【ガルパン】逸見肛門抄

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/11(木) 18:42:45.52 ID:rOz88wbW0
──長野県茅野市・八ヶ岳稜線『硫黄岳山荘』まで後100mの距離──



しほ「ふぅ、ようやく小屋が見えてきたわね」

エリカ「はい」

しほ「小屋に付いたら、きちんと体を休めなくてはね。明日は、一気に南まで縦走をするわよ」

エリカ「はいっ」



 ざっ、ざっ、ざっ……!


しほ「はっ、はっ、はっ」

エリカ「ふぅ、はぁ、ふぅ」

エリカ(……私の前を歩く師範の、そのおしり……細めのストレッチパンツをはいているから、とてもよく形が分かる……)

エリカ(私なんかよりもずっと引き締まってる。だけどそのくせ形はいいのよね。……アラフォーのおしりだなんて、とても信じられない)

エリカ(まるで師範の高潔な魂が、おしりにまでも宿ってるみたい。力強くて、凛々しくて、研ぎ澄まされていて。いいな。どうやったら、こんな形の良いおしりになれるんだろう。)

エリカ(こんなふうに凛として、すこしの穢れも想像できないようなきれいなおしりに──)

しほ「ふぅ、段差が激しくて、嫌になるわね……ふんっ!」




 ──ぶびっ!



しほ「──っ!?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1494495765
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/11(木) 18:44:05.28 ID:rOz88wbW0
エリカ「……!?」

エリカ(え……師範、今、おならを……!?)

しほ「ああもう……はしたない事をしてしまったわね」

エリカ「い、いえ……」

しほ「ごめんなさいね、貴方がすぐ後ろを歩いているというのに。岩場に踏ん張って変に力が入ってしまったみたい。許して頂戴」

エリカ「気にしないでください。生理現象ですから」

しほ「私としたことが……いやだわ」

エリカ「しょうがないですよ」

エリカ「……。」

エリカ(……そっか、やっぱり師範も、おならをするんだ……)

エリカ(……。)

エリカ(……幻滅をした? ……ううん。違う。なんだろうこの感じ。なんだか、師範を身近に感じられて、嬉しいような……)



 ……もわん



エリカ「……!」

しほ「ん……」

エリカ(これが、師範のおならのにおい臭い。……私のおならと、同じように、臭い……)

しほ「もう、エリカ、しばらく息を止めていなさい。まったく……恥ずかしいわね……」

エリカ「あはは……」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/11(木) 18:44:52.96 ID:rOz88wbW0
しほ「……エリカ」

エリカ「はい?」

しほ「この事、まほやみほにげ口してはいけないわよ。貴方の胸の中だけに、とどめておきなさい」

エリカ「え……?」

しほ「私はこれまで、あの子達の前で、今のようなはしたない音を出したことはないのだから」

エリカ「一度も、ですか?」

しほ「そうよ」

エリカ「ですが、おならぐらい……人間なのですから……」

しほ「……エリカ。」

エリカ「は、はい」

しほ「私はね、人間である以前に西住流の家元。一個の『象徴』なのです」

エリカ「象徴……」

しほ「そう、象徴。──そして、イメージというものは、貴方が思う以上に大切なのですよ。人前で──たとえわが子であろうと、夫であろうと──放屁の音などを他者に聞かせてはなりません。」

エリカ「……なるほど」

しほ「貴方も黒森峰の隊長なのだからね。それくらいの心構えはあってしかるべきよ」

エリカ「わかりました。肝に銘じます」

しほ「よろしい」

エリカ(まぁ……たしかに私も、『師範はおならとかしなさそう』って、思っていたものね……。ついさっきまでは)

エリカ(……だけど、そっか……)

エリカ(……肛門……)

エリカ(この人にも、ちゃんと、肛門があるのね)

エリカ(あんな湿った音をたてて、師範もオナラをするのね)

エリカ(……。)

エリカ(なんだろう、とても、変な感じがする)



しほ「さぁ、くだらない事で時間を無駄にしてしまったわね。行きましょう」

エリカ「あ、は、はいっ」



 ざっ、ざっ、ざっ……
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/11(木) 18:45:37.68 ID:rOz88wbW0
しほ「はっ、はっ、はっ。足もとがザレている。エリカ、小屋が近くなったからと、油断をしないように」

エリカ「はいっ」

エリカ「……。」

エリカ(師範は、威厳に満ち溢れていて、怖いくらいにいつも冷徹で、誰よりも厳しくて、黒森峰の戦車道メンバーには神様みたいな人なのに)

エリカ(……それなのに、肛門が……あるんだわ……この人にも……)

エリカ(この人も、あんなは汚らしい音をたてて、オナラをするんだわ。こんなに威厳に満ちた人なのに)


 ざっ、ざっ、ざっ……


しほ「ふぅ、はぁ、ふぅ……傾斜がきついわね」

エリカ「ええ」

エリカ(……。)

エリカ(肛門がどのあたりにあるのかって、あんまりよく確認はしたことないけど……あのあたりにあるのかしら?)

エリカ(……。)


 ざっ、ざっ、ざっ……


エリカ(おしりのあな、か)

エリカ(私にも、ついているのね。排泄のための、そういう部位が)

エリカ(──そしてまた、この人のおしりにも──)

エリカ(やっぱり、なんだかそれって、すごく……可笑しい。だってこんなに、立派な人なのに。それなのに、この人にも、おしりのあながあるんだわ)

エリカ(……。)

エリカ(……やだ、何を考えてるんだろ、なんだか私、変態みたいじゃない)

エリカ(でも、師範がいけないのよ。アラフォーのくせに、こんなきれいなおしり……)

エリカ「……おしり、か」

しほ「え?」

エリカ「っ……!? 、い、いえ、なんでもありません」

しほ「そう」

エリカ(……いけない、うっかり口にだしてた……)ドキドキ

エリカ「……。」

エリカ(……同じ人間だものね。そりゃ、おしりもあればうんちもするわよ。当たり前よ。……馬鹿ね、私って)

エリカ(……こんなバカな事を考えるのは、あ〜あ、やっぱり、悩んじゃってるせいなのかしらね……。)
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/11(木) 18:46:47.17 ID:rOz88wbW0
しほ「エリカ」

エリカ「あ……はい、なんでしょう」

しほ「小屋についたら、もちろんゆっくりと体を休めることは必要だけど──」

エリカ「はい」

しほ「今晩は、ゆっくりと貴方の話を聞くつもりです」

エリカ「……師範……」

しほ「……。」

しほ「黒森峰の隊長として──あなたは見事にチームを率いてみせた。大会では正々堂々と大洗を打ち破り去年の雪辱を晴らした。そうして黒森峰はあなたのもとで再び王者と返り咲いた──」

エリカ「ッス」

しほ「その恩賞としての、私と2人での登山旅行──どうしてあなたがそんなものを望むのか──それは分からないけれど」

エリカ「……。」

しほ「ともあれ、今晩は、いくらでも話を聞くつもりです。……山小屋の消灯は夜8時よ。その後、たっぷりと、時間はあるでしょう。」

エリカ「はいっ……ありがとうございます、師範……!」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/11(木) 20:09:44.54 ID:cwUzuc7Ko
はよはよ
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/12(金) 22:51:09.43 ID:k9WO9pM5O
ほう?
続けたまえ
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/13(土) 03:14:40.79 ID:9C0/aCDdo
いいですねぇ!!
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 16:08:49.77 ID:8WNa/xHq0
 ──八ヶ岳稜線2384m『硫黄岳山荘』 その、五右衛門風呂──


しほ「フゥ……まさか、こんな山の上で、お風呂に入れるだなんてね」

エリカ「本当ですね。ですが、このお湯、本当に大丈夫でしょうか」

しほ「大丈夫、とは?」

エリカ「小屋の人は、お湯はきれいだと言っていましたけれど……なんだか濁ってるし、ぬるぬるしてるし……雑菌がいっぱい湧いてそう……ちゃんと交換してるのかしら……」

しほ「……エリカ。こんな場所で暖かい湯につかれているのだからね。それ以上の贅沢をいう物ではないわ。無粋な詮索は控えなさい」

エリカ「あ……申し訳ありません」

しほ「恵まれた環境ばかりを求めるのはやめなさい。これは、戦車道にも通ずる心構えです」

エリカ「はっ。」

しほ「…………まぁ、せいぜいでお湯のくみ汲たしをしているだけでしょうね。雨水を利用しているそうだし……お湯の張り替えなどをする余裕はないでしょう」

エリカ「……ですよねぇ〜……」

エリカ(……まぁけど……たしかに、お湯につかれるってだけで十分ありがたいわよね……)


 ちゃぷん


エリカ「ハァァ〜……やっぱり、気持ちがいいです」

しほ「早めに小屋に到着をしてよかったのね。おかげで、このお風呂も貸し切り」

エリカ「はい。女性の利用時間帯に、ちょうど始まったところみたいで。ついさっきまでは男性の時間帯だったそうです」

しほ「……。私のようなオバさんになれば、さして気にはならないけれど──」

エリカ「え?」

しほ「不特定多数の男性が使ったのと同じ湯ぶね──あなたくらいの年頃なら、いくらか抵抗もあるのかしらね」

エリカ「どうですかね。まぁ、気にならないわけではありませんが」

エリカ(……ていうか……そんなことより)

エリカ(……)

エリカ(師範の身体、ほんと、スタイルいいわね……)

エリカ(本当に子供を二人産んだ後なの? 何が「おばさん」よ。腹筋は引き締ま照癖に、お尻はすごくぷるぷるしてるし、いっそうもうなんだか、卑怯なくらい。同じ女としてさぁ)

しほ「……? エリカ?」

エリカ「あ……い、いえ……なんでも……」

エリカ(鎖骨からおっぱいへのなだらかな隆起に見とれてました、だなんて言ったら……どんなお叱りを受けるやら……)

しほ「おかしな子ね。脱衣所からこっち、ヒトの身体ばかりみて」

エリカ「……ひぇ!?」

しほ「……ふ、冗談です」

エリカ「……お、おかしなことを言わないでください……」

エリカ(もう、やめてよね。……。ばれてたのかと思った……)
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 16:29:12.19 ID:8WNa/xHq0
エリカ「……あの」

しほ「何?」

エリカ「その……師範も、冗談を言うのですね。なんだか……意外でした」

エリカ(意外だし、なんだかそれに少し……嬉しい。冗談を、私に言ってくれた……あの、師範が……)

しほ「まぁ……そうね。あまり、貴方たちの前で冗談を言ったことはなかったかもしれないわね。」

エリカ「あまりというか、一度もなかったと思いますが。」

しほ「そう? まぁ、ともあれ、こうして、裸を突き合わせている時くらいは、冗談の一つくらいは、いいでしょう」

エリカ「はぁ」

エリカ(嬉しいけど……うーん。裸って言葉、やめてほしいな。なんだか、意識しちゃうわよ……)

しほ「意外というなら──」

エリカ「?」

しほ「私が、貴方のような年頃の娘と、こうして二人ではるばる本州まで旅行にきている。私を知る多くの者にとっては、そのことこそ、よほど意外でしょうね。」

エリカ「た、たしかに……あ」

エリカ(師範……笑ってくれている……?)

エリカ(……。)

エリカ(……っ)

エリカ「あ、あの……!」

しほ「?」

エリカ「今日は、本当にありがとうございます。私なんかのために、師範の貴重な時間を割いていただいて……家元は、忙しい方なのに」

しほ「……まぁ、そうね。スケジュールを調整するのには、いくらか苦労はしたけれど」

エリカ「無理なお願いをして、申し訳ありません」

しほ「とは言え──よい気分転換にはなったし、新鮮な驚きも、たくさんあった。高山の景色に、稜線上のこの五右衛門風呂、なりより──」

エリカ「……?」

しほ「──貴方との時間を思いのほか楽しんでいる自分にたいする驚き」

エリカ「え」

しほ「そんなワケだからして、総じて価値ある一日だったと、言えるのでしょうね。来てよかったと──思っています。私はね」

エリカ「〜〜〜き……恐縮です! 本当に、そんな風に言っていただけるなんて……」

しほ「……ふ、これもまた、裸のつきあいの妙なのかしらね?」

エリカ「え?」

しほ「たしかにいくらか、私は口が軽くなっている。自分の思うところを、こんなふうにざっくばらんに誰かに言って聞かせるだなんてね。……まほや、いわんやみほにも──滅多にしないことでしょうに」

エリカ「〜〜〜ッ……」


エリカ(……うわ、なんだろこれ……すごく、照れる……)

エリカ(ていうか……普通に光栄だし……う、なんか涙でそうなんだけど……)
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 21:02:24.58 ID:i7qZ5Ytb0
しほ「……ふぅ……」

エリカ「……。」

エリカ(……あ、なんか喋らなきゃ……せっかく師範が、肩の力をぬいて会話をしてくれているのだから……)

エリカ「……あ、の、えと……い、いいお湯ですねー……」

しほ「ん……少し、ぬるいような気もするけれど」

エリカ「あ……そ、そうかもしれません……」

エリカ「……。」

エリカ(──ちょっと! もっと建設的で中身のある事を言いなさいよ!)

エリカ「……」

エリカ(……ぐぬ、な、なんで? 考えれば考えるほど話題が浮かんでこない……!?)

エリカ「……っ、……ぐ」

しほ「まぁ、思い返してみると──」

エリカ「っ!? は、はい……?」

しほ「……馬が合う、と、いう事なのかもしれないわね」

エリカ「……え?」

しほ「似ているのかもしれない、と言ってるの」

エリカ「えと、誰が、誰に、でしょうか……?」

しほ「……。ふぅん。日常生活における『察し』は、あまり良くないのかしらね」

エリカ「!? え? あの、、も、申し訳ありません……?」

しほ「……。……ふふ」

エリカ「あ、う……。えと……」

エリカ(……!?)

エリカ(なに!? なにこれすごく、恥ずかしい……!? 師範が、横目で私をみて、笑っている……。それだけなのに、私は、いったい何を、こんなに恥ずかしく思っているの……!?)

しほ「……。」

エリカ「……っ、……っ」

エリカ(……か、考えろ! 『誰かが、誰かに、似てる』……師範の言葉の文脈から、それを考えなさい……!)

エリカ(えと、えと……)

エリカ(……。)

エリカ(……あっ)

エリカ(え、ええ……?)

エリカ(似てるって、つまり──)

エリカ(だ、だけど、これって……間違ってたら、すごく恐れ多いというか……うぬぼれていると思われるというか……)

エリカ「……」チラ

しほ「……。」〜♪

エリカ(ダメだ。この人、目をつむってすっかり湯舟を堪能しちゃってるじゃない! これ、私が答えるまで一言もしゃべらないパターンだわ……そういう人だもの……)

エリカ(……うーっ……)

エリカ(言うしかない……っ)
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 21:03:14.47 ID:i7qZ5Ytb0
しほ「……ふぅ……」

エリカ「……。」

エリカ(……あ、なんか喋らなきゃ……せっかく師範が、肩の力をぬいて会話をしてくれているのだから……)

エリカ「……あ、の、えと……い、いいお湯ですねー……」

しほ「ん……少し、ぬるいような気もするけれど」

エリカ「あ……そ、そうかもしれません……」

エリカ「……。」

エリカ(──ちょっと! もっと建設的で中身のある事を言いなさいよ!)

エリカ「……」

エリカ(……ぐぬ、な、なんで? 考えれば考えるほど話題が浮かんでこない……!?)

エリカ「……っ、……ぐ」

しほ「まぁ、思い返してみると──」

エリカ「っ!? は、はい……?」

しほ「……馬が合う、と、いう事なのかもしれないわね」

エリカ「……え?」

しほ「似ているのかもしれない、と言ってるの」

エリカ「えと、誰が、誰に、でしょうか……?」

しほ「……。ふぅん。日常生活における『察し』は、あまり良くないのかしらね」

エリカ「!? え? あの、、も、申し訳ありません……?」

しほ「……。……ふふ」

エリカ「あ、う……。えと……」

エリカ(……!?)

エリカ(なに!? なにこれすごく、恥ずかしい……!? 師範が、横目で私をみて、笑っている……。それだけなのに、私は、いったい何を、こんなに恥ずかしく思っているの……!?)

しほ「……。」

エリカ「……っ、……っ」

エリカ(……か、考えろ! 『誰かが、誰かに、似てる』……師範の言葉の文脈から、それを考えなさい……!)

エリカ(えと、えと……)

エリカ(……。)

エリカ(……あっ)

エリカ(え、ええ……?)

エリカ(似てるって、つまり──)

エリカ(だ、だけど、これって……間違ってたら、すごく恐れ多いというか……うぬぼれていると思われるというか……)

エリカ「……」チラ

しほ「……。」〜♪

エリカ(ダメだ。この人、目をつむってすっかり湯舟を堪能しちゃってるじゃない! これ、私が答えるまで一言もしゃべらないパターンだわ……そういう人だもの……)

エリカ(……うーっ……)

エリカ(言うしかない……っ)
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 21:05:56.22 ID:i7qZ5Ytb0
>>12 連投ミスです。失礼いたしました。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 21:06:40.58 ID:i7qZ5Ytb0
エリカ「──あ、あのっ」

しほ「ん?」

エリカ「ええと、似ているというのは、その、つまり──」

エリカ「その、私が、元隊長に──まほさんに──似ている……という事でしょうか?」

しほ「……。」

エリカ「……。……あ、あの、」

エリカ(な、何か言ってよ……目をつむってないで……)

しほ「貴方は、どう思う」

エリカ「……へ?」

しほ「似ていると、思う?」

エリカ「え……」

エリカ「……。」

エリカ(私と、まほさんと……。)

エリカ(……。)

エリカ「……いえ、少しも、そうは思いません」

しほ「そう?」

エリカ「私はまほ隊長ほど沈着冷静でもなければ、西住流に精通できてもいません」

エリカ「そんな私が──まほさんに似ているなどと。……そんな風には微塵も思えません」

しほ「……。」

しほ「そうですか。」

エリカ「……はい」

しほ「そう思うのなら──似るように、精進すればいい。もしもあなたがそれを望むのなら──ね」

エリカ「……はっ」

しほ「──さて、そろそろ上がりましょうか?」

エリカ「え、あ、はい」


 ──ざばぁ


エリカ「……!」

エリカ(立ち上がった師範の、おしり……綺麗……。皺ひとつなくて、くたびれた感じんなんか少しもなくて、張りがあって……)

エリカ(……あ)

エリカ(五右衛門風呂からお風呂場の床に上がるときって、片足ずつ、かなり足をあげないと──)

エリカ(ということは、つまり──)


しほ「よいしょ」


 ──ざばぁ!


エリカ「──!!!!!」

エリカ(師範の、肛門……!!!!!!)
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 21:08:39.98 ID:i7qZ5Ytb0
しほ「──ふぅ。……? エリカ、どうしたの。貴方も、もう上がるでしょう?」

エリカ「……えっ」

エリカ「あ、は、はい……! すぐに上がります……!」


 ──ざばざばざば!


エリカ(……うぅ。)

エリカ(本当に見えちゃった……)

エリカ(師範の、肛門……)

エリカ(……うぁぁぁ、見ちゃった……)

エリカ(なにこれ、感情をどう処理していいのか、わかんない……)

エリカ(背徳感? 嫌悪感? 興奮? ゾクゾク? わけわかんないわよ……。どうして私、こんな動揺を……)





──脱衣所──

しほ「──そういえば、エリカ」


エリカ「……はい」

エリカ(……師範の肛門……)


しほ「あなた、明日下山をした後、まっすぐ熊本には帰らず、大洗まで足を延ばすと言っていたわね?」


エリカ「はい」

エリカ(……肛門……)


しほ「みほに、会うのでしょう?」


エリカ「ええ」

エリカ(……おしりの穴……)


しほ「なら、ついでにあの子に確認をしておいて頂戴。大学はどうするつもりなのかと──ねぇ、エリカ、聞いてるの?」


エリカ「はい」

エリカ(……肛門って、なんで存在するんだろう……?)


しほ「……。じゃあ、よろしく頼むわね」


エリカ「はい」

エリカ(……私の肛門も、あんなふうに、すこしくすんだ色をしているのかしら……)
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 21:09:51.96 ID:i7qZ5Ytb0
しほ「さて、では食堂へでも行きましょうか。食堂の窓から、外の景色が見えたはず」

エリカ「はい」


 ……ぎぃ……(しほが、薄暗い脱衣所のドアを開ける音)


 ……ぱたぱたぱた……(二人が、夕日の差し込む明るい廊下を歩く音)


しほ「──あぁ、ところでエリカ、さっきの貴方の答えは不正解よ」

エリカ「はい」

エリカ(……もう一度、みたいな、師範の生のおしり。そうだ、下山したら、改めてふもとの温泉に──)

エリカ「──……え?」

エリカ「はい? え? 不正解……?」

しほ「まほに似ている、といったのではないわ。貴方がまほに似ているとは、私も思っていない」

エリカ「えと、おっしゃる通りです、私などは、まだまだ未熟ものですから……あの、では、いったい誰と……?」

エリカ(……あ。)

エリカ(みほ?)

エリカ(……。……ええー……? 私と、みほが……?)


しほ「……。まぁ、いいわ。答えてあげましょう」

しほ「……私に似ている、と言ったのよ」

エリカ「……、……へ!?」

しほ「けれど、私の思い違いかもね。やはり貴方は察しが悪い。……ふふ」



 ……ぱたぱたぱた……(硬直して立ち止まったエリカをほって、さっさと廊下を歩いていってしまうしほの足音)



エリカ「……。」

エリカ(いや……師範と私って……それこそ、全然似てないですよね……!?)
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/13(土) 23:10:40.99 ID:XAGQhgXZ0
つまりしぽりんも肛門フェチ・・・
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/13(土) 23:21:08.06 ID:OXglA0JF0
こういう互いにおねろりとは言えない年の差レズって何て呼べば良いんだろう……。

まあとにかく検索かけたいくらい大好物です。
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/15(月) 20:48:39.40 ID:2OGf2EJPO
 ──山小屋の食堂・晩御飯──


 ……わいわいガヤガヤ……


エリカ(やっぱり気になる。私と師範と、一体どこが似ているというの?)

エリカ(良い評価してもらえた、と、そう判断していいのかしら……)


しほ「──食堂、満員ね。人気があるのね。登山って」

エリカ「はぁ」

しほ「それにしても、晩御飯にお魚を食べられるだなんて、驚いた。こんな山の上だというのに」

エリカ「そうですね」

しほ「小屋のご主人に伺ったのだけれど、物資は全てヘリで荷揚げをしているそうよ」

エリカ「なるほど」

しほ「……。……エリカ、私と二人で食事をするのが、そんなにツマラナイ?」

エリカ「あ、いえ……そんなことはありません」

エリカ(しまった、ぼけっとしすぎた……)

しほ「そうですか。それなら良かった。だけど、なら、もう少し楽しそうになさい。こんな素晴らしい景色を眺めながら、おいしい食事をいただけるというのに」

エリカ「……わかりました」

エリカ(……けど、食事とか景色とか、それが何だって言うのよ。そんなことよりも……ああ、もう嫌、はっきり言ってしまおう……)

エリカ「──ですが、師範が、おかしなことをいうから、私は戸惑っているのです」

しほ「おかしなこと? そんな事を、私は言ったかしら」

エリカ「……。」

エリカ(……何よ、からかうみたいに、はぐらかして……)

エリカ(……っ、ああもう、悔しいなぁ)

エリカ(こんなふうにからかわれたら、普通なら、絶対に腹が立つのに)

エリカ(だけど相手が師範じゃ、素直に腹がたてられない。そんな自分に、なんだか腹立つ)

エリカ「私が、その……師範に似ているだとか……さっき、いってたじゃないですか」

しほ「あぁ、あれね……だけど、戸惑うほどのこと?」

エリカ「そりゃ、戸惑いますよ」

しほ「そうかしら。だって、考えてごらんなさい。たんに私がそう感じたというだけで、それ以上の深い意味はないわ。であれば、貴方がいちいち気にすることは無いでしょう?」

エリカ「……っ」

エリカ(……さすがにむかついてきたっ)

エリカ「いや、だからですね、師範は、私達にとって尊敬すべき相手なんですよ? そういう相手から、「自分に似ている」だなんていわれたら、それはどういう意味だろうって、私は気にせずにいられると思いますか?」

しほ「気にせずにいられようがいられまいが、それがどうだというの? あなたのすべきは目標を見定めて精進すること。他人の戯言に耳を貸して心を乱すのは、単にあなたが未熟なだけでしょう」

エリカ(……っ、このっ、肛門ババァっ……!)

エリカ「だ、か、らっ、私達にとってはその目標が、『貴方』なんでしょうっ! 目標たる師範の言葉を、他の凡百の連中のたわごとと一緒くたにできるわけないじゃないですか!!」

しほ「……。ふむ」

エリカ(……あ……いくらなんでも、ぶしつけに言い返しすぎた……)

エリカ「すみません。……口が過ぎました」

しほ「……」

エリカ(怒ったかしら……)
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/15(月) 20:49:24.32 ID:2OGf2EJPO
しほ「……ふ」

エリカ(!?)

エリカ「なにか、可笑しいですか」

しほ「いえ、まほやみほが──もう少し、貴方の様に生意気であってくれれば、もっとシゴキがいがあったのかしら、とね」

エリカ「どういう意味でしょう」

しほ「まほは──そうね、一応、私の望むように育ってくれている。けれど、もう少しわがままでもよかった──と、思うのはそれこそ親のワガママなのでしょうね」

エリカ「は、はぁ……」

エリカ(何なのよ、急に……)

しほ「みほ、は……まぁ、とにかく、私には似なかったわね」

エリカ「……。」

しほ「あなたの、私を見つめるその吊り上がったような目。それに、あなたのそのフグのような気質」

エリカ(フグ……?)

しほ「やはり、なんだか──昔の自分を見ているような、そんな気分になるわね」

エリカ「……っ!?」

エリカ(だっだから……何なのよ、本当に……もうっ)

しほ「私は──まほやみほに、「自分に似たところ」を、求めていたのかもしれないわね。今日一日、貴方と一緒にいて──ふと、そう思った。」

エリカ(っ……そういう事を言われて、私にどう反応しろっていうのよ……!?)

エリカ「き、今日の師範は……どうかしていますよ……っ」

しほ「あら、そう?」

エリカ「そうですよ。いつもの師範は、理路整然と──丁寧に整備された完璧な機械みたいに、たんたんと順序立てて物事を言う人なのに」

エリカ「それなのに、さっきからの師範のお話しぶりは、正直にいって話の芯がさっぱり見えてきません……だからこそ、私は戸惑うんです」

エリカ(今の師範は、なんだかまるで──そうよ、みほ、みたいよ!)

エリカ(自分の頭の中の思い付きを、相手への説明もなしに、ぽんぽんぽんぽん……)

エリカ(つきあわされるこっちの身にもなれってのよ……)

しほ「ふむ……なるほど、貴方の言う通りかもね。だけど、勘弁なさい」

エリカ「勘弁、だなんて……」

しほ「こんな遥かな山の上。下界の煩わしさもここまで届いてこない──私だって、たまにには、肩の力を抜いてみたいの。登山というのも、悪くない趣味ね。よく誘ってくれた」

エリカ「……はぁ、どうも」

エリカ(……ほんと、なんか、調子が狂う)

エリカ(……ふん、『自分は象徴だ』とか、人前ではどうこう、とかと、言ってたくせに……)

エリカ(……。)

エリカ(──『肛門』)

エリカ(汚らしくて、恥ずかしくて、普通は絶対人には見せたくない部位。……すごく、恥ずかしい部位……。)

エリカ(……。)

エリカ(私は今、師範の、肛門をみているのかな)

エリカ(……だとしたら、まぁ光栄に思うべきなのかしら)

エリカ(西住流家元の、肛門……。)

エリカ(……。)
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/15(月) 20:50:03.38 ID:2OGf2EJPO
エリカ(頭に焼き付いてる。さっきお風呂場で見た、……師範の、お尻の穴……綺麗だった……)

エリカ(色の濃さから皺ののび方まで、たぶん、目をつむればはっきりと思い出せると思う)

エリカ(肛門だなんて、汚らしいはずなのに、だけど……)

エリカ(師範の肛門は、何か、すごく、特別なものに思えた……)

エリカ(……。)

エリカ(ねぇ、梓──たしかに、あんたの言う通りだったのかもしれないわね)




 ──梓『登山とかいいんじゃないですか? 登山って、なんだかすっごく気持ちが素直になれるんですよ。……いや、どういう理屈だかだなんて、そんなのはどうでもいいじゃないですか。それに、どうせ私が何を説明しても、エリカさんは鼻で笑うだけでしょ。だから、やってみてください。そしたらきっとわかります。まぁ、エリカさんは、素地金のはいった頑固モノですから、どうだかわからないですけど』




エリカ(……ふん、喧しいわよ。生意気な子。)

エリカ(……とは言え、たしかに──)

エリカ(梓、今回はあんたに感謝してやってもいい)

エリカ(私は、師範に、師範の肛門を見せてもらえた)

エリカ(なら……)

エリカ(打ち明けるなら、いまこそ、チャンスなのかも)

エリカ(機嫌よさそうに、肛門をさらしてくれている、今こそ──)

エリカ「──あの、師範」

しほ「なに?」

エリカ「私が、師範に相談したかったことなのですが──」

しほ「あら、いきなりね。まぁ、いいわ。聞きましょう」

エリカ「……その……」



エリカ「……私……」

エリカ「このまま戦車道を続けていて、いいのだろうかと、悩んでいます」



エリカ(──……)

エリカ(……あぁっ)

エリカ(見せちゃった──)

エリカ(師範に)

エリカ(私の肛門を──)

エリカ(私の弱いところ、情けないところ、恥ずかしいところ、隠すべきところ)

エリカ(他の誰にもみせたことのない、私の、一番汚いところ……)

エリカ(師範に、失望、されてしまうかしら──)
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/15(月) 20:50:31.15 ID:2OGf2EJPO
しほ「──エリカ」



 ──ぞくッ



エリカ(……っ!?)



しほ「──それはいったい、どういう事?」

エリカ「っ、あの……ですね……」

しほ「──エリカ、貴方の弁解を聞く前に、一つ確認しておく」

エリカ「っ! (弁解……!?) は、はい、なんでしょうか……」

しほ「あなたのその考え──私意外の誰かにも、すでに打ち明けているの?」

エリカ「え……?」

しほ「どうなの。正直に答えなさい」

エリカ「い、いえ……まだ、師範以外には、誰にも話いませんが……」

しほ「本当に?」

エリカ「っ、は、はい、誓って……」

しほ「そう。ならば、いいわ」

エリカ「……は、はい……」

エリカ「……っ」


エリカ(な、なに……?)

エリカ(……あぁ……だけど……)

エリカ(──これだ!)

エリカ(師範の、この刺すような瞳!)

エリカ(地響きのような重たい声!)

エリカ(ティーガーの巨体が迫るような圧迫感……!)

エリカ(これが、私の知っている西住流の家元──師範!!)

エリカ(なんて鋭い気配なんだろう!)

エリカ(もう、肛門なんて、影も形も見えない────!)
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/16(火) 08:32:26.43 ID:jsCZypmZ0
乙です
面白いんだけど電車の中でスマホで読むには開き辛いスレタイだった
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/16(火) 08:39:30.32 ID:lg03eXdyo
笑った拍子に屁が出たら危険だからね
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 22:17:06.04 ID:T9jTOrTG0
エリカ(師範の雰囲気、さっきまでと全然違う。威圧感で、今にも押しつぶされてしまいそう)


しほ「エリカ、一応、確認をしておくけれど──」

エリカ「は、はい」

しほ「今のバカげた発言は、冗談? もしそうだとしたら、この上なく不愉快な冗談だったけれど──今ならばまだ、許しを与えます。二度と口にしないと──誓いなさい」

エリカ「……っ」

エリカ(おお、……虎に睨まれた蛇……ああ違う、蛙だったっけ……)

エリカ「師範、私は……冗談でこんな事を口にするほど、愚かではありません」

しほ「そうですか、ということは──」

しほ「──本気でそういうたわ言を口にするような、救いようのないの愚か者だったということなのかしらね」

エリカ(っ……こっわ……)

しほ「貴方、自分の立場と自分の発言の政治的意味を理解しているの」

エリカ「政治的意味……ですか」

しほ「我が校の隊長──その者課せられる責任と義務を、よもや軽々しく考えてはいないでしょうね」

エリカ「それは──当然ですです。」

しほ「ならば理解しているはず、貴方に求められるものは、単純な戦車道の技量だけではないということを」

エリカ「……。」

しほ「戦車道の発展に寄与しうる人物たるか、その思想や人間性において西住流の歴史と伝統に関与する資格を有しているか──私達は審査に審査をかさね、貴方という人間を黒森峰の隊長として認めた──」

しほ「そんな貴方が、『戦車道を続けるかどうかを悩む』などと──それがどれだけ無責任な発言であるか──ねぇ、本当に理解しているの?」

エリカ「……。」

エリカ(……あぁ、なるほどね……)

エリカ(今──ようやく少しだけ理解できた)

エリカ(みほは、これが、嫌だったのね──)


しほ「──。」


エリカ(師範のこの、冷徹な眼差し、無機質で重たい声……)

エリカ(『私の気持ち』がどうだとか、『なぜそう考えているのか』だとか、そういう個人的な事柄には一切関心はなく──)

エリカ(師範の思慮にあるのは、一個の人格を超越した、『流派』だとか『家』だとか……そういうことだけ)

エリカ(私の人格なんか、まったく二の次で……)

エリカ(……。みほ)

エリカ(もし、二年前のあの時──)

エリカ(師範がもっとあんたに優しくしてくれていたなら、あんたの気持ちに寄り添ってくれていたなら──あんたは──)

エリカ(──……。……ふんっ)

エリカ「ま……私の知ったこっちゃないけど」

しほ「……は?」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 22:17:35.23 ID:T9jTOrTG0
エリカ「……あっ!?」

エリカ(やばっ、声にだして、言っちゃた)

しほ「いま口にしたことを──もう一度言ってみなさい」

エリカ「……っ……い、いえっ……今のは、全然違う話についての言葉でして……!」

エリカ(みほの事についてであって……!)

しほ「違う、話、ですって? …………………………………………………………………………。


しほ「お前は──今、自分がどれだけ大事な事を話し合っているか──それすらを理解できていないの──?」

エリカ「!!!」

エリカ(『お前』なんて、初めて……は、は、は……マジ切れ寸前ってところかしら)

エリカ(……うわぁ、師範の握りしめたわり箸、なんか折れそうなんだけど……)

エリカ「あの、師範、どうか、私の言葉を聞いていただけないでしょうか」

しほ「……。」」

しほ「……端的に、かつ明確な発言を心がけなさい。さもないと──」

エリカ「……さもないと……?」

しほ「今後、私があなたの発言に注意を向けることは二度となくなるでしょう」

エリカ「……っ」

しほ「その瀬戸際であることをを理解した上で──弁解があるのなら、述べなさい」

エリカ「……し、承知しました……」

しほ「……。」


 ……わいわい、がやがや……


エリカ(これだけ賑やかなら──私達の会話に、あえて聞き耳建てて人なんていないわよね)

エリカ「……。」

しほ「……。」

エリカ(すぅ──はぁ──)

エリカ(うぅ、……試合の時よりも、今この瞬間のほうが、よほど緊張してるわね)

エリカ(ふぅー……わにっ!)
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 22:18:04.20 ID:T9jTOrTG0
エリカ「師範──さきほどああは言いましたが、けれど、第一の目標としてはやはり、この先も戦車道を続けたいと、思っています……もちろん、西住流として」

しほ「……。貴方にその資格があるのかどうか、私はもう一度真剣に検討をする必要がありそうですが」

エリカ(おお、怖……)

エリカ「ぜひ、検討をよろしくお願いいたします。」

しほ「……。」

エリカ「そうお願いしたうえで、なおもう一点、どうしても、師範にご相談させていただきたいことがあります」

しほ「……。」

エリカ(……っ。あぁ、背中、もう、滝汗よ……せっかくお風呂にはいったのに……)

しほ「いいわ──甘んじて聞きましょう。これが、最後になるのかもしれないものね」

エリカ「……ありがとうございます」



しほ「……。」

エリカ「……。」



 ……わいわい、がやがや……

エリカ(……すぅ……はぁ……)

エリカ「……師範」

しほ「ええ」

エリカ「もし──」

エリカ「もしも、私のこれまでの努力を、師範は認めてくださるのなら──」

しほ「……。」

エリカ「私の、この一年間の務めを評価してくださるのなら、どうか、私を──」

エリカ「師範の娘として、養女として、法的に認めていただけませんか」

エリカ「そうして、どうか私に──西住流の後継者たらんとする実際的な資格を、与えてください」




エリカ(…………。)

エリカ(……あーあ……。)

エリカ(……本当に、言っちゃった。)

エリカ(……。)

エリカ(黒森峰の隊長になった後の、はじめて聞いた試合開始の号令。あの時も──こんな気分だった)

エリカ(もう、どうあがいても、以前の時間には戻れないんだって──)

エリカ(前進することしか自分にはもう、許されていないんだって──!)



しほ「……。」

エリカ「……師範、冗談とかじゃ、ありませんから」

しほ「……。」



エリカ(……。)

エリカ(……頭がおかしいって、思われたかな)
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/17(水) 22:19:13.61 ID:T9jTOrTG0
エリカ(今まで積み重ねてきた師範からの評価も、最悪、全部失うかもね)

エリカ(けど……それがなによ……!)

エリカ(……これぐらい言ってやらなきゃ、私は、気が済まないんだから……)

エリカ(……今のままじゃいくら頑張ったって、私は──)

エリカ(……あーあ、もしやっぱりだめだったら──島田流にでも今から入門してやろうかしら)

エリカ(って……馬鹿ね、それじゃ結局、何も変わってないじゃない……)



しほ「……、エリカ。」

エリカ「……、はい。」

しほ「私は、あなたがまほの後を継いで依頼、貴方と、それなりに長く付き合ってきたつもりです」

エリカ「……感謝してします。こんな私なんかと」

しほ「正直に言って貴方とは気が合ったし、わざわざ熊本の家にまで押しかけてきて戦車道の教えを請いにくるような貴方のその姿勢は、いささか無礼ではあれど、嫌いではなかった」

エリカ「……。」

しほ「だから──どうしても納得がいかない」

エリカ「……?」

しほ「貴方が、こんな──「バカバカしい」としか言いようのないようなことを、言うだなんて。」

エリカ(……………………そっか、『バカバカしい』……かぁ)

エリカ「……そう、ですか。」

エリカ(……あーあ)

エリカ(全部──無駄、だったのかしらね……私の今まで……)

しほ「呆れたという言葉では言い合わらせないくらいに、今、貴方に呆れているのだけれど──」

エリカ(……。)

しほ「ただ、それでもなお私は──」

エリカ(え……)

しほ「あなたが馬鹿だとは、思えない」

エリカ「……。」

エリカ(……師範……)

しほ「あなたの、戦車道に対してのひたむきな心を。この一年間、私が見てきたものが偽物だったとは──どうしても思えない。──思いたくない」

エリカ(……っ)


エリカ(師範の瞳……大きい、です──)


エリカ(……見つめないで、くださ──)


エリカ(──!? あれ!? やば! ちょっと……なんで私、目頭があつくなんのよっ!?)
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 22:19:55.22 ID:T9jTOrTG0
エリカ(だめ、だめ……! かってにぶちまけて、勝手に泣いたりしたら──それこそバカじゃない!)

しほ「……。……。……ねぇ、エリカ……」

エリカ「は、はい」

しほ「……。これは──なんの脈絡もない思い付きというか、勘なのだけれど──」

エリカ「へ……?」

しほ「……。」

エリカ(……何……? 急に考え込んで──)



しほ「もしかして──あなたが突然に今のような事を言い出したのは、あの子──みほの、影響……?」



エリカ「──!」



エリカ「あ、の……それは……」


エリカ(あぁ……さすが、というか……大した勘だわ、家元……いえ、母親の、勘……?)


しほ「……図星?」

エリカ(……YES、と答えるのは……すっごいシャクだけど……)

エリカ(でも……)

エリカ(こうやって俯いて黙ってりゃ、YESって答えているようなもの、か……)



しほ「……。」

しほ「…………ハァー…………」

エリカ(深いため息……)

しほ「まったく…………あの子は…………どこまで私を……」



エリカ「……。」



エリカ(……ごめん、みほ。もしかすると今──師範の中で、あんたの評価がまたまた爆下がりしたかも)

エリカ(恨まないでよね。)

エリカ(けど、悪いけどそんなことよりも、私、今……)

エリカ(……すごい喜んじゃってるわ……)


 ──この一年間、私が見てきたものが偽物だったとは──どうしても思えない──


エリカ(私、さっき、これまでのどの瞬間よりも、師範に認めてもらえていた気がする)

エリカ(はぁ〜……うぇっ!? やばっ、なんかまた涙がのぼってきそう……)

エリカ(くそっ、絶対、泣いて、たまるもんですかっ……)

エリカ(でも、本当にやばい、ちょっとこれ、やばい、気をそらさないと……マジで泣いちゃう……)

エリカ「……あ、あのう、師範」

しほ「なに」

エリカ「師範は……どうして私を、師範の娘として産んでくださらなかったんですか……?」

30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 22:20:47.74 ID:T9jTOrTG0
しほ「……。」


しほ「…………………………。」


しほ「…………………………………………………………。」




エリカ(……あはは)

エリカ(師範、すっごい能面ヅラだわ。よくわかんないけど、『ドン引き』って感じなのかしら)

エリカ(ふぅ……よかった。とりあえず……一応、涙引っ込んだわ……)

エリカ(……はぁ〜……けど、そうよ、思い出しなさい、私)

エリカ(師範がどんなに恐ろしい相手だろうが、神様みたいな人だろうが──)

エリカ(──肛門っ)

エリカ(そう、この人にも、肛門がついているんだわ)

エリカ(私と同じ、人間なのよ。おならもするし、うんちもする)

エリカ(だから──気圧されるな、負けるんじゃないわよ、私……!)


しほ「……。」

エリカ「……。」

エリカ(師範の出方を、今はみるべきかしら)

エリカ「……。」

しほ「……」


しほ「──とりあえず──」

エリカ「……。」

しほ「食事を終わらせてしまいましょう」

エリカ(……こんな時でも、この人は、取り乱さないのね)

エリカ「そう、しますか?」

しほ「続きは、部屋にもどってから。それに……少し、気を静める間を、私に与えなさい」

エリカ「わかりました」

エリカ(動けないときは、動かない。……ふん)



 ……もぐもぐ……



しほ「……お魚。美味しいわね。少し、冷めてしまったけれど」

エリカ「……はい、おいしいです」

エリカ「……。」



 ……もぐもぐ
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 22:21:34.63 ID:T9jTOrTG0
エリカ(どうすれば、娘に──迎えてもらえるかしら)

エリカ(私の要求をぶつけるだけじゃあ、だめよね)

エリカ(師範にとっても、何かこれがメリットであるように──)

エリカ(……。)


エリカ(──そっか……私、今……それなりにこの時間を楽しんでるのね。)

エリカ(戦況はさっぱり分からないけど──それでもなお、自分にとって良いようにしてやろうって、そう思えてる)

エリカ(……。)

エリカ(やるじゃん、私)


しほ「ねぇ、エリカ」

エリカ「あ、はい……?」

しほ「私、少し、自分に驚いているのよ」

エリカ「え……?」

しほ「考えてみたのだけれど、私はどうやら──貴方を、切り捨てようとはしていないみたい」

エリカ「……どういう、意味でしょう」

しほ「『こんなトチ狂った事をのたまう人間は、今すぐに私の人生から追い出すべきだ』『関係を断つべきだ』──私の頭の一方は、そう主張している」

エリカ「……。」

しほ「けれどそのもう一方では──『どうしてこの子はこんな事を言うんだろう?』『この子が何かを悩んでいるとして、私はこの子にどうしてあげられるのだろう?』──そうも考えている」

エリカ(……! 嬉しい……)

しほ「不思議ね。私はいつの間に──貴方にそこまで心を許したのかしら」

エリカ「……。」

エリカ「……あの」

しほ「……?」

エリカ「私も、自分自身、少し、不思議なことがあって──」

しほ「何……?」

エリカ「さっきまで言っていたようなめちゃくちゃな事、私──師範以外には言わないと思います」

しほ「……。」

エリカ「……。」


 ……もぐもぐもぐ……


エリカ(──。)

エリカ(……あれ?)

エリカ(今の言葉こそが……私の『肛門』……?)

エリカ(あれ……? あれ……? じゃあ、さっきまでの言葉はなんだったの……?)

エリカ(娘にしてくれたのなんだのと──)

エリカ(私、全力で自分の肛門を、師範にさらしていると思っていた。)

エリカ(けど……そうではなかった……? 今までの言葉はせいぜい──『おっぱい』──? ……おっぱいなの……?)

エリカ(じゃあ──いったい何なの? 私が、師範に聞いてほしかったことって──。私にとっての、本当の、『肛門』って──いったい──)
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/17(水) 22:33:53.39 ID:F3fEQKu/o
面白い
凄くいいい
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/19(金) 17:53:52.65 ID:JnaWAWfq0
素晴らしい。
しかし、早くしほエリアナルレズプレイが読みたい
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/19(金) 18:27:53.72 ID:1bZkGqCzo
レズとかそういう話なのかはわからないけど
普段人には見せず自分でも把握できてない素の自分の暗喩に「肛門」を使うあたりセンスを感じる
どこか文学的だ
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 09:06:06.12 ID:TZ7IzEyWO
 ──食後・二人の個室へ向かう廊下──


 とた、とた、とた……


エリカ(……。)

エリカ(……18年間も生きてきて、私は、自分のお尻の穴を一度も見たことが無い……)

エリカ(小さかったころ、幼心と興味本位で股の間を鏡で観察したことはある。もちろん、お尻の穴も見えていたはずだけど……それほどしっかりとは見なかった。前のほうにばかり、興味がいって……)



 ──さっきまで言っていたようなめちゃくちゃな事、私──師範にしか言わないと思います──



エリカ(私がそう呟いた時、師範は『ああ、そう』って、あたりまえに頷いてくれた──)

エリカ(……すごく幸せな気持ちがした……お尻の穴から頭のテッペンまで、じわっと暖かくなった)

エリカ(……私の肛門は、いったいどうなっているの?)



しほ「──。」


 ぷり、ぷり、ぷり……


エリカ(師範のおしりが、目の前で揺れてる)


 ぷり、ぷり、ぷり……


エリカ(……やっぱり、綺麗、下着売り場のマネキンみたいに完璧なお尻、……)


 ぷりん、ぷりん、ぷりん……


エリカ(……もう一度、見たい。師範の肛門。師範のお尻を、軽く押し広げて──じっくり観察してみたい)

エリカ(まぁ……そんな事をしたら破門じゃすまない、か……)

エリカ(──あぁ、馬鹿な事を考えてる間に、もうお部屋についちゃったじゃない)


 ガタ、ガタン、


しほ「? 部屋のドアが開かない……」

エリカ「あ、たぶんレールが悪くなってるんですよ。ちょっと、いいですか?」

しほ「ん」

エリカ「こうやって、ドアを少し持ち上げながら──」


 ……ガラガラガラ……


しほ「あぁ……なるほど、ありがとう」

エリカ「いえ」

エリカ「……。」

エリカ(ふふ……このちょっぴり不器用な感じ、まほさんみたい。やっぱり、親子なのね)

エリカ(……。)
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 09:08:39.17 ID:TZ7IzEyWO
しほ「登山靴、部屋の前においておけばいいのかしらね」

エリカ「あ、はい。そうですね」

 ぬぎぬぎ……。

エリカ「靴、入り口のすぐ脇に、一緒に並べておきますね」

しほ「ありがとう」

エリカ(……、そっか、靴のサイズは、私も師範も、一緒くらいか)

エリカ(……。)


 どたどたどた、

 
しほ「ふぅ──窓の外、山なみが綺麗ね」

エリカ「そうですね」



エリカ(……。)

エリカ(……今日一日……この人と一緒にいて、実感したことは……)

エリカ(この人は、神様じゃない。私と同じ……生の人間……おならもするし、肛門だってある……)

エリカ(この人の裸を全部みて、私の裸も全部見せて、それで、お互い裸でゆっくりお話しをして)

エリカ(そうして、改めて、心から思った。)

エリカ(この人の娘として……生まれてみたかった……)

エリカ(母さん、父さん、ごめんね、二人の事はもちろん好きよ。ただ……私は、私なりに、人生の半分を西住流にささげてきた。ものすごく、真剣に)

エリカ(私は私の時間を中途半端に使いたくない。何かに時間をささげるなら、とことんまで本気になりたいと思うの。)

エリカ(……。)

エリカ(……みほ、アンタは、ズルいわ)

エリカ(私にないもの、いっぱい持ってるクセに──)



 あれ……

 私、……なんで急に……みほの事を──




エリカ(………………あ)




エリカ(あぁ──そうか。)

エリカ(これが、私の本当の肛門か)

エリカ(……なんだ、こんなものか……)

エリカ(私は、みほに、嫉妬してるのね)

エリカ(なるほど。私は大会でみほに勝って、その嫉妬を振り払おうとした……)

エリカ(なのに、みほは、私にそうさせてくれなかった)

エリカ(アンタは、私に負けたくせに、ちっとも悔しそうじゃなくて──)

エリカ(おまけにあんたは試合の時もう、隊長ではなかった)

エリカ(私は隊長同士、対等の立場で、あんたに、私の価値を認めさせたかったのに……)




しほ「──さぁ、エリカ。貴方も座りなさい。話の続きをしましょう」

エリカ「……。」
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