とある魔神の上条当麻II

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192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/19(水) 22:50:51.95 ID:WYEhdJ6Lo
乙カレー
193 : ◆fWgrVHZ/1E [saga]:2017/07/21(金) 22:48:08.29 ID:MwtLEDnj0

「? どうかしましたか、とミサカはいきなり凍りついた様な顔をしたあなたに声をかけます」

「!?」

しまった、顔にまで出ていたか。すぐに凍てついた思考を元に戻そうとするが、一向に、頭は回ろうとしない。完全に冷静さを欠いていた。
何とかして取り繕おうと必死に考えていると、


「ナアァァァァニしてんだ、カミジョオ〜〜?」


まさしく上条にとって救世主が来た瞬間だった。
だがそれと同時に、こんな状況でも自らに襲い来る恐怖も認知せざるをえなかった。

御坂美琴にそっくりな、彼女の後ろ。神秘的なまで美しい金髪をたなびかせる少女が、その華奢な身体に、どす黒いオーラ(何故か上条には視認可能)を纏わせて仁王立ちしていた。


こんなことできるのは彼女しかいない。


「……オティヌス?」

恐る恐る声をかける。すると、オティヌスは上条と自らを挟むように立つ御坂の妹と思わしき少女を
見て、
194 : ◆fWgrVHZ/1E [saga]:2017/07/21(金) 23:13:01.86 ID:MwtLEDnj0

「……………………………で」

「え?」


何故かオティヌスは顔を下にして俯いてしまった。
いつもならすぐ上条に電撃の槍やら100パーセント命中する槍やらを投げたりしてくるのに、今回は何もしてこない。言葉責めすらしてこない。


「オ、オティ……」


不自然に思いながら、初めての事だったので戸惑いもしながらもどうかしたのかと聞こうとした。
しかしそれを待たずして、オティヌスの顔がばっ、と前を向いた。


「え…………」


そのオティヌスの顔は赤かった。しかもただ白い肌に赤が浮かんでいるだけじゃない。その金色の目の目尻には、涙が浮かんでいた。


「何で……グスッ、私より、『超電磁砲』と一緒にいるんだよ…………グスッ」

「え、えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/21(金) 23:40:57.19 ID:FrEPVTbjO
あーあ遂に泣かしたか…
196 : ◆fWgrVHZ/1E [saga]:2017/07/21(金) 23:48:12.74 ID:MwtLEDnj0

恐らく魔神となって、というかこの世に生まれてこの方こんなにまで驚いた事は無かった。後に、伝説や神話になったとしてもおかしくないくらいの衝撃が、魔神、上条当麻に来た。


「え、い、イヤ、オティヌス!?」

「い、いつも、グスッ、外に出ると、『超電磁砲』と、グスッ、エッグ……」

「……………………………………」


泣いている。
あの冷酷非道とまで組織内で恐れられたオティヌスが、目に涙を浮かべている。普段の堂々とした態度はなくなり、上から目線の口調の影も無かった。

理由は何となく、いや、絶対の確信を持って言える。

寂しさ。学園都市に来てから数日、上条はここの複数の住人と交流をしている。カエル顔の医者を始め、ミステリアスな雰囲気の少女にツインテールの瞬間移動能力者、電気系超能力者とここ数日でかなりの人物と知り合う事ができた。

だがしかし、それを間近で見ていたオティヌスはどんな心境だったろうか。
自分のよく知る人物が、自分ではなく、他の者と楽しそうにしている。もとから愛情や友情等、人と関わると言った経験が浅く、それに餓えていた少女だ。
197 : ◆fWgrVHZ/1E [saga]:2017/07/22(土) 00:23:03.34 ID:ZTwIEr/H0

「(きっと、不安を感じたり、怖くなったりするに決まってる)」


今隣にいる大切な人が、いなくなってしまう。
十年に近い日々を共に過ごし、それを一瞬にしてこの手で失った上条にはその気持ちが痛い程に分かった。ましてやオティヌスは、それが人並みよりも強いのだ。いや、強くなったといえる。この八年間、彼女は上条を通して人の温もりを知り、そしてその大切さを短期間で知った。
けれど、やはり一番の温もりを与えてくれる理解者である上条が離れてしまうのは、他の何に代えても耐えがたかったのだ。

それをごまかし、隠し、今まで耐えてきた。
それが今になって溢れてしまったのだろう。

「(……情けねぇ……、サイテーなヤローだ)」


寂しがっている彼女に気づかない奴の、何が理解者だ。口先だけで安心させ、今日までずっと耐えることを彼女に強いてしまったのだ。


「……………オティヌス……」


ゆっくりと、オティヌスに近づいて行く。
198 : ◆fWgrVHZ/1E [saga]:2017/07/22(土) 00:32:45.48 ID:ZTwIEr/H0
今日はここまでです。

眠い……。
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/22(土) 00:58:41.26 ID:neXECQyzo
おティちゃん可愛い
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/11(金) 18:11:46.44 ID:XmW+vHL0O
おティちゃんマダー?
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/16(土) 22:37:10.30 ID:I4zchlZCO
まだかなー
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/29(水) 09:20:55.01 ID:+8QnWGHWO
続きを楽しみにしております…
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/01(金) 22:12:45.59 ID:SVOyexac0
面白いから期待。早く来て??
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/15(金) 14:20:13.31 ID:gqayEauX0
待っています。
保守
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/01/09(火) 09:17:16.87 ID:jxbc8Ubf0
保守
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/11(木) 08:18:41.11 ID:06vY5YiFo
待ちたい
207 :11226 [sage saga]:2018/01/20(土) 22:44:49.07 ID:LUPVR6h30

すみません。ネタが思い浮かばなくなって今まで逃げてました。
コメントしてくれた方々、保守してくれた方々、待ってくれた方々、本当に申し訳ありません。

ひとまず今日出来た分だけ投稿します。
今後とも宜しくお願いします。
208 : ◆/XrqQH1avo [sage saga]:2018/01/20(土) 22:46:51.21 ID:LUPVR6h30
もう一度すみません。名前を間違えました。

酉を変えますのでご了承下さい。
209 : ◆/XrqQH1avo [sage saga]:2018/01/20(土) 23:11:23.81 ID:LUPVR6h30

そして当麻は、唯一無二の人に、思いの丈を紡ぎ出す。


「……ごめん、オティヌス。俺、浮かれてた。
この街に来て、初めて普通の人と触れて、初めて友達が出来た気がして、嬉しくて、新しい事に目移りしてた……。オティヌスって言う相棒を、ずっと蔑ろにしてたんだ」

「……………………………」

「言い訳がましく聞こえるけど、その時はオティヌスとは何も変わりはしないって都合よく思ってた。
……本当にダメな男だと思う。十年も一緒に居てくれた人を、相棒を、大切な家族を泣かせたんだ。
お前に嫌われ、最悪殺されても文句は言えない」

「……………………………………………」

出てきたのは苦しい言い訳。失った物を見つけて浮き足立ち、はしゃぎ、周りが見えなくなった愚か者の、ありふれた懺悔の言葉。
それにオティヌスは何も答える事はない。
それを見てもなお、魔神は、頭を深く、下げ、もう一度言い訳を続ける。


「ごめん。許してくれ。これからは、もう寂しい思いなんかさせない。お前と一緒に居続ける。何があっても、例え世界が終わっても、オティヌスの理解者として有り続けたい」

「………………………………………………………………」

「頼む」
210 : ◆/XrqQH1avo [sage saga]:2018/01/20(土) 23:32:45.89 ID:LUPVR6h30
当麻の懺悔が終わる。それでも彼は、ずっと頭を深く下げている。

「……………………………………」

それを見ていたオティヌスの顔は、髪で隠れて他人からは見えない。そのままお互いの間に永久と思える程の沈黙が流れる。
そして、しばらくしてオティヌスは、おもむろに右足を浮かせ、



「ふごっ!?」

────思いっきり、地面に向かっていた当麻の顔面を蹴り上げた。




半分魔神であるオティヌスのパワーからすれば普通に脳みそがグチャグチャになって死ぬのだが、幸か不幸か当麻は本物の魔神。

空中に身体が浮かび上がった後、地面に叩きつけられてもなお、普通に痛くて気を失いかける程度で済んだ。


「わわ、わわわわわわわわわわ………………………!」


そして蹴り上げた張本人のオティヌスは、顔を真っ赤にして可愛らしく慌てふためいている。
さっき晒してしまった情けない姿を思い出したのもあるが、それ以上に当麻から告げられた言葉が、ストレートに恥ずかしく、そして密かに嬉しかった(勿論嬉しかった事に彼女が気づく事は無い)。

勿論、オティヌスもまたこれでも多感なお年頃。恥ずかし紛れに、思わず蹴飛ばしてしまうのは致し方ない。何故なら職業が戦闘職種なのだ。当麻と違って、言葉でなく力で表現してしまうのだ。
211 : ◆/XrqQH1avo [sage saga]:2018/01/20(土) 23:51:12.96 ID:LUPVR6h30

「おっまえ、ちょ、待ってくれ! まだだ、まだ早いんだ! まだ勇気がないんだよぉ!」

何が勇気がないのかは知らないが、とにかく羞恥のせいでオティヌスの思考回路が溶け落ち始める。
彼女の脳内は、最近になって恋愛脳になって来ていたらしい。その対象が何なのかはお察しの通りである。

「うわ、しかも私は、なんで……! こんな所でぇ……!」

ついさっき一緒に居続ける宣言をした張本人が気絶仕掛けているのも知らず、多感な少女は、自分の醜態を明確に思い出して、さらに悶える。

恋は盲目。
決してこの表現がこの場に置いて合っている訳ではないが、少女の恋とは時として、羞恥の余りに周りを見えなくしてしまうのだ。例え相棒だとしても。



そしてオティヌスが、当麻が既に気絶していた事に気付いたのが、一通り自分が苦しみ終えた後だった。


212 : ◆/XrqQH1avo [sage saga]:2018/01/21(日) 00:19:24.44 ID:jd7aDyqY0

─────────────────────

「………………」

「改めて、本当に申し訳なかった」

脳みそグチャグチャ未遂蹴飛ばし事件(後に上条命名)による気絶から覚めた当麻は、まず真っ先にオティヌスにもう一度謝った。

今もオティヌスはそっぽを向いており、やっぱりまだ怒っているのかな、などと検討違いも良いところを、当麻は本気で思っていた。

実際は自分の醜態を見られた事と、当麻から告白紛いのような謝罪を受けたから、まともに当麻の顔を直視できないだけなのだが、それに『完全』であるはずのこの魔神が気づくわけがない。

しかし、このままではずっと上条はこうして謝り続けるだろう。恐らくオティヌスが彼を許すか、もしくは殺すかしない限り、彼はずっとこのままでいるはずだ。

「……上条」

「……何だ、オティヌス」

そしてやっと、オティヌスは当麻の顔を見る。それは同時に上条もオティヌスの顔を見ることになり、数分間見ていなかっただけなのに、お互いの顔が十年ぶりにやっと見ることが出来たのではと思うほど、お互いの顔がとても懐かしく感じた。
213 : ◆/XrqQH1avo [sage saga]:2018/01/21(日) 01:10:06.28 ID:jd7aDyqY0

すぅ、と息を吸って、吐き、その美しく形の整った唇から、ゆっくりと、言葉を紡ぎ出していく。


「お前は、ずっと、私と居続けるんだな?」

「ああ。例え世界が終わっても、何があっても」

「他に目移りした、お前に?」

「確かに目移りはした。でも、絶対にお前だけは蔑ろにしない。世界の何にかけても優先するし、それを変えるつもりもない」

「……はぁ、もういい」

どこまでも真っ直ぐな口調と、同じくらいに真っ直ぐなその『青い瞳』。
戦闘中、いつも見ていたその瞳からは、相も変わらず嘘、偽りは感じられ無い。これは馬鹿正直に、そして真剣に応えようとしている眼だ。

恐らく今の上条なら、オティヌスの為ならば本気で、嬉々として世界を敵に回そうとする。例えそれが世界の全てから自分が『悪』と呼ばれる理由になろうと、上条からすればそれは些細な事でしかない。
そしてオティヌスもまた、上条と同じである。

八年前のあの日に出会ってから、何に置いても、お互いはお互いに、最も優先すべき存在だったのだ。

世間一般の愛からすれば、『重い』と思われるほどの『思い』。
しかし、それくらい重い思いを持った関係の方が、今の二人には丁度良く、そして心地良かった。
214 : ◆/XrqQH1avo [sage saga]:2018/01/21(日) 01:12:12.98 ID:jd7aDyqY0
今日はここまでです。

次が出来るのは、もう少し先のプロットが出来たら、もしくはネタが思いついたらにします。

早ければ明日には投稿します。

今後とも宜しくお願いします。
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/21(日) 09:09:49.04 ID:/DrDZD85O
待った甲斐がありましたわ
216 : ◆/XrqQH1avo [sage saga]:2018/01/21(日) 11:33:56.68 ID:jd7aDyqY0

「……私も、ほんの少し、嫉妬した……」

「ほんの少し、じゃなくて結構だろ」

「うるせっ」

拗ねたオティヌスを当麻が茶化し、それに対してオティヌスが悪態で返す。
少しずつ、両者の空気が戻っていく。

「で? もう一度聞くが、さっきの言葉に嘘偽りはもちろんはないな?」

「ない。一生守り続ける」

「……一生だな?」
217 : ◆/XrqQH1avo [sage saga]:2018/01/21(日) 11:58:43.46 ID:jd7aDyqY0
「……本当に?」

「ああ」

「絶対に? 途中で破ったりしないな?」

「しない。だから、安心して俺を信じてくれ。
俺は、この約束を裏切ったりしない」

「…………………………よし。私も悪かった。泣き落としなどと言う無様をさらすとはな。
私もお前を無理に束縛したりはしない。だから、だからお前もきっちりとその約束を『護れよ』?」

「……ありがとう。オティヌス」

無垢な笑顔で礼を言ってくる上条。それを見て、またオティヌスは顔を赤くする。

「いや、なに、私にも原因がある。前の私ならこんな事にはならなかったと思うし……。
さっきも言ったように、お前を束縛したりはしない。私だって我慢する。だから、ほんの少しぐらいなら、お前も私を雑に扱ったって、良いんだぞ」

まさかのオティヌスの譲歩発言に思わず驚きの声が出そうになるが、ぐっとこらえる当麻。
ここで要らんこと言ったら、即グレイプニルされてしまうのは、分かりきったことだ。

しかし、上条が要らんことを言わずとも、次の瞬間でオティヌスのその顔が、転じて無表情になる。



「だが魔神、さっきの事についてで詰問しないとは言っていない。
ベンチで一人待ってた私をほっぽって『超電磁砲』の同型体を口説いてたのは、それはどういう事だ」



「(……何だ、やっぱり怒ってるじゃないか……)」

218 : ◆/XrqQH1avo [sage saga]:2018/01/21(日) 14:10:47.18 ID:jd7aDyqY0

───────────────────────

「で、お前を縛るのは後にしてだ」

「おい不穏な言葉が聞こえたぞ」

当麻の突っ込みを無視して、オティヌスは話を続けようとする。

「あの女……御坂美琴そっくりの女の事だが」

「あ、そうだった! あいつは!?」

すっかりと美琴そっくりの少女の事を忘れていた上条。あわてて陽の沈んだ周囲を見渡し、軍用ゴーグルの頭を探す。

そしてそれにオティヌスはげんなりとした顔で、

「いや、何て言うか。お前が気絶したのに気付いた時に、あの女が『そー言うのは家でやれや。馬鹿共、とミサカは悪態を吐き捨てて去っていきます』って、変な口調で吐き捨てて帰ってった」

すぐ目の前で放置され、挙げ句キャラ崩壊仕切った告白劇をまじまじと見せつけられた美琴らしき少女は、その状況にあきれてもう帰っていってしまっていた。
見ていてかなり辛かったのだろう。

「がっはぁ!」

そして思い出した上条も喀血しそうになる。言ったことに後悔はないが、往来の場でやらかした事については普通に恥ずかしかった。
219 : ◆/XrqQH1avo [sage saga]:2018/01/21(日) 14:12:55.23 ID:jd7aDyqY0
今日はここまでです。
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/22(月) 12:09:20.70 ID:si3EE0Auo
オティちゃんクソかわ
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/01(日) 10:57:06.65 ID:GXLMLtboO
いつまで待たせるつもりだ
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 10:39:06.92 ID:Z3Dt6cGAo
待ってる
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/27(金) 16:27:41.97 ID:5VKguc6LO
早く続きを読みたいです(//∇//)
224 :11226 [sage saga]:2018/06/04(月) 21:27:48.35 ID:PHNiKRvh0
遅れてすみませんでした。投下します。




「おい、勝手に死ぬな。私だって恥ずかしい」
「いや死んでねぇよ…………。あー悪いことしちまったなー」
「ああそうだな。詫びとして今年いっぱいは全食おにぎりにしろ」
「いやお前の事じゃねぇよ。わざとか」

つーか全食おにぎりってどんだけ食い意地はってんだオティヌスさん。

「さっきのは……御坂の、姉か妹……か?」
「それっぽいんだけど……でもなーんか、引っ掛かるんだよなぁ」

あの御坂のそっくりさん……御坂妹と仮称しよう。上条は彼女と話したとき、猛烈な違和感を感じた。それに彼女の口にしていた「何番目」と言う言葉、一体何の意味が籠められているのだろうか。御坂美琴とは全くの赤の他人とは考えられないのだが。

「………………………………」

一方、オティヌスはややうつむいた顔で思考に耽っているようだった。何かにかけて一度思考しだすと止まらない癖のある彼女なので、上条はオティヌスが顔をあげるのを待った。

「……おかしい」

少しして、オティヌスが呟く。

「ん?何が?」
「いや、この前に、この学園都市の戦力を計るためにハッキングを使ってレベル5の能力者のデータを漁っていたのだが」
「おい。さりげない犯行宣言だすな」

だからこいつ御坂の事を知ってたのかよ、初対面なのに妙に詳しいなー、とは思っていたけど。

「で、何がおかしいんだよ」
「……三人だ」

オティヌスは上条に指を三本立てる。



「御坂美琴の直径の血族は、三人だけ。姉妹や兄弟はいないはずだ」

ぞくり、と上条の背中を、何かが駆け抜けた。
225 : ◆1Fq6jcW74c [sage saga]:2018/06/04(月) 21:48:14.12 ID:PHNiKRvh0


──────────────────────────

日が暮れ始めた。夏休みも直前だと言うのに、今日は日が早かった。

上条はほとんど学生がいなくなり、会社勤めから帰ろうとする途中の大人達がちらほらと見える歩道を歩いていた。

「……………………………」
『私はこれからもう一度、学園都市のデータベースをよく調べてくる。もしかすれば、あの御坂妹と言う女は、奴の『計画』とやらに関係するかもしれん。……何故か今回は特に嫌な予感がする。あの御坂妹を見つけ次第、すぐに話しかけて引き留めろ』

そうとだけ言い残して、上条が引き留める間もなくオティヌスは飛び去っていった。
しかし上条もこのままただ公園でじっとしているのは性分に合わないので、結局オティヌスに言われた通り、こうして街を歩いて探しているのだが。

「全然、見つからねぇ。まだそう遠くには行ってないはずなんだけど……」

一向に、あのゴーグルをかけた御坂は見つからない。常盤台の制服にゴーグルと、あれだけ目立つ格好をしていると言うのに。

「もうすぐ日も暮れそうだし……。あー、インデックスの飯はどうしよう」

完全に暗くなり、アンチスキルに見つかってしまうとなると厄介な事になる。しかしそれよりもさらに厄介なのは、腹を空かして機嫌を悪くしたインデックスである。噛みついてくる事は別に良いが、ドタバタしているとオティヌスにまたしこたま叱られてしまう。
226 : ◆1Fq6jcW74c [sage saga]:2018/06/04(月) 22:22:55.70 ID:PHNiKRvh0
「さっき叱られたばっかなのに……あー、未来の事なのに、もう不幸だー」

先の見えた人生ほど、面白味が無い物は無い。しかもその内容がグレイプニルで縛られて出来た隙に散々に蹴られ、殴られると言う物で、その上今の上条の力も弱体化しているため、殴られ放題な未来である。どう希望を持てと。

見つからないので早いとこ切り上げたい気持ちはあるが、それはそれでグレイプニル。しかし日が完全に暮れた以降に見つかったら見つかったで、インデックスの機嫌が悪くなりグレイプニル。どっちの未来に転んでも、待ち受けているのはグレイプニルしか無いのか。

──ああ、何と、世は無情なのだ。

そんなどんよりとしたお先真っ暗な考えをしていると、ふと、道端に目が止まった。

──そこにいたのは、ダンボールに入った捨て猫に触ろうとしている、探していたゴーグル御坂こと、御坂妹の姿だった。しかも猫に夢中なのか、まだこっちには気づいていない。
しかし、今の上条にとっては、紛れもない、約束された不幸な未来を打破する女神だった。

「……み」
「?」

そして御坂妹も上条に気付いたのか、こっちに目を向ける。
しかし、上条は御坂妹を凝視して、指を指して呆然としたまま直立していた。そして、

「貴方は、さっきの……」
「見ぃつけたああぁぁぁぁぁ!」
「違った、不審者です。誰か助けて下さい!」
227 : ◆1Fq6jcW74c [sage saga]:2018/06/04(月) 22:59:57.26 ID:PHNiKRvh0
 その後、路上の隅で、全力で女子中学生に土下座して謝る男子高校生らしき姿が見えたと言う。



 そして、上条が御坂妹を全力で宥めた後。

「では、不審者さん。貴方は不審者ではないのですね、とミサカは疑惑の目を向けながら無理矢理納得します」
「いや、絶対納得してねぇだろ。つーか不審者さんて何だ」
「路上で人を見つけただけで大声をあげる人が、不審者ではないと?とミサカはまた疑惑の目を向けます」
「とりあえずその目やめーや」

 今、分かった事だが、この御坂はとにかくボケ倒す性格らしい。インデックスが見ようものならクールビューティーなどと持て囃しそうだが、上条にはただふざけているようにしか見えない。

 すると唐突に、「まぁ、冗談はここまでにして」と御坂妹は子猫を抱き抱えたまま立ち上がった。

「……この猫の飼い方、教えてくれませんか?」
「……は?」

 今度は何だ、唐突に。と上条が思っていると。

「飼いたい……のか?」

 まぁ、ずっとあそこに座っていたから、わからなくはないけど。
 唐突なその言葉に戸惑っていた上条に、御坂妹は不安に思ったのか、再度問い掛けてくる。

「……駄目、ですか?」

 しかも今度は上目遣いで言われた。まぁ、オティヌスには引き止めておけ、と言われてるし、時間的にもまだ余裕があるから大丈夫か。それに路上で大声出したのも悪かったし。

「……別にいいよ。付き合ってやるよ」

 断る理由も特に無い。まぁ、折角出会ったんだ、ここでもう一人友達を増やしておくのもいい。

「!本当ですか?とミサカは不審者さんに感謝します」
「おい、それもやめろ」


 ……やっぱりこいつ生意気だわ。
228 : ◆1Fq6jcW74c [sage saga]:2018/06/04(月) 23:00:25.16 ID:PHNiKRvh0
今日はここまでです。
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 19:43:15.76 ID:dddyplYUO
おつー
待ってたよー!
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 22:11:42.31 ID:9/0ZwlUwo
おつなんだよ!
231 : ◆1Fq6jcW74c [sage saga]:2018/07/06(金) 22:14:59.80 ID:GPa1BM070
 場所は変わって、上条宅の一室。灯りがない部屋の中では、オティヌスがパソコンの画面を金瞳で睨み付けながら休むことなくキーボードに触れる手を動かしていた。

「くそ、思ったより固いな……」

 一介の学生でさえ機密の塊である学園都市。前回、御坂美琴の個人情報について調べた際にハッキングしたサーバーの、そのさらに深層のサーバーにハッキングを試みているのだから、当然一筋縄で行くわけがなかった。
 しかし、機械系統に強い仲間から教わった技術で、何十何百と張られた分厚いプロテクトを、オティヌスは止まることなく根気よく破っていった。そして。

「……!やった!」

 遂に、機密サーバーへの侵入に成功した。
 頑張った反動か、それともアレイスターが張り巡らせた電脳の壁を突破出来た事からか、オティヌスは思わず歓喜に震える。

 しかし、その歓喜は長くは続かなかった。

「…………何だと?」

 そこに保存されたデータには、とある計画についての詳細しか載っていなかった。しかし、その計画はオティヌスでさえ、残酷かつ非道で、人道から外れきった狂人達の狂った実験だと思わせるほどの内容だった。

「──『量産型超能力者計画』……それと『絶対能力進化計画』……だと!?」



──遠いビルの中で、誰かが微笑んでいる気がした。
232 : ◆1Fq6jcW74c [sage saga]:2018/07/06(金) 23:01:48.34 ID:GPa1BM070

 ──とある路地裏

 白い悪魔が少女と鬼ごっこをしている。悪魔は逃げる少女の後ろを追っていた。
しかし、その足はゆっくりと、悠然と、そして気だるそうに。

「アーーーー、くそつまんねェ」

 白い悪魔は、白髪に赤目、そして貧弱そうな体型をした少年だった。しかし、そのドスの効いた声は残酷さを感じさせ、もし、誰か彼をよく知る人物がいたのなら、真っ先に彼から距離を取ると思われるほどに、彼は不機嫌だった。

 毎日毎日、同じことの繰り返し。微妙に違ってくる時もあるが、それもほんの僅かなだけで、いい加減彼も飽きてきた所だった。そもそも、この飽きっぽい性格をした彼が、ここまで長期間に渡ってこの『実験』を続けて来れたのが異常だった。しかしそろそろそれも限界に近づいてきたようで、溜め込んできたフラストレーションが爆発しそうだった。

「……チッ」


 思い出すのは数日前の事。そう、あの奇妙な二人組と出会った日の事だった。

 いつもと同じ変わり映えのない『実験』を行っていた途中、ふと何気なく目を外してみると、遠くで巨大な光の柱が立っているのを見た。そして彼は確信した。あれは昼間の二人の仕業だ、と。
 天を突き抜けるが如く空へと伸びる光の柱。その明らかにこの都市の超能力とは違ったその力を見て、彼は心を躍らせた。

 ──やはり、あいつらはやってくれた、と。

 一刻も早くあの光の柱の下に向かいたかったが、今回の『実験相手』はこういう時に限って自分相手にそれなりに粘り強く立ち回ったので、かなり時間がかかった。最終的には周囲一帯を巻き込んで消滅させたが、焦った事もあってかなり時間を掛けてしまった。

 そして、天を破る光の柱が立ち上がった場所で彼が見たものは────丸ごと一帯が焼け焦げた跡のある、空き地だった。
 もう既に、彼が実験を終えた時には、全ての事は終わっていたのだった。

「クソ……なんたってあの時に限ってよォ……」

 おもむろに、足に力を込める。

「ア────────退屈だァ」

 悪魔は、絶望の鬼ごっこを再開した。
233 : ◆1Fq6jcW74c [sage saga]:2018/07/06(金) 23:02:49.32 ID:GPa1BM070
今日はここまでです。
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/06(金) 23:10:53.66 ID:xlNvjxE6o
おつなの
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 09:14:20.86 ID:rbVjGGQ60
乙です。 
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/18(木) 01:59:12.27 ID:LtysOdKmo
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/01/13(日) 20:32:03.29 ID:VRYdqLe6O
続き、まだぁー
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/11(木) 01:37:05.66 ID:z4nX95YMo
待つてる
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/05/02(木) 16:46:12.60 ID:zFKLPVKg0
楽しみに待ってます。
保守
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/08/26(月) 14:17:36.33 ID:UIkfx5tT0
保守
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/10(月) 22:10:39.01 ID:x76vnvK20
まだ更新来てないのか…。
続きをください…!!!

Pixiv,ハーメルン,掲示板…。どこかで続きやってくれたらなぁ。
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