【ヤンデレCD】ヤンデレロンパ〜希望のヤンデレと絶望の兄〜2スレ目

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509 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/20(月) 00:19:39.59 ID:wvqHuU+X0



マスタ イサム
「だが流石にこうなってしまった以上バスケは続けられないな。どうする?」


オモヒト コウ
「そうだな、時間はまだあるがこれで試合終了にしよう。そろそろ昼休憩も挟まないといけないしな」


コウモト アヤセ
「じゃ、試合は36:37で増田君チームの勝利ね」


オモヒト コウ
「……悪いな、看病に加えて審判に点数計算係までさせて」


コウモト アヤセ
「ピアニストに突き指は厳禁だし、最初からバスケは辞退しようと思ってたから」


オモヒト コウ
「そうか。なら、次も辞退するか? 次はバレーボールにしようと思ってるんだが」


コウモト アヤセ
「そうね。ちょうど巴ちゃんも参加できそうにないわけだし、また審判役になるわ」



510 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/20(月) 00:33:40.72 ID:wvqHuU+X0




 昼休憩が終わって、次はバレーボール。
 チーム分けは公・ボク・渚・小鳥遊さん・ナナちゃん・ノノちゃんの六人と、増田クン・梅園クン・亜梨主さん・慧梨主さん・七宮さん・ユーミアさんの六人となった。



オモヒト コウ
「悪いな、ポール運ぶの手伝ってもらって」


マスタ イサム
「これぐらいお安い御用だ。ネットの高さはどうする? 俺達の身長に合わせると高すぎるし、かといって女子の身長に合わせると俺達にとって低すぎるが」


オモヒト コウ
「間を取るぐらいでいいだろ。不都合があったらその都度変えるってことで。
 ところで反対側は――、おい、俺の目にはユーミアが片手でポールを担いでるように見えるんだが」


マスタ イサム
「ああ、俺たち二人掛かりで運んでるポールを軽々な。意外と力持ちなんだよ、ユーミアって」


オモヒト コウ
「……なんだこの敗北感は」


マスタ イサム
「考えないようにしとけ」


511 :♪Finding Peace Party ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/20(月) 01:01:56.32 ID:wvqHuU+X0



―――


ウメゾノ ミノル
「あー、これはアウトコース――じゃねぇ入りそうじゃねぇか! 危ねぇ届け!」


ノノハラ レイ
「おー、見事なスライディング」


―――


ノノハラ レイ
「間に合え……っ!」


ノノハラ ナギサ
「流石お兄ちゃん! ギリギリ足でボールを上げるなんて!」


オモヒト コウ
「何でお前らだけセパタクローしてんだよ」


―――


コウモト アヤセ
「ゲームセット。マッチで勝ったのは澪チームね」


ノノハラ レイ
「やったぜ」


オモヒト コウ
「俺としては澪と梅園が終始セパタクローをしていたのが解せないんだが」


ノノハラ レイ
「何か手より足の方がでちゃって」


ウメゾノ ミノル
「マジシャンとしては手の指って優先されるべきだと思うんだ」


オモヒト コウ
「お前らな……」


マスタ イサム
「そう怒るなよ。結構いいゲームだったじゃないか。――ところで、巴はどこ行った?」


コウモト アヤセ
「さっき着替えて来るって。更衣室にいるんじゃない?」


マスタ イサム
「そうか。どうする、主人。もう一勝負するか?」


オモヒト コウ
「いや、今日はこれくらいにしておこう。疲れが見える前にやめておくのが怪我を防ぐ秘訣だ」


ノノハラ レイ
「ボクとしてはまだ遊び足りないんだけどな?」


オモヒト コウ
「安心しろ、ちゃんと勝負の場は設けるさ。全員合同でやるのはここで一区切りってだけでな。
 じゃ、片付けて帰るとするか」


512 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [sage saga]:2020/07/20(月) 01:10:28.02 ID:wvqHuU+X0



――本日はここまで。


――ヤンデレの女の子に耳の奥まで死ぬほど愛されて眠れないASMR〜もしくはヤンデレCD Re:Tuneの配信がいよいよ今週末に迫ってまいりました。


――非常に楽しみでございます。ワタクシも昂っておりますれば、筆も進むというものでございます。


――それでは、おやすみなさい。


513 :♪Become Friends ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 19:51:37.93 ID:yj+23MoO0



 その後は一波乱もなく、つつがなく夜になった。
 夕食も食べ終わってちょっと暇を持て余していると、



オモヒト コウ
「ちょっといいか」



 とお誘いが。球技大会の最後に行ってた勝負のお話かな?



オモヒト コウ
「別館の一階、ゲームコーナーに卓球台があったろ? ケリ着けようぜ」


ノノハラ レイ
「面白いねそれ。良いよ、乗った」



 球技大会延長戦の開始ってわけだ。楽しくなってきたね。



514 :♪Become Friends ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 19:53:07.73 ID:yj+23MoO0


―――



オモヒト コウ
「先に十点取った方が勝ち、デュースは無し。それでいいか?」


ノノハラ レイ
「問題ないよ。どうせだ、何か賭けようぜ」


オモヒト コウ
「お前そう言ってガチャのハズレ押し付ける気だろ」


ノノハラ レイ
「あれ、バレちゃった? じゃいいや、さっさとやろう」


オモヒト コウ
「待てよ、賭けに乗らないなんて一言も言ってないだろうが」


ノノハラ レイ
「へえ? じゃ賭け代は?」


オモヒト コウ
「負けた方がバツゲームを受ける。勿論怪我するような危ないヤツじゃないが、それなりの屈辱を味わうだろうな」


ノノハラ レイ
「内容はその意味ありげに置かれた空き箱の中にある紙に書かれてあるって感じ?」


オモヒト コウ
「ああ。十枚くらい書いた。負けた奴はその箱から一枚紙を選んでその指示に従う。簡単だろ?」


ノノハラ レイ
「ふぅん? ボクが賭けを持ち出さなかったら、キミが言い出す予定だった?」


オモヒト コウ
「お前の事だから、俺が勝負に誘えばレイズしてくれると思ったんだよ」


ノノハラ レイ
「いいねぇ、良い感じに信用されてるねぇ。じゃあさ、そのバツゲーム追加させてよ。キミが用意したのだけじゃ不公平じゃない?」


オモヒト コウ
「――そう言うだろうと思って白紙とペンを用意しておいた。俺は見ないようにするから、さっさと書いて箱に入れろ」


ノノハラ レイ
「ははは、至れり尽くせりだねぇ。じゃ、遠慮なくいかせてもらうよ。どう恥をかかせてやろうかなぁ?」


オモヒト コウ
「言ってろ、俺が勝つ。精々塗れた屈辱に押しつぶされないようにするんだな」



―――


515 :♪Finding Peace Party ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 19:56:31.20 ID:yj+23MoO0



オモヒト コウ
「くっ……、中々やるじゃないか」


『腕立てを点差×10回』『自分の恥ずかしいエピソードを暴露』『素肌にジャケットでWHITE BREATHを熱唱(外で)』


ノノハラ レイ
「そっちこそ……」


『腹筋を得点×10回』『隠し芸を披露』『なんか悪魔よってきそうな悪魔祓いの儀式をする』


ウメゾノ ミノル
「なにこのクッソ面白い状況、混ぜろよ」


マスタ イサム
「待て、余計なこと言うな。俺はただ忘れ物を取りに来ただけなんだぞ。巻き込もうとするんじゃない、やめ、止めろぉ!」



―――



ノノハラ レイ
「ラリーの早さ比べだあぁぁ!!」


オモヒト コウ
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」


マスタ イサム
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!」


ウメゾノ ミノル
「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!」



タカナシ ユメミ
「ナニアレ」


コウモト アヤセ
「“男には負けられない戦いがある”って言ってたけど、ちょっと人知超えてない?」


ノノハラ ナギサ
「……うん、タオル用意しよっと」


サクラノミヤ エリス
「渚さん?! 現実逃避しないで!」


ナナ
「まるで他の事が目に入ってないみたいね、お兄ちゃんたち」


ノノ
「全然混ぜてくれなさそうだもんね」


サクラノミヤ アリス
「こんな連中無視してさっさと行くわよ」


ナナミヤ イオリ
「……私は何も見ていない。紙なんて見ていない。あれには何も書かれていない……」



『細かすぎて伝わらないモノマネ×失点数』『棺桶ダンス』『HOT LIMITを完全再現(衣装を含む)』『絶対に他人に言えない性癖を一つ』


516 :♪Finding Peace Party ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 20:01:11.97 ID:yj+23MoO0



ノノハラ レイ
「……大分汗かいたし、そろそろお風呂入ろうぜ」


オモヒト コウ
「賛成だな……。少し疲れた」


マスタ イサム
「久しぶりかもな、ここまではしゃいだの……」


ウメゾノ ミノル
「スタミナゲージが尽きました。コンテニューする場合はコインを投入してください」


ノノハラ レイ
「じゃ、ボクはこっちだから」


オモヒト コウ
「何ナチュラルに女湯行こうとしてるんだお前は」


ノノハラ レイ
「あーれー」


コウモト アヤセ
「はいはい夢見ちゃんもこっちだからねー」


タカナシ ユメミ
「あぁん」


ナナ
「ねぇノノ、ちょっとあっち行ってみましょう?」


ノノ
「それ、面白いかも!」



――ビー! ビー!



ウメゾノ ミノル
「……どうやら違う性別の温泉の暖簾をくぐろうとしたその瞬間にブザーが鳴る仕組みなんだね。
 それ以上踏み入れたら絶対何か良くないことが起こるから早く戻ったほうがいいぜっていうかガトリングみたいなの出てきてるから急いで」


ノノ
「ちぇー」


ナナ
「つまらないわね」


517 :♪Become Friends ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 20:02:43.03 ID:yj+23MoO0



―――



ノノハラ レイ
「あーいいお湯だった。そろそろ時間も時間だし――何かな増田クン、人の肩を掴んだりして」


マスタ イサム
「明日はTRPGでもやろうと思ってな。ちょっとその練習に付き合ってくれよ」


ノノハラ レイ
「リハってワケ? ……いいけど、時間大丈夫なの?」


マスタ イサム
「夜通しやるからな」


ノノハラ レイ
「マジ?」


マスタ イサム
「俺は至って大真面目だぞ。何だったら、一通り終わった後麻雀でもするか?」


ウメゾノ ミノル
「徹麻とか楽しそうじゃん。乗った乗った」


ノノハラ レイ
「麻雀に賭けもありだったらいいよ。とことんやってやろうじゃん」


マスタ イサム
「じゃ、決まりだな」



―――


518 :♪旧支配者のキャロル ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 20:07:55.39 ID:yj+23MoO0



ウメゾノ ミノル
「KP!『ナイフに魔力を付与する』魔術を宣言します!」


マスタ イサム
「いいだろう」


ウメゾノ ミノル
『I am bone of my sword.』


ノノハラ レイ
「くっそwwwww」


オモヒト コウ
「やめろwwwww」



―――



マスタ イサム
「おめでとう、無事クリアしたようだ」


ウメゾノ ミノル
「Congratulation! しかしまぁ、澪君強すぎない?」


ノノハラ レイ
「そう? ちょっと顔がよくてSAN値が減らないだけじゃない」


オモヒト コウ
「二大邪神立て続けに目撃しておいて正気保ってるのを“ちょっと”とは言わん」


マスタ イサム
「この調子なら明日も大丈夫そうだな。――じゃ、始めるか」


519 :深夜の麻雀ほど楽しいものはない ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 20:17:33.30 ID:yj+23MoO0



―――



ウメゾノ ミノル
「よっしゃ立直!」 打一筒


ノノハラ レイ
「ロン、四暗刻単騎」


オモヒト コウ
「ロン、国士十三面」


マスタ イサム
「ロン、大四喜」


ウメゾノ ミノル
「……アポ?」



『魔法少女コス』



ウメゾノ ミノル
「くっそ自分で用意したヤツだったのにこんなはずじゃ……」


オモヒト コウ
「ま、まぁ、に、にwwあってwwるwwwと思うwwwぞ?」


マスタ イサム
「わ、笑いながら言うんじゃない説得力がぶほぉwwwww」


ノノハラ レイ
「んっふwwwwwなんならアテレコしてあげよっかwwwww?」


ウメゾノ ミノル
「……CV:井口裕香でオナシャァス!」


ノノハラ レイ
「うはwwwwwおkwwwww」


520 :深夜の麻雀ほど楽しいものはない ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 20:18:13.82 ID:yj+23MoO0



ノノハラ レイ(CV:井口裕香)
『にゃにゃ〜ん!錬金魔法少女、スタブレ☆フレアだにゃ〜ん!』



オモヒト コウ
「だっwwwww」


マスタ イサム
「ばっwwwwwやwwwwwやめwwwww」



ウメゾノ ミノル
『オイは妖精の“かーるぐすたふ”ばい!』



オモヒト コウ
「ふwwwwwざwwwwwけwwwwwんwwwwwなwwwww」


マスタ イサム
「腹話術とかwwwwwひwwwww卑怯wwwww」



521 :深夜のテンションなので多少のキャラ崩壊はご愛敬 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 20:25:17.11 ID:yj+23MoO0



ウメゾノ ミノル
「はい終わり! 次々ぃ!」



―――



『次局終了時まで星の戦士のモノマネ(コス有)』



ノノハラ レイ(頭部:一頭身の星の戦士 体:黒タイツ)
「……」


オモヒト コウ
「ぐっ……、ふw……」


マスタ イサム
「な、何か言えよw……」


ノノハラ レイ(CV:大本眞基子)
「ぺぽーい!」


ウメゾノ ミノル
「そっちwwwww?その声でそっちwwwww?」



―――



ノノハラ レイ(CV:大本眞基子)
「ワシとお前の中ゾイ!ナカナカZOY!」 打中


オモヒト コウ
「そんなこと言う星の戦士いやだwwwww」


マスタ イサム
「その声でそのセリフはやめろってwwwww」


ウメゾノ ミノル
「せめてCV:緒方賢一にしてwwwww」


ノノハラ レイ(CV:緒方賢一)
「ぽぉよぉ〜」


オモヒト コウ
「おwwwwwまwwwwwえwwwww」


マスタ イサム
「わざとかwwwww?わざとなのかwwwww?」



―――


522 :かくして夜は更けてゆく ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 20:56:58.61 ID:yj+23MoO0


―――



『UMA』



マスタ イサム
「キャロット! 立直! たーのしー!」


オモヒト コウ
「無駄にいい声なのが腹立つwwww」



―――



『Party Parrot』



ウメゾノ ミノル
「Next」 打二索


ノノハラ レイ
「RYANSO」


ウメゾノ ミノル
「NO」


ノノハラ レイ
「HA?」


ウメゾノ ミノル
「The answer is」 打一筒


ノノハラ レイ
「……」


マスタ イサム
「……」


オモヒト コウ
「……」


ウメゾノ ミノル
「TINTIN」 一筒二索一筒


ノノハラ レイ
「HAHAHA! HA?」


マスタ イサム
「……っw」


オモヒト コウ
「くくっ……w」


523 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 21:03:13.74 ID:yj+23MoO0



―――


コウモト アヤセ
「もう、澪ったら。どうしてこうも突飛なのよ」

 『朝風呂一緒にどう? 先に別館で待ってるから』
 なんてメールをどうして5時に送るのよ、もう。
 ……久しぶりに二人っきりで一緒にお風呂なんて、心の準備ぐらいさせてもいいじゃない。


524 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 21:13:17.31 ID:yj+23MoO0



 6時にはゴンドラリフトが動き始めるから、それに一番乗りしようと思ったところで、意外な人と鉢合わせた。



コウモト アヤセ
「ユーミアさん?」


ユーミア
「ああ、河本さん。どうしてこんな朝早くに?」


コウモト アヤセ
「わたしは澪に呼ばれてきたんだけど……、ユーミアさんは?」


ユーミア
「ユーミアは昨日の片付けと……、掃除ですね。あの多目的ホールも結構汚れてしまっていますし」


コウモト アヤセ
「そっか。……それにしても澪遅いなぁ。先に待ってるって言ってたくせに」



――ジリリリリリリリリ



ユーミア
「ゴンドラが動き始めましたよ、早く乗りましょう」


コウモト アヤセ
「……もう!」



 流石にまた10分も待つなんて嫌だし、もう知らない!


525 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 21:21:19.12 ID:yj+23MoO0



―――



ユーミア
「ではユーミアは二階へ行って参りますね」


コウモト アヤセ
「うん。わたしは先に温泉行ってくる」



 ユーミアさんとは別館入り口近くのエレベーターで別れて、暖簾のところへ向かった。
 ――そこに、澪が変わり果てた姿で立っていた。



コウモト アヤセ
「何それ? どうしたの、その恰好?」


ノノハラ レイ
「天聖院学園の制服だよ」


コウモト アヤセ
「女子の、ね。まあ、似合ってるって言うか似合い過ぎて違和感がなさすぎるんだけど、どうしてそうなったの?」


ノノハラ レイ
「――話そうと思えば8時間ぐらいは話せる浅い理由があるんだ。聞く?」


コウモト アヤセ
「言いたくないなら素直に言えばいいじゃない。聞かないでおくから、朝風呂、入りましょ?」


ノノハラ レイ
「うん」


526 :♪悪魔のトリル 第一楽章 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 21:23:19.76 ID:yj+23MoO0



―――


???
「納得がいきません。筆記試験では主席の成績を取った自信があります。何故不合格なのか、理由の説明をお聞かせ願いたい」


???
「そう言われましても、こちらとしてはですね――」


???
「――上の意向ってヤツですね。なら貴方のような木端にはどうしようも出来ないわけだ。わかりました、ならもう何も言いません。お手数をおかけしました」


???
「……一体何なんだあいつ」



???
「こんな辺鄙な離島に足を運んで、やったことと言ったら悪質なクレーマー紛いの行為。
 ホント、何しに来たんだか。こんな気分じゃ観光もままならないだろうし」


???
「おにーさん、なにかお困りごと?」


???
「……何処の誰かはわかりたくもないんだけど、何の用かな?
 ボクは己の無力を呪うのに手一杯でね。幼女の皮を被った怪物の手も借りたくないんだ」


???
「――夢を見たんだ。青いバラの蕾の夢を」


???
「――そう、合点がいったよ。だから落とされたんだね。なら、ここにもう用はないや。予定を切り上げてさっさと帰ることにするよ。
 覚えておかなくて結構だけど、――いつか絶対に後悔させてやる。どれだけの時間をかけても、必ずだ」


???
「それは楽しみだね。覚えられているといいけど」


―――


527 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 21:34:18.22 ID:yj+23MoO0



コウモト アヤセ
「ちょっと、澪! 起きて!」


ノノハラ レイ
「ん……、ゴメン、寝てた?」


コウモト アヤセ
「寝てた」


ノノハラ レイ
「……肩、貸してくれたんだ。ありがと」


コウモト アヤセ
「だって湯船につかった途端にうつらうつらしてたんだもん。寝不足なの?」


ノノハラ レイ
「……うん、ちょっと徹夜しちゃった」


コウモト アヤセ
「――無理はしないって言わなかった?」


ノノハラ レイ
「一徹ぐらいは無理に入らないから。……ゴメン、わかった、今度からはちゃんと寝るからその拳はどうか下ろして」


コウモト アヤセ
「……もう。ちょっとは自分を気遣ってよ」


ノノハラ レイ
「そうするよ。――それにしても、こうして二人きりで入る温泉って言うのはいいね」


コウモト アヤセ
「そうやってまた強引に話を……。うん、景色も凄くいいわね。朝焼けが雪に反射して、キラキラしてる」


ノノハラ レイ
「これが普通の宿泊旅行だったら最高のロケーションなのにねぇ」


コウモト アヤセ
「本当に、そうねぇ……」


528 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 21:40:08.56 ID:yj+23MoO0



―――



ノノハラ レイ
「そろそろ朝ご飯の時間だね。あがろっか」


コウモト アヤセ
「うん。じゃ、また」



 混浴温泉から女湯へ向かって、そのまま脱衣所に向かおうとしていると、何か物音が聞こえる。
 これって、シャワーの音? 誰かいるの?
 何となしにその音源へ向かってしまったことを、後悔することになることを私は知らなかった。


529 :♪希望断線ノイズミュージック ◆S7YK1FdmZg [!red_res saga]:2020/07/25(土) 21:44:53.24 ID:yj+23MoO0



 体中に刻まれたあちこちの刺し傷。
 それを洗い清めるようにかけられているシャワーの冷水。



 ――両手を重ねて、剣のようなもので磔にされている、巴ちゃんの死体だった。



530 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/25(土) 21:46:46.11 ID:yj+23MoO0



――ということで、本日はここまで。


――非日常(捜査)編と学級裁判までお楽しみに。


――それではおやすみなさい。


531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/28(火) 05:19:14.77 ID:a3dRLQFb0
おっと。始まってしまいましたね。乙です
532 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 22:35:45.37 ID:D1yK3sxu0



      第二章



  ノーマーダー・ノーライフ



      非日常編



533 :????の□□ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 22:38:02.82 ID:D1yK3sxu0



 ここまでは思い通り。しかし、本番はここからだ。
 これから行おうとしていることは、“完璧な犯罪計画”からは程遠い。
 どう良く言い繕ったところで、これは臨機応変ですらない行き当たりばったりな犯罪だ。
 悪く言えばほぼノープランに等しい杜撰で稚拙な、計画と表現することすら烏滸がましい無謀ともいえる暴挙ですらある。
 しかし、それでいい。それがいい。
 如何に完璧な計画を立てようと、実行に移すまではただの机上の空論に過ぎない。
 そして全てが想定内に進むよう用意周到であればあるほど、誰かの気まぐれや天候と言ったほんの少しの綻びで一気に瓦解する砂上の楼閣だ。
 数多の戦場の摩擦が予測される現状では、パズルのピースを一つ一つ嵌めて完成させるのではなく、
 どんなトラブルがあろうとその場その場で柔軟に対応できる可塑性の高い粘土細工こそふさわしい。
 本当に必要なのは、定められたゴールへ着地するに至る道筋を整えるための“計画”ではなく“枠組”。
 最終的に目的を果たすことができれば、それまでの過程は考慮しなくていい。
 それ故に、今この時だけはヒトとしての心――良識・倫理・矜持・理性などといったそれらすべてを金繰り捨て、
 目的達成の為だけに動く殺人機械(キリングマシン)と成り果てよう。
 これは、己に下された至上命令(グランドオーダー)。



534 :????の□□ ◆S7YK1FdmZg [!red_res saga]:2020/08/22(土) 22:39:29.63 ID:D1yK3sxu0




       全ては、我が“勝利”の為に。



535 :♪New Classmate of the Dead ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 22:45:08.21 ID:D1yK3sxu0



ユーミア
「どうかされたのですか、河本さん? ――これは!」


コウモト アヤセ
「あ、ゆ、ユーミア、さん。その、これは、見ての通りで……」


ユーミア
「……わかりました。とりあえず落ち着いてください。その後、服を着ましょう」


コウモト アヤセ
「え? それってどういう――」



536 :♪New Classmate of the Dead ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 22:45:39.50 ID:D1yK3sxu0



ノノハラ レイ
「綾瀬! どうかしたの?! 尋常じゃない叫び声聞こえたんだけど?!」



537 :♪New Classmate of the Dead ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 22:47:52.21 ID:D1yK3sxu0



コウモト アヤセ
「――あっ、うん。そうするね」

 澪がここまで聞こえてくる声で叫んでるってことはこんな状況だと身を危険に晒してでもこっちに来そうだし。
 そんな大声出してたんだ、わたし。


538 :♪New Classmate of the Dead ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 22:49:28.95 ID:D1yK3sxu0



―――

ノノハラ レイ
「あれ、女湯に入れる……? てっきり撃たれると思ったのに。ブザーも鳴らないし」


モノクマ
「緊急事態だからね。特別に許可してるんだよ」


ノノハラ レイ
「そう。じゃ、遠慮なくいかせてもらおうか」


ユーミア
「――もう少しお待ちください。河本さんは今着替えている最中ですから。女装までして入ろうとした心意気は買いますが」


ノノハラ レイ
「そういうつもりじゃないんだけど……。じゃぁユーミアさん、中で何があったのか、教えてくれない?」


ユーミア
「朝倉巴の死体が見つかりました」


ノノハラ レイ
「……そう。だから緊急事態なんだね。モノクマの許可も下りるわけだ」



 しばらく待っていると、血の気が失せた顔をして震えている綾瀬が出てきた。



コウモト アヤセ
「ごめんね、遅くなっちゃって」


ノノハラ レイ
「いいよ。――案内してくれる?」


コウモト アヤセ
「うん」


539 :♪Rise of the Ultimate ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 22:54:11.73 ID:D1yK3sxu0



 案内された先、シャワー室の一角で冷水を浴びせられているのは、腹を裂かれ腸が零れ落ちそうになっている胴体を、
 重ねた両手を支点にするかのように吊り下げられている朝倉巴の死体。
 まるで出来の悪い操り人形だといわんばかりに、虚ろな顔で不格好に吊るされている。
 全身余すところなく傷つけられているのに、顔には手を付けられていないのが一層皮肉らしい。
 宙吊りにする楔となっているのは恐らく短剣の類だ。握りが片手ぐらいの長さしかない。
 でも刀身が見えず鍔で止まっているあたり、かなり深く突き刺さっているとみえる。
 体中の傷もかなり深い。腕や足といった細い部分は勿論、胴体の傷も恐らく貫通している。
 そんな傷が今目視できるだけで数十箇所、あるいはそれ以上。
 この惨状を恐らく何の準備も無しに目撃してしまった綾瀬は、未だボクの腕にしがみついてはなさない。
 震える彼女を抱きしめ、冗談の一つでも言って元気づけようかとも思ってみたけれど、流石にそんな雰囲気でもないみたいだね。
 ――というより、ボクもそんな冷静になれてないんだけどさ。動揺で手の震えが止まらないし、心拍数だって跳ね上がってる。
 正直、これは夢なんじゃないかと思いたくもなるところなんだけど――。



モノクマ
「ピンポンパンポーン。死体が発見されました。一定の捜査時間の後、学級裁判を開きます」



 ああ、もう。現実はなんて非情なんだ。


540 :♪イキキル ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 23:00:04.19 ID:D1yK3sxu0



―――



 食堂は騒然としていた。無理もない。朝食を間近に死体発見アナウンスが流れたのだから。
 空いている席は六つ。誰が殺されたのか、現場は何処かと考えていると、電子生徒手帳が震えていることに気付いた。
 画面を確認すると、澪からの着信だった。
 この状況で電話をかけてくるってことは、多分そういうことなんだろう。直ぐに出なければ。



ノノハラ レイ
『あ、もしもし? 公? どこにいる? 皆は?』


オモヒト コウ
「本館の食堂だ。お前と河本とユーミアと朝倉以外は全員ここにいる」


ノノハラ レイ
『そう、じゃぁ丁度よかった。さっきのアナウンスについてなんだけど、別館の女湯まで皆を連れて来てくれない?』


オモヒト コウ
「……誰だ? 誰が殺されたんだ?」


ノノハラ レイ
『超高校級の人形遣い候補生、朝倉巴だよ。ちょっと惨たらしいから、くれぐれも注意するよう、皆に伝えておいてくれないかな。
 ――特に、増田クンには』


オモヒト コウ
「あぁ、分かった」



 通話を切った。
 殺人がまた起きてしまったという現実を突きつけられる。
 しかも現場は別館の女湯。朝倉巴の惨殺死体。情報量が多い。
 頭の中を整理しようとして、ふと視線が俺に集まっていることに気付く。
 こんな状況で電話している奴なんて目立つに決まってるし、その内容が物騒ならさもありなん、か。
 一先ず澪からの情報を整理して説明し、別館へ向かった。



541 :♪DISTRUST ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 23:06:48.47 ID:D1yK3sxu0



ノノハラ レイ
「やぁ、皆。ようやく来てくれたみたいだね。公にも言っておいたんだけど、今回の死体は前回のとは比べ物にならないくらいグロテスクになっているから、気を付けてね。
 見たくない人は無理してみないように。失神でもされたら捜査要員が減るし」


コウモト アヤセ
「澪、言い方」


ノノハラ レイ
「歯に衣着せて取り繕うかはマシじゃないかな。
死体に関しては案の定モノクマファイルに載ってるから、現物を見たいって人以外はこっちをお勧めするよ。耐性があると思ってるボクでもかなり参ってるから」


マスタ イサム
「……そこまで、酷いのか?」


ノノハラ レイ
「酷いよ。多分キミが見たら、誰がこんなことをと見境なく暴れまわるかもと危惧するぐらいには」


マスタ イサム
「……構わない。少なくとも俺は見なきゃいけないんだ。それに、現場の見張り役だって必要だろ? 私情を挟みかねない関係者は捜査に加われない。違う
か?」


ノノハラ レイ
「意外に冷静だね。……いや、必死に抑え込んでいるのかな?」


マスタ イサム
「そう、だな。ひょっとしたらタガが外れるかもしれん」


ユーミア
「ユーミアが傍にお仕えしますからご安心を」


ノノハラ レイ
「じゃ、現場の見張り役はその二人に任せるとして、だ。他に現場を見たいって人はいる?」


オモヒト コウ
「捜査の基本は現場百見。俺は見るぞ。いじってはないんだよな?」


ノノハラ レイ
「勿論。ボクの記憶力にかけて、発見当時から全く変わってないと断言するよ。一応現場写真も撮ってあるけど、見る?」


オモヒト コウ
「いや、いい。余計な先入観は排除しておきたい」


ウメゾノ ミノル
「直接見なきゃわからないこともあるし、僕も同伴するかな」


コウモト アヤセ
「……じゃぁわたし達はここで待ってるから」


ノノハラ ナギサ
「誰かが変な動きを見せたら、すぐに教えるからね。お兄ちゃん」



542 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 23:08:20.40 ID:D1yK3sxu0




――捜査開始――





543 :♪BOX15 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 23:18:59.06 ID:D1yK3sxu0



ウメゾノ ミノル
「――ちょっと前の自分を殴りたいぐらいには後悔してるかも、っていうか吐きそうなんだけど」


オモヒト コウ
「ゲロするなら他所でやれ、現場を汚すな。……想像以上、だったのは同意見だが」


ノノハラ レイ
「とりあえず、死体を降ろそう。現場は維持しておきたいけど、このままじゃ検死もままならないし」


マスタ イサム
「――じゃあ俺が巴を支えるから、誰か剣を抜いてくれ」


オモヒト コウ
「よし、俺がやろう。――フッ!」


ウメゾノ ミノル
「……ビクともしないね。そんなんじゃ僕が手伝っても無駄かな?」


オモヒト コウ
「何て所まで突き刺さってるんだこれは! こんな! ことが! オ、アアア!」


ノノハラ レイ
「どうやら磔にした犯人はとんでもない馬鹿力の持ち主のようだね。ボクが死体を支えるから、増田クンも手伝ってくれる?」


マスタ イサム
「……ああ」


544 :♪BOX15 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 23:22:05.97 ID:D1yK3sxu0


 俺達男が二人掛かりでようやく引き抜くことができたそれは、予想よりもはるかに刃渡りが長く、形も歪だった。
 シャムシールとフランベルジュを足して二で割ったような、0≦x≦5π/2の範囲の正弦曲線を剣に投影したようなフォルム。
 刃渡り、というか剣のリーチはおよそ60cmといったところか。よくもまあこんな長いのを突き刺せたもんだ。



ウメゾノ ミノル
「――わぉ、刀身まで真っ赤になってやがる。これ全部朝倉さんの血なのかな」


マスタ イサム
「いや、この色は血じゃなくて……、元からみたいだ」


オモヒト コウ
「こんな赤い刀身の剣なんてあるのか? どうやって作るっていうんだ?」


ノノハラ レイ
「現にここにある以上、認めざるを得ないよ。
 まぁ、大方支給された凶器ってところでしょ。誰のかを検討するのは後にするとして」


オモヒト コウ
「ガチャの景品って線はないのか?」


ノノハラ レイ
「それはないよ。直接的に凶器になりそうなものは出ないみたいだし」


ウメゾノ ミノル
「ガチャのリストも確認してみたけど、それっぽいものは見当たらないね」


オモヒト コウ
「そうか……、そのリスト、信用できるんだろうな?」


モノクマ
「だいじょーぶ! ボクのお腹のセンサーにかけて“そのリストは正しい”と証言しましょう!」


ノノハラ レイ
「らしいよ?」


オモヒト コウ
「――で、さっきっからしれっと混じってるこいつは一体どうしたもんだろうな?」


ノノハラ レイ
「どうせいてもいなくても変わらないんだし、基本居ないものとして扱って必要な時だけ頼れば?」


ユーミア
「しゃしゃり出るのに目を瞑れば問題ないかと」


オモヒト コウ
「それもそうだな」


モノクマ
「コラ! ボクをそんな都合のいい女みたいな扱いをするんじゃない!」


ウメゾノ ミノル
「事実じゃん」


マスタ イサム
「今までの所業を思い出して出直してこい」


モノクマ
「クッソー!」


545 :♪BOX15 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/22(土) 23:41:06.70 ID:D1yK3sxu0



ノノハラ レイ
「ところでそのリストってさ、景品のシリアルナンバーと排出確率しかないんじゃなかったっけ?」


ウメゾノ ミノル
「全部当てた」ドヤァ


ノノハラ レイ
「どんだけ回したのさ」


オモヒト コウ
「お前にだけは言われたくないと思うぞ」


ウメゾノ ミノル
「むしろあれだけ回してまだcompleteできてないの?」


ノノハラ レイ
「――爆死は誰にだってあるんだ。キミだって相当溶かしたんだろ?」


ウメゾノ ミノル
「ゲームコーナーで稼げば実質タダだし。――500連からは数えてないね」


マスタ イサム
「……マトモな会話をしているはずなのに、何かやけにムカツクな」


ユーミア
「内容が内容ですから。どうか落ち着いてくださいマスター」



コトダマGET!


短剣:被害者の手のひらに突き刺さっていた短剣。禍々しいフォルムに赤い刀身が特徴的で、誰かに支給された凶器と考えられる。


突き刺さった跡:刀身が全て埋まるほどの深さまで突き刺さっていることから、相当強い力で突き立てられたと考えられる。


ガチャの景品一覧:ガチャの景品のシリアルナンバーと出現率が記されている。梅園穫は全ての景品を取得しており、凶器になりそうな物はないとのこと。



546 :♪BOX15 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/23(日) 00:19:19.39 ID:IGr8f28G0



ユーミア
「……野々原さん、何をしているのですか?」


ノノハラ レイ
「いやさ、支えてた時にちょっと違和感があってね」


マスタ イサム
「違和感? その髪にか?」


ノノハラ レイ
「うん、なんか一瞬ずれたような気がして。これはひょっとしたら――」



 澪が朝倉の髪を慎重に引っ張ると、黒く短い地毛が露わになった。
 白い長髪を緑のヘアゴムでツインテールにしているのではなく、黒い短髪に緑のカチューシャが本来の髪型らしい。



ウメゾノ ミノル
「ウィッグ、だったんだ。あれだけ派手に動いていたのによくずれなかったね」


ノノハラ レイ
「この手のヤツは立ち回りさえ気を付けてればそう簡単に外れないようになってるんだよ。
 ふとした拍子にずれたりするんだけど、意識しない限りは気にならないし」


マスタ イサム
「……」


オモヒト コウ
「増田? どうかしたのか?」


マスタ イサム
「いや、何でもない。ただ結構長く付き合ってたのに、本当の髪型に気付かなかったマヌケっぷりに呆れてただけだ」


ユーミア
「それはマスターの落ち度ではありません。隠していた当人が悪いのです」


ノノハラ レイ
「好みに合わせたって可能性はないかな?」


ウメゾノ ミノル
「ウィッグの管理って結構洒落にならないんじゃなかったっけ? そこまでやるものなのかい?」


ノノハラ レイ
「まぁ、いずれにせよ朝倉さんはカツラを被ってたってワケだ。どうしようか? このまま放置する? それとも被せ直す?」


ユーミア
「外してしまった以上そのままにしておく方が無難でしょう。それに検死の際のノイズにならなくなりますから」


ノノハラ レイ
「増田クンは? どう思う?」


マスタ イサム
「……そのままにしておいてくれ。きっと俺のためだったんだろうが、最期くらいはありのままの巴でいさせてやれ」


ノノハラ レイ
「はいよ」



コトダマGET!
ウィッグ:朝倉巴はウィッグで髪型をごまかしていた。


547 :♪BOX15 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/23(日) 00:25:54.87 ID:IGr8f28G0


ノノハラ レイ
「さて、検死を始めようか……、と、言いたいんだけど」


オモヒト コウ
「何か問題でもあるのか?」


ノノハラ レイ
「想像以上に損壊が激しいからね。ちょっと難しいかな。
 おまけにどれだけかは分からないけど、シャワーの水を浴び続けてたのも拍車をかけてる」


マスタ イサム
「そんなものなのか?」


ユーミア
「基本的に検死では死後硬直の進行具合や死斑の有無、解剖も含めれば胃の内容物や直腸体温などで死亡時刻などを推定します。
 一般的にはこのように外傷が多い場合、何処が致命傷となったのかを調べるものなのです。
 生前につけられたものと死後につけられたものとでは差異がありますから」


ウメゾノ ミノル
「なんかどっかで読んだことあるな。生体反応、だっけ?」


ノノハラ レイ
「うん。細かい説明は省いてざっくばらんに言えば、死んだら瘡蓋なんてできっこないよね? って話さ」


オモヒト コウ
「わかっちまうのがちょっとムカツクな。それで、何処が致命傷なのか、わかるか?」


ノノハラ レイ
「生体反応って一言で言ってもその差異って案外よく見てみないとわからないんだよね。
 それを一か所ずつ検証していかなきゃいけないから、クッッッッソ時間かかるよ?」


マスタ イサム
「その分澪の捜査時間が削られるってわけか。それはマズイな。ユーミア、頼めるか?」


ユーミア
「仰せのままに」


ノノハラ レイ
「随分とボクを評価信用してくれてるみたいだね?」


マスタ イサム
「まぁな。だが結果が出せなければ――解ってるな?」


ノノハラ レイ
「おお、こわいこわい」



コトダマGET!


死体損壊:朝倉巴の死体は著しい損壊を受けており、さらに水を浴び続けていたため検死が困難になっている。


548 :♪BOX15 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/23(日) 00:36:53.17 ID:IGr8f28G0



ノノハラ レイ
「一応の現場検証はこんなところかな?」


オモヒト コウ
「第一段階終了、ってところだろ。一通り見終わったってだけだ」


マスタ イサム
「後は証拠探し、ってところか?」


ウメゾノ ミノル
「人数が減ったのに捜査範囲が広くなっちゃってるからどうしたもんかな。
 また二人一組となると一組あたりの負担がデカくなっちゃうよ?」


ノノハラ レイ
「とりあえず現場の監視と死体の検死は増田クンとユーミアさんにお任せするとして、ボク等は一旦合流しようか。
 組み分けはその時考えようよ」


549 :モノクマファイル02 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/23(日) 00:43:29.24 ID:IGr8f28G0



 被害者は朝倉巴。

 全身に計157か所の刺し傷あり。薬物は検出されていない。

 また、肘や膝、指先や足先など様々な部位が粉砕骨折している。



550 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/23(日) 01:14:53.49 ID:IGr8f28G0



コウモト アヤセ
「……改めてみると、酷い殺され方ね」


ノノハラ レイ
「その通りだね。ただ殺すなら、学級裁判で生き残るならここまでやる必要なんてどこにもない。
 そこに意味があるとするなら、きっとそれが鍵になるはずだよ」


コウモト アヤセ
「あ、澪。戻ってきたんだ」


ノノハラ レイ
「まあね。モノクマファイルで得られる以上の情報はユーミアさんの検死待ちって感じで、現場の監視を増田クンに任せて証拠集めをボク等で手分けしてやろうってね」



コトダマGET!
モノクマファイル02:>>549


551 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/23(日) 01:25:00.71 ID:IGr8f28G0



ウメゾノ ミノル
「で、結局どうすんのさ。11人で本館と別館調べるのってかなり骨だと思うんだけど」


オモヒト コウ
「とりあえず本館を調べる組と別館を調べる組とに分かれよう。現場はこの別館だろうが手掛かりが本館にないとは言い切れないからな」


ノノハラ レイ
「その辺はボクも同意。今回も出来ればツーマンセルで行動してもらいたいんだけど、それだと捜査範囲が狭くなるし。
 本館組と別館組に分かれたら後はご自由にって感じでいいかな?」


ナナミヤ イオリ
「異議はありませんが、どう分けるのですか?」


オモヒト コウ
「一先ず俺は本館に向かう。夢見、試したいことがあるからついてきてくれないか」


タカナシ ユメミ
「うん、お兄ちゃんのいうことなら何でも聞くからね♪」


ウメゾノ ミノル
「僕も本館に行くよ。焼却炉とか、ランドリーとか、被害者の部屋とか気になるところ色々あるし」


ナナミヤ イオリ
「朝倉さんの部屋に入るなら、女性が必要でしょうね。これ以上死者を辱めることなどあってはならないでしょうし」


ナナ
「ナナはここに残るわ。ゴンドラで移動するのは面倒だもの」


ノノ
「あの中って退屈だもんね」


サクラノミヤ アリス
「死体がここにあるんだから手掛かりもここにあるんじゃないの?」


サクラノミヤ エリス
「ここで殺されたと考えるのが普通、ですよね……?」


ノノハラ ナギサ
「あたしもここに残ろうかな。こっちの方が人手要るだろうし」


コウモト アヤセ
「わたしは……、どうしよう」


ノノハラ レイ
「じゃ、ボクと組んで広く浅く調べる?」


コウモト アヤセ
「どういうこと?」


ノノハラ レイ
「深く調べるのは各々にお任せするとして、全体を俯瞰してみる人間も必要だろうと思ってね。
 その役割は二人一組で行動した方が、視野が広がるでしょ?
 ――それにさ、気づいてないと思うけど、結構疑いの目で見られてるんだぜ、ボク等」


552 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/23(日) 01:36:36.39 ID:IGr8f28G0



コウモト アヤセ
「えっ?」


ノノハラ レイ
「死体の第一発見者が疑われないわけないしょ、おまけにそれが不自然な状況なら猶更さ。
 だから何処をどう調べようと怪しまれるし、最悪証拠隠滅しようとしてるじゃないかって思われたりしてね?」


コウモト アヤセ
「そんな……!」


ノノハラ レイ
「やっぱり、綾瀬に疑いがかけられているのなら、綾瀬自身がそれを晴らさなきゃだめだと思うな。
 ま、それ以上にボクは前科があるしねぇ。朝倉さんに拘束されたときに見張ってくれるって綾瀬言ってくれたし。――嫌だった?」


コウモト アヤセ
「嫌じゃないけど、できるのかな。わたしに」


ノノハラ レイ
「できるさ。ボクも出来る限りサポートするから。じゃ、そういうことで。ほら、本館組はゴンドラに乗りに行きなよ」


オモヒト コウ
「言われなくても。そっちこそ、変な真似はするなよ?」


ノノハラ レイ
「捜査に関しては真摯に取り組むつもりだよ。じゃ、散開ってことで」


553 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/29(土) 21:35:26.45 ID:ZulfPOOP0


ノノハラ レイ
「さて、じゃボク等は二階に行こうか?」


コウモト アヤセ
「そのこころは?」


ノノハラ レイ
「検死の時間待ちついでに、事件とあまり関係なさそうな部分は先に潰しておこうと思って。
 あと一回一番上まで登って上から下に調べる方が手間は省けるでしょ?」


コウモト アヤセ
「言いたいことは解るけど。いいのかなぁ、それで」


ノノハラ レイ
「そうと決まればGOGO!」


コウモト アヤセ
「……ところで、その格好にばかり気がいってたけど、よく考えるとおかしいじゃない?
 何で朝一番のゴンドラに乗ってきたわたし達よりも前に澪がここにいたの?」


ノノハラ レイ
「それに関しては、ボクの口からはなんとも。学級裁判を進めていけばいずれわかることだよ。この服を着ている浅い理由もそれで説明がつくから。
 そうだ、ついでだしこっちからも質問良いかい? 綾瀬がこっちに来るとき、ユーミアさんも一緒だったんだよね? 他に誰かいたかい? 荷物は?」


コウモト アヤセ
「ううん。わたしとユーミアさんだけ。わたしはバスタオルとか袋に入れて持ってたけど、ユーミアさんは手ぶらだったかな。
 ある程度の掃除用具ならこっちにもあるって言ってたし」


ノノハラ レイ
「そっか。じゃ、情報交換も終わったし改めて二階へ行こうか」



コトダマGET!
別館に居た澪:澪は6時10分よりも前に別館にいた。
二人きりのゴンドラ:綾瀬とユーミアは6時ちょうどにゴンドラリフトに乗った。二人とも特に大きな荷物を持っていたわけではない。



554 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/29(土) 21:37:34.82 ID:ZulfPOOP0


ノノハラ レイ
「まずは――女子更衣室かな」


コウモト アヤセ
「……」


ノノハラ レイ
「待って、これにはちゃんとした理由があるから。やましい理由とかないからそんな絶対零度の視線向けないで超怖い」


コウモト アヤセ
「ちゃんとした理由って?」


ノノハラ レイ
「昨日使われなかった体操服がどう処理されたのか、その確認だよ」


コウモト アヤセ
「何の為に?」


ノノハラ レイ
「いやさ、昨日の球技大会の時にさ、男子更衣室で体操服が一着余ってたんだよ。
 それで球技大会が終わって更衣室に戻ったらさ、その余った一着が無くなってたんだよ。
 その時は男みんなスルーしてたんだけどさ。『あんな小さいの誰も着ないだろ』とか、『自動で回収するなら最初から置くなよ』とか好き勝手言ってて。
 でもやっぱり気になるじゃない。そういうちょっとした怪現象って。
 勿論、使われなかった体操服は自動で回収されるって言うならそれにこしたことはないんだけど」


コウモト アヤセ
「……そういえば、女子更衣室も二着体操服が余ったわね。そっちは球技大会の後も手つかずのままだったはずだけど?」


ノノハラ レイ
「その証言を聞けただけでも――と言いたいところだけど、今日は違うかもしれない。その確認だよ」


コウモト アヤセ
「……それなら、いいんだけど」



コトダマGET!
消えた体操服:男子更衣室で余っていた一着が球技大会の後無くなっていた。



555 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/08/29(土) 22:10:12.21 ID:ZulfPOOP0



コウモト アヤセ
「……うん、変わってないわね。用が済んだんだし、早く出ましょう?」


ノノハラ レイ
「……あー、ちょっと待って。これは、男性アイドルのポスター?」


コウモト アヤセ
「海神 水音(ウナガミ ミオ)。人工知能のアイドルだからAIdolなんだって」


ノノハラ レイ
「そういう設定とかじゃなくて?」


コウモト アヤセ
「慧梨主ちゃんから聞いた話だと、知る人ぞ知るって感じのネット上でのみ活動してるアイドルみたい」


ノノハラ レイ
「へぇ、意外だな。慧梨主さんそういうの疎そうだと思ってたのに」


コウモト アヤセ
「慧梨主ちゃんもはじめは女の人だと思ったんだって。誰かさんに似てる所為かもね?」


ノノハラ レイ
「……まぁ、ボクが成長してもっと髪伸ばせばこんな感じになるのかな?」


コウモト アヤセ
「かもね。試しにちょっと髪型似せてみれば?」


ノノハラ レイ
「んー……、こんな感じ?」


コウモト アヤセ
「……予想以上にそっくりでビックリよ」


ノノハラ レイ
「わあお。――とりあえず、自分が使用した分は自分で洗濯するっていうスタンスは解ったよ。とするとあの体操服は……、そういうことになるのかな」


コウモト アヤセ
「ちょっと、一人で考え込まないで教えてよ」


ノノハラ レイ
「いやいや、こういう気付きは共有するものじゃないよ。本人が分からなきゃ本質が分からない。
 それに、この事実は出来るだけ隠しておいたほうがいいかもしれないし。一個人の名誉の為にもね」


コウモト アヤセ
「むぅ……」



コトダマGET!
手付かずの体操服:女子更衣室には手付かずの体操服が二着あった。



556 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 12:28:10.75 ID:/sP8o8Be0



 女子更衣室を出た先の廊下に渚がいた。男子更衣室の前をうろついているみたいだけど。



ノノハラ ナギサ
「あ、お兄ちゃん」


ノノハラ レイ
「あれ、どうしたのさ渚。そんなところで」


ノノハラ ナギサ
「あ、あのね、ちょっとここから変な臭いがするの。饐えた臭いって言うか……」


ノノハラ レイ
「うーん? ……うーん。何か消臭剤でも使ったのかな。臭いのもとはこの廊下だけ?」


ノノハラ ナギサ
「そうじゃない、かな。多分大本がある、と思う。男子更衣室、かな?」


ノノハラ レイ
「それなら、調べてみる必要があるね。渚の嗅覚は信用できるからさ」


コウモト アヤセ
「澪の言ってたことの検証も兼ねてね」


ノノハラ レイ
「じゃ、開けよっかな」



コトダマGET!
野々原渚の証言:男子更衣室前の廊下で微かな饐えた臭いがしていた。消臭剤が使われていた可能性がある。



557 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 12:30:53.21 ID:/sP8o8Be0



 男子更衣室の扉を開けると、異様な光景と悪臭がとびかかってきた。



ノノハラ レイ
「……おっと、これは想像以上だったね」



 男子更衣室の隅に大量の吐瀉物。饐えた臭いの大本はこれみたいだ。



ノノハラ ナギサ
「……うん。同じ臭いがする。度合いは、こっちの方が酷いけど」


ノノハラ レイ
「ぶちまかれてから結構時間経ってる感じかな。大分乾いてるし」


コウモト アヤセ
「……本当に澪に言うとおり体操服が全部なくなってる。でもこれに何の意味があるの?」


ノノハラ レイ
「女子更衣室では使用されていない体操服はそのまま。一方で男子更衣室では余ったはずの体操服はなくなっている。
 それから導き出される答えは一つなんじゃないかな」


コウモト アヤセ
「……?」


ノノハラ ナギサ
「ところでこれ、お兄ちゃん達のじゃないんだよね?」


ノノハラ レイ
「当り前じゃん、自分で汚したものはちゃんと自分で処理する分別くらいは持ってるはずだよ。
 ……消化具合から考えると、食後から3〜5時間って感じかな? 肉らしいものも結構溶けてるから」


コウモト アヤセ
「……それならこれ、昨日の夕食ってこと?」


ノノハラ レイ
「多分そうなんじゃないかな。昨日のマルゲリータに乗ってたベーコンだと考えれば辻褄が合う」


コウモト アヤセ
「えーっと、大体19時ぐらいには皆晩御飯食べ終わってたはずだから……」


ノノハラ レイ
「ここで男子の中の誰かが22時から24時の間に吐いて放置したって感じかな」


ノノハラ ナギサ
「それだと廊下の臭いの説明がつかないよ?」


ノノハラ レイ
「考えられる可能性があるとすればそれは――。
 これも一個人の名誉の為に学級裁判で追及されるまでボクの胸の内に秘めておこう」


コウモト アヤセ
「またそれ? ちょっとは話してくれたっていいんじゃない?」


ノノハラ レイ
「……心配には及ばないよ。十中八九、追及されるだろうから」


コウモト アヤセ
「……?」

コトダマGET!
吐瀉物:男子更衣室の片隅に大量に吐かれている。乾いていることから吐かれてから時間がたっているものと思われる。
    また、内容物の消化具合から食後3〜5時間と推定される。
558 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 12:32:00.84 ID:/sP8o8Be0



コウモト アヤセ
「……一応更衣室にもそれらしい収穫があったにはあった、のかなぁ?」


ノノハラ レイ
「ボク的には予想以上だったけどね。さて、次はどっちを調べようか? シアタールーム? 多目的ホール?」


コウモト アヤセ
「そこは澪が決めるんじゃないの?」


ノノハラ レイ
「……正直、この二つには特に証拠なんてないんじゃないかなって。直感だけど」


コウモト アヤセ
「でも一応調べなきゃいけないから、サラッと調べるならどっちが先ってワケね。
 じゃぁシアタールームにしましょう。手掛かりらしい手掛かりなんて一番出てこなさそうだし」


ノノハラ レイ
「いいよ。……そう言えば、観賞会の後片付け中途半端だったっけね」


 シアタールームへ向かった。


559 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 12:36:21.06 ID:/sP8o8Be0



ノノハラ ナギサ
「ところで、お兄ちゃん、その格好は――」

ノノハラ レイ
「後でゆっくり説明するよ。後でね」



 制止にかかる渚を振り切って扉を開けるとそこには慧梨主さんがいた。



サクラノミヤ エリス
「海神水音さん?! しかも、こっ、ここねさんとのコラボ衣装?!
 ――じゃ、ないですね。澪さんですか。顔がそっくりだから危うく騙されるところでした」

ノノハラ レイ
「一瞬で見破るとかガチのファンかな? ちなみにどこで見分けたのかな?」

サクラノミヤ エリス
「水音さんはもっと威厳と言うか……、カリスマがある方なので。色々な本から引用して自分なりの哲学も通してきますし。
 それに比べると澪さんは、その、何と言うか、チャランポランじゃないですか」

ノノハラ レイ
「……キミ、結構辛辣な毒吐くね。亜梨主さんがいないとそんな感じなのかな?」

サクラノミヤ エリス
「お姉さまは関係ないでしょう。水音さんのコスプレの指南なら是非プロデュースしたいところですが」

コウモト アヤセ
「髪型変えただけでそういうのは全然関係ないから。……それで、何かめぼしいものは見つかった?」

サクラノミヤ アリス
「そうですか。てっきりそっちの方向に目覚めたものかと。……特にこれと言って発見はありませんね。映画観賞会のゴミがそのまま残っているぐらいで」

ノノハラ レイ
「……確かに、飲みさしの紙コップやらポップコーンの包み紙やらでゴミ箱がいっぱいだね。
 うわ、よく見たら床に食べかすみたいなのも落ちてるじゃん」

サクラノミヤ エリス
「あの時は基本的に部屋が真っ暗でしたから……、多少の見落としがあっても仕方ないのでは?」

ノノハラ レイ
「だね。……ん、変だな」

コウモト アヤセ
「どうかしたの?」

ノノハラ レイ
「いや、紙コップさ、他の誰かと混ざらないよう自分の名前書くってなったじゃん」

コウモト アヤセ
「そう言われてみれば確かにそうだった気がするけど、それが何なの?」

ノノハラ レイ
「紙コップ、12個しかない。二人分足りないんだよ。公と増田クンのがここにないんだ」

コウモト アヤセ
「普通に持ち帰ったとかじゃないの? 事件とあまり関係なさそうだけど」

ノノハラ レイ
「……いや、案外こういうのが大事だったりするんだよね」

サクラノミヤ エリス
「そうあからさまに言われると、逆に無関係に思えてきますね」

ノノハラ レイ
「……泣いていい?」


コウモト アヤセ
「今までの自分の言動を思い出しなさい」

コトダマGET!
食べかす:映画上映会の時の食べかすが床に落ちていた。
消えた紙コップ:主人公と増田勇の紙コップが無くなっていた。
560 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 22:14:32.96 ID:/sP8o8Be0


ノノハラ レイ
「うん。これ以上は証拠になりそうなものもなさそうだし、撤収しようかな」


コウモト アヤセ
「随分あっさり引き下がるのね。まあ、いいけど」


サクラノミヤ エリス
「水音さんのコスプレを今度してもらっても――」


ノノハラ レイ
「はい次々ー」


コウモト アヤセ
「あまり澪で遊ばないでね。じゃあわたし達は多目的ホールに行くから」


サクラノミヤ エリス
「それは残念です。心変わりしたらいつでも待ってますから」



 ちょっと寒くなった背筋を無視して、多目的ホールへ向かった。



561 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 22:17:04.47 ID:/sP8o8Be0


ナナ
「そーれ」


ノノ
「えーい」


ノノハラ レイ
「予想はしてた」


コウモト アヤセ
「この捜査時間って割と命がかかってるんだけど……、解ってないのかな?」


ノノハラ レイ
「多分解っててもなお、だと思う」



 体育館でボール遊びをする子供。
 普通なら何の変哲もない絵面だけど、殺人事件が起きた後だってシチュエーションで、それなりに分別のある双子だと一転恐怖を煽るものだ。
 そうだな、『シャイニング』や『エクソシスト』の雰囲気に近い。



ナナ
「あら、お兄ちゃん。どうしたのそのお洋服?」


ノノ
「お兄ちゃんはお姉ちゃんだったの?」


ノノハラ レイ
「あまり気にしないで。できれば放っておいて」


コウモト アヤセ
「えーっと、そうそう。二人は何か見つけたの?」


ナナ
「何も見つからなかったからこうして遊んでるの」


ノノ
「お兄ちゃんが壊したバスケットのゴールもそのままになってるし」


ノノハラ レイ
「……本当にそのままだね。塗装に塗装を重ねても、肝心の中身が錆びでボロボロだ」


コウモト アヤセ
「それで壊れちゃったのね。……増田君のダンクシュートがそれだけ強烈だったって言うのもあるけど」


ノノハラ レイ
「モノクマの想定以上だったってわけね。だから見逃されたんだろうけど」



コトダマGET!
壊れたゴールポスト:老朽化していたのを騙し騙し使用していたが、増田勇のダンクシュートを何度も受けたせいで破損してしまった。



562 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 22:29:27.80 ID:/sP8o8Be0



ノノハラ レイ
「掃除用具……、これかな」


コウモト アヤセ
「モップにバケツに箒に塵取りに粘着クリーナーに漂白剤消臭剤……、掃除に必要なものは一通り揃ってるわね」


ノノハラ レイ
「ついさっき使ったばかりって感じのも結構あるね」


コウモト アヤセ
「ユーミアさんが掃除してたって事じゃないの?」


ノノハラ レイ
「……その割には、舞台袖とか結構埃が目立つね」


コウモト アヤセ
「そんな姑みたいな真似しないの。……いったん離れて合流するまで大体一時間半ぐらいだからそんな隅々までは気が回らなかったんじゃない?」



コトダマGET!
掃除用具:掃除に必要なものが揃っている。使用したばかりの物もある。
多目的ホール:一通り掃除されているようだが舞台袖などは手付かずだった。


563 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 22:36:47.99 ID:/sP8o8Be0



ノノハラ レイ
「もうここは粗方調べ終わったかな」


コウモト アヤセ
「じゃあ一階に行きましょっか」


ナナ
「もう行っちゃうの?」


ノノ
「ここで遊ばない?」


ノノハラ レイ
「後でね」


コウモト アヤセ
「……二人はもうしばらくそこで遊んでてね」


ナナ/ノノ
「「はーい」」



 場違いな明るい返事を返した双子を背中に、多目的ホールを後にし一階へ向かった。



564 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 23:05:04.45 ID:/sP8o8Be0



サクラノミヤ アリス
「あら。疑わしい二人がお揃いで何の用?」


ノノハラ レイ
「出会い頭に辛辣な言葉をどうも」


コウモト アヤセ
「まあ、そう言われればそうよね。第一死体発見者だもんね。それは疑われるわよね」


サクラノミヤ アリス
「その隣にいるのが怪しい恰好をしているとなれば、疑うなって方が無理でしょ?
 どうせ、そんな恰好をしている理由を聞いても答えてくれないでしょうけど。それが余計怪しいっていうのにね」


ノノハラ レイ
「手厳しいなあ。で、何か収穫はあったかい?」


サクラノミヤ アリス
「特に何も? ……と言いたいところだけど、一応モノクマから情報は得られたわ」


コウモト アヤセ
「どんな? っていうか、どういった経緯でそんな情報を?」


サクラノミヤ アリス
「このゲームコーナーの雀卓、ちょっと前まで使ってましたって感じだったからね。
 こう思ったの、誰か夜遅くまでやってたんじゃないかって。
 で、モノクマからさりげなく聞いたらこう答えが返ってきたわよ。
 『この別館は本館とは電力は別だから、夜時間の間でも電気が通ってる』ってね」


コウモト アヤセ
「……誰がいたのかは?」


サクラノミヤ アリス
「あの性悪パンダモドキが教えてくれると思ってるの?」


ノノハラ レイ
「ですよねー。で、キミはこう考えたわけだ。実は夜時間の間に誰かがここにいたんじゃないかって」


サクラノミヤ アリス
「そ。でもまぁ、それが誰なのかはすぐに検討がつきそうだけど?」


ノノハラ レイ
「それじゃキミに聞くけど、ゴンドラリフトはどう説明するのさ」


サクラノミヤ アリス
「稼働時間、ね。考えれば案外簡単に説明付くでしょ。あたしの推理が正しければ、クロの正体も自ずと解るわよ」


コウモト アヤセ
「……澪はクロじゃないわ。少なくともわたしはそう信じてる。そしてわたしも犯人じゃない」



別館の電気:別館は夜時間も電気が通っている。



565 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 23:11:35.13 ID:/sP8o8Be0



ノノハラ レイ
「ゲームコーナーにも目ぼしいものはなさそうだし、そろそろユーミアさんの検死も終わってそうだし。
 行ってみようか。――大丈夫?」


コウモト アヤセ
「うん。わたしはもう平気だから、心配しないで。女湯に行きましょ?」


ノノハラ レイ
「無理はしないでね」


コウモト アヤセ
「それわたしのセリフ」


サクラノミヤ アリス
「下らないラブコメなんてやってないでさっさと言ったら?」



 刺々しいセリフを後に、女湯の更衣室へ向かった。



566 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 23:26:07.68 ID:/sP8o8Be0



ノノハラ レイ
「とりあえずまずは脱衣所から調べてみようか。何か証拠があるかもしれないし」


コウモト アヤセ
「証拠って言ったって……、わたしが着替えたときには何も……」


ノノハラ レイ
「それは動揺してたからでしょ。冷静になった今なら、何かわかるものがあるかもしれないじゃない」


コウモト アヤセ
「そう、かな」


ノノハラ レイ
「そうだよ。……行きと帰りの時とで何か違ってるところとか、ある?」


コウモト アヤセ
「うーん……。特にこれと言って変わったところなんて見当たらないし……。
 わたしは澪みたいな記憶力は持ってないからなんとも……」


ノノハラ レイ
「そんなに気に病まなくたっていいよ。……このゴミ箱とかはどう?」


コウモト アヤセ
「……うん、少なくともこんなカバンは入ってなかった筈はずよ。それは断言できる。
 それによく見たらこれ、巴ちゃんのカバンだわ」


ノノハラ レイ
「調べてみる価値は十分にありそうな証拠品だね」



コトダマGET!
脱衣所のゴミ箱:朝倉巴のカバンが捨てられていた。



567 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 23:42:37.71 ID:/sP8o8Be0



ノノハラ レイ
「さーて中身はなんじゃろな」


コウモト アヤセ
「女の子のカバンの中身を漁らないの――と言いたいところだけど、これも捜査のため、よね」


ノノハラ レイ
「……最近の女子のカバンの中には紙コップやら空のペットボトルやら、一目でゴミとわかる物を入れるのがトレンドなのかな?」


コウモト アヤセ
「そんなトレンドがあると思う? ……この紙コップ、増田君のね。『マスタ』って書いてあるし」


ノノハラ レイ
「ひょっとしたらこの空のペットボトルも増田クンのかもね。後は……、この小瓶と、何かの機械と、……鞘、かな?」


コウモト アヤセ
「この形の鞘って……、つまりそういう事、なの?」


ノノハラ レイ
「だろうね。小瓶の中身は……、うわぁ、これ爪だわぁ」


コウモト アヤセ
「巴ちゃん、自分の爪を集めて溜める趣味でも――いえ、これ巴ちゃんの爪じゃないわね」


ノノハラ レイ
「わかるんだ?」


コウモト アヤセ
「ええ、だって女の子の爪って感じじゃないじゃない。切り口も雑だし、厚いし。
 多分男子のかな」


ノノハラ レイ
「……大きさ的に考えて増田クンのだったりしてね。後で聞いてみようか」



コトダマGET!
紙コップ:朝倉巴のカバンの中に入っていた増田勇の紙コップ。
鞘:何らかの剣の鞘。形が独特。
小瓶:誰かの爪が詰まっている。



568 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/20(日) 23:59:58.46 ID:/sP8o8Be0



ノノハラ レイ
「さて、残るは怪しさ極まりない機械だけど、イヤホンがあるし、ちょっと電源点けて聞いてみようかな」


コウモト アヤセ
「危なくない?」


ノノハラ レイ
「物は試しってヤツだよ、さぁてなにが聞こえてくるのかな? ――へぇ」


コウモト アヤセ
「何よ、そんな風に悪巧みしてるみたいに笑っちゃって」


ノノハラ レイ
「これ、盗聴器だ」


コウモト アヤセ
「え?」


ノノハラ レイ
「しかも増田クンの身体の何処かに送信機つけられてる」


コウモト アヤセ
「……噓、じゃ、ないわね。じゃあ、その、巴ちゃんは――」


ノノハラ レイ
「所謂ストーカーってヤツだ。増田クンはその被害者ってところかな」


コウモト アヤセ
「こんなところで巴ちゃんの知らない一面が暴かれちゃうなんて、ね」


ノノハラ レイ
「人なんてそんなもんだよ。誰にだって知られたくない後ろ暗い顔を持ってるのさ」


コウモト アヤセ
「澪が言うと真実味が増すわね」


ノノハラ レイ
「綾瀬はボクを褒めたいのか貶したいのかどっちなんだい?」


コウモト アヤセ
「わたしはありのままの澪のことを言ってるだけだから」



コトダマGET!
盗聴器:朝倉巴は増田勇を盗聴していた。


569 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/26(土) 20:43:32.84 ID:OMA2HHiu0



―――




 思えば、巴は俺にとっての何だったんだろうか。
 バイト先で俺が座っていた椅子に頬擦りしたり、脱ぎ捨てたユニフォームに顔をうずめていたり、といった意味不明な行動を除けば、俺によく懐く可愛らしい女の子。
 そうだと思っていた。
 あの日。俺が車に轢かれかけたあの日までは。俺の代わりに、俺を庇って、巴が撥ね飛ばされた、あの日までは。
 あの瞬間、俺の心は彼女に惹かれたのだろう。吊り橋効果と言われてしまえばそれまでかも知れないが、俺が巴に惚れる決定打になったのは間違いない。
 前世や運命を信じるか、とかつて巴が聞いてきたことがあった。
 当時の俺は否定しようとして答えに詰まったが、正直に言えば、今は信じている。と、思う。
 運命論や前世の記憶で人の恋が決まってしまうなんて味気ないと思っていたが、俺が巴に助けられたのは多分、そうなる運命だったんじゃないか、と。
 それなら、そこから先の俺の心もまた、前世からの運命なんじゃないかって、そう思えた。



マスタ イサム
「……だけど、こんな風にされるようなことはしてないだろ」


ノノハラ レイ
「そうかな? ヒトって言うのは何処から恨みを買うか分からないものなんだぜ?
 殺意なんてのは思いもよらぬところから芽生えてくるものなのさ」


マスタ イサム
「――今、お前に対する殺意が芽生えそうだよ」



 俺はこいつを殴って黙らせるべきなんじゃないかと一瞬思い、ギリギリ踏みとどまった。こいつの捜査能力は一応、信用している。
 巴をこんな風にした犯人を突き止めるためにはこいつの力が必要だ。一時の感情でそれを不意にしてはいけない。
 だから俺は努めて冷静に振る舞う。ほんの少し、激情が漏れそうだが。



―――



570 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/09/26(土) 21:42:48.48 ID:OMA2HHiu0



コウモト アヤセ
「その、ごめんね、澪が変なこと言って。ほら、謝って」

ノノハラ レイ
「はいはいすいませんでした、っと。で、検死の進捗は?」

ユーミア
「……芳しくありませんね。どの傷も似たようなもので、どれが致命傷なのかは判断できかねます」

ノノハラ レイ
「死亡時刻の方は割り出せそう? ほら、モノクマファイルには載ってなかったからさ」

ユーミア
「見ての通り、傷の所為で死斑も解らなくなってしまっていますし、死後硬直も全身の骨を砕かれているせいで判断は難しいですよ。
 頭部は無事だったので顎の硬直から死後三時間以上は経過しているとみて間違いはないようですが」

ノノハラ レイ
「胃の内容物の消化具合とかは?」

ユーミア
「……見ての通り、空っぽでして。それが元からなのか、滅多刺しにされた後シャワーの水で洗い流されたのかの判別も付かないのが現状です」

ノノハラ レイ
「そっかぁ。でもさ、一目瞭然でわかることが一つあるよね?
 少なくとも刺し傷は死後につけられたもので、死後八時間以上は経過してるんじゃないの?」

ユーミア
「何故そう言い切れるのです?」

ノノハラ レイ
「だってさ、服に血がどこにも滲んでないじゃん。
 仮に殺した後何かの痕跡をごまかすために刺し傷を作ったとしても、体の中で血が完全に凝固してない限り死後の傷でも出血はあるはずで、そうなれば服に血が着くのは自明の理だよね?」

マスタ イサム
「つまりあれか? 殺してしばらくたった後さらに痛めつけたって言うのか?」

ノノハラ レイ
「考えようによってはそうなるね。よっぽどの怨恨か、あるいはそうしなければならない理由があったか……、いずれにせよ、相当な執念の賜物だよ、これは」

ユーミア
「……引き続きユーミアは死因を調べておきます。これ以上ここにいては、いつマスターの怒りを買うか分かりませんよ?」

ノノハラ レイ
「じゃ、最後に一つだけ、増田クンに聞きたいことが」

マスタ イサム
「……何だ。言ってみろ」

ノノハラ レイ
「昨日言ってた忘れ物、結局どうなったの?」

マスタ イサム
「体操服の事なら、男子更衣室に置きっぱなしにしておいたって言ったろ。どのみち回収されるから問題ないって」

コウモト アヤセ
「そのことなんだけど――」

ノノハラ レイ
「いや、確認したかっただけだよ。邪魔して悪かったね。新しい発見があったら学級裁判で発言してもらおうか」

ユーミア
「……ええ、もとよりそのつもりです」

ノノハラ レイ
「じゃ、この辺で失礼させてもらうよ。じゃあね」

コウモト アヤセ
「ちょっと、澪!」



コトダマGET!
朝倉巴の胃:内容物が空で消化具合も確認できない。
朝倉巴の服:傷だらけではあるが血は滲んでいない。



571 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/11(日) 16:09:35.93 ID:hNL8E9zC0




コウモト アヤセ
「どうしたのよ急に飛び出したりして。それに事情だって――」


ノノハラ レイ
「説明したら増田クンどうなるか分からないじゃん。平静保ってるようでちょっとしたことでキレそうな状態だったし。
 それとも、被害者である朝倉巴が実は自分をストーキングしていただなんて衝撃的な事実を本人に伝えたら何が起こるか、予想できる?」


コウモト アヤセ
「それは、ショックを受けるとは思う、けど……」


ノノハラ レイ
「でしょ? それに時間も惜しいし。聞くべきことは聞けたから十分なんだよ。そう言う訳だから、ここで調べられることはもう粗方調べ終わったってことで。
 本館へ向かおうか」



 強引にゴンドラ乗り場へ向かった。




572 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/11(日) 16:11:46.39 ID:hNL8E9zC0



ノノハラ レイ
「……あれ、何か変じゃない?」


コウモト アヤセ
「どうかしたの?」


ノノハラ レイ
「スキー用具、二人分無くなってる。ついでに勝手口も開けっ放しでそこから足跡が二人分外に出てる」


コウモト アヤセ
「そもそもあったの? スキー用具なんて」


ノノハラ レイ
「十六人分、このロッカーにね。開けないと何が入ってるか分からないけど、ここが解放されてからかなり時間も経ってるし、気付く人は気付いたはずだよ。
 まぁ、見るからにスキーリゾートっぽいからね、ここ。そりゃあるよねって話になるわけで。
 ――しかし、これも開けっ放しで出て行ったとなると、これをやった人は相当焦っていたのかな」


コウモト アヤセ
「わたしが来た時にはそんなあとどこにもなかったけど?」


ノノハラ レイ
「本当かい?」


コウモト アヤセ
「流石にここまで様変わりしてれば着いた時すぐ気付くわよ。断言するわ。わたしが来た時にはスキー用具入れのロッカーも、そこの勝手口も開いていなかった」


ノノハラ レイ
「……それ、しばらくはボク等の胸の内に秘めておいてくれる? 今後の重要な証拠になるかもだから」


コウモト アヤセ
「それは構わないけど……、どう証拠になるの?」


ノノハラ レイ
「犯人の尻尾を捕まえられるかもしれない。詳しく説明すると綾瀬の態度からバレるかもしれないから言わないけど」


コウモト アヤセ
「……悪かったわね、演技が下手で」


ノノハラ レイ
「そう拗ねないでよ。二人の内一人は見当がついてる。もう一人も多分そうなんでしょ。此の二人には特にバレて欲しくないんだ」


コウモト アヤセ
「誰なの?」


ノノハラ レイ
「一人は犯人、もう一人はそれを検証する為に体を張った――主人公クンだよ」



コトダマGET!
ゴンドラ乗り場の勝手口:開けっ放しになっており、二人分の足跡が外にのびていた。
スキー用具入れ:ゴンドラ乗り場にはスキー用具が入っているロッカーがあり、誰でも利用可能だった。
河本綾瀬の証言:6時10分に着いたとき、勝手口の扉もスキー用具のロッカーも開いていなかった。



573 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/11(日) 16:38:38.64 ID:hNL8E9zC0


ノノハラ レイ
「さて、じゃボク等も本館へ行ってみようか。さ、リフトに乗って?」


コウモト アヤセ
「えぇ。……この間の時間がちょっともったいないわね」


ノノハラ レイ
「なら、ボクの話に付き合ってよ。ここまで得られた情報を、整理してみようと思うんだ」



 ゴンドラリフトに揺られながら、推理を進めることにした。



ノノハラ レイ
「やっぱり変だよ、この事件は。特にあの死体。どうしてあそこまでやらなければならなかったのかが重要なんだ」


コウモト アヤセ
「それは、確かに。澪の見立て通りなら、一度殺した後しばらく時間をおいてから死体を痛めつけたってことになるんだもんね?」


ノノハラ レイ
「うん。でさ、朝倉さんの身体には、首や胴体、手足も含めて157箇所も刺し傷があるのはモノクマファイルの通りなんだけどさ。それの分布がおかしいんだよね」


コウモト アヤセ
「どういうこと?」


ノノハラ レイ
「傷が全体に散らばってるのってさ、冷静に考えると変じゃない?
 いくら朝倉さんが小柄だからって、首の下から足の先まで1メートルぐらいはあるんだよ?
 つまり、滅多刺ししている最中に、わざわざ少しずつ移動しなきゃいけないわけじゃない。
 おまけに腹部も背部も刺し傷があるから、一回以上は体をひっくり返しているんだ。いくら怨恨があったって、流石に変でしょ?」


コウモト アヤセ
「それは確かにそうだけど……、一体何のために?」


ノノハラ レイ
「何がしかの意図があったのは確かだと思うよ。普通に考えたらここまでやる必要はない。
 なら、普通じゃない理由があると考えるべきだ」


コウモト アヤセ
「わざわざ全身を刺していった理由……、例えば、犯人に繋がるような痕跡か何かを隠すため、とか?」


ノノハラ レイ
「かもね。痕跡を隠すための工作を隠すために全体に細工した、なんてよくある手だし。
 うん、良い線行ってると思うよ。全身に剣を突き立てて、おまけに関節やら骨やらをバキバキに折るなんて。指なんか辛うじて原形を留めてるってぐらいになってるし。
 オーバーキルにも程がある。普通に殺す分には全く必要ないぐらい重傷負わせる理由は一体何なのか?
 証拠隠滅の為だとすれば、犯人が隠したかったものを考えなくちゃいけない。その先に見える真相が真実なんだ」


コウモト アヤセ
「秘密は秘密と知られた時点で秘密じゃなくなる。そういう事ね?」


ノノハラ レイ
「隠されたものはその存在が知られた時点でいずれ暴かれる。そういう運命なのさ」



574 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/11(日) 23:28:22.59 ID:hNL8E9zC0



ノノハラ レイ
「……時に綾瀬さんや、こっちに来るとき外の景色は見たかい?」


コウモト アヤセ
「なんでそんな急に老け込むのよ。ユーミアさんとは特に話すこともなかったから眺めてはいたけど……、それが?」


ノノハラ レイ
「足元に広がる雪面は見たかい?」


コウモト アヤセ
「んー、見てない、かな。どっちかというと空をぼんやり見てたから」


ノノハラ レイ
「そうかいそうかい。……いやね、シュプールが二人分あるから、それがいつ造られたものなのかと思ったのさ」


コウモト アヤセ
「シュプールって?」


ノノハラ レイ
「スキーで滑った後に出来る轍だよ。ほら、二人分あるでしょ? 蛇行してるのと真っ直ぐのとがさ」


コウモト アヤセ
「あ、本当だ。……これって、誰かがスキーで滑ったって事?」


ノノハラ レイ
「多分ね。一つは犯人が、もう一つは公がつけたものとボクは踏んでいる」


コウモト アヤセ
「どうしてわかるの?」


ノノハラ レイ
「後で直接公に聞いてみればすぐわかることだけど……、多分公がゴンドラに乗って別館へ向かったときはシュプールが一人分あったと思うんだよね。
 それとゴンドラ乗り場の変わりようを見て公は犯人がスキーを使って別館から本館へ移動したと考えたんじゃないかな。判断材料としてはちょっと弱いけど」


コウモト アヤセ
「ひょっとして、主人君が試したいことってそれの事なの?」


ノノハラ レイ
「ボクはそう読んでいる。ま、聞けばわかることだよ。――そう言ってる間にそろそろ着きそうだ」



 本館に到着した。



575 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/11(日) 23:44:17.34 ID:hNL8E9zC0



ノノハラ レイ
「さぁて、まずは焼却炉から調べてみようかな。望み薄だけど」


コウモト アヤセ
「もう手遅れだってこと?」


ノノハラ レイ
「多分ね。今度はしっかり焼却炉を起動させて証拠隠滅してるんじゃないかなぁ」


コウモト アヤセ
「そう思ってるなら、行く意味ないんじゃない?」


ノノハラ レイ
「いいや? 仮に使われていたとしても、犯人が焼却炉を使って処分した証拠品はなんなのか、それを推測する余地はあるはずだよ」



 焼却炉に向かった。



ウメゾノ ミノル
「……ゴメン。まさかとは思ってたんだけど、やっぱり先にやられちゃってたよ」



 ですよね。やっぱり起動してましたか。焼却炉。



576 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/12(月) 00:02:38.45 ID:nMvSO+or0


ノノハラ レイ
「此処に来た時にはもう?」


ウメゾノ ミノル
「うん。いや、前回同様に行くかと思って一縷の望みを託してみたんだけど、御覧の有様だよ」


コウモト アヤセ
「……犯人が焼却炉を使ってでも処分したかった証拠があったってことは確かみたいね」


ノノハラ レイ
「だね。で、他に何かあるかい? 今朝も朝練はやったんだろ? その時はどうだったのさ」


ウメゾノ ミノル
「朝の……6時15分ごろには何もなかったってことは証言できるよ。軽く朝練してた時中には目ぼしいものなんて無くて、空っぽだった。
 まぁ、20分には部屋に戻ったからその後に誰かが作動させたってことになるんだろうけど」


コウモト アヤセ
「どうして今日に限ってそんな早い時間に?」


ウメゾノ ミノル
「……ちょっと調子が悪かったんだよ。で、二度寝して朝食って時にアナウンスが。
 でもしょうがないじゃないか、事件が起きてるだなんて思ってなかったんだから。
 それに、死体発見アナウンスが流れたときはあのパニックの中で悠長にここの様子を見に行くなんてできそうになかったし」


ノノハラ レイ
「まぁ、事件を事前に予想できるのは関係者か犯人ぐらいだろうしねぇ。しょうがないでしょ」



コトダマGET!
梅園穫の証言:6時15分から20分の間は焼却炉の中は空で、その後に何者かが焼却炉を起動させた。



577 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/12(月) 00:26:38.29 ID:nMvSO+or0



ウメゾノ ミノル
「やっぱさ、本当の犯行現場はこっちなんじゃないかなぁ」


ノノハラ レイ
「というと?」


ウメゾノ ミノル
「購買やガチャで死体を運ぶのに手頃なカバンは手に入るからさ、大荷物を背負ってゴンドラに乗るところさえ見られなければ現場は別館ってことになるじゃない。
 それなら、死亡時刻に本館に居たってアリバイを作っておけばゴンドラリフトの稼働時間の関係上別館で起きた事件には関係がないってことになるし」


コウモト アヤセ
「そう言われてみれば確かに……。でもそれってかなりリスキーよね?」


ノノハラ レイ
「しれっと言ってるけど、その大荷物を背負ってゴンドラに乗り降りしてるとこ見られたら終わりだからね。
 そんな目立つ行為誰の目にも入れないなんてちょっと現実的じゃなくない?」


ウメゾノ ミノル
「いやいや、だからこそだって。現に焼却炉で犯人は証拠を燃やしてるんだぜ? この中には絶対その時使ったカバンかなにかが入ってたんだよ!」


コウモト アヤセ
「そこまで熱弁しなくったって……」


ノノハラ レイ
「いずれにせよ、殺害現場も学級裁判で明らかになるでしょ。梅園クンは引き続きここらを捜査する予定?」


ウメゾノ ミノル
「まあね。ギリギリまで粘って焼却炉の停止を待とうと思うんだ。金属片があったらほぼ間違いなくそこにカバンがあったことの証明になるだろうし」


ノノハラ レイ
「じゃ、ボク等は本館の方を調べに行くよ。いいよね、綾瀬?」


コウモト アヤセ
「ええ」


ウメゾノ ミノル
「仲のいいことで」



 本館へ向かった。



578 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/12(月) 01:10:47.09 ID:nMvSO+or0


ノノハラ レイ
「さて、朝倉さんの部屋に行こうか。……正直、余り気乗りしないけど」

コウモト アヤセ
「どうして?」

ノノハラ レイ
「ほら、朝倉さんの正体をなまじ知ってる身としてはさ、部屋がどんなかはある程度予想がついちゃってね」

コウモト アヤセ
「あー……。それはほら、覚悟を決めるしかないんじゃない?」

ノノハラ レイ
「頼むから普通でありますように――、なんて淡い期待は無価値かなぁ」


 朝倉さんの部屋へ向かった。


ノノハラ レイ
「鬼が出るか蛇が出るか――っと」

コウモト アヤセ
「……よかった。普通みたい」


 ドアを開けるとそこには壁一面の写真――なんてことはなく、何の変哲もない普通の部屋を捜査している七宮さんがいただけだった。
 ちょっと拍子抜けしたなとかは、全然思っていない。


ナナミヤ イオリ
「二人そろって、どうかしたのですか?」

ノノハラ レイ
「いや、何もないなら何もないでいいんだ。それにこしたことはないから」

コウモト アヤセ
「そうそう。わたし達が勝手に変な想像してて、それがただの偏見だってわかっただけだから」

ナナミヤ イオリ
「……? それはさておき、先程は聞きそびれましたが、野々原さん。その格好はどうしたのですか?」

ノノハラ レイ
「浅い事情があるんだ、触れないで欲しいな」

ナナミヤ イオリ
「もしや今まで性別を偽って……?」

ノノハラ レイ
「普通に男だから。男湯に入ったときアラーム鳴らなかったでしょ」

ナナミヤ イオリ
「ならとうとうそちらのケが……?」

ノノハラ レイ
「邪推を重ねないでくれ。――で、ちゃんと調べてる? 何か見つかったの?」

ナナミヤ イオリ
「……特にこれと言って何も。死者への冒涜も憚られますし」

コウモト アヤセ
「そう言われると何も言い返せないわね」

ノノハラ レイ
「こちとら命懸けなんだから、多少の禁忌には目を瞑って欲しいものだけど……。
 ベッドの下とは、また古典的な隠し方だ事。中身は想像がつくから余り見たくないんだけどなぁ」

コウモト アヤセ
「アルバムよね、それ。……わぁ」

ナナミヤ イオリ
「何が……。……。……? ……!? ……」


 七宮さんが気絶した。まぁ、見るからに初心そうだし、しょうがないよね。
 増田クンの盗撮写真。あれやこれやもバッチリ写っちゃってるからね。仕方ないね。


コトダマGET!
アルバム;増田勇のあられもない姿も写されている盗撮写真が納められている。アサクラトモエの部屋のベッドの下で見つかった。


579 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/12(月) 01:35:28.23 ID:nMvSO+or0


 失神した七宮さんをよそに朝倉さんの部屋を見回したけど、これ以上めぼしいものはなさそうかな。


ノノハラ レイ
「あとは……、ランドリールームぐらいか」

オモヒト コウ
「その必要はないな。もう調べ終わったところだ。目ぼしいものは何一つなかったよ」


 タイミングを見計らったかのように、公がやってきた。その隣には小鳥遊さんもいる。


ノノハラ レイ
「やぁ公。実験の結果はどうだった?」

オモヒト コウ
「お見通しってわけか。ま、それ以外は特にこれと言って収穫はなかったからな」

ノノハラ レイ
「へぇ。こっちは色々と収穫はあったよ。それで、結果は?」

オモヒト コウ
「ゴンドラリフトとスキー、どちらで降りるのがはやいか。その検証だ」

コウモト アヤセ
「前者は10分で固定だけど……、後者は主人君が試してみたのよね?」

オモヒト コウ
「その通りだ。夢見にはゴンドラリフトで降りてもらって、俺はスキーで降りた」

タカナシ ユメミ
「お兄ちゃんがあたしを迎えてくれたって結果で終わったの。ちょっとびっくりしちゃった」

オモヒト コウ
「スキーで降りたら大体7〜8分ってところだな」

ノノハラ レイ
「それをやろうと思ったのは、やっぱりシュプールやらスキー用具入れやらを見たから?」

オモヒト コウ
「察しの通りだ。その質問をしてきたんだから分かってるとは思うが、蛇行してるのが俺のつけたものだよ」

ノノハラ レイ
「もう一方の直線は公が実験をやる前――つまり死体発見前につけられたものとみて間違いはないみたいだね」

オモヒト コウ
「だろうな。そしてそいつは極めて怪しい。途中何か所かかなり急な斜面があったんだが、そこでもシュプールはまっすぐだった。
 減速することは一切考慮せず、ただ最短最速を目指したコース取りって感じだ。あれなら5分もかからずに降りられるかもしれない」

ノノハラ レイ
「ゴンドラリフトで10分かかる距離を半分の時間で、か。にわかには信じられない話だ」

コウモト アヤセ
「スキーにはそんなに詳しくないけど、真っすぐ滑ることってそんなにおかしいことなの?」

オモヒト コウ
「傾斜が緩やかならシュプールが一直線になるのは解る。だが急斜面でシュプールが一直線って言うのは不自然だ。一切の減速を考慮してないってことだからな」

ノノハラ レイ
「だから普通は蛇行するんだよね。急斜面で減速しないとなると、下手したら転んだら大怪我じゃすまない大惨事間違いなしだ」

オモヒト コウ
「だがそれをやってのけた者がいるのは間違いない。そいつはよっぽど身体能力に自信がありかつ――」

ノノハラ レイ
「恐怖をまるで知らない、あるいは相当な精神力の持ち主ってことになる」

オモヒト コウ
「それが出来る人間は限られてくるが――どう思う、澪?」

ノノハラ レイ
「ボクも大方見当はついてるよ。けど違和感がある」

オモヒト コウ
「俺もだ」

タカナシ ユメミ
「……何二人で意気投合しようとしてるのよ」

ノノハラ レイ/オモヒト コウ
「「あまりに露骨すぎる」」
580 :♪絶望searching ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/12(月) 02:05:12.18 ID:nMvSO+or0



コウモト アヤセ
「……息ピッタリね」

オモヒト コウ
「――今ので疑惑が確信に変わったよ」

ノノハラ レイ
「ボクだけだと思ってたんだけど、公もとなるといよいよもって間違いないね」

オモヒト コウ
「どうする? このままじゃ思うつぼだぞ」

ノノハラ レイ
「どうするもなにも、学級裁判如何でしょ。ボクの所見では議論次第って感じ」

オモヒト コウ
「現場は本館か別館か。それが肝だな」

コウモト アヤセ
「……何此の疎外感」

タカナシ ユメミ
「奇遇ね。あたしもお兄ちゃんが何考えてるのか全然わからないから話についていけないの」

オモヒト コウ
「俺が思うに、死因は頸椎骨折だろう。前の事件でお前がオルトロスにやったように、な。モノクマファイルにも全身の骨が粉砕骨折しているとあるから、首の骨だって折れてもおかしくない。
 刺し傷はフェイクだ。服に血が滲んでないことから死後8時間以上経過してから、何らかの痕跡を隠す目的でやったんだ。
 しかも犯人は相当な怪力の持ち主だ。それくらいは朝飯前なんじゃないか?」

ノノハラ レイ
「いくら被害者が小柄とはいえ、そう簡単にできるものかな?」

オモヒト コウ
「俺の考えが正しければ、楽に力技で捻じ伏せられたはずだ。体格差も十分だろ?」

ノノハラ レイ
「確かにその通りだけど。それじゃ公はどっちが現場だと思ってるの?」

オモヒト コウ
「一度本館で殺してから、隙を見て別館へ死体を運び込めば、リフトの稼働時間も加味してアリバイを作ることができる。
 朝倉は小柄だから、映画観賞会で使ったような大きいクーラーボックスの中に詰め込めば自然に運べるだろう。
 誰にも見られずにゴンドラリフトに乗り込んで別館で死体を発見させれば、現場は別館だと思わせることができる。
 死亡時刻がゴンドラリフトの稼働時間外だとわかれば、当時本館にいたと証明されればアリバイ成立だ」

ノノハラ レイ
「ゴンドラリフトでも片道10分かかる距離を、あの猛吹雪の中、しかも死体を抱えて登るとなると最早自殺行為ですらないからねぇ。
 じゃぁ死体をあそこまで損壊させたのは、それをごまかすためだって言いたいわけ?」

オモヒト コウ
「死体をクーラーボックスに詰めるために蹲るような姿勢を取らせていたのだとしたら、死後硬直で不自然な姿勢のままになるからな。それをごまかすために全身の骨を砕いたと考えれば辻褄は合う。
 全身を滅多刺しにしたのは死斑を隠すためのカモフラージュと考えるのが妥当だろう」

タカナシ ユメミ
「じゃあ犯人は23時に本館に居た人間ってことになるのね! 流石お兄ちゃん!
 その辺のアリバイはあたしが裁判の場で証言してあげるからね♪」

ノノハラ レイ
「小鳥遊さんは解るんだ? 23時以降誰がどこにいたのかを」

タカナシ ユメミ
「……女装してる奴なんかに教えることなんて一つもないもん」

オモヒト コウ
「おい、夢見」

ノノハラ レイ
「ま、裁判での証言とやらに期待することにするよ」


コトダマGET!
主人公の証言:死体発見前につけられたシュプールは最短最速を目指したようなコーナリングで、5分足らずで別館から本館へ移動できそうだ。


581 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/12(月) 02:15:55.87 ID:nMvSO+or0


―キーン、コーン、カーン、コーン



モノクマ
「そろそろいいかな? もう限界だから、もういいよね?
 ってなわけで、捜査時間しゅーりょー!オマエラは至急、別館一階のエレベーターホールにしゅーごー!
 うぷぷ。ワックワクドッキドキの、ハートフルでスペクタクルな学級裁判の始まりだよ!」



 これで捜査は終了、か。まぁ、大方の証拠品はそろったわけだし。
 後は犯人の立ち回り次第、ってところかな。



オモヒト コウ
「おい、伊織。起きろ、裁判が始まるぞ」


ナナミヤ イオリ
「うーん、うー……ん、っは! 何か破廉恥なものを見た記憶が!」


ノノハラ レイ
「片隅に追いやって消してしまえばいいんだ。思い出そうとすればまた気絶するだろうから」


ナナミヤ イオリ
「……そうですね、そうします。……その、起こしてくれたのは嬉しいからそろそろ離れて欲しいのだけど」


オモヒト コウ
「おっと、悪い」


タカナシ ユメミ
「羨ましい……っ!」


オモヒト コウ
「何か言ったか?」


タカナシ ユメミ
「ううん、何も言ってないよ、お兄ちゃん♪」


ノノハラ レイ
「この手のひらの返しっぷりよ」


タカナシ ユメミ
「何か言った?」


ノノハラ レイ
「別に? 珍しいことじゃないことを言っただけだよ。さ、時間がかかるんだから、さっさとゴンドラリフトに乗ろうぜ」



 再びゴンドラリフトに乗って、別館へ向かった。


582 :♪New Classmate of the Dead ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/12(月) 02:25:53.22 ID:nMvSO+or0



 別館のエレベーターホールに全員が集合している。
 犯人はこの中にいる。その緊張感からか、空気がひりついているのが分かった。



モノクマ
「うぷぷ。役者もそろったところで、学級裁判場へ13名様ごあんなーい!」



 モノクマが楽し気に腕を振り上げると、エレベーターのドアがあき、さらに一基のエレベーターがせりあがって、その下のエレベーターがその姿を現した。



ノノハラ レイ
「こんな仕掛けがあったなんてね。本館のあれは何だったんだ」


モノクマ
「あれ? ただのパフォーマンスだよ! 前回は派手目にいったから今回は抑えてみたんだ!
 さあ、時間は有限だ! 待っちゃくれないぞ! 早く乗った乗った!」



 モノクマに促されるまま、全員がエレベーターに乗っていく。
 ――流石に13人も乗るとなるとかなり窮屈だ。
 そしてエレベーターは下降を始める。深い深い、あの忌まわしい学級裁判場へボク等を誘う為に。


583 :♪New Classmate of the Dead ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/12(月) 02:29:29.93 ID:nMvSO+or0



ノノハラ レイ
「……ねぇ、綾瀬。真実と嘘、どっちが正しいと思う?」


コウモト アヤセ
「それは、当然真実でしょ?嘘をつくのはいけないことなんだから」


ノノハラ レイ
「じゃぁさ、皆が傷つく残酷な真実と、誰も傷つかない優しい嘘、なら?」


コウモト アヤセ
「わたしはそれでも真実のほうがいいと思う。嘘はいつかばれる時が来るし、現実から目を背けたりしたら駄目だと思うから」


ノノハラ レイ
「そう、だよね。うん。ありがと。これで僕のやるべきことは決まったよ」


コウモト アヤセ
「どういたしまして……?」



 答えはもう出てる。それが正しいであろうことも予想がつく。
 頭では理解していても、心の底ではその答えを否定したいと思っているのは、認めたくないから。認めてしまえば、そこには希望なんてカケラもありはしないから。
 明らかになるのは、考えうるどんな可能性よりも無慈悲で理不尽で不条理で冷徹で冷酷で残酷で非情で無情な現実なのだから。



 さぁ、始めようか。苦し紛れの言訳。不条理な言いがかり。理不尽な裏切り。
残酷な真実。無慈悲な判決。
 冷酷無情な、学級裁判。



584 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/10/12(月) 02:41:58.64 ID:nMvSO+or0


――ということで捜査パート終了となりました。いよいよ学級裁判の始まりです。


――今回も今までで出ている情報でクロを特定することが可能となっております。


――答えが分かった方はクロの名前と証拠品となるコトダマをワタクシのTwitterのDMに送ってくださいませ。


――正解者の皆様にはささやかながらプレゼントをお送りいたしたいと思います。


――締め切りは来月中旬、学級裁判開始までとさせていただきますので、皆様のご応募、お待ちしております。


――それでは、よろしくお願いいたします。


――おやすみなさい。


585 :♪私と僕の学級裁判 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 19:31:34.92 ID:Xz0HGEmy0



  何故朝倉巴の遺体は死後も痛めつけられなければならなかったのか?
  混迷の裁判の中、明らかになる被害者の死亡時の全員のアリバイ。
  この不可能犯罪を可能にした犯人は誰なのか?
  朝倉巴を死に追いやったクロを突き止める学級裁判の行く末とは……?


586 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 19:32:15.29 ID:Xz0HGEmy0



   学 級 裁 判

    開 廷 !


587 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 19:34:04.51 ID:Xz0HGEmy0



 エレベーターが止まり、扉が開く。その先の光景は見慣れた忌々しい裁判所。
 咲夜さんを殺した誰かさんの遺影は四枚の桜の花弁で象られたバツ印で顔を潰されている。
 朝倉さんの遺影は何の皮肉か、例の剣をバツ印に見立て、刀身の長さも相まって首に刃を突き付けられているような形になっていた。
 そしてそれぞれが自分の席に就く。ボクの真正面に公がいて、後ろにはモノクマ。正直気が滅入る配置だけど、泣き言は置いておくとしよう。



モノクマ
「まずは、学級裁判の簡単な説明をしましょう。学級裁判では誰がクロかを議論し、その結果はオマエラの投票により決定されます。
 正しいクロを指摘できればクロだけがおしおきされますが……。
 もし間違った人物をクロとした場合は、クロ以外の全員がおしおきされ、みんなを欺いたクロだけが晴れてこのホテルから脱出する権利が与えられます!」



 聞き飽きたテンプレなモノクマのセリフを皮切りに、忌々しい学級裁判が再び幕を開ける。



588 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 19:35:30.31 ID:Xz0HGEmy0



ノノハラ レイ
「あ、ちょっといい? 議論始める前にさ、裁判長に聞いておきたいことがあるんだよね」



 まずはボクが口火を切る。皆してこっち睨んでくるけど、今回ばかりは許してほしいな。



モノクマ
「にゃぽ?」



 モノクマもキョトンとしないでよ。進行が滞るじゃない。
 まぁ、いい。さっさと話してしまおう。余計なことを考えるのは時間の無駄だ。



589 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 19:37:19.86 ID:Xz0HGEmy0



ノノハラ レイ
「自殺だった場合は被害者に投票すればいいのはなんとなく想像がつくけどさ、病死や事故死だった場合はどうするの?
 自己責任ってことでその人自身がクロ? それとも原因を作った人間がクロにされるの?」


モノクマ
「……イヤなところ聞いてくるなぁキミも」


オモヒト コウ
「その質問に何の意味がある?」


ノノハラ レイ
「後で揉めたくないから言質取りたいだけだよ。で、どうなのさモノクマ」


モノクマ
「ではお答えしましょう。結論から言うと、クロの定義は『コロシアイ修学旅行の参加者の中で、被害者を直接死に至らしめた者』としています。
 なので例えばオマエラの中に末期がん患者がいて、コロシアイ修学旅行期間中に死んでしまった場合は、クロがいないことになるので学級裁判自体起きません。
 傘を貸した相手が不運にも階段から転がり落ちて、そのはずみで傘が喉に刺さって死んでしまった場合、傘を貸さなければ相手は死ななかったかもしれませんが、直接転ばせたわけではないので、これもクロにはなりません。
 ですが、転んだ原因が階段に落ちていたバナナの皮を踏んだことだった場合、バナナの皮をその場所に置いた者は、殺意があろうとなかろうと、問答無用でクロにいたしますのでくれぐれもご注意ください!」


ノノハラ レイ
「――ふぅん。つまり学級裁判では過失致死も未必の故意も殺人と同義で、判決は無罪放免か情状酌量の余地なく死刑のどちらかっていう認識でいいんだね?」


モノクマ
「はい、その通りでございます」


590 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 19:38:24.22 ID:Xz0HGEmy0


ノノハラ レイ
「じゃぁ物は次いでなんだけどさ、死体発見アナウンスは三人が死体を発見した時にされるんだよね? その三人にクロは含まれるの?」


マスタ イサム
「いい加減にしろよ。そんな質問に何の意味があるっていうんだ?」


ノノハラ レイ
「いやだなぁ、ルールはちゃんと詰めておかないと。ゲームマスターとプレイヤーのルールの認識の齟齬なんて一番やっちゃいけないやつなんだからさ。
 特にこういう命がかかってる場面だと、それこそ致命傷になりかねないでしょ?」


マスタ イサム
「……そうかよ」


ノノハラ レイ
「で、どうなのモノクマ? 含むの? 含まないの?」


モノクマ
「随分と意地の悪い質問をしてくる生徒だこと……。ま、お答えしましょう。結論から言えば含みません。
 ただし、状況に応じてアナウンスのタイミングをずらす等フレキシブルに対応させていただく場合がございます、とだけ言っておくよ。ボクから答えられるのはここまでだからね!」


591 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 20:03:27.61 ID:Xz0HGEmy0



ノノハラ レイ
「そ、わかったよ。説明ご苦労様。じゃ質問終わり。始めようか。まず朝倉さんの――」


サクラノミヤ アリス
「ちょっと待ちなさいよ。なに勝手に話進めてるわけ?」


ノノハラ レイ
「何か言いたいことでもあるのかい?」


サクラノミヤ アリス
「現状最も疑わしいアンタが議長面すんなって言ってるのよ」


ノノハラ レイ
「疑うには根拠に足りないと思うけど……、まぁいいや。ユーミアさん、取り敢えず検死の結果から聞かせてくれる?」


サクラノミヤ アリス
「ちょっと!」


ユーミア
「落ち着いてください、議論が進みませんから。……結論から申し上げますと、死亡時刻は昨夜の23時から25時の間と考えられます。
 根拠としては、顎に見られた死後硬直がつま先まで達していなかったこと、体内の血液が完全に凝固していることから、8時間以上12時間未満となります。
 また、全身の刺し傷と骨折は死後につけられたもので間違いないでしょう。それらしい腫れも見つからなかったので」


オモヒト コウ
「死因は解らずじまいってことか?」


ユーミア
「残念ながら……。損壊が激しく特定には至りませんでした。解剖ができれば話は別だったのですが……。
 生憎そこまで法医学の知識を持ち合わせてはいなかったのもので……」


マスタ イサム
「そう、気に病むな。お前は充分に役に立ってるよ」


ユーミア
「マスター……!」


592 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 20:49:11.65 ID:Xz0HGEmy0


ウメゾノ ミノル
「茶番はその辺にしておいて、だ。要するに被害者はゴンドラリフトが動いていない時間帯に殺されたってことじゃないか。
 なら、現場は本館だ。殺した後、今朝別館へ死体を運んで一連の工作を行ったんだよ」


サクラノミヤ アリス
「本気で言ってるの? ただでさえ死体をあれだけ甚振るなんてリスクの高いことするのに、それに重ねて死体を運んだって?」


ウメゾノ ミノル
「実際そうとしか考えられないじゃないか。ゴンドラリフトの稼働時間を考えれば23時には被害者は本館に居た筈だもの。別館に寝泊まりする場所なんて無いんだから」


サクラノミヤ アリス
「馬鹿ね。朝に死体を運んでるところを見られたらそれでおしまいじゃない」


オモヒト コウ
「……死亡推定時刻にも個人差はあるだろう。もっと前に本館で殺して、22時50分にゴンドラで死体を別館の入り口近くまで運び、スキーで滑り降って何食わぬ顔で本館に戻ったとも考えられる。
 翌朝急いで死体を磔にすれば、あたかも別館で事件があったかのように見せかけることができ、23時以降に本館に居た人間にアリバイができるって寸法だ。
 あそこまで死体を痛めつけたのは、その痕跡を隠すため。死斑や死後硬直による不自然な姿勢を誤魔化すための偽装工作だったんだ」


サクラノミヤ エリス
「でも、そこまでやっておきながら、結局は犯行現場を誰かに見つかってしまったらおしまいですよね? アリバイ工作も何も無いんじゃないですか?」


マスタ イサム
「絶対に見つからない自信があったんじゃないか? 22時50分となれば消灯時間だ。わざわざ寒い外に出ようとする奴はいないだろう。
 同じく、朝一で別館に行けば誰かに見られる可能性は限りなく低い。賭けに出るとしても悪くはないと思うぞ」


593 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 21:08:46.56 ID:Xz0HGEmy0



ナナミヤ イオリ
「正直、どこで殺したかなんてどうでもいいと思うのですが。そんな時間帯ならクロであろうとなかろうと“自分の部屋に居た”と主張するだけでは?」


タカナシ ユメミ
「いや、大事でしょ。ここでわざわざアリバイを主張するような証拠を残した人間がいるかいないかで大きく変わるんだから」


ナナ
「きっとお風呂で殺したのよ。キレイにするのが簡単だから」


ノノ
「返り血が飛び散っても洗い流せちゃうもんね」


ノノハラ ナギサ
「……物騒な言葉が聞こえたような気がするけど、気のせいだよね。でも、やっぱり事件は別館で起きたんだと思う」


ノノハラ レイ
「困ったね。初っ端から意見が真っ二つだ」


コウモト アヤセ
「澪、そのセリフは――」


594 :ファンサービスを受け取れ! ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 21:14:37.68 ID:Xz0HGEmy0



モノクマ
「かっとビングだ!」


595 :♪モノクマ先生の課外授業 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 21:22:06.60 ID:Xz0HGEmy0



モノクマ
「いきなり“コイツ”の出番とはね。よもやよもやだ!」


コウモト アヤセ
「だから言ったのに」


ノノハラ レイ
「ま、いいじゃないの、初手がこれっていうのも。こっちとしても流れを掴んでおいた方がいいし」


モノクマ
「少年少女諸君! 思うが儘に意見をぶつけ合うがいい!」




       意  見  対  立  



596 :♪議論SCRUM ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 22:12:34.74 ID:Xz0HGEmy0


             犯行現場は何処か?


             本館だ!/別館だ!


            ―議論スクラム開始―



ウメゾノ ミノル
「常識的に考えなって。事件当時朝倉さんが別館にいる【理由】がないじゃないか」


    /ノノハラ レイ
    /「それって逆に言えば、【理由】があれば朝倉さんが別館に居てもおかしくないってことでしょ?」


オモヒト コウ
「本館に居たと考えるのが普通だろ。【痕跡】でもあれば話は別だがな」


    /ノノハラ ナギサ
    /「それらしい【痕跡】なら、お兄ちゃんが見つけてくれたもん」


タカナシ ユメミ
「事件が本館で起きてないと【アリバイ】が成立しなくなるじゃない!」


    /ナナミヤ イオリ
    /「そもそもその時間帯に【アリバイ】があったほうが逆に不自然な気がしますが?」


マスタ イサム
「仮に現場が別館だったとしたら、【犯人】も現場に居たってことになるよな?」


    /ナナ・ノノ
    /「「その時間に絶対【犯人】がいなきゃいけないって理由はないよ?」」


ユーミア
「ゴンドラリフトの稼働時間がある以上、【移動手段】は限られているのでは?」


    /コウモト アヤセ
    /「リフト以外の【移動手段】があるなら、十分に可能でしょ?」


ウメゾノ ミノル
「犯人は【焼却炉】を使っているんだ。別館で殺したのなら何を燃やした?」


    /サクラノミヤ エリス
    /「別の証拠品を【焼却炉】で燃やしたかも知れないじゃないですか」


オモヒト コウ
「別館で殺されたって言う【決定的な証拠】がどこにあるっていうんだ?」


    /サクラノミヤ アリス
    /「【決定的な証拠】――とは違うけど、怪しい奴からの証言ならあるんじゃない?」


597 :全論破 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 22:16:55.61 ID:Xz0HGEmy0



「これがボク等の答えだ!」
「これが私たちの答えだ!」
「これが私達の答えです!」
「これがナナの答えよ!」
「これがノノの答えだよ!」
「これがわたし達の答えよ!」
「これが私たちの答えです!」
「これがあたし達の答えよ!」

598 :♪学級裁判復活編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 22:35:25.49 ID:Xz0HGEmy0



ノノハラ レイ
「いい加減目覚めなよ。物証もそれなりにそろっている以上、現場は別館で間違いないんだって」


ウメゾノ ミノル
「そうは言ってもだね、って言うか、それを言っちゃあ君が――」


サクラノミヤ アリス
「さっさと白状しちゃいなさいよ、野々原澪。聞けば、どう言う訳かゴンドラリフトが動く前から別館に居たらしいじゃない」


コウモト アヤセ
「……それはそう、だけど」


ユーミア
「ユーミア達は稼働開始時間である6時丁度にゴンドラリフトに乗りました。それよりも前に別館に居るには夜中に徒歩で登るか――」


サクラノミヤ アリス
「最初から別館に居た。被害者もね。どう? 何か反論があるなら言ってみたら?


599 :♪学級裁判宇宙編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 22:43:30.07 ID:Xz0HGEmy0



ノノハラ レイ
「ないよ。その通りだ。ボクは昨晩から今朝にかけてずっと別館に居たからね」


オモヒト コウ
「おい!」


サクラノミヤ アリス
「あっそ。じゃ、あんたがクロってことでいいのね?」


ノノハラ レイ
「そんなわけないじゃん。第一、ボクは男なんだから女湯には入れないんだよ?
 死体が発見された非常事態ってことで入れただけであって」


サクラノミヤ アリス
「じゃあどうして一晩中別館に居たわけ?」


ノノハラ レイ
「……態々話すほどの事でもないと思うから言わないし、言えないんだ。こればかりは。ボクの口からは、ね」


コウモト アヤセ
「ちょっと、澪?!」


ノノハラ レイ
「それにさ、ほら。ボクが今更何を言おうが、どうせ信じてくれないでしょ、キミ等。
 そういう無駄はさ、極力省かないと。ボクのキャパ的にもキツいから」


サクラノミヤ アリス
「黙秘ってワケ? それ、自分で自分の首絞めてるって解ってる?」


ノノハラ レイ
「好きなだけ言えばいい。ボクは、嘘は吐かないし約束も守る男だからね」



600 :♪学級裁判宇宙編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 22:52:09.91 ID:Xz0HGEmy0

―――



 どうしてこんなときに黙秘権なんて使うのよ澪ったら……。
 ――待って。もし澪の言うことが本当なら。
 鍵は他の誰かが持っている。その誰かから口を割らせろって事ね。
 ちょっと疑問に思っていたことが、一つだけある。
 それは――



 河本綾瀬に対する反応

 ❘>野々原澪に対する反応

 朝倉巴に対する反応



 これよ!


601 :♪学級裁判宇宙編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 22:53:53.65 ID:Xz0HGEmy0



コウモト アヤセ
「……ねぇ、澪以外の男子に聞きたいことがあるんだけど。何か隠してない?」


ウメゾノ ミノル
「何の話かな。脈絡って知らないの?」


コウモト アヤセ
「梅園君も主人君も、しきりに現場は本館だって言ってた。増田君も別館が殺人現場だって意見には反対してた」


ウメゾノ ミノル
「そりゃ確かにそうだけどさ、さっき言った通りあれは――」


コウモト アヤセ
「その推理を信じるにはあまりにも根拠が薄い。本当は別の理由があったんじゃない? 殺人現場が本館であって欲しい理由が」


オモヒト コウ
「――何だ。言ってみろ」


コウモト アヤセ
「結論から言うわね。澪を含めたあなた達四人は、昨日の夜からずっと別館に居た。具体的に言えば、麻雀をやっていた。違う?」


オモヒト コウ
「俺たち四人が揃いも揃って別館で夜通し麻雀、か。面白い考えだが、それこそ根拠が薄いぞ。
 確かに雀卓を使用した形跡はあるだろう。だがだからと言ってどうしてそれがそんな推理に行きつくんだ?
 時間ギリギリまでやって、ゴンドラリフトで帰った可能性だって十分あるだろう?」


コウモト アヤセ
「今日の澪への反応」


オモヒト コウ
「――!」


コウモト アヤセ
「女子のみんなは澪の格好について言及してきたのに、男子はみんな澪の格好について触れもしなかった。
 “何なんだそのふざけた格好は”って、普通は言うんじゃない? 言わなかったのは、事情を知っていたから。違う?」


602 :♪学級裁判宇宙編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 23:09:39.60 ID:Xz0HGEmy0



マスタ イサム
「……そこまで言われたんなら仕方ない、か」


ウメゾノ ミノル
「おい、ちょっと!」


オモヒト コウ
「しこたま笑った後だったからな。そこまで気が回らなかったってのもある。徹夜明けだしな。
 ――それに、思いたくなかったんだ。俺達がのうのうと遊んでる傍らで、誰かが朝倉を殺しただなんて」


サクラノミヤ アリス
「……呆れた。まさか自分の命がかかってるのに、律義に約束守ろうとしたの?」


ノノハラ レイ
「今日一日中この格好でいる、その事情を口外しない。それが最後の一局で大負けしたボクの罰ゲームだからね。粛々と受けただけだよ。
 それに、友達を売るような真似したくなかったし」


オモヒト コウ
「だからってお前なぁ」


サクラノミヤ アリス
「でも同じね。容疑者が増えただけで。犯人はあんた達の中の誰かでしょ」


ウメゾノ ミノル
「忘れたのか? 大前提として、男は女湯に入れない。その状態でどうやって被害者の死体を女湯の壁に磔に出来るんだよ」


マスタ イサム
「それに、俺達には全員アリバイがある。昨日の23時頃から今日の6時少し前までずっと麻雀をやっていたのは事実なんだからな」


オモヒト コウ
「麻雀は基本的に四人でやるゲームだ。対戦時間も長い。小休憩もあったが、基本的に誰もゲームコーナーから出なかったな」


ウメゾノ ミノル
「で、6時丁度にゴンドラに乗って本館へ戻ったんだ。朝風呂に入りたいって言った野々原君を置いていってね」


ノノハラ レイ
「だから、ボク等四人には完璧なアリバイがある。
 ――これじゃ誰も朝倉さんを殺せない。困ったね?」


603 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/11/15(日) 23:20:03.17 ID:Xz0HGEmy0


   学 級 裁 判


     中断



604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/16(月) 23:03:03.75 ID:63pvuc400
待ってました!期待してます
605 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/13(日) 22:35:10.70 ID:vCkDR9zS0


   学 級 裁 判


     再 開



606 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/13(日) 22:38:05.30 ID:vCkDR9zS0



ウメゾノ ミノル
「じゃぁやっぱさ、事件は本館で起きたんだって。それならこの状況に説明がつく。な?」


ノノハラ レイ
「残念ながら、それはないね。事件は別館で起きた。何故なら、被害者朝倉巴自身が、事件当夜明らかに別館に居たんだからね」


オモヒト コウ
「痕跡があるとか言ってたな、そう言えば。なんなんだよ、それは」



 巴ちゃんが別館に居た明確な痕跡……、それはこの証拠品で間違いない。



|脱衣所のゴミ箱>



コウモト アヤセ
「これよ!」


607 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/13(日) 22:41:04.56 ID:vCkDR9zS0


コウモト アヤセ
「女湯の脱衣所に、巴ちゃんのカバンが捨てられてたの。ゴミ箱の中にね。
 本館で巴ちゃんを殺したとなると、カバンも一緒に運んだことになるでしょ? なんで、って話にならない?」


オモヒト コウ
「一理ある、が、こうは考えられないか? カバンは最初から別館に置きっぱなしにしてあった」


マスタ イサム
「……いや、それはないな。あいつは、あのカバンを肌身離さず持ち歩いていた。別館に置きっぱなしにしておくなんて考えられない」


ノノハラ レイ
「まぁ、中身を見ればそれも妥当と言わざるを得ないよね」


マスタ イサム
「中身?」


ノノハラ レイ
「ちょっとショッキングな内容だからね、ワンクッション入れておこうかな。
 増田クンさ、最近爪切った?」


マスタ イサム
「爪? 切ったには切ったが……、二日前の話だぞ」


ノノハラ レイ
「誰かに切ってもらったりしてない? 朝倉さんに」


マスタ イサム
「……何でお前がそのことを知ってるんだよ」


ノノハラ レイ
「うん、じゃ確定だわ。朝倉さんがその爪どう処分したか、知らないでしょ」


マスタ イサム
「何が言いたい」


ノノハラ レイ
「朝倉さんのカバンの中には色々なものがあってね」


コウモト アヤセ
「……その中の一つに、こんなものがあったの」



|小瓶>



608 :♪学級裁判黎明編 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/12/13(日) 22:42:21.49 ID:vCkDR9zS0



オモヒト コウ
「小瓶? 中に何が――、爪、か?」


ノノハラ レイ
「大当たり。大きさや厚さ的に増田クンのかと思ってたんだけど、ドンピシャだったね」


ナナミヤ イオリ
「他人の爪を? 持ち歩いていた? ごめんなさいちょっと言っている意味がよく解らないというか頭が理解することを拒んでいるというか――」


ナナ
「ばっちいわね」


ノノ
「えんがちょー」


マスタ イサム
「俺の、爪を、巴が? 何をしているんだ? あいつは一体何を――?」


ノノハラ レイ
「これくらいは序の口だよ。増田クン、映画鑑賞会で飲んだプァンタのフレーバー当ててみせようか? すももでしょ」


マスタ イサム
「何でそれを――」


ノノハラ レイ
「朝倉さんのカバンの中にあったんだよ、空のボトルが。ついでに増田クンのサイン付きの紙コップも。映画鑑賞会の時のあれね」


マスタ イサム
「……確かに、俺の字、だ、な……」


オモヒト コウ
「おいおい、何がどうなってるんだ? どうして朝倉が増田の持ち物を持ってるんだ?」


ノノハラ レイ
「止めだ。コレ」



|盗聴器>



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