('A`)はベルリンの雨に打たれるようです

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297 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/05(月) 22:02:14.93 ID:MGWwwK4M0
《Feind Artillerie! In Deckung!》

今度の砲煙は眼前───西側から一斉に上がった。数十発の砲弾が芸術的な弧を描き、唸りを上げて俺達の頭上を飛び過ぎる。

(=;゚ω゚)ノ《CPより各区、被害を報告せよ!!》

《トレプトウ=ケーペニック、第一砲兵隊展開地点に複数発が着弾!!120mm砲4門を失逸、死傷者多数!!》

《リヒテンバーグ区よりCP、突入してきたレオパルト2が今の砲撃で1両破壊!!また、ベルリン市警の狙撃班が通信途絶!!》

ξ;゚听)ξ《敵艦砲射撃を被弾しMi-24が一機墜落、巻き添えを食らってプーマ戦闘車を1両ロスト!

繰り返す、プーマ戦闘車ロスト!!》

悲劇的な報告が数多無線から流れる中、敵味方の砲撃は空中で激しさを増しながら入り乱れる。ベルリンの東西双方で幾つもの爆炎が上がり、建物の崩落音や深海棲艦の悲鳴、怒号がそこに重なった。

「敵艦砲射撃、来ます!」

('A`;)「伏せろ!!」

何発かの砲弾は、俺達が展開している地点の周囲にも着弾する。地面が震え、泥と砂利が飛び散り降りかかる。

……弾量はまだ大したことはないが、至近弾な上着弾地点が収束している。先の通信を聞く限り、後衛部隊にもかなり大きな損害が出た。やはり、敵前段艦隊は完全に混乱から立ち直っている。

(メメ<●><●>)「援軍到着で華麗に逆転開始、とはなりませんね。なかなか」

(メ'A`)「ま、小説や映画みたいに単純じゃないさ現実は」

ティーマスのぼやきにそう返しながら、俺の口元には思わず苦笑いが浮かんだ。

('A`)「たとえ映画だったとしても、俺達はそういう感動の場面を演出して貰える立場にはなれないだろうよ」

(メメ<●><●>)「そんなことありません。テネシャンスD辺りでボーカル勤めてそうですよ少尉」

('A`)「誰がジャック=ブラックだ」

だいたい体格的には真逆の系統だろ俺。
298 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/05(月) 22:08:56.02 ID:MGWwwK4M0
《パンコウ区オシエツキー通り、敵砲弾が直撃!機動警官隊と歩兵分隊に死傷者多数!!》

《高層観測班、既に拠点ビルの半数が崩落し通信途絶!!Prinz Eugen、水偵の高度は維持してくれ!!》

《Jawohl!!》

俺の容姿に関する諸々はともかくとして、援軍到着後も状況は引き続き芳しくない。第二陣まで殲滅されたとはいえ、前段艦隊の非ヒト型は未だ優に40隻を越える───最悪50隻に届く戦力を保有している。

加えて、後衛には軽巡棲姫ら中核艦隊も健在だ。大編隊による空襲も、F-16の波状攻撃で何とか防いでいるがいつまで持つかは解らない。

ただし、苦境であること自体は変わらないとしてもその「度合い」も不変というワケではない。

('A`#)「CP、ポーランド軍の自走砲隊に前段艦隊の展開地点からシュパンダウ区への砲撃目標変更を指示してくれ!!」

(=゚ω゚)ノ《CPよりフロントライン、シュパンダウ区のどの地点だよぅ!?》

(#'A`)「シュパンダウ区ならどこでもいい、ただなるべく自走砲は全車両での砲撃を行うよう手配を!!」

(=゚ω゚)ノ《解ったよぅ!!》

普通だとここで目標変更の理由付けや砲撃座標の明確な指定を求めてくるのだが、イヨウ中佐は二つ返事で引き受けてくれた。やはり、こういった急場で即断即決を下してくれる上官はありがたいものだとしみじみ実感する。

(=゚ω゚)ノ《〜〜〜〜。

砲撃開始10秒前!前線各位、衝撃に備えよ!!》

きっかり10秒後、とびきり巨大な風船を破裂させたような乾いた音が背後で幾つも響いた。

(=#゚ω゚)ノ《弾着まで10秒……5秒………弾着、今!!》

優に20発を越える榴弾は、前段艦隊すら遙かに飛び越えてベルリンの西端へ。中佐のカウントが終わると同時に、家々の隙間を縫って30km彼方より爆発音が連続的に聞こえてくる。

(;//‰ ゚)「……砲撃が!?」

そして束の間、前段艦隊による砲撃がピタリと止まった。

('A`#)「Bismarck、同区画に主砲射撃!!位置はどうでもいい、とにかく一発ぶち込め!!」

《Jawohl!!

Feuer!!》

瓦礫だらけのベルリンを、「戦艦」の砲声が震わせる。
299 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/05(月) 22:17:43.80 ID:MGWwwK4M0
SKC/34型 38cm連装砲。史実で【戦艦ビスマルク】の建造をわざわざ遅らせてまで搭載された巨砲の威力は、現代においても健在だった。

深海棲艦の軽巡・駆逐共が放ってきた砲弾や自走砲隊の榴弾とは一線を画した、桁違いの一撃。かえって「轟音」以外の比喩表現が見当たらない凄まじい弾着音の後に、着弾点付近の建物が崩れ去る耳障りな騒音が続く。

《Prinz EugenよりCP、Bismarck zewiによる艦砲射撃の弾着を確認。なお、敵艦隊への損害は不明!》

《ちょっとドックン、命令があったから撃ったけどあんなところを攻撃して何か意味があったの?》

('A`)「まずいい加減人の名前を覚えてくれるとありがたいなお嬢さん」

とはいえ、ビスマルクが言わんとすることは解る。シュパンダウ区は敵前段艦隊の展開地点から離れていて、地図で見た限り街区の面積も狭くはない。38cm砲の巻き起こした爆発も、区画全体から見れば決して大きくはない。

一応襲撃開始直後に軽巡棲姫と護衛艦隊が目撃された区画ではあるが、「シュパンダウ区の中程で見た」という漠然とした情報のみであり明確な展開地点は不明のまま。そも、敵中核艦隊が未だにシュパンダウ区に展開しているという保障もなかった。

中核艦隊を本気で撃沈しようとするのなら、艦娘と自走砲を総動員してシュパンダウ区全域を更地にするほどの砲幕を張る必要がある。

『『『────ォオオオオオォオオオオオッ!!!!』』』

《Prinz Eugenより市内各区画に通達!》

尤も、俺は最初からそんなもん狙っちゃいないが。

《敵前段艦隊、砲撃を続行しつつ一斉に進撃を開始!!全艦がこちらに向かってきます!!》

(=゚ω゚)ノ《釣り出し成功、お見事だよぅ少尉》

さっすが中佐は話がわかる。
300 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/05(月) 22:23:12.71 ID:MGWwwK4M0
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301 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/05(月) 22:24:34.85 ID:MGWwwK4M0
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302 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/05(月) 22:30:29.51 ID:MGWwwK4M0
《えっ、ちょっと待ちなさいよ。釣り出しってどういう意味───きゃあっ!?》

無線越しに砲弾がアスファルトを砕く音と、とてもドイツ海軍最強の艦娘が上げたとは思えない高い悲鳴が耳に飛び込んできた。次いで、高層観測班から敵砲火がビスマルクの待機地点に集中している旨が焦燥剥き出しの声で知らされる。

戦艦の居場所を晒したのだから、優先して潰そうと思うのは当然か。ともあれ、わざわざ追加の「裏付け」までくれるとは親切な話だ。

('A`)「ビスマルク、損害状況知らせ!」

《数え切れないほどの至近弾に、駆逐艦のものと思われる砲弾が一発直撃!

とはいえ小破にすら至ってないわ、艤装運用に問題なし!》

('A`)「解った、はっきりした損傷を受ける前に一度後退しろ!!」

《Jawohl!!》

深海棲艦は陸上における進行速度は俺達と大きく変わらないが、非ヒト型はその巨体と馬力を活かして建物を崩しながら市街地を“直進”する。狙い通りのこととはいえ、前段艦隊の到着まで時間は潤沢とは言い難い。

打てる手は、同時進行で打つ。

(#'A`)「ティーマス!」

( <●><●>)「Ich verstehe.

前衛部隊各位、路上に再びC-4の設置を急いで下さい。……それと、街路両脇で3階建て以上の建物があればその最上階壁にも取り付けるように。アサルトライフル並びに携行砲のメンテナンスも───」

目配せしただけで飛ばされる的確な指示。しかもこちらが出す予定だった内容とほぼ変わらないときた。

階級譲渡が無理なら佐官への特進を進言しようかと半ば本気で検討しつつ、手元の無線をツンの下に繋げる。

('A`)「ツン、ポーランド軍機甲部隊との合流は!?」

ξ;゚听)ξ《第一波との合流は完了、割り振りも無線合わせも済んでるけど……貴方いったい何したの!?どうして深海棲艦が突然前進なんか───》

('A`)「解説は後だ!レオパルト1とプーマを一両ずつ指揮所の防衛に残して、自走砲以外の全装甲戦力を渡河させろ!」

ξ゚听)ξ《───了解!!》

('A`)「総員に伝達!!間もなく再編された主力機甲部隊が前線に到着する、各部隊は現戦線を固守し主力到着まで耐え抜け!!」

ここで一瞬、サイ大尉やミルナ中尉のように洒落た演説の一つでも飛ばせないかと言葉が途切れた。

まぁ、学がない上コールガールすら口説いた事が無い俺に、あんな演説が思いつくはずもない。

ついでに言えば時間も無かったので、俺はドイツ人のステレオタイプらしく「仕事」の内容だけを伝えることにした。

(#'A`)「これより、深海棲艦の前段艦隊との決戦に移る!!ベルリン奪回への分水嶺だ、全火力を動員して迅速に殲滅しろ!!

化け物共に、艦娘以外にも敵がいると言うことを……」
303 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/05(月) 22:31:43.31 ID:MGWwwK4M0
(#'A`)「俺達人間が、奴らの“敵”であるということを教えてやれ!!」

《「《「─────Jawohl!!!!」》」》
304 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/05(月) 22:34:58.65 ID:MGWwwK4M0
深海棲艦側にとって最も避けたい事態は、当然のことながら旗艦である軽巡棲姫の撃沈。当然前線への配備はあり得ず、周辺をヒト型で固めた上で後衛待機が基本線となる。

本来なら向こうはそもそもベルリン市から遠く離れた位置に中核艦隊を据えたいはずだが、ここで問題となってくるのが非ヒト型の統率だ。

《Mi-24、第二波が前線に突入する!航空攻撃に巻き込まれるなよ!》

《ZSU-23-4【シルカ】六両が新たに到着しました!!》

(#'A`)「三両は前線に回してくれ!残り三両は艦娘達の護衛に付けろ!」

《Jawohl!!》

姫や鬼の恐ろしさは戦闘能力もさることながら、特筆すべきは“非ヒト型”の統率能力。リ級やル級に代表されるヒト型種が5、6隻のコントロールを限界としているのに対し、姫級は少なくとも100隻以上の非ヒト型を操れるのではとの説もある。

ただし、ポルトガルでの例を見れば解るとおり無制限で100隻を自在にコントロールできるわけではない。アルカンタラマールで交戦した“1-1艦隊”が断熱シートを戦車に被せただけの欺瞞すら見抜けなかったとき、装甲空母姫は打撃艦隊への備えとして遙か外洋に展開していた。

『ォオオオオ……』

《高層観測班より通達、イ級1体が自走砲隊の砲撃により沈黙!おそらく撃沈と思われます!》

('A`#)「中佐、ポーランド軍に攻撃をやり過ぎないよう注意して下さい!前進を辞められたらせっかくの釣り出しが無意味になる!」

(=#゚ω゚)ノ《了解だよぅ!!》
305 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/05(月) 23:11:00.06 ID:MGWwwK4M0


姫級が非ヒト型を自在に操れる限界距離は、凡そ50kmされる。30km四方のベルリンに確実に指示を届かせかつ電波妨害まで行うとなれば、行動範囲は自然ベルリンに限られる。

後は具体的な位置をどうやって特定するかだが、ポーランド軍の到着がその問題を解決してくれた。

(#゚д゚ )《総員前進開始!!

Los Los Los!!》

《CPより前線、BM-21【グラート】が二十両新たに戦線に到達、砲撃準備完了!!》

('A`#)「ロケット砲は貴重だ、展開位置は分散しつつ合図があるまで待機!照準は敵前段艦隊に集中させるよう指示を!!」

152mm砲。口径のみで言えば第二次世界大戦時の軽巡洋艦主砲に匹敵し、射程と威力も申し分ない【戦場の女神】の一つ。無論“戦車砲よりは効果的”というだけでヒト型達からすれば大差の無い威力ではあるが、少なくとも20門以上が一斉に放たれれば威嚇効果としては決して低くない。

案の定、すぐ近くに飛んできた“脅威度が上がった攻撃”への動揺からか、前段艦隊への指揮が一瞬止まった。

《ポーランド陸軍、携行砲装備の歩兵隊が先行して其方に向かった!合流して防衛線の強化を急げ!!》

《高層観測班より前線各位、敵前段艦隊と接敵まで後30秒!!警戒を!!》

(#'A`)「総員構え、総員構え!!」

(#//‰ ゚)「気合い入れろ、敵は手強いぞ!!」

後は、ビスマルクによる正真正銘“一撃轟沈もあり得る攻撃”を加え、奴らの位置をこちらが把握していると教えてやればいい。

自然、“事故”を防ぐために奴らが取れる策は絞られる。

こちらの重火力部隊や艦娘の浸透を防ぎつつ、かつ向こうが艦娘の殲滅を狙うための手段、即ち。

『『ォオオオオォオオオオオオッ!!!!』』

「Enemy contact!!」

('A`#)「Feuer!!」

前段艦隊の集中運用による、決戦突撃。
306 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/06/05(月) 23:11:45.64 ID:MGWwwK4M0
今更新ここまで。いやもぅ大変お待たせしまして申し訳ありません。
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/06(火) 00:46:23.43 ID:33lSIkHA0
おつです!
本当に起死回生と言うか、一手で戦況を転がすとか非凡な証だよなあw
308 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/06(火) 23:31:23.42 ID:7DWlqEE60
正面の道路をひしめきながらこちらに進んでくる深海棲艦達。奴らとの戦闘の口火を切ったのは米海兵隊のLAWとティーマス指揮下部隊のカールグスタフだった。

『オォアアアアッ!!?』

唸りを上げて飛んでいった10発近い対戦車弾頭が、先陣を切っていたハ級の鼻先に直撃する。黒い表皮が裂けて砕け、火花と爆炎、青色の体液が雨に混じってまき散らされた。

『ァアアアアア───ア゛ア゛ッ!?』

(#//‰ ゚)「撃たせるかよこのディープワンめ!!

Keep fire!!」

「「「Yes sir!!」」」

隣で射撃体勢に移ったロ級に対しても、サイ大尉以下海兵隊のジャベリンミサイルが降り注ぐ。

猛烈な勢いで叩き込まれる火線に、先鋒二隻の足が止まった。

('A`#)「とにかく射撃間隔を開けるな!!奴らに砲撃の間を与えないようにしろ!!」

( <●><●>)「上部からの砲撃も有効に活用して下さい。非ヒト型は総じて下半身が小さくバランスが取りづらい、衝撃を与え続ければ射線をブレさせ攻撃の手を止めることが出来ます」

彼我の距離は700Mほど。1キロに満たない距離など“軍艦”からすれば目をつぶっても当てられる至近距離だ。

故に此方は、前段艦隊を殲滅するためになるべく“撃たせない”事が重要になる。

(#'A`)「前衛各位、残弾や余力は一切気にするな!!確実に、一匹残らず奴らを仕留めろ!!」

「《「《Jawohl!!》」》」

止まないどころか勢いを増す雨の中で、砲煙と火薬の匂いが街路に満ちていく。
309 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/06(火) 23:38:00.51 ID:7DWlqEE60
『ウォオオオオ………』

「Enemy down!!」

('A`;)「よし、さい先が───うおっ!?」

(;//‰ ゚)「Ups?!」

既に自走砲隊の攻撃で十分な損害を受けていたのか、ハ級の方が早々に蹌踉めき道路に倒れ込む。

だが、喜ぶ間もなくその後から突き出された艤装が火を噴き、弾丸が低弾道で俺達の頭上スレスレを飛び過ぎた。

『キィアアアアアアアアアアアッ!!!!!』

('A`;)「っ」

砲撃を食らった装甲車数両の爆発音を掻き消すようにして、その艦は声高に叫ぶ。他の非ヒト型よりも1オクターブ高い鳴き声は不快感も増しており、耳を抑える手を止められない。

( <●><●>)「………相変わらず奇っ怪な外観ですね」

声の主の姿を目にし、ティーマスがぼそりと呟いた。

軽巡級の個体であるそいつは、ホ級やト級と同様に頭部と思わしき位置には眼球がない。

のっぺりと頭を覆う白い表皮は被り物のようで、世界的に有名な某ホラー映画の殺人鬼を連想させた。先ほども言った通り眼球はないが、人ならば眼に当たる位置に切り抜いたような穴が空いていることも余計にマスクのような印象を与えてくる。

ホ級やト級に比べるとやや人間に近い体付きといえる。だが胸から下を覆う嘲笑を浮かべたような形の大顎と完全に艤装と融合した右手、何よりもその顎の最下部から突き出した地上を移動するための蜘蛛のような八本の足が明確に“奴”を化け物としてカテゴライズさせた。

『キィアアアアアアアアアアアッ!!!』

奴────軽巡ヘ級が、右腕を此方に向けながらもう一度雄叫びを上げる。

('A`;)「散開!!」

2発目の砲弾が、新たに何両かの装甲車を吹き飛ばした。
310 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/06(火) 23:48:34.07 ID:7DWlqEE60
(;'A`)「点呼、負傷者がいたら報告しろ!!」

( <●><●>)「此方ティーマス、幸い負傷無し。他の兵も無事です」

(//‰ ゚)「アメリカ海兵隊をなめんなよ、あの程度なら避けられる!」

(*゚∀゚)「ツー=アハッツ、健在だぁ!!」

ベーデカー軍曹と共に瓦礫の影に飛び込みながら叫ぶと、幸いにして欠員が出た様子はなかった。なおも何発か砲弾が撃ち込まれる中ちらりと物陰から顔を出し、改めてヘ級を観察する。

全長は五メートル前後、隣のロ級と変わらない。

「……通常種で良かったですね」

('A`)「あぁ、本当にな」

ヘ級flagshipは他の非ヒト型に比べて一段高い戦闘能力を有しており、ヒト型を除くと軍内でも強くマークされる個体の一つだ。特に対潜能力は凶悪で、世界初となる艦娘の“轟沈”はヘ級flagshipと潜水艦娘が遭遇してしまったため発生している。

それも、質量共に他国を圧倒する日本の艦娘が犠牲になったため、当時は特に艦娘保有国を中心に世界中でヘ級の危険性が大々的に取り上げられることになった。

無論、あくまで“flagshipじゃない分マシ”という話であって“楽に片付けられる相手”には残念ながらならない。今の砲撃で隊列も乱され、攻撃は続いているものの敵の反撃も此方に届き始めている。

ましてや、今回の敵は二隻や三隻ではないから尚更厄介だ。

《Prinz Eugenより前衛各位、前段艦隊に動きあり!!

各班正面にて、敵艦隊は戦列を複縦陣に移行中!一斉砲撃を行おうとしている模様です!》
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/07(水) 00:09:27.65 ID:lDmHg5g00
乙、滅茶苦茶熱いわ、幾らでも待てる
312 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/07(水) 00:30:14.70 ID:QJ8KbxUB0
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313 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/07(水) 00:38:01.36 ID:QJ8KbxUB0
ガラガラと建物がくずれていく音と、立ち上る土煙。それはヘ級達に後続していた、後続の深海棲艦が前に出つつある印。言うなれば「T字不利」が取られているに近い状況を打破するための軽巡棲姫の差し金だろう。

予想される前段艦隊の残余戦力は50隻程度。此方の前衛部隊が展開している5カ所の拠点に均等に戦力が割り振られたとして、俺達前衛部隊は各所が10隻前後の軍艦と生身で交戦している計算になる。

正念場だ。

(#'A`)「CP、Mi-24があれば敵前段艦隊への攻撃に回してくれ!!自走砲隊には同時にシュパンダウ区への砲撃要請を!!」

(=゚ω゚)ノ《了解だよぅ!ちょうどヘリ部隊の第三波が突入する、全機を攻撃に回す!!》

直後に頭上を飛び越す砲弾と、その後を追って飛来するMi-24。新たな編隊は榴弾がシュパンダウ区へ着弾する瞬間に合わせる形で、一斉に前段艦隊めがけて突入する。

『オォアッ!?………グゥアアアッ!!!?』

『ルァアッ!?』

非ヒト型といえど、上位種の命令があればそれに従うだけで個々の感情や自我を全く持たないわけではない。“自分たちの本陣”に派手な攻撃があれば反応するのは当たり前だし、知能が低い分その反応はより動物的になる。

砲撃に釣られたヘ級達はほぼ全艦が後方に気を取られ、陣形転換も不十分なままヘリ部隊の突入を無防備なまま受ける形となった。

『アォオオオ………』

『グア……』

次々と上空から襲いかかるAT-6 スパイラルミサイルに、既に中破まで行っていたロ級が瞬く間に動きを止める。ビルの向こう側でも何か大きな物が倒れ込む音が聞こえ、すぐに高層観測班からの「ト級沈黙!!」の報告が無線から飛び込んできた。

『キィアアアア────アアアアアアッ!!?』

('A`#)「Los, Los!!」

(#//‰ ゚)「Guys, Go attack!!」

しぶとく生き残るヘ級が艤装をヘリに向けようとするが、当然させるわけがない。

陣形を立て直した俺達から放たれる、ロケットとミサイル。ジャベリンは艤装に、パンツァーファウストは頭部に、カールグスタフは脚部にそれぞれ直撃しヘ級のグロテスクな身体を撃ち抜く。

『ギッ、ギィイイイ……ッ!!』

とはいえこの頃にはヘリ部隊の方が兵装をほとんど撃ち尽くしたらしく、4機編隊のハウンドは12.7mm弾を牽制としてまき散らしながらゆっくりと後退を開始した。

空襲の圧力から解放されたヘ級が、苦悶の声を上げながらも右手を此方に向ける。

尤も、時既に遅しという奴だが。

《CPより前線各位、弾着間もなく。衝撃に備えろ》

『ギッ……ガァアアアアアアッ!!?』

BM-21グラートによる、ロケット弾の一斉投射。

文字通り“豪雨のように降り注いで”きた122mmロケット弾に、ヘ級の身体は断末魔と爆音の中でバラバラに引き裂かれた。
314 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/07(水) 01:09:27.89 ID:QJ8KbxUB0
('A`)「各班、状況を報告しろ!!」

《第二班、交戦中の敵艦の内イ級elite、ヘ級をそれぞれ1隻ずつ撃沈!また、ホ級が大破状態で後退を開始!》

《第四班より前線指揮車、Mi-24の空襲でロ級2隻が轟沈。また、今のロケット弾投射によりホ級1、ト級elite1が沈黙しました》

《第五班、敵前段艦隊3隻の排除を確認、残余7!》

《此方第三班、交戦中の敵艦隊9隻の内2隻が沈黙!また、ト級eliteが大破状態に移行!》

交戦開始から機甲部隊の到着を待たずに、11隻もの敵艦を沈めることに成功した。はっきりいって、即席の陽動がここまでハマるとは思っていなかったため喜びよりも先に戸惑いが来る。

だが、望外の結果だった故に思考が冷静なままでいれられるのは寧ろありがたい。

('A`)「ロケット砲は再装填に時間がかかる、今のような大砲撃をもう一度行うには間が空く!

各班突出は避けて引き続き敵艦隊の打撃に勤めろ、機甲部隊到着まで此方から攻勢には出るな!」

《《《Jawohl!!》》》

指示を出し終えたところで聞こえてきたのは、新たな車両のエンジン音。といっても、戦車や装甲車のそれより遙かに馬力が低いエンジンが奏でるものだ。それが十何個か重なって、水飛沫の音と共にこの区画に近づいてくる。

( ’ t ’ ;)「※※※、※※※※!!」

深海棲艦への攻撃を続ける俺たちのすぐ傍に、金髪の男が乗る物を先頭として4台の軍用バイクが軽くドリフトしながら停車した。すぐ後に軍用トラックが一台続き、荷台の上に乗っていた武装兵十数人が金髪の男の指示に従って一斉に路上に飛び出す。

ライフルグレネード付きのPMK-PGN-60をほぼ全員が構え、内半数ほどはRPG-7かカールグスタフを背負っている。更にトラックの荷台には、SPG-9まで三脚で備え付けてあった。

先程無線でCPが伝えてきた、ポーランド陸軍の携行砲装備部隊の到着。はっきり言って最高のタイミングに、はっきり言って指揮官と思わしき金髪の男にキスの一つもかましたくなる。
315 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/06/07(水) 01:10:45.55 ID:QJ8KbxUB0
後半“ながら”だったので飛び飛びでしたが今更新ここまでです。誓って言いますがドク少尉はホモではありません
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 01:35:18.79 ID:sIcmpQ7A0
ワロタ
…やっぱ犠牲はかさむけど、開幕早々の一方的な蹂躙に比べればまだ凌げてるか

深海側からしてみれば、奇襲・強襲で人類側でも強大な地域をあわや陥落…とまで行ったのに、最前線で踏みとどまれる部隊一つでここまでなられちゃねえw
おまけに立て直した所から、戦線に釘付けになってる自分達に対して超火力の投げつけなんて状況は余計に焦りそう
317 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/07(水) 23:31:51.40 ID:QJ8KbxUB0
( ’ t ’ )<ポーランド陸軍一等准尉、カルリナ=ヴォジニャックです!>

バイクから降りた男……というより青年は、背負ったカールグスタフが通常より大きく見えるほど背が低く華奢だった。英語でカルリナと名乗ったそいつは、俺の下まで駆け寄ると砲声に呑まれないよう声を張り上げる。

( ’ t ’ )<ドク=マントイフェル少尉ですね?これより我が分隊は指揮下に入ります!!>

('A`)<増援感謝する!しかしよく一目で俺のことが解ったな!!>

( ’ t ’ ;)<イヨウ中佐が特徴的な顔立ちなのですぐ解るだろうと……あ、いえ!何でもないです!!>

('A`)

無事作戦が終わった暁にはあの中佐と少し話し合う必要がありそうだ。

というかお前もオブラートに包めやイケメンに言われると二重に抉られるわ。

('A`)<……まず前段艦隊を殲滅する、全火力を正面の敵艦隊に投射してくれ!>

( ’ t ’ )<了解!

※※※※!!」

台詞の後半はおそらくポーランド語での指示だったのだろう。兵士の一人がトラックの荷台に駆け上がり、SPG-9の操作に移る。

残りの面々も、一斉に背負っていた携行砲やアサルトライフルを構え前段艦隊の方に向けた。

( ’ t ’ #)「Strzelac!!」
318 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/07(水) 23:41:33.43 ID:QJ8KbxUB0
号令一過、新たに24の銃口・砲口が火を吹く。路地を満たす硝煙の濃度が更に増し、ポーランド軍による弾幕が深海棲艦に真っ向から叩きつけられる。

『ヴォオオアアッ!!?』

カルリナ達の攻撃は、バラバラにされたヘ級の遺骸を踏み越えて前進してきたイ級に全て直撃。 多数の砲撃の勢いに圧されたイ級の頭部が跳ね上がり、そのままひっくり返るようにして背中から仰向けに路上に倒れ込んだ。

《────弾着、今!!》

『ギィアッ!!!?……アァ……ァァァ………』

剥き出しになった腹に、タイミング良く迫撃砲弾が立て続けに何発か突き刺さった。

イ級は起き上がれない亀のようにじたじたと足を動かしていたが、声も挙動も弱々しくなっていき最後の一発であっさりと絶命する。

「イ級通常種の沈黙を確認!正面敵残余艦数残り7!!」

《此方五班敵艦隊半数を撃沈。戦闘を続行する》

《四班、ホ級を制圧した!あと少しだぞ、踏ん張れ!!》

敵前段艦隊の損害は、間断ない火砲投射と幾度かの空襲によって今や五割に達しつつある。陽動以外で艦娘の力を使わない中で半数の敵艦を撃破となれば、自分で言ってしまう形になるがこれは奇跡的な大戦果と言える。

此方にも損害は出ているものの、深海棲艦の最大目標である艦娘への攻撃は全くといっていいほど許していない。あくまでベルリンに限った話でいえば、戦況は圧倒的優勢だ。

(#'A`)<カルリナ、もしC-4を持ってきていたら幾つか健在な建物の内壁に仕掛けてきてくれ!>

( ’ t ’ #)<了解!

※※、※※、〜〜〜!!」

無論それは数字上の話であり、ここまでやってなお俺達の状況は微塵も予断を許さない。

('A`#)「ベーデカー、残余敵艦の内訳を報告しろ!!」

「ト級の通常種が一隻、それから“1-1艦隊”とヘ級、ロ級が二隻です!!

ト級以外は、全てelite!!ニ班〜五班においても、残存戦力の主力はeliteです!!」

カーテンコールの訪れは、まだまだ遠い。
319 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/07(水) 23:56:58.24 ID:QJ8KbxUB0
五つの防衛線を構築する敵前段艦隊は、最後の線である第5陣のほぼ全てをeliteで固めるというかなり慎重で防衛的な展開をしていた。そのため俺達が第1陣、第2陣を一方的に殲滅しつつも、敵艦隊は非ヒト型の上位種戦力を自然な形で温存している。

攻勢にあたっても敵艦隊は極力通常種を前衛に集め、自走砲による砲撃や打撃部隊への盾となるように陣形を組んだ。此方もなるべく優先して上級個体を狙いはしたが、ニ班と四班で撃沈、三班で大破艦が確認できた程度で未だ20隻を超えるeliteが戦闘能力を有して前線部隊と対峙する状態。

火力の差は歴然であり、軽巡棲姫からすればベストとまでは言えずともベターな戦力比に持ち込めている筈だ。

……尤も、それは此方にも言える話であって。

ξ#゚听)ξ「─────Panzer vor!!」

敵戦力を減らしつつの“時間稼ぎ”は、もう十分過ぎるほど終わっている。

ξ#゚听)ξ「Feuer!!」

『ォオオオオオオアッ!!?』

ツンの叫びと共に、戦車隊の先陣を切っていたレオパルト1が105mm砲を撃ち鳴らす。ヒュンッ、という巨人の口笛のような飛翔音を残してAPFSDSが空間を駆け、最後の通常種であるト級の左頭部に突き刺さり装甲皮を貫く。

::(* A )::「ブフムッフフッ」

金髪巻き毛のフランス女がドイツ陸軍の戦車に乗って後方にポーランド軍の装甲部隊を率い、ドイツ語を叫びながら突入してくるというグローバル化の集大成のような光景に思わず変な笑いが口をついて飛び出した。

( <●><●>)「キモッ」

(*゚∀゚)「キモッ」

('A`)

ドイツ連邦陸軍少尉ですが部下が辛辣です。
320 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/08(木) 00:22:46.05 ID:k+hQ6MSy0

眼から流れてきた汗(比喩表現)を袖口で拭き取り、改めて区画に突入してきた友軍戦力を確認する。

ツンのレオパルト1を先頭に、真後ろにプーマ戦闘車と、もう一両のレオパルト1。最後尾には自走対空砲ZSU-23-4【シルカ】が後続。左側に並ぶのは、ポーランド陸軍の戦車であるレオパルト2A4とPT-91【トファルデ】が二両ずつ。

更に軍用トラック一台分ほどのスペースを空けて、トファルデとレオパルト2A4各2両にハンヴィー4両からなる第2陣が続いた。

敵艦砲射撃による混乱や損害もあって若干歪な編成ではあるものの、合計16両という強力な装甲戦力の到着は頼もしい。

一方で、強襲打撃班の搭乗していた車両やカルリナ達の到着によってかなり兵力が密集した形だ。敵艦砲射撃が直撃すれば、命中位置次第では駆逐艦の砲弾でも甚大な損害に繋がる。

まずは、こちらから再度攻勢に動く。

(#'A`)「ツン、装甲車隊を一部右手1ブロック先から迂回させろ!敵艦隊の側面を突く!」

ξ#゚听)ξ「了解! ※※※!!!」

指示を受けたツンが無線に向かってカルリナと同じ響きの言語で何ごとか叫ぶ。ポーランド語まで習得済みとは本当に頼れる才女様だ。

('A`)<カルリナ、一部歩兵を戦車隊に随伴させてくれ!敵の空襲があった場合はアサルトライフルの射撃で援護を!>

( ’ t ’ )<了解!>

('A`#)「サイ大尉、ベーデカー、ティーマス、前進するぞ!奴らの攻撃目標を分散させる!」

「Jawohl!!」

(//‰ ゚)「Roger that!!」

( <●><●>)「Ich verstehe」

('A`#)「ツー、お前も後続しろ!!

Los Los Los!!」

指示を終えた俺は、物陰から路上に飛び出すとアサルトライフルを構えて前段艦隊に向けて駆けだした。
321 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/08(木) 01:04:28.17 ID:k+hQ6MSy0
『ガァアッ!!!』

(*;゚∀゚)「………ひょおうっ!?」

道路に飛び出した瞬間、ト級が反撃の砲火を放つ。突風と熱を残して跳んできた砲弾に、ツーが奇声を上げながら身を竦めた。

爆発音。振り返れば、PGS-9が装備されていたトラックが燃えている。拉げた荷台の上では人の形をした何かが炎を纏い、やや離れた位置では今の攻撃に巻き込まれたらしいドイツ兵が上半身だけで転がっていた。

('A`;)「怯むな!いけ、いけ!!」

ξ#゚听)ξ「ドク達の援護を!!

Feuer!!」

『ウグアッ!?』

『ギイッ!!?……アアアッ!!!』

レオパルト1と、トファルデの主砲が立て続けに吠える。前者の弾丸は寸分違わぬ狙いで先程の着弾点をもう一度射抜き、後者の砲弾はその隣に進み出てきたロ級eliteに直撃する。

だがロ級の方は衝撃に踏みとどまり、艤装をゆっくりと此方に向けてきた。

「Fire!!」

『ガッ……!?』

その横っ面に、サイ大尉に後続していた海兵隊がLAWをぶち込む。踏ん張りきった直後で態勢が安定していないロ級の巨躯が揺れ、砲塔ががくりと下を向いた。

ξ#゚听)ξ「Go Missile!!」

《Jawohl!!》

『アゲァッ!?ア゛ア゛ッ……オォオ………』

ツンが叫び、プーマ戦闘車の砲塔からスパイクLR対戦車が二発連続で撃ち出される。

一発目が頭部を上から撃ち抜き、二発目は持ち上がり露わになったロ級の下あごを吹き飛ばし艤装に突き刺さる。

ロ級はぐらりぐらりと身体を揺らし、イ級の屍の上に折り重なるようにして倒れ込み息絶えた。

『ォオオオオッ!!!』

完全に左頭部を失ったト級の方は、しかしながらまだ生きていた。仲間の死に対する怒りからか一際高く咆哮すると、200mほど距離を詰めていた俺達に向かって機銃を放つ。

('A`#)「飛び込め!!」

(*゚∀゚)「うひぃっ!!」

咄嗟にツーの首根っこを掴みながら、陥没した道路の穴の中に飛び込む。アスファルトを弾丸が削り、すぐ傍を火線が走り抜けた。

道路はハ級による地下からの攻撃で、そこかしこがめくれ上がったり陥没している。幸い、隠れる場所には事欠かない。

敵を引きつけつつのゲリラ戦にはうってつけだ。
322 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/06/08(木) 01:05:48.35 ID:k+hQ6MSy0
細々とした亀更新になってしまっていますがここで一度。
ご清聴ありがとうございました。明日はお休みなので一気に進めたいと思います
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/08(木) 06:17:01.15 ID:j9LkdJL+o
324 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/08(木) 23:43:32.71 ID:k+hQ6MSy0
('A`)「ツー、行くぞ!」

(*゚∀゚)「あいよぉ!!」

『ォオオオッ!!!』

ツーと共に穴を駆け上がり、ト級に向けて銃撃。狙うはレオパルト1が穿った左頭部の貫通痕。

傷跡への攻撃はアサルトライフルの射撃でも幾らか効くのか、ト級は低い声で嫌がる素振りを見せるが身体の構造が祟って銃火を遮ることは出来ない。無理やり身体を捻って射線を躱そうとする。

「Fire!!」

『ォオアッ!?』

そこに撃ち込まれたのは海兵隊が構えるジャベリンミサイル。ただし、狙った先は頭部ではなく、ト級の腕。

ト級は胴体と足を持たず、陸上移動の際には中央頭部から直接生えた二本の大きな腕で「歩行」する。未発達で小ぶりな足しか持たない上に胴体の大きさに対して脚部の形状がアンバランスな駆逐艦よりマシだが、それでも地上での機動力は高くない。

ξ#゚听)ξ「Feuer!!」

『ウ゛ア゛ア゛ッ……』

回避運動のためにもつれていた腕に直撃するミサイル。ぐらりと傾き戦車砲の射線に晒されるト級の頭部艤装。

4両の戦車による一斉射撃は、吸い込まれるようにして頭頂から生えた砲塔に直撃。

グワリと音が鳴り、艤装が爆散。弾薬の誘爆によってト級の中央頭部が火の玉と化し、数秒間の制止を経てそのままト級は腕を折り斃れる。
325 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/08(木) 23:51:30.74 ID:k+hQ6MSy0
『キィアアアアッ!!!』

(;'A`)「止まるな!!」

そのまま足を止めず走り抜け、今度は路上に転がった黒焦げの市営バスの下へ。入れ替わりで前に出てきたヘ級eliteの機銃掃射が後ろから猛然と追いすがってくる。

命がけの鬼ごっこはかろうじて此方に軍配が上がり、ツーと俺が残骸の影に飛び込んだ直後弾丸が炭化した車体にめり込んだ。

『グェアッ!?』

『キィ………キィアアアアッ!!?』

同時に砲声。ヘ級の後ろで今度は単縦陣への移行運動をしていたイ級の横っ面で爆発が起きる。思わぬ方向からの一撃にふり向いたヘ級の腹にも、連続して二発の砲弾が突き刺さった。

『ウォオオッ!?』

『ゴォアッ!?』

ヘ級とイ級への砲火を皮切りに、奴らの右手から横殴りに叩き込まれる砲弾と銃弾の嵐。ホ級が砲塔を向けようとしたが即座に砲火が集中し、照準を絞る前に放たれた艦砲射撃はあらぬ方向へと飛翔する。

ξ#゚听)ξ「ドク、別働隊が敵艦隊側面に到達!攻撃を開始したわ!」

('A`#)「正面戦車隊並びに随伴歩兵隊、最大火力にて敵艦隊を打撃せよ!!とにかく撃って撃って撃ちまくれ!!」

ξ#゚听)ξ「Jawohl!!

※※※、※※※!」

( ’ t ’ #)「※※※※!!」

弾幕射撃が更に勢いを増して俺達を追い越し、ヘ級達に猛烈な勢いで襲いかかる。無数のマズルフラッシュと爆発光が、雨の中で途切れることなく煌めく。

『ォオオオオォオオッ!!!』

(;'A`)「………っ!」

次々と深海棲艦達の巨躯に吸い込まれていく火線。だが、全身に銃火を纏いつつもヘ級が右手の艤装を強引に持ち上げツン達の方へ───はっきりと、ツンが乗るレオパルト1へ向ける。

ξ;゚听)ξ「……ヤバ」

(;'A`)「ツン────!」

砲声。
326 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/08(木) 23:54:17.37 ID:k+hQ6MSy0
ξ;><)ξ「きゃあっ!?」

不幸中の幸いというべきかヘ級が放った砲弾は、苛烈な砲火の衝撃で軌道がぶれレオパルト1への直撃を免れる。

それでも、周囲を固めていた随伴歩兵の直中に飛び込んだ砲撃による損害は小さくない。海兵隊とドイツ兵それぞれ数人が武器を構えていた着弾箇所からは人影が消え、代わりに一掴みほど人体の残骸のみが残された。

(;'A`)「ツン、無事か!?」

ξ; 听)ξ「…っ、大丈夫!かすり傷すら負ってないわよ!

Feuer!!」

『イ゛ァ゛ッ?!』

こみ上げてきた何かを飲み下したような間が空いたあと、気丈な返事と共にすぐさま指揮を再開。

4両の戦車隊による一斉射撃。ヘ級の右手艤装が爆散し、艤装の破片が俺達の周りまで散らばってくる。

( <●><●>)「Feuer」

(//‰ ゚)「Fire!!」

『ギィッ───ヴガァアアアアッ!!!?』

傷口を抑えて蹲ったヘ級の胴体に、下から殴り上げるようにしてカールグスタフとパンツァーファウスト、そして最後の一門となったLAWが直撃。

無理やり起き上がらされた上半身を横合いから戦車隊と随伴歩兵隊の一斉砲火が殴りつける。下半身を覆う顎のような艤装が破砕され、肩口から引き裂かれた右腕がくるくると空に舞い上がり路上に落下した。

ξ#゚听)ξ「Feuer!!」

( ’ t ’ #)「Strzelac!!」

『ガッ、ギッ………』

カルリナとツンの号令は、同時。膨大な量の砲弾に加え、計ったようなタイミングで飛来した迫撃砲隊の支援射撃が加わりヘ級を滅多打ちにする。

爆圧によって脇のビルに押しつけられるような形になったヘ級はそのまま数秒にわたり無抵抗で撃たれ続け、やがて糸が切れた操り人形のように身体から力が抜け動かなくなった。
327 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/09(金) 00:41:04.41 ID:89CTCDsC0
undefined
328 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/09(金) 00:57:02.22 ID:89CTCDsC0
側面と正面の2方向から攻撃に晒される敵艦隊は、一方への反撃を計れば他方からの集中砲火でそれを妨害され今や反撃さえままならない状態となっている。

ただでさえ至近距離のところを更に肉薄し、背後から飛ぶ味方の射線にすら身を晒す形で実行した“釣り”。目の前をうろちょろと鬱陶しく動き回る俺達を潰すことに夢中になり、敵艦隊は側面への警戒を完全に怠った上ツン達正面戦車隊への攻撃すらろくに行えていない。

命懸けの餌役は無事狙い通りの釣果に繋がってくれた。もう一度やれと言われても死んでもゴメンだが。

(=#゚ω゚)ノ《前線衝撃に備えるよぅ!!

弾着、今!!》

遠くの方で榴弾の炸裂音がズンッと響き渡り、直後に何か重いものが地面に斃れる音が続く。俺達以外の前衛部隊も戦況は順調に推移しているらしく、無線からはなおも断続的に敵艦の撃沈や損害報告が流れてきている。

《CPより前線各位、敵前段艦隊の損耗率60%を突破。

また、敵爆撃編隊は未だ増強を継続もポーランド空軍の迎撃により打撃を受け続け前進には至っていない。市外から艦隊の増援が到着した様子も確認できず。

我々が優勢だ、オーバー》

勤めて平静を装いながらも、言葉の節々に驚愕と喜悦が浮かび上がったオペレーターの経過報告が耳に入った。まぁあの絶望的な状況から市街地中央まで戦線を押し返し、おまけに艦娘戦力はなおもほぼ完全な状態で健在と来ている。

確かに、俯瞰してみるとなかなか信じがたい巻き返しぶりだ。ポーランドからの増援といういい意味での計算外が発生したことも含めて、オペレーターの興奮は無理のないことかも知れない。

('A`)「………ツー」

だが、俺はまだオペレーターの歓喜に同調するつもりはない。

(*゚∀゚)「あん?」

('A`)「後退の用意しとけ。ティーマス達にもハンドサインで伝えろ」

作戦が終わっていないからと言うこともあるが、何よりも絶対に忘れるべきではないことが一つ。

“此方にとっての優勢は、敵にとっての苦境”だ。

(*;゚∀゚)「え、なんで?」

('A`)「いいからすぐに準備だ。合図があったら走れ」

《Graf Zeppelinより前線、レーダーに感あり!!》

向こうが、このまま無策で前段艦隊の壊滅を待つはずが無い。

《機影100余、ポーランド空軍と交戦中の主力部隊とは別に低空域で突入!

マントイフェル少尉、全機が貴方のところに向かっている!注意しろ!!》
329 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/09(金) 01:15:24.73 ID:89CTCDsC0
グラーフからその報告が無線越しに伝えられた瞬間、俺はホ級elite等残った深海棲艦達に背を向けて走り出す。ツーが直ぐに続き、ティーマスやサイ大尉、ベーデカーも次々に物陰から立ち上がり踵を返す。

(;'A`)「ツン、援護を!!」

ξ#゚听)ξ「任せなさい!!

Feuer!! Feuer!! Feuer!!」

( ’ t ’ #)「※※※※!!」

『ギアガッ!?』

『ァアアァア……』

味方陣地へ疾走する俺達とすれ違い、砲弾が風を蒔いて敵艦隊を襲う。攻撃態勢に入ろうとしたロ級が側面と正面から同時に十数発の砲弾を受けて蜂の巣になった。

(=#゚ω゚)ノ《マントイフェル少尉、そっちに砲撃が行ったよう!!衝撃に備えて!!》

間髪を入れずCPからの報告。榴弾が雨空から降り注ぎ、炸裂。爆発音と着弾音、ホ級共が上げる断末魔が次々重なり、筆舌に尽くしがたい不協和音のオーケストラが開催される。

(;'A`)「っととと!?」

『アァ………ァァァァァ……』

十何発目かの弾着で引き起こされた揺れに足を取られ、俺は前のめりにすっ転びつつ味方部隊の展開地点まで何とかたどり着く。

背後では、弱々しい鳴き声と湿った地面に重い何かを横倒しにしたような音が響いた。

《イ級elite、沈黙!》

ξ#゚听)ξ「そのまま撃ち続けて!ドク、怪我は!?」

('A`)「おかげさまで五体満足だ!

ティーマス、欠員は!?」

( <●><●>)「ご安心を、全員無事なのは既に解っています」

('A`)「よし!間もなく敵機が来るぞ、総員対空警戒に移れ!!」

俺の叫びにまるで合わせたようなタイミングで、真正面……つまり西側から砲声に混じって微かに聞こえてくるレシプロエンジンの音。音源はぐんぐん近づいてきており、会敵が間もなくであることをご親切に俺達に教えてくれる。
330 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/09(金) 01:37:29.02 ID:89CTCDsC0
ξ;゚听)ξ「ドク、別働隊はどうする?!退避させるなら直ぐに動かすけど……」

('A`)「いや、退避は必要ない。それと正面戦車隊も深海棲艦への攻撃は続行!ただ機銃の仰角は調整しておいてくれ!」

ξ゚听)ξ「解った!各機銃手、対空戦闘用意!!」

絨毯爆撃によるベルリン全域の焦土化を狙ったことからも解るとおり、深海棲艦側は既に悪天候化の急降下攻撃は最早効果がないことを“学習”した。

そして、大物量による無差別攻撃が“国外からの増援”という彼我どちらも想定していなかった事態で頓挫した以上、空襲方法は自然と先程俺達に対して大きな成果を上げたもう一つの方法────低空域での平面飛行から対地掃射に限られる。

加えて言うなら、敵機は前線の中央に布陣する俺達に戦力の全てを注ぎ込んできた。おそらく戦況の推移や増援戦力の流入の仕方を観察した結果、軽巡棲姫はここが人類側前衛の中枢だと見抜いたのだろう。

《接敵30秒前!!》

急速に近づいてくる艦載機の飛翔音を聞きながら、俺はつくづく思う。

《敵機、来襲!!》


('A`)「C-4、爆破!!」

敵が予想通りの動きをしてくれたのは、本当に幸運だった。
331 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/09(金) 02:08:13.70 ID:89CTCDsC0
道路両脇に立ち並ぶ、幾つかのビルや家、或いはその残骸。

特に三階建て以上のものに重点的に仕掛けられていたありったけのC-4爆弾が、海兵隊の起爆スイッチによって一斉に炸裂する。

同時に、ダイレクトアタックモードで待機していた虎の子のジャベリン数門も火を噴き、次々と建物に着弾した。

『『『!!?!??』』』

道路に面する側の壁が吹き飛び、窓ガラスが粉砕され、屋根の一部が飛び散る。

敵艦隊と俺達の間に横たわる、700Mの空間。艦載機隊の突入コースでもあったその空間は、C-4爆弾の起爆によって飛散した礫の散弾に覆い尽くされた。

『────!!?』

『!!!?』

『───………』

時速六百キロで低空通過する戦闘機など、人間の動体視力で捉えるには限界がある。だが、艦娘達が使う“三式弾”の要領で「敵機の軌道そのもの」を攻撃すれば話は別だ。

同高度で飛散した礫は突入してきた【Helm】達を真横から撃ち抜き、軌道を遮って激突させ、上から降り注いで押し潰す。少し大きめの“瓦礫”が落下した時など、一気に七、八機が上から押し潰される形で粉砕される。

艦載機達に届かない、更に下側の“散弾”も敵機の入射角を妨害する。何より厄介なことにこれらは意図的に狙って放たれる弾丸ではない。軌道も速度も大きさもすべてがランダムであり、密集して突入してきた敵編隊は回避も攻撃もままならず撃ち抜かれ羽虫のように堕とされてく。

('A`#)「Flak Feuer!!」

(#<●>∀<●>)「フゥハハハハハーーーーー!!!!人類の敵は消毒だぁあ!ーーーーー!!!」

(*;゚∀゚)「ヒェッ」

ξ#゚听)ξ「全車両一斉射!!撃てぇえええ!!!」

散弾の飛散空域から逃れるべく上昇する敵機は、統率も取れていなければ速度も大きく落ちている。200前後のアサルトライフルによる一斉射や戦車隊の機銃掃射、何よりも、【シルカ】の対空弾幕を切り抜けられるはずがない。

( <●><●>)「───【Helm】、最後の一機を撃墜」

ξ#゚听)ξ「視認できる後続の敵影無し!頭上安全確保!!」

敵航空隊は、全滅した。
332 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/09(金) 02:50:14.48 ID:89CTCDsC0
『ォオォォォォ………───』

「Enemy down!!」

散弾攻撃の間も、側面部隊による攻撃と迫撃砲隊の支援は当然継続している。

数を減らし、航空支援も不発に終わったホ級達に最早抵抗の術が残されていなかった。

航空隊の殲滅劇が終わる頃、正面でもう1体のイ級eliteが火達磨になりながら息絶える。

残るは、ホ級とロ級の2隻のみ。

《敵前段艦隊、戦力稼働率20%切りました!》

(=#゚ω゚)ノ《Graf Zeppelin以外の全ての艦娘部隊に通達!!速やかに戦闘態勢!!

ドク=マントイフェル少尉からの合図があり次第突入せよ!!》

《Jawohl!!

ようやく真打ち登場なのね、本当に待ちくたびれたわよ!!》

《此方Graf Zeppelin、共に前衛で戦えないのは残念だが艦載機の用意は出来ている!指示があればいつでも飛ばせるぞ!!》

《Prinz Eugenより全戦隊、敵艦隊の増援未だ無し!戦況我々に極めて優勢です!!》

《CPより前線各位、Mi-24の第4波が突入開始!!

どうやら我々の奮戦が伝わっているらしい、過去に類を見ない大編隊だ!巻き込まれるなよ!!》

飛び交う通信は、今や活気に満ちあふれ誰もが力強い声でやりとりをしている。まだ中核艦隊が残っていることは皆理解しているだろうが、此方にもBismarck zweiを筆頭に艦娘はいるのだ。

極めて軽微な損害で前段艦隊を殲滅しつつあり、続々到着する援軍のおかげもあって質量共に充実した装甲戦力も合わせれば戦力比でも完全に敵艦隊を逆転している。油断は出来ないが、俺達は「勝機」と十分にいえるものを手にした。

────だと、言うのに。

(;'A`)「…………」

( <●><●>)「………少尉?」

俺の脳裏を過ぎったのは、何故か“奴”の満面の笑みで。

《Mi-24第4波、後五秒で─────!?》

その予感を裏付けるように。

数機の【ハインド】が、弾丸に貫かれて火の玉に変わる。
333 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/09(金) 03:14:33.93 ID:89CTCDsC0
新たに空を照らす、四つの炎の華。交わされていた無線が一瞬完全に沈黙し、何人かの息を呑む音が伝わってきた。

《………!? ゆ、友軍機、次々と被弾撃墜!!》

《墜落してくる、散開しろ!》

まるで呆けたように空中で一斉に動きを止めてホバリング状態になっていたMi-24の編隊は、五機目の犠牲が出たところで我に返り慌てて散開運動を開始。

だが、乱れた隊列に容赦なくその正確無比な砲撃は叩き込まれる。六つ、七つと落下する火の玉が増えていき、街のあちこちに突き刺さる。

幾つかの悲鳴が、爆発音と共にぷっつりと途切れた。

(=;゚ω゚)ノ《CPよりマントイフェル少尉、今のは敵前段艦隊の砲火か!?》

('A`;)「いや、違う!!それより遙かに遠くだ!!ベルリンの西………シュパンダウ区からの砲撃と思われる!!」

(=;゚ω゚)ノ《シュパンダウ区………》

ξ;゚听)ξ「冗談でしょ?それってつまり───」

《前線各位、此方Prinz Eugen!!西部街区から“艦影”が急速に接近!!

敵艦数は6、全て“ヒト型”です!!》

プリンツの絶叫に近い報告が、俺達の鼻先に改めて“絶望”を突きつける。

《おそらく中核艦隊の構成艦と思われます、後数十秒で接敵───何よこれ、あいつらどこでこんなものを………》

混乱の極みに達したプリンツの無線越しの声は、途中で遮られて聞こえなくなった。

その方角から聞こえるはずのない、複数の“エンジン”が奏でる駆動音と。

艦砲射撃による、轟音で。
334 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/09(金) 03:42:46.13 ID:89CTCDsC0
( A ;)「…………っっっ!!」

まるで、思い切り頭を殴りつけられたような衝撃。

僅か数メートル背後で巻き起こった大爆発が発する熱と音量、そして閃光が五感を麻痺させ一瞬俺の意識を現実から切り離す。

飛びかけた意識を繋ぎ止めたのは、皮肉にも火達磨で落下してきたPT-91【トファルデ】が地面に叩きつけられる二度目の轟音だった。

('A`;)「……クソッ、被害報こk」

俺の隣で、「ぐしゃっ」というトマトが潰れたような生々しい音が鳴る。

首から上がぐちゃぐちゃのグロテスクな肉塊に変わったベーデカー軍曹の胴体をそのまま踏みつぶして、騒々しいガスの排気音をまき散らしながら一台のドデカイバイクが飛び込んできた様が、まるでスローモーションのように俺の視界に映し出された。

どう考えても正規品ではない、例えばアーノルド=シュワルツェネッガーやジェイソン=ステイサムが乗っている方が様になる化け物じみたデカさのソレが、そのまま100Mほど前進した後ドリフトしながら俺達が展開するT字路の丁度真ん中辺りで停車する。

『〜〜〜♪』

バイクに跨がっていた黒髪の女は、鼻歌交じりに右腕を近くのビルに向けた。

( ゚ t ゚ ;)「──────!!!?」

「艤装」が、腕周りに展開される。

「────重巡リ

主砲を向けられたドイツ兵の最後の叫びは、砲撃に飲み込まれ掻き消えた。
335 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/06/09(金) 03:44:02.84 ID:89CTCDsC0
どうにかこうにか目標の場面まで……ようやく本当に「あと少し」のところまでたどり着きました。

今更新ここまで、今しばらくお付き合いいただければ幸いです
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/09(金) 08:01:22.11 ID:nW807Z8s0
とうとう名有りに死者が…
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/09(金) 10:05:50.38 ID:tRvaf8uA0
乙です!
希望を鼻先にちらつかせつつ粉砕しにくる鬼畜と、それを予見しきれる主人公なんだから本当に凄い(なお実力差
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/09(金) 12:44:23.72 ID:eRVENTReo
もうだめだあ…おしまいだあ…
339 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/06/09(金) 23:29:07.46 ID:89CTCDsC0
体調不良に付き更新お休みと致します。申し訳ございません。
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/10(土) 17:05:31.73 ID:uN7VJoLPO
ヴィルヘルム2世「大儀である。ゆっくり休んでくれたまへ」
341 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/10(土) 23:33:20.01 ID:Ha2dbAED0
素人目にも違法な改造がたっぷり施されていると解る、派手な塗装に規格外の図体を持った世紀末仕様のバイク。

その上からひらりと舞い降りて傍に立ったソイツの────リ級eliteの紅い二つの瞳が俺を真正面から見据えた。

(;'A`)

『────』

視線が交わったのは、刹那。瞬き一度分の間にすらならない。

当然言葉など発せられていないし、発していたとしてそれが意思疎通を可能とする「音」にするには時間が足りない。そもそも、奴らが人語を俺達に解る形で実際に喋ることが出来るのかも甚だ疑問だ。

だが、俺はその時、奴の感情を確かに「聞いた」。

奴の言葉を確かに「感じた」。












サァ、私ト遊ボウ。
.
342 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/10(土) 23:42:17.62 ID:Ha2dbAED0
(;'A`)「全歩兵隊、目標を重巡リ級eliteに変更しろ!!」

ざわりと肌が粟立ち、背中に先程の何十倍も強い寒気が走る。ほとんど反射的に叫びつつ、G36Cを俺自身もリ級eliteに向ける。

(;'A`)「戦車隊への攻撃を絶対に許すな!倒せなくてもいい、とにかく攻撃を集中して足だけでも止めろ!!」

「「「Jawohl!!」」」

当然歩兵の携行火器などどれだけ寄せ集めても効果が無いとは解っているが、撃たずにはいられない。指示を出さずにはいられない。

一応言葉にしたとおり、ツン達装甲車隊を破壊させないという理由もあるにはある。残りたった2隻とはいえ前段艦隊は全滅には至っていない。ここで戦車を潰されてホ級達の雪崩れ込みまで受ければ、俺達の区画は全滅も十分視野に入る。最低限正面の敵艦隊を完全に沈黙させるまでは、別働隊との連携を維持して戦車隊に働いて貰う必要がある。

それでなくても向こうが撃ってくるのは重巡の主砲撃だ。密集した状態で直撃を受ければ、それだけでも損害は甚大になる。

だが、そう言った理屈や理論は全て建前に過ぎない。

割合として最も大きく、かつ単純な理由は、恐怖。

奴の感情を知ることで唐突にわき出た恐怖と嫌悪が、俺を攻撃に突き動かした。

(;'A`)「────Feuer!!」

全身に靄のように纏わり付く恐怖を振り払おうとするように、俺は声を限りに叫ぶ。

幾十の砲撃が、幾百の銃撃が、全方位から“化け物”に殺到する。
343 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/10(土) 23:52:14.01 ID:Ha2dbAED0
『……………』

仮に非ヒト型であればflagshipですら一息に沈められそうな、まさに“弾幕はパワー”を地で行く猛射撃。

息を継ぐ間すらなく注ぎ込まれる弾丸の群れが自身を守る障壁の上で弾けて火花を散らす様を、リ級eliteは腰に手を当てて立ち尽くしながら見つめている。

………ツンがル級と遭遇した際には、ミルナ中尉等歩兵隊の攻撃もダメージを与えた様子は無いもののル級の動きを封じる役には立っていたという。eliteとはいえあくまで重巡、耐久力や装甲値、馬力などは戦艦に劣るはずだ。

それらを考慮すれば、「重巡リ級eliteは俺達の猛攻に動きを縫い止められている」というのが本来導き出される自然な結論。

だが、銃火と爆光の合間から見える奴の視線がそれを真っ向から否定した。

『…………?』

(;'A`)(………あの時と同じだ、おちょくってやがる!)

タホ川で俺達の攻撃をわざわざスレスレで回避しながら見せた、戯ける子供のような表情。小首を傾げ、もう片方の手をこめかみに当て、此方の動きを観察しているような視線の動き。

弾幕の中で相変わらず立ち続ける姿は街角でくつろぐティーンエイジャーのようで、少なくともアレを「凄まじい攻撃の圧力のせいで動けない」状態に見えたとしたら俺は精神異常者だ。

薄ら笑いと共に細められた眼が、口より遙かに雄弁に奴の「言葉」を物語る。

マサカ、コレデ終ワリジャナイダロウネ?

モウ少シ、オモシロイモノ見セテヨ。

('A`)「………なら、お望み通りにあっと驚かしてやるよ」
344 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/11(日) 00:30:59.49 ID:JslRmT7e0
小銃の銃口を心持ち奴の眼の辺りに持っていきながら、一瞬近くにいた海兵隊の一人にハンドサインを送る。彼は即座に頷くと、さりげなく別の射撃を行っている兵士の影に隠れて腰に手をやり何かを取り外した。

ツンがル級と交戦した際に、“それ”は非常に大きな効果を発揮したという。考えてみれば当たり前のことだが、ヒト型の障壁は閃光や音といったものまで完全にシャットアウトしてくれるわけではないらしい。

別に、必ずしも攻撃だけが方法ではない。強烈な光と予期せぬ大音響は、時として銃口を突きつけるよりもよほど確実に敵の動きを止めてくれる。

「Flash Ban!!」

叫び声と共に投げられる閃光弾。正確なコントロールで飛ばされたそれは、ノーバウンドでリ級の足下まで到達する。

『────♪』

(;゚A゚)「………はっ!?」

かつん、かつんと、二回乾いた音がした。

地面を閃光弾が撥ねた音ではない。それは、リ級eliteがまるでブンデスリーガのような鮮やかな足捌きで閃光弾をトスし、そのまま背後に蹴り上げた音。

( ゜ t ゜ ;)「────!!?」

低いライナー性の弾道で更に飛距離を伸ばした閃光弾は、リ級eliteを背後から攻撃していた部隊────カルリナ達ポーランド兵とドイツ軍の混成部隊が敷く隊列の真っ只中で炸裂した。

(   t   ;)「……………ッッッ!!!」

「※※※※!?」

「※※※……※※……」

「な、何が………」

「クソッ、おいしっかりしろ!敵はまだ健在だぞ!!」

フラッシュと、殺傷力はほとんど無い爆発音が連なり鳴り響く。200メートル以上離れた此方にはほとんど影響がないが、問題は信じがたい奇襲でこれを至近距離から諸に受けたカルリナ達だ。

凡そ70名ほどの部隊は、前衛の約半数は完全に機能が停止していた。耳を抑えながら蹲るなどして咄嗟に回避したり閃光弾の効果が十分に行き届かない位置取りだった残りの半数も、味方の介抱や戦列の組み直しに追われて完全に攻撃の手が止まった。

途端、リ級が動く。
345 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/11(日) 01:11:23.76 ID:JslRmT7e0
undefined
346 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/11(日) 01:17:50.92 ID:JslRmT7e0
『─────!!!』

(;゚A゚)「伏せろ!!」

(;//‰ ゚)「Shit!!」

ξ;><)ξそ「きゃああ!?」

「※※※ッ!!?」

両手の艤装が同時に唸り、俺達と奴の右側面から攻撃をかけていた部隊に機銃掃射が襲いかかる。直ぐ後ろでホ級達への攻撃を継続していた戦車三両の装甲にも弾丸が降り注ぎ、レオパルト2A4の車上でポーランド兵が一人後頭部を撃ち抜かれてハッチの中に崩れ落ちた。

『─────!』

(;<●><●>)「リ級、後衛部隊に突貫!!」

珍しく動揺が露わになったティーマスの声を尻目に、少し芝居がかった動きでバイクを飛び越えながら疾走。砲撃する素振りは一切見せず、カルリナ達めがけて疾走していく。

「………なっ!?り、リ級接きn」

「総員白兵用i」

最初に気づいたドイツ兵二人が、進路を塞ごうと飛び出す。

振りかぶられる拳。生々しい破砕音と共に一人の頭がはじけ飛び、もう一人は動きの延長で繰り出された回し蹴りに四肢を飛散させながら胴体だけがビルの壁に叩きつけられた。

『───!!』

「く、来るな!!来るなぁ!!!?」

「※※※※※※※※!!!!」

何人かの後衛兵が半狂乱で小銃弾をばらまくが、当然そんなもの微塵の効果もない。

「ひっ」

『ッ!!』

上から抑え付けるようにして右手を振り下ろし、最前列にいた小太りの兵士が短い悲鳴を残して上からぐしゃりと潰される。

元は人間だった赤い肉塊を踏み越えて、リ級eliteは文字通り後衛部隊に“殴り込ん”だ。

(;*゚∀゚)「おいドク撃とうぜ!このままだと後衛が全滅だ、効かなくても気ぐらい引かねえと!!」

(;'A`)「バカか、あの乱戦状態にぶっ放したらいくら何でも味方撃ちは避けられねえぞ!!」

とはいえ、待っていたところで状況はどのみち悪化の一途だ。あの弾幕が動きの抑制効果すら得られていなかった以上どのみち限りなく絶望的であるにしろ、座して全滅を待ってやれるほど此方は潔い人間性ではない。

それに、同僚だけではなく核をぶっ放されるかもしれない国に外から増援に来てくれた奴らも“遊ばれて”いるのを見殺しにできるほど、【有能な軍人】でもない。

(#'A`)「ツン!戦車の稼働状況とホ級共の状態を!」

ξ;゚听)ξ「別働隊は全車両健在、私達も損失はさっき破壊されたトファルデのみ!機銃手が一人やられたけど継戦には問題ないわ!」

(#'A`)「引き続き前段艦隊への攻撃を続行、それと後続の“バイク”に気をつけろ!!

────総員、目標重巡リ級elite!

Los Los Los!!」
347 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/06/11(日) 01:19:09.37 ID:JslRmT7e0
今更新ここまで。今月中頃には終わるかなといったところです。
ご静聴ありがとうございます
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 01:46:24.19 ID:AeQid7eA0
おつです
流石に蹂躙されるが、ここまで破天荒な敵相手じゃ最大戦力でなんとか凌ぎつつ、更に何らかの有効打を…まじで無理ゲーだなw
349 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/11(日) 23:32:45.29 ID:JslRmT7e0
幾らかの随伴歩兵を戦車隊の周りに残して、響く砲声を背に後衛に向かって走る。

( ’ t ’ ;)「※※※、※※!!」

『………』

リ級は、更に前へ。何とかフラッシュバンの衝撃から立ち直ったカルリナ達が至近距離から弾幕を浴びせるが、それをものともせずに踏み込むと、低い姿勢から拳を固めて振り上げた。

「プヘッ」

ブチュリ。筋繊維と血管がまとめて引きちぎられる音がここまで聞こえてきて、拳を受けたポーランド兵の首が千切れて天に舞い上がる。

「お゛ぁっ!?」

やけくそに近い形で別方向から飛びかかった兵士の腹には、肘打ちが(まさしく)突き刺さった。血と内蔵が破れた肉の隙間からぼたぼたとこぼれ落ち、奴の腕を伝って足下に生臭い水溜まりができる。

(#'A`)「狙え、撃て!!」

( <●><●>)「Allemann sperrfeuer!!」

リ級が乗ってきたバイクを踏み越え蹴倒しつつ、暴れくるうリ級に背後から肉薄。残り50メートル程まで詰めたところで、俺とティーマスを含めた20人ばかりがリ級への射撃を再開した。

『─────』

「Oh !?」

リ級の反応は早かった。首無しポーランド兵の肩の辺りを鷲掴みにし、振り向き様に俺達の方へ投げつける。

全盛期ボリス=ベッカーの全力サーブを彷彿とさせる勢いでそれは飛来した。俺達に後続してきた海兵隊の一人に屍体の砲弾が直撃し、彼は低い呻き声と共に吹き飛ばされた。

『♪』

(*;゚∀゚)「来たぞおい!!」

(;'A`)「畜生が!!」

(;<●><●>)「っ」

そのまま、タックルをかますレスリング選手のような姿勢で突進してくるリ級elite。当然銃弾で止められる筈はなかったので、隣のティーマスを咄嗟に蹴り飛ばしつつ自身も真横に転がる。

俺とティーマスが直前まで立っていた場所に叩き込まれる拳。殴られた箇所を中心に、およそ1メートル四方の地面がひび割れ陥没した。
350 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/11(日) 23:43:12.49 ID:JslRmT7e0
undefined
351 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/11(日) 23:51:15.43 ID:JslRmT7e0
(;'A`)「【Astro Boy】かっての!!」

直ぐに地面から飛び起きてもう一度リ級に射撃を加えつつ頭を過ぎったのは、ガキの頃にちらりと目にした日本の古いアニメーション。そのアニメの主人公である少年型の高性能ロボットは、テレビ画面の中で10万馬力のパワーを振るい悪役達を次々とぺしゃんこにしていたのを覚えている。

ただし、世界的に有名なコミック・アーティストが生み出したそのロボットは正義の味方であり、決して人間に拳を振りかぶることはない。

『────♪♪♪』

…………それに俺の記憶が正しければ、悪役をぶちのめすときにしてもこれほど獰猛で凶悪な笑みを浮かべて武力を行使してはいなかったはずだ。

『────!!!』

(;'A`)「っ………ぐぁっ!?」

ほとんど零距離射撃だったはずだがやはり微塵も影響はない。拳を地面から引き抜くや否や飛びかかってきたリ級は、今度はぐるりと体を捻り回し蹴りをかましてくる。

身をかがめて躱すが、風圧だけでも首がもぎ取られるのでは無いかというほど凄まじい衝撃が走る。堪えきれず、そのままごろごろと数メートルにわたって水浸しの路上を転がる。

「※※※※!!」

『────』

俺が離れた隙を突いて、ポーランド軍のハンヴィーが機銃掃射をかける。が、リ級は其方を見向きすらせずに艤装だけ構え、砲撃。火柱が上がり、銃声が止まった。

「少尉、離脱を……がっ!?」

「Ah………」

今度は海兵隊とドイツ兵が数人ずつ、両側から挟み込むように展開して牽制射撃。リ級は両腕の機銃を同時に放って彼らをなぎ倒しながら、なおも俺を追撃する。

( A ;)「うぁっ────!?」

『〜〜♪』

ようやく起き上がりかけていた俺に、奴の拳が迫る。咄嗟に横に転がって直撃こそ免れたが、先程より遙かに近くで感じた拳圧は爆風のそれと大差が無い。

゚∴・( A ;)「ゴアハッ……!」

衝撃で再び身体が浮遊し、叩きつけられた場所はさっき俺が蹴倒した奴のバイク。呼吸が止まり、背中と脇腹の辺りでビキリといやな音がした。

ξ;゚听)ξ「ドク!!!」

(;<●><●>)「少尉!!」

ティーマスとツンの叫び声に続いて、四方でアサルトライフルや機関銃の乾いた発射音が重なる。幾十の銃火が障壁上で爆ぜるが、それらを意に介す素振りすら見せずリ級は満面の笑みを浮かべながらゆっくりと俺に向かって歩いてくる。
352 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/11(日) 23:55:22.94 ID:JslRmT7e0

『〜〜〜〜♪』

(; A )「………」

バイクの上で仰向けになったまま、銃声に混じって朦朧となっている意識に微かに聞こえるリズム。

それは、確かにリ級の歩みに従って近づいてきている。

(;'A )「……鼻歌なんぞ歌いやがって」

明確に奴の「声」だと決まったわけではないし、仮にリ級が音の主だとしてもそれがどこから出されたものかも解らない。更にいえば、例えばその音が他の深海棲艦への通信波のようなものである可能性も捨てきれない。

だが、なんとなく俺は確信していた。その独特のリズムで奏でられるなんとも形容しがたい不可思議な音は、間違いなくリ級eliteの発する“鼻歌”だ。

(;'A )「……っ」

たいそう上機嫌で近づいてくるリ級eliteから逃れようと、僅かに自由が利く手で下のバイクを押して身体を動かそうとする。酷く緩慢な動作で数ミリずつずれていく俺の様子を見て、奴の笑みが一段深くなった気がした。

(#<●><●>)「───────ぁああああああああああああっ!!!!!」

(;'A`)そ「はっ!?」

『!?』

悠然と歩み寄るリ級に、雄叫びと共に“人影”が衝突した。姿勢を低くして突っ込んできたティーマスが、弾丸のような勢いでリ級eliteの腰辺りに組み付いた。

華奢とはいえ軍人として鍛えた成人一人分の全力の体当たり。流石に転倒したりはなかったものの、リ級eliteの身体が一瞬衝撃で揺れて歩行が止まる。

(#<●><●>)「ツーさん!!」

(*#゚∀゚)「あらほらさっさー!!」

(;'A`)「おおお!?」

ぐいっと肩口が引っ張られ、“自称美人女性兵”が俺の身体をバイクから引きずり下ろしそのまま物陰へ一直線に引っ張っていく。

ちょ待て待て待て待て背中摩ってるいでででででで!!!!
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2017/06/12(月) 00:04:11.01 ID:UBy2Bc3A0
辛抱汁!
背中と命のどっちが大事?

つか生き残ったら絶対ツンが看病に来る。
いやモテ期が来る。
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 00:08:02.84 ID:1ns2sOJzo
ドクはもててるだろ、リ級ちゃんに
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 00:09:47.18 ID:QEHwxYjyo
レっきゅんがまだ来ていないという幸運
356 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/12(月) 00:11:39.08 ID:UzMXyL4n0
『────!!!』

(;< >< >)「カハッ……!」

(;'A`)「ティーマス!!」

リ級は忌々しげに纏わり付いてくるティーマスを睨んだ後、その手をふりほどいた後軍服を掴んで放り投げる。一瞬脳裏を過ぎった強烈な違和感は、正体を追求する前にその光景によって消し飛んだ。

派手な音を立ててティーマスの身体が瓦礫に叩きつけられた。リ級の姿勢が十分に立て直されていなかったこともあり勢いは今までに比べて弱いが、それでも負った傷が小さいとは思えない。

(;'A`)「ツー放せ!ティーマスを……!」

(*#゚∀゚)「その身体で相棒を心配できる心意気は買うけどじっとしてなお馬鹿さん!あんたその身体で何する気だよ!!」

『───……!!?』

俺を怒鳴りつけつつ、なおも一人で引きずっていくツー。追おうとしたリ級の足下に、フラッシュバンが一発投げ込まれる。

『ッッッッ!!!!』

(#//‰ ゚)「Shoot, Shoot!!」

( ’ t ’ #)「※※※※!!」

今度はしっかりと至近距離で炸裂した閃光と爆音。仰け反るリ級に向けてサイ大尉指揮下の海兵隊が弾幕を張り、完全に態勢を立て直したカルリナ達も射撃に加わった。

リ級の足が止まる間に、俺はツーによって再び戦車隊の近くまで来て崩れ落ちた建物の影に引き込まれる。

(*;゚∀゚)「ぷぇー…あっぶね!」

ξ;゚听)ξ「ドク、ドク!!ねぇ、ドクは無事なの!?」

(*゚∀゚)「安心しねぇフロイライン!我らが少尉殿は生きてるよ!」

ξ; )ξ「………っ!別に心配してないけど、心配かけないでよバカ!!」

('A`;)「どっちだよ……」

ツッコミつつも、視界の端でティーマスも海兵隊に回収されていたことに僅かに安堵の息が漏れた。
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 00:20:12.83 ID:QEHwxYjyo
ドクオとティーマスをミンチにしないんだな
358 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/12(月) 00:32:11.73 ID:UzMXyL4n0
『ォオオオオオオ………』

俺が救出されてからほとんど間を置かず、戦車隊の向こう側で上がった呻き声。地面に重い何かが倒れ込み、レオパルト2A4の戦車兵が拙い発音の英語で「エネミーだうん!!」と叫んだ。

('A`)「ツン!!前段艦隊の状況は!?」

ξ;゚听)ξ「今し方ホ級eliteが完全に沈黙したわ!ロ級は既に倒してあるから、これで私達の正面は完全に殲滅よ!

……ってかあんたね」
??_,
(*゚∀゚)「今し方大ダメージ食らって運び込まれたのにもう戦況の確認とは恐れ入ったね。佐官になったらあたしの昇進もついでに頼むよ」

('A`;)「冗談抜かせ、これ以上階級上がったら面倒くさくて仕方ねえだろうが」

……ツンやツー以外に、随伴していたポーランド軍や海兵隊、連邦共和国の同胞諸君からまでじとっとした視線が突き刺さった。その目つきやめてイタイイタイ、ついでにいうと肋も痛い。

('A`;)「あー……ツー、リ級の様子は?」

(;*゚∀゚)「とりあえずサイ大尉達とカルリナ准尉達が止めてくれてるけど、あんなんだから直ぐに立ち直るだろうし………うぉおおおっ!!?」

『…………ッ!!!』

数十人分のアサルトライフルを束にしてもかなわない、凄まじい銃撃音が区画に鳴り響く。更に間髪を入れず、上空から飛来した対戦車ミサイルが数発連続してリ級の障壁に着弾し爆炎をまき散らす。

「Air sport incoming!!」

先程敵艦隊に追い散らされた編隊の生き残りなのか、或いは新手なのかは判別が着かない。とにかく上空に三度現れたMi-24ヘリが、リ級に向けて猛然と攻撃を開始した。
359 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/12(月) 00:56:18.04 ID:UzMXyL4n0
「友軍機対地掃射、リ級eliteに全弾集中!!」

「リ級elite動きません!攻撃を受け続けています!!」

「やれやれやっちまえ!そのままぶっ殺せ!!」

戦車隊に随伴していた面々はやんやの歓声を上げ、その声援に応えるようにMi-24による空襲は一段と激しさを増した。ロケット弾とミサイルの雨にチェーンガンの猛射も加わり、リ級の障壁上から爆光が途切れる様子はない。

先程は奇襲砲火によって一方的に撃墜されたが、本来戦闘ヘリの火力は“ヒト型”にとってもある程度高い脅威度を誇る。少なくともこうも一方的に受け続けていいものではないはずで、俺達陸の人間をわざわざ格闘戦でいたぶるのとはワケが違う。

そのため、艤装による反撃の素振りも見せず攻撃を受け身動きをしないリ級の姿は、確かに周りから見れば“攻撃すらできない”ように見えるのだろう。

────だが俺は、遠目にもかかわらず奴の「眼」に気づいてしまった。

苦痛というよりは不機嫌…………例えるなら最高に楽しい遊びを邪魔された子供のような、幼くも獰猛で残忍な光を宿した「眼」が。

(;'A`)「………逃げろ!!逃げろ!!」

『───────!!!』

聞こえないと解っていても、声を限りに叫ぶ。同時にリ級は、おもむろに足下から何かを持ち上げそれをMi-24めがけて無造作に投げ上げた。

グシャリ─────その音は、Mi-24のコックピットが叩きつけられた大型バイクによって潰されたことによって発せられたもの。

(*;゚∀゚)「…冗談じゃねえぞ!!!」

('A`;)「逃げろ!!退避、退避!!」

ξ;゚听)ξ「戦車隊全速前進!!」

コントロールを失ったMi-24【ハインド】が、激しく回転しながら此方に向かって墜落してきた。ほとんど反射的に痛む身体を堪えて立ち上がり、物陰から飛び出して疾走する。

「※※※※!!?」

先程ホ級の撃破を報告した兵士の乗るレオパルト2A4のスタートが、計器のトラブルか動き出しが遅れる。

「〜〜〜〜〜〜っ」

無情にもその車両に向かって、Mi-24は堕ちていき────




  _
(#゚∀゚)「Leberecht!!」

「Jawohl!! Feuer!!」

12.7cm連装砲の砲撃によって、衝突の直前に空中で爆散した。
360 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/06/12(月) 00:59:43.14 ID:UzMXyL4n0
さわりまで行きたい(行けるとはいってない)

本日ここまでです、いつもとほとんど変わらない長さになってしまい申し訳ありません。いい加減れっきゅんや軽巡棲姫出さないと……
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 01:03:21.16 ID:QEHwxYjyo
おつー
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 01:05:27.60 ID:GQxHb/Alo
おつです
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 01:08:48.93 ID:fwG2UFekO
364 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/15(木) 00:01:24.29 ID:qoUzhAK/0
「続けて撃ちます!! Feuer!!」

『………!』

更に二回、右手に構えられたレーベレヒトの連装砲が火を噴いた。今度の砲弾は立て続けにリ級に着弾し、障壁がチカチカと明滅する。

駆逐艦とはいえ艦娘の攻撃。流石に勝手が違うようで、僅かだが明確な“焦り”の色を浮かべて奴はレーベレヒト達から距離を取った。

『────!!』

「わっ!?」

リ級の艤装が起動し、反撃の砲火。横っ飛びで躱したレーベレヒトの背後で、既に半壊状態だったビルが直撃弾によって消滅する。

戦車や護衛艦でもほぼ一撃で粉砕される通常兵器より遙かにマシとはいえ、艦種がもたらす火力差はあまりにも大きい。まともに食らえば一発で中大破の大打撃を被る可能性も十分だ。

('A`#)「ツン、戦車隊全車両の火力をリ級に集中!効かなくてもいいから機銃もぶち込め、とにかく奴への攻撃を絶やすな!」

ξ#゚听)ξ「解った────Feuer!!」

『……ッ』

反転を終えたツン達を含め、7両の戦車隊による砲撃。レーベレヒトの存在にリ級が気を取られていたことも有り、この内五発が甲高い金属音を立ててリ級に命中した。

『────』

《うわっ!?》

反撃の砲火は狙いを急に変えたせいか照準が定まっておらず、頭上を飛び越えて数キロ先で炸裂する。乗り捨てられた自動車でも巻き込まれたのか、何か大きな鉄の塊が地面に叩きつけられたような音がここまで届く。

「Feuer!!」

『ッッッ!!?』

すかさず、態勢を立て直したレーベレヒトが全ての艤装を稼働させ一斉射をリ級に浴びせかける。

真正面から斉射を受けたリ級の身体が衝撃で僅かに浮き上がり、艤装と障壁からバチバチと火花が飛んだ。
365 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/15(木) 00:06:04.64 ID:qoUzhAK/0
undefined
366 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/15(木) 00:10:30.10 ID:qoUzhAK/0
  _
(#゚∀゚)「クソッタレ、【ハインド】が堕とされたのが痛ぇ!

レーベは戦車隊と連携してリ級に攻撃続行、俺も援護に回る!ビロード、負傷者の救援と残存兵力の回収を急げ!!」

「解った!」

(;><)「了解なんです!!」
  _
(#゚∀゚)「Allemann vorwarts!」

「「「Jawohl!!」」」

ポーランド軍と合流する形で進み出てきたジョルジュの部隊が、半円形の隊列でリ級を包囲して弾幕射撃に移行する。携行砲や手榴弾も総動員しての猛攻だが、今度はここにレーベレヒトの“軍艦の火力”と戦車砲の砲撃が加わっている。

『グゥッ…………!』

膨大な至近弾が巻き上げる泥に視界を遮られ、全方位から襲い来る火線の爆圧に動きを封じられるリ級。轟音渦巻く中で微かに漏らされた奴の苦悶の声を、俺は確かに耳にした。

(*゚∀゚)「おっほー、艦娘の到着かよ!」

戦車隊の砲撃音にさえ負けない歓声を張り上げながら、横でツーが嬉しそうに手を叩く。

(*゚∀゚)「温存してたZ1達を出してきたってことは、いよいよこっちの反攻ってことか!?こっからがーーーっと向こうの大将首を取りに行くんだろ!?な、そうだろドク!?」

('A`;)「お前のいうとおりだったらさぞや素敵なんだがな……!」

さっきの今でその考えにたどり着けるお気楽思考は羨ましい限りだが、プリンツの報告によれば突入してきた敵艦隊は全てヒト型───つまり基本的には重巡洋艦以上の艦種になる。

軽巡と駆逐しか居なかった前段艦隊との攻防でもあれだけ青息吐息だったのに、通常兵器のみで食い止めきれるわけがない。このリ級eliteのように敵艦隊が全て“遊び”に走ったとしても、もって10分あるかないかといったところだろう。

即ち前線へレーベレヒトが突入したのは、温存する“必要”がなくなったからではなく“余裕”がなくなったからと考える方が遙かに自然だ。

それでも僅かにツーの予想通りにならないかと叶わぬ思いを抱きつつ、イヨウ中佐に無線を繋げる。

(;'A`)「前線よりCP、Z1 レーベレヒト=マース並びに増援部隊と合流を完了した!以後の指示を請う!」

(=;゚ω゚)ノ《CPより前線、無事で何よりだよぅ!早速、合流した部隊と交戦中のヒト型を牽制しつつ速やかに後退を開始してくれよぅ!》

果たして帰ってきた返事は、予想を最悪の形で裏付けた。

(=;゚ω゚)ノ《君達以外の前線部隊は壊滅、敵中核艦隊はシュプレー川を渡河したよう!

トレプトゥ=ケーペニックとパンコウで遅滞戦を展開してるけど、戦況は圧倒的に不利だよぅ!》
367 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/15(木) 00:23:21.68 ID:qoUzhAK/0
(;'A`)「……前線よりCP、侵入した敵艦隊の概要を教えてくれ」

(=;゚ω゚)ノ《右翼、パンコウ区防衛線正面にリ級通常型2、ル級flagship1、タ級flagship1!

また左翼トレプトゥ=ケーペニック防衛線正面に、敵艦影1!》

(;'A`)「1……?」

中央の俺達と交戦するこのリ級もそうだが、あまりに戦力が偏りすぎている。無論ヒト型である以上一隻でも通常兵器相手には十分だろうが、それなりの損耗は強いられるはずだ。

(=;゚ω゚)ノ《………左翼の一隻は、過去に世界中のどの戦線でも確認されていない新型艦だよぅ》

俺の疑問を敏感に感じ取って、中佐は直ぐに補足を入れる。

(=;゚ω゚)ノ《詳細は一切不明だよぅ。身長は此方のZ1やZ3と同じ程度という点と、艤装が巨大な尾のような形をしているという点以外交戦している部隊の混乱が酷くて入ってこない。

コンツィ中尉が戦線の指揮を執っているけれど、左翼の損害拡大は右翼の何倍も早い。ポーランドから派遣されてくる陸軍部隊もピストン投入しているけれど、まるで止められる気配がないよぅ》

(ノA`)「………」

あまりにも絶望的な情報ばかりを突きつけられて、急速に痛み始めた頭を抑える。

例え新型艦であったとしても、ミルナ中尉の経験と指揮能力なら本来十分に対応ができるはずだ。少なくとも、損害を最小限に抑えつつの漸減戦闘程度はわけなくこなせる力があの人にはある。

それが適わぬほどの戦況ということは、“新型”とやらが尋常ではない、まさに規格外の戦闘能力を持っていることの証左。

('A`)「………………」

(*;゚∀゚)「………ドク?どうしたきめー顔して」

('A`)「元からだよ。というかせめて恐い顔にしてくんない?」

同時に、もう一つ気づきざるを得ない事実がある。敵艦隊にそこまで押し込まれているのなら、レーベレヒトだけではなく最早ビスマルクやグラーフも温存する余裕はないはずだ。にもかかわらず、両翼に展開するのはポーランドとドイツの陸軍部隊のみ。

つまりこれは、“艦娘が受ける損害”を最小限に抑えるためのいわば時間稼ぎ。

対深海棲艦兵器として最も有用な存在を確実に逃がすための、“必要な出血”。

('A`)「………ビスマルクとグラーフは、よく納得しましたね」

(=゚ω゚)ノ《……………君ほどの力を持つ尉官と戦えたことを、僕は誇りに思うよぅ》

ベルリン放棄の、下準備。
368 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/15(木) 01:04:13.55 ID:qoUzhAK/0
戦車砲と艦砲射撃の音、銃声が壮絶に混ざりあい辺りを満たす。だが、俺の耳にはそれらの騒音より遙かに重く、大きく、イヨウ中佐の淡々とした語りが響く。

(=゚ω゚)ノ《言いたくないけれど、最早大勢は決したよぅ。ベルリン放棄と聞いてGraf ZeppelinはともかくBismarckは烈火の如く怒っていたけれど、彼女にも戦況の詳細を話してなんとか納得して貰ったよぅ……まさか戦艦がバイクで乗り込んでくるなんて、ヴァルハラへの土産話には丁度いいよぅ》

中佐はそう言って、自嘲気味に乾いた笑い声を上げた。

(=゚ω゚)ノ《艦娘の回収手配は完了している。ポーランド陸軍にオーデル川での防衛線へ一時的に参加させることを条件として艦娘の移送を手伝わせるようにした。君達の後退が完了次第、遅滞部隊も順次退却を開始する。

とはいえさっきも言ったとおり遅滞部隊は到底長くは持たない、そっちもリ級eliteの存在がある以上難しいとは思うけれど、何とか退却して欲しいよぅ》

('A`)「………その口ぶりですと、どうも中佐は脱出するつもりがないようですが」

(=゚ω゚)ノ《無謀な作戦でたくさんの兵士を死なせた責任は僕自身が取らなきゃ行けないよぅ。

それにこう見えて僕は日本通でね。カツナガ=モウリというサムライが大好きなんだよぅ》

学のない俺にはまるで馴染みのない名前だが、口ぶりから“どんなことをした人間か”は概ね想像がつく。

黙り込んだ俺に、中佐は更に言葉を重ねた。

(=゚ω゚)ノ《これは命令だよぅ少尉。

────そして、これが現段階で可能な次善の手だ》

('A`)「っ」

そうだ。そんなことは言われなくても解っている。

中核艦隊に奥深くまで食い破られたことによって、“軽巡棲姫のみに艦娘の全火力を集中する”という【最善の手】は最早打てない。

軽巡棲姫の撃沈が限りなく不可能に近い状態になった今、俺達がベルリンでこれ以上交戦することはほとんど無意味。次に為すべきことは、Bismarck zweiを初めとする貴重な戦力を可能な限り温存して逃げ延びること。

そして、退却の態勢が整うまでの遅滞部隊の犠牲も、艦娘という“貴重な戦力”を確実に逃がすために囮となるイヨウ中佐の犠牲も、この戦争に少しでも希望を残すための必要経費だと。

そんなことは、俺にだって解っている。
369 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/15(木) 01:14:41.54 ID:qoUzhAK/0
('A`)「────ツン」

ξ;゚听)ξ「何よ!リ級の奴ならすこしずつダメージは蓄積してるけど」

('A`)「退却の指揮は任せた」

ξ;゚听)ξ「あーもう!解っt………」

でも、解っていることだからこそ。

ξ゚听)ξ「………は?」

(*;゚∀゚)「………あー、ドク?お前何するつもりなんだ?」

('A`)「あぁ、別に何って程のことじゃない」








('A`)「ちょっとした悪あがきだ」

それが心底、気にくわないんだよ。
370 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/06/15(木) 01:20:45.98 ID:qoUzhAK/0
今更新ここまでです
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/15(木) 02:06:18.74 ID:mVbCGBT3o
おつ
状況は最悪、だけど
いいねいいね、ここにきて無理で道理を押し通そうとするドクオは格好いいね
372 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/19(月) 22:32:35.86 ID:3i1wtBQb0
脇腹の鈍い痛みを堪え、レオパルト1の影から飛び出す。包囲下でリ級への攻撃を続ける兵士達の後ろを駈け抜けて、一直線に向かった先はロ級の砲撃で吹き飛ばされた輸送トラックの傍。

(;//‰ ゚)「ドク!?」

(=;゚ω゚)ノ《少尉!一刻も早く退却を開始しろ、聞いているのかよぅ!?》

ξ;゚听)ξ「あんたいったい何する気なの!?ドク、ちょっ……止まりなさいよぉ!!」

無線や後ろから聞こえる声を完全に無視して、俺はトラックの脇に倒れている目的の物────カルリナ達が乗ってきていた、軍用バイクを引き起こす。

(;'A`)「………」

他の三台は砲撃に巻き込まれたのか滅茶苦茶に壊れており、まともに原形を保っているのはこの一台だけだ。そしてこの一台だって、外観に傷がないだけで内部回路や機関も無事とは限らない。

祈るような気持ちでエンジンを捻る。

(;'A`)

(;'∀`)

ドルンッと音が鳴り、排気口が煙を吹き出す。

揺れる車体に薄らと刻まれた、「KAWASAKI」の文字。俺は苦笑いを浮かべて8文字のアルファベットを眺めた。

(;'∀`)「っはは……流石だなものつくり大国は……!」

これで、逃げられなくなった。

逃げる必要が、無くなった。
373 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/19(月) 22:48:05.21 ID:3i1wtBQb0
('A`)「……中佐」

(=#゚ω゚)ノ《マントイフェル少尉、繰り返すが命令だ!!速やかに部隊を纏めて帰還を───》

('A`)「30分だけ時間を下さい。

30分過ぎて敵艦隊に変化がなければ、“中佐の指揮で”オーデル川まで退却を」

(=;゚ω゚)ノ《………っ!》

バイクに跨がり、エンジンの回転数を上げながら空を見上げる。もう数え切れないほどの反復攻撃を続けているF-16の編隊が、バルカンを放ちながら通り過ぎた。

('A`)「………マンドクセ」

思わず、本音が漏れる。

俺は別に英雄願望も出世欲もないし、愛国心だって皆無じゃないが潤沢に持ち合わせているとは言い難い。

本当なら、今すぐ踵を返して逃げ出したいぐらいだ。幸いにしてイヨウ中佐から撤退の“命令”は既に下されている、仮にベルリンを捨てたとしても、軍法会議にかけられるようなことにはならないはずだ。………そもそも、軍法会議を開く上層部が生き残っているのかどうかも疑わしいしな。

俺達は十分に戦った。逃げる権利はあるし、艦娘や機甲戦力が損失する前に退却することは戦略的にも間違っていない。何よりも、中佐の言うとおりにした方が楽だ。死ぬ確率も、当然俺が今からやろうとしていることよりは遙かに低いだろう。

────だけど。

('A`#)「ジョルジュ、ティーマスとツン達を頼んだ!!」
  _
(#゚∀゚)「飲み代一ヶ月おごりな!!」

('A`#)「死ねクソ眉毛!!」

こんな結末は、きっと誰も望んじゃいない。

リ級に立ち向かったフランス広場の警備隊も。

規格外の化け物と戦わされたベルリン市警も。

退役済の戦車で逃げずに深海棲艦に立ち向かった戦車隊の奴らも。

遠く離れたドイツの土地で死ぬことになった海兵隊も。

核が降り注ぐかも知れない国に飛び込んできたポーランド軍も。

今まさに侍のまねごとをしようとしているドイツ陸軍の中佐殿も。

もう一度ベルリンが灰になる様を見せつけられている艦娘達も。

死んでいった奴も、生きている奴も、こんな結末のために戦っていたわけじゃない。

ξ; )ξ「────ドk」

('A`)「ドイツ陸軍少尉、ドク=マントイフェルよりベルリン市内の全戦力並びにCPに通達!!」

これは俺の自己犠牲精神でも、愛国心でも、偽善ですらない。ただの自己中心的な責任放棄だ。

国を守るために死んでいった戦友だの、政治の壁を乗り越えて救いに来てくれた友軍だの、首筋が痒くなるような肩書きの奴らの「無念」を背負って生きる方が。

('A`#)「これより俺は、敵旗艦【軽巡棲姫】の撃沈に向かう!!総員、何としても現戦線を維持しイヨウ=ゲリッケ中佐の指揮下で反攻に備えよ!!」

“これ”よりも遙かに、マンドクセェ。

(#'A`)「───Los!!」

叫び、地を蹴り、絞っていたエンジンを解放する。

Kawasaki KLX250が、一声吠えた後西へと疾走を開始した。
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/19(月) 22:52:07.61 ID:SnO+Pgh0o
カワサキか……
375 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/19(月) 23:05:23.73 ID:3i1wtBQb0




─────ヤッパリ、君ハ面白イ人間ダ。
376 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/19(月) 23:14:49.96 ID:3i1wtBQb0
【彼女】は、砲火の中で一人笑う。紅の瞳を細め、真っ白な肌に僅かに血の気を差し、口元を自然に綻ばせ、笑う。

凄まじい砲弾と銃撃の中でも聞こえてきた、“あの人間”の叫び声。後に続いた、乗り物のエンジン音。

それらを耳にした瞬間、彼が“何をしようとしているのか”を正確に理解した【彼女】の身体は、心は、歓喜に震えた。

────ソウダ。コレダカラ私ハ君ヲ見テイタインダ。

頭がキレて、圧倒的に不利な中でも考えることをやめず。

脆弱な存在のくせに戦い続け、いつの間にか戦況を互角以上に引き上げて。

何度絶望を突きつけても、直ぐに新たな策で立ち向かってくる。

あの痩せぎすな“人間”との戦いは、スリリングで、変化に満ち、この上なく楽しい。

艦娘なんかとの戦いよりも、ずっとずっと。

  _
(#゚∀゚)「あのクソバカもやし野郎の背中を守れ!!何としてもコイツをここで沈めろ!!」

ξ# )ξ「Feuer, Feuer, Feuer!!

アイツの指示を聞いたでしょ!?アイツがあそこまで言うってことは、絶対に何かが起きる!!その“何か”が起きるまで、死に物狂いでここを守りなさい!!」

「「「Jawohl!!」」」

他の人間達と駆逐艦と思わしき艦娘は、更に激しい攻撃を【彼女】に加える。障壁の出力が弱まり、四肢に装備される艤装から次々と火花や黒煙が吹き出し始めた。

「リ級elite、状態中破に移行!!」

(#><)「トドメを刺すんです!!絶対に火線を絶やすな!!!」

(#//‰ ゚)「ディープワン共を深海に叩き返せ!!」

自身の身体に浮かぶ損傷、周りの人間達の怒号、そして入り交じる火線。その直中で、恍惚とした表情すら浮かべて【彼女】は呟く。







ダカラ私ハ、君ガ愛オシイ。
377 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/19(月) 23:41:02.63 ID:3i1wtBQb0
両腕の艤装が起動する。逆巻く砲火の中で、【彼女】の両腕がさながら通せんぼをするような形で左右に開かれた。

( ゜ t ゜ ;)「※※※※!!!」

ξ;゚听)ξ「こ、後退────きゃああっ!?」

2門の主砲が火を噴く。左手で直撃を食らった戦車が吹き飛び、金髪巻き毛の女が乗る車両も爆風に煽られて横転。右手ではバズーカやアサルトライフルで攻撃をかけていた一団が、凡そ半分ほど肉塊になる。

「この────え!?」

正面にいた艦娘が改めて艤装を構えたときには、【彼女】の足は既にその眼前まで踏み込んでいた。

驚きに見開かれた鮮やかな青色の眼に向かって微笑んでやりながら、右拳を振るう。

「────ゥゲホッ!?」

衝撃で歪む皮膚と、ぐちゅりと伸縮する内蔵の感触が伝わってきた。その小柄な艦娘が吐き出した体液がまき散らされる様に僅かに眉を顰めつつ、拳を振り抜く。

「っあ………」
  _
(;゚∀゚)「レーベ!?」

(;><)「救護班、彼女を回収するんです!!携行砲所有者、残弾全て奴に叩き込み足止めを!!」

(;//‰ ゚)「おら紳士共、夢にまで見たか弱い女を守るシチュエーションの到来だ!!

Go go go!!」

気を失ったらしい艦娘は、吹き飛ばされた先に転がっていた戦車の残骸に叩きつけられズルズルと地面に崩れ落ちた。それを守るためか、人間の兵士達が進み出て【彼女】と艦娘の間に立ち塞がる。

健気に効きもしない小銃で弾幕を張ってきた彼らの勇気に応えるべく、彼女は舌なめずりと共にその懐に飛び込み内一人の顔に手を伸ばす。

「ォウァ」

悲鳴ともなんとも判別がつかない奇声を残して、彼の頭が握りつぶされた。
378 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/20(火) 00:21:15.08 ID:FxmbLDhi0
「………No, no, n」

無造作に腕を振り、直ぐ隣にいたもう一人の頭を粉砕しながら【彼女】は軽くため息をつく。

やはり、“アノ人間”がいなくなると退屈だ。他の個体は勇敢だし数も多いが、とてつもなく脆い上に“アノ人間”に比べて機転が利かない。ただ立ち向かってくるだけの獲物を潰す“作業”は、特に【全の意志】の憎しみに興味が無い【彼女】からすれば趣向に合わないのだ。

────マァ、仕方ナイカ。

「わぁっ!?」
  _
(;゚∀゚)「クソッ……!怯むな!撃て!!」

【彼女】は軽くため息をつくような素振りを見せ、無造作に右手の主砲を放つ。また一つ戦車が燃え上がり、周囲にいた兵士達の射線が乱れた。

遊ぶことに夢中になって艦娘の突入を察知できなかった点や、その結果あらゆる火力を投入した集中砲火によって身動きが取れず中破まで押し込まれた点は彼女のミスだ。結果、策を思いついた“アノ人間”は動きを縫い止められている彼女を尻目に西へと向かった。

更に言うと、乗ってきたバイクを含めて他に“足”となり得る存在を破壊してしまったのは他ならぬ彼女自身でもある。

「り、リ級、此方に向かってきます!!」
  _
(;゚∀゚)「退避、退避しろ!!」

姿勢を低くし、眉毛が濃い人間が率いる部隊に向かって突っ込んでいく。一人をひっつかんで遙か上空に投げ飛ばしつつ、彼女は再び深いため息をついた。

今から【姫】の元に向かったとて、“アノ人間”の策が成るにしろ成らないにしろほぼ確実に間に合わない。それに万一策が成った場合、いくら何でも川を渡った“同胞”達を孤立させるのもまずい。

セイゼイ、スグ全部潰サナイヨウ気ヲツケテ遊ボウ。

そう心に決めて、【彼女】は更にもう一人を蹴り砕く。

ふと、遙か東にも“凄い人間”がいるという話を思い出した。
379 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/20(火) 00:55:09.08 ID:FxmbLDhi0


《BBCより緊急報道です。先程ノルウェー政府より公式発表が有り、ベルゲン上空の制空権失陥を公式に発表しました。ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの北欧3ヶ国連合空軍は壊滅的な打撃を受けた模様です》

《トルコ政府はTRTの取材に対し、中東諸国と共同で日本に艦娘の派遣・国外鎮守府の設置要請も視野に入れた要請を出す用意があると回答しました》

《ドイツ・ベルリンへの正式な軍事介入を発表したポーランド政府ですが、これにルール地方への核攻撃を準備しているロシア政府は強い不快感を示しています》

《現在スペイン空軍はヨーロッパアメリカ軍、フランス軍と共同で深海棲艦への攻撃を敢行していますが、敵の大規模な侵攻を食い止めきれていません。また、フランスの許可を得て越境した一部陸軍はフランス西部の主要都市に戦力の配備を開始しているとのことです》

《キューバ政府は、欧州・大西洋の危機的な状況に過去のしがらみを捨ててアメリカ、EUに全面協力をすると表明。大西洋に艦隊を派遣しました》

《ロシア政府による核発射宣言から3時間が経過しましたが、未だ西ヨーロッパにおける混迷は治まる気配を見せません》

《CCTVより、スポーツニュースの時間です。我が中華人民共和国の卓球界にニューヒーローが誕生しました。広東出身の劉?厳がスーパーリーグで大金星です》

《ルール地方には未だ1万人を越える生存者が逃げ遅れているという情報も有り、ロシアが核を発射した場合国際的な批判・孤立は免れないと見られています。茂名官房長官も、先日3ヶ国協定を結んだばかりのロシアの動きには非常に強い批判を浴びせています。

NBSではCM後も引き続き、ヨーロッパ戦線の情報をお伝えしていきます》

《あの名作アクションゲームが、オープンワールドになって帰ってきた!!

今度の舞台はまさに、中国全土!!雪原を、平原を、山あいを駆け抜け敵を薙ぎ倒せ!!

今度の無双は、1000人じゃあおさまらない!!

一万人をぶっ飛ばす爽快感!!真・三○無双8、今冬発売予定!!

先行予約で、程普ドイツ軍コスチュームがあたる!!》
380 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/06/20(火) 00:56:07.54 ID:FxmbLDhi0
今回ここまでと致します。

本日を1日目とカウントし、三日以内に最終章を投稿させていただきます。
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/20(火) 01:27:05.56 ID:FFlR4nyA0
おつおつ…それにしてもkawasakiは卑怯だw
まあ火達磨にしたり、海に沈めたり、叩き潰しても蘇る不死身な日本車の伝説も欧州発祥だし色々と有名なのか

それにしてもこれだけ相性の良さげな相手が、人類の敵ってとこが最大の不幸だよなあw
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/20(火) 01:43:45.08 ID:5AJAyGpYo
おつ
中国と日本ワロタ
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/20(火) 10:02:04.61 ID:36eyi5ALo
現行陸自偵察車両になる程度には信頼性あるか
でもまぁkawasakiかぁ
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/20(火) 11:17:16.74 ID:DPyB2a1OO
乙。決着や如何に

関係ないけどこの世界でゆーちゃんがろーちゃんになって帰ってきたらどんな騒ぎになるんだろうかw
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/20(火) 14:04:51.15 ID:mOzesBLH0
中国が情報統制で日本が厭戦による艦娘による戦闘が他人事になっていると見ると放送内容があれだの
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/22(木) 07:56:10.91 ID:FQZJTdqe0
乙でした
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/22(木) 11:09:35.81 ID:eXqSBnfSO
テレ東感
388 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/06/22(木) 22:25:16.27 ID:oz1JkISL0
体調の方が安定せず、最終更新開始を明日に延期します。
本当にお待たせしまして申し訳ありません。原稿自体はほぼ完成しているので、明日回復次第投稿を開始させていただきます。
お待たせして申し訳ありません
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/22(木) 22:28:59.68 ID:EKcttg8Po
了解
お大事にね
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/23(金) 00:58:16.04 ID:VdKeRUXA0
ラジャー、あまり無理せずに(^_^;)
391 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/23(金) 23:34:45.90 ID:rsc+wgkx0





かつて、カルタゴの名将・ハンニバルはこういった。

視点を変えれば、不可能が可能になる、と。

実際、彼は自身の言葉通り常に斬新な視点から様々な戦略を練り上げ、アルプス越えやカンナエでの勝利など数々の【不可能】を【可能】に変えてきた。その変幻自在にして大胆不敵な戦術は彼の死後2000年以上経った今なお研究の対象であり、ドイツ学園艦の戦車道教育や艦娘達の座学にも用いられる。

尤も、当然の話になるがハンニバルの相手は同じ“人間”───つまり、人知の枠の中に収まった存在だった。

例えば大津波。
例えば大地震。
例えば大嵐。
例えば大噴火。

そういった“人知を超越した厄災”に対するとき、人間は驚くほど無力になる。
どれだけ視点を変えようとも、どれだけ策を練ろうとも、被害を軽くすることはできても厄災そのものに打ち勝つことはできない。



────そして。

「ヘリが一機やられた!!」

「負傷者下げろ、負傷者下げろ!」

《此方19号車、現地に到ちゃ

「増援の市警装甲車が破壊されました!!」

《レオパルト五号車よりCP、T-72が3両撃破された!プーマ戦闘車も沈黙、更なる機甲戦力の増強を求む!!》

(;゚д゚ )「Allemann zuruck!

次のブロックまで退却しろ、機甲師団と擲弾装備兵でしんがりだ!」

『────www』

ミルナ=コンツィの前に現れたソレは、まさしく立ち向かうことが不可能な“厄災”そのものだった。
392 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/23(金) 23:45:01.15 ID:rsc+wgkx0
頭上を、ポーランド軍の戦闘装甲車であるKTO-ロマソクが飛び越えていく。16トンの重量を感じさせぬ軽やかさで飛翔してきたそれは、ベルリン市警のパトカーを一台真上から叩きつぶした。

因みに砲撃で吹き飛ばされきたものではない、此方めがけて“投げ飛ばされた”ものだ。

(;゚д゚ )「道路両脇の家屋を爆破しろ、瓦礫の山で奴の進路を封鎖するんだ!」

《Jawohl!! Feuer!!》

数両の戦車が一斉に砲弾を放つ横を、ミルナは負傷した味方兵を引きずりながら駆け抜ける。背後でコンクリートの塊が崩れ落ちる音が聞こえ、足下から震動が伝わってきた。

《目標破壊、進路を封s

(; д⊂ )「うおっ!?」

爆風が吹き付け、握り拳大の礫が頬を掠める。

バランスを崩してつんのめるミルナの横を、火達磨のレオパルト1が地面をバウンドしながら通り過ぎる。立ちこめる爆炎と土煙の向こう側へ機銃を放つエノクが、2発目の砲撃で吹き飛ぶ。

(メ゚д゚;)「っ、誰か援護してくれ!負傷者の回収を………」

引きずろうとした兵士の身体があまりにも軽い。違和感を覚えてふり向くと、腰から下がなくなっていた。

一瞬悔しげに表情を歪めた後、ミルナは屍体を打ち捨てる。“敵”は、彼に部下の死をまともに弔う暇さえ与えようとしない。

「エノク、破壊されました!PT-91【トファルデ】、レオパルト1もロスト!!

尚、瓦礫によるバリケードは崩壊、妨害効果無し!!」

「砲兵隊より連絡、正面新型艦の艦砲射撃が展開地点に直撃!迫撃砲多数と操作人員を失逸、支援攻撃困難とのことです!」

(メ;゚д゚)「砲兵隊は市街地からの離脱を許可!CPも間違いなく同じ判断だ、万一咎められたら全責任は俺が取る!」

「バルシュミーデ少尉の携行砲部隊、敵艦への側面奇襲失敗!通信途絶!」

(゚д゚メ;)「第二波、第三波奇襲部隊に攻撃中止を通達!後方部隊と合流して防衛線の構築に参加するよう伝えろ!」

入ってくる報告も、眼前に広がる状況も、どちらも地獄の様相。それは最早“戦闘行動”といえるような有様ではなかった。

それでも、ミルナは指揮をやめない。彼自身混乱と恐怖から思考が停止しかけているのを強靱な精神力で辛うじて耐えている。

もし彼以外の誰かがこの場を指揮していれば、おそらく疾うの昔に正気ではなくなっていただろう。

「中尉、いったいアレは………奴は何なんですか!?」

「幾ら新種のヒト型とはいえ戦闘能力が今までの個体と違いすぎる、戦車も携行砲もまるで効果がない!!」

(メ゚д゚;)「考察は後だ!とにかく今は退却と次のブロックでの防衛線を────」

頭の上で妙な“気配”を感じて、ミルナたちは視線を其方に向ける。

「ヒッ…………」

まるで、獲物を狩る直前に鎌首をもたげた蛇のように。

路地の一角で漂う土煙を突き抜けて、巨大な“尻尾”が屹立していた。

先端に着いたウツボの頭部を象ったような艤装────そこから突き出した四つの砲は、全てミルナ達をにらみ据えている。

(;゚д゚#)「…………走れ!!」

砲弾が、降り注ぐ。
393 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/23(金) 23:46:23.97 ID:rsc+wgkx0

( д メ)「ぅぐあっ……………!!?」

背中に感じる、強烈な圧力と熱。衝撃が身体を突き上げ、足が地面から離れて空を掻く。

砲弾の破片や飛び散った瓦礫が背面のあちこちに突き刺さり、皮膚を破り肉を裂く。迸る血液が、吹き飛ばされるミルナの軌道に併せて中空に紅い線を描いた。

(メ д ;)「ガフッ……」

そのまま、砲撃で拉げたレオパルト1の残骸に全身を叩きつけられる。想像を絶する激痛はかえって意識を手放すことを許さず、悲鳴の代わりに口から漏れたのは血の臭いが混じった弱々しい呼気。

それでも、手や足の感触は確かに存在した。痛みがもたらす痙攣のせいで今は自由が利かないが、神経が繋がっている感覚もある。機能を取り戻し始めた耳には、周りで部下達が上げるうめき声も薄らと聞こえてきた。

“艦砲射撃”に巻き込まれたにもかかわらず、大きなダメージは受けたが致命傷を免れ四肢の欠損もない。
それは本来奇跡に近い幸運。

::(メ д #)::「……………ッッ!!!」

だが、ミルナ=コンツィが感じたのは幸運に対する安堵ではなく、脳の奥を焼き焦がすような激しい怒り。

唇が、苦痛を耐えるためではなく悪態が飛び出すのを防ぐために噛みしめられる。

砲弾や爆風より速く走れる人間は存在しない。攻撃が行われたのは頭上5メートルにも満たない至近距離からである点を考えれば、狙いが定まらなかったということも考えづらい。

要は、あの状況からはどれほど自分たちが幸運だったとしても助かる可能性などあり得ない。

向こうが、“故意に爆心地をずらす”ような真似でもしない限り。

(メ д゚#)「く、そっ、がぁっ!」

ミルナ=コンツィは、明確に理解した。

自分たちは、遊ばれている。

人間の子供が面白半分に蟻の巣を踏み散らしているように。

猫がネズミや虫を前足で執拗にいたぶるように。
394 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/23(金) 23:52:39.42 ID:rsc+wgkx0
脳漿や血液が沸騰しているのではないかと錯覚してしまう激烈な怒り。体内でアドレナリンの濃度が一気に跳ね上がり、痛覚が遮断され身体の自由を一時的に取り戻したミルナは脇に転がるG36Cを掴んで立ち上がった。

(#゚д゚メ)「携行砲保有部隊と装甲戦隊は全火力をあの艤装に集中、牽制攻撃をかけろ!付近残存部隊は目標のブロックまで負傷者を回収しつつ後退急げ!!」

《レオパルト六号車よりコンツィ中尉、お言葉だけど先ず貴方が後退するべきです!あんな砲撃を受けて中尉の身体が大丈夫なはずが……》

(#゚д゚メ)「俺に構うな!行け!!」

《………Jawohl!!》

無線に向けて叫びつつ、“尻尾”に手榴弾をピンを引き抜き投げつける。手榴弾は防壁に当たってカンッと小さく乾いた音を立てて跳ね上がり、丁度真上の辺りで爆発する。

《総員、全車両、攻撃開始!》

《中尉を援護しろ、Feuer!!》

その爆発が合図だったかのように、何十もの砲声が重なり徹甲弾や対戦車ミサイルが尻尾にあらゆる方向から殺到した。5メートルを超えようかという巨体が爆光に全身を包まれて見えなくなる………が、直ぐに応戦の砲火がその中から放たれ街の一角で炸裂した。

《此方カンナビヒ少尉、部隊待機地点に艦砲射撃着弾!死傷者数名!》

《デーベライナー隊より各部隊に通達、敵艦艤装に損傷見られず。繰り返す、敵新型艦未だダメージ無し。

……Verdammt!!》

《Fuck!!》

《Kurwa!!》

損害無しの報告が流れた瞬間、デーベライナー軍曹と同時にポーランド兵とアメリカ兵も異口同音に毒づく。

ミルナも思い切り罵倒の言葉を並べ立ててやりたいという気持ちは同じだが、その光景は彼が半ば───どころか九割方予想していたものでもある。だから落胆はしないし、思考を止める理由にもならない。

(;゚д゚メ)「前衛の負傷者回収がまだ終わっていない、後衛部隊は引き続き火線を展開しろ!陣地転換をこまめに行い反撃による損害はなるべく抑え────うおっ!?」

横っ飛びでその位置から動いた直後、機銃弾がレオパルト1の残骸にぶち当たり火花を散らす。射角にそって視線を動かすと、口元から細い煙を吐き出す“尻尾”の姿がそこにあった。

笑っているように半開きになった口内から顔を覗かせるのは、連装式の対空機銃。

無線通信での指示をわざわざ大声で放していたのが聞こえたのだろう。指揮官は優先して潰した方が良いという判断か、イキのいい玩具と遊びたいという嗜好か、或いはその両方か。

どちらにせよ、周囲で負傷者の回収を続ける救護班にも散発的に砲撃を加えてくる後衛部隊にも射線は向けられていない。ミルナにとってはその事実さえあれば、理由などどうでもよかった。

(#メ゚д゚)「捕まえてみろ化け物!!」

叫び、G36Cを構え、引き金を引く。弾丸が障壁の表面で小さく火花を散らす様を見届けると、そのまま踵を返し全速力で前衛部隊とは別方向に走る。

『………♪♪』

その後ろを、機銃掃射の火線と艦砲射撃の爆発が追いかけていく。
395 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/23(金) 23:56:24.18 ID:rsc+wgkx0
────ミルナ=コンツィドイツ陸軍中尉は、怒りを覚えていたが怒り“狂って”はいなかった。彼の脳内に残る冷静な部分は、彼我の戦力差を的確に把握している。

《此方救護班、前衛の負傷者・生存者の回収を完了!》

《ポーランド軍のMi-24、敵艦“本体”の対空射撃によって撃墜されました!》

(メ゚д゚;)「CPにヘリ部隊の突入は今後控えるよう通達しろ!………っくぉ!?」

バイカーギャング仕様のバイクを乗り回して突然こちらに飛び込んできたあの“新型”は、おそらく過去に確認されてきた深海棲艦の中でも格段に高い戦闘能力を誇る。現に単艦である上にこれだけあからさまに“遊んで”いるにもかかわらず、ミルナ達の方面は右翼のパンコウ区よりも遙かに深く押し込まれた。

右翼でも此方の損失は甚大ながら、通常種のリ級2隻に小破の損害まで与えていることを考えればあまりにも状況差がありすぎる。

《中尉!?いったい何があったんですか!?》

( ゚д゚メ)「機銃が掠めただけだ、心配ない!この歳で鬼ごっこなんてやる羽目になるとはな!」

さっきの喩えを繰り返すが、要はあの“新型”は【人間の軍隊】にとってほとんど天災と変わらないとミルナは結論づける。大津波や大嵐に人間が立ち向かったところで、少なくとも“今の科学”では打ち勝つことはできない。できることと言えばせいぜい被害をなるべく受けないよう被災範囲から遠くに逃げることと、後は収まってくれと神に祈ることぐらいだ。

(=#゚ω゚)ノ《CPよりトレプトゥ=ケーペニック区防衛ライン、新型の状況を教えるよぅ!!》

( ゚д゚メ)「防衛ライン前衛よりCP、敵のお嬢さんは俺の抹殺に大層御執心……!」

自身の無力さへの口惜しさこそあれ、ミルナは役目を見失わない。

敵が天災に等しい存在である以上、立ち向かうことは自分たちの領分から外れる。

今の彼に課せられているのは、部隊の被る損害を可能な限り減らし、厄災から逃れ────

(#゚д゚メ)「攻撃を開始するなら、今だ!!」

(=#゚ω゚)ノ《此方CP、状況を確認した!!

全駆逐艦隊に通達、目標敵新型艦!攻撃を開始せよ!!》

────残る全てを、味方の“女神”に託すことだ。
396 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/06/24(土) 00:00:13.24 ID:W1r6lzRK0








《《Z1, Feuer!!》》

《《《Z3, Feuer!!》》》

ミルナ=コンツィ中尉をしつこく追い回していたであろう“尻尾”が、12.7cm連装砲の弾丸で動きを止める。

障壁の上で弾けた爆炎は、決して大きな物ではない。だけど“尻尾”の主にも、今の砲撃が私達艦娘によるものだと十分に理解できたのだろう。混乱というほどのものでもないけれど、訝しむようにぐるりと────“5箇所から飛来した”砲撃の出所を確かめようとしたのか艤装をもたげて辺りを見回す。

『…………!』

そこに、肉薄するのは、二台のパトカー。

ただし屋根の上に、私とビスマルクお姉様を乗せてだ。

「Prinz、続けて撃ちなさい!!

Feuer!!」

「了解ですお姉様!

Feuer!!」

猛スピードで“尻尾”に接近していくパトカー。その屋根の上で跪くような姿勢を取り、私はお姉様に続いてSKC20.3cmを撃つ。砲撃の反動で浮き上がりひっくり返りかけた車体を、つま先をめり込ませ両手に全身の力を込めることで抑え付けた。

『ィアアアアアアッ!?』

戦艦と重巡洋艦の主砲、4基8門の一斉射撃。

流石にその威力は絶大で、向こうも効果無しとはいかなかったらしい。先端の艤装から火花をまき散らしながら、“尻尾”が苦悶とも怒りとも着かない声で鳴きながら身を捩らせる。

『ウァア………!』

そのまま“尻尾”は一瞬此方に先端を向けて低いうなり声を上げると、笛で操られる蛇みたいな動きでシュルシュルと立ちこめる煙の中に戻っていった。
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