他の閲覧方法【
専用ブラウザ
ガラケー版リーダー
スマホ版リーダー
BBS2ch
DAT
】
↓
VIP Service
SS速報VIP
更新
検索
全部
最新50
勇者「救いたければ手を汚せ」
Check
Tweet
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 02:44:51.05 ID:9hSp9rlBO
魔女「あんたを助けた覚えはないけどね」
北王「それでいい。その方が楽だ」
魔女「あっそ」
北王「……魔女」
魔女「?」
北王「……近頃、魔王という名を耳にする」
魔女「!!?」
北王「東西軍部の報告書の中でも、その名を何度か見かけた」
北王「彼も、王として悩んでいるのだろうか。魔女、貴様はどう思う?」
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 02:45:26.25 ID:9hSp9rlBO
魔女「……悩んでる…んじゃないかな」
魔女「自分がどうあるべきか、魔王とは何か、人の世で、どう生きていくのか…とか色々……」
北王「どんな時代だろうと、自国の民を守るのが王の役目、責務だ」
北王「敵対するものがいるなら頑として戦う。そうあるべきだ」
北王「人の王も、魔の王も、そこは変わらぬと思っている。心はあると信じている」
魔女「?」
北王「我々…人間に手を貸してくれたのが、その証だろう? 地下施設の件、礼を言う」
魔女「!! あんた、最初から気付いて…」
北王「話は終わりだ。まだ仕事があるのだろう? あまり仲間を待たせない方がいい」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 02:46:14.38 ID:9hSp9rlBO
魔女「……ありがと、またね」ザッ
ガチャッ…パタンッ……
北王「……側近」
監視「は、何でありましょう?」
北王「君にも多大な迷惑を掛けたな。済まない」
監視「いえ。これは散っていった仲間の為、生き残ってしまった者としての責務です」
北王「……そうだったな」
監視「陛下」
北王「何だ?」
監視「何故、一介の見張りに過ぎぬ私を側近に?」
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 02:47:21.27 ID:9hSp9rlBO
北王「今更だな」
監視「陛下は多忙を極めていた為、これまで訊ねる機会はありませんでしたからな」
北王「……私がしたことを知っている者。いや、被害者と言ってもいいだろう」
北王「だからだ、だから君を側近にしたのだ。厳正なる眼で、私を…咎人を監視して欲しかった」
監視「……そうでしたか」
北王「君にとっては、災難以外の何物でもなかっただろうな。こんな人間を見続けるなど……」
監視「そんなことはありません。王であろうとする姿は、いつ見ても御立派だと思っております」
監視「ただ、その姿を見る度に思うのです」
監視「何故、もっと早く、そうなってくれなかったのかと……」
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 02:48:14.25 ID:9hSp9rlBO
北王「…………」
監視「貴方は弱かった。その弱さ故に、多くの命が失われた」
監視「しかし、我々軍部にも責はある。将軍の企みを見抜けず、踊らされていたのですから」
監視「王が苦痛に耐え、藻掻いていることなど、知る由もなかった……」
監視「貴方か将軍か…どちらが咎人であるかなど、今となっては分かりません」
監視「ただ、それに巻き込まれたのは我々軍部だけでなく、民だということは確かです」
北王「……容赦ないな」
監視「何を言われますか。厳正なる眼で見ろ…と仰ったのは陛下ですぞ?」
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 02:48:59.57 ID:9hSp9rlBO
北王「ハハハッ! そうだな、そうだった」
監視「……陛下」
北王「?」
監視「私は、この命尽きるまで見届ける覚悟です。最期の最期まで、どうか、全うして下さい」
北王「……ああ、そのつもりだ。引き続き、監視を頼むぞ」
監視「ええ、お任せ下さい」
監視「王は兎も角、罪人を監視するのは慣れております。何十年と見て参りましたからな」
北王「ふっ、言ってくれるな。ふ〜っ、そろそろ戻らんと…な…」
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 02:50:46.05 ID:9hSp9rlBO
監視「陛下?」
北王「いや、何でもな…い…」フラッ
…ガシッ…
監視「陛下、少しお休みに
北王「…ッ…大丈夫だ…」
監視「しかし…」
北王「何のことはない」
北王「少しばかり脚がもつれたようだ。座ってばかりだからだろう、まったく情けない話だ」
北王「両の脚があるのに、一人で歩くことも出来んとは、とんだ笑い種だ」
監視「……陛下」
北王「やるべきことは、まだまだある。側近にも手伝って貰うぞ」ザッ
監視「は、承知致しました」
ザッザッザッ…
監視「(近衛兵よ、見ているか。この国は必ずや変わる。どうか、見守っていてくれ……)」カツン
…カツン…カツン……
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 02:58:54.66 ID:9hSp9rlBO
>>>>>
同日夜 魔導師の洞窟
魔女「北部完了。ありがとね、盗賊」
盗賊『礼はいらねえよ。髭のおっさん達を説得すんのは、まだ楽だったからな』
盗賊『面倒だったのは人間の方だ』
魔女「あ、東王と会談したんだっけ?」
盗賊『したんだっけ?じゃねえよハゲ!! お前も居ただろうが!!』
魔女「ハゲてないから!! って言うか、あんなの無理だよ!!」
魔女「針落としても分かるくらい静かで、お葬式みたいに重苦しい雰囲気でさぁ!!」
魔女「元帥も、巫山戯たことを言ったら射殺する…みたいな顔してたじゃん!!」
魔女「私だって最初は盗賊を助けるつもりだったよ!? でも無理でしょ!?」
盗賊『うっせえ! お前、途中で部屋から出ただろ!!』
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 02:59:26.65 ID:9hSp9rlBO
魔女「うっ…」
盗賊『あの、ホントごめんなさい。ちょっと具合悪いんで……みたいな顔しやがって!!』
魔女「仕方ないじゃん!! あんな空気耐えらんないよ!!」
盗賊『独りぼっちの気持ちを考えなさいよ!! 滅茶苦茶キツかったんだからな!!』
魔女「……ごめん」
盗賊『部屋から出たっきり戻って来ねえし……お前、何処で何してたんだよ』
魔女「……怒んない?」
盗賊『ああ、もう怒りようがねえからな』
魔女「……王女様と、お茶を飲んでいました」
盗賊『ざけんな死ねッ!!』
魔女「怒んないって言ったじゃん!!」
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:00:22.08 ID:9hSp9rlBO
盗賊『喧しいわ!!』
盗賊『俺が一生懸命頑張ってる時にお茶飲んでるとか馬鹿じゃねえの!?』
盗賊『これから大規模な魔神族流入が起こる可能性がある。種族名はオーク……』
盗賊『とかってクソ真面目に話してんのに、お茶飲んでんじゃねえよ!!』
魔女「……ほら、私だけ場違いだったしさ」
盗賊『なぁ』
魔女「……はぃ」
盗賊『なあ!』
魔女『はい』
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:01:04.99 ID:9hSp9rlBO
盗賊『なぁ!!』
魔女「はい!!」
盗賊『見知らぬ御偉方に囲まれて、満足に息も出来ない子供の気持ちが分かるか?』
盗賊『そりゃもう生きた心地がしなかったぜ? あれなら殴り合いの方が何百倍も楽だ』
魔女「え、そう? きちんと魔王やれてたと思うけど……」
盗賊『口調に姿勢、仕草を変えたりして別の人間を演じんのは楽なんだよ』
盗賊『ただ、この度は……みてえなやつが苦手なんだ。なんつーか、むず痒いだろ』
盗賊『つーか、何で俺なんだよ。ああいうのは勇者担当じゃねえのかよ』
魔女「……仕方ないよ、居ないんだから。そんなに嫌なら、何で引き受けたのさ」
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:01:51.13 ID:9hSp9rlBO
盗賊『黒鷹の奴に、そろそろかもしれん…』
盗賊『とか言われて、それを伝えられんのは俺しかいねえだろ』
盗賊『精霊や勇者の師匠も気付いてたみてえだけど、こっち側から言った方が危機感が出るだろ?』
魔女「……まあ、魔王からの余命宣告だなんて言われたら、そりゃあね…」
盗賊『敵対してる存在からの情報提供ってのは、そんだけ重いもんだ』
盗賊『しかも身内の奴等が、そいつの言ってることに間違いはない…』
盗賊『とか言うんだ。そうなったら、これは大事だ、何とかしなければ…って思うだろ』
魔女「そうかもしれないけど、わざわざ魔王として話さなくてもよかったんじゃないの?」
盗賊『俺は魔神族の王で、人間の王様じゃねえ。それを示しとかねえと後々面倒なことになる』
盗賊『地下街だけで手一杯なんだ。妙な期待されて頼られんのはごめんだ』
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:02:35.14 ID:9hSp9rlBO
盗賊『……それにな』
魔女「ん?」
盗賊『世界の危機だとか、滅ぶとか言われてもピンとこねえけどよ……』
盗賊『世話になった奴とか、一緒に戦った奴とかが死ぬのは嫌だろ?』
盗賊『他の奴等がどうなろうが知ったこっちゃねえけど、それだけは嫌なんだよ……』
魔女「…………」
盗賊『俺の大事な奴、勇者の大事な奴、お前の大事な奴、隊長の大事な奴……』
盗賊『巫女や鬼姫、こっち側…地下街に住む奴等の大事な奴とかさ……』
盗賊『そういうのを繋げて拡げてったのが、世界ってやつなんだろ?』
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:04:19.68 ID:9hSp9rlBO
魔女「きっと、そんな感じなんだと思う」
盗賊『だろ? だから俺は、人間に手を貸したんだと思うんだよ』
魔女「魔王なのに?」
盗賊『魔王だとか言ってんのにな……』
盗賊『でもな、髭のおっさん達も地下街の連中も、分かってくれたんだ』
盗賊『手を取り合うことは出来なくても、あの時と同じような景色は見たくねえ…そう言ってた』
盗賊『大事な奴を失いたくないって想いは、魔神族も人間も関係ねえ。誰もが怖れてんだ』
盗賊『なんつーか、王様ってのは、そういう脅威から守る奴なんじゃねえのかな……』
盗賊『まあ、守るとか助けるとか…そんなガラじゃねえのは分かってるけどよ』
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:05:15.09 ID:9hSp9rlBO
魔女「……大丈夫?」
盗賊『おう。時々、分かんなくなるけどな……』
魔女「仕方ないよ。ついこの前までは普通…じゃないけど、人間だったんだから」
魔女「それがいきなり魔神族の王様だよ? 私にだって分かんないよ」
魔女「でも…」
盗賊『あ?』
魔女「何て言うか、変わってなくて良かったよ。私の知ってる盗賊で良かった」
魔女「あの時はびっくりしたけど、何か変な感じだったしさ……」
盗賊『爺さんに、魔女は危ねえって言われてたんだよ。でも、慣れねえことはするもんじゃねえな……』
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:06:10.96 ID:9hSp9rlBO
魔女「……そんなことないよ」
魔女「ああ言ってくれなかったら、私は半端なままだった。あれで決心付いたから良かったよ」
盗賊『後悔すんぞ』
魔女「知ってる。何かを失っても、何も出来ないよりはいい」
盗賊『…ったく、馬鹿な女だよな』
魔女「今の世の中、馬鹿にならなきゃ生きてけないからね」
盗賊『……かもな。まともじゃ生きていけねえし、ただの馬鹿でも生きていけねえ』
盗賊『魔女、何とかしようぜ。何とかなる問題じゃねえし、俺等で何とかしねえと終わっちまう」
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:07:39.70 ID:9hSp9rlBO
魔女「うん、そうだね。でも、勇者はどう? 間に合いそう?」
盗賊『まだ分かんねえ。あれから会ってねえし、喋ってもねえからな』
盗賊『爺さんはもう少しだって言ってたけどな』
魔女「その『もう少し』を、向こうが待ってくれるわけないよね……」
盗賊『そりゃあな。どんな手を使ってでも、勇者を潰そうとすんだろ』
盗賊『……王女サマも勇者の母ちゃんも、何度か狙われた。警備をすり抜けてな』
盗賊『精霊や隊長、魔導鎧が退けたみてえだけど、いつ来るか分かんねえ……』
魔女「あいつには幾つの顔、幾つの姿があるんだろ……正直、気味が悪いよ」
盗賊『内に捕らえた魂の数だけ、違う姿に化けられる。分体とかだったな』
魔女「囚われの魂は勇
ギギャッ!!ギキィィィィッ!!
魔女「痛ッ!!?」
ザザッ…ザァァァァ…
魔女「音が途切れた? 何、今の金切り声みたいな……」
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:11:48.92 ID:9hSp9rlBO
襤褸『紳士淑女の皆様方、暫しお耳を拝借する』
襤褸『それほど時間は取らせはしない。事実を告げるだけだ。心して聞け』
襤褸『近々、世界は滅ぶ』
襤褸『いや、近々ではない。たった今、この時より貴様等は滅ぶ』
襤褸『理解出来ぬ者は、理解出来ぬまま死ね。理解出来ている者も、等しく死ね』
襤褸『貴様等が異形種と呼ぶ者も、人間も、老若男女善悪美醜問わず等しく死ぬ』
襤褸『これから起きる全ては、何者も避けることの出来ぬ絶対の事柄だ』
襤褸『歴史になど残さぬ。我と我等が、歴史すら埋め尽くすからだ』
襤褸『何を恨み、何を呪えばよいのか分からぬのなら、隣人を恨み、隣人を呪え』
襤褸『救いを求めるのなら、月に吼えろ。勇者の名を叫ぶがいい』
襤褸『それでも救われぬのなら、勇者を呪うがよい。その御霊は、我と我等が迎えてやる』
襤褸『叶わぬ希望などに縋るな、其処に在る絶望を直視しろ』
襤褸『神になど祈っても無駄だ。決して抗えぬ理不尽に泣き叫べ』
襤褸『今宵は、またとない月夜……』
襤褸『ヌハッ…さあ、此方の準備は整った。其方の準備は出来ているか?』
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/11/25(金) 03:12:21.85 ID:9hSp9rlBO
また明日
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:45:55.73 ID:ZzSoyYueO
襤褸『……では、始めよう』
魔女「ッ、マズい。早く避難を……!?」クルッ
魔導師「久し振りだな。弟子よ」
魔女「……先…生?」
魔導師「理解出来ぬか、ならば理解させてやろう。土よ、大槌となりて押し潰せ」カッ
魔女「ッ!!?」バッ
ズドンッッ!
魔女「がッ…」ドサッ
ガシッ…
魔女「ゲホッ…先生…何で、先生が……」
魔導師「魔女よ、その力は返して貰うぞ」
魔女「(…っ、先生に貰った元素供給陣が消えていく)」
魔女「(じゃあ、目の前に居るのは本物の……)」
魔導師「壁にある杖は、私の杖だな。あれも返して貰おうか」スッ
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:47:12.63 ID:ZzSoyYueO
カタカタ…パシッ…
魔女「…ッ!!」ジャキッ
ガギィッ…
魔導師「一手遅かったな」
魔導師「私が現れた瞬間に敵として認識していれば、容易く葬れたものを……」
魔導師「力奪われるまで、私を模した偽者だと信じたかったか?」
魔女「…………」
魔導師「言葉交わさずとも、やることは変わらんがな……貫け氷柱」
ピシッ…ゴシャッッ! パラパラ…
魔導師「……居ない。消えた…わけではない。転移術式か……いや、これは…」クルッ
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:48:30.10 ID:ZzSoyYueO
符術師「……させません」
魔導師「符術……そうか、符術で引き寄せたか」
魔女「(奴には人間の魂までをも束縛する力がある。それが発覚した時から、覚悟はしていた)」
魔女「(剣士さんの姿で王女様を襲撃し、戦士さんの姿で聖女さんを襲撃した)」
魔女「(精霊にそのことを聞いた時から、覚悟はしていたはずなのに……)」
魔導師「実に優秀な仲間を持ったな」
魔導師「全員女子であり、少数ではあるが、短期間で魔術師を組織化したのは褒めてやる」
魔女「(私の先生。魔導師が、其処に立っている。それだけで、どこか喜んでいる私がいる)」
魔女「(こんな最悪な再会を、私は喜んでしまっている。褒められたことさえ、受け入れている私がいる)」
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:49:49.95 ID:ZzSoyYueO
魔導師「魔女よ」
魔導師「『そう来る』と分かっていても、人とは動揺するものだ」カツンッ
魔導師「油断などしていなくとも、入念な準備をしていたとしても、人は動揺する」カツンッ
魔導師「魔女、お前が感じているのは人間にしかないもの。躊躇い、戸惑いだ」カツンッ
魔女「(私はこの人と、魔導師と戦えるのか? 育ての親、愛する母、偉大なる師……)」
バチンッ!
魔女「…ッ、符術…師?」
符術師「魔女ちゃん!しっかりして下さい!! 考えるのは後です!洞窟から抜けますよ!!」
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:51:36.99 ID:ZzSoyYueO
魔導師「ふむ、この部屋も変わらんな」
魔女「……先生」
符術師「ッ、繋がり通せ、道を開け」ズッ
バシュッ…
魔導師「私が現れてから僅かな間に、符を設置していたのか……」
魔導師「ふむ、符術も進歩したものだな」ザッ
…カツンッ…カツンッ…カツンッ……
符術師「魔女ちゃん!魔女ちゃん!!」
魔女「……大丈夫。もう、大丈夫だよ。ごめんね」
符術師「(ッ、目が虚ろだ。これは、力を奪われた喪失感から来るものなんかじゃあない)」
符術師「(奪われたのは闘志。それを支える全てが、魔導師様の抜け殻に持っていかれた)」
符術師「(この状態で皆に指示を出すのは無理。私が何とかしないと……)」
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:52:48.03 ID:ZzSoyYueO
符術師「各自、街や都の転送陣を起動。速やかに住民を地下施設へ移動させて下さ
ゴォォォッ!!
符術師「熱ッ!!? 皆さん!大丈夫ですか!!?」
魔導師「させぬ、行かせぬ。『それ』を止めるのが、私の役目だ」
魔導師「我と我等の軍隊は、全てを壊すまで止まらん。街も、都も、命も、等しくな」
符術師「……何故、奴に囚われたのですか? あなたのような高潔な魔術師が何故!?」
魔導師「憎いからだ」
魔導師「家族奪われ、その身を穢され、天涯孤独となった娘が不憫でならん」
魔導師「魔術に縋り、私に縋り、力を求め、それでも救われることはない」
魔導師「その娘…魔女をこのようにした運命、そうさせた世界が憎い。魔女を救えぬ己が憎い」
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:55:23.46 ID:ZzSoyYueO
魔女「…………」
魔導師「魔女は、私の全てだった」
魔導師「私を師として慕い、時には私を母のように思っていたのも知っている」
魔導師「私は、その娘が愛おしかった」
魔導師「……魔女は姉上によく似ていた。才もあった。今想えば、姉上への罪滅ぼしでもあったのかもしれん」
符術師「……魔女ちゃんを苦しめる世界が憎い? だから世界を壊す?」
符術師「それは魔女ちゃんをも壊すことだと、分かって言っているのですか?」
魔導師「…………」
符術師「魔女ちゃんを『こんな目』に遭わせているのは他ならぬ、あなたです」
魔導師「……こうしている間にも、着実に命は奪われていく。お前の安い言葉が、時間を無駄にしたのだ」
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:57:20.28 ID:ZzSoyYueO
符術師「……いえ、必要な時間でした」
魔導師「なに?」
符術師「綱引き地に縫え」カッ
ズシッッ…
魔導師「…ッ…符を、這わせていたか」
符術師「風術隊!全速力で空を走れッ!! 陣の起動を最優先ッ!!!」
『了解!!』
魔導師「……符は、起動するまで魔力を発しない、だったか。符術の利点を生かしたな」
魔導師「今行ったのは、精々二十名足らず。オークは千を超える。足りると思うか?」
符術師「戦えば負けるでしょうね。でも、彼女達が行うのは陣の起動のみ」
符術師「それさえ済めば、地下施設への避難は完了します。戦う必要はありません」
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:59:05.28 ID:ZzSoyYueO
魔導師「避難出来る人間が残っていればな」
符術師「…………」
魔導師「その顔、符術師とはいえ感じているのだろう?」
魔導師「膨大な数の魔が、地の底より這い出、人の世を埋め尽くすのを」
符術師「(侮っていたわけじゃないですけど、こんなに多いとは思いませんでしたね)」
符術師「(この場に居るのが魔導師様だけ、というのが不幸中の幸い……)」チラッ
魔女「…ッ…ハァッ…ハァッ…」ギュッ
符術師「(とも言えないですね……)」
魔導師「何を策し、何を講じようと、程なくして人は滅ぶ」カッ
ゴウッッ!
符術師「(抜け殻とはいえ、流石は魔導師様。地に縫い付けられながら、一瞬にして焼き尽くすとは……)」
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 03:59:55.71 ID:ZzSoyYueO
魔導師「……だが、滅びを防ぐ方法はある」ザッ
カツンッ…カツンッ…カツンッ…
符術師「………皆さん、援護を頼みます」
魔導師「魔女」
魔女「!!?」ビクッ
魔導師「お前が私を殺せば、北部のオークは消える。無論、この私も消える」
魔導師「私の希望は、お前だ。勇者でなくとも、お前ならば私を殺せる」
魔女「……そんなの、嘘だ」
魔導師「信じぬか。ならば、何もせぬまま死んで逝け。私が解放してやる」ザッ
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 04:02:20.35 ID:ZzSoyYueO
符術師「水術隊!穿て!!」
ドドドドッッ!!
魔導師「…………」スッ
…フッ…シュゥゥゥ…
符術師「(……術相殺。この杖があっても力の差は歴然、半数以上の仲間が残ってるのに…)」
魔導師「魔女。既に覚悟あるものと思っていたが、期待外れだっだようだ」ザッ
カツンッ…カツンッ…カツンッ…
符術師「(全てが矛盾してる。世界を滅ぼし、そこに救いを見出すなんて……)」
符術師「(そんなの理解出来るわけがない。どうかしてる。ぐちゃぐちゃ、正に混沌……)」
符術師「(さっきの言葉は魔女ちゃんを混乱させる為なのか、魔導師様自身の言葉なのか…)」チラッ
魔女「…ハァッ…ハァッ…ッ…」
符術師「(呼吸が酷く乱れてる。このままじゃ魔術をまともに使えない)」
符術師「(今は魔女ちゃんを逃がさないと、何とか距離を……)」スッ
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 04:03:38.16 ID:ZzSoyYueO
魔導師「翼よ駆けろ」カッ
符術師「!!?」ガバッ
グサッ…
魔女「……えっ?」
符術師「がふっ…」ドサッ
魔導師「……そうだろうな。そうしてくれるだろうと信じていたぞ」
魔女「……符術師…?」
魔導師「周りの連中も邪魔だな……風切り引き寄せ切り刻め」カッ
魔女「ッ!! 先生!やめ
ヒョゥゥ…ゴシャッッ! ドサッ…ドサドサッ…
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/25(金) 04:06:13.13 ID:ZzSoyYueO
魔女「あ…うぅっ……」
魔導師「お前が招いた結果だ。指揮もせず、戦いもせず、癒やしもしない」
魔導師「まして敵を前に放心するなど、あってはならぬことだ。それは罪だ、魔女」
符術師「……罪なのは魔導師様、あなたですよ。敵として現れたこと自体、あなたの罪です」
符術師「魔女ちゃんを苦しめているのも、私達に攻撃したのも、あなたです」
符術師「まあ、今の魔女ちゃんは確かに情けないですけどね……」スッ
魔導師「今更、符を使わせると思うか」
符術師「…ゲホッ…あなたには使いませんよ。魔女ちゃんに使うんです」
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 04:07:14.49 ID:ZzSoyYueO
魔女「…………」
ガシッ…
符術師「ッ、魔女ちゃ
魔女「風、敵を彼方に吹っ飛ばせ」カッ
ズオッッッ!!
魔導師「ぐッ!!?」
魔女「……符術師、今治す」スッ
魔女「傷が深いから、ちょっと時間掛かると思うけど、じっとしてて」
符術師「魔女ちゃん…」
魔女「ごめん。でも、もう大丈夫。もう分かったから、もう大丈夫だよ」
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 04:08:07.01 ID:ZzSoyYueO
符術師「えっ?」
魔女「考えてみれば当たり前のことなんだ。苦しいのは私だけじゃない」
魔女「苦しみは比べるものじゃないけど、誰もが傷を抱えて生きてる」
魔女「それは聖女さんと話して、痛いくらい理解した。どんなに苦しくても、生きてる限り戦う」
魔女「何かを犠牲にしても守らなきゃならないものがある。何があっても、戦うよ……」
魔女「…って、この話は何度もしたよね」
符術師「……私のことは、もういいです。だから、早く逃げて下さい」
符術師「吹っ飛ばせたみたいですけど、時間はありません。早く、逃げて……」
魔女「もう少し、もう少しで塞がる……」
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 04:09:10.55 ID:ZzSoyYueO
魔導師「やっと分かったか」
…ザッ…
魔女「…………」
魔導師「どうした、あれで終いか」
魔導師「お前の力はそんなものか。私の育てた弟子は、その程度で終わるのか?」
魔導師「私を救えるのは、この憎悪を消し去されるのは、お前だけだ」
魔導師「お前にしか私を殺せない。勇者だろうと、私を救うことは出来ない」
魔導師「仲間など何の役にも立たん。私にとっての希望は、お前なのだからな」
魔女「……心配しなくても、もう大丈夫です」
魔女「あいつに囚われた先生の魂は、私が絶対に救い出してみせますから」ザッ
ザッ…ザッ…ザッ…
『何を犠牲にしても、守らなきゃならないものがある』
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 04:12:33.65 ID:ZzSoyYueO
符術師「犠牲? ッ、魔女ちゃん待っ
魔女「我が望みを捧げる。契約を果たせ」ガヂッ
魔導師「……炎、か」
魔女「(体が変わっていく。いや、肉体ってものに囚われない存在になっちゃうのか……)」
魔女「(人として、女として生きられないということ。しあわせすら燃やして手にした炎か)」ヂリッ
魔女「……それでもいい。もう、決めたんだ」
符術師「……魔女ちゃん…ッ…何で!何でこんなことをするんですか!!」
符術師「魔女ちゃんを『あんな風』にさせたのも、救う為だとでも言うんですか!!」
魔導師「奴に魅入られ、魔女が舞台に立った時から、こうなる運命だった。それだけの話だ」
魔女「こうなる運命だったとしても、これからの運命なら変えられる」
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/25(金) 04:18:14.69 ID:ZzSoyYueO
魔導師「(体が真白に…光炎か)」
魔導師「(星の輝きのようにも見える。あれが、姉上の目指した姿……魔術師の答え)」
魔女「あの時、先生が私の運命を変えてくれたように、運命は変えられます」スッ
魔導師「(火球か、速度もなく小さい。風で逸ら……いや、あれは何かが違う)」タンッ
ヂッ…ヂヂヂッ…ゴッッッ!!
魔導師「…………」ゾクッ
魔女「(指先くらいの火球で、あれか。考えて使わないと巻き込んじゃうな)」
魔導師「……何を捨てて、その力を得た」
魔女「取り返しの付かない、後悔してもしきれないもの。私が夢見た『しあわせ』です」
魔女「何がどうなろうと、何を失おうと、私はこの舞台から降りない」
魔女「しあわせを奪う絶望と戦うって、理不尽に抗うって決めたから」
60 :
◆4RMqv2eks3Tg
:2016/11/25(金) 04:19:32.72 ID:ZzSoyYueO
また明日
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/11/25(金) 04:34:29.19 ID:ZzSoyYueO
【救いたければ手を汚せ】
【1】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1463238880/
http://www.kyodemo.net/sdemo/r/v_news4ssnip/1463238880/
【2】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1473263217/
http://www.kyodemo.net/sdemo/r/v_news4ssnip/1473263217/
62 :
◆4RMqv2eks3Tg
[saga]:2016/11/26(土) 00:35:08.55 ID:tRPk/B7zO
>>>>>>>
少女は不気味な声によって目を覚ました。
意味は理解出来なかったが、死ねだとか滅びだとか、口にしてはならない言葉を発している。
まだ4歳ではあるが、それが悪い言葉、汚い言葉であるというのは理解出来た。
絶望による世界への宣誓が終わった頃には、少女を挟んで眠っていた両親と兄も起きていた。
「これから外に出るから、すぐに着替えなさい」
いつもの声、優しい父の声。
「夜はあぶないから、出ちゃダメなんだよ?」
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/26(土) 00:37:32.50 ID:tRPk/B7zO
夜は、おっかない怪物が出る。
少女は父に、そう聞かされていた。
少女の父は温厚な人物だが、決まり事や約束事に関しては徹底して厳しかった。
朝昼晩の飯時も、起きる時間も寝る時間も決まっている。
そんな父が夜に出掛けると言うのは、どうにも納得出来ないらしい。
そんな娘に対し、父は困ったように頬を掻き、娘の頭にぽんと手を置いた。
「今日は良いんだ。今日は特別な日なんだよ」
「ほら、窓の外を見てごらん。隣のお家の明かりが見えるだろう?」
「あ、ほんとだ」
言われるままに窓を見ると、確かに隣家には明かりがあった。
雪も、ちらほら降っている。
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/26(土) 00:41:38.62 ID:ttGbVCZ/O
乙
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/26(土) 00:43:26.30 ID:tRPk/B7zO
「夜は冷えるから、帽子と手袋は忘れないように。」
「私は下で待っているから、母さんと一緒に着替えなさい」
そう言うと、父は着替えを持って寝室を後にした。
既に着替えを終えた兄を連れて。
「お母さん、今日は何があるの?」
「今日は、お散歩の日なの。さっきの声は、その合図」
「ほら、早くしないと遅れちゃうよ?」
「……うん、わかった」
何が起きようとしているかなど分からない少女は、いつも通りに着替えを済ませ、いつも通りに服を畳む。
「お母さん、ちゃんとたたんだよ」
「うん、上手に出来たね。偉い偉い」
これも、いつも通りのやり取り。
しかし、母の手は僅かに震えていた。
母は帽子と手袋を被せると、娘の手を取り、二人の待つ一階へ下りる。
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/26(土) 00:45:02.51 ID:tRPk/B7zO
父と兄は、窓から外を観察している。
少女は階段を下りながら、何かが窓を横切ったのを見た。
同時に、何かがぶつかったような、弾けたような音も捉えた。
はっきりとは見えなかったが、灰色で毛むくじゃらの何かだ。
右手には小さな風船のような、何か丸いものが握られていたようにも見えた。
気になったのは、結び糸ではなく、風船そのものを握っていたこと。
少女は、それが少しばかり気になったが、深く考えることはなかった。
きっと何かの準備中で、あれは着ぐるみか何かだろうと、そう思ったからである。
それよりも気になるのは、父と兄が窓を布で覆っていることだった。
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/26(土) 00:50:31.25 ID:tRPk/B7zO
少女には知る由もない。
灰色の毛むくじゃらがオークであることも、握られていた風船が、引き千切られた頭部であることも。
この家族、花屋一家は、完全に出遅れた。
一家全員の準備が済んだ頃には、街の様相はがらりと変貌していたのだ。
魔女の前に魔導師が現れたと同時、北部にある村から都に至るまで、灰色の獣、オークが埋め尽くした。
オーク。
破壊することしか出来ず、破壊する物しか作れず、それだけを無上の喜びとする生物。
元はエルフともドワーフとも、日光を浴びず堕落した種族とも言われている。
埃被ったような灰色の体毛、背が歪み小柄な個体が多いが、鈍重ではない。
鉤爪は容易く人体を引き裂き、裂けた口から覗く牙は、骨を粉砕する。
言語は用いるが、話が通じるような相手ではない。勿論、人間が敵うような相手でもない。
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/26(土) 00:52:27.02 ID:tRPk/B7zO
布に覆われた窓の外。
雪降りしきる街の中で、人々の命はオークの手によって次々と奪われていく。
悲鳴を無視して、懇願哀願を無視して、オークは嬉々として人体を破壊していく。
鋸、斧、鉞、鶴嘴、棍棒、鎌。様々な道具で、様々な殺しを愉しんでいる。
絶望が口にした通りの有様だった。
杖がなければ歩けぬような老婆も、親に抱えられなければ動けぬ赤子だろうと関係ない。
老若男女関係なく、等しく無惨に殺されている。
街の至る所で悲鳴が響き渡る。
その頃には、少女も気付いていた。
何が起きているのか分からないが、とても怖いことが起きているのだと。
少女は母の胸に顔を埋め、母は少しでも悲鳴を遮るようにと、娘をきつく抱き締めた。
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/26(土) 00:54:48.09 ID:tRPk/B7zO
一方、父と兄は焦っていた。
街全体に施した転移の陣は完全済み。街の住民全員の血液も採取済み。
血液認証により、住民以外が転移することはない。後は、魔術師が陣を起動するのみ。
しかし、いつまで経っても魔術師は来ない。避難場所への転移も始まらない。
予定通りに行かないとは分かっていても、外から聞こえる悲鳴が、焦りと怖れを生んだ。
だが、安堵している部分もある。
「(外に出ずとも転移は出来る。外に出ていたら、おそらく私達も……)」
「(あのやり取りがなければ、私達は間違いなく死んでいた)」
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/26(土) 00:56:23.29 ID:tRPk/B7zO
事実、彼の家族は運が良かった。
娘を納得させる為に時間を割いてしまったことが、結果的に家族を救ったのである。
絶望による宣誓によって混乱した人々は、心理的に逃げようとした。
恐怖から逃れようとするのは当然だ。
彼もまた、家族に着替えるように言い、外へ出ようとした。
火災や地震が起きた時と同じ。
『このままでは危険だ。急いで、家の外へ出なければ』
しかし、街を襲っているのは天災ではなく、オークという名の異形の生物。
あらゆる物を破壊する、意思ある災厄。
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/26(土) 00:58:43.59 ID:tRPk/B7zO
「(彼等も、外に出なければ助かったのかもしれない)」
そう、待つだけで良かった。
しかし、住民の多くは自らオークの前に姿を晒してしまったのである。
何処にも逃げる必要などないのに、多くの住民は逃げてしまった。
彼の家族は、その住民達に救われたと言えるだろう。
オークは目の前の、逃げ惑う獲物を追うことに気を取られた。
隠れた獲物より、見える獲物。より確実に、より楽に殺せる方を、オークは選んだのだ。
しかし、それも束の間。
次第に悲鳴の数は減っていき、家屋を破壊する音が響き渡る。
次は隠れている者の番だと言わんばかりに、激しい破壊音が街全体を包んだ。
72 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/26(土) 01:01:39.80 ID:tRPk/B7zO
彼の家族は身を寄せ合った。
祈りはしなかった。ただ、待っていた。
少女の両親は我が子を抱き締め、魔術師が陣が起動することを待っている。
一方、少女とその兄である少年は、たった一人の男を待っていた。
「おにいちゃん、ゆうしゃは来てくれるかな……」
「ああ。きっと、きっと勇者さんは来てくれる」
召喚士から街を救い、神聖術師から魔術師を救い、北部を救った男。
勇者ならば、きっと来てくれるはず。
二人は勇者を信じて待った。
何の根拠もないが、勇者を想うだけで、気持ちを強く持てる気がした。
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/26(土) 01:03:27.89 ID:tRPk/B7zO
だが、彼は来ない。
現れたのは、最も怖れていたモノ。
「こっち に 居るぞ」
扉を叩き割り現れたのは灰色の獣。
濁った眼が獲物を捉え、低く嗄れた声が仲間を呼んだ。
続けて発音することが出来ないのか、ぶつぶつと、途切れ途切れに声を発している。
父親が、裏口から出るように叫んだ。
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/26(土) 01:05:33.86 ID:tRPk/B7zO
しかし、何もかもが遅かった。
オークの鉤爪が母親の服を引き裂き、背中の肉を抉る。
大量の血飛沫が壁を染めた。
母は、それでも子供達を抱き締めた。悟られまいと、必死に声を圧し殺して。
いよいよだと意を決して、父は扉を塞ぐオークに思い切り体をぶつけた。
僅かに怯んだ隙に、普段の彼らしからぬ声で、子供達に急いで逃げるよう叫ぶ。
母はゆっくりと腕を解き、二人の我が子に微笑みかけた。
「先に行きなさい。大丈夫、大丈夫よ。父さんも母さんも、後から行くから」
「振り向かないで走るの。さあ、早く」
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/26(土) 01:07:42.98 ID:tRPk/B7zO
兄は涙をぐっと堪え、泣き出す妹の手を握り走り出した。
オークを抑え込んでいる父も、穏やかな顔で笑っている。
腕を噛み砕かれているにも拘わらず、僅かでも安心させるように笑って見せた。
「走るぞ。走るんだ」
少年は父を見て一度立ち止まったが、母の言い付け通り、振り向かずに走り出そうとした。
しかし、妹がへたり込んで動かない。
隠れる場所がないかと辺りを見回すが、灰色の怪物がそこら中を彷徨いている。
既に数体が、兄妹の姿を捉えている。
少年は妹を引っ張るが、ずるずると引き摺られるばかりで、立つことが出来ない。
化け物は、もう其処まで迫っている。
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/26(土) 01:10:31.18 ID:tRPk/B7zO
少年は歯を食いしばった。
両親が道を開いてくれたのに、このままでは自分も妹も殺されてしまう。
じゃり…じゃり…
化け物の足音が近付く。恐怖で顔を上げることすら出来ない。
諦めたくはないが、諦めざるを得ない。
少年は妹を抱き締めた。
せめて一緒にと、そう思ったのだろう。
一歩、足音が近付く。一歩、足音が近付く。もう、すぐ其処にいる。
少年は一段と強く、妹を抱き締めた。
その背後でオークは嗤う。
そして、身を寄せ合う人間二匹に、躊躇うことなく棍棒を振り下ろした。
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/11/26(土) 01:11:43.09 ID:tRPk/B7zO
また明日
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/26(土) 01:19:07.46 ID:ttGbVCZ/O
乙
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 00:02:30.73 ID:FHyQmHZuO
少年はぎゅっと瞼を閉じて、背後から迫る死を覚悟した。
自分達二人をまとめて押し潰す大型の棍棒が、風を切って迫っているのが分かる。
その音が、やけにはっきりと聞こえる。
『死の瞬間って、ゆっくりに感じるんだってさ』
ふと、友達から聞いた言葉が脳裏を過ぎった。
少年は「ああ、これがそうなのか」と、迫る死から逃避するように思考を巡らせる。
次第に現実が遠退き、音も消えていく。少年は、最も安全な己の深層へと潜った。
時が加速したかのように目まぐるしく駆け巡る思考の中、少年は自身を恥じていた。
目の前で妹が泣いているのに、未だに勇者の訪れを待っている自分がいる。
80 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 00:03:19.89 ID:FHyQmHZuO
それが、堪らなく情けなかった。
この涙を止めるのは、この小さな手を引いて走るのは、妹を守るのは、兄である自分の役目だ。
最初から、そうするべきだった。
そうしていれば、何かが変わっていたはずだ。
死ぬことは避けられないとしても、もう少し生きる時間を引き延ばせたかもしれない。
腕の中にすっぽりと収まる幼い妹を抱き締めながら、少年は酷く後悔していた。
もし、もし次があるのなら。
絶対に妹を助けてみせると強く誓い、少年は涙を流す。
何があろうと決して諦めず、妹の為、家族の為に命を賭けて抗ってみせる。
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 00:05:06.13 ID:FHyQmHZuO
父のように母のように。
或いは、妹が慕う青年。
口に出したことはないが、自分の憧れでもある青年、勇者のように。
もし、もし次があるのなら。
少年の思考は、そこで停止した。
頭上で鳴り響く金属と金属の衝突音が、少年を現実に呼び戻したのだ。
続けて金属を弾く甲高い音が、くぐもった化け物の悲鳴が、すぐ傍で聞こえた。
がらんがらんと、武器が落ちたような音がする。
化け物は「腕が腕が」と叫んでいる。
どうやら、何者かが化け物の腕を切り落としたようである。
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 00:07:06.20 ID:FHyQmHZuO
喚き散らす化け物に対し、応答はない。
次の瞬間、雪積もる地面の上に、何かが倒れる音がした。
自分の背後で何が起きたのか少年には理解出来なかったが、一先ず助かったようだと胸をなで下ろす。
妹を胸に抱いたまま恐る恐る振り向いた。見えたのは人間の脚、黒い外套の裾。
少年は思い切って顔を上げ、誰であるのか確かめようとしたが、それより先に声が届いた。
「随分と遅くなってしまったけど、助けに来たよ」
それは、二人が待ち望んだ声。
二人が想い描く英雄そのものであり、勇者と呼ばれる青年の声。
最早、誰であるかなど確かめるまでもない。二人は彼に飛び付いた。
彼は屈んで受け止めると、かたかたと震える二人を、そっと抱き寄せた。
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 00:08:30.11 ID:FHyQmHZuO
「もう、大丈夫だから」
二人は彼の胸に顔を押し付け、涙を流しながら何度も頷いた。
家族、両親という拠り所を失った小さな手が、彼を離すまいと力を込める。
彼には、二人の想いが痛いほどに分かった。
育て親であり、兄と慕った男を失った時の自分と、あまりに似ていたからである。
彼の胸を痛めるのは、それだけではない。
二人を助けることは出来たが、失われた命は、あまりに多かった。
オークに惨殺された人々の遺体が、そこかしこに見受けられる。
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 00:10:04.00 ID:FHyQmHZuO
遺体と分かる遺体は、数える程しかない。
大半は無惨に引き千切られたか、噛み千切られたかしている。
頭部のない遺体であろうと、何かを訴え、悲痛苦痛の叫びを発しているように見えた。
全てを救うことなど不可能であり、甚大な犠牲は出るものと覚悟していた。
それでも尚、もう少し早く到着していればと、そう考えずにはいられない。
だが、今は彼等の死を悼む時ではない。
今すべきことは、死を悼むことではなく、目の前にある命を救うこと。
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 00:12:26.89 ID:FHyQmHZuO
徹するべきだと、哀悼自責の念を断ち切る。
絶望はこうした惨状を見せ付けることで、世界を巻き込むことで、彼を揺さぶっているのだ。
救える力がありながら救えぬ己を憎むがいいと、そう言っている。
絶望は、たった一人を壊す為に、世界を人質に取ったのである。
それを理解しながら、彼は冷静だった。心は痛むが、乱され揺れ動くことはない。
彼もまた、盗賊や魔女同様に何かを決意しているようだった。
だからこそ、以前の彼ならば考えられない程に、冷静でいられるのだろう。
「魔術師のお姉さん達が転移の陣を起動する為に頑張ってる。もう少しだ」
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 00:16:56.19 ID:FHyQmHZuO
二人が落ち着いたのを見計らい、声を掛ける。
その言葉に反応し、先に顔を上げたのは、少女の方だった。
今更ではあるが、異変に気付いたようである。
「ねえ、なんで、こんなに明るいの?」
月夜にしても眩しすぎた。
そして、何故かは分からないが、灰色の怪物達が一様に悶え苦しんでいるのだ。
少女は眩い光に目を細めながら、彼に訊ねる。そこで初めて彼の顔を見た。
あの日に見た優しい笑顔が、目の前にある。
抱き締められて少しは落ち着いたものの、少女には拭い難い恐怖が残っていた。
それは当然のことなのだが、彼の顔を見たことで、一先ずは安堵したようだ。
それは、傍らで目を擦る少年も同じだった。
潤んだ瞳には、僅かながら光が戻っていた。
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 00:21:12.34 ID:FHyQmHZuO
彼は微笑みながら、天を指差した。
「目が慣れてから、ゆっくり見上げてごらん」
「……んっ。あれは、たいよう?」
「そう、小さな小さな太陽だ。あれは、魔女のお姉さんが運んでくれたんだ」
「灰色の怪物達は光に弱い。あれが、君達を守ってくれたんだよ」
あの光球は、花屋の家族がオークの襲撃を受ける間際、魔女によって打ち出された。
この街の真上に定着したのは、兄妹がオークによって命を奪われる寸前のことである。
二人は俯き抱き締め合っていた為に、それに気付くことはなかった。
ただ、光球によってオークは怯んたものの、振り下ろされる棍棒の勢いが失われることはなかった。
怯んだ一瞬の間に、勇者が割って入ったのである。
あの光球がなければ、二人を助け出すことは出来なかっただろう。
88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 00:25:35.26 ID:FHyQmHZuO
「そろそろだ。陣が起動する」
術式起動の影響か、街全体が僅かに揺れる。
地面に刻まれた陣が淡く浮かび上がり、ぐるりぐるりと回転し始めた。
「……ゆうしゃ、お父さんとお母さんは?」
「母さんは、父さんと一緒に後から来るって言ってたろ?」
何も言えずにいた勇者を見て、彼を困らせるわけにはいかないと、少年が口を開いた。
兄として男として、強がるならここしかない。ここは、勇者に頼るわけにいかない。
再び泣きそうになる妹を宥め、どんと胸を叩き、俺がいるから大丈夫だと笑って見せる。
釣られて泣き出しそうになるのをぐっと堪えながら、いつもの兄を演じてみせた。
これが、少年に出来る精一杯のこと。
89 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 00:26:54.30 ID:FHyQmHZuO
「ほら、勇者さんにお別れ言っとけ」
「……うん。ゆうしゃは、これからどうするの? いっしょにこないの?」
「僕はこれから、魔女のお姉さんの所へ行く。だから、一緒には行けない」
「友達も頑張ってるから、僕はもっと頑張らないと駄目なんだ」
「そっか……また、あえるよね? だいじょうぶだよね?」
子供は勘が働く。
勇者から滲み出る並々ならぬ決意や覚悟を、少女は感じ取ったのかもしれない。
90 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 00:33:42.90 ID:FHyQmHZuO
「勿論、また会えるよ」
「この夜が明けたら、きっとまた会える。だから、大丈夫」
にこりと笑いながら、勇者は嘘を吐いた。
おそらく最初で最後になるであろう、優しい嘘。
少年は、それが嘘であると気付いた。
彼の笑顔は、母が自分達を逃がした時と全く同じ類のものだったからである。
だが、自分に何かが出来るわけもない。
妹の手前、問い質すことなど出来るはずもなかった。
「勇者さん、頑張って。俺、一生懸命応援するから」
だから、少年も笑顔で応えた。
心配させないように、枷にならないように、安心して行けるように。
勇者は微笑み返すだけで、何も言わなかったが、少年はそれだけで充分だった。
自分の気持ちは伝わったと、そう思ったからだろう。
「そろそろ、お別れだね」
回転が収まると、二人の体が陣と同様に淡く輝き始めた。
91 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 00:37:32.92 ID:FHyQmHZuO
「ゆうしゃ、またね」
「勇者さん、またね」
少女は名残惜しそうな顔で手を振って、少年は「妹のことは任せて下さい」と呟いた。
「……またね」
それに応えて手を振ると、二人共に笑った。罪悪感はあったが、後悔はない。
その後間もなく、魔術師によって生存者の転移は完了し、二人は消えた。
「……さっきの嘘、上手く言えたかな」
ぽつりと呟くと、彼は遺体とオークだけとなった街から姿を消した。
敬愛する師との望まぬ戦いを強いられた友の元へと向かったのだろう。
ふわりと舞い落ちる雪の中に何かが混じり、降り積もる真白に重なった。
それは真白の中でも際立つ、純白の羽だった。
92 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/11/27(日) 00:39:34.12 ID:FHyQmHZuO
ちょっと休憩 もうちょっと書きます
93 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/27(日) 01:25:00.95 ID:DTpPxGMGo
待ってるで
94 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 02:01:55.97 ID:WxNGm69NO
>>>>>>
魔導師「正しい判断だ」
魔女「…ハァッ…ハァッ…」
魔導師「人を癒す魔術師にあって、実に正しい判断だと言える」
魔導師「だが、それだけに疑問だ」
魔導師「光球など放たずとも、その力で私を殺せば済むというのに、何故そうしない?」
魔女「…ハァッ…ハァッ…」
魔女「……単純に、力を手にしたからといって、簡単に倒せる自信がなかったから」
魔女「それに、先生を殺してオークが消える保証もない。だから『ああする』しかなかった」
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 02:07:47.32 ID:WxNGm69NO
魔導師「それで、その様か」
魔導師「光球の維持に力の大半を割き、満足に攻撃することも出来ない。そして……」ダッ
魔女「ッ、くっ…」フラッ
ヒョゥゥ…ザシュッッ!
魔導師「風を付与して斬り付ければ燃焼が激しくなり、再び維持に力を割く」
魔女「…ハッ…ハァッ…」
魔女「(やっぱり、良いとこだけじゃない。精霊曰く、完璧なんてない、だっけ)」
魔導師「見ろ、戦うことすら儘ならぬ」
魔導師「いい加減に諦めたらどうだ? 救える命など限られている」
魔女「………」ピクッ
魔導師「……街はそうでもないが、都では暴動が起きているようだな」
96 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 02:12:39.25 ID:WxNGm69NO
魔女「暴動?」
魔導師「お前が生み出した光球はオークの動きを止めた」
魔導師「だが、北都の人間は何をしていると思う?」
魔女「…………」
魔導師「分かっているのだろう?」
魔導師「お前の考えている通りだ。北都の人間は、無抵抗のオークを虐殺している」
魔導師「槍に刺したオークの首を掲げ、狂ったように『人間の勝利だ』などと叫んでいるよ」
魔導師「愚かだとは思わぬか。これでは、どちらがオークなのか分からん」
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 02:14:34.74 ID:WxNGm69NO
魔女「……狂わせたのは、あんただ」
魔導師「いいや、狂ったのは人間だ」
魔導師「我と我等は『きっかけ』を与えたに過ぎない。後は勝手に堕ちていくだけだ」
魔導師「知性ある狂った獣。それが本性、人間の本質なのだ。救う価値などない」
魔女「……やっぱりね」ヂリッ
ボゥッッ…ドドドドドッッ!
魔導師「なッ!?」
魔女「……なる程ね。こういうのも『あり』なんだ。段々、分かってきた」
魔導師「(あの火球の数は何だ…隠していた? いや、確かに枯渇していたはずだ)」
魔女「この子達に、何が宿っているか分かる?」
98 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 02:20:05.47 ID:WxNGm69NO
魔導師「…………」
魔女「これは憎悪や憤怒から生まれた炎なんかじゃない。これは、魔術師としての信念」
魔導師「信念、信念だと? 今更なにを言うかと思えば…」
魔女「うっさいな。あんたが先生なら、さっきみたいなことを言うはずがない」
魔女「自分を犠牲にしてまで魔術師を救おうとした人間が口にする言葉じゃない」
魔導師「まだ、私が偽物だと思っているのか?」
魔女「……あんたが本物だけど、本物じゃない。先生の魂を穢して歪めた『何か」だ」
魔女「……まあ、我ながら気付くのが遅すぎたとは思うけど…」
魔女「それにあんたは、魔術師として決して言ってはならないことを口にした」
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 02:22:50.09 ID:WxNGm69NO
魔女「燃えろ。似非」ヂリッ
ドッッッッ!!
魔導師「!!?」
魔導師「(全ては避けられん。軌道を逸らして最小限に抑える他ない!!)」カッ
ヂッ…ゴッッッ!!
魔導師「ぐッ…」
魔導師「(侮っていたわけではないが、この威力は予想を遥かに超えている)」
魔導師「(厄介な力だ。力に慣れる前に、何とかして消さねばならん)」ググッ
魔女「やっぱり、あんたは私の先生じゃない。私の先生なら、今の炎で傷付くわけがない」ザッ
魔導師「そう思いたいだけではないのか? 私が私であることは、既に分かるだろう」ガリッ
100 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 02:25:31.70 ID:WxNGm69NO
魔女「そうだね、分かるよ」
魔女「姿、振る舞い、話し方、記憶や性格。それらは先生のものかもしれない。でも、違う」
魔導師「……何が違うと?」ガリガリ
魔女「あんたは、人間に救う価値はないと言った。そんなこと、先生が言うはずがない」
魔女「人を癒すべく生まれた魔術師が人間を見捨てたら、誰が人間を癒す?」
魔女「私達が魔術師が…人間が人間を見捨てたら、この世は終わりだろうが」
魔導師「人間は、既に終わっている」ガリッ
魔女「終わらせないよ。人間も、魔神族も終わらせない」ザッ
101 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 02:27:48.39 ID:WxNGm69NO
魔導師「入ったな」
魔女「入った?」
魔導師「相変わらずだな。優位に立つと、必ず隙が生まれる」
魔導師「いつぞやの訓練中、結界に閉じ込められたのを忘れたか?」
魔女「ッ、陣か!!」
魔導師「もう遅い!!!」カッ
バヂッ!ヂヂヂヂヂッッ!!
魔女「ぐッ…うあッ!!?」
魔導師「その陣は風を供給し続ける」
魔導師「そのまま燃えろ。全てを巻き込んで燃え尽きるがいい」
魔女「……勝ち誇ってるとこ悪いけど、詰んでるのはあんたの方だ」
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 02:30:07.50 ID:WxNGm69NO
魔導師「何を言って
魔女「攻撃する為だけに、あれだけの炎を撃ち込む必要はない。私は待ってただけ」
魔女「あんたの意識が私だけに向くことを、ずっと待ってた」
『火術隊、完了』
『水術隊、準備出来たわ』
『土術隊、いつでも行ける』
魔導師「!!?」
魔女「私が放ったのは生命の炎。ようやく、ようやく皆を癒やせた」
魔女「陣を停止して私を自由にするか、陣を維持したまま皆にやられるか。どっちがいい?」
魔導師「(陣を解除して距離を…ッ…な、なんだ…脚が動かん…まさか!!)」
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/27(日) 02:37:40.83 ID:WxNGm69NO
符術師「所詮は抜け殻ですね」ザッ
魔導師「ぐッ!!」
符術師「同じ手に二度も引っ掛かるなんて、魔導師様ならあり得ませんよ」
魔女「まあ、どっちにしろ……」ザッ
符術師「やることは決まってます」ザッ
魔女「総員!!思いっきりぶっ放せッッ!!!」ヂリッ
ゴゥッッッッ!!!
符術師「………まだ、ですね」
魔女「うん。まだ、終わってない」
ゴォォォォ…ヌッ…ザリッ…ザリッ…
魔導師「…ま…じょ……まじょ?」
符術師「(……酷い)」
魔女「……先生」
魔導師「ま…じょぉぉォォッ!!!」
魔女「ッ、慈悲の怒り、浄火よ、先生に取り憑く穢れを焼き尽くせ」ヂリッ
ドッッ…ゴォォォォォッ!!!
魔導師「ぎッ…がぁ…ま…じょ……」
魔女「……さよなら、先生……」
104 :
◆4RMqv2eks3Tg
:2016/11/27(日) 02:39:33.89 ID:WxNGm69NO
また明日
105 :
◆4RMqv2eks3Tg
[saga]:2016/11/28(月) 00:15:48.67 ID:AvNE7CqXO
「ま、じょ…」
驚くべきことに、魔導師は立っていた。
浄火の炎は未だに燃えており、魔導師の体は火達磨であるにも拘わらず、しっかりと立っている。
これ以前、火水土の三術による集中攻撃、更には魔女の火球に耐えたことも奇跡と言える。
だが、奇跡は二度続かない。
総攻撃を耐え、魔女の炎が直撃しているのに耐えるなど不可能である。
「(何故、生きていられる)」
魔女は仲間を下がらせ、注意深く観察する。
あの炎は、穢れを焼き尽くまで燃え続ける。本来であれば消し炭になっているはずだ。
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/28(月) 00:20:55.70 ID:AvNE7CqXO
「ま、じょ…」
驚くべきことに、魔導師は立っていた。
浄火の炎は未だに燃えており、魔導師の体は火達磨であるにも拘わらず、しっかりと立っている。
火水土の三術による総攻撃、更には魔女の火球に耐えたことは奇跡と言える。
しかし、奇跡は二度続かない。
総攻撃を受け、魔女の炎も直撃した。だが、焼かれながらも生きている。
「(何故、生きていられる)」
魔女は仲間を下がらせ、注意深く観察する。
あの炎は、穢れを焼き尽くまで燃え続ける。本来であれば消し炭になっているはずだ。
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/28(月) 00:27:21.04 ID:AvNE7CqXO
「(穢れが、燃え尽きていない?)」
穢れが生きているからこそ、炎は燃え続けている。
なら、穢れとは何か。
師の魂が穢れているなどとは、弟子である彼女には到底思えない。
あれは師であり、師ではない。
世界を憎み、絶望に囚われたのが事実だとしても、あれは別の『何か』だ。
そうでなければ、あんなことを言うわけがない。
魔女は悩んだ末、一時だけ炎を消すことにした。
不可能を可能にしている存在、その正体を突き止める為である。
焼け爛れた姿など見たくはなかったが、魂を解放するには、どうしても知る必要がある。
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/28(月) 00:29:08.49 ID:AvNE7CqXO
「(あれが、先生の魂を束縛するものの正体か……)」
焼け落ちた肉が不気味に蠢き、焼け爛れた肉体に戻ろうとしている。
ぶよぶよと浮き上がった黒い肉塊は、穢れと呼ぶに相応しいものであった。
憎悪や嫉妬、未練を練り合わせたような、何とも言えぬ粘着性と醜さがある。
それがのろのろと這いずり、足下から体に纏わり付くと、肉と皮膚に変貌した。
剥き出しの胸骨の奥に見える『淡い輝き』を逃がさぬように。
魔女は確信した。
あの輝きこそが師本来の魂であり、肉体を構成する黒い何かが、師を束縛しているだと。
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/28(月) 00:32:41.10 ID:AvNE7CqXO
同時に、もう一つの事実が浮かび上がる。
魔導師は「自分を殺せば、同時にオークも消え去るだろう」と言った。
更に「自分を殺せるのは魔女しかいない」とも言った。
それが偽りであることが、今此処に証明されたのである。
「……ふざけんな」
魔女は怒りを露わに、再び火球を放った。
敬愛する師の魂が利用されていることは勿論、死ぬことすら許されず絶望に囚われている。
身を焼かれる苦しみを延々と与えられ、藻掻き苦しんでいる。
魔女は、その『耐え難い苦しみ』を与えている存在にも苛立ちを隠せなかった。
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/28(月) 00:42:04.09 ID:AvNE7CqXO
「(自分の師を、育ての母を燃やすなんて最低だ……)」
「ま、じょぉ、あづい、あづい…たのむ、やめ…でくれ」
「(先生、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ…)」
それは、他ならぬ自分。
自分の力では安息に導くことは出来ず、苦しみを与えることしか出来ない。
体を焼き続けることで足留めをし、勇者を待つことしか出来ないのだ。
それもまた、苦痛だった。
勇者でなければ、師を救えない。
偉大な師であり最愛の母でもある魔導師を、最愛の男である勇者が殺す。
こんなことがあっていいのか、許されるのかと、魔女は炎の威力を増した。
師を救いたい、早く終わらせてやりたいと願いながら、力を込める。
しかし、黒の塊が胸部に集中するのみで、それ以上の効果は見られない。
もしかしたらと思ったが、やはり無駄だった。
与える痛みが強くなるばかりで、黒い塊が燃え尽きる気配は一向に見られない。
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/28(月) 00:45:31.18 ID:AvNE7CqXO
魔女は歯噛みした。
他にやりようはない、勇者が来るまで燃やし続ける他にない。
自分の名を繰り返し呼び続け、のたうち焼け爛れる恩師を見続けなければならない。
「(絶望の化身、襤褸の男。これが、お前のやり方か)」
様々な感情が綯い交ぜになり、泣けばいいのか怒ればいいのかも分からない。
瞳からは涙を模した炎がとめどなく流れ、唇は真一文字に固く結ばれている。
泣くまいと堪えているようだが、涙は一滴、また一滴と零れ落ちる。
魔女の涙は地面を焦がしながら、悲しげな音を立てて消えていった。
それを見ていた符術師は、魔女もまた、炎に焼かれているようだと思った。
これ程まで救いたいと願いながら救えず、愛する男性に要らぬ重荷を背負わせる。
魔女の心中は、どれだけの苦痛と悲痛に曝されているのだろう。
それを想うと、符術師の胸は酷く痛んだ。
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/11/28(月) 00:47:36.66 ID:AvNE7CqXO
短くて申し訳ない
寝ますまた明日
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/11/28(月) 00:48:17.51 ID:AvNE7CqXO
今日はここまで、短くて申し訳ない
寝ますまた明日
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/28(月) 02:38:44.10 ID:bvqSeAbJO
乙
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/28(月) 02:59:49.35 ID:Ybh2kIgrO
「(何で…)」
「(何で、こんなことになっちゃったんだろう)」
燃える涙を流しながら悲痛に喘ぐ友を見て、符術師はそう思わずにはいられなかった。
周りの仲間も同じ想いであろうことは、顔を見ずとも感じることが出来た。
魔女が何をしたというのだ。
過去に受けた傷を癒した恩人を、母と慕った師を、何故苦しめなければならないのだ。
一体何故、このような仕打ちを受けなければならないのだ。
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/28(月) 03:01:40.70 ID:Ybh2kIgrO
同期する一の杖が、かたかたと震えている。
何も言えぬ所持者達の代わりに、杖が訴えているようだった。
皆が一様に顔を伏せ、超高熱に焼かれる魔導師の姿から目を逸らす。
符術師も目の前の光景を直視出来ず、堪らず目を逸らしてしまった。
「かッ…は…」
魔女が、短く息を漏す。
異変に気付き目を戻すと、魔導師と魔女が重なっていた。
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/28(月) 03:04:40.19 ID:Ybh2kIgrO
一瞬。
正に、一瞬の出来事だった。
其処には、炎に身を焼かれながら魔女の胸に右手を突き刺す魔導師の姿があった。
骨だけになった右手が、容赦なく体内を掻き回す。
眼窩には闇があるばかりで、頭蓋骨が歯を鳴らして嗤っている。
最早、肉体とは言えない。
誰がどう見ても、人骨が動いているようにしか見えない。異様である。
肉の大半は焼け落ちており、ずるりずるりと地面を這っている。
胸部に寄せ集められた肉塊が、異様さを際立たせている。
仲間達が体を引き剥がそうと魔力を練った瞬間、髑髏が声を発した。
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/28(月) 03:06:33.00 ID:Ybh2kIgrO
「動くな。動けば、魔女が死ぬぞ」
「我と我等、絶望とは魂を砕くもの。これも嘘だと思うならば、やってみるがいい」
挑発的だが、自信に満ちた声。
一体どのようにして発声しているのかは分からないが、酷く耳障りで呪詛を含んだ声であるのは確かだ。
符術師は符を這わせていたが、魔女の炎は生きている。焼かれれば終わりだ。
穢れ焼き尽くす炎と言っていたから、符は除外されるかもしれないが、魔女自身の炎は分からない。
符が焼け、中に込めた魔力が外に出てしまえば、魔女は殺されてしまう。
故に、賭に出るのは躊躇われた。
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/28(月) 03:08:54.50 ID:Ybh2kIgrO
「魔女よ、都の光球を消せ」
「断る」
魔女は気丈にも睨み返し、凜然とした態度で髑髏に立ち向かう。
髑髏は、いつでも魔女を殺すことが出来る。
そうしないのは、生み出した炎が魔女の死によって消滅するのか判断出来ない為である。
髑髏は空の眼窩が忌々しげに睨み付けると、魔女の体内に突き刺した指先で、魂を引っ掻いた。
「ぐ…ぃッ!!」
魂を削り取られる痛みは凄まじく、あまりの激痛に、魔女の体が大きく跳ねる。
一度、二度、髑髏は繰り返し魔女の魂に爪を立て、手出し出来ずにいる周囲の仲間を嘲笑う。
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/28(月) 03:15:43.38 ID:Ybh2kIgrO
「(光球よりも、魔女を生かしている方が後々の面倒になる)」
「(光球など、魔女を殺害した後で破壊すれば良いだけの話だ)」
魔女は、体内で指先が妖しく蠢くのを感じた。
このまま魂を削られれば、間違いなく死ぬだろう。
魔女に魂の状態など見えないが、感覚として分かるようだ。
「(まさか、本当に命そのものを破壊出来るなんて思わなかったな)」
「(魂、命の破壊か……)」
自分の場合はどうなるのだろう。寿命を終える瞬間までは死ねないはずだ。
だが、魂を破壊されれば別かもしれない。
誰にも認識されぬ透明人間のようになって、残りの四十年五十年を生きるのだろうか。
などと考えていた時、体内から髑髏の右手が引き抜かれた。
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/11/28(月) 03:17:54.40 ID:Ybh2kIgrO
どうやら、危機を感じて飛び退いたらしい。
しかし、辺りには魔力を練っている者もいなければ、符が動いた気配はない。
ならば、一体何が髑髏を退かせたのだろうか。
周囲を異様に警戒する髑髏を余所に、魔女は一際大きな雪に目を奪われていた。
その雪は他の雪とは違い、自身の体に落ちた。つまり、炎の中に入ってきたのである。
いや、正確には雪ではなかった。
「……絶望が希望を嗅げるように、俺もお前を嗅げるんだよ」
「魔導師さんの魂は、返して貰う」
それは、今この瞬間に直滑降してくる男の背にある翼の一欠片。
穢れ無き、純白の羽であった。
髑髏は魔導師の魔術を使い迎撃しようとするが、魔女が火球を打ち出し妨害する。
勇者は勢いをそのままに頭蓋に向かって剣を振り下ろし、髑髏となってしまった魔導師を粉々に砕いた。
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/11/28(月) 03:18:57.25 ID:Ybh2kIgrO
また明日
446.51 KB
Speed:0.2
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
VIPService!]
↑
VIP Service
SS速報VIP
更新
専用ブラウザ
検索
全部
前100
次100
最新50
続きを読む
名前:
E-mail
(省略可)
:
書き込み後にスレをトップに移動しません
特殊変換を無効
本文を赤くします
本文を蒼くします
本文をピンクにします
本文を緑にします
本文を紫にします
256ビットSSL暗号化送信っぽいです
最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!
(http://fsmから始まる
ひらめアップローダ
からの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)
スポンサードリンク
Check
Tweet
荒巻@中の人 ★
VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By
http://www.toshinari.net/
@Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)