八幡「神樹ヶ峰女学園?」

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206 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/01(水) 19:01:24.16 ID:LWoZdRAE0
番外編「星守センバツ試験I」


サドネ「おにいちゃん!」

若葉たちが出るや否やサドネがこちらへ走り寄って来た。

八幡「次はサドネたちか」

サドネ「うん!サドネ、頑張るよ!」

そんなサドネの後ろから粒咲さんと楠さんの姿も見える。

あんこ「ふふ、腕が鳴るわ」

明日葉「やけにやる気だなあんこ」

あんこ「当然よ。ゲーマーとしてこの試験、ハイスコアを出さないことには終われないわ」

サドネ「ハイスコア?」

八幡「ようするに一番になるってことだ」

サドネ「サドネ、一番になっておにいちゃんに褒めてもらいたい!」

明日葉「そうだな。ではそのために戦略を練ろう」

あんこ「ふふ、もうワタシの中で最適解は出ているわ」

明日葉「さ、さすがだなあんこ」

あんこ「今回のキーマンは、、、サドネよ!」

サドネ「サドネが、キーマン?」

あんこ「そうよ。あのレーザーを出すスキルを中心に、ワタシと明日葉がそのサポートをする、それが最適解よ」

明日葉「それで勝てるのか?」

あんこ「勝てるわ!これまで数えきれないゲームをクリアしたワタシがたどり着いた必勝法よ。間違いないわ」

サドネ「アンコ、かっこいい」

明日葉「私は異存はないが、サドネはどうだ?」

サドネ「サドネも大丈夫」

あんこ「なら早速殲滅しにいくわよ!」

そういって粒咲さんと楠さんは試験会場に向かうが、サドネは俺のそばから離れない。

八幡「どうしたサドネ、試験受けないのか?」

サドネ「おにいちゃんと一緒に受ける」

八幡「あー、今回はダメなんだ。俺がいると試験の邪魔になるからな」

サドネ「うにゅ…」

そんな残念そうな顔をされてもなぁ。どうしようもないんだが。

八幡「ま、俺はここで待ってるから。頑張ってこい」

サドネ「うん!」

明日葉「先生、私たちのこと、忘れてませんか?」

そう言う楠さんのほうを見ると、明らかに不機嫌そうな顔をしている。俺何かしたっけ?

八幡「いえ、別に忘れたりなんてしてませんよ?」

明日葉「なら、私たちにも励ましの言葉をかけてください!」

八幡「え?」

あんこ「そ、そうね。ワタシも欲しいかな…」

八幡「マジですか…」

まぁ、サドネにだけってのも不公平か。でもまさかこの2人がこんなことを言うなんて、なんか意外、だな。

八幡「…楠さん、粒咲さんも頑張ってきてください」

俺が言い終わるとほぼ同時に2人はサドネを抱えて試験会場に走っていった。なんなんだよ一体…
207 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/02(木) 17:28:38.18 ID:dI3Q46/t0
番外編「星守センバツ試験J」


さて、しばらくあいつらは帰ってこないだろうし、なんか眠くなってきたな…

「おにいちゃん!おにいちゃん!」

…なんか、声が聞こえるな。小町か?

サドネ「おにいちゃん!」

八幡「うおっ、早いな」

あんこ「速攻でクリアしてきたわ」

明日葉「あんこ、一応試験なのだからゲームみたく言うのはどうかと思うぞ…」

あんこ「倒すべき敵がいて、その撃破タイムまでスコアになるのならもうそれはゲームよ!」

サドネ「サドネもゲームみたいで楽しかったよアンコ!」

八幡「ま、何はともあれイロウスを倒せたんならいいんじゃねぇの?つかお前ら倒すのめちゃめちゃ早くないか?」

あんこ「だから言ったでしょ。ハイスコアを出す必勝法があるって」

ドヤ顔でそういうことを言う人、秋山深一以外に初めて見たぞ…

風蘭「まったく、アンタたちには驚かされたよ」

明日葉「御剣先生」

サドネ「サドネたち、すごい?」

風蘭「あぁ、もう脱帽だよ」

八幡「スコアは何点だったんですか?」

風蘭「スコアは、6964点だ!」

明日葉「高得点ですね」

八幡「高得点なんてもんじゃないですよ。4チームの中でダントツだ」

サドネ「おにいちゃん、サドネ頑張ったでしょ?」

八幡「あぁ、すごいなお前ら」

あんこ「ふふ、ワタシにかかればこんなものよ」

八幡「さすがっすね、粒咲さん」

あんこ「へ、あ、ありがとう…そ、そんなはっきり褒められると恥ずかしいわ…」

八幡「え?」

あんこ「な、なんでもないわ!」

明日葉「しかし、ほんとうに私たちのスコアは圧倒的に見えますね」

風蘭「そうだな。サドネのスキルはもちろん、明日葉とあんこがうまくサドネをサポートできたからこそのスコアだな」

あんこ「ということは、これで賞品にはかなり近づいたわね」

サドネ「賞品!」

八幡「そうかもしれないですけど、他のチームのスコアのスコアにもよりますから。まだわからないですよ」

明日葉「そうですね。全チームが力を出し切らないことには賞品も手に入らないでしょう」

風蘭「あぁ、まだ2チームあるからな。最後までどうなるかはわからん」

サドネ「おっしたら早く次のチーム呼んでこないと!」

明日葉「よし、行くか」

あんこ「ワタシそうは言っても疲れたんだけど…」

明日葉「ダメだ。あんこも一緒に行くぞ」

サドネ「じゃあおにいちゃん、バイバイ!」

明日葉「次のチームに声かけてきます」

あんこ「じゃ…」
208 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/02/02(木) 17:34:26.44 ID:dI3Q46/t0
訂正

誤…サドネ「おっしたら早く次のチーム呼んでこないと!」

正…サドネ「そしたら早く次のチーム呼んでこないと!」
209 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/03(金) 01:10:44.94 ID:MhyLBX1v0
番外編「うららの誕生日前編」


今日2月3日は蓮見の誕生日である。ずっと前から蓮見にはこの日を空けておくように言われ続けており、俺は律儀にも言われた通り予定を入れず、放課後に1人教室に残って蓮見を待っている。べ、別に単純に予定が入らなかったんじゃないからね!勘違いしないでよね!

うらら「はっちー何ブツブツ言ってるの…」

顔を上げると蓮見がジト目になってドア付近で俺を見ていた。

八幡「お、おぉ、いるならいると一声かけてくれ」

うらら「いや、さすがにあんなひどい目つきしながら独り言つぶやいてる人には、うららでも声かけづらいかな〜って…」

八幡「俺の目をそれ以上悪く言うのはやめてくれ、さらに腐る」

うらら「それ以上腐るの?」

八幡「いい加減にしろよ…つか、これからどこ行くんだよ」

うらら「言ってなかったっけ?今から視聴覚室に行くよ!」

八幡「視聴覚室?そんなとこで何するんだよ」

うらら「それは着いたらわかるわ!」

そういう蓮見についていき、俺らは視聴覚室にたどり着いた。

うらら「今からここでアイドルのライブ映像を見るわ!」

八幡「ライブ映像?」

うらら「そう!うららの大好きなCOLO GIRLSの伝説と言われるライブよ!」

八幡「…それは俺と一緒に見ないといけないのか?」

うらら「だってはっちーアイドルの事なーんにも知らないんだもん。今日はうららが一から教えてあげる!」

八幡「いや、別にそんなこと頼んでないんだが」

うらら「ダメ!今日ははっちーはうららの言うこと聞くの!一緒にライブ映像見て!」

八幡「でも俺ほんとになんにも知らんぞ」

うらら「大丈夫!きっとすぐ好きになるから!」

そう言って蓮見は鼻歌を口ずさみながら慣れた手つきでAV機器を操作する。

八幡「なぁ、なんでお前ここの機器の使い方知ってんの?」

うらら「もちろんここでたまにDVDを見るからに決まってるじゃない!まぁ、この前ばれてすごい怒られたけど…」

八幡「おい、まさか今日も無断でここ使ってるのか?」

うらら「今日はちゃんと八雲先生から許可得たわよ!『うららの誕生日だしね、今日くらいはいいわ』って許してくれたの」

八幡「さいですか」

うらら「さ、準備万端!早速再生するわよ!」

蓮見は映像が始まるや否やいつの間に用意していたのかサイリウムを持ちつつ、画面を食い入るように見つめている。2時間ほどの間、時にはコールを入れ、時には画面と同じ振りをやり、とても楽しそうだった。でも、やっぱりこの場に俺いらなくね?

うらら「ふぅ、楽しかった!」

八幡「なぁ、俺はここにいる意味あったのか?」

うらら「COLO GIRLSのライブを可愛いうららと一緒に見れたんだよ、楽しかったでしょ?」

八幡「……いや、特には」

うらら「なんでよ!」

八幡「だってもともと俺そんなにアイドルに興味ないし、お前ずっと画面見ていろいろやって楽しんでたから、俺置いてぼりだったよ?」

うらら「ふーん、でもはっちー、うららのことはちゃんと見ててくれてたんだ?」

八幡「え?」

うらら「だってうららがどうやってライブ楽しんでたか知ってるじゃん!」

八幡「あ…」

うらら「ま、可愛いうららのこと見ててくれてたんなら、許してあ、げ、る」
210 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/03(金) 01:15:17.46 ID:MhyLBX1v0
番外編「うららの誕生日後編」


く、こんな反応をされるとは予想外だったが、これから俺はある計画を遂行しなければならない。まずは、

八幡「さて、映像も終わったし、今度は俺に付き合ってもらうぞ」

うらら「なになに?デートのお誘い?そういうのはもっと前もって言ってくれなきゃうららスケジュールが〜」

八幡「うるせぇ…ひとまず行くぞ」

うらら「ど、どこ行くの?」

八幡「ふっ。着いてからのお楽しみだ」

そうして俺はぶーぶー文句を言う蓮見をなんとか体育館まで連れてきた。

うらら「こんなとこで何するの?」

八幡「ま、いいからひとまずステージの上に登れ」

うらら「もうっ、はちくん強引!」

八幡「いいから、早く…」

うらら「しょうがないなぁ…」

八幡「登ったな。よし、みんな出てきていいぞ」

うらら「え、みんな?」

俺の声に反応して、蓮見以外の星守クラスの生徒たちが一斉にステージの前を囲む。

うらら「み、みんな、何やってるの!?」

花音「今日はうららの誕生日だから、特別ライブがあるって言われて来たのよ」

うらら「特別ライブ?誰の?」

ひなた「うらら先輩のだよ!」

うらら「うららの?」

蓮華「先生がね、ずっと前からうららちゃんのために、今日この体育館を使えるよう話をつけてたのよ」

うらら「ハチくんが?なんで?」

心美「それは、うららちゃんのライブのためだよ!」

うらら「うららの、ライブ?」

望「ほらほら、今日はアタシたちみんなが観客だから、うららのアイドル姿を存分に見せてよ!」

ミシェル「うらら先輩のダンス、早く見たーい!」

そうして星守たち全員がステージ上の蓮見にむかって温かい声をかける。

うらら「みんな…ありがとう!うらら、最高のライブを披露するね!」

そう言い残すと蓮見はマイクをもってステージの真ん中に立つ。すると体育館全体が暗くなり、蓮見にだけスポットライトの光が当たる。手筈通り八雲先生と御剣先生がやってくれたようだ。さ、準備も整ったし、そろそろ俺は一番後ろに下がりますかね。

うらら「みんな、うららのためにこうして集まってくれてありがとう!今年の誕生日は一生忘れない!あと、ハチくん!うららの誕生日に、素敵なプレゼントありがとう!それじゃあ聞いてください『わたしたちのスタートライン!』」

光り輝くステージの上で蓮見がそれ以上に明るく、魅力的に歌い、踊る。さっき見た映像のアイドルよりも、こうして生で見るほうがよっぽどいいように思える。やっぱり一番後ろにいてよかった。俺にはこの輝きはまぶしすぎる。

…だがさっきの蓮見への答えを訂正しなくちゃいけない。今、この瞬間だけならアイドルを見るのも悪くないかな。
211 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/02/03(金) 01:17:26.72 ID:MhyLBX1v0
センバツ試験の番外編も途中ですが、ひとまず番外編「うららの誕生日」は以上で終了です。うらら、お誕生日おめでとう!
212 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/02/03(金) 01:21:24.99 ID:MhyLBX1v0
うららの八幡に対する呼び方が統一されてないのはミスです。好きな方に統一して読んでください。でも今さら、呼び方を変にしたことを少し後悔しています。「先生」のままのほうがよかったかも…
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/03(金) 06:00:30.55 ID:BKIKKcba0
まあ、すぐあだな付けるのがうららだし
立場上先生とはいえバトガの先生と違って八幡は年近いし活用してもいいんじゃない?
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/03(金) 07:46:32.04 ID:2BfPqjk9O
楓ちゃんがさいかわ
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/02/03(金) 18:03:06.73 ID:GNcS3q7DO
乙です。

うららの前で山本リンダの狙い撃ちを歌い上げてみたい。
216 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/04(土) 14:15:03.26 ID:PUYI0VyJ0
番外編「星守センバツ試験K」



花音「だから、私がメインに攻撃するからうららはサポートをしなさいよ」

うらら「うららがセンターなのは確定なの!かのかの先輩こそうららをサポートしてよ!」

次のチームの蓮見と煌上が口論しながら入ってきた。

八幡「おい、何言い合ってるんだあの2人は?」

ミシェル「むみぃ、2人とも自分がチームの中心だって言って譲らないの…」

八幡「あほらし…」

うらら「もう、そしたらハチくんに誰がセンターにふさわしいか決めてもらお!」

花音「こいつに?あんまり気が進まないけど、この際しょうがないわね」

八幡「は?いや勝手に俺を巻き込むなよ」

うらら「いいから!早く決めて!」

花音「ほら、時間もないんだからもたもたしないでよ」

なんで俺が2人から文句を言われなきゃいけないんですかね?俺全く関係ないのに…

八幡「あー、まぁこの3人でなら、中心になるのは煌上じゃないか?」

うらら「えー、なんでー」

八幡「単純にレベルが高いし、スキルも強力だし…」

花音「ま、当然ね」

うらら「くぅ…」

ミシェル「うらら先輩、一緒にサポートがんばろ?」

うらら「しょうがないわね…」

花音「ほら、これで方針は決まったでしょ?早く試験受けに行くわよ」

その時、綿木が思い出したように「あっ」とつぶやき俺に顔を向けてきた。

ミシェル「そういえば先生、点数の方はどう?」

八幡「ん?点数はすげぇ高い点とったチームもいれば、あんまりよくなかったチームもいて、この先どうなるかさっぱりわからん」

ミシェル「むみぃ、それならミミたちも頑張らないとね!」

うらら「うららたちが高得点をとって賞品ゲットよ!」

花音「そうね。それに、私が結果を出さないとあいつも罰ゲームをすることになるんだし…それはちょっとかわいそうというか…」

八幡「え?」

煌上の声が小さくてよく聞き取れなかった。特に最後のほうが。

花音「な、何よ!別にアンタのためになんて微塵も思ってないんだから!もう…うらら、ミミ、行くわよ!」

うらら「待ってよかのかの先輩〜」

ミシェル「むみぃ、早いよ〜」

煌上は俺にそう言い放って、すたすた歩いていき、それを蓮見と綿木があわてて追いかけていった。大丈夫かな、このチーム…
217 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/05(日) 13:13:06.67 ID:8OSBHRA80
番外編「星守センバツ試験L」


さっきとは打って変わってかなり時間が経ってから3人が戻ってきたのだが、

八幡「お疲れ」

花音「はぁ…」

うらら「はぁ…」

ミシェル「むみぃ…」

3人とも完全に意気消沈している。

八幡「どうした…」

花音「どうしたもこうしたもないわよ。全然ダメだったわ」

うらら「なんでこっち見ながら言うのよ!」

花音「別に見てない」

うらら「ふーん、そういう風に言うけどね、かのかの先輩だってミスしてたでしょ?うららがどれだけサポートしたか」

花音「あれはミスではないわ!わざとタイミングをずらそうとしたの。そういううららこそ何回も私の邪魔をしたじゃない!」

うらら「だってかのかの先輩がなかなか攻撃しないからうららが代わりに攻撃したの!」

ミシェル「2人とも、その辺でやめようよ…」

花音、うらら「ミミ!」

花音「あなたももっと周りの状況を把握して、自分の役割を果たさなきゃダメよ」

うらら「そうよ!もっとミミは積極的にならなきゃ!」

ミシェル「むみぃ、ごめんなさい…」

うらら「なんだかもう一度試験受けたくなってきたわ」

花音「奇遇ね、私もよ」

そう言って蓮見と煌上は綿木を置いて試験会場へ歩き出す。

八幡「おい待て、お前らそろそろ落ち着け。試験を受けなおすことなんてできないだろ」

うらら「ハチくん、これはうららたちの気持ちの問題なの!邪魔しないで!」

花音「いいこと言うわねうらら。そういうことだからアンタは口出ししないで」

ミシェル「あの、うらら先輩?花音先輩?」

うらら「ほら、ミミも行くよ」

ミシェル「あの、後ろ、見て?」

花音「後ろ?」

蓮見と煌上が振り返るとそこには御剣先生が物凄い形相で立っている。

風蘭「お前ら、その自分たちの出来に納得いかないのはわかるが、まずは現実を受け止めろ」

花音、うらら「はい…」

風蘭「それでお前たちの点数だが、1843点だ」

八幡「今のところ最下位ですね…」

ミシェル「むみぃ、悔しい…」

花音「受け入れられないわ…」

うらら「やっぱりもっと戦略から立て直さないと」

花音「じゃあ早速教室で話しあうわよ」

うらら「もちろん!」

ミシェル「ミミも!」

そう言って3人は口論しあいながらバーチャル空間を出ていった。
218 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/08(水) 11:43:40.07 ID:VdesdLfc0
番外編「星守センバツ試験M」


さ、やっと最後のチームか。なんかものすごく時間がかかったような気がするが多分気のせいだろう。そうだろう。

ひなた「やっとひなたたちの出番だよー!」

遥香「待ちくたびれましたね」

くるみ「こんにちは、先生」

八幡「おう、じゃあちゃっちゃと準備するか」

早く終わりたいしね。そろそろ飽きてきたし…

遥香「ではどのように戦いましょうか」

八幡「そうだな、まずはレベルの高い人をメインに…」

ひなた「八幡くん!」

八幡「ん?」

ひなた「イロウスなんてひなたがばばっとががっとやっつけるよ!」

八幡「…あぁ、」

ひなた「だから、ひなたがやっつけるってば!」

八幡「わかったよ…」

何回も繰り返さなくてもわかるっつうの。

くるみ「もしかしてひなたさん、自分をチームの中心にしてほしいんじゃないでしょうか」

八幡「え、そうなの?」

ひなた「うんうん!」

めっちゃ笑顔で頷かれても、こっちはわからなかったからね?

八幡「あぁー、でもなぁ…」

正直不安しかない。できれば成海か常磐に任せたいんだが、という気持ちを込めて2人を見てみると

遥香「私はいいですよ、ひなたちゃんのサポートをしますから」

くるみ「私も、ひなたさんを助けます」

ひなた「ありがとう、遥香先輩、くるみ先輩!」

八幡「お前ら、いいのか?」

遥香「これだけやる気になってるんですから、やらせてあげたいじゃないですか」

くるみ「そうですね」

なんかこの2人、大人だなぁ。まぁ2人がいいっていうならいいか。

八幡「そしたら、南がメインで、成海と常磐がそのサポートってことでいいか?」

ひなた「頑張っちゃうよ!」

遥香「わかりました」

くるみ「はい」

ひなた「遥香先輩、くるみ先輩、早く行こっ!」

遥香「うふふ、元気ねひなたちゃん」

くるみ「あの、引っ張らないでください…」

南が成海と常磐を引っ張るようにして試験会場へ連れて行った。うん、これで俺のやれることはすべて終わったな。俺の試験終了!何もしてないけど…
219 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/18(土) 14:48:52.97 ID:nu/c1HeY0
番外編「星守センバツ試験N」


八幡「遅い…」

待てども待てども2人が帰ってこない。いったいどこで何してるんだ。いや、試験を受けていることはわかってるんだが、それにしては遅すぎる。

八幡「もう帰ろうかな…」

いいよね、帰っちゃっても。だって戻ってこないんだもん。

風蘭「おい、比企谷。どこに行く」

八幡「え、いや、あの、ちょっとトイレに…」

風蘭「トイレはそっちにはないだろう。ほらまだ3人が帰ってきてないんだ。待ってろ」

八幡「でもあいつらいつまでたっても戻ってこないじゃないですか」

風蘭「もう戻って来るよ。ほら」

そう言う御剣先生の指さす先には、元気いっぱいな南と、その後ろで成海と常磐がぐったりとしている。

ひなた「八幡くん!すっごく楽しかったよ!たくさんバァーン、ズサーッてやっつけたんだ!」

八幡「あぁ、それはよかったな。で、後ろの2人はどうしたんだ?」

成海「私たち、疲れてしまって…」

くるみ「ひなたさんが一人でイロウスに突撃するのでサポートが大変で…」

八幡「…お疲れ様」

ひなた「もう、遥香先輩もくるみ先輩ももっと元気出してよ!」

八幡「おい、お前のせいで2人はこんなに疲れてるんだぞ、少しは労われ」

ひなた「えぇ〜」

風蘭「お前たち、そろそろ点数の発表をしたいんだが、いいか?」

くるみ「あ、御剣先生」

遥香「お願いします」

風蘭「このチームの点数は…1099点だ」

ひなた「それってすごいの?」

八幡「いや、最下位だ…」

くるみ「そうですか…」

遥香「正直、そんな気も少しはしていました…」

ひなた「なんでひなたちがビリなの!」

風蘭「それはなひなた、お前がむやみにスキルを連発するから時間を短縮できなかったんだ」

遥香「私たちがもっとうまくサポートできていれば…」

八幡「それでもスキル自体がそこまで強くなかったんだろ?ならどっちみち同じ結果になってただろ」

くるみ「残念です…」

風蘭「ま、いまさら何言ってもどうしようもないけどな。ひとまずこれで試験は終了だ。みんな、お疲れ」

八幡「あの、それで俺の結果は?」

風蘭「比企谷の結果はまた後で発表する。とりあえずくるみたちと一緒に教室に戻っておいてくれ」

八幡「はぁ、わかりました」

くるみ「では先生、戻りましょうか」

遥香「ひなたちゃんも、行くわよ」

ひなた「みんな待ってよ〜」

最後が最も悪い結果で、かなり落ち込んだまま、俺は教室に戻っていった。
220 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/02/18(土) 14:50:31.59 ID:nu/c1HeY0
お久しぶりです。間が空いてすみません。次くらいで「センバツ試験」終わりにします。
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 20:17:14.90 ID:K+AhFiaV0

無理せずゆっくりでも書いてくれたら嬉しい
失踪が一番怖い
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 02:06:11.51 ID:+Rb/pRc2o
乙です
223 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/22(水) 16:07:04.11 ID:QqOURr2f0
番外編「星守センバツ試験O」


風蘭「さぁ、お待ちかねの最終結果発表の時間だ」

最後のチームまで試験が終わり、教室で一息ついていたみんなの雰囲気が一気に張り詰める。

八幡「いよいよか…」

あんこ「今回、ワタシは自信あるのよね」

遥香「私たちはあまり良い点数が出せませんでした…」

楓「ワタクシも不安ですわ…」

おいおい、お前らがそんな弱気でどうするんだよ、俺まで気持ちが落ち込んじゃうだろ。

みき「で、でも私は楽しかったですよ!」

ひなた「ひなたも〜!」

サドネ「サドネも!」

蓮華「れんげも楽しかったわ〜、試験後のシャワーも、ね」

ゆり「うぅ、あんなに触られて…もうお嫁に行けない…」

望「な、なにがあったの…」

俺も気になる。火向井があんなになるなんてどんなことしたんだ芹沢さん…

昴「と、とにかく、御剣先生!アタシたちの結果はどうだったんですか!」

風蘭「うん、今回のアンタたちの結果は…合格だよ。よく頑張ったな」

みんな「やったー!」

風蘭「数チーム危なかったけどな、合計点で見れば基準はクリアだ」

心美「やったね、うららちゃん!」

うらら「当然よ!」

桜「罰ゲームをせずにすんでよかったわい」

くるみ「確かにそうですね」

ミシェル「御剣先生〜、そういえば賞品って何〜?」

風蘭「ふふ、よくぞ聞いてくれた。賞品は、新型チャーハン製造機によるチャーハンフルコースだ!」

花音「なによそれ…」

風蘭「作れるチャーハンとしては王道の卵チャーハンはもちろん、醤油ベースの和風チャーハン、香ばしい香りの焦がしニンニクチャーハン、魚介類豊富な海鮮チャーハン、さらには」

明日葉「いえ、花音はそういうことを聞きたいわけではなかったと思いますが…」

詩穂「でも美味しそうね、試験もあったからお腹空いてますし」

風蘭「そうだろう詩穂。だから今からみんなでチャーハンパーティーだ!」

八幡「またチャーハンですか…」

風蘭「文句あるなら食べなくてもいいぞ比企谷」

八幡「八幡チャーハンダイスキー」

風蘭「そうかそうか。じゃあみんなでラボに移動だ」

待ってましたとばかりに何人かの生徒がラボ向かって走って行った。

こういう展開になることはある程度予測できたな。ま、食べられるものが賞品なだけマシだ。なんだかんだ言いつつ御剣先生のチャーハン美味いし。

それに早く行かないとあいつらにチャーハン全部食べられかねない。俺も急ご。
224 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/02/22(水) 16:11:25.61 ID:QqOURr2f0
以上で番外編「星守センバツ試験」終了です。これからは本編を進めていきます。ちなみに>>1は初めてセンバツでSクラスに入れました。SクラスではなくAクラスだったら罰ゲームの展開にしようと思ってましたが賞品を与えられてよかったです。
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/02/22(水) 17:47:15.04 ID:VLZq5NdDO
乙です。
罰ゲームの内容が少し気になるな。
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/23(木) 00:22:42.68 ID:y6GN2FsMo
乙です
227 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/24(金) 13:35:19.12 ID:n0W01wG4O
本編2-7


ボウリングを3ゲームほど楽しんで、俺たちはボウリング場を後にした。

ミシェル「いっぱい動いたからお腹空いたね〜」

楓「そろそろお昼にしませんか?」

八幡「あぁ、いい時間だしな。で、お前らは何か食べたいものあるの?」

ミシェル「先生と楓ちゃんに任せるよ」

楓「それでしたらワタクシ、是非食べてみたいものがあるんですが…」

八幡「な、なんだ?」

先導院の食べたいものって、A5ランクのお肉とか、フォアグラとか、特上寿司とかしか思いつかない。俺の所持金ではその欠片でさえ食べられないぞ…

楓「あの、ラーメン屋に行ってみたい、です」

八幡「…ラーメン屋?」

楓「何故か無性に先生とラーメン屋に行きたくなりましたの」

ラーメン屋か、これまたお嬢様なイメージとは反対のものだな。正直、俺は助かったどころか食べたいものだし大賛成だ。

八幡「俺は別にかまわないんだが、綿木はどうだ?」

ミシェル「ミミもいいよ!」

八幡「そういうことなら行くか。俺がよく行くところでいいか?」

楓「はい!」

ミシェル「楽しみ〜」

ということで俺たちはここ「なるたけ」にやってきた。

楓「ここではどんなラーメンが食べられるのですか?」

八幡「ここはこってり系ラーメンが有名だ。最初は驚くかもしれんが、けっこう美味いぞ」

ミシェル「ミミこういうラーメン初めて!」

八幡「じゃ入るか」

そうして注文を済ませ、少し待つとラーメンが運ばれてきた。

楓「こ、これはすごいですわね…」

ミシェル「想像以上だねぇ」

八幡「いただきます」

これだよ、この背脂。若いうちにしか食べられない味。

八幡「ほら、早く食べないと冷めるぞ」

楓「えぇ、そうですわね、いただきます」

ミシェル「い、いただきます」

そうして2人はラーメンを口にして、

楓「美味しいですわ!庶民はこんなに美味しいものをいつも食べているのですか??」

ミシェル「むみぃ、美味しいけど、ミミこんなに食べられるかなぁ…」

八幡「なんだかんだ食べられるぞ。あと先導院、そんなに感動するものでもないと思うんだが…」
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/24(金) 21:17:45.06 ID:fWPMiKoq0

よくあるミスだけど"千"導院ね
辞書登録しとくといいんじゃない?
229 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/25(土) 06:43:31.71 ID:MPODaahDO
本編2-8


楓「美味しかったですわ!また食べに来ましょうね」

ミシェル「ミミはしばらくいいかなぁ…」

楓「先生は?」

八幡「俺もしばらくは来ない。ああいうのはたまに食べるから美味いんだ。俺だって毎度毎度食べてるわけじゃない」

楓「そうですか…」

八幡「…ま、まだ他にも美味いラーメン屋はある。今度はそこに行けばいいんじゃないか」

楓「はい!」

ミシェル「で、先生、次はどこ行くの?」

楓「次は先生の行きたいところでしたわね」

八幡「俺の行きたいところは…」

ここで「1人で家に帰る」、と言えれば一番いいんだが、それはできない。こいつら下手したら家に押しかけて来そうだし。さて、そんなぼっちな俺も心安らぎ、かつ中2の女の子たちも楽しめるところといえば、

八幡「ショッピングセンターだ」

ショッピングセンターなら色々な店があるからどんな人でも楽しめるし、それゆえ人から離れて1人で行動しても問題ない場所だ。ゲーセンにボウリングで俺のHPは瀕死状態だ。これ以上リア充っぽいイベントをされたらたまったもんじゃない。ここらへんで俺はフェードアウトさせてもらおう。

楓「お買い物ですわね!」

ミシェル「ミミ買いたいものいっぱいあるんだ〜」

八幡「よしじゃあ行こう、すぐ行こう」

ミシェル「先生もお買い物楽しみなんだね!」

楓「庶民のお店をたくさん見られるチャンスですわ!」

ふ、もう今日の俺の役割も終わりが見えてきたな。ショッピングセンターに着いたらするっといなくなってやる。そして帰ってやる。ステルスヒッキーの本領発揮だ!
230 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/02/25(土) 06:45:00.56 ID:MPODaahDO
>>228の通り誤字でした。次から気をつけます。教えてくれてありがとうございます。
231 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/25(土) 07:47:59.28 ID:MPODaahDO
本編2-9


そうして俺たちは駅前のショッピングセンターに移動した。

さぁ、切り出すなら早いに越したことはない。さっさと別れていざ帰路へ。

八幡「よし、ここからはひとつ自分の見たい店に別々に行くというのは…」

ミシェル「先生!楓ちゃん!かわいいお店がいっぱいあるよ!」

楓「ええ!どのお店も見て回りたいですわ!」

あれー、なんでこの2人俺の話聞いてくれないのぉ。勝手に盛り上がっちゃってるし。

ミシェル「じゃあじゃあ端から順番に見て行こうよ!」

楓「そうですわね!そうと決まれば早速行きますわよ」

ミシェル「うん!ほら先生も早く!」

八幡「え、いや、俺他に見たいものあるんだけど」

楓「先生にも選んで欲しいものがあるんですの。さぁ行きましょう」

八幡「ちょ…引っ張らないで…」

俺は千導院と綿木の2人にファンシーショップに連れられてしまった。

ミシェル「かわいい小物がいっぱーい!」

楓「ミミ、このクッションとってもかわいいですわ!」

ミシェル「それかわいいよね〜、ミミ、その種類のクッションいっぱい持ってるよ」

楓「そうなんですの?」

ミシェル「今度見せてあげるね!」

楓「待ってますわ!」

八幡「あの〜」

ミシェル「どうしたの先生?」

八幡「その会話、俺を挟んでする意味ある?」

店に入ってからも、綿木と千導院が俺の両脇をがっちりキープして逃げ道を塞いでいる。なんなら物理的にすごい密着されてて、身動きしようにも2人の身体の色々なところに当たりそうでそれもできないし、周りの視線も痛い。

楓「こうでもしないと先生逃げてしまいそうなんですもの」

俺の魂胆バレてました。

ミシェル「だからこうやって楓ちゃんとミミで先生をキープしてるの!」

八幡「…わかった。もう逃げないからせめてこんなに密着するのはやめてくれ」

楓「どうします、ミミ」

ミシェル「う〜ん、ミミはもう少しこのままがいいかなぁ」

楓「ワタクシもそう思いますわ」

ミシェル「じゃあごめんね先生、もう少しこのままでいさせてね」

八幡「…はぁ」

もう俺に選択権はないのね。まぁいつものことなんだけど…
232 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/25(土) 22:41:26.55 ID:9tq8XnZY0
番外編「エヴィーナの誕生日前編」


どうしてこんなにイライラするのかしら…最近ずっとイライラするけど、今日は特にひどい。何か原因があったかしら…いえ、思い出せない…

あぁ、とにかくイライラする。何かして発散しなければ…そうだわ。星守の誰かにイロウスをけしかけようかしら。でもそれを倒されてしまったらイロウスのムダになるわね。

ん、あれは、

八幡「ふぅ…」

確か最近神樹ヶ峰に来た比企谷、だったかしら。1人で歩いてるわね、ちょうどいいわ。あいつで少し遊ぶとするか。

エヴィーナ「ねぇ、そこのあんた」

八幡「…」

エヴィーナ「ねぇったら!」

八幡「え、俺ですか?」

エヴィーナ「あんた以外周りにいないじゃない」

なんなのこいつ、私の声が聞こえててあえて無視したっていうの。いい度胸じゃない。

八幡「はぁ、なんか用ですか」

エヴィーナ「えぇ。ちょっと私と遊ばない?」

八幡「は?」

エヴィーナ「文字通りの意味よ。ここじゃなんだから移動するわ」

八幡「へ、いや、何を言ってるんですかあんた…」

ごちゃごちゃうるさい奴ね。ま、私の部屋に入れちゃえばこっちのものだしさっさと連れ込んじゃいましょう。
233 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/25(土) 22:42:05.51 ID:9tq8XnZY0
番外編「エヴィーナの誕生日後編」


八幡「ここは…?」

エヴィーナ「ここは私の部屋。これから楽しいことを始めましょう、比企谷八幡」

手始めに手足を縛っときますか。反抗されたら面倒だし。

八幡「痛っ、なんだいきなり…」

エヴィーナ「お遊びよ、星守と仲良くしてるあんたが私は気に入らないの。これ以上調子に乗らないようにしてあげる」

八幡「あんた誰だよ…」

エヴィーナ「私はエヴィーナ。イロウスの親玉だとでも思ってくれればいいわ。つまりあんた達の敵よ」

ふふ、さぁ恐れおののくがいいわ。

八幡「待て、俺は別にあんたの敵ではない」

エヴィーナ「どういう意味よ」

八幡「確かに俺は星守たちと同じクラスで生活しているが、だからといって俺とあいつらが同じとは限らないだろ」

エヴィーナ「何が言いたいのかしら」

八幡「つまりだ、俺は仕方なく星守たちの手伝いをしているだけであって、俺自身はイロウスに手をかけてるわけではない。それに、あんた達と言われたが、俺はあいつらと同じ空間にいて同じことをしているだけだ。一緒の存在にされるのは不服だ」

エヴィーナ「なんて屁理屈を並べるのかしら…」

八幡「そういうことなんでそろそろ解放してもらってもいいですかね」

エヴィーナ「そういうわけにはいかないわ」

八幡「ですよね…でも俺を縛ったところでこれ以上面白いことなんて起きないですよ」

エヴィーナ「どうだか」

八幡「ほんとですよ。俺は何を言われても働かない専業主夫を目指す人間ですから」

エヴィーナ「ならなんで男子のあなたが神樹ヶ峰にいるのかしら」

八幡「俺の高校の先生と神樹ヶ峰の先生たちの飲み会の席で勝手に話が進んだ結果ですね」

エヴィーナ「ぷっ、なにそれ、意味がわからないわ」

八幡「はぁ、でも当事者の俺もよくわかってないんで」

エヴィーナ「ふふ、いいわ。今回はその状況に免じて解放してあげる。せいぜい学校生活楽しみなさい」

八幡「皮肉かよ…」

エヴィーナ「ほら、出口も作ったからさっさと出ていきな」

八幡「…どうも」

そうして比企谷八幡は部屋から出ていった。

なんで私はあいつを逃がしたんだろう。ここで始末したほうが星守たちへの打撃にはなったはずなのに。別にあいつの状況に本当に同情したわけじゃない。じゃあ、どうして?

まぁ、ただの気まぐれかしらね。なんだかんだ暇つぶしにもなったし、イライラもなくなったから今日は意外と良い日かも。
234 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/02/25(土) 22:47:08.20 ID:9tq8XnZY0
エヴィーナさん誕生日おめでとう。twitterで今日が誕生日だと知ってなんとか書きました。Aqoursのライブ物販待ちのおかげで時間があって助かりました。
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/25(土) 23:00:27.93 ID:+PsA0tVjo
乙です
236 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/02/28(火) 01:40:33.05 ID:7LIrVPUN0
本編2-10


ミシェル「次はあのお洋服屋さんに行きたい!」

楓「こ、こんな服見たことないですわ!」

八幡「おい、俺こんな店入りづらいんだけど」

ミシェル「ミミたちのそばにいれば大丈夫だよ!」

八幡「だからそれもいやだって言ってんだろ…」

そんなことを言ってるとポケットの中でスマホが鳴りだした。ディスプレイに表示される名前を見ると「小町」とある。

八幡「悪い、ちょっと電話」

そばにいる2人に声をかけて、少し離れたところで電話に出る。

八幡「なんだ小町」

小町『おにいちゃん!いつもより電話出るの遅いから小町心配しちゃったよ』

八幡「お前は俺のヤンデレ彼女か。で、なに」

小町『いやぁ、そういえばおにいちゃんに今日のお土産をお願いするのを忘れちゃったな、と思って』

八幡「そんなことくらいメールで連絡すればいいだろ」

小町『でもおにいちゃん、メール見ないこと多いじゃん』

八幡「まぁ、確かに」

小町『せっかく神樹ヶ峰の女の子たちと遊んでるんだもん、小町にもその楽しさを少しでも分けてほしいしね!』

八幡「俺は振り回されているだけだ、で、何が欲しいの」

小町『話が早くて助かりますねぇ、小町は…』

ん?小町の声が聞こえなくなった。どうしたんだ?

八幡「おい小町、どうした」

すると別のポケットに入っている通信機が鳴りだした。こんなタイミングでかかってくるということはまさか…

八幡「はい、もしもし」

樹『あ、比企谷くん?大変なの、千葉駅付近で突然イロウスが大量発生しているの!』

八幡「マジですか…」

樹『それで、今比企谷くんの近くにミミと楓がいるはずよね?急いで3人には現場に向かってほしいの』

八幡「それは良いんですが、なんで俺が2人と千葉にいること知ってるんですか」

樹『ここ数日、あの2人その話ばかりするんですもの、嫌でも耳に入るわ。とにかく、事態は急を要します。すぐイロウスのところへ向かってください』

八幡「わかりました…」

そう返事をすると通信は切られた。

おいおい、なんでイロウスがこの千葉に出現するんだよ…でも不幸中の幸いか、こいつらがいるからな。まだなんとかできるかもしれない。

ミシェル「あ、先生!」

八幡「2人とも。かなりやばいことになった」

楓「イロウスが近くに現れたのですよね。今ワタクシたちのもとへ御剣先生から連絡が入りました」

八幡「なら話は早いな。すぐイロウスのところへ向かうぞ」

ミミ「ミミたちのお買い物の邪魔をするイロウスは許さないんだから!」

楓「それに一般の方々も大勢いますから、早く助け出さないと」

八幡「あぁ、そうだな」

千導院の言う通り、今は一般人の避難も考えなくてはならないだろう。そのためにもまず状況把握をしなくてはならない。

八幡「急ぐぞ」

楓、ミシェル「はい!」
237 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/02(木) 00:14:13.12 ID:IJ5WQkJh0
本編2-11


俺たちが外に出てみると、まだ町の人たちに混乱している様子は見られなかった。

八幡「まずはどうやってここらへんから一般人を遠ざけるかだが…」

楓「ワタクシの家の者にやらせますわ。呼べばすぐ大勢の人が来ますから、彼らに任せれば大丈夫だと思います」

頼もしすぎるぞお嬢様パワー。

ミシェル「じゃあミミたちはイロウスを探せばいいんだね!」

八幡「あぁ、そしたら一般人の保護は千導院家の人に任せて、俺たちはイロウスの種類の特定と、大型イロウスの殲滅に向かおう」

楓「わかりましたわ」

八幡「それから、これからは一人一人別れて捜索しよう。大型イロウスを見つけたらお互いの通信機で連絡をすること。いいか」

ミシェル「わかった!」

八幡「よし、じゃあいこう」

こうして俺たちは別れてイロウスを探すことになったのだが、

八幡「時間がないとはいえ、俺1人になったのはまずかったな…」

こうして1人でイロウスを探して、もし出くわしたら逃げられる自信がない。今日は午前中から2人につき合わされて疲れているんだ。遅い小型イロウス相手でも危ないかもしれない。

ヒューン

と、突然何かが飛んできて、俺の前に小さなクレーターのような穴が出来た。

八幡「なに…?」

飛んできた方向を見ると、道の真ん中で植物のようなものがユラユラ動いているのが見えた。

八幡「あれが今回のイロウスか…」

あれは確か、シュム種だな。幸か不幸か小型イロウスは発生した場所から動かない。つまりあいつの射程距離外にいれば俺が攻撃されることはない。ここはまだ安全なはずだ。今のうちに2人にも伝えておこう。

八幡「俺だ。この付近に現れているイロウスはシュム種だ。2人とも、気を付けてくれ」

楓『わかりましたわ』

ミシェル『ミミやっつけちゃうよ!』

八幡「倒すのもいいが、最優先は大型イロウスの発見と殲滅だ。小型イロウスは少々ほっといてもそこから動くことはない。避難した人に害を与えそうなら倒してほしいが、それ以外は無視していい」

ミシェル『は〜い』

八幡「それと、大型イロウスを見つけたらすぐに連絡してくれ。1人で戦うのはダメだ」

楓『もちろんですわ、では切りますね先生』

ミシェル『また連絡するね先生』

そうして通信は切れた。俺も大型イロウスを探さないといけない。倒せない分、せめて発見くらいはして役に立たないといけないだろう。

八幡「まずはあのイロウスを超えないと…」

自分とイロウスとの距離感を測り、息を整えてから

八幡「いざ…!」

猛ダッシュでイロウスの横を駆け抜け、種が飛んでこない距離までなんとか離れることができた。

八幡「あと何回こんなことやらなくちゃいけないんだ…」

シュム種相手でもめちゃめちゃ走るじゃん、やっぱイロウス討伐きつすぎる…
238 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/05(日) 01:50:35.79 ID:1iahUa8o0
本編2-12


こうして俺は千葉駅周辺を走り回りながら小型イロウスの発生頻度を見ていく。

八幡「キツイ…」

すでにかなり体力を消耗してきている。だが俺が3人の中で1番ここらへんの土地勘を持ってるし、2人には危険な小型イロウスも倒してもらわないといけないから捜索は俺が率先してやらないといけないことだろう。

そうやって考えながら俺はなんとか大型イロウスがいそうな場所を絞り込んできたのだが、どうしても見つけることができない。

八幡「いったいどこにいるんだ…」

だが立ち止まって考えているとすぐに小型イロウスが出現してきた。

八幡「くそっ、また逃げなきゃ」

この数分、こうしてずっと通りをグルグル回っているのだが一向に姿を見ることができない。

ミシェル「あ、先生!」

さらに移動していると綿木に会った。

八幡「おう、大型イロウス見つけられたか?」

ミシェル「見つかんないよぉ〜、絶対このへんにいると思うんだけど…」

八幡「そうだよな。だけどもうどこにもいないぞ…」

大型イロウスだからすぐに見つかるような大きさだとは思ったんだが違うのか。もっと細い路地も探す必要があるな。仕方ない、この道を入ってみるか。

八幡「ん?おかしい」

ミシェル「先生どうしたの?」

八幡「この道は向こうの大きな道まで続いてるはずなんだが、途中で何かが邪魔している」

ミシェル「ほんとだ〜」

八幡「……まさか」

ミシェル「先生?」

俺は行き止まりまで走っていき、一瞬その行き止まりに触れ、また綿木のもとに戻ってきた

八幡「綿木、あの行き止まりが大型イロウスだ」

ミシェル「むみっ、アレが??」

八幡「そうだ。路地の中で隠れてて一部しか見えてないんだ。だから全体像をイメージして探してた俺らには発見できなかったんだろう」

ミシェル「よーし、じゃあミミやっつけてくる!」

八幡「おい待て。千導院が合流してから攻撃しないと、やられるだけだぞ」

ミシェル「むみっ、そうだった。楓ちゃん呼ばないと!」
239 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/08(水) 23:49:04.06 ID:gwbJA+j30
本編2-13



楓「つまり、大型イロウスはあの路地の中にいるということですか?」

八幡「そうだ。だが、まずはあいつを路地の中から大通りにおびき出さないといけない」

ミシェル「どうして?」

八幡「そもそも全体が見えてないとどうにもならないだろう。それにあいつは自分のツタを使って、俺たちの真下から攻撃を仕掛けてくる。見えてないと対処のしようがないだろ」

ミシェル「なるほど」

楓「ではどうやって大型イロウスを大通りに誘い出すのですか?」

八幡「それなんだが、ガンなどの遠距離攻撃が出来る武器を使い、なるべく大通りに近いところから攻撃をして注意をひきつけていくしかないだろうな」

楓「そうですわね」

八幡「そして大通りに誘い込めたらソードで一気に倒してしまおう」

ミシェル「わかった!」

八幡「よし、じゃあ始めるぞ」

楓、ミシェル「はい!」

こうして2人は俺の指示通り、ガンで狙えるギリギリの距離から攻撃を始めた。

楓「さぁ、こっちへ出てきなさい!」

ミシェル「ミミの攻撃をくらえ〜!」

だが、攻撃をはじめてすぐに、2人の真下からツタが出てきて反撃されてしまう。

楓「あぁっ」

ミシェル「大丈夫、楓ちゃん?」

楓「えぇ、まだいけますわ。でもあのイロウス、ワタクシたちを正確に攻撃してきましたわね」

ミシェル「どうしよう、やっぱりこのまま路地に入っていくしか、」

八幡「いや、それだとイロウスの攻撃を避けられない。なんとかして広い場所へ誘い込まないと」

楓「でも今のままではどうしようもないですわ」

さっきの作戦ではダメだったか。あんなに2人のことをうまく攻撃してくるとは想定外だった。もっと慎重にいかなければ。

八幡「そういうことなら、こっちは動き続けながら撃っていこう」

ミシェル「動き続けながら?」

八幡「止まって攻撃していると、どうしてもツタの標的にされやすい。だから動き続けながら攻撃することで、こっちの居場所の把握を困難にさせておびき出すんだ」

楓「わかりました、やってみますわ」

八幡「だが、やみくもに動いたらダメだ。この大通りからは外れないように、『こっちにいるんだ』とイロウスに悟らせるんだ」

ミシェル「わかった!」
240 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/13(月) 10:19:19.31 ID:dMvpeeOy0
本編2-14


楓「はぁっ」

ミシェル「やぁっ」

2人は指示通りに走りながら大型イロウスを打ち続けていく。ときおりツタが地中から出てくるが、動いている2人には当たらない。

八幡「まだか…」

かなり動きながら打ち続けているために、俺たちはかなり疲労していた。というか、俺がただ単純に疲れてるだけなんだが…

とその時、突然地面が大きく揺れだした。

八幡「これは」

楓「きますわね」

ミシェル「むみぃ〜」

大通りの地面が大きくヒビ割れ、大型イロウスが姿を現した。

八幡「デケェ…」

顔の半分以上が口だし、そこから俺の背と同じくらい長い舌が気持ち悪く動いている。ツタはもっと長くて、俺の背の数倍はありそうだ。それが5本くらいウネウネしている。

ミシェル「ここからが本番だね!」

楓「いきますわよミミ!」

そう言って2人がガンで攻撃し始めると、大型イロウスの口が大きく開いて、そこから紫色のガスが出てきた。

ミシェル「うわぁー!」

楓「きゃっ」

八幡「大丈夫か??」

少し離れたところにいた2人だが、ガスがかなり広範囲に広がってきたために、当たってしまった。

楓「一応は大丈夫ですが」

ミシェル「むみぃ、なんだか体力が減っている気がするよ…」

八幡「毒か…」

毒状態になるとどんどん体力が削られていってしまう。このまま遠距離からチマチマ攻撃していてはこっちの体力がなくなってしまうだろう。一か八か短期決戦に持ち込むしかない。
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 02:35:17.78 ID:fOwRzSuBo
乙です
242 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/15(水) 00:32:26.48 ID:0uF/a5pn0
番外編「みきの誕生日前編」


八幡「そっちのトマト取ってくれ」

みき「これですか?」

八幡「あぁ、サンキュ」

俺は星月に取ってもらったトマトを使いサラダを作り、隣では星月がフライパンで食材を炒めている。

今、俺たちは家庭科室で2人、料理を作っている。なぜそうなったかというと……


数十分前、教室

みき「先生!今から時間ありますか?」

八幡「あ?時間はないぞ。俺は今から帰って、溜まっているラノベやアニメを消化しないといけないんだ」

みき「つまりヒマってことですよね?それじゃあ私に付き合ってください!」

八幡「話聞いてた?俺ヒマじゃないんだけど」

みき「先生、今日何の日か知ってますか?」

八幡「お前の誕生日だろ?昼にクラスで祝ったじゃないか」

みき「そうです!そんな私のお願いを、先生は聞いてくれないんですか?」

そう言って星月は顔を赤らめながら、大きな目を潤ませて俺を見上げてくる。

八幡「わかったよ、聞くよ…」

そんな顔されたら断れるわけないじゃないかよ…

みき「ホントですか!?そしたら家庭科室に行きましょう!」

八幡「え、今なんて言った?」

こいつの口から聞こえてはいけない場所の名前が聞こえた気がしたんだが…

みき「家庭科室ですよ!これから私が腕によりをかけた料理をふるまうので、それを先生に食べてもらいたいんです!」

八幡「いや、普通誕生日の人は作ってもらうものじゃないのか?」

みき「私は誕生日だからこそ作ってあげたいんです!ほら先生、早く行きましょう!」

俺はこうして強引に星月に引っ張られて家庭科室に連行されてしまった。すでに中には星月が準備したと思われる食材と調理器具が並んでいる。いくつか怪しいものが見えた気がするが、気のせいだと思いたい。

みき「♪〜」

星月はというと、制服の上からこれもまた準備してきただろうエプロンをつけている。うん、やはり制服エプロンは素晴らしいですね。制服だけ、エプロンだけ、だとそんなでもないのに、制服エプロンになると一気に背徳感が増したように思うのは気のせいですか?

八幡「で、何作ってくれるの」

みき「今日は私の特製オムライスを作ります!」

オムライスなら別に俺も嫌いではない。むしろ好きな部類に入るのだが、いかんせんこいつの「特製」オムライスになると話は別だ。全力で避けなければならないものである。だが、今日はもう付き合うと宣言してしまった以上、退くことは許されない。ならばせめて自分の傷が最小限になる道を進まなければ。

八幡「わかった。だがお前だけに料理させるのも何か申し訳ない。俺も一緒にやる」

みき「先生料理作れるんですか?」

八幡「まぁ、簡単なものならそれなりに作れる。一応お前の誕生日だしな。少しは協力させてくれ」

みき「先生がそう言うなら。是非お願いします!」

八幡「おう」

よし、なんとかこっちの誘導に乗ってくれたな。これでこいつが余計なことをしないかどうか見張りやすくなった。

ピーピー

みき「あ、ごはんが炊けました!わぁ、おいしそう。先生、これ見てください!」

八幡「ん。ん?ナニコレ」

みき「ごはんに決まってるじゃないですか!」

八幡「これが、か?」

炊飯器の中には何故だか黒いご飯が湯気を出している。百歩譲ってオムライスだから赤いごはんなら納得できるが、黒って何?
243 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/15(水) 00:32:59.72 ID:0uF/a5pn0
番外編「みきの誕生日後編」


みき「よし、そしたらフライパンで先に他の食材を炒めないと」

星月は食材の山からウインナーとピーマンをとってくる。いったいこいつは何を作ろうとしているんだ…せめてお腹に優しいものを作らなければ。

八幡「星月、俺はサラダを作るから野菜を取ってくれ」

みき「野菜ですか?」

八幡「そっちのトマトをとってくれ」

みき「これですか?」

八幡「あぁ、サンキュ」

あとはテキトーにレタスやキュウリやなんかを盛りつければいいだろう。

みき「さぁ、そろそろ卵を焼きますよ!」

先ほど炒めたウインナーとピーマンを黒いご飯と混ぜ合わせた星月は卵をボールに入れて素早くかき混ぜている。

八幡「手際良いな」

みき「料理は練習してますから!お菓子もよく作って遥香ちゃんや昴ちゃんに食べさせてますし」

そう言いながら星月はフライパンに卵を流し込んでいく。でも星月の作ったお菓子を食べるなんて味覚音痴の成海はいいにしろ、若葉はかわいそうだな。ナマンダブナマンダブ。

みき「そろそろ完成ですよ!」

フライパンで卵がいい感じに半熟になったのを確認して、黒いご飯を包むように乗せていく。

みき「仕上げに」

星月はケチャップで大きくハートを書いて満足げに頷く。

みき「さ、先生。特製オムライスの出来上がりです!熱いうちに食べてください!」

八幡「あ、あぁいただきます…」

とりあえず一口食べてみるか。いざ、参らん!

八幡「…うまい」

みき「やった〜!」

八幡「正直、おいしくないと思っていたが、ほんとにうまい」

みき「えへへ。な、なんか新婚さんみたいですね。2人で料理して一緒に食べるなんて…」

八幡「ごふっ、げほげほ」

みき「だ、大丈夫ですか先生?これ水です」

八幡「ぷはっ。いきなり変なこと言うんじゃねえよ。むせちまったじゃねえか」

みき「ご、ごめんなさい…」

そんなこんなしていると、俺たちはオムライスを食べ終えた。

八幡「御馳走さん」

みき「先生。私、先生がおいしそうに私の料理食べているところ見るの好きなんだって気づいちゃいました…」

八幡「え?」

みき「で、できれば、毎日こうしてそばで見てみたいなって思います…」

そう言う星月の顔はケチャップ並みに真っ赤になっている。

八幡「…」

みき「あ、私、何言ってるんだろ、あ、あの、今の発言に他意はないといいますか、深い意味で言ったわけではなくて、でも軽い意味でもなくて、」

八幡「あの、」

みき「あぁ!私用事思い出したので帰りますね!さようなら先生!」

言うや否や荷物をもって星月は廊下へ飛び出していった。片付けの終わってない状況に残されたのは俺1人。あんなことをあんな顔で言われて今さら追いかけることなんてできるはずもない。自分で言っといてあの反応はないだろ。言われた俺もめちゃくちゃ恥ずかしんですけど。

八幡「はぁ。片付けるか…」
244 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/03/15(水) 00:35:45.38 ID:0uF/a5pn0
以上で番外編「みきの誕生日」終了です。みき、お誕生日おめでとう!

キッチンみきのカードは手に入らなかったので妄想100%で話を考えました。オムライスはサイトに載っているレシピをそのまま使いましたが、実際に作ってはないので今度やってみたいです。
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/15(水) 01:16:24.61 ID:LyA48pzjo
乙です
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/15(水) 04:58:37.84 ID:uu4qbLui0
おつ
誕生日話を挟んでくれるのは愛が感じられていいね
247 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/21(火) 16:56:04.58 ID:rrYb2f7OO
本編2-15


未だイロウスに攻撃を続けている2人を一旦近くに呼び戻した。

八幡「このまま時間をかけていると俺たちがやられちまう。だからこれから一気に勝負を付けたいと思う」

楓「確かに早めにどうにかしなければなりませんわね」

ミシェル「そしたらソードでどんどん斬っていくしかないよね!」

八幡「それはそうだが、無闇に突っ込んでもあのツタにやられるだけだ」

ミシェル「むみぃ…じゃあどうするの?」

八幡「あのイロウスのツタは数こそ少なくないが、全て同じ行動をする。だからその隙を突く」

楓「具体的にはどのようにするのですか?」

八幡「まずは遠距離から攻撃を仕掛けて地下にツタを潜らせる。ツタが地下から出てきた瞬間に無防備になった大型イロウスに接近してソードで攻撃だ」

ミシェル「でもでもソード使ってもすぐには倒せないと思うけど」

八幡「なるべく大型イロウスの後ろから攻撃を加えてくれ。あいつは見えてる前方への攻撃パターンは豊富だが後ろや横に攻撃することはない」

楓「なるほど、背後を取っている限りこちらに攻撃はこないということですわね」

八幡「そうだ。もうお前たちは少しのダメージも許されない。絶対に失敗しないでくれ」

楓「任せてくださいまし」

ミシェル「ミミたちのお買い物を邪魔したイロウスは絶対倒すんだから!」

八幡「頼む」

楓「じゃあミミ、いきますわよ!」

ミシェル「頑張ろうね楓ちゃん!」
248 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/26(日) 00:58:54.17 ID:RCw2eeVQ0
本編2-16


千導院と綿木はお互いに気合を入れてから、改めて大型イロウスに立ち向かう。

ミシェル「まずはミミたちのほうにツタをおびき寄せるんだよね」

楓「えぇ、もうしばらくの辛抱ですわ」

八幡「2人とも、そろそろ来るぞ!」

そうこうしていると、大型イロウスがツタを高く挙げて、地中へ潜らせた。そして、

八幡「今だ!」

ミシェル、楓「はい!」

ツタが地上へ出てきたことを合図に、2人は全速力で大型イロウスに突っ込んでいく。

楓「ミミは右へ!ワタクシが左に回り込みますわ!」

ミシェル「わかった!」

そうして2人は左右に分かれて大型イロウスと間合いを詰める。

楓「さぁ、ミミ、ここからが勝負ですわよ!」

ミシェル「うん!」

2人は武器をシュム種に有効なソードに変更し、ダメージを与えていく。

楓「はぁっ!」

ミシェル「やっ!」

よし、2人の攻撃はかなり効いてそうだ。予想通り大型イロウスは横や後ろからの攻撃には対応するのに時間がかかるみたいだし、このままいければ勝てそうだ。

ヒューン

ん、なんだ?何か後ろから飛んできたような…

八幡「ま、まさか」

恐る恐る後ろを振り返ると小型のイロウスがうじゃうじゃ地中から生えだして、俺に向けて種のようなものを飛ばしてきている。幸い、コントロールが悪く俺には当たらなかったが、このままここにいるとやばい。確実に死ぬ。

八幡「逃げなきゃ…」

俺はイロウスから逃げるように走り出した。綿木も千導院も大型イロウスと戦っている今、俺のことを守ってくれる人はいない。自分の体は自分で守らないといけない。

まずはイロウスに見つからないように細い路地に入って時間を稼ぐ。イロウスは俺たちのことを認識しない限り攻撃はしてこない。ならばイロウスの視野から外れることが一番の防衛策だろう。

八幡「さながらリアル鬼ごっこだな」

俺は佐藤でもないし、なんならろくに名前も覚えてもらえない存在だが、今のこの状況はあのデスゲームと同じような感じがする。だけど主人公の佐藤翼って陸上部の設定だったよな。引きこもり高校生の俺が逃げ切れるんだろうか…

って何考えてるんだ俺は。疲れと緊張で頭が混乱しているようだ。こういう時こそ冷静に、だ。イロウスと戦っている2人のためにも、このぼっち歴17年で鍛えた頭を使って絶対逃げ切ってやる。
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 02:18:47.67 ID:wR8r9fVRo
乙です
250 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/27(月) 00:34:22.92 ID:QvEIm6Ak0
番外編「桜の誕生日前編」


ひなた「桜ちゃんお誕生日おめでとう!」

サドネ「おめでとう!」

桜「ありがとう」

ひなた「ほら先生も!」

八幡「あぁ、おめでとう…」

今は昼休み、1人で気楽なランチタイムを過ごそうと思っていたら、南とサドネに捕まってしまい、学校の中庭で藤宮を入れて4人で飯を食べている。そこ、今は春休みなんじゃないの?とか余計な詮索はやめてくれ。

八幡「てか俺がここにいる必要ないだろ。3人でご飯食べればいいんじゃねえの」

ひなた「3人じゃだめだよ!チームが組めないじゃん!」

八幡「チーム?」

サドネ「えへへ、ヒナタと2人でサクラを楽しませることを考えたの」

桜「ほぉ、それは楽しみじゃな」

ひなた「でしょ!?で、せっかくだから先生も入れて2対2で遊ぶゲームをしようと思ったの!」

八幡「いや、その理屈はおかしい」

桜「はは、もう諦めろ八幡。今日はわしらと一緒に遊んでおくれ」

くっ、藤宮にこう言われたら断れない。ま、ちょっとくらい付き合ってもいいか。どうせ食べ終わっても寝るだけだし。

八幡「わかった。で、何するの」

ひなた「それはね〜、バドミントンだよ!」

八幡「は?なんで?」

サドネ「だってサドネ、バドミントンやったことなかったからみんなとやってみたかった」

ひなた「ひなたも!」

な、なんてテキトーな考え…普通藤宮のやりたそうなことをやるんじゃないの?あ、でも藤宮のやりたいことって昼寝とかそういうものか。俺はいいけどこの2人はぜったいやりたくないだろうな。

桜「ほぉ、ではわしは八幡と組むかのお。ひなたにサドネ、手加減はせんぞ」

あれ、意外と藤宮がやる気になってるな。いつもなら自分から運動をするなんてありえないのに。

ひなた「よーし、こっちだって負けないよ!」

サドネ「がんばろう、ヒナタ!」

桜「ほれ八幡、早くラケットをもって準備せい」

八幡「あ、あぁ」

ということで、バドミントンが始まったのだが、

ひなた「やぁ!」

サドネ「あ、あ、えぃ!」

南は持ち前の運動神経ですぐコツを掴み、時には強力なショットを打ってくる。サドネもまだ不安定だが、ラリーをするには問題ないレベルである。だが、

桜「むぅ…」

聞くだけでなんでも覚え、見ただけでダンスを完璧に踊る藤宮がまったくラケットにシャトルを当てることが出来ていない。

桜「ん?なんじゃ八幡。わしの顔になにかついとるのか」

八幡「いや、別になにもついてないけど…」

おかしい…いつもの藤宮ならいやいやながらやりながらも圧倒的な力を見せつけるはずなのに、今はその真逆だ。

桜「はぁ、はぁ…」

息も上がってるし、よく見たら顔も赤い。

八幡「なぁ藤宮、どうした?いつものお前らしくないぞ」

桜「何言っとるんだ。わしはいつだってわし…」

そう言いながら、藤宮はその場に倒れこんでしまった。
251 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/27(月) 00:36:33.53 ID:QvEIm6Ak0
番外編「桜の誕生日後編」


桜「ん」

八幡「おう、起きたか」

桜「は、八幡?ここは…」

八幡「保健室だ。お前俺らの前で倒れたからな。急いでここまで運んで来たんだ」

桜「そうだったのか、迷惑をかけたのお。ひなたとサドネにも謝りたいのじゃが」

八幡「もう放課後だからな、2人も心配してたが先に帰らせた。明日にしとけ」

桜「そ、そんなにわしは眠っておったのか…」

八幡「まぁな。それより、昼休みはなんか様子がおかしかったよな、大丈夫か?」

桜「うむ、横になって寝ることが出来て体調も戻った感じじゃ」

八幡「そうか、ならよかった。でもなんで体調良くないのにバドミントンなんてやったんだよ」

桜「ひなたもサドネもわしのことを楽しませようと考えてくれたのじゃろ?そんな2人の好意を無駄にしたくはなかったんじゃ」

八幡「そうか…」

こいつ、周りの人のことをきちんと考えてるんだな。俺の中一の時とは比べ物にならないくらいしっかりしてる。

八幡「てかそもそもなんで体調悪くなったんだ?昨日はなんともなかったよな」

桜「…なかったのじゃ」

八幡「え?」

桜「た、誕生日が楽しみで寝られなかったのじゃ!」

え、うそ?そんな子供っぽい理由?

八幡「くく…」

桜「わ、笑うな!わしも恥ずかしいのじゃ!」

八幡「いや、お前は普段がしっかりしすぎてるからな、そういう子供っぽいところがあってもいいんじゃないか?くく…」

桜「笑うなと言ったろう!もういい、わしは帰る」

八幡「悪かったって」

桜「ふん、どうせわしは子供じゃよ」

むすっとしながら藤宮はベッドから起き上がって制服を整えている。

桜「そういえば先生」

八幡「ん?」

桜「さっき、今は放課後と言っておったが、もしかしてずっとそばにいてくれたのか?」

八幡「…まぁ、午後の授業は実技だったから俺出なくてよかったし、保健室の先生は出張でいなかったからな、それに…」

桜「それに?」

八幡「目の前で見てたのに体調悪いことに気づかなかった責任もあるから、せめて起きるまでは見てようかと…」

そう、仕方なくだ。俺の目の前で倒れられて、「運びました。じゃあ帰ります」っていうのも後味悪いし。

桜「…そうか」

藤宮は出入り口まで歩いたが、ドアに手をかけたままでじっとしている。

桜「先生、わしは今日寝てしまっておったが、いい誕生日だったぞ、ありがとう」

振り返った藤宮は年ごろの女の子が見せる明るい笑顔でそう言い残し、ドアを開けて帰っていった。

1人残された保健室の窓の外を見ると、もう外は暗くなりかけている。春分の日を過ぎ、日の入りも遅くなってきたことを考えると、かなり長い時間俺は藤宮に付き添っていたようだ。だけどまだ外は寒い。あいつ1人で大丈夫かな。

八幡「心配だし、近くまで送るか」

俺は保健室を出て急いで藤宮を追った。
252 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/03/27(月) 00:38:47.76 ID:QvEIm6Ak0
以上で番外編「桜の誕生日」終了です。桜誕生日おめでとう!なんか桜のキャラがブレブレですけどそこは許してください。
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/27(月) 00:59:00.21 ID:v/D1k/Tio
乙です
254 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/03/27(月) 01:03:56.89 ID:QvEIm6Ak0
今さらながら、後編で桜が八幡を「先生」と呼んでいるのはミスです。
大事なセリフをミスってしまった。ごめんなさい桜。
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/27(月) 07:11:30.65 ID:4ajIJe6V0
いいぞいいぞ〜
誕生日おめでとう
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/03/27(月) 18:05:27.13 ID:WwZknZ9DO
乙です。
これ見てるとバトガやりたくなってくるな。

そういや名前呼びなのって何気にサドネだけだよな。
それ関連で何か小ネタ無いかなー何て。
257 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/29(水) 01:54:09.83 ID:MtNwVsOY0
本編2-17


小型イロウスよりも遠く離れた位置にいれば俺が攻撃されることはないはず。だったらまずはひたすら遠くへ逃げればいい。ならこの千葉駅から離れることがベストなんだが、そうすると俺はあいつらを置いていくことになる。こんな戦いの場で女の子2人、曲がりなりにも自分の生徒を置いていけるほど俺は腐っていない。

だとすると俺はあの大型イロウスを視界に入れられる場所にいなければならない、かつ小型イロウスからは隠れられる場所を探す必要があるのだが、果たしてそんな好都合なところがあるのだろうか…

ヒューン

八幡「おわっ」

やばい、小型イロウスの数がだんだん増えてきている。早く何とかしないと。なにかいいところは、

八幡「あ、あった」

そうだ。ここらへんにはいくらでもあるじゃないか。都合のいいところが。

八幡「ここだ!」

俺は急いでとあるショッピングモールの中へ逃げ込んだ。

そう、別に外にいなくてはいけないなんてことはなかった。他のイロウスとは違い、移動をしてこないシュム種相手ならいったん隠れてしまえば攻撃されることはない。それにここからなら窓から周りの状況がある程度は把握できる。万全を期して2階に上がっておくか。

カツンカツン、カツン

なにか一階で音がするな。なんだ?

窓から離れて1階を覗いてみると、小型イロウスが外から種をまき散らしていたのが見える。だけどあの位置からだと俺には絶対届かない、よね?

カツンカツン

それにしても種が散らばるな。何がしたいんだイロウスは。

ピキッ、グググ

え、まさか、嘘だろ?なんで種からイロウス出てくるの?一瞬で小型イロウスの大きさになっちゃうし、

ヒューン

俺の居る方へまっすぐ種を飛ばしてきた。ということは、種で増殖しつつ俺のところまで到達しようとしているのか。

八幡「やばい…」

このままここにいたら巨大な密室空間に閉じ込められることになってしまう。すぐにここを出なければ。目の前の出入り口はイロウスに封鎖されているから別のとこを使わなきゃ。

八幡「てかなんで俺ばっかり狙われるんだよ…」

まぁ周りに他の人はいないからですよね、ほんとみんな避難出来てよかった。千導院家の人には感謝しないと。

で、外に出たのはいいけどいったいどこに行けばいいのか。建物の中入ってもまたこんな状況になったら意味ないし。いや、道は一つしかなかったですね。

八幡「右しかない」

だって左側イロウスがうじゃうじゃいるのが見えたんだもん、もうこっちしかないよね。

八幡「ってやば」

正面にイロウスがいるのが見えた。次の角を左に曲がらないと。

八幡「ま、またかよ…」

今度は正面と左にイロウスが見えた。今度は右に曲がらないと…

八幡「あれ、この道ってもしかして」

イロウスに追い立てられながら走った先に見えたのは、大型イロウスの姿と、それと戦う2人だった。

ミシェル「先生!」

楓「ど、どうなさったのですか?」

八幡「はめられた…」

俺は逃げていたんじゃなく、逃がされていた、そしてまんまとこの場所へ戻されたわけだ。くそっ、頭使って逃げるどころか逆にイロウスに捕まっちまったじゃないか…
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/29(水) 06:36:52.15 ID:hNu/05KL0
種で増殖はおもしろいな
実際やられたらめんどくさそうだけどww
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/29(水) 10:31:05.28 ID:Qsy4E2YJo
乙です
260 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/30(木) 00:10:30.87 ID:LFw+m70b0
本編2-18


八幡「いや、まぁ、小型イロウスから逃げようとしてたんだが、ちょっとな…」

ミシェル「?」

綿木は何が何だかわからない様子で首をかしげている。

八幡「そんなことより、大型イロウスをなんとかしないと」

楓「あれ?」

八幡「どうした千導院」

楓「いえ、先生がいなくなってからはしばらく小型イロウスは見なかったのですが、またチラホラ向こうの方に姿が」

ミシェル「あ、ほんとだ」

見渡すと確かにどの方向にも小型イロウスがうごめいているのが見える。多分、俺が連れてきましたゴメンナサイ。

八幡「このままだと挟み撃ちにされるぞ」

楓「ミミ、今こそスキルを使うときですわ!」

ミシェル「そうだね楓ちゃん!ミミに任せて!」

八幡「スキル?」

楓「ミミのスキルは広範囲にダメージを与えられるんですの」

ミシェル「いっくよー『フル♪フル♪ラビッツ』!」

綿木がスキルを発動させた瞬間、彼女の周りにウサギのぬいぐるみが現れ、それと一緒に綿木は踊り出す。すると上空から大量のウサギがイロウスの居る方向へ降り注いでいく。当然、俺たちのいるところにも降ってくる。

八幡「やべえ、当たる…」

俺はその場でしゃがみ込み頭を抱えて防御態勢をとる。が、ぬいぐるみは見事に俺をスルーしていく。

楓「先生、何やってるのですか…」

八幡「いや、俺にも当たるんじゃないかと思って…」

ミシェル「スキルはイロウスしか攻撃しないから先生は大丈夫だよ!」

八幡「そ、そういうものなのなのね」

できればもっと早くそのこと教えてほしかったなぁ。まぬけな姿晒しただけじゃん…

八幡「で、スキルの効果は?」

ミシェル「見てのとおり、小型イロウスは全滅だよ!」

確かに、ぱっと見小型イロウスは視界には入らない。

八幡「上出来だ綿木。あとは大型イロウスだけだな」

できればこの流れのまま一気に倒してしまいたい。時間をかけるとまた小型イロウスが湧いてくるかもしれない。

楓「先生、今度はワタクシがスキルを使いますわ」
261 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/03/31(金) 00:15:36.49 ID:/qZ45Qtf0
本編2-19


楓「『クルーエルスクラッチ』!」

千導院はスキルを唱えると、大型イロウスに向かって素早く近づいてまるで切り裂くかのように攻撃を加える。大型イロウスはまともに攻撃を受けたためにその場に崩れ落ちるように倒れた。

楓「ふぅ、これで大型イロウスも討伐できましたわ」

ミシェル「やったよ楓ちゃん!」

楓「ミミが周りの小型イロウスを倒してくれたおかげで、ワタクシは大型イロウスに攻撃を集中できたんですのよ」

なんとか倒せたか。今回も疲れたなぁ、なんもしてないけど。

八幡「2人ともお疲れさん」

俺の声に反応して2人がこちらへやって来るが、その背後でゆっくりと大型イロウスのツタが動いているのが見えた。

八幡「伏せろ!」

だが俺の叫びは2人には届かない。こうなったら強硬手段だ。

八幡「うおお」

イロウスのツタもかなり2人に迫っている。だがこの攻撃を体力が無い2人が受けるとヤバい。もう体ごと突っ込んで2人を抱え込んで回避するしかない。一度回避できれば、まだ戦えるかもしれない。

八幡「間に合え!」

俺は2人を両腕で抱きかかえて、そのままの勢いで横へ跳びのいた。間一髪間に合ったが、今の衝撃で俺はもちろん、2人も体を強打してしまった。

ミシェル「いたた」

楓「な、なにが起こったんですの」

八幡「まだ大型イロウスは動けてて、今、ツタが後ろからお前らに向かってたんだ」

楓「では先生はワタクシたちを助けるために…」

八幡「あぁ、だけど一回しか助けてやれそうにない。もう俺は動けないし、2人も限界だろ」

ミシェル「でも、限界とか言ってられないよ!なんとかしなきゃ!」

楓「そうですわ!」

八幡「やめろ、今のうちに逃げろ…」

2人は今にも倒れそうにふらふらになりながらもイロウスと対峙する。

ミシェル「今、ミミたちが逃げるわけにはいかないの!」

楓「だってワタクシたちは星守だから!」

そう言って構える2人に向かって大型イロウスのツタが襲いかか、

らなかった。2人の目の前でツタは落ち、そのまま大型イロウスとともに消えていった。

ミシェル「消えた…」

八幡「なんでだ?」

楓「もしかして、ワタクシのスキルでイロウスは猛毒にかかっていたのかもしれませんわ」

八幡「猛毒?」

楓「えぇ、スキルの攻撃自体ではダメージが足りませんでしたが、猛毒を与えることには成功できたようで、そのダメージで倒せたんだと思いますわ」

ミシェル「楓ちゃんのスキルが猛毒を与えるもので助かったね」

八幡「あぁ。だな」

大型イロウスから毒をくらってピンチだったのに、最後は逆に猛毒で倒すとはな。ちょっと思うところがあるな。

楓「今連絡がありまして、周囲の小型イロウスも消滅したらしいですわ」

ミシェル「よかった〜、ミミたち勝ったんだ!」

2人は抱き合って喜んでいる。その笑顔をなんとか最後は守れたのはよかったけど、今は俺のことも気にしてほしいなぁ。もう全身痛くて動けないから早く助けて。
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/31(金) 01:08:39.02 ID:6rKFjyJCo
乙です
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/31(金) 14:09:50.90 ID:y5JICni20

そういえば回復や支援効果付きのスキルは八幡にも効くんかな?
264 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:33:09.48 ID:r/WNV3U20
本編2-20


千葉で壮絶な戦いを繰り広げた(綿木と千導院が)次の日の朝、やっと俺は待ち望んだ平和な休日を家で堪能していた。

プルルル

小町「はいはい、今でますよーっと」

こんな朝早くに電話か、珍しいな。

小町「もしもし、あっ、いえ、こちらこそお世話になってます。え、はい、大丈夫です!はい!お待ちしてます!」

そう言って小町は受話器を置いて、俺に不敵な笑みを浮かべながら話してきた。

小町「おにいちゃん、急いで出かける支度して」

八幡「え、なんで。今日は家から一歩も外出ないぞ。たとえ小町の頼みでも」

小町「いやぁ、小町の頼みじゃないんだよなぁ。とにかく急いで!来ちゃうから!」

八幡「誰が、」

その時、ピンポーンと玄関のベルが鳴った。

小町「ほらおにいちゃんがもたもたしてるからもう来ちゃったよ!今ドア開けまーす!」

小町が小走りで玄関のドアを開けると、いつぞやの千導院家の黒スーツ軍団が乗り込んできた。

黒スーツ「さ、比企谷先生。楓お嬢様とミシェルさんがお待ちです。すぐに千葉駅までご同行願います」

やだ!小町助けて!と小町をすがるような思いで見つめると

小町「あ、兄は強引に連れてってくれて構いませんので、力ずくで連れ出してください」

黒スーツ「わかりました」

小町、兄への扱いが虫けら同然なんだけど?それにスーツの人、小町の意見わかっちゃだめでしょ。なんていう心の叫びは聞こえるはずもなく、ましてや抵抗などできないまま、俺は車に乗せられた。うん、犯罪を犯して逮捕された人が移送されるときってこんな感じなんだな。なんて思っていると車は千葉駅に到着した。

黒スーツ「さ、比企谷先生、お降りください」

最後だけやたら丁寧に車を降ろされると、遠くから2人の少女が走り寄って来た。

楓「先生!遅いですわよ!」

ミシェル「ほら早く行こ!」

八幡「どこにだよ、つかなんで俺は強制連行されたんだ」

ミシェル「昨日のお出かけの続きだよ!まだショッピングセンター全部回れてないし!」

楓「それに昨日の所以外のおいしいラーメン屋も連れてってくれると言ってくれたではありませんか」

八幡「え、いや、確かに言ったし、言ってたのも聞いてたけど、今日やるの?」

楓「当たり前です!昨日イロウスに邪魔されて不完全燃焼だったのですから」

ミシェル「だから今日はほんとに1日中、3人でお出かけするの!」

こう、中学生ってほんと元気だな。昨日の疲れなどまるでないかのように、ましてやイロウスが出現した場所にも関わらず楽しそうにしている2人をちょっと尊敬した。

八幡「はぁ、わかったよ、行けばいいんだろ行けば」

ミシェル「やった!」

楓「では早速買い物から始めましょ!」

八幡「おい、昨日のショッピングセンターはこっちだ。勝手に行動するな。はぐれるぞ」

勝手にどっかに行こうとする2人に俺は声をかけた。すると2人はこっちへ戻ってきてから俺の両脇に密着する。

ミシェル「なら先生とくっついてれば大丈夫だね!」

楓「ワタクシたちの引率、お願いしますわね先生」

暑い苦しい歩きずらい恥ずかしい。でも

八幡「今だけな」

口に出した言葉はそのどれでもなかった。
265 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/04/02(日) 23:36:15.28 ID:r/WNV3U20
以上で本編2章終了です。次は番外編投下します。

>>263一応八幡はただの人間なのでスキル効果はかからないつもりで書いてます。後になって変えるかもしれませんが。
266 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:37:03.08 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所@」


八幡「合宿所の見回り?」

樹「えぇ、ここ最近忙しくて私たち教員の目が行き届いていないのよ。だからお願いできない?」

八幡「別にいいですけど、俺行ったことないんですよね合宿所」

樹「学校の敷地内にあるし、ここからそんなに遠くないわ」

八幡「はぁ、てかなんのためにあるんすか、そこ」

樹「一応、星守たちのためにって建てられたけど、全然使われてないのよね。設備自体は今でも時々追加されてるからかなりいい施設なのだけれど」

八幡「へぇ」

ま、今は使われていない、しかも見回りだけっていう仕事なら楽そうだな。なんならこれをダシにして雑務をサボることもできそうだな。

八幡「ま、そういうことならとにかく行ってみましょうよ。早く行くことに越したことはないですし」

樹「そうね。では行きましょうか」

そうして歩くこと十数分、それらしき建物が目に入ってきた。

八幡「けっこうきれいですね」

樹「えぇ、建てられたのはかなり最近だから」

八雲先生はポケットからカギを出してドアを開けると俺に中に入るよう促す。

八幡「失礼します」

中は暗く、がらんとしていて人の気配はない。すぐ右手には上と下に続く階段とミーティングルームがあり、左手にはトイレや風呂などがあるようだ。奥に進むと4つのドアがある。これがここに泊まる人の部屋だろう。

八幡「かなりしっかりしていますね」

樹「2階もすごいわよ」

八雲先生に促され2階に上がってみると、すぐのところに大きな遊戯室があり、その向こうには音楽室、そして1階と同じように部屋のドアが4つ見える。

八幡「すげぇ」

樹「極めつけは地下のフロアよ」

これよりすごい設備があるのか?いったいなんだろうか、と少しワクワクしながら階段を下りてみた先に広がっていたのは大きなプールだった。

八幡「なんなんだこの施設…」

使わないのがもったいない。使わないなら俺がここに住みたいくらいだ。ここに住めば学校近いから遅くまで仕事できるしな。…はっ、今の俺の思考回路、完全に社畜のそれだった。まさか八雲先生、俺を社畜に洗脳しようとここに…

樹「うん、特に異常はないわね」

八幡「まぁどこも埃っぽいですけど」

使われていないためか掃除はされていないのでかなり汚い。拭いたり掃いたりすれば落ちそうな汚ればかりだが。

樹「それもそうね。あ、そうだわ。比企谷くん、せっかくだからここの掃除、お願いしてもいいかしら」

八幡「え」

樹「星守クラスの子たちにも協力してもらうから。もともとあの子たちの合宿所としてここは建てられたのだし」

八幡「なら別に俺がやらなくても、あいつらにやらせれば、」

樹「ダメよ。比企谷くんはあの子たちの担任なんだから。掃除監督として、お願いね」

これはもう断れるものじゃないな。ならさっさとテキトーに終わらせて帰るとするか。

樹「あ、任せたとは言ってもしっかりやってるかどうか確認には来るから、サボろうなんて思わないでね」

八幡「ももも、もちろんですよ」

やべ、この人俺の心の中読んでるの?

樹「なんでそんな慌ててるのよ。とにかく、頼んだわ」

八幡「…はい」

さて、どうしたものか。
267 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:37:46.19 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所➁」



次の日、朝のHRで合宿所の掃除についてみんなに話すことにした。

八幡「昨日、八雲先生と合宿所に行ったんだが、予想外に汚くてな。今日の放課後に掃除をすることになった。星守クラスのための合宿所みたいだから、俺たちで掃除するぞ」

俺がこう言うとところどころから不満の声が上がってきた。

ひなた「ひなた掃除きらーい」

うらら「うららたちが汚くしたわけでもないのに、なんで掃除やらなきゃいけないのよ」

あんこ「今日の夕方からイベント走らなきゃいけないんだけど」

うんうん、みんなの不満はよくわかる。だが、そんなことで俺はお前らを自由にはしない。面倒な仕事はなるべく分担して早く済ませるのが俺流。悪いが犠牲になってもらうぞ。

明日葉「みんな、そんなこと言うな。私たちのために学校が建ててくれた合宿所だ。これを機に一度しっかりきれいにしよう」

みき「明日葉先輩の言う通りですよ!」

よしよし、ナイスアシストだ楠さん、星月。

昴「でもアタシたちで掃除しても、使わないんじゃ意味ないよね」

楓「そうですわね。学校の施設なら千導院家の人を使って管理させるのも無理ですし」

八幡「確かに…」

掃除をするのはそこを綺麗に保つ必要があるからだ。だが合宿所はこれまで使われていない。だったら汚いままでもいいのかもしれない。別に汚いことで迷惑は掛かってないわけだし。

蓮華「ふふ、先生、それなられんげに考えがあるんですけど」

八幡「なんですか芹沢さん」

蓮華「その合宿所ってれんげたちのためにあるんでしょ?なら、掃除して綺麗にしたられんげたちに自由に使わせてほしいの」

心美「合宿所を自由に使うってどういうことですか?」

蓮華「文字通りの意味よ。今使われてないってことは普段の特訓なんかでは必要ない施設ってことよね。だかられんげたちで好きなように使っちゃおうってことよ。どう先生?」

八幡「さすがに俺1人の考えではどうにも言えない。放課後までに八雲先生や御剣先生から許可を得られたらそうしよう」

桜「おお、これで昼寝の場所が増えるわい」

望「アタシもちょうど、服を置くスペースも欲しかったんだぁ」

八幡「おい2人とも、まだ使えると決まったわけじゃないぞ。とにかく、放課後に合宿所の入り口に集合だ。いいか?」

みんな「はーい!」

268 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:38:14.62 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所B」


八幡「全員いるか?」

みんな「いまーす!」

放課後になり、俺たちは合宿所の前にやってきていた。掃除後にここを使う許可については「いいんじゃない?あんたたちで自由に使いな〜」という御剣先生の一言で言質が取れた。それにしても軽いよなぁあの人。

明日葉「では行きましょう先生」

八幡「えぇ、でもその前に一つ確認したいことがあるんですけど」

くるみ「なんですか先生」

八幡「どうしてみんな体操服なんですか…?」

そう、まだけっして暖かいとは言えないこの時期になぜかみんな体操服なのだ。俺にしては、別にスカートひらりを期待していたわけでは全然ないのだが、やはり気になる。

遥香「合宿所はかなり汚れていると先生が言ってましたので、汚れてもいい服のほうがいいのではないかと蓮華先輩が」

ミシェル「制服が汚れちゃったらイヤだもんね、さすが蓮華先輩!」

…いや、あの人がそんな親切心だけで服装の提案をするわけがない。それにこの合宿所を自由にする、という案も芹沢さんが言い出したことだ。何か裏があるはず。

蓮華「あら、先生、れんげをそんなに見つめて、何かご用ですか?」

八幡「いえ、別に」

ま、今は考えなくてもいいか。

花音「ねぇ、寒いんだけど、早く中に入れてくれないかしら」

八幡「あ、すまん。今開ける」

ガコーン

詩穂「へぇ、中はずいぶん広いわ」

みき「ここを私たちで使っていいんですか?」

八幡「あぁ。掃除したらな」

ひなた「すごいすごい!2階には卓球台とかバンドの楽器とかあったよ!」

サドネ「ここ面白い!」

ゆり「2人とも、まずは掃除だぞ。遊ぶのはあとだ」

ひなた、サドネ「えー」

あんこ「そういうゆりもなんかそわそわしてない?」

ゆり「わ、私は風紀委員としてみんなが掃除をしっかりやるかどうか見張るんです!けっして楽しみなわけではありません!」

あんこ「はいはい、そういうことにしておくわよ」

八幡「よーし、じゃあとっとと掃除始めようぜ」

ミシェル「ミミほうきで掃く〜」

うらら「うららもほうき!」

昴「じゃあアタシはぞうきんで…」

詩穂「みなさんストップ!」

うらら「詩穂先輩、どうしたんですか?」

詩穂「みなさん、掃除は心をこめて、かつ効率的にやらないと綺麗にはなりません!まずはきちんと役割を決めるところから始めましょう」

八幡「すごい気合の入りようだな、おい」

花音「こうなった詩穂は止まらないわ。私たちも本気でやるわよ」
269 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:38:52.56 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所C」


そうして俺たちは国枝総監督の下、掃除を始めた。

詩穂「藤宮さん、もっとぞうきんは固く絞らないと余計な水分がついてしまうわ」

桜「おぉ」

詩穂「天野さん、埃は上から落としていかないと取り残しがでてくるから気を付けて」

望「はい!」

詩穂「芹沢さん、みんなのことを見てないで掃除してください…」

蓮華「やぁ〜、体操服での掃除姿なんて貴重だから少しくらいいいじゃない」

この人、それが目的か…まぁ、掃除と体操服は確かに珍しい組み合わせだから見たい気持ちもわからなくない。

くるみ「先生、あの」

八幡「ひゃい、な、なに?」

くるみ「先生の周りのゴミをとりたいので少し避けてもらってもいいですか?」

八幡「あ、あぁ」

突然話しかけられたから思わず噛んでしまった。なんかぬるっと現れるよな常磐は。心臓に悪い。

遥香「先生」

八幡「お、なんだ成海」

遥香「ちょっとこっちを手伝ってもらえませんか?重くて運べないものがありまして」

八幡「任せろ」

ここらへんでひとつ俺のすごさを見せておくのも悪くないかな。少しばかり、力を解放させてもらうとしよう。

遥香「これなんですけど…」

八幡「なにこれ…」

目の前には埃を被ったスロットマシーンが置いてある。どうしてこんなところにこんなものが置いてあるんだ。

八幡「これを運べばいいんだな…」

ってめっちゃ重いんですけど!全然動く気配がしない。腰がやられる…

遥香「せ、先生?」

八幡「ダメだ、重くて俺も動かせない…」

そんな時、後ろから声が聞こえた。

風蘭「おぉ、懐かしいな。こんなところにあったのか」

遥香「御剣先生、これご存じなんですか?」

風蘭「知ってるも何もアタシが持って来たんだ。学生時代にバイトしてたラーメン屋の大将が持っててな、卒業する時記念にってくれたんだよ」

八幡「それがどうしてここに」

風蘭「いやぁ、家には持って帰れなくて仕方なく」

八幡「なるほど、てか御剣先生はどうしてここに」

風蘭「アンタたちの様子を見にな。それより比企谷、こんくらいのものも運べないのか、情けないな」

そう言って御剣先生は軽々とスロットマシーンを持ち上げる。

風蘭「遥香、これどこに持っていけばいいんだ?」

遥香「あ、それは一度廊下に出しておいてください」

風蘭「ほーい」

3,40キロはあるものを軽々持ち上げるなんて、さすが御剣先生。いや、それより持ち上げられなかったことが情けないな。筋トレでもしようかな…
270 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:39:19.76 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所D」


八幡「だいぶ片付いたかな」

みんながせっせと働いたおかげで日が暮れる前には大体の掃除を終えることができたようだ。

明日葉「では、そろそろ解散にしようか。下校時刻も迫っているし」

蓮華「ちょっと待って、明日葉。れんげたちがここを掃除したのはここを自由に使うためよ。明日からはここの模様替えを始めなきゃ!」

ミシェル「模様替えってどういうことですか?」

蓮華「だってこのままだといかにも『合宿所』って雰囲気で全然可愛くないもの。どうせならもっと可愛くしたくない?」

望「賛成!家具とか色々工夫したい!」

昴「お、女の子っぽい可愛い家具なんていいですよね…!」

花音「そもそもモノがあんまりないしね。色々買ってきてアレンジするのも悪くないわ」

サドネ「チョコのベッド欲しい!」

ゆり「いや、流石にチョコは無理なんじゃないか…?」

ひなた「じゃあ明日はここの模様替えをみんなでやればいいんだね!」

蓮華「えぇ、もちろん先生も」

八幡「なんで俺もなんですか…」

うらら「だってうららたちだけじゃ外に買い出しとか行けないし」

楓「発注は千導院家を通じてすぐ出来ますが、実際運ぶのはワタクシたちでやらないといけないので」

八幡「マジか…」

あんこ「いい加減諦めなさいよ。何しても逃げられないわよ」

八幡「はぁ」

もうイヤ。奴隷のように扱われてる。俺の人権は何処に。

みき「それじゃあ、明日から模様替え頑張ろう!」

みんな「おー!」
271 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:39:52.89 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所➅」


こうして次の日の朝、またしても俺たちは合宿所にやってきていた。

八幡「でも模様替えって言っても1人用の部屋だらけじゃできることも限られてるんじゃないか?」

桜「確かにそうじゃな。まぁわしは寝られる場所があればなんでもいいんじゃが」

くるみ「その心配は無用ですよ先生」

心美「今日御剣先生に聞いてきたら、個人用の部屋は壁を壊して合体できる作りになってるらしいんです。だから壁を外せばみんなで使える広さも確保できると思うんです」

ゆり「へぇ、便利な作りになってるんだな」

詩穂「せっかくだからみんなで使えるようにしたいわよね」

明日葉「よし、ならまずは部屋の壁を撤去するか」

しばらくしてなんとか壁の撤去を終えることができた。それにしてもみんな、俺のこと使いすぎじゃね?分担してやってたはずなのに、結局俺がどの壁も撤去する羽目になったんだが。

ミシェル「それで、どんなお部屋を作ればいいの先生?」

八幡「俺に聞くな…」

蓮華「ミミちゃん、れんげがちゃーんと考えてあるから安心して」

明日葉「なんか怖いな…」

蓮華「あら明日葉、今回はれんげ真面目に考えたんだから大丈夫よ」

遥香「どういうものですか?聞かせてください」

蓮華「ふふ、まずは1階はキッチンの部屋と、くつろぐ部屋の2つを作るわ」

みき「どうしてその2つなんですか?」

蓮華「まずこの施設にキッチンがないから、これは必須よね。それと、一応『合宿所』なわけだし、プールやお風呂なんかもここにはあるから、体を休める場所があってもいいと思うの」

花音「そしたら2階はどうなるんですか?」

蓮華「2階は1部屋まるまるみんなの共有スペースに使うわ。遊技場、音楽室があって騒がしいから、どうせなら全部騒がしくしちゃったほうがいいと思うの」

あんこ「れ、蓮華がものすごく真面目に考えてた…」

サドネ「わぁ、レンゲすごい!」

他のみんなも芹沢さんの案に賛成しているようだ。

八幡「じゃ、芹沢さんの考え通りにアレンジしてみますか」

みんな「はーい!」
272 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:40:25.96 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所➆」


そうして芹沢総監督の下、合宿所の大リフォームが始まった。まずは1階の模様替えである。部屋は2つなので、俺たちも自然と2つに分かれて作業することになった。俺は立場上、両方の部屋をブラブラ見て回ることにした。

八幡「まずは休憩室のほうを見てみるか」

中はまだがらーんとしていて、壁は打ちっぱなし、家具も一つもない状態である。そんな部屋の中に千導院と粒咲さんがあーだこーだ言い合っていた。

あんこ「あれ先生。1人でどうしたの?」

八幡「いや、みんなの様子を見周ろうかと思いまして」

あんこ「今ワタシたち、家具をどう配置するか考えてるところなの」

楓「先生、もし手が空いてましたら、外にワタクシが頼んだ家具が来てると思いますので運んでいただけませんか?」

八幡「まぁ、少しなら」

楓「お願いいたしますわ」

そう言われ外に出てみると、とんでもなく高級そうな家具がずらっと並んでいる。そこには若葉、南、サドネ、火向井、朝比奈、天野、楠さんがいた。

昴「あ、先生、ちょうどよかった。これ運ぶの手伝ってください!」

八幡「もしかしなくても、これをさっきの部屋に運び込むの?」

ひなた「うん!ひなた、早くこのベッドに寝てみたいなぁ。フカフカだもん!」

天野「うわ、このタンスすごい高級品だよ…」

心美「さすが楓ちゃんですぅ」

明日葉「なんだか運ぶのにものすごく神経を使いそうだな」

ゆり「同感です…」

サドネ「カエデたちが待ってるから早く運ぼおにいちゃん!」

八幡「わかったわかった」

じゃあ、この重くなさそうなシェルフを…

ひなた「ハチくん!こっちのベッド運ぶの手伝ってよ!」

昴「さすがにアタシたちだけじゃ無理だから、お願いします!」

八幡「えぇ、だってそれ重いじゃん」

ゆり「お言葉ですが、先生に頑張ってもらわないと私たちでは運びきれなのですが…」

望「そうだよ!少しは男らしいところ見せてよ!」

明日葉「お願いします先生」

八幡「はぁ、わかりました…」

こんなに言われたらやるしかないよなぁ。頼まれたら断れない男なんで。

八幡「じゃあおれここの角持つから、火向井と若葉と南は他の角持ってくれ」

3人「はーい」

八幡「せーのっ」

うっ、重い重い重い。指がちぎれる…

ひなた「意外と重くない!」

昴「たしかに」

火向井「これくらいなら早く運べそうだな!」

え、これ重くないの?話と違うじゃねぇか。これ持てるならもう俺いらないでしょ。
273 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:40:54.62 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所G」


どうにか家具を運び入れ、次はキッチンの方を見ることにしたのだが。

詩穂「絶対入れたほうがおいしいわよ花音ちゃん」

花音「いくら詩穂がそう言っても絶対入れない!」

めずらしく国枝と煌上が言い争いをしている。

八幡「どうしたんだ」

くるみ「あ、先生。私たち一通り準備が終わったので、お昼ご飯を作ろうとしていたんです」

うらら「それでメニューの一つで酢豚を作ることにしたんだけど、それにパイナップルを入れるかどうかでしほっち先輩とかのかの先輩がお互いに譲らないの」

八幡「えぇ…」

予想外に細かいことで言い争いを繰り広げていた。なにやってるんだあの2人は。

桜「ま、あの2人は放っておいてわしらも料理を作るとしようぞ」

遥香「ふふ、そうね。たくさん作ってたくさん食べないと午後からの作業にも集中できませんしね」

ミシェル「美味しいものたくさん作ろうね桜ちゃん、遥香先輩!」

そうして言い争いをしてる2人以外は順調に料理を進めている。

みき「先生先生!私、頑張っておいしい料理作るのでたくさん食べてくださいね!」

八幡「え、あ、」

ここにいてはいけない人物ナンバーワンが目の前にいた。その危険人物はボールの中で何か得体のしれない物体をこね回している。

八幡「おい、星月。今すぐその手を止めろ。そしてお前はキッチンに入るな」

みき「まさかの立ち入り禁止ですか!?大丈夫ですよ先生!今回の料理は自信があるので!」

八幡「いや、その自信が怖いんだ…」

蓮華「はーい、みきちゃん。れんげも手伝うから、一緒に頑張りましょ?」

みき「蓮華先輩!はい、お願いします!」

蓮華「うふふ」

そうして芹沢さんはうまく星月から料理の主導権を奪うことに成功した。

八幡「芹沢さん、ありがとうございます」

蓮華「かわいいみきちゃんとはいえ、流石に食べられないものを作らせるわけにはいかないもの…」

八幡「確かに…」

これでひとまず安心かな、と思って周りを見渡すと

桜「くるみ、それはなんじゃ」

くるみ「これですか?シャドークインという中が紫色のじゃがいもです。こっちはアンティチョークといって、健康にいいお野菜なんですよ」

相変わらず常磐がおかしな野菜を持ってきていたり、

うらら「さ、マシュマロをいれるわよ!」

ミシェル「むみぃ、うらら先輩、パスタにマシュマロは合わないと思う…」

蓮見がやたらめったらマシュマロを入れようとしていたり、とどこもかしこも危ない料理が出来上がりそう。それにまだ国枝と煌上は言い争ってるし。ちゃんとお昼食べられるのかな、俺…
274 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:41:27.77 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所H」


どうにか出来上がった昼飯をみんなで食べたのち、俺たちは2階へ移動した。

八幡「ここの部屋もかなり広いな」

花音「ま、午後は全員で作業をするしそんなに時間もかからないんじゃない」

遥香「2階は共有スペースにするんでしたよね」

蓮華「えぇ。そしたらここにみんなが置きたいものを1つずつ置いていってほしいな〜」

え、何それ聞いてない。そこのプロダクションの事務所ですか。

八幡「俺何も持ってきてないんですけど」

みき「あ、先生に連絡するの忘れてました」

八幡「おい、俺のこと忘れないで」

昴「でも先生、アタシたちのグループラインにいないんですもん」

うらら「そうだ、これを機にハチくんもグループに入ってよ!」

八幡「え、やだよ。個別に連絡してくれれば済む話だし」

ミシェル「でもみんな忘れてたら今日みたいなことになっちゃうよ?」

望「それに、正直個別に連絡するのメンドイし…」

サドネ「だからおにいちゃんもグループに入って!」

八幡「わかったよ…」

そう言って俺はポケットからスマホを取り出した。その瞬間、何本もの手が伸びてきて一瞬で俺のスマホは拉致されてしまった。

八幡「ちょっと、いくら俺のスマホだからって雑に扱わないで?」

だが俺の言葉は届かず、それどころかスマホのロックも外されてしまった。

楓「先生の履歴、女の人ばかりですわね」

遥香「この『小町』っていう名前は先生の妹さんの名前ですよね」

くるみ「でもそれ以外にも『☆★ゆい★☆』とか『平塚静』とか『戸塚彩加』とか他にも色々あるわ」

ひなた「八幡くん、モテモテだね!」

あんこ「ここにある人のアカウントを調べればどんな人か特定できるわね」

八幡「やめください、返してください、お願いします」

ゆり「ほら先生も困っているだろ、みんな、返すんだ」

みき「でもゆり先輩も興味津々で先生のスマホ見てましたよね?」

ゆり「そそそ、そんなことはない!」

火向井は叫びながらスマホを奪い、俺に押し付けてどっかに行ってしまった。

詩穂「ふふ、でもこれで先生も私たちとラインが出来ますね」

心美「これからよろしくお願いします、先生」

桜「そろそろ始めようぞ。わしはもう眠いのじゃ」

蓮華「あらあら、桜ちゃん、れんげが膝枕してあげるわよ」

明日葉「こら蓮華ふざけるな。今日はお前がみんなをまとめるんだぞ」

蓮華「はーい。じゃあみんな〜、持ってきたものをどんそん置いていきましょう〜」
275 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/02(日) 23:41:56.75 ID:r/WNV3U20
番外編「合宿所I」


ひなた「ひなたはね〜遊ぶためのトランプ!」

桜「わしは枕じゃ」

サドネ「サドネはお菓子!チョコがいっぱい!」

ミシェル「ミミはお気に入りのウサギさんのぬいぐるみ〜」

楓「ワタクシは絵を描くためにキャンパスや絵の具を」

うらら「うららはダンスの練習のための大きな鏡!」

心美「わ、私は神社で御祈祷したお守りを持ってきました…」

みき「私はお料理のレシピ本です!」

遥香「みんなが落ち着ける音楽のCDをいくつか」

昴「アタシは筋トレグッズです!みんなでやりましょう!」

ゆり「私は練習用の竹刀を。決して罰を与えるためのモノじゃありません!」

くるみ「私は幸福をもたらすというガジュマルの鉢植えを」

望「アタシもみきと似ててファッション雑誌を何冊か!」

花音「私はダンスの練習用にスピーカーを。うららと被らなくてよかったわ」

詩穂「私は花音ちゃんの歴史が詰まった特製アルバムです」

あんこ「ワタシはノートパソコン。ここ、なぜかWi-Fi飛んでるのよね」

明日葉「私も本で被ってしまうが、おすすめの小説を何冊か」

蓮華「で、れんげはカメラ〜」

何人かおかしなものを持ってきてるような気がしたが、つっこむべきなのだろうか。いや、俺が怪我しそうだし黙っておくか…

八幡「とりあえずみんな置けたな」

改めて見るとなんとも統一感の無い空間が出来上がった。人数分とは言えないまでもテーブルやイスがいくつかある他に、無造作にみんなのものが所せましに置かれている。

でも、こういう個性がバラバラで、でもみんな近くで支え合っている星守クラスを象徴しているような気がして不思議と違和感は感じない。

蓮華「みんな〜、れんげのカメラで写真撮りましょうよ〜」

昴「いいですね!」

遥香「でもその写真、悪用しないでくださいね」

蓮華「もちろんよ、今から撮る写真は使わないから」

桜「ということは他に撮った写真は悪用する気じゃな」

なんだかんだ言いながら結局みんな一つにまとまっていく。合宿所の本来の使い方からは間違っているが、これもこれでいいのかもしれない。

みき「ほら先生!撮っちゃいますよ!」

八幡「あぁ、今行く」

この日撮った写真も後日、この2階のお守りの隣に飾られた。いや、さすがにもう少し違うところに飾ってほしいんですけど…なんか縁起悪いみたいじゃん。
276 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/04/02(日) 23:46:20.78 ID:r/WNV3U20
以上で番外編「合宿所」終了です。もっと短くするはずがIまでいっちゃいました。実際合宿所はみなさんどのくらい使ってるんでしょうか。個人的に合宿所は教室同様全員入居できないのが寂しいところです。
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/03(月) 09:57:25.29 ID:UilpYTKlo
乙です
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/03(月) 19:02:28.26 ID:WnnZkv2UO
おつおつ、めっちゃレス増えてて見間違いかと思ったw
合宿所は経験値貯めたい子をトロフィー部屋にぶちこんでるだけという現状
279 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/09(日) 00:06:52.55 ID:7WQX1+Fa0
本編3-1


小町「へ〜。ふ〜ん。あ、おにいちゃんおはよー」

八幡「おう、おはよう」

俺は小町と挨拶を交わしてテーブルに座り、コーヒーにミルクと練乳を入れたものを飲みつつ、小町が作ってくれた朝ごはんを堪能する。

俺が神樹ヶ峰に行くようになって以来、家を出る時間が早くなったのだが、小町もなぜか俺と同じように早く起きてくれる。全く出来た妹である。だが、小町は早く起きても朝ごはんを作るとやることがなくなるので、こうして暇を持て余してるのだ。今日は女子中高生に人気そうな雑誌を眺めている。そういう雑誌の記事って何一つ信用できないよね。なんで売れるんだろう…

小町「うーん、すごいなぁ」

八幡「なにが」

小町「いやね、この雑誌の『輝くティーンエイジャー!』っていう特集に載ってる子たちってみんな小町とかおにいちゃんとかと年は変わらないのにすごい人ばっかりだなぁって」

八幡「ふん、そういう記事に載るような人ってのは『頑張ってる私、ステキ!カワイイ!みんな褒めて!』とか思ってるような奴ばかりだからな。注目されたいっていう魂胆が丸見えなんだよ」

小町「うわぁ、出たよおにいちゃんの捻くれた思考回路。そりゃそういう人もいるだろうけど、例えばこの子みたいな純粋な子もいるんだよ!」

八幡「小町、それは『純粋を装った目立ちたがり屋』だぞ。勘違いするな」

小町「なんでそうやってすぐ否定するかな…いいからこの子の記事だけでも読んでよ!」

そう言って小町は俺に雑誌を押し付けてきた。まぁ読みもせず批判するのはダメか。しっかり読んでこの記事をメッタメタにしてやろう。

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特集「輝くティーンエイジャー!」

今回の「輝くティーンエイジャー!」は中学3年生ながら〇〇神社で巫女さんとしても頑張る朝比奈心美ちゃんへの直撃インタビューを掲載しちゃうよ!

インタビュアー(以下、イ)「心美さんは中学生と巫女を両立して頑張ってると思うんだけど、大変だよね?」

心美ちゃん(以下、心)「い、いえ、どっちも私にとっては大事なことなので、大変ですけど、だ、大丈夫、です…」

イ「それに学校では部活動にも取り組んでるんだよね?天文部、だっけ?」

心「は、はい。星を見るのは大好きなので…」

イ「うんうん、とっても素敵だと思うよ!じゃあ、そんな心美ちゃんにこの記事を読んでる同年代の女の子たちへメッセージをお願いできるかな?」

心「え、そんな、私なんかが言えることなんて、ありませんよぉ…」

イ「心美ちゃんは謙虚なんだね、ますます好感度が上がっちゃったよ!今回は本当にありがとう!」

心「あ、ありがとうございました…」

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うん、もういつもの朝比奈だよね。文面でもあのちょっと怯えてる感じが表れてるなぁ。同じページには明らかに緊張してる巫女姿の朝比奈の写真もあるし。って

八幡「これ朝比奈じゃん…」

小町「え、なになにおにいちゃんこの子知ってるの?」

八幡「知ってるもなにも俺のクラスの生徒の1人だよ…」

なんでこいつ雑誌のインタビューなんか受けてるんだよ。明らかに人選ミスでしょ…

小町「すごいすごい!てことはこの子も星守なの?」

八幡「まぁそういうことになるな」

小町「小町と同い年で星守も巫女さんもやっちゃうんだ。すごいなぁ」

まぁ確かに傍目から見たらそう映るのかもしれない。現にこうして雑誌で取り上げられて、読者の小町も感心してるし。

小町「ほらおにいちゃん、みんながみんな目立ちたがり屋な女の子なわけじゃなかったでしょ?」

すごい憎たらしく微笑しながら小町は俺に言ってくる。妹じゃなきゃ殴っててもおかしくないが、言ってることは正しい。

八幡「ま、そうだな。そこは訂正する」

小町「これを機に少しは捻くれた考え方も直したら?あ、もう時間だよおにいちゃん。早くしないと遅刻するよ」

八幡「おう、じゃ行ってくる」

小町「いってらっしゃい!」
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 01:49:07.84 ID:pmqHPkM3o
乙です
281 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/11(火) 13:02:02.20 ID:UOYZX4ALO
本編3-2


学校での朝の作業が終わってしまい、手持ち無沙汰だったので早めに教室に行くことにした。

八幡「うす」

心美「せ、先生、助けてください…」

俺が教室に入るや否や朝比奈が俺に駆け寄ってきた。

八幡「なんだよいきなり」

心美「あの、みんなが雑誌のことで私を質問責めに…」

うらら「ここみ!まだ話は終わってないわよ!」

そう言って蓮見も俺たちのところへやってきた。教室の後ろの方では何人かの生徒たちが机の上にある雑誌をあーだこーだ言いながら眺めている。

心美「だってうららちゃんの雰囲気ちょっと怖いんだもん…」

うらら「うららより先に雑誌のインタビュー受けるなんて…もっとその時のことを詳しく教えなさい!」

どうやら小町に今朝読まされたインタビュー記事のことが話題らしい。

八幡「あぁ、あの記事か」

うらら「え、ハチくんあの雑誌読んでるの?それはさすがに…」

八幡「俺じゃねぇ。妹が読んでるんだ。それで今朝読まされた記事がちょうど朝比奈のやつだっただけだ」

心美「せ、先生あの記事読まれたんですか?」

八幡「まぁ、一応」

心美「うぅ…恥ずかしいです…」

うらら「なに言ってるのよここみ!ハチくんでさえ読んでるのよ!今こそ世間への知名度アップのチャンスじゃない!」

心美「私は別に知名度はいらないよぉ」

うらら「甘い、甘いわよここみ!アイドルはいつチャンスを与えられるかわからないの!与えられたチャンスは最大限生かさないと、いつまでたっても有名になれないわよ!」

心美「私アイドルじゃないのに…」

八幡「おい、朝比奈も嫌がってるしそこらへんで」

うらら「でもでもハチくんもあのインタビューは物足りなかったでしょ?」

八幡「ん、まぁ、正直もう少ししっかり受け答えできるようになってもいいとは思うが」

うらら「ほらここみ!ハチくんもこう言ってるわけだし、インタビューの特訓よ!」

心美「えぇ、私にはムリだよぉ、うららちゃん…」

うらら「うららより先にインタビューを受けといてその態度は許さないわ!早速お昼休みから始めるわよ!」
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/13(木) 14:30:39.27 ID:MSAyqMNdo
乙です
283 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/14(金) 18:40:19.19 ID:7foyU3WJ0
本編3-3


昼休みになり俺が孤独にランチをしていると、蓮見が朝比奈の腕を引っ張りながらこちらへやってきた。

うらら「さ、ここみ。早速インタビュー特訓を始めるわよ!」

心美「え、う、うん…」

八幡「待て、なんでここでやるんだ。俺は1人で昼飯を食べたいんだ。あっちでやれ」

うらら「だってハチくんいるところじゃないとここみやらないって言うんだもん」

そう言われた朝比奈は俺に近づいて耳打ちしてきた。

心美「先生がいたほうがうららちゃん抑え気味にしてくれるかなって…迷惑ですか?」

八幡「いや、迷惑じゃないけど…」

それよりも腕に当たってる柔らかい感触が迷惑かもしれないです…

俺の返事を聞くと朝比奈は顔を遠ざけ、その表情は幾分か柔らかくなったように思える。

心美「あ、ありがとうございます…」

うらら「さ、じゃあやるわよ!まずは記事を見ながらダメだったところを見直すわよ」

八幡「そんなことからやるのかよ」

うらら「当然!うらら、インタビュー記事の直したほうがいいところにチェックしてきたから、これ参考にしてね」

そう言って蓮見が出した雑誌のインタビュー記事のページには付箋とマーカーと赤ペンとでびっしり埋まっている。どんだけこの記事読み込んでるんだよ…

心美「す、すごいねうららちゃん…」

八幡「もう何が書いてあるかさっぱり読めん」

うらら「これでもかなり少なくしたわよ」

八幡「……さいですか」

うらら「まずは最初よね。『大変ですけど、だ、大丈夫、です』なんて言っちゃダメよ!もっと可愛く自分をアピールしなきゃ!」

心美「ぐ、具体的にはどうするの?」

うらら「そーね、『でもうららは〜学生生活も、アイドル生活も、どっちも大好きなので〜、大変ってよりもむしろ今の状況が幸せです!』みたいな感じかしら」

八幡「おい、もうそれ蓮見の考えになってるぞ」

心美「うららちゃんはそうかもしれないけど、私はそんな風には言えないよ…」

うらら「甘いわよここみ!大事なのはこれを読んでくれる人にどう思われるのか。そのためなら自分を捨てる覚悟をしなさい!」

八幡「大袈裟だな…」

うらら「ハチくんも甘い!今の業界は本当に厳しいんだから!そもそも〜」

そうやっていつの間にか蓮見のアイドル論、業界論が始まり、俺と朝比奈はただ聞いてるだけしかできないうちに昼休みを終えるチャイムが鳴った。

心美「う、うららちゃん、もう昼休み終わっちゃうよ」

うらら「そうね、でもここみのインタビューについて全然話せてないじゃない!」

八幡「いや、お前が勝手に自分のこと話してたから終わらなかったんだろ」

うらら「しょうがないわね、続きは放課後やるわよ」

八幡「まだやるの?もうよくね?」

うらら「ダメよ!ここみにもきちんとインタビューくらいこなせるようになってほしいもん!」

心美「うん、私もインタビューに慣れたい」

うらら「よく言ったわここみ!ということだからハチくんも協力してね」

心美「私からもお願いします、先生」

八幡「…わかった」

妹と同じ年の女の子たちからのお願いなので断ることもできないどうも俺です。ほんと甘いな、俺。MAXコーヒーと同じくらい甘い。…はぁ、面倒なことを引き受けてしまった。
284 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/15(土) 00:14:43.41 ID:cXq54sKu0
番外編「ひなたの誕生日前編」


八幡「くぁっ、あー」

俺は今、学校の中庭を散歩している。ここは晴れた時の昼休み、爽やかな風が吹いて常盤が世話している植物が揺れるのを見るのがとても心地いい。何より人があんまりいない。騒がしい教室や職員室なんかよりよっぽど中庭のほうが気分転換に向いている。

ただ、今日は少々状況が異なっていた。

ひなた「うーん、うーん。ちょっと待っててね〜、今助けるからね〜」

見ると向こうの方にある1本の木の下で南が何かに話しかけながら上に向かって手を伸ばしている。何してんのあいつ。儀式?

関わりたくないなぁ、と思ってそれとなく回れ右をしたら突然大きな声が背中に飛んできた。

ひなた「あ、八幡くん!ちょうどよかった、ちょっと手伝って!」

八幡「いや、そんなわけのわからない儀式に付き合うほど俺は暇じゃない」

ひなた「違うよ!この木の上にネコがいるんだけど下りられなくなっちゃってるの。だから手伝って!」

あぁ、だから気に向かって手を伸ばしてたのね。そうならそうと早く言ってよ。

八幡「まぁ、そういうことなら別にいいけど」

ひなた「じゃあひなたのこと肩車して!」

八幡「はっ?」

ひなた「だって手伸ばしてもネコまで届かないんだもん」

八幡「つか俺には無理だから、多分」

ひなた「やってみないとわかんないでしょ!ほら早く屈んで!」

八幡「いたっ、肩を押すなよ…」

俺は渋々体を屈めて南を肩の上に乗せる。

八幡「ちゃんと乗れたか?」

ひなた「大丈夫!」

八幡「よし。ふんっ」

我ながら情けない声を出しながら俺は南を肩車する。思ったより南は重くないが、それでもキツイものはキツイ。

ひなた「おぉ!高い高い!」

八幡「そういう感想はいいから、早く猫捕まえて…」

ひなた「わかった!さぁ、おいで〜ネコちゃ〜ん」

南はゆっくり手を伸ばしてネコを捕まえようとする。その時突然猫が南の顔に飛び付いた。

ひなた「うわぁー、前が見えない〜!」

八幡「ちょ、動くな…」

そう言って南が俺の上で暴れ、それにつられて俺も右に左に揺れてしまう。

ひなた「八幡くん、動かないで!」

八幡「お前こそ動くな、って」

次の瞬間、俺の足は地面を離れ盛大に転倒してしまった。

八幡「いってぇ…」

ひなた「大丈夫?」

顔を上げると南がネコを抱えながら俺を心配そうに見つめている。

八幡「俺はまぁ平気だけど、お前は?」

ひなた「ひなたはちゃんと着地したからどこもケガしてないよ!ネコも大丈夫!」

ネコ「ニャー」

相変わらず抜群の運動神経なことで…
285 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/15(土) 00:16:24.97 ID:cXq54sKu0
番外編「ひなたの誕生日後編」


ひなた「それで、このネコどうしよう。何かエサもってきたほうがいいかな」

八幡「いや、ひとまずこのままそっとしておくのが1番だろ。見た所子猫のようだし、多分親猫がこいつを探してるだろ。むやみにエサあげて懐かれても、この後ずっと俺たちが世話してあげられるわけじゃないしな」

ひなた「そっか。じゃあ昼休み終わるまではひなたたちと一緒に親ネコ待ってようね」

ネコ「ニャ」

そう鳴くと子猫は座っている俺と南の隙間に入り丸くなって寝始めた。

ひなた「ふふっネコ寝ちゃったね」

八幡「いくらなんでもくつろぎすぎだろ…」

ひなた「ひなたと八幡くんの間にいるから、じゃない?」

八幡「まぁ俺は人間以外には好かれるからな。それにウチにも猫いるし扱いには慣れてる。俺からしたらお前が落ち着いてるのが意外だ」

ひなた「あ、ひどーい。今日はひなたの誕生日だからね。『オトナ』な女性になったんだよ」

八幡「そのセリフがもう子供っぽいわ…」

ひなた「もう子供じゃないもん!って、あれこの子の親ネコじゃない?」

南が指差した方には確かに子猫と似た毛並みをした親猫が歩いていた。

ひなた「ほら、お母さんかお父さんが迎えに来たよ」

南が優しく揺らすと子猫はすぐ起きて親猫のほうに歩いて行った。そして一度こっちを振り向いて「ニャー」と一鳴きした。

ひなた「うん、またね!」

そう言って手を振りながら子猫を送り出す南の横顔が、いつもの南とは全く違うように見えた。

ひなた「子ネコいっちゃったね」

猫が歩いていった方向を見つめながら南がつぶやいた。

八幡「あぁ。てかお前、もっとさびしがるかと思ってたけどそうでもないんだな」

ひなた「だってあの子ネコ、八幡くんの言う通り親ネコと会えたんだもん。これであの子も安心でしょ?」

八幡「…お前、意外とちゃんとしてんだな」

俺がそう言うと、南は頬を膨らませながら俺のことを軽く睨んでくる。

ひなた「またそうやってひなたを子供扱いする!ひなたは『オトナ』な女性なんだってば!」

八幡「だからそのセリフが子供っぽいんだっつの…でも、ま、お前ももう少し年を重ねたら、立派な『大人』な女性になれるんじゃねえの」

ひなた「ほんと?」

八幡「確証はできんがな。お前の努力次第ってとこだ」

実際、子猫を送り出すときの南の表情はあどけなさは全くなく、むしろ「美しい」ともいえるものだった。でもその表情も一瞬だったし、こうやって褒めるとまた南が調子に乗りそうだから言わないけど。

ひなた「じゃあ、ひなた頑張る!頑張って八幡くんに認められるような『オトナ』な女性になる!」

そうやって宣言する南の顔は、いつもの無邪気な笑顔に戻っていた。

八幡「でも今のままじゃまだまだだな」

ひなた「え〜、そんなことないってば!」

俺たちはそうやって言い合いながら教室へ戻っていった。
286 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/04/15(土) 00:18:17.13 ID:cXq54sKu0
以上で番外編「ひなたの誕生日」終了です。ひなたお誕生日おめでとう!正直、エヴィーナの次に考えるの難しかったです…
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/15(土) 02:03:15.39 ID:lJZcpRQFo
乙です
288 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/18(火) 20:26:50.56 ID:guKBuReR0
本編3-4


放課後、ところ変わって俺たち3人はとあるカフェにいる。てっきり俺は学校で特訓とやらをやるのかと思ってたのだが、蓮見の「せっかくだから3人でケーキを食べたい!」という発言を受け、移動したのである。

で、このカフェがまた見事に若い女性客ばかりで現在進行形で視線が痛い……入り口で店員に人数を言った時も「本当に3名様で宜しいですか?」とか聞き返されたし。まぁ、麗しい制服姿の女の子2人と、目が腐ってるスーツ姿の男1人でいたらそりゃ怪しまれますよね、はい。とりあえず席にはついたが、相変わらず居心地が悪い。

八幡「ねぇ、この店女性客ばっかりじゃない?」

うらら「だってこの雑誌に紹介された店だもん。当たり前でしょ」

そう言って蓮見は件の雑誌を開く。そこには「今話題のオシャレカフェ!」と題して、今いるカフェの店内の写真と紹介文が載っている。

八幡「つまり、このページ見て来たくなったのね…」

うらら「うぅ、だって女の子なら惹きつけられるのよ!ほら、ここみだって夢中じゃない」

俺の対角線上、蓮見の隣に座る朝比奈はそんな俺たちの会話が聞こえてないのか、メニューをじっと見て「これも美味しそう、でもこっちもいいなぁ」とブツブツ呟いている。

まぁ俺もさっさとメニュー決めるか。うーん、なんかここのケーキ、名前だけ凝っててどんなものか全然わからん。無難なものだと、

「無難なのだとこれがいいんじゃない?」

後ろから指さされたのはチョコケーキだった。

あぁ、確かに普通のチョコケーキとかなら味も予想つくな。って、後ろから指?

ガバッと振り向くとそこには俺と同じアホ毛が揺れる、ニコニコ笑う美少女が立っていた。

八幡「……小町、こんなとこで何してんの」

小町「お兄ちゃんのいるとこ、必ず小町もいるのです。あー、今の小町的にポイント高い?」

てへぺろっとしながら小町は空いている俺の隣に座る。ホントいちいちあざとい。

八幡「うぜぇ、で実際のとこは?」

小町「雑誌でこのお店を見て来たくなりました。ていうか、そういうお兄ちゃんこそ何してるの、女の子2人も連れて」

八幡「あぁ、それは、まぁ」

何て説明するのがいいのだろうか、と思っていると向かいの蓮見が俺に問いかけてきた。

うらら「ねぇ、ハチくん、この人誰?」

八幡「ん?俺の妹だ」

小町「はーい!お兄ちゃんの妹小町でーす!兄がいつもお世話になってます!それでお兄ちゃん、このお二方は?」

八幡「神樹ヶ峰の生徒の、」

うらら「蓮見うらら、中学3年生よ!よろしくねこまっち!そっか〜、ハチくんの妹か〜可愛い〜、なんかあんまり似てないね♪」

八幡「うるせぇ……」

蓮見は俺の言葉を遮って自己アピールをしつつ、俺をけなしてきた。まぁ、こんな兄に似ず、可愛く成長したのは奇跡だろう。ほんと似なくてよかった。特に目とか。てかこまっちって何?もしかしなくてもあだ名?

小町「おおっ、小町も中3なんだ〜!よろしくね!」

八幡「で、こっちが、」

小町「も、もしかして朝比奈心美ちゃん?」

小町は身を乗り出して朝比奈に迫る。対して朝比奈は少し身を引いて答える。

心美「は、はい、朝比奈心美です、よろしくね、小町さん…」

小町「わぁ!本物の心美ちゃんだぁ!雑誌で見るよりすごい可愛い〜!ていうか同い年なんだから小町でいいよ!」

心美「じゃ、小町ちゃん、で…」

小町「きゃー可愛い!もう、お兄ちゃん、こんな可愛い子たちとカフェでお茶とは、なかなかいい御身分ですなぁ」

八幡「俺はただの付き添いだ」

うらら「うららたち、今から心美のインタビューの特訓をやるの。こまっちも一緒にどう?」

小町「楽しそう!小町も参加していい、お兄ちゃん?」

八幡「……勝手にしろ」
289 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/19(水) 18:23:47.80 ID:uAWsROAo0
本編3-5


うらら「こまっちはここみのインタビューどう思った?」

心美「な、なんでも言って?」

小町「うーん、失礼かもしれないけど、なんだかすごく受け身だなって思った」

心美「受け身って、どういうこと?」

小町「なんて言えばいいのかな。ただ質問に答えてるだけっていうか、心美ちゃん自身の伝えたいことが何なのかよくわからなかった。それも可愛かったけどね!」

うらら「確かにそうね。ここみはもっと主体性を持つべきだわ!」

心美「しゅ、主体性?」

うらら「そうよ!自分が思ってることをもっと外に出していかないと!」

八幡「おいおい、いきなり主体性なんて言ってもそう簡単に身につくものじゃないだろ」

小町「え〜、そうかなぁ?」

うらら「うららは主体性持ってるよ!」

八幡「……確かにお前らは主体的すぎる。少しは遠慮しろ」

心美「や、やっぱり私がダメなのかな」

八幡「……ま、俺は朝比奈のそういう大人しいところも一つの個性として成り立ってると思うし気にしなくていいと思うけどな」

心美「そうですか?」

八幡「あぁ。俺を見てみろ。働きたくない、学校行きたくない、って常々言ってるだろ。それに比べたら全然大丈夫だ」

小町「いや、そりゃお兄ちゃんに比べたら人類のほぼ全員が良い人になっちゃうよ」

うらら「でもハチくんもなんだかんだキャラが立ってるのよね〜。それこそ主体的に『働きたくない』『早く帰りたい』って言ってるもん」

……確かに俺も一般的な人間とは口が裂けても言えない。まぁ小町や蓮見とは方向性が違うけど。

小町「あ、そうだ!小町閃いちゃった!」

そんな時突然小町が何か思いついたらしく声をあげた。

八幡「なに?」

小町「小町たちで心美ちゃんの魅力を見つけれてあげればいいんだよ!きっと自分の魅力がわかれば主体的になれるはず!」

うらら「それ名案!」

小町「でしょ?名付けて『心美ちゃんをプロデュース大作戦!』」

心美「そ、そんな、悪いよぉ」

朝比奈は遠慮がちに言うが、小町と蓮見はおかまいなしに話を続ける。

うらら「安心しなさいここみ。うららたちが必ずここみの魅力を見つけ出してあげるわ!」

小町「小町も全力でサポートするから!」

心美「あ、ありがとう」

なんだか話がおかしな方向に進んでないか?ここらで切り上げないとさらに話が脱線しそうだ。

八幡「そろそろいい時間だし帰るぞ、小町。じゃあな2人とも、気をつけて帰れよ」

小町「あ、ほんとだ。じゃあうららちゃん、心美ちゃん、またね!」

うらら「うん!またね、ハチくん!こまっち!」

心美「せ、先生、小町ちゃん、さようなら」
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/19(水) 23:28:36.03 ID:HjBF9Yhio
乙です
291 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/20(木) 18:03:12.34 ID:utF8+NEZ0
本編3-6


八幡「ただいまー」

小町「あはは、もううららちゃん面白い〜!あ、お兄ちゃんお帰り〜」

カフェの帰り際に小町は蓮見と朝比奈と連絡先を交換し、それ以来よく2人と電話するようになった。まぁ学校が違うから会えないってのはあるとは思うが、そんな電話することあるの?

小町「うん、うん、そうだね〜、それなら〜」

相変わらず電話を続ける妹を無視して俺はご飯をよそう。すでにテーブルの上には今日の晩ご飯のおかずが準備されている。たまに俺が帰るのが遅くなる時もあるのだが、そんな時でも小町はご飯を食べるのを待ってくれている。良い妹だ。絶対よそには行かせん。

八幡「ほら小町。飯食べるぞー」

小町「はーい!じゃあうららちゃん、こっちは任せてね。じゃあね!」

小町は電話を切って俺の向かいに座ると、わざとらしく咳払いを一つする。

小町「いやぁ〜、小町中3で受験生じゃん?家でも学校でも勉強してるからストレス溜まっちゃって。だからお兄ちゃん、週末小町のストレス発散に付き合って?」

えー、今の今まで楽しそうに電話してたじゃん。ホントにストレス溜まってるのかこいつは?と、思っても俺は言わない。何故かというと、言っても無駄だからだ。

八幡「まぁ、いいけど」

小町「ほんとに?」

八幡「小町がそう言うなら俺に拒否権はない」

小町「わーい!ありがとうお兄ちゃん!」

八幡「で、どこでなにすんの」

小町「そ、れ、は、当日のお楽しみでーす!」

こいつしばいたろか、と思う心を俺はぐっと抑える。

八幡「ふーん」

小町「テキトーだな。まぁいいや。とりあえず、週末は朝早く出かけるつもりだからよろしくね」

八幡「え、休日くらいゆっくり寝かしてくれよ」

一番楽しいのが次の日が休日の夜に死ぬほど無駄な時間を過ごして夜更かしして、次の日遅くまで寝ることじゃないのか。で、起きても結局夜まで何もせず「俺今日何やってるんだろ」って思って次の日の平日に絶望するまでがお約束。

小町「ダメ。寝るだけの休日なんて体に悪いよ。たまには外にも出ないと!」

八幡「はいはい、わかったよ……」

俺の反応を見て小町は満足したのか、ごはんを食べ始める。

小町「じゃ、よろひくねお兄ひゃん!」

八幡「食べながらしゃべるな、汚い」
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/21(金) 03:24:47.62 ID:q2Ns2skOO
期待
293 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/21(金) 20:55:43.23 ID:fmvzb7dp0
本編3-7


迎えた休日。俺は早朝に小町に起こされ、今電車の中にいる。休日の、しかもまだ朝早いためか、そこまで人も乗っていない。

こうして空いてる電車に兄妹2人で乗ってると、なんか逃避行みたいで少しワクワクする。本当に現実から逃げられないかなぁ。最近の神樹ヶ峰との交流からは特に逃げたい。

小町「なーに朝から目腐らせてるのお兄ちゃん」

八幡「俺は悪くない。社会が悪い。つか、これどこ向かってるの」

小町「んー、まだ内緒〜」

今はこんな理解できない状況からも逃げ出したい。

小町「でももう着くから!ほら、ここで降りるよ」

小町に促され電車を降りたものの、周りにはこれといって目立つ建物は見当たらない。

八幡「小町、こんなところで何するつもりなんだ?」

小町「行けばわかるから!ほら行くよ〜」

そう言って意気揚々と歩く小町の後ろを付いて歩いていく。しかし、見渡してもストレスが発散できそうなスポットは見えない。強いて言えば緑豊かな景色くらい。

すると唐突に小町が立ち止まった。

小町「はい、到着!」

八幡「は?ここ?なんもないんだけど」

小町「え、あるじゃん鳥居」

八幡「なに、鳥居巡りでも始めるの?」

小町「小町そんな趣味は持ってないよ…ここで待ち合わせすることになってるの」

八幡「待ち合わせ?誰と?」

うらら「うららとだよーん!ハチくん、こまっちおはよー!」

心美「うららちゃーん、1人で行かないでよぉ」

突然の蓮見と朝比奈が神社の中の方からこちらへ走って来た。

小町「あ、うららちゃん、心美ちゃんおはよ!約束通りお兄ちゃん連れてきた!」

うらら「さすがこまっち!」

心美「き、今日はよろしくお願いします」

八幡「……あの、状況が全く飲み込めてないんですけど」

心美「実は雑誌にインタビューが載って以来、平日でも参拝客が増えちゃったんです。だから休日はもっと増えると思って、うららちゃんと小町ちゃんにお手伝いをお願いしたんです」

うらら「で、それに合わせてこの前カフェで言ってた『心美をプロデュース大作戦』も実行するの!」

八幡「……はぁ、なんとなく状況はわかった。で、なんで俺も連れてこられたの?」

小町「少しでも人手あったほうがいいと思って連れてきちゃった。どうせヒマでしょ?」

八幡「いや、ヒマだけどさ。それならそうと言ってくれよ」

小町「でもお兄ちゃん、神社でお手伝いって言ったら絶対来なかったでしょ」

八幡「……確かに」

心美「あの、迷惑だったでしょうか?」

八幡「ま、来ちゃったからには、俺にできる範囲で手伝うわ」

余計逃げ出したくなったのが本音だが、今さら帰るとも言えないし……

心美「あ、ありがとうございます」

うらら「よーし、そしたら心美の神社のお手伝いアーンド『心美プロデュース大作戦』決行よ!」

小町「おー!」

心美「お、おー」

八幡「はぁ……」
294 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/22(土) 23:44:40.47 ID:Jg67jXwl0
本編3-8


朝比奈に連れられ、俺たちは神社の奥の控え室に案内された。

心美「で、では先生。ここが先生の控え室です。着替えをして少し待っててください」

八幡「着替えって、これにか?」

俺は机の上に置いてある袴を見ながら尋ねる。

心美「は、はい。一応、それなりの格好をしてもらわないといけない決まりになってるので」

八幡「……了解」

小町「もしかして小町の服もあるの?」

うらら「もちろん!こまっちの服は隣の控え室にあるわよ」

小町「おぉ!やった!」

心美「じゃ、じゃあ私たちも着替えてくるので失礼します、先生」

八幡「おう」

でも1人になって改めて考えると、これ着るのけっこう恥ずかしいな。てかこれどうやって帯しめるの?

悪戦苦闘してると隣の部屋から声が聞こえてきた。

小町「お兄ちゃんー、小町たち着替え終わったよー」

八幡「おー、俺も終わったぞ」

結局帯の結び方がよくわからず適当に結んでしまった。ま、着れてればいいでしょ。

小町「じゃ入るねー」

襖が開くと、そこには3人の艶やかな巫女が立っていた。

3人とも真っ白な白衣を上半身に纏い、下半身には鮮やかな赤い緋袴を身につけている。髪もみんないつもと違い、後ろで一つにまとめていて清楚な雰囲気を醸し出している。

うらら「どうどうハチくん?」

小町「小町たち、似合ってるでしょ?」

八幡「あぁ。まぁ、いい感じなんじゃねぇの」

ついぼーっと眺めてしまい、そんな感想しか口に出せなかった。

小町「ありがとー!でもお兄ちゃんはそんなに似合ってないね」

八幡「うっせ」

心美「あ、あの、先生。結び方が間違ってます。直すので動かないでください」

そう言うと朝比奈は膝立ちになって、俺の腰の帯を結び直そうと腰に腕を回してくる。……なんかこの状況そこはかとなくいかがわしくない?

心美「はい、結べました。先生苦しくないですか?」

朝比奈は少し心配そうに上目遣いをしながら聞いてくる。そんな表情すんなよ、ちょっとドキッとするだろうが。

八幡「え?おう、大丈夫大丈夫。助かった」

心美「よかったですぅ」

安心したように笑顔になる朝比奈とは異なり、小町は不敵な笑みを浮かべ、蓮見は拗ねるようにそっぽを向いている。

八幡「おい、どうした?小町、蓮見」

小町「思わぬダークホースの登場かな?」

うらら「……ここみには負けないもん」

2人はなにかぶつぶつ言っているがよく聞こえない。

八幡「なんだって?」

小町「べつに〜」

うらら「なんでもないわよ!」
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/23(日) 10:28:28.52 ID:iH7JofyDO
つC
296 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/23(日) 14:31:09.31 ID:yZ6uxURGO
本編3-9


うらら「はーい家内安全お守りは800円でーす!」

小町「おみくじはこっちですよ〜!」

着替え終わった俺たちは境内で手伝いを始めた。小町と蓮見は売店で売り子さんをしている。売店はたちまち盛況になり、「売り子さん可愛いよね」みたいな会話がたまに聞こえてくる。で、そんな俺は

八幡「……」

売店に並ぶ長蛇の列の整理役をやらされている。それも『こちらが列の最後尾です』という看板を持って立ってるだけ。列に割り込もうとする人に声をかける以外は無言である。なにも面白みはないが、心のスイッチを切れば耐えられないこともない。

そして朝比奈はというと

少女A「めっちゃ可愛い〜!」

心美「あ、ありがとうございます」

少女B「一緒に写真撮ってもらってもいいですか?」

心美「は、はい」

本殿のほうでちょっとした人気者になっていた。朝比奈の周りには同年代の女の子たちが群がり、遠くから怪しいおっさんが数人、その光景をカメラに収めている。おい、おっさん。それ犯罪だぞ。やめろよ。

男「すんません、トイレどこっすか?」

八幡「あ、トイレなら絵馬掛けの向こう側にあります」

男「あざーす」

俺に声をかけてくる人はこんなもんしかいない。それでも大変なのに、3人とも大勢の人に笑顔で対応してすげぇな。俺には絶対できない。

そうして突っ立ってしばらく経った昼ごろ、小町と蓮見が俺のところへやってきた。

小町「お兄ちゃんお疲れー」

八幡「おう、そっちは休憩か?」

うらら「うん。うららとこまっちの可愛さでお守りが飛ぶように売れちゃって大変!」

八幡「そいつはよかったな」

小町「ほらお兄ちゃん。もうそんなに列も長くないし、本殿のほう行こ」

八幡「本殿でなんかあるの?」

うらら「心美が舞うの!」
297 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/04/23(日) 14:39:15.48 ID:yZ6uxURGO
うららの喋り方のコレジャナイ感がすごい…
どうすればうららっぽい喋り方になるんだ…
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/23(日) 20:11:02.51 ID:d/K9nV+A0
乙。
別にそう違和感はないよ、脳内再生余裕
「ここみ」がいつの間にか漢字になってるけど
299 : ◆JZBU1pVAAI [sage]:2017/04/23(日) 23:10:01.65 ID:yZ6uxURGO
>>298うららの心美への呼び方が違ってました。これから先は気をつけます
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/24(月) 02:01:05.16 ID:OO3I0VXxo
乙です
301 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/24(月) 22:26:02.71 ID:JbfaqJzS0
本編3-10


俺たちが本殿に行くとすでにかなりの人だかりができていて、舞台には朝比奈が立っていた。

放送「これより当神社の巫女、朝比奈心美が舞を披露いたします。参拝客の皆さま、美しい舞を是非ご覧ください」

放送が終わると、神楽が鳴り始める。朝比奈はその音楽に合わせてゆったりと、優雅に舞う。手にある扇も使いながら美しく舞う姿からはいつもの臆病な雰囲気は全く感じない。

小町「キレイ……」

うらら「やるわね……」

小町や蓮見はもちろん周りの人たちも朝比奈の舞に魅力されているようで、ため息や囁き声があちこちから聞こえる。

小町「心美ちゃんすごいねお兄ちゃん」

八幡「あぁ」

小町「でも舞台が黒いのがもったいないよね。ちゃんと掃除しなきゃ。せっかく舞が綺麗なのに」

八幡「あ?床?」

注意して見てみると、確かに木が黒くなっている箇所がある。あれって、

八幡「……!おい蓮見。舞台の床を見ろ」

うらら「え?ん〜、あっ。これってまさか……ここみ!床!!」

蓮見の声が聞こえたのか、舞台上の朝比奈も床の異変に気付き舞を中断する。

その時床の黒い魔法陣が光り、そこからイロウスが出現した。

うらら「イロウス!」

心美「皆さん!今すぐここから逃げてください!」

蓮見はすぐに武器を出しイロウスへ飛びかかる。朝比奈は舞台上から大声で呼びかけるが、その途端に参拝客は我先に走り出し、本殿は混乱している。このままだと参拝客が危ない。それを防ぐには、

八幡「小町。お前は神社にいる人の避難を指揮してそのまま逃げろ」

小町「え?でもお兄ちゃんは?」

八幡「俺はここに残る。曲がりなりにもあいつらの先生だからな」

小町「なら小町も残る」

八幡「ダメだ。参拝客には完全に避難してもらわないと戦いづらい。それに、もし小町の身に何か起こったら俺が親父に殺される。俺の命のためにも逃げてくれ」

小町「目的が半分お兄ちゃんのためになってるよ……でもそう言うならわかった。お兄ちゃんの言う通りにするよ」

八幡「頼む」

小町は一度大きく頷いて人混みの方へ駆け出していった。

八幡「蓮見、なんとか小町が参拝客を避難させるまでここで持ちこたえてくれ」

うらら「わかった!」

心美「あの、私は何を」

八幡「朝比奈は参拝客が残っていないか神社を見回って、誰もいないのが確認できたら連絡してくれ」

心美「わ、わかりました。待っててねうららちゃん!すぐ戻ってくるから」

うらら「足止めは任せときなさい!」
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/25(火) 00:38:39.21 ID:tUQrPHfXo
乙です
303 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/25(火) 20:44:38.28 ID:wURqF/Kd0
本編3-11


八幡「じゃあ俺たちはこいつらをどうにかするか」

改めて俺と蓮見はイロウスに向き合う。

うらら「どーにかするのはうららでしょ♪」

八幡「……確かに」

うらら「いや、そんな意味で言ったんじゃないからね。元気出して!」

八幡「別に落ち込んでねぇよ。ほらイロウスに集中しろ」

うらら「大丈夫!小型イロウス数匹くらいなら余裕よ!」

蓮見はそう意気込んで杖を構える。魔法陣から出てきたところを見ると、こいつはレイ種ってやつか。

うらら「星守うららのステージ開幕よ!『炎舞鳳凰翔』!」

たちまち炎に包まれた蓮見は飛び上がり、上空からイロウスに向かって突撃する。その攻撃で周囲のイロウスはたちまち消滅する。

うらら「どうどうハチくん!うららの勇姿!」

八幡「ご苦労さん。あぁ、まぁ良かったんじゃねえの」

うらら「うわー。こまっちに聞いた通り、褒めるのも素直じゃないなぁ」

八幡「うるせ。つかまだ大型イロウスを倒せてない。油断すんな」

小型イロウスをいくら倒しても大型イロウスを倒さないと意味がない。絶対近くにいるはず。

その時通信機が鳴り出した。多分朝比奈からだろう。

八幡「もしもし」

心美「せ、先生!助けてください」

予想に反してかなり切羽詰まった声色だ。

八幡「どうした」

心美「神社全体にイロウスが出現していて、私1人では倒しきれないです。ど、どうすれば」

八幡「わかった。蓮見とすぐそっちに向かう。今どこだ」

心美「い、今は売店前の参道にいます」

八幡「すぐ蓮見と向かう。俺たちが行くまで無理はするなよ」

心美「わ、わかりました。お願いします」

そうして通信は切れた。くそ、すでに神社全体が襲われてるのか。

八幡「おい蓮見。ここだけじゃなくて神社全体にイロウスが現れてると今朝比奈から連絡があった」

うらら「ここみは大丈夫なの?」

八幡「無理はしないように言っといた。だが早く合流しないとマズイ」

うらら「すぐ行くわよ!」
304 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/04/27(木) 23:19:42.34 ID:dn6LpICn0
本編3-12


俺たちが参道に着くと、朝比奈が多数のイロウス相手に孤軍奮闘していた。

うらら「ここみ!」

心美「うららちゃん!先生!」

八幡「大丈夫か?」

心美「は、はい。でもイロウスが多すぎて対処しきれなくて……」

小型イロウスばかりだが、いかんせん数が多いのと散らばってるのとで効率的に倒せていない。

うらら「ハチくん!うららのスキルで一網打尽にするわ!」

八幡「でもさっきのスキルじゃせいぜい周り数メートルのイロウスしか倒せないだろ」

うらら「ふふん、うららを甘く見ないでよ!さ、ステージ第二幕の開演よ、『パンプキンクイーン』!」

蓮見が叫ぶと上空から大きなかぼちゃが降ってきた。かぼちゃ?

八幡「は?なにこれ?」

心美「うららちゃんのスキルです。あのかぼちゃが時限爆弾になってるんです」

八幡「時限爆弾?」

うらら「でもただの時限爆弾じゃないわよ!」

何がだ、と言いかけた時異変に気づいた。どの小型イロウスもかぼちゃに吸い寄せられていくのだ。

八幡「もしかしてこの爆弾」

うらら「そう、かぼちゃがイロウスを引き寄せてくれるの。さ、ここみ!今のうちにイロウスを叩くわよ!」

心美「う、うん!」

そうして2人は外からイロウスを攻撃してその数を減らしていき、

うらら「そろそろ爆発するわ!」

時間が経ったかぼちゃは周りに残ったイロウスを巻き込んで爆発した。

八幡「よし、これでかなり数が減ったな」

心美「でもまだ残ってます」

うらら「もう一回かぼちゃをやればいいだけの話よ!『パンプキンクイーン』!」

再びかぼちゃが降ってきて、イロウスが引き寄せられていく。

うらら「いくわよここみ!」

心美「うん!」

だが次の瞬間、かぼちゃが爆発した。

八幡「な、なにが起こった?」

うらら「うっ。実はあの爆弾、一定以上のダメージを受けても爆発する仕組みになってるの」

八幡「てことはまさか」

心美「た、多分出てきたんだと思います。大型イロウスが」

煙が晴れてくると、朝比奈の言う通り大型イロウスの輪郭が見えてきた。高さは4,5メートルほどで全身骨だが、角としっぽがあるぶんさらに巨大に感じる。

八幡「こいつがおそらく親玉だな」

心美「お、大きいよぉ」

うらら「しっかりしなさいここみ!大丈夫、うららたちならできる!」
305 : ◆JZBU1pVAAI [saga]:2017/05/01(月) 00:57:32.71 ID:UaigGRmc0
本編3-13


蓮見と朝比奈は杖を構え大型イロウスへ攻撃を仕掛けようとする。しかしその攻撃を次々と湧いてくる小型イロウスが身代わりとなって受け、大型イロウスに攻撃が届かない。

うらら「もうっ!なんなのよあの小型イロウスは!」

心美「し、しょうがないようららちゃん」

八幡「攻撃し続ければ隙が生まれるはずだ。そこを逃すな」

そうして攻撃を続けると小型イロウスが湧いてこない瞬間ができた。

八幡「今だ!」

うらら「はあっ!」

心美「やぁ!」

2人はすぐさま攻撃するが、大型イロウスは地中へ潜って攻撃をかわす。

うらら「今度は隠れるのね」

心美「ど、どこから現れるんだろう……」

マジか、また地中に隠れるのか。千葉に現れたシュム種といい、イロウスって地中が好きなの?そのまま地中に潜っていなくなってくれるとありがたいんだが。

などと考えていると蓮見の足元に大きな黒い魔方陣が出現した。

八幡「蓮見!足元に注意しろ!」

うらら「わかってる!」

すぐに魔方陣が光りだし、そこから大型イロウスが腕を振り回しながら現れる。だが、蓮見は素早く緊急回避のためにローリングして攻撃をかわす。

心美「うららちゃん!」

うらら「うららは大丈夫!早く大型イロウスに攻撃を!」

心美「うん!」

朝比奈は大型イロウスを攻撃する。しかし大半の攻撃はまた湧き出した小型イロウスが身代わりに受けたため、ほとんど大型イロウスにダメージを与えられない。

心美「ま、また小型イロウスが……」

うらら「もうどうすればいいのよ!」

八幡「どうするもなにも、こうなったら小型イロウスもまとめて攻撃するしかないんじゃないか」

心美「それならスキルを連発するしか……」

うらら「なら連発すればいいじゃない!」

そう言うと蓮見は矢継ぎ早にスキルを連発していく。

うらら「『チャーム・アイズ』!『エレクトロサポート』!」

蓮見のスキル攻撃でダメージを大型イロウスに与えることに成功した。

うらら「『チャーム・アイズ』でマヒさせて、『エレクトロサポート』でパワーアップしたうららの攻撃を受けなさい!『炎舞鳳凰翔』!」

だが蓮見がスキル名を唱えてもさっきみたいな炎は出てこない。

心美「うららちゃん……?」

八幡「……お前もしかして」

うらら「SP使い切っちゃった……」

八幡「なにやってんだ。スキル使えなくなるってかなりやばいぞ」

うらら「だ、だって参道に来た時に『パンプキンクイーン』何回も使っちゃたんだもん!それに小型イロウスもまとめて攻撃しろって言ったのハチくんじゃん!」

八幡「いや、確かにそう言ったけど、ここまでするとは思わないだろ」

自分でできること減らしてどうするんだよ。でも今さら後悔してもどうしようもない。まずはこの状況を打開することを考えないと……
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