「『須賀京太郎』とは、あなたのそうぞう上の存在に過ぎないのではないでしょうか」

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70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 01:15:42.78 ID:HgY52dfyo



その彼が、京ちゃんが。





まるで居ないものを語るかのように、同じ麻雀部員の仲間から名を呼ばれている。





物珍しそうに、聞き覚えがまるでないように。







71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 01:19:22.83 ID:HgY52dfyo







「……」


自分の部屋の天井をじっと見つめる。

何度も何かを考えようとして、そのたびに何も考えられないことに気がついて、ただただ天井を見つめる。

胸元で意味もなく合わせた両の指先が絡まり、離れ、押し付けあう。



ぷかりと、ふと気がついたように、一つ感情が浮かぶ。



今日は、悪いことをしてしまったな。


72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 01:26:36.43 ID:HgY52dfyo

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「どうじゃ?咲。落ち着いたか?」

「……はい、すみませんでした」


騒がしさから離れた空き教室。

今日の、祝勝会の準備の為に開けてもらっていたらしいそこに、私は染谷先輩と向き合って座っていた。

染谷先輩の横には、心配そうな顔をした和ちゃんと優希ちゃんが私の顔を覗き込んでいる。

部長は会場で先ほどの私の奇行を執り成してくれているらしい。
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 01:27:29.02 ID:HgY52dfyo


そう、奇行。


染谷先輩と、和ちゃんの言葉を聞いて、私は少しパニックになってしまった。

麻雀部の部員だけでなく、周囲で見ていた皆に、京ちゃんのことを知っているかと聞いて回る。

その様子が、自分でも分かるくらい必死過ぎて、誰も彼もを困惑させた。


そこには自分のクラスメイトが居て、知ってる人と知らない人が居て、京ちゃんと仲の良い友達が居て──
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/01(日) 08:11:53.10 ID:yKo1hhfIo
>>1までそうぞう上の存在になってしまったか
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/01(日) 08:51:23.68 ID:ikeDbI5jo
乙です
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/01(日) 21:19:35.89 ID:pwkZZQI00
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/02(月) 08:04:52.20 ID:sPDV2DNJO
乙!
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/03(火) 19:20:36.55 ID:elEcM0hz0
乙や
楽しみ
79 :ガチ寝落ちしてその後余裕なくてPC触れなかったし!ゴメンだし! ちょい急ぎ投稿なんでミスあるかも [saga]:2015/11/04(水) 11:59:45.44 ID:hlpsUJTTo


「……」


部長の計らいはありがたい。

あのままだと、もしかしたら夏休みが明けたらクラスから浮いてしまっていたかもしれない。

そう冷静に部長に感謝を抱く自分は頭の隅の方に確かにいる。


                     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
しかし、冷静になってなおそれどころではない衝撃が今も頭を揺らしている。



何故。

どうして。

疑問ばかりが頭のなかをぐるぐる廻る。

80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:00:35.84 ID:hlpsUJTTo


生徒、先生、商店街の人たち。

その誰一人として、京ちゃんのことを知っている人は居なかった。



麻雀部の1年生4人で買いに行ったコロッケ屋のおばさんも、一緒に食べに行ったラーメン屋のおじさんも。

京ちゃんのクラスを受け持っている先生も、何度か部長命令で一緒に手伝いに行ったことのある生徒議会の人たちも、一緒に馬鹿みたいなことをやっていた友達も。



誰一人として。

81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:02:20.32 ID:hlpsUJTTo


「……本当に、知らないんですよね──」


絞りだすようにして発した言葉は、かすれていた。


「──京ちゃんのこと」


私の言葉に、和ちゃんは私をじっと見て、優希ちゃんは俯く。

染谷先輩は一瞬顔を背けて、私の目を見て、躊躇うように言う。


「……ああ、知らん」


そこには、私に悟られまいとしているけれど、隠し切れない困惑があった。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:04:17.69 ID:hlpsUJTTo


染谷先輩だけではない。

和ちゃんは私を心配したように見つめている。

優希ちゃんも、先ほどのはしゃぎ様が嘘のように、俯いて時折私の様子を上目遣いに伺っている。




皆、私と同じだった。


私と同じように、異常性を感じている。





私は、皆に。




皆は、私に。


83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:05:31.02 ID:hlpsUJTTo


根本の部分が異なってしまっているような。

一人の人間の存在を通じて、まるで世界が隔てられているような。





そして、先ほど。

分かってしまった。









私は、ただ一人異物だった。


84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:06:47.30 ID:hlpsUJTTo


「須賀、京太郎、か」


染谷先輩が呟く。

それは、まさに初めて聞いた言葉の語感を確かめるようで、お腹の奥がきゅうとなる。


「……咲さん」


和ちゃんが、落ち着いた声で言う。


「咲さんは、その、本当に……」


和ちゃんの言葉が詰まる。

それでも、聞きたいことは分かる。


分かるけれど、答えたくなかった。


場が沈黙する。
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:07:48.48 ID:hlpsUJTTo


コンコンコン、とノックがされたのはその時だ。


「どう? 咲の様子は」


少し空いたドアの隙間から、部長が顔をひょこりと覗かせる。

そして場の空気に気づいたのか、肩を竦めた。


「まあ、こうだろうとは思ったけど」


教室へと足を踏み入れ、染谷先輩の横に立つ。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:08:52.44 ID:hlpsUJTTo


「主役は抜けちゃったけど、祝勝会は続けてもらってるわ。せっかく準備してもらったしね」


ああ、そうだった。

せっかく準備してもらったのに。


冷静な部分が思う。

思うけれど、冷静でない部分はそんなこと、と思ってしまう。


手のひらが痛いことに気がついて、手を開く。

くっきりと爪の跡がついていた。

87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:11:26.11 ID:hlpsUJTTo


と、その開いた手にペラリと一枚の紙が差し出される。

顔を上げる。


「見たほうが早いと思って」


部長がひらひらと紙を揺らす。

紙を受け取って、それが何かすぐに気づく。



『麻雀部員一覧』



注意書きを見るに、生徒議会が管理している部活動のメンバー表らしい。





そこにある名前は───


88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:17:11.38 ID:hlpsUJTTo






   3年
   ・竹井久
   2年
   ・染谷まこ
   1年
               
   ・原村和
   ・片岡優希
   ・宮永咲




89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:18:35.16 ID:hlpsUJTTo




分かっていた。

分かっていたけれど、実際に目にして、紙を持つ手が震えた。



「──須賀京太郎という部員は、いない」



部長の言葉は静かだ。




「そして、私──私たちは、須賀京太郎という子を知らない」

90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:19:07.72 ID:hlpsUJTTo


私は、手で顔を覆う。


「……なんで──」


手のひらを、目に押し付ける。

それでこの夢が覚めるのではないか。

夢ならば、覚めてくれないだろうか。




夢であってはくれないだろうか。

91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:20:20.79 ID:hlpsUJTTo


ぽんと、肩に何かが乗っかる。

その後、部長の声がした。


「……ごめんなさいね、もしかしたら酷なことをしたのかもしれない」

「でも、ここははっきりとさせたほうが良いと思ったの。……きっと、咲のためにも」


私は、顔を上げられない。

声は聞こえているけれど、反応をする器官が麻痺したようだった。

そんな私を気にしてなのか気にせずなのか、部長は私の肩から手を離す。
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:21:06.11 ID:hlpsUJTTo


「今日のところは帰りなさい、話し合うにしてもちょっと日が悪いし。疲れているにも関わらず来てもらってありがとうね」


耳の先で部長の声が聞こえた。

続けて和ちゃんと優希ちゃんにも声をかける。


「和と優希は咲を送ってあげてくれないかしら。その後戻ってくるにしろ帰るにしろ、連絡を頂戴。まこはこっちを手伝って」


こんな時でも、部長は部長らしい。

いや、こんな時だからこそだろうか。


和ちゃんと優希ちゃん支えられるようにして立ち上がりながら、ぼんやりとそう思った。

93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:22:02.55 ID:hlpsUJTTo




優希ちゃんと和ちゃんに付き添われ、家に着き、二人の心配を背に受けながら家に入る。


部屋に入り、入り口にかばんを落として、低い丸テーブル前の座布団にぼふりと腰を落とす。


丸テーブルに残る黒いシミを理由もなく指先で擦る。


94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:27:11.08 ID:hlpsUJTTo


この机は冬にはこたつにもなる優れものだ。

ただ、ギリギリ2人用といったところなので、もう一人体の大きい人が入ると机の下はぎゅうぎゅうになる。


冬に京ちゃんが来るとそれはもう激しい戦いが、用語の意味ではなく文字通りの机下で繰り広げられたものだ。

足が乗っかり乗っかられ、絡まり、色んな所を蹴り合って、たまに変なプロレス技をかけられる。

二人が──というより私が──疲れてきたり、机の上で何かを食べたりするときには、大体は真ん中で区切ったり、京ちゃんの足の上に私の足を乗せることで落ち着くけれど。

95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:27:56.41 ID:hlpsUJTTo



指先で擦るシミを見る。

これはなんのシミだったか。

鍋をつついた時に出来たものだっけ。いや、クリスマス祝いとか言ってケーキを食べたときだったかもしれない。



そのまま体を倒して、ごろりと寝転ぶ。

天井が見えて、何かを考えようとして。

96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:30:03.06 ID:hlpsUJTTo

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何も考えられずに、今に至る。



そうだ、と思った。

せっかく準備してもらった祝勝会を抜けてきたのだった。

それどころか一時的に中断させるようなことまでして、部活の皆を巻き込んでしまった。





部活の皆を。





一人居ないはずの、皆。

そう思っているのは私だけ。
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:31:21.43 ID:hlpsUJTTo


今日の会話を思い返す。

他人事のように改めてみると、まるで似ている別の世界に迷い込んでしまった物語の会話みたいだ。



──もしかして、本当に別世界に迷い込んだのかも。



そんなオカルトじゃないんですから、と親友の声を幻聴する。



くすりと笑う。

これは余裕が出てきたのだろうか、それとも現実逃避をしているだけだろうか。

98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:33:50.01 ID:hlpsUJTTo


首を反らして、飾ってあるカピパラのぬいぐるみを見る。



───ねえ、まだやるの?

───もうちょっとなんだって。

───あ。

───おっしゃ! ほら、カピそっくりだろこれ!

───可愛いけどさー……買ったほうが安かったんじゃないのかなー。

───ばかやろー、自分の手で取るのが良いんじゃねーか。ほれ。

───? なに?

───ウチにはカピがいるからな。これは咲にやる。

───……なんの為に取ったのさ。





────でもまあ、ありがとう。京ちゃん。

99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:35:16.59 ID:hlpsUJTTo


そうだ。

彼が居ないなんてありえない。

だったら、ここにあるぬいぐるみはなんなのだろう。

あの時、少ないお小遣いをかけてとって私にくれたぬいぐるみは、たしかにそこにある。

確かに、そこにあるんだ。





目を閉じる。

100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:35:52.02 ID:hlpsUJTTo



昨日は、確かに京ちゃんが居た。


そこには部長も染谷先輩も、和ちゃんも優希ちゃんも居て、皆で話しながら帰った。


京ちゃんは私の荷物を持っていて、駅に着いて、私を家に送った。


そして京ちゃんは───

101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:36:35.37 ID:hlpsUJTTo


バッと跳ね起きようとして、勢いが足りなくて後頭部をしたたかに打ちつけ、少し悶絶する。

そして、床に手を付きながら身を起こす。




そうだ、なんで思いつかなかったのだろう。



制服のママ、部屋を飛び出して、靴を履いて家を出る。
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:37:44.69 ID:hlpsUJTTo


先輩たちの会話で、まるで京ちゃんがいなくなったように錯覚していた。

そもそも、それもおかしな話だけれど、それでもこれは大きな勘違いだ。



駆けて、すぐそこにも関わらず息が上がりながら辿り着いたのは、ある一軒家の前。

外はもう夕方で、夕焼け色に辺りが染まっている。

朱色に染まったポストの上に掛けられた表札の名前は──須賀。

103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:38:42.90 ID:hlpsUJTTo


最初から、悩むよりも先に、こうすればよかったのだ。

何が起きているのかは分からない。

でも、だからこそ話すべきだった。




話そう。


話して、一緒に考えてもらうんだ。

104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:39:28.88 ID:hlpsUJTTo


インターホンを押す。

聞こえてきた声に、私は声を張り上げる。




「あの、京ちゃんいますか!」





京ちゃん──須賀京太郎、本人に。

105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:44:21.36 ID:hlpsUJTTo
ここからが本編。
まさか導入だけで今までの最長になるとは……

本編はさくさく行きたい
ではまた後日
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:47:14.29 ID:hlpsUJTTo
ちなみにモブってかぶっちゃけ須賀夫妻はオリジナルです。
それ以外にも普通に二次SSですのでオリジナル設定だらけ&オカルトだらけなのでどうぞよろしく。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/11/04(水) 12:50:48.74 ID:hlpsUJTTo
いや、導入は最初に終わってる部分だ……寝ぼけてるわ
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/04(水) 12:51:35.19 ID:Obg1fPDSO
おおう心拍数上がってきたとこで…
乙です
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/04(水) 12:54:49.32 ID:rCZWIuxwo
乙です
続ききになる
110 :sage :2015/11/04(水) 14:18:33.39 ID:wEnBd2yk0
乙ですー
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/04(水) 14:30:39.28 ID:F+GhERqzO
乙です
>>88で1年の一行目が空白なのは何かあるからなのか…
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/04(水) 16:39:20.61 ID:osDFVctyo
>>88
空白部分きっちり須賀京太郎って文字数分開いてんのな
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/04(水) 18:09:01.48 ID:FqaKTlAQo
マジかよ、細けぇな
スゲェ
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/11/04(水) 18:59:38.65 ID:zeMaPSuS0
ビミョウに関係ないけど、第一話で咲を嫁さんとからかってた
モブこと嫁田の本名は高久田誠らしいな
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/04(水) 21:28:36.42 ID:y1ngOgzk0
敦賀にしろ、風越にしろ、長野の外にしろ清澄に居る場合より麻雀の腕が上がっていそうなのがなんとも。
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/04(水) 21:45:08.68 ID:FqaKTlAQo
>>115
いきなりどうした?そんで敦賀が既に長野県外な件
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/04(水) 22:49:33.32 ID:GvnBDzGyo
これは生まれてないパターン
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/06(金) 21:27:55.24 ID:xW1QBM6QO
>>114
リッツちょっと細かすぎませんかねぇ…?
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/07(土) 00:29:11.71 ID:WuPVEzRE0
こんな連載終了まで使わないような設定考えてるせいで
連載が滞ってるという
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/07(土) 21:51:50.27 ID:Ffb+sTZEo
嫁田嫁田うるせぇよ。咲ちゃんを京太郎の嫁なんかにする気はねぇと
リッツが無言で抗議するために設定した可能性が微レ存…?
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/07(土) 22:19:29.43 ID:wKtTuIMco
なぜそんな解釈になるのか考えが異次元過ぎてさっぱり理解ができない
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/10(火) 22:58:04.93 ID:wKTIAR4F0
異次元とかそんなんじゃなくて、ただのバカなんだろ
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/15(日) 23:27:20.90 ID:i7N1NEDKo
ある程度まとまってから投下と書いた分を投下できる時に投下はどっちが良いんだろう

速度的にはあまり変わらないと思われ
誤差レベルで前者のほうがミス減少、後者のほうが進行速度上昇効果かな
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/16(月) 00:04:29.83 ID:T57G5xn9o
話破綻するようなミス起きないなら後者じゃね
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/20(金) 00:13:56.49 ID:8dmqsYp4O
まだかな
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/29(日) 23:58:10.01 ID:ZFRLUvawo






「あら、咲ちゃん?」





インターホンから発されるのは、聞き慣れた優しげな女性の声。

しかしそのゆったりとした応答が今はもどかしい。


「あのっ」

「今丁度暇してたのよ、どうぞ上がっていって」


私の声を聴く前に、パタパタと足音が聞こえてくる。


127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/30(月) 00:00:19.24 ID:6LOow//vo



ああ、もう。



こういう人なのだ。

インターホンも切らずに遠ざかる足音を聞きながら、諦めてドアが開くのを待つ。




ガチャリと、ドアが開く。

その向こうから顔を出したのは、若く綺麗な女性。


「いらっしゃい。なんだか久しぶりね、高校生になってからあまりウチに来ることが無かったから」


綺麗なセミロングの金髪と肩に掛けたカーディガンを揺らして、微笑む。


「インターハイに行く前に会ってるじゃないですか」

「あの時は挨拶だけだったもの」




彼女は、京ちゃんのお母さん──須賀京香さん。






小さい頃から私やお姉ちゃんのことを知る、近所のお姉さんだ。

128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/30(月) 00:01:55.26 ID:6LOow//vo


「ちょうど今朝にマカロンを焼いたの、ココナツの。今も好きかしら」


ココナツのマカロンは昔から好きだ。

京香さんの作る、間にクリームを挟んだ方も美味しいのだけど、私はあのカリッとした方が好きだった。


でも、来たのはそのためじゃない。

129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/30(月) 00:03:50.25 ID:6LOow//vo



「あの、京ちゃん居ますか?」




そう、わたしはその為に来たんだ。





京ちゃんに、今起きていることを話さなければいけない。


なんで今日来なかったのか、今の状況を知っているのか。


130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/30(月) 00:04:49.32 ID:6LOow//vo




先生が、クラスメイトが。



部長が、染谷先輩が、優希ちゃんが、和ちゃんが。



誰も、京ちゃんのことを覚えていないということを。



131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/30(月) 00:06:06.51 ID:6LOow//vo



もしかして。


京ちゃんが、私のことを知らなかったらどうしよう。


京ちゃんまでが、私を一人異端者にするかもしれない。





須賀京太郎を、皆が知らないように。



皆を、私を須賀京太郎が知らなかったら。

132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/30(月) 00:07:10.97 ID:6LOow//vo





そうだったら。そうだとしても。




不安だったけれど、京ちゃんに会って確かめないといけない。



133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/30(月) 00:10:19.73 ID:6LOow//vo








───





───……。







……………… 私は、そんな。


134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/30(月) 00:13:50.07 ID:6LOow//vo









       ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
そんな、他愛のないことを考えた。




135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/30(月) 00:15:05.52 ID:6LOow//vo




考えて、考えて、考えなければ。




私は、考えていなければ。






考えていなければ、考えてしまうから。


136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/30(月) 00:18:23.91 ID:6LOow//vo




  ・ ・ ・ ・ ・ ・
 考えてしまう。




 だって、見えてしまったから。








京ちゃんと言ったときの。


京ちゃんと、私が言った時の。


京香さんの顔が。









まるで。


137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/30(月) 00:20:52.77 ID:6LOow//vo




「京ちゃん?」



まるで───



「どなたかしら。私のことではないのよね、私も昔は京ちゃんと呼ばれていたけど」



私は───





「……っぁ、はぁ、ぁ」



頭の中が、冷たくなる感覚。


同時に熱が頭の後ろの方に集まる。


息が吐き出せなくなった。




呼吸ってどうやるんだっけ。

138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/30(月) 00:21:47.47 ID:6LOow//vo




「咲ちゃん?」



私は、目を押しつぶすように手のひらを押し付ける。

その場に座り込んで、ただただ。







嗚咽を閉じ込めることしか出来なかった。


139 : 流石に眠すぎる……予定途中だけど寝ます [saga]:2015/11/30(月) 00:27:15.44 ID:6LOow//vo






───本当は、そうなのではないかと予感はあった。


───その予感を、直視したくなかった。


───京ちゃんの居ない世界なのではないか。


───だから、そのことを考えないようにして、希望だけを残してここに来た。








───希望だけを。



140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/30(月) 01:21:22.37 ID:IooNf0zpo
乙です
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/30(月) 07:32:00.87 ID:r3bvyRXSO
ハッピーエンドでありますように
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/30(月) 10:31:01.23 ID:jy8ulPza0

楽しみにしてるので頑張ってください
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/30(月) 10:37:21.64 ID:ACQFTXZBo
おつおつ

144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/30(月) 12:19:41.03 ID:b6hGT/D7o
乙です
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/30(月) 12:44:44.96 ID:ktOebnOHo

続きが楽しみだ
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/30(月) 12:50:15.39 ID:KSnk9VpPo
なんか佐為を思い出すな
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/01(火) 01:34:56.54 ID:DgMnGDoE0
俺はハルヒの消失思い浮かんだけど
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/01(火) 03:25:45.80 ID:fNssn7kXo
俺も消失のが近い感じ
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/01(火) 14:15:08.29 ID:pVloPvwOo

洋榎スレ思い出したが
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/01(火) 16:53:53.48 ID:nsK0+nooo
虹の見方?
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/01(火) 17:38:10.41 ID:pVloPvwOo
うn
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 14:23:19.24 ID:LB6iXSW9o




「落ち着いた?」



突然泣き出した私を支え、京香さんは時折バランスを崩しながらもリビングへと導いた。

京香さんは体が丈夫ではなく、私よりも力がない。



それでも、気遣いの一つ一つが丁寧で、献身的だった。



目の前のテーブルに置かれた、ホットミルクを眺める。

ミルクパンでゆったりと暖められたそれは、僅かなはちみつの香りを漂わせている。


「……うん、ありがとうございます」


まぶたは、まだ熱い。
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 14:24:33.69 ID:LB6iXSW9o

京香さんが、私をじっと見る。

そしてどこかのんびりと、自分のカップに入れたホットミルクに口をつける。

そうしたしぐさは、自分のためというよりも、私を安心させるためのもののように思えた。

ほう、と暖かなため息をついて、言う。


「きっかけは、きっと、私の反応なのでしょうね」

154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 14:26:54.42 ID:LB6iXSW9o

呟くような、穏やかな声。

京香さんは、人の反応に鋭い。


「……聞かせてもらっても良いかしら、『きょうちゃん』のこと」



大丈夫、落ち着いている。



「覚えて、いないんですね」

「覚えて?」



「京ちゃんは──須賀京太郎は。子供です」



「京香さんと、龍太郎さんの」


155 :用事が……誰か代行(ry   夜再開できるかな [saga]:2015/12/06(日) 14:29:40.44 ID:LB6iXSW9o


その言葉を聞いて、京香さんは目をゆっくりと見開く。

そして僅かに顔を伏せ、表情は困惑、そして悲しみへと変わりゆく。



口を開こうとして躊躇い、息を静かに吐いた。

その呼気には、少なくない痛みを感じた。
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/06(日) 15:07:03.75 ID:hiDtDoLro
とりあえず乙
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/06(日) 15:18:47.72 ID:eOX0ivIpo
乙?
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/06(日) 15:22:38.05 ID:awiyo9ESO
ゴクリ
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/06(日) 17:34:24.53 ID:FR9n5Ym3o
京ちゃん自体はいたのかな?
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/06(日) 18:01:02.58 ID:2Naznvg1o
永遠送りだと帰ってくるのに1年かかりますね。
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:23:35.36 ID:LB6iXSW9o


てちてち、と床が鳴る。

見ると、京香さんの足元に毛むくじゃらなかたまりがふんふんと鼻を寄せていた。

カピバラのカピだ。


京香さんはカピを撫でて、表情を和らげた。

カピは京香さんの足の間へと潜り込み、身を落ち着ける。

京香さんが、静かな表情で私を見た。

162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:24:25.63 ID:LB6iXSW9o



「咲ちゃんも、知っているでしょう?」


彼女は言う。





「私は、子供を産めないの」




163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:25:25.59 ID:LB6iXSW9o




「体が出産に耐えられない。そして、この体の弱さは遺伝する可能性が高いと言われている」


「生まないではなく、産めない」


「……、咲ちゃんも、知ってるでしょう?」


164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:29:13.55 ID:LB6iXSW9o






         


                                            






165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:30:10.85 ID:LB6iXSW9o




「───」



私は11桁の番号を言う。

京香さんは一瞬虚を衝かれた顔をするが、すぐにそれが何か気づいたらしい。


少しだけ逡巡した後、どうぞ、というように私の後ろを手のひらで示す。

その指先は迷いを示すように僅かに曲がっている。
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:30:54.36 ID:LB6iXSW9o


私はソファーから立ち上がって、一瞬ふらついて、駆け出す。

壁際に置いてある電話に手を延ばし、受話器を持ち上げる。

167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:32:17.08 ID:LB6iXSW9o


私は携帯電話を持っていない。

でも、だからこそ、よく掛ける電話番号は覚えている。

自分の家、お父さんの携帯電話、和ちゃんの携帯電話、優希ちゃんの携帯電話。

そして、




───番号を押す。





京ちゃんの携帯電話の番号だって。

間違えるはずがない。指先が覚えている。

168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:33:26.99 ID:LB6iXSW9o





───♪〜







ガタガタガタ、という音と、アップテンポなメロディーが聞こえた。



すぐ、真横から。

169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:34:26.36 ID:LB6iXSW9o


電話機の横に、影に隠れるようにして、見覚えのある携帯電話が震えている。



「……咲ちゃんが言った電話番号は、その携帯電話の番号」


京香さんの声は、遠くてそれほど大きな声ではないのに、よく聞こえた。


「使ってない携帯電話だから、なんで咲ちゃんが番号を知ってるのか分からないけれど──」

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