文才ないけど小説かく 7

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251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/16(土) 18:35:35.05 ID:2lqMSVb80
>>250
回答ありがとうございました。
要するに現代の夏のストーリーであれば自然と出てくるアイテムですな。
いい感じで書けそう。
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/23(土) 16:36:06.68 ID:OLsTFfHK0
【BNSK】2016年8月品評会 

お題『制汗スプレー』『日焼け止め』
※片方のみを採用、両方採用のどちらでもOK
18,000文字以内=1レス、60文字×30行=10レス以内

投稿期間:2016/08/01(金)00:00〜2016/08/14(日) 24:00
投票期間:2016/08/15(月)00:00〜2016/08/21(日)24:00
集計発表:08/22(月)

てきすとぽい開催ページhttp://text-poi.net/vote/123/summary.html

告知遅れたのと、てきとぽいのほうで別イベントと日程が被るため、一応投稿期間および投票期間のほうはずらす形で開催したいと思います
また作品投稿締め切りがお盆期間と被るため、PCのない辺境に帰省するというかたがいるかもしれませんのと(スマホ投稿もできるかもしれませんがww)
品評会参加者を広く募るという建前で作品投稿は8/1からとします

こんな感じでよろしくお願いします!
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/04(木) 03:42:27.81 ID:vuKIAuaW0
品評会投稿期間となっております!
今月14日までお忘れずに!
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/14(日) 12:28:25.30 ID:aeqpnbY/0
やっぱり毎月募集にしたのがまずかったんじゃないか?
前シリーズは14回続いたけど隔月実施だったし。
そのくらいのほうがいいんだよきっと。
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/14(日) 13:51:38.65 ID:rZzNip1Vo
締め切りギリギリ投稿ラッシュくるからへーきへーき!
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/15(月) 00:52:19.01 ID:LQUtUOuq0
こないじゃん!嘘つき!

>>254
すいませんちゃんと確認していませんでした・・・・
と思ったら一か月だったのが隔月開催になった感じだったんですね

どうしましょう隔月開催のほうがいいという方のほうが多いようでしたら次回はそうしますし
毎月でもいいよという方が多いようでしたらまた来月開催しますけど

ただ意見募ってもあんまり積極的に発言してくれる人少ないのがなあ・・・ww
なにもないようでしたら任せるよということだと受け取って私が判断して開催したいと思います


それとちょうどスレのほうで聞こうと思っていたことがありました
てきすとぽいのほうで作者名非公開という機能が実装されたようなんですが・・・・
次回開催するときに、作者非公開で開催したほうがいいのかどうかということを意見頂けたらなと思います
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/15(月) 00:57:59.34 ID:LQUtUOuq0
【BNSK】2016年8月品評会

No1 救世主(茶屋)
http://text-poi.net/vote/123/1/

No2 海が聞こえない(古川遥人)
http://text-poi.net/vote/123/2/

No3 ぼくは友達がほしい((仮))
http://text-poi.net/vote/123/3/

No4 夏のベリー(大沢愛)
http://text-poi.net/vote/123/4/


感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
毎回作品投稿数に対して投票数が少ないので、多くの方の投票をお待ちしております。
また、週末品評会では投票する作品のほかに気になった作品を挙げて頂き、同得票の際の判定基準とする方法をとっております。
ご協力ください。

投票は、本スレッドかてきすとぽいのいずれかのみでお願いします。

・本スレッドで投票する場合

 以下のテンプレートに記載し、投票してください。

 ***********************【投票用紙】***********************
 【投票】: <<タイトル>>◆XXXXXXXXXX氏
                ―感想―
       <<タイトル>>◆YYYYYYYYYY氏
                ―感想―
 気になった作品:<<タイトル>>◆ZZZZZZZZZZ氏
 ********************************************************

・てきすとぽいの場合

 「この作品が最も良いと思った」と思われる作品にのみ5の評価を、
 「投票には至らないけど、気になったor良かった」と思われる作品にのみ4の評価を行ってください。

投票、気になった作品は一作品でも複数でも構いません。

たくさんの方の投票をお待ちしています。
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/15(月) 01:02:16.58 ID:EZ73D7TqO
書こうと思ったまま忘れてたやすまん
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/15(月) 09:28:03.61 ID:KGYWZt+i0
>>256
お返事ありがとうございます。
毎月だと実質、20日くらいの間隔になりますよね。
隔月開催のてきすとぽいとの兼ね合いもありますし、公募に出す人もいるでしょうし。
品評会以外にも本スレに作品を投下する人も。
BNSKは一万字前後の長めの作品がメインなので、スケジュールがあんまりタイトになっちゃうときつい気もするという、それだけです。
主催、お世話になっています。今回もいい感じの作品が集まり、読むのが楽しみです。
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/15(月) 20:23:25.38 ID:VbXjHXGLo
隔月がちょうど良いかもね
間隔広い気もするけど、その間にまたベンキョウしたり創作意欲膨らませたりね

作者非公開は一回試しにやってみたらどうかな?
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/15(月) 20:47:53.93 ID:KGYWZt+i0
本スレに投稿すると実質、作者非公開になるんだよなぁ。
どうしても非公開がいいって人は本スレに投稿すればいいんじゃないかと。
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/16(火) 19:32:33.28 ID:ElNxRMyK0
ご意見どうもです

作者非公開については一つの懸念として
身内票とか、フォローしてる人の作品だけ読んでスレに投稿されたスルーされるんじゃないかなといったことを防げるんじゃないかなと思いまして
またそういったことからスレが荒れたりすることを防いだり、逆にもっと気軽に参加できるイベントになるんじゃないかなと
それと投稿者に対する偏見などもなくなって、純粋に作品だけを評価できるんじゃないかななんて思ったりもしたからです

まあ、もともと人の少ない場所ですからそんな心配杞憂でしょうし
仮に不正があったとしても賞金がでるわけでもないイベントだから、どうだっていいといえばどうだっていいんですがww

そういうわけで一応スレのほうでも意見を求めた次第でした(性格悪い奴だなと思われそうであんま言いたくなかった・・・

品評会開催については、このまま大きな反対意見もなさそうなら隔月という方向で進めてみようかと思います
ご意見ありがとうございました
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/16(火) 20:31:48.07 ID:ElNxRMyK0
No1 救世主(茶屋氏)
メンインブラックみたいだ!MIB好きな自分としては評価したい!
主人公MIBに召集されるといいですね
ただ、序盤のモノローグからこいつ頭のおかしいヤツなんじゃないか、っていう印象のまま、まんまそのままの最後で終わってしまったのがちょっと残念
なにか捻りが欲しいなと思いました
しかし制汗スプレーの成分なんてまったく知らないので、作中で語れるなんやかんやはホントにあるものなんでしょうか?

No2 海が聞こえない(古川遥人氏)
今回の作品で一番完成度が高かったと思いました
主人公の胸にぽっかり穴が空いたような喪失感も真に迫るように感じられました
ただ個人的にはあまりおもしろくはなかったかなあと、好みの問題でしょうが
12000文字の長い話のほとんどが主人公の惨めったらしいウジウジした感傷で構成されていて、読んでて辛いというか飽きるというか
最後ヒロインの自殺で終わるというのも安易というなんというか
あそこから突然ハッピーエンドになられてもそれそれで困るけれども

No4 夏のベリー(大沢愛氏)
氏の作品を初めて読んだ前作から打って変わってのギャグ、コメディでかなりびっくりましましたww
個人的には無臭性って言葉がでてきたなら無修正ってギャグも入れてほしかった
無修正はエロビデオだけで充分ってことだなみたいなのを(うるせえ
なんとなーく良い雰囲気というか青春を感じさせるような終わり方になっていたけど
お話的に最後はやっぱりコメデイ調というか馬鹿だなあこいつって笑わせられる終わり方をして欲しかったなあと思いました
先週だかの銀魂のコロッケ話みたいな感じ、基本的にバカなんだけど最後なんとなく納得させられてやっぱ最後はバカっていうあれ(読んでなかったらごめんネ


No3 ぼくは友達がほしい 俺
最後、時間と自分の筆力が追い付かずかなり大雑把にまとめてしまった
ラストのお父さんとのやりとりを入れるか入れまいかギリギリまで迷っていました
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/16(火) 20:34:10.37 ID:ElNxRMyK0
投票はてきすとぽいでします(集計が楽だから
それにしても今回は投票迷うなーうあーどうしようなあ

時間外でも投稿してもいいんですよ?
いまなら私の拙い感想がついてきますよ?
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/16(火) 22:20:29.76 ID:7BVHYOL60
>>262
お世話になります。
てきすとぽいの「てきすとぽい杯」がやはり隔月(偶数月)なので、できればそれとずらしたほうが良い気がします。
となると次回は9月か11月か?
迷いますね。
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/17(水) 23:41:01.81 ID:/2DTCEDm0
そうですね次回開催どうしようか悩みどころですね

個人的には9月の祝日あたり・・もしくは前後の開催でもいいかな・・・なんて考えております
11月まで飛びますと(自分の)筆が止まっちゃいそうですし、それにいきなり今年最後の品評会になってしまうからなあと
それに今月、投稿作品少なかったですから、来月こそは!と考えている方もいらっしゃるのでは?いませんか?

意見がございましたらお願いします
いっそ今回の優勝者さんに決めてもらおうかな
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/19(金) 19:07:29.48 ID:R/j3ir620
お題が「制汗スプレー」「日焼け止め」ということは気になる異性への思いを仲介するアイテムとして用いられるのが定型だろうと思う。
定型通りに仕上げるのか、全く異なるアプローチをするのか。見どころはそこだと思い、4作を読ませて頂いた。

No1 救世主(茶屋)
http://text-poi.net/vote/123/1/
2つのお題を「うちゅうじん」と戦うための武器として用いたのは面白かった。定型に堕すことを拒む姿勢は買える。ただ字数制限1万8千字でわずか2千字というのはどうだろうか。少ない字数の中に凝縮して、という物語ではない。おかげでいろいろな部分の表現不足が際立つ結果になった。そもそも何で「私」は「うちゅうじん」と戦っているのか?組織の命令なのか義憤に駆られてなのか個人的な思いなのか。そのあたりがまるっきり示されていない。バトルアニメの途中の回だけを見せられた気分だ。途中で出てくる「彼」も唐突過ぎてラスト部分も、はあそうですか、としか思えない。おそらくこれは漫画なら何とか成立するだろう。主人公の表情や衣服、街の佇まいで背景を暗示したように思わせられなくもない。だがこれは小説だ。暗示というより単に書かれていない。読み返すと、感動的なはずのラストすらありがち感を催させた。最後に、この話だと別に制汗スプレーや日焼け止めでなくても、キンチョールやガスボンベでも構わないことになってしまう。そのあたりがほんの少し残念だった。

No2 海が聞こえない(古川遥人)
http://text-poi.net/vote/123/2/
タイトルからして氷室冴子原作のジブリアニメのパロディだ。制汗スプレーの香りが年上の従姉と結び付けられた、定型通りの設定だ。制汗スプレーの香りが初出箇所ではフローラルなのにプールではグレープフルーツ、というのは意味があるのかどうか。兄と主人公の関係の設定は味があった。3枚だけのチケット部分は特に良い。ただこの作品の致命的な欠点はほとんどを説明で済ませているところだ。兄の性格を「極度の負けず嫌い、繊細」などと説明するよりは、それが表れたエピソードをきちんと書いた方が伝わる。両親の兄偏重も、説明されるとどんどん白けてしまう。言われたことしか理解できない読み手を想定しているのだろうか。それは自らの表現を狭めることにしかならないと思うが。活き活きしているのはエピソードの部分だけだった。そもそもなぜ「修一を海へ」連れて行ったのか。いじけて暗い主人公のどこにそんな魅力があるのか。アニメならそこそこイケメンに描いておけばなし崩しに受け入れられるけれど、小説だとやはりきつい。

No3 ぼくは友達がほしい((仮))
http://text-poi.net/vote/123/3/
某アニメのタイトルのもじりだろうか。ポケモンGOが出てくる以上、現代のお話だろう。現代の小学生はそこまでステーキに憧れるだろうか。むしろ焼肉の方を喜ぶけれど。主人公は夏休みの自由研究のクワガタムシ集めを山の神様に依頼した見返りに、山のゴミを一日集めることになる。ゴミ拾いに行った主人公はいつも自分をいじめるダイキが神様の使いのヌエをなぐって吹き飛ばされ、橋の縁に引っ掛かっているところに歩みより、助ける代わりに友だちになることを約束させる。制汗スプレーを顔にかけられたダイキは河原に転落し、主人公に暴言を吐く。友だちにもならない、と。主人公はヌエをダイキにけしかけ、ゴミ拾いを済ませて帰り、父の宝くじが当たった吉報に接する。結局友だちはできず、ダイキに復讐した満足感だけが残る。いかにも卑小な満足だが。山の神様がらみの部分がどうにもご都合主義的で、ヌエとの部分も意外に平板に見えた。そもそも主人公は本当に友だちが欲しいのか?貧乏ゆえの違和を痛感しているのに。その点が大いに疑問だった。

No4 夏のベリー(大沢愛)
http://text-poi.net/vote/123/4/
制汗スプレーがここまで身も蓋もなく使われるとは思わなかった。女の子に飢えた男子高生たちが彼女と抱き合ってきた同級生のシャツの匂いを嗅いで興奮する。主人公は友だちの彼女のつけていたのと同じ香りの制汗スプレーを買って帰るが、姉に見つかり、意図まで見透かされる。翌朝、そのスプレーをつけた姉に思い切り抱き締められた主人公は憑き物が落ちたように学校へと向かう。この種のバカ話は語り手を常識人にして周囲のバカっぷりを批評させるのがパターンだが、それだとご都合主義が先走って作品世界は尻すぼみになる。この作品の場合、周囲の男子もヘンタイだが主人公もそれ以上におかしい。主人公を道化にして突っ切るのはかなり苦しいが、最後まで押し通したのは見事。主人公の一人称語りの割には周囲の状況も示されていて、ちりばめられたエピソードもなかなかだった。明らかなミスが一カ所あるけれど、姉のキャラクターといい、ラストはさまざまに解釈できるところといい、かなりの練達の士と見た。

***********************【投票用紙】***********************
 【投票】:<<夏のベリー>>◆大沢愛氏
 
                     
 気になった作品:<<  >>◆

 ********************************************************
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/20(土) 02:41:30.96 ID:XVNGV0fIo
 「投稿された作品を用いての教授をしたらどうなるのか」という観点で批評をしてみます。
 「別にそんなこと必要ない」「エンタメを書くために書き下ろしたのだ」とおっしゃる方には、意味のない感想かと思います。お目汚し申し訳ありません。
 若干辛口です。

No1 救世主(茶屋)
http://text-poi.net/vote/123/1/
 「テーマ」は、「信じてた人から受ける裏切り。そのおかげでより自分の信念で行動できる」
 クライマックスは64行目「違う、これは……」
 変わったことは「主人公の『うちゅうじん退治』に対する気持ちの持ちよう」である。
 変わったことによって、「主人公はさらに『うじゅうじん退治』を行うであろう」である。
 変わった理由は、「信じてた彼が『うちゅうじん』の仲間だった」である。

○裏切りを描写したいなら、クライマックスに『うちゅうじん』を含めるのはどうかと。
 『うちゅうじん』は物語のテイストであり、中核ではない。クライマックスに置いてしまっては物語がブレます。
 『うちゅうじん』を中核にしたいのなら、まずテーマを宇宙人特有な何かにしなければ、読者にすとんと落ちないのでは。
○お題の捌き方は「とりあえずぶっこんだ」という感じ。

No2 海が聞こえない(古川遥人)
http://text-poi.net/vote/123/2/
 「テーマ」は、「あの日みた彼女の姿を今でも思う。だから一歩も進むことができない」
 クライマックスは237行目「こらこら、五年ぶりの再会にどんなボケかましてんの」
 変わったことは「鳴海の肯定ではなく、『昔の鳴海の肯定』」である。
 変わったことによって、「主人公は今もなお昔の鳴海を思い続け」ている。
 変わった理由は、「今の鳴海に逢って、考え方や生き方に共感できなかったから」である。

○もしテーマが読み取った通りなら、上手に書けている作品だと思います。
 ただ、長い。そのことを書くにあたって、テーマには関係ない部分がたくさんあるような気がします。
 それを必要とするなら、(物語の書き方として)時代背景に食い込ませるか、兄との軋轢に鳴海を関わらせるか、プールでの出来事を現代に引きずるか、どちらにせよ意味のあるものにしないと「机の上の宝物=拾った石」になってしまいます。つまり、描写した文章の数々は拾った石ころで終わってしまうと思います。
○お題の捌き方はテーマに絡めて「思い出」として消化していて好感触でした。

No3 ぼくは友達がほしい((仮))
http://text-poi.net/vote/123/3/
 「テーマ」は、「気に入らない同級生に仕返しすると、何もかもうまくいく」
 クライマックスは258行目「ぼくはそれをダイキ君の顔に向かって噴射した」
 変わったことは「ダイキ君を抹消したことにより、主人公が生きやすい環境になった」である。
 変わったことによって、「主人公の学業も上手くいき、家庭も上手くいった」である。
 変わった理由は、「主人公は『神様』という超次元的な存在と慣れ親しんでおり、環境を変えるキッカケを掴むことができた」である。

○作者さんがこういう意図で作品を書いたかどうかは定かではありません。
 ですが、もしそうだとしたなら、たぶん、読み取ったもの以上でも以下でもないと思います。私にはそれ以上のものを読み取ることはできませんでした。
○お題の捌き方は「とりあえあずぶっこんだ」という感じ。

No4 夏のベリー(大沢愛)
http://text-poi.net/vote/123/4/
 「テーマ」は、「制汗スプレーのにおいを思う。それはつまるところ、スプレーのにおいをつける誰かを思う」
 クライマックスは下から10行目「そういう感じなんだろ」
 変わったことは「女の匂い=制汗スプレーのにおい。が、制汗スプレーのにおいをつける女=かわいいと思い直すこと」である。
 変わったことによって、「制汗スプレーを吹き付ける人によって、スプレーは意味を成すということがわかった」である。
 変わった理由は「制汗スプレーを吹き付けた姉に抱きしめられたことによって主人公の意識が変わった」である。

○書いていて、下から七行目>「言いたいことはわかるけれど」がわからない。
 それはたぶん、主人公に感情移入して読み込んでいたから、急に現れた姉の考えを読み取ることができなかったからだと思います。
 制汗スプレーを吹き付け、主人公(弟)を抱きしめた姉は、主人公に何を伝えたかったのか。(作者様に明確なメッセージがあるのであれば)これを受け取れる読者とそうでない読者で、評価は分かれる気がします。私は受け取れませんでした。
 わかったらよい作品と思うのかもしれません。
○お題の捌き方は「そのものについてズバリ書いた」という感じ。
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/20(土) 02:42:28.74 ID:XVNGV0fIo
***********************【投票用紙】*********************
 【投票】:No2 海が聞こえない(古川遥人)
      http://text-poi.net/vote/123/2/
      ――感想――
      物語として読むことができました。
********************************************************
――総評――
 作品を投稿するつもりでしたができませんでした。次回は参加しようと考えています。
 今回の感想は、たくさんあるうちの一つの小説(特に物語小説)の読み取り方と思ってください。(私小説や歴史小説では、こんな読み取り方をしたのでは、重要な文章も読み落としてしまうものですから)

 物語序盤と終盤の変化(クライマックス)を通してテーマを読み取らせるのが基本となっている昨今、変化自体を投げ捨て、序盤の設定を終盤で強調するいわゆる「離陸」作品はとても書きやすいと感じます。(やっぱりそうだった。だから俺は一人でいる。という結びで終わる作品など)今回では『No.2 海が聞こえない』がそうでしょうか。
 だから悪いという意味ではなく、離陸作品は往々にしてオチが光らない作品と呼ばれています。だからこそ作者の腕が光る「テーマを絡めた中盤」が良かった作品だと感じました。

 小説はすべての文章が意味を持つといいます。それは、すべての文章が「テーマ」を強調する文章になっているという意味だと思います。
 そういう意味では、『No.4 夏のベリー』は作品全体を通して物語の世界観や雰囲気を上手に作り出していると感じました。ただ、私には何を伝えたいのかわかりませんでした。

 『No.1 救世主』や『No.3 ぼくは友達がほしい』は、クライマックスは容易しているが、それによって主人公の変わったことが書きたいであろうテーマと乖離しているような気がしました。

 偉そうにすいません。どれも長文で作品を書き上げるエネルギーがすごいと思いました。作者様方、運営の方お疲れ様でした。次回を楽しみにしています。
270 :集計結果 [sage]:2016/08/22(月) 01:23:56.63 ID:yiiHmc+t0
■本スレ
投 関
    No.01 救世主(茶屋)
1    No.02 海が聞こえない(古川遥人)
    No.03 ぼくは友達がほしい((仮))
1    No.04 夏のベリー(大沢愛)


■てきすとぽい
投 関
1  5  No.01 救世主(茶屋)
4  2  No.02 海が聞こえない(古川遥人)
2  3  No.03 ぼくは友達がほしい((仮))
2  2  No.04 夏のベリー(大沢愛)


■合計
投 関
1 5  No.01 救世主(茶屋)
5 2  No.02 海が聞こえない(古川遥人)
2 3  No.03 ぼくは友達がほしい((仮))
3 2  No.04 夏のベリー(大沢愛)


集計結果でましたー
優勝はNo.02 海が聞こえない(古川遥人)です!
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/22(月) 01:26:29.52 ID:yiiHmc+t0
>>266
こちらにつきましては意見もないようですので
優勝者様に次回開催月のほうも決めていただくという形をとらせていただきます
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/23(火) 01:32:05.88 ID:2oHmAwMX0
お題と開催月告知あったよー!
【BNSK】2016年9月品評会
お題『道化』『モキュメンタリー』制限18000文字以内 
片方のみ、両方どちらでもok

日程は後日
9月末ぐらいがいいかなあ?
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/26(金) 14:56:38.24 ID:sc4F/9rD0
9月にやると3カ月連続か。さすがにきつくね?隔月なら10・12月でいいだろ。
てきすとぽい杯ってのは即興でやるもんだから別にかぶっても関係ないだろうに。
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 17:51:22.63 ID:NJNpMn5c0
【BNSK】2016年9月品評会
お題『道化』『モキュメンタリー』
※片方のみを採用、両方採用のどちらでもOK
18000文字以内
目安 18,000文字以内=1レス、60文字×30行=10レス


投稿期間:2016/09/19(月)00:00〜2016/09/25(日) 24:00
投票期間:2016/09/26(月)00:00〜2016/10/02(日)24:00
集計発表:10/03(月)

てきすとぽい開催ページ:http://text-poi.net/vote/125/

日程とぽい開催ページ作りました!
3か月連続にはなってしまいますがあまり議論するのも面倒なので奇数月の隔月開催という方針で進めていくことにしますね
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/30(火) 19:23:55.03 ID:gTpFzDu80
お題下さいな
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 19:25:20.29 ID:0uGjRQLao
イタリア
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 19:35:59.66 ID:2KPq6CygO
小生も頂きたいですな
一応二つ提示頂けると有難い
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 19:44:34.77 ID:YumjApNEo
転校
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 20:21:13.44 ID:ZcAae0nDO
コーヒー

今回のお題むずいなあ
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/09(金) 16:07:40.88 ID:Ib/VaT6kO
落ちないよね
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/09(金) 20:19:03.38 ID:YQD0Bq7x0
お題くださいなー
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/09(金) 20:19:54.69 ID:aoOU7kk5o
自分の好きな近代以前の時代の日常話
283 :イタリアン(イタリア) 1/1 [saga]:2016/09/10(土) 16:19:23.40 ID:LJqXzvuk0
「 お腹が減ったので、町が見渡せるオステリアに立ち寄った。店内へ入ると、パンや野菜のいい匂いがした。今は昼時なんだけれど、結構人だかりができていた。
 何やら天才ヴァイオリニストとやらが、店内でコンサートを開いているという。席に着くまでに、心地よい音色が聞こえてくる。可憐なドレスに身をまとった少女がガボットを弾いていた。

「何歳だと思う?」

「二十後半だなありゃ」
d  酒臭い中年がピアニストを指差して笑った。そのうち料理と一緒に酒が届いた。
 しばらくゆっくりしていると、ピアニストが換わった。伴奏者がレを三回鳴らすと、聞こえてくるのはラ・フォリア。見ると、弾き手は少年だ。随分とぼろ雑巾のような服と安っぽいヴァイオリン。

 聴けば分かる。相当な腕前だ。だが周りの人々はこう言う。

「もっとマシな格好をしろ」

「女を出せ」

「あいつあの貧乏一家の長男だってよ。いくらヴァイオリンがうまくたってなあ」

 前菜を食べ終え、私は店を出た。さあ、中学校に行こう。」


 「この小説面白いな」
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/10(土) 16:20:59.70 ID:LJqXzvuk0
すいません報告前に投稿しました。
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/09/10(土) 16:26:31.77 ID:IYp52cP30
再開なさるんですか?
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/10(土) 16:33:09.84 ID:LJqXzvuk0
これだけです
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/10(土) 16:36:26.03 ID:LJqXzvuk0
またお題下さい
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/10(土) 16:37:45.96 ID:PbabV7mPO
ローマ
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/09/10(土) 16:40:27.63 ID:IYp52cP30
海外旅行中にテロに巻き込まれる
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/10(土) 18:16:45.16 ID:ZFVsnwuM0
>>283
わけわかんなくってワロタ
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/11(日) 19:10:30.86 ID:74pv6C7xo
お題ください
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/11(日) 19:13:59.09 ID:Sb3VE6+Bo
パチンコ(ギャンブルじゃない方)
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/11(日) 19:32:25.71 ID:74pv6C7xo
ありがとうございます
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/19(月) 10:55:57.34 ID:nhdnYwj60
BNSKむちゃくちゃ。
3カ月連続の上、このくそ忙しい9月まで。
付き合いきれん。
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/19(月) 13:34:20.96 ID:RvgugXnzo
忙しいなら参加しなければいいだけだよ〜
自分で考えて行動しよう!
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/19(月) 18:18:36.65 ID:+wig7e5D0
>>294
過疎で意見を募るのも難しいですし、落としどころとしては前回優勝者に開催月を決めていただくのが妥当かなと判断しました
無茶苦茶やっていると思われてしまったのでしたら、申し訳ございませんでした
いずれにしろ品評会を開く開かぬも日程などに関しても音頭をとる人間が判断して決めないといけないので、
どうしても勝手やっていると思われる方が出てきてしますのはしょうがないと思います
それでも気に入らないというのでしたら主催のほうを変わっていただくということでも私はかまいませんが
日程などもご自身で決められますし、品評会に出品したいけど都合が悪すぎるというのでしたらアナタにとっても悪い話ではないと思いますが
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/19(月) 18:23:50.73 ID:+wig7e5D0
あ、一応
9月品評会の投稿期間はじまってますー
締め切りは25日、日曜の24:00までですー
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/19(月) 19:23:15.96 ID:eStDcVNqO
>>294 このレスの自分が出てやってる感
つーか、意見募ってたんだからそん時に言えや
後で気に入らねえからってガタガタ抜かすなクズ
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/22(木) 10:36:41.99 ID:IRlxP7dh0
なんかガラ悪くなったね
ゴタついてるの?
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 01:39:33.35 ID:BCDob0jno
どこも繁忙期だからね
イライラするんだよ
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 02:51:19.23 ID:Wl1rWx+VO
誰も投稿しないの?
一人だけ投稿は恥ずかしい
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 15:23:54.70 ID:TJhirXIlo
>>300
農繁期って読んで納得しかけたww
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/25(日) 09:59:25.83 ID:DCeg5UYL0
アイデアはあるんだけど時間がこれっぽちもないから無理かなあ
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/26(月) 00:49:17.25 ID:YlF6CL640
【BNSK】2016年9月品評会
投票期間 9/26(月)0時-10/3(月)0時

No1 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
http://text-poi.net/vote/125/1/

No2 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
http://text-poi.net/vote/125/2/

No3 タマフミ(都宮 京奈)
http://text-poi.net/vote/125/3/

No4 鯖道〜mackerel’s load〜 (スイカ(チコ))
http://text-poi.net/vote/125/4/

No5 冴えない一日(古川遥人)
http://text-poi.net/vote/125/5/

全5作品です!
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/26(月) 00:50:32.43 ID:YlF6CL640

感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
毎回作品投稿数に対して投票数が少ないので、多くの方の投票をお待ちしております。
また、週末品評会では投票する作品のほかに気になった作品を挙げて頂き、同得票の際の判定基準とする方法をとっております。
ご協力ください。

投票は、本スレッドかてきすとぽいのいずれかのみでお願いします。

・本スレッドで投票する場合

 以下のテンプレートに記載し、投票してください。

 ***********************【投票用紙】***********************
 【投票】: <<タイトル>>◆XXXXXXXXXX氏
                ―感想―
       <<タイトル>>◆YYYYYYYYYY氏
                ―感想―
 気になった作品:<<タイトル>>◆ZZZZZZZZZZ氏
 ********************************************************

・てきすとぽいの場合

 「この作品が最も良いと思った」と思われる作品にのみ5の評価を、
 「投票には至らないけど、気になったor良かった」と思われる作品にのみ4の評価を行ってください。

投票、気になった作品は一作品でも複数でも構いません。

たくさんの方の投票をお待ちしています。

忘れていた・・・
時間外でもいいんだよー
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/01(土) 00:25:05.73 ID:cQxYBjj9o
No1 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
http://text-poi.net/vote/125/1
 テーマ「道化」を真摯に書いた小説だと感じました。
先生が連れて行ってくれた店のひとつ、高尚なお店を「道化」とすると、屋台が「道化」の反対の場所。
 ……かに思えたが、やはりチェリオ(曲芸集団)に熱狂する「道化」のひとつ。
 先生を称賛している作中内において、「道化」を悪いものととらえるのであれば、その反対は「正義」なのだという話でしょうか。
 しかし、最後には、
>皆道化師なのだから何に気を使う事があるものかと叱咤して頂いたのかも知れません。
と感じています。
 主人公は「道化」にならざるを得ず、そう自分をとらえて生きてくのでしょう。
 だとすれば、先生が頑として譲らなかった「正義」の落としどころはどこへ行ったのでしょう。
 先生から「人類皆道化」を学び、それならば、「なぜその大事な場面で道化を演じなかった?」と主人公は思わなかったのでしょうか。
 それぐらいは主人公は先生のもとに訪れて一言いってやっても良いかもしれません。


No2 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
http://text-poi.net/vote/125/2/
 モキュメンタリーのドキュメンタリーとなかなか手の込んでいる構成です。
読み進めていくにつれて事態が悪化していくのが、モキュメンタリーらしさを醸し出しています。
 ホラーモキュメンタリーにおいて、撮る側が一番生存確率が高いのも、ジャンルならではといえます(テープが切れてしまいますものね)。
 そうすると、
>ルチアーノがカメラを持ち撮影班を撮影するというものだ。
という文から、ルチアーノが最終的には生き残るという物語だといえます。
 しかし、最終場面ではルチアーノを殺害するという内容が書かれます。
 日付を見てみると、2016 1(最後から二場面目)と2016(最終場面)と書かれています。
 これではどちらが先でどちらが後かはわかりません。そのことによってオチをぼかしています。
 モキュメンタリーはオチがボカされるのもよくあること。
 「モキュメンタリー」らしさをとても高いレベルで表現していると感じました。


No3 タマフミ(都宮 京奈)
http://text-poi.net/vote/125/3/
 自作。テーマは「モキュメンタリー」。
 誤字がたくさんあります。
「一行目>▽占い師女子高生ERI→▽占い女子中学生ERI
 八行目>私の鼻孔をくすぐる→揚羽の鼻孔をくすぐる
 下から六行目>気味割るなって→気味悪くなって」
 誤字がこれだけあり、文章もすんなりと読めない部分があることなどを読んでくださった方々にお詫び申し上げます。
 駆け込み投稿で推敲する時間が取れなかったので誤字満載になってしまいました。申し訳ありません。

 書きたいことは書けましたが、そう(プロット通りに)すると余計わからないものになったのが面白かったです。小説って難しいですね。
 読んでくださった方ありがとうございました。


No4 鯖道〜mackerel’s load〜 (スイカ(チコ))
http://text-poi.net/vote/125/4/
 サバのドキュメンタリー作品。
 ニシンの例もありますし、「美味だから誇り」とは短絡的なのでは。
 とはいえ、楽しく読ませてもらいました。


No5 冴えない一日(古川遥人)
http://text-poi.net/vote/125/5/
 モキュメンタリーというよりドキュメンタリー。
 登場する主人公が架空の人物(作者)と考えれば、モキュメンタリーになりえるのでしょうか。
 風俗に行って小説の着想を得て、素晴らしい作品を書くことができた。
 私小説好きな小説家が描いた小説が宗教問題、移民問題を絡めたとってもドラマチックな短編、いわゆるノンフィクション作品だったっていうのが好きです。
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/01(土) 00:26:45.57 ID:cQxYBjj9o
 ***********************【投票用紙】***********************
 【投票】:No2 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
      http://text-poi.net/vote/125/2/
                ―感想―
      「モキュメンタリー」という映像作品のジャンルを
      文章で上手に表現していました。
      また、「モキュメンタリー」という作品を
      知っている人ならではのオチが楽しめました。

 気になった作品:No1 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
      http://text-poi.net/vote/125/1
                ―感想―
       作品に時代感を持たせようとする意気込みと、
       テーマについて書こうとする真摯な姿勢がすばらしかったです。
 ********************************************************

 ――総評――
 今回はお題がとてもむずかしい。「道化」が書きやすそうだと思いましたが、それはオチが透けて見える(誰が道化なのかを探して読んでしまう)。「モキュメンタリー」はもともと映像手法のことなので文章で表現するのには限界がある。

 No.2はその難しさを巧みに表そうとしていました。なので投票。
 そして、No.3は「道化」を見事、作者自身でテーマを吟味して書き上げた。とても勉強になりました。ですから関心。

 No.5はモキュメンタリーをドキュメンタリーとして書き始めた様子がうかがえました。
 読み物としてはとても面白かったです。お題至上主義ではありませんが、お題がなければ魅力がないのも事実。
 話の流れよりも、途中のコメディがかなり好きでそればかり印象に残ってしまうのが残念。
 作品を包括して語りずらいものになってしまっています。作品としての一貫したテーマが見えませんでした。

 きっとbnskもてきすとぽいもこういうのを求めているのだなぁと感じるのはNo.4。
 パンチのある設定に、短い文章でとても読みやすい。作品全体の概要がすぐわかる。素晴らしい作品だと思います。
 投票に至らなかったのは、作品の完成度を見てみた場合少し低いと感じたからです。
 サバがどんな姿なのか、どんな様子で語っているのか、どんな匂いなのか、どんなしゃべり口調なのか、といった随所に気になる部分が書ける気がします。
 それによって、サバが本来どう思っているのか、どうしてほしいのか、そして人類と魚の共存は今後どうなっていくのかまで幅を持って読者に想像させることができます。インタビューを受けるまで、大変な目にあった、というエピソードを付け加えても後半の「でも、それはある意味誇りであって、私たちが生きていられる根底なんです」に重みを付けられますね。
 ここまで書く必要はないのかもしれません。ですが、これらがなかったので、「よくあるSFチックな短編か」と思い、流し読んでしまいました。

 総評としては、どれも素晴らしい作品だったと感じます。どの作品も3回は読めるほど読み応え抜群でした。5作といえども、随分多い作品量だと感じます。
 企画してくださった方、作品を投稿してくださった方々、そして感想・投票をしてくださった方お疲れさまでした。次回も楽しみにしています。
308 :感想 [sage]:2016/10/02(日) 23:34:48.23 ID:4cPBmF3M0
No1 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
http://text-poi.net/vote/125/1
文章といい時代背景といい内容といい、教科書に載っているようなお話だったなという感想
ふと立ち止まって周りや自分を振り返ったとき、馬鹿馬鹿しいくだらない道化だなあって改めて感じることはいつの時代でもありますよね
そうして特に自分が(主人公が)道化だったと、思い知らされたり打ちのめされたりする話はありがちな気もしますし、自分もよく書いてしまいがちな気もします
この作品に関しては無理のない程度に丁寧にまとめていると思いましたが、先生との食事2回にそのとき目にした人間模様、そして先生の辞職と全体的に薄いというか
強く印象に残ることが起きず、すこし退屈だったかなあと。田舎から都会に上京してきて、周りに圧倒されている小心者という主人公像もあいまって

No2 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
http://text-poi.net/vote/125/2/
>>ルチアーノの人格が撮影者にも侵食していくとか、
結局こういうことなのかな?ちょっとよくわかんない

No3 タマフミ(都宮 京奈)
http://text-poi.net/vote/125/3/
ホラーっぽいよくわからない終わり方だったけど・・・・最後の男?だったり男の子になったりとかそれを示唆する伏線とかはない感じだったですよね?
うん、やっぱりよくわかんねえって感じだった

No4 鯖道〜mackerel’s load〜 (スイカ(チコ))
http://text-poi.net/vote/125/4/
わかりやすくておもしろかったです、ただ短い!
もうちょっと鯖にくだらないこと喋らせてもよかったんじゃないですかね?

No5 冴えない一日(古川遥人)
http://text-poi.net/vote/125/5/
作家、古川遥人のモキュメタンリー
こういうのでよかったのかーww そのくだらなさと主人公の矮小さに笑いながら読めました
風俗行ってなんかいい感じの小説書けたよという最後はなんとも安っぽい終わりかただなって思ったけど
モキュメンタリーっぽさってこういうところなんじゃないかなとも思えたり

309 :集計 [sage]:2016/10/03(月) 00:23:24.90 ID:Sj4vNSmY0
■本スレ
投 関
  1  No.01 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
1    No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
    No.03 タマフミ(都宮 京奈)
    No.04 鯖道〜mackerel’s load〜 (スイカ(チコ))
No.05 冴えない一日(古川遥人)

■てきすとぽい
投 関
2  2  No.01 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
4 1  No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
  1  No.03 タマフミ(都宮 京奈)
1  4  No.04 鯖道〜mackerel’s load〜 (スイカ(チコ))
1 2 No.05 冴えない一日(古川遥人)

■合計
投 関
2  3  No.01 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
5 1  No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
  1  No.03 タマフミ(都宮 京奈)
1  4  No.04 鯖道〜mackerel’s load〜 (スイカ(チコ))
1 2 No.05 冴えない一日(古川遥人)

集計けっかあああああ!
【BNSK】2016年9月品評会優勝は No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋氏)です!優勝おめでとうございます!!
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/03(月) 00:24:00.85 ID:Sj4vNSmY0
ずれまくりとかマジ勘弁して・・・
311 :どうだ? [sage]:2016/10/03(月) 00:25:35.56 ID:Sj4vNSmY0
■本スレ
投 関
  1  No.01 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
1     No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
    No.03 タマフミ(都宮 京奈)
    No.04 鯖道〜mackerel’s load〜 (スイカ(チコ))
No.05 冴えない一日(古川遥人)

■てきすとぽい
投 関
2  2  No.01 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
4 1 No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
  1  No.03 タマフミ(都宮 京奈)
1  4  No.04 鯖道〜mackerel’s load〜 (スイカ(チコ))
1 2 No.05 冴えない一日(古川遥人)

■合計
投 関
2  3  No.01 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
5 1 No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
  1  No.03 タマフミ(都宮 京奈)
1  4  No.04 鯖道〜mackerel’s load〜 (スイカ(チコ))
1 2 No.05 冴えない一日(古川遥人)

集計けっかあああああ!
【BNSK】2016年9月品評会優勝は No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋氏)です!優勝おめでとうございます!!
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/03(月) 00:40:02.01 ID:Sj4vNSmY0
■本スレ
投 関
   1  No.01 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
1     No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
      No.03 タマフミ(都宮 京奈)
      No.04 鯖道〜mackerel’s load〜 (スイカ(チコ))
      No.05 冴えない一日(古川遥人)

■てきすとぽい
投 関
2  2  No.01 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
4  2  No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
   1  No.03 タマフミ(都宮 京奈)
1  4  No.04 鯖道〜mackerel’s load〜 (スイカ(チコ))
1  2  No.05 冴えない一日(古川遥人)

■合計
投 関
2  3  No.01 英雄(ヒーロー)のいない曲馬団(白取よしひと)
5  2  No.02 ルチアーノ・カヴァルカンディ(茶屋)
   1  No.03 タマフミ(都宮 京奈)
1  4  No.04 鯖道〜mackerel’s load〜 (スイカ(チコ))
1  2  No.05 冴えない一日(古川遥人)



です!!!
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/03(月) 00:49:39.82 ID:Sj4vNSmY0
すいません何度も・・・

次回品評会は11月となり今年最後の開催となります
お題発表のほうはできるだけ早めにスレにて発表はしたいと思いますが
日程のほうにつきましては開催期間もあきますので、できれば中ごろがいい等の要望がございましたらできるだけ反映したいと思います
また今年開催いたしました品評会では投稿期間1週間、投票期間1週間という日程を取っていましたが
こちらのほうも見直してくれ、という要望がございましたらできる限り応えたいと思います

よろしければ意見のほうお聞かせください
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/03(月) 18:56:36.23 ID:w0w5Ggtd0
投稿期間は告知から間取ってるからいいと思うけど
感想少ない感じもするし、投票期間2週でもいいかなあとは思うけど・・・隔月だし日程的にも問題はないよね?
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/07(金) 21:15:02.45 ID:/KI81EzW0
11月品評会のお題発表ありましたー!

「冒頭が電車に乗っている場面から始まるストーリー」
文字数制限なし

今年締めくくりに相応しい自由度の高いお題ですね
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/08(土) 13:52:32.69 ID:j6rvqzR+0
冒頭ってことは回想から始めてもいいのかな
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/12(水) 22:33:09.37 ID:IS7WG6n+0
いいんじゃないかな
回想でも電車に乗ってる場面からはじまれば

それにしても意見が全然ないねえ
11月の中頃、投稿期間にしようかなあと思いますね

>>314
こちらの投票期間についてはどうしましょうか
投票期間延ばしても感想や投票が増えるかっていったら微妙そうなところではありますが・・・
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/19(水) 22:54:58.66 ID:hPwfmmvOO
一応の保守
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/22(土) 18:05:51.15 ID:3I1SEggG0
【BNSK】2016年11月品評会

お題『冒頭が電車に乗っている場面から始まるストーリー』
※文字数等の制限はなし

投稿期間:2016/11/01(火)00:00〜2016/11/20(日) 24:00
投票期間:2016/11/21(月)00:00〜2016/11/30(水)24:00

てきすとぽい開催ページ:http://text-poi.net/vote/128/

開催ページ作成しました!
今年度ラストの品評会ですので投稿投票ともに少し期間をあけてあります!
ラスト盛り上がるといいですね!
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/30(日) 10:30:03.16 ID:hpBsHWO00
楽しみ
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/31(月) 09:53:17.86 ID:DP9LVpKY0
投稿期間無視でも投稿できるのか
もうなんでもアリだな
いっそ〆切もなしにすりゃいいだろ
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/01(火) 16:46:33.58 ID:/WZ1hs0l0
【BNSK】2016年11月品評会
投稿期間となりました!
〆切は11/20(日) 24:00までです!
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/11/02(水) 18:09:18.87 ID:NX0D/iPk0
正直〆切の意味を感じないのはある
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/14(月) 00:08:30.25 ID:hwdy7Z35o
それとは関係ないけどお題募集
お休み
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/14(月) 02:53:33.47 ID:Z9PpWpGxO
>>324
サツガイ
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/21(月) 18:16:38.55 ID:TFxIq/26O
品評会中だがお題ちょうだい
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/11/22(火) 18:28:55.25 ID:OH7zx6760
>>326
ライラック
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/24(木) 22:30:19.51 ID:1FeQ0uHU0
お題ください
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/26(土) 14:54:30.09 ID:MYMbiHPp0
>>328
週末
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/26(土) 15:00:13.81 ID:MYMbiHPp0
【BNSK】2016年11月品評会

ただいま投票期間中です!

投票期間:2016/11/21(月)00:00〜2016/11/30(水)24:00


No.1 花魁扇花−白煙千鳥の如く(白取よしひと)
http://text-poi.net/vote/128/1/

No.2 大都会デビュー( ゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.)
http://text-poi.net/vote/128/2/

No.3 とお く のものがたり(茶屋)
http://text-poi.net/vote/128/3/

No.4 夏の残像(白取よしひと)
http://text-poi.net/vote/128/4/

No.5 金色の波を渡る(大沢愛)
http://text-poi.net/vote/128/5/

No.6 たそがれの うみ。(有理数)
http://text-poi.net/vote/128/6/

全6作品です!
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/26(土) 15:00:34.67 ID:MYMbiHPp0
感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
毎回作品投稿数に対して投票数が少ないので、多くの方の投票をお待ちしております。
また、週末品評会では投票する作品のほかに気になった作品を挙げて頂き、同得票の際の判定基準とする方法をとっております。
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 ***********************【投票用紙】***********************
 【投票】: <<タイトル>>◆XXXXXXXXXX氏
                ―感想―
       <<タイトル>>◆YYYYYYYYYY氏
                ―感想―
 気になった作品:<<タイトル>>◆ZZZZZZZZZZ氏
 ********************************************************

・てきすとぽいの場合

 「この作品が最も良いと思った」と思われる作品にのみ5の評価を、
 「投票には至らないけど、気になったor良かった」と思われる作品にのみ4の評価を行ってください。

投票、気になった作品は一作品でも複数でも構いません。

たくさんの方の投票をお待ちしています。
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/30(水) 20:08:48.63 ID:g9feaQXE0
No.1 花魁扇花−白煙千鳥の如く(白取よしひと)
http://text-poi.net/vote/128/1/
台詞や地の文のあちこちに現代が透けて見えるのが興ざめ。落語の廓話的な語りが全体を重ったるくして、印象が散漫。


No.2 大都会デビュー( ゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.)
http://text-poi.net/vote/128/2/
スイカとSuicaについてはアニメ「くまみこ」に出てきた。ただこの軽妙な展開は心地良い。もうひとアイデアあれば。。。

No.3 とお く のものがたり(茶屋)
http://text-poi.net/vote/128/3/
ヤナギダイベントに引っ掛かっているうちに銀河鉄道が出て終わり。これをパロディと見るか無理やりの展開と見るか。

No.4 夏の残像(白取よしひと)
http://text-poi.net/vote/128/4/
雰囲気はある。ただ、この章分けを取っ払って通読すれば、意外にも貧相な世界しか浮かばない。喚起力がいまひとつ。

No.5 金色の波を渡る(大沢愛)
http://text-poi.net/vote/128/5/
暑苦しい。いたたまれない状況に稲をなぎ倒して迫るパトカー。リアルなのか非現実なのか。読み終わって汗をかいていた。

No.6 たそがれの うみ。(有理数)
http://text-poi.net/vote/128/6/
感情移入できるかできないかで真っ二つに割れる。世界があまり広がらないので下手すると悲傷の押しつけになってしまう。



 ***********************【投票用紙】***********************
 【投票】: <<No.5 金色の波を渡る>>◆大沢愛氏
                

 気になった作品:<<No.4 夏の残像>>◆白取よしひと氏
 ********************************************************
333 :集計結果 [sage]:2016/12/07(水) 12:15:15.44 ID:hUTFRGrR0
■本スレ
投 関
      No.01 花魁扇花−白煙千鳥の如く(白取よしひと)
      No.02 大都会デビュー( ゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.)
      No.03 とお く のものがたり(茶屋)
   1  No.04 夏の残像(白取よしひと)
1      No.05 金色の波を渡る(大沢愛)
      No.06 たそがれの うみ。(有理数)

■てきすとぽい
投 関
1  2    No.01 花魁扇花−白煙千鳥の如く(白取よしひと)
   2   No.02 大都会デビュー( ゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.)
2  2   No.03 とお く のものがたり(茶屋)
       No.04 夏の残像(白取よしひと)
1   1    No.05 金色の波を渡る(大沢愛)
1      No.06 たそがれの うみ。(有理数)





■合計
投 関
1  2    No.01 花魁扇花−白煙千鳥の如く(白取よしひと)
   2   No.02 大都会デビュー( ゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.)
2  2   No.03 とお く のものがたり(茶屋)
   1    No.04 夏の残像(白取よしひと)
2   1    No.05 金色の波を渡る(大沢愛)
1      No.06 たそがれの うみ。(有理数)
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/07(水) 12:17:04.26 ID:hUTFRGrR0
優勝はNo.03 とお く のものがたり(茶屋)です!!
おめでとうございます!!
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/07(水) 22:31:52.31 ID:87IyrB1do
おめっと
お題下さい
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/08(木) 19:34:24.24 ID:JYSXz6OQ0
>>335
パン屋
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/09(金) 11:19:31.23 ID:QWGd6zIJ0
なんかもうぐだぐだたったなBNSK。
こっちからの投票が1人だけってのが何とも言えん。
あと発表が投票締め切りの7日後って。
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/09(金) 19:35:48.76 ID:M6WM/Dcq0
ごめんねー
なかなか時間とれなくて、投稿作品に感想かくのも発表遅れてしまいました
一月の予定もどうなるか今のところまだわからないので、一旦私のほうでの開催は見送らせてもらうね
代わりに開催してくれる人いましたらそちらに任せますし、私のほうで余裕ができそうならまた開催するかもしれません
まーでもこっちに人いるのかもわからんし、あえてBNSKで開催するのも意味がないのかもしれませんが・・・
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/19(月) 00:30:46.93 ID:5DG2FiLwo
久しぶりにやってきましたが懐かしいですね
お題ください、今でも感想もらえるんでしょうか
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/19(月) 02:28:55.59 ID:6vlqfdNWO
吉兆
341 :アルバム(お題:吉兆) [sage]:2016/12/23(金) 00:20:53.03 ID:z8i+ik/So
投下しまーす。
342 :アルバム(お題:吉兆) [sage]:2016/12/23(金) 00:21:42.94 ID:z8i+ik/So
「私は昔、優也に殺されかけたことがあるわ」
 そう姉に言われた。僕はちょっとした冗談的な意味合いだと思ったが、姉は本当に殺されかけたのだと言った。
 僕は大学進学に向けての一人暮らしのために、実家の部屋を片付けていた。僕と姉のアルバムが出てきて、興味は移ろい、掃除はたやすく中断された。文庫本サイズの冊子が三冊。市販のインスタントカメラで撮った時代のもので、僕たちが小学生低学年くらいまでの写真が収められてあった。
 澄香姉ちゃんにも見せようかな、とも思ったけれど、姉は昨日の夜から高熱を出していてダウンしていた。お昼時で、なにか作って部屋に持っていこうか、とさっき姉に声をかけたのだけれど、「大丈夫だから」とひとりでリビングに行った。
 少しは良くなったのかな、と思いつつアルバムを持ってリビングに行くと、姉はご飯を食べながらテレビを見ていた。自分で作ったおかゆを食べる動作は、やはりどこかけだるげに見える。
「澄香姉ちゃん、ほんとに大丈夫?」
「うん」
 姉はあやふやにつぶやく。長い髪をまとめ上げて普段より露出している頬が赤らんでいる。大丈夫そうにはあまり見えない。
 僕は姉の向いに座って、アルバムを差し出した。
「昔のアルバムが出てきたよ。僕と澄香姉ちゃんの」
「へえ……」
 姉はスプーンを持った手を止めて、アルバムをぱらぱらとめくりだす。
「懐かしいわね。幼稚園、小学校くらいのとき? もう十年以上も昔なのね。早いというか、なんというか」
「写真の中の澄香姉ちゃんの年齢を追い越した今でも、いつまでも姉は姉なんだなって不思議に思うよ」
「どういう意味?」
「小学生の澄香姉ちゃんを一七歳の僕が見ても、年はとっくに追い越したのに姉って感じる。いつまでも永遠に追いつけない存在だなって」
「ああ、まあ確かに、中学校の時の先輩とかも、実年齢はとっくに追い越してるのに、記憶の中でいつまでも先輩でありつづけるものね」
 しばらく姉はぼんやりした目つきでページをめくっていた。そして姉は言った。
「アルバムなんて持ってくるから、昔話になっちゃうけれど……私は昔、優也に殺されかけたことがあるわ」
「それ、なんのこと?」
343 :アルバム(お題:吉兆) [sage]:2016/12/23(金) 00:23:47.26 ID:z8i+ik/So
「たしかヨーグルトを優也の分を食べてしまって、それで優也がぐずったのよ……そういえば冷蔵庫にヨーグルトあったよね、見てくれない?」
 冷蔵庫を開けた。三つ入りパックのアロエヨーグルトが卵置き場にあったので、僕はその一つを姉に渡した。姉は残りのおかゆをちびちび食べている。
「殺されかけた、って、僕なにかしたっけ。全然覚えてない」
「小学生の時だったかしら。確かその時も私、風邪引いていたんだと思う。私、風邪引いたらヨーグルト食べたくなるのかな、昔から。で、最後の一個を食べちゃって、僕も食べたかったって優也はだだこねて。風邪でしんどかったから面倒くさくって相手にもしなかったわ。そしたら、優也、私が部屋で寝てるときに首を締めにきたのよ」
 殺されかけた、という言葉が首を締める、という行為に結びついて、空恐ろしくなった。
「え、うそ。まじで僕そんなことしたの?」
「刃物持ってこられるよりましね、と思ったわ」
「いやいや、そういう問題じゃなくって……で、なに、喧嘩でもしたの?」
「ううん、静かなものだったわ。私の上にまたがってスッと首に手をかけられて、ああ、首締められるんだな、って私は呑気に思ってた覚えがある。けれど力は入れられなくって、そのまましばらくして、黙って優也出てった」
 姉はおかゆを食べ終えて、そのままスプーンでアロエヨーグルトを口にした。
「夢でも見てたんじゃないの? 熱でうなされた悪夢とか」
「さあね……そう言われればそうかもしれない。でも悪夢だろうとなんだろうと、もとよりもうずっと昔のあやふやな記憶よ。変わりはしないわ」
「僕は僕がそんな怖いことやったとは信じたくないし、そんなことをする人間だと澄香姉ちゃんには思われたくはないよ」
「そう言われてもね……私も記憶の中で、優也は首を締める優也で永遠の存在になっちゃってるから、いまさら言われても変えられないわ」
 冤罪だ、と主張しても無駄なようだった。なんともいやな記憶を呼び覚まさせてしまって、アルバムなんて安易に見せるもんじゃないな、と僕は思う。
「ま、どうであれ、優也はそれだけの存在じゃないから安心しなさい。ちゃんと可愛い面も嫌な面も私は知っているんだから……。幸い、今ならヨーグルトはまだ残っているわよ」
「じゃあ今食べてるの、一口ちょうだい」
「風邪、移すでしょう。冷蔵庫にまだあるでしょって言ってるの」
「平気だよ。僕はちょっとだけでいいんだ」
 僕は姉のヨーグルトを一口食べる。こんなことで昔は泣いていたんだな、と思うと味わい深いような気がする。
 再びアルバムをめくっていた姉が「あれ」と呟いた。
344 :アルバム(お題:吉兆) [sage]:2016/12/23(金) 00:24:30.34 ID:z8i+ik/So
 アルバムに、四葉のクローバーが挟まっている。
「澄香姉ちゃんが入れたの?」
「いいえ、知らない」
「僕も記憶にないな。お母さんとかが挟んだのかな」
「干からびていても、縁起物は縁起物ね。大学進学の門出じゃない? どうする、このアルバム。持ってく?」
「いいよ。家に置いとく。澄香姉ちゃんの風邪が早く治りますように、って願うよ」
「流れ星じゃないんだから。四つ葉のクローバーは、また違うんじゃない? 流れ星ってもっと即物的なものって気がする」
「じゃ、澄香姉ちゃんの健康祈願ってことで。養生してください」
 僕はヨーグルトを姉に返す。
 僕がこの家で姉の首を締めた、なんてまやかしだってことを今更祈ってもしょうがないけれど、そんな縁起の悪い記憶は四つ葉のクローバーと一緒に相殺しとけばいい。
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/23(金) 00:25:00.08 ID:z8i+ik/So
以上です。感想いただけたら嬉しいです。
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/25(日) 18:59:21.32 ID:D/Z65Bc7o
>>342
読みました。
うまく言えないけどなんだかもやもやした気分になりました…
きょうだいの間にある殺人未遂の過去というマテリアルが重く、口に入れたものをかんでもかんでも飲み込めないような読後感を抱きました
ふわっとした感想で申し訳ない
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/25(日) 19:04:47.62 ID:D/Z65Bc7o
お題くーださい
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/25(日) 19:25:05.34 ID:mVVKnUMUo
クレヨン
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/26(月) 14:54:03.75 ID:xT03QXqQO
>>346
感想ありがとうー
350 :家族の距離(お題:クレヨン)0/5 [sage]:2016/12/28(水) 12:07:41.51 ID:K2s4O66Qo
投下しまーす
連投規制とかないと思うけど…
351 :家族の距離(お題:クレヨン)1/5 [sage]:2016/12/28(水) 12:08:30.91 ID:K2s4O66Qo
 僕は6つ年下の妹が大嫌いだ。今年6歳になるにすぎないが、彼女にはあるひどい癖があっ
て、そのことに僕以外は誰も気づいていない。だから僕ばかりがその被害者になる。ついでに言
えば、その醜い意地汚い妹の癖に気づかない僕の両親のことも、やっぱり僕は嫌いだ。
 ある夏の夜に妹がぐずついた。「あたしのアイスがない!」
 地団駄を踏んだり大きな声で泣いたりしたので、母親が心配げに「どうしたの」「なにがあっ
たの」と妹のそばに寄った。
 母と妹はキッチンにいて、僕はリビングでテレビを見ていた。父は会社にいる時間なので、家
にいるのは三人だけだった。
 僕はなんとなく嫌な予感がしていたが、何事もなく過ぎ去るのを祈ってテレビに見入っている
ふりをした。しかし予想通り「ちょっとお兄ちゃんこっち来なさい!」と母が金きり声で呼んだ
ので、祈りはそこで尽きた。
「なに、どうしたの?」
 キッチンでは目を赤くした妹と彼女に寄り添う母が僕を待っていた。考えうる限り最低のシチ
ュエーションだった。
「どうしてあんたはそうなの? 妹にひどいことばっかりして……」
「僕が何かした?」
「サキのアイス食べちゃったでしょ、ねえ?」
 母は妹に訊く。妹はこくんと頷く。
「知らないよ。確かにアイスは食べたけど、サキのものかどうかなんかわからないじゃん」
「自分のことばっかり考えて、あんたそんなんじゃ人に嫌われるよ。社会で生きていけない大人
になるよ。思いやりってものがないの?」
 僕はアイスが誰のだとかなんとかいう小事件から、まさか人に嫌われるとまで非難されるとは
思わなかったので、ひどく頭にきた。
352 :家族の距離(お題:クレヨン)2/5 [sage]:2016/12/28(水) 12:08:59.76 ID:K2s4O66Qo
 実のところ、僕は妹がどうして突然ヒステリックに「自分のアイスを食べられた」と騒ぎ出し
たのか知っている。彼女はしばしば、突然思いついたように出来事をでっちあげて、自分を被害
者にするのだ。そうして周囲の反応を見る。今回は「自分がとっておいたアイスを兄に食べられ
た」というストーリーを作り上げて、母が自分をどんなに味方してくれるかを試したのにちがい
ない。実際僕はファミリーパックのアイスの最後の一つを食べたにすぎないし、妹がそれに名前
を書いたりして自分のものだと主張したわけでもない。
 おそらく最初は、「アイスを食べようと思ったが、予想に反してそれはもうなくなっていた」
というだけだった不満の感情が「兄に食べられた」という物語にすり替えられたのだ。
 なぜこれほど妹の心理が分かるかといえば、妹は常々こんなことを繰り返しているからだ。
「サキのアイスだとは思わなかったんだよ。気づかなかった」
 僕は爆発しそうな怒りの感情を飲み込んで、力なくそう言うしかなかった。それでも母は追い
討ちのようにすかさず言った。
「ごめんなさいは?」
 もう一度煮えくり上がってきた感情を飲み込めもせず、ひたすらな気持ちになって僕は「ごめ
んなさい」と妹に頭を下げた。
 妹は何も言わず、ぼうっとした無表情で僕と母のやりとりを眺めているだけだった。
 自室に帰って僕は布団に潜り込んで少し泣いた。僕の頭はとてもクリアで、論理的で、この事
件において何が起きているのかすべて理解しているつもりだ。けれども、ああして母に理不尽な
言葉をぶつけられると、頭とは別の部分が大きくぐらついて、気がつくと目頭が熱くなってしま
うのだった。
 なぜ母は妹の悪癖に気がつかないのだろう。僕は怒りを伴って疑問を抱いた。つまるところ、
母は僕たち子供のことをちっとも見ていないのだという気がする。彼女の目には「兄」「妹」と
いう関係だけが見えていて、本当のところは何も見ていない。妹は憎たらしくてたまらないし、
母親には怒りを覚える。毎日がその繰り返しだ。
353 :家族の距離(お題:クレヨン)3/5 [sage]:2016/12/28(水) 12:09:26.21 ID:K2s4O66Qo
 その事件からしばらくして、夏休みに家族でプールに泳ぎに行った。とても大きい施設で、流
れるプールとかウォータースライダーとかいったものが一通り揃っているところだ。
 施設の中はひどくごった返していた。空には雲ひとつなくて、太陽光が鋭くさすように肌を焼
いているような気がした。人いきれと蒸発したプールの熱気で僕は到着した時から気分が悪かっ
た。
 僕は小学校の水着を履いて、妹はピンク色の水着にピンク色の浮き輪を肌身離さず持ってい
た。父と母は売店で食べ物と飲み物を買って、パラソルの下に座っている。二人ともプールで遊
ぶ気はないらしい。ついでに言えば僕も泳ぐのは好きじゃないし、妹はほとんどプールに恐怖心
を抱いている。
 誰がプールに行こうなんて言い出したのだろう。確か父だ。彼は、子供ならプールが大好きに
ちがいないと決めつけている。さらに言えば僕が昆虫好きだと思っているし、妹がまだ絵本を読
むと思っている。実際にはそれらは数年前までの僕たちの好みだ。
 僕は不満を言いたかったが、母が僕のことを家族行事に非協力的な子供だと評価するにちがい
ないから、なにも言うことはできなかった。
 僕は妹の後をついて人ごみの中を歩いていた。妹はどのプールに入るでもなく、ピンク色の浮
き輪を腰に持ったまま、うつむきがちにてくてくとあっちへこっちへ歩く。彼女を一人放ってお
くわけにもいかないから、僕はお目付役のつもりでついていった。
 それで行き着いたのがお土産などが売っている売店だった。シュノーケルやらゴーグルやら、
あるいはキーホルダー、置物などがある。妹が関心を寄せたのがクレヨンだった。
 「〜〜プールクレヨン」という、プールの名前が冠されたもので、僕は後ろからそれを見なが
ら、なんでもあるものだと思った。
354 :家族の距離(お題:クレヨン)4/5 [sage]:2016/12/28(水) 12:09:58.81 ID:K2s4O66Qo
 妹はじっとそれを手にとって見ていた。物欲しそうに見ていた。
 するといつの間にかすぐ近くまで来ていた母がそれを後ろからとりあげて「サキちゃん、クレ
ヨンなんかもう持ってるでしょ」と言ってクレヨンを商品棚に戻して、またどこかへ歩き去って
行った。偶然近くに居ただけらしい。
 妹はもう姿も見えなくなった母の去っていった方向をじっと睨みつけた。僕は彼女の、まだ欲
しいとも何とも言っていないのに、という悔しい気持ちが手に取るようにわかった。妹はクレヨ
ンを手にとってじっと葛藤していたのにちがいない。しかし彼女の中にあった感情の揺れ動き
は、母に完全に無視されてしまった。
 ついに妹は退屈そうな表情を崩すことなく、プール施設をうろつくだけだった。父と母は良き
休日を過ごせたという表情で帰り支度を始めた。
 僕は帰り支度の途中一人トイレに向かった。けれどじっとりと湿ったトイレサンダルや、水色
のタイル張りのひんやりした床、異様にスースーする芳香剤の匂いを嗅いで、やめた。ここは最
低な場所だ。
 みんなのところへ戻る前に、僕は売店であのクレヨンを買った。九百円もした。
 帰りの車で父はラーメンを食べて帰ろうと言い、母はそれに反対して言い合いになった。僕と
妹は後部座席でそんな親二人の様子をぼうっと見ていた。
355 :家族の距離(お題:クレヨン)5/5 [sage]:2016/12/28(水) 12:10:32.60 ID:K2s4O66Qo
 僕はしばらくの間クレヨンを妹に渡せずにいた。恩着せがましくするのが嫌だったし、僕と妹
はそんな風に物をあげたりする仲じゃない。きっと妹という名の他人なのだ。母も母という名の
他人で、父も父という名の他人なのだ。僕自身この家のなかで他人だという気がする。
 結局、クレヨンを妹にやるもっともらしい理由でもあればよかったのだがそんなものはなく、
なんでもいいから手渡してやれという気になった。ただし両親にその様子を見られてはダメだ。
僕が優しい兄を演じたことを、彼らは無神経に笑うだろう。あるいは自分たちの教育が正しいの
だと満足に頷いて見せるだろう。それはたまらなく嫌だ。彼らは子供達が真剣に何かを考えたり
必死に取り組んでいたりするなんて思いもしないのだ。だから子供達はいつも軽んじられている
心地がする。それが当事者にとってどれだけ悔しいか、虚しいか、知らないのだ。
「これ、いらないからやるよ」
 と僕はいった。母が夕飯の準備をしている頃合いだった。妹はリビングに寝そべってテレビを
見ていた。妹はクレヨンに気づくとそれを手にとってお腹の下に隠した。母に見られたらまずい
とわかっているらしい。
 僕は何もなかったように妹から離れて子供部屋に戻った。
 別に妹に同情してクレヨンを買ってやったわけじゃない。母への反抗としてやったのだ。
 その後妹からはお礼もお返しもなかった。ただ僕がクレヨンの秘密を握っているためか、いつ
もの悪癖はなりを潜めたようだった。

おわり
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/28(水) 23:24:14.78 ID:3g+TyLu6o
>>355
終始主人公視点のお話でしたね
妹は妹で腹に一物を抱えてるようで明確に描写されないという、
家族のいびつな距離感を描いていて面白かったです
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/28(水) 23:44:58.72 ID:dgpZTqMiO
お題プリーズ
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/29(木) 03:06:12.63 ID:NkVrqz/so
朝焼け
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/30(金) 13:29:07.03 ID:NvJGeBb9o
このスレももっと活気が出るといいなー
創作系のコミュってどこかあるんだろうか
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/30(金) 18:04:55.93 ID:ZK4rPj01o
お題くれー
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/30(金) 21:53:03.87 ID:NvJGeBb9o
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/01(日) 13:54:49.99 ID:EVe1yNDXo
新年あけましてお題下さいおめでとうございます
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/01(日) 15:18:32.13 ID:uPEXrrTVO
抱負
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/01(日) 20:24:24.69 ID:EVe1yNDXo
把握
365 :背負うモノ ◆d9gN98TTJY [sage]:2017/01/01(日) 21:11:04.04 ID:EVe1yNDXo
それでは投下します
366 :背負うモノ 1/3 ◆d9gN98TTJY [sage]:2017/01/01(日) 21:17:23.44 ID:EVe1yNDXo
 冷えたポッキーを咥えながら彼女がそう言った。
「抱負だって言ってんだろ」
「だからよ」
 炬燵に両手を突っ込んで頭と口からのポッキーを付き出しながら
「シンプルで分かり易くて可愛いのがいいでしょ」と言った。
 そういえば蜜柑が置いてあった。
 手は自然と筆を半紙の横に置いてそれに伸びる。
 やや柔らかくなった蜜柑は酸味が抑えられて甘味が際立つ。
 無心で向いた蜜柑の一房を口に運ぼうとして、横からトドの様な動きのモノが
それを咥えて奪って行った。
 彼女である。
 せっかく可愛いというのに動きがもうトドである。
「トドみたいなのはどうかと思う」
「アザラシはトドとは違いますー」
「似たようなもんだろ」
「全然違うよ。鳴き声とか」
 そうですかっとため息をつきながら、俺は次の一房を指でつまむ。
 そしてまた奪われた。
「なにをするか」
「アザラシ」
「アザラシをしているのか」
「そうじゃなくて、抱負のをアザラシにしなよって」
 食べながらでないと提案ができないのかとか、手で持てよとか、指が濡れてるとか
言いたいことはいろいろあったが
「文字通り抱えるものだぞ、アザラシを抱えろと?」という一言を優先した。
367 :背負うモノ 2/3 ◆d9gN98TTJY [sage]:2017/01/01(日) 21:18:19.70 ID:EVe1yNDXo
 だが、優先した事が正しかったかどうかは分からない。
「可愛いからイイよね?」という、首を傾げながらの理屈の見えない問いかけに頭を
抱え、ただ
「可愛くなければ追い出しているところだ」と答えるのが精一杯だった。
 三回目にしてようやく蜜柑を口に出来て、しばし静かな時間を堪能していると、また
トド――いや、アザラシが動いた。
 腕を仕舞った頭ばかりの姿で炬燵布団を持ち上げないようにズリズリと、どういう
体勢だか炬燵の足も通り抜けて横に来ると
「うりゃ」とのたまわって右肩に頭突きを仕掛けてきた。
「なにをするか」
「アザラシ」
「アザラシをしてみたのか?」
「それもあるけど、さっさと抱負のにアザラシって書きなって」
「抱えろと仰るか」
「抱えろと申す」
 こういう意味の分からない会話で、とりとめのないままに時間が過ぎるのも好きではある。
 あるが、こうしている最中にもうりゃうりゃと頭が擦り付けられるのはさすがに困る。
「書けない」
「なんでだよ」
「意味が分からん」
「おバカさんだ、このおバカさん」
「お馬鹿さんで悪かったな」と、うりゃうりゃと追撃を繰り返す頭を腕で跳ね除けた。
368 :背負うモノ 3/3 ◆d9gN98TTJY [sage]:2017/01/01(日) 21:18:48.22 ID:EVe1yNDXo
 あまり表情が変わらないその顔の、瞳が僅かに見開かれる。
「うりゃ」
 一度だけで終わる、その軽いもたれ掛りは止めなかった。
 ただその遠慮がちな接触が、接触後の沈黙が、彼女の気持ちを伝えてくるようで
居た堪れなく感じられた。
「抱負の負が、背負うモノって意味だからって……」
 沈黙を続けていられなくて、適当に口を動かし
「負けるって文字は縁起が悪いから別の文字を考えようっていう前提でだな」
 誤魔化すように彼女の頭をグリグリと押さえつけながら言った。
「なんで、“負う”の代わりにアザラシが入ってくるんだよ!」
 彼女は俺の激しいツッコミも意に介さない様子で言った。
「アザラシの鳴き声が“オゥ”だから」
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/01(日) 21:19:21.06 ID:EVe1yNDXo
以上です

初ボケの出ができて満足です
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/02(月) 00:04:32.30 ID:0IfAcPqdo
>>369
読みました
時期的に、男女のだらっとした新年の書き初めの風景を描きたかったのだろうなと理解しました
しかし、かろうじて、です
どういう状況を書いてあるのか把握するのに苦労しました
つまり、何が書いてあるのかがわかりにくいのです

例えば書き出しでいきなり「彼女はそう言った」とありますが、何故書き出しで「そう」などという指示語がでてくるのか
そうした点含め、つっかえつっかえ読んだ感じでした
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/02(月) 00:31:38.43 ID:x/2uiOGso
あ、一行目「アザラシで良くない?」が抜けてた……
どうもです
372 :孤独の味(お題:酒)0/7 [sage]:2017/01/08(日) 16:34:41.62 ID:eqTV8GGAo
投下します
373 :孤独の味(お題:酒)1/7 [sage]:2017/01/08(日) 16:35:15.98 ID:eqTV8GGAo
 大学四年生のときに、私は彼と知り合った。
 仮に彼のことをサイトウと呼ぶことにする。
 四年のゼミの配属先が私とサイトウは同じだった。専攻が同じだったにもかかわらず、私と彼はそれまで一度
も顔を合わせたことがなかった。必修の科目でも私と彼は常に別のクラスを選び続け、一度も平行線が交わるこ
とがなかったということだ。ゆえに、最初の授業の日、少し早めにゼミの教室に入って彼を目にした時、別の専
攻の人か、留年生かと思った。
 ゼミの教室はあまり広くない。「口」の形にテーブルが並べられた、十五人程度しか収容できない小会議室の
ような部屋だった。
 部屋にはサイトウしかおらず、私はサイトウと対面する位置の席に着いた。
 講義の開始まで十分ほどあった。部屋の中は嫌に静かで、彼が読書か何かでもしてくれていればよかったが、
サイトウはぼんやりと椅子に深く座っているだけだったので、無視するということもし難かった。
 私は最初になんと声をかけただろうか。「どうも」とか「今日は寒いね」とか、そんなことだったと思う。サ
イトウはそれに答えて「僕はサイトウ。君は?」と言った。
 彼の声は見た目に反して低く響くようだった。どちらかといえば線が細く童顔だったので、そんなことを意外
に思ったのを覚えている。
 以上のようにつつがなくファーストコンタクトを終えた私たちだったが、しかしその後しばらく彼とはとくに
会話もしなかったし、仲を深めるようなことは何もなかった。四年のゼミは卒論を書くわけで、講義も毎週ある
わけではなかったのだ。月一程度の頻度で中間発表を行い、それ以外に教授に質問がある時や相談事がある場合
には、個々人が研究室を訪れたり、メールでやりとりする。中間発表の時も、私はゼミにいた他の友人と食事に
いく場合がほとんどで、サイトウとは一緒にならなかった。ゼミの飲み会に彼を誘った時もあったが、彼は参加
することが一度もなかった。ゼミの友人たちにもサイトウと深い仲を築いている人はいないように見えた。彼は
いつも静かな存在であり、彼が注目を集めることはなかった。
・・・・・
374 :孤独の味(お題:酒)2/7 [sage]:2017/01/08(日) 16:35:47.95 ID:eqTV8GGAo
 その年の夏休み私は卒論の準備が順調だったため、実家に帰ることにした。ありがちなことではあるが、一人
暮らしのうちに身につけた私の価値観と両親の価値観とにズレが生じており、ほんの三日生活を共にしただけで
険悪な雰囲気が家族の間に生まれてしまった。そういうわけで私は帰省を後悔しながら東京の下宿に戻り、する
こともないので大学で研究資料を集めることにした。
 その時偶然出会ったのがサイトウだった。彼は私と同様に下宿にとどまり(私は一度は帰ったわけだが)、図
書館に通って勉強を続けていたという。
 彼と図書館で時間を過ごし、休憩がてらに二人で自販機のコーヒーを飲みながら世間話をした。両親との喧嘩
のために孤独な気分に追いやられていた私は、たいして仲が良いわけでもない彼に遭遇したことをやけに嬉しく
思った。それから初めて彼と夕飯を共にすることになった。
 私は彼と大学近くの有名なカレー屋に行き、それから食後にどこかへ行こうという段になり彼が酒は飲めない
と判明したので、カフェでコーヒーを飲むことにした。

「今更言うのもなんだけど」サイトウはブラックコーヒーの水面を見ながら言った。「昼間図書館で会った時、
ずいぶん顔色が悪かったね」
「そうかな? まあ、確かにいい気分ではなかったけど。勉強なんか大嫌いだからね俺は」
 彼は微笑んでコーヒーを一口飲んだ。
 彼が口を閉じてしまったので一瞬沈黙が流れる。私はつい、何か話そうとして口を開いた。
「実は実家に帰って親と言い合いになってね。早く自立しないといけないと強く実感したよ」
「言い合い?」
375 :孤独の味(お題:酒)3/7 [sage]:2017/01/08(日) 16:36:23.87 ID:eqTV8GGAo
「そう。いや、ちょっとしたことでね。こっちで就活進めてたのに、今更地元に戻ってこいなんて言い出して
さ。実際、まだ本格的に動き出してないから強く言い返すこともできなかった。俺自身、なんで東京で就職した
いかと言われれば、特に理由もないんだ」
 私はそう話してからすぐ、余計なことを言ったな、と思った。しかし同時に、それほど親しい相手ではないか
らこそ、好きなだけ話したって構うものかという気になった。その日は酒の席でもないのに、私は妙に饒舌にな
っていた。
「だけど、自立したい気持ちがあり、親とのズレを感じている」
 サイトウは低く響く声で言う。私は頷いて続けて言った。
「そう。東京で働きたいという積極的な気持ちはない。けど、地元に戻りたくないという積極的な気持ちがある
わけだ。なんというか、母親と一緒にいるとあの話を思い出すんだ。『今昔物語』霊鬼についての話」
「母親が鬼になって子を食べようとする話」
「そう、それ。千年くらい前の話のくせに、よくできてるぜ。年をとった母親は子を食おうとする。手元に置い
て、ああしろこうしろって自由を奪うんだ。家にいると、自分が食われようとしてるのがわかる」
「それは怒り? 不安?」
「さあね。……まあ、どっちもだろうな。現実問題として学費を払ってもらってたり、世話してくれたのをありが
たく思う気持ちもある。だからそれを後ろ盾にされると反論もできない。それは不快な気分だよ。がんじがらめ
だ。向こうが正しい。でも、こっちは息苦しい。早く経済的に自立して、親に金を返して、独りになりたい」
 私のコーヒーは冷めていた。私自身は熱くなっていた。彼に話していると、実家にいた時の荒れた感情がむく
むくと蘇ってくるようだった。サイトウはそれを聞きながら頷き、ときに相槌を打ち、表情をほんの少しずつ変
えてみせた。
 結局その日、二時間近くカフェで話し込んでしまった。サイトウは寄るところがあると言って、カフェの前で
別れを告げ、駅とは反対方向に歩き去って行った。彼は夜の雑踏の中にあっというまに消えてしまった。
 私は独りで乗った電車の中でようやっと気がついた。彼のことは何一つわからなかったということに。一方で
私のことは何もかも話してしまったようなきがする。大学での交友関係や様々な思い出、考え方、思想、家の位
置まで。
 普段私は聞き役に回ることの方が多いというのに、奇妙な経験だった。サイトウは相当な聞き上手だ。自らの
沈黙を守る才能、そして相手から聞き出す才能、それらを隠す才能を持った男なのだ。
 その会合を境に彼への見方がすっかり変わった。
 それから私は度々彼と食事に行ったり、買い物に行ったりした。それでも彼は常にヴェールの内側に身を隠
し、何も明かすことはなかった。
・・・・・
376 :孤独の味(お題:酒)4/7 [sage]:2017/01/08(日) 16:36:49.51 ID:eqTV8GGAo
 秋が去り、冬の季節に差し掛かった頃のこと。私は結局東京で就職先を見つけ、親との軋轢を残したまま自ら
の進路を決めていた。人生を生きて行くうちに、いくつか不和を抱えることになるのは、仕方のないことだ。そ
んな悟りを開き、卒論の仕上げに集中していた。
 十二月の最後のゼミの時、私はサイトウの異変に気がついた。
 いつもポーカーフェイスで、自らを隠している彼が、すっかり弱りきって見えたのだ。
 頬はこけ、青ざめ、目は落ち窪んでいる。いつでも決して目立たない彼なのに、ゼミの皆がチラチラと彼に視
線をやり、困惑していた。そんなことにも気がつかないのか、彼は背中を丸めて全くの無表情のまま、机の上に
視線を落としていた。
 発表が始まってからも、私は彼のことばかり気にかかって上の空だった。前回の発表のあと彼と食事に行き、
それから今日まではたしかに一度も会っていない。その間に、何があったのだろう。
 卒論はほぼ全員最後のまとめに差し掛かっており、発表の中で問題が発覚した者はそこを修正しなければなら
ない。冬休み図書館が開いている期間は短いので、作業を急ぐように、と教授がゼミを締めて解散となった。
 卒論が問題なく進んでいる連中で飲みに行くかという提案があったが、私は辞退し、幽霊のように教室から消
え去ったサイトウの後を追った。
 彼はいつもエレベーターではなく階段で下に降りるので、すぐに追いつけた。
「よう。体調が悪そうだな?」
 サイトウはちらとこちらを向いて、いつも通り微笑した。
「いや、そんなことはないよ」
 確かに実際話してみるとそれほど異常をきたしている風にも思えなかったので、少し安心した。
「夕飯でも食べないか?いつものカレー屋がいいか」
「いいや、酒が飲みたい気分だ」
 私は意外に思った。彼が酒を飲むなんて。
「僕もたまには飲むんだよ、実は」
 サイトウが隠していることを明かすのを見るのは、それが初めてだったかもしれない。
377 :孤独の味(お題:酒)5/7 [sage]:2017/01/08(日) 16:37:16.56 ID:eqTV8GGAo
 私は店の選択を彼に任せ、電車に乗り、地下鉄を乗り継いで、銀座に行った。
 歌舞伎座の前を通り過ぎ、細い通りに入っていく。そんな通りにも立派な店が軒を連ね、いかにも高級そうな
服装の年寄りが行き来している。こんなところに、大学生二人で入る店があるのかと、私は不安に思った。
 サイトウは、さらに細い道に入った。路地裏のような通りだ。街灯もなく、壁にはスプレーで落書きがされて
いる。下水道の穴から白い煙が上っている。
 なぜこれほど奥まったところまで行くのか不思議だった。しかし、サイトウは文字通り隠れ家に私を連れて行
こうとしているのだろうと思った。
 戦後間もない頃に建てられたような古い建物にネオンの看板。入り口を開いたらそこは階段で、地下に続いて
いた。私は彼の後について階段を降りて行った。私はもうここがどこなのかわかっていなかった。
 木製の薄いドアを開けるとガランガランとちゃちな鈴が鳴る。
「いらっしゃいませ」
 中は薄暗いバーで、カウンターに立っている男性が声をかけた。六十歳か、それ以上の年寄りに見えた。背は
高くひょろ長い。総白髪のオールバックで、芝居に出てきそうな風格があった。
 空いていたので、私とサイトウはテーブル席に座った。同じくらい年配の女性がメニューを持ってきて、愛想
よく「ご注文がお決まりになったら」と去って行った。
「おい、なんだかスゴイ店を知ってるな。銀座のバーなんて」
「僕だって行きつけってわけじゃないよ。買いかぶられちゃ困るけど、店はここしか知らないよ」
 私はカクテルはよく分からないので、彼に任せた。
 年配のウェイトレスが私の前にモスコミュールを、サイトウの前にアイリッシュコーヒーを置いた。
 モスコミュールは透明な液体で、ライムが飾ってある。アイリッシュコーヒーは見た目はコーヒーそのものの
ように見えた。真っ黒なコーヒーと真っ白なクリームがきっぱりとした境界線を描いている。
「やっと一休みできるな。卒論はまだ残ってるけど、だいたい完成してるし、就職も決まったし……いや、ゼミの
連中はどうなんだろうな」
「ハナヤマとイケタニはまだ決まってないみたいだね」
 とサイトウは言った。私は思わず「えっ」と声を出した。それはゼミの仲間の名前だった。
378 :孤独の味(お題:酒)6/7 [sage]:2017/01/08(日) 16:37:51.72 ID:eqTV8GGAo
「あいつらと仲よかったっけ」
「いいや、仲がいいってほどじゃないけど、何度か話したことがあったからね」
 訊くと、サイトウはゼミのほぼ全員と交友があるということだった。それも、いつも一対一で話す関係を作っ
ている。しかし複数人で遊んだことは一度もないという。
「ゼミに限らない。僕は、あんまり大勢で行動するのが億劫だから、一対一で話せるときだけ誘ったり誘いを受
けたりするんだ。大学一年の頃から……いや、もっとずっと前からかもしれないけどね」
 私は彼が交友関係の少ない人間だと勝手に思い込んでいたので、少なからず驚いた。
「僕は人の話を聞くのが好きなんだ。人の表層的な部分はどうでもいいんだ。人の話にはその人の人生の一部分
が姿を現していて、それは無価値なものじゃない。それを一つ一つ聞いて、頭の中にしまっておくのは良いこと
だ。……でも本当はそうじゃないのかもしれないと、つい最近になって思い始めた」
 バーの暗い照明の下で、彼は瞳に悲しい光を宿らせていることに私は気がついた。彼は今、ヴェールの外に出
ている。
「つまりこういうことなんだ。人生には形も色もない。ただ何もせずとも時間は流れすぎていく。人々はその中
で様々な体験をする。『体験』それ自体は中立的に存在しないんだ。それは自らが綴る物語の形をとって個々人
の人生に内包される。わかるだろ? 君は君のパースペクティブでしか物事を経験できない。もちろん僕も」
 彼はアイリッシュコーヒーを飲んだ。私は続きを促した。
「人間は時間を、体験を切り取って生きているんだよ。無数の、おびただしい数の物語を書いてみんな暮らして
いる。それは、無意識のうちに行われる。その中の一部は物語と言わず『思い出』と言い換えることもできるだ
ろう。大切な思い出、辛い思い出……」
 私は、彼がもう酔ってしまったのではないかと疑った。これほど自分の考えを話すのを見るのは初めてだった
し、それは彼らしくない。彼らしい行為ではないと思った。
「話が下手ごめん。話すのは苦手なんだ。実は就職も決まってない。面接で不利だろう。話す練習をしておくん
だったよ。なんだっけ、そう、物語だ。原稿用紙を想像してみてくれ。君はある出来事についての物語を書く。
そしてファイリングする。しかし中には、ファイリングしたくないものがある。君はその原稿用紙をどうすれば
いいだろう。そうだ、丸めて、捨ててしまえば良い」
379 :孤独の味(お題:酒)7/7 [sage]:2017/01/08(日) 16:39:00.21 ID:eqTV8GGAo
 私はモスコミュールを飲む。きつい、強い口当たりだ。苦く、しかし後味を残さずに抜けていく。
「僕は思うんだよ。この僕は、丸めた原稿用紙を捨てるためのゴミ箱なんじゃないか」
「それは、違うよ」
 私は言った。しかし、言葉は彼に届く前に消滅してしまったような気がした。
「違わないかな。それは愚痴を言うのとは異なる行為なんだ。原稿用紙を放って、放ったことも忘れてしまうと
いうことが重要だ。誰も彼も僕に話したことを忘れるのさ」
 私は、親しくない者にこそ話せない話をしてしまうものだと知っている。
 よく言われることだ。同じ客船に乗って旅をした者たちが、目的地について別れた後、互いに会おうとしなく
なる。船の中でつい不用意に話したことが気まずくて、会えなくなるからだ。
 サイトウはいつも客船の上で人と出会い、話を聞く。しかし彼らは、船を降りた後で彼に会おうとは思わな
い。彼の役目はそこで終わっている。
 何かが間違っているように私には思えた。彼自身が悪いのか、それとも皆間違っているのか。
 サイトウのアイリッシュコーヒーはクリームとコーヒーの境界が崩れ、混じり合い、泥のような色に混濁して
いる。
「問題は僕の中にあるんだよ。なぜなら、こんな物語を作ったのは僕だから。……今日は話を聞いてくれてありが
とう」サイトウは言った。疲れた声音だった。「僕の話は、誰も聞いてくれなかったんだ」
 二人とも次のカクテルを注文しないで、席を立った。
 相変わらず彼は用があるからといって駅と反対に去って行った。冬の夜風はひどく寒く身体を貫いた。

owari
380 :孤独の味(お題:酒)8/7 [sage]:2017/01/08(日) 16:40:01.54 ID:eqTV8GGAo
以上です。ちょっと長いかもしれませんが読んでみてください。
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/09(月) 14:17:12.74 ID:LlhH2MeL0
お題ください
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/09(月) 15:53:06.42 ID:hCI0HmU0o
パンツ
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/11(水) 15:33:25.69 ID:QN9qM8330
>>373-379
1/7で気になったとこ
説明がくどいかな。
・サイトウと出会った時のこと。
・ファーストコンタクト後もさして親交はなかったこと。
これについてくどくど説明されてる感が強い。
「 彼の声は見た目に反して低く響くようだった。どちらかといえば線が細く童顔だったので、そんなことを意外
に思ったのを覚えている。」
ここの雰囲気は少しいい。でも文法が少し奇妙。
主人公の主観なのだから「彼の声は見た目に反して低く響いた。」
「どちらかといえば線が細く童顔だったので、意外に思った。」
に直したくなる。

3/7で気になったとこ
「それから私は度々彼と食事に行ったり、買い物に行ったりした。」
自分のこと棚にあげるけど、こういう書き方すると書き手の薄さが透ける。
逆にここの転機のシーンを一味工夫して掛けばかなりこなれた感じになると思う。

4/7で気になったとこ
「人生を生きて行くうちに」…???なんか不思議な表現だな。
いや、意味は分かるんだけどなんか気持ち悪いわ。

読み終えた。最後サイトウが一気に独白するシーンは結構面白かった。
主人公の例え話(客船の話)はサイトウにさせた方が良かったかな?
もう少し手を加えればいいショートショートになると思った。
改めてタイトルを見ると陳腐だと思った。もったいない。
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/14(土) 04:06:29.98 ID:I4M4E9Iko
>>383
丁寧に読んでくれてありがとう
全体の構成から細部までブラッシュアップできそうだ
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/20(金) 23:31:47.55 ID:BFacefv20
お題くだそーい
386 :ななしのラムネ様(お題:ななし・ラムネ) 10/9 [saga]:2017/01/21(土) 00:22:18.81 ID:SIWRtDI4o
堕天使
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/21(土) 00:23:19.78 ID:SIWRtDI4o
ずいぶん前の名前欄が残ってた、失敬
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/27(金) 06:51:34.03 ID:h+e/RVqO0
お題ください
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/27(金) 06:56:55.65 ID:aDNufYyO0
>>388
予見者の眼に映らない空谷の跫音
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/27(金) 07:21:47.56 ID:h+e/RVqO0
>>389
相分かった
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/27(金) 09:27:56.74 ID:h+e/RVqO0
あれ、書き込めない
392 :会議前(お題:予見者の眼に写らない空谷の跫音)1/3 [sage]:2017/01/27(金) 10:29:21.69 ID:h+e/RVqO0
 空谷の文字列をドラッグすると、私のAndroidスマートフォンはすぐさまサジェストを画面下部に表示した。ワンタップで検索画面に切り替わり、Googleのエンジンは考えうる最大の早さで結果を提示した。検索トップの辞書ページによると、空谷とは「人のいない寂しい谷間」のことを表し、空谷の跫音と続けることで、「孤独なときに受ける珍しくてうれしい訪問や便りのたとえ」という意味の慣用表現となるらしい。跫は一文字で足音の意であることは知っていたが、跫音として二字で熟語になることは今知った。これで昨日の自分よりかは少しは賢くなれただろうか。
 それから、「予見者の眼に写らない」という語句について考えた。
 予見者、つまり未来の物事を予め見ることが出来る者。その者の眼に写らないとなれば、一見矛盾しているように思える。
論理の世界に生きる人には腹立たしく感じられるかもしれないが、矛盾は往々にして詩的表現を生むものだ。柔軟に受け入れて考えてみよう。そうして整理してみると「予見者の眼に写らない空谷の跫音」というお題は、物語の予感を内包しているように見えなくもない。
 さて、ここで唐突ではあるが私は今小説を書こうとしていることを白状しよう。そしてこれは創作のメタ構造を無視し、読者であるあなたを想定した記述であることを先に述べておく。もっといえば、リアルタイムでこの文章を綴っている現実世界の私は、このあと勤め先の会議を控えているが、
393 :会議前(お題:予見者の眼に写らない空谷の跫音)2/3 [sage]:2017/01/27(金) 10:31:10.99 ID:h+e/RVqO0
会議場に予定時刻の二時間も前に着いてしまったために時間をもて余しているの間抜けな奴である。そして、
2ちゃんねるの創作スレッドでお題を貰って小説を書いている最中でもある。
 こういった記述は小説作法一般では禁じ手とまでは言わないにしろ、決して好ましい技法ではないことは勿論承知している。その前提の上で、私は小説の登場人物でありながら、書き手である「私」としてもあなたに問いかけながら物語を進めていくことを許してほしい。
 さて、「私」の位置付けを先に吐露してしまったのは、悪手ではないかと自問しつつも、私に残された道を考えてみようと思う。
 一つは、このまま何事もなかったかのように、劇中劇という形式で小説を書き、お題を消化するこ
と。そうした場合、モノローグで再び私が登場し、何らかの気の効いた締めの一言でも添えれば一応、小説としての体裁は整うだろう。
394 :会議前(お題:予見者の眼に写らない空谷の跫音)3/3 [sage]:2017/01/27(金) 10:33:44.96 ID:h+e/RVqO0
もう一つは、捻れたメタ構造を維持しつつ私の物語を着地させること。
 後者の解決策の抱える問題は、私が予見能力を持たない一般人であることか。
 と、ここまで書いたところであることに気がついた。「私」は小説の登場人物でありながら、物語の趨勢を左右できる作者としての「私」、つまり未来を思うがままに予見し、更には記述することあらゆる状況を産み出すことが出来る存在では
ないかということに。
 光明が見えた。
 「私」にとって空谷の跫音とは、寒空の下で会議が始まるのを一人待つ惨めな状況の中、思いがけず与えられた、「予見者の眼に写らない空谷の跫音」というお題そのものではないだろうか。ここにお題に対する私なりの解答を得た。ちょうど間もなく会議も始まろうとしている。それでは今日は、このあたりで筆を置かせてもらおうと思う。
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/27(金) 10:34:11.56 ID:h+e/RVqO0
書き込めた。終わり
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/28(土) 10:16:02.46 ID:34+rZwen0
よーし、もう一本書こうかな
お題ください
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/28(土) 10:31:08.64 ID:xEa3wVGS0
>>396

[入替]改札口
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/28(土) 20:37:29.88 ID:cuBJAWqTo
自分にもお題ください
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/28(土) 20:50:20.36 ID:ZHDMHfV0o
若さもしくは老い
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/28(土) 21:18:23.83 ID:0vHRO7Zko
僕にもください
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/28(土) 21:38:11.03 ID:ePon0Iivo
幼な妻
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 20:51:34.97 ID:CSj5WxV70
久々にお題ください
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 21:05:31.07 ID:3dYeQoywo
野望
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/03(金) 22:27:28.71 ID:VWel1SPC0
お題くださいん
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/03(金) 23:57:44.25 ID:90ooIOHuo
ビッグ
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/31(金) 23:38:25.47 ID:rgODJwar0
お題ください
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/01(土) 01:35:54.68 ID:Li35ZLOl0
書くと思うからくらはい
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/01(土) 02:08:10.89 ID:zL6yK9h+o
>>406
愚か

>>407
いたずら
409 :[sage] :2017/04/26(水) 14:04:18.96 ID:12JJI5wp0
お題ください
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/26(水) 14:07:16.79 ID:7Zp/VWcs0
正義の魔法少女vs呪怨の怨霊佐伯伽耶子
411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/26(水) 18:11:01.56 ID:12JJI5wp0
409ですが、呪怨を見たことがありません…
せっかく、お題を下さったのに、わからないので、書けそうにないので、何か他の方が出しているようなテーマみたいなお題ください。
本当に申し訳ないです…
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/26(水) 19:06:20.85 ID:bjVdUjxqO
時代遅れ
413 :タイトル:ぬくもり(お題:時代遅れ)1/6 [saga]:2017/04/28(金) 00:35:59.86 ID:eOaQ9WgS0
雨水を吸い、風に晒され、私は静かに待っていた。
人が去ったあとはなんとなく侘しいものだ。
人のあたたかな体温を数十年経過した今でも静かに待ちわびているのか。

私は、フリーランスの建築士として働いている。郊外に自宅兼事務所を構え、早十数年、経営はぼちぼちで、のんびりとした毎日を送っている。
その日は一日中、窓から見える街路樹のハナミズキをぼーっと眺めていた。時計は午後2時40分を指していた。退屈に喝を入れるため、珈琲を淹れようと椅子から立ち上がり、背伸びし、腰に手を当てながら、腰を左右に動かしていた時、電話が鳴った。依頼だった。
 依頼内容は、学生寄宿舎だったアパートを改修してほしいというものだった。
 建物は、数年前に大学のキャンパスが移転してから、借手がつかなくなってしまった3階建てのアパートで、築50年以上経過しており、老朽化が進み、借手がつかないので、改修して、再び借手を募集したいという内容であった。
 今日は、依頼主のご主人と共に、物件を下見に行くことになっていた。
 街路樹のハナミズキの植えられた通りを抜けて、更に奥に行った所にその物件はあった。
 「こんにちは。」
 建物の前に小太りの中年の男性が立っていた。
 私は軽く会釈し、名刺を渡すと、お互いに簡単な挨拶を交わした。
 建物の外観は、埃や泥が染み込み、風が色を拭い去った色褪せたブルーで、築50年ということもあり、かなり老朽化していた。
 完全に時代に取り残され、時代遅れな外観をしていた。
 今のままでは、老人はおろか、若者が家賃が安い以外の理由で住みたいと思わせる理由がなかった。
414 :タイトル:ぬくもり(お題:時代遅れ)2/6 [saga]:2017/04/28(金) 00:58:52.67 ID:eOaQ9WgS0
ふと、足元に目をやると、隅に無愛想な顔をした三毛猫が座っていた。
 「かわいい猫ちゃんですね、この猫は、ご主人の猫ですか?」
 私は屈んで、猫の首元をくすぐりながら言った。ご主人は、座っていた猫を一瞥後、
「いえ、違いますよ、ぼくの猫ではありません…おそらく、以前の飼い主の猫なのでしょう。」
 私は猫の頭を撫でながら「その…失礼ですが、以前とは…?差し支えなければ教えていただけないでしょうか。」
 猫は、目を細め気持ちよさそうに私の手に頬を擦り寄せている。
 ご主人は、吃り手をもじもじとこねくり回しながら、言いにくそうに「あの…そのー、前に管理人の婆さんが住んでいてですね。それが、5年程前に亡くなりましてね。
 おそらくその猫は、飼い主が死んだ今も家に残っているんでしょうね。猫は人よりも家につくっていうでしょ、たぶん、それでしょね。」ご主人は猫を伏し目がちに見ていた。
 逆光の影が全身を覆い、ご主人の表情は見えにくくなっていた。猫はごろごろと喉を鳴らし、手に絡みついている。
 西日が眩しい。私は、目を細めて、なんとかご主人の表情を伺おうとしたが、駄目だった。
 ご主人の表情を伺おうとするのは諦め、猫の方に顔を向けながら「へぇー、そうだったのですね。この子は自分の意思でここに残ったのでしょうね。しかし、本当に人懐っこい子ですね、相当可愛がられていたんでしょうね。」
 日が傾き、オーナーの表情は完全に見えなくなった。
 ご主人は、傾きつつある日が眩しいのか手をかざして日差しを遮った。
 ご主人の履いていた合成皮革のつっかけが僅かに私の方に向き「まあ、そんなところでしょうねぇ。立ち話もなんですし、そろそろ中を、案内しますよ。」と静かに私を促した。
 「えぇ、よろしくお願いします。」
 私は撫でていた猫から手を離し立ち上がると、ご主人の方へ向き直った。
 猫は尻尾をくねくねさせながら、退屈そうに長いあくびをした。
 ご主人は、目で合図すると鍵を開けた。重い裏口の防火扉を開けると、埃とカビが混じった臭いが鼻をついた。
 ご主人の案内で中に入ると、ひんやりとしたコンクリート剥き出し特有の空気が身を包んだ。
 コンクリート製の冷たい階段を埃のかぶった手摺りを伝い、つっかけと革靴が昇って行く。
 ご主人の足が止まった。
 「ここです。」
 私は、上がる息をどうにか抑えようとして、ワイシャツ越しに胸を掴んだ。俯き加減になっていた顔をあげると、ポッカリと空いた広い空間が目の前に飛び込んできた。
415 :タイトル:ぬくもり(お題:時代遅れ)3/6 [saga]:2017/04/28(金) 01:01:12.07 ID:eOaQ9WgS0
私は、背負っていたリュックサックから、クロッキーブックと鉛筆を取り出すと、スケッチを始めた。
 ご主人は、クロッキーブックを覗きつつも、辺りをうろうろと落ち着かない様子で「ぼくはね、ここには思い入れがあってね、この土地を買った時は、ずいぶんと活気があったんですが、学生達がいなくなってからは、団地の奥さんと子供がぽつぽつと通るだけになってしまって…」
 ほら、団地の人たちって、人付き合いってやつ、お嫌いでしょ。だから、人と会っても挨拶もそこそこにせかせかとベビーカーを転がして、そそくさと行ってしまう。
 子供もね、声をかけると、すぐに不審者だ何だのって親や学校に通告する。
 ぼくはね、なんていうかー、人が同じ地域に住んでいれば、挨拶するだけで自然と心が通うもんだと思って生きてきたが、最近は、心どころか、同じ色の血が通っている筈なのに、どうしてもそれが信じられない。
 昔は誰でも会えば挨拶して、世間話に花を咲かせたもんなんだがね。誰がこんな侘しいせかせかとした人間にしたんだ。
 あのー、つまり、その、せめてうちだけでも、もう1度血のかよった交流ができるようになったらいいなーなんて思ってるんだが、できるかね?」

 私はスケッチしていた手を止め、ご主人の顔を見た。薄暗い室内の影に強調され、顔に刻まれた皺がより濃く見えた。
 「私はまだこの地域の事を知りませんので、実地調査で歩き倒してみないことにはわかりませんが、ご主人のご希望に添えるよう努力いたします。」
 ご主人は元々多かった皺を更に目元に増やして、それならよいと微笑んだ。

 「ひとりにしてくれませんか?」
人影が、黙ってその場を去った。

 尻ポケットに入れていたスマートフォンで、気になる箇所を撮影した。
 壁に近寄り、剥き出しのコンクリートに手を触れ、目を瞑った。
 この建物に限らず、人が住んだ体温の記憶を建物は持っているように思う。
 建物に人が存在した記憶があれば、無機質で冷たいコンクリートにも人のぬくもりが通う。
 冷気が身体に絡みついた。人のぬくもりを欲しているのか。
 再び人と相見えたいのか。
 人と交わった記憶にすがりついて、人肌の温かさを今も求めているのか。
 窓から漏れる風の噂が私の鼓膜をつつく。
416 :タイトル:ぬくもり(お題:時代遅れ)4/6 [saga]:2017/04/28(金) 01:02:29.19 ID:eOaQ9WgS0
暫くして、つっかけの引きずるような足音が近づいて、止まった。
 「先生、今日はもう閉めたいのだけど、ええかい?見たかったら、また明日来てくれんかね。」
 「いえ、もう本日は、結構です。今日はありがとうございました。」
 「そうかい、よかった、よかった。よかったら、また明日来てな。ええ、明日も伺います。」
 「じゃあ、行くかね。」
 「はい。」
 ふたつの足音が階段を下る音ががらんどうの建物にこだまする。
 「それでは、これで。また、お伺いする時に電話しますね。」
 「ああ、待っとるよ。」

 外に出ると、猫はもういなかった。
 青白い街灯が途切れ途切れに辺りを照らしていた。

 日付を跨いだ。
 私は、事務所の手元だけを照らした蛍光灯の元、デスクに置かれたスケッチとパソコンを見比べていた。
 パソコンで、物件の周りの地図を検索する。
 幾度と無く、縮尺を変えては、地図と睨み合う。夜は、静かに動いていた。
 半径1km圏内に、商店街、小学校があり、団地が密集している。
 半径3km圏内には、用水路、河川敷がある。
 半径5km圏内には、大型ショッピングモールが存在していることがわかった。
 目線が何度も地図とスケッチを行き来するうちに、ある考えが浮かんだ。
 明日から本格的に時間帯を変えて、街がどんな動きをするのか、見てみようと思っていた。
 実際に歩いてみないことには、住んでいる人の流動が読めないからだ。

 翌日、朝早く起床した私は、地図、鉛筆、クロッキーブックを持って、早朝の街を見て回ることにした。
 街はまだ人が動き始めたばかりで、静かな中に騒々しさが存在している。
 登校する小学生がぽつぽつと通っていく。
 パートに出勤するだろうと思われる、主婦がバタバタと団地を駆け出していく。

 昼になった。
 ハナミズキの白い花が春風に揺れている。
 街は静かだ。昼時ということもあり、人は動かない。用水路の水は少ない。

 午後になった。
 下校する小学生の群れに遭遇した。
 パート帰りの主婦と思われる女性が乗った軽4が幾度も往来した。
417 :タイトル:ぬくもり(お題:時代遅れ)5/6 [saga]:2017/04/28(金) 01:03:37.19 ID:eOaQ9WgS0
そろそろ、昨日のご主人に電話しようと思い、尻ポケットからスマートフォンを取り出し、電話帳からご主人の番号をタップし、コールする。
 すぐに電話口から、もすもーすと明朗な声が聞こえた。

 歩いてアパートまで向かう。
 ハナミズキの花が風に落とされ、アスファルトを転がった。行く途中に商店街を見て回ろうと、商店街側の道を通ることにした。
 商店街はほとんど人気がなく、所々シャッターが閉まった店もある。お惣菜の煮物の香りが鼻腔をくすぐる。次第にお腹が空いてきた。

 「これは、これは、昨日から引き続きご苦労様です。」
 ご主人は、私の姿が目に入ると、アパートの前を旋回しながら、挨拶した。
 猫は同じ場所で眠っていた。起こすのは悪いと、触れずにいた。
 昨日同様、部屋をうろうろと見回っては、写真を撮影し、スケッチに収めた。

 それから1ヶ月間、みっちりと街を歩き回り、地図ではわからない多くの事がわかった。
 私は、アパートを老人用シェアハウスにリノベーションしようと思っていた。
 半径5km圏内に商店街、ショッピングモールが存在し、用水路からの水流が豊かな自然を育み、辺りには雑草が生い茂っている。自然と都市が適度に調和した、静けさと喧騒が共存する。
 老い先短い老人が暮らすには良質な環境だと思ったからだ。
 ご主人に早速相談すると、よすよすと顔中に皺を寄せて微笑んだ。

 工事の日程について、電話と対面でご主人と数回打ち合わせをした。

 半年後、リノベーションが終了した。
 ご主人は、いつものしわしわの笑顔で、私の手を握り「先生、本当にありがとうございました。」とご丁寧に何度も何度もお辞儀をした。
 私もその仕草がおかしかったのと、仕事をやりきった達成感とあいまって、思わず思いっきり笑ってしまった。

 それまで時代遅れだったアパートは、街と自然に調和した現代的なデザインに生まれ変わった。1階部分は、住民の老人達と、地域住民達の憩いの場として、オープンスペースにした。
 2、3階は、居住スペースとして、簡単に住人が行き来できるように解放的に作り替えた。 
 また、屋上は芝生を植え、交流スペースとして住人と地域住民が自由に使用できる様にした。

 1年後、ご主人から手紙が届いた。
 1階部分のオープンスペースでは、手芸好きな老婦人がパッチワークの作品を常時展示するようになり、屋上の交流スペースには、夏の花火大会の時期になると建物の住民と地域住民が仲良く酒を飲み交わし、談笑するようになったという。
418 :タイトル:ぬくもり(お題:時代遅れ)6/6 [saga]:2017/04/28(金) 01:04:17.68 ID:eOaQ9WgS0
 また、それまで閉鎖的だった老人達は、互いに交流するようになり、それぞれ自慢のおかずを交換する姿が頻繁に見受けられるようになったそうだ。
 ご主人の言っていた、人の血のかよった交流とはこういったことだったのだろうかと、事務所の椅子にもたれかかったまま、ぼんやりと天井を見上げながら考えていた。

 ある時、酒に酔った私はふらつきながら、街をさまよっていた。
 馴染みのラーメン屋に辿り着けぬまま、時間だけが過ぎていった。
 きょろきょろと辺りを見回し、苛立ちに悶えていたところに見覚えのある建物が目に入り、足を止めた。
 少し下がって、建物を見上げると大きな声で談笑する人々にピントが合った。
 様々な色のTシャツがレンズ越しに楽しそうに揺れ動く。
 光の音が空で轟いた。少し離れた河川敷で、花火大会を開催しているのか、夜空では花火の音と光が天に昇って点滅を繰り返していた。
 風の音が強く聞こえる。
 通りに、浴衣を着た人々がぽつぽつと行き交う。
 上ばかり見ていたら、足に何やら柔らかい感触が絡みついたので、目線を下にやると、それは猫だった。いつか見た三毛猫だった。
 夜空の下に青白い街灯が点滅し、猫と私の意識を夜空に誘った。

 物に命を通わせ、体温を感じさせるのは、いつだって、人の営みだ。

 時を越えた物が置き去りにされ、時代遅れとなるのは、人に見向きもされなくなり、人に置き去りにされた時だろうと思う。

 私は静かに深呼吸し、歩き出した。
 猫は脚から離れて、そこが自分の居場所だと主張するように、シェアハウスの前に鎮座した。
 猫は、人の記憶より、建物の記憶を色濃く内包しているのだろうと思った。

 酔いは覚めても、夢は醒めなかった。

 おわり。
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/04/28(金) 01:07:38.96 ID:eOaQ9WgS0
「投下します!宣言」するのを忘れてしまい、申し訳なかったです。
以後気を付けます。
長くなってしまいましたが、感想くださると幸いです。
よろしくお願いいたします。
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/04/28(金) 01:22:12.77 ID:eOaQ9WgS0
度々申し訳ないのですが、二か所ほど訂正です。

タイトル:ぬくもり(お題:時代遅れ)2/6
日が傾き、オーナーの表情は完全に見えなくなった。

日が傾き、ご主人の表情は完全に見えなくなった。

タイトル:ぬくもり(お題:時代遅れ)4/6
「そうかい、よかった、よかった。よかったら、また明日来てな。ええ、明日も伺います。」

「そうかい、よかった、よかった。よかったら、また明日来てな。
「ええ、明日も伺います。」

何度も確認したのですが、二か所も誤字脱字が見つかるとは・・・
この他にもございましたら、申し訳ございません。
421 :サツガイに対する対抗策(お題 サツガイ)  ◆SqZQSXA.b2 [saga]:2017/04/28(金) 02:44:20.02 ID:C2uVeigw0
投下します
422 :サツガイに対する対抗策(お題 サツガイ)1/1  ◆SqZQSXA.b2 [saga]:2017/04/28(金) 02:46:25.93 ID:C2uVeigw0
誰かにサツガイされると感じるとき、それは自分ならサツガイしかねないと思うときだ。

例えば、電車を待っているとき後ろを警戒してしまうのは、自分が誰かを突き落としたいと潜在的にあるいは衝動的に思ったことがあるからだ。

つまるところ、何者かにサツガイされることを恐れる者は、少なからず加害者がサツガイする妥当性を認めてしまっている。

サツガイする夢を視る者は、いずれ危険因子となる。

すると、この世で最も安全な人種というのは、ただ自分は長く生きるだろうと言う漠然とした想像を信じ込み自分は清廉潔白、恨みを買うような人間ではないとのたまう輩だ。

この世界にいる大多数の人間は、この種だ。彼らはしばらくの間は無害で、サツガイをすることはない。

しかし、恐れよ。

彼らがサツガイをする夢を視たとき、世界はしだいに変貌する。

夢と同じくサツガイされることを恐れ、サツガイを防ぐために柵をたて、鍵をかけ、

夜を明るくし、サツガイを遠ざけようとする。

だが影のようにぴったりとついてくるサツガイから、けっして逃れることはできない。

それどころか、ありとあらゆる防護をすり抜けて、サツガイは行われ、我々はそれを聞いて、見て、恐怖する。

いずれ、我々は自分で、自分をサツガイする夢を視るだろう。

こんな日常にサツガイが紛れこむ世界はサツガイされるべきだと、思う。

そうなれば、人類はサツガイにサツガイされたも同然だ。

サツガイされることを恐れるな。

サツガイを恐れる者を、恐れよ。
423 :サツガイに対する対抗策(お題 サツガイ)  ◆SqZQSXA.b2 [sage]:2017/04/28(金) 02:48:47.87 ID:C2uVeigw0
終わりです
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/29(土) 23:52:28.75 ID:sCNcXP7n0
お題下さい。
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/30(日) 13:33:06.53 ID:/r9DgXFb0
最強の女騎士まさかの敗北
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/01(月) 00:10:16.20 ID:XkZMTs0r0
投下します。
427 :薔薇の見える丘(お題:最強の女騎士まさかの敗北)1/6 [saga]:2017/05/01(月) 00:11:24.06 ID:XkZMTs0r0
女は静かに墓石に野薔薇を手向けた。
ここは、王宮の庭に咲く色とりどりの薔薇が一望できる山奥の丘だ。森深く人気はない。
女はしゃがんで目を瞑り、手を合わせた。
風が女の白髪混じりの長い黒髪を乱した。
背後から草を踏む音が聞こえたので振り返ると、そこには見慣れた男の顔があった。
「お前は本当にここが好きなんだな。」
「ええ」
女は再び墓石に視線を戻した。
男が歩み寄り、女の隣にしゃがんだ。
男の手には赤い1本の薔薇が握られていた。
男は墓石の上に花を手向けると、目を瞑って暫くの間祈った。
そよ風が二人の髪や衣服を揺らした。
男がゆっくりと立ち上がる。
女は丘の向こうを見ていた。
やがて、男は森の奥に戻っていった。
女は男の足音が消えたのを見計らって、持っていた鞄から一冊の本を取り出すと、墓前に捧げた。
立ち上がり、スカートに付いた草を手で払うと再び丘の向こうに見える街並みを見ていた。
そして、急に何かを決心したような表情になった。
その面は唇を引き結び、眼光は鋭かった。
女は涙を必死に堪えていたのだった。
視界が歪み、街が、宮殿が滲む。
女は溢れる涙を拭うことさえせず、ただ佇んでいた。
丘に吹く風が女の置いた本のページをめくっていく。
風がやんだ。
女は森の奥へ歩き出した。
ページは最初に戻り、表紙になっていた。
428 :薔薇の見える丘(お題:最強の女騎士まさかの敗北)2/6 [saga]:2017/05/01(月) 00:12:17.61 ID:XkZMTs0r0
かつて、帝国が誇る最強の騎士、剣鬼としてその名を轟かせた一人の女騎士がいた。
彼女の名は「ローザ」
彼女は女性でありながら、14歳の若さで帝国騎士団に志願し、めきめきと腕を上げた。
17歳の時、初めて戦場に出ると素早く華麗な剣さばきで相手国の騎士団長の首を取った。
こうして、彼女の名は帝国のみならず他国でも知れ渡ることになった。
その後も精力的に戦に出ては戦果を上げた。
彼女自身に生まれ持った剣術の才は無い。
ただ、人一倍負けず嫌いで辛抱強い性格でここまで上り詰めた。彼女はほかの誰よりも努力家だった。
毎朝4時には起床し、昼間は剣術の鍛錬、図書館で深夜まで本を読み漁った。
その生活を30年以上続けてきたが、自身はもう若くはない。
彼女は最近忍び寄る自身の老いをひしひしと感じていた。
昔の自分と現在の訓練生の姿を重ねると、近頃の若者は訓練は平気でサボり、?責すれば自分を顧みることもなくローザの悪口を言い、とにかく挨拶の声が小さかったりと、なんとも情けない。
彼女は後進に何度も道を譲ろうと、自身の進退について考えたものだったが、どうにも彼女の次を担う者は現れなかった。
今年もまた駄目かと思っていた。
通常、騎士団の志願は冬に締め切り、春に試験結果が発表され、晴れて騎士団への入団を許される。
ある雪の日であった。
騎士団に入門したいという少女が王宮に訪れた。
その現場にたまたまローザも居合わせた。
門番が苛つきながら少女をいったいったと追い払っていた。
ローザはその一部始終を見ていた。
少女は門番に何度も追い出されては、また戻ってくる。
風の音で会話はよく聞こえなかったが、途切れ途切れに会話が聞こえてくる。
「どうか、どうかお願いします!」
「いや、だめだだめだ!」
「どうしても騎士になりたいのです!!」
そのまま通り過ぎればよいものを、ローザは様子を近くで見ようと近寄った。
「待て!!」
ローザがつかつかと門番と少女に近寄る。
自分でもなぜ声をかけたのか分からなかった。
ローザは自身の行動に驚いた。
少女は地面にへたり込み、ローザの顔をじぃと見ていた。
ローザは中腰になり、少女の顔を見た。
429 :薔薇の見える丘(お題:最強の女騎士まさかの敗北)3/6 [saga]:2017/05/01(月) 00:13:39.25 ID:XkZMTs0r0
身なりは汚かったが、精悍な顔つきをした黒髪の少女で一向にローザから視線を離そうとしなかった。
「名は何という。」
少女はしっかりと目を見て、はっきりと言った。
「エリカです。」
ローザは一目でこのみすぼらしい少女を気に入った。
時期外れに騎士団に入団しようなどという変わり者だ。
きっと、何か人に言えぬ事情とやらがあるのだろう。
ローザはわざと聞かずにおいた。
時が来ればいずれ自分から話してくれるだろうと思ったからだった。
ローザはエリカを騎士団に入団させた。
エリカは若かれし頃のローザを彷彿とさせるような献身的で努力家の面を浮き彫りにさせた。
決して他の者よりも優れた才を持っていたわけではなかったが、見る見るうちに上達し、
わずか3か月で他の訓練生に追いついて見せた。
エリカの一日は朝5時に始まる。朝は剣術の訓練に励み、昼は宮殿の外周を走り込み、
夜は遅くまで図書館で本を読み漁った。また、眠れぬ夜などには外に出ては剣術の訓練を黙々としていた。
ローザはその様子を窓から毎晩ひどく懐かしむような眼で見ていた。

あれから10年の月日が過ぎた。
エリカは美しく、そして逞しい女騎士に成長した。
今では頭角を現し、その存在は騎士団の中でも群を抜いていた。
ローザはエリカになら騎士団を任せられるのではないかと次第に思うようになっていた。
帝国安寧の時期であった。

その少しして、帝国は再び戦乱の時期を迎えた。
ローザ50歳、エリカ20歳の夏だった。
エリカの初戦であった。
ローザはこの戦を最後にしてエリカに騎士団長の座を引き渡そうと思っていた。
戦の前日の深夜、エリカはローザの部屋を訪ねた。
「ローザ様、まだ起きていらっしゃいますか。」
ノックから少しして、扉が開いた。
「どうした。」
「どうにも眠れないので、剣のお相手をしていただけないでしょうか。」
「ははあ、エリカ貴様緊張しておるな。まあ、そう緊張するなとは言うが無理はなかろう。少しだけ相手をしてやろう。」
「すみません、ありがとうございます。」
二人は外に出た。
430 :薔薇の見える丘(お題:最強の女騎士まさかの敗北)4/6 [saga]:2017/05/01(月) 00:18:07.12 ID:XkZMTs0r0
お互いに向き合い剣を構える。
『はああっ!!』
キンッ!カンッ!!とおぉ!!二人の剣の音と声が夜の闇にこだまする。
「はあ、はあ・・・」
「エリカ、そんなんで息切れをしておるとはみっともない。戦場では敵は待ってくれぬぞ。」
ローザは得意げに笑って見せた。
エリカの返事はない。
いつもならこの程度でエリカが息切れするなどありえなかった。
ローザは不安に思った。
「エリカ、休憩するか。」
エリカは無言で頷いた。
噴水の前に腰掛け、次第に明るくなっていく夜空を見ていた。
きっと、エリカは不安なだけだろう。訓練と実際の戦は全く違う。
皆、己の命を懸けている。生き残ろうと捨て身の攻撃をする者も少なくない。
命を捨てた人間の恐ろしさと執着心程恐ろしいものはないとローザは長い騎士人生の中で思っていた。
沈黙が続いた。
最初に沈黙を破ったのはエリカだった。
「ローザ様、聞いてほしいことがあります。」
「何だ。」
「私、おなかに赤ちゃんがいるんです。」
「なんだと。誰の子だ。」
「休暇をもらって街に出た時に男たちに囲まれて、わたし、それから。」
「いい、もう言わなくてもよい。」
「申し訳ございません。ローザ様に育てていただいたのに、何もできませんでした。
せめて明日の戦で戦果を出したいと思っています。」
「いい、気にするな。明日はとにかく生き延びる事だけを考えろ。いいな?」
「ありがとうございます。わたし、自分がすごく弱い存在だと思いました。
剣無しでは何もできなかった。男たちの力は凄まじくて、到底敵わず、
女の私では殴り飛ばすことくらいしかできませんでした。
何も、何もできなかったのと同じです。戦が終わったら国を出ようと思います。」
ローザは返す言葉が瞬時に思い浮かばなかった。
長い沈黙が続いた。
「国を出るなどと、そう早まるな。お前はまだ若い。
やり直しがきくではないか。騎士団員で子供を持つ者はそう多くはないが、
おるではないか。女一人で子を育てるのは何かと苦労が多いとは思うが、
私にも決して多くはないが貯えがある。お前がその気なら私は喜んで支援しよう。」
エリカは首を横に振った。
431 :薔薇の見える丘(お題:最強の女騎士まさかの敗北)5/6 [saga]:2017/05/01(月) 00:22:41.16 ID:XkZMTs0r0
「ローザ様にご迷惑をおかけすることはできません。家の者と幼馴染に手紙を出しました。
そうしたら、お前のためなら笑ってこの国を捨てるとありました。」
空が青白くなってきた。
ローザは立ち上がった。
「私は少し眠る。お前がどこに行こうと師弟関係は変わらぬ。それだけは覚えていろ。」
一人残されたエリカは大粒の涙を流した。

翌朝、戦地は夏の暴風雨に襲われていた。
大雨が暴風により身体中に打ち付け、視界は悪く、鎧の中は冷え切っていた。
帝国騎士団の士気は完全に下がっていた。
ローザは士気の下がった団員たちの士気を上げるため、雄弁を奮った。

戦の開始時刻までおよそ15分程残されていた。
敵国の騎士団が5分前に到着した。
敵の騎士団長と向かい合うローザ。
帝国軍の角笛で戦の火ぶたが切って落とされた。
先に出たのはエリカだった。疾風のごとく馬を駆り、剣を奮い敵陣の波を割っていく。ローザも負けじと剣を奮った。
戦は1年程続いた。
結果は帝国軍の大大敗となった。
ローザは戦中に落馬し、全身の骨を折る重傷を負った。
敗戦した帝国軍は領地を減らし、勢力を落とした。
騎士団長として、国王に責任を追及されたローザは宮殿の北側にある塔に幽閉された。
432 :薔薇の見える丘(お題:最強の女騎士まさかの敗北)6/6 [saga]:2017/05/01(月) 00:23:46.70 ID:XkZMTs0r0
塔は大雨になるとよく雨漏りした。
そういえばあの日も大雨だった。
床にできた水たまりを覗くとそこには白髪の多く混じった金髪の老婆がいた。
皴に覆われた顔面を同じく皴だらけの手が触れる。
思えば長いこと鏡を見ていなかった。
若い頃は長い金髪をなびかせ、戦場を駆け巡り、剣鬼として帝国最強の女騎士と恐れられたが今では見る影もない。
戦に負け、老いに負け、己に負け、老いたローザには何も残されていなかった。
絶命の数時間前、こんなことならもっと早くに後進に道を譲るべきであったとひどく後悔した。
ローザは絶望の淵に立たされた。後は飛び降りるだけだ。
遠退いていく意識の中で、エリカはあれからどうなったのだろうかと思った。
無事なのだろうか。もし、戦死しているのならば、エリカのもとへ行ける。
愛弟子と二人しがらみのない世界で今度はのんびりと酒でも飲みかわしたいものだ。
次の朝、見回りの召使がローザの息がないことに気づいた。
衰弱死だった。ローザの遺体は、人知れず葬られた。

エリカは生き延びていた。戦後、国外に移住した。今は家族と暮らしている。
帝国騎士団の歴史的大敗から、早30年の時が過ぎようとしていた。
終戦の同時刻に宮殿の北側の塔の鐘が鳴る。
そこはかつてローザが幽閉されていた塔だ。
ローザの死後、鎮魂のため聖職者がつけさせたものであった。
ここは薔薇の見える丘。
遺骨の無い墓がひっそりと存在する。
今日も丘は風が強く吹いている。
風が宮殿に咲き誇る薔薇の香りを運ぶ。
墓前には、一輪の赤い薔薇と一冊の本が置かれていた。

その本のタイトルは―――

「帝国最後の最強女騎士、ローザ・アリヨ=マリーの生痕、著:エリカ・バルニエール」
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/01(月) 00:25:18.21 ID:XkZMTs0r0
以上です。
お題くださった方ありがとうございました。
早速ですが次のお題も下さい。
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/01(月) 11:30:11.23 ID:zhzV8zk40
最強の女騎士まさか敗北の外伝、全盛期のローザのドラゴン退治
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/21(日) 18:18:08.10 ID:bQa+yWO20
続きまだ?
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 22:22:32.73 ID:WGIvuH4x0
お題ください
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/24(水) 22:30:20.22 ID:jEMWQLqho
超能力
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/10(土) 22:47:15.83 ID:xaAD7z5no
お題ください
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 03:52:55.95 ID:92IRhu8Go
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/15(木) 23:38:46.91 ID:tNpRVBjQ0
お題ください
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/16(金) 01:03:35.52 ID:qAGK2XDq0
裏山掘ったら見つけた物
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/01(金) 23:34:03.23 ID:VPwwFPy70
お題ください
443 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/02(土) 10:48:06.88 ID:2VirUVWm0
幼女拾った
444 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/12(木) 22:24:31.38 ID:zfr2ELrHo
お題をください
445 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 03:22:33.86 ID:gYSG8MA50
やる気
446 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/18(土) 09:17:43.38 ID:/ptz9eITo
やる気か……欲しいな
お題も欲しい
447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/23(木) 01:19:48.75 ID:VjWmDqSSo
再興
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/23(木) 18:23:52.44 ID:T47SU2h1o
把握
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/04(木) 14:33:16.74 ID:dP+b5ig3o
新年あけましておめでとう御座います
御題下さい
450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/04(木) 20:11:37.82 ID:dTTdzbdF0
暴露
451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/15(月) 02:06:58.52 ID:q4TTuL0P0
久しぶりにお題ください
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/15(月) 20:32:46.85 ID:wxIsRuAxo
プレミア
453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/12(土) 12:16:16.07 ID:E1TYfBgOo
スレが生きていたら、何かお題をください
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/12(土) 20:25:14.67 ID:PGQV7EIZ0
>>453
復活

俺ももらえるとうれしいな
455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/08(日) 11:12:45.88 ID:8Uj79VPDo
お題下さいな

>>454
もうすぐ夏休み
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/08(日) 16:41:47.25 ID:/JDE7DfG0
>>455
おかず
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/08(日) 17:11:28.62 ID:8Uj79VPDo
把握しました
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/23(火) 21:10:22.71 ID:RWsS3nCI0
投下します。
459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/23(火) 21:14:19.21 ID:RWsS3nCI0
>>434
『最強の女騎士まさか敗北の外伝、全盛期のローザのドラゴン退治』


1/5

「ローザ様!大変です!」
「どうした?そう急ぐなじっくり話しを聞こうではないか」
ローザは読んでいた本を閉じると、扉の前の部下に向き直る。
「も、申し訳ありません!街でドラゴンが飛んでいて恐ろしいと国民から報告がありました。国王様が至急ドラゴンを退治しろとのご命令です!!」
「なんだと…まずは現状を確かめに現地へ赴いてみるとするか。至急兵を集めよ!」
「はっ!」
部下は、素早く騎士団の控え室へと走り去った。
「とりあえず、ドラゴンとやらがどういう目的でウロウロし始めたのかを確かめねばならぬな」
ローザは、国王陛下の元へ向かった。
「騎士団長のローザです。失礼します。件のドラゴン退治のことで伺いました」
「入れ」
「はっ!」
ローザは、国王陛下の前に膝まづいた。
「陛下、我々はこれからドラゴンがうろついているというあたりを見回りに行こうと思います。国民からの聞き込みもしたいと思っております。
そして、ドラゴンがどういった理由で街の上を飛ぶようになったのか突き止めようと思います。それから、ドラゴンがこれ以上国民の恐怖心を煽らないように我々騎士団が解決してみせます」
「ほう、言いたいことはわかった。頼んだぞ。騎士団は我が国の誇りだからな。粗相の無いように、わかったな?」
「はい」
「下がって良い。無事を祈る」
「ありがとうございます、陛下。それでは失礼致します」

ローザは広間に集まっていた騎士団員たちを見渡すと、事情を説明した。
今は国民の話を聞くことが先決だ。
ローザたち騎士団は現地での聞き込みを行うため、王都から程近いドラゴンが出るという山の麓に住む民の元へ向かった。
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/23(火) 21:15:36.60 ID:RWsS3nCI0
2/5
2
「誰かドラゴンを見たものはいないか?」
すると、一斉に人々が駆け寄ってきて、口々にドラゴンの目撃翌例をあげた。
彼らの言うことをまとめると、ドラゴンは明け方から早朝に出没し、山の上を飛び回っているそうだ。被害を受けたものはいないという。
ローザは、人々がドラゴンを恐怖の対象として見ているだけだと思った。
しかし、ドラゴンがいつ気が変わって村を襲うかわからない。
話によるとドラゴンは、どうやら山の奥深くに住んでいるようで、いつもそこから出てきては飛び回っているようだ。
ローザは、団員を連れてそのドラゴンが住むという山の奥深くまで行ってみることにした。
団員達は、ドラゴンに震え上がっている。
「ローザ様、ここは一旦帰ってドラゴン討伐のために鍛治職人に武器を作らせましょう。あの硬い鱗は普通の刃物では歯がたちません!」
「いや、寝ている今こそチャンスだ。ドラゴンは眼を狙って脳まで貫通させれば即死だ。我々が戻って武器をこさえているうちに村が無くなったらどうするんだ?」
「そ、それはありますけど…その、誰がドラゴンの眼をやるんですか?」
「私がやるに決まっているではないか!勿論、この中の誰がやっても構わないのだぞ」
団員は口を閉じた。
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/23(火) 21:16:44.24 ID:RWsS3nCI0
3/5
騎士団は、山を登った。
2時間ほど悪路を登ったところで、頂上が見えた。
「よし!もう少しだ!」
ローザは一気に駆け上がった。
しかし、そこには草木以外何も無かった。
「ローザ様、ドラゴンの巣なんてないじゃないですか!無駄足だったのでしょうか?」
「そう焦るな。皆で手分けしてドラゴンの巣を探そう。日が沈まぬうちに!」
団員達は散り散りになって、ドラゴンの巣を捜索しはじめた。
ローザは奥へ奥へと進んでいく。
すると、木の葉で覆われた巨大な半年型のドームのような物から、灯りが漏れているのを見つけた。ローザはおそるおそる近づいてみた。
どちらかというと、黒に近い灰色のドラゴンが器用に爪でペンを持ち、羊皮紙に何か書いているではないか!
木の葉のドームの中には、枯葉を固めて作ったと思われる本棚があり、数えきれない程の本が整理され収められていた。
金色の目をした灰色のドラゴンは、時折あくびをしながら、ページを器用に巨大な爪で捲りながら、筆を進めていく。
ローザは、その予想外の状況に驚き、後ずさった。パキッと小枝を踏みつけた音がした。
ドラゴンと目が合った。死を覚悟した。
「隠れていないで、出てきておくれ」
低い優しい柔らかな声でドラゴンが言った。
ローザは、前に出た。片手にはしっかりと聖剣が握られている。
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/23(火) 21:17:51.09 ID:RWsS3nCI0
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463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/23(火) 21:18:51.39 ID:RWsS3nCI0
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464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/23(火) 21:20:15.44 ID:RWsS3nCI0
4/5
「ボクをやっつけに来たのかな?」
ドラゴンは本を閉じて、本棚にしまった。
紙は片方の爪で丸めて後ろにあった筒に入れる。
ローザは恐ろしくて口がきけなかったがなんとか勇気を振り絞り、「そうだ」と言った。
「やれやれ、人間は無害なドラゴンを恐ろしいと見た目だけで判断して命を奪おうってことだね?変わらないね、人間ってのは。
ボク達は、ずっとこの山に住んでいるけれど、人間に危害を加えたことは1度もないよ。人間に寝込みを襲われたりすることは何度もあったけど」
ドラゴンは、棚からまた違う本を取り出して、読み始めた。
「キミはどうやら帝国騎士のようだけど、この気の弱い優しいドラゴンのボクに口も聞けない程怯えている。滑稽だね」
「だ、黙れ!」
「ほら、脚が震えているじゃあないか」
「う、うるさい!とにかく話を聞こうではないか!」
ローザは、恐怖心に打ちのめされそうになりながら、ドラゴンの元に近づいた。
ドラゴンはふうんといった顔でローザを上から下まで見下ろした。
「まだ若いじゃないか、キミ、名前は?」
「ローザだ」
「ボクは知識を集めるドラゴンのイントだよ。うーん、そうだねえ、2,015歳かな?息子もいるよ。妻は第3次帝国戦争の時に、人間を避難させようと背中に乗せている時に、兵士に撃ち落とされた」
ローザは言葉を失った。
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/23(火) 21:21:18.59 ID:RWsS3nCI0
4-2/5
「まあ、そういう感じの話だね。この国で文学賞を受賞して作家として食べていけてるし、息子もおかげで本が好きだし、
お父ちゃん、ボクも作家になりたいんだけど!とか言ってくるし、充分幸せだよ。でもその幸せを壊そうとする人は僕は絶対に許さない。それでもボクをやるのかい?」
「すまなかった…その、イントってあのイントのことか?!」
「そうだよ」
ドラゴンはふふっと笑って、「1億部のベストセラー作家のイントはこの僕のことだよ。他にも色々名前変えて本出してるよ」
「なんだと?!」
ローザは、憧れの作家のイントが実はドラゴンだった事の衝撃と、そのイントを目の前にしている興奮を抑えきれなくなった。
「あの…本当にすまなかった!私はあなたの著作に何度心を救われたことか!どうか、非礼を許して欲しい」
「いいよ、いいよ。騎士団は国王陛下には逆らえないだろうし、仕事ってそんなもんだよね。わかってくれてよかった」
ローザは鎧の隙間から1冊のボロボロになった古書を差し出した。
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/23(火) 21:22:32.72 ID:RWsS3nCI0
4-3/5
「おお、これは初版本だね。わかった、サインしよう」
「あ、ありがとうございます…」
イントは、ローザから本を受け取ると、スラスラと中身にサインして寄越した。
「はい、これからも大事にしてね」
「もちろんです!」
ローザはほくほくしながら、本を受け取った。すっかり、討伐のことなど忘れていた。
「それで…国王陛下にはなんて言うの?とりあえず、山の上を飛び回ってるのは僕の息子なんだけど、
まだ育ち盛りだから飛びたくてしょうがないんだ。飛んでるだけで、村焼いた訳でもないし、国王陛下にも無害でした。
討伐の必要はありませんって伝えてくれないかな?」
「は、はい!」
「それから、ボクのことは国王陛下以外には内緒にしておくれよ」
「わかりました」
ローザは帰ってから、この事実をどう説明するか悩んだ。
結局、王都に帰ったローザは国王陛下にありのままの事実を伝えた。
国王陛下は、ワッハッハー!と椅子から転げ落ちんばかりの大笑いをし、一言「いいだろう!」と豪快に言った。
騎士団の団員達は、ローザが帰らないのを山を降りて心配していた。
「ローザ様、てっきり食われたかと思ってましたよ!」
「心配かけたな…すまなかった」
467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/23(火) 21:23:34.19 ID:RWsS3nCI0
5/5
後日、村には国王陛下からドラゴンについてのお達しが貼り出された。
「ドラゴンによる被害は報告されていません。騎士団を赴かせて、ドラゴンの様子を見て来たところ、
大変大人しいドラゴンでこれからも人に危害を加えることはしないと約束した。ドラゴンと共存できるように暮らすべし」とのお達しがでた。

ローザは自室に戻って、鎧の中の本を取り出して中を見た。
くっきりと力強い筆跡がそこに堂々とあった。

それから、多くの時が過ぎた頃、ローザは酒の席で騎士団員の黒髪の少女にうっかり山のドラゴンが作家のイントであることを話してしまう。

「言うなって言ったのに…」
遠くから、小さなため息が聞こえた。
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/23(火) 21:24:46.12 ID:RWsS3nCI0
以上です。
スレ見ている方いますか?
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/23(火) 21:31:14.22 ID:RWsS3nCI0
いろいろとミスしてしまい、申し訳ないです。

お題はでてるけど、作品投下してる人がいなくて寂しいなあ…

次のお題ください。
470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/25(木) 00:07:26.56 ID:c8hukcp70
頑張ってみます、なにかお題ください
471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/25(木) 09:19:30.12 ID:iSaxku7b0
>>470
堂々巡り
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/25(木) 09:21:01.64 ID:iSaxku7b0
お題ください。
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/25(木) 16:58:23.06 ID:FBT0c7A/0
お題「最強の戦女神の最後はその美しさに嫉妬した娼婦に毒殺される」
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/01(木) 00:08:35.33 ID:NtNXEqXjo
お題下さい
475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/01(木) 12:14:45.26 ID:YaeWRMtYo
お題「夜の学校」
476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/18(日) 13:15:01.26 ID:8KchlnX3o
お題下さい
477 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/21(水) 09:34:43.65 ID:MyML5xe20
お題「fate/アポクリファのIF ルーラージャンヌダルク、黒のアサシンのマスターである六導玲霞の罠に嵌りまさかの敗北」
478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/16(土) 17:38:49.96 ID:RshbQgDeo
生きてるなら、お題下さい
479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/16(土) 20:15:22.77 ID:+StiZm3S0
>>478
鈴の音
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/02(土) 17:22:47.29 ID:cREu4FsGo
遅ればせながら把握しました
481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/02(火) 23:05:04.07 ID:b9aMCJ4io
お題くださいな
482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/03(水) 02:05:12.62 ID:1XO3Xz8go
義弟との恋
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