「『須賀京太郎』とは、あなたのそうぞう上の存在に過ぎないのではないでしょうか」

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563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/06/26(日) 03:05:06.05 ID:6tQxwIWDo














──その夜、電話があった。





──お姉ちゃんからの電話だった。





──言いたいことがたくさんあって、何から伝えるべきかを迷っている間に、お姉ちゃんが言った。



564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/06/26(日) 03:05:47.75 ID:6tQxwIWDo






「咲。明日は、空いてる?」





「詳細は、来てから。とにかく、来て欲しい」



565 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/06/26(日) 03:06:37.39 ID:6tQxwIWDo









「──鹿児島、霧島へ」







566 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/06/26(日) 03:19:29.11 ID:6tQxwIWDo
皆お待ちかね、永水女子のお時間です

というわけで以後、ラストまで書き溜めまする
現状は生存報告代わりにショート投下2票なんでショート投下予定
本編速度には全く影響ないですが、待ちの内に印象が変わるようなシナリオもあったりなかったりなんで念のため
567 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/26(日) 03:28:18.83 ID:4KOrT6pE0

やっぱり永水の人達かー
568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/26(日) 03:35:43.91 ID:KTQVtfeJo
乙!
こういう系だとまず裏にいるのは永水になるよね
京太郎がいるはずなのに〜違和感で東亰ザナドゥ思い出した
569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/26(日) 09:06:51.63 ID:9VcPn1keo
困った時の永水頼み
570 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/26(日) 09:16:27.20 ID:UoyLXJ5G0
よかった…迷い家に囚われたり妖怪ぽぽぽに連れ去られたわけじゃなかったのね
571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/26(日) 10:14:38.31 ID:nqUvK2bmo
乙 やっぱりお前らかい!
咲ssで起こる怪現象の9割ぐらいに鹿児島が関わってねーか!?
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/26(日) 10:31:44.97 ID:vmYyVITs0
乙。
まあ麻雀の牌が偏るとかそんなレベルじゃないガチのオカルト現象っぽいしね。
鹿児島の面々は、麻雀でオカルトを起こせる人々じゃなくてホンマモンのオカルト世界の住人がたまたま麻雀やってる、て感じだし。
573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/26(日) 10:38:10.91 ID:onaVX+kL0
永水の中でも大抵は霞さんが黒幕
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/26(日) 11:59:07.40 ID:1JqVLNHAO
>>571
来てくれって言ってるだけでまだ永水のせいって決まったわけじゃないから
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/26(日) 13:09:19.28 ID:TlihaX1WO
超常現象の永水と金の龍門渕は二大便利高校だからしょうがないね
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/26(日) 20:44:10.06 ID:40KI92bAO
乙です

今まではみんなが覚えてないことへの戸惑いに手一杯だったけど、落ち着くと、じゃあ京ちゃん何処だよと
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/27(月) 00:33:04.62 ID:7RrZ1KYR0
京の字・・・・・・!!
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/27(月) 02:11:32.40 ID:p3Nh6D2Vo
乙!ショートの方も楽しみにしてる

ちょっと前まで言ってること支離滅裂なホラー的印象だったけど
今回の両親の悲しむ場面の方がグッとくるものがあった…
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/27(月) 16:16:15.25 ID:cXHxF0xpO
超常現象って意味だと宮守も大概だけどな
580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/27(月) 18:12:27.36 ID:R2xBETxA0
オカルトの永水、資金の龍門渕、ガチホラーの宮守、泣き顔もかわいいのクロチャー
581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/27(月) 20:33:24.97 ID:yiPweYBSO
>580
心理だな
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/27(月) 20:34:47.45 ID:yiPweYBSO
>>580
真理だな

誤字と間違え
583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/28(火) 00:50:46.44 ID:BiNRIOD7o
>>580
ええやん・・・
584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/29(水) 13:04:47.37 ID:RRi8JT5k0
ムダヅモ無き改革
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/02(土) 00:51:28.89 ID:JEeKr9jXo
異論なさ気なので生存報告はショート投下で行います
現状は4〜5回くらいを予定、難航したらそれ以上の可能性もありますが

ちなみに対象は安価、というかこのレスより下10くらい迄で名前が挙がった中から内部的な順位付けで決定
条件はSS内で出てきたキャラ、もしくはインハイ終了時点で繋がりがありそうなキャラ、その繋がりのありそうなキャラの周辺のキャラ、このSS内でいう『オカルト』の強いキャラ
繋がりの「ありそう」なキャラの場合はその理由もあると採択の可能性が高まるかもしれませぬ

キーパーソンが選ばれない可能性もありますが、選ばれなくても結末に影響しませんし、むしろ選ばれないほうが良かったという可能性もあります

なのでまあ、気分でお好きに挙げて下さい、あくまでもおまけなので
生存報告までに、誰も挙がらなければ……ちょっと怖いことになるかもしれませんが、まあ           
586 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/02(土) 00:56:57.59 ID:ddBXMWQ30
霞さん
587 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/02(土) 01:01:35.13 ID:Foe+myiC0
はっちゃん
588 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/02(土) 01:08:26.87 ID:FeemAijco
589 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/02(土) 01:09:28.37 ID:FeemAijco
あ、すまん条件ちゃんと読んでなかった。菫は無視してくれ
590 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/02(土) 01:12:09.89 ID:vr/t8jflo
591 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/02(土) 01:15:18.91 ID:gjXp4SKxO
592 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/02(土) 01:20:33.57 ID:WyRytfNho
穏乃

繋がりとしては和経由で
593 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/02(土) 01:50:21.59 ID:ru64G8Iu0


理由は好きだから。 というのは置いといて、はぎよしとの繋がりで面識はまず確実にありそうな中で最もオカルトが強い子だからね
永水組と同じくらい、元々がオカルト世界の住人って雰囲気があるし
594 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2016/07/02(土) 02:05:32.22 ID:hiGvMAUjO
霞さん
595 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/02(土) 02:19:53.73 ID:qUcI93L8o
シロ

個人戦に出場してるかもしれないし、マヨヒガってのが今回の京太郎が消えた現象と似てるので
596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/02(土) 12:16:00.75 ID:92xVUxGfO
モモ
意図的に認識しようとしたら確認できるが、意識しないと気づけない能力は現在の京太郎とだいぶ似てる気がする
597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/02(土) 12:35:12.66 ID:+3pLPPdoO
小さいけど一番頼りになるはっちゃんで
598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/09(土) 23:48:07.15 ID:yN40qoNH0
不遇?
599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/10(日) 20:53:22.73 ID:DIlkg2zgo
生存報告が本物の生存報告感

一応5人かな、選択理由はSS後に希望あったら貼る感じで
というかホント結構挙げてくれたのでビビった
600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/10(日) 20:59:24.74 ID:DIlkg2zgo
《4》


悪石島に顔を出そうか、と考えていた時、彼女が来ました。



ヒチゲーでもないのに、ボゼの神様がいつもと違う気がしたのです。

今の頃でボゼの神様に関係のありそうなものといえば、悪石島でもうすぐ行われる盆踊りでしょうか。

ただ、例年は人の為すままに任せ、今までは盆踊りの時期だからといってこのような感覚を抱くことなどありませんでした。

何か、今年は特別なことでもあるのでしょうか。



現地なら、なにか分かるかも知れませんけど。



そう思いながらも、島に行くかどうかを迷っていたのには理由がありました。

実は、その感覚は今さっきのものではなく、ここ数日続いていたのですが、同時期に姫様も違和感を抱いていたようなのです。

姫様は対話型の巫女ではなく、だからこそ姫様が抱かれた違和感というものがとても大きく取り沙汰され、昨日までは本家内がてんやわんやとしていました。

そんなてんやわんやも今日には収まり、落ち着いてみるとそういえば、とボゼの神様の違和感を思い出しました。

しかし始まりから数日経っていて、今でも忘れる程度の微弱さということ。

そして姫様の件で様々に調べても、何ら問題が見つからなかったという結果を既に知っていたので、正直島にわざわざ行くほどのことだろうか、と迷っていたのです。






そんな時、彼女が来ました。

601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/10(日) 21:02:45.26 ID:DIlkg2zgo

「あら、いらっしゃいですよー」

「おじゃまします。……久しぶり?」

「いや、インターハイで会ってるじゃないですか」



──彼女、宮永 照。



「いや、なんだか、ここで会ったから」


ああ、そういうことか。


「確かに、ウチで会うのは久し振りですねー。また何か見えたんですか?」


宮永さん……いや、今はこれだとややこしいんですね。

宮永照さんは、私達がとある意図で参加している麻雀の高校生全国大会の強豪で、麻雀仲間としての繋がりがあります。

しかし、それ以上に関係深いのが、神代の『本業』との繋がり。

ここ最近は、本家には顔を見せていなかったですが。
602 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/10(日) 21:10:16.83 ID:DIlkg2zgo


「違う……けど、同じような感じ」

「姫様と霞ちゃんに話は通してますかー?」

「石戸さんに連絡したから、大丈夫」


じゃあ、と敷地の中を勝手知ったるとばかりに進んでいきます。

その背を見送りつつ、私は宮永さんが来ることを知らなかったですが、と思ったところでそもそも霞ちゃん達と昨日から会っていないことに気づきます。

普段は姫様から離れるということはあまりないのですが、流石に人手が不足して、年長者の私がメッセンジャーとして神境を行ったり来たりしていましたから。

人手不足は珍しいですが、数日間全国四方八方に手を伸ばしていたら当たり前というものでしょう。

姫様の感覚はそれほどに重要なのですよ。

今回ほど大規模なのは、結構珍しいですけど。






まあ、とにかく。



くるりと踵を返して、ててて、と宮永照さんを追いかけます。

とりあえず、皆に挨拶して行きましょう。



島に顔を出すかどうか決めるのは、それからでも遅くないでしょうから。



                                                                                                             《4-薄墨初美》
603 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/10(日) 21:14:01.13 ID:DIlkg2zgo
皆様、体調管理には十分お気をつけて
自分は無事、死にそうです

ではまた
604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/10(日) 21:45:12.84 ID:vWpMB0js0
605 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/10(日) 23:43:59.72 ID:mfAX9Rd40
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/11(月) 00:28:05.59 ID:rgZ4S/Fy0

生きるんだ
607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/11(月) 02:26:06.47 ID:uO8LuuZ60
生きろ
そなたは美しい
608 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/17(日) 22:29:08.29 ID:euUHTToHo

君死ニタマフ事ナカレ
609 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/22(金) 01:56:46.29 ID:CA8tU/R00
お大事にな
610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/23(土) 02:28:16.49 ID:O/sXnRqx0

お大事に
611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/22(月) 17:13:23.77 ID:CB7r+Z/AO
保守
612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/27(土) 01:14:00.66 ID:js9+oq6wo
《3》


「シロはここ最近、あまり悩まないね」


熊倉先生に言われ、顔を上げる。


「そういえばそうだね、なんか最近少ない気がする」

「そーいえば」


塞と胡桃も言う。




そうだろうか、と思い返す。

でも、面倒くさいから思い返すのはやめよう。


「そうなんだ?」


聞くと、


「言われてみればそーかも?」

「ソーカモ!」


豊音とエイスリンも言う。

皆が言うならば、そうなのだろう。


「……その様子だと、何か意図があってとかでは無いんだね?」

「まあ、別に」

「考えてみると、ここ最近のシロって大きな手とかあまりなかったよね」


塞がなんだか考え始める。


「迷う機会が無かっただけじゃないの?」


胡桃が言う。

613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/27(土) 01:24:23.87 ID:js9+oq6wo

迷う機会とは、なんだか変な言葉だ。

でも、ああ、なんだか身に覚えがある気がしてくる。


「あーでも、ちょっと迷う時はあった」

「へー、そーなんだー?」


豊音が言う横で、エイスリンは画板を抱え込んでいる。

そこに描かれていたのは、道を彷徨く私の絵。


「でもー、ちょっとで終わっちゃったんだー?」

「そんな感じ」


何やら考えていた塞が、首を傾げる。


「え、なんで? 面倒くさくなったとか?」

「んー」


なんでだったか。

面倒くさくなった、というのは自分で言うのも何だが一番ありそうな話ではあるのだが、そうではないような気がする。

元々、迷うのは結構だるいのだ。

迷い始めたところで辞めるのも結構だるい。

なので、『面倒くさい』が理由で迷うのを辞めたというのは無いと思う。



むしろ。



思い出してくる。

そうだ、迷うのを辞めたのは、なんというか。




迷った行き先がない感覚。





「……いや、違うか」

「?」

614 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/27(土) 01:36:13.97 ID:js9+oq6wo


行き先が無いと言うか、なんというか、行く前に店が満席であるのを知る感じ。

迷いかけた所で、他に選択肢が無ければ迷うことはない。

考える余地も必要もない。

ダルくない。



ここ最近は、ずっとそんな感覚だった。



「まとまった?」

「あー……」


でも、これを伝えるのはダルい。


「シロ。もしかして、迷ヒ家が慌ただしいとか、そんな感じかい?」


熊倉先生が普通に聞いてきて、頷く。

いつもながら、全てを知っているような人だ。

お陰で、面倒が少なくてありがたい。


「そうかい」


先生は、一人納得したらしい。


「ええと、それで、シロは大丈夫なんですか?」


塞が少し心配そうに聞く。


「ああ、大丈夫さ。迷ヒ家が使えないってだけで、特に影響はないよ。何にせよ、すぐに元に戻るだろうさ」


何か確信をもった声。

それに、皆は安堵する。


しかし私は、その後に小さく呟かれた言葉を聞く。


「そう、何にせよ、すぐに」


その言葉は、多分、ここではないところに向けられていた。


615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/27(土) 01:38:22.89 ID:js9+oq6wo


なんだろうか、と思ったところで、胡桃がもう一度打とうと言う。

この場所にいられるのも、もう残り数ヶ月。

何がなくともこの部室に集まる中でも、胡桃は特に熱心だ。



熱心なのは、良いことだ。

しかし、朝から打っていて、今はご飯を食べた後。

そろそろダルい。



私は、席に座ったままずりずりと離脱を試みるが、椅子の動きは途中で止まる。

首を仰向けて後ろを見ると、にっこりと笑ったエイスリンが椅子の背をつかんでいた。


「ヤロ?」


はー、やれやれ。






                                                                                                             《3-小瀬川白望》
616 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 02:27:55.41 ID:JpcYV7gN0
迷ヒ家に迷い込もうとしたら先客がいて入れない……?
K「はいってまーす」
いやいやいやいや
617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 09:55:23.20 ID:2Gh5SMzx0
面白い
618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 12:08:40.14 ID:vd5sXAyI0
え、京ちゃん迷ヒ家にいるの? ていうか行けるものなの?
619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 15:25:55.08 ID:gpMmdVY20
満席とか慌ただしいのあたりから
迷ヒ家に色んな次元の京ちゃんがわらわらいるのを想像してしまった
620 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 22:16:26.68 ID:Y1fn6YLDO
来てたか乙
待ってるから無理しないで
621 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 09:58:00.92 ID:HUt4o1ye0
乙!!
622 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 23:09:08.87 ID:cj33J5dH0
>>618
行けるものなの? って、そもそものマヨヒガというものを何だと思っているのか
623 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/31(水) 08:45:57.17 ID:WEZrZb8a0
何か怖いな
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/02(金) 21:08:09.27 ID:E/dilvWRo
乙 期待
625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/11(日) 14:14:54.25 ID:f/XeK7IQ0
ショート投下とかやってるSSでろくに完結させたのあったっけか?
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/12(月) 04:42:00.63 ID:P27pkyoso
まだかな
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/15(木) 08:12:40.00 ID:MZvQqStkO
【名前】 秋田 美羽 あきたみう
【性別】 女
【容姿】 長身だが胸はそんなにない
【性格】 常に余裕ぶっており超然としている
【学年】 2年
【高校】 清澄
【特記】観察力が強く相手の考えを予測できる
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 04:01:55.50 ID:Anpj8V/0o
《2》


これは、どう考えるべきだろうか。

宮永さんから聞いた話を、再度頭の中で整理する。



なんでも、妹さんの友達の男性(……彼氏さん?)が居なくなった、という話だ。

しかも、失踪ではなく消失に近いソレは、言ってしまえば「普通ではない」事象だった。

普通であれば、発言者の妄言・妄想や、精神的な病を疑うほどのものだろうと思う。

でも、「普通ではない」ものこそが、私達の領域。

話を聞くに、この話は私達の領域の話か、もしくはそれに近いものであると思う。

けれど、私が悩んでいるのは、そのことではなかった。




時期が、あまりにも符合している──そのことを、どう考えるべきだろう。




629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 04:03:32.16 ID:Anpj8V/0o


今、神代の家はかなり慌ただしい。

ようやく落ち着いてきたとはいえ、昨日まで初美ちゃん達までも駆り出して、色々と情報をやり取りしていたのだ。

全国津々浦々、大事小事を様々に、有識者無識者別け隔てなく。

繋がりを最大限に駆使して、異変の有無を確認していた。

その原因は、小蒔ちゃん──神代の姫様の違和感。

630 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 04:08:00.86 ID:Anpj8V/0o


小蒔ちゃんは、憑依型の巫女だ。

その能力は何処までも強く、高天原の神々をその身に宿しても些細な悪影響すらない。

しかし憑依型は、一体化することで神の力を限りなく純粋に引き出すことを可能とする代わりに、一体化する故に身に宿す神との対話の機会を持たない。

小蒔ちゃんが神の「所作」を知ろうとすれば、他の神職者と同じように儀式を執り行うか、そうした能力を持つ者に助けてもらわなければならないでしょう。




その小蒔ちゃんが。

その日、朝起きて、ぼんやりとしながらこう漏らした。




「……皆さん、何をそんなに慌てているのでしょう」


              ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
起こしに来た、 私しか居ない寝室で。

631 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 04:12:29.77 ID:Anpj8V/0o

その後、どうなったかは言うまでもない。

相談役の様な立ち位置に居る祖母が飛んできたように現れて、姫様の言葉を聞くに、



「私の体を借りようとして、それに意味が無いと気づき離れていった。そんな感じがしました」


「その時に感じたのは、喪失と填補。──まるで、弔いのような」



そう、言った。



喪失と填補。

失い、それを埋め合わせる。



そのあまり穏やかではない単語と、小蒔ちゃんの体を使っても意味が無いという状況に、霧島の専門家たちはそれぞれの分野ですぐさま行動した。

神降ろし、神託、占い。様々なものを試みたが、どれも異常はないとの結果だった。

でも、安心はできない。

それらは全て、神に答えを問うものだから。
632 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 04:15:08.38 ID:Anpj8V/0o


人と神は、存在の次元が異なる。

その為、神々の問題であっても人の問題ではないこと、人にとっては問題であっても神々にとっては問題ではないことがあったりする。

神と神の間ですら、隔絶が多々あるのだから、当然といえば当然かもしれない。

また、人にとっての要不要を神々が確実に把握しているとは言い難く、神々が人とは無関係と告げずにいた物事が後に大事となることも過去にあった。



だから、祖母は即座に情報を広めた。

今度は人に、答えを問うために。

霧島──神代は、全国に太い情報網を持つ。

政にも深く関わりがあるから、直接的に繋がりがなくとも様々な分野・場所へとその手は届く。

つまり、広がる先は、全国のほぼ全てと言っていい。

633 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 04:17:16.10 ID:Anpj8V/0o

そんな想像も絶する数の場所へと、その日の内に情報は伝わり、考察され、早いとその日の内に結果が帰ってくる。


考察の内容は中継点である程度絞られてくるのだけど、それでもその量は膨大だ。

早急の事態である可能性もあるため、専門家でチームが組まれ、時には神々の御力を借りてそれを処理する。

私も、その一人だった。



そしてようやく、戻ってきた情報の殆どを処理したのが、今朝方の話。

寝て、起きたのがちょっと前のこと。

半ば寝ぼけながら、人と会うことを思い出したのは先ほどのこと。

そして今、その眠気は吹き飛んでいる。

634 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 04:18:42.46 ID:Anpj8V/0o


昨日、恐らく夜分に、宮永さんから連絡があったことは覚えている。

宮永さんは、高校麻雀では小蒔ちゃんと共に【牌に愛された子】と称される女の子の一人だ。

私たちに言わせると、【神に愛された子】の一人。

その力は強く、中でも『本質を見抜く力』の潜在能力は神の力にも匹敵する。

麻雀の関係者は、私達を高校麻雀のインターハイで知り合った仲だと思っているようだけど、実は彼女が中学生の時にはもう既に関わりがあった。

麻雀ではなく、神代の本業としての関わりが。

だからこそ、私達は彼女の能力についてよく知っていた。

その彼女から、連絡があった。

635 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 04:20:00.48 ID:Anpj8V/0o


その時には、小蒔ちゃんのことと何か関係があるのではないか、と思ったのだ。

だから、詳しく話が聞きたいと交通手段を手配し、来てもらった。


でも、眠りから覚めた時にはその考えも霧散していた。

全国から集められた情報、戻ってきたそれらの考察が全て処理し終わっていたためだ。



結果は、正常。



災害の起きる予兆などは皆無で、少なくともこの世界での異変は起きていない。

所々、同じように神々がざわついているところなどがあるようだけど、現世への影響は確認されなかった。


様々な視野から、数多の論点をそれぞれに考察しての結論。

なら、正常なのでしょう。

そう考えた。


今回は小蒔ちゃんが神と感情を交わしたという異常があったために大事になったけど、元々内容自体は注意・警告といったものではなかったのだから、おかしな結論でもない。
636 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 04:21:18.99 ID:Anpj8V/0o

だから、あまり関係のない事象だろうと思ったのだ。

思い返してみれば、男の子が一人居なくなったというあまりにも局地的な事象。

仮に神隠しだとしても、今回の考察の中には神隠しがあったという報告はなく、長野方面の情報にも怪しいところは見当たらなかった。

ということは、姫様のこととは無関係だろう。


そう思った。





でも、話を聞いて、考える。



637 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 04:30:21.72 ID:Anpj8V/0o



三日前なのだ。


小蒔ちゃんが、神と感情を交わしたのは。





   ・ ・ ・ ・ ・    ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・    ・ ・ ・ ・ ・
 『須賀京太郎 』 という少年が消えた三日前と、同じなのだ。



638 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 04:32:15.61 ID:Anpj8V/0o


これは、偶然なのだろうか。



消失した少年。

喪失と補填。



偶然と言うには、出来すぎている。

しかし、それを必然と言うことは、難しい。

一つ、確実に言えることがあるから。




神は、人の喪失に無関心だ。



小蒔ちゃんですら、その喪失に悼んでは貰えないだろう。

薄情や冷酷なのではなく、そういう存在なのだ。

もちろん例外はあるが、極々稀と言っていい。

だから、少年の消失と、喪失には関係がないはずだ。

少年が一人、居なくなった所で神々にはなんら意味のないことなのだから。

639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 04:34:05.83 ID:Anpj8V/0o



「──わかりました、調べさせていただきます」



ようやく発した声に、宮永さんは頭を下げる。

頭のなかで段取りを描きながら、考える。

時期が同じなのは、なんら必然性のない、偶々のことだったのだろう。



おそらく、偶然だ。


偶然なのだろう。




しかし───





───偶然では、ないとしたら?




                                                                                                             《2-石戸霞》
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 04:45:29.66 ID:Anpj8V/0o
ひと月くらいかけて、先ほどようやく積んでいたARIAを読み終わり、読み終えてなんか息苦しくなった勢いで投稿。
……今日も仕事なのにこんな時間まで何やってんだろう

641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 06:44:00.81 ID:Q6UpB1jvO
おつ。
続きがたのしみ
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 08:37:12.81 ID:zutnQpxko
おつおつ
643 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 10:42:27.13 ID:OYWS1nnyO

続きが楽しみだ
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 12:28:40.90 ID:0VM38tfSO
なんだ黒幕じゃなかったのか
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/25(日) 14:45:02.48 ID:cWM+JUf80
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/10(月) 01:11:19.26 ID:m/plMtn50
続き来てた

よく考えられてて面白い
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/16(日) 16:32:40.41 ID:Rckz5nLho
>……今日も仕事なのにこんな時間まで何やってんだろう
それ以上考えてはいけない
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 00:52:02.89 ID:ZmbPTUWfo
待ってます
649 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 17:08:41.04 ID:8VM26ETPo
待ってんだよ おう 待ってんだよ
ARIA読んで苦しくなるなら待ってる人のレス読んで苦しくなろう?
650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/30(日) 21:59:06.38 ID:8/GcywODo
申し訳ない、自分も今日予定だったのだけど今仕事から帰ってちょっと限界っす。
起きたら投下します。
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/30(日) 22:11:24.99 ID:pBYz5HX/o
ねんねんころーりよ おねむりよー
652 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/31(月) 08:25:06.04 ID:TnCKc997o
普通に寝てしまった……
夜投下
653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/31(月) 08:34:02.30 ID:Uzf5nHJRo
待ってる
654 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/31(月) 17:01:55.93 ID:CcYd2dr9o
655 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/11/01(火) 03:41:17.98 ID:5AP3Lph3o
あかん、考えがまとまらん。
明日?今日?超えればしっかり睡眠取れるんで、水曜に透華にします。
656 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/01(火) 21:18:46.56 ID:zwzk1Znao
そうか、もんぶちのしわざか!(おやすみなさーい)
657 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/02(水) 10:01:16.48 ID:gEUTVgULo
待ってます
658 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/02(水) 23:34:23.91 ID:mI+Zg/sJo
《1》


龍門渕家の別館。

窓際に椅子を寄せ、空を見上げる。

今宵の月は白が際立つ。

いや、ここ最近はずっとそうだ。

これは己が心の中の投射なのであろうか。

659 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/02(水) 23:35:58.01 ID:mI+Zg/sJo


輓近、妙なざわつきを感じている。

それは夜に僅かに強くなり、朝にはもう忘れているようなものである。

夜に強くなる理由は分かっている。


月。


予てから己が友であった、空浮かぶ半身。

その存在が、昼間には感じるまでもない予兆もしくは余波を感じさせるほどの過敏さを齎している。

しかし、その齎される感覚が、如何なるものであるかを知る術がない。


如何にせん。

そう思いつつ、虚空に向かい呼びかける。


「ハギヨシ」

「はい」


先ほどまで一人であった部屋に、背の高い影が現れる。


ハギヨシ。

龍門渕家に仕える執事。

そのハギヨシに、一言、問おうとして、


「……そろそろ寝る」

「かしこまりました」


結局、言えずに終わる。

ハギヨシが居なくなるのを横目に見て、再び空の月を見る。

ざわつきの一因に、ハギヨシがあった。



ハギヨシは、衣の知る限り唯一の『完璧』の体現者である。

言われるを熟し、言われざるを熟し、欠けたるは無く十分、時に十二分に満たす。

人間的な、内面の話は分からないが、少なくとも衣の知る限り、寸分の隙間なくハギヨシは執事であった。

衣が龍門渕家に来た時には、既にハギヨシは透華の執事だったが、それから6年の間、ハギヨシが失態というものを犯した所を見たことがない。

当時齢13の少年である。

それが、失態を犯さないだけではなく、人とはこれ程のものであるかと衣に思わせる活躍をしていたのだ。

それでいて、疎まれず、恨まれず、かといって大いに好む者は無く、被加問わず嫉妬や羨望とは無縁である。

色々な面での『強者』は数多く見てきたが、これほどに個として完成し、また完結している者は、少なくとも衣は見たことがなかった。

660 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/02(水) 23:37:47.74 ID:mI+Zg/sJo


その完璧さがざわつきの一因となったのは、一昨日のことである。


昼食後、食器が片付けられたと思ったら、卓の上にはお菓子が並んでいた。

ケーキはカップケーキに始まりシフォンケーキやチーズケーキ等数種類、マカロン、ばうむくーへんやなにやらクリームを挟んだクッキー等。

シンプル故に、その味を視覚にまで訴えかけるようなそれらが、数多広げられている。

正に千紫万紅の光景であった。


「これは?」

「女性が好むような洋菓子を作りたい、と相談を受けまして。恐れながら、ご意見をお伺いしたいのです」


珍しい、と思いながらも手前にあった一口大の丸いパンの様なものを口に入れてみる。

もちもちとした食感に、中に詰まっている小豆とクリームが頬を緩ませる。


ハギヨシは、料理だけでなくお菓子も一級品だ。

それは知っていたことだが、ここまで豊富な量を見たのは初めてだった。


「お気に召されましたか」

「……気を使わせたか?」

「出過ぎた真似かとも思いましたが、度々難しいお顔をされていましたもので」


妙な落ち着きの無さを感じていたことを、悟られていたらしい。



東京から帰ってきてからだろうか、何か違和感を感じているのだ。

しかし、それが何か分からず、鬱屈とした気分を抱えていた。

ハギヨシのお陰で、今はその気分も何処かへと行ってしまっているが。


「相談を受けたというのも、名分か」


プリンの入ったシュークリームを頬張る。

661 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/02(水) 23:39:55.09 ID:mI+Zg/sJo


「いえ、そちらも本当にございます」

「歩か?」


細長いクレープを手に取る。

齧ると、薄く切ったバナナやいちごなどがクリームと一緒に包まれていた。



お菓子を作りたい、と教えを請うハギヨシの知人など、歩しか思い浮かばない。

透華の気まぐれもあり得るが、そうであればこうも回りくどいことはしないだろう。


しかし、と卓上を見渡す。

これは福徳円満。

流石ハギヨシ、どれも並ではない。

単純な造りであるというのに、何故こうも飛び抜けて美味しいのか。


「いえ、歩ではありません」


カップケーキへと手を伸ばす。


「では、誰に?」

662 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/11/02(水) 23:41:15.99 ID:mI+Zg/sJo


その瞬間。

何故か、ハギヨシは目を見開き、固まった。



そのようなハギヨシの反応は初めてで、手を伸ばしたままハギヨシを凝視してしまった。

衣の視線を感じてか、ハギヨシは──これも珍しいことだが──照れたように微笑む。


「……いえ、気のせいだったかもしれません」


気の所為。

何が?


「約束が、か?」

「はい」


カップケーキを口に運びながら、呆然としてしまう。

ハギヨシが、約束していたことを錯覚する。

そんなことがあり得るのか。


「……珍しいな、ハギヨシが思い違いなど」

「お恥ずかしい限りです」

「どこだ?」

「……」

「少し気になるだけだ」


言い訳になると考えて、詳細を伏せようとしているのだろう。

しかし、やはり震天動地だ。

カップケーキを噛みしめる。

ヌガーが薄く混ぜ込まれたそれは、甘く舌に溶ける。


ハギヨシは、約束事となれば銘肌鏤骨の男である。

約束を忘れることも、していない約束をしていると錯覚することも、俄には信じがたい。

例えそれが真実だとしても、そこには何か外部的な理由があるのではないか──そう、思いたかった。

ハギヨシは、少し躊躇った後、言う。

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