【ガルパン】逸見肛門抄

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37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 09:10:16.11 ID:TZ7IzEyWO
しほ「みほと、何かあったの?」

エリカ「……。」

エリカ(みほのせいよ)

エリカ(アンタのおかげで私は──もう、師範の娘になるしかなくなってしまって──)

エリカ(……。)

エリカ(……。)

エリカ(……。)

エリカ(違う。私いま……すごく情けない事を言ってる……)

しほ「……エリカ?」

エリカ(自分の願いがかなわなかった責任を、誰かに押し付けて──)

エリカ(ハァ……私って、バカね、本当に、バカ……)

エリカ(はぁー……)

エリカ(……けど、ちゃんとそれに気づけてよかった)

エリカ(……。

エリカ(……よっしゃ)

エリカ(後は──自分でなんとかしてみせる)

エリカ(これ以上、師範に失望されたくないし──)

エリカ(すぅ、はぁ)

エリカ(……っ)

エリカ「──師範、申し訳ありませんでした」

しほ「……何がです」

エリカ「もう、大丈夫です。すっきり、しました」

しほ「……は?」

エリカ「師範がお話しを聞いてくださったおかげで、自分の課題がはっきりみえました」

しほ「……私はまだ、貴方から何も聞いてはいないのだけれど」

エリカ「いえ、師範はもう十分に私の話を聞いて下さいました。これ以上、師範のお手を煩わせる必要はありません。先ほどの私の馬鹿な言葉も、忘れてください。後は──自分のお尻は、自分で、拭きます」

しほ「……。」

エリカ「本当に、申し訳ありませんでした」

しほ「……。忙しい中、本州まで引っ張り出されて、訳の分からないたわ言を一方的にきかされて──あげく、勝手に満足をされて……私はたまったものではないのだけれど」

エリカ「言葉もありません。ただ、本当に──今日は感謝しています。私と一緒にいてくださって、ありがとうございました」

しほ「……………………。」

エリカ「私にとって、この上ない恩賞旅行でした……どうか、ご容赦願えないでしょうか」

しほ「……………………。」

エリカ「それと、ずうずうしいかもしれませんが……、どうかこれからも、師範の元で、戦車道を続けさせてください」

しほ「……………………。」

しほ「……………………。」

しほ「……………………。」

しほ「……。ちょっと待ちなさい」

エリカ「え、あの……お許しいただけないのでしょうか……」

しほ「とにかく、いいから、待ちなさい。それと──」



しほ「──その癇に障る敬語を、今すぐ止めて」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 09:11:43.65 ID:TZ7IzEyWO
しほ「エリカ……あなた、また悪い癖がでてる」

エリカ「え……」

しほ「貴方は、甲と決めると、もう乙の事が目に入らなくなってしまう」

エリカ(……私が隊長に就任したころ、よく師範から指摘されていた事……)

エリカ「……。修正できていたつもりですが──私、また、やっていますか」

しほ「ええ」

エリカ「……。というと、その……」

しほ「自分で考えなさい。己で気付きなさい」

エリカ「え……」

エリカ「……。」

エリカ「……え、えと、あの……やはり、あれだけ好き勝手言っておいて、すっきりしたので何事もなく今まで通りに西住流を、というのは……虫がよすぎたでしょうか……」

エリカ「その、まさか……破門、ですか……」



しほ「……………ハァ〜〜〜〜〜〜〜」



エリカ(ええええええき、聞いたこと無いくらいの深いため息……)

エリカ「し、師範……」

しほ「貴方の察しの悪さには……まったく、ホトホト……」

エリカ「え、あ、う……えと……」

エリカ(ど、どうしようどうしよう……)

しほ「……私が言いたいのは、つまり──」

エリカ「は、はい……?」

しほ「──少しは、私の気持ちを考えてちょうだい」

エリカ「……へ?」

エリカ(……師範の、気持ち……?)

エリカ(……。)

エリカ(……『気持ち』!?)

エリカ「……あの、き……気持ち、ですか……?」

しほ「……。」

エリカ(おぉ……眉間の皺が、すごい……)

エリカ(……で、でもでも、だって……)

エリカ(『気持ち』だなんていう個人的なものを考えろだなんて師範の口から──まして、師範自身の──。)

エリカ(それに、こう言っちゃ失礼だけど──師範の『気持ち』を理解している人なんて──)

しほ「……エリカ」

エリカ「は、はい……?」

しほ「私は──少しだけ、嬉しかったのよ」

エリカ「……は……え……?」

エリカ(……『嬉しかった』……?)
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 09:12:20.49 ID:TZ7IzEyWO
しほ「私のような不寛容な人間の……母親としてはとても水準にみたない人間の……娘になりたいなどと」

エリカ「……え……」

しほ「貴方が、何を考えているのか……私は知りたい」

エリカ「師範……」

エリカ(え……これって……)


エリカ(──肛門?)


エリカ(いつの間にか、目の前に、師範の肛門が──)


エリカ(……あ、違う、これは──肛門どころの話じゃなくて……?)


エリカ(肛門の──その、さらに奥……?)


エリカ(乾いて、くすんで、色素の沈着した疲れた肛門ではななく──その、もっと奥──?)


エリカ(師範が、自分の肛門をおもいきり指で広げて、そのさらに中をみせてくれている? 師範が、あの師範が……!?)

エリカ(──待って、どうしよう!? どうして急に!?)

エリカ(肛門の奥、想像していたよりもずっと綺麗で、血が通ったピンク色の壁は、若々しくてらてらと光を反射させていて──)

エリカ(でも、そんなものをいきなり見せられても、私は、どう答えたら──)


 ──私も、見てほしい──


エリカ(……え……)


 ──お尻の穴の更に奥──


エリカ(……!?)


 ──自分では、見ようと思っても見れない。穴を広げて、誰かに底を覗き込んでもらわないと知ることのできない、そんな秘密の部分──


エリカ(……で、でも、そんなの恥ずかしい。お尻の穴を開いて、その奥を、誰かに見てもらうだなんて、──お母さんに座薬を入れてもらった時だって、そんなところまでは──)


 ──……だけど──


エリカ(……だけど……師範になら──)

エリカ(私が誰よりも尊敬する、この人になら。)

エリカ(自分の肛門を私に見せてくれた、この人になら)

エリカ(……私は……っ)

エリカ(私は……っ)

エリカ(──奥の奥まで、見てもらいたい……!)
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 09:13:54.77 ID:TZ7IzEyWO
エリカ「……あ、あの、師範!」

しほ「……。」

エリカ「私……師範とまた……裸で、お話しをしたいです」

しほ「……。」


エリカ(お風呂で一緒につかっている間──私は師範をすごく身近に感じられた)

エリカ(あんな時間をまた、師範と共有したい。ゆっくりと、いろいろなことを語り合いたい──)

エリカ(──下山をしたら、近場の温泉を探そう)

エリカ(いえ、小屋の人に聞けば教えてくれるかもしれない。下山をしてすぐにいける温泉、ありますかって!)



しほ「……わかりました」

エリカ「ありがとうございます! じゃあ──」

しほ「──では、部屋の鍵を閉めなさい」

エリカ「……へ?」

しほ「窓のカーテンも、閉めなければね」

 しゃっ……

エリカ「え、え」

しほ「さぁ、早く。戸締りをして、貴方も服を脱ぎなさい。私の気が変わらないうちに」

エリカ「……。」

エリカ「……。」

エリカ「……。」

エリカ「……はい」

エリカ「わかりました」

 ──カチャン

エリカ「……。じゃあ、私も服……脱ぎますね」

しほ「ええ」

 ……しゅるしゅる……

エリカ(……。)

エリカ(……どうしよう、私今、すごく……幸せ……)

エリカ「あ、あのう、師範……」

しほ「ん……」

エリカ「電気、消しますか……?」

しほ「……バカね、何を言っているの」

エリカ「す、すみません……」

エリカ「……あ、じゃあ、……つけたままで?」

しほ「裸で語らうために裸になるのでしょう? だったら、お互いの身体を良く見なくてどうするの」

エリカ「そ、そうか、そうでしたね……」

エリカ(さすがね、師範は、こんな時でも堂々としてるのね……)

エリカ(……。)

エリカ(私の目の前で、師範が服を脱いでいく。……なんだか、すごく、ドキドキする。……)

エリカ(変なの。さっき、脱衣所で師範が服を脱いでいた時は、別に……)

エリカ(……。)

エリカ(……ああ、そうか、そうよね、だってここは脱衣所じゃないもの……)
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 09:35:03.77 ID:x2zAoWASO
私の本当の肛門というパワーワード
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 09:46:17.02 ID:QoPIAfbTo
なんだこの状況…
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/26(金) 21:23:48.23 ID:2mVHleZDO
 ……ぬぎ、ぬぎ……

エリカ(こんな事になるなんて……まほさんやみほが聞いたら、なんて言うだろう……)

しほ「エリカ」

エリカ「は、はい」

しほ「言うまでもないけど──今日この小屋で起こったことは、決して他言無用です」

エリカ「も……もちろんです! もちろん」

エリカ「……で、ですが……師範はどうして……こうまでしてくれるのですか?」

しほ「脱げと言っておいて、今更そんな事を聞くの?」

エリカ「それは、そうなのですが……なんだか、信じられなくて」

しほ「……。」

しほ「……説明は──しません。したくありません」

エリカ「へ」

しほ「ただの気まぐれ──それでいいでしょう。余計なことを考えずに、目の前にある状況を活用なさい」

エリカ「は、はぁ……」

エリカ(……屁理屈、よね、今の。……本当に、可笑しな師範……)

エリカ(でも、師範の言う通りよ。こんな事は、きっと、もう、二度とない──)


 ……しゅる──ふぁさ……


エリカ(パンツも……ブラも……本当に、全部脱いじゃった……私も、師範も──)


 ……おず、おず……


しほ「……。」

エリカ「……っ……」


エリカ(私、師範と、裸で、向かい合ってる。……山小屋の、こんな狭い一室で──)

エリカ(こんなのって、こんなのって──)

エリカ(っ……ええいっ! しっかりしろ、逸見エリカ!)

エリカ(目の前の今を、大事になさい!)
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/26(金) 21:26:30.25 ID:2mVHleZDO

エリカ「あ、あのっ……」

しほ「ん」

エリカ「私、今日一日、師範のお尻を見ていて……すごく、見事だなと思いました」

しほ「どうもありがとう」

エリカ「せっかく、ですから、その──しっかりと、拝見させていただいてもよろしいでしょうか……!?」


エリカ(……うわああああああああ!!!)

エリカ(これ……現実!?)

エリカ(私、今、言ったのよね!?師範に──お尻をみせてくださいって!!!)

エリカ(ば──ばっかじゃないの!?)

しほ「……私のお尻をみたいから、私に裸になれと言ったの?」

エリカ「──い、いえ、決して! 決して、そういうわけではありませんが……」

しほ「……まぁ、いいでしょう。中途半端は、わたしも好みません」

エリカ「え……」


 くるっ


しほ「お尻です」

エリカ「──!!!」


エリカ(────お父さん、お母さん────神様────生きてるっていうのは、本当に……)


エリカ「──あ、あの……綺麗なお尻です……」

しほ「まぁ、多少の自信は、有るわね」

エリカ「多少だなんて……私も、それなりに体を鍛えてはいるつもりでしたが、こうまで綺麗には」

エリカ(あぁ、信じられない。師範のお尻が、今、私の前に)

エリカ(盗み見でもない、お風呂のチラ見でもない。今、『私に見られるため』に、このお尻は、今、お尻として私の目の前にある──)

エリカ(……ただ、肛門はさすがに…・・・・見えない、か)

エリカ(……。)



エリカ(もし私が今手をのばして、師範のお尻にふれて、臀部を少しだけ広げて、そうして私が──ひざまずけば──そうすれば、そこには──)

エリカ(……だめ、自制なさい! 師範はもう十分に肛門をさらしてくれている。その上、そこまでしていはずがないわ……)
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/26(金) 21:27:31.20 ID:2mVHleZDO
エリカ「何か、特別なトレーニングをされているのですか?」

しほ「そうね。理想形を維持するための努力は、行っているわね」

エリカ「象徴たるイメージのために──ですか?」

しほ「個人的な自尊心のためでもあるけれど──ええ、動機としては、そちらのほうがより大きいでしょう」

エリカ「さすがです。わたしも見習わないと……」

しほ「骨盤の形や、大腿骨の接続部の形にもよるけれど──ふむ、エリカ、後ろを向きなさい」

エリカ「へ?」

しほ「貴方の下体の具合を、見てみましょう」

エリカ「え!?」

エリカ「い、いや、そんな、恐れ多いですし……!」

エリカ(師範に、私のお尻を、じっくりみられるだなんてっ! 恥ずかしい!)

しほ「人のお尻を見ておいて、自分のお尻は、見せないつもり?」

エリカ「うっ、ぐ……。……わ、わかりました……」


 ……くる……


しほ「……、……そうね、少し、余分な脂肪が多いか──」

エリカ(……っ、ヒィィィィィィ……師範が、かがんで、私のお尻を……)

エリカ(師範の声が、私のお尻のすぐ近くから聞こえる……!)

しほ「足、触るわよ」

エリカ「え、ちょ──」


 ……さわっ


エリカ「ひゃあああああ!」

しほ「静かになさい。山小屋の壁なんて、薄いに決まってるんだから。ふざけてやっているのではないのよ」

エリカ「す、すみません!」

エリカ(だだだだけど! うわあああああ! 師範の手が、私の骨盤骨を! 私の太ももの外側と内側を! ていうか、結構、足の付け根まで!!)

エリカ(ふああああああああ……)

しほ「骨格は──そうね、それほど悪くないと思う。」

エリカ「そ、そう、ですか……」

しほ「ただ内側の筋肉に改善の余地が多くある。内転筋系──膝から股間にかけて伸びる──」


 もさっ── 


しほ「あ──」

エリカ(ッッツッ!!<ブビっ>!!! し、師範の指が、毛の先端に──!!!!」

エリカ(……って……え?)



エリカ(……<ブビ>……って……?)
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/26(金) 21:29:45.08 ID:2mVHleZDO
エリカ(……あ──肛門に感じる──この暖かさ──)


しほ「──ク、ム……もう、ちょっと……貴方……」


エリカ「────!!! ぎゃあわああああ!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

しほ「だから、騒がないでちょうだい。けれど今のは私も悪かった。ふれるつもりはなかったのよ」
 
エリカ「がっ、……ぎっ……!」

エリカ(──!!!!!!)


 ぼふっ!


しほ「エリカ、なぜ枕に顔を──」


エリカ『あーーーーーー! あーーーーーー! ああーーーーーーーー!!!!!!』

エリカ(なんてことを! 私はなんてことを!!!!! 師範の指先におけけを触れさせて、その上、師範の顔に──おならを──!!!!)

エリカ『むぁああああああああーーーーーーーーーー!!!』


しほ「……気がすむまで叫びなさい。まったく……大げさな……」


エリカ(大げさでもなんでも、ありませんよ!!!)

エリカ『ぶあぁああああああーーーー!!』
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/27(土) 09:47:44.55 ID:LNIyLJH7O
面白い
タイトルからお下品ギャグみたいなのかと思ったら当人達は真剣そのものでこれはいい

もしちがっていたら申し訳ないが以前戦車乗りが妊娠する話を書いてた人だろうか?
あの時もタイトルと中身の乖離っぷりに驚いたものだが
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/28(日) 21:55:45.43 ID:z3QRMi+IO
>>47
恥ずかしながら、その通りです。
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/28(日) 21:56:25.09 ID:z3QRMi+IO
エリカ『うぅあおぉ……』

しほ「いい加減に落ち着きなさい。……それにしても、裸だと、少し寒いわね」

エリカ「むぁ……寒いですか……服、着ます……?」

しほ「ふむ……私は、あなたの屁の匂いを嗅ぐために裸になったのかしらね」

エリカ『ぐぎぃ……』

しほ「違うというのなら、まだ服を着る時ではないわね」

エリカ「……ですが、師範が体調を崩されては」

しほ「では、布団をかぶりましょう」

エリカ「え」

エリカ(布団をかぶるのはいいけれど……この部屋の布団、『二人部屋』のはずなのに、備え付けてあるのは一枚だけ……大き目敷布団と軍隊毛布が一式……山小屋って、どこもこうなのかしら……)

しほ「貴方も入りなさい。貴方こそ、風邪をひかれては困る」

エリカ「あ……は、はい……」

エリカ(……うう、師範と同じ布団、しかも、裸同士で……)


 ごそごそ……。


エリカ(ほとんど肩が触れ合う距離で……緊張する……)

しほ「まさか、裸同士で、寝るとはね」

エリカ(……っ……)

しほ「……こんな事をしたのは貴方が初めてでしょう──主人以外の相手には、ね」



エリカ(……あ……。)



エリカ(……。)



エリカ(……旦那さんも……──師範のお尻の穴……見たのかな)

エリカ(……。)

エリカ(夫婦なら、そういうことも、あるのかな。……でも、『そういうこと』をするにしても……お尻の穴なんて見るものなのかしら)

エリカ(……。)

エリカ(まぁ、とにかく……『師範のお尻の穴を見たのは世界で私一人』──だなんて……それこそ、思い上がりか)



エリカ(……………………………………………………。)
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/28(日) 21:57:23.08 ID:z3QRMi+IO
エリカ(……っ、ええい、逸見エリカ! くだらない感傷で時間を無駄にするなて、師範にも言われた!!)

エリカ「あはは……師範、いきなりそんな生々しい事を言わないでください。どう反応をすればいいのか、分かりません」

しほ「ん……そうね、そうだったかもしれない」

エリカ「そうですよ……あの、そう言えば、御主人とはお見合いで……?」

しほ「……。」

エリカ(あ、……さすがに、ふみこみすぎたかしら……)

しほ「──それは、私が恋愛結婚をするようには見えない、という意味?」

エリカ「へ!?」

エリカ「い、いえ……! そうではなくて! 師範は西住流のご令嬢だったわけですから……やっぱりそうなのかなって……」

しほ「……私と主人は恋愛結婚です。私から交際を申し込んだ」

エリカ「……!!! そう、なんですか……」

しほ「そうよ」

エリカ「……。」

エリカ「あの、私……自分が恋愛とかできる気、少しもしなくて」

しほ「そう?」

エリカ「それで、師範は私以上に戦車道に打ち込まれてる方ですから……なんとなく、師範もそうだったらいいなって、変な願望があったみたいです……正直に言えば、……なんていうかお見合いであってほしかったっていうか……」

しほ「ふぅん……? まぁ、私の場合は跡継ぎを産む事はどのみち義務であったわね。たしかに、私は西住流の長女なのだから」

エリカ「義務……ですか」

しほ「ええ。大学を卒業した後はどのみち見合いをさせられていたでしょう。私の母はそうだったようにね。……主人にアプローチをしたのは──母への精一杯の反抗だったのかもしれないわね」

エリカ「……。」

エリカ(反抗?)

エリカ(……師範にも……いろいろな過去があったのかしらね……そうね、人間だもの……)

しほ「主人はもともと顔見知りだったし──それに、ちゃんと尊敬できる人でもあった。私にとっては、恋愛をする唯一のチャンスだったでしょう。だから、容赦なく、どんどん積極的に交際を求めたわ」

エリカ「……さすが、西住流です」

しほ「まぁ……関係を急いてばかりの私は、男の人には、きっと、鬱陶しいところが多々あったでしょう。けれどあの人は、最終的にそれらすべてきちんと受け止めてくれた……」

エリカ(……。)

エリカ(この一年間、そして今日一日、ずっと師範と一緒にいた私だから分かる。師範の声の、微妙なほてり……。……やっと少しは、師範に近づけたのかと思ったけど……)

エリカ(……結局私は、他人なのよね。……ふん、当たり前でしょ。馬鹿ね──)

しほ「──それで?」

エリカ「え……」

しほ「今度はあなたが話をする番」

しほ「『私の娘になりたい』などと、貴方はどうして、そんなおかしな事を言ったの?」

エリカ「あ……」

エリカ「それは──その……」

エリカ(……っ、!)

エリカ「えと……」

エリカ(う、うああ、何これ、──今更になって……!!! すごく恥ずかしい……!!!)

エリカ(私はいったい、何を思いあがっていたんだろう!?)

 ばっ……!

しほ「……エリカ。布団に顔を引っ込めてないで、きちんと説明をなさい」

エリカ「わ、わかっています……いるのですがっ……」

エリカ(……ああああああっ……)

エリカ(師範と二人きりで長野に旅行へ来て、結構楽しく一緒に登山も出来て──結構いい感じに、関係を構築できてるんじゃないかと思った。だから今日なら! 今日なら無茶なお願いも聞いてもらえるかも──っって、あほか! 馬鹿か!! 何を思いあがってんのよおっ!!)
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/28(日) 21:58:26.38 ID:z3QRMi+IO
しほ「……。」

しほ「ねぇ、エリカ。少し、マジメな話をしておくけれど──」

エリカ「え……は、はい?」

しほ「キチンと説明をするまで、私は貴方を、寝かすつもりはありません」

エリカ「へっ」

しほ「私には貴方を監督する責任がある」

エリカ「責任……」

しほ「さっきもいったけど──黒森峰の隊長という立場を軽く考えてもらっては困る。貴方の精神状態を把握しておくことも、私の責務の一つです。だから、仮に貴方が錯乱しているのなら、えらいことです」

エリカ「……そ、そうですね……。」



エリカ(……。)

エリカ(私の、個人的なバカさ加減で、師範にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないわ……)

エリカ(……すぅ、はぁ……)

エリカ「……師範、取り乱して、申し訳ありませんでした」


しほ「ん」


エリカ「私の話は……やっぱり、みほと、関係する話になります」

しほ「そうですか」



エリカ(……)

エリカ(話し終わった後……やっぱり師範には、『情けない奴』と、思われるのかしらね──)




エリカ「──みほ、3年になってすぐ、あっさりと隊長を辞めたじゃないですか」

しほ「ええ、そうだったわね」

エリカ「隊長役は後輩にゆだねて、自身は副隊長として指導役に徹して──」

エリカ「師範は、それを、どう思いましたか……?」

しほ「私は、もうあまり、深くは考えなかった」

エリカ「そうなんですか?」

しほ「今更もう、口出しをしてもしかたがないわ」

エリカ(……口出しはしない、か……どういう意味なのか、もう少し深く聞いてはみたいけれど……止めておこう。今は、本題ではないもの)

しほ「まほは、『あれが、みほの見つけた戦車道なのですよ』と、分かったような事を言っていたわね」

エリカ「あぁ……私にも、似たような事を話してくれましたね……まほさんは、みほの話をするとき、以前にもまして嬉しそうです」

しほ「で、貴方は? 貴方はどう感じたの?」

エリカ「私は……」

エリカ「私は──やっぱり、腹が立ちました」

しほ「そうでしょうね」

エリカ「大会であの子を打ち負かしてやると決めていたのに。あの子は、二年生に隊長の座を譲って……」

しほ「今年度の大洗の隊長──『澤梓』。まずまず、頑張っていたわね」

エリカ「そうですね。特別に秀でた所はありませんが──指揮能力も根性はあるし、負けん気も鬱陶しいくらいで──……そう考えると、なんだか、みほよりもよほど西住流らしかった」

しほ「必死に、貴方とはりあおうとしていたようね」

エリカ「ええ」

しほ「ん、話しがそれたかしら?」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/28(日) 21:59:00.64 ID:z3QRMi+IO
エリカ「あ、そうですね。……みほは──自分は指導役に徹して……。まるで、私との対決なんかどうでもいいんだと、馬鹿にされているように感じました」

しほ「……。」

エリカ「ですが結局、大洗は今年も決勝まで勝ち上がってきました。それで私、決勝に勝った後、みほに勝ち誇ってやろうと思ったんです。『アンタの戦車道は、結局、西住流には勝てなかったわね』って」

しほ「あまり褒められた姿勢ではありませんが──で?」

エリカ「……大洗の連中のところへ行くと──梓や、他のメンバーは、悔しそうにしていたり、悔し泣きしていた子もいました。だけど、みほは──きっと、師範も見ていたのではないですか。」

しほ「……まぁ、ね……」

エリカ「……みほは笑ってましたよね。優勝を逃したことなんか、少しも気にしていない様子で……」

しほ「……ええ」

エリカ「メンバーひとりひとりに、『よくやったね』『惜しかったね』『どこが悪かったか、みんなで一緒に考えようね』とか──」

エリカ「まるで、ただの練習試合かなにかの後みたいに……」

エリカ「私が来たことになんか、少しも気付かず」

しほ「……。」

エリカ「しばらくして、みほはようやく私に気がついて──駆け寄ってきて、ニコニコ笑いながら『さすがはエリカさんだね。すごいね』って……」

しほ「……。」

エリカ「私、なんだか……力が抜けて」

しほ「どうして?」

エリカ「……。」

エリカ「結局私は、中学のころからずっと、みほと──西住流の西住みほと、張り合ってきたんです」

エリカ「だから今年は、ようやくあの子と、対等になって戦えると──それが、とても誇らしくて──」

エリカ「……それだけじゃなくて、この先もずっと、あの子に、勝ち続けたかった」


エリカ(……………………あれ……?)


エリカ「なのに、あの子、いつのまにか違う道を進みだしていて──」


 ──何も考えていないのに、言葉が──ひとりでに──口から……


エリカ「負けた癖にニコニコ笑ってるあの子をみて──ああ、この子は本当にもう、西住流じゃないんだって……」


エリカ「そう考えたら、私──」


 ──あぁ……


エリカ「──これから私は──どんな風に西住流を何を目指せばいいんだろうって──」


 ──なるほどこれが私の──


エリカ「……。師範、私は、師範のために、西住流のために、これからはまほさんと競います。人生をかけて、真剣に後継者を目指します」


エリカ「だから、どうかお願いです」


エリカ「私を、まほさんと対等にしてください、……師範の娘にしてください。……私、今……とても寂しいんです……」


 ──………………これが私の……肛門の奥………………──


エリカ(──バカねぇ……せっかく自分の課題を見つけられたはずなのに……何勝手に一人で、感情的になってんのよ……師範にこんな……汚いモノばかり見せて……)




しほ「………………………………。」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/28(日) 22:00:01.17 ID:/emI2HPi0
原作での出番に反比例してなぜか薄い本の多い師範
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/29(月) 10:40:22.78 ID:KtNFEYArO
>>48
やっぱりそうだったのか
いつも楽しませてもらってるわありがとう
55 :1 [sage]:2017/05/29(月) 12:03:41.76 ID:UbX8DnNhO
>>50について、修正

<しほ「ふぅん……? まぁ、私の場合は跡継ぎを産む事はどのみち義務であったわね。たしかに、私は西住流の長女なのだから」 >
から以降の全行を下記の通りに書き直し。(日本語(特にしほの)があまりにアレだったので)
まとめていただけるようでしたら、まとめサイト様、置き換え願います。


<以下:修正後の内容>

しほ「ふぅん……? まぁ、私の場合、子どもを産む事は義務でもあった」

エリカ「義務……ですか」

しほ「ええ。貴方の言う通り、私はたしかに西住家の長女。大学を卒業した後は見合いをさせられていたでしょう。私の母が、そうだったように」

エリカ「……家を、背負う……ということですか」

しほ「そういう事です。……ただ、それでも……今考えてみると──主人にアプローチをしたのは、私の、精一杯の反抗だったのかもね。……彼女に対しての……」

エリカ「え……」

しほ「……。」

エリカ(……反抗……)

エリカ(……師範にも……きっと、色々な事情があるのよね……)

しほ「……主人はもともと顔見知りの人だったし、何より、私にとってちゃんと尊敬できる男性だった。だから、私が恋愛を試みる唯一のチャンスだったでしょうね。『この人』と決めて……積極的に交際を求めた。後が無いもの」

エリカ「なんだか、師範らしいです」

しほ「……関係を急いてばかりの私は、あの人にはきっと、鬱陶しくも感じられたでしょう。それでもあの人は……最終的に、全ての重みを、きちんと受け止めてくれた……」

エリカ(……あ……師範、今……)

エリカ(……。)

エリカ「羨ましいです、師範も、御主人も」

エリカ(……この一年間、そして今日一日、ずっと師範と一緒にいた私だから分かる。師範の声にこもった、かすかな火照り)

エリカ(……。嫉妬しちゃうわね。……やっと少しは、師範に近づけたのかと思ったけど……)

エリカ(私なんか、全然だわ)

エリカ(結局私は、師範にとては他人でしかない。……ふん、当たり前でしょ……馬鹿ね──)

しほ「──それで?」

エリカ「あ、え……?」

しほ「今度はあなたの番。私の質問に、ありのままに答えなさい」

エリカ「は、はい」

エリカ(……『ありのまま』……そうか、師範は……私のぶしつけな質問に、真摯に答えてくれたんだ……)

しほ「では、改めて尋ねます。……『私の娘になりたい』などと、貴方はどうして、そんなおかしな事を言ったの?」

エリカ「……っ、はい、それは、つまり、その……」

エリカ「えと……」

エリカ「……っ!」

しほ「?」

エリカ(う、うああ、何これ、──今更になって……!!! すごく恥ずかしい……!!! 私も真剣に答えなきゃけないのに!!)

エリカ(でもでも──私はいったい、何を思いあがっていたんだろう!?)

エリカ(師範と二人きりで長野へ来て、思ったよりずっと楽しく一緒に登山も出来て──結構いい感じに、関係を構築できてるんじゃないかと思った。だから今日なら! 今日なら無茶なお願いも聞いてもらえるかも──っって、あほか! 馬鹿か!! 何を思いあがってんのよおっ!!)


 ばっ……!


しほ「……エリカ。布団に顔を引っ込めてないで、きちんと説明をなさい」

エリカ「わ、わかっています……いるのですがっ……」


エリカ(うううううううっ……!)

<以上:修正終わり>
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 19:18:43.10 ID:ITCL/a4/O
しほ「──エリカ。貴方の心情はおおよそ理解した」

しほ「それをふまえた上で──家元として、貴方に告げる」

エリカ「……。」

しほ「貴方が西住流の養子になる──そんな事は起こりえません。絶対に」



エリカ(────……あぁ……。)



 ──……。



しほ「そんな事をすれば家督争いの種になる。少し考えれば明らかな事でしょう」

しほ「そも、貴方のご両親に対して私はいったいどのようにご説明を?」

しほ「ともかく──貴方が現状のままではどうしても戦車道を続けられないというのなら──」

しほ「──いいわ、戦車道を止めてくれて結構です」

しほ「あるいは、西住流から去ってもらう。その時は、未練が残らないようこの私が直々に、貴方の破門を言い渡します」



エリカ「……破門、ですか……。」

しほ「貴方の思い付きは──西住流にとって。有害です」

エリカ(……っ)

エリカ(ほんと……この人の言葉は、相手を暗闇の底に突き落とす……容赦なく、徹底的に、弱いところをついて……)

エリカ(……。)

エリカ(みほも、こんな風な言葉を浴びせかけられたのかしらね)

エリカ(だとしたら……少し、腹が立つ)

エリカ(どうして貴方は、こういう言い方しかできないのですか)

エリカ(もっと他に、いくらでも言いようがあるでしょうが……)

エリカ(……。まぁ、でも、関係ない、……私は──)



エリカ(──負けて、たまるものですか……!!!)



エリカ「……師範、ご心配はありません」

しほ「……」

エリカ「私は、今日一日……師範のおかげで……自分の甘さを自覚することができましった。だから、大丈夫です。本当に、こんな機会を設けていただけて、感謝をしています」

しほ「……。そうですか。なら、いい」

エリカ「……はい……。」

エリカ「……。」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 19:19:21.82 ID:ITCL/a4/O
エリカ(良い、一日だった、そうでしょう?)

エリカ(西住流の家元に……私の汚いところを見てもらえた。そのうえで、きちんと判断を明らかにしていただけた。……光栄なことよ……)


エリカ(……けれど……)


エリカ(この胸の奥の重さ、ずんとくる痛み)

エリカ(これ……いつか、ちゃんと消えるのかな……明日の朝目が覚めれば、消えているのかな……)


エリカ(……みほ……また、アンタみたいに私もちゃんと──)


エリカ(心から笑って、戦車道をできるかしらね──)



 ──……。



エリカ(──……下山をしてから考えよう。師範と別れて、一人になってから、たっぷりと感傷に浸ればいい。)


エリカ(今は──師範と一緒にいるのだから。何か、師範と、話をしないと。)


エリカ(一門下生としては……それが礼儀)


エリカ(目上の人には……失礼のないように、しなくではね)


エリカ(……。)


エリカ(……でも何を、話せばいいのかしらね)


エリカ(この人は……私が頑張っている限り、私を評価してくれるでしょう)


エリカ(戦車道を頑張ってさえいれば、私は、それでいいんだわ)


エリカ(……だったらもう……)


エリカ(……別に……)


エリカ(この人と素っ裸になってまで……話すような事はもう……何も──)






しほ「………………………………。んっ」


 つまッ!


エリカ「ぷぇツ!?」





しほ「……。」

エリカ「……。」




エリカ(は?)

エリカ(……え? へ? 師範が──私の唇をつまんでる)
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 19:20:30.85 ID:ITCL/a4/O



しほ「エリカ」

エリカ「ぷぇ……?」

しほ「隊長ともあろうものが、人前で、メソメソと涙を流すものではありません」




エリカ「──!?」

エリカ「ぷおぁっ、な────泣いてません!」



 バフッ!!!



エリカ(この私が、こんなことで、泣くはずない! こんなことで──)


 ごしっ……


エリカ(げっ……なんか勝手に涙でてる!? うそ……!? ……っ、っもぉぉおぉ何やってんのよぉ私ぃ……!!)

エリカ(ああもう、ホントに情けないったら……!)



しほ「エリカ」 ぐいっ



エリカ「!?」

エリカ(え、師範が、毛布をはがそうと──)

エリカ「ちょ……待って! 止めてくださいっ、今は、駄目ですっ」

しほ「いいから。顔を出しなさい……命令よ」

エリカ(……っ!)

エリカ「ぐ……」


 ……ぱっ

 ……ファサァ……



エリカ(っ、見られ、たくない! きっと無様に充血してる、こんな情けない顔……!)



しほ「……。」



 ……つまッ



エリカ「ぷぇぁっ!?」

エリカ(また、唇を! もう! この人は何がしたいのよ!?)




しほ「……。」



しほ「……もし日本戦車道の西住流家元がカーネギーの『人を動かす』を読んだら──」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 19:21:37.54 ID:ITCL/a4/O
エリカ(……?)

エリカ(……ケンタッキー……?)



しほ「……まぁ、別に、何も変わりはしない」

しほ「私はこれまでの自分を後悔してはいないし、現状に不満を感じてもいない」

しほ「……ただ──」



エリカ(? 独り言……?)



しほ「もしもあの時、あの子に、──もう少し違う言葉をかけてあげられていたとしたら。……。」



エリカ(……???)



しほ「……。……エリカ」

エリカ「ヴぇ、 ぷひ?」

しほ「貴方の人格と自尊心にとって戦車道が重要なアイデンティティであるという事、そしてまた、戦車道を努めるにあたりみほとの存在が良きにつけ悪しきにつけ重要な要素になっていたという事、それはおおよそ理解ができた。」

エリカ(……!?)

しほ「そのみほの存在圧が急に消えてしまって、貴方は今なんとなく気落ちをしている。分からなくはないけれど、そんなことはよくある話です。戦車道に限ったことでもない。競技者には起こって当たり前の出来事」

エリカ(……う……)

しほ「だから、グダグダ言っていないで、さっさと次の目標を探しなさい。ただし、現実的な、ね」

エリカ(な、なによ、ポンポンポンポン──!)

しほ「伝わった? 私の言っていることは納得できる?」

エリカ「……ぷ、ぷい……」コクコク

しほ「そうですか、ならいい」

エリカ「……。」



エリカ(……!? !? !!??)

エリカ(なんだったのよ、今の……!)



 ……くにくに

エリカ(あ……? 師範の指が私の唇を……こねこね……。)

エリカ(あ、これ……すごく気持ちいい……)
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 19:22:28.79 ID:ITCL/a4/O
しほ「ともかく、エリカ」

エリカ「ぷぁ……?」

しほ「貴方はまだ──戦車道の経験が、浅い」

エリカ「ぺ……!?」

エリカ(経験が……浅い……!?)

エリカ(生涯の半分以上を──思春期と青春のその全てを戦車道にささげたこの私の経験が……浅い……!?)

しほ「不服そうな顔ね。けれど──たかだか十数年。実績にしろ、経験にしろ、貴方より上は大勢いる。それは紛れもない事実でしょう?」

エリカ(……! あぁ──そうか、師範はもっと高い視点から、しかも、相対的ではない絶対的な基準で──)

しほ「貴方はまだまだ井の中の蛙。だから──これからも頑張りなさい。いつか私を、追い越せるくらいに」



エリカ「──!!!」

エリカ(……師範……)

エリカ(……。)

エリカ(──私は……師範が何を言わんとしているのかを……完全には理解できていないと思う──)

エリカ(……ただ、それでも……)

エリカ(師範は今──真心から……私を……!)


 
 ──ぴるんっ!



エリカ(あっ……師範の、指が……)

エリカ(──もっと……私をつまんでいてほしかった──)

エリカ(……っ)



エリカ「……師範、えと……」

エリカ「あ……ありがとうございます。私……頑張ります」

しほ「……。よろしい」


しほ「……ふぅ……」


エリカ(……よく、分からないけど……でも……。……このよく分からない時間に、もっと続いていてほしいと思う……)


エリカ「……あの、師範……」

しほ「?」

エリカ「今日は一緒に、このまま……寝て頂けますか」

しほ「……。」

エリカ(服を着てしまったら……なんだか、夢が覚めてしまうような気がする……)

しほ「……まぁ、いいでしょう。……しっかりと、風邪を引かないように布団をかぶりなさい」

エリカ「……はい……!」






 ──……。
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 19:23:03.36 ID:ITCL/a4/O
エリカ(電気を消して、暗くなった部屋……)

エリカ(……町の音は何も聞こえない。ここれは上空2400メートルの山の上……)

エリカ(時々聞こえるのは、師範の吐息だけ……)

エリカ(こうやって、師範と裸で、狭い部屋で一緒に……)

エリカ(……あぁ……本当に……いい一日──)










 ──……。



 ──この後に起こった一連の出来事は、いったい、夢なのか現実なのか。それを確かめる勇気は、私にはない。もしも夢だったのなら、私は自分の正気を疑うし、万が一、もしもこれが現実だったのなら、私はとんでもない不誠実に師範を巻き込んでしまったことになる。ならいっそ、何もかもを、曖昧なままにしておけばいいんじゃないの。そう考えてしまう私は、あまりに自分勝手なのかしら──
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/31(水) 19:23:41.96 ID:ITCL/a4/O
次回の投稿で終わりです。
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 12:13:05.23 ID:qU5SbSHnO
しほ「──エリカ、さっきは悪いことをしたわね」

エリカ「んぅ……?」

エリカ(ぁ……半分、寝てた。一日登山をして、なんだかんだで疲れてたのかしら……)

しほ「あぁごめんなさい、もう眠っていた?」

エリカ「あ、いえ……大丈夫ですよ」

しほ「そう」

エリカ(こんな風に、裸で枕を並べる機会なんて二度とないかもしれない。もったいない……)

しほ「先ほど……もう大丈夫だと貴方は言うのに、私は強引に説明をもとめて、結果、貴方を感情的にさせてしまった」

エリカ「いえ、それは私が勝手に……」

しほ「そのうえ、こちらから説明を強要しておきながら、私は偉そうに『有害だ』『破門だ』などと……立場上、はっきりとそう告げなければならなかったとは言え……思い返すと、申し訳ないわね」

エリカ(まぁ、それは確かに、少し腹がたったけれど……)

しほ「水に流して、西住流を続けてほしい」

エリカ「それはもちろん、これからもよろしくお願いします」

しほ「そう、よかった」

エリカ「はい」

エリカ(……。)

エリカ(師範とお話ししていると、時々二面性を感じることがある。……私はむしろそのギャップが好きなんだけれど……)

エリカ「……あの、師範、こんな事をあえて聞くのは、失礼ではあると思うのですが……でも、どうしても聞いておきたくて……」

しほ「ん?」

エリカ「私を娘にしてくださいと食堂で伝えた時、師範は『少し嬉しかった』とおっしゃいました。……どうして嬉しいと感じてくださったんでしょう……」

エリカ(その後で、私の思い付きは有害だと、そう言ったくせに)

しほ「……。」

しほ「それについてはもう、説明はしたはずだけれど」

エリカ「え……」

エリカ(説明、してもらったっけ……?)

エリカ(……。)

エリカ(……あ)


 ──私のような不寛容な人間の……母親としてはとても水準にみたない人間の……娘になりたいなどと──


エリカ(……)

エリカ(──うーん……)

エリカ(……まぁ、言葉が不十分なところも──師範らしいけれど)



 ──私のような……母親としてはとても水準にみたない人間──

 ──私はこれまでの自分を後悔してはいないし、現状に不満を感じてもいない──

 ──あの子に、──もう少し違う言葉をかけてあげられていたとしたら──



エリカ(…………え?)

エリカ(さっきは、自分の事で一杯いっぱいで気がつかなかったけれど──)

エリカ(……それって……。)
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 12:15:09.83 ID:qU5SbSHnO
エリカ「……あの、師範」

しほ「ん?」

エリカ「師範は、もしかして、みほとの事……少し後悔をしています……?」

エリカ(……あ、また……いくら裸で向かい合ってるからって、……遠慮がなさ過ぎたかしら──)



しほ「…………………。」



エリカ(……えっ)

エリカ(否定、しない……?)


しほ「……。」


エリカ(……うそ……)

エリカ(どうしよう……和式トイレのドアを開けて、うっかり師範のうんちしてる背中をうっかり見ちゃったような──そんな気分……)

エリカ(目の、やり場が)

エリカ(……。)

エリカ(だけど、師範の顔は、やっぱり綺麗……お尻だけじゃなくて、顔面まで、マネキンみたい……。)

エリカ(少し物憂げな表情に見えるのは、横たわって筋肉が弛緩しているからなのかしら──)



しほ「──エリカ」

エリカ「! は、はい……?」

しほ「この部屋で、共に裸でこうして床を共にしているその意味、貴方は理解しているでしょうね」

エリカ「……え、と……」

しほ「旅の一夜の秘め事──朝になれば、お互いすべて忘れましょう、そういうことです」

エリカ「……はい……」




エリカ(……明日になれば、お互い、すべてわすれる……一夜の、秘め事……。)

エリカ(……なんだか、ドキドキする……)

エリカ(私と師範は……忘れなければならないようなことを……するの?)



しほ「……。」

しほ「……言葉はなくとも、自分の気持ちを分かってくれる」

エリカ「え……」

しほ「そんな相手が──いるのではないかと、子どもじみた夢を見たことがある。」

エリカ「……。」


エリカ(──明日になれば、すべて忘れる──)


エリカ「──それは、師範が、ですか?」

しほ「そうです。私が22歳の頃。」

エリカ「……結構、大人になってからですね。」

しほ「……。」

エリカ「あ……その相手というのは、ご主人、ですか」
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 12:16:43.09 ID:qU5SbSHnO
しほ「……いいえ、違う。」

エリカ「では……」

しほ「……。」

しほ「……私の乳房に、懸命に吸い付くあの子達──」


エリカ(──! みほ……)


エリカ「……。自分の子どもなら、何も言わなくても全部わかってくれる、……という事ですか」

しほ「……。」

エリカ「……っ、あの師範、生意気を言う事、お許しください。」

しほ「……ええ」

エリカ「現役の一娘としては、やっぱり、……言葉にしてもらわなきゃ、わからないです……」

しほ「……。」

しほ「私は──」

しほ「私に課せられた諸々の責任を、あの子にどう理解してもらえばよかったのかが、よくわからない」

エリカ「諸々の責任……」

しほ「私はその伝え方を、もっと真剣に考えるべきだったかもしれない。」

エリカ「……。」

しほ「けれど私という人間には、どうしても、それを深く考えるだけの寛容さが無い。それを育むだけの余裕が、私には──無いのよ」




エリカ(……。)

エリカ(やっと、少しだけわかったような気がする──なぜ師範が、私と一緒に、この部屋で裸になってくれたのか──)

エリカ(……。)

エリカ(私って本当に……察しが悪いんだわ。今日、こんなにも師範の肛門を見ていたはずなのに)



 ──私に似ている、と言ったのよ──

 ──少しだけ、嬉しかった──


エリカ(……師範……)


エリカ「……一言だけでも、褒めてあげれば、変わるのではないでしょうか……よくやっているって」

しほ「それはまほがやってくれている。私があの子に示すべきは、家元としての威厳であって──」

エリカ「……。」

エリカ(……面倒な人……。)

エリカ(だけど私だって……あの子に──梓に──言われたことがある)

梓『沙織先輩なら、みほ先輩とケンカをしても三秒で仲直りできます。だけどエリカさんは半年以上もかかる』

エリカ、(……。)

エリカ(いいお母さんになれなかった分、この人は必死に、家元であろうとして……?)

エリカ(ううん、家元であろうとしたから、いいお母さんにはなれなかった……?)

エリカ(私の勝手な想像かもしれない……だけど、もし、少しでもそういう面があるのなら……)

エリカ(私……この人のそういう不器用な所……みほには悪いけど、すごく……)


 ……ぞくっ……


エリカ(……興奮する……)
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 12:17:25.81 ID:qU5SbSHnO
 ……ぶるるるっ……



エリカ(私、この人の事──お母さんにしてあげたい──)



エリカ(……!)



 ……ぶるぶるぞくぞくっ……



エリカ(そうか、『私のために、私を娘にしてもらう』のではなく……)

エリカ(『師範の為に、師範をお母さんにしてあげる』……!)

エリカ(……私になら、私だったら……師範が望む在り方で、師範をお母さんにしてあげられる……!!)


 ぞわぁっ……


エリカ(っ……、背筋が……!)



 ──一夜の秘め事── 

 ──明日になれば、お互いすべてを忘れる──!



エリカ(体が……熱い……!)

エリカ(もう……我慢できない……!)


 ごそ……


しほ「……? エリカ、何を──」

エリカ(……師範……朝になれば忘れると──師範が、そう言ってくれたんです──)


 ……ぎうゅっ


しほ「え──」


エリカ(どうか、師範のオッパイを──)

エリカ(私に、ください──!)


 ──ちゅうううううう!!!!


しほ「あっ……!? ちょっと貴方一体──」


 ──きゅむ、きゅむ、きゅむっ……!


しほ「ん、くっ……!?」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 12:19:24.97 ID:qU5SbSHnO
エリカ(……っ、これがっ、師範のっオッパイ──すごく、柔らかくて、暖かくて……て、っあれ!?)

エリカ(……無い!? 師範のおっぱい、乳首が無い──!?)

エリカ(──あ! そうか! 『陥没乳首』────!)

エリカ(じゃあっ、こっちなら……!)


 ……ちゅぽんっ……ちゅ、ちゅうううううう!!!


しほ「……こらっ……ちょっと本当に、離れな、さい……んっ……」

エリカ(……あった! こっちはちゃんと乳首が──ある!)

エリカ(柔らかくてグニグニしてて……こんな感触……今まで、知らない……!)

しほ「エリカっ、いい加減にっ……、こんな事をして許されると──」

 ぐいっ

エリカ「ぐ……!!」

エリカ(……離されるな! 私のほうが、若いんだ、力は……強いんだ……!)


 ぎゅうううう!!!


しほ「ぐっ……!?」

エリカ「ちゅぷぁ……お母……様!」

しほ「な──」

エリカ「お母様……お母様!」

 ちゅううううううう!!!

しほ「────っ……」

 ……ぶるっ……

エリカ(──今、師範の身体……震えた……!?)

しほ「この……馬鹿、者っ……何を考えて……っ」

エリカ(あ……抵抗する力が、少し、弱く──)

しほ「……はぁ……ぁ……」

エリカ(! 師範の吐息が……震えて────)



 ──『薬莢、捨てるとこ』──



エリカ(──!)

エリカ(──梓が得意げに自慢してきた武勇伝──格上の相手をいかに倒すか──)

エリカ(そうか、これが──)

エリカ(──師範の、薬莢、捨てるとこ──!)


しほ「エリカ……あなたいったい、……何を考えているの……」

エリカ「……っ」

エリカ「ちゅぷぁ……師範、もう、謝っても許してはいただけないかもしれませんが──」

しほ「……覚悟、しておきなさい……」

エリカ「……っ、どうか今晩だけは……私のお母様でいてください……」

しほ「……あなた、まだそんな事を……」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 12:22:23.45 ID:qU5SbSHnO
エリカ「師範が戦車道の家元だからではありません」

しほ「……。」

エリカ「師範のような人に、私の母親であってほしいと思うからです……っ、今日、お話しを聞いて、より強く、そう思ったんです……」

しほ「……っ」

しほ「……。」

エリカ「……師範……おっぱい……吸いますね……」



 ……ちゅ、ぅぅ……きゅむ、きゅむ……



エリカ(……抵抗が……こない……?)



しほ「……。」

しほ「……ふざけないで」

エリカ(……!)


エリカ(……っ、何を言われても、今晩だけは……離れないわ……っ)


しほ「……その程度の力では──おっぱいは出ない……」


エリカ(──え……?)


しほ「オッパイというのは──」

しほ「生きたい」

しほ「成長をしたい」

しほ「大きくなりたい」

しほ「──そういう決心で、全身全力で私の命を吸って──ようやく、得られるものなの」

エリカ「……師範……」

エリカ(……。)


エリカ(……。)

エリカ(……っ)

エリカ(そうだ──)

エリカ(……全力で……吸わなきゃ……師範に、失礼だ……!!)


 ……──ぎゅむぅっ、ぎゅむぅっ、ぎゅむっ……!


しほ「……んっ……」

エリカ(……はぁ、あ、……師範、師範……師範……っ)


エリカ「……ちゅぷぁ、師範……!」

エリカ「私、師範の身体から生まれたかった、師範の、命の、一部から、この世に産まれたかった……っ」


しほ「……っ」


エリカ(っ……私、頭のおかしい事を言ってる、気持ち悪い事を言ってる……でも! この人に、貴方は私の理想のお母さんだって、……どうしても分かってほしい……!! この人は誰よりも厳しくて、強くて、でも、本当はちゃんと弱いところもある……けれどこの人はどうしてもその弱みを他人には見せられない……私の、理想の人……!)


エリカ「全部、私が悪いんです。ごめんなさい。ごめんなさい。夜が明けたら、もう二度と、こんなことはしません。言いません。だからどうか……今だけは……」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 12:23:49.22 ID:qU5SbSHnO
エリカ「私のお母さんで……いてください……」


 ……ちゅぷぁ……


しほ「……。」

エリカ(抵抗、やっぱり、無い……)

エリカ「……っ、師、範……!」


エリカ(違う!)


エリカ「──お母……さん……っ!」

しほ「……ッッ」

 ……ぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっ──





 ──────────。





 ──ぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっ、ぎゅむっ……



エリカ(──……もう、1時間は経つかな──)

エリカ(……オッパイ、でない……)

エリカ(顎、もう、疲れ切って、感覚がない……頭も、ぼやけてきた……)

エリカ(でも……止めたくない……)


エリカ(師範の味、触感、暖かさ、におい……ずっと離れたくない、ずっと感じていたい……赤ちゃんって、こんな気持ちなのかしらね……)


しほ「……。」


エリカ(師範は何にも言わずに、ずっと、私のオッパイを吸わせてくれている……)

エリカ(……お母さんに、なってもらえたのかな……)

エリカ(それとも私は……ただ我慢を強いただけ? 頭のおかしい女学生の、その頭を抱かせるという……我慢を……)

エリカ(……どっち、なのかな……。……師範の声が、聴きたい……)
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 12:26:39.85 ID:qU5SbSHnO


しほ「……。」

しほ「……昔、思ったことがある」


エリカ(……あ、師範の、声……嬉しい……)


エリカ「んく、んく、んく……」

しほ「私の身体から生まれたこの子を、私の乳房を精一杯にほおばるこの子を──もう一度、私の体の中に戻るくらいに、だきしめてしまいたいと──そういう衝動を覚えたことが、ある」

エリカ(……。)

しほ「だけどそんな事はできない。そんな力で抱きしめたら……か弱いこの子達は苦しんでしまう。可哀想だ。……そう考えて、出来なかった……」

エリカ(……。)

エリカ「……いい、れすよ……」

エリカ(……あぁ、顎も舌も付かれはてて、力が入らない……)

エリカ「……わたしを身代わにに、してくらさい……私を、みほやまほさんの、身代わにに……娘にしてもらえるのなら、身代わにへも、なんれも」

しほ「……っ」

エリカ「それに、私はヤワじゃありあせん。どれだけきびしくされへも、めちゃくちゃにされても、わらしは……へこたれないれすから……」

しほ「……っ!!」


 ぶるるるる!


エリカ(あ、師範の身体が、震え──)


 ──ぎゅうううううううう!!!


エリカ(──!!!????)

エリカ(何、これ、力──凄──……!!!!)

エリカ(顔が、おっぱいに──息が、出来な────!!!!)


しほ「ふぅぅぅう!! ふぅううぅうう……!!!」


エリカ(……!? 師範が! 私の頭の匂い! いっぱい嗅いでる!)


しほ「はぁっ……はぁっ……はぁぁっ……!!!」


エリカ(凄く……! 興奮してもらえてる……!!! こんな師範、みたことない。師範がしたくてしたくてしかたなかったことを……私は今、させてあげられてる……!!! 嬉しい……!!!)

エリカ(……吸いたい、ほしい、この人のオッパイを……飲みたい……!!!!!)


 ──ちゅうううううううう!!


しほ「……はぁあぁっ──私の、子──私の、娘──!!!!」

 ぎゅううううう!

エリカ(──どういう意味なのだろう、師範は、誰を想っているんだろう──でも、いい、師範が悦んでくれているのなら──)

エリカ(私はもう──それでいい──)


 ──じわぁ……


エリカ(────!!!???)

エリカ(今、舌に、不思議な味が──)


 ──じわぁ……じわぁ……
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 12:27:55.20 ID:qU5SbSHnO
エリカ(──!!)

エリカ(間違いない、出てる……出してもらえてる! 師範の、お乳──!!)

エリカ(もっと欲しい──もっと……飲みたい!!)


 ──ぎゅむぅ! ぎゅむぅ! ぎゅむぅ!

 ──じわぁ……じわぁ……じわぁ……


エリカ(あぁ──師範の命の味──おいしいかどうかは、分からない──でも……嬉しい!)

エリカ(この人の身体からつくられた、子供を生かすための液体……私、今、それを与えてもらえている──!!!)

エリカ(嬉しい、嬉しい……嬉しい……!!!!!!)

エリカ(私は、今──この人の娘──)

エリカ「……んく、んく、ちゅっ……お母、さんっ……んくっ……」

しほ「……っ、はあぁあ……はぁあぁっ……エリカ……っ」



 ──────────。


















 ──翌日・午前──

 ──長野県茅野市・八ヶ岳稜線『二十三叉峰』──



 ざっ、ざっ、ざっ、ざっ、


しほ「エリカ、午前のうちに、赤岳を越えるわよ」

エリカ「はいっ」


 ざっ、ざっ、ざっ、ざっ、


しほ「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ……」

エリカ「はっ、はっ、はっ、はっ……」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 12:28:39.33 ID:qU5SbSHnO
 ──ひゅうぅう


エリカ(冷たい風が心地よい。それに……青空、とてもきれい……)


しほ「気持ちいいわね」

エリカ「ええ、本当に」


エリカ(……師範、すごく満たされたような顔をしてる……)

エリカ(……よかった……)



 ──……。



エリカ(──尿意と共に目覚めた今日の朝──)

エリカ(私が目を覚ました時、師範はすでに起きていて、ウェアに着替えていた──窓の外、遠くの山並みをジッと眺めて──)

エリカ(私は師範に「おはようございます」を言って、自分も服を着て、トイレにいった──それから二人で朝食をとり、そして山小屋を出た)

エリカ(昨晩の話は……一切無かった。)

エリカ(……。)

エリカ(それでいい。一夜の夢は、もう、終わったのだもの)

エリカ(こうして、前を歩く師範のお尻を、ウェアの上からながめているだけで……今はもう、十分)


エリカ(私の心は、昨日まで比較にならないほどに晴れている。)


エリカ(明日か明後日か、私は大洗でみほに会う。)

エリカ(あの子に言ってやろう。たまには、熊本に帰ってこい。師範に、あなたのお母様に、顔をみせてやれと──)

エリカ(ついでに、少しだけお節介を言ってやろう。アンタが寛容になってあげなさい、と。あんたのお母様は、あんたやまほさんに似て……すごく、不器用なんだから──)


エリカ(段差を昇る師範のお尻を見つめながら、ぼんやりとそんな事を考える)

エリカ(──次の瞬間、突然、師範の体が大きく揺れた)




 ──ガラっ!!、





しほ「あ!?」

エリカ「!!??」


エリカ(──師範が、浮石を踏んで──)
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 12:30:43.23 ID:qU5SbSHnO


 ぐらっ──


エリカ(師範の身体が、バランスを崩し──)


しほ「っ──!!!」

エリカ(危ない、師範が、私の方に倒れ──)

エリカ「──師範!!!」



 ──がしっ!



エリカ(……っふぅぅぅ……危なかった……。私がとっさに、両手で師範のお尻を支えて……)


エリカ「師範、大丈夫ですか」

しほ「え、ええ……はぁぁ……今のは肝が冷えた。……ありがとう。エリカは命の恩人ね」

エリカ「あはは……それは、少し大げさですよ。……多分」

しほ「急な岩場でなくてよかったけれど……でも、打ちどころが悪ければ骨折くらいはしていたかもしれない」

エリカ「……そうですね……気を付けないと。えと、師範、お尻、もう手を放しても大丈夫ですか?」

しほ「あぁ、もう大丈夫よ、ありがとう」

エリカ「はい、では──」



エリカ(──その時、私はふと気が付いた──」


エリカ「……。」


エリカ(師範のお尻を、下から突き上げるように支える私の手)

エリカ(その親指のすぐそばに──師範の肛門がある──)

エリカ(だって、私にはもう、ウェアの上からでも手にとるようにわかる……師範の──肛門の場所が──」


エリカ(──だめよ、止めなさい──)


エリカ(と、心の中で呟くのと同時──私の親指は、吸い込まれるように──)



 ……くにっ



しほ「きゃっ──!?」

エリカ「──!!」


エリカ(師範の、らしくない可愛い声が、二千数百メートルの空に広がっていく)

エリカ(師範が、振り返って、ぎろりと私を睨む。私はひっしに首を振って、違うんです、わざとじゃないんです、と、うそぶく)


しほ「……。」

エリカ(師範は不満そうな視線をぬぐい切れぬまま、けれど私を許し、そうして再び、前に向かって歩きを始める)

エリカ(青空へ向かう長い長い稜線──私は師範のお尻を目指して、一歩一歩、師範の後を追いかけていく──)
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 12:31:15.61 ID:qU5SbSHnO
しほ「ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ」

エリカ「は、は、は、は、」


エリカ(たとえ二度と口にすることが無くとも、誰にも話すことができないのだとしても──私はこの旅の出来事を一生忘れない)

エリカ(十八歳の秋──故郷からと遠くは離れた、遥か彼方の空の下)

エリカ(私は──あの人の肛門に触れた──)




ガールズ&パンツァー 〜逸見肛門抄〜

75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 12:35:44.11 ID:qU5SbSHnO
ありがとうございました。

肛門が見たかったのか、あるいは屁をこく姿がみたかったのか、
本当の願望はいったいどちらなのだろうかと、今だに自分の真意を図りかねています。
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 14:57:08.43 ID:I6osypm8O
乙です
>>70の「身代わに」はその時の呂律をイメージしたんだろうけど、笑っちゃいけないシーンなのにクスッとなってしまった(エリカ=ワニのイメージがまだ残っているのですよ)
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 17:40:17.26 ID:LXnm0lbO0
乙です
力作にして怪作、登場人物の選択と内容がえらくマッチしてる
共に気位が高く似たもの同士のしほとエリカが、穴があったら入りたい程の恥ずかしい経験を経て心の深奥を曝け出していく様が秀逸
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 19:16:13.94 ID:alvgafWNO
何だこの言い得ぬ読了感乙
しほ本探してまうやろ!既に探したわ!
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 21:33:40.58 ID:/VT9X14eo
山では変わったことが起きるんだなあ
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 05:56:10.05 ID:DeLPDi0UO
マタニティ・ウォー書いてた人か
他に過去作ってあるのかな?
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 09:13:43.79 ID:tLltU7oD0
ほぉうこれは面白かった
正直なところエリカの肛門目当てで開いたけど良い意味で期待を裏切られて大満足
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 10:01:40.10 ID:isbk6CXa0
しゅごい…
読み進めるほどに満たされて、でもどこか乾いて足らなくなっていくような…そんな心理描写と官能の絶妙な匙加減でした
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 21:37:14.16 ID:28bisL1m0
乙です
>>1さんは登山好きなの?
地蔵尾根からの赤岳だけなら登ったことあるけど、硫黄岳からの岩稜って難しいの?
84 :1 [sage]:2017/06/05(月) 22:36:43.02 ID:/O6Y8UMCO
コメントありがとうございます。
なんだこの糞SSはっつって酷評されるか、あるいははまったく感想がつかないんじゃないか、と心配をしていたので、ほっとしました。


>>80
他の作品は、ごめんなさい、紹介するほどには面白くないです。

>>83
登山好きです。ただ、[ピザ]ってからは足が遠のいてます。

<硫黄岳〜地蔵尾根の間の岩稜帯について。>
その一帯はいわゆる「横岳」と呼ばれるエリアなのですが、アップダウンが連続する険しい岩場です。
とは言え、経験の浅いジジ様ババ様も普通に通過してますので、赤岳に登れた方でしたら問題無いはずです。何かしらの登攀テクニックだとか、そういうスキルを要求されるような場所ではありません。しぽりんやエリカなら余裕です。
85 :1 [sage]:2017/06/05(月) 22:45:57.27 ID:/O6Y8UMCO
それとすみません、硫黄岳山荘の描写は正確ではありません。>>1は硫黄岳山荘には入ったことがありません。

食堂から景色が見えるのが間違いないのは『赤岳天望荘』と『赤岳頂上山荘』
五右衛門風呂があるのは『赤岳天望荘』です。
また、布団が一体型なのは『赤岳天望荘』の二人部屋です。三人部屋はちゃんとベッドが三つあります。というか大抵の小屋は二人部屋でもちゃんと布団が分かれてます。『天望荘』がレアケースだと思います。でも天望荘の毛布はとっても肌ざわりがいいです。しぽりんの肌くらいすべすべしてます。正直勃起します。
86 :以下、名無しのかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/22(木) 05:23:28.72 ID:Q/Eycam70
乙!面白かった
エリカはしほにされたこと全部やり返してるなww
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