敏恵「今度こそ、ストライクウィッチーズ!」

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122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 04:58:15.56 ID:UJAmlFUS0
 
小園「立派に拵えてあるから今度は部屋にでも飾っておくといい。恩賜の宝刀を二度もネウロイに食わせたとなればいよいよ恥晒しだ」

敏恵「あ、まさか御上様にバレてる…?」ギク

小園「口外できる訳ないだろ、預けた人間にも言っていない。…鍛冶師と刀工には銘を読まれているだろうが」

敏恵「ぅ……飯綱巫女の祟りがあるかも」

小園「阿呆。そんなもの迷信だ」

敏恵(だ、大丈夫かな?)ゴクリ


小園「まあ綺麗に拵えてやったんだ、巫女の使い魔とやらも精々安らかだろう」フッ

敏恵「ごめんなさい御飯綱様、後で“ポンポンするやつ”沢山やってあげますから…」ナデナデ

小園「やめろ阿呆」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 05:04:08.63 ID:UJAmlFUS0
 
小園「……さて、ここでの役は終えた。私ほもう発つぞ」

敏恵「へ? なんで、園さん居てくれないんですか?」ポカン

小園「ああ、それはもう私の領分ではない。次の予定もあるんでな」

敏恵「えぇ〜〜!? 冷たいっ!」

小園「ふん、甘ったれが。さっさと自立しろ」クル

敏恵「むぅ〜…」

小園「……。気張れ工藤」

敏恵「!」


小園「お前ならやれる。…やってみせろ」スタスタ



敏恵「……はいっ! あたし頑張りますからー!! ありがとう園さーん!」
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 06:13:59.08 ID:UJAmlFUS0
 
[ざっくり!解説メモ]


 扶桑刀“飯綱権現”

5年前のカールスラント撤退戦下の働きによって敏恵に与えられた恩賜の刀。中世前期の戦巫女“飯綱使い”由来の一振りらしい。
拵もせず独自で補強した白鞘のまま愛用していたが、特異型某ネウロイとの決戦で切っ先の半分は“取り砕かれ”てしまった。(前作参照)

小園の伝手によって残った刀身を小太刀(と短刀の間くらい)として打ち直し、ついに拵も施された!


 刀にポンポンするやつ

打粉〈うちこ〉をかける作業のこと。手入れ手順のひとつ
下拭いを行った後に白くて丸いあれでポンポンしてから上拭い――……詳しくは割愛するのでググろう!

ただ、間違っても徒に“ポンポン”をすればそれで良い訳ではない。
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 06:27:05.39 ID:UJAmlFUS0
 
滑走路


小園「……坂本か」スタスタ


美緒「御疲れ様です」ペコ

小園「…ふん、私の去り際にお前とはな?」ジロ

美緒「中佐は別件で見送り出来ませんので、私が引き受けました」

小園「そんな物を頼んだ覚えはない」プイ

美緒「!」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 06:37:18.82 ID:UJAmlFUS0
 
小園「…察しているか知らんが、私意あって私はお前が特段に好かない。勝手無礼は承知しているからさっさと出て行く」

美緒「……」

小園「ではな」スタスタ




美緒「――…舞鶴にいた頃」

小園「…?」ピタ


美緒「北郷先生から聞いた事を憶えています。かつて共に飛び、我々後続にも倣って欲しいと仰っていた、扶桑ウィッチの話です」

小園「!」

美緒「私は先生が語ったその者を、今でも尊敬しております」


小園「……」


美緒「……」
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 06:47:41.00 ID:UJAmlFUS0
 
小園「…お前は船でも漕いでいたのか?」

美緒「は?」

小園「1人ではない、2人だ。そのウィッチを語るには外せない相棒がいるのだよ、阿呆め」

美緒「し、失礼しました…」

小園「ふん、だがしかしそんな世辞はどうでもいいさ。どう語った所でお前の言う“其奴”はもはや敬える人間でもない」

美緒「……」

小園「…………。工藤の面倒を見るなら、宜しく頼む」ボソ

美緒「はい」



小園「――…ぃゃ、やはり心配だな」クル

美緒「?」

小園「本当はお前にまで頼りたくなどないんだが……一応、必要十分な情報は与えておくか」
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/30(金) 19:43:09.11 ID:+gjqq0mjO
お疲れ様
メモあると分かりやすくていいねやっぱり
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 20:17:34.17 ID:UJAmlFUS0
 
[ざっくり!人物メモ]


 小園里葉

海軍大佐の元ウィッチ、25歳。工藤の新米時代からの上司
扶桑初の夜間戦闘脚“月光”シリーズの開発を推進、監督する人物。

現役最盛期の頃は使命感と自信に溢れる優秀なウィッチであったが、舞鶴在籍時に慕っていた北郷章香に左遷されたという誤解とその後扶桑海事変での北郷部隊の活躍によって、激しい挫折を感じると伴に歪んだ向上心を持ってしまう。
皮肉にも同じ階級まで上り詰めた後で北郷との誤解は解けたが、その成果の為に工藤敏恵を“魔導麻薬症”に貶める結果となった。(前作:幕間余話)

尊敬する先輩と関係修復はしているものの、世間で脚光を浴びたり天才・スーパーエースなどと呼称されるウィッチには嫉妬混じりの嫌悪感を示すもよう。
敏恵はそれを「園さんの英雄〈ヒーロー〉コンプレックス」と呼ぶが、超怒られるので本人には絶対言わない。
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 20:26:19.60 ID:UJAmlFUS0
 

芳佳&静夏の部屋


芳佳「わぁ、綺麗な色ですね!」ポワァァ

敏恵「んっふふ〜♪ そうでしょ?」

静夏「合口拵ですね? とても凝ったつくりで青漆〈せいしつ:緑色〉塗りが凄く素敵です」

敏恵「そうそう! 竹筒みたいで可愛いでしょ?」

芳佳「あ、私知ってます。“たけみつ”って言うんですよね?」

静夏「…いえ、それは全然違います(鈍らを模した拵なんて縁起悪過ぎる…)」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 20:34:09.69 ID:UJAmlFUS0
 
敏恵「えへへ、月光履いたあたしは差し詰め“かぐや姫”ってことかな? 園さん珍しく良いセンスじゃ〜ん」ニヤニヤ

静夏(“園さん”? )ピク



静夏(ぞの……? 月光…――)モヤモヤモヤ



静夏「――…!! まさか、海軍の小園里葉大佐ですか!?」ガガーン

敏恵「ふぃ!? な、何が…?」ビク

静夏「そ、それ…つい先ほど頂いた物だと仰っていましたが、小園大佐に!?」

敏恵「? うん、そうだけど」

芳佳「静夏ちゃん? その小園さんって人がどうかしたの?」ポァァ

静夏「どうかしたって、“救国世代”の大物ですよ!?」

芳佳「??」

静夏「扶桑海事変の本当北方防衛では凄くすごい活躍をして、この欧州でも恩賜の実績を残されている! そして扶桑初の夜間戦闘脚開発を推進し、実現した方ですよ!? 知らないんですか!?」アセアセ

芳佳「ぅ、うん。ごめんなさい」

敏恵「はは、それ園さんが聞いたら喜びそう(欧州のは殆どあたしだけど)」
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 20:39:00.69 ID:UJAmlFUS0
>>131誤字訂正

本当北方防衛 → 本島北方防衛
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 20:44:52.25 ID:UJAmlFUS0
 
静夏「こうしてはいられません! 父上の名を汚さぬよう、私も海軍ウィッチの端くれとして、恐れ多いですが御挨拶申し上げないと!」スクッ

敏恵「あ、でも園さんもう行っちゃったよー?」

静夏「な…!?」ズコ

芳佳「扶桑に戻ったんですか?」ポワァァ

敏恵「と思うけどー……わかんない。なんか用事があるみたいなこと言ってたかな」


静夏「――…ん、コホン! 仕方がありません。御挨拶はまた次にします //」イソイソ

敏恵「あたしから何か言っておこうか?」

静夏「い、いえそれは…。機会が有れば自分でやりますので」

敏恵「遠慮しなくてもいんだけどなぁ」
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/30(金) 20:47:20.26 ID:UJAmlFUS0
 
静夏「…それよりも工藤大尉、そろそろ向かわなくては坂本少佐の訓練に遅れそうです」

敏恵「ありゃ、もうそんななの! …芳佳ちゃん?」チラ

芳佳「ぁはい、そうですね。今日の治癒魔法はこのくらいで十分だと思います」シュルル

敏恵「ありがとね。んし…っとぉ!」ノソリ

芳佳「お腹の傷跡の方はまた夜に診ますね?」

敏恵「うん、よろしく! じゃあ行きたくないけど、行こうか服部ちゃん?」

静夏「了解であります」
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 05:17:41.19 ID:EDldUG2a0
 
[ざっくり!解説メモ]


 救国世代のウィッチ

扶桑海事変が起きた1937〜38年に最盛期を迎えたウィッチのこと。
当時の二十歳から下は十五歳、と結構に幅が広くてあやふやである。

実際には“軍神”北郷章香や“扶桑海の巴御前”こと穴拭智子など戦時を代表したヒーロー達を基準に、いつしか世間の女子学生達が括って呼んでいるだけのこと。
一応、該当するウィッチとして江藤敏子、黒江綾香、加藤武子、加東圭子など。
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 05:23:55.77 ID:EDldUG2a0
 
基地野外


美緒「さて、今日は工藤が新たに加わったという事でお前達の練度を測った訳だが――」

敏恵「……(まさか落水試験までさせられるとは…)」ビッショリ

美緒「先ず服部、満点はやれんが概ね良く出来ていたぞ? 任務参加へ移る前段階としてこれからは演習を詰めていく」

静夏「はいっ! 有難うございます!」キビッ

敏恵(おぉ服部ちゃん……もっさんに褒められてる! 海兵校の選良生って本当だったんだ)


美緒「…そして、工藤」チラ

敏恵「――! へぃ!?」ギクッ


美緒「お前も申し分ない。体力面にやや不安は残るが、基礎を含めた必要技能は高い水準で習得済みだな」

敏恵「(ぉ…? おおっ!!)ぇ、えっへへ〜、どうもー //」

静夏(流石、小園大佐の子飼いと噂だった“海軍の鎌鼬”…!)チラ
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 05:35:45.86 ID:EDldUG2a0
 
美緒「…少し魔法力を使ったが麻薬症〈ちょうし〉はどうだ? 飛べそうか?」

敏恵「はい! すこぶるオッケー、異常ないです!」ブイ

美緒「そうか」

敏恵(ふふん♪ これならあたしも直ぐ任務に出撃られるね! とりあえず夜間哨戒かな?)ワクワク

美緒「……。よし、では今日の残りは2人で模擬演習だ。明日からも後半は実践的な訓練を中心にやっていくぞ?」

敏恵「えっ」

静夏「了解!」

美緒「ではハンガーへ移る、駆け足!!」

静夏「はい!!」ダッ


敏恵「…? ちょ……??」

美緒「どうした大尉、後輩に遅れるな。さあ走れ」

敏恵「いやあのっ…ま、待ってくださいもっさん!?」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 05:48:36.80 ID:EDldUG2a0
 
美緒「何だ? やはり飛ぶのは無理か?」

敏恵「そんな事ないですし!! あたし訓練なんか必要ないですよッ!?」ズイ

美緒「……」

敏恵「さっきの試験でもう分かったんでしょ!? 素人じゃないんだし、501のウィッチとして働けますってば!」

美緒「…本当にそうか?」

敏恵「は!? な、なん…??」


美緒「お前を実戦に出して、本当に平気なんだな? 工藤大尉」

敏恵「ッ…!! ば、馬鹿にしてます? これでもあたし5年間単機で戦ってたし、最近はこの辺のネウロイも倒しましたけど…? #」

美緒「知っている」

敏恵「それじゃあなんで?? まさか部下の訓練相手させる為に呼んだんですか!?」

美緒「勿論違う。落ち着け」

敏恵「だったら坂本さんこそ落ち着いて考えてくださいよ!? あたしはウィッチとして、今度こそ、守るためにここへ来てるんです!! #」クワ


美緒「……」

敏恵「っ〜〜!」グヌヌー


美緒「…はぁ。よし分かった、そこまで言うなら示してみろ」
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/01(土) 22:23:18.65 ID:EDldUG2a0
 

ハンガー



――ガション


敏恵「へへ、久々の飛行だ!」フィィン ピョコ


静夏(あれが夜間特化型戦闘脚、月光…)チラ チラ

美緒「準備は良いかお前達?」

敏恵「この機銃って13ミリですよね? あたしの九十九式と十八試三号は?」

美緒「模擬弾すら無い物を使えるか。塗料弾丸の用意があるのはその模擬戦銃だけだ」

敏恵「そっか…了解。じゃあこれ、もう一丁使っちゃおう」ハシ

静夏「えっ! 片手で扱うつもりですか!?」

敏恵「? うん、あたし放出〈シールド〉の魔法制御は下手だけど循環〈こういうの〉は得意なんだよね」ジャッ

敏恵「身体強くしたり、反動制御なら負けないよー? 昼間でだってナイトウィッチのお姉さんは強いんだから!」ニヘヘ

静夏「は、はあ…?」
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 22:34:04.84 ID:EDldUG2a0
 
敏恵「…で、坂本さーん! 服部ちゃん倒したら認めてくれるんですよね?」

静夏「!? えぇっ……わ、私と工藤大尉で一騎打ちですか!?」ガビンッ

美緒「違う、そんな訳ない。服部はお前の味方だ」

敏恵「…? 味方って、じゃあ誰と模擬戦するの??」

美緒「待っていろ、お前を測るに相応しい相手がもう直ぐ来る」


――スタスタスタ


バルクホルン「すまない、待たせたか少佐?」

敏恵「…!」

静夏「!!?」


美緒「いや平気だ。急に呼んですまないな」

バルクホルン「私は構わないがミーナはぼやいていたぞ? また勝手に何か始めるのか、と」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 22:43:54.00 ID:EDldUG2a0
 
美緒「わっはっはっ! 施設予算を使い込んだ件ですっかり信用を失ってしまったな」

バルクホルン「…いや少佐、私も笑い事ではないと思う。大浴場は確かに有難いが――」

美緒「まあそれについては後で聞く。こちらの準備は出来ているからお前もストライカーを履いてくれ」

バルクホルン「ああ、まあ……そうだな(誤魔化された?)」


敏恵「あのー、もっさん? まさかあたしの相手は…」

美緒「うむ、そいつだ。手強いぞ?」

バルクホルン「ハイデマリー少佐から実力は聞いている。よろしく工藤大尉」トタ

敏恵「おぉー…501の戦闘隊長さんと模擬戦…!」

静夏(む、無茶だっ!! あのハルトマン中尉に次ぐ世界トップエースの一人ですよ!?)ゴクリ
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 22:56:51.09 ID:EDldUG2a0
 
バルクホルン「さてと…。ハルトマン以外とやるのは久々だな」フィィィン ピョコ


バルクホルン「――…ん? 私の機銃が一つ足りないようだが」

美緒「ああ、それはさっき“隣の奴”に取られたぞ?」

バルクホルン「なに?」チラ

敏恵「え?? …あ! これ戦闘隊長さんの分だったんですか!? 横にあったからつい…!」アタフタ

バルクホルン「……なるほどそうか。ナイトウィッチは重火力が好ましいからな、お前も両手持ちをするのか?」

敏恵「えぇと、まあ…はい。でもこれ返します、ごめんなさい」

美緒「いやそいつはくれてやれバルクホルン。ハンデも必要だ」

敏恵(…っ! は??)カチン

バルクホルン「いいだろう、私は構わない」

敏恵(な、なにくそぉ〜!? こうなったら絶対に勝ってやるっ!!)

美緒「よし、では始めるぞ? 両陣営出撃!」
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 23:02:23.64 ID:EDldUG2a0
 
――――
――




基地上空



――ブゥゥウンッ


敏恵「くっ…!! いまいち上手くいかない、もうずっと攻めてるのに…!」ダダダッ

静夏「工藤大尉、やはりバルクホルン隊長はわざと追われているのでは? 逃げに徹しられては普通に追い込むのは難しいかと思います!」゙

敏恵「違う! そんなのじゃなくてっ……出来る筈なの! あたしに任せて!!」

静夏「す、すみません…」






バルクホルン「――……少佐の言った通りだな。“ちぐはぐ”というか、確かに酷い」ブゥゥン

バルクホルン(だが実際それでも油断できない腕だ。…いったい“夜の女王”とやらはどれだけ高いレベルだったのか――)


美緒『大尉、聞こえるか?』ガザ


バルクホルン「…! ああ、聞こえてる。この調子なら向こうの弾切れまでやれるがどうする?」

美緒『いやもう十分だ。終わらせていい』

バルクホルン「そうか。……了解した」
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 23:12:26.49 ID:EDldUG2a0
 
――



静夏「――…進言します工藤大尉!! 二手になりましょう!」ブゥゥン

敏恵「えっ!? や、でも服部ちゃんは…!」

静夏「大尉達の戦いに私如きが出しゃばる気はありません! しかし囮くらいはやらせてください、出来ます!」

敏恵「……わ、分かった。気を遣わせてごめん!」

静夏「とんでもありません! 自分がこのまま追いますから、大尉は――」


敏恵「――…!? 服部ちゃん、マニューバッ!!」クワッ


静夏「ぇ? …えっ、戦闘隊長が消えた!?」




ダダダダンッ



静夏「!?」ベシャシャ

敏恵「服部ちゃ――」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『あかんっっ! 皆逃げぇ!!』

『菊井ぃいーーッ!!!』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



敏恵「――っ゛…!!」ゾクッ
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 23:24:12.89 ID:EDldUG2a0
 
静夏「な…?? これは!」



――ビュゥウォン


バルクホルン「すまないな軍曹」ブゥゥン


静夏「ぅ、後ろに!? そんな…! まさかマニューバ機動をしながら、狙い撃つなんて!?」

美緒『服部軍曹被弾確認。速やかに戻れ』ガザザ

静夏「っ……申し訳ありません大尉。離脱します…」ブゥゥン

敏恵「服部ちゃん…!」


バルクホルン「さて。そろそろこちらも攻めるぞ工藤大尉、覚悟はいいか?」


敏恵「くぅっ…! な、なにくそぉー!!」


――――
――
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 23:27:42.53 ID:EDldUG2a0
 

ハンガー


敏恵「…………」ベッチョリ

静夏「ぁ、あの工藤大尉…」


バルクホルン「――用事は済んだことだし、私はもう戻るぞ少佐」トタ

美緒「ああ、助かった。せっかくだから所見でも話してくれるか?」

バルクホルン「…いや、私から言うことは何もない」スタスタ


敏恵「……」
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 23:45:24.62 ID:EDldUG2a0
 
美緒「どうだ、気は済んだか?」

敏恵「納得いかない。さっきのは何ていうか、偶々調子が出せなかっただけだし」

美緒「……成る程、そう取るか」

敏恵「療養で離れてて、数カ月ぶりでいきなりだったからそれで。…あんまり思ったように出来なくて」

美緒「だから苛立つと?」

敏恵「それは……まあ、他にも色々…」モゴ

美緒(やれやれ、これは師弟揃いに嫌われてしまったか?)

敏恵「……」


美緒「服部」チラ

静夏「は、はい! 何でありましょうか!?」ビク

美緒「すまんが先に外せ。今日はもう休んでいい」

静夏「はあ…? はい、了解しました」ソソクサ
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 23:52:05.75 ID:EDldUG2a0
 
美緒「ふむ、まあしかしこういう結果だ工藤大尉。まだお前を出撃すわけにはいかない」

敏恵「でも…」

美緒「悔しいだろうが今直ぐは無理だ、許可できん。お前も自身が万全でない事は実感したんだろ?」スタスタ

敏恵「ぅ…」ギク

美緒「お前の言う通り、最終的には501の戦力として加わるさ。その為に中佐はお前を呼んだんだ――」ツン


美緒「…だが逸るな? 部隊の本格的な動きまではまだ時間がある。その間にお前は“お前”に追いつかねばならん」


敏恵「えっ、あたしが……あたしに??」

美緒「そうだ」

敏恵「そ、それってどういう…?」

美緒「具体的な話は短くないからまた今度だ。…取り敢えず、体中の塗料が乾ききる前に洗い流しておけ」

敏恵「……」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 23:55:36.65 ID:EDldUG2a0
一旦ここまで
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 22:44:16.70 ID:jIaeIlfOo
乙でしたー
更新頻度上がってうれしい
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/14(金) 06:43:16.60 ID:BKlv/Tcf0
ぼちぼち……ぼちぼち… φ(-×-;)
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/14(金) 06:46:30.98 ID:BKlv/Tcf0
 

廊下


敏恵「はぁもう、やるせない…」テクテク


敏恵(そりゃあ確かに負けは負けだし、いい所も全然なかった。ハンデまであって、2対1なのに――)

敏恵(よりにもよって“また”あたしは、あんなっ……あんなにあっさり!!)


敏恵「ッ……違う! あんなのじゃないんだ、あたしは! もっとこう…上手くやれるのに…」グヌ


敏恵「…………。はぁ…」

敏恵(こんなんじゃエステルちゃんに笑われちゃうな。明日もう一回頼み込んで、なんとか本領発揮しないと――)



『えー! じゃあそのネウロイをやっつけないとずっとコノ調子なのかー!?』



敏恵「…! ネウロイ?」ピク
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/14(金) 06:50:54.20 ID:BKlv/Tcf0
 
『やけに嫌そうだなエイラ、何か不満があるのか?』


敏恵(この部屋…? マリの執務室だったけど、今は501の隊長さんが使ってるのかな?)

敏恵(何の話してるんだろ? ちょっと気になる…)ソー




執務室


エイラ「不満っていうか、つまりソイツをワタシ達に“丸投げ”するってコトなんだろー?」

バルクホルン「夜間に出没しているという情報なんだから当然だろ。お前は今何を聞いていた?」

シャーリー「いや、まあ何となく意味はわかるけどさ。エイラ言い方がね…」チラ

ミーナ「うふふ、こっちを見なくても心配ないわよシャーリーさん?」ニコ

シャーリー「えぁ、はい。すみません」アハハ…

ハイデマリー「……」
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/14(金) 06:58:00.67 ID:BKlv/Tcf0
 
ミーナ「エイラさんの主張は理解してるわ。サーニャさんの負担を気遣ってくれているのよね?」

バルクホルン「…ああ、そういう意味だったのか。まったく相変わらずなんだな?」

エイラ「な、なンだよ大尉… //」タジ

ミーナ「確かに標的が決まっているならたとえ夜でも専門外の人員を割くわ。今までもそうだったわね?」

シャーリー「ですね」

ミーナ「だけど今回は貴方達だけで先ず対応してみて欲しいの。2人にハイデマリー少佐まで加われば相当な危険もない筈だし、今後の為に“夜間チーム”の運用目処は確かめないといけないわ」


ハイデマリー(ミーナ中佐はやっぱり、工藤さんの固有魔法について把握してる。きっとその為に――)モヤモヤ

ミーナ「だから今夜は3人揃って情報にあった空域を哨戒して頂戴。諸々を考慮して現場指揮は少佐に任せるから」

ハイデマリー「……」

ミーナ「頼むわねハイデマリーさん?」チラ

ハイデマリー「ぇ? ぁ、はい。…了解しました」コク

エイラ「んん…。しょうがナイなー」





廊下


敏恵「――ほうほう、今夜の哨戒でネウロイを…?(というかマリ起きてるし)」

敏恵(でもこれはちょっと、チャンスかも! いいこと聞いた!)


敏恵「…よし。となったら、どうにかしてあたしも出撃ないと!」トタタ
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/15(土) 01:44:56.31 ID:bUUD6w+7o
待ってた!
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/16(日) 11:04:42.32 ID:dxocCx4D0
 
―その夜―

ハンガー


ハイデマリー「……」ガション

エイラ「ちゃんと眠れたかサーニャ?」

サーニャ「うん、大丈夫。エイラも無理しないでね?」

エイラ「ワタシは平気だって!サーニャがいるのに調子悪くなんてならないさ」

サーニャ「…ハイデマリーさんも、よろしくお願いします」

ハイデマリー「ぁ、はい。こちらこそ」

サーニャ「ふふ…♪ サン・トロン基地コントロール、夜間発進路の確認をお願いします」

『了解! 滑走進路および上昇空域クリア、風は――』ガザ

エイラ(ネウロイ撃墜任務だっていうのにナンか、やけに上機嫌じゃないかサーニャ? …まさかハイデマリー少佐がいるからか!?)モヤモヤモヤ
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/16(日) 11:09:20.53 ID:dxocCx4D0
 
ハイデマリー(ミーナ中佐の仰った意味。これから敵地を攻める局面で“工藤さんの夜間視”に頼る戦略も想定しているという事…)

ハイデマリー(そして私が“その時”の指揮を執るかもしれない)



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

小園『今度こそあいつは己の意思で戦いに来た。…但しそれ故にどうにも危うい』

小園『…私が抱くその懸念を、君にも共有させておく』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



ハイデマリー「……」



ウィィ… ガゴォン


ハイデマリー「?」ピク


整備兵「13番、発進ユニットオーケー! ウェポン重いが下げ過ぎるなよ?」

ハイデマリー「…あの、すみません?」

整備兵「え? あっ失礼しました少佐殿、お邪魔でありましたか」

ハイデマリー「あ、ぃぇ! それはいいんですけど、どうして工藤大尉のユニットを…?」
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/16(日) 11:14:48.41 ID:dxocCx4D0
 
整備兵「はっ! これは訓練飛行用に点検と準備をしておくよう、坂本少佐の御指示との連絡を受けまして」

ハイデマリー「…こんな時間に、ですか??」

整備兵「明日の早朝にお使いになるそうで、弾薬装填も済ませて今のうちに出しておけと」

ハイデマリー「……。その連絡、誰から聞い――」


ガザザ

エイラ『アレ、いないぞ? …オーイ、ハイデマリー少佐! まだ発進してないのかー?』


ハイデマリー「!」

エイラ『どうしたんだ? ナンかトラブルかー?』

サーニャ『あの、大丈夫ですか…?』
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/16(日) 11:26:52.12 ID:dxocCx4D0
 
ハイデマリー「ぃ、いえすみません! 問題ありませんので、今から出ます…!」ガシャコ


ゴォォォ――

ブゥゥウン――…




整備兵「……よし。後は夜番に任せて、もう寝るか」


整備兵(しかしあの大尉殿にまたお会いするとは、俺も運が良いのか悪いのか……つい下心でこんな時間まで働いてしまった。明日早朝当番なのに)ムッツリ



――タッタッタッ


敏恵「お疲れ整備兵さん!」ポン

整備兵「ん? えっ…!」


敏恵「そい!」ダッ スポ
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/16(日) 11:35:21.80 ID:dxocCx4D0
 
整備兵「大尉殿!?」

敏恵「よし、今マリが出たばっかだからまだ発進路安全だよね」フィィン ピョコ

整備兵「…いやあの、ちょっと? 何をしてるんですか大尉??」

敏恵「ぇ? あ、あー……ごめんなさい。坂本さんの命令っていうの、実は嘘です」テキパキ

整備兵「は?」

敏恵「騙して本当すみません。でもあたし、どうしても行かなきゃいけないの!!」ジャギンッ

整備兵「……ぁいえ、はい。お気をつけて…」タジ


敏恵「うん、どうもありがとう」ジッ

整備兵(――! //)ドキィ



敏恵「〜うしっ! さあ行くよ月光、ネウロイを倒さなきゃ」


敏恵「…発進!!」


ガジャンッ


ブゥゥウウン――
 
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/14(月) 22:31:30.61 ID:hU78NFIy0
 

ベルギガ領上空


エイラ「取り敢えずライン川まで直行する感じなのか?」

ハイデマリー「はい、サン・トロン周辺の警戒は基地に任せて先ずは急ぎましょう。なるべく余力を保った状態で敵を探します」

サーニャ「了解」



「おぉーーい、待って〜〜!」



ハイデマリー「…!」

サーニャ「?」


――ブゥゥウン


敏恵「ふぃ〜よかった! 見失ったかと思った」

ハイデマリー「工藤さん!?」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/14(月) 22:35:15.39 ID:hU78NFIy0
 
エイラ「オイオイ、なんで大尉まで? 聞いてないぞー」

サーニャ「…えっと、管制に確認してみます。随行指示が出ていたのかも」ス

敏恵「あっ!! 駄目、待って!?」

サーニャ「ぇ?」

エイラ「なんだよ? 基地に連絡させると都合が悪いのかー?」

敏恵「その、それは〜…えぇー……なんというか、あのぉ…――」

ハイデマリー「…自己判断で出撃したんですね? 恐らくどこかで今夜の任務を知ったから」

サーニャ「それって、つまり…」

エイラ「まあ命令違反だな。工藤大尉はまだ待機指示だって中佐も言ってたぞ」

敏恵「ぅ…!!」ギク
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/14(月) 22:37:01.20 ID:hU78NFIy0
 
ハイデマリー「……」

敏恵「だ、大丈夫! 芳佳ちゃんのおかげで身体は平気だから、心配ないよ!?」

ハイデマリー「ですが…」


エイラ「――まあ、しょうがないな」ヤレヤレ

サーニャ「エイラ?」

エイラ「べつにイイんじゃないか? 戦力多いなら楽だし、クドー大尉は夜間専門のキャリアもあるから足手まといにはなんないだろ」

敏恵「お…! うんうん、その通り!」

エイラ「どうするハイデマリー少佐? 一応指揮官の判断に任せるけど、ワタシ達が一緒なら平気だと思うし、さっさと任務終わらせた方がイイんじゃないか?」

サーニャ(エイラってば、まさか引き返すのが面倒だとか思ってないよね…?)ジー
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/14(月) 22:39:22.56 ID:hU78NFIy0
 
ハイデマリー「…………分かりました。ではとにかく哨戒はこのまま、続けましょう」

敏恵「本当に!? やった!」


ハイデマリー(小園大佐やミーナ中佐達が危惧している工藤さんの“何か”…――)

敏恵「ありがとうマリ!」ニッ

ハイデマリー「は、はい(――こうなったらいっそ、直接確かめた方がいいのかもしれない。ただ闇雲な不安を思うよりは…)」
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/14(月) 22:43:46.20 ID:R1Cyu1aTo
来たっ!待ってたよ
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/14(月) 22:45:31.39 ID:hU78NFIy0
 
――――
――



敏恵「――じゃあ巣じゃなくて、ライン川の近くで何かが…?」

ハイデマリー「はい。506のウィトゲンシュタイン少佐が不審なネウロイの痕跡を確認しています」

ハイデマリー「…恐らくここ最近昼間に頻出していた飛行型らしき群はそのネウロイが要になっていると、ミーナ中佐はそう考えているようです」

敏恵「“らしき”って?」

エイラ「足の生えてるヤツがいたんだ。ワタシも昨日出撃して何体か見たぞ?」

敏恵「えっなにそれ、飛んでるのに脚付いてるの?」

サーニャ「……。つまり地上型のネウロイだったという事ですか?」

ハイデマリー「可能性はあると思います。実際に形だけでなく変質をも実現するネウロイがいる話は“聞いた”ことがあります」


敏恵(…マリが言ってるの、前に戦ったネウロイ・リーパーのことかな? やっぱり緘口令で――)



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ――ズブリッ

『ッごぎゅ!? ゥぅ゛…!!』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



敏恵「!?」ゾワッッ


敏恵「…? ……??」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/14(月) 22:51:38.41 ID:hU78NFIy0
 
エイラ「まーとにかく、ソイツをなんとかしないとダメなんだってコトらしい」

ハイデマリー「はい。セダン基地からの情報によると、ガリアでも国境対岸の森林倒木が北〈ベルギガ〉側を中心に発見されたそうです」

サーニャ「…地上型のネウロイが進行した跡ですよね?」

エイラ「ソー言われてみると確かに、この辺の沿岸も向こう側だけやけに荒れてたよなー? 侵略地だからそんなモンだと思ってたけど」

ハイデマリー「いえ、501の皆さんが来る最近までは繁茂したままでした。占領地内で最も外れの沿岸部は地上荒廃もまだ消極的な筈なんです」

エイラ「てことは中佐の読み通り、やっぱナンかいるのか? メンドクサイナー」

サーニャ「エイラ、大事なことだから」

エイラ「ウン、わかってるけどさァ。夜にコソコソ企むなんて手のかかる敵だよな〜マッタク」


敏恵「…………」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/14(月) 22:56:10.66 ID:hU78NFIy0
 
ハイデマリー「……工藤さん?」

敏恵「…! ん、なに?」

ハイデマリー「大丈夫ですか?」

敏恵「え? 何が?」

ハイデマリー「いえその、急に黙っていたので」

敏恵「ぁ…うん、ごめん。久しぶりだからちょっと緊張してきちゃって」

ハイデマリー「……」

敏恵「でも大丈夫、あたしが絶対そのネウロイやっつけるから。任せて」

ハイデマリー「ぃ、いえ。べつにそういう心配では…」

敏恵「……」

ハイデマリー「(工藤さん…?)ぁ、あの――」



ハイデマリー「!」フィン フィン

 
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/14(月) 23:04:52.76 ID:hU78NFIy0
 
サーニャ「…! 飛行体の反応です」フィィン

敏恵「!?」

エイラ「お、ホントにでた! ネウロイか?」

サーニャ「うん、周辺空域で他のフライトプランは特にないわ」

ハイデマリー「方向およそ1時。…距離から推測してほぼライン川の上空かその先ですから、間違いありません」

敏恵「マリ、上下はどっち!?」

ハイデマリー「ぇ…? あ、高度はかなり低い位置です。ただ――」

敏恵「下だね? ありがとう!!」バッ

ハイデマリー「あっ、駄目です工藤さん! 待ってください!?」


ブゥゥウンッ――



エイラ「…オイなんだよクドー大尉、突然はりきり出したぞ? 結構好戦的なヤツなんだな」

ハイデマリー「……ぃ、ぃぇ。“もう”そんな事ない筈ですが…」

エイラ「ヘ?」

サーニャ「――! この反応…!」フィィン

エイラ「ン?」

サーニャ「ハイデマリーさん、私達も」チラ

ハイデマリー「…はい、そうですね。直ぐ追いましょう!」


ブゥゥウン――



エイラ「あ、ナンだよオイ! 待ってくれよサーニャ〜!?」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 21:19:44.04 ID:uqGYSXL70
 

ベルギガ=カールスラント国境

ライン川上空



――ブゥウウン


敏恵「はぁ……ふぅ…。見えた、あれだ」~フワ






ネウロイ「……」ゴゥン ゴゥン






敏恵「結構遠いなぁ。これ以上行くと敵地侵入〈ごはっと〉か…」ジー

敏恵(でも超夜間視力は冴えてる。相変わらずはっきり見えるし、小さいけどコアも――)


敏恵「――…! ちょ、えっ!? なにあれ下に沢山いる…!!」
 
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 21:25:40.65 ID:uqGYSXL70
 

「「「…………」」」ゾロゾロゾロ


ネウロイ「…〜〜」ペカー


「ッ…!?」ズズズ


ネウロイ「〜〜〜〜」


「…ー! ~~!」フヨフヨ






敏恵「むぉ、おお…! 一個浮いた!? 昇ってる!」ガーンッ

敏恵(なるほど、ああやって“夜なべ”された兵隊達が日中に突破して来てたんだ)


敏恵「…よし! だったら先ずあいつのコアを撃ち抜けばいいよね!?」グィ

敏恵「この十八試三号機銃の特性30ミリ魔導徹甲弾なら届く。遠くてもこれ位なら、余裕で狙える!」ガジョンッ





ネウロイ「〜〜〜〜」





敏恵「…すぅ……はぁー…、すぅ……」ドキドキ
 
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 21:30:47.08 ID:uqGYSXL70
 


ネウロイ「〜〜〜〜」





敏恵「はぁ………すぅ、はぁ…。んっ…」ゴクリ

敏恵(…食らえネウロイ、あたしが絶対退治する!)グッ


敏恵(――今度こそ、先にッ…!!)ガチィ



ドォォウンッッ



ヒュゥゥゥンッ――



敏恵「…! 外れた!?」
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 21:38:20.99 ID:uqGYSXL70
 
敏恵「ぐっ……何やってんのあたし!! ちゃんと狙え!」ガチ


ドフッ ドォオンッ



ヒュゥ ヒュゥウウン――



敏恵「!!? …〜〜ッ!! く、くそ! なんで!? #」ドフドフドフドフッ






ネウロイ「〜〜――」スカ スカ

ネウロイ「…? ……!」


ネウロイ「ーー! 〜ー!」ゴゥン ゴウン

 
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 21:50:51.39 ID:uqGYSXL70
 

敏恵「こ、こっちに来る…! 気付かれた!?」ビク





ネウロイ「…ー〜〜」ゴゴォォ…





敏恵「ッ…!?」ゾワッ


敏恵「く、来るな!! このぉ!」ドフドフドフ

敏恵「中れっ…! あたれぇえッ!!」ドフドフドフドフ




ネウロイ「〜〜、ー…」スカ スカ スカ

 
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 21:58:09.46 ID:uqGYSXL70
 

敏恵「――ぅ…! た、弾切れ!?」カシュ カシュ


敏恵「ど…ぇ、えぇと……っ! 弾帯を――」アセアセ


〜ズルッ


敏恵「あっ!」


ヒュゥ〜〜……↓


敏恵「〜ッ゛……ぅぅ、くぅ…!!(き、九十九式機銃――)」アタフタ





ネウロイ「……。ーー!」ギラ



ビイィィーーッッ



敏恵「ひゃあっ!!?」バジュゥン


敏恵(ぶ、武器が…! ネウロイのビームが、あぁ…ぁたしの横を!?)ザワザワザワ
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 22:22:13.23 ID:uqGYSXL70
 

ネウロイ「……」ゴゴゴォ…




敏恵「――ッッ…!!!」ゾワワッ

敏恵「うっ…なんで、こんなに。あたし、こんな筈じゃ…!?」ワナワナ



『――…工藤さん!』ガザザ


ドォオンッ



ネウロイ「ッッ! …!?」バギィン




ハイデマリー「大丈夫ですか工藤さん!?」ブゥゥンッ

敏恵「……ま…、マリ…!」

エイラ「たくー、大尉が全速力で行くから追うの大変だったぞ? ていうかどういう状況だコレ?」ブゥゥン
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 22:33:28.24 ID:uqGYSXL70
 
サーニャ「前方、迫って来る未確認飛行型1体。他に複数の動体反応が対岸数キロ地点にいるわ」ブゥゥン

エイラ「そっちは地上型か? 川の向こうじゃ手が出せないな」

ハイデマリー「…ユーティライネン中尉は飛行型ネウロイを陽動、対岸の群から十分に孤立させて、サーニャ中尉の火力で動きを止めてください!」

サーニャ「了解。エイラ」コク

エイラ「オウ! そんじゃ、やるか〜」ブゥゥン



ハイデマリー「ふぅ…。突然先行して、どうかしたんで――」ス

ハイデマリー「!?」

敏恵「……ご、ごめんマリ。あたし…っ」ガクガク

ハイデマリー(装備が殆ど無くなって――…いやそれより、明らかに様子が変!)
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 22:43:17.30 ID:uqGYSXL70
 
ハイデマリー「…大丈夫ですよ工藤さん。無理はしないで、さがっていて下さい」

敏恵「!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『――大丈夫やで、いたっちゃん! 心配無用や』


『あかんっっ! 皆逃げぇ!!』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



敏恵「っ……だ、だめ。……駄目だょ、マリ…?」ハシ


ハイデマリー「ぇ?」

敏恵「だっ…“大丈夫”じゃない…。 あたしは、もぅ……逃げなくて平気なの…!」ワナワナ

ハイデマリー「ですが、あの――」

敏恵「だって、もう違うんだよ!? あたしはやれるんだから!! な、何度も何体もッ……憶えてるんだから!!」

ハイデマリー「…く、工藤さん?? いったい何の話を…?」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 22:48:44.65 ID:uqGYSXL70
 
敏恵「ぁ、そうだ! まだ奥の手が――」ゴソソ

敏恵「銃弾は終わっちゃったけど、この小太刀があるから!」

ハイデマリー「それは…! まさかまたネウロイに突き立てて魔法力を流す気ですか!?」


敏恵「これなら外すもんか……これならッ!!」ブゥゥンッ



ハイデマリー「待って、危険過ぎます! 今の工藤さんでは――」
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 22:55:36.31 ID:uqGYSXL70
 

――




ネウロイ「ーー!」ゴゥン ゴゥン


ビビィーーッ



エイラ「おっと! 危ないな」ヒョイ

エイラ「…そろそろイイんじゃないか? サーニャ〜!」

サーニャ『うん、離れてエイラ』ガザ



バシュシュゥウウゥウ――


ネウロイ「ーッ…ッッ゛…~!!」ドゴォォア



サーニャ『全弾命中。ネウロイが怯んだわ』

エイラ「でも意外と頑丈だな? コアは吹き飛ばなかったのか」

サーニャ『…私の残弾で残りの装甲を剥がしてみるから、エイラがコアを』

エイラ「エ? イイけど、失敗したらサーニャ危なくないか!?」

サーニャ『一発は残すから大丈夫。まだハイデマリーさん達がいるし、撃ったら直ぐ下がるわ』

エイラ「ン……分かった。じゃあ今のうちに――」


ハイデマリー『爆撃待って下さい!』ガザザ
 
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 22:57:09.26 ID:uqGYSXL70
 
エイラ「オ…? どうしたハイデマリー少佐?」

ハイデマリー『工藤大尉がその……っ…』

エイラ「??」

サーニャ『ハイデマリーさん?』

ハイデマリー『と、とにかく大尉がもう敵に向かってしまって…。私が止めるのでお二人は援護をお願いします!』


エイラ「……ナンダヨもー。やっぱり好戦的なんじゃないか、クドー大尉」ヤレヤレ

サーニャ『…でもエイラ、私達も言われた通り援護しなきゃ。もうネウロイが動き出すわ』
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 23:01:37.34 ID:uqGYSXL70
 
――



――ビュォオオォンッ


敏恵「この為に戻って来たんだ、やらなきゃ…!!」ビュォォ





ネウロイ「…!」

ネウロイ「〜ー」ゴゥン ゴゴォ…





敏恵「!?」ゾワ


敏恵(っ…恐い筈ない、もう昔の事だ! 今まで通りネウロイを倒すだけ!!)




ネウロイ「ーー!」ギラ


ビィーーシュゥウッッ



敏恵「――!! どぅぃ゛…!!!」パァアッ


ズズンッ


敏恵「ぐッ…!」
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 23:08:50.99 ID:uqGYSXL70
 
敏恵(ど、どうして…?? ビームが避けられない!?)~ヨロ

敏恵(…なんで? どぅしようぁたし、このまっ……このままじゃ、また!!!)ザワザワ


敏恵「――…はっ、はぁ……!!」チラ




ネウロイ「…〜」ギラリッ




敏恵「ぅぅ…!」

敏恵(守らなきゃ、まもらなきゃまもらなきゃまもらなきゃ――)グワグワ グワン




ネウロイ「ーー!!」カッ



ビビィイイーーーーッッ



敏恵「ま、まも…――」
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 23:37:36.29 ID:uqGYSXL70
 

――ビュゥウウンッッ


ハイデマリー「工藤さん、私の後ろに!!」バッ

敏恵「…!?」


パアアァッッン


ハイデマリー(あ、危なかった…! やっぱり今の工藤さんは何かおかしい)


敏恵「……ぁ、ぁあっ…」ワナワナワナ


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『――皆逃げぇ!!』バッ



『菊井ぃいーーッ!!!』




ジ ュ オォ ン ッ ッ



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



敏恵「ぅ゛うぅ……〜っ、ぁああぁあ゛!?!?」ガバッ

ハイデマリー「――!」

敏恵「〜ゃ、やめて!!」

ハイデマリー「ぇ…!?」

敏恵「いぃやだ、マリッ!!!」


ハイデマリー「く、工藤…さん??」ザワ
 
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 23:43:59.24 ID:uqGYSXL70
 

第四話:傷の錘 に続く

 
186 :>>1 [sage]:2017/08/18(金) 21:05:36.95 ID:ethE49LG0
納得のいくものがどうしても書けないので無期限休止すると思います。
落ちたらすみません
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/18(金) 21:16:05.37 ID:vCpGK6HWo
えー…
せっかく読んでるのに
188 :>>1 [sage]:2017/08/18(金) 21:50:06.49 ID:ethE49LG0
>>187
自慰というか惰性でやり始めたせいで前回みたいに終わり方まで組み立ってないので……書けば書くほど蛇足を生やしている気がしてならなんのです

ですが確かにここまで読んで頂いてブツ切るのも酷いのでなんとか次話までやってみます。
今暫くお待ちくださいm(_ _)m
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/18(金) 21:57:38.42 ID:vCpGK6HWo
困ったら小ネタとかでもいいんだよ
文章好きだからやめないでほしい
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/18(金) 22:00:20.23 ID:ethE49LG0
(;×;)
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/18(金) 22:13:28.68 ID:kJ7xEvb2O
頑張れ、キャラとしていい子だし真面目にやってくれてるなと思う
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/22(火) 23:39:13.47 ID:LrOpK2i90
 

ウィッチとして復帰をしたものの、航空任務参加を許可されない工藤敏恵は夜間ネウロイ討伐への無断出撃を強行した。


国境付近で暗躍するネウロイのもとへ逸早く辿り着く敏恵だが、かつての様な実力を発揮できず、万事休すに陥る。

すんでの所でハイデマリーの魔法シールドに助けられるが、追い詰められていた敏恵はその光景を過去と重ねて錯乱してしまうのであった――――
 
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/22(火) 23:42:07.56 ID:LrOpK2i90
 
【第四話 傷の錘】



敏恵「いやだっ!! マリ、まりぃぃいッ!!!」


ハイデマリー「工藤さん!! どうしたんですか工藤さん!?」

敏恵「ぁあっ……あぁぁ…ッ……〜〜」シュルル

ハイデマリー「!?」

敏恵「〜…」フラッ

ハイデマリー「わっ!! あ、あの…!?」ダキッ


敏恵「…・・ 」


ハイデマリー「えっ…? ぇ、工藤さん??」

敏恵「 」
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/22(火) 23:46:58.50 ID:LrOpK2i90
 

――ブゥゥウンッ


エイラ「2人ともナニやってんだよ? 危ないじゃないか」

サーニャ「…! 工藤大尉!?」


エイラ「――ちょ!? 大尉やられちゃったのか!?」

ハイデマリー「い、いえ! 攻撃は私が防いだんですけど、突然気を失って…!」オロオロ

エイラ「ハァ?? な、ナンで…?」

ハイデマリー「わた、私にもわかりません!!」

サーニャ「ハイデマリーさん、落ち着いて…」

敏恵「 」

ハイデマリー「っ…工藤さん! しっかりしてください、工藤さん!?」
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/22(火) 23:52:09.56 ID:LrOpK2i90
 


ネウロイ「……〜」ギラッ





エイラ「――!」キュピン


エイラ「危ね!!」バッ


ビィィイイーーーーッ


パァァアンッ


エイラ「クッ……久々シールド張ったけど、アイツのビーム重いな…!」

サーニャ「――! 不味いわエイラ、対岸〈むこう〉側のネウロイもこっちに来はじめてる」フィィィン

エイラ「ゥ…、例の地上型か!? もうナン体か飛べるようにしてあったのか!」

サーニャ「そうだと思う。残りの群も沿岸際から狙われるとここも危ないかもしれない」

エイラ「どうする指揮官! 今のウチ先にアイツをやっつけるか!?」




ネウロイ「……」ゴゥン ゴゥン
 
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/22(火) 23:57:17.47 ID:LrOpK2i90
 
ハイデマリー「…て、撤退します」

エイラ「え、ナンだって!? 放置すンのか!?」ガーン

サーニャ「エイラ、従いましょう? 大尉を抱えてハイデマリー少佐も戦えないわ」

エイラ「イヤでも…今ならワタシとサーニャで倒せるだろ?」

サーニャ「エイラ!」

エイラ「!? さ、サーニャ…?」タジ

サーニャ(ハイデマリーさんは工藤大尉が心配なの。仲間の救助を優先しなきゃ)フルフル
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/23(水) 01:23:28.67 ID:3GO0Y1rR0
 
エイラ「……わ、ワカッタ。じゃあ撤退だな」

ハイデマリー「すみません、ユーティライネン中尉…」

エイラ「気にすンなって、それより早く大尉を連れて逃げよう。その後どうするかは中佐達に任せればイイさ!」

ハイデマリー「はい。……ではすみませんが、工藤さんをお願いします」グイ

エイラ「エ? ぁ、ウン。いいけど…」ヨイセ ヨイセ


ハイデマリー「…殿は私が、あの飛行型を牽制します。ユーティライネン中尉は工藤さんを連れて安全圏まで離脱してください!」キリ

エイラ「お、オウ…」

ハイデマリー「サーニャさん、私の砲撃を合図に対岸一帯にフリーガーハマーを! その後はユーティライネン中尉に付いて警戒護衛をお願いします!」グ…ジャギン

サーニャ「了解」

ハイデマリー「では、いきますッ!!」



ドォオオンッ――――

 
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/23(水) 01:27:56.11 ID:3GO0Y1rR0
 

――――


――

 
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/23(水) 01:30:29.52 ID:3GO0Y1rR0
 
―翌日―

サン・トロン基地


ミーナ「……」

美緒「ふむ…」

ハイデマリー「も、申し訳ありませんでした。全部私の責任です…」


シャーリー「あー…いやまあ気にしないでさ? 大した事じゃないって、ですよね中佐?」

バルクホルン「責任云々についての話で無責任な擁護をするな、シャーリー」ジト

シャーリー「ぐっ! ……そりゃ悪かったね」プイ

ミーナ「……。両大尉は退室していいわ」

シャーリー「ん?」

バルクホルン「なに? どうしてだミーナ?」

ミーナ「いいから、喧嘩は外でやりなさい」ジロ

バルクホルン「!?」

シャーリー(…やばい。なんか中佐、マジで機嫌悪い?)ギクリ
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/23(水) 01:33:42.81 ID:3GO0Y1rR0
 
美緒「……お前達ちょっと来い」スタスタ


ミーナ「坂本少佐!」


美緒「解っている中佐。直ぐ戻る」

バルクホルン「…?」

美緒「出ろ、2人とも」グイ

シャーリー「あ、あの〜…??」ヨロヨロ


ガチャ

バタン



ハイデマリー「……」


ミーナ「…ごめんなさいね」

ハイデマリー「!」

ミーナ「貴方に苦労を強いてしまって。…まさか工藤大尉がそんな無茶をするなんて」

ハイデマリー「ミーナ中佐?」

ミーナ「美緒の危惧した通りだわ…」ボソ

ハイデマリー「ぇ…?」
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/23(水) 21:03:52.11 ID:3GO0Y1rR0
 

――ガチャ


美緒「……」パタム


ミーナ「…2人には何て言ったの?」

美緒「うむ。工藤の名誉の為、まだ全ては聞かせられんとな」スタスタ

ミーナ「ありがとう少佐。でも反って意味深ね、それだと」

美緒「怒気で誤魔化そうとしたお前が言うな。少し余裕を持て」

ミーナ「……ごめんなさい」

美緒「フッ…いや、個人的に私もまだ役立てる分には構わんがな?」

ハイデマリー(坂本少佐?)チラ

美緒(お前も、あまり気に病むな。察してやってくれ)クイ

ハイデマリー(…! はい)コク
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/23(水) 21:07:02.89 ID:3GO0Y1rR0
 
ミーナ「えぇと、それでハイデマリーさん? 小園大佐が貴方に伝えた話というのは…」

ハイデマリー「あ、はい。その……“工藤さんのPTSDが再発しているかもしれない”と」

美緒「なに、心傷障害だと?」

ハイデマリー「…原因になった出来事については聞いてませんが、工藤さんは元々ネウロイに対して強い恐怖心があったと思います」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

敏恵『あたしはネウロイなんかと戦えない!! 怖くて、本当に怖くて嫌だったのにッ…!』

敏恵『――こんな所もう離れて、家に帰りたい…』



小園『工藤には暗示をかけていた。あいつの抱えたトラウマを取り除き、戦える動機を与えてやった』

小園『ああしてやらねば――…奴が抱える恐怖体験を取っ払ってやる術が最善だったんだ』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



ハイデマリー「……小園大佐がマインドコントロールによって、その恐怖心を強制的に抑えていたそうです」

美緒「それは、流石に初耳だ…」
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/23(水) 21:14:03.94 ID:3GO0Y1rR0
 
ミーナ「誰かさんが教示した薬物強化兵士〈よこしまな〉プロジェクトの転用ね…。マインドコントロールと言うより厳密には暗示と洗脳だった筈よ」

美緒「詳しいな中佐?」

ミーナ「…前にハイデマリーさんから相談された時に、ちょっとね?」

ミーナ「昔当時の“新薬強壮剤”試験で偶発した魔導麻薬症のウィッチ、そのリスクをどうにか利用しようと考案された手段よ。そもそもの段階で当然破綻した計画みたいだけど」

ハイデマリー「……」

ミーナ(あの元帥直下のホルテン中佐なら、その辺り知らなくなかったでしょうし…)


美緒「そんな話があったとはな」

ミーナ「ただ、工藤大尉が“夜の女王”になってしまったのは不幸な偶然でしょうね」

ミーナ「あの頃は軍用メタンフェタミンに対する危機意識もまだ薄かったし、…きっと大佐も状況に迫られて投与した結果だったんだと思うわ」

美緒「…成る程。その状況とやらに陥った一時で心的外傷を負ったのか」

美緒(流石にそこまでの事情は聞かされていない。大佐は私を快く思ってないから無理ないが――)チラ


ハイデマリー「……」


美緒(“そっち”の解決は彼女に託した、という訳か)
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/23(水) 21:18:17.49 ID:3GO0Y1rR0
 
ミーナ「施した処置の善悪は別にして、大佐は工藤大尉が暗示から脱却したことでまたトラウマに晒される影響を危惧していたんだわ」

ハイデマリー「で、ですがそれは既に克服した筈なんです! 魔導麻薬症の副作用も治癒魔法で抑えられているのに、どうしてあんな事に…!?」

ミーナ「…いいえ、残念だけど多分克服はできてない。だから過剰防衛に走ったんだわ」

ハイデマリー「!? 過剰、防衛…?」

ミーナ「一口にPTSDと言っても、それによって引き起こされる行動は“逃げる”だけじゃないのよ」

美緒「まあ、そうらしいな。根幹症状として不安、回避、そして追体験であるというのは聞いた事あるが」

ミーナ「ええ、だけどあらゆるケースにおいてそこから先は様々――」

ミーナ「…彼女には実績と経験、つまり自信が有り得たから、トラウマに対して“積極的な”回避症状が出たのね」

ハイデマリー「そ、そんな違います!? そういうのではなくて……工藤さんは自分で打ち勝って、それで戦う意思を決めたんです!」

美緒「……」
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/23(水) 21:24:09.47 ID:3GO0Y1rR0
 
ミーナ「ハイデマリーさんがそう言うならそれも真実かもしれないわね。でもその使命感のいくらかはPTSDによる脅迫よ」

ミーナ「ネウロイの討伐に固執して勝手に出撃したのもそう。…貴方も昨夜現場で何か感じたんじゃない? 恐らく普通ではなかったでしょうから」

ハイデマリー「ぅ…! そ、それは――」タジ

ミーナ「……」

ハイデマリー「――…………。はぃ」

ミーナ「はぁ…、参ったわね」ガク

ハイデマリー「……」ショボン


美緒「よせ中佐、我々が呼んだんだぞ?」

ハイデマリー「! 坂本少佐…」

美緒「私が名を挙げ、お前が決めた。今の工藤をどう扱ってやるかは我々の責任だ」

ミーナ「……ええ。だから困ってるの」ハァ
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/23(水) 21:34:46.90 ID:3GO0Y1rR0
 
美緒「ふむ…。よし分かった、中佐は少し休め」

ミーナ「え? ちょっと――」

美緒「工藤大尉は私が様子を見てみる。報告するまで気にするな」スタスタ


美緒「取り敢えずこの場はもういい、少佐。出よう」ポン

ハイデマリー「…? あ、あの」オド

美緒「心配するな。行くぞ」

ハイデマリー「は、はい…」テクテク


ミーナ「……」


美緒「いいな中佐? 我々に任せて一息つけろ」ピシ

ハイデマリー「…失礼、します」ペコ


ガチャ


パタム…――



ミーナ「……。はぁ…もぅ」ギシ

ミーナ(私、そんなに余裕なくしてるかしら…?)
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/23(水) 21:40:35.26 ID:3GO0Y1rR0
 
廊下


――パタム


美緒「…さて。私はこれから工藤と話そうと思うんだが、シュナウファー少佐はどうする?」

ハイデマリー「ぁ…、……えっと…」

美緒「ん、いや無理に答える必要はない。すまないな」

ハイデマリー「……」

美緒「お前も少なからず参ってるんだろう? 一先ず落ち着き、頭を整理してから動いてみるといい」

ハイデマリー「すみません…」

美緒「中佐の様子については大目に見てやってくれ。あいつも色々まあ、背負っているんだ」

ハイデマリー「…はい、それは十分理解しています。責任ある御立場ですし、きっと私なんかよりも苦心されている筈です」

美緒「……。優しいな、少佐は」

ハイデマリー「ぃ、ぃぇ。そんな…」


美緒「――だが、優しさだけでは足りない時もある」

ハイデマリー「ぇ?」
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/23(水) 21:45:27.75 ID:3GO0Y1rR0
 
美緒「ついさっき私がミーナにしたように、厳しく切る事も必要だ。優しく在るのなら尚更な?」

ハイデマリー「……ですが、それは…」シュン

美緒「フッ、どうした“友”なのだろう? 勇気を持て」ス

ハイデマリー「! 坂本少佐…」

美緒「お前のやり方でいい、友を信じて打つかってみろ!」バシィ

ハイデマリー「ぁぅ!?」ビクッ


美緒「はっはっはっ! 私も工藤〈あいつ〉をきっちり扱いて来る、残りは頼むぞ少佐!」スタスタ


ハイデマリー「……。…………」サスサス
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/23(水) 21:46:51.54 ID:3GO0Y1rR0
また少し空きます(・×・)
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 22:07:41.02 ID:R4CXR+D0o
おつかれさまです
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/26(土) 17:19:16.35 ID:cWq8stjT0
 

敏恵&ハイデマリー部屋



美緒「おい工藤、いるか?」ガチャコ


敏恵「……」


美緒「とっくに起床だ、目を覚ませ」テクテク

敏恵「……。嫌だ…」モゴ

美緒「起きているな? 布団から出ろ、ちょっと来い」

敏恵「…ご飯は後でいいです」モゴゴ

美緒「いいから速く出ろ」

敏恵「っ〜〜…あたしは、ナイトウィッチなんですぅ〜… #」モゾモゾ

美緒「……」

敏恵「こんなんじゃ……こんな筈じゃなかったのに〜〜ッ…! ##」モゾモゾモゾ

美緒(鬱ぎ込んだ訳ではなく悔しさか。シュナウファーの言う通り決意は確かなようだ、これなら望みも有るか?)


敏恵「〜……」

美緒「……」

敏恵「…………やっぱりお腹空いた」モゴモゴ

美緒(謎の図太さは有るな…)
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/26(土) 17:25:53.83 ID:cWq8stjT0
 
美緒「食事は後だ。どの道もう片付いてるだろう」

敏恵「……。なにそれ、酷すぎる…」バサ

美緒「自業自得だ馬鹿者。昨日の続きを話すからついて来い、外へ出るぞ」

敏恵「えぇ……〜寝癖直してからじゃダメですか?」ムクリ

美緒「顔を洗って水でも飲め」

敏恵「ぅ〜…」






基地 野外


敏恵「……」ホケー


美緒「ほれ、少しはシャキッとしろ」ペチペチッ

敏恵「ぃぷっ! ちょ…ほっぺ叩かないでくださいよぉ!?」

美緒「呆けてる場合か、お前に差し迫ってる問題なんだぞ?」

敏恵「む、んぅ…」サスサス
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/26(土) 19:26:43.94 ID:cWq8stjT0
 
美緒「昨夜起きた件は私も聞いた。お前が何をしでかしたかも含めてな?」

敏恵「!? ゃあの、それはそのっ…!」アタフタ

美緒「…まあそこに関しては、今はいい」

敏恵「――…え、いいの?」

美緒「後で別の奴に叱ってもらえ。それより私の話は戦術の、お前の歪〈いびつ〉についてだ」

敏恵「昨日の? ……確か“あたしがあたしに追いつかないといけない”ってやつ?」

美緒「そうだ。今のお前は三位〈さんみ〉の均衡が著しく崩れている。その所為で存在する二人の己にお前は振り回されてるんだ」

敏恵「は? …??」ポケ

美緒「本来ならばそれは“理想と現実”という形で現れたりする。私も新米の頃は経験したし、教官を務めた折にもよく見た」

美緒「つまり身体も技術も付いて行かないんだ。みな理想は有れどもそれらの研鑚にはどうしたって時間が要るからな?」
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/26(土) 19:32:09.02 ID:cWq8stjT0
 
敏恵「……えぇっと、結局坂本さん、やっぱりあたしは実力不足って言いたいんですか?」ポリポリ

美緒「いいや違う。お前の練度は昨日の試験と、なによりお前が自負する通り実績がその確かさを裏付けているだろう」

美緒「――にも拘わらず、その実力が発揮できないのは身体や技術以外に重要なもう一つ……精神面の遅れが原因だ」ビシ

敏恵「!! せ、精神ん…!?」ガビーン

美緒「そうだ」

敏恵「……もっと根性出せってぇー…ことですか??」

美緒「そんな事なら一々説明しなくとも、この竹刀でお前の尻を引っ叩けばいいだけなんだがな?」ス

敏恵「――ひ!?」ビク


敏恵「いやだっ!」トタタッ



美緒「…。だから“違う”という意味だ、戻って来い」
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/26(土) 19:36:19.28 ID:cWq8stjT0
 
――



美緒「…昨日やった模擬戦を憶えているか? 工藤」

敏恵「あ、はい。一応」←戻って来た


美緒「あの時お前は調子が出せないと言ったが、それは無理もない事だ」

敏恵「?」

美緒「お前の言う本調子の姿とは誰だ? 海軍の鎌鼬――…いや、夜の女王としてネウロイを討ち周っていたお前か?」

敏恵「えっ」

美緒「ならばその頃と比べ、今のお前が何を変えたか分かるか? …それが歪を生む根元になったものだ」


敏恵「……? ………〜」モヤモヤ


敏恵「――!! あっ、えぇ…!?」ハッ

美緒「分かったか?」

敏恵「まさか…、魔導麻薬症〈マギードジング〉!?」

美緒「うむ。そうだ」
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/26(土) 19:47:06.16 ID:cWq8stjT0
 
敏恵「で、でもちょっと待って!? 確かにそのっ…アレのおかげで強くなってたみたいですけど――」ズイ

敏恵「だけどあたし、具合悪くなるからって魔法を抑えて戦ったりもしてたけど、こんなの一度もッ…!?」

美緒「私もお前の患っている奇病について詳しい訳ではないが、恐らく自分の意志で止めるのは無理だったのだろう」ドウドウ


美緒「起伏はあれど基本的にお前は魔導麻薬の影響を受け続けていた筈だ。常に魔法力を行使する戦闘ともなれば、その時の集中力諸々はおよそ尋常ではないな」

敏恵「っ…!」

美緒「…とはいえ身を亡ぼす疾患だ、“今の”お前の方が間違いなく正しい。そこは勘違いするな?」

敏恵「わ、分かってますよ。大丈夫です」

美緒「そうか、ならいいが……こうして歪が出たという事は、今の治療で完全抑制は出来ているんだろう。良かったな?」

敏恵「え? まぁ、はい。…でもあたし、どうすればいいんですか?」

美緒「うむ。まさにそれが本題だ、よく聞け」スタスタ

敏恵「……」
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/26(土) 19:52:38.36 ID:cWq8stjT0
 
美緒「いいか? あらゆる所作を極める為には相応の身体能力と技術、そして精神の力が不可欠だ」ザッ

敏恵「…! ぇ!?」

美緒「動くな? …シッッ!!」ブンッ



ビュッッッ――


――ピタ…


敏恵「いッ!!?」

美緒「心と技と体、この三位によって揺るぎのない完成度が保てる」スス


敏恵「……〜あぁ、危な…?!?」ヨロ~ ドテッ

美緒「はっはっはっ! いや驚かせてすまんな? だが万が一にもミスはない」

敏恵「〜〜ッ!?(眉間て人中〈きゅうしょ〉だよね…? 全然笑えないから!!)」ガーン
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/26(土) 19:58:13.10 ID:cWq8stjT0
 
美緒「この芸自体に意味はないが…解るか工藤? 要は今のが、かつてのお前だ」

敏恵「…? えっとつまり、その心技体がなんか…ばっちりだったってこと??」ノソノソ

美緒「ああ。但し外道ではあったがな」

美緒「本来ならば経験と共に培うべき心の強さ、それをお前は自身の麻薬効果で代用していたんだろう。…そしてその欺瞞を取り払った結果が今だ」ビッ

敏恵「……」

美緒「頭の中にはかつて熟していたイメージが有れど、まるで上手くいかない。だから焦り、力む――」

美緒「そうしてお前の考える本調子から益々遠ざかり、終いには有り得んような失敗。…昨夜も大凡こんな感じだったろう?」

敏恵(すご…、本当にお見通しなの?? なんかちょっと怖い…)
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/26(土) 20:06:30.18 ID:cWq8stjT0
 
美緒「どうだ、違うか?」

敏恵「えぇ、まあ。…そうです」グヌ

美緒「ふむ…そうか。やはりな」


美緒(難儀な奴だ。PTSDの件も相まって激烈なストレスだったろう、気絶で身を守れたのは幸いだな)ジー

敏恵「っ……坂本さん! 今のあたしにできることを教えてください!!」

美緒(しかしこうしてなお正気を支えるのは工藤の意志だ。何かは知らんが、こいつ自身の戦う決意は本物か。…これは小園さんやシュナウファーを信じるべきだぞミーナ?)

敏恵「何かあるんでしょっ!? だってここに呼ばれたんだから!!」ズイッ

美緒「その通りだが落ち着け。これから話す」

敏恵「さっきもそう言った! 回りくどいっ!! 園さんはもっと短いのに!!」

美緒「昨日はそれで反発しただろ。大佐は“工藤はよく口答えする”と仰っていたぞ?」

敏恵「そ、それは! 〜んだって園さん、理由とか聞かないと説明してくれないんだもん…」

美緒「だから順序立てて説明しているだろ?」


敏恵「……そ、そっか。ごめんなさい」

美緒(小園さんの言う通り、不思議と愛嬌はあれど軍属向きではないな? 滅茶苦茶な奴だ)フッ
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/26(土) 20:14:57.37 ID:cWq8stjT0
 
美緒「…まあはっきり言ってお前の置かれている状況は非常に特殊で厄介だが、それ故に救いも有る。安心しろ」

敏恵「! 本当に!?」

美緒「ああ。よくあるジレンマと違い、お前の歪は精神面の遅れが主だ。つまり三位のうち技と体の練度はかつてのお前に程近い」

敏恵「ぉ? おぉ…??」

美緒「所謂“身体は記憶している”ということだ。だからこそ今の状況に陥っている、解るな?」

敏恵「ほー……つまり?」モヤ


美緒「……。はぁ、やれやれ」

敏恵「あ、もっさん! 阿保って言わないでくださいよ!?」


美緒「…要するに、お前の考える“実力”は八割がた発揮できる。そういうことだ」

敏恵「!! ……えっ、でも八割だけ!?」

美緒「集中力や判断力、思い切る決定力等は運動神経や技量の向上にも影響する。そもそもに魔導麻薬の作用でお前は動体視力や反射神経すらも底上げしていたそうだな?」

敏恵「えぇっと…難しい話は憶えてないですけど、多分…?」

美緒「正確無比の砲撃や、正面のビームを紙一重で躱しながらの肉薄という妙技はもう流石に厳しいだろう。特に後者の難易度は尋常でないから止めておけ。私の経験則だが、半端なうちは危険なだけだ」

敏恵「ぅ…、そうですか。魔法力の流し込みは決め手にしてたんだけどなぁ…」ニギニギ
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/26(土) 20:23:51.94 ID:cWq8stjT0
 
美緒「戦い方――…というよりお前は考え方を変えてみろ、工藤」

敏恵「へ?」

美緒「今のお前が熟せる戦術と己の在り方を正しく理解すれば、本当の実力もまた正しく発揮できる」ポン

美緒「――そしてその為に私はお前を指導するんだ」

敏恵「!」

美緒「いいな、もう愚図るなよ?」


敏恵「…はいっ、よく分かりました!」グッ


美緒「うむ、よし。……これで残る問題はあと一つか」

敏恵「――えっ、まだ何かあるんですか!?」ガーン

美緒「残念だが有る。しかし私の役はお前の訓練指導だ、それは後で教えてやろう」

敏恵「な、なに!? 気になる!」

美緒「…さて訓練だ! 昼過ぎまでに形にするぞ、気合入れろ?」

敏恵「待ってもっさん!? 気になるってば!」

美緒「時間無いぞ! ハンガーへ駆け足!!」ビシッ

敏恵「いや聞いて!?」
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