【ガンダム00】沙慈「僕の義兄はフラッグファイター」

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62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/04(日) 07:59:05.07 ID:gBxA+6qw0
早くしろ生きる為に戦えと言ったのは君がはずだ
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/04(日) 20:52:25.50 ID:9vxCXbDB0
これはなかなか熱いな
楽しみ
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/07(水) 16:49:41.67 ID:Wabt5iDCO
イイネ
65 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 00:48:38.51 ID:wMIlUvHJ0
私の中で最終話が終わりました。

では続きを。
66 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 01:22:52.17 ID:wMIlUvHJ0

――日本庭園風庭――

グラハム「はっははははは……!!」


絹江「……ごめんなさい……」カァァ


グラハム「ふっふ……いや、謝らないでください、くく、しかし、これは……」

絹江「うう……まさかこんなことになるなんて……」


 ・
 ・
 ・
 ・


――数カ月前――

デスク『絹江、お偉いさんがお前に折り入って話があるって……』

絹江『あぁパスしといてください、取材の予定が詰まってるんで! じゃ!』ピュー

デスク『絹江ー!!』

――それから数日後――

沙慈『ユニオンから姉さんと話がしたいってお手紙が……』

絹江『ふーん、置いといて。私また出かけるから留守よろしく! じゃ!』ピュー

手紙『この後私の存在が思い出されることはありませんでした』

――それから(ry――

電子メール『レイフ・エイフマンから貴女宛にお手紙です』

絹江『あーもう忙しいったら……!!』カタカタカタ

電子メール『この子私用メール見なさすぎでしょ……』


――そ(ry――

受付『すいません、まだ社には帰ってないみたいで……』

エイフマン『知ってた』


 ・
 ・
 ・
 ・

グラハム「いやはや、私用メールだけでも三通はスルーしている」

グラハム「私も登録されている者以外は見向きもしない質ですが、奇跡ですなこれは」

絹江「本当……お恥ずかしい限りで……っ」
67 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 01:43:07.16 ID:wMIlUvHJ0
グラハム「いえ、それだけプロフェッサーに熱い期待を送られていたということ。非礼には及ぶかもしれませんが」

グラハム「それ以上に、あの御方にそこまで見込まれているという事実をまず誇るべきでしょう、Ms.クロスロード」

絹江「何でそこまで……駆け出しの身で注目なんて受ける理由も見当たらないんですけれども」

グラハム「天才の眼というものは、一目だけでもその真価を見抜くものなのでしょう」

グラハム「かくいう私も、何故あの方に重用されているか分からんのですよ」

絹江「あら、それこそ天才同士のフィーリングというものでは?」

グラハム「私のことを調査なされているのでしょう? なら、世間の評価が私をどう扱っているか見知っているはずです」

絹江「ええ……まぁ」



絹江「偏執的とも言えるほどの出撃狂、トップエースの名を戦果と出撃頻度だけで飾る獰猛な兵士」

絹江「勢いと無二の技術に目を奪われるが、従来の技術ならばアラスカのジョシュアの方が上だとか、オキナワのタケイに劣るとか」

絹江「ああ後は、隠れて出撃を繰り返す古代撃墜王の再来、偏屈で珍妙な会話が脳髄を焼くインタビュワー殺し、とか!」


グラハム「……ほんとうによく調べられたものだ、最後の方は私も初耳ですよ」

グラハム「ですがかねがね正解と言えましょう。ふ、隠れて出撃していたのがバレていたのは意外でしたが」


絹江「えぇ、全部本当」

絹江「言い換えれば、ですけどね」

グラハム「……含んだ言い方をなさる」

絹江「だって、そうでしょう?」
68 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 02:08:28.58 ID:wMIlUvHJ0


絹江「戦場に出る兵士が戦果と出撃頻度以外でエースの何たるかを競う必要があります?」

絹江「問題行動が多いならまだしも、貴方は軍規違反や命令違反は驚くほど少ない人」

絹江「ましてや、女性問題や飲酒、喫煙などの人間性の問題も皆無ときて、品行方正や趣味などの問題に踏み込むのは事象の根幹を見誤っています」

絹江「……ていうか、この批評書いた人、長く業界にいる人らしいけど書き方が気に喰わないのよね。偉っそうにして」フン

グラハム「っ……?」


絹江「既存技術に関しても、そもそも貴方の評価はフラッグの性能を十全以上に発揮する空中変形技能の習得にあるものであって」

絹江「極端に劣るわけでもない上そこすらトップクラスの兵士から最大の強みを排除して評価するのはフェアじゃないですし」

絹江「何よりこのジョシュア・エドワーズはエアロフラッグ、空戦特化の機体に乗っていて評価も不平等! 頭おかしいんじゃないかしら」

グラハム「仮に彼がエアロフラッグに乗っていて、私が空中変形を封印していようとも……負ける気はさらさらありませんが」

絹江「お、いいですね。トップエースの矜持ってやつ?」

グラハム「元来負けず嫌いな男でして、そう言われるとこみ上げるものが無いとはいえません」


絹江「そういうの好きですよ、男の子って感じで」



グラハム「…………」フイッ

絹江「……そういうんじゃないです、あの、すいません、こっち向いてください、ごめんなさい」カァァ…

グラハム(からかうというのがこうも興に乗るものとは思わなんだ)ワザトー
69 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 02:44:27.14 ID:wMIlUvHJ0


絹江「ええっと……他のものに関しては、まあ、個性ってこういうもんだとしかいえませんが」

絹江「要は全部受け取り様なんです、こういうものは」

グラハム「吟味する側の問題と」

絹江「何も知らない人がこういうものを見れば誤解もするでしょう。私も正直逢うまで怖かったし、逢っても怖いと思うところあります」

グラハム(っ……本当にはっきりとモノを言うなこの人は)

絹江「でも、逢ってみないとわからないことはあります。本当に見てみないと分からないものもある」

絹江「そこがジャーナリストの仕事なんだろうなって思うんです。逢うべきなら【逢いたい】と、危険なら【逢うべきでない】と」

絹江「そう感じさせられるような、きっかけをこそ作るものだと」

グラハム「…………」

絹江「それに、さっき言ったのは一部の批評」

絹江「大半は貴方を高く評価している記事でしたし、私の先輩も貴方のことはべた褒めでした」

グラハム「ほう、そちらは信用なさらなかったと?」フフッ

絹江「? 何でです?」

グラハム「先ほどいっておられたではありませんか、怖かった――と」

グラハム「ん……あぁ、いや済みません。少し底意地の悪い言葉でした、忘れて……」

絹江「はい、言いました。嘘じゃあありません」

グラハム「え?」

絹江「怖いと思ってましたし、思ってます」

絹江「でも内心、何処かで期待もしてたんです。きっと」

絹江「で……」


絹江「多分、その期待も裏切られてはいないから――こうやって話していられるんだと、そう思います」




70 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 03:19:36.30 ID:wMIlUvHJ0


グラハム「…………」フイ

絹江「……あれ」

絹江(結構いいこと言ったと思ったんだけどな……受け悪かったか)

絹江「……」シュン

グラハム「そろそろ……戻りますか」

絹江「あ、はい」

グラハム「…………」


グラハム(うむ、まずいな)

グラハム(彼女の方を向けん)

絹江(分かってたことだけど、はっきり脈なしの反応は女の身にゃ酷だ)

グラハム(鏡など見ずとも自分の顔がどうなっているかはっきり分かる)

グラハム(この高温……恐らく耳までレッドゾーンだ)

絹江(あぁ気まずい。顔も上げられん。睨まれてないかな、いや眼中にもないか)

グラハム(さて、彼女が気づかぬことを祈って歩き続けても、いずれは彼らに遭遇するわけだが)

絹江(沙慈、そのお友達(仮)、お願いだからたすけて)


グラハム(――もう少し、この時間が続いてはくれぬものか)

絹江(――願わくば、この時間がとくとく終わらんことを)
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/10(土) 04:37:48.97 ID:xJH6wbrkO
(・∀・)ニヤニヤ
72 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 04:43:22.82 ID:wMIlUvHJ0

――終わり――


デスク「終わった……!!」ゲッソリ

Jオジジ「オワタァァ……!!」ゲッソリ

ルイス「日本勢壊滅状態」

絹江「ごめんなさい、お待たせいたしました」

沙慈「姉さん」

絹江「記念撮影に一枚、なんて押し切られちゃって、ごめんね沙慈」

沙慈「ううん、似合ってた。綺麗だったよ姉さん」

絹江「そう? ……ありがと、沙慈」

「うむ、端正なスーツ姿もよく似合っておる」

絹江「!」

沙慈「あ……!」

エイフマン「最後に一声かけてから、と思ってね」

エイフマン「それと、謝罪を。このような場に君を不敵な理由で呼び出したこと、誠に申し訳なかった」スッ

絹江「ッ……」


ビリー「おお、みたまえよグラハム。MS開発の生ける伝説が一介のジャーナリストに頭を下げている、なかなか見れたものじゃないよ」

グラハム「…………」

ビリー「……何があったんだい? 三倍速もかくや、といった赤熱具合だが」

ビリー「君も分かりやすい男だね、恥ずかしくなると耳まで紅潮するんだから」


絹江「頭をお上げください、Mr.エイフマン。私の非礼を詫びる前にそのようなことをされては、立つ瀬もありません」

絹江「此方こそ、再三に渡るお申し出への無礼、お詫び申し上げます」ペコ

エイフマン「……では、これでお互いなかったことにしてもらおうか。棚に上げるような言い方で恐縮ではあるがね」

エイフマン「少なくとも……君にも有意義な時間であったことを祈るよ、クロスロードくん」

絹江「いえ、私は貴重な体験をさせていただいただけで胸がいっぱいで……ただ」

エイフマン「ただ?」

絹江「……そちらに不快な思いをさせなかったかだけが、心残りで」

エイフマン「……」チラ


グラハム「……」

ビリー「グラハーム、彼女帰るよ? 帰っちゃうよー、グーラハーム」


エイフマン「大丈夫じゃろ」

絹江「さいですか……」
73 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 05:33:34.43 ID:wMIlUvHJ0

エイフマン「あれが本当に不快に思ったなら他人には隠さん。好も不好もはっきり告げる男よ」

絹江「ええ、それは理解したつもりです」

エイフマン「だろうな。君の観察眼ならあの男はことに分かりやすかろうて」

絹江「かも知れませんが……そうでもないかもしれません」

エイフマン「ほう?」

絹江「一見で……ましてや小一時間の語りで知った気になるには、惜しい人だと思います」

絹江「更に知りたいと、そう思わせてくれるような人は……嫌いじゃありません」


エイフマン「そう、か。気にかけた男がそこまで評価されると、悪い気はせんが」

絹江「あぁでも、日本から居を変えるわけにも行きませんし、付き合っていきなり遠距離じゃ続く気もしないので」キッパリ

エイフマン「君のそういうとこ好きじゃよ、絹江くん」


絹江「っと……では。もう他のみんなが準備しているみたいですので」

エイフマン「おう。またな、絹江くん」

絹江「エーカーさんにも……」

エイフマン「おっと」

絹江「!」

エイフマン「……」チラ

ビリー「! はいはい、合点承知と」スタコラサッサ

エイフマン「そういったことは自分で告げねば、のう」

エイフマン「アレは勝手に勘ぐって勝手に思い込んで、勝手に暴走しおる」

エイフマン「人間、言わねば何事も分からんものさ」

絹江「……はい!」

エイフマン「立つ鳥跡を濁さず……期待しとるぞ」

エイフマン(クロスロードの娘よ……と言うのは失礼だろうな、彼にも君にも)
74 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 05:42:55.25 ID:wMIlUvHJ0

――――

絹江「グラハムさん」

グラハム「!」クルッ

絹江(わ、顔真っ赤。風邪かしら)

グラハム(そろそろ紅潮も引いているか……変に淀むと怪しまれるな)ゴホン

絹江「さっきはごめんなさい、気を悪くされたなら、謝ります」

グラハム「いや、私は……」

絹江「でも、今日は楽しかったです。仕事じゃなくて誰かと逢うのって、本当、あんまりないんですけど」

絹江「久しぶりに会う【誰か】が貴方で良かった。本当ですよ」ニコ

グラハム「っ……」

絹江(あ、また赤みが増した。本格的に拗らせたかな)??

グラハム(もはや何も言うまい……言葉にも出来ん)

絹江「では失礼致します。いずれ機会ありましたら、何処かで」

グラハム「……」

沙慈《姉さーん!!》

絹江「はーい! じゃあ、さよな……」「絹江さん」


絹江「! え、あ、はい!」

グラハム「……ふう、全く」

75 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 05:55:07.44 ID:wMIlUvHJ0


グラハム「ジャーナリストを志すならもう少し相手の言葉を聞くべきでしょう。私に別れの言葉も言わせないおつもりですか」

絹江「あ、いえ……ごめんなさい……」

グラハム「ふ……萎縮なされないでほしい。私も、今日というひととき、あなたと過ごせて良かったと思っている」

絹江「! えっ」

グラハム「ええ……本当、ですよ?」

絹江「あ、あはは……ありがとうございます……」カァァ


グラハム「そして、良ければこちらを」

絹江「はい?」

グラハム「私の連絡先の入ったメモリです。不要なら廃棄してくださって構いません」

絹江「えっ」


グラハム「ですがもし、この獰猛なエースパイロットと交友関係を結んでいただけるなら……」

グラハム「ふふ、しかるべき時にジャーナリスト・絹江・クロスロードとしての見地から意見を頂きたく、そう思います」

絹江「っ……はい、私で良ければ喜んで。フラッグファイター・グラハム・エーカー」

グラハム「では、またいつか」

絹江「ええ」


「「さようなら」」




――そして、はじまり――
76 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 06:06:36.02 ID:wMIlUvHJ0

――――

ビリー「時間にしてまだ半日も過ぎてないけど、なかなかハード極まりない一日だったね」

グラハム「得るものは大きかった、比率からしても大勝利といえよう」

ビリー「何に勝ったんだい? グラハム」

グラハム「かつての己さ、カタギリ」

ビリー「深いねえ……教授はどうでした? お目当ての子猫ちゃんに会えた気分は」

エイフマン「大収穫といえような。猫は猫でも、獅子の系譜ではあるが」

ビリー「へえ……じゃあ弟くんも?」

エイフマン「あっちは普通極まりないのう。ニュートラルオブニュートラルじゃ、天使も悪魔も敵に回すタイプじゃな」

ビリー「まぁたわかりにくい例えを……」

グラハム「プロフェッサー」

エイフマン「うん?」

グラハム「先日までの驕った姿勢に振るまい、お許し下さい。私は今日までの己の弱卒ぶりに怒りすら覚えています」

グラハム「ジャーナリズムへの偏った認識、外部への穿った視線、色眼鏡。その孤立極まる有り様をこのグラハム・エーカー、自認するに至りました」

グラハム「これからも、どうかこの愚物へ指導鞭撻、お願いいたします!」

エイフマン「あー、うん。分かった分かった」

グラハム「! まだ何か足らないのでしょうか……!!」

エイフマン「いーや、たりとるたりとる」

エイフマン「まあ、これからかな……布石とはその時になってみないと分からんものだからのう」

グラハム(流石はプロフェッサー……更に先を見据えていらっしゃるのか。私も精進せねば)

エイフマン(全体的な概念まで考えが及んでいればいいが、まだまだ、これだけで足りるとは思っとらんさ)

エイフマン「これからこれから……なあ、スレッグよ」
77 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 06:20:17.99 ID:wMIlUvHJ0
――――


絹江「んーおいひいー」ハグハグ

ルイス「ですねー」ハグハグ

沙慈「うわー……すごいビュッフェ。いいんですかこんなの?」

デスク「いいんだいいんだ、金ならJNNが出す! 食わなきゃやってられん!!」ガツガツ

Jおじじ「食え!飲め! 食って全て忘れるのじゃあ!!」グビグビ

沙慈「荒れてるなあ……」

絹江「……」チラ

絹江(食べ終わったら、こっちの連絡先も送っとかなきゃ)


ルイス「彼の連絡先ですか」ズイ

絹江「ふぃ?!」ガタッ

ルイス「いやー、実は結構脈アリだったりするんですか? 顔は良かったですもんね、お姉さま?」ニヤニヤ

絹江「いや、それはない」キッパリ

ルイス「は、はっきり言うんですね……」

デスク「仕事でもこうだからなあ……こいつと会議出ると胃薬必須だよ」ズズズ

沙慈「…………」

絹江「ええ……ほんと、何でもない」

絹江「はず、なんだけどなあ……」チラ


――――


――そして――
78 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 06:38:05.39 ID:wMIlUvHJ0


ビリー「ああ、そうだ。来週からちょっと出張に出るよ。整備は出来ないから、グラハムスペシャルは控えておいてくれよ」

グラハム「ほう、どちらだ」

ビリー「AEUの軌道エレベーター付近、軍事演習場だよ」

エイフマン「例の新型か」

ビリー「ええ。我らのフラッグ同様、可変機能を有した空戦型MSだと聞いております」

エイフマン「儂は遠慮しよう。目新しい物はあるまいし、連中の得意なプラズマ加工技術ならだいたい再現も改良も出来る」

ビリー「予算が降りてくれれば、反映も出来るんですけどねえ」

エイフマン「後追いの軍備拡張ではこんなもんだろうよ」


グラハム「……」

エイフマン「行くか?」

グラハム「カタギリがいない以上、私がMSに乗っては整備班の胃が保ちますまい」

エイフマン「だろうな。程々にしとけよ」

グラハム「はて? 如何様まで行けば逸脱となりましょうか」

エイフマン「お前はイナクトを乗っ取って暴れかねんからな、全く」

グラハム「考え付きもしませんでした、参考にさせていただきます」

ビリー「教授……変な献策は僕の寿命に影響しますよ……?」


ビリー「やれやれ、来週は空から剣でも降ってきそうだよ」


――A.D.2307――


――天使、降臨――
79 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/10(土) 06:45:36.12 ID:wMIlUvHJ0
でも第二話以降はまだ終わってません
こいつらほんと20代か
ではまた来週

一夜でこんだけ書いてるんだから次は倍書いてきます
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/10(土) 09:10:44.38 ID:Xd2BtxWZo
楽しみだ
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/10(土) 09:23:42.84 ID:O0ffW1TWO
乙です
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/10(土) 13:41:21.26 ID:Ld/8skdwo

ニュートラルオブニュートラルで神も悪魔もぶったぎりとか実は一番普通じゃないんじゃ
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/10(土) 15:42:10.45 ID:NBji8AzoO
ライザー搭乗してあれだけ高濃度のGN粒子漬けになって完全に一般人のまま終わった辺りある意味では凄い
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/11(日) 01:12:24.40 ID:pZPnYZRX0
多分イノベーターに覚醒する条件満たしてないから身体だけ覚醒の準備は何時でもできてると思うんですけど
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/11(日) 10:57:40.76 ID:oBCtZjIY0
割りとメリケンさんそういう空気になったら抱いちゃう気がするんだけど、武士ハムじゃない一期で何処までいくんだろう
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/12(月) 18:57:23.85 ID:XK23ESqV0
我慢弱いハムには分が悪い戦いだな
87 : ◆AvaUNpQJck [sage saga]:2016/09/17(土) 02:19:36.23 ID:GkGGRqzI0
致命的な時期的ミスが発覚したため全話見直してきます。(具体的には三話〜六話が完全になかったことになってる)
皆様方へ大変なご迷惑をお掛けするに際し、罵っていただけると嬉s次回までの活力となります。
申し訳ない、次回来週には必ず。
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/17(土) 09:57:26.78 ID:toIGifP0O
私は我慢弱い
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/18(日) 03:19:04.82 ID:1RZm+bvz0
私は果てしない程このssを所望している!!!!
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/19(月) 11:46:38.59 ID:G2NxujnO0
ようやくSSと巡りあえたというのに。口惜しさは残るが、私とて人の子だ。
91 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/24(土) 02:05:27.50 ID:zNOD7PDK0
では、再開を。
92 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/24(土) 02:06:05.18 ID:zNOD7PDK0

――ガンダム、襲来

――ソレスタルビーイングによる全世界の紛争への【宣戦布告】

――火は点いた、賽は投げられた

――全ては、ここから動き出した


――JNN――


デスク「番組特別報道用に全部切り替えていくぞ! 現地の映像届き次第重ねられるようにな!!」

部下A「はい!!」

デスク「ぼさっとすんな絹江! 手ぇ空いてないとこ回って片付けてこい!!」

絹江「はぁい!!」

絹江(特ダネ入ると人が変わるんだから……もう!)


ウチオトッセッナーイ

絹江「げ……切り忘れてた、もう……誰よ!!」


【Graham Aker】


絹江「え……?」



 ・
 ・
 ・
 ・


絹江「もしもし?」


グラハム『ごきげんよう、絹江さん。グラハム・エーカーです』
93 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/24(土) 02:07:58.67 ID:zNOD7PDK0
絹江(サウンドオンリーか……まあいいか、化粧もそこそこだし好都合)


絹江「それは分かっています。登録してありますから」


グラハム『敢えて名乗らせていただきました。此方からかけるのは初めてのことでありましたので』


絹江「お心遣い感謝いたしますぅ……はあ、で? ご用件は?」


グラハム『ふふ、その様子ですと相当お忙しそうだ。報道機関は特に眠れぬ毎日でありましょう』


絹江「……切りますよ?」


グラハム『失敬、お時間は取らせません。カタギリからこのようなプレゼントを、と提案されまして。良ければお受け取りください』

ビリー『あーあー、僕の名前を出したら台無しじゃあないか』


絹江(?……あ、何か送られてきた……)

絹江(…………!!!???)


絹江「えっ!!? これ??! ガンッ!?!」


ビリー『ええ、ええ。二体のガンダムが介入してきた軍事基地の、ユニオン側の映像をちょいと拝借したもので』

ビリー『映りがあれだったり広報に適さないものも多いですけれど、まあグラハムとの友情を祈念として、ね』


絹江「あ、ありがとうございます……いいんですか、これ?!」

ビリー『そっちの特派員が手に入れたとか何とか言って出してもらえれば。ユニオン軍の名前を出されたら最悪国際問題なので、そこは配慮を』

ビリー『……とまあ、君の好感度アップを狙って持ちかけたというのに、全く君という人は……』

グラハム『他人の好意を着て身を飾る趣味はない、感謝はお前にこそ向かうべきだろう?』

ビリー『君らしいけれど、目的は未達成で不完全燃焼だよぼかぁ』

グラハム『? 謝罪しよう、そして重ねて感謝する。カタギリ』


絹江「……ん?」

94 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/24(土) 02:17:56.23 ID:zNOD7PDK0


絹江「……済みませんグラハムさん、まさか……」

絹江「あの基地で、ガンダムを目撃していたのですか!?」

グラハム『ええ、真正面で。見事な解体劇と驚異的な性能を目の当たりにさせてもらいました』

絹江「……!」

絹江(向こうの特派員の情報以上に、第三者の、しかも軍人の情報となれば信憑性が出る……!)

絹江(特に同じ可変型MSのパイロットの発言、比較した情報も聞き出せればその手のところにだって評価を得られるわ!)

絹江「よ、よろしければ電話口で申し訳ないのですが、インタビューを……!!」

グラハム『ええ、匿名でお願いできるなら構いません。ですが、申し訳ない』

絹江「はい?」


グラハム『これから意中の相手との逢瀬に出かけるところでして。出来るなら終わった後にしてもらいたい』




絹江「……え……」



ビリー『……うわ』


ビリー『うわあ』


ビリー『うーわー』


ビリー『うーーわーー』


グラハム『? いきなりどうした、カタギリ』
95 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/24(土) 02:23:16.19 ID:zNOD7PDK0
ビリー『最悪だよグラハム、今の発言はそう経験のない僕が考えうる中でもトップクラスの最悪だ』(NGワード:皆無)

グラハム『???』

ビリー『えーっと、クロスロードさん? できれば携帯の映像をオンにするので「結構です」』

ビリー『……Ooh』

絹江「申し訳ありませんでした、どうぞ事が済んだ後にでもごゆっくりとご連絡を」

グラハム『えぇ、お心遣い痛み入ります。では後ほど』

絹江「っ……!」

ブツッ


絹江「……あぁ……もう」

絹江「そういう話、普通……あー……!」

絹江「…………最っ低……」



絹江「デェェェスクッ!!!」バァンッ

デスク「ひい?! 何!?」

部下A(鬼だ……!)

部下B(鬼がいる……!!)




――――

『中尉、作戦遂行可能ラインに到達いたしました』

グラハム「ご苦労! さて……どう出るかな、お相手は」

ビリー「グラハム……せめてそのパイロットスーツ姿を映像に出しておけば言い訳も出来たろうに……」

グラハム「着替え中の見苦しい姿を見せるわけにはいくまい。彼女はレディだ」

ビリー「あぁ……そういう言い方を矯正せずに放置した僕らの咎だとでも言うのか、神よ」
96 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/24(土) 02:28:36.00 ID:zNOD7PDK0
ビリー「僕の努力をマイナスに変換してみせる辺り、さしずめ君は恋の錬金術師と言ったところかな……」

グラハム「? 先程から妙に絡むな、カタギリ。どうした?」

ビリー「……いや、終わってからにしよう。これからあの謎のMSに奇襲を仕掛けるのだからね」

グラハム「運良く出会えたなら、だがな」

ビリー「グラハム、イナクトは猿真似でも性能自体はフラッグに比肩しうると僕は考えている」

ビリー「そのイナクトを圧倒してみせたあのMS……恐らく四機全てがその水準であることは間違いないわけで」

グラハム「どれが姿を見せようと深追いは厳禁、そう言うのだろう? 熟知しているさ」

グラハム「男として女性との約束を反故には出来ん。締結した以上は、生還が絶対条件となるだろうよ」

ビリー「……生きて帰ったところで、してくれるかどうか……ハァ」

グラハム「まあ、せいぜい祈っていてくれ。私の一世一代の賭けだ」

ビリー「あいにく君の無事だけは神に祈ったことがないんだ。必要が無いからね」

グラハム「ははは! ではその信頼にも応えねばなるまいな、盟友よ」



グラハム「では、行ってくる!」

ビリー「ご武運を、フラッグファイター」

『お気をつけて、中尉!』


グラハム『グラハム・エーカー、フラッグ! 出撃する!』






グラハム「初めましてだなぁ、ガンダム!!」

『クッ……何者だ!?』

グラハム「グラハム・エーカー……君の存在に心奪われた男だ!」



 ・
 ・
 ・
 ・


グラハム『……と、言うわけでありまして。ものの見事に圧倒されて終演と相なりました』ハッハッハ

絹江「 」

ビリー(このドーナッツは当たりだね)モグモグ
97 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/24(土) 02:32:21.58 ID:zNOD7PDK0
――クロスロード宅・絹江自室――


グラハム『……どうか、なされましたか。絹江さん』

絹江「……このおバカ……」ハァー

グラハム「はい?」


絹江「いーえ、お気になさらず!! まさか【意中のお相手】が件のガンダムだとはつゆ知らず、勝手に心乱した私が悪うございましたっ!!!」

グラハム『それは申し訳ないことを。確かに下品な物言いでありました、謝罪します』

ビリー(そういう意味じゃあ無いと思うんだけどなあ)

ビリー(でも……ふぅん?)

絹江「そういうことじゃ……あー、いいですよもう。話が進まないったら……!!」

絹江(……でも、プレイボーイってわけじゃあないってことかな……)

絹江(だから何だって話なんだけど。)

絹江(…………)

絹江(だから何だって話なんだけどっ!)


絹江「コホン……それで、部隊の損害は大丈夫だったのですか? さっきの話では貴方はライフルを喪失されたそうですが」

グラハム『はて、部隊、とは?』

絹江「ガンダムを待ち伏せた部隊ですよ。貴方が指揮なされたのでしょう?」

グラハム『いいえ、おりません』

絹江「……あぁ、では上官がいらっしゃったと。思いつきで待ち伏せた割にユニオンも柔軟で……」


グラハム『私一人です』


絹江「……はい?」



グラハム『私の駆るフラッグ一機で、ガンダム一機と交戦いたしました』



絹江「……この……おばか……!!」

ビリー(超同意)

グラハム『今度は聞こえましたぞ、失敬な』ムッ


グラハム『自覚はしていますがね』

ビリー(自覚してたのか)ズズズ
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 02:37:43.11 ID:gf6dAeMxO
大尉流石です
99 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/24(土) 02:40:21.05 ID:zNOD7PDK0
――輸送機・士官室――


絹江『だっ……な、貴方は! 分かってるんですか?!』

絹江『今回のセイロン島の武力介入で、ガンダムはあのティエレンを概算三十は撃破しているんですよ!』

グラハム「一機辺りおよそ七機ですか。恐らくそれ以上の数値が明日人革連から公表されることでしょう」

グラハム「30:0、ふふ、馬鹿げた計算ですな。おおよそフラッグ部隊でもアレをそこまで痛めつける術はない」

ビリー(ティエレンキラーの空中変形技術保持者がよく言うよ、全く)


絹江『そんな相手に一機で戦闘を……あぁもう信じられない……っ』

グラハム「敵は帰投中でした。初お目見えのときの展開から察するに、彼らは段階的で高度な作戦目標に従っていると推測されます」

グラハム「それならば勝てないのは当然としても、予定が狂うことを恐れ深追いを防止でき、多少の交戦によるデータ収集が可能であると判断しました」

絹江『っ……答えになってません……一撃で撃墜されたっておかしくない相手なのに!』

絹江『それなのにそんな平然と……怖くなかったんですか?』


グラハム「……怖かったですよ。いえ、今でも恐怖が手のひらを濡らしているほどです」

グラハム「ですがそれ以上に、興味以上の衝動が私を支配していた」

グラハム「【逢いたい】と……そう思ったのです。それを止める術が私には無かっただけのこと」


絹江『……頭痛くなってきました……まだインタビューしてないのに……』


グラハム「中断いたしましょうか、Ms.絹江」

絹江『いーえ……やりますとも。せっかく例の画像でボーナスまで貰えそうなんですから』

グラハム「それは吉報だ。お役に立てたなら私も嬉しいしカタギリも喜ぶでしょう」

ビリー(そろそろ怒るぞ……)チッ

グラハム「……?」


絹江『中尉』

グラハム「何でしょう?」


絹江『また会えて良かったです。知ってたら、もう少し感慨もあったのでしょうけれど』


グラハム「――!」


グラハム「……ええ、ありがとうございます。私もです」

絹江『嘘ばっかり』ケッ

グラハム「今のも聞こえましたよ」

――――
100 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/24(土) 02:43:23.07 ID:zNOD7PDK0
本日は此処まで。
また来週。
今のうちに、戦闘描写が本格化し好き勝手やり出すタイミングで地の文も混ぜていきます。
しばらくはこのままです。
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 04:14:18.72 ID:BB6nsyfA0
絹江さんがヒロシに殺される未来は果たして変わるのだろうか…
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 05:44:50.18 ID:q5b3iccAO
世の中には死んだと思ったら実は生きていた歌姫がいてだな…
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 10:45:47.91 ID:YwZwk0WAO
不可能を可能にすれば……
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 11:20:57.12 ID:NUrgUol3o
絹江さんが生きててもさらにその先の未来への水先案内人イベントも生き残ってもらわないといけないとか大変だなこれは
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 13:09:51.00 ID:HoeyZF3mO
ELSブレイヴに乗ってメタルイノベイターになって帰ってくれば良し
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 18:59:13.17 ID:VynIEVyHo
メタルグラハムとかちょっと未来に行きすぎでは……
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/24(土) 23:38:48.21 ID:IEbrW82wO
サヨナラノツバサ的展開で回避しよう
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/30(金) 14:07:50.65 ID:wiXE/FTGo
あれは結局どっちもだめだったじゃないですかあ!
109 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/09/30(金) 23:51:14.35 ID:xkFQHiMy0


沙慈「……ふあ……」スタスタ


『――――』

「では――」


沙慈「……?」


沙慈「……」チラ


『ええ、現行のMSでは対応は困難でしょう。戦って分かりました、あれに拮抗するのは不可能と言っていい』

絹江「では、彼らの宣言である【武力介入による紛争根絶】は可能であると?」

『まだ手札を見ていない以上は肯定的には語れません』

『ですが、あの【ガンダム】を用いた戦闘行為を手段とされた場合、一方的かつ甚大な被害は免れないでしょう』

絹江「なるほど……」


沙慈(この声……姉さん、あの人と話してるのか……?)


絹江「ユニオン側が取るであろう、そして取るべきだろう行動は……ええ、もちろん個人が特定されない範囲で構いません、お答え願えますか?」

『静観、ただそれのみでしょう。彼らがどう出るか、早急な対応はかえって思わぬ被害を招く』

『国連軍にも近しいユニオンの表立った動きは他国の強い反発を招きます。人革連やAEUほど目立って彼らの興味を引く諍いも抱えていない』

『で、あるならば……ええ、あくまで世論の後押し、そして世界の守護者としての立場を以て彼らに対峙する。それが方向性となるかと』

絹江「こすずるい……」

『はは、えぇ、全くです』
110 :割りと皆さん「生か死か」が気になる模様で ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/01(土) 00:52:21.44 ID:W/TTnvzb0
絹江「……いえ、もちろん戦った場合貴方がたユニオン軍人にも多大な被害が出るのは理解しています」

絹江「ですが、それはつまり……」

『ええ、ええ。つまり他二国が彼らに蹴散らされる様を傍観するのみ、ということ』

『今回の一件で分かる通り、ティエレンで対応できない以上ほぼ三大国以外の軍隊の尽く、蹂躙を防ぐ手立てはない』

『世論がガンダム排斥に寄るまでは、いわば見殺しの態勢を取る……ユニオンらしい手でしょう?』


絹江「……」

絹江「いずれ、多くの国が連携してガンダムと対峙するとしても、ですか」

『だとしても、なのでしょう。そうやすやすと手を取り合えるほど、啀み合いの根は浅くないということです』

絹江「……貴方は……」

『はい、従うでしょう。国家の意志の体現こそ軍人の在るべき様であるゆえに』

絹江「呵責は」

『無いといえるほど自我が希薄な男ではなく、あるといえるほどグローバルな立場でもなし、といったところでしょうか』

『ですが、いざガンダムと対決するに際し……我が背に誰がいようと』

『ええ、人革連、AEU、その他無関係の国家、個人がいても。この手は迷わず引き金を引くでしょう』

絹江「護るために、ですか?」

『無論。それが建前であっても、おのが欲求の次点であろうとも、存在意義なればこそ』

絹江「……ある意味天職ですね、本当」

『此処でなら飛べますから。私の心の臓はそのために早鐘を打つのです』
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/01(土) 02:43:38.20 ID:A7/tac0UO
この時間に君と出会えようとは…乙女座の私にはセンチメンタリズムな運命を感じずにはいられない!
112 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/01(土) 03:36:03.39 ID:W/TTnvzb0
沙慈(……?)

沙慈(グラハムさんと話してるのか、電話で)

沙慈(……まだ、終わってなかったんだ……)


絹江「噂噂と思ってましたけど、本当に好きなんですね、飛ぶことが」


『何にも代えられぬ、生きる目的そのものです』

『子供の頃より、ずっと焦がれ続けてきた蒼穹への渇望……』

『ふふ、お陰で婚期を逃しましたが、後悔は微塵もありません』


絹江「あら、それ私のことじゃなさそう?」

『……口を滑らせました、追及は勘弁願いたい』

絹江「ええ、勿論。友情を長続きするコツは詮索しないことですもの」

『参考になります』

絹江「それに? 惜しいと思われるほど長い関係でもありませんし?」

『確かに……と言うのは非礼に値しましょうね』

絹江「ええ、よく出来ました」


『ですが、こうして話しているひとときは、これでも良いものだと感じておりますよ』

絹江「……お世辞」

『本音です』

絹江「嘘ばっかり」

『信じていただけない?』

絹江「今はまだ、って言ったら?」

『この関係が長く続くことを祈念いたしましょう』

絹江「ふふふ、歯が浮きそうでなくて?」

『口を抑えていなくてはならぬ程度には』

絹江「あはは……!」



沙慈「ッ……姉さん……?」

絹江「! 沙慈」

『おや?』
113 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/01(土) 03:51:31.23 ID:W/TTnvzb0
沙慈「まだ寝ないの? 明日も早いんだろ?」

絹江「お気遣いなく、これでも仕事の延長よ」

絹江「ねえ沙慈、すごいのよ! グラハムさんってばね」

沙慈「【中尉】の!」

絹江「!」

沙慈「……中尉のお時間も、考えてあげなきゃ」

沙慈「ほら、ソレスタルビーイングとか、色々……忙しくなるでしょ?」

絹江「それはそだけど……」

『いや、彼の言う通りだ』

沙慈「……」

『申し訳ない、絹江さん。話が脱線してしまったようだ』

『インタビューの方は匿名で、それと私が交戦したという事実は胸のうちに秘めていていただきたい』

絹江「え、ええ……もともとそういうお話でしたから」

『それと、先程話していた【イオリア・シュヘンベルグ】の件ですが』

絹江「ええ、謎の解明ができ次第意見交換を。とはいっても、記事にできる内容とそうでないのが混ざりそうで……」

沙慈「姉さん……?」

絹江「……分かってるわよ、もう……」

『はは、姉上想いの弟君だ。誇るべき良い家族です』

絹江「大げさ……でもありがとうございます」

『では、失礼致します』

絹江「おやすみなさい、グラハムさん」


ピッ


絹江「……沙慈?」

沙慈「何だよ……」
114 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/01(土) 03:59:40.78 ID:W/TTnvzb0
絹江「…………」ジー

沙慈「…………」

絹江「…………」ジーーー

沙慈「…………っ」


絹江「…………」ジーーーーーー


沙慈「……分かった、わかったよ! ごめんなさい、仕事中に邪魔して申し訳ありません! これでいい!?」

絹江「……よしとしときましょうか、自覚はあったみたいだし」

沙慈「……仕事の話以外で盛り上がってたくせに……」

絹江「あぁん?」

沙慈「何でもないです!!」


絹江「全く……珍しく機嫌が悪いから、何かと思ったわよ」

沙慈「何でもないよ、何でも……」

絹江「ま、止め時がなくなってたのは確かだし、ちょうどよかったってことにしとくわ」

絹江「おやすみ沙慈……ふぁ……明日も忙しくなるわぁ……」スタスタ


沙慈「……何なんだろう……な……ほんと」
115 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/01(土) 04:05:21.53 ID:W/TTnvzb0
短いですが此処まで
実際グラハムがフラッグで戦ったガンダムはアイン以外広域粒子散布状態で性能が万全でなかったり疲労困憊のところを奇襲であった場合が多いのですが、それでも頭おかしいと思うのであります
また来週、いい加減加速をば
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/01(土) 07:34:59.42 ID:AdFl6cWAO
宇宙ネズミ「そんなの当たり前じゃん」
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/01(土) 11:38:36.05 ID:ReziDA1jo

沙慈くんはシスコンだなぁ
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/01(土) 20:05:29.38 ID:3jjdMafTO

ついにトランザムか!(まだ早い)
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/03(月) 11:28:39.91 ID:rsShT9KP0
もう来週だぞ…!私は我慢弱い。
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/03(月) 11:57:42.06 ID:5NVuRwgpo
声優つながりだがアルトもこれくらい飛ぶことへの渇望があればなあ…
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/03(月) 12:07:00.12 ID:cWmp8XBpo
>>115
そう書くとアインが糞ザコに聞こえる不思議
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/03(月) 14:24:51.72 ID:5NVuRwgpo
まあ一番阿修羅ってた時期だからしょうがないね。
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/03(月) 16:09:16.91 ID:SKNCyAmGO
ぎっちょんマダ?
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/04(火) 00:53:42.57 ID:h5AGFNCso
そういやハムって孤児だからサジの姉ちゃん取られる!って感情まったく理解できないだろうな
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/04(火) 21:16:13.27 ID:kIuvujcT0
まぁ恋い焦がれた空をガンダムにとられたとか、苦楽を供にした部下をガンダムにとられたとかに例えればサジの気持ちも解るんだろうか…
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/04(火) 21:18:38.41 ID:fzOci5N90
尚それを愛に変換してしまう変態の模様
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/09(日) 19:49:23.58 ID:YNsxxza30
後4時間で今週終わっちまう...
まだかな
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/12(水) 20:26:23.77 ID:BDpNw325o
ガンダムの長編は基本完結しないからな
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/19(水) 16:59:54.59 ID:IzDAIJbl0
少年!!!!続きはまだか!!!!
130 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/20(木) 03:01:29.43 ID:w48dJ83y0
ううむ、なかなか思ったようには仕上がらない
なもんで試し試しになりますがご容赦を。
約束破ってごめんなさい
131 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/20(木) 04:29:26.01 ID:w48dJ83y0

――MSWAD基地・上空――




 陽は既に直上。
 雲一つない蒼天に、影は三つ、翻る。
 見上げる者は数知れず、固唾を呑んで影の一つを目で追っていた。
 
 行われているのは特殊なペイント弾を使用した模擬戦闘。
 二機のユニオンフラッグを相手取り、一機の特殊仕様フラッグの試運転が始まっていた。


「やれますかね、教授」

「分かってて言うのは意地が悪いぞ、カタギリ君」

「失敬。ですが、今回ばかりは鬼胎も芽生えるというもので」

「はっは、こればかりは、我らのさがよな」


 緊張感さえ漂う周囲の空気をよそに、椅子に腰掛け脚組みしながらの観戦に興じる技術者師弟。
 黒の一機を執拗に追い回す淡水色の二機は、旋回と加速を繰り返す標的に食らいついて離れない。
 だが、それでも先行する機体には一発の弾痕さえ確認できず。
 現在発射数、二機を合わせて三十五。
 空に映えるEカーボンの黒色装甲は、ただの一撃さえ許していないという何よりの証拠であった。

 大きく弧を描く三機が空に白を塗りつける。
 制動後に三発、続けて五発。
 追跡者の放った模擬弾は、舞うように回る獲物のすぐ横を通り抜けて、一定距離を進んでから自壊し散った。
 またもや魅せた見事な回避と、オーディエンスは沸き立ち騒ぐ。
 依然、憮然の師弟二人。
 不満げにグラスの氷が音を立てた。


「反応は上々、横ブレも少ない。綺麗な操縦です、が」

「遊んどるんじゃよ、あの阿呆。お上品な運転をしおってからに」

「珍しいですね。社交界デビューのお嬢さまかな?」

「羊の皮にはご退場願え。あやつの本性に付いていけないようでは乗せん方がずっと良い」

「合点承知。十二時の鐘の音は聞こえたね、グラハム?」


『了解した――とくと御覧じろ、御二方』
132 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/20(木) 05:01:29.10 ID:w48dJ83y0

 歓声がどよめきに変わり、師弟の顔には笑みが浮かぶ。
 漆黒の機影が、一度再加速を始めた瞬間に、それは起こった。
 一挙に、瞬く間に、追随する二機が離されたのだ。
 
 その速度差、優に倍以上。
 二機のフラッグのぶれが、パイロットの動揺を感じさせた。

 そして次の瞬間、どよめきは歓喜の絶叫に変わる。
 師弟は、コーラの入ったLサイズグラスを優雅に傾け乾杯。

 機首を上げた特殊仕様フラッグ。あまりの上昇速度に二機の反応さえ置き去りにして。
 幾多の視線の目の前で、収納されている四肢を大気に投げ出し、一瞬のうちにスタンド・モードへと移行したのだ。
 高速飛行からの、急上昇中に見せつけられた、流れるような空中変形。

 これこそ、人呼んで【グラハム・スペシャル】
 
 フラッグファイター最優のトップガンにのみ操れる、世界最高峰のMS変形マニューバである。


『勘弁して下さいよ、隊長……!!』

『二階級……特進か……!?』
 

 飛び上がってからの変形、宙返りのように三次元的な旋回を果たすフラッグ。
 虚空に確かに腰を据えるような安定機動、その足の真下を通過しつつある二つの機体を見据え、武器を構える。
 左手に握ったリニアライフル【XLR―04】が火を噴けば、回避機動さえ読み切った四発が一機を真っ赤なペイントに染め上げる。
 たまらず右旋回で遠のく残存機に、彼は悠々堂々と構え直す。
 コンソールが【最大充電】のマークを躍らせれば、引き金とともに飛び出す一撃は先程のそれとは比較にならぬ高初速。
 酷く外した狙いから放たれた一射は、吸い寄せられるように射線に逃げてきた機体を撃ち据えて。

 ふざけて鳴らされたホイッスルを合図に、模擬戦を性能証明と兼ねて終了させるのだった。


 ・
 ・
 ・
 ・



ビリー「やあやあ。お疲れ様、グラハム」ファサ

グラハム「ああ、助かる。カタギリ」ハシ

グラハム「どうだったかな、狼の牙の切れ味は?」

ビリー「最高。そっちはどうだい、こいつの乗り心地は」

グラハム「申し分ない。考えうる限り最強のMSと言えような、このカスタマイズドフラッグは」

ビリー「ガンダムを除けば……だけれどね」フフフ

グラハム「言うな盟友、威光が陰るわけでもあるまいに」 
133 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/20(木) 05:06:14.41 ID:w48dJ83y0

また今夜。
戦闘はもっと明瞭にやっていけたらと。
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/20(木) 11:49:02.95 ID:GI10gMcuO
ウッヒョ-!
まってた
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/20(木) 15:20:57.57 ID:Lv6/1k6P0
待ちわびたぞ少年!!
136 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/22(土) 02:49:57.95 ID:yAMUn+DQ0


ダリル「隊長、お疲れ様です!」

ハワード「お疲れ様です!」

グラハム「うむ。ご苦労だった、フラッグファイター諸君」

ビリー「いやいや、お見事だったよ二人とも。グラハムの反応に合わせて調整したフラッグに、最高速を出されるまで並んでみせたんだから」

グラハム「あそこまで食いつかれるとは思わなんだ、驚嘆に値する。背を預けるに十全の力量、誇らしいよ」


ダリル「隊長が三連戦の後でなければ、賛辞も心から受け取れるんですがね」ハァ

ハワード「こちとら必死になって追っかけてたってのに、最後はあっさりですもんね。格の違いを見せつけられましたよ」ハハッ


グラハム「おっと、それ以上は非MSWAD隊員の心象を悪くする。静粛に頼むぞ」

ハワード「はっ、失礼いたしました」

ビリー「前半戦はグラハムスペシャルですら出さないままだったからねえ」

ビリー「……というか、君が彼らの段階で本気と性能を見せてくれていれば済んでた話なんだけれども?」チラッ

グラハム「この性能に相応しい対象、状況というものがあるものだよカタギリ」

ビリー「おっと、それ以上は非MSWAD隊員の心象を悪化させかねない。静粛に頼むよ?」シー

グラハム「はは、これは失敬」


グラハム「では、少し汗を流してくるとしよう。後は任せる」

ビリー「ごゆるりと、Mrスペシャル」


ビリー「……ん」


『いやあ、素晴らしかったですね教授!!』

『これなら提供した甲斐以上があったというものです!』


ビリー「さて……あっちの相手もしてくるかな」スタスタ





137 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/22(土) 03:03:59.56 ID:yAMUn+DQ0
エイフマン「ふむ、ふむ……」

技師「従来とは一線を画す大出力バックパックスラスター、そして新機軸の特殊電磁加速砲【XLR―04】」

技師「ティエレンだって抜いてみせるこいつの最大出力射に倍以上の足回り、そして中尉の技量ならガンダムにだって遅れを取りませんね!」

アイリス社重役「どうでしょう、このままこの特殊仕様を正式量産型のラインナップに……」

ホーマー「……選択肢には、入れておこう」

エイフマン「ふん……相手は数世代先をゆく正真の怪物じゃ」

エイフマン「これらを数揃えたところで、どこまでやれるかどうか、な」

技師「はぁ……」

ビリー「教授、運び込み、終わりました」

エイフマン「ご苦労。では、今日は失礼する。調整が山積みでね」

エイフマン「……本気に受け取るなよ」ポン

ホーマー「馬鹿になされるな。分かっております」

アイリス社重役「は、失礼致します。では、吉報をお待ちしていますよ」

ホーマー「ビリー、私は戻るが、やつの首輪は確かめておけよ」

ビリー「了解、善処します……と」




ビリー「技師の人、苦い顔してましたね」

エイフマン「それはそうだろうよ、現行機を凌駕するこのカスタムフラッグに賞賛が無いのだからな」

ビリー「素直に言ってみたらどうです、【このフラッグですら、ガンダムには遠く及ばない】って」

エイフマン「儂はグラハムとは違う。他人に事実のみをぶつけて泣かせる趣味は持ち合わせておらん」

エイフマン「……だが、この事実をぶつけねばならん相手は、少なからずおったようじゃがな」

ビリー「正式量産……これを集めても被害総額に上乗せが入るだけですね」

エイフマン「あくまでコイツを完全に操れる中身あっての話よな」


パサッ


ビリー「……それは?」

エイフマン「先日の三点同時武力介入における各地域の被害状況、そして現状かな」
138 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/22(土) 03:07:54.74 ID:yAMUn+DQ0
エイフマン「ガンダムは資源採掘場と麻薬生成地域を攻撃、そしてセイロン島への再度の武力介入に踏み込んだ」

エイフマン「テロリストの資金源、国家の運営資金、そして二国への介入行動で事態を悪化させた人革連、全てへの抑止及び警告行動を取ったわけじゃな」

ビリー「結果、世界的にテロ行為、紛争地域の活動自粛、無期限停止宣言が広まりつつある……と」


エイフマン「それはそうじゃよ……本来紛争とは【窮鼠の足掻き】なのじゃ」

エイフマン「政治的、経済的に追い詰められた民族、集団が意地を通す最後の手段。それが通らねば文化も共同体も霧散し、アイデンティティを毟られる、そういうものなのじゃ」

エイフマン「あのような圧倒的な存在に自分らの経済基盤ごと粉砕されるとあっては、もとよりやせ細ったねずみでは牙さえ向けられまい」

ビリー「その足掻きで稼ごうと大国は支援という名の経済活動を行い、弱みに付け込むテロの無差別攻撃が無辜の人々の安息を脅かす。彼らの活動自体には、考えさせられるものがありますが」

エイフマン「奴らに対抗しうるのもその二つだけかな。三大国に国際テロネットワーク……さて、誰が先に牙を剥くか、誰に牙が剥けられるか」

ビリー「――少なくとも【誰かが誰かを直接的に殺害する行為】への嫌悪はあっても、【資金や産業を持たず飢えて死ぬ結果】への呵責は、持ち合わせていないように感じます」フイッ


エイフマン「見せしめじゃな。此度の武力介入、あらゆる手段で紛争継続を阻止するという、公開処刑じゃ」

エイフマン「その結果、経済が崩壊しようとも……いや、むしろそれが狙いなのか……」

エイフマン「まあともかく、ガンダムの思想には大局的とはいい難い思考も見られる……が、かねがねインテリジェンスから生まれた行動ではあるな」

ビリー「全ての武力が戦争幇助に繋がるという行動だけはしていないから、ですか」

エイフマン「武力の一切放棄から転ずる完全平和主義(もうげん)なんぞ唱えはしないかとヒヤヒヤしておったが、まあ、今は様子見かな」



ビリー「はてさて、この介入に対しいち早く行動を見せたのはAEUでしたね」

エイフマン「PMCへの働きかけの強化、イナクトの集中配備。近日間違いなくソレスタルビーイングへ挑発行動を取るだろうよ」

ビリー「結果は、吉と出るか凶と出るか」

エイフマン「こんなもの、ババしか残らんカードゲームじゃ」

エイフマン「だが、こちらも当初の【フラッグ計画】を見直さねばならんかも知れん。時勢を見誤れば奈落、いつの時代もな」
139 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/22(土) 03:12:58.02 ID:yAMUn+DQ0
ビリー「おや、【グラハム・エーカー量産計画】と呼ぶと決めたんじゃあないんですか? 教授」

エイフマン「それは我々の間での裏コードのようなものよ。そんなものを上には見せられまい」ワッハッハ

エイフマン「難しくはないはずなのだがな、空中変形の制動解析、OSへの登録……全機体の空中変形の半自動化、な」

ビリー「現状、一回やるだけで関節への負担で機体を丸々調整しなきゃならなくなりますからねえ」

エイフマン「これが完成すれば、運用面でフラッグはイナクトを凌駕し、ティエレンを歯牙にもかけぬ存在になるはずだったのじゃがな」

エイフマン「故に、欲しくもなろうというものよ……」

ビリー「ガンダムの性能……その秘密、ですね」



グラハム「カタギリ」

ビリー「おや、早かったじゃないか。どうしたんだいグラ……」

バサッ

ビリー「……ははは、見てくださいよ教授」

エイフマン「ん?」

グラハム「JNNの広報用ポスター、ソレスタルビーイング特集の一面を印刷してきました」

グラハム「ここに大きく載った画像こそ、我々が彼女に提供したうちの一枚なのですよ」


エイフマン「え、何? まだ続いとったの、お主ら」

ビリー「今更そこですか教授?」

グラハム「ふむ、しかし流石はマスメディアだ。あの中から確かに一番と思える一枚を選択している」

ビリー「ブレと掠れ具合がかえって躍動感を煽るような映りに変わっているね」

グラハム「先程通信を受けたよ、酷く喜んでおられた」

グラハム「甲斐があったとはこのことだな。ふふ、妙にむず痒い」

ビリー「自分たちで撮ったわけじゃあないけれど、もともと余りの画像だし、有効活用は嬉しいもんだねぇ」

グラハム「次は更なる朗報を聞かせられるよう精進せねばならんな!」

エイフマン「……」

エイフマン(何と言おうか)

エイフマン(飼い猫がネズミとか獲って飼い主に持っていくような、そんな空気じゃな)

ビリー(でかいネコだなあ……豹かな?)
140 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/22(土) 03:24:27.81 ID:yAMUn+DQ0
エイフマン「……」ハァ

エイフマン「そのための力ならくれてやる、努々努力を怠らぬようにな」

グラハム「上等、一層の高みでもってその施しを受け止めましょう!」バッ

ビリー「お次は何処へ? フラッグファイター」

グラハム「今度こそシャワールームだ!」

ビリー「二度目のごゆるりと、グラハム」


エイフマン「元気なものじゃな。他の兵士などは、命惜しさに軍を抜けようとさえしておるというに」

ビリー「グラハム・エーカーとはそういう男なんでしょう。二の次なんだと思います……そんなものでさえ」


エイフマン「……そのための力か……むしろ、この程度しかくれてやれん己の無力さに歯がゆくなるよ」

ビリー「彼なら大丈夫ですよ教授、概算される敵機の速度には追随可能です、後は……」

エイフマン「足らぬさ。追いつけても決定打にはならず、機動性は言わずもがな」

エイフマン「此方は可能な限りの軽量化のつけで、紙くず同然の装甲で飛ばしているというに」

エイフマン「奴らはティエレンの長距離砲ですら弾いてしまうのだからな」

ビリー「……」

エイフマン「あぁ……奴は止まらない」

ビリー「そこが彼の強さであり、脆さでもある」

エイフマン「かつて話した通りだよカタギリ君。支えてやれ、出来る限りを尽くしてな」

エイフマン「たった一人、されど一人……時代の流れに、ああいう男は居た方が面白い」ニヤリ

ビリー「ええ……全面的に同意いたしますよ、プロフェッサー・エイフマン」ニコリ

 ・
 ・
 ・



絹江「いーそーがーしいー……!!!」グデー


――JNN――


同僚「どうしたっすか絹江さん、せっかくボーナス入ったってのに」ズズー

絹江「コヒー、ちょうだい」

同僚「一ドル」

絹江「ケチ!」

同僚「自費のお高いやつっすから」ズゾゾ
141 :同僚その一(♀)黒ロング小柄三白眼 ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/22(土) 03:32:22.29 ID:yAMUn+DQ0
絹江「ええ、ええ! おかげさまでもっと画像や情報ねだれって上からもせっつかれる毎日よ!!」ずずー

同僚「まいどー。いいじゃないっすか、ねだれば。友達なんでしょ、その人」

絹江「あの人にそんなことしたらどうなるか……ゴミでも見るような目で着信拒否が残当よ……!」ガクブル



想像上のグラハム『資本主義の豚め』ジトー



同僚「あの人」

絹江「あー……知り合いの軍人さんよ。気にしないで」

同僚「ふーん……」


同僚「その人、大丈夫、なんすかねえ」ズズー


絹江「え?」


同僚「だって、ガンダムでしょう? 相手は」

同僚「ぶっ壊された最新鋭MSのイナクト、乗ってたパイロットはAEUでも指折りのエースだって話ですよ」

同僚「そんなすごい組み合わせでもあんなに簡単に壊されちゃうってんだから、軍人さんは保険に入れなくなるんじゃないかって、うちの旦那が」

絹江「……だ、大丈夫よ、その人、フラッグに乗ってるし……」

同僚「性能調査で、イナクトとほぼ同等だったらしいっす、フラッグ」

同僚「悪いこと言わないから、軍を辞めといたほうがいいんじゃないですかね。このご時世、どうなるかわかったもんじゃないっすけど」


絹江「……私が、どうこう言えることじゃあないわよ……そんなの」


絹江(ええ、そう……言えたもんじゃあない、私なんかが)


絹江(これだけ短時間の関係でも分かる……あの人は、グラハム・エーカーという人は、たとえ死ぬかも知れなくても飛ぶことを止めない人)

絹江(そうね……生きがいを無くすか、死ぬかなら、気持ちだけは分かる気がする)

絹江(沙慈がいる手前、同じようには生きられないけれど……)

絹江(でも……)



絹江「――なんかやる気、出てきた」

同僚「へ?」
142 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/22(土) 03:48:08.45 ID:yAMUn+DQ0
パシンッ

同僚「おぉ?!」

絹江「っつうう……」

絹江「――!」グビッ

絹江「あちゅいっっ!!」ギャー

同僚「コントっすか?」

絹江「……よしっ!」

絹江(軍人だろうとジャーナリストだろうと、生き甲斐への情熱で誰かに負けてなんかいられない……!)

絹江(今起きていることはここ百年の中でも最大級の事件。スクープを目の前に及び腰なんて!)

絹江「父さんに合わせる顔がないんだから……!」


同僚2「どうしたの? また荒れてんの?」

同僚「知らね。なんかいきなりやる気出してる」

絹江「やるぞー!」ウオー

同僚「がんばれー」オー


PPPPPP!!!

『速報!! タリビアが声明発表! ユニオンからの脱退を表明した!!』

絹江「!」

同僚「うお、マジか……!」



「ユニオンが、ガンダムとぶつかるぞ!!」

絹江「始まる……のね……」


 ――タリビアは、ユニオンの太陽光発電の送電権がアメリカの一存で決められていると主張。

 ――自国が送電線の近隣にあることを活かし、ユニオンの脱退と電力の独自使用権を行使すると宣言した。

 ――即日、ユニオンはMSを搭載した空母艦隊をタリビアに派遣。

 ――タリビア危機、と後世では【揶揄】されるこの一件。

 
 ――世界は、ソレスタルビーイングの対応に注目、緊張は最高潮に達していた。

143 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/22(土) 04:53:44.18 ID:yAMUn+DQ0



――が。


 ――タリビア・近海――


ダリル「軍は撤退を始めるそうです。ガンダムもいなくなった以上、ここにいる必要もありませんからね」

グラハム「熟知している。やはり、というべきなのだろうな」

ハワード「【ソレスタルビーイングは現在存在している紛争には介入できるが、存在しない紛争には介入できない】」

ハワード「それへの答えがこれというわけですか」

ダリル「今回の一件は、タリビアを紛争の発生原因として介入行動に出ましたが」

グラハム「タリビアがユニオン脱退を取り消した以上、介入は無用と引き返した」

グラハム「もっとも、あの一瞬の間で市街地のMS部隊は相当数が撃破されたと聞く」

グラハム「きっかけさえ掴めれば挑発行為にすら介入できる、いかなる場合でも、いかなる相手でも。それを示したわけだが」

グラハム「ただ、今回一番の利を得たのは……」


――――

絹江「ユニオンだった……というわけね」

沙慈「?? どういうこと?」


――自宅――

絹江「今回、ガンダムはタリビアの軍を攻撃。少なからず死傷者が出たわ」

絹江「タリビアを支援する名目でそのままユニオンはガンダムへ攻撃指示、以降の支援行動も相まって二国の関係は劇的な改善を見せた」

沙慈「雨降って地固まる、ってやつかな」

絹江「ええ、でもね沙慈。もともとタリビアは反米感情の強い、ユニオン加盟国の中でも対米勢力の一角だったのよ」コポポ

沙慈「ありがとう……それで?」

絹江「これでユニオン軍は自国領土へ攻撃されたわけでもなく、タリビアという自分たちの敵を味方に引き入れることに成功した」ズズ

絹江「対ガンダムを名目に送電ラインの安全強化が出来るというおまけ付きでね」

絹江「そして【紛争のきっかけを作ってもガンダムは介入行動に出る】という結果によって、他小国の脱退や二国への寝返りも抑制できるというわけ」

沙慈「タリビアはそれでいいの……?」ズー

絹江「ピエロを演じた見返りは、ユニオンとの関係を強めて送電量の優遇、現政権の支援と安泰、といったところかしら」

絹江「ソレスタルビーイングの行動は読まれていた……それを政治的に活用した【ユニオン】という連合母体がまんまと利を得た」


――――

エイフマン「だが、彼らもまた大きなものを得た」

ビリー「ですね」ハグハグ
144 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/22(土) 05:33:10.49 ID:yAMUn+DQ0

――MSWAD基地――


エイフマン「今回ソレスタルビーイングが示した【紛争のきっかけを潰す介入行動】は、彼らを軽んじる芽を尽く潰すだろう」

エイフマン「二の轍を踏めば、今度はタリビアが得た利益の後追いから間違いなく【被害と利潤の追及】が発生する」

エイフマン「高度な政治的判断によって兵士が【捧げられた】のだからな。人命を利用し国家が利益を食らう……」

ビリー「政権維持どころか、そのまま大国に見捨てられて政権崩壊が関の山ですね」

ビリー「おまけにこのことにソレスタルビーイングは糾弾さえ受けない。彼らは昆虫的な目的遂行に殉じただけですから」

エイフマン「もう同じことはできん。見事よな、一回限りの博打にタリビア政権は勝ったのじゃ」

ビリー「タリビアの行動はそういった意味でも完璧だったわけですね。出来レースには無い、思惑の一致から来る最高の連携だった」



エイフマン「まあ、【利潤から来る紛争】に関しては答えは出たと言っていい」

ビリー「彼らがいる以上、封じられていると言っていい……か」

ビリー「フリでも、宣言を出せば国家の信用と威信が懸かる。国と個人の差が、彼らの行動の正確性を上げてしまうのですね」


エイフマン「まあ、それはさておき、我々が考える必要があるのはわずか一分足らずの邂逅の方じゃ」

ビリー「彼は無傷、ガンダムの一機と接触し最大出力のリニアライフルをヒットさせたものの、海中に逃走され戦闘終了」

エイフマン「通用はしてみせたか……【作戦遂行に支障が無い程度の存在】と認知されたら、交戦され撃破されるおそれがあるのだからな」

ビリー「少なからず抵抗し苦戦もしく持ちこたえられると判断させられた、という証拠になりますからね。大いなる一歩でしょう」

エイフマン「雲の上まで続く階段に対する一歩とは……謙虚にも限度があろうな」


――――


グラハム「後は任せる。何か連絡があれば、室内回線でな」

ハワード「はっ、お疲れ様です! 隊長!」


――ロッカールーム――


ガチャ
ガサガサ


グラハム(通用はしてみせた……が、やはり圧倒的だ)

グラハム(航空戦特化の変形ガンダム、あれとまともに対峙できなくてはフラッグが通用していると真に評価することは出来ない)

グラハム(だが……これ以上は私の肉体が限界か。死なば諸共と散華出来るほど人生に悔いているわけでもないのだ、このグラハム・エーカーは)

グラハム(……ん?)
145 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/22(土) 05:49:05.09 ID:yAMUn+DQ0
グラハム「携帯端末……」ピ

グラハム「!」


グラハム(着信件数が三十を超えている……)

グラハム(カタギリがふざけて入れたアプリ。着信件数で待ち受け画面のミニリアルドが重なっていくのだが)

グラハム(重なりすぎて画面外から落ちてくる……酷く猟奇的なアプリもあったものだ)


グラハム(送り主は……)

グラハム「!」

グラハム「……ああ、そうか。リアルドが桃色なのはそういう……」

グラハム「……ふっ……」



――――

アーイーヲ、シラーズッ

絹江「! 来た!!」ガバッ

沙慈「わ?!」

絹江(良かった……生きてたんだ)ホッ

絹江(あんな話しされた後じゃ気になって気になって仕方なかったけど……流石に電話しすぎたかな)

沙慈「……姉さん?」


デデデデッデデ(鳩が飛ぶ音)


絹江「ごめん沙慈、ちょっと部屋行ってるから! ご飯食べてて!」ダダッ

沙慈「あ……!?」


沙慈「……電話……」



沙慈「また、アイツか」
146 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/22(土) 05:53:51.36 ID:yAMUn+DQ0
ここまでデデデ
次回金曜にまた

147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/22(土) 12:05:22.22 ID:CZbb2jDL0
視聴当時はガンダムカッケーフラッグかっけーで見てたけど
こういう解説(?)付きで振り返ってみると『ガンダム』って作品がいかに
よく出来てるかが分かるわ

アニメや漫画ってこういうのが良いんだよな。子供のころはかっこよくて面白いし
大人になって改めて見るとリアリティさにも惹かれる
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/23(日) 21:28:00.68 ID:yUXMzv/Mo

絹江さんが命より生き甲斐というと洒落にならない……
149 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/29(土) 03:50:35.79 ID:Le6+ubIv0
絹江「もしもし!」

グラハム『おはようございます、絹江さん』パッ

絹江「ひゃ?!」ビクゥッ

グラハム『おっと』PP

『失礼しました。モニター表示がONになっていたようで』サウンドオンリー

絹江「あー、はは……いいですいいです。モニター出しててください、ちょっと驚いただけですから」

絹江「というか、私の方は基本オンにしてあるので、そっちがむしろ構わないならって話なのですが?」

『ふむ、言われてみれば最初以外は特に理由がない』

グラハム『てはお言葉に甘えて、女史のご尊顔を拝見すると致しましょう』ヴンッ

絹江「貴方にそれ言われると、何だか皮肉っぽいなあ……?」


絹江「……なんか、血色良くなってませんか?」

グラハム『そうでしょうか。思い当たれば先程は久方ぶりのスクランブル、心が滾らなかったといえば嘘になりますが』

絹江「スクランブルって……貴方らしいっちゃらしいですけど、一回の出撃でそんなに元気になるもんですか?」

グラハム『他者が如何様かは存じませんし興味もわきませんが……』

グラハム『少なくとも私は打撲と風邪程度なら飛んでいれば完治いたします』キリッ

絹江「うん、貴方だけです、それ」
150 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/29(土) 03:52:19.27 ID:Le6+ubIv0
絹江(いや、ま……久しぶりに見たのは確かなんだけど)

絹江(あれよね……ほんと、顔は、顔だけはいいのよねえ)ムー

グラハム『! ……』スッ

グラハム『  』ニヤッ

絹江「ッ?!」ドキ

グラハム『――どうでしょう、顔立ち幼いなりに男前というものが演じられていましたでしょうか?』

絹江「っ、エイフマン教授ですね!!そのニヒルでキザでステレオタイプなワルイ顔! エイフマン教授の入れ知恵ですよね!!?」バァンッ

グラハム『正解。流石は絹江さんだ、あの方をよくご理解されていらっしゃる』ハッハッハ

絹江「何要らんこと教えてあのおじじぃ……!」

絹江「貴方も! 教えられたからってそんな悪巫山戯を……もう!」

グラハム『ははは、重ねて失敬! いえ、聞かされていたもので、物は試しにと思いまして』

絹江「? 何をです?」

グラハム『いえ……第一印象こそそこまででありましたが、絹江さん』


グラハム『私の顔立ちだけは褒めていただいていたようでしたので、後は魅せ方だとプロフェ「グラハムさん」はい、何でしょう』

絹江「……だれに、ききましたか」

グラハム『プロフェッサーが、沙慈くんから聞いたと』

絹江「……そうですか」

グラハム『絹江さん?』

絹江「はい」

グラハム『風邪ですか。お顔が真っ赤だ』

絹江「だいじょうぶです、つづけてください」カァァ
151 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/29(土) 03:57:46.73 ID:Le6+ubIv0
グラハム『ええ、ですがご無理はなさらぬように。とはいえ、まだ始めてもおりませんでしたね』

絹江「〜〜〜〜〜!!」ジタバタ

グラハム『ではご報告をば。貴女の着信で墜落したリアルドたちの死を無駄にしないためにも』

絹江「え」ガバッ

グラハム『……あ』


【(==○=)<只今誤解を解いてます、しばしお待ち下さい】




グラハム「……」

絹江『では、まとめます』ムスッ

グラハム「……どうぞ」

絹江『重ねてお聞きしますけれど、貴方はガンダムを追撃し、交戦』

絹江『一撃を加えはしたものの、そのまま海中への逃走を謀られ、断念』

絹江『ユニオン軍への被害は 皆 無 であると!!』

グラハム(目が据わっておられる。ご自身の勘違いが起因というに……)

グラハム「……相違ありません」

絹江『結構、大変に結構!!』

グラハム(まあ、きっかけを生んだのは自分の迂闊な発言にある。猛省しよう)

絹江『それで……どうでしたか?』

グラハム「ガンダムの性能、ですか?」

絹江『それも勿論……ですけれど、カスタマイズされたフラッグでしたら、戦えそうですか? ガンダムと』

絹江『……撃墜は、避けられそうですか?』

グラハム「……」
152 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/29(土) 04:12:14.33 ID:Le6+ubIv0

グラハム「ありがとうございます。空を飛ぶものとして、帰還を願ってくださる友情は無上の追い風に値する」

グラハム「故に偽り無く告げるなら……未だもって、ガンダムとの性能差著しく、一瞬の過ちが死出の導きになりうることは言うに及ばず」

グラハム「仮に一切しくじらず立ち回れたとして、単騎での撃退は不可能に近いと断言いたします」

絹江『……っ』

グラハム「女性にそのような顔をさせてしまうというのは心苦しいものです。ですが……」

絹江『降りてくれ、なんて立場じゃあありませんもの。言うわけがないじゃないですか』

グラハム「ええ、これはライフワークです。変えようもない」

グラハム「無論。死ぬつもりも毛頭ありません」

絹江『そこまで命かけられたんじゃ、こっちも黙ってられませんからね!』

グラハム「ほう、ソレスタルビーイングへの新たなる決意というわけですか」

絹江『ええ、どっちが金星上げられるか、競争です!』

グラハム「仮にも精強極まるフラッグファイター最優を自負するこのグラハム・エーカーへの挑戦状……安くはありませんが、覚悟の程は?」

絹江『……な、なんでも来いや! です!!』

グラハム「よろしい。相応のものを考えておきましょう、見合うものを、ね」

絹江『……お手柔らかに……!』

グラハム「勿論。全霊を賭けましょう」

絹江『……単騎で勝てないってわかってるんなら突っ込んだりもしないでしょうし、ねえ?』

グラハム「ノーコメント」

絹江『こーらー?』

グラハム「ノーコメントです」

絹江『もう! ……ふふっ』
153 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/29(土) 04:37:31.57 ID:Le6+ubIv0
――――

ルイス『でね、沙慈ー、今度の軌道エレベーターの実習なんだけどね』

沙慈「……」

ルイス『……どったの? 体調でも悪い?』

沙慈「! あ、うん、何でもない。ごめんルイス、ボーッとしてた」

ルイス『例の件? まだ続いてるんだ』

沙慈「……分かるんだ」

ルイス『伊達に沙慈のガールフレンドしてませんから』

沙慈「そっか……ルイスはスゴイね」


ルイス『言いたいこと、言えないんだよね』

ルイス『あたしだったら、どうせ言いふらす相手もいないからさ。言ってほしいな』

沙慈「……うん、ありがとう」

沙慈「でも大丈夫。どうせ、そう長くは続かないと思うしさ」

沙慈「ただのお友達で終わるんなら、むしろ……ね」

ルイス『うそ』

沙慈「……」


ルイス『沙慈、何か感づいてる』

ルイス『私たちにはわかんないこと、お姉さんのこと、気づいてる』

沙慈「……かもしんない」

ルイス『詮索、しないよ』

沙慈「ありがとう。多分、言いたくなる時が来るよ、きっと」

ルイス『ん、待ってる』

沙慈「個室、姉さんにお願いしてみるよ」

ルイス『! あたし、何も言ってないんだけど!?』

沙慈「伊達にルイスのボーイフレンドしてないからね、このくらいはさ」

ルイス『沙慈すごーい……!』

沙慈「そこまで感動されることかな……」アハハ

沙慈「…………」

沙慈(姉さん、気づいてる?)

沙慈(同じなんだよ……あの人は……)
154 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/10/29(土) 04:42:28.55 ID:Le6+ubIv0
絹江さんってものすごく着痩せしている気がする秋の夜長です
今日はここまで
次回はまた金曜日に
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 10:00:17.68 ID:pDHNDu1x0
単騎で突っ込むんだよなぁ・・・(遠い目)
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 16:27:22.85 ID:zON8nxynO
少なくともこのままだとエクシアと相打ちで瀕死なんだよなあ...
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 16:47:18.23 ID:FmXogxCuo
それより前に絹江さんが…
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/02(水) 00:22:35.68 ID:YWJrzcN40

絹江さんも割と無茶してたというか単騎で突っ込んでたような
159 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/11/05(土) 04:21:31.72 ID:WmzGXm470


――世界は、ソレスタルビーイングに対して疑念の眼差しを送っていた。

――タリビアの一件も、「紛争を誘発しただけの矛盾行為」と深く考えない民意が大半。

――その行為の意味も思惑も理解されぬまま、日々は上辺の平穏を崩さず流れていく。



――この日が、来るまでは。



――人革連領内・軌道エレベーター【天柱】――



絹江「じゃあ、私はこっちの支社に用事があるから。しっかり勉強してくるのよ」

沙慈「わかってる。ありがとう姉さん、個室を予約してくれて……」

絹江「お嬢さまの仰る通りってね……庶民には手厳しいことで」

絹江「ま、感謝するのならグラハムさんにしてね。あの人のお陰でこれの代金まるまる浮いたようなもんなんだし、気にしないで」

沙慈「……【中尉】に、ね……」


ルイス「お待たせしました、お姉さま〜!」

絹江「いーえ、お気になさらず。今日は頭上のお猫様もおとなしめのご様子で?」

ルイス(うええ、人見知りバレてるぅ……!)

沙慈(ジャーナリストを甘く見るから……)

絹江「――沙慈、頑張ってくるのよ」

絹江「あなたの夢、父さんもきっと応援してくれてると思うから、ね」

沙慈「! うん、いってくる」

絹江「いってらっしゃい、沙慈」チュ

沙慈「ん……!」

ルイス「おでこ!!!?」

沙慈「姉さんは、もう……僕だって子供じゃないんだから」

ルイス(おでこ!!)

絹江「ふふ、母さんの代わりだもの、ねえ?」

ルイス(ODECO?!)

絹江「じゃ、後はよろしく!」バシンッ

ルイス「おでこっ!?」


沙慈「いこう、ルイス」

ルイス「…………」ブッスー

沙慈「機嫌直して。姉さんの最大限の譲歩だよ、個室も、同乗もさ」

ルイス「……まさか、お姉様に先制攻撃されるとは思わなかったっ」ツーン








160 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/11/05(土) 04:43:07.71 ID:WmzGXm470
沙慈「ふふふ……でも、結構気に入ってるみたいだよ。ルイスのこと」

ルイス「ふえ、本当……?」

沙慈「本当。無理やり着いてきた甲斐はあったんじゃない?アメリカまで……」

ルイス「やったあああ……!!」ジーン

沙慈(って、聞いてない……)


《本日は、天柱交通公社E603便にご乗車いただき、誠にありがとうございます》

《本リニアトレインは、低軌道ステーション真柱直行便です。到着時刻は18時32分、グリニッジ標準時、翌日3時32分になります。》


ルイス「そういえばさ、沙慈」

沙慈「ん?」

ルイス「沙慈のお父様って、早くにお亡くなりになったんだよね」

ルイス「沙慈が宇宙で働きたいのって、もしかしてお父様のお仕事の影響?」

沙慈「そうでもないよ。父さんはジャーナリスト、影響をもろに受けたのは姉さんのほうさ」

沙慈「姉さんが言ってたのは……」



沙慈「父さんの最後の仕事が、【ユニオンの宇宙開発事業に関係すること】だったってだけのこと」


ルイス「ふぅ〜ん……」



――JNN・天柱極市支社――


絹江「そうですか、誤情報……だったと」

支局長「わざわざ来てもらったのに済まないね。こんなガセを掴まされたとあっては、お父上に顔向けできんよ……」

絹江「いえ、裏付けも待たずに駆け込んだ私の方こそ、ご無礼を」

支局長「……しかし、彼女の情報を今更ながら探しているなんてね」

支局長「やめた方がいい、とは言わないが……仇討ち、かね」

絹江「そんなつもりはありません。ですが……【真実】への未練と言われれば、頷くしか無いものです」




「――マレーネ・ブラディの、消息。父が追った最後の事件の、最後の生存者への」
161 : ◆AvaUNpQJck [saga]:2016/11/05(土) 05:21:06.27 ID:WmzGXm470


――MSWAD基地――


ビリー「へえ、そりゃあ意外だ。そこまでやるかい、あのテストパイロット?」

グラハム「ああ、もしガンダムが来なければ……私はあの会場に出向いた最大の価値を、彼の戦術飛行の観覧と称したことだろう」

グラハム「パトリック・コーラサワー……模擬戦全勝、スクランブル二千回の英雄は伊達ではないということだ」

ビリー「君にも引けを取らない数字だねえ……もっとも、君のように空中変形はできないようだけどね」

ビリー「もし対ソレスタルビーイングで共闘することがあるならば……」

グラハム「この上ない戦力となることは想像に難くない。あの解体劇は相手と状況の不運に過ぎんよ」


グラハム「はは、しかし模擬戦無敗か。偉大な功績だな。無論技量と空への想いでは勝っていると信じたいが」

グラハム「……私は、模擬戦において46敗を喫しているからな。覆すのは、厳しいかな」

ビリー「……」

グラハム「ん?」

ビリー「ん、あぁ、何でもないよ。グラハム」

グラハム「ふ……気にするなカタギリ、事実は事実。私の血肉を今更分けては考えられんだろう」

グラハム「――背負っていくさ。今となっては、悪名だけが私とあの方の繋がりなのだから」

ビリー「…………」


ウィィ……ン


エイフマン「グラハム!! ビリー君!!」

グラハム「! プロフェッサー……!?」

ビリー「ど、どうしました教授……すごい剣幕で……」

エイフマン「ニュースを見ろ! 速報じゃ、軌道エレベーター【天柱】で事故が発生した!」

ビリー「事故、ですか?」

エイフマン「正確には低軌道ステーションでな……じゃが、まずいことになっておる」

グラハム「……!!」

ビリー「まさか、いるんですか!? 僕らの知り合いが、そこに?!」

グラハム「我らの共通の知人……よもや、そんなことが……ッ」ピッ


《真柱の速報です。現在安否が確認されていない不明者リスト一覧です》


《……アリスン・モーリー……チャド・チャダーン……》


《……サジ・クロスロード……ルイス・ハレヴィ……アンリ・ヤマムラ》


グラハム「ッ……神よ……!!」



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