勇者「救いたければ手を汚せ」 

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625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/23(木) 01:41:50.52 ID:ewMTPUagO

特部隊長「どうした、顔色が悪いぞ?」

盗賊「……悪りぃ、俺は一緒には行けねえ」バサッ

特部隊長「お、おい、急にどうしたんだ? 何かあったのなら話してくれ。仲間だろう?」

盗賊「仲間……」

勇者『頼む生きてくれ盗賊』

盗賊『ッ!おァアアアアアアッッッッ!!』

勇者『ごめ…ん…こんなこと…させて……』

勇者『こうなることだけは避けたかった…君に…そんな顔させたくなかったのに……』

盗賊「ッ!!」ギュッ

特部隊長「盗賊?」

盗賊「俺はもう仲間なんかじゃねえ。俺は勇者を殺した。この手で、友達を殺したんだ」
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/23(木) 01:44:04.15 ID:ewMTPUagO

特部隊長「なっ!!?」

盗賊「勇者の父ちゃんのこと、よろしく頼むわ。母ちゃんは魔女と一緒にいるからさ。頼んだぜ」

特部隊長「待て盗賊!! 一体何があったんだ!訳を話せ!! お前は何をーー」

盗賊「じゃあな、隊長さん。助けてくれてありがとよ……」

バサッ…ヒュォォォォ……

特部隊長「ッ、何がどうなっている。あいつが、盗賊が勇者を殺しただと?」

盗賊『ガキ共の中に銃持ってる奴がいてさ、あいつは俺を庇って撃たれたんだ』

盗賊『しかも『早く逃げて』なんて言いやがった。俺はもう訳が分からなくて、その場で泣いた』

盗賊『誰かと連むことは何度かあったが、裏切られたことはあっても救われたことは一度もない』

盗賊『俺を初めて救ってくれたのが、あいつなんだよ……』

特部隊長「いや、有り得ない。そんな馬鹿なことがあるはずがない。盗賊、お前に何があったんだ………」
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/23(木) 02:13:58.83 ID:1Wbv/56RO

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王女「魔女さん、ありがとうございました」

魔女「……ううん、これくらいしか出来ないから。もう大丈夫?」

王女「ええ。ですが、わたくしが眠っている間に世界が裂けなんて…俄には信じられません」

王女「大地震に見舞われたというのに、何故わたくしは目を覚まさなかったのでしょう……」

魔女「(やっぱりだ。勇者に関わる記憶が消えてる。都合良く、改竄されている)」

魔女「(王女様を目覚めさせる為、勇者は自分に関する記憶を消した……)」

魔女「(どうやったのかは分からないけど、勇者が王女様の記憶を消したのは確かだ)」

魔導師「……………」

魔女「(先生もさっきから黙ったままだし。何があったんだろ?)」
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/23(木) 02:18:23.25 ID:1Wbv/56RO

王女「あの、魔女さん」

魔女「……へっ? どうしたの?」

王女「これは何です?これも魔女さんが?」

魔女「それは……」

王女「?」

魔女「(それは、勇者が王女様の為に編んだ組み紐。勇者、何で?何でこんなことをしたの?)」

魔導師「……魔女、話がある」

魔女「?」

魔導師「(娘の愛する男の死を伝える。それが、この夜最後の仕事か。気が滅入るな……)」

魔導師「(勇者よ、お前は確かに世界を救った。だが、お前を待つ者はどうなる?)」

魔導師「(これではあまりに救われない。残るのは悲しみと悔恨だけだ)」

魔導師「(責めはしない。しかし、お前自身が救われなければ皆も救われないのだ……)」
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/23(木) 02:43:26.14 ID:AkPmxC3dO
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魔導師「魔女」

魔女「あ、先生。王女様は……」

魔導師「王女は東部へ送り届けた。疑問はあるようだったが、一先ずは心配ないだろう」

魔導師「それから、主だった地下施設も無事のようだ。北部の仲間もお前を待っているぞ?」

魔女「……………」

魔導師「……魔女」

魔女「……私なら大丈夫です。もう少し、盗賊が来るのを待ちます」

魔女「あいつなら、何がどうなったのか、勇者がどうなったのか知っているはずですから」

魔導師「……そうか」
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/23(木) 02:46:38.48 ID:AkPmxC3dO
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魔女「もう、こんな時間だ……」パカッ


魔女「グスッ…盗賊の奴、遅いなぁ…まったく、何やってんだろ……」


魔女「……あんたまで帰って来なかったら、この先どうすればいいのか分かんないよ……」


631 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/23(木) 02:49:07.09 ID:AkPmxC3dO
 
 
 
 
 
 
勇者「救いたければ手を汚せ」





絶望と希望編 完

632 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/23(木) 02:52:58.86 ID:xCYYwjhDO
乙?
633 : ◆4RMqv2eks3Tg [saga]:2017/02/23(木) 02:54:58.19 ID:AkPmxC3dO
読んでくれた方、レスしてくれた方、本当にありがとうございます。
約一年に渡り、本当にありがとうございました。これで終わります。
634 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/23(木) 03:03:25.67 ID:Sc8+dgV0o
>>633 乙!
週末はもう一度最初から読み直すかな
635 : ◆4RMqv2eks3Tg [saga]:2017/02/23(木) 03:20:15.59 ID:AkPmxC3dO
【関連】
勇者「救いたければ手を汚せ」1
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1463238880/
勇者「救いたければ手を汚せ」2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1473263217/
勇者「救いたければ手を汚せ」3
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1480007826/
勇者「救いたければ手を汚せ」短編
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1475602616/
636 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/23(木) 03:34:14.66 ID:AkPmxC3dO
これはこれで完結ですが、続きは既に考えてて書く予定です。
出来ることなら全部書きたいですが凄まじく長くなりそうなので困ったもんです
前スレは小ネタ書いて埋めて、このスレにも小ネタ書いて終わりにします
637 : ◆4RMqv2eks3Tg [sage]:2017/02/23(木) 03:38:46.22 ID:AkPmxC3dO
これはこれで完結です。続きは既に考えてて書く予定です。

出来ることなら全部書きたいですが凄まじく長くなりそうです
前スレは小ネタ書いて埋めて、このスレにも小ネタ書いて終わりにします

一晩の出来事がこんなに長くなるとは思ってませんでした。
指摘質問矛盾があったら宜しくお願いします。寝ます。
638 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/23(木) 13:31:29.73 ID:TaOZTxMzO
一年間お疲れ
俺も勇者ss書いてるけどいつもコンスタントに上がってくるこのスレは途中からチラチラ覗いてた
最初から読んでみるわ
こんだけ長いssを完結させたこと自体が称賛に値するよ
本当に乙
639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/24(金) 20:47:45.93 ID:jyn8OuhIO

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僧侶「僧侶、只今帰還致しました」

『よく戻りました。勇者様は御無事なのですか?』

僧侶「……現在は、現世から離れております」

僧侶「おそらく、度重なる戦と絶望の牙によるものが原因ではないかと……」

僧侶「これは私の至らなさ故、如何なる処罰をも受け入れる覚悟は出来ています」

『物質界からの解放。それもまた、告げです』

僧侶「ですがーー」

『僧侶よ、お前は傷付きを怖れず、魔の者共と戦い抜いた。それが『今』に繋がったのです』

『数多の困難を乗り越え、よく帰りました。勇者様は我々と共に在る。胸を張りなさい』
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/24(金) 20:48:28.70 ID:jyn8OuhIO

僧侶「あ、ありがとうございますっ…」

『僧侶よ、帰還したばかりで疲労は抜けないでしょうが、まだ終わりではありません』

僧侶「はい、承知しております。私は何すれば宜しいのですか?」

『急ぎ、教徒を聖堂へ』

『夜が明ける前に再臨の儀を行わねばなりません。皆で祈り、皆で迎えるのです』

『静寂、至善なる者、朝日を背に光輪の輝きに満ち、我等に来たりて我等の中に在り……』

『この告げは皆も存じているところでしょうが、再臨の儀は厳粛に執り行わなければなりません』

僧侶「承知しております」

『宜しい。では僧侶、儀を行う前に洗礼の間で勇者様の御身に触れた穢れを拭き取りなさい』

『穢れを取り除いた後は聖布で覆うのです。身も衣も無垢であらねばなりません』
641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/24(金) 20:49:23.88 ID:jyn8OuhIO

僧侶「そ、そのような大任を私に?」

『何か問題が?』

僧侶「その、私のような者でよろしいのですか?他に相応しき者がいるのではないでしょうか……」

『貴方の他に誰がいると言うのです』

『僧侶よ、お前は共に立つ者。お前こそが相応しき者。卑下せず、自覚と自信を持ちなさい』

僧侶「……自覚と、自信…」

『魔を行使する戦士であり、告げに従う敬虔な信者。矛盾や後ろ暗さを感じ、己を責める心……』

僧侶「っ!!」ギュッ

『お前の気持ちはよく分かります。ですが、なればこそ、誇りを持つべきなのです』

『神を愛し、告げに従い、自らの務めを果たし、そうあるべく全うしなさい』

僧侶「は、はいっ!では、行って参ります!」ザッ
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/24(金) 20:51:25.64 ID:jyn8OuhIO

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洗礼の間

勇者「……………」

僧侶「(綺麗な顔…まだ少年のような、あどけなさがある。肌も白くて、まるで……)」スッ

僧侶「(っ…私は一体何を……)」

僧侶「(これは穢れを祓う清めの儀。見惚れている場合じゃない!しっかりしないと!)」

勇者「…………」

僧侶「(ま、まずは服を脱がさないとですね。勇者様、失礼します)」

スルッ…ファサッ……

勇者「…………」

僧侶「(っ、凄まじい。腕や胸、腹部、至る所に傷痕がある。切り傷、刺し傷、元素火傷)」

僧侶「(貴方はこんなにも傷付きながら、他者の為に絶えず戦い続けていたのですね……)」

僧侶「(一瞬とは言え、あのような邪な感情に流された自分が恥ずかしい)」
643 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/24(金) 20:53:14.84 ID:jyn8OuhIO

僧侶「(お身体、お拭きしますね……)」

ギュッ…フキフキ……

僧侶「(次は背中を拭かないと…んっ! 案外、重いです)」

僧侶「(土術の手で支えれば楽なのでしょうが、清めで魔を扱うなど言語道断……)」

僧侶「(何とかして起こさないと。そうだ、首に手を回して一気に…んっ、ん〜っ!)」

僧侶「ハァッ…ハァッ…結構、大変ですね…」

フキフキ…

僧侶「(服の上からではほっそりして見えたけれど、鍛練によって引き締まった身体をしている)」

僧侶「(広い背中、厚い胸板、逞しい腕、しなやかな指、鍛え抜かれた脚。重いわけです……)」

僧侶「(男性の裸…すべてを見るのは初めてだ。けれど、羞恥や嫌悪は一切感じない)」

僧侶「(先ほどのような邪な感情も湧かない。こうしているだけで、不思議と満たされる)」

僧侶「(この方に尽くせるのなら、この方の傍らに立てたなら、どれだけ幸せだろうか……)」

ギュッ…フキフキ…

僧侶「(指先、足先、爪…これで、全て綺麗に出来ましたね。後は聖布を被せて……)」ファサッ

勇者「…………」

僧侶「……勇者様、お疲れ様でした。さあ、参りましょう」
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/25(土) 00:54:48.99 ID:ptB8pPTxO

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静寂と灯りがあった。

聖堂からは元素を含めた魔術に関連付けらる一切が廃されており、光源は揺らめく蝋燭の炎のみ。

集った数百人の信者は一様に跪き、瞑目し、栄光と導き、その顕れを祈っている。

教皇、枢機卿、司教といった者も例外ではない。

祈りの先にある者は蓮華を象った台座にあり、その身に彼等彼女等の祈りを一身に受けている。

断続的な地響きと吹き荒れる風が硝子窓を鳴らしたが、怖れを感じる者はなかった。

ただひたすらに静寂を貫き、ただひたすらに顕れを待ち、ただひたすらに願った。

長時間に渡り膝を突いていた為に膝から血を滲ませる者もいたが、意に介した様子はない。

教皇は予め信者の体調を考慮し、祈りは強制ではないとしていたが、聖堂から去る者はなかった。

一つたりとも願いの灯火は欠けることはなく、静寂の時だけが流れるのみである。

燭台の蝋燭が四度入れ替えられた頃には、地響きは収まり、荒ぶる吹雪も止んでいた。
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/25(土) 00:56:51.82 ID:ptB8pPTxO

月は過ぎ去り、夜明けが近付いていた。

時期は真冬、本来であれば朝日など拝めるはずもない。だが、告げを信じる彼等彼女等には確信があった。

より厳密に言うならば、見えていた。瞑目しながらにして見えていた。

幾百幾千幾万、それ以上の願いが光の粒となり彼を包み込む様が見えたのである。

それは輝きの繭のようであり、揺り篭のようでもあり、母胎のようでもあった。

光の内側も光に溢れ、その姿は母の海で眠る赤子のようにも見えた。

ゆららかな黒髪は輝く銀髪へと変わり、数多の戦によって刻まれた傷痕は跡形もなく消えた。

願いのままに、想いのままに、彼は成る。

皆が母であり、皆が父であった。

望まれし者、望まれるままにある者は、母胎、形無き願いによって新たな肉体を得たのである。

いつしか願いは愛へ変わり、愛は存在へ変わり、存在は奇跡となった。
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/25(土) 01:03:53.64 ID:ptB8pPTxO

そして遂に、彼は再臨した。

空を覆っていた暗雲を切り裂き、大いなる朝日が降り注ぐ、彼は目映い光を放ち、其処に在った。

光の海、母から生まれ出たばかりの身体には羊水があり、油を塗られているようにも見えた。

超然としながらも愛に満ちた表情であり、光を背に光を放っている。

誰もが息を呑み、誰もが涙した。

その姿は、すべてが望み、すべてが想い描いた救世の主そのもの。

暫しの静寂。

彼は眩い朝日を背に、皆に微笑みかけるようにしてゆっくりと言葉を紡いだ。

「見よ。日は昇り、夜は明けた」

「見よ、僕は確かに此処に在る」

「偽りなき者として、導く者として此処に在る。さあ、共に行こう。人の世、安息の千年を」
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/25(土) 01:10:27.88 ID:ptB8pPTxO

 
 
 
 
勇者「救いたければ手を汚せ」







救世主再臨編

 
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/25(土) 01:12:05.24 ID:ptB8pPTxO
本編はここまで後は小ネタ書きます
649 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/25(土) 01:18:22.43 ID:ptB8pPTxO

【夢を】

想いは永久に消えず。

恋い焦がれながら愛を伝えることは叶わない。

彼が誰と結ばれようと諦めることは出来ず、この時計の針が何周しようと忘れることはない。

彼以外と家庭は作れない、彼と家庭を築くことは出来ない。

私は永遠に彼のことを想い続け、その想い遂げられることなく生を終える運命にある。

どんな人間にも、許されていることがある。

抱きしめる腕を失い、共に歩く脚を失い、姿映し出す瞳を失い、愛する人の声を捉える耳を失おうとも……

人は諦めること、忘れることを許されている。

私はそれを失った。自ら手放した。

夢は夢を忘れさせないように、諦められないように、一定の周期で私に幸せを見せる。
650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/25(土) 01:19:42.43 ID:ptB8pPTxO

夢を夢だと気付くことはない。

そこにあるのは、愛する人とのしあわせな家庭。あれほど夢見た、しあわせな家族だ。

傍には彼と、彼と私の子供が寝息を立てて眠っている。

私は少しだけ二人の寝顔を眺めて、今日の幸せな朝を実感するんだ。

何も特別なことはない、ごくごく普通の朝。

だけど、私にとっては最高の朝。

今日の朝が来た幸せを噛み締めて、それから二人を起こして朝ごはんを作る。

瞼を擦る二人の姿が微笑ましくて愛おしい。こんな朝を毎日迎えられることが嬉しくて堪らない。

子供を着替えさせている彼を見ながら配膳を済ませて、三人で「いただきます」を言う。
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/25(土) 01:21:02.80 ID:ptB8pPTxO

毎日ご飯を作るのも楽しみの一つ。

食べ終えた後は食器を洗い、それから休む間もなくお弁当作り。彼も息子も手伝ってくれる。

息子が手伝ってくれたお陰で、お弁当が出来上がるのが少しばかり遅れてしまった。

けれど、それさえも楽しくて、それさえも嬉しくて仕方がない。

うん、今日もいい日だ。

洗濯物を干しながら空を見上げる。どうやら太陽の機嫌は良さそうだ。

きっと、今日も最良の日になるだろう。

目的地はなく、三人で行きたい場所へ行く。

右に彼、左に私、その真ん中で我が家の中心が、愛しい我が子が笑ってる。

今日の天気が雨だろうと晴れだろうと、二人がいれば毎日が最良になるのだと、私は思う。
652 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/25(土) 01:23:00.23 ID:ptB8pPTxO

……夢は、そこで終わる。

最高の夢が、悪夢に変わる瞬間だ。

右手にはあの子の小さな手の感触、確かな温もりが残っている。

この夢を見るたびに涙が溢れる。

何度目だとか関係なく、家族を失う悲しみには到底耐えられそうにない。

失うも何も、これは夢。本当に何かを失ったわけじゃない。

それは分かっている。初めから家庭なんてないことも分かっている。

けれど、胸が張り裂けるような喪失感が容赦なく襲い掛かってくる。

その痛みが落ち着いた後で、私はいつもこう思ってしまう。

もしかしたら、あの夢こそが本来辿るべき未来だったのではないかって……

まあ、埒の明かない妄想想像だけどさ……

一つだけ確かなことは、私が望むものは夢の中でしか手に入らないということ。

現実では決して手に入れることの出来ないもの。

あの日に夢見た、私のしあわせ。
653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/25(土) 01:24:34.32 ID:ptB8pPTxO

現実に彼はいない。

此処に息子ははいない。

もう一度眠れば、あの夢の続きが見られるだろたうか。

もう一度眠れば、この痛みから解放されるのだろうか。

それが無理だってことは分かってる。だって、私がそうさせないようにしたんだから。

差し出した代価は、私のしあわせ。

幸せは幸せを忘れさせない為に、私に夢を見せる。夢を諦めさせないように夢を見せる。

失った痛みを忘れさせないように、私に幸せな夢を見せているのだろう。

瞼を閉じれば二人の笑顔が浮かび、耳を澄ませば二人の笑い声が聞こえてくるような気がした。

幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ辛い幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ。


こんな感じで、『つらい』って奴はいきなり来るから怖いんだ……
654 : ◆4RMqv2eks3Tg [saga]:2017/02/25(土) 01:29:59.64 ID:ptB8pPTxO
救世主編に続く感じで一旦終わります。
前スレは埋めるの面倒なので依頼出します。こっちはどうするか分かりません。
レスありがとうございました。
655 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/25(土) 22:56:48.66 ID:yZkaePJuO

【現実の人】

『ふぅ、この辺りも随分と良くなったなぁ』

『諦めずやってきた甲斐があった。まだ実を結んだとは言えないが、住むには問題ないだろう』

『それもこれも、魔術師の方々があってこそだ。あっちこっち飛び回って大変だろうに……』

『思えば、あの子達には随分と酷いこをとしてしまった。何とも罪なことを…』

『理解しようともせず黒魔術だ何だと騒ぎ立てて、あの夜もそうだ。俺達は、醜いな……』

『それでも我々を見捨てず見放さず、今でも世話になりっぱなしだ。まったく、頭が上がらんよ』

『……ほら、休憩は終わりだ。さっさと終わらせようぜ。オレたちは生きてんだ』

『醜い姿ばっかり見せちまったが、醜かろうが何だろうが生きてる以上は進むしかねえ』

『……そうだな、私達に止まってる暇はない。少しでも、あの日から進もう。少しでも…』

『………ああ、そうだな』
656 : ◆4RMqv2eks3Tg [saga]:2017/02/26(日) 01:10:48.09 ID:HEFKgcJsO

【怖れる者共】

『オークだ!オークが来たぞ!』

『くそっ!家だって直したばかり、畑だって耕したばりなのに!!』

『……此処は捨てよう。こうなれば逃げるしかない。せめて、女子供を先に逃がすんだ』

『だ、駄目だ!囲まれてる!!奴等、森に潜んでやがったんだ!!』

『……終わりだ…もう終わりだ…ひっ、ひぃっ』

ドッッ!ゴシャッッッ!!

『な、なんだ? オーク共が…吹っ飛んだ?』

『あ、あれは誰だ?この村にあんな奴は…』

『誰だろうが関係ない!あの数に一人で挑むなど無謀だ!!早く助けなければーー』

ゴゥッ…グシャッッッ!!

『ば、馬鹿な!鎧ごと砕きやがった!!な、何なんだアイツは……』

『大剣じゃあない。あれは、槍か?』

『……違う。ありゃあ金砕棒だ。あんなもんを振り回す奴は、一人しかいない』
657 : ◆4RMqv2eks3Tg [saga]:2017/02/26(日) 01:15:09.38 ID:HEFKgcJsO

『なら、あいつがーー』

ドッッ!ゴギャッッッ!!!

『悪鬼狩り、砕き人、噂には聞いていたが、まさか、あんな若者だったとはな』

『何でも子供の頃に、目の前で両親をオークに殺されたらしい。確か、妹も殺されたとか……』

『以来、オークを殺し続けてると?』

『完全種なのか?』

『いや、俺達と変わらない人間…らしいが、あれを見ると俄には信じられないな』

『何とも荒々しい男だ。しかし、復讐か…人の身で異形種に挑むなど無謀としか……』

『そうでもない。事実、彼は今も生きている。きっと、本気でオークを滅ぼすつもりなんだ』

『……骨肉を砕き、臓腑撒き散らして血の花を咲かす者。『散華師』とも呼ばれているらしい』

『散華師……』

散華師「これは、この棍棒はお前等の武器だ。俺を殺そうとした武器だ」

散華師「お前等の武器で、お前等を滅ぼす。最後の一匹まで打っ潰してやる」

ドガッッ!グシャッッッ…ボタボタッ…

散華師「怖いか、オーク共」

散華師「お前等にも、あの夜の恐怖を教えてやる。死の恐怖ってやつを思い知って、死ね」
658 : ◆4RMqv2eks3Tg [saga]:2017/02/26(日) 01:32:50.43 ID:HEFKgcJsO
しばらくは短いやつを書くと思います。
続きは新しいすれ立てようかと思ってます。
659 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 02:48:21.72 ID:FXefCp5DO

660 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/27(月) 07:31:54.17 ID:84ph0RqlO
もう終わりでいいよ
661 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/28(火) 22:13:24.68 ID:jeVdcHeKO
長い割にラストが雑だからモヤモヤしかない
662 : ◆4RMqv2eks3Tg :2017/03/05(日) 00:11:53.23 ID:7lE0NY3IO
続きはもう少し固まったら書きます
長くなると思いますがよろしくお願いします
663 : ◆4RMqv2eks3Tg :2017/03/05(日) 00:13:09.99 ID:7lE0NY3IO
続きはもう少し固まったら書こうと思っています
長くなると思いますがよろしくお願いします
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 02:09:19.17 ID:UlQN72DDO
おk待ってる
665 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/12(日) 22:34:08.46 ID:sBycP4vxO
理解できない
666 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 10:06:54.20 ID:QdS2ZyByo
地下街だのオークだのが出てきてから目が滑って内容が入ってこなくなった
それまでが引き込まれる文章であっただけに残念
667 :ゴンベッサこと先原直樹の悲惨な末路 [sage]:2017/06/17(土) 17:17:03.53 ID:rXwgI9MH0
http://i.imgur.com/zqI2Qlo.jpg
先原直樹・ゴンベッサ

都道府県SSの痛いコピペ「で、無視...と。」の作者。

2013年、人気ss「涼宮ハルヒの微笑」の作者を詐称し、
売名を目論むも炎上。そのあまりに身勝手なナルシズムに
パー速、2chにヲチを立てられるにいたる。

以来、ヲチに逆恨みを起こし、2017年現在に至るまでヲチスレを毎日監視。
バレバレの自演に明け暮れ、それが原因で騒動の鎮火を遅らせる。

しかし、自分はヲチスレで自演などしていない、別人の仕業だ、
などと、3年以上にわたって稚拙な芝居でスレに降臨し続けてきたが、
とうとう先日ヲチに顔写真を押さえられ、言い訳ができなくなった。

2011年に女子大生を手錠で監禁する事件を起こし、
警察に逮捕されていたことが判明している。

先原直樹・ゴンベッサ まとめwiki
http://www64.atwiki.jp/ranzers/
668 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/20(木) 22:24:59.57 ID:ShPQyBZ0O
読んでくれた方、改善点などあればお願いします
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/20(木) 22:42:33.16 ID:ud7oKpbIO
話の流れは好き
場面が移り変わる瞬間がわかりづらかった気がした
670 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/21(金) 00:46:19.51 ID:Za+ZoZszO
>>1です
場面の移り変わりが急なのでしょうか
自分でもそこら辺が難しいと感じているのでちょっと考えてみます
ありがとうございます
671 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/21(金) 01:39:20.92 ID:714TczeW0
長い
必要ない展開が多い
何が書きたいのかわからない
672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/21(金) 07:02:11.26 ID:x8MLqoahO
>>1です
必要のない展開とはどの辺りでしょうか? 教えてくれるとありがたいです
673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/21(金) 21:23:05.63 ID:SJ/CSXpoo
というか酉つけなよ忘れたの
674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/02(月) 18:42:46.48 ID:tgxsRy7WO
古都キシュエナはラヤタハ山脈を越えた先にあるとされる
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