【ラブライブ!】スクールアイドルを始めるらしい

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158 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2017/03/29(水) 03:09:15.96 ID:1oiarfCl0
悠「……? 遠くで見ていた観客がどうしたのかしら?」

 不可解そうな顔をする悠に真央。後ろをちらっと見れば、顔を上げた芽衣もまた不思議そうに私を見ていた。
 みんなの注目を集める。そのプレッシャーは想像以上に重い。緊張で震えそうになる声をなんとか抑え、私ははっきりとした口調で告げる。

深羽「観客じゃないです。私は芽衣の作るスクールアイドル部の見学希望者です」

悠「見学者が一体何の用? 関係ない人は――」

深羽「関係あります」

 くるっと方向転換。先輩方から芽衣へ身体を向け私は微笑む。さっきは他人面しちゃったけど……今は違う。

深羽「芽衣。私は芽衣の作るスクールアイドルが見たい」

 ほぼ無音に近いほどに静まった場で、私の声だけが響く。
 自分の気持ちを正直に大勢の人の前で口にする。照れ臭いけど、私は少し成長できたのだろう。
159 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2017/03/29(水) 03:11:12.64 ID:1oiarfCl0
深羽「芽衣の夢がラブライブに出ることなら、私の夢はそれを見届けること。それがはっきり分かったから……私、見学は止める」

深羽「今度は芽衣の隣で一緒に歩いて、しっかり見てるよ。だから――」

 口を出る想いは止まらない。震えそうになる緊張はいつの間にかどこかへ消え、私は再度リ・バースへ振り向く。
 そして手にしていた紙を突きつけるように前へ掲げ、宣言。

深羽「――宣戦布告!」

 『入部届け』。
 私の名前が大きく記入されたそれを示し、目を丸くさせる二人の先輩へ私は堂々
と告げた。

深羽「芽衣は私を動かしてくれた。なにもできないのはあなた達二人だ」

 芽衣に感じた心が揺さぶられるような踊り、歌、笑顔――それが前のリ・バースにもあったから。
 その『яebirth』の輝きの強さを知っているから、私は確信できた。
160 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2017/03/29(水) 03:12:46.50 ID:1oiarfCl0
 それは素人から見た、直感的で頼りない予感。
 けど私はそれを信じることができたんだ。

 だって、ここに彼女によって突き動かされた私がいるのだから。

深羽「芽衣は――私達は絶対に負けない!」

 その宣言がどれほど途方もなく無謀なものなのかは言うまでもない。

 初心者が数年の経験者に勝つ。不可能にほぼ近い勝負になることは馬鹿でも分かる。

 無謀で、不可能で――けれど、それができてしまうと信じる自分がいて。

 きっと青春ってそういうものなのだ。

 呆気にとられる私以外の全員。その視線を浴び、私は不敵に笑う。


 ――ここからが、始まり。回想の終わり。

 何の起伏もない人生を送っていた私は、いつの間にかステージの上へ立っていた。

 きっかけはяebirth、そして芽衣。

 夢を見届けるため。自分が変わるため。私は未知の世界へと飛び込んだ。つまりは――


 スクールアイドルを始めるらしい。
161 : ◆XxLp/boApQ [saga]:2017/03/29(水) 03:14:30.11 ID:1oiarfCl0
【今回はここまで更新。お待たせして申し訳ないです】
162 :以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/29(水) 04:49:09.66 ID:kAkjiubn0
ステージを眺めているだけの観客だった深羽がステージの上に立ち遂に、スクールアイドルに。
そして熱いスレタイ回収
プロローグも終わり本編開始って感じですね
これからまだ未登場の安価キャラも続々出てくるのでしょうか、期待してます!
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/29(水) 12:12:11.72 ID:ZsKDNA8Z0

まだプロローグなのにこのワクワク、これからが本当に楽しみだわい
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/03(月) 23:45:21.51 ID:nz+wzSDtO
おお、更新来てたのか!
これは可能性感じる展開やね、どうなってくか楽しみ
165 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2017/04/05(水) 01:49:58.12 ID:Vy7uRHaCO

 ◯


 それは今までの子達にはなかった決意。

 勝負すると、やってみせると、負けないと、確信を持って断言する彼女らは眩しくて。

 圧倒した筈の私達はただ一言。

悠「……勝負の内容と日時を決めるなさい」


真央「いつでも挑戦を受けるから」

 それだけ口にして背中を向けた。
 周りの生徒達の呆気にとられた顔がチラッと見えた。私たちもほんの少し前はあんな表情をしていたのだろう。
 けれど今は違う。

真央「……なにもできないのは、私達」

悠「――戯れ言よ、素人の」

 私の呟きに悠が吐き捨てた。
 彼女らしくない冷たい口調に思わず身体が跳ねてしまう。
166 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2017/04/05(水) 01:53:05.33 ID:Vy7uRHaCO

 ――でも私も彼女と同じ気持ち。
 なにもできない。そう言われて腹が立たない人間はいないだろう。何かしてきたのなら尚更。

真央「……」スッ

 けどね、ゆーちゃん。私はこうも思うんだ。
 今のままじゃ誰も前に進めやしないんだ、って。

 今の私達はあの頃と違う。それが間違ってるだなんてことは思わない。でも……ゆーちゃんにはもっと楽しく笑っていてほしいから。
 
 だから――ちょっとだけ。

真央「……今日は、もう帰るね」

悠「え? ええ。また」

 簡単な挨拶を済ませ、ゆーちゃんと別れる。生徒会の仕事がある彼女は校舎の中へと入っていった。
 私はそのまま前へと進み、先程取り出した携帯電話のアドレス帳を開く。目的のアドレスはすぐ見つかった。

 『きょうこちゃん』。連絡するのはいつぶりだろう。元気にしてるといいけど。

真央「……ちょっとだけ、あの子達のこと手伝うね」

 変わらずに終わりを迎えそうになっていた私達。そこへやってきた一縷の希望。

 あの子達の真っ直ぐさを信じたくなったから。

 私は意を決してメールを打ちはじめた。



【2話 おわり 3話に続く】
(あらすじ(>>109)の前を1話としてください)
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/07(金) 23:45:13.32 ID:hk0EwbrQO
乙!
ここからどう動いてくのか楽しみだわ
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/08(土) 02:49:57.30 ID:rxD4oouA0
乙!!
久々に見に来たら更新されていてすごく嬉しい。
気長に待つから、ゆっくり続き書いてくれ
169 :以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/18(火) 04:00:20.92 ID:4zCEWd6A0
待ってるよ〜
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/22(土) 18:17:00.54 ID:y8v3aoA3O
ワクワクしてきた>ω<
171 : ◆vcwOztGGw2 [saga]:2017/04/23(日) 19:06:35.85 ID:n1etrTqb0

 前回のラブライブ!


 ついにやってきた入学式当日。
 スクールアイドル部を新たに作るため、私たち三人で新入生勧誘をはじめる。

晴香「うぅ……ごめんね、芽衣ちゃん……飛島さん……私、もうダメみたい……」ガクッ

芽衣「あ、晴香!? 晴香ー!」

 けれども待っていたのは失敗の連続。段々と私達は焦りを積もらせて――

芽衣「……じゃ、奥の手やろうかな」

 そこで立ち上がったのが芽衣。彼女の素晴らしいパフォーマンスで勧誘は無事成功、と思いきや、

悠「私達と勝負をして、勝った方のグループをこの学校のスクールアイドルとして認める」

 私達の想像以上にこの学校は何かを抱えているらしかった。
 先輩との勝負。無謀な挑戦。ほぼゼロに近い勝算に、意外にも乗り気な人物が。

深羽「――宣戦布告!」

 それが私。

深羽「芽衣は――私達は絶対負けない!」

 ついさっきまで見学者だった私は、その場の勢いでスクールアイドル部への入部、勝負することを決めたのだった。


 ……ほんと、これからどうなるんだろう。



【ルート情報】
 ・前回選択肢が3話に影響します
 ・主人公に対する評価が変化します
172 : ◆XxLp/boApQ [saga]:2017/04/23(日) 19:11:31.81 ID:n1etrTqb0
 前略。
 青春とはいつだったのか。おそらく多くの人が思い浮かべる疑問。その答えを私は早くも手にしてしまったような気がします。

 理由の分からない入学式の異常現象に構わず突っ込み、感情のまま自分の身を不安定な場所に持っていき、挙句の果てに身の丈以上の敵に啖呵をふっかけ――嗚呼まさに若気の至り。

 望郷の思いが如く、つい昨日の自分を懐かしく微笑ましく思う自分がいると同時に、その無謀さを恥じてしまう私もおりまして。
 その感覚はさながら空を浮遊するよう。
 明日からの私は果たしてどこに向かうのやら。いつどこへ風が吹くのか。飛ばされてしまうのか。先行きすら見えず大変不安でございます。

深羽「はぁ……」

 なんて、慣れない言葉遣いで思考を延々と繰り返していた私は思い身体を起こした。
173 : ◆XxLp/boApQ [saga]:2017/04/23(日) 19:18:15.18 ID:n1etrTqb0
 朝である。
 入学式から翌日。色々あって頭が追いつかない状態だけれども、今日も学校に行かなくてはならない。

深羽「……正直凄まじく気が進まない」

 それなりに有名な先輩スクールアイドルに喧嘩をふっかけた素人。私がどんな評価をされるかなんて、自分自身でしっかりと理解している。
 ……とても学校に行く気になんてなれない。

深羽「でもここで行かないのはもっとまずいことになるだろうし」

 今なら無謀な生徒で済む。けどここでサボれば無謀な上に臆病で、卑怯な生徒だと思われること間違い無し。
 それに行きたくないと言っても、ただの気分的な問題。私達は当然の権利を使ったまでで、今のところ世間のルール的には何の問題もない。
 つまり学校に行かないだとか、逃げの姿勢をとることは不自然で。あまりしたくはない。

深羽「……思考が延々ループ」

 ため息。行かないといけないのは分かっているし、行こうとも思っている。
 でもいまいち勇気がわかず、あれこれ考えるだけ。どうにも周囲の目が気になってしまう。これも平坦な人生を歩んできた結果か。
174 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2017/04/23(日) 19:23:43.71 ID:n1etrTqb0
深羽母「深羽ー。友達が来てるわよー」

深羽「……え?」

 ぼんやりと壁を眺めながらついつい考え込んでいると、部屋の外からそんな声が聞こえてきた。
 やたら楽しそうな声である。友達? こんな朝早くに……芽衣かな?

深羽「とりあえず支度しないと……」

 寝起き姿を見せるのは恥ずかしい。引きこもりたくなる気持ちを振り払い、私はベッドから降りた。
175 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2017/04/23(日) 19:40:38.87 ID:n1etrTqb0

 ○



深羽母「いやー、アイドルやってるだけあって流石に可愛い子だねぇ」

晴香「そ、そんなことは……。それに、私スクールアイドルはまだ――」

深羽母「ああもう謙虚っ。うちの子にも見習ってほしいわ、この可愛げのあるリアクション!」

 学校へ行く準備をあらかた済ませて一階の玄関前、居間へ行くとそこで晴香がお母さんに捕まっていた。
 頭のてっぺんを優しい手つきで撫でられ、ピンク色の髪を揺らしながら物凄くあたふたしている。ふわふわと女の子らしく柔らかい雰囲気の彼女は、私のクラスメイトその1。今日は昨日と少し変わって、ツインテールを作っているゴムに花みたいなアクセサリーが付いている。
 私よりもはるかにアイドルらしくて、守ってあげたくなる小動物的な可愛さを持つ子である。

 さて、そんな彼女が何故一人で私の家へ?
 てっきり芽衣だと思っていた私は面食らってしまった。

深羽「おはよう。なにしてるの?」

深羽母「あぁ、やっと来た。おはよう。ご飯置いてあるから食べなさい」

晴香「あ。飛島さん。おはよう」

 撫でられ顔を赤くさせながら晴香が挨拶をしてくれる。母親さんは娘に興味がないのか、全然顔を合わせてくれる気配がない。

深羽「ん、分かった」

深羽「……」

 二人の隣を歩いて、居間の時計をチラ見。時刻はいつも通り。朝食をのんびり食べている時間だ。晴香の家がどこだかは知らないけど、起きて準備してここまで来るとなると、それなりに早起きしてきたのだろう。
 とりあえず、いただきますと一言。朝食の白米、お味噌汁、瓶入りの鮭フレークという簡単なメニューを見、瓶に手を伸ばす。
 朝はあんまり食べる気にならないしこれくらいがちょうどいい。
176 : ◆XxLp/boApQ [sage sagas]:2017/04/24(月) 04:19:35.79 ID:TFpog3VcO
深羽「――晴香、今朝はどうしたの? 一人で私の家に来て」

晴香「えっ? あ、ええ――ちょっと話したいことがあって。迷惑……だったかし」

深羽母「そんなことない!」クワッ

深羽「……私も」

 お母さん。撫でるのを止めたのはいいけど食い気味で全力で会話に入ろうとするのは止めてください。

晴香「そ、そう。よかったです、おばさん」

 流石に晴香も引き気味である。
 それにしても話したいこと……ね。それ以上は言わないし、多分二人きりで相談したいことなのだろう。
 なんとなく察した私は朝食をいつもより早めに食べ進める。
 友達の相談となれば眠い朝でも話は別だ。
 それからすぐに私達は登校の準備を整え、絡もうとしてくる面倒な母親を振り払い、家を出た。
 晴香や小さくて可愛い芽衣が今度家に来る時は、事前に連絡するよう言っておこうと心に誓って。
177 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2017/04/24(月) 04:21:10.77 ID:TFpog3VcO

深羽「……やっと出られた」

晴香「とても家から出たとは思えない台詞よね……あはは」

 家から出て学校に向かう。
 通学出勤、掃除にゴミ出し。朝は忙しく、道を歩いている人が多い。住宅街ともなると、あちこちから人の声が聞こえてくる。

深羽「それで、話ってなに?」

 家では聞けなかったけど、ここなら話してくれるだろう。晴香に興味津々なおばさんはいないし。

晴香「あ、うん。芽衣ちゃんと飛島さんってリ・バースと勝負するのよね?」

 ちらっとこちらを見て尋ねる晴香。話といえばまぁ、それが来るのは分かっていた。でも一応彼女は部外者なわけで。関係ないと言える立場で、わざわざ私と二人で何か話そうとするのだから律儀というか。
178 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2017/04/24(月) 04:23:05.99 ID:TFpog3VcO

深羽「うん。スクールアイドルをするのに必要なら勿論」

晴香「そう、だよね」

晴香「……」

 ……。どうしたというのだろう。晴香はそこで黙ってしまった。
 前髪をいじりつつ、私は首を傾げる。勝負に何か? ……うーん、分からない。繊細そうな子だし、私には考えが及ばない悩みがあるのだろうか。それとも単に負けそうなのが心配だとか……結構有り得る。私も心配だから。

晴香「っ……」

 色々考えて黙っていると、不意に晴香が顔を上げた。何か切羽詰まったような表情で私を見、口を少し開いて――閉じる。何かを言いかけたようだ。

深羽「晴香?」

晴香「な、なんでもない。勝負するなら飛島さん含めて衣装が五着は必要だよね。頑張らないと」

 思いきり早口。露骨なほど何かを隠そうとする彼女に、私は追及する気になれなかった。
 嫌がるところに無理矢理足を突っ込むわけにもいかないし。
179 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2017/05/08(月) 00:51:15.36 ID:YDfg3nLI0
深羽「ね、晴香。悩みがあるなら話――」

ドスの利いた声「――見つけた」

 心配していることくらいは伝えておこう。勇気を出して私が言いかけたその時、聞き慣れない声と共に一人の女性が現れた。
 フラッと横の道から何気なく何気なく出てきた彼女。長い茶髪に、脚が見えない丈の制服のスカート。黒いセーラー服の上にスカジャンを羽織り――な、なんだ、あのアナログな不良さんは。
 刺々しい見た目に驚き立ち止まる私たちを彼女は睨む。大人なお姉さん的な顔立ちで、綺麗な人なのに威圧感が……。

晴香「飛島さん……知り合い?」

深羽「し、知らない……」

 二人して蛇に睨まれた蛙状態。さっきとはまた違ったシリアスな空気で、私らは視線だけ合わせる。
 朝、知らない不良に見つけたと声をかけられる。すごく怖いことだというのが分かるだろうか。
 何かされる? どうして?
 完全に真っ白になってしまっている頭。そのまま数秒動けずにいると、睨んだままだった不良が不意に口を開いた。
 見た目と同じく綺麗で、でも凄みのある声で彼女は一言。
180 : ◆XxLp/boApQ [saga]:2017/05/08(月) 01:06:08.88 ID:YDfg3nLI0
睨む少女「おはよう」

 なんかもうただの挨拶が怖かった。
 第二声で何故挨拶をチョイスするのか。それが第一声でいいのではないか。
 ツッコミの血が騒ぎ、ずっこけたくなるけれどグッとこらえる。

睨む少女「今日はお前に話があってな」

 不良の視線が私をとらえ――え? 私?

深羽「あの、初対面じゃ……」

睨む少女「あぁ。頼まれ事をされてな――スクールアイドル、やるんだろ?」

深羽「え?」

 な、なんでそれを!?
 うちの生徒……なのは違うか。制服が違うし。ならなんで?
 サスペンスから最早ホラーと化している現在の状況。そこへ場違いなほど賑やかな足音が聞こえてきた。
181 : ◆XxLp/boApQ [saga]:2017/05/08(月) 01:49:25.76 ID:YDfg3nLI0
騒がしい声「あ、いた! コラー! 恭子! 今日こそ練習出てもらうんだからね!」

睨む少女「――っ! やべっ」

 彼女がやってきた横道の方、遠くから聞こえてきた声に不良――おそらく恭子がギクッと身体を跳ねさせ反応する。
 余程捕まりたくないのだろう。私たちに何も言わず彼女はすたこらと逃げ、

騒がしい声の少女「待ちなさいっての! 金髪不良ー!」

 その後を追う、赤髪の女の子が慌ただしく走っていく。
 二人の少女があっという間に見えなくなり、後にはぽかんとする二人の女子高生が残された。

晴香「な、なんだったの……?」

深羽「さっぱり分からない」

 なんで私のことを知っていたのかも、声をかけて何をしようとしていたのかも、彼女が何者なのかも何もかも分からず。
 うーん……状況を考えるに、やさぐれたリ・バース三年生が刺客を送り込んできた――とか? いやいや、でもそこまで闇の組織化はしてないよね?

深羽「ん?」

 悪役顔した三年生とOBの先輩らを思い浮かべる頭をブンブンと振りため息。
 するとさっきまで恭子が立っていた場所に一枚の紙が。

深羽「なんだろ――」ヒョイ

『ターゲット!

 オレンジ髪の暗そうな女子。
 やる時はやる? スタイル良い

 見つけたら始末』

深羽「……」ポイッ

 見てない。私は何も見てない。

晴香「あれっ? どうしたの、飛島さん?」

深羽「なんでもないよ。さっ、早く行こう?」

晴香「え、ええ」

 さっ、今日も学校頑張ろう☆



※今回はここまでで
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/08(月) 02:16:06.33 ID:4Ljw37VP0
よかった。楽しみにしてます
183 :以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/08(月) 04:57:29.48 ID:ByC4vd7N0
恭子さんインパクトあるなぁww
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/14(日) 04:36:57.55 ID:cLkSA5fX0
お疲れ様です。楽しみしてます〜
185 :以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/22(月) 23:50:20.24 ID:vgrui2Bp0
まだ〜
186 :以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/17(土) 17:40:16.93 ID:K2gQ7+Th0
あと少して2ヶ月か・・・
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/17(土) 23:47:16.49 ID:EL/uJQlE0
がんばってほしいヽ( ;´Д`)ノ
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/06(木) 16:51:34.08 ID:Fy/PqxLGO
待ってる
189 :以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/07(月) 12:32:32.80 ID:FJKgjm330
まだかな〜
190 :以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 18:26:40.33 ID:nSQO03dbO
エタってる〜
191 : ◆XxLp/boApQ [saga]:2018/01/04(木) 11:38:14.29 ID:8Yd2JhWKO
 
 朝の件は何だったのか。
 対決、我が校のスクールアイドル事情のあれこれに加えて謎の不良。そろそろ私の心労がキャパを越えてくるのではないかと思う今日この頃。
 物思いに耽り続けいつの間にか午前の授業は終了。驚愕した私である。ノートはとってたみたいだけど絶対頭入ってないね。復習しておかねば。
 に、してもだ。

美羽「なんでこう、問題って続くのかな……」

 問題、試練、エトセトラ――の悩み事。
 数日前はそんなことに頭を悩ませるなんて思ってもみなかったのに、今や渦中に飛び込んで絶賛苦悩中。
 悩んで苦しむことは分かっていた。でも、その最中に新たな問題が飛び込んでくるとは。流れを起こして中心にトラブルが引き寄せられて。本当、渦潮みたいだ。
 ため息を吐く。ふと視線を前に向ければ、見知った人物と目が合った。

芽衣「や、深羽」

晴香「お昼一緒にどう?」

 ちょうどこちらへ辿り着いた二人はそれぞれビニール袋と丁寧に包まれた弁当箱を私の机の上へ。私が答える暇もなく近くの椅子を移動させ、いそいそと食事の準備をはじめる。
192 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2018/01/04(木) 11:39:19.15 ID:8Yd2JhWKO

深羽「……なにかあるの?」

芽衣「うん。昼休みに勧誘しようと思って」

 ビニール袋からコンビニのパンを出した芽衣が、目を輝かせて静かに答える。
 勧誘。リ・バースと戦うためにはまずメンバーを揃えなくては話にならない。細かな勝負方法はこちらが決めていいような口振りだったけど、五人――つまり部活と認められる人数以上の部員がいて初めて勝負することができる。

深羽「勧誘、かぁ……」

晴香「厳しそう……。昨日も結局勧誘できなかったから」

芽衣「まぁ……」

 ずーん、と空気が重くなる。
 私もお弁当を出して食べ始めるけど……とても楽しくランチなんて気分にはなれない。
 新入生を勧誘するなら昨日が絶好のチャンス。今日明日としばらく部活の見学会があるものの、それは部活として活動している部にのみ関係するイベント。私たちに出る幕はなく。

芽衣「こほん。ま、一人ターゲットはいるからさ。放課後はその子のスカウトに使うとして……お昼は新入生を無差別勧誘」

晴香「あれ? 二年生はいいの?」

芽衣「んー。希望あるのは一年生かなと思って。二年生はスクールアイドルの決まり今まで守ってたわけだし」

 芽衣が淡々と答えると、晴香の表情が若干曇った。確かに、一年生より長くルールを守っていた二年生より入ってきたばかりの一年生に希望を賭けた方が賢いか。
 声をかければすぐ加入してくれそうな二年生もいるのだが……私の勘違いだったら嫌だし。
193 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2018/01/04(木) 11:40:15.67 ID:8Yd2JhWKO

深羽「分かった。お昼はいいとして……そのターゲットって?」

芽衣「あぁ、うん。ちょっと待って」

 いつも通りにクールな口調で落ち着いて答える芽衣。けどその目は一層輝きを増し、携帯を取り出す動作は慌ただしい。はしゃいでいることが見て知れた。

芽衣「……っと。この子。今朝見つけた金の卵だよ」

深羽「ふんふん……わっ」

晴香「ほえぇー」

 携帯の画面いっぱいに映ったのは一枚の写真。校門前と思しき場所でピースしている女の子が撮られている。とりあえず盗撮じゃないみたいで安心した。
 すごく綺麗な子だった。反射的に驚きの声が出てしまうほどに。サラサラしたロングの金髪に、まるで作られたみたいな美しい顔立ち。撮影に乗り気じゃないようでブスッと無愛想な表情をしつつピースを作っているけど――そんなシチュエーションでも神秘的なほど綺麗で可愛らしい。
 同じ制服を着て同じ通学鞄を持っているというのに、この雰囲気の差。外国人、なのかな? 私の学校の中で第一印象のインパクトがこれほど強い人物はいただろうか。
 こんな子が歌って踊って笑顔を見せて……間違いなく人気が出る。すごいことになる。
194 : ◆XxLp/boApQ [saga]:2018/01/15(月) 05:10:19.46 ID:kP9MRK6k0

芽衣「アイドルをやるからにはやっぱり見た目は大事だし、この子楽器やってるみたいだし、力になってくれそうじゃない?」

晴香「勧誘……こ、このレベルの女の子を……」

 晴香がぶつぶつと呟く。私も正直戸惑っている。芽衣はかわいいし、私も決して悪くはない……と思いたいけど、高嶺の花すぎないかなあ、なんて。

芽衣「目標は高くいかないと」

深羽「……スカウトできそうなの? すごい面倒そうな顔されてるけど」

芽衣「はは……。駄目そうかも」

 ……だよね。楽器やってるなら尚更だろう。

芽衣「でも粘るよ。部活動やらないらしいから」

晴香「お嬢様っぽいし家とかで楽器やるかもしれないよ?」

深羽「……この子も可能性低そう」

 うん、また暗くなった。
 ……本当、私達のやろうとしてることの難しさといったら。
 今日の勧誘でちょちょいとメンバー増えるといいんだけど……。

芽衣「ま、頑張っていこう。昨日の出来事もあるし、勝負することは知られてるから」

深羽「……うん」

晴香「やるしかないってことね」

 黙々とパンを食べる芽衣。暗くなっていた空気が彼女の真っ直ぐな言葉で元の雰囲気を取り戻す。
 口調は淡々としてるし、表情もあんまり変えない彼女だけど、私達を引っ張って挑み続ける姿に励まされる。流石は我らがリーダー。小さいのに頼れる女の子だ。

芽衣「深羽、また何か失礼なこと考えてない?」

 同じく無表情気味な私の心を読む技術もまこと恐るべし……。
195 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2018/01/15(月) 05:11:34.17 ID:kP9MRK6k0




 早めにお昼を済ませて一年生の教室が並ぶ階へ。
 第一、第二、第三と校舎がある我らの高校は第一に昇降口、職員室や事務室、三年生の教室。その奥、第二校舎に二年生の教室。更にその奥、第三校舎に一年生の教室……といった具合の、年齢が上がるにつれて歩く距離を減らしていくシステム。
 ただ科学室や音楽室などは第二第三にあるため、ご年配に優しいのは登下校のみ。はてには体育館、グラウンドは小さな川を挟んで向こう側と、優しいのやら優しくないのやら。
 中途半端な都会田舎な高校はその辺も曖昧である。

深羽「さてと……どうする?」

 お昼休みということもあって、廊下は賑やかだ。
 ガヤガヤと騒がしい中、階段の踊り場で私たちは小さく固まって作戦会議。この場所で勧誘……あらゆる方向から人目があって恥ずかしい。昨日は同じ目的の人が何人もいたけど、今日はそうでもないし。

芽衣「まずはコレ」

 と、芽衣が手にしていたダンボールの板――に付いていた紐を私の首にかける。『スクールアイドル部 部員募集 集え挑戦者』……やたら暑苦しいフォントで書かれた看板である。

晴香「……こ、こんなので集まるの?」

芽衣「フッ、大丈夫」

 心配そうに見る晴香に、芽衣はクールに微笑む。小さな子供が背伸びしたかのような仕草に、頭を撫でたくなる衝動に駆られた。ぐっと我慢我慢。
196 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2018/01/15(月) 05:12:38.79 ID:kP9MRK6k0

芽衣「深羽はもう有名人だし。ほら、アレ見て」

 コレの次はアレ。何だろうかと、視線を芽衣が指で示した先を見てみる。

深羽「え……ええっ!?」

 そこには思わずびっくりする物が。
 『リ・バースへ挑戦状!?』。そんなタイトルの新聞が踊り場の壁に貼り付けられていたのだ。

晴香「はぇー……すごい。完璧に小説化されてる」

 晴香が感嘆を漏らす。
 パッと見は新聞で、最初の数行もそれらしい感じなのだけど……大部分は昨日一連の出来事を見ている誰かの視点で書かれた小説であった。
 やたら上手くて、昨日体験したことだというのに引き込まれてしまう。
 宣伝としてすごく有り難い。有り難いんだけど……なんで勧誘前の教室で集まったところの会話も書かれてるのだろう。

深羽「何これ」

芽衣「生徒会新聞らしいよ?」

晴香「何やってるんだろう、生徒会」ボソッ

 一日で高クオリティのノベライズ化とは……何が生徒会を突き動かしたのだろうか。この学校が心配だ。

深羽「でもこれで有名になるなんて……」

 言いかけて、私は気づく。廊下、階段――近くを通る生徒が私のことをチラチラ見ていることに。
 中には数人で話していて、私と目が合うと逃げ出す女の子がいる始末。
197 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2018/01/15(月) 05:13:28.25 ID:kP9MRK6k0

芽衣「今気づいた?」

深羽「……ウン」

 そりゃあそうだよ……先輩に堂々と喧嘩ふっかけた二年生が出てきただなんて聞いたら間違いなく注目される。それも今をときめくスクールアイドルってジャンルで、部の存続を賭けた決闘――嗚呼、なんてエンターテイメント。張本人は気が気でないのだけれど。
 からかうような笑みを浮かべている芽衣へ、私は力無く頷いた。

晴香「気づいた? えっと、何に?」

芽衣「深羽の注目度さ。今日の勧誘は深羽頼みだから頑張って」

晴香「注目……? あ。私にも分かった」

 生徒の視線と新聞。交互にそれを見、晴香もようやく察したらしい。大人しめな彼女はススッと私から距離をとった。

晴香「ファ、ファイトっ。飛島さん」ガッツポーズ

 ……しょうがない。本来なら目立つようなことはしたくないけど、アイドルをやる以上そんなこと言ってられないし。昨日は晴香に頑張らせたし。今度は私の番か。

深羽「分かった、頑張ってみ――」

??「あ、あの……」

 やってみよう、なんて思い承諾しようとした瞬間声がかかる。控え目な、晴香を彷彿とさせる大人しそうな印象の声である。不意を突かれたけれども早速私の出番のようだ。意気揚々と振り向く私。

198 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2018/01/15(月) 05:14:45.93 ID:kP9MRK6k0

深羽「はい、何ですか?」

 歳下の一年生の教室が近いとはいえ一応見知らぬ人。敬語を使い対応。声をかけてきたのは声の印象通り、大人しそうな女の子。眼鏡をかけたしっかりしてそうな子で、よく見るとかなりかわいい。
 暗い、黒髪に近めな緑色の髪を後ろは短めに切り揃えていて前髪は目の辺りの長さで自然に流している。おでこをちょっと見せるように髪を上げているバツ印に交差してとめてあるヘアピン、眼鏡と小物が目を引くお洒落さんだけど、色が大人しいからかパッと見は結構地味めだ。

 彩星の制服は上下共に黒いセーラー服。襟やスカートの裾に白いラインが付き、胸に学校のマークが入ったシンプルな制服である。
 一年生は白。二年生は赤。三年生は黒。それぞれ異なる色のリボンを付けており、そこで学年は区別できる。
 この子は……一年生みたいだ。ピカピカのちょっと大きめな真新しい制服が初々しい。
 私に話しかけたということはアイドル部志願、だろうか。

眼鏡の子「あ、あの……その」

深羽「は、はい……」

眼鏡の子「……」モジモジ

深羽「……」

 ……ど、どうしよう。沈黙が。え? 私が何か話すべき? しまった、会話の自主性が全くない私に勧誘は無理があったか?
199 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2018/01/15(月) 05:15:55.07 ID:kP9MRK6k0
芽衣「――二人とも黙っちゃったよ」

晴香「あはは……」

 それをちょっと後ろから見てた二人が、苦笑しつつ前へ。私の横へ並ぶと女の子の姿を見る。すると声に反応して、女の子が下へ向けていた視線を上げた。
 茶色の瞳、ぱっちりとした目は芽衣に向けられており、心なしかワクワクしてるように見えた。芽衣の知り合いかな?

芽衣「ん? 入部希望者だよね?」キョトン

 ……どうやら知り合いではないみたいだ。

晴香「あれっ? あ、君……昨日、見てた人よね?」

 代わりに反応したのは晴香。昨日? 見てたってことは声はかけてこなかったらしい。
 これはやはり入部希望の線が濃い。今日はまだ勧誘を始めてもいないというのに幸先がいい。

眼鏡の子「えっ? ぁ、はい……」

深羽「興味があるなら、是非――」

声が大きな子「あーっ! 見つけた!」
200 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2018/01/15(月) 05:17:00.63 ID:kP9MRK6k0

 突然響く声に、多分この場にいた四人全員驚いただろう。爆竹でも投げつけられたみたいに至近距離で炸裂した大声にビクッと身体を揺らし、みんなが会話を中断してそちらを見る。
 芽衣に負けず劣らずちっさい女の子が、キラキラ輝く目を私達へ向けていた。学年は一年生。緩めに制服のリボンを結び、セーラー服の上から灰色のパーカーを羽織っている。検査に引っ掛かりそうなアレンジだが、だらしない印象はなく、むしろスポーツマン的な活発で爽やかなイメージが強い。
 髪は例の勧誘ターゲットよりもちょっと暗めの金色で短めのポニーテール。癖があるのかこめかみ上ぐらいの一箇所がぴょこんと跳ねている。
 明るさ元気さに溢れた大きな目、まだまだ子供っぽい幼めな顔立ち――おぉう、この子もレベル高い。芽衣がクールなかわいい猫タイプだとすると、この子は小型犬的な人懐っこそうな可愛らしさがある。
 さて、鼻息荒く若干興奮気味な彼女は尻尾みたいに髪を揺らして一歩二歩前へ。そしてそのまま足を速め――あ、あれっ? 突進してきてない?

芽衣「……あ。まさか……山茶!」

 ん? 知り合い?

山茶「うん! ひっさしぶりー! 芽衣!」ガバッドゴッ

芽衣「ほんと久しぶりだけど止ま――ぐえっ」ドサッ

 あ、飛びつかれて潰された。
 ……あまりに登場から目まぐるしいから理解が追いつかなかったけど、知り合いで、激しめなボディランゲージするくらいには仲がいいみたいだ。
 ふふふ、これはこれは……またメンバーが増えそうじゃないの。
 山茶、って呼ばれてたよね。山茶に眼鏡の子で一気に二人も――ん?
201 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2018/01/15(月) 05:18:17.64 ID:kP9MRK6k0

眼鏡の子「……」

 どうしたのだろう?
 じゃれつく山茶に引き剥がそうとする芽衣。二人の微笑ましいやりとりを見つめながら、眼鏡の子は悲しそうに胸の前で自分の手を抱くように握る。
 そんな顔するような場面でもないような……。芽衣は割と迷惑そうだけど。

晴香「あ、あの! どうしたの?」

 もしかして飛びつきからのじゃれつきが、ゾンビ映画を彷彿とさせたり――なんて、くだらないことを考えていると晴香が眼鏡の子へと声をかける。
 ちょっと意外だ。今までの彼女なら困った感じで様子を見てると思ってたんだけど。

眼鏡の子「っ! な、なんでもないですからっ。――ごめんなさいっ」

 声をかけられ、ハッとした女の子。彼女は困った様子で晴香と芽衣達の間で視線を泳がせ、慌ただしく階段を上がっていってしまった。
 見るからに逃げたけど……本当にどうしたのだろうか。

芽衣「はー……やっと離れた。あれ? さっきの子は?」

晴香「逃げちゃった。何かあったのかも」

 ようやく立ち上がり、山茶を落ち着かせた芽衣が辺りを見回す。けれどまぁもう既に彼女は去った後。見つかるわけもなく。晴香がため息混じりに答えた。

山茶「え? あ。もしかして私、乱入しちゃった?」

晴香「あはは、ちょっと、ね。……でも、他に理由があるような」

芽衣「次見かけたら声かけようか。追いかけたいけどそろそろお昼休み終わりそうだから」

芽衣「山茶、また放課後に話そう」

山茶「りょーかい! じゃ、またねー」

 ブンブンと手を振り、山茶が元気よく走り去る。第一印象と変わらず元気の塊みたいな子だ。
202 : ◆XxLp/boApQ [sage saga]:2018/01/15(月) 05:19:13.27 ID:kP9MRK6k0

芽衣「さて……」

深羽「……」

芽衣「戻るよ? 深羽、どうかした?」

深羽「……うん。少し、引っかかってることが」

晴香「ひ、引っかかってること?」ゴクリ

芽衣「……。うん、言ってみて」

 教室へ帰ろうとしていた二人が足を止め、真剣な顔で私を見る。
 私はちょっと引っかかることがあった。さっきから気になっている、とある一つの疑問。それを解消せずにはいられなかった。
 数秒、間を空け、私は重い口を開いた。

深羽「……私全然喋ってなくない?」

芽衣「……」スタスタ
晴香「……」スタスタ

深羽「ちょっと、リアクションして」

 待って損したと言わんばかりに無言で歩き出す二人に、私は慌ててついていった。
 自分から喋り出す練習しておかないと……。台詞遮られ率が凄まじい。
203 : ◆XxLp/boApQ [saga]:2018/01/15(月) 05:20:26.41 ID:kP9MRK6k0


  ○


 それからなんやかんやとお昼休みが過ぎて午後の授業。
 2科目が終了し、帰りのホームルームが済むとまた芽衣が晴香を連れて――

芽衣「やほー、深羽」

深羽「ん……あれ? 晴香は?」

芽衣「あぁ、今日は用事あるから別行動だって」

 連れて来なかった。
 尋ねると、芽衣は不思議そうな顔をして答える。用事あるから帰る、じゃなくて用事あるから別行動……。ひょっとするとスクールアイドル部のために何かしてくれてるのかな。

芽衣「深羽はどうする? 今日は昼休みの子――山茶を勧誘して、例の女の子の勧誘もするつもりだけど」

深羽「えっ? うーん……」

 まさかそれを問われるとは。昼休み、既に私へ放課後の予定を話していたし、改めて訊かれるとは思ってもいなかった。
 ……もしかして晴香についていってほしかったり?


 うーん……どうしよう。


 1 芽衣に付き合う
 2 晴香を探す

 ↓1

204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/15(月) 06:39:44.73 ID:1HjPmOzaO
2
205 :以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/19(金) 08:45:32.54 ID:h/1WxqIz0
復活してる〜
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/06(火) 16:08:05.86 ID:6PMV/BQu0
復活してる!!がんばれー!
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/01(金) 03:45:11.26 ID:4X9vLY4Y0
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