【ガンダム00】沙慈「僕の義兄はフラッグファイター」

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1 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/23(火) 06:22:32.70 ID:fDdQR3td0

――西暦2307年・経済特区・日本――


――JNN・オフィス――

「はぁあああ??!!」


ザワ……


デスク「絹江、声! 声が大きい……!」

絹江「は、あ、いや、ごめんなさい……じゃなくって!」

絹江「い、いきなり【来週アメリカ飛んでお見合してこい】って言われたら誰だってそうなりますよ……! 説明を求めます!」

デスク「いやな……話せば長くなるんだこれが……はぁ」



 ・
 ・ 
 ・


デスク「……というわけなんだ」

絹江「なあるほどお、じゃあしかたないですね。いってきます!」

絹江「ってなるかぁ!!」バァンッ

デスク「抑えろ絹江!! 気持ちはわかる! 痛いほどに分かる、だから!!」

絹江「ただのオジジ(会長とか偉い人とか)連中のおせっかい焼きに部下を巻き込むんですか!? 記事にして糾弾してやるんだからぁ!!」

デスク「重役からの名指し使命なんだ、仕方ないだろ」

デスク「うちの部署で都合のいい年齢の子ってお前くらいしかいなかったんだ……!」

絹江「親戚にせっつかれるならまだしも、職場絡みってひどすぎやしません?!」

デスク「そう言うな……一回だけ顔合わせて、愛想笑いして、ご縁がありませんでしたで良いんだから……な? な??」

絹江「ふぐ……ぬぬぅ……!」

デスク「こっちで泊まり先や色々便宜は図ってやるから。ほら、お相手の資料。持ってけ」

絹江「……貸しですからね!」バシッ



絹江(……お相手の名前は……)


「グラハム・エーカー」


――――


グラハム「 断 固 辞 退 す る 」

ビリー「そういうと思ってたよ、フラッグファイター」ハハハ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1471900952
2 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/23(火) 06:44:31.24 ID:fDdQR3td0


――MSWAD基地――


ホーマー「辞退は許さん。必ず、当日、現地にて見合いを敢行しろ」

グラハム「辞退いたします、司令。私は誉れあるユニオン軍人でありフラッグファイター、何より一人の男です」

グラハム「今日び見合い結婚などという老人がたの好意の強制、二つ返事で享受できるほど蒙昧ではないつもりであります」


ホーマー「貴様……」

ビリー「グラハム、気持ちは分かるが言い過ぎだよ。中将閣下の旧知の仲の、報道関係者というじゃないか」

ビリー「事を荒げると色々面倒だよ? 君はただでさえトラブルを渦のように吸い上げる御仁なんだから」

グラハム「……失礼しました。ですが、ユニオンにおいて【見合い】などという発想が出てくる事自体解せぬのが本音」

ビリー「僕らニホンの文化に多少明るい者同士だから伝わる会話なのは確かだね」


グラハム「更に、如何に私が結婚適齢期を過ぎつつあり、女性関係が壊滅的であり、かつ仕事の虫で所帯を持つことが絶望的であろうとも」

ビリー「グラハム、言ってて辛くはないかい?」

グラハム「……スレーチャー少佐との一件で上層部からは蛇蝎の如き扱いのこの厄介者へ、寝耳に水と舞い込んだこの縁談。裏を感じるのは私だけでしょうか?」

ホーマー「…………」



「そのことならば、わしから説明させてもらおう」


グラハム「!?」

ホーマー「む……」

ビリー「あなたは……!」


「プロフェッサー・レイフ・エイフマン!!」


エイフマン「ふっふっふ……」
3 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/23(火) 07:05:49.67 ID:fDdQR3td0
 ・
 ・
 ・


ビリー「――成る程、つまりこういうことか」

ビリー「教授がニホンに遊びに行って久しぶりに旧友と飲みに行ったら、なんか意気投合しちゃって」

ビリー「気づいたら【お互い気に入ってる若いのくっつけるか】と縁談の話がフルブラストで決まっちゃってたと」

エイフマン「おおむね、正確には100%当たっておる」

ビリー「概ねどころじゃないじゃないですか教授、何やってんですか」

エイフマン「いやな、最初わしのフラッグを十全に操る男の話をしていたら、つい浮いた話がないことを漏らしてしまってな」

エイフマン「そこからトントン拍子に……こう……なるようになれとな、こうなっておった」

ビリー「多分今初めて教授のこと軽蔑してます、僕」

エイフマン「老人とは若者のらぶすとーりーを食って生き永らえる生き物だからのう」

ホーマー「かくいう私も教授のせいで今の女房を、な」

ビリー「今二回目の軽蔑最短記録です。記録更新ですよ教授」


グラハム「私になにかいうことはありませんか、プロフェッサー・エイフマン 」

エイフマン「ごめん」

グラハム「端的な謝罪の言葉ありがたく受け取らせていただきます」


グラハム「……はぁ……プロフェッサーの頼みとあっては、酔った勢いの縁談とて無碍には出来んか」

ビリー「え、行くのかい?」

グラハム「こう見えて回避できる非礼は避けてみせる主義でね」

グラハム「なに、適当に愛想笑いでもして頷いていれば良いのだろう? 簡単なことよ」

ビリー「グラハム、聞いている限り君にとってもっとも難解な部類に入る行為だと思うんだけれども……」

グラハム「お相手には悪いが、談笑のみのささやかな会になることをお約束するとしよう……これか」ピッ


「絹江・クロスロード」
4 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/23(火) 07:12:02.36 ID:fDdQR3td0
今夜早急に続きを。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/23(火) 07:20:41.70 ID:2zBzEzqr0
いいんじゃないの、続きはよ
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/23(火) 07:37:26.51 ID:r8MO8QmUO
グラハムの優先度が嫁>ガンダムになったら本編が静かになるな
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/23(火) 08:11:30.39 ID:EfeHBbh8o
アルトとシェリルか

つまりエクシアの声優は 中島 愛 
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/23(火) 10:25:34.57 ID:NcqjGwfQO
公とアルトのテンションが違いすぎて気付かん買ったわ声優同じなんか
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/23(火) 10:40:51.89 ID:G2jDkhIAO
ハム語が素晴らしい
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/23(火) 10:55:12.41 ID:nbi6C5HlO
私のお見合い相手がこんなにかわいい訳がないっ!
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/23(火) 11:47:38.26 ID:yPZCq+pDO
>>6
待って映画版でハムがせっちゃんスルーしちゃう
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/23(火) 17:05:15.37 ID:IH2lvbeUO
傭兵は出てくるのか
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/23(火) 17:31:13.35 ID:F11ysCEXo
傭兵いたら絹江さんがぎっちょんされてしまう
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/08/23(火) 19:57:28.52 ID:vPnvEObZO
そしてグラハムがサーシェス絶対殺すマンに
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/23(火) 21:38:14.29 ID:CN7CGQ/zo
ハム公は一回結婚したらきっちり操立てそうだしなあ
本編の刹那関連の動機が全部サーシェス対象になりそう
16 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/24(水) 03:44:43.55 ID:lfGXqz9z0


――日本・マンション――

沙慈「へー、姉さんがお見合い。ふーん」ジュゥゥゥゥ

沙慈「………………」ジュゥゥ

沙慈「OMIAI?!」ボゴォンッ

絹江「沙慈、お肉焦げてる! 」

沙慈「わわわわ!!」カチカチ

沙慈「……ふう、で?」

絹江「で、って?」

沙慈「受けるの? この縁談」

絹江「はあ、あんた私の話聞いてたの? 受けるわけ無いでしょ」

沙慈「結構……っていうか相当かっこいい部類じゃない? この人」ピラ

絹江「面食いの気はないわ。第一ね、その人相当な食わせ者よ」

沙慈「そうなの?」

絹江「ええ……」


 ・
 ・
 ・
 ・

イケダ『グラハム・エーカーか。ああ、知ってるよ。というかユニオンの軍部に詳しい奴に知らん奴はいないだろう』

イケダ『なんたって現ユニオン・エアフォース最強の呼び声高いトップガン。最新鋭機【ユニオンフラッグ】の筆頭エースだものな』

絹江『そ……そんなに凄いんですか? 彼』

イケダ『別格だろうな。一部の評論家からは馬鹿みたいに嫌われているが、一般論ではまず彼の名が挙がる』

イケダ『2302キューバ派兵で初めて戦果を出してから、以降狂ったように空を飛び続けてる。毎回酷い目に合わされてる人革の対空専門部隊の的には、彼の写真が毎回貼られてるって三文記事も上がったけな』

絹江『へえ……』

イケダ『んー……だがなあ、人間的には絵に描いたような偏屈だそうでな』

イケダ『何より、2304のコンペの模擬戦でかつての上官を撃墜させ死亡させたという曰くから、ブンヤの間でも良い噂は聞かん男だよ』

絹江『【上官殺し】……あ、彼が……?』

イケダ『聞いたことあったか。まあ噂は噂、裏が取れんものは多い。あんまり気にし過ぎない方が良いとは思うが』

イケダ『叩いて損をする橋はない……この世界の鉄則だな』



イケダ『あ、女絡みの噂は驚くほど出ないらしいぞ。同性愛者かもって向うの特派員がな』

 

 ・
 ・
 ・
 ・

絹江「……」
17 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/24(水) 03:58:02.47 ID:lfGXqz9z0


沙慈「……それ、大丈夫なの?」コト

絹江「婚約するわけでもあるまいし、気にすることじゃないわ」

絹江「と、言うわけで。来週少し空けるから家のことはよろしくね」

沙慈「いつものことじゃないか、こっちは気にしないでよ」

沙慈「でも……少し残念かな」

絹江「……何がよ……」ズズ


沙慈「だって、姉さんこういうのでもないとどうせ結婚出来ないだろうし」

絹江「 」ブフォ


沙慈「父さんの後を追って、ジャーナリストになったのはいいけど、僕の世話もあって学生時代だって男っ気皆無の日干し生活」

沙慈「社会に出ても上から睨まれて、書く記事全部攻撃力高すぎて同僚には女傑扱い、出逢いらしい出逢いも飛び回ってる生活じゃあ期待も出来ず」

沙慈「弟の僕から見ても……何ていうか、地味というか……もう少し彩りがあってもいいと思うんだけどねえ」ハァ……

絹江「…………で……!」

沙慈「……ん?」



絹江「なぁんで養われの身のあんたにそこまで言われなきゃあならんのじゃあああああああ!!!」ドンガラガッシャーン

沙慈「わぁあああああああ!!!」ガシァーン


沙慈(でもね、姉さん)

沙慈(もしね、誰か、姉さんの夢と一緒に姉さんも幸せにしてくれる人が出来たのなら)

沙慈(僕のことなんか気にしないで、一緒になってもらえたらって)

沙慈(――本当に、そう、願ってるんだよ)
18 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/24(水) 04:31:42.15 ID:lfGXqz9z0


――前日・MSドック――


グラハム「……」

「眠れんかね?」

グラハム「!」


エイフマン「爆風吹きすさぶ鉄火場を生き抜くユニオンのトップエースも、自身の未来の掛かった出会いの前では、緊張もするか」

グラハム「……プロフェッサー」

エイフマン「ふふふ、良い良い。まだ若い証拠というわけだ、老骨には眩しい限りよ」

グラハム「その様子ですと、謀られましたな。教授」

エイフマン「んー?」

グラハム「……貴方には感謝をしています。この若輩者をフラッグのテストパイロットに選定していただけたことも、今なお有能な整備班を預けてくださることも」

グラハム「我が戦果の半分以上は、その頭脳と見識よりもたらされたもの。そう日々肝に銘じ飛び続けているほどに」

エイフマン「……」

グラハム「ですが今回ばかりはお節介が過ぎるのではありませんか、教授」

グラハム「私は期待に応えるべく、そして自ら望みこの空を飛び続けている。その妨げを自ら我が眼前に置かれるとは、悪戯にも度がありましょう」


エイフマン「……くく、まだまだ、青いな」

グラハム「なんと?」

エイフマン「青い青い。出逢いを妨げと突き放し、繋がりを鎖と遠ざけ、知らぬ世界を書割と称し見向きもしない」

エイフマン「成る程、確かに君は弱卒だ。【飛ぶこと】が人生の全てと言い切るならば、なぜ今怯える必要があるというのかね」

エイフマン「何処へなりとも迷わず飛んでいけばいいだけなのに、今、何故か眠れない。それそのものが君の致命の弱点だと何故気付かない」

グラハム「っ……」

エイフマン「君は強い。君がへりくだった先ほどの言葉、私はその全てに否と答えよう」

エイフマン「君と同じ機会を、君と同じ待遇を与えたとして、果たして何人がそれに【近しい結果】さえ出せるというのかね」

エイフマン「君は強い。おおよそ、君が飛ぶことを妨げられるものなどこの世には存在し得ない、そう言い切れるほどに」

エイフマン「だが、君の【弱さ】がその矛先を狂わせる。一人で飛び続けたとして、君は……」


エイフマン「――決して、君の望んだ空を飛び続けることは出来ない。だから、君は、弱い」

グラハム「……!」
19 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/24(水) 05:26:33.64 ID:lfGXqz9z0

グラハム「ならば敢えて問い返しましょう、この縁談の真意を」

グラハム「よもや貴方ほどの叡智を持った人物が、伴侶を得ただけで真の強さを得られるなどという世迷い言を申されるつもりでは……!」

エイフマン「ないない。第一断られること前提の人選じゃ、【お互い】な」

エイフマン「だから明日も遠慮なく断ってきたまえ。逃げさえしなければ何してもいいぞ、セクハラと犯罪以外でな」

グラハム「ッッッ……!!?」

エイフマン「なんというかな、そろそろ教えとかんといかんと思っただけのことよ」

グラハム「な……何を、でしょうか」


  スッ


エイフマン「【空の広げ方】じゃよ」


グラハム「そらの……広げ方……?」

エイフマン「あぁ……分からなくてもいい。今はまだ、な」

エイフマン「じゃ、おやすみ。遅刻するでないぞ、フラッグファイター」スタスタ

グラハム「あ……!」

エイフマン「俗世のことを知るのも勉強じゃ。空と違って、ここはままならぬものだから、のう」

グラハム「……!」


――――

ホーマー「……まさか本当にやるとは思いませんでしたよ」

ホーマー「しかしよろしいのでしょうか。貴方の株を下げるようなことを……」

エイフマン「なぁに、年寄りの道楽であることに間違いはあるまい」


エイフマン「あれはなあ……このまま行けばきっと何処かで道を踏み外す」

エイフマン「強すぎるのだ。一人で立ち続けることが出来てしまう。だから、あれの膝を折れるものこそいないものの」

エイフマン「対等にでも張り合われたら、それだけで奴はどんどんねじ曲がっていく」

ホーマー「……」

エイフマン「まあ、俗世間に染めて弱くするのがいいこととも思えんが、狂うよりは幾分マシじゃろうて」

ホーマー「上手くいきますかね」

エイフマン「断っていいとはいったが、ちゃんと断ってくれるか不安だの」

エイフマン「お前としては、あれがただの【力】であるままのが良いのかもしれんがな」

ホーマー「明言は避けさせていただきます」

エイフマン「ふん……」
20 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/24(水) 05:35:58.83 ID:lfGXqz9z0
また今晩、早急に続きを
しばらくは眠れぬ夜の道楽ですが、休みが来たらまとまってお送りいたします
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 07:18:58.41 ID:notREI9DO
ハムはほっとくとガンダムの所為でどんどん歪んじゃうからね

身持ちが堅いな!絹江!!

しちゃうのか……
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 07:25:21.44 ID:l8cP+lc4O
数年後、そこには仕事を放っぽり出してひたすらイチャつく二人の姿が

さすがに想像できない
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 08:38:32.22 ID:notREI9DO
>>22
身持ちが堅いな!絹江!

の後

貴様と言う存在に妻を奪われた者だ!!!!!

しちゃうハムは……?
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 10:29:18.63 ID:n/7HyHT/0
公さんFXの時に撃墜してしまった上官の娘とお見合いしてなかった?
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 12:25:13.57 ID:1yABeENsO
絹江・エーカーっていいな
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 14:22:47.58 ID:Oixhjxl3o
【ギャルゲの】GLAHHAM―グラハム―【主人公】

http://sp.nicovideo.jp/watch/sm5101755

支援
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/24(水) 16:22:05.59 ID:/EXdtled0
よもやこのようなSSに出会えようとは……

センチメンタリズムな運命を感じずにはいられない
28 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/25(木) 04:56:30.02 ID:sXSNeRCP0
休暇を勝ち取り意欲がトランザムいたしましたので今夜改めて投稿いたします。
量に関してはお察しください。筆の速さまで三倍とはいかないものです。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/25(木) 10:07:07.94 ID:eeZh/ZbBO
乙乙
沙慈、お前も一応マクロスの主人公だったやん、ゲームだけど
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/25(木) 18:56:57.03 ID:Lqsw+pmso
面白そう
31 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/26(金) 03:42:26.15 ID:Qlgv2gam0


――そして、今――


――お見合い当日――


ルイス「ここがお見合い会場ね!!!」バァァーン



絹江「 」


沙慈「ごめん……姉さん」


――アメリカ・某将校別荘――


ルイス「すっごーい! 見て見て沙慈、鯉よ鯉! いっぱいいるわ!」

沙慈「ルイス……お願いだから静かにしててよ? 僕たち完全に部外者なんだから」

デスク「はは……部外者ってわけでもないとは思うが、あまり遠くに行かないでくれよ?」

デスク「ここは向うの将官どのの別荘みたいなもんでね、日本通で知られる彼の趣味で整えられている」

デスク「ハレヴィ家のご令嬢なら心配いらないとは思うけれど、絹江のお相手はなかなか手ごわいらしいから、慎重に行かないとね」

ルイス「はーい!」

デスク(……この子本当にあの世界的富豪の子か? いや、いい意味で違和感というかなんというか……)


絹江「……沙慈、私着替えてくるから、あとよろしく」

沙慈「あ、うん。頑張って、姉さん」

絹江「あの子、ちゃんと後で紹介しなさいね」ポン

沙慈「……うん」

女中「こちらです、足元にお気をつけを」

絹江「はい、ありがとうございます」


絹江「……ふうー……」


沙慈(…………)

沙慈(何だか緊張してるみたいだ。大丈夫かな、姉さん)
32 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/26(金) 03:44:23.59 ID:Qlgv2gam0




デスク「や、心配かい?」

沙慈「あ、いえ……本当にすみません。押しかけるみたいにこんな……」

デスク「いや、構わんよ。ああ見えて絹江も相当キテたっぽいからむしろありがたい」

沙慈「え?」

デスク「そりゃあ断るのを前提にしても、お見合いだもんな」

デスク「自分の将来に関わるデリケートな問題だ。何も感じるなというのがおかしいさ」

沙慈「そう、ですか」


沙慈(……家ではそんな素振り見せなかったのにな)

沙慈(自分のことなんだから自分のことだけ心配してくれればいいのに……相変わらずなんだから)


デスク「ああ見えて本番にはめっぽう強い子だ、心配はしていない、が……」

沙慈「グラハム・エーカー中尉、ですか」

デスク「大丈夫だと思いたいんだけどなあ……相手が相手だ」

沙慈「お相手に変なこと言われなきゃいいんですけど、ね」

デスク「ああそうだ、さっき向うの連絡役に庭の出歩きを許可されたんだ」

デスク「彼女のお守りは任せていいよね? いい関係みたいだし、さ」ニヤニヤ

沙慈「そういう詮索、ルイスにはしないでくださいよ……? もう」

――――


沙慈「ルイス」

ルイス「……もういっちゃった?」

沙慈「うん、お色直し……じゃなかった、おめかしでいいのかな、ああいうの」

沙慈「いいの? 庭、今なら見放題だって」

ルイス「……沙慈……」

沙慈「……何?」



ルイス「どぉおしよう! 絶対お姉さんに勘違いされた!! 頭の弱い子だって思われたよぉ……!!」ワーン

沙慈「はー……人見知りが無理して第一印象コントロールしようとするから……」ポリポリ
33 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/26(金) 03:52:05.64 ID:Qlgv2gam0


ルイス「うわー! 絶対やらかした……」

沙慈「ルイスはルイスのままでいいんだから、下手に作らなくても」

ルイス「い・や・な・の!」

沙慈「……な・に・が?」


ルイス「……お姉さんに、気取ったお嬢さまだとか、ぶってるとか、思われるの」

ルイス「沙慈に似合わないとか思われるの、やなの」


沙慈「……」

ルイス「っ……」

沙慈「…………」


沙慈「……ねえ、ルイス」

ルイス「……なに?」


沙慈「今日僕ら主役じゃないんだからそこまで頑張らなくてm《沙慈のバカ!!!!》グワーッ脛?!!」バシーン

――――

絹江「……どうでしょ?」ピシーッ

女中「すごくお似合いになっておりますよ!」

絹江「あー……ありがとうございます……」

絹江(まさか見合いで訪問着着るとは思わなかったわ……流石にクるなあ)

絹江(ええい、ここまで来たらなるようになれよ……!)パシンッ

絹江(作戦決行まで残り……!!)


 ・
 ・
 ・


グラハム「……30カウント」

ホーマー「往くぞグラハム」

グラハム「御意に」



34 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/26(金) 04:18:59.71 ID:Qlgv2gam0


デスク「お、来たか……」

JNNの偉い人(以降Jオジジ)「時間ピッタリ、流石は軍人だのう」


沙慈「あ、来たみたい」コソッ

ルイス「グラハムさんだっけ、童顔だけど結構顔はいいよね」

沙慈「僕だって多分大人になっても変わらないよ」

ルイス「沙慈はいいの、沙慈は!」

沙慈「基準が曖昧だよ……と」

ルイス「き……た……?」



グラハム「――此度は、宜しくお願い致します」スッ

デスク「う……!」ゾワッ

Jオジジ「ふが……?!」ブルッ


沙慈「……!!」

沙慈(なん、だろう……写真とはぜんぜん、空気が違う)

沙慈(表情……違う。確かにしかめっ面だけどそこじゃない)

沙慈(不安? 姉さんみたいに……違う! そういった弱い感じは全くしない、むしろ――)

ルイス「ね、ねえ沙慈……あの人……」

ルイス「何だか、獣みたい……」


グラハム「……」ジロ

沙慈(! こっち見た!)サッ

ルイス(わわっ……)ササッ


グラハム「……彼ら、いや、彼はクロスロード氏の付き添いですか?」

デスク「え、ええ……よく分かりましたね、弟さんです」

グラハム「顔に面影が宿っている。もう片方はそうでもなさそうだが」

デスク「あはは……弟さんからは、けっこう高評価で……」

グラハム「もう会うこともありません、詮無いことです」

デスク「……う……」

Jオジジ「どうなされたのだ、エーカー殿は。かなり不機嫌そうだが」

ホーマー「昨晩、わざわざ喧嘩を売りに行った70代の世界的権威がおりましてな……」

Jオジジ「あー……」
35 :※談笑をしています。グラハムも楽しんでおります ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/26(金) 04:48:03.66 ID:Qlgv2gam0

カツンッ

グラハム「!」

沙慈「!」

エイフマン「くっくっく……ここまで予想通りだと、笑うしかないかな」

グラハム「教授」

沙慈(誰だろう……かっこいいお爺さんだな)

ホーマー「ほら、アレです」

Jオジジ「何わろうとるんじゃあのジジイ」


エイフマン「いい具合に仮面が剥がれてきとるではないか。ん? 大丈夫かグラハムよ」

グラハム「何処ぞの恩師のおかげで平静には程遠い精神状態を余儀なくされておりますよ」

エイフマン「もう少し余裕を顔に浮かべてはどうかね。そう怖い顔をしていては、お相手が逃げてしまうかもしれんぞ」ニッ

グラハム「この茶番をハラスメントと犯罪行為以外で終わらせる、条件には合致しているように思われますが」

エイフマン「意趣返しか、ふふ、抜かしおる。それでこそ儂の選んだ男よ」

グラハム「……もし無為に終わろうものなら、今後も兼ねて考える時間を頂きたいものですな」

エイフマン「案ずるな、どう転ぼうと損はさせん。だが死なばもろともでわしの顔に泥を投げんでくれよ」

グラハム「女性に無礼を見せる男とお思いですか、低く見られたものだ」

エイフマン「男にしとる時点で信用はストップ安じゃよ。一部上場からやり直すんじゃな」


沙慈「…………」

ルイス「おじいちゃんすっご……あの怖い人と言葉で殴り合ってる……」

沙慈(あの人が姉さんの……)

沙慈「……いや、だな……」


エイフマン「さて、立ち話もここまでにしよう。乙女が着飾ってお前を待っておる」

グラハム「たのしみですな」

エイフマン「そうだろうそうだろう……はっはっは!!」


ホーマー「…………」

ホーマー(さて、あのスレッグ・スレーチャーが不可能だったことを……レイフ・エイフマンはどのように仕掛けるおつもりかな)


エイフマン「さーて、はたして何秒保つかのう、絹江どのは」

ホーマー「えっ」
36 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/26(金) 05:17:28.53 ID:Qlgv2gam0
明日また早急に続きを。
想定外のコメント数にひたすらの感謝を。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/26(金) 05:49:19.67 ID:t3m1JqO40
楽しそうだなジジイ
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 01:11:28.86 ID:KLdjaNf/0
面白い!期待
39 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/27(土) 03:45:04.13 ID:l010DIjG0


――応接間(和室)――

グラハム(まだ時間には少し早い……が……)


グラハム「…………」

エイフマン「ほうほう、庭もよく見える。良い会場じゃな」

グラハム「……教授」

エイフマン「ん?」

グラハム「あなたはご存知のはずです。私がかつて、戦場での恩師の愛娘を袖にしたことを」

エイフマン「応。まあ袖にしたというほど冷酷なものではないと聞いたがな」

グラハム「無関心を理由に事後処理を怠った、相手の好意を無視したことには変わりません。当然の烙印でしょう」

グラハム「そして、そんな自分が、ましてや見ず知らずの女性を伴侶に迎え家庭を得る……どう熟慮しても不可能です」

エイフマン「分かっておる。そう考えていることは、だがな」

グラハム「ッ……」チッ


グラハム「第二の恩師よ、私にはあなたの真意が読めない」

エイフマン「それは、自分が主役だからと見誤っておるからだグラハムよ」

グラハム「なんと……?」

エイフマン「学べ。【彼】とは会わせられなかったが、彼女はその遺志を継いでおる」

エイフマン「手段が悪いのは自覚しておる、が、まあ……」

エイフマン「もしかしたら、そんな老婆心が湧いたのも事実。軽蔑も甘んじて受け入れよう」

グラハム「?……??」

エイフマン「! ほれ、来たぞ」ヒソ

グラハム「! …………」スクッ


ガラッ





絹江「し、失礼いたします!」
40 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/27(土) 03:46:36.17 ID:l010DIjG0





グラハム「――――!」





絹江「――――!」



41 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/27(土) 04:17:24.92 ID:l010DIjG0

Jオジジ「では絹江くん、彼の向かいに座っ…………絹江くん?」

絹江「……は、はい!」ハッ

エイフマン「ほぉ…………」

エイフマン(あの小さな子がここ迄……月日とは無情ならざるものよな)

グラハム「……」フイッ

エイフマン「どうしたグラハムよ、右下に見合い相手はおらんぞ?」

グラハム「っ……は……失礼いたしました」

エイフマン「かかか……ここの女中は着付けの腕なら知る人ぞ知る名人ぞ。素材も良いが、見事なものよな」ヒソ



グラハム(彼女が絹江・クロスロード……写真で見るより小柄な印象を受けるが)

絹江(わー、実際見てみるとやっぱりいい顔してるわ。モデルか何か? いや軍人なんだけどさ)

グラハム(彼女の何が私の弱さを克服するに足り得るか……刮目させてもらおう!)

絹江(ひいー……めっちゃ睨まれてる。私生きて帰れるかなぁ……)

グラハム(おっと……その前に)

絹江(大切なことがあったわね……)




((どうやって断ろう……?))




――別室・実況中継室――


ビリー「さあ始まりました、第一回【グラハム・エーカー&絹江・クロスロードお見合い会場実況】」

ビリー「此度の実況、お送り致しますはエーカー中尉の盟友にしてMSWAD整備班長兼技術顧問兼専任整備士のビリー・カタギリと」

ルイス「未来の義弟とそのハニー、沙慈・クロスロードとルイス・ハレヴィがお送りいたします!」

沙慈「あぁ……もう……」ガクッ

ビリー「よろしくお願いいたします、ご両人」ペコリ

ルイス「よろしくお願いしまーす!!」ペコリ

ビリー「いいノリだねえ、君たちに付き合って貰った甲斐があったというものだよ、うん」

ルイス「いえいえ、どうやって会場出歯亀しようかなって思ってたからほんと渡りに船でしたよー!」

沙慈「あの……一ついいですか?」

ビリー「んー? なんだい義弟クン」

沙慈「まだ決まってません! ……えっと」

沙慈「この大量のモニター、何処から画像取ってるんです?」

ビリー「全部三時間前に仕掛けた極小隠しカメラからだよ」

沙慈「 」

ルイス「うわ……」

ビリー「いやあリアルな蔑みの眼差しが心地よいね」
42 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/08/27(土) 05:05:08.91 ID:l010DIjG0
しまった、区切るところ間違えた
なのでここからは一週間スパンで。
10レス以上書けていない場合は「足りねえぞ怠けんな」とでも𠮟咤してください。

では、次回金曜日にまた。
グラハムNLもっと増えて欲しい。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 07:08:38.64 ID:IitpCuVz0
よし、やはりグラハムはガンダム一筋のようだな
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 07:39:24.44 ID:/1fzrI9Po
乙乙

ハムは軍服は流石にないから無難にスーツなんだろうか
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 11:53:30.59 ID:3wXTf1NDO
>>44
ブシドースタイル
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 13:05:07.03 ID:cm8PuRg5o

何やってんですかカタギリさん……GJ
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/27(土) 18:45:14.35 ID:olQ1Ql1E0
>>44
軍人だったら礼装の軍服を持ってると思うが。
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 03:27:34.12 ID:26RRF2dPo
そもそも本編でもスーツ着てたし
というか初登場はスーツだったし
49 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 05:32:45.00 ID:9mNf6Wgo0
絹江の身長は五話の画像判定から165cmほどとしています。
ちょうどドモンとレインの身長差と同じくらいですね。

スーツでいいんじゃないですかね、多分。
50 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 05:33:52.97 ID:9mNf6Wgo0

――――

グラハム「グラハム・エーカーであります。27歳、階級は中尉。所属は【ユニオン直属米軍第一航空戦術飛行隊】、不肖ながら隊長を務めさせていただいております」

グラハム「こたびはこのようなせきをあたえていただき、かんしゃのねんとともにきょうえつのいたり。ともによいじかんとなればさいわいと」

エイフマン「少し黙っとれ、声帯がやられたみたいになっとる」

絹江(棒読みぃ……)

Jオジジ(本当に大丈夫かこやつ)


絹江「ん……MSWAD、ですか。アメリカ西海岸に基地を構えるMS部隊……最新鋭機フラッグを早くも導入して研究を重ねているという」

グラハム「! お詳しいのですね、流石はJNNの特派員、お若いのに優秀なリサーチ速度だ」

絹江「あはは……ユニオン方面の特派員からの又聞きも含まれておりますので、私個人のそれではありませんよ」

グラハム「だが調べてくださったのなら話は早い。私自身がどのような人物か……すでに調査済というわけだ」

絹江(っ……棘のある言い方するわね)

絹江「ええ、多々諸々には……ですが、噂はあくまで噂、でしょう?」

グラハム「好意的な解釈の出来る返答だ、結構」

グラハム「ですが、私は敢えて貴女のことは書面で知れる程度に留めてあります」

絹江「……?」



グラハム「出来るなら、貴女自身の口から、貴女のことを私は知りたい。そう言っています」

絹江「…………え、へ、えっ……?!」

エイフマン「あー……多分、前向きな意図はないと思われるよ、うむ」

――――

ルイス「おおっと、これはグラハム中尉怒涛の攻め! カタギリさん、これは……!?」

ビリー「あれはグラハム語で【私はしたんだから早く自己紹介して欲しいな、そんなことも分からないのかね】ですね」

ルイス「思ってた以上に辛辣ッ!!」

沙慈「……」
51 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 05:36:17.97 ID:9mNf6Wgo0
絹江「えー……はい、では」コホン

グラハム「…………」ジーー

絹江(……この数分だけで分かったことがあるわね)

絹江(この人、恐ろしく極端だわ。自分自身でも出来ないくらい融通が利かない性格)

絹江(ああもう、なんか目をそらすのも癪だわ。何もしてないでしょ、まだ!!)キッ

グラハム「! ふ……」クスッ

絹江(!? 今度は笑われた! 何なのよもぉ……!)

エイフマン(ほお……?)


――――

ビリー「へえ? 意外だな、グラハムを睨み返すとはね」

沙慈「……そんなに、反応するものですか」

ビリー「機会があったら真正面に立ってみるといい。あれの眼力は相当なもんだよ」

ビリー「ましてや、今の彼は教授のちょっかいでそういうところの我慢が抜けているようだからね。僕や部下たちでもどうだか……」

ルイス「分かる気はします。何ていうか……豹とか虎とかに、襲われないんだけどジーっと見られてる感じ」オマエヲクウ

ビリー「とにかく圧が凄いんだよねえ。目つきは悪くないんだけど、さ」

絹江『絹江・クロスロード、年齢は22歳。JNNのジャーナリストとして、日夜取材に明け暮れております』

ルイス「始まった!」

絹江『此度はこのような……ええ、弟いわく、結婚など程遠い華のない女に!』

沙慈「姉さん!?」

ビリー「はっはっは! 言うねえ弟ぎみ!」

ルイス「沙慈サイテー」

絹江『大変素敵な目線をいただける男性との邂逅の場を与えていただき、ありがとうございます!』

52 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 05:39:33.09 ID:9mNf6Wgo0
――――


グラハム「ふはは、成る程、これは……」クックック

絹江「また笑って……!!」グヌヌ

グラハム「プロフェッサー、謀ったのは私だけではなかったと、そういうことですか」

エイフマン「あー、なんとなくそんな気はしとったが、そっちも無理くり連れてきたタチか」

絹江「え?」

Jオジジ「そらそうじゃ、この子上の言うこと滅多に聞かんもん」

エイフマン「ふふ、うちもじゃよ、儂に命令権などは無いがね」

Jオジジ「どこも同じじゃのー」

絹江「え? え?」

グラハム「いえ、此方の話です。では続けて」

絹江「???????」


――――

ルイス「んー、今のやり取りなんか怪しい」

ビリー「さ〜何のことやら」

沙慈「姉さん……お相手になんてことを……!!」

『 』ガヤガヤ

 ・
 ・
 ・


絹江『――――』ペラペラ

グラハム『――――』ジー

エイフマン『――――』ケラケラ


ルイス「小康状態が……っていうか、普通。つまんない」

ビリー「そりゃあね、彼らは大人だ。世間体というものを抜きにしても、そうそう初対面の人間に踏み込んだことは言えないさ」

沙慈「カタギリさん」

ビリー「はいはい?」

沙慈「グラハムさんは、どんな人なんですか?」

ビリー「ふぅむ、ストレートな意見だね……」
53 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 05:43:45.87 ID:9mNf6Wgo0

ビリー「見たまま、というのは答えにしてはいささか横暴かな」

ビリー「いい男だよ。もっとも、それは軍人という観点であり、盟友という視点からの意見だけれど」

沙慈「……姉さんには、合わないと思うんです、そういう人」

ビリー「かもね。だが、決めるのは君かい? それとも僕かい?」

沙慈「っ……」ジロ

ビリー「恋は己と相反するものに惹かれるもので、愛は己と同一のものに捧げるもの……かつてそう謳った人を知っているけれど」

ビリー「こうは思わないかい。こんなこと――理解不能な方が万倍面白い、ってね」

沙慈「無責任ですよ……そんなの」

ビリー「そりゃあそうさ、僕のことじゃない。だから思うだけ、見ているだけ……」


――――

グラハム(かねがね想像通り、見掛け倒しとは行かぬがこれといって特筆すべき点はない)

グラハム(はて……我が目に狂いがなければ、あのお方がそろそろ仕掛けるはず、だが?)

絹江(なんだろ、想像してたよりは悪くない、かな)

絹江(とっつきにくいとことか面倒くさいとこは見えてるけど、隠そうとはしてないから、これがこの人のありのままなんだろうな)

絹江(でもこういう人と家庭は……想像できないなあ)

グラハム(見ている分には、面白いのだがな)

絹江(……いやいやいや、断ること前提だから、取材とかできなくなるのごめんだから!!)ピシャリ

グラハム(?)



エイフマン「さてでは絹江くん、少し個人的な話をしたいのだが、どうだろう」

絹江「はい……?」

グラハム「!」

エイフマン「ここに来るまでに、参考がてら君の記事を読ませてもらった……が、ふむ?」

エイフマン「今君を見ていて思うが、執筆者本人に比べ、記事の方は随分とおとなしいようだ」

絹江「!!」ピクッ

エイフマン「君という人物を知るに際し、この差異……何かあると踏んだが、どうかな?」ニヤリ

――――

ルイス「おっと、ここで教授さんが仕掛けた模様です!」

ビリー「おいおい……何やってんですか……」

沙慈「……」
54 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 05:48:40.68 ID:9mNf6Wgo0
――――

絹江「……」ギロッ

Jオジジ「いや……ワシもうそういうチェックとかしてないし……」

絹江「……どの記事を拝見されたかは分かりませんが、確かに、私の書いたものは【強制的に】! おとなしめにされる傾向があります」

エイフマン「ほう、これは先々月のJNN関連誌のものだが」

絹江「あ、それ酷いんですよ!?工業地帯の汚染水廃棄問題、地域単位で癒着が広がってたって言うのに上院議員の圧力で尻込みして、あげく連邦捜査局にすっぱ抜かれて……!!」

エイフマン「尻尾きりで工場と若手議員だけが逮捕及び調査を受け、根本まで手が伸びなかったと」

絹江「……そりゃあ、フェッドが動けばいずれは手が及ぶかもしれません」

絹江「ですがそれでも、我々が真実を探る手を緩める理由にはならなかったと信じています」

エイフマン「それが、君のビリーフというわけかね」

エイフマン(いや、今はまだ……【彼】の受け売りか)

グラハム「…………」

グラハム「一つ、よろしいでしょうか」

絹江「え? あ、はい!」

エイフマン(ほう、乗ってきおったか)ククク

グラハム(キラーパスにも程がある……だが、仕掛けた以上ここに彼の意図があるとみるべきか)


グラハム「私が知りたいのは、この記事が本来の書き方をされていた場合」

グラハム「現地工業地帯の従業員やその家族への影響は如何ほどであったか、ということです」

エイフマン「ぬ……」

絹江「それは……」

グラハム「正義の追求、成る程、確かに素晴らしいお題目だ。それで糧が生まれるならそれは最上でありましょう」

グラハム「だが、私の知るジャーナリズムは、その範囲を逸脱する点が非常に多い」


――――
ルイス「なんか、さっきより感情篭ってる感じ……」

沙慈「勝手なこと……!」

ビリー「ま、彼自身マスメディア受けが悪い上に、【例の一件】はそれが原因で歪んで広まったからね」

ビリー「JNNは日本古来の感情扇動型の報道に欧米の無遠慮さが加わって、一時期国内外でも評判悪かったから、彼のイメージが悪いのは積み重ねとも言える」

ルイス「そうなんですか……」

ビリー「ふむ、でも……これは好機かな」

ビリー「ユニオン屈指のしつこさに、彼女の真価が見えるかも……なんてね」

沙慈「!」

沙慈(言われてみれば……僕はジャーナリストとしての姉さんを何も知らない……)

沙慈「……分かるのなら……!」ジッ

ルイス「……こーいうとこ、好きなんだよねえ」

ビリー「三十路過ぎの非リア充の前で青春とは、さては僕を殺す気かい?」ハッハッハ
55 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 05:56:01.72 ID:9mNf6Wgo0
――――




グラハム「軍人は命令に従い動く存在です。隷属を絶対とする存在から見れば、上官の意見も振り払い動く貴女はとても眩しく、輝いて見えます」

グラハム「ですが、国家に帰属するものとしては、危うくも感じる。そう思えます」

絹江「我々は不要な情報を掘り上げ世を混乱させる存在であると、そう仰りたいのですか?」

グラハム「そう感じられたのなら謝ります。ですが、我々は他者の利潤のために生命を懸ける存在」

グラハム「大局に動かされるものから見て、【割り切る】という考えは如何なるものにも適応されてしかるべきと、そう考えます」

絹江「……否定は、しません」

グラハム「情報が広まって得をする者もいれば、損を被るものもいる。知らねば収まったものが、再び息を吹き込まれた薪が如く燃え盛ることもある」

グラハム「例に挙げたものの、詳細を知らぬ私には言えないことではありますが……影響を鑑みた上で、添削と修正をされたのでしょう?」


絹江「……確かに、現地の方々の暮らしに強い影響が起きたのは、私も知らないわけではありません」

絹江「公表する以上、糾弾と指摘の境界の見極めをすべきとの判断から表現の変更が行われたこと、私自身納得こそ出来ませんでしたが、間違っていたとも思ってはいません」

グラハム「妥協点を見いだせていた、と?」

絹江「言うなれば、ですが」

グラハム「では、他者の利潤や不利益で報道の真実が歪められること、それに是とすると」

絹江「……それに頷くときは、私が筆を折るときでしょう」

グラハム「矛盾。そう突き放せるほど私は冷酷ではありません。だが、凡百の意見であると、そうは思えます」

グラハム「貴女の意見ではない、そうでしょう? 絹江・クロスロード」

Jオジジ(あ、これワシの出番終わってるパターンじゃな)

――――

沙慈「……」

ルイス「これ、答えなんかないですよね……」

ビリー「だね。つまりグラハムも、明確に答えられると思っていない」

ビリー「なら何が聞きたいか……はてさて? 弟くんは、どう考えるかな」

沙慈「……見ていてください。姉は必ず、答えきってみせます」

ビリー「ほう?」

沙慈「だって――あの人は、グラハムさんから、目を背けていない!」
56 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 06:15:03.90 ID:9mNf6Wgo0
――――

絹江「それらがそうなると知りながら、そうあるべきであった……そうですね、それが私の答えになると、思います」


グラハム「自身の報道で作業員らの職に打撃を与え、多くの利潤を無為にしても、その真実はありのままに報道されるべきであった……と」

絹江「勘違いなさらないで欲しいのは、その事実が明らかになることで起きうる混乱を是とはしていないことです」

絹江「この問題だけではない、報道において、後から現れた事実が全てを一変させることなど茶飯の出来事だからです」

絹江「それに、民衆は愚かな存在ではありません。情報を多く受け取れる24世紀であるからこそ、衆愚の恐怖に発信を恐れるような不安は古いものであると、私は敢えて言い切ります」

エイフマン「ふむ……」

絹江「私は【事実】を求めることが報道においての姿勢ではないと考えます。その先の……それらを積み上げた末の【真実】をこそ求めるべきであると、そう、思索しています」

グラハム「……この問題においては、【真実】に至る【事実】の積み上げが足らなかったと、そうお考えですか」


絹江「無論、それらをまとめて一挙に出せるならそれに越したことはなかったはずですが」

絹江「報道が抑止や出頭、事実確認へのきっかけになることもあったはず。今回の一件、それこそを目的とし、結局そこには至れませんでした」

絹江「だからといって諦めるつもりもありません。次こそは……そう、次こそは、と」


絹江「立場や利益では決して揺るがない【真実】に辿り着くため、今ある【事実】を積み重ねること。そこにこそ、ジャーナリズムは存在していると」


グラハム「……事実のみを観点に揺るがぬ姿勢にこそ、それはあると」

絹江「父の受け売りです。ですが、私の指標であり、目標でもあります」

絹江「報道とは幸福に導くものでもない、不幸に陥れるものでもない。人々の【選択】に寄与すべき中庸の要である。それが持論です」

グラハム「…………」スッ

エイフマン「うむ……」

グラハム「――成る程、貴女の語る真実は、私の思うそれより遥かに高く崇高な位置にあったようです」

グラハム「立場こそ違えど、それを知れただけで良かった」

絹江「! そう、ですか……」

絹江(うーん……? 今、ちょっと残念って思った?)

絹江(いや、仕事以外で男の人とここまで話すのも少ないから……きっとそうだ)
57 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 06:41:41.45 ID:9mNf6Wgo0

グラハム「そしてそれ以上に、貴女のお父上が如何に善きジャーナリストであるかが伺えた」

グラハム「機会があれば、お父上にもお逢いしたいものだ。無論、教えを請うという意味で」

エイフマン「あ……!」

絹江「……っ、申し訳ありません。父は既に他界しておりまして。今は、弟だけが家族です」

グラハム「……! それは大変な失礼を……!!」

絹江「いえ、むしろありがとうございます。父を褒めていただけるのは、娘としても感無量ですから」ニコッ

グラハム「――!」

グラハム(ん、ん?)

グラハム(……んん???)

エイフマン「あー……さて、どうだろう?」

Jオジジ「お、おお、そうじゃな。では二人だけでそろそろ……な?」

グラハム「む」

絹江「え……!?」


――――


ビリー「お帰りなさいませ、教授」

エイフマン「おうおう、一方的であったが、まあ、こんなもんじゃろ」

エイフマン「っとと、先客がおったか」

沙慈「初めまして、エイフマン教授。絹江の弟の沙慈・クロスロードです」

ルイス「えっと……その、ルイス・ハレヴィ……です、初めまして……」

エイフマン「ほっほ、ここでも見合いが始まっていたか。立会人とは光栄な事だなカタギリくん」

ビリー「いやいや、僕なんて終始おじゃま虫でして」

Jオジジ「ワシ帰りたい」ゲッソリ

エイフマン「後半、視線と視線の撃ち合いだったからのう、お疲れさん」ポン

ルイス(このおじいちゃんも眼力スゴイもんなあ……)

エイフマン「さて、撤退準備と行こうか。儂は一足先に帰る」

沙慈「えっ、見ていかないんですか?」

エイフマン「絶対こじれる見合いを見ても面白くはあるまいよ……?」

沙慈「え? ええ??」

エイフマン「儂が敢えて言わんかったことがすぐに出るじゃろ、そうしたら話は仕舞じゃ」

エイフマン「ヒント:住んでる場所。ほれ、準備せい皆の衆!」
58 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/03(土) 06:43:05.74 ID:9mNf6Wgo0
足らねえ。ごめんなさい
次回金曜日までには目標値に。おやすみなさい
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/03(土) 06:55:42.51 ID:qaoBy9NTO
面白くなってきやがったぜ
乙乙
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/03(土) 08:10:41.03 ID:FCE37uPDO
えぇい、急げ>>1!私は我慢弱い!
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/03(土) 08:24:14.40 ID:uIXdEKGOo
乙乙
エイフマン絹江父とも知己あるいは目を付けてたんやねぇ
恐るべき爺さんや
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