魔王「リインカーネーション」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/09(金) 23:57:18.98 ID:DnhtZz7aO

王女「…グスッ…」

盗賊「あんまり泣きすぎると枯れちまうぞ?」

王女「……大丈夫です。こんなに泣いたのは初めてなのでまだまだ泣けます。今までずっと泣き溜めしてましたから」

盗賊「寝溜め食い溜めは聞いたことあるけど、泣き溜めは初めて聞いたな……」

王女「わたしも初めて言いました。でも、泣くっていいですね。すっきりしました」

盗賊「落ち着いた?」

王女「……油断してるとまた泣きそうです」

盗賊「あ〜、それは困るな。そうだ、準備するから手伝ってくれないかな」
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/09(金) 23:59:41.57 ID:DnhtZz7aO

王女「準備ですか? 一体何の?」

盗賊「傷付けないとか言っといてなんだけどさ、犯人と戦うことになると思うんだ」

王女「戦うって…まさか犯人とですか!?そんなの危険過ぎますよ!!」

盗賊「分かってる。けど、そうするしかない。あんなことをする奴だ。避けることは出来ない」

盗賊「宿屋の周りには街の警備隊がいる。俺を監視してるんだ。だから、街から出ることも出来ない」

王女「そんなっ…まだ傷も癒えていないんですよ? そんな体で戦ったらどうなるかーー」

盗賊「ああ、どうなるか分からない」

盗賊「ただ、そうしなきゃ終わらないってことは確かだ。奴が諦めるとは到底思えない」

盗賊「俺の後を付けて背後から刺す。そんな奴ならまだマシだった。奴は違うんだよ」
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 00:03:01.61 ID:55cdPeiLO

王女「違う?」

盗賊「狙ってる奴に対して自分の存在を知らせるなんてことはしない。普通ならね」

盗賊「奴の執着心はそれだけ異常なんだよ。それを示す為に殺した可能性は充分にある」

盗賊「ただ、俺を狙っているのか姫様を狙っているのか。それが読めないんだ」

王女「……泥棒さんは先ほど王冠という表現をしていましたよね? あれも犯人の?」

盗賊「ああ。我が王冠は貴様の手に、貴様の王冠は我が手に在り。そんな文面だった」

盗賊「俺か姫様か。どっちが狙われてようと危険だってことは変わらない」

王女「……泥棒さんが考えている通り犯人の王冠がわたしを指しているとしたら…」

王女「泥棒さんの王冠とは何なのでしょう? 文面通りに捉えれば犯人が持っているんですよね?」
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 00:28:30.36 ID:55cdPeiLO

盗賊「何か、そうみたいだな」

盗賊「でも、どれだけ考えたって誰かに何かを預けた憶えはないんだ。混乱させるつもりなのかもしれない」

盗賊「そもそも白銀の甲冑を身に着けた騎士の知り合いなんていねえしさ」

王女「……白銀の騎士?」

盗賊「目撃者は口を揃えてそう言ってた。すぐに見付かりそうなもんだけどーー」

王女「泥棒さん。目撃者の方達は本当に白銀の騎士と言っていたんですか?」

盗賊「ああ、目撃者は大勢いるみたいなんだ。宿屋に来るまでに何度か耳にしたよ」
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 01:02:12.84 ID:55cdPeiLO

王女「白銀の騎士。白い騎士…」

王女「あのっ、壁に書かれていた文面のことをもう少し詳しく教えて下さいませんか?」

盗賊「え〜っと、王冠を戴くのは勝利者。戴冠の戦を始めよう。とかだったかな」

王女「!!」

盗賊「何か心当たりでもあるのか?」

王女「その…でもこれは…」

盗賊「些細なことでもいいんだ。知ってることがあるなら教えてくれないか」

王女「……全面戦争にはならなかったものの、我々とニンゲンは過去に三度の戦をしています」

盗賊「今の線引きが出来上がる前の時代だろ?最後の戦は三百年も前だっけ? それがどうかしたのか?」

王女「その戦の度に、歴史に名を残すような騎士が現れて戦を収束させているのです」

王女「一度目の戦に現れたのが白い騎士。攻め入ったニンゲンを退けた後、すかさず侵攻を開始」

王女「そこからは勝利に次ぐ勝利。当時の境界線を塗り替え領土を拡大したという話です」
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 01:26:24.77 ID:55cdPeiLO

盗賊「勝利に次ぐ勝利、ね」

王女「ええ。更にはその時代の王から王冠を力を受け継ぎました。つまりは戴冠です」

王女「ですが、幾ら活躍したとはいえ騎士が王になるなど余りに荒唐無稽な話……」

盗賊「まあ、確かにそうだな」

盗賊「その頃には既に輪転器はあるわけだし、次期王も決まってるはずだ」

王女「その通りです。だからこそ白い騎士には様々な憶測があります」

王女「わたしが読んだ文献の中では、白い騎士は自分が王となるべく王にさえも戦を挑んだ。とありました」
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 01:33:43.16 ID:55cdPeiLO

盗賊「勝利に次ぐ勝利、ね」

王女「ええ。更にはその時代の王から王冠と力を受け継ぎました。つまりは戴冠です」

王女「ですが、幾ら活躍したとはいえ騎士が王になるなど余りに荒唐無稽な話……」

盗賊「まあ、確かにそうだよな」

盗賊「その頃には既に輪転器はあるわけだし次期王も決まってるはずだ」

王女「その通りです。だからこそ白い騎士には様々な憶測があります」

王女「わたしが読んだ文献の中では、白い騎士は自分が王となるべく王にさえも戦を挑んだ。とありました」
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 08:57:56.69 ID:GbC1UfhZO

盗賊「戴冠の戦か……」

王女「はい。事実かどうか確かめる術はありませんが、似通った部分があると思ったのでお話ししました」

盗賊「……姫様。その白い騎士はどうなったんだ?」

王女「数多くの勝利を積み上げた彼も、死に勝利することだけは叶いませんでした」

王女「彼は共に戦を駆けた甲冑を身に着けたまま亡くなった。と記されていました」

盗賊「一応聞いておくけどさ、そいつは死んだんだよな?」

王女「勿論です。一度目の戦は千年近くも前ですから。でも、やっていることも似ているので何だか怖ろしくて……」
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 16:26:16.19 ID:XZo31lO7O

盗賊「似てる?」

王女「彼の逸話と事件の内容です」

王女「彼は積み上げた遺体の上に立つと、これこそが勝利の証であるとした。ともありました」

盗賊「勝利と功績か。そういったもんを誇示すんのが大好きな奴だったんだな」

王女「ええ。挿し絵では積み上げた屍の上に城を築く姿が描かれていましたから……」

盗賊「う〜ん。聞けば聞くほど似てるな。犯人はそいつを真似てんのかもな」

王女「わたしもそう思います」

王女「自分を他人だと思い込み、あたかも本人であるかのように振る舞う」

王女「度を超した憧れや崇拝が心蝕み。遂には塗り潰してしまう。それはとても怖ろしいことです」

盗賊「……もしかしたら、生まれ変わりたかったのかもしれないな」
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 16:28:17.27 ID:XZo31lO7O

王女「えっ…」

盗賊「自分に嫌気が指して、違う誰かになりたかったのかもしれない」

盗賊「まあ、本当のところは本人に聞いてみなきゃ分かんねえけどさ」

王女「(わたしもそうなってしまうのでしょうか。力を受け継いだ時、まったくの別人に…)」

盗賊「まっ、幾ら考えても仕方ねえか。でも勉強なったよ。ありがとう」

王女「いえ、そんな…でも、警備隊の方達は知らないのでしょうか?」

盗賊「何を?」

王女「白い騎士のお話です。捜査の役に立つかは別ですけれど……」
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 16:29:25.98 ID:XZo31lO7O

盗賊「有名な話なのか?」

王女「そう言われると…どうなのでしょうか。外ではあまり知られていないのかも……」

盗賊「(そうか。知識の一つを取っても比較する相手がいねえから分からねえんだ)」

盗賊「(姫様の世界と外の世界じゃ知識の常識ってやつが違うんだろうな……)」

王女「あっ、そうでした」

盗賊「?」

王女「準備を手伝って欲しいと言っていましたが、わたしは何をすればよろしいのですか?」

盗賊「あ、そういやそうだった。まあ、準備って言ってもこれを渡すだけだけどね」
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 16:32:06.57 ID:XZo31lO7O

盗賊「とりあえず、はい」スッ

王女「……これは、泥棒さんが投げていた煙玉ですよね?」

盗賊「煙玉っつーか目潰しみてえなもんだな。舞い上がった粉が目に入れば涙が止まらなくなる」

盗賊「何かあったら、それを相手の足下に投げて逃げるんだ。強風や雨の場合は使えないけどな」

王女「……なるほど。分かりました」

盗賊「ああ、これは革鞄ごと姫様にやるよ。腰に巻いといてくれ」

王女「えっ? それでは泥棒さんがーー」

盗賊「いいっていいって遠慮すんな。それに、姫様に渡せるものはそれくらいしかないんだよ」
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 22:16:47.43 ID:A3PWqiuHO

王女「?」

盗賊「だってさ、そういうもんならともかく爆弾なんか渡されても姫様は使わないだろ?」

王女「……はい。多分使えないと思います」

盗賊「だろ? だから、それはあくまでも護身用ってやつだ。それなら使えると思ってさ」

王女「泥棒さんはどうするのですか?」

盗賊「俺? 俺はまあ、手持ちの物を色々使って何とかするよ。でも、向いてねえんだよなぁ」

王女「向いていない?」

盗賊「うん。基本、盗む時って戦う必要はないんだ。見付かったら終わりだからな」

盗賊「この爆弾だって爆発音で見張りを追っ払ったりするのに使ってるんだ」

盗賊「服装だってこの通り。動き易いもん着てるだろ? だから真正面の戦いには向いてない」

王女「で、ではどうやって戦うのですか? 何か有効な策が?」
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 22:19:59.12 ID:A3PWqiuHO

盗賊「あ〜、出たとこ勝負?」

王女「出たとこ勝負ってそんな…自分のことなんですよ!?」

盗賊「そりゃあ分かってるさ」

盗賊「でも、どんな戦い方をしてくるかなんて分からないだろ? 臨機応変にやるしかない」

王女「……無茶ですよ。背中の傷だって全然治ってないのに……」

盗賊「大丈夫。自分で何とかするから」

王女「……っ、服を脱いで下さい。包帯を取り替えます」
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 22:21:49.94 ID:A3PWqiuHO

盗賊「え?」

王女「昨晩から取り替えてないですからね。どんな状態なのか確認しておきたいですし」

盗賊「そ、そう? じゃあ、お願いします」パサッ

王女「………」クルクル

盗賊「何か悪いな。嫌なもん見せちまってさ」

王女「そんなことないです。やはり、まだ出血がありますね。血止めの草を張っておきます」

盗賊「そんなの持ってたっけ?」

王女「昨晩、念の為に数枚採って泥棒さんの革鞄に入れておきました」
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 22:24:08.62 ID:A3PWqiuHO

盗賊「(凄えな姫様…)」

王女「ごめんなさい、ちょっと染みます。じっとしていて下さいね」プチッ

ポタポタッ…

盗賊「ッ、ビリッてきた。今のは?」

王女「今のは痛み止めです」

王女「小さな果実なんですが、潰して液体を傷口に垂らせば麻痺させる効果があります」

盗賊「へ〜、そんなのがあんのか……」

王女「それから血止めの草を張って」ペタッ

王女「後は包帯で固定すれば終わりです。矢傷の方も同様のやり方で……」クルクル
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 22:26:37.74 ID:A3PWqiuHO

盗賊「姫様って物知りなんだな」

王女「そんなことは…これら全ては本で得た知識。古い古い民間療法です」

王女「きっと今なら、こんなことをせずとも傷薬を買えば済むのでしょうね……」

盗賊「でも、森や草原に薬屋はいないからなぁ」

王女「?」

盗賊「姫様の言う通り、今の薬の方が効くかもな。でもさ、いざという時に役立つのはそういう知識だと思うんだ」

盗賊「もし姫様にそういった知識がなかったら、俺は昨日の晩にお星様になってた」

王女「………」クルクル

盗賊「だからさ、誇っていいと思うぜ? 今時そういうことを出来る人はいないだろうし」
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 22:53:33.74 ID:A3PWqiuHO

王女「そう…なのでしょうか……」

盗賊「うん。それに、普通は傷を縫ったり出来ない。多分逃げ出すんじゃないかな? 怖くてさ」

王女「怖い?」

盗賊「怖いっていうか嫌だろ? 血を流して死ぬ姿を見るなんて誰だって嫌なもんだよ」

王女「……わたしは死を見るより、あなたがいなくなることの方が怖かったです」

王女「もしかしたら、一人になることが怖かったのかもしれません。自分の為だったのかも…」

盗賊「それでもいいさ。生きてんだから」

王女「……生きて下さい。そして今度こそ、一緒に星を見ましょう」

盗賊「いつの夜なるか分かんねえけど、それでもいいなら……」
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 23:42:23.10 ID:A3PWqiuHO

王女「構いません。いつまでも待ちます」

盗賊「(こういうことをさらっと言うのがズルいんだよ。分かってなさそうだけど…)」

王女「(わたしに共に戦うことは出来ない。けれど少しくらい、あなたの役に立たせて下さい)」

クルクル…キュッ…

盗賊「………」

王女「終わりました。効果は短いでしょうが多少は痛みも和らぐと思います」

盗賊「ん、ありがとう」バサッ

王女「……お役に立てるか分かりませんが、白い騎士について思い出したことがあるのでお話しします」
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 23:44:04.54 ID:A3PWqiuHO

王女「彼は特殊な武器を扱っていたそうです」

王女「それは籠手と剣が一体化したようなもので、彼の技量も相まって凄まじい威力を誇ったとされています」

盗賊「籠手の先に短剣をくっ付けた。みたいな感じ?」

王女「いえ、刃は長剣です。近接ではなく中距離で戦うことになると思います」

王女「籠手も泥棒さんのものとは違い、拳から肘辺りまで完全に覆うものでした」

盗賊「(パタとかいうやつか? やりにくそうだな……)」

王女「もし犯人が白い騎士に成り切っているとしたら、同じ武器を扱っているかもしれません」

王女「それからもう一つ。その姿はあたかも舞うようであった。とのことです」
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 23:58:02.56 ID:A3PWqiuHO

盗賊「(隙は無さそうだな……)」

盗賊「(つーか甲冑着ながら舞うんじゃねえよ。面倒くせえ奴だな)」

盗賊「(甲冑着てるってだけでも面倒なのに。でもまあ、近付けば何とかなるか)」

王女「……お役に立てましたか?」

盗賊「ああ、イメージは出来た。その武器なら腕の振りが早いのも頷ける」

盗賊「厩にいた馬を手早く捌けたのも、それがあったから出来たのかもな……」

王女「白馬さん、今頃何処にいるのでしょう。心配です」

盗賊「帰ったのかもな。幾ら肝が据わってても、そんな危ない奴がいたら逃げるに決まってる」

王女「……泥棒さんは、逃げようとは思わないのですか?」

盗賊「逃げられない。ってこともないけど、向こうが逃がしてくれそうにないからな」

盗賊「出来ることなら此処で終わらせたいんだ。追われるのって疲れるしさ」
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 00:09:28.73 ID:e+UqcoFdO

王女「……犯人。この街にいるんですよね」

盗賊「だろうな。何処に隠れてんのか見当も付かねえけどさ」

コンコンッ…

盗賊「盗み聞きにしちゃあ長かったな。厩にいた警備隊だろ? さっさと入れよ」

王女「えっ?」

ガチャッ…パタンッ…

警備兵「…………」

王女「(あっ、本当に昼間の警備隊の人だ。この人、苦手だなぁ…)」

警備兵「何だ、分かっていて話していたのか?」

盗賊「理解を深めて欲しくてね。俺のこと調べてたんだろ?」
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 00:49:58.55 ID:e+UqcoFdO

警備兵「その前に、何故俺だと分かった」

盗賊「歩き方。つーか、そんなことが聞きたくて来たのか?」

警備兵「気味の悪い奴だな。まあいい、早速本題に入ろうじゃないか」

王女「(嫌な予感しかしない。何だか蛇のような眼をしている。何を考えているのでしょう……)」

警備兵「王宮への侵入及び暗殺未遂。特別独房行き。これに間違いはないな」

盗賊「侵入は認めるけど目的は暗殺じゃない。盗みに入っただけだ」

盗賊「それ以外は大体合ってる。つーか特別独房だったのか。にしてはお喋りな看守だったな」
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 00:54:39.15 ID:e+UqcoFdO

警備兵「何を盗むつもりだった?」

盗賊「王の秘宝。輪廻転生機」

警備兵「……次の質問だ。何故、お前は生きている」

盗賊「何か難しい質問だな。哲学?」

警備兵「そのままの意味で、だ」

盗賊「心臓が動いてるからじゃねえの? そこに関しちゃ俺もあんたも変わらねえと思うけどな」

警備兵「はぐらかすな。此処には処刑済みの判が押されてある」ガサッ

盗賊「あ、本当だ。つーか人相書き下手だな。もっと上手く書いて欲しいもんだ」

警備兵「答えろッ!!」

王女「きゃっ…」ビクッ

盗賊「分かった分かった。話すから大きい声出すな。『姫様』が怖がってんじゃねえか」
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 01:04:03.56 ID:e+UqcoFdO

警備兵「……姫様だと」

盗賊「ああそうさ。偉大なる王の娘にして次の魔王。ついでに言うなら輪廻転生機の正体だ」

警備兵「何を馬鹿なーー」

盗賊「俺は王から直々に彼女を攫うよう依頼された。内部に暗殺者がいる可能性があるらしい」

盗賊「俺は依頼を受けて彼女を攫った。それに関しては彼女の同意も得てある」

警備兵「………」

盗賊「疑うなら王宮に手紙でも出せばいい。応答があるかは分かんねえけどな」

盗賊「とにかく、これが全てだ。用が済んだら帰ってくれ。あんまり関わるとあんたも殺されちまうぜ」
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 01:09:51.54 ID:e+UqcoFdO

警備兵「白い騎士にか?」

盗賊「聞いてたんなら分かるだろ?」

警備兵「お前が語ったこと全てが嘘なのか? それとも全てが本当なのか?」

盗賊「それはあんたが決めることだ」

盗賊「俺が何を言っても所詮はニンゲンの言うことだからな。どうせ信じやしないだろ?」

警備兵「……作り話にしては話が大きすぎる」

警備兵「それだけ口が回るなら、もっと控え目な嘘を吐くはずだ。納得の行く程度の嘘をな」

盗賊「だろうな。普通なら」

警備兵「信用されたい奴が吐くような嘘ではい。が、俄には信じ難い」
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 01:16:27.94 ID:e+UqcoFdO

盗賊「どうする?」

警備兵「………」チラッ

王女「全て本当のことです。彼は嘘など吐いていません。投獄するというなら、わたしも行きます」

警備兵「…チッ…どうにも面倒なことになったな」

盗賊「思いっ切り関わるか、この場で手を引くか。今の内に決めといた方がいい」

盗賊「俺と彼女が狙われてるのは事実なんだ。関われば確実に巻き添えを食う」

警備兵「……お前は一体何なんだ」

盗賊「俺か?」

盗賊「俺は監視がいると分かっていながら逃げもせずに彼女の寝顔を眺めてた間抜けな泥棒さんだよ」
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 02:20:35.37 ID:e+UqcoFdO

警備兵「……質問がある」

王女「はい。何でしょう」

警備兵「君は何故このニンゲンと共にいる。いや、何故共にいられる?」

王女「……わたしは長らく一つの部屋で生きてきました。彼は、わたしが会った初めてのニンゲンなのです」

警備兵「………」

王女「あらゆる文献を読みました。知識の中にあるニンゲンは狡猾で怖ろしい種族……」

王女「ですが、彼はそうではありません。わたしにとっては、そうではないのです」

警備兵「君にとってはそうかもしれないが、このニンゲンは犯罪者だ」

王女「ええ、分かっています。本来であれば怖れるべき人物なのでしょう」
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 02:22:54.54 ID:e+UqcoFdO

警備兵「なら何故?」

王女「彼のことは、不思議と怖ろしいとは思わないのです」

王女「彼は傷を負い、血を流しました。けれど、それでもわたしを王宮から連れ出してくれた」

王女「閉ざされていた世界の扉を開き、わたしに外の世界を見せてくれたのです」

警備兵「恩人というわけか」

王女「いえ、失いたくない人です」

警備兵「………分かった。二人共に詰め所に連行する」

王女「そんなっ、彼を裁くのですか!?」

警備兵「いや、死んだニンゲンは裁けない。そのニンゲンは世界から抹消された存在だ」

王女「ならば何故連行するのです!?」

警備兵「関わるか否か。その答えが出たからだ。これより君を保護する。宿屋よりは安全だ」
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 02:25:04.35 ID:e+UqcoFdO

盗賊「俺は?」

警備兵「勝手にしろ。逃げたければ逃げるがいい。彼女の傍にいないのなら、そうしろ」

盗賊「あ、そう。じゃあ、お言葉に甘えてご同行しまーー」

ガチャンッ…

盗賊「……おいおい、そりゃないだろ」

警備兵「黙れ。こうでもしないと示しが付かないんだよ。仲良しこよしで歩けるか」

盗賊「何だよ。素直じゃねえなぁ」ニヤニヤ

警備兵「お前には手錠より轡が必要のようだな。耳障りなことばかり口にする」

盗賊「舌の根が乾いたことがないのが自慢でね。罪にはならないだろ?」
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 02:27:13.74 ID:e+UqcoFdO

盗賊「俺は?」

警備兵「勝手にしろ。逃げたければ逃げるがいい。彼女の傍にいたいのなら、そうしろ」

盗賊「あ、そう。じゃあ、お言葉に甘えてご同行しまーー」

ガチャンッ…

盗賊「……おいおい、そりゃないだろ」

警備兵「黙れ。こうでもしないと示しが付かないんだよ。仲良しこよしで歩けるか」

盗賊「何だよ。素直じゃねえなぁ」ニヤニヤ

警備兵「お前には手錠より猿轡が必要だな。耳障りなことばかり口にする」

盗賊「舌の根が乾いたことがないのが自慢でね。罪にはならないだろ?」
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 02:33:34.43 ID:e+UqcoFdO

警備兵「行くぞ、猿」グイッ

盗賊「痛い!痛いから!」

警備兵「さあ、君も来るんだ。詰め所までは警備隊が護衛する」

王女「あ、ありがとうございます!」ペコッ

警備隊「………」ザッ

ガチャッ…パタンッ…

警備兵「ほら、歩け」グイッ

盗賊「んなことしなくても歩くって!! ったく、乱暴な男は嫌われるぜ?」

警備兵「お前に好かれるくらいなら舌を噛み切って死んだ方がマシだ」

トコトコ…

王女「本当にいいのですか? 狙われるかもしれないのですよ?」

警備兵「こう見えて仕事熱心なんだ。職務放棄はしたくない。それから、昼間は済まなかったな」ザッ

トコトコ…

王女「(何だか不思議。泥棒さんといると色んな人が変わっていくような気がする。わたしも変わったのかな……)」
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 02:34:44.34 ID:e+UqcoFdO
また明日
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 09:27:51.93 ID:oUPebYb80
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 16:08:59.00 ID:LZdsXNJDo
続きが愉しみ
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 22:18:46.17 ID:3SZ+PfozO

【詰所】

盗賊「男ばっかだな。きちんと掃除しろよ」

警備兵「少し黙ってろ」

盗賊「ハイハイ。分かったから睨むなよ」

警備兵「…チッ…着いて早々で悪いが、君は何故狙われているんだ?」

王女「……あの、今更言うのも何ですが兵士さんはわたしが王女であると信じるのですか?」

警備兵「信じたわけではない。ただ、君とそこにいる猿が狙われてることは確かだ」

警備兵「君が宿屋で話していた白い騎士とやらに関しても同様の見解だ」

警備兵「千年も前のことはともかくとして、犯人が白銀の甲冑を身に着けていたことは疑いようのない事実だからな」

王女「……なる程、あくまで事件解決の為ということですか」

警備兵「その通りだ。その為に、君が王女だと仮定して話を進めようというわけだ」
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 22:35:21.21 ID:3SZ+PfozO

盗賊「何だそりゃ?」

盗賊「そんなの信じてんのと変わんねえじゃねえか。あんたって本当に素直じゃないんだな」

警備兵「黙ってろ。次に口を開いたら自慢の二枚舌を三枚に下ろすからな」

盗賊「ハイ」

警備兵「……さて、お聞かせ願おうか」

王女「先ほど話した通り、わたしは長らく一つの部屋で生きてきました」

王女「ですので、王宮の内情については詳しくありません。それでもよろしければお話しします」

警備兵「それでも構わない。思い当たることがあれば話してくれ」

王女「……明確な意思を持って狙うとするなら、兄以外には考えられません」

王女「輪転器とは王の力を継ぐ器。本来であれば実子である兄が次期の王になるはずでした」

警備兵「実子である兄? ちょっと待ってくれ。ということは、君はまさか…」
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 23:03:24.93 ID:3SZ+PfozO

王女「ええ、お考えの通りです」

王女「魔王である父とわたしに血の繋がりなど一切ありません」

警備兵「……これはまた、とんでもない話だな」

盗賊「そうなのか?」

警備兵「王の血は途切れることなく今日に至る。純血であり神聖なる存在。それが常識だ」

警備兵「彼女の話が本当なら、俺はとんでもない秘密を聞いてしまったことになる……」
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 23:07:13.17 ID:3SZ+PfozO

盗賊「ビビってんのか?」ニヤニヤ

警備兵「お前はニンゲンだから笑っていられるだろうが、国を揺るがす事態に発展する可能性も十分に有り得る」

警備兵「民は王を神の如く崇め、唯一無二の存在としている。魔王とは、そういう存在なのだ」

盗賊「へ〜、そうなんだ。それよりさ、姫様って姫様になる前はどうしてたんだ?」

王女「遊牧民の子だったような気がするのですが、王宮に入る前後の記憶が曖昧なのであまり…」

盗賊「……そっか。あっ、悪い。続けてくれ」

警備兵「では、兄が暗殺者を差し向けていると? 白い騎士も彼が?」

王女「断言は出来ませんが、その可能性は高いと思います」

王女「他所から連れて来た見ず知らずの娘に力を継がせるなど許せないでしょう?」
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/12(月) 00:03:16.36 ID:Xz0S6i1pO

警備兵「確かに…」

盗賊「で、どうすんだ?」ニヤニヤ

警備兵「…チッ…お前は王家の跡継ぎ問題を街の警備隊がどうにか出来ると思うのか?」

盗賊「出来ねえだろうな。おまけに犯人の目星も付いてねえ、正に八方塞がりってやつだ」ウン

警備兵「随分と能天気な奴だな。事の重大さを分かっての台詞なら尚更だ」

盗賊「まあまあ。跡継ぎ問題とかは置いといて、罪のないうら若き女性が狙われてるんだぜ?」

盗賊「だったら警備隊としてやるべきことは決まってるんじゃねえの?」

警備兵「守るしかない、か? 確かにその通りだ。だが、お前に言われると無償に腹が立つな」
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/12(月) 00:04:36.94 ID:Xz0S6i1pO

盗賊「ニンゲンだから?」

警備兵「口の減らない小僧だからだよ」

盗賊「そうかい。ところで、俺と姫様の後に街に入った奴は調査したのか?」

警備兵「当たり前だ。既に調べてある」

盗賊「あ、そうなんだ。でも、その様子じゃ進展なしみたいだな」

警備兵「お前が厩に馬を預けた直後に入った男がいてな。そいつで確定かと思ったんだが証拠は出なかった」

盗賊「参考までに聞いとくけど、その男はどんな奴だった? 右手に火傷してなかったか?」
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/12(月) 00:06:35.95 ID:Xz0S6i1pO

警備兵「何故それを…」

盗賊「決まりだな。そいつが犯人だ」

警備兵「何を言ってる? その男は甲冑はおろか武器の類も一切所持していなかったんだぞ?」

盗賊「白い騎士が使ってた武器の話は聞いてたか?」

警備兵「籠手と剣が一体化したようなもの。だったか? それがどかしたのか?」

盗賊「犯人は馬の死体と厩の主の死体を運ぶ時、その武器を外したんだ」

盗賊「パタってのは籠手の中に握りのある武器だ。籠手ごと外すしかない。つまりは素手」

盗賊「で、火を放った。その時に火傷したんじゃねえかと思ってさ」
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/12(月) 00:19:20.95 ID:Xz0S6i1pO

警備兵「面白いが決定打に欠けるな」

盗賊「でも、疑わしいのはそいつしかいない。いっそ正面切って行ってみるか?」

ガチャ…ガチャ……ザッ…

警備兵「!!」

王女「ま、まさか……」

盗賊「姫様、奥に隠れててくれ」

王女「は、はいっ」サッ

コンコンッ…

警備兵「何故俺だと分かったのかと聞いた時、お前は足音で分かったと言ったな」

盗賊「あ?」

警備兵「甲冑の音に気付かなかったのか? 全く、肝心な時に役に立たない耳だな」

盗賊「あのなぁ、扉の前に来て初めて聞こえたんだぜ? それまでは馬の足音しか聞こえなかった」
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/12(月) 00:38:02.37 ID:Xz0S6i1pO

警備兵「…チッ…まあいい。用意はいいか?」ザッ

盗賊「どうする気だ?」

警備兵「扉ごと奴をぶっ飛ばす。その間に彼女を連れて逃げーー」

『夜分に申し訳ない。少しばかり訊ねたいことがあるのだが宜しいか?』

盗賊・王女「あっ…」

警備兵「どうした?」

盗賊「え〜っと。なんつーか…知り合い? 出来ることなら二度と会いたくなかったけどさ」

警備兵「……お前の仲間じゃないだろうな?」

盗賊「違う違う。俺とは真反対の正義の味方だよ。かなり暑苦しいけどね……」
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/12(月) 00:52:14.42 ID:Xz0S6i1pO

警備兵「いいんだな?」

盗賊「まあ、問題はあるけど今の状況なら何とかなる。大丈夫だ」

警備兵「……今開ける」

『おお、有難い。では、失礼する』

ガチャ…

騎士団長「ん?」

警備兵「……王宮騎士か?」

盗賊「よっ!」

騎士団長「なっ…き、貴様ァ!姫様は!姫様は何処だ!! まさかーー」

盗賊「姫様、呼んでるぜ? 出てこいよ」

ガタガタッ…

王女「お、お久しぶりです」ヒョコッ

騎士団長「ひ、姫様!? よ、良かった。本当に良かった。ご無事で何よりです……」
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/12(月) 01:08:14.17 ID:Xz0S6i1pO

盗賊「あのさ、頼みがあるんだけど」

騎士団長「誰が貴様の頼みなど聞くか!この場で引っ捕らえてーー」

王女「き、聞いて下さいっ!!」

騎士団長「ひ、姫様?」

騎士団長「(あの大人しい姫様が声を張り上げた? 顔付きもどこか頼もしくなられたような…)」

盗賊「手短に話すから良く聞いてくれ。この街で殺人事件が起きた。犯人は姫様を狙ってる」

盗賊「犯人の目星は付いたけど姫様を一人にするわけにはいかない。守ってくれる奴が必要なんだ」

盗賊「犯人は手練れだ。おそらく警備隊だけじゃ足りない。あんたの力が必要なんだ。力を貸して欲しい」
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/12(月) 01:22:52.33 ID:Xz0S6i1pO

騎士団長「………」チラッ

王女「事実です。どうか、信じて下さい」

騎士団長「……分かりました。姫様の頼みとあらば断るわけには行きません」

盗賊「いや〜、助かったよ」

騎士団長「貴様に礼を言われる筋合いはない。姫様に感謝するんだな」

王女「あの、先ほどから気になっていたのですが、どうやってこの街に来たのですか?」

騎士団長「それが、何と言ったらよいのか。馬の導きとでも言いますか……」
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/12(月) 01:27:16.50 ID:Xz0S6i1pO

王女「馬の導き?」

騎士団長「ええ、そこの賊が逃走する際に乗っていた馬です」

騎士団長「いきなり帰って来たかと思えば、付いてこいと言わんばかりに走り出しましてな」

騎士団長「これは何かある。そう思って追い掛けてきた次第であります」

カカッ…カカッ…

白馬「………」

盗賊「(やっぱりそうか。賢い馬だとは思ってたけど、まさかここまでとは思わなかったな)」

王女「は、白馬さんっ!」タタッ

白馬「………」カカッ

ゴチンッ…

王女「あたっ…でも良かった。無事だったのですね。本当に心配したんですよ?」

白馬「(別にあなたの為じゃないわ。彼の役に立ちたくて走っただけよ)」フンッ
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 01:28:25.36 ID:Xz0S6i1pO
また明日
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 07:22:35.03 ID:35T3vRLMo
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 10:04:09.02 ID:e2KMnnIMo
しろうまさんかっこいい
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 22:44:06.00 ID:kf1lpa/w0
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/14(水) 00:05:51.42 ID:CqWIlVceO

【玉座の間】

将軍「宜しいのですか父上」

老人「何がだ?」

将軍「騎士団長が独断で輪転器を追った件についてです。支障が出るかも分かりません」

老人「それならばそれでよい。あの男ならば遅かれ早かれそうするであろうと思っていたからな」

将軍「これも予定通りですか」

老人「予定通りとは言えぬが想定していた通りの動きだ。その程度で計画が狂うことはあるまい」

将軍「………」

老人「焦るな。誰もが思惑に沿って動くわけではない。して、白騎士は?」

将軍「街に入りましたが接触はまだのようです。結果は明日までに出ることでしょう」
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/14(水) 00:10:55.95 ID:CqWIlVceO

老人「フッ、そうか……」

老人「どのような結果が出るか楽しみだな。これ程まで朝を待ち遠しく思うのは久方ぶりだ」

将軍「……父上はあのニンゲンを随分と買っているようですね。期待するに値する男でしたか?」

老人「それを確かめる為に白騎士を遣わした。場合に寄っては今夜で終わってしまうだろう」

将軍「……それにしては落ち着いていますね。父上には既に見えているのですか」

老人「見えてなどおらんよ。ただ、確信めいたものを感じるのだ。奴は必ず蘇るとな」

将軍「それは、中にいる者がそう言っているのですか。それとも父上個人が?」

老人「どうなのだろうな。王の力を継いでから随分と経つ。最早どちらがどうであるかなど分からんよ……」

将軍「……父上、これが王の悲願であることは重々承知しております。ですが、無理はしないで下さい」
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/14(水) 00:41:50.96 ID:CqWIlVceO

老人「無理などしておらん」

老人「儂とて出来ることならば早く手放したいところだが夜が明けるまでは何とも言えん」

老人「確信はある。だが、奴がそうでなかった場合は次を待つことになるだろうな……」

将軍「………」

老人「転生に次ぐ転生。幾人もの魂を渡り歩いて千と余年が経ち、遂に相応しい器が現れたのだ」

老人「儂はただ、此度の転生が長く苦しい旅路の末であることを切に願う。王からの解放をな」

将軍「力は? そうなった時、王の力はどうなるのです?」

老人「分からん。相応しき者へと渡るか、或いは願いを叶えて消えるか。そのどちらかだろう」
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/14(水) 01:10:22.79 ID:CqWIlVceO

将軍「っ、失礼します」ザッ

老人「待て」

将軍「何でしょうか」

老人「それ程までに王の力を欲するのならば奪ってみせよ。お前が何を目論んでいようと止めはせん」

将軍「有り難う御座います」

老人「但し、此度の輪転器は一つではないことを忘れるな。野望を叶えたいのなら、焦らぬことだ」

将軍「……はい。分かっております」

ーーー
ーー


王女「えっと。というわけで今に至ります」

騎士団長「何と、そのような残忍な事件が起きていたとは…しかも将軍が関与しているなど……」

王女「まだそうと決まったわけではありません。あくまでも、そうする可能性が高い人物を述べただけです」
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/15(木) 00:45:17.19 ID:2R8Uw+FOO

騎士団長「………」

王女「……あの、申し訳ありません。急にこんな話をされては混乱しますよね…」

騎士団長「……謝ることなどありません。ただ、整理するには時間が掛かるかと思います」

警備兵「(それはそうだろう。街の警備隊である俺ですら動揺を隠せないでいるんだ)」

警備兵「(極めて近しい立場。王宮にいた者にとってその衝撃は計り知れないものだろう)」

警備兵「(血縁ではないという事実。輪廻転生機の正体。王位継承の裏で蠢く策謀)」

警備兵「(王に仕える騎士団)」

警備兵「(その団長である彼にとって、これらを一辺に理解しろと言うのはあまりに酷な話だ)」
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/15(木) 01:15:34.80 ID:2R8Uw+FOO

騎士団長「姫様は…」

王女「?」

騎士団長「姫様は姫様です。血縁がどうだと言われても、私にとって姫様は姫様なのです」

騎士団長「輪転器であったことも王位継承の件についても私にしては…その、何と言いますか…」

騎士団長「それら全ては些細な事。と言ってしまうと語弊がありますが、何も変わりません」

王女「何も…変わらない?」

騎士団長「先程も申し上げた通り、姫様は姫様です。私が姫様に抱くものは幾らかも変わってはおりません」

盗賊「へ〜。気の利いたこと言えるんだな。もっと不器用かと思ってたよ」

警備兵「話の腰を折るな。猿は黙っていろ」

盗賊「……あのさ、その猿って呼び方はニンゲン呼びから昇格したの? それとも見下してんの?」
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/15(木) 01:36:59.77 ID:2R8Uw+FOO

警備兵「それくらい自分で考えろ。猿」

盗賊「猿と話せるってことはあんたも猿ってことになるわけだけど、それについてはどう考えーー」

警備兵「黙ってろ」

盗賊「はぁ〜、話にならねえな」

警備兵「何故だか分かるか? それは俺が猿ではないからだ。そもそも話になるわけがない」

盗賊「あんた友達いないだろ」

警備兵「うるさい」

王女「フフッ…」

盗賊「えっ?」

王女「あっ、ごめんなさい。何だかんだ言いながら楽しそうにお話していたので、つい笑ってしまいました」
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/16(金) 19:27:05.40 ID:qg/nRbuLO

警備兵「良かったな。笑われて」

盗賊「あんたも笑われてんだよ!」

王女「フフッ…」

騎士団長「……姫様、一つ聞いておきたいことがあります」

王女「は、はい。何でしょう?」

騎士団長「……昨晩、その男に連れ去られた時のことです。私は二人の会話を聞いていました」

王女「!!」

騎士団長「気を失う直前のことでしたから聞き間違いではないかと思っていました。いや、そう思いたかった……」
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/16(金) 19:53:30.79 ID:qg/nRbuLO

騎士団長「姫様、どうかお答え下さい」

騎士団長「外へ出たのはご自分の意思ですか。それとも、その男に誑かされーー」

王女「違います」

騎士団長「!?」

王女「外へ出たのは、わたし自身の意思です。わたしが決めたことです」

騎士団長「っ、やはり…そうでしたか。何とはなしに、そんな気はしておりました」

王女「えっ?」

騎士団長「ご自分ではお気付きにならないでしょうが、とても晴れやかな顔をしています」

騎士団長「私はそのような顔を…何の屈託もなく笑う姫様を見たことがありません。感情を露わにするお姿も……」

騎士団長「そんな姫様を見て嬉しく思う反面。何も知らなかった自分を情けなく思います」
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/16(金) 20:48:53.23 ID:qg/nRbuLO

騎士団長「姫様、申し訳ありませんでした」ザッ

王女「そんなっ…頭を上げて下さい。迷惑を掛けているのはわたしなのに……」

騎士団長「謝らなければならない理由はそれだけではありません。実はその…」ガサゴソ

王女「?」

騎士団長「何かしらの手掛かりになるかも知れないかと思い…姫様の部屋からこれを……」スッ

王女「そ、それは…か、返して下さい!!」バッ

騎士団長「申し訳ありませんでした!!」

王女「……見ましたか?」

騎士団長「そんなまさか! 婦女子の日記を盗み見るなどするわけがありせん!!」
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/16(金) 20:52:03.18 ID:qg/nRbuLO

盗賊「本当かぁ?」

騎士団長「貴様のような盗人に言われたくはないわ!! その日記は姫様の為に隠していたのだ」

盗賊「姫様の為?」

騎士団長「そうだ。中に重大な機密情報が書かれていたとしたら大変だからな。何者かに持ち出される前に私が守っていたのだ」

盗賊「言ってることはともかく、やってることは盗人そのものじゃねえか」

騎士団長「喧しい!!」

王女「あのぅ、本当に見てないですよね?」

騎士団長「勿論です!誓って見ておりません!!」
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/16(金) 22:58:02.40 ID:qg/nRbuLO

王女「(はぁ、良かった……)」

警備兵「諸々の状況整理は終わったな。で、お前はどうする。行くのか?」

盗賊「場所さえ教えてくれればな。あんたと団長さんは此処に残って姫様の警護をしてて欲しい」

警備兵「一人でやる気か?」

盗賊「ああ、俺の戦だからな。当然、向こうもそのつもりでいる。だから、俺が終わらせる」

警備兵「………」

盗賊「それとも何か? ニンゲンの俺に手を貸してくれる奇特な奴がいんのか?」

警備兵「……場所はお前がいた宿とは真逆。街の西側にある宿だ。さっさと行け」

盗賊「分かった。そいつが当たりかどうか分かんねえけど、とりあえず行ってみるよ」
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/16(金) 22:59:55.98 ID:qg/nRbuLO

盗賊「……姫様を頼む」ボソッ

警備兵「ああ、任せろ。彼女は我々警備隊が責任を持って警護する」

王女「ま、待って下さい!!」タッ

ガシッ…

王女「!?」

騎士団長「……姫様、なりません」

王女「一人で行くなんて危険過ぎます!! 彼は怪我をしているのですよ!?」

盗賊「大丈夫。すぐに帰って来るよ。それまでは此処で待っててくれ。んじゃ、行ってくる」ザッ

王女「泥棒さーー」

ガチャ…バタンッ…
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/16(金) 23:02:03.36 ID:qg/nRbuLO

王女「……何故ですか」

警備兵「何故とは?」

王女「先程はわたし達を保護すると言ったではありませんか。それなのに何故……」

警備兵「君を保護するとは言った。だが、二人を保護するとは言っていない。協力するともな」

王女「そんなっ…」

警備兵「外を知らないから仕方がないかもしれないが、我々とニンゲンには埋められない溝がある」

警備兵「加えて言うなら奴は大罪人だ。罪人同士が殺し合おうが知ったことではない」

警備兵「どちらが死のうと結果的に罪人一人が消えてくれるなら安いものだ。違いますか?」

騎士団長「………」

王女「っ、そんなの間違っています。姿形は違えど我々もニンゲンも同じーー」
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/16(金) 23:15:11.40 ID:qg/nRbuLO

警備兵「黙れ」

王女「!!」ビクッ

警備兵「これまで何の苦労もなく温々と過ごしてきた奴に何が分かる」

警備兵「向こう側で行き場を無くした屑共が流れ込み多くの犯罪を犯しているのが現状だ」

警備兵「それを……言うに事欠いて我々とニンゲンが同じだと? 笑わせるな」

警備兵「ニンゲンが死んで喜ぶ奴は数多くいるだろうが悲しむ奴などいやしない」

警備兵「そもそも君が外へ出なければこのような事態にはならなかった。それを忘れるな」

王女「わたしはただ…」

警備兵「君が何を思おうが起きた事実は変わらない。分かったなら黙っていろ『お嬢さん』」

王女「…っ、はいっ…」キュッ

騎士団長「(姫様が思っているほど、外は美しい世界ではない。私を含め、彼のような考えを持っている者が大半だ)」
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/17(土) 00:21:30.80 ID:JDKwS+7HO

騎士団長「(ただ、少なくとも…)」チラッ

警備兵「………」コクン

騎士団長「(やはりそうか。少なくとも彼だけは協力するつもりでいた)」

騎士団長「(しかし、警備隊である彼がニンゲンに手を貸せば立場は危うくなる)」

騎士団長「(奴はそこまで考えて一人で行くと言ったのか? だとしたら……)」チラッ

王女「………」

騎士団長「(だとしたら姫様が信頼するのも分からなくはない。あんなニンゲンはこれまで見たことがない)」

騎士団長「(……姿形が違えど、か。もしそうであれば、どれだけ良い世界になっていただろう)」

ーーー
ーー


盗賊「(……そういや、一人で歩くのは久しぶりだな。いや、そうでもねえか)」

盗賊「(大した時間は経ってねえはずなのに、姫様とは長いこと一緒にいたような気がする)」
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/17(土) 12:43:12.97 ID:Ldb6e3ZbO
警備兵イケメン過ぎる
C
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/17(土) 22:33:14.96 ID:A50nUZETO

トコトコ…

盗賊「っくし! 冷えてきたな」

盗賊「(しっかし静かだな。街の皆様方はお布団の中でぐっすりか。羨ましいぜ)」

盗賊「(さっさと終わらせたいとこだけど、どうなるもんかな。一応準備はしてきたけど上手く行くかどうか……)」

ブワッ…ヒュゥゥゥ…

盗賊「なんだ…今の風……」ゾクッ

シーン…

盗賊「(……気味が悪りぃ)」

盗賊「(一瞬で空気が重苦しくなった気がする。まるで沼の中に沈んでくような感じだ)」

盗賊「(首筋にジリジリきやがる。全身が粟立つのが分かる。向こうで何かが起きたのか?)」
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/17(土) 22:42:19.57 ID:A50nUZETO

トコトコ…

盗賊「っくし! 冷えてきたな」

盗賊「(しっかし静かだな。街の皆様方はお布団の中でぐっすりか。羨ましいぜ)」

盗賊「(さっさと終わらせたいとこだけど、どうなるもんかな。一応準備はしてきたけど上手く行くかどうか……)」

ブワッ…ヒュゥゥゥ…

盗賊「なんだ…今の風……」

シーン…

盗賊「(……気味が悪りぃ)」

盗賊「(一瞬で空気が重苦しくなった気がする。まるで泥沼の中に沈んでくような……)」

盗賊「(ッ、首筋にジリジリきやがる。全身が粟立つのが分かる。向こうで何かが起きたのか?)」
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/17(土) 23:02:08.93 ID:A50nUZETO

盗賊「(にしては悲鳴の一つも聞こえねえな)」

盗賊「(一体何なんだ? 街の雰囲気すら一変したような気がする。嫌な予感しかしねえ)」

盗賊「………」ザッ

盗賊「(この街、こんなに暗かったか? 街並みはそのままなのに全く別の場所に感じる)」

盗賊「(もし…もしこれが奴の放つ気配だとしたら奴は人じゃない。勿論『こっち側』の奴でもない)」

盗賊「(ツノだとか牙だとか耳だとか尻尾だとか、そんな話しじゃねえ。正真正銘のバケモノだ)」

盗賊「……ッ…何にせよ、行かなきゃ始まらねえか」ダッ

ーーー
ーー


盗賊「(……着いた。辺りは静かだな)」

盗賊「(でも、空気は重苦しいいままだ。宿屋の中は…この中はどうなってる?)」ザッ

ガチャ…ギィィィ…
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:25:15.79 ID:17lus0uEO

盗賊「…ッ…酷え…」

ビチャッ…ビチャッ…

盗賊「(滅茶苦茶だ。何をどうしたらこんな風になるんだ? 天井も壁も床も全部血で……)」

ズルッ…ドシャッッ…

盗賊「ッ、いい趣味してるぜ」

盗賊「(まともな死体は一つもありゃしねえ。飛び散った肉片が壁や天井に張り付いてやがる)」

盗賊「(血の雨でも降ったような…ってのは正にこのことだろうな。あっという間に血塗れだ)」

ゴトッ…

盗賊「!?」バッ

「ひっ…た、助けてくれ。頼む。もう止めてくれ。私は何もしていないんだ」
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:27:12.79 ID:17lus0uEO

盗賊「落ち着け。やったのは俺じゃねえ」

「分かってる。そうじゃない。違う。違うんだ。あいつが、白い騎士が来る。出て来る」

盗賊「……出て来る? それよりあんた、その手の火傷はーー」

「違うっ! 私じゃない。私じゃないんだ。出て来るんだ。勝手に…出て来るおぇぇッ…」

盗賊「お、おいっ。しっかりしろ!!」

「はな…でろ…ばだでろ…離れろ。いげ、もう。もう。だめだ。ぐる…ででぐるっ!!」

盗賊「ちっ!!」バッ

「おげぇぇッ…ぎ、ぐるででぐる腹がか突きやぶってぐぼぁっ…」ガクガク
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:34:22.04 ID:17lus0uEO

盗賊「(何だ? 口から何かが…)」

ゴバッッ!

白騎士「…ハァァ…やれやれ、脱ぐにも一苦労だな」

盗賊「なっ…」

白騎士「これはこれは…随分と見苦しい所を見せてしまった。どうした?顔色が悪いぞ?」

盗賊「……通りで見付からねえわけだ。まさか甲冑が人を着てるとはな」

白騎士「驚いたかね?」

盗賊「ああ、吐き気がするほどにな」

白騎士「はははっ、恐怖を植え付けるには良い演出だっただろう?」

白騎士「これは戦に必要不可欠な技術であり、戦場を彩る数少ない芸術でもあるのだ」

盗賊「悪りぃけど全く共感出来ねえな。俺とあんたじゃ美的感覚が違い過ぎる」
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 01:13:30.39 ID:17lus0uEO

白騎士「そうか。それは残念だ」

盗賊「(マズい。完全にやられた。この野郎、俺が来るのを待ってやがったんだ)」

盗賊「(まともにやって勝てる相手じゃねえ。何とかして此処から出ねえと……)」

白騎士「此処は狭いな。やはり屋外、開けた場所にすべきだったか」

盗賊「(ッ、今しかねえ!!)」ヒュッ

ドガンッ!

白騎士「……逃げたか。面白い奴だ」

白騎士「しかし、あんなものは見たことがないな。武器も戦も変わったと言うわけか」

ーーー
ーー


盗賊「(外へ出たのはいい。この先はどうする? どうやって勝つ? 考えろ。考えるんだ)」ダッ
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 01:53:11.68 ID:17lus0uEO

盗賊「(甲冑の隙間。関節部位…突けるか?)」

盗賊「(そもそも近付けるかどうかも怪しいもんだ。とにかく、今はこのまま距離をーー)」ゾクッ

ズドンッ! パラパラッ…

盗賊「…っぶねえな」

白騎士「よく避けた。褒めて遣わす」

盗賊「そりゃどうも。つーか色々おかしいだろ。どうやったら甲冑着けたまま飛べんだよ」

白騎士「そういった常識や限界は自らを拘束する枷でしかない」

盗賊「答えになってねえよ」

白騎士「常識に囚われるなということだ」

白騎士「凡人は往々にして限界を定め自らに枷をする。不可能などないというのに」

盗賊「あんたの動きはヒト科の範疇を超えてんだよ。少しは弁えろ」
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 20:54:09.00 ID:ru+hyu8uO

白騎士「弁える必要などない」

白騎士「勝利するには何者をも寄せ付けぬ力が必要なのだ。その為には理の外へと踏み出さねばならない」ザッ

盗賊「(武器は姫様の言ってた通りだ。刃は長く厚い。籠手でいなせるような代物じゃない)」

白騎士「……故に進む。進み続ける。ただひたすらに、勝利のみを求めて」トッ

盗賊「(また跳びやがった。身が軽いとかって話じゃねえぞ!!)」

ドギャッッ! 

盗賊「…ッ、跳ぶわ走るわ…とんでもねえ奴だな。中身入ってんのか?」スタッ

白騎士「知りたいのなら勝利して確かめろ」

盗賊「(……やっぱり、こいつは半端じゃねえ)」

盗賊(石畳を砕いて地面を抉りやがった。刀身が根本までぶっ刺さってる)」

盗賊「(斬擊や打突の類じゃねえ。ぶん殴るって表現が一番しっくりくる)」
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 21:05:31.78 ID:ru+hyu8uO

白騎士「………」ズッ

盗賊「(相手は甲冑装備。素早さなら勝てると思ってたけど、ぎりぎりだな)」

白騎士「眼が良いな。実に良い眼をしている」

盗賊「そりゃそうさ、まだまだ夢見る年頃なんでね。綺麗なもんだろ?」

白騎士「ハハハッ! 夢、夢ときたか。そうだな、夢を抱くのは良いことだ」

盗賊「……あんた眼はどうだ?」

白騎士「何?」

盗賊「あんたはその兜の奥でどんな眼をしてる? あんたの眼は何を見てる?」
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 21:28:36.22 ID:ru+hyu8uO

白騎士「無論、輪転器」

盗賊「なら、こんな道草食ってる暇はねえと思うけどな。行かれても困るけど」

白騎士「民草の血肉は喰らったが道草は食っていない。求めるものは目の前にある」

盗賊「あんたが求めてんのは俺との戦か? 戴冠の戦だっけ? 俺の冠が見当たらねえけどな」

白騎士「案ずるな。此処に在る」

盗賊「……まるで意味が分からねえ。あんたは何なんだ? 生きてんのか?死んでんのか?」

白騎士「難しい質問だな」

盗賊「千年も前に死んだって聞いたぜ。死には勝てず、甲冑を身に付けたまま眠ったってな」

白騎士「あの輪転器から聞いたのか。しかし、私の時代の書物が残っているとは考えられん」

白騎士「大方、後期の者が好き勝手に書いたのだろう。過去に泥を塗るような脚色は好かんな」
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 21:59:53.17 ID:ru+hyu8uO

盗賊「脚色?」

白騎士「他に何が書いてあったかは知らんが、ただ一つだけ確実に間違っている点がある」

盗賊「何がだよ」

白騎士「私は負けてなどいない」

盗賊「……あんた、すっげー頑固だな」

盗賊「本物かどうかは分かんねえけど、本物並みに勝利に餓えてんのは間違いなさそうだ」

白騎士「私を真似られる者などいない。後にも先にも、私は私だけだ」

盗賊「自分でそんなこと言うなんて随分と驕り高ぶった御方だな。王様に喧嘩売ったってのも頷けるぜ」
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 22:28:33.57 ID:ru+hyu8uO

白騎士「そうでなくてはならない」

盗賊「?」

白騎士「夢を抱き夢を叶えようとするのなら、敗北は決して許されない。勝ち続けるしかない」

白騎士「貴様もそうであろう? 得難きを得るべく歩き続けているのだから」

盗賊「………」

白騎士「故に驕り高ぶり、故に限界を定めず、己が往く道を妨げる者は徹底的に排除する」

白騎士「積み上げた勝利。勝利の上の勝利。全ては私が到達せんとする場所に辿り着く為に」

盗賊「……その為なら何をしても許されるってか?」

白騎士「私以外に私を赦す存在はいない。私を赦せる存在などいてはならない」

盗賊「ああそうかい。なら、今からでも俺に謝る準備しとけ。絶対に許さねえけどな!!」ヒュパッ
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/19(月) 01:02:46.17 ID:DF1P7wLNO

グルンッ…ギチッ!

盗賊「あんたの首を貰う」グイッ

白騎士「……実戦で鞭を使うとは少々驚いたな。だが、その程度で首は取れんぞ」ブチンッ

盗賊「んなことは分かってるさ」

白騎士「(何の武器も無しに向かって来るか。何か策があるのだろうが……)」スッ

盗賊「(あの構え、突いてくるか斬ってくるか判断出来ねえな。けど、行くしかねえ。懐に潜る)」

白騎士「敵が特殊な武器を扱う場合、その特性を殺す。先を取り懐に潜る。基本だな」

盗賊「(ッ、腰を落としやがった)」

白騎士「鞭による奇襲。予想外の武器を扱った割に攻め手は教科書通りか」
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/19(月) 01:24:34.36 ID:DF1P7wLNO

盗賊「(下からの突き。直線攻撃。半歩外)」

ゴッッ!

盗賊「(ッ、脇腹掠めた。危ねえ、もう一歩踏み込んでたら腹に風穴空いてたな)」

白騎士「(二度。たった二度見ただけでこれを見切るか。流石はーーー)」

ズドッッ!

盗賊「(入った。普通なら、これで終わる。つーか終わってくれ)」

白騎士「……ミセリ…コルデ…か」ガクンッ

盗賊「……あんたに対して慈悲の気持ちはないけどな。痛いなら無理しないで倒れてくれねえか」

白騎士「フッ、フフッ…これで確信したぞ。やはり貴様で間違いない」ズッ

ガシィッ!

盗賊「がッ…まだ動けんのかよ。俺のことはいいから…先に…逝ってろ!!」ジャキッ
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/19(月) 01:52:50.67 ID:DF1P7wLNO

白騎士「!?」

ズギャッッ!

白騎士「……これはジャマダハルに似ているな。まさか籠手にまで武器を仕込んでいるとは」

ミシッ…ミシミシッ…

盗賊「ぐっ…ガハッ…無理すんな。安らかに眠れ」

白騎士「こうも痛みが酷くては眠れんよ。かえって目が覚めた」ググッ

盗賊「ッ、さっさと逝け。冥府の船頭に渡す金がねえなら後で代わりに出してやる」

白騎士「此処まで来てのだ。二百年も待てんな」

盗賊「頑張っても五十年だ。向こうで待ってろ。つーか何で死なねえんだよ」
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/19(月) 02:04:59.08 ID:DF1P7wLNO

白騎士「!?」

ズギャッッ!

白騎士「……これはジャマダハルに似ているな。まさか籠手にまで武器を仕込んでいるとは」

ミシッ…ミシミシッ…

盗賊「ぐっ…ガハッ…無理すんな。安らかに眠れ」

白騎士「こうも痛みが酷くては眠れんよ。かえって目が覚めた」ググッ

盗賊「ッ、さっさと逝け。冥府の船頭に渡す金がねえなら後で代わりに出してやる」

白騎士「此処まで来たのだ。二百年も待てんよ」

盗賊「頑張っても五十年だ。向こうで待ってろ。つーか何で死なねえんだよ」
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/19(月) 02:45:38.77 ID:DF1P7wLNO

白騎士「知りたいのならーー」

盗賊「勝利して確かめろ…だろ?」ニヤッ

白騎士「ほう、この状況になって尚も笑うか。まだ何か策があるというのか?」

盗賊「ゲホッ…さあ…どうだろうな」

白騎士「出来ることならばもう少し付き合いたいところだ。しかし、私には時間がない」

盗賊「なに…言ってんだ?」

白騎士「(あれだけ喰らってもこの程度しか保たんとはな。此処では駄目だ。あの場所へ行かなければ……)」ダンッ

ズガンッ!ズガンッ!ズガンッ!

盗賊「ガハッ…(ったく、こんな夜更けに民家の壁ぶち破るなんて何考えてんだ。常識ってもんはねえのか)」

盗賊「(それより、何で心臓刺されてんのに走れるんだ。手応えはあった、外したはずはねえ)」

ズガンッ!ズガンッ!

盗賊「(ッ、今ので完全に傷が開いたな。痛み止めも切れた。すっげー痛え)

盗賊(背中縫って貰わねえと…姫様、怒るだろうな……あ〜、頭が回らねえ…)」
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/20(火) 20:12:21.56 ID:TdQm0sKQO

ダッダッダッ…

白騎士「ぐっ…」ブシュッ

ボタボタッ…

白騎士「(……最早己の肉体さえ儘ならぬか)」

白騎士「(だが終わらんぞ。終わりなど認めん。この私に終わりなど訪れるはずがない)」

白騎士「(死など存在しない。あってはならない。私は不滅でなくてはならないのだ)」ダンッ

バリンッッ!

『な、何だぁ!?』

白騎士「ハァァァ…」クルッ

『ひッ…ひぃぃッ!!』

白騎士「(これでは駄目だ。これでは足りぬ。今は喰らう時間すら惜しい。急がねば)」タッ

ドガッッ!パラパラッ…

『て、天井が……な、何だったんだ今のは……』
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/20(火) 22:09:39.80 ID:TdQm0sKQO

白騎士「………」ズダンッ

盗賊「…ゴフッ…ゲホッゲホッ…何を焦ってんだ。まだ夜は始まったばかりだってのによ」

白騎士「フッ、そうだな。これは始まりの夜だ。新たな始まり、終わりではない」

盗賊「何を言ってんのかさっぱり分かんねえ。俺にも分かるように言ってくれよ」

白騎士「話すより見せた方が早い。理解出来るかは別としてな」ダンッ

盗賊「(また跳びやがった。ったく、どんな跳躍力してんだ。つーか高え、着地出来んだろうな)」

ビョゥゥゥ…

白騎士「欲したものは必ず手に入れる。何があろうと、必ず……」

盗賊「(……今、何か言ったな。風に遮られて良く聞こえなかったけど……)」
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/20(火) 23:44:36.35 ID:TdQm0sKQO

ビョゥゥゥ…

盗賊「(……つーか、この状況はマズいな)」

盗賊「(この高さだ。首根っこ掴まれたまま着地されたら間違いなくボキッといっちまう)」

盗賊「(仕掛けは済んでる。今ならやれるか? いや、風に邪魔されちまうのがオチだ……ん?)」

白騎士「………」ブシュッ

盗賊「(……何でか分かんねえけどさっきから出血してんな。俺が刺した場所以外からも血が溢れ出てる)」

盗賊「(掴む力もかなり弱まってる。今なら内肘を刺して振り解けるんじゃねえか?)」

盗賊「(でもなぁ、これは流石に高すぎる。下に何か…落下の衝撃を逃がせる何かがあれば……)」チラッ

盗賊「(……あった。どうせこのまま落ちたら首折れて死ぬんだ。やるしかねえ)」
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/21(水) 00:34:02.37 ID:Eyhl8jLIO

盗賊「……あんた、流れ星は見たことあるか?」

盗賊「消える前に願いを三度唱えれば、その願いは叶うらしいぜ。間に合えばだけどな」

白騎士「……何を言っている」

盗賊「見せてやるよ、流れ星。三度唱える時間があるか分かんねえけどな!!」ヒュッ

グサッッ!

白騎士「ぐっ!?」ズルッ

ビョゥゥゥ…

盗賊「ふ〜っ…これで思いっ切り空気が吸える。よしっ…」

盗賊「助かりますように助かりますように助かりますように助かりますように!!」

盗賊「(何だよ、案外簡単に言えるじゃねえか。一回多く言ったけど、流れ星の願いって叶うのかな……)」

ビョゥゥゥ…

盗賊「(……まあ、なるようになんだろ)」
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/21(水) 01:26:14.42 ID:Eyhl8jLIO

ボフッッ!

盗賊「……願っといて良かった」ガサッ

盗賊「(あの野郎が跳んだ先に牧場がなかったら死んでたな。あちこち痛えけど生きてりゃいいや……)」

盗賊「……ん、何だありゃ?」ザッ

盗賊「(地面が淡く光ってる。これは焦げ跡? ってことは遺体があった場所か)」

盗賊「(妙な紋様もあるな。あの野郎、儀式でもしたのか? やっぱりまともじゃねえな)」

ズダンッッ!

盗賊「!?」クルッ

白騎士「落ちた時は少々肝を冷やしたが、そこまで運ぶ手間が省けたな」
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/21(水) 20:23:32.38 ID:rDYNLnmxO

盗賊「……早かったな。願いごとは唱えたかい?」

白騎士「願いとは叶えるものだ。唱えるだけでは叶わない。私の願いはそう安いものではない」

盗賊「……その願いってのは何人殺せば叶うんだ。そこまでして叶えたい願いってのは何なんだよ」

白騎士「直に分かる。ここからが戴冠の戦だ」ザッ

盗賊「(相変わらず何言ってんのか分かんねえ。輪転器が狙いじゃねえのか?)」

盗賊「(そもそも何で俺と戦う必要がある? あの爺さんに殺せって命令されたのか?)」

白騎士「冠を戴くのは勝利者のみ」ブシュッ

盗賊「(……まあ、それはいい。それより、何であの出血で動ける。歩くたびに甲冑から死が噴き出てーー)」

白騎士「往くぞ」ダンッ

盗賊「(鎧通しでぶっ刺した。心臓も貫いた。それなのに、まだこんな動きが出来んのかよ)」
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/21(水) 22:40:57.74 ID:rDYNLnmxO

白騎士「………」グオッ

ブンッッ!

盗賊「(さっきと同じだ。ぶん殴るような大振り。これを避けてもう一度中にーー)」

白騎士「先の攻撃に眼が慣れたようだな。撒かれた餌とも知らずに」

盗賊「回っ…くっ!!」

ザンッッ!

盗賊「…はぁっ…はぁっ…くそっ…」ガクンッ

白騎士「(咄嗟に身を捩ったようだが傷は深い。だが、眼は生きている)」

白騎士「(要らぬ小細工をされると厄介だ。もう一押し、際の際まで追い詰める)」ダンッ

盗賊「(ッ、気を保て集中しろ。大きく動くな小さく躱せ。まだ終わらねえ、勝ち目はある)」
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/21(水) 23:37:15.71 ID:rDYNLnmxO

白騎士「(眼が変わったな)」ズッ

盗賊「(突き。よく見える。これは誘いだ。飛び込んだ瞬間に肘を曲げて背中を刺すつもりか)」

白騎士「(……縦ではなく横に動いた。この程度の誘いには乗らんか)」

白騎士「(深傷を負えば勝負を急くだろうと思ったが、中々に冷静な男だな)」

盗賊「…ハァッ…ハァッ…」ジャリッ

白騎士「(諦めた様子は微塵もない。まだ勝とうとしているのか、面白い)」ヒュンッ

盗賊「(野郎、さっきとはまるで違うじゃねえか。一撃の力押しを止めて繋げて来やがった)」

ザシュッッ…ジリッッ…

盗賊「(ッ、しかも途切れねえ。これを全て躱し切るのは無理だ。どうしても小さいのを貰っちまう)」

盗賊「(このままじゃ受けてちゃマズい。何とかしてえけど、ああもくるくる舞われたら付け入る隙もねえ)」
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/21(水) 23:43:07.79 ID:rDYNLnmxO

白騎士「(眼が変わったな)」ズッ

盗賊「(突き。よく見える。これは誘いだ。飛び込んだ瞬間に肘を曲げて背中を刺すつもりか)」

白騎士「(……縦ではなく横に動いた。この程度の誘いには乗らんか)」

白騎士「(深傷を負えば勝負を急くだろうと思ったが、中々に冷静な男だ)」

盗賊「…ハァッ…ハァッ…」ジャリッ

白騎士「(諦めた様子は微塵もない。まだ勝とうとしているのか、面白い)」ヒュンッ

盗賊「(野郎、さっきとはまるで違うじゃねえか。一撃の力押しを止めて繋げて来やがった)」

ザシュッッ…ジリッッ…

盗賊「(ッ、しかも途切れねえ。これを全て躱し切るのは無理だ。どうしても小さいのを貰っちまう)」

盗賊「(このまま受けてちゃマズい。何とかしてえけど、ああもくるくる舞われたら付け入る隙もねえ)」
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 00:39:28.96 ID:kbFSV2H3O

白騎士「(この眼、機を窺っているな)」

白騎士「(私にも時間はない。何もさせぬまま、このまま押し切る)」グンッ

盗賊「(ちっ、まだ上がんのかよ。くそっ、速過ぎる。これ以上は避けきれねえ……)」グラッ

白騎士「(血を失いすぎたか。捉えたぞ)」

グサッッ!

盗賊「………」ガクンッ

白騎士「右肩を貫いた、利き腕はもう使えまい。この戦、私の勝ちだ。後はあの場所ーー」

盗賊「籠手は右手にあるからな。こうするしか方法はなかった。膝を突いたのは隠す為だ」

盗賊「俺の持ってる爆弾は小せえし威力も高くない。でもな、近距離で二つ三つ爆発させれば話は別だ」
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 01:20:04.03 ID:kbFSV2H3O

白騎士「何?」

盗賊「……あんたはすぐに鞭を引き千切ったけど、巻き付いた部分は首に残ってる」

盗賊「鞭の先には爆弾を括り付けてある。甲冑を着けてても首を吹っ飛ばせるくらいにはな」ジュッ

白騎士「!!」バッ

盗賊「今更取ろうとしても遅えよ」ヒュッ

白騎士「(蹴り飛ばして距離をーー)」

盗賊「(このままじゃ俺まで巻き込まれる。後ろにーー)」

ドガンッッ!

盗賊「…はぁっ…はぁっ…危ねえ」

盗賊「(タイミングが良かった。跳んだ瞬間に蹴り飛ばされてなかったら巻き込まれてたな)」
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 20:46:41.08 ID:yQJdRAdIO

白騎士「(この眼、機を窺っているな)」

白騎士「(だが、私にも時間はない。何もさせぬまま、このまま押し切る)」グンッ

盗賊「(ちっ、まだ上がんのかよ。くそっ、速過ぎる。これ以上は避けきれねえ……)」グラッ

白騎士「(血を失いすぎたか。捉えたぞ)」

グサッッ!

盗賊「………」ガクンッ

白騎士「右肩を貫いた、利き腕はもう使えまい。この戦、私の勝ちだ。後はあの場所にーー」

盗賊「こうするしか方法はなかった。左手さえ動けば着火出来るからな」

白騎士「……何?」

盗賊「俺の持ってる爆弾は小せえし威力も高くない。でもな、近距離で二つ三つ爆発させれば話は別だ」
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 20:51:08.50 ID:yQJdRAdIO

白騎士「だから何だとーー」

盗賊「あんたはすぐに鞭を引き千切ったけど巻き付いた部分は首に残ってる」

盗賊「その鞭の先には爆弾を括り付けてある。爆発すれば甲冑を着けてようが首を吹っ飛ばせる」ジュッ

白騎士「!!」バッ

盗賊「今更取ろうとしても遅えよ」ヒュッ

白騎士「(蹴り飛ばして距離をーー)」

盗賊「(このままじゃ俺まで巻き込まれる。後ろにーー)」

ドガンッッ!

盗賊「…はぁっ…はぁっ…危ねえ」

盗賊「(タイミングが良かった。跳んだ瞬間に蹴り飛ばされてなかったら巻き込まれてたな)」
393.88 KB Speed:0.2   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)