやく見つけた。京ちゃんが、居たことの手がかりを」


私を麻雀部に連れてきたのが誰なのか。

長野県予選で優希ちゃんのタコスを買ってきたのは、インターハイで食べたタコスを作ったのは。

学生議会室まで、私と一緒に資料を持っていったのは。

roof-topの模様替えで、大きな鉢植えを運んだのは。

一年生麻雀勝負で、ラスを引いたのは。

清澄高校麻雀部で、一番紅茶を淹れるのが上手かったのは。



誰も、答えることが出来なかった。



京ちゃんが居た場所に時間に、確かな空白があった。

313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 12:26:16.37 ID:od5pT+3ao



「京ちゃんが居た場所は、確かにあった」








「──あったからこそ」



この事を話すために、私はお姉ちゃんに会いに来た。


・ ・
こう考えることは自然であるだろうけれど、触れてはいけないことのような気がして、避けていた。

なぜか、とても恐ろしいことのような気がしていたから。

314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 12:28:38.15 ID:od5pT+3ao




「不思議なの」




「なんで、皆は──京ちゃんのことを忘れているんだろう」



315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 12:29:15.32 ID:od5pT+3ao



もはや、このような不自然な空白が見つかって、避けようのなくなった疑念。


空白のそこに、京ちゃんが居たのなら。


大きな大きな何らかの力が、京ちゃんを消したとしか思えなかった。


316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 12:33:38.73 ID:od5pT+3ao



「────咲」


お姉ちゃんが、ゆったりと紅茶を含んで飲み込んで、言う。

同時に、




──────ぞわり




見られている感覚があった。

強烈な違和感と、懐かしさ。



インターハイでこう呼ばれていた、お姉ちゃんの感覚。








照魔鏡。

317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 12:34:49.91 ID:od5pT+3ao



「その、須賀君というのは」



僅かに緊張する。

ひんやりと冷たいアイスティーのコップを手のひらで包む。


318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 12:35:24.49 ID:od5pT+3ao









「彼氏?」




319 :続きは夜 [saga]:2016/02/27(土) 12:37:23.22 ID:od5pT+3ao





「──え?」


口がポカンと開く。

呆ける脳が隅っこの方で、そういえば、とぼんやり思う。



そういえば、京ちゃんを紹介したときにも同じことを聞かれたな。

320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/27(土) 13:06:40.30 ID:lZePrbzTo
一旦乙です
照さんこの不思議話しで一番最初に気にするところはそれですか
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/27(土) 13:18:14.16 ID:I8a93LqZ0
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/27(土) 14:15:15.31 ID:15T81Z+Bo

まぁ確かにそんな不思議話されたらその男子が彼氏なのかは疑うよな
ただの知り合いならこんなに気にしたりしないだろうし
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/27(土) 14:55:27.74 ID:qMyegvJSO


土器土器
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/27(土) 17:00:01.25 ID:oa2aF0g30
ドラゴビッチ....クラフチェンコ....シュタイナー....オールマストダーイ....
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/27(土) 17:12:53.15 ID:E3Q0NNu5o
なんかSFっぽくて楽しみ
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/27(土) 20:07:00.73 ID:DvRvysvHo

まあそう思うわな…
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/27(土) 21:45:41.38 ID:Em2DPvaAO
乙です
328 :のんびり書きながら投下するよー [saga]:2016/02/27(土) 23:11:10.25 ID:od5pT+3ao

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「なるほど、分かった」


お姉ちゃんの言葉と同時に、見られているような感覚が消える。


「須賀さんの息子さん……か。……京香さんには、よくお世話になった」

「うん……」

「京香さんも清澄だったかな。制服が同じようにセーラーだった覚えがあるけど」

「よく覚えてるね……聞いたこと無いし、違うと思うけど……」


疲れた。

ちょっとだけ、机に突っ伏す。
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 23:22:45.80 ID:LlXU5wkk0
漫画初期設定みたいに高校の頃に仲良くなったなら「麻雀部に入るために作った友達」という理由になるが……
ここでは中学生からの知り合いぽいからなぁ……「ぼっちであることを現実逃避するための架空友達」ということか?
どっかの夜空さんを思い出すなぁ……
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/27(土) 23:29:24.70 ID:fmzEEXOZo
原作1話で既に中学同じって言われてるんだけど・・・
あとsageようか
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 23:31:34.77 ID:od5pT+3ao


様々なことを聞かれた。


私と京ちゃんの関係に始まり。


私が京ちゃんをどう思っているか、京ちゃんが私をどう思っていると思うか。


さらには京ちゃんの周囲の状況や、家庭環境まで。


332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 23:34:17.03 ID:od5pT+3ao


でも、きっとお姉ちゃんのことだから。


「必要、だったんだよね?」



手を繋いだ時にどんな気分だったか、キスしてみたいと思ったことは等々、根掘り葉掘り聞かれたことも。

きっと、とても深い理由が──


「? 質問自体は私が聞きたかっただけだけど」

333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 23:36:51.98 ID:od5pT+3ao


完全に、机に突っ伏す。


私が答えを濁そうとすると、真剣な顔をしてじっと見つめてくるものだから、大事なことだと思って真摯に答えたのに。


とても恥ずかしくなりながら、恥ずかしいことを口走ったりしたのに。


ただ、聞きたかっただけって。


聞きたかっただけって。

334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 23:41:00.03 ID:od5pT+3ao


「でも、話すことは必要だったから」


頭上から聞こえた声に、顔をあげる。


「咲をちょっと『見』させてもらった」


そう言うお姉ちゃんの表情は、なにか考えているようで、結果が良いのか悪いのか判然としない。

335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 23:42:18.68 ID:od5pT+3ao





「結論から言うと」




「咲がオカルトの影響を受けている様子はない」


336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 23:43:14.35 ID:od5pT+3ao



オカルト────




──……






「……オカルト?」

「そう」
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 23:47:56.45 ID:od5pT+3ao


淡々としたお姉ちゃんの様子からは、それが重要な事なのかそうでないのかが分かりづらい。


「ええと、麻雀の?」

「じゃない方。いや、同じと言えば同じ?」


ストローを咥えながら顔を傾ける様は、思考する表情に妙な愛嬌を加える。

338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 23:53:54.24 ID:od5pT+3ao


「まあ、簡単にいえば」



「その『京ちゃん』の存在──記憶とかそういったものに、何らかの力が働いてるんじゃないかなって調べたけど」



「咲にはその影響が見られなかったってこと」


339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/27(土) 23:56:20.50 ID:B//oOIsy0
大嘘つき(オールフィクション)で人消したときに症状が似てるな
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 00:03:46.02 ID:lzoNbycto



何らかの力──確かに、それは知りたかったことだ。


京ちゃんの存在についての扱いは、通常では考えられないことだらけで、普通ではない力が働いているのではないかと何度も思った。

正直、それは突拍子もない話で、起きている事象から逃避するための妄想のつもりだった。



──だったけれど、お姉ちゃんはそれが有ることを真面目に語る。


そして、何よりも気になったのは──


「──お姉ちゃんには、それが分かるの?」

「うん」


お姉ちゃんは、相変わらず静かだ。
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 00:12:09.08 ID:lzoNbycto


「麻雀で、オカルトの強い子が結構居るのは、咲も知ってると思う」



「あれは実際には、麻雀のオカルトと言うよりも、その人が元々備え持つ特殊な力──オカルトを、麻雀の技能として扱っている場合が多い」



「永水の神代さんなんかが、その最たる例」



まあ、持つ技術を麻雀に生かすというのは、オカルトに限った話じゃないけどね、とはお姉ちゃんの言。

観察する、絞り混む、狙い打つ、推測する。

オカルトも、結局のところそうした技能のひとつでしかない、と。

342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 00:22:03.08 ID:lzoNbycto



「ちょっと話がずれた。ともかく、私もそうしたオカルトを持ってる」


ぐわりと、音がするような圧力で私の後ろに何かが現れる。

先ほどと同じ、よりももっとはっきりとした形を持ったそれは、明確に鏡の形をしているように感じた。





「『本質を観測』する能力」




お姉ちゃんは変わらずの様子なのに、ぴりぴりとした威圧感がある。

前から、後ろから。

343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/28(日) 00:25:01.45 ID:dGQmzkDH0
先がキニナル
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 00:31:51.49 ID:lzoNbycto


「麻雀では相手の傾向を知るために使っているけれど」


「相手の現在の感情や体調、嘘をついていないかというものから、体質や成長性、業や性といったものまで」


「知ろうとする事々にそれなりに時間はかかるけど、様々なことを知ることが出来る」





「──その様々には、オカルトについても」

345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/28(日) 00:33:01.69 ID:TIizi0g40
京太郎になにかがあったんだろうけど、照の能力で真実を探ろうにもまずは京太郎(にかかわるなにか)を見つけないと
ステルス探しの名人ワハハを呼ぼう、あと九州の巫女さんや、岩手の妖怪たち
ところで
リンシャンもとい、山に花を咲かせる能力な咲さんの、麻雀以外の使い道のなさ……
いあ、登山した時に季節問わず百花繚乱(というほど山の上のほうには種類はない)して景色はよさそうだけど(苦笑
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/02/28(日) 00:41:36.06 ID:qt8U0AON0
京太郎の能力は不要牌を引く事。清澄麻雀部に入ったのは・・・(察し)
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 00:41:44.46 ID:lzoNbycto


圧倒される。

自分のすぐそばに、そんな力が存在したことに。

そうした事実を、あまりにも普通に話すお姉ちゃんに。


「なんでも、知ることが出来るってこと?」

「そこまで万能じゃないよ。言い方を変えれば、『本質』しか知ることが出来ない能力だから」

348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 00:48:00.44 ID:lzoNbycto


曰く、『質』の『本質』とは関係のない部分は分からない。

例えば何を考えているのかは分からないし、癖や変化については感知出来ない。


「オカルトの影響については、基本的に本質に関わってくるものだから」


ふっと、圧力が消える。


「私にも、分かるけど」

349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 00:58:28.98 ID:lzoNbycto


「……」


頭のなかを整理することで精一杯で、言葉が出てこない。

オカルトについては、なんだか不思議なくらいするりと受け入れる事ができた。

ただ、その影響が、考えていたことにまで響いて、ぐちゃぐちゃとしていた。

とにかく。

とにかく、大事なのは。


「私が、オカルトの影響を受けていないことと、京ちゃんがいなくなったことに、関係はあるの?」

「咲は疑問に思わなかった? 誰も覚えていない相手を」


お姉ちゃんは、ゆっくりとモンブランにフォークを通す。
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 00:59:48.83 ID:lzoNbycto








「咲だけが、覚えている」





351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/28(日) 01:03:03.46 ID:7AGgCTKXo
なるほどそういうことか
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/28(日) 01:03:39.07 ID:o12iEcWAO
咲さん知らない内にどくさいスイッチ押したんじゃね?
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/28(日) 01:05:27.96 ID:pwsIKo3K0
『京太郎の存在をなかったことにした』
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 01:09:20.08 ID:lzoNbycto


「だから、咲に何かしらのオカルトが発揮されてるものだと思った」

「……それって、私の方がオカシイと」

「違う」


ふるふるとお姉ちゃんは首を振る。


「規模の問題。何かしらの改変を行うオカルトであるのなら、例外にこそ解決の糸口があるはず」

「そしてその例外が、分かる限りではただ一人だけ。であるなら、オカルトを避けるだけの何らかの影響下にあると思ったんだけど」

355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 01:23:41.74 ID:lzoNbycto


「……その私は、オカルトの影響を受けていなかった」

「そう」


それはつまり、


「現状では、解決の糸口が見つけられない、ということ?」


お姉ちゃんは首を振る。


「そうであれば、咲が何故影響を受けなかったか、を突き詰めていけば良かっただけ」

356 :ちょっと難しい展開になっているので更にペース落ちるよー。たぶんだけど、後日見たほうがいいよー。ぼっちになるよー。 [saga]:2016/02/28(日) 01:37:00.04 ID:lzoNbycto


「……けれど、前提条件を見なおさなければいけないみたい」

「前提条件を……?」



「さっき、自分で少し見てみたんだけど」


「私も、咲と同じだった。変わらなかった」










「──私も、咲と同じように、オカルトの影響下に無かった」


357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 01:37:54.69 ID:lzoNbycto





「記憶から何かを消し去られた形跡も、意識を書き換えられた痕跡も、知識を隠蔽された様子すらない」




358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 01:40:08.15 ID:lzoNbycto


「それって……」

「うん」




「現状は、こう判断せざるを得ない」


359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 01:40:37.97 ID:lzoNbycto










「『須賀京太郎』の消失に、オカルトは関わっていない」






360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/28(日) 01:53:30.45 ID:X8/kvAPN0
それってリッツ「福山潤のギャラ高過ぎ...そうだ!」クラスで消されたってことですよね...
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 01:58:59.07 ID:lzoNbycto



お姉ちゃんの言葉に、考える。

もはや情報の更新が追い付かなくて、思考の外側が凍りついたように固まってしまっているのだけど、お陰で余計な思考が切り離された。




恐らく、憂うべきことなのだろう。

京ちゃんが消えた背景に何か特別な力が関わっているのではという妄想が、実際にあり得るのだと分かった。

あるのだと知ってしまうと、それが原因であるとしか思えないほどの力。

京ちゃんはただの失踪ではないのだ。

362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/28(日) 02:06:50.44 ID:e3+bmI0u0
>>360
くぎゅとかもっとギャラ高そうなやつはいると思うけどなぁ……
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 02:11:58.41 ID:lzoNbycto


存在が無くなり、名前は消え、誰も彼もの記憶から削除される。


常の事象ではない。


だからこそ、私は一度諦めた。


そう、普通なら諦めざるを得ないような異様な状況を作り出せる力。

364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 02:23:40.12 ID:lzoNbycto


その力の関わりを手繰る糸が途切れてしまった。

憂うべきだろう。

ただ、やはり実感として乏しい。

受け入れられても、感情の域にまではまだ達しない。


それに──
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 02:35:35.06 ID:lzoNbycto


「──現状、ということは、オカルトが原因である可能性は消えていない、ということ?」

「うん」


お姉ちゃんは頷く。


「オカルトは、枠というものが無いから。私でも、『異質』のモノは分からない」


オカルトであっても、人の力。

分かることしか分からないし、出来ることしか出来ない。
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 02:37:03.69 ID:lzoNbycto



「ただ、『異質』のオカルトっていうのは珍しい。私のオカルトの『質』から外れているということは、人の領域から外れている可能性も高い」



「万が一、それが原因であるなら──解決は、難しいかもしれない」


367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 02:47:14.48 ID:lzoNbycto


人の領域の外であるなら。



お姉ちゃんはこともなげに言うが、私にはもう、話が想像の出来ない域に達しつつあった。

なんとなく、途方も無い規模であるように思う。

もはや、推測すら曖昧だ。

ただ、思ったのは。


「お姉ちゃん、慣れてるんだね」

「慣れてる?」

368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 02:53:11.60 ID:lzoNbycto


「うん、なんというか、そのオカルトの対応について」


お姉ちゃんはミルクレープをつつきながら、少し考える。


「……能力のせい、かな」

「能力の?」

「昔は強い何か……今思えばオカルトだったんだろうけど、そうしたものに遭遇した時に、能力が制御出来ないことがあった」



「私は、その度に。知ってきたから」

369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 02:57:55.16 ID:lzoNbycto



「……そっか」


異能の代償、というものだろうか。



怪力を得た人が、異形に絶望するように。

名探偵が、人の死に直面するように。

心を読める人が、心を閉ざすように。



「うん」


お姉ちゃんは、いつもの通り静かに頷く。

370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/28(日) 03:09:43.88 ID:lzoNbycto


お姉ちゃんが紅茶のおかわりを頼んだ後、私に聞いてきた。


「咲。この『須賀京太郎』くんのこと、他の人に話してもいいかな」

「え?」


困惑しつつも、頷く。


「ええと、良いけど」


お姉ちゃんなら変な相手に話すことはないだろうし、そういった心配はない。

むしろ、そのような話をして、お姉ちゃんが変に思われないだろうか、と少々心配になる。

無関係の人に話すには、あまりにも信じがたい話だろう。

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