【ダンロン】ダンガンロンパ・クエスト【オリキャラ】

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436 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/05/27(土) 23:36:04.79 ID:M/GxFkzA0
兵頭「さて、御影さんはどうします?よかったら一緒に調べますか?」

御影「……」

兵頭と一緒にか……

正直変態だし、どこまで信用していいのかわからないけど……

御影「……わかった、一緒に行く」

兵頭が兄さんを襲った犯人なら、もしかしたら私でもなんとかなるかもしれないし……

危ない橋を渡らないと、わからない事だってあるはず。

兵頭「ふふっ、そうですか。それじゃあよろしくお願いしますね」

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

ゴゴゴゴゴ

橋を塞いでいた扉が下がっていく。

次の島が、開放されたってわけか。

兵頭「さて、行きましょうか御影さん」

御影「……」

そうして私は思いもがけず、新しい島に足を踏み入れる事になった。
437 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/05/27(土) 23:41:35.75 ID:M/GxFkzA0
短いですがここまで。

これからは基本土曜日更新でいきたいと思います。

なお御影さんの才能は如月ロンパの頃からこれでした。
438 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/03(土) 22:53:58.93 ID:5qn5NoaA0
【第3の島・オータムアイランド】

兵頭「……」

御影「なにこれ……」

新しい島に着いた私達の目の前で紅葉がヒラヒラと揺れている。

ヒュウッ

御影「っ……」

肌寒い……これじゃあまるで秋みたいじゃない。

兵頭「ジャバウォック諸島は常夏だったはずなんですけどね。これはどういう事なんでしょうか」

御影「……わかんない」

本当になんなのこの島……

兵頭「とりあえず調べるとしましょうか……考えるのは後でも出来ますから」

兵頭は切り換えるように呟くと島の道を歩いていく。

あまりに違う島は少し不気味だったけど、今さら引き返すなんて出来なくて私もその背中を追いかけた。
439 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/03(土) 23:10:29.18 ID:5qn5NoaA0
【モノクマフラワー】


兵頭「……これはまた」

御影「なによ、この巨大な花……」

なんかグネグネ動いてるし、気持ち悪い……

モノクマ「危なーい!」

御影「きゃっ!」

兵頭「気色は悪いですけど危ないんですか、この花は」

モノクマ「そうだよ。なんせこのモノクマフラワーはあらゆる物を食べられる花だからね」

御影「……あらゆる物?」

モノクマ「ゴミや機械、人間までね……うぷぷ」

モノクマの言葉に寒気が走る。

人間まで食べる花……その言葉に嫌な予感が頭をよぎったから。

兵頭「つまりこの花に死体を食べさせてしまえば、死体は見つからず学級裁判は行われないと」

モノクマ「ちょっと!そんな事されたらボクの楽しみが減っちゃうじゃない!」

兵頭「私は可能性を提示したまでです」

モノクマ「そんな事したら許さないからね!やるなよ!絶対にやるなよ!」ピョーン!

兵頭「……これはフリというやつなんでしょうか?御影さんはどう思いますか?」

御影「……」ガタガタ

兵頭「どうしました?寒いんですか?」

御影「あ、あんただって気付いてるんでしょ……この島に人がいないって疑問の答えがもしかしたら」

兵頭「……この花に処理させた。それも血痕や争いがなかった様子から生きたまま眠らせて」

御影「……」

兵頭「それはこの花から連想した推測に過ぎませんよ。四方院さんの推測通り自ら姿を消したのかもしれません」

御影「……」

兵頭「……とにかく行きましょう。私も食べられるのは嫌ですから」

兵頭が差し出す手を思わず握る。

疑ってたのに頼らないといけないなんて……

兄さんの妹なのに、情けなすぎだよ私……
440 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/03(土) 23:24:49.16 ID:5qn5NoaA0
【電気街】

兵頭「ここは電気街ですね」

御影「……」

兵頭に手を引かれるままに連れてこられたのはピカピカ光る商店街みたいな場所。

パソコンとか携帯電話……カメラとかもある。

パソコン、携帯電話?

御影「ちょっと……もしかしたらこれで助け呼べるんじゃないの?」

兵頭「調べてみましょうか」カタカタ

御影「……どう?」

兵頭「動くには動きますけど、ネットやメールの類いは使用できないようですね」

御影「やっぱりそう上手くはいかないか……」

兵頭「ああ、でもデータファイルがありますね」カタカタ

御影「何か書いてあるわけ?」

兵頭「……暗号化されてますね。私にはサッパリです」

御影「それじゃあどうすんの」

兵頭「六山さんに見せてみましょうか。お願い出来ますか、御影さん」

御影「えっ?」

兵頭「私より御影さんの方が受け入れやすいですから」

結局パソコンを兵頭に押し付けられた……

まあ、いいけどさ。
441 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/03(土) 23:37:40.07 ID:5qn5NoaA0
【モーテル】

御影「……っ」

さすがに、夏の格好で秋風は冷たい……

兵頭「大丈夫ですか?とりあえずこのモーテルで一休みしましょう」

御影「……ごめん」

兵頭「いいですよ。ちょっと中に暖める何かがないか見てきますね」

モーテルの1つに入っていく兵頭……本当に、あいつがよくわかんない。

御影「ご飯作ったり、こうして気遣ってくる兵頭と学級裁判の投票であんなになる兵頭……」

どっちも同じ兵頭なのに私の中ではまるで繋がらない。

兵頭「カイロがありましたよ。少しは暖かくなると思います」

御影「……ねぇ、兵頭は未来機関に戻ったらどうすんの」

兵頭「また突然ですね……」

御影「いいから答えてよ」

兵頭「戻れませんよ」

御影「えっ?」

兵頭「私はあの味を知ってしまった。この島から出たとして日常に帰れるとは思えませんから」

御影「……」

兵頭「ふふっ、思い出すだけで身体が疼いてしまうんです。もう私は未来なんて作れません」

兵頭「出たら皆さんとはお別れでしょうね」

御影「……そう」

もしこんなコロシアイに巻き込まれなかったら……兵頭は日常に帰れたの?

そんな言葉を、私は口には出せなかった。
442 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/03(土) 23:48:33.68 ID:5qn5NoaA0
【発電所】

御影「デカッ……」

兵頭「火力、水力、風力……あらゆる方法で電気を作り出しているようですね」

兵頭が見ているパネルみたいなのを横から見る。

兵頭「どうやらこの発電所でジャバウォック諸島全ての電力を賄っているようですね」

御影「そりゃ、ここまで大きくなるわけだ」

兵頭「中には入れないようですが……おや?」

御影「どうしたの」

兵頭「金網につけられた扉にパスワード入力装置がありますね……ふむ」

御影「パスワード……わかるわけ?」

兵頭「残念ながら。モノクマだってそうそうバレるようにはしていませんでしょうし」

御影「止められでもしたら大惨事だしね……」

兵頭「一応後で調べてみましょう。もしかしたらヒントがあるかもしれませんから」
443 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/03(土) 23:55:11.66 ID:5qn5NoaA0
【病院】

御影「……!」

病院……だったら傷薬とかあるはず!

薬の臭いは好きじゃないけどそんな事言ってらんない!

兵頭「御影さん、走ると危ないですよ!」

【病院内】

御影「傷薬、傷薬……」

兵頭「傷薬……誰か怪我したんですか?」

御影「……」

兵頭「なるほど、ようやく御影さんがあんなに心乱れてた理由がわかりましたよ」

御影「あった!」

兵頭「ふふっ、そうなると早く帰った方がいいですね。お兄さんのためにも」

御影「っ……ちょっとそういう事……」
444 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/03(土) 23:55:59.28 ID:5qn5NoaA0






ガッ!

兵頭「っ!」ドサッ

御影「……えっ」






445 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/04(日) 00:03:36.75 ID:ZSjfbGPA0
兵頭「うっ……」

えっ、なに、なんで兵頭倒れてんの?

なんで兵頭、頭から血流して……

御影「ちょっと兵頭!」

兵頭「御影さん、逃げ……」

御影「逃げるってなに……」

兵頭に気をとられて私は気付かなかった。

廊下にいた兵頭の近くに今まさに何かを振り上げる誰かがいたなんて……

ガッ!

御影「うっ!?」ドサッ

っ、誰かに、殴られ……

いったい、誰が……

「……」

御影「誰、っ……あん、た……」

「……」ブンッ!

ガッ!

御影「兄、さん……」ガクッ

「…………」
446 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/04(日) 00:07:36.80 ID:ZSjfbGPA0
今回はここまでで。
447 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/10(土) 22:58:57.39 ID:EG7Ou81A0
【赤穂のコテージ】

赤穂「うっ……」

如月「目が覚めましたか」

赤穂「如月、さん?なんでここに……」

如月「その説明の前に何があったか覚えていますか?」

赤穂「何って……」

俺は確か夜中に外に出て、射撃練習場で土橋に会って……

それで…………

赤穂「そうだ、俺は……っ!?」

如月「無茶はしない方がいいですよ。あなたは撃たれたんです、遠見さんが治療したとはいえ安静にしていないと」

赤穂「つ、土橋は……!あいつは無事なんですか!?」

如月「……えぇ、彼女は無事です。本当はあなたが目覚めるまでいるつもりだったようですが、精神的疲労もあるからとコテージに戻ってもらいました」

赤穂「そうですか……」

土橋は無事なのか……よかった……

如月「……ところで赤穂さん、あなたを撃ったのは誰かわかりますか?」

赤穂「いえ、俺が見たのは腕だけで……それも暗かったから誰のかまでは」

如月「ふむ……わかりました。佐場木さん達が犯人を探すつもりのようですからあなたは安静に……」
448 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/10(土) 22:59:37.08 ID:EG7Ou81A0






モノクマ「そんな呑気な事言ってていいのかなー?」






449 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/10(土) 23:06:49.46 ID:EG7Ou81A0
赤穂「モノクマ……!?」

如月「何か用ですかモノクマ」

モノクマ「ちょっとボクとしても困る事が起きてね。二人に伝えに来たんだよ」

赤穂「困る事だって……」

モノクマが困るのは歓迎したいぐらいだけど、わざわざ俺と如月さんに伝えに来たってどういう事だ?

モノクマ「赤穂クン、妹さんは可愛い?」

赤穂「はっ?」

モノクマ「うぷぷ……もし可愛いなら大変だね」


モノクマ「御影さん、このままだと殺されるよ?」


赤穂「なっ!?」

如月「……!」
450 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/10(土) 23:21:12.26 ID:EG7Ou81A0
赤穂「どういう事だ!詳しく話せ……つうっ!」

如月「御影さんが殺されそうだと……しかしそれをあなたが伝えに来る目的はなんですか?」

モノクマ「困る事って言ったでしょ?このまま御影さん達が死んだらお楽しみがお預けになっちゃうんだよね!」

如月「お楽しみ……いえ、それより御影さん【達】ということは危ないのは彼女だけではないんですね?」

モノクマ「うぷぷ、とにかく伝えたからね。止められるなら止めといてよ、せっかくのコロシアイなんだからさ!」

赤穂「っ……牡丹!」

早く助けに行かないと……!

如月「赤穂さん、気持ちはわかりますが落ち着いてください。あなただって怪我をしているんですよ」

赤穂「でも……!」

如月「ここは僕が行ってきます。必ず御影さんは助けますから」

赤穂「……」

如月「いいですか、絶対にコテージにいてください」

バタンッ

赤穂「……」

コテージにいろ、か。

赤穂「そんなの、はいそうですかなんて聞けるわけないだろ……!」

牡丹は俺の妹なんだ。

妹が危ないのに、コテージに籠ってなんていられるか……!
451 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/10(土) 23:44:45.04 ID:EG7Ou81A0
【中央の島】

赤穂「モノクマのお楽しみは、きっと学級裁判の事だ……」

つまり牡丹は今殺されそうで、なおかつ学級裁判が起きない状態にある……!

赤穂「それはきっと、死体が見つからないって事だ」

死体が3人以上に見つからないと捜査が、ひいては学級裁判が始まらない。

犯人はそれを狙ってるはず……

赤穂「どうすればそんな事が出来るんだ……」

可能性としては、生きたまま海に流されてるか……

いや、だけど海に流されたならいくら如月さんでも助けるのは不可能だ。

赤穂「じゃあ他に方法があるのか……だけど今まで見た中でそんな事が出来る施設なんて……んっ?」

新しい島が……まさかここか!

赤穂「違ってたらもう間に合わない……だけど可能性が一番高いのはここだ……!」

牡丹、ここにいてくれよ……!
452 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/11(日) 00:07:51.56 ID:eO91joDA0
【第3の島・オータムアイランド】

「はあああっ!」

赤穂「っ、これは如月さんの声……!」

間違いない、牡丹はここにいる……!

【モノクマフラワー】

赤穂「牡丹!」

如月さんの声を頼りに進むと、あのコロシアイ学園生活でも見たモノクマフラワーがグネグネと動いていた。

その根元には、倒れてる牡丹と兵頭。

そして2人に向かって伸びる触手を蹴散らす如月さんがいた。

如月「さすがに2人守りながらの離脱は難しいですか……!」

赤穂「っ!」

如月さんは触手の相手で精一杯か……だったら俺がやるしかない!

ヒュッ!

赤穂「なっ!?」

モノクマフラワーに向かって歩き出した瞬間、俺の杖が触手に弾き飛ばされて、支えをなくした俺はその場に倒れてしまう。

赤穂「くっ……!」

腹から何かが流れた感覚。

傷口から、また血が……だけど構ってられるか!

赤穂「くそっ……」

腕と片足の力で這うように進む。

だけどそんな俺を嘲笑うかのように、牡丹が触手に捕まって、持ち上げられた。

如月「しまった!くっ……そんなに餌を奪われたくありませんか!」

勢いづいたのか兵頭にも群がる触手を如月さんが相手する間に、牡丹はどんどん口の部分に連れていかれて。

赤穂「くそっ!くそっ!動け、こんな時ぐらい動けよ!」

妹が目の前で喰われそうになってるのに、なんで俺は倒れて這ってるんだ!?

如月さんみたいに戦えとは言わないから、せめて普通に立てよ赤穂政城!

ヒーローなんだろ、だったら火事場の馬鹿力でもなんでも出して立ち上がれよ!

立って牡丹を助けろよ、兄貴だろ俺は……!

赤穂「やめろっ……牡丹を返せよっ……!」

赤穂「やめろぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

俺の叫びもむなしく、牡丹の身体は花の中に運ばれ…………
453 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/11(日) 00:08:58.76 ID:eO91joDA0






道掛「牡丹ちゃんを離せよ!このデカブツ!」






454 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/11(日) 00:29:51.50 ID:eO91joDA0
その瞬間、何かが俺の上を飛んで触手の上に乗った。

そのまま触手を器用に昇ると、牡丹の身体を奪って降りてくる。

ようやく認識できたそれは自転車。

道掛が自転車で触手を走って、牡丹を助けたんだ。

道掛「如月、牡丹ちゃんは助けたぜ!お前も早く千ちゃんを!」

如月「わかりました!」

道掛が自転車で走っていくのを追いかけるように、如月さんも兵頭を抱えてモノクマフラワーから離れていく。

どうやら2人は俺に気付いてなかったみたいだ。

あれだけ叫んでも、俺はその声すら届かなかった。

赤穂「……」

俺は妹を助けるどころか。

赤穂「はっ、ははっ……」

目の前で死にそうな妹をただ見ていることしか出来なかった。

赤穂「……」

飛んだ杖を拾って、立ち上がる。

腹から滲んだ血が地面を赤く濡らしてるのに、何も感じない。

モノクマフラワーも興味をなくしたみたいに、俺に襲いかかったりはしてこなかった。

赤穂「……」

何がヒーローだよ。

赤穂「俺は……」

妹を守れない、ヒーロー、そして兄失格の大馬鹿野郎だ。

例えようもない虚脱感を胸に、俺はその場を後にした。
455 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/11(日) 00:30:52.43 ID:eO91joDA0
本日はここまでで。
456 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/17(土) 23:59:31.45 ID:Ty3sNzhA0
今日は無理なので明日にずらします。
457 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/18(日) 22:13:32.94 ID:3OeVvG3A0
【病院】

赤穂「……」

あれから俺はマップを頼りに病院にやってきた。

殺されかけたなら、コテージに連れていくよりここに来るはずだから。

如月「……赤穂さん、コテージにいてくださいとお願いしたはずですが」

病院のロビーにいた如月さんにそんな事を言われたけど、正直今の俺はその言葉に何かを返す余裕もない。

如月「その血……傷口が開いていますね。今包帯を」

赤穂「牡丹は」

如月「……」

赤穂「牡丹は無事なんですか」

如月「頭を殴られたようですが、命に別状はないようです。今は病室で寝ていますよ」

赤穂「……」

如月「……何かありましたか?どうも、コテージで別れた時とは様子が違いますが」

赤穂「……ちょっと」

言えない、妹を助けようとして何も出来なかったなんて。

その事で牡丹に謝りたいだなんて、言えるわけなかった。
458 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/18(日) 22:23:42.19 ID:3OeVvG3A0
道掛「おっ、赤穂も来たのか!ってどうしたんだよその血!?」

赤穂「道掛……」

如月「赤穂さん?」

俺は道掛に近寄るとその肩を掴む。

道掛には絶対に言わなきゃいけない事があるんだ。

道掛「待っ、赤穂なんか怖えって!?誤解だ、俺は牡丹ちゃんに何もしてな……」

赤穂「ありがとう道掛……」

道掛「はっ?」

赤穂「牡丹を助けてくれてありがとう……」

道掛「あー……如月、話したのかよ。別に話さなくていいって言ったのに」

如月「……」

道掛「如月?」

如月「そうですか。あなたは……」

赤穂「ありがとう、ありがとう……!」

道掛「……?」
459 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/18(日) 22:47:06.77 ID:3OeVvG3A0
道掛にお礼を言っている内に、他のみんなも駆けつけてきた。

俺は遠見と土橋に大目玉を喰らって、治療と説教を同時に受ける事になる。

そして……牡丹と兵頭が目を覚ましたのはそんな説教が終わった頃だった。

【御影と兵頭の病室】

佐場木「早速で悪いが話を聞かせてもらうぞ。何があった?」

兵頭「私達はこの島を調査していて、最後にこの病院に来ました」

兵頭「そこで御影さんが傷薬を探し始めまして、私はそれを見ていたんです」

兵頭「そして御影さんが傷薬を見つけた直後に……私は衝撃を受けて倒れたんです」

御影「……私がそれを見て兵頭に駆け寄ったら、物陰から誰かにいきなり殴られたんだよ」

佐場木「そしてモノクマフラワーの側に運ばれたわけか」

遠見「佐場木殿、これはおそらく」

佐場木「間違いないだろうな」

赤穂「……」

なんだ、佐場木と遠見が何か目配せしてるぞ……
460 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/18(日) 23:03:44.39 ID:3OeVvG3A0
六山「2人は何か知ってるの?」

佐場木「それについては後だ。とにかく今回の件についてだ」

遠見「犯人は御影殿と兵頭殿をモノクマフラワーに補食させ死体を消すつもりだったようでありますな」

土橋「それだけじゃないよ!2人を襲ったのって、政城を撃ったのと同じ奴でしょ!?」

赤穂「……多分な」

苗木「じゃあ犯人はこの短い間に3人も殺すつもりだったって事!?」

如月「いえ、それ以上だと思います。モノクマフラワーに補食させた場合、死体が見つからない事から学級裁判は行われないようなので」

道掛「はあっ!?そんなのアリかよ!?」

佐場木「学級裁判を行わずして俺達を消す。どうやらよほど俺達に死んでほしい存在がいるようだ」

ジェニー「えとえと、シリアルキラーて事です?」

道掛「そんなの相手にどうしたらいいんだよ……このまま黙って皆殺しなんて冗談じゃ……!」

モノクマ「そうだね!そんなのつまんないよね!」
461 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/06/18(日) 23:24:06.34 ID:3OeVvG3A0
道掛「うおわあっ!?」

鞍馬「出ましたね」

モノクマ「いやいや、本当に今回は困ったね」

モノクマ「危うく学級裁判のセットとかおしおきの装置とかが無駄になっちゃう所だったよ!」

如月「……そんな戯れ言を言いに来たんですか」

モノクマ「もちろんそれだけじゃないよ!本題はここから!」

モノクマ「今回の件を受けて、ボクは新しいルールをここに追加します!」

ピピッ!

【同一のクロが殺せるのは2人までとします】


佐場木「皆殺し防止のルールか」

モノクマ「そういう事!2人までは良しとするけどそれ以上殺したらおしおきしちゃうよ!」

モノクマ「うぷぷ、これで健全にコロシアイが出来るね!」

遠見「コロシアイに健全も何もないであります……」

六山「まあ、皆殺しがなくなっただけよしとするしかないよ……あっ、レベル上がった」

皆殺しか……

モノクマがわざわざ新しいルールを追加したなら黒幕以外にそれを企んでる人間がいるって事なんだよな……
462 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/07/01(土) 23:23:20.00 ID:tizB6cfA0
佐場木「……おい、ところで津浦は来ていないのか」

土橋「あっ、そういえば……」

見回してみると、確かに津浦の姿が見えない。

グレゴリーの事もある、また引きこもってても不思議じゃないけど……

遠見「コテージにいるのでありましょうか……見てくるであります」

苗木「津浦さん、大丈夫なのかな」

兵頭「支えになっていたグレゴリーさんがクロになったんです。何があってもおかしくありませんね」

ジェニー「何かて……」

六山「後追い、とか?」

道掛「じ、自殺って事かよ!?」

御影「……!」

佐場木「落ち着け、まだそうと決まったわけじゃない」

赤穂「それはそうだけどな……」

佐場木「とにかく遠見を待て。それより赤穂、貴様そんな傷で何をしている」

赤穂「えっ?」

土橋「そうだ、そうだよ!政城も怪我してるんだから安静にしてなきゃ!」

如月「ここは病院ですから、しばらくここでゆっくりしてもらうのはどうでしょう」

土橋「そうだね!それじゃあ空いてる病室に行こう政城!」

赤穂「ま、待て、押さないで……!」

結局俺は土橋に背中を押されて、病室を後にした。

まだ牡丹に謝ってないのに……
463 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/07/01(土) 23:55:17.72 ID:tizB6cfA0
【赤穂の病室】

赤穂「お、おい土橋!俺は大丈夫だからそんな大袈裟な……」

病室に連れてこられた俺はベッドに半ば無理やり寝かされていた。

土橋は何を言っても無視して、色々してるけど……

赤穂「なあ、本当に俺は大丈夫だって。だからそこまでしなくても……」

土橋「……」

赤穂「土橋?」

土橋「だって、アタシのせいだから」

赤穂「はっ?」

土橋「政城はアタシを庇って怪我したんだよ。だからアタシは……」

赤穂「……」

土橋「出来る事は何でもしてあげたいの。政城を傷つけたお詫びと……」

振り返った土橋の目には涙が浮かんでいて、その表情は色んな感情が混ざった顔で。

土橋「政城に助けられた感謝の気持ちをこめて、さ」

赤穂「……」

その時俺は改めて実感した。

俺は誰かを助けられたんだと。

牡丹を助けられなかったこんな俺でも、土橋を助ける事は出来たんだと。

赤穂「土橋……」

土橋「あっ、そうだ、ねぇ、政城……」

赤穂「ありがとうな」

土橋「えっ?それ、アタシの台詞……」

牡丹を助けられなかった事は、俺にとってやっぱり強い凝りを残している。

だけど何も出来なかったわけじゃない。

それを気付かせてくれて……本当にありがとう。
464 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/07/01(土) 23:55:45.61 ID:tizB6cfA0
短いですが今日はここまで。
465 : ◆DXWxLR/SkYo1 [sage]:2017/07/08(土) 23:08:17.25 ID:e2vOJOwA0
明日更新したいと思います。
466 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/07/29(土) 23:20:13.72 ID:sHOvjTkA0
申し訳ありません、リアルで諸々あって更新が出来る状態にありませんでした。
8月からまた再開します。

そして以前に5作目まで考えていると話しましたが、今回、そして5作目が終わったら番外1つ色々一新しての話4つを行いたいと考えています(才能と名前は既に用意済)

その全てが終わるのはいつになるかはわかりませんが、言った以上はやりとげたいと思います。

そのためにまずこのクエストを頑張って終わらせます。

遅い更新ですがお付き合いいただければ幸いです。

それではまた。
467 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/08/18(金) 23:55:00.80 ID:1VMH2gYA0
ドタバタ

土橋「あれ、なんか騒がしくない?」

赤穂「まさかまた何かあったのか……!」

「なんだと!それで――」

「それが――」

土橋「ちょっと何があったのか聞いてくる。政城は安静にしてて!」

赤穂「あ、ああ」

土橋が廊下に出て、佐場木や遠見と話してるのが微かに聞こえてくる。

遠見が戻ってきたって事は……津浦に関する事だよな?

くそっ、せめて動けたら……!

ガチャッ

土橋「……」

赤穂「土橋、佐場木と遠見はなんて……」

土橋「こ、琴羽が……」

土橋「いなくなったって……」

赤穂「……!?」
468 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/08/19(土) 00:43:24.68 ID:IdIX1z7A0
佐場木が津浦について話したいと男子全員を俺の病室に集めた。

女子には遠見から話をするらしい……

道掛「琴羽ちゃんがいなくなったってマジかよ佐場木!」

佐場木「事実だ。遠見からの報告によればな」

苗木「でもコテージにいないだけなら、他の島に行ってるとかじゃないの?」

佐場木「コテージに血痕があったそうだ」

赤穂「なっ、血痕……?」

如月「なるほど……それはただ事ではありませんね」

佐場木「何があったにしろ今現在津浦は負傷している可能性が高い。この後数人津浦の捜索に付き合ってもらうぞ」

道掛「おっしゃ、まかせとけ!」

苗木「うん……心配だな津浦さん……」

鞍馬「……」

佐場木「どこに行く鞍馬」

鞍馬「話す必要性を感じませんね」

バタンッ

赤穂「鞍馬……」

佐場木「ちっ、仕方がない……道掛と苗木は俺と来い」

如月「僕も参加しなくていいんでしょうか?」

佐場木「貴様は当初の予定通り赤穂の警護をしておけ。問題は津浦の行方だけじゃないんだからな」

赤穂「……」

牡丹と兵頭を襲った犯人の事か……

如月「……そうですね、わかりました」

佐場木「行くぞ」

佐場木が道掛、苗木と病室を出ていく。

津浦、お前は今何をしてるんだ……
469 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/08/19(土) 01:00:01.45 ID:IdIX1z7A0
赤穂「……」

如月「……さて、2人ですから聞いておきましょう」

如月「赤穂さん、あなたは兵頭さんと御影さんがユートピアフラワーに襲われていたあの場にいましたね?」

赤穂「……」

如月「道掛さんが御影さんを助けた事を知る理由は他にありません。そうなんでしょう?」

赤穂「……はい」

如月「やっぱりですか……あなたも無茶をしますね」

赤穂「無茶をして……結局助けられませんでした」

如月「……結果的には助かったんです、思い詰めるのはオススメしません」

赤穂「だけど」

如月「それに、赤穂さんが御影さんが心配で動いてしまった気持ちは僕にもわかります。僕にも妹がいましたからね」

赤穂「……如月さんにも?」

如月「えぇ、もし同じ状況だったら……いえ、もしじゃなく実際同じ事をしました」

赤穂「……」

同じ事を、実際した?

如月「最も、僕は間に合いませんでしたが」

赤穂「それって……」
470 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/08/19(土) 01:08:23.06 ID:IdIX1z7A0






ブツンッ






471 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/08/19(土) 01:18:16.64 ID:IdIX1z7A0
赤穂「っ!?」

如月「これは……停電ですか?」

停電……それはあの時の事を思い出させる。

この島に来て最初の殺人、静音が殺されたあの時の事を……

「きゃあああああっ!」

「落ち着いて、これはきっと一時的な物でありますから!」

赤穂「っ……!」

誰かの悲鳴とそれをなだめる遠見の声が聞こえてくる。

やっぱり暗闇には思うところがあるって事か……

如月「しかしなぜ急に……佐場木さん達はどうしているんでしょうか」

赤穂「とにかく、カーテンを開けて日を入れましょう!今はまだ昼だから外は……」

閉じられたカーテンを急いで開ける。

すると日光が暗い部屋を……

日光が……

日光……

…………なんでだ?

なんでカーテンを開けても、暗いままなんだよ!?
472 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/08/19(土) 01:34:03.91 ID:IdIX1z7A0
佐場木「おい、全員無事か!」

道掛「なんだよこれ、何がどうなってんだ!」

赤穂「佐場木!道掛!外が暗いけどどうなってるんだ!?」

苗木「そ、外も急に暗くなったんだよ!月明かりもないし、本当に真っ暗で何がなんだか……」

佐場木「さらにもう1つ異常事態が発生した」

如月「異常事態?」

道掛「中央の島に繋がる橋が、なくなってんだよ!」

赤穂「な、なんだって……」

佐場木「どうやら俺達は……閉じ込められたらしいぞ」

佐場木「この、明かりのない島にな」

モノクマ「そのとーり!」

赤穂「モノクマ!これはなんなんだ!」

モノクマ「うぷぷ……どうもこのままだと早々にまた事件が起きそうだから後押しをね」

モノクマ「今回の動機はこの暗闇の島!」

モノクマ「暗闇は怖いからね、人によっては発狂しちゃうかもしれないし……」

モノクマ「オマエラみたいな虚弱にはキツいよね……」

モノクマ「それならコロシアイだよ!コロシアイをすればまた光がオマエラを照らしてくれるよ!」

モノクマ「ああ、もしくはボクが飽きるまで耐えたらやめてあげてもいいかもね!」

モノクマ「それじゃあ頑張ってね!暗い暗いこの島で……あーはっはっはっは!」

赤穂「……」

まだ、昨日学級裁判があったばかりで……みんなもかなりキツい。

そんな中で、俺達は耐えないといけないのか……?

この、不安を掻き立てる暗闇を……!
473 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/08/19(土) 01:35:21.32 ID:IdIX1z7A0
続きはまた今夜に。
474 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/08/19(土) 23:51:27.71 ID:IdIX1z7A0
パッ

赤穂「っ!」

これは明かり……

遠見「皆さん、大丈夫でありますか?」

佐場木「遠見か。その懐中電灯はどうした」

遠見「調査のために用意していた物であります。しかしまさかこんな事になるとは」

道掛「これからどうすんだ?これじゃあ琴羽ちゃん探すどころか歩くのも一苦労だぞ」

苗木「そもそも津浦さんが他の島にいたらどうしようもないよ……」

赤穂「……いや、津浦はこの島にいるんじゃないか?」

佐場木「なぜそう思う」

赤穂「モノクマのやり方を考えると、今津浦だけが安全圏にいるっていうのはないんじゃないか?」

如月「ふむ……津浦さんが他の島にいて亡くなっていた場合、それは事故、自殺以外の結論が出ません」

如月「あのモノクマがそんな学級裁判を望むとは思えませんね」

遠見「結論として、津浦殿はこの島にいる可能性が高いわけでありますか……」

佐場木「それならば見つける手間もあまりかからないか……遠見、予定を変更して俺とお前で捜索するぞ」

遠見「了解であります!」

佐場木「道掛と苗木はここに待機だ。何が起こるかわからない以上、気を抜くなよ」

ガチャッ

バタンッ
475 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/08/19(土) 23:59:15.28 ID:IdIX1z7A0
苗木「……本当、大変な事になっちゃったね」

道掛「とりあえず女子が大丈夫か確かめにいこうぜ!怖がってるかもしれないしな!」

赤穂「そうだな……俺は動けないから、牡丹の様子を見てきてくれるか?」

道掛「……お、おう。わかった、行ってくる」

苗木「あっ、ボクも行くよ」

バタンッ

なんだ?なんか変な空気になってなかったか……

如月「不思議なんですよ。赤穂さんから道掛さんに御影さんの事を頼むというのが」

赤穂「……そういう事ですか」

確かに、前までなら絶対邪魔してただろうな……

赤穂「……」

もう、そんな事言ってられなくなったからな……
476 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/08/19(土) 23:59:44.29 ID:IdIX1z7A0
今回はここまで。
477 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/09/09(土) 22:17:29.79 ID:2dNRUQTA0
※※※※

御影「……」

いきなり暗くなった島……モノクマはこれが次の動機だって言ってたね。

兵頭「まいりましたね。まさかこんな事になるとは」

ジェニー「ぐすっ、暗いのやです……」

土橋「大丈夫、大丈夫だよジェニー。こんなのいつまでも続くわけないんだから……」

六山「うーん……充電は出来るから本当に明かりだけなくしたんだね」

六山が持ってたゲーム機の明かりが辺りを照らす。

これがなかったら、私達は真っ暗な中にいてもっとパニックになってただろうね……

御影「……」ブルッ

正直私も暗いのは苦手……あの薄暗い研究施設を思い出すから。

布団を被って、何とか誤魔化してるけど、さっきから震えが止まらない。

そもそも病院ってだけだってキツいのに……

御影「……」カタカタ

こんな時兄さんがいてくれたら……
478 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/09/09(土) 23:03:34.46 ID:2dNRUQTA0
道掛「おーい、大丈夫かー?」

ジェニー「ソウヤ?」

苗木「ボクもいるよジェニーさん」

六山「どうしたの?津浦さんを探しに行くって言ってなかった?」

道掛「佐場木がメメちゃんと行くからって留守番。で、様子を見に来たってわけ」

兵頭「それでは今隣は如月さんと鞍馬さんと赤穂さんというわけですか。話している姿が想像出来ませんね」

苗木「いや、鞍馬クンはどこか行っちゃって……」

土橋「そうなの!?いくらなんでも自由過ぎじゃない……」

御影「……」

兄さんはやっぱり来れないか……仕方ないよね。

道掛「あー、そういや牡丹ちゃん大丈夫か?」

ジェニー「ボタンですか?」

道掛「赤穂が牡丹ちゃんの様子を見てきてくれって言ってたんだよ」

御影「……!」

兵頭「あらあら、やはり兄妹という事でしょうか?御影さん」

御影「……何が言いたいのさ」

兵頭「いえいえ、何でもありませんよ」

苗木「あはは、大丈夫そうだね。赤穂クン、本当に心配してたからよかったよ」

御影「……」

これだけで震えが止まるって……私、どれだけ単純なんだか。
479 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/09/09(土) 23:23:14.97 ID:2dNRUQTA0
※※※※

赤穂「……」

如月「……」

会話がない……さっきの如月さんの話の途中で停電が起きたからか?

なんか重い話だったみたいだし、今さら俺から聞くわけにもな……

如月「そういえば、話の途中でしたね」

赤穂「……いいんですか。あまり楽しい話じゃなかったみたいですけど」

如月「いえ、これも何かの縁でしょうからあなたには聞いてほしいですね赤穂さん」

赤穂「……わかりました」
480 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/09/09(土) 23:42:27.04 ID:2dNRUQTA0
如月「僕に妹がいた話はしましたね、僕は間に合わなかったという事も」

如月「僕と妹は両親に捨てられ、教会の孤児院で育ちました」

如月「院長先生は寡黙な方でしたが、僕達をとても可愛がってくれて」

如月「院長先生の養子になっていたのは妹と同い年だった女の子だけでしたが、それを不満に思う事もありませんでした」

如月「あの頃は本当に幸せでしたね」

如月「その歯車が狂いだしたのはいつ頃だったか……ああ、やはり妹の体質がわかったあの日ですね」

赤穂「体質?」

如月「……妹は病気でした。それも生きているのが不思議なほど重い病」

如月「ですが妹は普通に過ごしていたんですよ。まるで病気なんてないかのように」

赤穂「そんな事が……」

如月「それがわかった時、妹は奇跡の少女だと言われていました。ですが……」

如月「その後を考えれば、あんなもの奇跡どころか呪いでしたよ」
481 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/09/09(土) 23:59:26.64 ID:2dNRUQTA0
如月「あの日、妹を引き取りたいという男が教会を訪ねてきました」

如月「院長先生とその男が話し合って、妹は引き取られる事になりました」

如月「院長先生はその男は医者だから、病気を治してくれるだろうと言っていましたけど……僕はその男が妹を見るその目がどうしても気になってしまいました」

如月「まるで動物を見るようなあの目が」

如月「だから、僕は院長先生の部屋からあの男の名刺を持ち出して、その男が住む家……いえ、研究施設に着いて、見てしまったんです」

如月「……あまり愉快な話ではないので結論だけ言います」

如月「妹は生きたまま解剖されてました」

如月「あの男はただ妹の体質を調べるためだけに」

如月「あの子が泣き叫ぶのも聞き入れず、バラバラにしたんですよ」

如月「僕は飛び込みました。妹を助けるために、もう妹は動いてなかったのに」

如月「……大人と子供の差か、僕はあっさりと負けました。そして妹の代わりになるかもしれないと実験台にされかけました」

如月「僕は、偶然近くにいたよく教会に来ていた男の子の父親に助けられました」

如月「あの男が逃げて、妹の亡骸を前に泣くしか出来ない僕を連れてその人は教会に戻って」

如月「院長先生と話をしてくると言ってその人は教会に入っていきました」

如月「……今でも思い出せますよ。院長先生とあの人、当麻さんが話していたあの光景はね」
482 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/09/30(土) 23:44:28.05 ID:CtFlroGA0
【如月回想】

「神乃木、聞きたい事がある」

「いきなり来たかと思えばなんだ、当麻」

「お前はあの男がマッドサイエンティストだと知っていながらあの子を引き渡したのか?」

「……」

「知っていたんだな……子供達を幸せにする、それが自分の償いであり懺悔だと俺に言ったあれは嘘だったのか!」

「嘘ではない。私は子供達の幸せを願っているさ」

「なら……」

「だからこそ、尊い犠牲は必要ではないか?」

「……なに?」

「あの子があの男に研究され、その果てに多数の命が救われる……それがどれだけ素晴らしいか、いずれあの子も理解するだろう」

「……」

「ならばきっとあの子は幸せだ。優しい子だったからな……人助けになるとわかれば死をも幸せに変えられるだろう」

「……それが、お前の本音か」

「本音も何も、私は何一つ嘘を語った覚えはないが?」

「神乃木……お前は俺の友人だ」

「ああ、私もそう思っているとも」

「だからこそ、俺はお前のその間違いを看過するわけにはいかん!」

「……間違い?」

「お前の思う幸せについてはとやかく言わない。しかし子供に押しつけるならそれは間違いだ!俺はあの子の涙を、幸せに必要な犠牲などとは認めない!」

「……」

「俺が今言えるのはそれだけだ……後で俺の家に来い。話し合う事は山ほどあるからな」

「……ああ」

如月「…………」
483 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/09/30(土) 23:58:42.08 ID:CtFlroGA0
如月「……その後でした。当麻さんが殺されたのは」

赤穂「……!」

如月「犯人は一人しかいなかった。だけど僕は何もできませんでした」

如月「法で裁こうにも証拠はなく、僕自身にはあまりにも力がなかったんです」

如月「僕は孤児院から逃げました。それからの数年はただ生きるために時間を費やしましたね」

如月「そんな日々が続いて、僕はある日、ある人物と出会いました」

如月「その人は脳神経に関してまさに天才と呼ぶにふさわしい人で……僕はその人にお願いしたんです」

如月「人間には力を使いすぎて壊れないよう、脳にリミッターがかかっています」

如月「そのリミッターを外せないかと」

如月「彼は笑って引き受けてくれました。そして手に入れたのが今の僕のこの力です」

如月「その足で僕は孤児院に向かいました、今ならあの院長にだって勝てるはずだと」

如月「ですが、僕は復讐できませんでした」

如月「院長は……病気で亡くなっていたんです」

如月「僕は目的を失いました。しかし院長はある物を残していたんです」

如月「世間の悪人に関するデータ。妹と同じような犠牲を産み、のうのうと生きている悪……僕はそれを見て、決意したんです」

如月「この力で悪を全て裁こうと。たとえこの身が血にまみれようとも正義を執行しようと」

如月「そうして僕は、ジャスティスジャッジになったんです」
484 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/09/30(土) 23:59:11.76 ID:CtFlroGA0
短いですがここまでで。
485 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/10/28(土) 23:00:51.60 ID:pKYtG+hG0
赤穂「……」
 
如月さんの話に俺は何を言ったらいいかわからなかった。
 
憧れだった如月さんのルーツ、それは妹さんの死で。
 
もし牡丹が同じような目に遭わされていたとしたら……俺はきっとこの人と同じ道を進んでいただろう。
 
如月「無論僕のしている事は人殺しです。認められない人がいる事だってわかっているし、だからこそ僕も【超高校級のヒーロー】という仮面を被っているんですから」
 
赤穂「……如月さん」
 
如月「赤穂さん、そんな僕だからこそあなたにこう言えると思います」
 
如月「あなたは殺す事が芯にまで染み付いた僕とは違う道、【本当のヒーロー】の道を行ける」
 
如月「だから僕に憧れるのも僕と比較して無力だと嘆くのもよしなさい」
 
如月「赤穂政城の目指すヒーローは、僕という存在とはかけ離れているんですから」
 
赤穂「……」
 
如月「……さて、そろそろ一度眠った方がいいですよ。色々あって疲れたでしょうから」
 
赤穂「……わかりました」
 
如月さんの言葉に促されるまま、俺は目を閉じる。
 
如月さんとは違う【本当のヒーロー】、か……
486 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/10/28(土) 23:07:30.84 ID:pKYtG+hG0
 
 
 
 
 
 
如月「あなたと僕は決定的に違う」
 
如月「だってあなたは失っていない」
 
如月「……」
 
如月「嫉妬なんて感情、僕には無縁と思っていたんですがね」
 
 
 
 
 
 
487 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/10/28(土) 23:19:17.91 ID:pKYtG+hG0
【11日目】
 
赤穂「……ん」
 
今、何時だ……
 
道掛「おっ、起きたか」
 
赤穂「道掛?如月さんは……」
 
道掛「如月なら今、仮眠とってるぜ。結局1日眠らずに番してたみたいだからな」
 
赤穂「……1日?」

道掛「おう、今日はえーっと、この島来てから11日目だな。さっき百夏ちゃんのゲーム機に映ってた時間は9時だったぜ」
 
赤穂「放送はなかったのか?」
 
道掛「いや、あったぞ。赤穂、よっぽど疲れてたんじゃねえの?」
 
赤穂「そうか……眠ってた間に何かあったか?」
 
道掛「牡丹ちゃんと千ちゃんが一応歩けるようになったのと……琴羽ちゃんが見つかった事だな」
 
赤穂「津浦が!?それで、津浦は今……」
 
道掛「いや、それがな……」
 
バンッ!
488 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/10/28(土) 23:23:04.93 ID:pKYtG+hG0
 
 
 
 
 
 
「フハハハハッ!目覚めたか聖痕抱きし英雄よ!!」
 
 
 
 
 
 
489 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/10/28(土) 23:38:50.23 ID:pKYtG+hG0
赤穂「っ!?」
 
俺はその言葉に耳を疑った。
 
「ふむ、さらに聖痕が刻まれたようだな……しかしそれもまた英雄たる証!誇るがいい!」
 
それは四方院さんを殺して処刑されたはずのグレゴリーのような口調。
 
「漆黒の闇とは絶望の化身も考えたものよ……だがしかし!希望の種たる我ら、このような闇払ってみせようではないか!」
 
だけど声は紛れもなく、津浦のもので。
 
……俺はこの時ほど、暗闇に目が慣れた事が嫌になった事はない。
 
津浦「フハハハハッ!!」
 
そうじゃなければ、仮面とマントを着けてその仮面の下から血を流す津浦を、はっきり認識せずに済んだんだから。
490 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/10/29(日) 00:00:31.57 ID:JeS8YLNP0
遠見「……津浦殿!何をしているのでありますか!」
 
津浦「Ms.遠見?あっ、痛っ……目が、目が痛いです……」
 
遠見「さあ、病室に戻るでありますよ……津浦殿は怪我をしているのでありますから」
 
津浦「何を言う!言の葉の魔術師はもうこの現世のどこにもいないではないか!」
 
津浦「はい、Ms.遠見……ご迷惑をおかけします……」
 
バタンッ
 
赤穂「……何が、どうなってるんだ」
 
道掛「……琴羽ちゃん、ショックでグレゴリーみたいになっちまってるんだよ」
 
道掛「なんか、琴羽ちゃんはルール違反して処刑されたんだってよ……」
 
赤穂「だけど今津浦として遠見に返答してなかったか?」
 
道掛「ああ、なんか時々琴羽ちゃんに戻るんだよ……その時の琴羽ちゃんにグレゴリーの話題は禁句だぞ」
 
赤穂「……なんでだ?」
 
道掛「裏切り者の話なんかしたくもない……ってさ」
 
赤穂「……」
 
道掛「今琴羽ちゃんはグレゴリーに対する……えーっと、なんだったけか」
 
苗木「グレゴリークンへの思慕と憎悪がせめぎあってる状態……だよ、道掛クン」
 
道掛「おお、苗木」
 
苗木「グレゴリークンは自分を助けてくれた。だけどグレゴリークンは学級裁判で自分を切り捨てようとした」
 
苗木「そんなグレゴリークンの相反する行動で、心がどうしたらいいのかわからない……そんな状態なんだって」
 
赤穂「……そう、か」
 
苗木「なんか、もう……本当にどうなるんだろうねボク達」
 
暗闇、津浦、牡丹達を襲った存在……
 
あまりにも俺達には抱える問題が、多すぎた。
491 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/10/29(日) 00:01:26.85 ID:JeS8YLNP0
今回はここまで。
それではまた……
492 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/11/11(土) 22:20:00.64 ID:F89UuPLA0
コンコン

赤穂「んっ、どうぞ」

ガチャッ

御影「兄さん……」

赤穂「牡丹っ!?大丈夫なのか……痛っ!」

御影「ちょ、ちょっと!兄さんの方が傷深いんだから!」

赤穂「そうは言ってもな……いたた」

御影「もう……本当に無茶する所は変わらないんだから」

赤穂「……」

なんだ、なんか牡丹の雰囲気が柔らかくなったな……

赤穂「というか、兄さんって」

御影「んっ……まあ、こんな事になった以上変に意地張るのもね」

赤穂「意地か……なあ、牡丹。意地張るのやめたなら教えてくれよ、お前に何があったんだ?」

御影「……」

赤穂「この数年、何か良くない事があったのはわかるんだよ。だけどあの薬といい、その髪といい……」

御影「……知りたい?」

赤穂「……ああ」

御影「……わかった、話すよ。先に言っとくけど、現実的な話じゃないから」

そして牡丹は語りだした……

だけどその話は……

御影「私の才能は【超高校級の被験体】……モルモット、ペットみたいなものなんだ」

昨日如月さんから聞いた話とほとんど同じだった。
493 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/11/11(土) 22:37:14.89 ID:F89UuPLA0
赤穂「……」

牡丹を拉致したマッドサイエンティスト、病気を抱えて死なない身体……あまりにも似てる。

御影「あの薬は痛み止め、髪は色々弄くられた結果……死なないなら痛みも何とかしてほしいぐらいだよね」

牡丹は、如月さんの妹と同じ……体質、なのか。

御影「兄さん?」

赤穂「……あ、ああ。よく話してくれたな」

御影「信じるの?」

赤穂「ああ、信じるよ。こんな嘘ついても意味ないしな……ところで、その男は今?」

御影「わかんない。無我夢中で逃げたからさ……」

赤穂「……そうか」

もし生きてるなら、絶対捕まえて牡丹を傷つけた罪を償わせてやる。

野放しにして、被害者が出てもいけないからな……

赤穂「……なあ、牡丹」

御影「なに?」

赤穂「俺も話したい……謝りたい事があるんだ」

モノクマフラワーに食われようとしていたお前を助けられなかった。

それはやっぱり、どうしても……

御影「いいよ、別に。私助かったんだし」

赤穂「は……」

御影「如月から聞いた。兄さんがあの場にいて自分責めてるって」

御影「でもほら、それってさ……兄さんが誰かを助けた結果でしょ?」

赤穂「……」

御影「それなら自分責めるなんてやめてよ」

御影「わたしにとってもヒーローだった兄さんにそんな、誰かを助けた事を後悔してるような真似してほしくないから」

赤穂「……牡丹」

御影「とにかく改めてさ……また兄妹としてよろしく」

赤穂「……俺はずっと兄妹のつもりだったけどな」
494 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/12/02(土) 20:23:01.25 ID:IolO1JtA0
赤穂「……」

牡丹と和解……いや、別に喧嘩していたわけでもないからその言い方は変か。

とにかくまた兄妹に戻れてよかった……けど問題は未だに山積みだ。

赤穂「まずは歩けるぐらいには怪我を治さないとな……」

コンコン

赤穂「どうぞ」

佐場木「調子はどうだ」

遠見「見回りも兼ねてお見舞いに来たでありますよ」

赤穂「動くと痛むけどそれ以外は特に問題ないな……まあ、昔はもっと酷い怪我したし」

遠見「赤穂殿は無茶しすぎでありますよ!下手をすれば失血死してもおかしくなかったであります!」

赤穂「うっ……」

遠見、相当怒ってるな……

佐場木「だが、お前の行動で色々とわかってきたのも事実だ」

赤穂「わかってきたって、何がだ?」

佐場木「前に苗木が言っていた静音にアドバイスした者の話は覚えているか」

赤穂「ああ、そんな話もあったな」

佐場木「恐らく今回お前を撃ち、御影と兵頭を襲ったのと同一犯だ」

赤穂「なんだって!?」

遠見「さらに前回の事件でグレゴリー殿と四方院殿を水族館に呼び出したのも、このアンノウンだと自分達は睨んでいるでありますよ」
495 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/12/02(土) 20:32:40.23 ID:IolO1JtA0
赤穂「……やっぱりそうなのか」

グレゴリーには四方院さんにゴシップ誌を送りつける理由はないと思ってはいたけど……

佐場木「前回の事件、学級裁判でグレゴリーはこう言っていた」

【グレゴリー「…………ぐっ、くっ!」

グレゴリー「なぜだ、なぜこうなった?」

グレゴリー「あのような手紙さえなければ!水の都に優雅なる吹き手がいなければ!」

グレゴリー「我は……!」】

赤穂「グレゴリーも手紙で呼び出されていたって事だよな」

遠見「そこで自分に関しての記事の載った雑誌を持つ四方院殿と会ったのでありますね……」

佐場木「そこで何があったかはもうわからん。だがこれではっきりした」

佐場木「このコロシアイ、こそこそと動き回る奴がいる事がな……」

赤穂「……」

アンノウン……そいつが今までの事件の……!
496 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/12/02(土) 22:04:51.24 ID:IolO1JtA0
赤穂「ところで……誰がそのアンノウンなのか目星はついてるのか?」

佐場木「俺と遠見、そしてお前と如月、襲われた土橋、御影、兵頭は容疑者から外れる」

遠見「苗木殿も違うのでは?彼が静音殿へのアドバイスについて話したからこそ、我々は警戒したのでありますし」

赤穂「じゃあ後は鞍馬、道掛、津浦、六山、ジェニー……」

遠見「そのメンバーで怪しいのはやはり、鞍馬殿でありますか」

佐場木「一人だけ才能が不明、単独行動の多さ、如月と渡り合える戦闘能力……推理小説ならあからさますぎてミスリードのための存在だろう」

赤穂「だけどこれは」

佐場木「小説じゃないか……鞍馬には気をつけておく必要があるな」

鞍馬……お前がアンノウンなのか?

俺には、悪い奴には見えなかったんだけどな……
497 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/12/02(土) 22:20:01.93 ID:IolO1JtA0
佐場木「どのみち鞍馬は才能以外に何かを隠している……警戒対象である事に変わりはない」

遠見「くっ、軍人だというのに危険人物を拘束も出来ないとは、自分が情けないであります……!」

赤穂「遠見……」

佐場木「ならその分他で役に立て。発電所に行くぞ遠見」

赤穂「あっ、おい佐場木」

佐場木はもう少し言葉を選んでもいいだろうに……

遠見「……」

赤穂「どうした?」

遠見「佐場木殿は優しいでありますなぁ……」

赤穂「……優しいか?いや、真面目ではあるだろうけど」

遠見「あれは他で役に立てる事があるから気にするなと言っているのでありますよ!隊長もそうでありましたからよくわかるであります!」

赤穂「そう、なのか?」

遠見「間違いないでありますよ!」

俺にはよくわからない……

遠見「その命令、了解したでありますよ!」

まあ、遠見が嬉しいなら……いいのか?
498 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/01/03(水) 22:22:54.77 ID:Bs1EuBwW0
コンコン
赤穂「どうぞ」
……
赤穂「……?どうぞ」
カチャ
ジェニー「……」ヒョコ
赤穂「……ジェニー?」
ジェニー「うう……」
どうしたんだいったい……
土橋「ほらほら、何してるの」
ジェニー「わわっ、ミキ……」
赤穂「土橋、ジェニーはどうしたんだ?」
土橋「どうもこの子暗いとこ苦手になっちゃったみたいで……移動するのも相当苦労してるんだよ」
ジェニー「怖いのやです……」
薄井が静音を殺すための暗闇……あれを実際に作らされたのはジェニーだ。
その事が暗闇への苦手意識を生んでるんだろうな……
土橋「それでも政城のお見舞い行きたかったんでしょう?だったらほら、顔見せてあげなって」
ジェニー「は、はいです……」
不安そうな顔をして近付いてくるジェニーに昔の牡丹の顔が重なる。
赤穂「なあ、ジェニー」ナデ
ジェニー「マサキ?」
赤穂「確かに色んな事があって、不安になるのもわかる……暗闇が苦手になるのもな」
赤穂「それでもジェニーはこうして来てくれた。だからきっとジェニーなら大丈夫だよ」
赤穂「まあ、それでも不安ならこんなだけど俺を頼ってくれてもいいからな?出来る限りの事はするよ」
ジェニー「……」
土橋「いい事言うね政城!ジェニー、アタシにも不安ならいつでも甘えてきなよ!」
ジェニー「マサキ、ミキ……はいです!」
少しは、不安を取り除いてやれたか……?
それなら何よりなんだけどな。
499 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/01/03(水) 22:29:21.16 ID:Bs1EuBwW0
コンコン
 
赤穂「どうぞ」
 
……
 
赤穂「……?どうぞ」
 
カチャ
 
ジェニー「……」ヒョコ
 
赤穂「……ジェニー?」
 
ジェニー「うう……」
 
どうしたんだいったい……
 
土橋「ほらほら、何してるの」
 
ジェニー「わわっ、ミキ……」
 
赤穂「土橋、ジェニーはどうしたんだ?」
 
土橋「どうもこの子暗いとこ苦手になっちゃったみたいで……移動するのも相当苦労してるんだよ」
 
ジェニー「怖いのやです……」
 
薄井が静音を殺すための暗闇……あれを実際に作らされたのはジェニーだ。
その事が暗闇への苦手意識を生んでるんだろうな……
 
土橋「それでも政城のお見舞い行きたかったんでしょう?だったらほら、顔見せてあげなって」
 
ジェニー「は、はいです……」
 
不安そうな顔をして近付いてくるジェニーに昔の牡丹の顔が重なる。
 
赤穂「なあ、ジェニー」ナデ
 
ジェニー「マサキ?」
 
赤穂「確かに色んな事があって、不安になるのもわかる……暗闇が苦手になるのもな」
 
赤穂「それでもジェニーはこうして来てくれた。だからきっとジェニーなら大丈夫だよ」
 
赤穂「まあ、それでも不安ならこんなだけど俺を頼ってくれてもいいからな?出来る限りの事はするよ」
 
ジェニー「……」
 
土橋「いい事言うね政城!ジェニー、アタシにも不安ならいつでも甘えてきなよ!」
 
ジェニー「マサキ、ミキ……はいです!」
 
少しは、不安を取り除いてやれたか……?
それなら何よりなんだけどな。
500 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/02/04(日) 12:00:35.80 ID:5XlKphzG0
コンコン
 
赤穂「どうぞ」
 
ガチャッ
 
六山「やっ、元気かな赤穂くん」
 
赤穂「六山か。まあ、今すぐどうこうはならない程度には……みんなはどうしてる?」
 
六山「暗いと何あるかわからないから佐場木くんと遠見さん以外は基本的に待機してるよ。時々外の空気を吸いに行く人はいるけど」
 
赤穂「そうか……」
 
六山「ところで赤穂くんさ……ずっとベッドにいて暇だよね?」
 
赤穂「んっ?みんなが来てくれるからあんまり……」
 
六山「暇だよね?」ズイッ
 
赤穂「た、多少は」
 
六山「そんな赤穂くんのためにゲームを用意したよ。ほら、暇潰せるようなのいっぱい持ってきたから早速やってみて」
 
赤穂「あ、ああ」
 
ゲームか……確かにこうして動けない以上手持ちぶさたな時間はあるけどな……
 
六山「ほら、こんな暗いと気も滅入るし気分転換だと思ってさ」
 
赤穂「そうだな……ありがとう六山」
 
六山「どういたしまして」
 
その後六山に操作方法を聞きながらゲームをした。
 
途中から操作してる俺より六山の方が熱くなってたけどな……
501 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/02/04(日) 12:25:39.29 ID:5XlKphzG0
道掛「おーっす赤穂!」
 
赤穂「道掛……それに」
 
鞍馬「……」
 
赤穂「鞍馬も来てくれたのか」
 
道掛「なんか廊下にいたら一緒にな」
 
鞍馬「……勝手に連れてきてよく言いますね」
 
ああ、そういう事か。
 
まあ鞍馬はお見舞いするタイプには見えないしな。
 
道掛「そう言うなって!俺のダチなんだから赤穂と鞍馬だってダチみたいなもんだろ?」
 
鞍馬「……」
 
鞍馬の目が細められる……いつあなたと友達になりましたと言わんばかりだ。
 
鞍馬「いつあなたと友達になりました」
 
そのまま言った……歯に衣着せぬというか、なんというか。
 
道掛「何言ってんだ?熱い勝負をした瞬間からダチだって前に言ったじゃねえか!」
 
赤穂「全く気にしない道掛もすごいな……」
 
鞍馬はかなりはっきり拒絶してるんだろうに。
 
道掛「何がだ?まあすごいって言うなら褒められたんだな俺!」
 
鞍馬「……もういいです」
 
鞍馬が諦めた……
 
赤穂「……」
 
やっぱりこんな鞍馬がアンノウンとは思えないよな……?
502 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/02/24(土) 22:03:14.89 ID:6nPTOVHe0
苗木「赤穂クンは自分が無力だって思う事ないかな?」
 
赤穂「……無力?」
 
病室に来た苗木からいきなりされたその質問、俺はその意図が見えなかった。
 
苗木「ほら、みんなは頑張ってこの状況を何とかしようとしてる。けどボクは何の役にも立ててないからちょっとね……」
 
赤穂「何言ってるんだ。苗木は佐場木の手伝いとかよくしてるじゃないか」
 
苗木「でもそれってはっきり言っちゃえばボクである必要ないよね?」
 
赤穂「それは……」
 
苗木「御影さんだって赤穂クンのために傷薬探してたんだよね?鞍馬クンだってなんだかんだでやる事はしてるし……」
 
赤穂「……」
 
苗木「……って、あはは、こんな事話されても困るよね?忘れてくれていいよ」
 
赤穂「ある」
 
苗木「えっ?」
 
赤穂「無力だって思う事だろ?たくさんある」
 
この島に来てからもそう考えてしまうような事ばっかりだ。
 
赤穂「正直この場で一番の役立たずは俺なんじゃないかって思う時もな」
 
苗木「そ、そんな事ないよ!赤穂クンは出来る事を立派にやろうと……」
 
赤穂「それは苗木だって同じじゃないか」
 
苗木「……」
 
赤穂「俺にそう言ってくれるなら、苗木もそんなに悲観しないでいいんじゃないかって俺は思うぞ?」
 
苗木「……」
 
赤穂「そう簡単には割りきれないだろうけど、な」
 
苗木「…………うん、ありがとう」
503 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/02/26(月) 22:22:24.12 ID:6Jq43wM/0
赤穂「……」
 
兵頭「失礼します」
 
赤穂「兵頭?」
 
兵頭「お元気そうで何よりです。赤穂さんに何かあったら御影さんが泣いてしまいますから」
 
赤穂「お、おいおい……わざわざそんな事言いに来たのか?」
 
兵頭「いえいえ、今のはちょっとしたジョークですよ。本題はこれからです」
 
赤穂「笑えないジョークはやめてくれ……」
 
兵頭「ふふっ、すみません。それでですね、本題というのは津浦さんの事なんです」
 
赤穂「津浦……また何かあったのか?」
 
兵頭「赤穂さんも彼女が今グレゴリーさんを演じているのは知っているでしょうが、このままだと津浦さんの心は取り返しがつかなくなると思います」
 
赤穂「……確かにな」
 
兵頭「そこで赤穂さんにも何か考えていただこうかと思いまして」
 
赤穂「俺にか?」
 
兵頭「四方院さんがいなくなった以上、赤穂さんは女子のリーダーでもありますからね」
 
いつの間に……
 
赤穂「でもそうだな……津浦を何とかしないといけないのは事実だし、考えてみる」
 
兵頭「ふふっ、ありがとうございます」
 
赤穂「だけどなんで兵頭がそんな事を気にするんだ?津浦と特別親しかったわけでもないだろう」
 
兵頭「さあ、なんででしょうね?」
 
赤穂「……?」
 
意味深な笑みのまま兵頭は病室から出ていった。
兵頭の思惑はともかく……津浦をそのままにはしておけないよな。
504 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/02/26(月) 22:39:33.97 ID:6Jq43wM/0
如月「津浦さんの事ですか」
 
赤穂「はい」
 
あれから考えてみたけど、頭いいわけでもない俺に名案がパッと出てくるわけもない。
 
早々に行き詰まった俺は如月さんに相談してみる事にした。
 
如月「そうですね……やはり津浦さんの心の強さに賭けるしかないと思いますが」
 
赤穂「……」
 
だけど津浦はどちらかと言えば脆い方だよな……
 
通訳になった理由も怖いから、だった。
 
むしろ津浦の反応が普通なのかもしれないけど。
 
赤穂「時間薬に頼るしかないんですか?」
 
如月「ショック療法は津浦さんには逆効果でしょうからね……【超高校級のカウンセラー】でもいればよかったんですが」
 
カウンセラーか……
505 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/03/10(土) 21:35:51.32 ID:eWyP25cA0
キーン、コーン、カーンコーン
 
モノクマ「夜10時になりました!」
 
モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」
 
モノクマ「うぷぷ、また明日……」
 
赤穂「もう夜なのか……」
 
明かりが六山のゲーム機しかないから時間の感覚がおかしくなってるな……
 
赤穂「この暗闇、アンノウン、津浦の事……問題は山積みだ」
 
せめて何か1つでも打開出来れば……
 
グルグルと思考が回る。
 
その内に俺の意識は遠のいていった。
506 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/03/10(土) 22:03:22.15 ID:eWyP25cA0
【12日目】
 
キーン、コーン、カーンコーン
 
モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」
 
モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」
 
赤穂「朝……今日で12日目だったか」
 
これだけ経てば未来機関が救出に動いてもおかしくないはずなんだ……だけどまるでその気配がない。
 
赤穂「優秀な人間があれだけいる未来機関がそうそうどうにかなるとは思えないけど……」
 
救出は、期待しない方がいいのかもしれないな……
507 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/03/10(土) 22:23:25.38 ID:eWyP25cA0
御影「兄さん、ご飯だよ」
 
赤穂「ああ、悪いな牡丹。お前だって怪我人なのに」
 
御影「別に気にしないでよ。発作の痛みに比べたら全然だし」
 
赤穂「……反応に困るぞ」
 
御影「……うん、なんかごめん」
 
如月「おや……」
 
赤穂「あっ、如月さん」
 
如月「……」
 
御影「……な、何。ジッと見て」
 
如月「いえ、なんでもありませんよ」
 
赤穂「……」
 
多分牡丹に妹さんを重ねてるんだ……
 
体質の事までは如月さんも知らないだろうけど……それを知ったら、どんな気持ちになるんだろうな……
 
如月「廊下にいます。何かあれば呼んでください」
 
御影「……なんなの?」
 
赤穂「如月さんにも色々あるんだよ」
 
御影「色々、ねぇ」
508 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/04/20(金) 22:23:09.82 ID:5+Q2ID5a0
赤穂「……」
 
ジェニー「……」
 
ジェニーが来たのはいいけど全く喋らない……何かあったのか?
 
赤穂「えっと、ジェニー?」
 
ジェニー「……マサキ」
 
赤穂「んっ?」
 
ジェニー「どうしたらセイを元気にできますか?」
 
赤穂「苗木?」
 
ジェニー「セイ、すごく落ち込んでたです……自分が何も出来ないって」
 
苗木、やっぱり割りきれてなかったのか……
 
ジェニー「ボク、セイには笑っててほしいです……どうしたらいいです?」
 
とは言うものの、苗木の無力感は自分の心の問題だしな……
 
ジェニー「ボクはピエロですから人を笑わせないといけないのに……」
 
赤穂「……んっ?なあ、ジェニーちょっといいか?」
 
ジェニー「はいです?」
 
赤穂「いや、違ったら謝るけど……ジェニーはピエロは誰かを笑わせないといけないから苗木を笑わせたいのか?」
 
ジェニー「……?」
 
赤穂「いや、ジェニーはただ苗木を笑わせたいから悩んでるのかと思ってたからさ……」
 
ジェニー「違う、です?」
 
赤穂「いわゆる最終目標がどこかだよな。ジェニーは苗木を笑わせてピエロの仕事を果たしたいのか?それとも苗木に笑ってほしいのか?」
 
ジェニー「ボクは……アレ?ボクは、どうしたいです?」
 
赤穂「……ちょっと落ち着いて考えてみるか?その様子だと答えはわからないみたい、だしな」
 
ジェニー「は、はい……」
 
混乱した表情のままジェニーは病室から出ていく。
我ながら意地悪な質問だったかもしれない……だけどジェニーはいい子だし、ここで変な方向には行ってほしくないんだよな……
509 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/04/20(金) 23:28:21.57 ID:5+Q2ID5a0
佐場木「なかなか上手くはいかないな」
 
佐場木が椅子に腰かけて書類らしきものを見ている。
なんでわざわざここで見てるんだ……?
 
赤穂「何を見てるんだ?」
 
佐場木「発電所の見取り図だ。最も手描きだがな」
 
佐場木が渡してきた紙を照らしてみれば、確かにそれは建物の外観みたいな物が描かれていた。
 
赤穂「発電所か……俺はこの島を自分の目で調べられてないけど入れそうなのか?」
 
佐場木「難しいと言わざるを得ない。この発電所は金網で囲まれ唯一の扉にもパスワードでロックがかかっている」
 
赤穂「パスワード」
 
佐場木「何桁なのかもわからん以上総当たりも困難な作業だ。遠見は徹夜でやると言っていたが」
 
遠見らしいな……
 
佐場木「しかしそんな事をやらせるわけにもいかない。いざというときには奴の力が必要になるからな」
 
赤穂「……信頼してるんだな」
 
佐場木「この島に来てから常に行動を共にしていればそれなりの関係は構築できる」
 
……信頼してるって事でいいんだよな?
510 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/05/05(土) 00:02:57.14 ID:HNJTJxww0
土橋「なんかジェニーが悩んでるみたいなんだよね」
 
土橋に身体を拭かれながらされた話、それは俺にも心当たりがある話だった。
 
……一応言い訳すると俺は自分で拭けるって断ったんだぞ。
 
赤穂「ああ、苗木の元気がないから笑わせたい……らしいぞ?」
 
土橋「あー、あー、なるほど。だからあんなに唸りながらお手玉してたんだ」
 
……多分俺の言った事も影響してるだろうけどそれは黙っておこう。
 
土橋「半次やメメも忙しくしてるし、この暗さもあるし問題は山積みだよね」
 
赤穂「そうだな……本当に参った」
 
土橋「よし、身体拭くの終わったよ!」
 
赤穂「ああ、ありがとうな」
 
土橋「こんなのアタシのしてもらった事に比べたらお安いご用だし」
 
赤穂「なあ……よく考えたらそれは俺をコテージに連れていってくれた事でチャラになるんじゃないか?」
 
土橋「えっ」
 
赤穂「いや、だから助けられたのはお互い様だしそこまで……」
 
土橋「政城!」
 
赤穂「な、なんだ!?」
 
土橋「……なんでもない」
 
赤穂「???」
 
なんだか土橋の機嫌が悪くなってないか……?
511 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/05/05(土) 00:28:29.50 ID:HNJTJxww0
赤穂「……というわけなんだが」
 
道掛「かー!そりゃダメだっての赤穂!」
 
遠見「同感であります」
 
あの後結局土橋の機嫌は元に戻らず、やって来た道掛と遠見に相談して返ってきた答えがそれだった。
 
赤穂「いや、実際そうだろう?土橋がコテージに連れていってくれなかったら、俺は治療も出来ずにどうなっていたかわからなかったんだぞ?」
 
道掛「そうかもしんねえけどでもこの場合は不正解なんだよ!」
 
赤穂「……よくわからないな。遠見も道掛と同意見みたいだけど」
 
遠見「そうでありますね……自分は軍人でありますから、命のやり取りは日常茶飯事でありましたが」
 
遠見「そんな自分でも隊長に救われた時の恩義は未だに返せていないと思っているでありますよ」
 
遠見「軍人である自分がそうなのだから、そうでない土橋殿の赤穂殿への恩義はさらに強いものであるのでは?」
 
赤穂「つまり土橋にとってはチャラに出来るような事じゃないから怒ったのか?」
 
遠見「きっとそうであります。自分も隊長に同じように言われたら反発するでありますよ」
 
そうか……そこまで思ってくれてるんだな。
 
道掛「いやいやいやいや!全然ちげえよ!」
 
遠見「違うのでありますか!?」
 
赤穂「どういう事だよ道掛?」
 
道掛「だから美姫ちゃんはだな……」
 
道掛「…………やっぱやめるわ」
 
赤穂「は?」
 
道掛「多分向こうもわかってないだろうし、わざわざこっちで言う事じゃねえし」
 
赤穂「おい道掛?」
 
道掛「いいからせいぜい悩んどけ!青春らしくな!」
 
遠見「どういう意味でありますか……」
 
俺にもわからない……
512 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/05/28(月) 23:38:00.71 ID:ustmOqJA0
六山「んー……」カタカタ

また暇潰しにとゲームを持ってきた六山が説明もそこそこに椅子に座ってパソコンを弄り始める。

ゲーム以外を操作してるなんて珍しいな……

赤穂「何してるんだ?」

六山「御影さんからもらったんだ。電気街を調べてる時にデータファイルの入ったパソコン見つけたらしくて」カタカタ

赤穂「データファイル?」

六山「うん、中は暗号化されててわかんないんだけど。だからデバッガーのわたしに頼んだんだろうね」カタカタ

赤穂「どうにかできそうか?」

六山「まあ、そんなに時間はかからないと思うよ?明日には出来るんじゃないかな」カタカタ

赤穂「そうか……何か手がかりが出てくればいいけど」

六山「何が出るかお楽しみってやつだね。これをランダムの宝箱だと思ってわたし頑張るよ」

宝箱か……六山らしい考え方だな。
513 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/05/29(火) 00:10:45.42 ID:xrYljAjA0
津浦「聖痕抱きし英雄よ!そのマナは枯渇していないか!」

赤穂「……」

津浦は昨日と変わらずグレゴリーを演じている。

自分を救い、裏切った……そう感じているはずの男を、津浦は何を思って演じているのか。

津浦「どうした?沈黙の術式でもかけられているのか?」

だけどこのままでいいわけもない。

とにかくまずは津浦と話せるようにしたいけど……どうすれば。

ガチャッ

鞍馬「……」

赤穂「鞍馬?」

津浦「むっ…………」

赤穂「……?」

どうしたんだ?津浦が鞍馬を見た途端に……

鞍馬「グレゴリー・アストラル三世が僕を何と呼んでいたかわからないんでしょう?」

津浦「っ!?」

鞍馬「お粗末なものだ。どれだけ演じようと津浦琴羽はグレゴリー・アストラル三世ではない。あなた自身が把握していない彼の行動はトレース出来ませんよ」

津浦「っ、Mr.鞍馬……」

鞍馬「それで?あなたはいつまで壊れたフリをしているつもりですか?」

津浦「っ!!」タタタッ

赤穂「あっ、おい津浦!?鞍馬、壊れたフリってどういう意味だ!」

鞍馬「そのままですよ。彼女は壊れてなどいません」

津浦が壊れてない……つまり津浦は冷静にグレゴリーを演じていたっていうのか?

なんでそんな……

鞍馬「……」
514 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/05/29(火) 00:25:33.46 ID:xrYljAjA0
兵頭「なるほど、やっぱりですか」

赤穂「やっぱりって、気付いていたのか?」

兵頭「少なくとも完全な狂人のフリであるとはわかっていました。破滅して狂った人はたくさん見てきましたから」

兵頭「最も狂人を演じる事自体も問題ですから、遠からず本当の狂人に成り果てるのは目に見えていますけどね」

赤穂「なんでそれを黙ってたんだ?」

兵頭「確証があったわけでもありませんでしたから。下手に地雷を踏みたくはないでしょう?」

赤穂「……」

兵頭「とにかく津浦さんが逃げたという事は彼女は比較的冷静のようですね……」

赤穂「そこがわからないんだ。津浦が冷静ならなんであんな事をしてるんだ?」

兵頭「本当にわかりませんか?答えは結構シンプルですよ」

赤穂「シンプル……」

津浦がグレゴリーを演じている理由って、そんなに単純なのか……?
515 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/01(金) 23:39:01.12 ID:YqsDY+NA0
赤穂「……」

津浦がグレゴリーを演じている理由か……

赤穂「複雑な思いがあるのは間違いないだろうけどな……んっ?」

窓から何か……あれは明かりか。

時間的にはもうすぐ夜なのに誰が外に出てるんだ?

赤穂「……」

気になるな……とはいえ、俺は安静にしているべきだろうし……

だけどもしあれが例のアンノウンだったら……

赤穂「確認ぐらいは、しておくか」

幸い杖は近くにあるし、暗闇に眼は慣れてる……行ってみよう。

【発電所】

これが……佐場木達が話してた発電所か。

赤穂「明かりはこっちの方に消えたけど……」

「誰かいるの?」

赤穂「うっ!?」

辺りを見回してると、いきなり明かりを向けられて思わず目を閉じる。

今の声は……

赤穂「苗木?」

苗木「赤穂クン!?なんでこんな所に」

赤穂「病室から明かりが見えたから追いかけてきたんだ」

苗木「そっか……心配かけちゃったかな」

赤穂「苗木はどうしてここに?」

苗木「発電所の扉にパスワードがあるって聞いたから……試しに来たんだ」

赤穂「試しにって、手がかりでもあるのか?」

苗木「ううん、ないよ。だけどボクなら出来るかもしれない」

赤穂「まさか運任せでやるつもりなのか?」

苗木「だってボクは幸運なんだ。こんな事ぐらいでしか役に立てない」

赤穂「苗木……」

苗木「もう嫌なんだ!みんなが傷つくのも、無力なままでいるのも!」

苗木「だから止められてもボクはやるよ」

苗木「希望のために、ボクは……!」

赤穂「……わかった、なら俺も付き合う」

苗木「えっ?」

赤穂「言っただろ?無力さを痛感してるのは俺もだって」

赤穂「だから付き合わせてくれよ」

苗木「……ありがとう」

赤穂「気にしなくていいさ」

そして俺と苗木は、発電所のパスワードに挑戦する事になった……
516 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/02(土) 00:12:49.16 ID:ZjxqkpLA0
【13日目】

赤穂「……」

苗木「……ダメ、だったね」

あれから俺達はいくつものパスワードを入力した。

だけどどれも扉はエラーを返してきて。

時刻は朝の6時……そろそろ戻らないと大騒ぎになるだろう。

苗木「結局……ボクはなんの役にも立てないんだね」

赤穂「苗木……」

苗木「あはは、ちょっと散歩して帰るよ。少し1人になりたいしさ……」

赤穂「……」

俺も、戻ろう。
517 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/02(土) 00:34:17.54 ID:ZjxqkpLA0
赤穂「……」

御影「兄さん?」

赤穂「……あっ、どうした?」

御影「どうしたじゃないよ。さっきからボーッとしちゃってさ」

赤穂「ちょっとな……ふあっ」

御影「なに、寝てないの?」

赤穂「ああ、まあ……」

御影「はぁ……怪我人なんだからおとなしく寝てないと駄目だよ」

赤穂「面目ない。牡丹も大変なのにな」

御影「私は別に慣れてるし……」

赤穂「そういうのは慣れるもんじゃないだろ」

御影「……なんかあったの?」

赤穂「んっ……苗木がなんか落ち込んでるみたいでさ」

御影「ああ、なんか道掛達も気にしてるみたいだね。さっき声かけてたよ」

赤穂「本当、どうしたらいいんだろうな……」

津浦の事だってあるって言うのに……

御影「……1人で抱え込まないでよ?兄さんはそういうとこあるんだから」

赤穂「ああ、困ったら牡丹に慰めてもらうよ」

御影「あのねぇ」
518 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/02(土) 23:22:03.15 ID:ZjxqkpLA0
六山「パソコンの暗号、解読出来たよ」

その六山の言葉に佐場木は情報の共有のためと俺の病室に全員を集めた。

とは言うものの……津浦は病室に閉じこもって出てこないらしい。

佐場木「どうやら津浦が冷静だという話は本当のようだな」

土橋「でも怪我は本当だし、琴羽は大丈夫なの?」

遠見「その経過を見るためにも開けてもらいたいのでありますが……」

苗木「…………」

道掛「苗木、お前も大丈夫なのかよ?顔色悪いぞ」

苗木「うん……ボクは大丈夫だよ」

ジェニー「……セイ」

兵頭「とりあえず今はこちらを優先しましょう。六山さん、データファイルの内容は?」

六山「3つあったんだけど、1つは発電所の扉のパスワードだね」

六山が見せた画面には5桁の数字が並んでいる。

これが発電所の……

苗木「……」

御影「3つって言ってたけど後2つは?」

六山「1つは、コロシアイ共同生活だっけ?それの経過みたい」

六山が開いたデータには16人の名前が記されている。

そしてその内数人の名前には赤い線と黒い線がひかれていた。

如月「どうやら……向こうでもコロシアイは進行しているようですね」

如月さんが指さしたのは学級裁判記録と名前がついた2つのファイル。

向こうも俺達と同じように事件が2つ起きてるって事なのか……!
519 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/03(日) 00:51:43.23 ID:MMk5L4lA0
佐場木「その記録は後で改める。六山、最後のデータの詳細はなんだ」

六山「えっと……これなんだけど」

六山が見せてきたのは【絶望教について】というテキストだった。

遠見「絶望教……このコロシアイが始まる少し前に突如現れた新興宗教でありますね」

土橋「それって絶望の残党みたいなやつなの?」

如月「いえ、彼らは自分達自身の絶望には関心がないようです」

道掛「どういうこった?」

六山「このテキストによると、絶望教は誰かを絶望させる事に目的を見出だしてる宗教みたいなんだよね」

御影「誰かを絶望させる……」

兵頭「世界の希望絶望の総量は決まっていて、誰かを絶望させれば自分達に希望が訪れる……そのために絶望を与えるのが目的という事みたいです」

佐場木「なんのことはない、ふざけたカルト集団だ」

誰かを絶望させれば希望が訪れるか……仮に正しいとしても、こんな絶望だらけの時代なのにその分の希望が少なすぎるけどな。
520 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/03(日) 22:06:36.12 ID:MMk5L4lA0
あの後、佐場木は発電所の中を調査すると遠見を連れて出ていった。

それに合わせるように1人、また1人と部屋からいなくなって。

そして最終的に部屋には俺と……

鞍馬「……」

鞍馬が残された。

赤穂「……」

鞍馬「……」

というより、珍しいな。

鞍馬がこうして何も言わずにただ俺の病室にいるなんて。

鞍馬「絶望教」

赤穂「はっ?」

鞍馬「あなたはどう考えていますか」

赤穂「どうって……おかしな宗教だなとしか言えないだろ」

赤穂「話を聞いた時も思ったけど、だったら今の世の中はどうなんだって話だし」

鞍馬「確かに今は絶望と希望のバランスが取れているとは言えません」

鞍馬「しかしこうは思えませんか」

鞍馬「今こうして絶望に苛まれている事こそ」

鞍馬「いずれ来る希望に溢れる世界への布石なのだと」

赤穂「……」

なんだ?鞍馬の奴、いつにも増して饒舌だぞ……

鞍馬「いえ、既に世界を変えるピースは揃っています」

鞍馬「後はたった1つのきっかけさえあれば……」

赤穂「おい、鞍馬?」

鞍馬「……少々話しすぎましたか」

鞍馬「言いたい事は1つです」

鞍馬「彼女を死なせないでください」

赤穂「彼女……っ!?」

鞍馬「彼女の存在は世界の変革には不可欠なのだから」

赤穂「鞍馬!まさかお前牡丹の身体の事……!」

バタンッ

赤穂「……」

鞍馬は知ってるんだな……牡丹の身体の事を。

鞍馬類……お前は一体何者なんだ?
521 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/03(日) 22:19:52.85 ID:MMk5L4lA0
道掛「鞍馬の事?」

赤穂「ああ、道掛は鞍馬と話してるみたいだけどどんな感じだ?」

鞍馬の言動は妙に気にかかる……俺はよく絡みに行ってる道掛に鞍馬について聞いてみる事にした。

道掛「つうてもな、鞍馬って無口無表情で自己主張しないからなぁ」

道掛「時々話してるの俺だけな気さえしてくんだよ」

赤穂「鞍馬は何も話さないのか?」

道掛「ぬいぐるみ作ってるのに集中してたりして聞いてすらいない時もあるな!」

それでもめげないのか。

道掛「あー、でも牡丹ちゃんの話題には結構反応すんなあいつ」

赤穂「牡丹の?」

道掛「おう、相変わらず口数は少ねえけど牡丹ちゃんの事を話す時は返事返ってくるんだよ」

赤穂「……そうなのか」

鞍馬は牡丹に対して何か思うところがあるって事なのか?

鞍馬については……兄としても、警戒する必要がありそうだな。
522 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/03(日) 22:47:45.14 ID:MMk5L4lA0
佐場木と遠見が発電所の調査から戻ってきたらしい……俺の病室に来た2人にどうだったか聞いてみると。

佐場木「制御室に鍵がかかっていた。あれをどうにかしない限り発電所の機能を動かすことは不可能だ」

遠見「内部は10階建てだったのでありますが、入ってすぐのエレベーターホールぐらいしか入れなかったでありますよ……」

赤穂「つまり、無駄骨だったって事か?」

佐場木「さらに調査を進めれば変わるかもしれんが現状ではそうなる」

遠見「突破口になると、思ったのでありますが……」

わざわざパスワードを暗号化していたぐらいだし、発電所は何かの手がかりになると思ったんだけどな……

遠見「とにかく再調査をするべきであります!きっと見落としている所が……」

佐場木「遠見、再調査に貴様を連れていくつもりはない」

遠見「えっ……」

佐場木「ここ数日の見張りに調査……いささか負担がかかりすぎている。しばらく休息を取れ」

遠見「佐場木殿!自分はまだ……!」

佐場木「軍人だからといって自分を過信しない事だな。何を言おうと再調査の同行は認めん!」

遠見「っ……」

赤穂「……」

言い方はキツいけど佐場木は心配して言ってるんだろう事は俺にもわかる。

遠見も同じだったんだろう、不承不承ながらもその言葉に頷いていた。
523 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/04(月) 21:43:13.19 ID:VZ+c4U0A0
苗木「はぁ……」

リハビリがてらロビーに顔を出すと、ソファーに座ってため息をつく苗木がそこにいた。

赤穂「ため息をつくと幸せが逃げるぞ」

苗木「あはは、こんな事に巻き込まれて幸せも何もないんじゃない?」

……これはまだパスワードの事引きずってるな。

苗木「六山さんはすごいよね。彼女のゲームがあったから少しは明るいし、暗号だって解読しちゃうし……」

赤穂「……」

まあ、昨日の夜の事は結構堪えただろうから仕方ないのか?

苗木「なんて、六山さんはデバッガーでそっち方面明るいんだからボクと違って当たり前なんだけどね……」

赤穂「……」

苗木「大丈夫、そんなにしない内に元に戻るようにするから」

赤穂「あんまり抱え込むなよ?苗木を心配してる人だっているんだから」

苗木「あはは、そうだったら嬉しいよ」

本当なんだけどな……
524 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/04(月) 22:01:13.96 ID:VZ+c4U0A0
赤穂「……」

バンッ

赤穂「うわっ!?」

ジェニー「マサキ!ボクわかたです!」

赤穂「ジェ、ジェニー?」

ジェニー「ボクはセイに元気になてほしいです!それはピエロとか関係ないボクの気持ちです!」

赤穂「……」

ジェニー「暗いのも怖くないです!みんなの事悲しいですけど……だからもうこんなの嫌です!」

赤穂「……っ、あはは!」

ジェニー「マ、マサキ?なんで笑うです?」

赤穂「ジェニーの答えが嬉しいから、だよ」

ジェニー「よくわかんないですけど……マサキがスマイルならボクもハッピーです!」

赤穂「ああ、ありがとうな」

今は本当に暗い事ばかりだけど……こうしてジェニーの明るさに触れてると救われる気がするな。
525 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/04(月) 22:29:19.95 ID:VZ+c4U0A0
赤穂「……」

俺も出来る事をしないとな……

赤穂「……んっ?」

何か聞こえてくるぞ……

津浦「〜〜♪」

津浦が、歌ってる?

赤穂「……津浦」

津浦「っ!?」

赤穂「待ってくれ!少しでいい、話をしないか?」

俺の言葉に逃げようとした津浦が足を止める。

そして振り返った津浦は……紛れもなく、理性を持った瞳をしていた。

津浦「なんで、しょうか?Mr.赤穂……」

赤穂「昨日……津浦が冷静にグレゴリーを演じていると鞍馬に聞いて、どうしてか考えた」

赤穂「兵頭は単純だって言ってたけど……今の津浦を見て答えがわかった気がしたんだよ」

赤穂「津浦、そこまでして……グレゴリーを理解したかったのか?」

津浦「……なぜその答えに?」

赤穂「今の歌、外国語だけど未来機関で聞いた事があるんだ」

赤穂「鎮魂の歌……俺はそう教えられた」

赤穂「津浦、キミがその歌を歌っていたのは、グレゴリーのためなんじゃないか?」

津浦「……そう、です」

赤穂「……」

津浦「Mr.グレゴリーはワタシの両親の死の関係者でした」

津浦「Mr.グレゴリーはワタシを救って、守るとも言ってくれました」

津浦「……Mr.グレゴリーはワタシをトリックに利用して、殺そうとしました」

津浦「わからないんです。言葉の意味はわかるのにあの人の心が全然わからない」

津浦「コテージにあった仮面を被って、演じていても」

津浦「どんなに考え続けても」

津浦「あの人の事が、わからないんです……」

赤穂「……津浦、演じていた理由はもう1つあるんじゃないか?」

津浦「……はい」

津浦「ワタシは、早まらないでほしかった」

津浦「だってワタシはもっと話したかったんです、もっとあの人を理解したかったんですよ」

津浦「たとえ同情でも!たとえ罪悪感でも!側にいてほしかった!」

津浦「……ワタシは」

津浦「Mr.グレゴリーに生きていて、ほしかったんです……!」

これが津浦の行動の答え。

津浦はただ、グレゴリーの死を認めたくなかったんだ。

だから演じた、自分が死んだ事にしてでも……
526 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/04(月) 22:45:30.44 ID:VZ+c4U0A0
津浦「……」

赤穂「津浦、さっきの歌は言ったように鎮魂歌だ」

赤穂「それをグレゴリーに向けて歌ったのは……認めたって事でいいのか?」

津浦「……はい。亡くなった人の気持ちはわかりません」

津浦「どんなに演じようとしていてもそれは事実で、ワタシはあの人が最期に伝えようとした事も聞けなかった」

津浦「だから、もうやめです」

津浦「今は、このコロシアイを生き抜く事。それを最優先にします」

津浦「そして外に出たら……」

津浦「あの人の事を調べようと思います」

津浦「それがきっと……ワタシのやるべき事ですから」

赤穂「……そうか」

涙を流しながら決意を話す津浦は、今までみたいに怯えているだけの子ではなくなっていた。

グレゴリー……津浦は、もう大丈夫そうだ。

お前が四方院さんを殺した事は絶対許されないけど……でも。

それだけは、こうして伝えておくよ。
527 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/05(火) 00:03:26.97 ID:4uX4W1IA0
如月「兵頭さん、具合はいかがですか」

兵頭「ふふ、時々痛みますが大丈夫ですよ。如月さんこそ無理はしていませんか?」

如月「これでも人より頑丈ですから」

赤穂「……」

なんかあの2人、最近よく話してるな……

六山「おーおー、フラグがビンビンだね」

赤穂「うわっ、いつの間に」

六山「ちょっと大きな声を出しちゃダメだよ」

赤穂「わ、悪い……というかフラグってなんだよ」

六山「文字通りだよ?如月くんは兵頭さんを何回も助けてるし、兵頭さんも如月くんを信用してるみたいだからね」

赤穂「言われてみると……」

如月さんと兵頭って前回の島の調査も一緒にしてたし、学級裁判の時も兵頭に疑いがかかった時如月さんが庇ってたな……

赤穂「だけどいつの間にあんなに仲良くなってたんだ?」

六山「うーん、よくわかんないね。赤穂くんのフラグだっていつ立ったかわからないし」

赤穂「は?なんだそれ?」

六山「あっ、これは内緒だった……」

フラグって、俺にか?

いや、いつの間にそんなの出来たんだよ……
528 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 11:18:20.33 ID:T0ajnvWA0
ガチャッ

赤穂「んっ?」

土橋「あっ、政城」

赤穂「土橋か」

そういえば昨日は結局不機嫌にさせたままで終わったんだよな……

どうも俺が悪いみたいだし、謝らないと。

土橋「昨日はごめん!」

赤穂「えっ」

土橋「なんというか、昨日のアタシ変だったでしょ?」

赤穂「変と言うより、不機嫌になったような気はしてた」

土橋「あー、うん。やっぱりそう見えたよね」

赤穂「俺に何か至らない点があったんだろう?ごめんな」

土橋「いやいや!別に政城は悪くないよ!」

土橋「ただ政城にチャラじゃないかって言われてなんだかよくわかんないけど、心がザワザワしちゃっただけだから」

土橋「だから謝るのはアタシの方!本当にごめんね!」

赤穂「土橋こそそんなに謝らなくていいんだぞ?俺は気にしてないからさ」

土橋「そう言ってくれると嬉しいよ。ありがとね」

どうやら些細な行き違いってやつだったみたいだ……まあ、怒らせたとかじゃなくてよかったよ。
529 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 11:25:09.36 ID:T0ajnvWA0
キーン、コーン、カーンコーン
 
モノクマ「夜10時になりました!」
 
モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」
 
モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「10時か……」

この暗闇の打開策はまだ見つからないし鞍馬の事とか悩みは増えたけど、津浦の事とかは何とかなりそうだ。

だけど絶望教……それがわざわざ暗号化されてたっていうのは気になるな。

明日六山に頼んでもう少しじっくりパソコンにあった資料を見せてもらうか……
530 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 11:43:55.27 ID:T0ajnvWA0
赤穂「…………んっ」

なんか寒いな……この島が秋の気候だからか?

時間は……壁の時計を見る限りまだ3時になるところか。

もう一眠りするか……





赤穂「…………は?」

とてつもない違和感に眠気も飛んで跳ね起きる。
なんで今壁の時計で時間がわかった?

この暗闇で最近は六山のゲーム機で時間を確認してたのに。

この、暗闇……?

赤穂「なんで、だ」

なんで、部屋の照明が点いてるんだ!?

赤穂「まさか……まさか!」

ベッドから転がり落ちるように降りると杖を取って廊下に飛び出す。

そして俺は急いである場所に向かった。
531 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 11:55:31.66 ID:T0ajnvWA0
【御影と兵頭の病室】

赤穂「牡丹!」

御影「んっ、すうっ……」

赤穂「はぁ、はぁ……」

よかった、牡丹は無事だった……

兵頭「んんっ……なんですか、騒がしい……」

赤穂「兵頭も無事だったんだな」

兵頭「無事?っ、なんですかこれ、眩しい……」

赤穂「照明が点いてるんだ」

兵頭「照明が……待ってください、確か照明が再び点く条件は」

赤穂「モノクマが飽きるか……コロシアイが起きるかだ」

兵頭「では、まさか」

赤穂「それを確かめるためにここに来たんだ。他のメンバーはどこにいるかわかるか?」

兵頭「病院は宿泊施設ではないとモノクマに言われたので、私達と津浦さん以外はモーテルにいるはずですが」

赤穂「モーテルか……」

手帳のマップによると発電所の先にあるな……行ってみよう!

赤穂「兵頭、牡丹の事任せていいか?俺は津浦の無事を確認したらモーテルに行く」

兵頭「……わかりました。ですが無理だけはしないようにしてください」

赤穂「もちろんだ」
532 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 12:09:11.10 ID:T0ajnvWA0
【病院・廊下】

赤穂「津浦の病室は……」

津浦「Mr.赤穂……!」

赤穂「津浦!キミも無事だったか!」

津浦「は、はい、急に明るくなったので様子を見に来たのですが……」

赤穂「俺もそうだ。牡丹と兵頭も無事なのは確認したから津浦も2人の病室に行ってくれ」

津浦「Mr.赤穂はどうするんですか」

赤穂「俺はみんなの様子を見にモーテルに行く」

津浦「1人でですか?」

赤穂「ああ、何があるかわからないからな」

津浦「……」

赤穂「絶対に3人で動かないでくれ、頼んだぞ!」

俺は病院を出てモーテルに向かう。

モノクマの新しいルールで3人殺される心配はないから牡丹達はこれで安全なはずだ。

後は、俺次第だな……
533 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 12:16:47.38 ID:T0ajnvWA0
【オータムアイランド・道】

赤穂「モーテルはこっちだな」

数日ぶりの月明かりの中をモーテルに向かって歩く。

そして発電所を通り過ぎようとして……俺は思わず足を止めた。

赤穂「扉が……開いてる?」

調査のために開けっ放しにしていたのか?

それとも……

赤穂「……」

俺は発電所の方に足を進める。

確認だけはしておいた方がいいと思ったからだ。

そして、それは。


最悪の結果として俺の目の前に現れた。
534 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 12:26:50.18 ID:T0ajnvWA0






【金網を抜けて、発電所の建物の扉を開けると広いエントランスに出た】

【右側に受付のような場所】

【左側に並んだソファー】

【奥にあるエレベーター】

【そして、エレベーターの手前に】

【1人、倒れていた】






535 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 12:35:54.95 ID:T0ajnvWA0






【だけど、信じられない】

【だって頭から血を流して地に伏せていたのは】

【未だ超高校級の才能が不明な男】

【鞍馬類にしか、見えなかったから】






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