【ヤンデレCD】ヤンデレロンパ〜希望のヤンデレと絶望の兄〜2スレ目

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449 :♪100%OFFセールのテーマ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 01:11:27.93 ID:7JEoXNNe0



ガシャァァン



ウメゾノ ミノル
「武器屋の癖にsecurityガバガバすぎるんだよなぁ」


ノノハラ レイ
「重機で突撃することを想定していなかった店側の責任です」


ノノハラ ナギサ
「そうなの?」


ウメゾノ ミノル
「普通そう簡単に盗まれないようにするはずなんだよなぁ。
 あ、今足ひれカートに入れたけど、これ使われることないから」


サクラノミヤ エリス
「え、そうなんですか?」


サクラノミヤ アリス
「そもそも何のために使うのよ……」


ユーミア
「……何故暗証番号がそんなあっさりと割れるんですか」


マスタ イサム
「その辺は深く考えちゃダメだぞユーミア」


アサクラ トモエ
「でもここまで派手にやってたら――そりゃくるよね、警察」


450 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 01:29:21.13 ID:7JEoXNNe0


―――


『やだぁ……』



ウメゾノ ミノル
「ダメだよちゃんとAT-4の前後は確かめないと」


ノノハラ レイ
「説明書を読んだはずなんだけどねぇ」


ユーミア
「トリガーに違和感を覚えなかったのでしょうか?



―――


『きゃぁ!』



ユーミア
「何故無反動砲で後ろに転がるんです? さっきは転ばなかったのに」


マスタ イサム
「その辺気にしたら負けなんだぜユーミア。こういう映画はノリと勢いで出来てるからな」



―――


『こんなの飛行機じゃないわ! 羽のついたカヌーよ!』
『だったら漕げばいいだろ!』



ノノハラ ナギサ
「その理屈はおかしいと思う」


ノノハラ レイ
「何とかできるできないじゃない。何とかするんだよ」



―――


『動け、動けってんだよこのポンコツがぁ! ――この手に限る』



ウメゾノ ミノル
「この手しか知らないんだよなぁ」


ユーミア
「壊れかけの機械を叩いてどうにかするのはどうしたらよいものか……、不安です」


アサクラ トモエ
「ちょっと無理させて寿命を無理矢理延ばしてるって考えたら、空恐ろしいね」


451 :♪一人ノルマンディーのテーマ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 01:57:21.00 ID:7JEoXNNe0


―――



ユーミア
「……何故単騎で、しかもゴムボートで上陸など」


ウメゾノ ミノル
「もとは足ひれ使って潜入って感じだったらしいんだけど、それじゃシュワちゃんの筋肉が見れないじゃないかってことでこうなったらしいよ」


ノノハラ レイ
「元ボディービルダーだしね。魅せたい欲求がついまろび出ちゃったんだろうさ」


ユーミア
「見つかって迎撃されたら一巻の終わりでしょうに……。
 上陸したらしたで何故そうも悠長に武装を始めるのですか……」


アサクラ トモエ
「ヒーローの変身シーンは邪魔しちゃいけないお約束なんだよ?」



\デェェェェン/



ノノハラ レイ
「やっぱこのシーンカッコいいなぁ」


マスタ イサム
「浪漫があるな」


オモヒト コウ
「なんだろうな、完全武装だと安心感がある」


ウメゾノ ミノル
「これが究極完全体アーノルド・シュワルツェネッガーだ!」



452 :――しばらくの間島がドンパチ賑やかになるシュワちゃん無双をお楽しみください―― ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 02:03:07.15 ID:7JEoXNNe0



ウメゾノ ミノル
「やることが派手だねぇ」


ノノハラ レイ
「この時点では娘がどこにいるのか解っていません」


ユーミア
「クレイモアでこれほどの爆発起こせませんよね? それに向きも逆ですよね?」


コウモト アヤセ
「あー……、うん。これはアクションを楽しむものだから、そういうツッコミは野暮ってものじゃないかな」


ノノハラ ナギサ
「あぁ、綾瀬さんまで」


453 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 02:18:55.94 ID:7JEoXNNe0
―――



『来いよベネット。銃なんか捨てて、かかってこい』



ノノハラ レイ
「ここから筋肉式洗脳――もとい、説得が始まるぜ」


ユーミア
「……何故自ら不利になるようにするのですかこのベネットという男は。
 人質も銃も捨てるなんて」



―――



『ぐあぁぁぁぁぁ!!』



ウメゾノ ミノル
「普通の映画ならこれでfinishなんだけどなぁ」


ノノハラ レイ
「こっから何故か戦闘力が上がるんだもん、びっくりだよ。これが世に言うベネチャージって奴かな?」



マスタ イサム
「絶対に違うぞ」



―――



『毒気を抜いてあの世へ行け』



ナナミヤ イオリ
「見事に止めを刺したわね」


オモヒト コウ
「あ、復活したのか。――しかしまぁ、こういう肉弾戦は心が躍るな」


タカナシ ユメミ
「あたしはいつでもお兄ちゃんとの肉弾戦の準備はできてるからね♪」


ナナ
「あら、プロレスごっこ?」


ノノ
「じゃぁノノたちも混ぜてよー」


タカナシ ユメミ
「はぁ? ふざけんじゃないわよ!」


ナナミヤ イオリ
「……」


オモヒト コウ
「やっぱりこういうのは苦手だったか? 伊織」


ナナミヤ イオリ
「いえ、そんなことは……。正直野蛮だとは思うけど、面白い映画だったとも言えるわ」


454 :♪We fight for Love ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 02:21:46.81 ID:7JEoXNNe0
―――

ノノハラ レイ
「いやぁ、やっぱいいね『コマンドー』。派手にドンパチするのを見るのは最高に気分がいい」


オモヒト コウ
「……まぁ、ツッコミどころは色々あるが、それを超える面白さがあるからな」


ノノハラ レイ
「じゃぁちょっと10分ぐらい休憩を挟もうか。次はちょっとマイルドな奴で行くつもりだから。
 今から10分きっかりに上映を再開するから、ちゃんとそれまでに集まってね」


455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/11(木) 06:23:57.68 ID:EvplPSmV0
なんかイベントはじまってた
レイの夢が意味深で気になる…
456 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/20(土) 01:28:47.61 ID:AM8E1wn00


―――


サクラノミヤ エリス
「本当にここには色んな映画があるんですね」


サクラノミヤ アリス
「これだけあるなら、しばらくは退屈しないで済みそうね。
 ――で、アンタは何やってるのよ」


ウメゾノ ミノル
「ちょっと隠しチェストっぽいもの見つけちゃったんだよね。オタカラだぜきっと。
 ……ナニコレ。『クロの章』? VHSとかどんだけ古い遺物なんだか。
 白地のテープに手書きとか、わざわざダビングしたのかな?
 中身も書いてら、親切なこって。えーっと? メタルマン、恐怖キノコ男、アナザー、デビルマソ……」


サクラノミヤ エリス
「どうしたんですお兄さま? 急にお顔を真っ青にして」


サクラノミヤ アリス
「何無言で閉まってるのよ。気になるじゃない」


ウメゾノ ミノル
「ダメだよ、これヤバいヤツだよ。世に解き放っちゃいけないタイプの負の遺産だよ。
 誰だよこんなこの世の全てのクソ映画の蠱毒みたいなビデオ作った奴お前マジふざけんなよ」


サクラノミヤ エリス
「お、お兄さま? そ、そんなに酷いのですか?」


ウメゾノ ミノル
「これを全部見るか、本場の本格的で伝統的な英国料理のフルコースを食べるかどちらか選ばなければ殺すと言われたら僕は迷いなく後者を選ぶ」


サクラノミヤ アリス
「昨日のあれ? ま、食べられなくもなかったしね、あれ」


ウメゾノ ミノル
「――一つ、言っておく。あのミンスパイの英国力はたったの5だ。本来なら2000ぐらいのpotentialがある」


サクラノミヤ エリス
「英国力?!」


ウメゾノ ミノル
「親の仇かと言わんばかりに揚げ続けて使い古した新聞紙のインクの匂いが染みついたフィッシュアンドチップスの英国力が18000で、マーマイトが42000ちょっと。
 そしてフルコースのメインディッシュになるだろうハギスの英国力は、――53万だ」


サクラノミヤ アリス
「だから英国力って何よ?! 数字じゃなくてもっと具体的に解りやすい例はないわけ?!」


ウメゾノ ミノル
「初めて伝統的な英国式ローストチキン――英国力にして35000に相当するものを食べたときの感想でいいかい? “食べたことないけど、段ボールって多分こんな味するんだ”」


サクラノミヤ エリス
「あぁっ! そんな遠い眼をしないでくださいお兄さま! 気を確かに!」


サクラノミヤ アリス
「その10倍以上ってこと? で、そのビデオよりはマシ――確かに見るのはやめておいた方がよさそうね」


ウメゾノ ミノル
「興味本位で見ちゃダメだ。フリじゃない。校則の所為で焚書に処せないのが遺憾に過ぎる。
 ――思い出したら気分悪くなってきたよ。自販機のcoffee飲んでcoolにならないと」



―――


457 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/20(土) 01:32:06.91 ID:AM8E1wn00



タカナシ ユメミ
「コーラばかりじゃ飽きちゃうから自販機の飲み物を買うことにしたのはいいものの……」


オモヒト コウ
「なんでB○SSとプァンタしかないんだよこの自販機。
 ブランドは偏りまくってるのに種類だけは無駄に豊富なのが余計ムカつくな」


タカナシ ユメミ
「悪意しかないよねー。なんかポスターもちょっと媚びてる感じするし」


オモヒト コウ
「中学生……、下手したら小学生にしか見えない女子に缶コーヒーの広告塔させるなよ……」


458 :CM―調査員Верный― ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/20(土) 01:33:28.75 ID:AM8E1wn00



調査を始めてからどれだけの時間が流れただろうか?

色々あった。

欧州へ救援に遠征した。

改装の為に三日間出撃しないでいたら、全海域の制海権を失ったこともあった。

ただ、一つ言えることは、どの時代の人たちも、けっこう、ガッツリ働いた。



Гангут
「まだ調査を続けるのか? ちっこいのもしつこいな」



――これからも、缶コーヒーのB〇SS


459 :自社の作品内で他の自社作品のCMを行うスパイクチュンソフトリスペクト ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/20(土) 01:38:33.21 ID:AM8E1wn00



ウメゾノ ミノル
「хорошо.こいつは力を感じる」


オモヒト コウ
「お前、いつの間に」


ウメゾノ ミノル
「ちょっとショッキングなヤツ見ちゃったからね。気分転換だよ」


オモヒト コウ
「コーヒーを飲むのか? 英国被れのくせに」


ウメゾノ ミノル
「別に紅茶と相容れないってわけじゃないじゃない。
 それに、英国面に堕ちるっていうのはパンジャンドラムを思い通りに転がしてからがスタートラインだ」


オモヒト コウ
「そんな明後日の方向にあるスタートラインなんて誰が立つんだよ。ネビル・シュートが草葉の陰で泣いてるぞ」


ウメゾノ ミノル
「いや、むしろ逆に喜びそうなんじゃないかな。
 マーマイトをマーマイトで洗うパンジャンレースがあったら自力で蘇りそうだし」


オモヒト コウ
「……確かに言えることがある。一度頭診てもらったほうがいいよお前」


ウメゾノ ミノル
「酷くない? っと、そろそろ時間だ。早く戻ろうよ」


460 :♪Era ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/20(土) 01:48:23.71 ID:AM8E1wn00



―――



ノノハラ レイ
「次はリクエストから。大手スタジオの代表作だ。田舎から上京してきた少女は特技を活かして次第に大人になっていく。
 『魔女の宅急便』はボク等に何を届けてくれるだろうか?。
 ――ところで、あんな風に箒に跨って空飛ぶのって股痛くならない?」


―――


461 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/20(土) 02:13:13.13 ID:AM8E1wn00


『あたしの自慢の料理、ニシンとカボチャの包み焼き』


アサクラ トモエ
「スターゲイザーパイだっけ?」


ウメゾノ ミノル
「スターゲイ“ジ”ーだ二度と間違えるなマーマイトに漬け込ますぞ」


マスタ イサム
「お前そんなキャラだったか? 英国面に染まりすぎだぞ」



―――


『あたしこのパイ嫌いなのよね』


アサクラ トモエ
「どうして人の行為をにべもなく突っ返すかなぁ」



マスタ イサム
「……まぁ、宅配物にロクな防水もしないのは落ち度と言えなくもないが」


ユーミア
「受け取ってもらえただけマシ、そう思うことにしましょう」


―――


『真っ直ぐ飛びなさい、燃やしちゃうわよ』


ナナ
「結構冷静よね」


ノノ
「それよりもあの男の子をどうにかしないとだもんね」


オモヒト コウ
「一応、他人様のものなんだけどな」


タカナシ ユメミ
「必ず返すって言ったのにね」


―――



『う、受け止めた! 空中で受け止めました!』



コウモト アヤセ
「かなり昔に見たから知ってたけど、こういうシーンはやっぱりハラハラしちゃうわね」


ノノハラ レイ
「ある種のお約束、――あるいはカタルシス、かな?
 やっぱりこういうシーンは製作者の腕の見せ所なんじゃないかな」


462 :♪やさしさに包まれたなら ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/20(土) 02:26:34.70 ID:AM8E1wn00


―――

ノノハラ レイ
「いい映画って言うのは何度見てもいいもんだねぇやっぱ。
 ――おっと、もうお昼の時間だ。でも一々本館に戻るのもどうかと思うでしょ? どうぞご安心を。ちゃんと手は打ってあるんだ。
 おーい、モノクマ! ここに持ってきてよ。それぐらいはしてくれるでしょ? 学園長」


モノクマ
「……一体何時からボクはオマエの体のいいパシリになったのかな?」


ノノハラ レイ
「最初からじゃない? いいからさっさと持って来てってば。今日の昼食がサンドイッチだってことは予想がついているんだ。
 ここで軽くつまめるし、キミなら隠し通路でもわーぷほるでも何でも使ってすぐに持ってこれるでしょ?
 それとも、これまで以上のいやがらせ受けたい?」


モノクマ
「……わかったよ! 持ってくればいいんだろ持ってくれば! 全く近頃の若者は年長者へのリスペクトってのをさぁ――」


オモヒト コウ
「なあ、一応聞いておくが、モノクマへのいやがらせって何やったんだお前」


ノノハラ レイ
「随所の監視カメラに濡らしたタオル被せるだけの単純なお仕事です」


ウメゾノ ミノル
「わぁ。マジで地味ないやがらせだぁ」


463 :※本作におきましてはネタバレ防止のための徹底的な措置を執行させていただきます ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/20(土) 02:29:22.92 ID:AM8E1wn00


―――


ノノハラ レイ
「さて、腹ごしらえも済んだことだし、次の映画と行こうじゃないか。
 最近のオリジナルな邦画も捨てたもんじゃないね。
 これはネタバレ厳禁だから詳しくは言えないけど、これだけは言わなくっちゃいけないから言っておくね。
 耐性がないと苦痛かもしれないが最初の30分は頑張って耐えて見てくれ。『カメラを止めるな』。
 ボクから言えるのは、“見るのを止めるな”、かな」


―――


464 :♪EXCITE ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/20(土) 02:37:38.71 ID:AM8E1wn00



―――


ノノハラ レイ
「主人公ゥ! 何故キミがクソ映画耐性も無しにこの映画を見終えられたのか、何故映画の内容が記憶にないのか、何故妙に首回りが痛むのかぁ!」


タカナシ ユメミ
「それ以上言わないで!」


ノノハラ レイ
「その答えはただ一つ――」


ナナミヤ イオリ
「やめなさい!」


ノノハラ レイ
「ァハァー……、主人公ゥ! キミが序盤のクソ映画っぷりと昼食後の眠気のダブルパンチで眠ってしまったからだァーッハハハハハ」


オモヒト コウ
「俺が、映画の途中で、寝落ち……? 嘘だ、俺を騙そうとしてる……!」


ナナ
「――それにしても驚きよね、あのシーンが【規制済み】だったなんて」


ノノ
「あの【規制済み】も【規制済み】のための【規制済み】だったなんてね」


オモヒト コウ
「Arrrrr(致命的なネタバレを食らったことによる魂の慟哭)!!!!!!!!!」


 ――だから言ったのに。「見るのを止めるな」って。
 まぁ、この手の仕込みは叙述トリックと同様に存在そのものがネタバレだから深く言及できなくて、他人に勧め辛い要因になってるんだよねぇ。
 初見さんへネタバレをしない程度にお勧めポイントを言うとするなら、最後まで見終わったときのある種の達成感。
 だからそこの哀れなシュジンコウクンみたく寝落ちするのはもったいないことだぜ。ぐらいしか言えないのが辛い所だぜ。


465 :♪Friday Night Fantasy ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/23(火) 22:41:58.13 ID:S5/+vHUv0


―――



ノノハラ レイ
「さて、お次はリクエストだね。――意外だなぁ。この人がこの映画リクエストするなんて。ヒトは見かけによらないね?
 青い海、それは原初の命が生まれた母なるもの。されど、両生類をはじめ生き物は海を離れ大地へ足を踏み入れ、今や霊長が歩き回り蔓延っている。
 かくして大地の子らが母なる海へ回帰することは叶わない。水底(『ディープ・ブルー』)で人は己が無力の一端を知るだろう」


―――


466 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/23(火) 23:00:28.76 ID:S5/+vHUv0


―――


サクラノミヤ エリス
「あれ? こんなオープニングでしたっけ?」


ウメゾノ ミノル
「あー……、慧梨主、確認したいんだけど、リクエストしたのは海洋ドキュメンタリー?」


サクラノミヤ エリス
「えぇ、そうです。昔見て奇麗だと思ったので、また見たいなって……」


ウメゾノ ミノル
「――どうやら、悲しいすれ違いがあったみたいだね。
 心して聞いてくれ、慧梨主。ディープ・ブルーっていう邦題の映画、二種類あるんだ。
 そして今流れているのは、慧梨主が見たかったのじゃない方なんだ」


サクラノミヤ エリス
「え?」



―――



サクラノミヤ エリス
「あわわわわ……。ひ、人がたくさん――」


ウメゾノ ミノル
「――野々原君さぁ。一応聞いておくけど、わざとじゃないよね?」


ノノハラ レイ
「ボクは飽くまで要望を聞いただけだよ。それが叶わない可能性だって示唆しておいた。
 海洋ドキュメンタリーかモンスターパニックどっちが観たいと聞かれたら、ボクは後者を選ぶ。
 ――勿論前者だって慧梨主さんが指定してくれれば、ボクは『グリード』の方を上映するつもりだったさ。
 知らなかったんだよ。慧梨主さんがサメ映画の方を知らなかっただなんて。だから、ボクは悪くない」


ウメゾノ ミノル
「ぬけしゃあと、白々しいにもほどがある。慧梨主がこういうの好まない性格してるなんて君なら分かるはずだろ?」


ノノハラ レイ
「そうかなぁ? むしろ沼に踏み入れてもそのまま構わず進むタイプと見た。自覚がないだけだよ、今は、ね」


―――



サクラノミヤ エリス
(人が次々食べられていくというのに、この感情は一体……?)


サクラノミヤ アリス
「ちょっと、慧梨主?! 何かいけない扉を開けようとしてない?! 気をしっかり持ちなさい! 慧梨主ったらぁ!」


サクラノミヤ エリス
「……っ、大丈夫ですよお姉さま。ちょっと血が多くて気分が優れなくなっただけです」


ノノハラ レイ
「どうやら、ボクの方が正しかったらしいね?」


ウメゾノ ミノル
「どうだか」


467 :♪Deepest Bluest ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/23(火) 23:34:07.36 ID:S5/+vHUv0



―――


ノノハラ レイ
「閉鎖空間から来る疑心暗鬼。対立する集団を仲裁しようと説教するものが食われパニック。
 研究を優先したが故に起きた惨劇。希望が見えた矢先に絶望が迫りくる。それを乗り越えた先の希望を更に呑込まんとする絶望。
 そしてそれさえも踏み越えた先にようやく活路が開かれ、生き延びることができたのさ。
 ――ちなみに、最後の最後でスーザンが囮になって死んだのがやたらと不自然に思った人は鋭いよ。
 当初の予定じゃ生き延びるはずだったのに、試写会でブーイングを受けて急遽変更になったんだ。
 ラストシーンでカーターの視線とコックの脇のスペースを見れば、デジタル処理されたことが一目瞭然だからね」


ナナミヤ イオリ
「……大体の原因がその女性だもの。因果応報ね」


マスタ イサム
「生き残りそうにない奴が生き残って、生き残りそうなのが死んでいったのは意外だったがな。特にコック」


アサクラ トモエ
「そうかな? あんな状態になってまでジョーク言える度胸があったわけだし。ビデオレター遺そうとした時はダメかと思ったけど」


ユーミア
「オウムにバードと名付けるセンスは正気を疑いますが」


468 :♪白虎野 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/23(火) 23:36:50.27 ID:S5/+vHUv0


―――


ノノハラ レイ
「フロイトによれば、夢は記憶を素材に出来ている。そしてその選択方法は意識的でなく無意識的だとか。
 つまり一見乱雑な内容でも、当人の本性に基づいた統合性でもって一つの物語として連結される。つまり、夢は究極のパーソナリティースペースなんだ。
 そこに足を踏み入れる手段が確立されたとすればどうなるか――。その答えはきっと『パプリカ』が教えてくれるはずだよ」


―――


469 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 00:01:21.70 ID:Q8OAeR4n0



―――



『他者の夢を共有する。まさに夢の科学だ。だが直に夢に触れることは暴力にさえ繋がる。――あれは作るべきではなかった』
『また、そのお話でしたか。――DCミニは、精神治療の新地平を照らす太陽の王子様です』



ナナ
「このおじいちゃん今変なこと言わなかった?」


ノノ
「難しいたとえなのかな」



―――



『盗み出したテロリストはそうは思うまい!』
『――そんな。まだ悪用されたわけじゃ』
『うむ、必ずしも泥棒が悪いとはお地蔵さまも言わなかった』



ナナミヤ イオリ
「……先ほどから所長の様子がおかしいように見えるのは私だけ?」


オモヒト コウ
「奇遇だな。俺もそう思ってたところだ」



『パプリカ……。開発されたサイコセラピーマシンで勝手な治療を行う女がいると聞いた』
『理事長ともあろう方が、そんな根も葉もない噂話を信じるのですか?』
『パプリカのビキニより、DCミニの回収に漕ぎ出すことが幸せの秩序です』



タカナシ ユメミ
「このおじさん何かやばい人なんじゃない?」



『秩序』
『五人官女だってです! 蛙達の笛に合わせて、回収中の不燃ゴミが噴出してくる様は圧巻で、まるでコンピューターグラフィックスなんだそれが!
 総天然色の青春グラフィティーや一億総プチブルを、私が許さないことぐらい、オセアニアじゃあ常識なんだよ!
 今こそ、青空へ向かって凱旋だ! 絢爛たる紙吹雪は、鳥居をくぐり周波数を同じくするポストと冷蔵庫は、先鋒を司れ!
 賞味期限を気にする無頼の輩は花電車の進む道にさながら! シミとなって憚ることはない!
 思い知るがいい、三角定規たちの肝臓を!
 ――さぁこの祭典こそ、内なる小学三年生が決めた、遥かなる望遠カメラ!
 進め! 集まれ! 私こそが、御代官様! はーっはっはっはっはは!』
『所長!』



マスタ イサム
「お、おう」


アサクラ トモエ
「本格的にやばい人だったね」


470 :♪パレード ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 00:11:16.03 ID:Q8OAeR4n0



―――


『すぐだ! すぐにもだ! ワタシヲムカエイレルノダ!』

サクラノミヤ エリス
「所長ー!」
ウメゾノ ミノル
「この高さから飛び降りたら助かりませんねこれは」


―――



エイヤーハナオエーナオーエイヤーハナオエー




ノノハラ レイ
「信じられないかもしれないけど、このパレード、CGじゃなくて全部手描きなんだぜ」


コウモト アヤセ
「嘘でしょ――と言いたいところだけど、全然CGっぽさがないから、本当なのね」


ユーミア
「……きっと作画班は死屍累々だったのでしょうね」


471 :♪白虎野の娘 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 00:22:41.92 ID:Q8OAeR4n0



―――



マスタ イサム
「これでエンディングか。……結局俺たちは一体何を見させられていたんだ?」


ユーミア
「――電気羊の夢、でしょうか?」


ナナ
「最初から最後まで何を言ってるのかよく解らなかったわ」


ノノ
「とりあえずあの車椅子のおじいちゃんが悪者だったっているのは解ったんだけど」


ノノハラ ナギサ
「でもあの理事長だって言ってること無茶苦茶だったし……」


コウモト アヤセ
「自分がする分にはいいけどされるのは嫌だって、まるで子供みたい」


ノノハラ レイ
「初見だと頭の中が疑問符で埋め尽くされるんだけど、この映画は深く考察すればするほどいい映画なんだって思うんだ。
 ボクはこれ以上のアニメ映画を知らないな。惜しむらくは、今敏監督と筒井康隆先生と平沢進師匠のコラボレーションがもう見れないってことだろうね」


サクラノミヤ アリス
「これっきりで充分よ。ちょっと頭痛くなってきた……」


472 :♪Cinema Nostalgia ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 00:24:16.74 ID:Q8OAeR4n0



―――


ノノハラ レイ
「証人保護プログラム、アメリカにおける裁判を左右する証言をする証人を守る伝説の執行官ジョンが大暴れする『イレイザー』。
 見終わったらきっと言いたくなるさ。“You’ve just been erased”」


―――


473 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 00:30:53.95 ID:Q8OAeR4n0



―――


『仔牛の煮込みが死ぬほど喰いたかったんだよ、もう半年もマトモなメシ食ってねぇやってられっかい!』
『次は命がないぞ。――こんなのは一度きりだ』


ウメゾノ ミノル
「そんなんで足掴まっちゃ溜まったものじゃないよね」


サクラノミヤ エリス
「自分の立場がよく解ってないのはどうかと思いますが……」



―――



『さっきの銃がなんていうのかは知らないが、君の会社が開発した武器なんだろ?』
『ええ、EM銃のプロトタイプ。開発は極秘だけどね』
『EM?』
『エレクトロマグネティック、電磁波よ。火薬も従来の弾も要らない。アルミ弾を光くらいの速さで飛ばせるの』
『レールガンって奴だな』
『ええ、そうとも呼ばれてるわね』
『海軍が何年も開発してたが、最小のものでも戦艦に据える大きさだと聞いた』
『うちが軍から小型化を依頼されたの。コンパクトで、超高速のEM銃を作れって。完成すれば最強の銃よ。開発費はもらったけど、実用化はできなかった』
『ちゃんと出来ていたじゃないか。――もっと高く買う客を見つけたんだ』
『お客はいっぱいいるわ。国防省、CIA、NSA、貴方の組織もお客かも』



ユーミア
「ユーミアの知っているレールガンとは違う気がするのですが」


マスタ イサム
「古い映画だからな。そういうSFチックな武器は大雑把に括られてたんだよ」



―――


474 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 00:35:16.65 ID:Q8OAeR4n0


―――


『戦争なんてしょっちゅうある。ベトナムでは負けた、湾岸では勝った。だからって、何が変わった?
変わらないよ、何にも変わらん。ただ戦争が起これば金持ちと死人が増える。どっちかなら、金持ちがいい。な?』


ウメゾノ ミノル
「資本主義者め……」


サクラノミヤ エリス
「お兄さまは共産主義なのですか?」


ウメゾノ ミノル
「……ゴメン、ただのネタだよ。本気で言ったんじゃない。」


―――



『銃を捨てろ』
『――あぁ?』
『銃を捨てるんだな。――命だけは助けてやる』



オモヒト コウ
「普通なら負け惜しみにしか聞こえないが、シュワルツェネッガーが言うと普通に頼もしく聞こえるな」


タカナシ ユメミ
「この悪党も一目置いてるみたいだしね」


―――


『何だこれは! この俺をこんな安物のナイフで刺しやがって!』


ノノハラ レイ
「高級品ならいいのかな?」


ノノハラ ナギサ
「そういう話じゃないと思う」


ノノ
「でも頭をかばって腕で防いでるんだよねこのおじさん」


ナナ
「凄腕なんだね、このおじさん」


―――


『わー痛そー』
『痛いよそれ、俺見てたもん』
『……ここは何処だ?』
『地球よ、よく来たわね』


タカナシ ユメミ
「なんであれで無事なの? 普通重傷じゃない?」


オモヒト コウ
「当り前だろ、シュワルツェネッガーだぞ」


ナナミヤ イオリ
「あの男性に向けるその信頼はどこから来るの?」


―――

475 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 00:47:35.35 ID:Q8OAeR4n0


―――

『遅刻よ』
『道が混んでた』

ユーミア
「敵の渋滞に巻き込まれた、気の利いたジョークですね」
マスタ イサム
「歩道が空いていたら突っ込んでいそうだったがな」
アサクラ トモエ
「流石にそこまではしないんじゃないかな」

―――

『そんじゃ一緒にサイレス社に押し入れってのか?』
『そうだ』
『冗談よせよ。ソファーか何か運ぶ手伝いしろってのかと思ったよ』
『じゃぁもう降りていい』
『……わかったよ力になろう。必要な道具言っとく。戦車だろ、ロケット砲も何門かいるな。それから俺用にアル・カポネ級の――でっかい肝っ玉だな』
『これが小道具だ』
『……発泡性の胃薬?』
『ジョニーの部屋で会おう』
『……これで屁でもこかせる気か?』

ウメゾノ ミノル
「しかしまぁ命の恩人を助けるからって企業にカチコミかます手伝いするって考えたらすごい度胸の持ち主だよな」
サクラノミヤ アリス
「普通なら降りるわよ。あたしなら絶対手を引く」

―――

『リスクを見るとすればどこのコンピューターだ?』
『金庫室だ。他の端末からはアクセスできない』
『金庫室となれば、ここを通るしかない』
『あぁ、こりゃ楽だな。じゃ、あとはのんびり座って、クルーガーさんのお越しを待つとするか』

ナナ
「絶対裏をかかれるわよね」
ノノ
「別の手を使ってくるとか考えられないのかな?」

―――

『おいおいおいおい! どこ行く気だ?!』
『うぉーっと、頼むよ気を付けてくれ。14階のブレバンズさんにデリバリーだ』
『許可のない者を通すわけにはいかない』
『キョカノナイモノヲトオスワケニハーへっへっへおい怒ることはないだろ、だったらブレバンズさんに電話して確かめろよ。ペパロニのピッツァだ激ウマだでぇ』

ウメゾノ ミノル
「そう言えば僕もピッツァが食べたいなぁ。ペパロニでもいいけど、シンプルなマルガリータもいいなぁ」
ノノハラ レイ
「何ならデリバリーしてもらおうか、モノクマに」

―――

『おい何やってんだ』
『ピザの配達に来た男が発作を起こしてます』
『どこの馬鹿だピザ頼んだのは』
『そんなこと言ってる場合か、急いで医務室に運んで救急車を呼べ』

ナナミヤ イオリ
「……一応、この人にも良心はあるのね」
オモヒト コウ
「そこをつかれるわけなんだがな」

―――

『怖いわ〜テロリストよ〜』
『もっと刺激が欲しいか、えぇ?! ビリビリするような刺激だ! 刺激が欲しいだろ?! お前にも電気ショックを味あわせてやる!』
『テープで縛れ。――動くなよ』
『う、後ろを向け』
『ここは任せたぞ。――ちゃんとやれるよな?』
『とっとと行けぇ』
『――行くぞ』

ノノハラ ナギサ
「もとはと言えばコードを不用意に抜き取らなければよかったのに。どうして抜いちゃったのかな」
コウモト アヤセ
「早い所自分が健康だってアピールしたかったんでしょ。裏目に出て逆恨み気味になるのはいただけないけど」

―――

476 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 01:18:30.44 ID:Q8OAeR4n0


―――



『トバしたら、ボルティモアには40分でつけるぞ』
『ジョニーはもう来るな。送ってくよ』
『おいおいここまできて俺は一匹狼だなんていうなよ』
『よくやってくれたが、これは俺の戦いだ』
『なあおい待ってくれ、話ぐらいちょっとは聞いてくれよなあ。
 アンタが居なかったら、俺の舌は今頃カネッリん家で剥製の横に飾られてる。
 なあ、役に立つぜ。――俺のいとこが、港を仕切ってる。船を探すんだろ? 聞けば一発だ』


マスタ イサム
「ジョニー本当にいいやつだな。最高の笑顔だ」


アサクラ トモエ
「こういう男同士の友情も悪くないね」



―――



『でかい特ダネだな、全然知らなかったよ』
『取引は今夜、アンタの港でな』
『……そいつは、聞いてねえぞ』


ウメゾノ ミノル
「さっきまで下らないjokeと聞き流してたのに自分のシマの話と分かった瞬間スッと仕事の顔になるの好き」


サクラノミヤ エリス
「ああいうのが好きなんですか?」


ウメゾノ ミノル
「まあね」



―――


『よう兄ちゃん、おおっと、ちょっとお話しようじゃないか』
『ここは立ち入り禁止エリアだ』
『へへ、知ってるよ。質問がある。――何してやがるんだ?』
『何だと?』
『俺たちぁ港湾労働者組合のモンだ』
『あんたらだウチの優秀な組合員を使わずに荷物積んでるって小耳に挟んだ。まさか違うよな?』
『面倒な連中が来てますが』
『ああ全くだ』


マスタ イサム
「随分な度胸だ。敵地に踏み込むってのに」


ユーミア
「彼らからしてみれば元は自分の敷地なわけですし」


―――


『何を騒いでいるんだ?』
『じゃ兄さんに説明させてもらうが、組合員を使わねぇ船はウチの港から出すわけにはいかねぇ。ウチのモンの姿が見えないようだな? 見えるか?』
『国家の機密に関わる作業をしているんだ。今すぐ“こっか”ら出てってもらおうか』
『それ脅してんの?』
『あぁその通りだ』


ウメゾノ ミノル
「ここ、良い翻訳なんだよね。原語版のダジャレをうまく落とし込んでる。ジョニーもそれjokeなのって原語版では言ってるし」


サクラノミヤ アリス
「翻訳者がちゃんと仕事をしてくれたってことですね」

477 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 01:27:13.37 ID:Q8OAeR4n0



―――


『組合を舐めんじゃねぇよ』


マスタ イサム
「手際がいいな」


ユーミア
「相手の装備も奪っているところもいいですね」


コウモト アヤセ
「漁師さんとか怒らせると怖いって聞くけど、こういうことなのかな?」


―――


――EM銃の連射を回避し続けるジョンの活躍をご覧ください。


ユーミア
「何故偏差射撃もマトモに出来ないんですか」


マスタ イサム
「怒るところそこでいいのか?」


―――


『いい銃だなマヌケぇ』
『よせ! ――うわぁぁぁ!』


ユーミア
「何故碌に確認もしないんですか!」


マスタ イサム
「……優れた武器を持つ者ほど慢心しやすい。そういうことだろ」



―――



『ジョンか?』
『今出てってやる』



――EM銃を乱射するジョンの活躍をご覧ください。



オモヒト コウ
「流石ターミネーター。凄い無双っぷりだな」


タカナシ ユメミ
「それ俳優が同じだけだからね? T-800じゃないからね?」


478 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 01:32:31.45 ID:Q8OAeR4n0



―――


『君にはいつも感心するよ』
『そう、ふふ、ありがとう。今日は一本取られました、さっきのは実にお見事でしたよ』
『何の話だ?』
『爆破ですよ。スカッとするほど奇麗に始末した上に、俺達が車の傍にも寄ってないことはみんなが見てた。
 上手いやり口だ、俺から学んだのかな?』
『待て、君が仕掛けたんじゃないのか?』
『まさか貴方でしょう』


アサクラ トモエ
「あっ」


―――


『危ない! 何をやってんだ!』
『何ですか?! こりゃ変だ!』


ナナ
「この期に及んでまだ気づかないなんて」
ノノ
「ドアもロックされちゃったから、もうおしまいかな」


―――


『もしもし? ――君にだ』
『……なんだ?』
『You’ve just been erased (お前たちは消去された)』


ウメゾノ ミノル
「大脱出と言いなんでこう雑にエピローグで黒幕を処分したがるのか」


ユーミア
「後腐れなく映画を終えられますから」


マスタ イサム
「下手に続編造られてこけられるよりかはマシだろ」


479 :♪Where Do We Go From Here ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 01:39:56.69 ID:Q8OAeR4n0


―――


『三人は?』
『見送ってきたよ』


ノノハラ レイ
「こういう返しはいいねぇ。さて、映画も終わったところでそろそろ夕食の時間だね。
 アツアツのピッツァが食べたくなってきただろ? ペパロニだ。
 梅園クンのご要望通り、マルゲリータも用意してあるぜ」


ウメゾノ ミノル
「至れり尽くせりってわけだ。食糧事情がアメリカンスタイルなのはちょっとどうかと思うけど。
 特にカロリー面とか」


ノノハラ レイ
「今日一日ぐらいはいいじゃない。過剰にストイックな生活はストレスのもとだよ?」


ウメゾノ ミノル
「――こういうのを脂肪フラグって言うんだろうな。まぁ、ありがたく頂くけど」


480 :♪The Vicious Blues ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 01:45:35.60 ID:Q8OAeR4n0


―――


ノノハラ レイ
「さて、腹ごしらえも済んだところで本日最後の御演目。かのスティーブン・キング原作、監督はフランク・ダラボン。
 『ショーシャンクの空に』と『グリーンマイル』で有名なタッグが織りなす衝撃作。
 原作とは違うラストを迎えることになる『ミスト』。最後まで目を離すんじゃないぜ?」



ウメゾノ ミノル
「……その紹介は罠だろ。事実だけど、方向性が違う旨がまるで足りてないじゃないか」


サクラノミヤ エリス
「そんなに違うんですか?」


ウメゾノ ミノル
「うん。一言で言うなら、一見の価値はあるけどもう一度見るには相当の覚悟が必要なんだよね。
 僕はもう既に見ちゃってるからその覚悟を決めなきゃいけないんだよねぇ。最後の最後にやりやがったなあの野郎」


―――


481 :♪The Host of Seraphim ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 01:58:23.69 ID:Q8OAeR4n0



―――



ナナミヤ イオリ
「これは……、本当に救いがない……」


オモヒト コウ
「一つ一つの選択肢に間違いはなかったはずだ。――ただ、肝心なところで運に見放されてしまっただけだ」


タカナシ ユメミ
「これ、進行方向を見るに軍隊から遠ざかるように進んじゃってるんだね。
 もう少し待っていれば、こんな結末は避けられたはずなのに」


ノノハラ レイ
「最後の最後まで希望を捨てちゃダメだってことだよ。
 諦めたらそこで試合終了で、諦めなければ夢はいつかきっと叶うんだからさ」


ウメゾノ ミノル
「キミがそのセリフを言うと変な予感しかしないんだけど」


ノノハラ レイ
「原作者がこの改変を絶賛している以上文句は言えないよ。曰く、『書いてるときに思いついてたら絶対このラストにしてたよ』だって」


サクラノミヤ エリス
「こんな、こんなことって……」


サクラノミヤ アリス
「慧梨主……、腰が抜けてるのね。もう時間も時間だし、そろそろ帰ってもいいかしら?
 ほら、立てる、慧梨主?」


ノノハラ レイ
「そうだねぇ。今日はここで解散することにしよう。急がないと、ゴンドラリフトが止まっちゃうかもだし。
 ……そうそう。次の企画を決めてもらわないとね。――と言うワケで、ヨロシクね。公」


オモヒト コウ
「この流れでよりにもよって俺かよ。……あまり期待するんじゃないぞ」


ノノハラ レイ
「内容そのものじゃない。ボク等がずっと一緒に行動していた。そのこと自体に価値があるんだから。
 と言う訳だから、全員参加型のレクリエーション、期待してるぜ?」


オモヒト コウ
「何気に難易度高い要求してくるなよ……。予想よりクオリティ低かろうが、文句は受け付けないからな」


ノノハラ レイ
「そういう軽口聞けるなら平気平気。期待しないで待っておくよ」


オモヒト コウ
「……そうかよ」


 この後はつつがなく本館へ戻り、ボクは自室のベットに横たわる。
 何となく手ごたえのようなものを感じながら、ボクは睡魔に身を委ね目を閉じた。


482 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 02:01:57.85 ID:Q8OAeR4n0


――と言う訳で野々原澪の映画観賞会回、無事終了でございます、


――非日常編まであとわずか。推しが殺されるのもオシオキで死ぬのもダンガンロンパの醍醐味の一つですが、キャラの喪失は心苦しいものがありますね。


――さて、目指すはヤンデレRetuneの販売までぶ学級裁判を終わらせたいところではございますが、本日はこれにて。


――おやすみなさい。


483 :♪悪魔のトリル第三楽章 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/12(日) 01:09:54.81 ID:/AQwkga80


―――


???
「――ガイウス・ユリウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス。
 月に狂わされたローマ皇帝の名を冠する映画が、ボク等の生まれる前に封切りされたんだ。知ってるかい?」


???
「……その余りの過激さで、ボストンをはじめとした一部地域では公開禁止になった。ということぐらいは」


???
「”Banned in Boston”ってヤツ? 浅ましきは人の業というか、好奇心は猫を殺すと言うか、反骨精神にも似た何かが掻きたてられるんだろうね。
 『見るな』と言われれば却って見たくなる。『読むな』と言われれば余計読みたくなる。そんな心理現象を、日本ではその映画のタイトルから“カリギュラ効果”と呼ぶんだ」


???
「学術的には“心理的リアクタンス”が用いられていることぐらい、貴方も知ってるでしょう?」


???
「解ってるくせに。ボクがワザワザそんな薀蓄を垂れ流すためだけにここに足を運ぶとでも思うかい?」


???
「長い前置きは貴方の悪い癖よ。――それで、何が言いたいの?」


???
「イケナイことには、イケナイ理由がある。知らなかったでは済まされない。
 その理由が分からないから、人はこぞってやろうとする。欲が満たされないからね。何故禁止されているのか、その理由が分かりさえすれば興味は薄れるものさ。
 納得のいく理由があれば人は引き下がる。単に『ダメと言ったらダメ』じゃ人は納得しないよ。
 『これは読んだ奴は死ぬ本だから絶対に読むなよ』と念を押されて、初めて人は自制できる。曖昧な理由じゃなく、明確に、特に自分の命に係わる理由なら、普通は引き下がるさ。
 ――まぁだからと言って、それを気軽に焚書に処そうだなんていうのは愚の骨頂だよね。核ミサイルが危険だからってダイナマイトで爆破するようなものなのにさ」


???
「理解を示してくれるようで助かるわ。そのセリフをあの馬鹿共に聞かせてほしいぐらい」


???
「何事も話し合いで解決するようだったら誰も銃なんか持たないよ。五・一五みたく“問答無用”と言われたらどうしようもない。
 特に、神託やら他人の思想やらに身を委ね思考を放棄した異常者が相手ではね。
 ――ところで、この本は何故禁書に指定されているんだい? 是非とも理由を聞かせてもらいたいな、魔導図書館長殿?」



―――


484 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/12(日) 01:11:42.29 ID:/AQwkga80



 変な夢だった。志望校のミスカトニック大学に無事合格し、学生として留学する夢。
 そこの図書館で本に触れ、司書と他愛もない話をしながら、学びを深める青写真。
 何とも可笑しな話だ。ここから出られるわけでもなく、まして大学への未来など、描けようわけもないのに。
 頓痴気な格好の研究者と会話した以前の夢だって、就職先くらい選べよってわけで。いくらAI開発の最先端だからって、ねぇ?
 ちょっと推敲すればすぐ見つかる誤字脱字がほったらかしにされている本を読まされているような、変な感覚だ。
 慣れないことをしたからかな。少しばかり思考回路にバグが生じているらしい。
 あるいはこれ以上余計な詮索はするなってアラートなのかな。いずれにせよ、休息を挟まなければ。
 出来るなら、シュジンコウクンのお手並み拝見と行きたいところなんだけど。今日ばかりは頭を空っぽにして存分に楽しもうじゃないか。


485 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/12(日) 01:13:40.20 ID:/AQwkga80



―――


オモヒト コウ
「――よし、全員朝食は食べ終わったな? 今日の企画は球技大会だ」


ノノハラ レイ
「……まぁ、らしいっちゃらしい、かな?」


オモヒト コウ
「何だよ文句あんのか」


ノノハラ レイ
「いいや? 体育会系のキミらしいなぁと思っただけだよ。
 ただ、インドア派なボク的にはちょっと、ねぇ?」


マスタ イサム
「俺はいいと思うぞ。思う存分体を動かすのも悪くないからな」


オモヒト コウ
「10時頃に多目的ホールに集合な。体操服は更衣室に用意してあるらしいから、着替えとタオルと飲み物は自分で用意しておいてくれ」


タカナシ ユメミ
「はーい♪ あ、お兄ちゃんの分も用意してあげよっか?」


オモヒト コウ
「俺のは自分で用意するから、夢見も自分のを用意しろ、な?」


タカナシ ユメミ
「……はーい」


486 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/12(日) 01:14:50.71 ID:/AQwkga80



ナナ
「何をするのかしら」


ノノ
「きっと楽しい遊びだよ」


サクラノミヤ アリス
「腕が鳴るわね。ま、慧梨主は見てるだけでもいいのよ」


サクラノミヤ エリス
「……私もちゃんと参加しますよ。確かにあまり体を動かすのは得意じゃないけど、それでも……」


ウメゾノ ミノル
「ま、気楽に行こうよ。こういうイベントは頭空っぽにして楽しんだもん勝ちなんだから」



487 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/12(日) 01:45:35.05 ID:/AQwkga80



ノノハラ レイ
「……一応準備は出来たけど。まだ時間があるし、どうしようかな。ロビーのパソコンでも調べようかな」


コウモト アヤセ
「あれ、ネットに繋がってないんじゃなかった?」


ノノハラ レイ
「学級裁判の捜査時間中に軽く調べたときには気づかなかったんだけどさ、何か隠しファイルがあるっぽいんだよね。
 暗号化されてるんだけど、あと少しで復号できそうなんだ」


コウモト アヤセ
「……澪ってそんなパソコンに詳しかったっけ?」


ノノハラ レイ
「ほら、ボクって記憶力良いからさ。母さんの研究もちょくちょく見てたし」


コウモト アヤセ
「あー、そう言えば。……人工知能の開発、だっけ?」


ノノハラ レイ
「うん。まぁ、完成を目前に全部水の泡になっちゃったけど」


コウモト アヤセ
「……ゴメン」


ノノハラ レイ
「何を――あぁ。まぁ、交通事故で死者がでるなんてよくあることじゃない。ボクが中3の時に、偶然父さんと母さんがそれに含まれてしまったってだけで。
 昔の話だ、もうボクは割り切ってるつもりだよ。むしろ綾瀬の御両親に感謝しなきゃ。ボクと渚の身元を預かってくれたわけだし」


コウモト アヤセ
「……無理だけはしないで、って言わなかった?」


ノノハラ レイ
「過去はどうやっても変えられない。今を生きるボク等が変えられるのは未来だけだ。だからボクは前へ進む。それだけだよ。
 ――湿っぽい話はヤメヤメ! 今日ぐらいパーッと遊ぼうぜ!」


コウモト アヤセ
「そう、ね……」



488 :野郎の着替えシーンなんて誰得なんだよ… ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/12(日) 01:50:29.81 ID:/AQwkga80



―――



男子更衣室にて



ウメゾノ ミノル
「増田君そんなところに星型のアザがあるんだ」


マスタ イサム
「次にお前は、『奇妙な冒険でもしてたんじゃないの〜?』という」


ウメゾノ ミノル
「奇妙な冒険でもしてたんじゃないの〜? ――アポ?」


ノノハラ レイ
「声的にはWYRRRRRとか言いそうなんだけど」


オモヒト コウ
「お前は一体誰に何を言っているんだ?」


489 :ポスターが気になる方は双×萌をチェックだ! ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/12(日) 02:20:07.65 ID:/AQwkga80


オモヒト コウ
「なんだこのポスター? アイドルか? ……やけに露出多いな」


ノノハラ レイ
「ご存じ」


ウメゾノ ミノル
「ないのですか?」


オモヒト コウ
「何だよお前ら急に」


ノノハラ レイ
「彼女たちこそ今をときめく双子アイドルユニット」


ウメゾノ ミノル
「アンジェこと来栖愛架ちゃんと来栖円架ちゃんです!」


マスタ イサム
「あー、名前くらいは聞いたことあるな。芸能とかそういうのには疎いからよく知らないが」


オモヒト コウ
「俺なんて初めて見たよ。そこまでアイドルに興味あるわけじゃないが」


ウメゾノ ミノル
「えぇ〜? 二人とも遅れてるぅ〜。この二人、かなり売れてるんだぜぇ〜?」


ノノハラ レイ
「ちなみに、右手側におっきいリボン着けておっぱいおっきい方が円架ちゃんで、左手側におっきいリボン着けておっぱい小さい方が愛架ちゃんね。
 あと細かい顔の違いを述べるとするなら――」


オモヒト コウ
「もういいわかったわかった。つまり向かって左の金髪がマドカで向かって右の茶髪がマナカなんだな」


マスタ イサム
「……本当に顔が瓜二つだな。俺でも見分け付かないのに、よく顔の違い解るな澪」


ノノハラ レイ
「いくら一卵性双生児だって言ってもパーツの一つ一つが完全に一致するなんてありえないんだよね。指紋とかが顕著なんだけどさ。
 で、ボクの記憶力をもってすれば二人の顔を重ね合わせることなど容易いことなのさ」


マスタ イサム
「……その能力と情熱をもっと別の方向にもっていく努力ぐらいはしたらどうなんだ?」


オモヒト コウ
「言ったところで諭されるような奴に見えるか? こいつが」


ノノハラ レイ
「ちょっとちょっと、キミ等ボクのことなんだと思ってるワケ?」


マスタ イサム
「悪意の塊」


オモヒト コウ
「何喰ったらそんな性格になるんだ?」


ウメゾノ ミノル
「モノクマの擬人化」


ノノハラ レイ
「終いにゃ泣くよ?」


490 :Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/12(日) 02:33:20.63 ID:/AQwkga80


ウメゾノ ミノル
「ん? なんか体操服一着だけ余ってない?」


オモヒト コウ
「予備か何かじゃないのか? ……いや、違うな。明らかにサイズが小さすぎる」


ノノハラ レイ
「――しっかし、個人個人のサイズに合わせた体操服にハーフパンツとは。良く調べておいでと言うか」


マスタ イサム
「普通の服なら規格外の俺でもすんなり着れたからな。オーダーメイドって奴か?」


ウメゾノ ミノル
「それ和製英語なんだぜ。本来はTaylor madeって言うんだ」


マスタ イサム
「意味が伝われば原義にこだわる必要はないと思うが」


オモヒト コウ
「無駄話もそこまでにしておこうか。そろそろ、時間だ」


491 :Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/12(日) 02:56:08.34 ID:/AQwkga80



―――



オモヒト コウ
「……早く着すぎたか?」


ノノハラ レイ
「着替えには時間がかかるものなんだよ、女の子って言うのは」


ウメゾノ ミノル
「これだから鈍感系主人公様は」


オモヒト コウ
「何を言っているのかは分からないがとりあえず喧嘩売られてることは理解したぞ。原価で買ってやろうか?」


マスタ イサム
「一応、親睦を深めるという名目で開催するんだろ? ちょっとは冷静になれよ。梅園もそう煽るな」


マスタ イサム
「……解ってるよ」


ウメゾノ ミノル
「はいはい」


ノノハラ レイ
「そうこうしているうちに女子の皆の御成りだよ。
 ……これはこれはまた。まさかのブルとはね。学園長の趣味かな?」



492 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/12(日) 02:59:55.91 ID:/AQwkga80


――失礼、訂正ですね。


誤「……これはこれはまた、まさかのブルとはね。学園長の趣味かな?」

正「……これはこれはまた、まさかのブルマとはね。学園長の趣味かな?」


ーー一時中断いたします。


493 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/12(日) 23:05:44.09 ID:/AQwkga80


――おっと、訂正箇所がもう一つ。増田様が自問自答していらっしゃるみたいですね。



マスタ イサム
「……解ってるよ」


オモヒト コウ
「……解ってるよ」


――でございます。それでは、再開いたします。


494 :♪Become Friends ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/12(日) 23:25:40.12 ID:/AQwkga80



ナナミヤ イオリ
「モノクマはこんな破廉恥な服装が好きなのね。随分と倒錯してるわ」


ノノハラ ナギサ
「うぅ……」


ノノハラ レイ
「そう言えば、天聖院学園の女子の体操服もブルマだったっけね。まぁ、皆似合ってるんだしいいんじゃない?」


コウモト アヤセ
「そういうことじゃないって……。恥ずかしいんだってば」


マスタ イサム
「――おい、巴はどうしたんだ?」


ユーミア
「朝倉さんなら、更衣室に入る前に『忘れ物をした』と言ってそのまま下の階へ行ったので……。
 今頃本館に戻っているのでは?」


マスタ イサム
「全くあいつは……」


オモヒト コウ
「最初はドッヂボールでもやろうと思ったんだがな……。奇数になったならどうチーム分けするべきか――」


ノノハラ レイ
「ま、それなら汚名返上の機会を与えてあげようじゃないか。ねぇ? 見てるんでしょ、モノクマ。出てきなよ」


495 :♪モノクマ先生の授業 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/12(日) 23:56:32.95 ID:/AQwkga80



モノクマ
「黙って聞いてればいい気になりやがって! ボクが変態だとでも言いたいのか!?」


ウメゾノ ミノル
「……今日だけは君を学園長として称えようと思う」


モノクマ
「ちょっと! 梅園クンがそんなこと言ったら余計そういう目で見られるだろうが!」


ノノハラ レイ
「まぁまぁそう怒らないの。深呼吸深呼吸。十分間息を吸い続けて十分間吐き続けるんだ」

モノクマ
「コオォォォ――じゃなくて! オマエ! 何の用なんだよ! ボクはこれでも忙しいんだぞ!」


ノノハラ レイ
「ほら、皆のトラウマとして名高い“二人組作ってー”ってあるじゃん。余ったら先生と組まされるアレ。
 今回ばかりはこれをモノクマ学園長殿にも適応してやろうと思ってね」


モノクマ
「――ああ、ボクにもドッヂボールに参加しろってこと?」


ノノハラ レイ
「その通り。ここで八面六臂の活躍を見せれば、それなりの名誉になると思うけど?」


モノクマ
「うぷぷ。いいじゃん。いいじゃん! そんなに見たいなら見せてやるよ。“ドッヂボールのタスマニアデビル”の二つ名を持つボクのボールさばきを!」


オモヒト コウ
「ここまで全く技量が伝わらない異名も中々ないぞ」


ノノ
「クマなのにタスマニアデビルなんだ」


ナナ
「タスマニアデビルなのにクマなのかしら?」



496 :♪モノクマ先生の授業 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/13(月) 00:12:06.25 ID:kYF4CttJ0



ノノハラ レイ
「じゃ、決まりね。あ、先に言っておくけど一応念を押しておこうか。
 このドッヂボールに関してはモノクマにボールを投げる行為は校則違反にならない。それでいいね?」


モノクマ
「校則を盾にゲームを有利に進めるほど大人げなくなんかないやい!」


ノノハラ レイ
「じゃ、安心してゲームを始められるね。で、公。どうチーム分けするんだ?」


オモヒト コウ
「俺・夢見・伊織・ナナ・ノノ・増田・ユーミアの七人と、澪・渚・河本・梅園・慧梨主・亜梨主・モノクマの六人と一匹のチームでどうだ?」


ノノハラ レイ
「ちょーっとそっちに有利過ぎなぁい?」


オモヒト コウ
「なんだよそんな不満そうにして。――まさか負けるのが怖いのか?」


ノノハラ レイ
「やってやろうじゃねぇかよこの野郎!(ガンギレ)(食い気味)」


コウモト アヤセ
「見え見えの挑発にあっさり乗せられないでよ澪……」


497 :♪Finding Peace Party ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/13(月) 00:26:57.08 ID:kYF4CttJ0



コウモト アヤセ
「――じゃぁ私外野にいってくるね。突き指は嫌だから」


ノノハラ レイ
「まぁ妥当だろうね。じゃ無理しないでこっちにパスするぐらいでいいよ」


オモヒト コウ
「こっちの外野は……、伊織。行ってくれるか?」


ナナミヤ イオリ
「理由を聞いても?」


オモヒト コウ
「消去法、だな。ナナとノノは意外と運動神経がいいんだ。少しでも被弾する確率は低くしておきたい」


ナナミヤ イオリ
「……そう。なら、勝ちましょうね」


オモヒト コウ
「おう、任せてくれ。――じゃ、始めるか。ボールはそっちにくれてやるよ」


ノノハラ レイ
「ははは、随分と余裕じゃないか。――精々後悔するがいいぜ」



 戦いの火ぶたが切って落とされた。



498 :♪Finding Peace Party ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/13(月) 00:36:43.84 ID:kYF4CttJ0



ノノハラ レイ
「んじゃ、遠慮なく!」


オモヒト コウ
「いきなり俺かよ! ――とか言ってがっちりキャッチ出来るんだなぁこれが!
 おら! お返しだ!」


ノノハラ レイ
「学園長ガード!」


モノクマ
「ぎゃいんッ!」


ノノハラ レイ
「何てことだ!学園長が身を挺してボクを守っただなんて!」


オモヒト コウ
「いやいま思いっきり盾にしただろ」


モノクマ
「せ……、生徒を守るのも、センセイの、役、目……」ガクッ


ノノハラ レイ
「学園長ぉぉぉぉぉ!! おのれ学園長の仇ぃぃぃ!」


オモヒト コウ
「なんて白々しい!」


マスタ イサム
「面白い奴だ気に入った。殺すのは最後にしてやる」


499 :♪Finding Peace Party ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/13(月) 01:02:53.63 ID:kYF4CttJ0



オモヒト コウ
「――言い忘れたが、顔面セーフはなしだから、な!」


ノノハラ レイ
「ルールの後だしは禁じ手じゃなーい?」


ウメゾノ ミノル
「――それマトリックス避けしながらサマソ蹴りしてボールトスする奴のセリフ?」


ノノハラ レイ
「あれ、ボク等味方同士だよね?」


ウメゾノ ミノル
「まぁ、僕もどうせなら勝ちたいし、多分君に当たったら負け濃厚になるから応援はするけど、さ!」


ノノ
「あっ。……当たっちゃった」


ナナ
「足元を狙うだなんて、お兄ちゃんったら大人気ないのね」


ウメゾノ ミノル
「HAHAHA何とでも言うがいいさ。勝つためならどんな手も使うぜ」



500 :♪Finding Peace Party ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/13(月) 01:24:39.52 ID:kYF4CttJ0



――かくして



サクラノミヤ エリス
「きゃっ! ……ごめんなさいお兄さま」


ウメゾノ ミノル
「気にしなくてもいいって。最後に僕達の中の誰かがコートの中に立っていればいいんだから」



――ゲームは加速し、



サクラノミヤ アリス
「慧梨主の仇ぃ!」


ナナ
「……あらごめんなさい。でもあんなに簡単に狩れそうなお姉ちゃんの方にも問題があると思うの」



――勝負は白熱する。



ノノハラ レイ
「正直ここまで劣勢になるとは思わなかったな! あの双子を外野に行かせたの失敗だったね!
 おかげで気分はシャトルランだよ――っと足がぁ!」


ウメゾノ ミノル
「あー……。その位置は非常にまずいね。目の前にはボールを持った増田君。野々原君はこけちゃったし。
 これは負けかな?」


マスタ イサム
「――お前は最後に殺すと言ったな」


ノノハラ レイ
「そ、そうだよ増田クン、た、たすけ――」


マスタ イサム
「あれは嘘だ」


ノノハラ レイ
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



――野々原澪、ボールを顔面に強打し、戦闘不能(リタイヤ)



501 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [sage saga]:2020/07/13(月) 01:29:39.95 ID:kYF4CttJ0


――本日はここまででございます。おやすみなさい。


502 :♪悪魔のトリル 第二楽章 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/19(日) 00:58:29.62 ID:xP7iSvpa0



―――




 もう嫌だこんな生、と何度思ったことだろう。
 生きることは死ぬこと。しかしてそれは決して死と断絶の物語ではなく、愛と勇気の物語なのだ。なんて臭いセリフはもうボクの心を打ちはしない。
 果たして誰が想像できるって言うんだ?
 何万回もの死を体感することがどれだけ苦痛なのかということを。
 一回目の死と二回目の生は、ただ一回死があるだけだ。
 二回目の死と三回目の生は、一回目の死と、二回目の生の時に体感した死と、二回目の死の、計三回。
 三回目の死と四回目の生は、一回目の死と、二回目の時に体感した死、追体験した最初の死の追体験、二回目の死と二回目の死の追体験と三回目の生に体感した死に加え、二回目の生をしてから迎えた三回目の死の計七回。
 つまり四回目の死と五回目の生の間には、追体験した体験を追体験し、それをまた追体験し――と、追体験する死の回数は十五回。
 この時点で最初の死から、追体験の分の死も含めた累計死亡回数は三十六回。
 n回目の死とn+1回目の生で体感する死の回数は(2^n)-1となり、累計死亡回数は2^(n-1+n-2+……+1)-n回。指数関数的に増える死の体感を前に、果たして正常でいられるだろうか?
 既に答えは出ている。否だ。気になるならnに100でも代入してみるといい。関数電卓でもお手上げだ。
 このnが数十万、数百万、数千万ともなると、“天文学的な”という表現も馬鹿々々しくなるほどのおぞましい数になる。無料大数や不可説不可説転でもきっと表すことが出来はしない。
 ここまでくると、最早諦観や悟り、慣れも感じなくなってくる。
 全てを投げ出してしまいたいと思ったことだって数え切れないが、それさえも許されないならば、どうすればいいのだろう?




503 :♪悪魔のトリル 第二楽章 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/19(日) 01:07:36.16 ID:xP7iSvpa0



 光合成をすればいい。葉緑素がない動物にとっては全く必要ではなく、そもそもそんなことのできる器官などありはしないのだが、物の喩えだ。
 燦々と照り付ける太陽のもと、青空を見上げて、目を瞑り、自分を消していく。光の中に溶けていくイメージ。
 有体に言ってしまえばただの現実逃避にしかならないが、これが中々効果的で、沈んだ気分や凹んだ気持ちなんかがどこかへ消えて行ってしまう。
 ――少なくともボクはそうやって、ここまでやってきたんだ。



―――



504 :♪Become Friends ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/19(日) 01:34:16.40 ID:xP7iSvpa0



ノノハラ レイ
「……うーん。これは一体どういう状況なんだい? 綾瀬」



 気が付くとボクは綾瀬に膝枕されていた。確か最後の記憶は増田クンのボールを顔面に喰らってからだけど。
 ひょっとしてその衝撃で気絶しちゃった? マジ?



コウモト アヤセ
「多分、澪の想像通りよ。気絶したから起きるまでわたしが看病するってことになったの」


ノノハラ レイ
「わぉ、マジか。頭吹っ飛んだかと思ったんだけど、大丈夫? ちゃんとボクの頭原形を留めてる?」


コウモト アヤセ
「心配しなくても、いつも私が知ってる澪の顔よ。安心して」


ノノハラ レイ
「それは良かった。……あー、それで、ドッヂボールの勝敗は?」


コウモト アヤセ
「想像通り、わたし達の負けよ。梅園君が最後まで頑張ってたんだけどね、主人君のボールをローリングソバットで蹴り返したりして。その後夢見ちゃんの反撃で退場しちゃって。
 亜梨主ちゃんもね、意外と粘ったんだけど。ユーミアさんに被弾させるまで避け切ったのって何気に凄いと思うの。
 まぁ結局は増田君と、意外だけど夢見ちゃんが結構活躍して。最終的に夢見ちゃんと亜梨主ちゃんとの一対一になって、夢見ちゃんが残った。そんな感じ」


ノノハラ レイ
「そっか。――それで朝倉さんが到着して、ボクが倒れている間にバスケに移行したわけだ。どれだけ倒れてたんだボクは」


コウモト アヤセ
「うーん。巴ちゃんが来たのはドッヂボールが丁度終わったぐらいで、バスケが始まってから10分ぐらいだから……、30分ぐらい?」


ノノハラ レイ
「割とヤバめな気絶してたんじゃないかな、ボク」


505 :♪Become Friends ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/19(日) 01:51:01.63 ID:xP7iSvpa0



コウモト アヤセ
「だからこうしてわたしが貴方の看病をしてるんでしょ? 気分はどう?」


ノノハラ レイ
「割と平気だよ。多分この試合が終わるころには立てるんじゃないかな」


コウモト アヤセ
「そっか、良かった」


ノノハラ レイ
「にしても凄いねぇ。公はスリーポイントシュートバカスカ入れまくるし、増田クンは――わぁ、スラムダンクなんて初めて見た。
 ひょっとして、ずっとあんな感じ?」


コウモト アヤセ
「うん。凄い迫力よね、あれ。ゴールポストがあんなにたわむ所とか初めて見た」


ノノハラ レイ
「――ちょっと厄いかも」


コウモト アヤセ
「えっ?」


ノノハラ レイ
「ほら、この多目的ホールって取り繕っているとはいえ結構古いじゃん?
 だからさ、あんなふうに乱暴に扱ったら――」



――バキン!


506 :♪New Classmate of the Dead ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/19(日) 02:09:55.70 ID:xP7iSvpa0



 ゴールポストが根元から折れて、増田クンの巨体が真っ逆さまってわけだ。
 おまけにまずい事態になりそうだし、ちょっと行ったほうがいいかな、これは。



ノノハラ レイ
「大丈夫?」


マスタ イサム
「あぁ、何とかな」


ノノハラ レイ
「いや、キミに言ったんじゃなくてね? 下敷きになってる朝倉さんに聞いたんだけど?」


マスタ イサム
「なっ、巴っ! 大丈夫か!?」


アサクラ トモエ
「むりぃ……。死にそうだからディープな人工呼吸を……」


マスタ イサム
「――大丈夫そうだな!」


アサクラ トモエ
「あうぅ……、でもたんこぶ出来ちゃったのは本当なんだよ! ――っ!」



 後頭部を抱えて蹲ってるあたり、結構強くぶつけたねこれは。



ノノハラ レイ
「とりあえず朝倉さんは横になろうか。さっきまでのボクみたいに。少なくとも痛みが引くまでは。
 後は経過を観察して、急に気分が悪くなったり頭が痛くなったりしたらすぐ言うんだよ?
 言っておくけど、激しい運動なんて言語道断だから。これはドクターストップです。医師免許もってないけど」


アサクラ トモエ
「えーっ?!」


ノノハラ レイ
「後頭部ぶつけたんだぜ? それくらい気を付けないとやばいんだって。
 ――それが原因で亡くなった声優だって知ってるんだから」


アサクラ トモエ
「……はーい」


507 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/19(日) 02:37:41.87 ID:xP7iSvpa0



アサクラ トモエ
「あーぁ、■■■■■■■ルが使えたらこんな怪我すぐに治せるのに」


マスタ イサム
「何だって?」


アサクラ トモエ
「え?! あ、あぁ、何でもないよ、先輩。心配してくれてありがとね」


マスタ イサム
「いや、こっちこそ、悪いな。つい張り切り過ぎてこんなことに……」


アサクラ トモエ
「体格差も考えずに先輩の身体を受け止めようとしたボクにも非があるから、そんなに自分を責めないで、ね? 先輩」


マスタ イサム
「……あぁ。だが、何かあったら言うんだぞ? 無理は絶対するなよ?」


アサクラ トモエ
「わかってるって。先輩に迷惑なんてかけられないもん」


マスタ イサム
「なら、いいんだが」


508 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/20(月) 00:00:45.03 ID:wvqHuU+X0



マスタ イサム
「ところで、さっきからずっと気になってたんだが」


アサクラ トモエ
「なあに、先輩?」


マスタ イサム
「何で上下ジャージなんだ? 他の女子はみんな体操服なのに」


アサクラ トモエ
「あー……、それはね、えーっと、その、ね、ほら! ボクってちょっと寒がりだからさ。持ってきたの!」


マスタ イサム
「それが忘れ物ってわけか?」


アサクラ トモエ
「うん! あ、そうだ! それより先輩、大変だよ! ゴール!」


マスタ イサム
「ん? ――あ」



 規則
 4.故意に施設の設備の機能を損なう行為を禁ずる。



ノノハラ レイ
「校則違反なら問題ないよ。これは事故なんだから」


マスタ イサム
「流石、監視カメラを塞ぐ奴は格が違うな」


ノノハラ レイ
「物は言いようってことさ。監視カメラを濡れたタオルで覆ったって、その機能が損なわれたわけじゃない。
 実際に画面には映っているんだから。カメラの映像は。それが一面タオルになってるってだけで」


509 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/20(月) 00:19:39.59 ID:wvqHuU+X0



マスタ イサム
「だが流石にこうなってしまった以上バスケは続けられないな。どうする?」


オモヒト コウ
「そうだな、時間はまだあるがこれで試合終了にしよう。そろそろ昼休憩も挟まないといけないしな」


コウモト アヤセ
「じゃ、試合は36:37で増田君チームの勝利ね」


オモヒト コウ
「……悪いな、看病に加えて審判に点数計算係までさせて」


コウモト アヤセ
「ピアニストに突き指は厳禁だし、最初からバスケは辞退しようと思ってたから」


オモヒト コウ
「そうか。なら、次も辞退するか? 次はバレーボールにしようと思ってるんだが」


コウモト アヤセ
「そうね。ちょうど巴ちゃんも参加できそうにないわけだし、また審判役になるわ」



510 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/20(月) 00:33:40.72 ID:wvqHuU+X0




 昼休憩が終わって、次はバレーボール。
 チーム分けは公・ボク・渚・小鳥遊さん・ナナちゃん・ノノちゃんの六人と、増田クン・梅園クン・亜梨主さん・慧梨主さん・七宮さん・ユーミアさんの六人となった。



オモヒト コウ
「悪いな、ポール運ぶの手伝ってもらって」


マスタ イサム
「これぐらいお安い御用だ。ネットの高さはどうする? 俺達の身長に合わせると高すぎるし、かといって女子の身長に合わせると俺達にとって低すぎるが」


オモヒト コウ
「間を取るぐらいでいいだろ。不都合があったらその都度変えるってことで。
 ところで反対側は――、おい、俺の目にはユーミアが片手でポールを担いでるように見えるんだが」


マスタ イサム
「ああ、俺たち二人掛かりで運んでるポールを軽々な。意外と力持ちなんだよ、ユーミアって」


オモヒト コウ
「……なんだこの敗北感は」


マスタ イサム
「考えないようにしとけ」


511 :♪Finding Peace Party ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/20(月) 01:01:56.32 ID:wvqHuU+X0



―――


ウメゾノ ミノル
「あー、これはアウトコース――じゃねぇ入りそうじゃねぇか! 危ねぇ届け!」


ノノハラ レイ
「おー、見事なスライディング」


―――


ノノハラ レイ
「間に合え……っ!」


ノノハラ ナギサ
「流石お兄ちゃん! ギリギリ足でボールを上げるなんて!」


オモヒト コウ
「何でお前らだけセパタクローしてんだよ」


―――


コウモト アヤセ
「ゲームセット。マッチで勝ったのは澪チームね」


ノノハラ レイ
「やったぜ」


オモヒト コウ
「俺としては澪と梅園が終始セパタクローをしていたのが解せないんだが」


ノノハラ レイ
「何か手より足の方がでちゃって」


ウメゾノ ミノル
「マジシャンとしては手の指って優先されるべきだと思うんだ」


オモヒト コウ
「お前らな……」


マスタ イサム
「そう怒るなよ。結構いいゲームだったじゃないか。――ところで、巴はどこ行った?」


コウモト アヤセ
「さっき着替えて来るって。更衣室にいるんじゃない?」


マスタ イサム
「そうか。どうする、主人。もう一勝負するか?」


オモヒト コウ
「いや、今日はこれくらいにしておこう。疲れが見える前にやめておくのが怪我を防ぐ秘訣だ」


ノノハラ レイ
「ボクとしてはまだ遊び足りないんだけどな?」


オモヒト コウ
「安心しろ、ちゃんと勝負の場は設けるさ。全員合同でやるのはここで一区切りってだけでな。
 じゃ、片付けて帰るとするか」


512 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [sage saga]:2020/07/20(月) 01:10:28.02 ID:wvqHuU+X0



――本日はここまで。


――ヤンデレの女の子に耳の奥まで死ぬほど愛されて眠れないASMR〜もしくはヤンデレCD Re:Tuneの配信がいよいよ今週末に迫ってまいりました。


――非常に楽しみでございます。ワタクシも昂っておりますれば、筆も進むというものでございます。


――それでは、おやすみなさい。


513 :♪Become Friends ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 19:51:37.93 ID:yj+23MoO0



 その後は一波乱もなく、つつがなく夜になった。
 夕食も食べ終わってちょっと暇を持て余していると、



オモヒト コウ
「ちょっといいか」



 とお誘いが。球技大会の最後に行ってた勝負のお話かな?



オモヒト コウ
「別館の一階、ゲームコーナーに卓球台があったろ? ケリ着けようぜ」


ノノハラ レイ
「面白いねそれ。良いよ、乗った」



 球技大会延長戦の開始ってわけだ。楽しくなってきたね。



514 :♪Become Friends ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 19:53:07.73 ID:yj+23MoO0


―――



オモヒト コウ
「先に十点取った方が勝ち、デュースは無し。それでいいか?」


ノノハラ レイ
「問題ないよ。どうせだ、何か賭けようぜ」


オモヒト コウ
「お前そう言ってガチャのハズレ押し付ける気だろ」


ノノハラ レイ
「あれ、バレちゃった? じゃいいや、さっさとやろう」


オモヒト コウ
「待てよ、賭けに乗らないなんて一言も言ってないだろうが」


ノノハラ レイ
「へえ? じゃ賭け代は?」


オモヒト コウ
「負けた方がバツゲームを受ける。勿論怪我するような危ないヤツじゃないが、それなりの屈辱を味わうだろうな」


ノノハラ レイ
「内容はその意味ありげに置かれた空き箱の中にある紙に書かれてあるって感じ?」


オモヒト コウ
「ああ。十枚くらい書いた。負けた奴はその箱から一枚紙を選んでその指示に従う。簡単だろ?」


ノノハラ レイ
「ふぅん? ボクが賭けを持ち出さなかったら、キミが言い出す予定だった?」


オモヒト コウ
「お前の事だから、俺が勝負に誘えばレイズしてくれると思ったんだよ」


ノノハラ レイ
「いいねぇ、良い感じに信用されてるねぇ。じゃあさ、そのバツゲーム追加させてよ。キミが用意したのだけじゃ不公平じゃない?」


オモヒト コウ
「――そう言うだろうと思って白紙とペンを用意しておいた。俺は見ないようにするから、さっさと書いて箱に入れろ」


ノノハラ レイ
「ははは、至れり尽くせりだねぇ。じゃ、遠慮なくいかせてもらうよ。どう恥をかかせてやろうかなぁ?」


オモヒト コウ
「言ってろ、俺が勝つ。精々塗れた屈辱に押しつぶされないようにするんだな」



―――


515 :♪Finding Peace Party ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 19:56:31.20 ID:yj+23MoO0



オモヒト コウ
「くっ……、中々やるじゃないか」


『腕立てを点差×10回』『自分の恥ずかしいエピソードを暴露』『素肌にジャケットでWHITE BREATHを熱唱(外で)』


ノノハラ レイ
「そっちこそ……」


『腹筋を得点×10回』『隠し芸を披露』『なんか悪魔よってきそうな悪魔祓いの儀式をする』


ウメゾノ ミノル
「なにこのクッソ面白い状況、混ぜろよ」


マスタ イサム
「待て、余計なこと言うな。俺はただ忘れ物を取りに来ただけなんだぞ。巻き込もうとするんじゃない、やめ、止めろぉ!」



―――



ノノハラ レイ
「ラリーの早さ比べだあぁぁ!!」


オモヒト コウ
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」


マスタ イサム
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!」


ウメゾノ ミノル
「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!」



タカナシ ユメミ
「ナニアレ」


コウモト アヤセ
「“男には負けられない戦いがある”って言ってたけど、ちょっと人知超えてない?」


ノノハラ ナギサ
「……うん、タオル用意しよっと」


サクラノミヤ エリス
「渚さん?! 現実逃避しないで!」


ナナ
「まるで他の事が目に入ってないみたいね、お兄ちゃんたち」


ノノ
「全然混ぜてくれなさそうだもんね」


サクラノミヤ アリス
「こんな連中無視してさっさと行くわよ」


ナナミヤ イオリ
「……私は何も見ていない。紙なんて見ていない。あれには何も書かれていない……」



『細かすぎて伝わらないモノマネ×失点数』『棺桶ダンス』『HOT LIMITを完全再現(衣装を含む)』『絶対に他人に言えない性癖を一つ』


516 :♪Finding Peace Party ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 20:01:11.97 ID:yj+23MoO0



ノノハラ レイ
「……大分汗かいたし、そろそろお風呂入ろうぜ」


オモヒト コウ
「賛成だな……。少し疲れた」


マスタ イサム
「久しぶりかもな、ここまではしゃいだの……」


ウメゾノ ミノル
「スタミナゲージが尽きました。コンテニューする場合はコインを投入してください」


ノノハラ レイ
「じゃ、ボクはこっちだから」


オモヒト コウ
「何ナチュラルに女湯行こうとしてるんだお前は」


ノノハラ レイ
「あーれー」


コウモト アヤセ
「はいはい夢見ちゃんもこっちだからねー」


タカナシ ユメミ
「あぁん」


ナナ
「ねぇノノ、ちょっとあっち行ってみましょう?」


ノノ
「それ、面白いかも!」



――ビー! ビー!



ウメゾノ ミノル
「……どうやら違う性別の温泉の暖簾をくぐろうとしたその瞬間にブザーが鳴る仕組みなんだね。
 それ以上踏み入れたら絶対何か良くないことが起こるから早く戻ったほうがいいぜっていうかガトリングみたいなの出てきてるから急いで」


ノノ
「ちぇー」


ナナ
「つまらないわね」


517 :♪Become Friends ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 20:02:43.03 ID:yj+23MoO0



―――



ノノハラ レイ
「あーいいお湯だった。そろそろ時間も時間だし――何かな増田クン、人の肩を掴んだりして」


マスタ イサム
「明日はTRPGでもやろうと思ってな。ちょっとその練習に付き合ってくれよ」


ノノハラ レイ
「リハってワケ? ……いいけど、時間大丈夫なの?」


マスタ イサム
「夜通しやるからな」


ノノハラ レイ
「マジ?」


マスタ イサム
「俺は至って大真面目だぞ。何だったら、一通り終わった後麻雀でもするか?」


ウメゾノ ミノル
「徹麻とか楽しそうじゃん。乗った乗った」


ノノハラ レイ
「麻雀に賭けもありだったらいいよ。とことんやってやろうじゃん」


マスタ イサム
「じゃ、決まりだな」



―――


518 :♪旧支配者のキャロル ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 20:07:55.39 ID:yj+23MoO0



ウメゾノ ミノル
「KP!『ナイフに魔力を付与する』魔術を宣言します!」


マスタ イサム
「いいだろう」


ウメゾノ ミノル
『I am bone of my sword.』


ノノハラ レイ
「くっそwwwww」


オモヒト コウ
「やめろwwwww」



―――



マスタ イサム
「おめでとう、無事クリアしたようだ」


ウメゾノ ミノル
「Congratulation! しかしまぁ、澪君強すぎない?」


ノノハラ レイ
「そう? ちょっと顔がよくてSAN値が減らないだけじゃない」


オモヒト コウ
「二大邪神立て続けに目撃しておいて正気保ってるのを“ちょっと”とは言わん」


マスタ イサム
「この調子なら明日も大丈夫そうだな。――じゃ、始めるか」


519 :深夜の麻雀ほど楽しいものはない ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 20:17:33.30 ID:yj+23MoO0



―――



ウメゾノ ミノル
「よっしゃ立直!」 打一筒


ノノハラ レイ
「ロン、四暗刻単騎」


オモヒト コウ
「ロン、国士十三面」


マスタ イサム
「ロン、大四喜」


ウメゾノ ミノル
「……アポ?」



『魔法少女コス』



ウメゾノ ミノル
「くっそ自分で用意したヤツだったのにこんなはずじゃ……」


オモヒト コウ
「ま、まぁ、に、にwwあってwwるwwwと思うwwwぞ?」


マスタ イサム
「わ、笑いながら言うんじゃない説得力がぶほぉwwwww」


ノノハラ レイ
「んっふwwwwwなんならアテレコしてあげよっかwwwww?」


ウメゾノ ミノル
「……CV:井口裕香でオナシャァス!」


ノノハラ レイ
「うはwwwwwおkwwwww」


520 :深夜の麻雀ほど楽しいものはない ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 20:18:13.82 ID:yj+23MoO0



ノノハラ レイ(CV:井口裕香)
『にゃにゃ〜ん!錬金魔法少女、スタブレ☆フレアだにゃ〜ん!』



オモヒト コウ
「だっwwwww」


マスタ イサム
「ばっwwwwwやwwwwwやめwwwww」



ウメゾノ ミノル
『オイは妖精の“かーるぐすたふ”ばい!』



オモヒト コウ
「ふwwwwwざwwwwwけwwwwwんwwwwwなwwwww」


マスタ イサム
「腹話術とかwwwwwひwwwww卑怯wwwww」



521 :深夜のテンションなので多少のキャラ崩壊はご愛敬 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 20:25:17.11 ID:yj+23MoO0



ウメゾノ ミノル
「はい終わり! 次々ぃ!」



―――



『次局終了時まで星の戦士のモノマネ(コス有)』



ノノハラ レイ(頭部:一頭身の星の戦士 体:黒タイツ)
「……」


オモヒト コウ
「ぐっ……、ふw……」


マスタ イサム
「な、何か言えよw……」


ノノハラ レイ(CV:大本眞基子)
「ぺぽーい!」


ウメゾノ ミノル
「そっちwwwww?その声でそっちwwwww?」



―――



ノノハラ レイ(CV:大本眞基子)
「ワシとお前の中ゾイ!ナカナカZOY!」 打中


オモヒト コウ
「そんなこと言う星の戦士いやだwwwww」


マスタ イサム
「その声でそのセリフはやめろってwwwww」


ウメゾノ ミノル
「せめてCV:緒方賢一にしてwwwww」


ノノハラ レイ(CV:緒方賢一)
「ぽぉよぉ〜」


オモヒト コウ
「おwwwwwまwwwwwえwwwww」


マスタ イサム
「わざとかwwwww?わざとなのかwwwww?」



―――


522 :かくして夜は更けてゆく ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 20:56:58.61 ID:yj+23MoO0


―――



『UMA』



マスタ イサム
「キャロット! 立直! たーのしー!」


オモヒト コウ
「無駄にいい声なのが腹立つwwww」



―――



『Party Parrot』



ウメゾノ ミノル
「Next」 打二索


ノノハラ レイ
「RYANSO」


ウメゾノ ミノル
「NO」


ノノハラ レイ
「HA?」


ウメゾノ ミノル
「The answer is」 打一筒


ノノハラ レイ
「……」


マスタ イサム
「……」


オモヒト コウ
「……」


ウメゾノ ミノル
「TINTIN」 一筒二索一筒


ノノハラ レイ
「HAHAHA! HA?」


マスタ イサム
「……っw」


オモヒト コウ
「くくっ……w」


523 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 21:03:13.74 ID:yj+23MoO0



―――


コウモト アヤセ
「もう、澪ったら。どうしてこうも突飛なのよ」

 『朝風呂一緒にどう? 先に別館で待ってるから』
 なんてメールをどうして5時に送るのよ、もう。
 ……久しぶりに二人っきりで一緒にお風呂なんて、心の準備ぐらいさせてもいいじゃない。


524 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 21:13:17.31 ID:yj+23MoO0



 6時にはゴンドラリフトが動き始めるから、それに一番乗りしようと思ったところで、意外な人と鉢合わせた。



コウモト アヤセ
「ユーミアさん?」


ユーミア
「ああ、河本さん。どうしてこんな朝早くに?」


コウモト アヤセ
「わたしは澪に呼ばれてきたんだけど……、ユーミアさんは?」


ユーミア
「ユーミアは昨日の片付けと……、掃除ですね。あの多目的ホールも結構汚れてしまっていますし」


コウモト アヤセ
「そっか。……それにしても澪遅いなぁ。先に待ってるって言ってたくせに」



――ジリリリリリリリリ



ユーミア
「ゴンドラが動き始めましたよ、早く乗りましょう」


コウモト アヤセ
「……もう!」



 流石にまた10分も待つなんて嫌だし、もう知らない!


525 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 21:21:19.12 ID:yj+23MoO0



―――



ユーミア
「ではユーミアは二階へ行って参りますね」


コウモト アヤセ
「うん。わたしは先に温泉行ってくる」



 ユーミアさんとは別館入り口近くのエレベーターで別れて、暖簾のところへ向かった。
 ――そこに、澪が変わり果てた姿で立っていた。



コウモト アヤセ
「何それ? どうしたの、その恰好?」


ノノハラ レイ
「天聖院学園の制服だよ」


コウモト アヤセ
「女子の、ね。まあ、似合ってるって言うか似合い過ぎて違和感がなさすぎるんだけど、どうしてそうなったの?」


ノノハラ レイ
「――話そうと思えば8時間ぐらいは話せる浅い理由があるんだ。聞く?」


コウモト アヤセ
「言いたくないなら素直に言えばいいじゃない。聞かないでおくから、朝風呂、入りましょ?」


ノノハラ レイ
「うん」


526 :♪悪魔のトリル 第一楽章 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 21:23:19.76 ID:yj+23MoO0



―――


???
「納得がいきません。筆記試験では主席の成績を取った自信があります。何故不合格なのか、理由の説明をお聞かせ願いたい」


???
「そう言われましても、こちらとしてはですね――」


???
「――上の意向ってヤツですね。なら貴方のような木端にはどうしようも出来ないわけだ。わかりました、ならもう何も言いません。お手数をおかけしました」


???
「……一体何なんだあいつ」



???
「こんな辺鄙な離島に足を運んで、やったことと言ったら悪質なクレーマー紛いの行為。
 ホント、何しに来たんだか。こんな気分じゃ観光もままならないだろうし」


???
「おにーさん、なにかお困りごと?」


???
「……何処の誰かはわかりたくもないんだけど、何の用かな?
 ボクは己の無力を呪うのに手一杯でね。幼女の皮を被った怪物の手も借りたくないんだ」


???
「――夢を見たんだ。青いバラの蕾の夢を」


???
「――そう、合点がいったよ。だから落とされたんだね。なら、ここにもう用はないや。予定を切り上げてさっさと帰ることにするよ。
 覚えておかなくて結構だけど、――いつか絶対に後悔させてやる。どれだけの時間をかけても、必ずだ」


???
「それは楽しみだね。覚えられているといいけど」


―――


527 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 21:34:18.22 ID:yj+23MoO0



コウモト アヤセ
「ちょっと、澪! 起きて!」


ノノハラ レイ
「ん……、ゴメン、寝てた?」


コウモト アヤセ
「寝てた」


ノノハラ レイ
「……肩、貸してくれたんだ。ありがと」


コウモト アヤセ
「だって湯船につかった途端にうつらうつらしてたんだもん。寝不足なの?」


ノノハラ レイ
「……うん、ちょっと徹夜しちゃった」


コウモト アヤセ
「――無理はしないって言わなかった?」


ノノハラ レイ
「一徹ぐらいは無理に入らないから。……ゴメン、わかった、今度からはちゃんと寝るからその拳はどうか下ろして」


コウモト アヤセ
「……もう。ちょっとは自分を気遣ってよ」


ノノハラ レイ
「そうするよ。――それにしても、こうして二人きりで入る温泉って言うのはいいね」


コウモト アヤセ
「そうやってまた強引に話を……。うん、景色も凄くいいわね。朝焼けが雪に反射して、キラキラしてる」


ノノハラ レイ
「これが普通の宿泊旅行だったら最高のロケーションなのにねぇ」


コウモト アヤセ
「本当に、そうねぇ……」


528 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 21:40:08.56 ID:yj+23MoO0



―――



ノノハラ レイ
「そろそろ朝ご飯の時間だね。あがろっか」


コウモト アヤセ
「うん。じゃ、また」



 混浴温泉から女湯へ向かって、そのまま脱衣所に向かおうとしていると、何か物音が聞こえる。
 これって、シャワーの音? 誰かいるの?
 何となしにその音源へ向かってしまったことを、後悔することになることを私は知らなかった。


529 :♪希望断線ノイズミュージック ◆S7YK1FdmZg [!red_res saga]:2020/07/25(土) 21:44:53.24 ID:yj+23MoO0



 体中に刻まれたあちこちの刺し傷。
 それを洗い清めるようにかけられているシャワーの冷水。



 ――両手を重ねて、剣のようなもので磔にされている、巴ちゃんの死体だった。



530 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 21:46:46.11 ID:yj+23MoO0



――ということで、本日はここまで。


――非日常(捜査)編と学級裁判までお楽しみに。


――それではおやすみなさい。


531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/28(火) 05:19:14.77 ID:a3dRLQFb0
おっと。始まってしまいましたね。乙です
532 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 22:35:45.37 ID:D1yK3sxu0



      第二章



  ノーマーダー・ノーライフ



      非日常編



533 :????の□□ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 22:38:02.82 ID:D1yK3sxu0



 ここまでは思い通り。しかし、本番はここからだ。
 これから行おうとしていることは、“完璧な犯罪計画”からは程遠い。
 どう良く言い繕ったところで、これは臨機応変ですらない行き当たりばったりな犯罪だ。
 悪く言えばほぼノープランに等しい杜撰で稚拙な、計画と表現することすら烏滸がましい無謀ともいえる暴挙ですらある。
 しかし、それでいい。それがいい。
 如何に完璧な計画を立てようと、実行に移すまではただの机上の空論に過ぎない。
 そして全てが想定内に進むよう用意周到であればあるほど、誰かの気まぐれや天候と言ったほんの少しの綻びで一気に瓦解する砂上の楼閣だ。
 数多の戦場の摩擦が予測される現状では、パズルのピースを一つ一つ嵌めて完成させるのではなく、
 どんなトラブルがあろうとその場その場で柔軟に対応できる可塑性の高い粘土細工こそふさわしい。
 本当に必要なのは、定められたゴールへ着地するに至る道筋を整えるための“計画”ではなく“枠組”。
 最終的に目的を果たすことができれば、それまでの過程は考慮しなくていい。
 それ故に、今この時だけはヒトとしての心――良識・倫理・矜持・理性などといったそれらすべてを金繰り捨て、
 目的達成の為だけに動く殺人機械(キリングマシン)と成り果てよう。
 これは、己に下された至上命令(グランドオーダー)。



534 :????の□□ ◆S7YK1FdmZg [!red_res saga]:2020/08/22(土) 22:39:29.63 ID:D1yK3sxu0




       全ては、我が“勝利”の為に。



535 :♪New Classmate of the Dead ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 22:45:08.21 ID:D1yK3sxu0



ユーミア
「どうかされたのですか、河本さん? ――これは!」


コウモト アヤセ
「あ、ゆ、ユーミア、さん。その、これは、見ての通りで……」


ユーミア
「……わかりました。とりあえず落ち着いてください。その後、服を着ましょう」


コウモト アヤセ
「え? それってどういう――」



536 :♪New Classmate of the Dead ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 22:45:39.50 ID:D1yK3sxu0



ノノハラ レイ
「綾瀬! どうかしたの?! 尋常じゃない叫び声聞こえたんだけど?!」



537 :♪New Classmate of the Dead ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 22:47:52.21 ID:D1yK3sxu0



コウモト アヤセ
「――あっ、うん。そうするね」

 澪がここまで聞こえてくる声で叫んでるってことはこんな状況だと身を危険に晒してでもこっちに来そうだし。
 そんな大声出してたんだ、わたし。


538 :♪New Classmate of the Dead ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 22:49:28.95 ID:D1yK3sxu0



―――

ノノハラ レイ
「あれ、女湯に入れる……? てっきり撃たれると思ったのに。ブザーも鳴らないし」


モノクマ
「緊急事態だからね。特別に許可してるんだよ」


ノノハラ レイ
「そう。じゃ、遠慮なくいかせてもらおうか」


ユーミア
「――もう少しお待ちください。河本さんは今着替えている最中ですから。女装までして入ろうとした心意気は買いますが」


ノノハラ レイ
「そういうつもりじゃないんだけど……。じゃぁユーミアさん、中で何があったのか、教えてくれない?」


ユーミア
「朝倉巴の死体が見つかりました」


ノノハラ レイ
「……そう。だから緊急事態なんだね。モノクマの許可も下りるわけだ」



 しばらく待っていると、血の気が失せた顔をして震えている綾瀬が出てきた。



コウモト アヤセ
「ごめんね、遅くなっちゃって」


ノノハラ レイ
「いいよ。――案内してくれる?」


コウモト アヤセ
「うん」


539 :♪Rise of the Ultimate ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 22:54:11.73 ID:D1yK3sxu0



 案内された先、シャワー室の一角で冷水を浴びせられているのは、腹を裂かれ腸が零れ落ちそうになっている胴体を、
 重ねた両手を支点にするかのように吊り下げられている朝倉巴の死体。
 まるで出来の悪い操り人形だといわんばかりに、虚ろな顔で不格好に吊るされている。
 全身余すところなく傷つけられているのに、顔には手を付けられていないのが一層皮肉らしい。
 宙吊りにする楔となっているのは恐らく短剣の類だ。握りが片手ぐらいの長さしかない。
 でも刀身が見えず鍔で止まっているあたり、かなり深く突き刺さっているとみえる。
 体中の傷もかなり深い。腕や足といった細い部分は勿論、胴体の傷も恐らく貫通している。
 そんな傷が今目視できるだけで数十箇所、あるいはそれ以上。
 この惨状を恐らく何の準備も無しに目撃してしまった綾瀬は、未だボクの腕にしがみついてはなさない。
 震える彼女を抱きしめ、冗談の一つでも言って元気づけようかとも思ってみたけれど、流石にそんな雰囲気でもないみたいだね。
 ――というより、ボクもそんな冷静になれてないんだけどさ。動揺で手の震えが止まらないし、心拍数だって跳ね上がってる。
 正直、これは夢なんじゃないかと思いたくもなるところなんだけど――。



モノクマ
「ピンポンパンポーン。死体が発見されました。一定の捜査時間の後、学級裁判を開きます」



 ああ、もう。現実はなんて非情なんだ。


540 :♪イキキル ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 23:00:04.19 ID:D1yK3sxu0



―――



 食堂は騒然としていた。無理もない。朝食を間近に死体発見アナウンスが流れたのだから。
 空いている席は六つ。誰が殺されたのか、現場は何処かと考えていると、電子生徒手帳が震えていることに気付いた。
 画面を確認すると、澪からの着信だった。
 この状況で電話をかけてくるってことは、多分そういうことなんだろう。直ぐに出なければ。



ノノハラ レイ
『あ、もしもし? 公? どこにいる? 皆は?』


オモヒト コウ
「本館の食堂だ。お前と河本とユーミアと朝倉以外は全員ここにいる」


ノノハラ レイ
『そう、じゃぁ丁度よかった。さっきのアナウンスについてなんだけど、別館の女湯まで皆を連れて来てくれない?』


オモヒト コウ
「……誰だ? 誰が殺されたんだ?」


ノノハラ レイ
『超高校級の人形遣い候補生、朝倉巴だよ。ちょっと惨たらしいから、くれぐれも注意するよう、皆に伝えておいてくれないかな。
 ――特に、増田クンには』


オモヒト コウ
「あぁ、分かった」



 通話を切った。
 殺人がまた起きてしまったという現実を突きつけられる。
 しかも現場は別館の女湯。朝倉巴の惨殺死体。情報量が多い。
 頭の中を整理しようとして、ふと視線が俺に集まっていることに気付く。
 こんな状況で電話している奴なんて目立つに決まってるし、その内容が物騒ならさもありなん、か。
 一先ず澪からの情報を整理して説明し、別館へ向かった。



541 :♪DISTRUST ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 23:06:48.47 ID:D1yK3sxu0



ノノハラ レイ
「やぁ、皆。ようやく来てくれたみたいだね。公にも言っておいたんだけど、今回の死体は前回のとは比べ物にならないくらいグロテスクになっているから、気を付けてね。
 見たくない人は無理してみないように。失神でもされたら捜査要員が減るし」


コウモト アヤセ
「澪、言い方」


ノノハラ レイ
「歯に衣着せて取り繕うかはマシじゃないかな。
死体に関しては案の定モノクマファイルに載ってるから、現物を見たいって人以外はこっちをお勧めするよ。耐性があると思ってるボクでもかなり参ってるから」


マスタ イサム
「……そこまで、酷いのか?」


ノノハラ レイ
「酷いよ。多分キミが見たら、誰がこんなことをと見境なく暴れまわるかもと危惧するぐらいには」


マスタ イサム
「……構わない。少なくとも俺は見なきゃいけないんだ。それに、現場の見張り役だって必要だろ? 私情を挟みかねない関係者は捜査に加われない。違う
か?」


ノノハラ レイ
「意外に冷静だね。……いや、必死に抑え込んでいるのかな?」


マスタ イサム
「そう、だな。ひょっとしたらタガが外れるかもしれん」


ユーミア
「ユーミアが傍にお仕えしますからご安心を」


ノノハラ レイ
「じゃ、現場の見張り役はその二人に任せるとして、だ。他に現場を見たいって人はいる?」


オモヒト コウ
「捜査の基本は現場百見。俺は見るぞ。いじってはないんだよな?」


ノノハラ レイ
「勿論。ボクの記憶力にかけて、発見当時から全く変わってないと断言するよ。一応現場写真も撮ってあるけど、見る?」


オモヒト コウ
「いや、いい。余計な先入観は排除しておきたい」


ウメゾノ ミノル
「直接見なきゃわからないこともあるし、僕も同伴するかな」


コウモト アヤセ
「……じゃぁわたし達はここで待ってるから」


ノノハラ ナギサ
「誰かが変な動きを見せたら、すぐに教えるからね。お兄ちゃん」



542 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 23:08:20.40 ID:D1yK3sxu0




――捜査開始――





543 :♪BOX15 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 23:18:59.06 ID:D1yK3sxu0



ウメゾノ ミノル
「――ちょっと前の自分を殴りたいぐらいには後悔してるかも、っていうか吐きそうなんだけど」


オモヒト コウ
「ゲロするなら他所でやれ、現場を汚すな。……想像以上、だったのは同意見だが」


ノノハラ レイ
「とりあえず、死体を降ろそう。現場は維持しておきたいけど、このままじゃ検死もままならないし」


マスタ イサム
「――じゃあ俺が巴を支えるから、誰か剣を抜いてくれ」


オモヒト コウ
「よし、俺がやろう。――フッ!」


ウメゾノ ミノル
「……ビクともしないね。そんなんじゃ僕が手伝っても無駄かな?」


オモヒト コウ
「何て所まで突き刺さってるんだこれは! こんな! ことが! オ、アアア!」


ノノハラ レイ
「どうやら磔にした犯人はとんでもない馬鹿力の持ち主のようだね。ボクが死体を支えるから、増田クンも手伝ってくれる?」


マスタ イサム
「……ああ」


544 :♪BOX15 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 23:22:05.97 ID:D1yK3sxu0


 俺達男が二人掛かりでようやく引き抜くことができたそれは、予想よりもはるかに刃渡りが長く、形も歪だった。
 シャムシールとフランベルジュを足して二で割ったような、0≦x≦5π/2の範囲の正弦曲線を剣に投影したようなフォルム。
 刃渡り、というか剣のリーチはおよそ60cmといったところか。よくもまあこんな長いのを突き刺せたもんだ。



ウメゾノ ミノル
「――わぉ、刀身まで真っ赤になってやがる。これ全部朝倉さんの血なのかな」


マスタ イサム
「いや、この色は血じゃなくて……、元からみたいだ」


オモヒト コウ
「こんな赤い刀身の剣なんてあるのか? どうやって作るっていうんだ?」


ノノハラ レイ
「現にここにある以上、認めざるを得ないよ。
 まぁ、大方支給された凶器ってところでしょ。誰のかを検討するのは後にするとして」


オモヒト コウ
「ガチャの景品って線はないのか?」


ノノハラ レイ
「それはないよ。直接的に凶器になりそうなものは出ないみたいだし」


ウメゾノ ミノル
「ガチャのリストも確認してみたけど、それっぽいものは見当たらないね」


オモヒト コウ
「そうか……、そのリスト、信用できるんだろうな?」


モノクマ
「だいじょーぶ! ボクのお腹のセンサーにかけて“そのリストは正しい”と証言しましょう!」


ノノハラ レイ
「らしいよ?」


オモヒト コウ
「――で、さっきっからしれっと混じってるこいつは一体どうしたもんだろうな?」


ノノハラ レイ
「どうせいてもいなくても変わらないんだし、基本居ないものとして扱って必要な時だけ頼れば?」


ユーミア
「しゃしゃり出るのに目を瞑れば問題ないかと」


オモヒト コウ
「それもそうだな」


モノクマ
「コラ! ボクをそんな都合のいい女みたいな扱いをするんじゃない!」


ウメゾノ ミノル
「事実じゃん」


マスタ イサム
「今までの所業を思い出して出直してこい」


モノクマ
「クッソー!」


545 :♪BOX15 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 23:41:06.70 ID:D1yK3sxu0



ノノハラ レイ
「ところでそのリストってさ、景品のシリアルナンバーと排出確率しかないんじゃなかったっけ?」


ウメゾノ ミノル
「全部当てた」ドヤァ


ノノハラ レイ
「どんだけ回したのさ」


オモヒト コウ
「お前にだけは言われたくないと思うぞ」


ウメゾノ ミノル
「むしろあれだけ回してまだcompleteできてないの?」


ノノハラ レイ
「――爆死は誰にだってあるんだ。キミだって相当溶かしたんだろ?」


ウメゾノ ミノル
「ゲームコーナーで稼げば実質タダだし。――500連からは数えてないね」


マスタ イサム
「……マトモな会話をしているはずなのに、何かやけにムカツクな」


ユーミア
「内容が内容ですから。どうか落ち着いてくださいマスター」



コトダマGET!


短剣:被害者の手のひらに突き刺さっていた短剣。禍々しいフォルムに赤い刀身が特徴的で、誰かに支給された凶器と考えられる。


突き刺さった跡:刀身が全て埋まるほどの深さまで突き刺さっていることから、相当強い力で突き立てられたと考えられる。


ガチャの景品一覧:ガチャの景品のシリアルナンバーと出現率が記されている。梅園穫は全ての景品を取得しており、凶器になりそうな物はないとのこと。



546 :♪BOX15 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/23(日) 00:19:19.39 ID:IGr8f28G0



ユーミア
「……野々原さん、何をしているのですか?」


ノノハラ レイ
「いやさ、支えてた時にちょっと違和感があってね」


マスタ イサム
「違和感? その髪にか?」


ノノハラ レイ
「うん、なんか一瞬ずれたような気がして。これはひょっとしたら――」



 澪が朝倉の髪を慎重に引っ張ると、黒く短い地毛が露わになった。
 白い長髪を緑のヘアゴムでツインテールにしているのではなく、黒い短髪に緑のカチューシャが本来の髪型らしい。



ウメゾノ ミノル
「ウィッグ、だったんだ。あれだけ派手に動いていたのによくずれなかったね」


ノノハラ レイ
「この手のヤツは立ち回りさえ気を付けてればそう簡単に外れないようになってるんだよ。
 ふとした拍子にずれたりするんだけど、意識しない限りは気にならないし」


マスタ イサム
「……」


オモヒト コウ
「増田? どうかしたのか?」


マスタ イサム
「いや、何でもない。ただ結構長く付き合ってたのに、本当の髪型に気付かなかったマヌケっぷりに呆れてただけだ」


ユーミア
「それはマスターの落ち度ではありません。隠していた当人が悪いのです」


ノノハラ レイ
「好みに合わせたって可能性はないかな?」


ウメゾノ ミノル
「ウィッグの管理って結構洒落にならないんじゃなかったっけ? そこまでやるものなのかい?」


ノノハラ レイ
「まぁ、いずれにせよ朝倉さんはカツラを被ってたってワケだ。どうしようか? このまま放置する? それとも被せ直す?」


ユーミア
「外してしまった以上そのままにしておく方が無難でしょう。それに検死の際のノイズにならなくなりますから」


ノノハラ レイ
「増田クンは? どう思う?」


マスタ イサム
「……そのままにしておいてくれ。きっと俺のためだったんだろうが、最期くらいはありのままの巴でいさせてやれ」


ノノハラ レイ
「はいよ」



コトダマGET!
ウィッグ:朝倉巴はウィッグで髪型をごまかしていた。


547 :♪BOX15 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/23(日) 00:25:54.87 ID:IGr8f28G0


ノノハラ レイ
「さて、検死を始めようか……、と、言いたいんだけど」


オモヒト コウ
「何か問題でもあるのか?」


ノノハラ レイ
「想像以上に損壊が激しいからね。ちょっと難しいかな。
 おまけにどれだけかは分からないけど、シャワーの水を浴び続けてたのも拍車をかけてる」


マスタ イサム
「そんなものなのか?」


ユーミア
「基本的に検死では死後硬直の進行具合や死斑の有無、解剖も含めれば胃の内容物や直腸体温などで死亡時刻などを推定します。
 一般的にはこのように外傷が多い場合、何処が致命傷となったのかを調べるものなのです。
 生前につけられたものと死後につけられたものとでは差異がありますから」


ウメゾノ ミノル
「なんかどっかで読んだことあるな。生体反応、だっけ?」


ノノハラ レイ
「うん。細かい説明は省いてざっくばらんに言えば、死んだら瘡蓋なんてできっこないよね? って話さ」


オモヒト コウ
「わかっちまうのがちょっとムカツクな。それで、何処が致命傷なのか、わかるか?」


ノノハラ レイ
「生体反応って一言で言ってもその差異って案外よく見てみないとわからないんだよね。
 それを一か所ずつ検証していかなきゃいけないから、クッッッッソ時間かかるよ?」


マスタ イサム
「その分澪の捜査時間が削られるってわけか。それはマズイな。ユーミア、頼めるか?」


ユーミア
「仰せのままに」


ノノハラ レイ
「随分とボクを評価信用してくれてるみたいだね?」


マスタ イサム
「まぁな。だが結果が出せなければ――解ってるな?」


ノノハラ レイ
「おお、こわいこわい」



コトダマGET!


死体損壊:朝倉巴の死体は著しい損壊を受けており、さらに水を浴び続けていたため検死が困難になっている。


548 :♪BOX15 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/23(日) 00:36:53.17 ID:IGr8f28G0



ノノハラ レイ
「一応の現場検証はこんなところかな?」


オモヒト コウ
「第一段階終了、ってところだろ。一通り見終わったってだけだ」


マスタ イサム
「後は証拠探し、ってところか?」


ウメゾノ ミノル
「人数が減ったのに捜査範囲が広くなっちゃってるからどうしたもんかな。
 また二人一組となると一組あたりの負担がデカくなっちゃうよ?」


ノノハラ レイ
「とりあえず現場の監視と死体の検死は増田クンとユーミアさんにお任せするとして、ボク等は一旦合流しようか。
 組み分けはその時考えようよ」


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