養殖ワ級

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/24(土) 23:28:25.92 ID:tl20mveXo
>長門「……食べた。食べたぞ。本当に食べてる! お前たちどこから食べてるんだそれ! 歯の隙間から吸い込むなんて気持ち悪いぞ!」

>長門「その頭、仮面とかではなく本当に頭だったんだな! はは、すこぶる気持ち悪いな!」

>長門「しかし……食べてくれた。食べてくれたぞ……! ……めかぶだったか! お前たち、めかぶなんて食べていたのか!」


この辺の長門のツッコミが面白いwwwwww
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/06/26(月) 21:09:14.91 ID:nrD/AAxIo
訂正

>>36

× 長門(……それも駄目だな。結局は金がかかる。大淀に書類を偽造したとしても、今度は潔白の大義名分を失ってしまう事になる)

○ 長門(……それも駄目だな。結局は金がかかる。大淀が書類を偽造したとしても、今度は潔白の大義名分を失ってしまう事になる)

>>39

× 長門「私も体力には自身のある方だが、それではワカメ採りだけで一日が終わってしまう。ワ級の世話をする時間が取れないぞ」

○ 長門「私も体力には自信のある方だが、それではワカメ採りだけで一日が終わってしまう。ワ級の世話をする時間が取れないぞ」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 21:11:33.92 ID:nrD/AAxIo
吹雪「ゴーヤさん! 実はですね、ちょっとお話したいことが……」


伊58「……っと、その前に。ひとつ確認させてくだち」

伊58「吹雪ちゃんの横にいる麦わら帽子……顔がよく見えないけど、誰?」


長門「むっ……」


伊58「ゴーヤたちは今、執務室に入り浸る怠惰でアホな戦艦空母勢と抗争中の身でち」

伊58「だからその麦わらがもし、戦艦や空母だったなら……たとえ吹雪ちゃんの話でもゴーヤ達は聞くわけにはいかない」

伊58「見たところ、とても吹雪ちゃんの姉妹艦には見えない背丈と胸だけど……もしかして、変装した赤城や大和じゃないんでち?」


吹雪「え……それは……その……」

長門「安心しろ吹雪。私は赤城でも大和でもない」

吹雪「でも戦艦じゃないですか」

長門「それはまあそうだな」

吹雪「……どうします? 何か誤解されてような気がしますよ?」

長門「ここまで来て引き下がるわけにもいかない。それに素性を隠してきたわけでもないからな」ファサ

長門「長門だ。潜水艦の諸君、頼みがあってきた」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 21:15:53.59 ID:nrD/AAxIo
伊58「……やっぱり戦艦でち!」

呂500「偽装工作は国際法違反ですって!」

伊14「そーだそーだ! 卑怯だぞ長門! 捕虜待遇受けられると思うなよー!」

伊19「それが戦艦のすることなの! 小賢しいのね!」


長門「待て。落ち着いてくれ。私はただお前たちに話を聞いてもらうために……」


伊168「だから話なんて聞かないったら! どうせまた私達をコキ使うつもりなんでしょ!」

伊13「私達に不要な出撃を続けさせた恨み……忘れはしません……」


長門「それは謝る! だから、どうか話だけでも聞いてくれ! めかぶが必要なんだ! お前たちの力を借りたい!」


伊401「めかぶ……? 何言ってるんだろ……?」

伊8「今度は流言による攪乱をしかけるつもりみたい……。なんて小狡い」

伊14「その手には乗らないよ! さっさと帰ってよめかぶ戦艦!」

伊19「豆も投げてやるのね! まるゆ、豆持ってきて!」

まるゆ「は、はぁい!」

伊26「ニムたちは労働者の敵なんかに絶対降伏しないんだからー!」

伊58「上層部は無能揃いのアホ集団でち! はやく帰れポンコツ戦艦ー!」


長門「何っ! 無能のアホとは提督の事を言っているのか! 提督への暴言は謹んでもらいたい!」



吹雪「待って! 待ってください! 双方ストーップ! 落ち着いてくださーい!」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 21:20:02.91 ID:nrD/AAxIo
吹雪「ゴーヤさん、長門さんはなにも和平を申し入れに来たわけじゃありません! 個人的な願いを聞いてもらうために来たんです!」


伊58「そんなの関係ないでち! ゴーヤたちはもう上の命令は一切聞かないつもりなんだから!」


吹雪「だから命令じゃないんです! それに、長門さんのお願いは潜水艦のみなさんの為にもなるはずなんです!」


伊401「……私達の為になる? 本当かな」

伊19「騙されちゃだめなのね。どうせまた適当に理由つけてオリョールに駆り出されるに決まってるの!」

伊26「もう中破するまで入渠せずに出撃するのは嫌だよー……」

呂500「戦艦たちはオリョールの対潜部隊の怖さを知らないんですって……。あいつらめちゃくちゃ強肩ですって」

伊14「海上からファストボールで一直線に爆雷を当ててくるからね……」

伊13「私はただの速球だと思っていたら……チェンジアップで……それでやられました」

伊168「……結局、上は私達の苦労がわかってないのよ。だからスケジュール調整をすっぽかしたりするのよ……」

伊58「その通りでち……。ゴーヤたちは命令されるままに動くだけの駒じゃない。疲れもすれば痛みもある。それに恐怖だって感じるんだから……」

伊8「……もうオリョール……行きたくないね……」

呂500「うん……。怖い。それに極稀に起こる制海権取る前にろ号が終わるハードラック、もう見たくないですって……」

伊401「あれ起こっちゃうとどうしようもないからね……」

伊168「本当よ……。制海権の為だけにバシー用の艦隊に組み替えるのも面倒だから、結局私達の連続出撃でゴリ押しさせられるのよ……」

伊19「潜水艦はいつだって尻拭いに使われるのね……。とんだ貧乏くじなの……」



吹雪「それにもしかしたら……、みなさんはオリョールに行かなくても良くなるかもしれないんですよ!!」



潜水艦一同「……!?」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 21:26:06.56 ID:nrD/AAxIo
吹雪「長門さんは今、ワ級の養殖をしているんです! この鎮守府でワ級を増やそうとしているんです!」

吹雪「ワ級が増えれば、ワ級に関連した任務は全てこの鎮守府内だけで処理する事ができます! ですよね長門さん!」

長門「ああ。そしてワ級を増やすには潜水艦。お前たちの助けが必要だ。だからどうか頼む」

長門「……私に、力を貸して欲しい!」


伊58「………………」


長門「……頼む!」


伊58「………………」


長門「…………駄目か」

吹雪「……ゴーヤさん! これは潜水艦の皆さんにだって……!」

長門「よせ。……行くぞ」

吹雪「長門さん、でも!」

長門「……しょうがないだろう。彼女たちの決意はかたい。それに私も強く言える立場ではないからな。……なに、別の案を考えるさ」

吹雪「……長門さん」


伊58「……二人とも待って!」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 21:29:30.38 ID:nrD/AAxIo
長門「……む?」

吹雪「ゴーヤさん……?」


伊58「い、今の……今の話は本当なんでち?」

伊401「ワ、ワ級の養殖って……そんな事してたの!?」ヒョコ

伊8「頭イカレてるのね……!」ヒョコ

伊168「何考えてるのよ……。鎮守府で深海棲艦を養殖って正気とは思えないわよ!」ヒョコ

呂500「そ、それよりも! ろーちゃんたちオリョールに行かなくてもよくなるって……。本当です!?」ヒョコ

伊8「そこ、詳しく聞かせて欲しい……」ヒョコ

伊14「上が何考えてるのかわかんないけどさ、オリョールに行かなくても良くなるってのは聞き逃せないね」ヒョコ

伊13「はい……そういうことなら……聞いてもいいです」ヒョコ

伊26「ねえねえねえ! 詳しく教えてほしいな!」ヒョコ

まるゆ「お、お茶をご用意しましょうか?」ヒョコ



吹雪「長門さん! 潜水艦のみなさんが……バリケードから顔を出してくれましたよ!」

長門「ああ……!」
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 21:33:47.69 ID:nrD/AAxIo
_________
____
_


伊58「……大体の話は理解できたでち」

伊401「駆逐隊がワ級を捕まえてきて、それを養殖しようと生け簀を作って飼育してて……」

伊168「それでワ級の餌がめかぶで、補給も買い付けもできないから採ってくるしかない……と」

伊19「やっぱり頭おかしいのね」

長門「それは私もそう思っている。だが現に生け簀はこの鎮守府に存在していて、中には腹をすかせたワ級がいるんだ。どうか助けて欲しい。お前たちの力が必要だ」

伊58「……みんな、どうする?」

伊14「まー、ワカメ採りなんてオリョールに比べたら何でもない事だけどさ」

伊13「そうですね……南西諸島まで出かけることもなく……全ては近海で済みますから」

伊8「近海なら敵もまばらだし、爆雷の腕もそんなに高くはないからね。うん……はっちゃんたちの負担は、とても減ると思う」

伊26「でもでも、それでニムたちは本当にオリョールに行かなくても良くなるの?」

呂500「ワカメ採りの予定だったけど、やっぱりオリョールに資源集めに行って来いーってのは、嫌ですって」

長門「……確かに資源のことはある。だが、今は幸いにも備蓄は十分だ。それに諸々の任務も他の海域で代用できるだろう」

長門「私も嘘はつきたくないからな。絶対にオリョールに出撃しなくていいとは言えない。だが、可能な限り出撃しなくても良いように、私も取り計らうつもりだ」

長門「なに、安心してくれ。他の戦艦や空母の協力は取り付けてあるからな。全員に首を縦に振らせてみせよう」

伊58「……それはつまる所、長門を信じろ。ということでち?」

長門「……そうだな。そういうことになる」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 21:37:48.60 ID:nrD/AAxIo
伊58「……ゴーヤたちは無用な出撃の恨みを忘れたわけじゃないの。戦艦の長門には解らないかもしれないけど、長門たちが思っているほどオリョールは穏やかな海じゃないんでち」

伊58「出撃を繰り返せば敵に補足される機会も増えるし、疲労が貯まれば逃げ足だって遅くなる。それに、へ級やト級の投げた爆雷を横に避けたらスライダーだった時の恐怖、長門にわかる?」

伊58「ゴーヤたちは命をかけているんでち。本当は怖いんでち。出来るなら出撃したくないのが本音でち。でも、命令だから。そしてゴーヤたちの働きがみんなの為になると信じているから。勇気を振り絞って行くんでち」

伊58「だから……『スケジュール調整を忘れていた』なんて理由の、何の意味もない出撃なんて絶対にしたくはないし、許せない。……その事を解って欲しいでち」

長門「……ああ、肝に銘じておく。本当にすまなかった。此度の件、完全に私達の落ち度だ。……そのことについても、私から厳に執務室の連中に言っておく」

長門「だからどうか、次に大和が和平を申し入れに来たときは話を聞いてやってほしい。そして魚雷ではなくその思いを、ぶつけてやってほしい」

長門「その上で、お前たちが私達を許してやっても良いと思えたらだが。……また以前のように。いや、以前より良い関係になれたらと思っている」

長門「……私には今の所これしか言えない。あとは行動で示すつもりだ。……だから信じろとは言えないな。私を信じて欲しい」

伊58「……」

長門「……駄目だろうか」

伊58「……………………。じゃあゴーヤも今のところは長門の事……、信じといてあげるでち」

吹雪「ゴーヤさん……! それじゃあめかぶ集めは!」

伊58「……うん、やるでち。みんなもそれでいいよね?」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 21:42:30.53 ID:nrD/AAxIo
伊401「そうだね、私達の負担が軽くなるならやらない理由はないもんね」

伊168「んー。ここに深海棲艦が居るっていうのは気に食わないけど、ワ級の為にオリョールに行かなくても良くなるのは魅力的だと思うわ」

伊19「それにめかぶ集めくらいイクたちにかかれば朝飯前なのね。定時に帰れるって素晴らしいのね」

呂500「もう選球眼鍛えなくてもいいのは嬉しいですって!」

伊14「よーし、そうと決まったら準備しないとね! 久々の海だよ!」

伊13「うん……魚雷も久しぶりに叩くんじゃなくて……撃てますね」

伊26「艤装のチェックもしとかないとねー。しばらく陸に上げとくと調子悪くなるからねー」

まるゆ「ま、まるゆもお手伝いします! 近海くらいなら、まるゆでも何とかなりますから!」

長門「みんな……、やってくれるのか。手伝ってくれるのか……!」

伊58「まぁ、ゴーヤ達にとっても悪くはない話だからね。この辺りが落とし所でち」

長門「そうか……。すまない、助かる。……ありがとう」

伊58「……ゴーヤたちは長門を信じたでち。だから、長門もゴーヤたちを信じておいて。めかぶなんて、いくらでも持ってきてあげるから」

長門「ああ……ああ! 私もお前たちを信じる。ワ級たちに、腹いっぱいめかぶを食わせてやってくれ!」


_
____
_________
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 21:48:13.94 ID:nrD/AAxIo
_________
____
_


吹雪「長門さん、潜水艦の皆さんが了承してくれてよかったですね!」

長門「……吹雪、お前にも礼を言わせてくれ。潜水艦達の協力を取り付けられたのも、お前がいてくれたからだ。……ありがとう」

吹雪「もーよしてくださいよ。私なんてただ波長を変えてみただけなんですから」

吹雪「それに、ゴーヤさんたちが長門さんを信じてくれたのは、長門さんの真っ直ぐな思いがあったからこそです。そして、長門さんが潜水艦寮の前に立ったのは、ゴーヤさんたちの事を信じていたからじゃないですか?」

長門「いや、魚雷で叩かれると思っていたが。……そうか。うん、そうなのかもしれないな。なんかそんな気がしてきた」

吹雪「はい! だから言ったじゃないですか。信じる心が重要なんだって!」

長門「……ふふ。お前には教えられることばかりだ。最近の駆逐艦は皆こんなにしっかりしているのか? これならうちの鎮守府の未来も明るいというものだ」

吹雪「えへへ。……それにしても、ゴーヤさんたちはどのくらいの量を集めて来てくれるんですかね?」

長門「さあてな。ワ級を養うのに十分な量だと思うが、それがどのくらいか見当もつかん。私自身、ワカメがどこでどのくらい採れるのかも知らないしな」

吹雪「そうですねぇ……。日本でのワカメの漁獲高は、年間で約5万トンと言われています」

長門「……なに、そんなに? もう少しで大和の排水量ほどにもなるぞ」

吹雪「そしてその三分の二ほどの約3万トンは、岩手県と宮城県だけで賄っているんですよ」

長門「それは私の排水量とほぼ同値ではないか。いや参った。凄いな岩手と宮城」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 21:51:27.14 ID:nrD/AAxIo
吹雪「もちろんこれは養殖されていて、栽培も収穫も効率化されているからこその漁獲量ですけど。日本全国どこでも採れるワカメですが、主力産業にしている産地はとっても偏っているんです」

吹雪「そしてワカメは、海外では侵略外来種に指定されるほど繁殖力が強いんです。だから人の目の届かない知られざるワカメの群生地って、実は日本近海にいっぱいあるんじゃないかと思います」

長門「ふむ……。となると、潜水艦たちがそういった所から集めれば、ワ級を養う分には困らないということか」

吹雪「その通りです! ワ級が大食いだったとしても、もうめかぶに困ることはないと思いますよ! 漁業権とかは知らないです」

長門「……ふふ、そうか。これでワ級養殖もようやくスタートラインに立てたというわけだな」

吹雪「そうですね! ……それにもしかしたら取れすぎちゃって、私達の食事もめかぶ三昧になるかもしれないですよ?」

吹雪「めかぶのヌルヌルはフコダインっていう物質なんですが、これがとーっても健康にいいものでして」

吹雪「ガン予防にコレステロールの抑制、血圧安定と抗アレルギー作用、そして抗酸化作用にピロリ菌の繁殖阻止! さらには保湿、育毛、整腸作用にダイエット効果まで! 何にでも効いちゃう魔法のヌルヌルなんです!」

長門「そんなに……そんなにか。まるで秘薬か霊薬だな。まったく恐れ入る」

吹雪「はい! だから長門さんもめかぶをいっぱい食べて、健康になっちゃいましょうね!」

長門「いや、食べない。好きではないからな」

吹雪「そうですか」

長門「ああ」


_
____
_________
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 21:54:49.09 ID:nrD/AAxIo
_________
____
_


夜 戦艦寮


陸奥「……えっ! 潜水艦が力を貸してくれたの?」

長門「ああ。そのおかげで、なんとかワ級の餌に目処はついた」

長門「寮に行ったときは私も魚雷で叩かれるかと身構えてはいたんだがな。杞憂に終わった。潜水艦たちは私の話を聞いてくれたよ」

陸奥「あの子達、あんなに荒れていたのに……よく長門の話をきいてくれたわね」

長門「それもこれも、みな吹雪のおかげだ。彼女が潜水艦との間を取り持ってくれたから、私は潜水艦たちと話すことが出来たんだ」

長門「本当に頼もしいやつだ。それに海産物への造詣も深いときている。まったく、今の駆逐艦は凄いな。最高だ」

陸奥「そうねぇ……。吹雪ちゃんのように潜水艦の子たちも、また私たちに心を開いてくれるといいけど……」

長門「それはこれからの私達次第だろう。潜水艦たちは見ている。……もう二度と、彼女たちを裏切るような事はしてはならない」

長門「だから……そうだな。暫くの間はワカメ採りに従事してもらうが、それが終わったとしても、オリョールへの出撃を潜水艦だけに頼るのは止めるよう働きかけるつもりだ」

長門「今のような大規模作戦の間の閑散期には、艦種によって多忙な者と暇な者とで落差があると以前から思ってはいたんだが」

長門「今回の件で思い知らされたよ……。やはり皆で助け合うべきだ。潜水艦一手に任せていた諸々の任務を、艦種を越えて割り振るよう提案しようと思う」

長門「まぁ……和平を申し込んでいた以上、大和や他の連中もそういったことは考えているのだろうが。とりあえず、私からも言ってみるつもりだ」

陸奥「うん……確かにそうね。潜水艦の子たちだけに無理をさせすぎたわ」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/26(月) 21:57:36.05 ID:nrD/AAxIo
長門「燃費や弾薬から見れば、効率的ではないがな。だが……、なんというのかな。私達艦娘は艦種の垣根を越えて、もっと対等であるべきだと思う」

長門「今日、潜水艦たちが話を聞いてくれたことも。めかぶの問題を解決できたことも。私がめかぶにやたら詳しくなったことも。皆が私に力を貸してくれたからだ」

長門「だからこそ、どちらがどちらを使うという関係であるべきではない。私達は艦娘。全員が苦楽を共にする戦友なんだ。互いに手を取り合っていきたい」

陸奥「……長門、なんだか今日一日で随分と立派になっちゃったわね」

長門「そうか? うん……そうかもしれないな。加賀の言ったとおりだ。執務室で麻雀や桃鉄大会をしているよりは、確かに有意義な経験をしている気はする」

陸奥「……ふふ。まぁ、楽しんでいるのならいい事だわ。……で、明日からは何するの?」

長門「それはもちろん、ワ級の繁殖方法を探るさ。養殖はようやくスタートラインに立ったばかりだ。やるべきことは山ほどあるだろう。何をすればいいかは解らないが」

陸奥「そ、ならはやく寝ないと。いつまでも談話室でさくま相手に99年プレイを続けている場合じゃないでしょ?」

長門「ああ。だが、もう少し待ってくれ。盛岡に着きそうなんだ。知っているか? 岩手はワカメの産地でな、私くらいの量が毎年採れるんだ」

陸奥「電気消すわよ。はやく部屋に帰りなさい」

長門「ええい! 待て! まだ消すな!」


_
____
_________
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/26(月) 21:58:10.50 ID:nrD/AAxIo
とりあえずここまで
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/26(月) 21:59:05.93 ID:m8P6A+Yj0
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/26(月) 22:02:04.67 ID:MYw0Pb9A0
イイハナシカナー?
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/26(月) 22:28:18.20 ID:joNIpY3A0
だから何で吹雪はそんなにめかぶ(わかめ?)に詳しいんだよwww
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/26(月) 23:49:32.42 ID:d7SmihLI0
いい話になってるがきっかけはおかしい事を忘れてはならないw
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/27(火) 00:40:11.03 ID:fNL18KMQo
おつ
えっ、オリョールの海ホームランダービー?(乱視)
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/29(木) 04:33:32.24 ID:l7Eh5UwV0
>長門「いや、食べない。好きではないからな」

>吹雪「そうですか」

ここでついに腹筋が弾けたw
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/30(金) 01:18:39.77 ID:QaKJgl82O
吹雪のワカメに対する知識量の凄さに吹いた
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/30(金) 20:14:11.98 ID:G73akEqf0
そもそも昆布全体が飯なんじゃないのかねw
ワ級ってウミウシに似てるし
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/30(金) 20:15:50.58 ID:G73akEqf0
ワカメだったw
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/30(金) 22:03:57.54 ID:N9GCCT5Wo
_________
____
_


翌朝 生け簀


長門「ほら、食べろ」


玉男「♪……♪♪♪…♪♪♪…♪」ズゴゴゴゴ

玉美「♪♪……♪…♪♪♪……♪」ズゴゴゴゴ


長門「ズゴゴゴゴて。掃除機かお前は。まったく、大した吸引力だ」

長門「……ふーむ、しかしその歯はそうやって使うものだったのだな。めかぶを強力な吸気で歯に吸い付けて、その力で歯が刻み、細かくなっためかぶを歯の隙間から吸っているのか」

長門「恐らく並んだ歯の向こうに、気道やら食道やら胃や肺があって吸い込んでいるのだろうが……。そんな吸い込み続けられるものか? 本当に掃除機なのではないか?」

長門「しかし、私がめかぶを刻んで与えなければいけないと思っていたが、これは手間が省けたな。とりあえずめかぶをそのまま近づけてみて良かった。新たな発見だな」


玉男「♪……♪…♪…♪♪♪……」ズゴゴゴゴ

玉美「…♪……♪……♪♪…♪♪」ズゴゴゴゴ


長門「……思いの外うるさいな。ええい、もう少し静かに食えないのか! 外でもこんな音を立ててめかぶを食っているのか? はしたないぞ!」

長門「……そういえばリランカ島を二度と深海棲艦の住めない焦土にしてやろうと出撃した時、確かにこの音を聞いた記憶がある。……その時は全員が一斉に大鳳の方を見たが、悪いことをしたな……」

長門「大鳳の奴、『私じゃないです! ガス漏れじゃありません!』と言ってな。顔を真っ赤にして泣いていたぞ。まったく、乙女に恥をかかせるとはお前たち。……まあいい」

長門「お前たちがこうしてめかぶをたらふく食えている通り、餌の問題は解決した。見ろ、このワカメの山を。潜水艦たちに感謝して欲しい」

長門「まずは絶食で落ちた体力を戻して欲しい所だが……、お前たちの本分も忘れないでもらいたい。そう、繁殖だ」

長門「私はワ級の事などわからんが、恐らくは牛や豚のように繁殖するものなのだろう。そうだろう? そうだな? そうでなくては困る」

長門「そこでだ。四の五のは言わない。子をなせ。そして増えろ。そのために私が何をすればいいのか、教えて欲しい」


玉男「♪…♪…♪…♪…♪…♪…」ズゴゴゴゴ

玉美「…♪♪♪♪……♪♪………」ズゴゴゴゴ


長門「……やれやれ、食事に夢中か。無理もない。まあ喋れもしないが。……しょうがない、これも自分で考えるしかなさそうだな」
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/30(金) 22:09:45.78 ID:N9GCCT5Wo
長門「ふむ、繁殖。繁殖か……。つまりは恋に落ちるという事だとは思うが、ストレートに言えば交尾をしてくれなくては始まらない」

長門「交尾……。うん、ちょっと直接的すぎるな。何となく恥ずかしい。ここはやはり恋に落ちるという事にしておこう」

長門「で、この一組のワ級が恋に落ちるためには、どのような事を……。……ん?」


玉男「♪………♪…♪♪♪…♪♪」ズゴゴゴゴ

玉美「…♪…♪…♪♪…♪♪……」ズゴゴゴゴ


長門「……………いや、待て。お前たちひょっとして……どっちもメスなんじゃないのか?」

長門「……その乳。その腹。その華奢なボディライン。これはどう見てもメスだろう。……おいおいおい。参ったぞこれは」

長門「いや、ワ級にオスとかメスとかあるのか知らないが。……これはどう見ても男のそれではない」

長門「……うん、ちょっと待て。どうしろと言うのだ。ふざけるなよ明石、これは繁殖以前の問題だろう!」

長門「っく、誰もこれに気づかなったのか? 私でさえも? ……私達はもしかしたら、始めからとんでもないミスを侵していたんじゃないか?」


玉男「♪………♪♪♪♪……♪♪」ズゴゴゴゴ

玉美「♪♪…♪…♪♪♪♪……♪」ズゴゴゴゴ


長門「……ここまでか。女同士で子を作るなど、どう考えても無理だ……」

長門「……いや、待て。……『始める前から諦めてどうする』。たしか武蔵はこの養殖を始める時、そんな事を言っていたはずだ……」

長門「……うん、そうだな武蔵。私はお前を失望させる所だった。挑戦もせず、あがきもせず、諦めるなど……それは艦娘に似つかわしくない行為だ」

長門「私達はいつだって挑戦し、あがき、そして常に勝利してきた。深海棲艦が一日で元気いっぱいピンピンになる頃から、もう基地航空隊だけでいいだろって作戦、そして輸送して主力を叩いてってお前これは二海域じゃないのかと言いたくなるような決戦までだ」

長門「……ふっ、目が覚めたよ武蔵。……ああ! 私は諦めない、諦めるものか。諦めるにしても、せめてあがいてみせてからだ」

長門「そうと決まればこうしてはいられないな。……どれ、ここはアイツに聞いてみて、こういう問題に詳しそうな奴を紹介してもらうか」


_
____
_________
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/30(金) 22:16:44.21 ID:N9GCCT5Wo
_________
____
_


庁舎


卯月「こ、こうぴょん?」

青葉「あーいいですねー! じゃ、ピースをお顔に近づけてー」

卯月「んー、こんな感じぴょん?」

青葉「もっと! 両手のピースがほっぺたにくっつくくらいにお願いします!」

卯月「……できたでっす」

青葉「そこで目線を上に! 白目をむく直前くらいまで!」

卯月「んぅ……」

青葉「そうそう! で、最後はお口をだらしなく開けてください! 舌も出しちゃって! でも少し笑顔で! ハアハア言いながら!」

卯月「んむむ……」

青葉「完璧です! いい顔ですねー! 可愛いですよー!」パシャ

長門「青葉。青葉はいないか」

青葉「はい? ああ、どーも長門さん! どうしたんです?」

長門「ちょっと聞きたいことが……ああ、仕事中か。すまなかった、先にそちらを済ませてくれ」

青葉「いえいえー。広報の仕事ではないですし、もう終わりましたから! はい卯月ちゃん、飴玉です。また撮らせてくださいね!」

卯月「ありがとぴょん!」

長門「……ふむ、卯月をカメラで撮っていたのか」

青葉「はい! 今日は非番なんで、鎮守府を回って色んな子たちをカメラに収めてたんですよ」

長門「ほう。休みに皆の事を。青葉は本当にカメラが好きなんだな」

青葉「……んー、カメラといいますか、皆のことといいますか。ほら、青葉たちっていつ沈んじゃうかわからない所もあるじゃないですか」

長門「……そうだな。たしかにその通りだ。うちの鎮守府では幸いにもまだ戦没者はいないが、常に危険はある。艦娘とはそういうものだ」

青葉「はい……。だから……、そんな事にはならないとは信じていますが、もしそうなった時のために。残しておきたいんです。みんなの事をアルバムに」

長門「……そうか。ふふ、うん。いい趣味してるな」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/30(金) 22:20:54.61 ID:N9GCCT5Wo
青葉「それで、青葉に何の御用ですか? あ、もしかして長門さんも一枚撮って欲しいとか? なにやらいつもと違う出で立ちですし」

長門「いや、そうではない。実はな、少し尋ねたい事があってきたんたが」

青葉「はい? なんでしょう?」

長門「その、うまく説明しづらいんだがな。女同士で子を作る方法を知っている者はいないだろうか」

青葉「…………ちょっと待って下さいね。……え、もう一度お願いします」

長門「女同士で子を作る方法だ」

青葉「……それはガチなやつですか?」

長門「ガチ? うん、まあ私は本気だな」

青葉「……っえー……、んー……ちょっと青葉もカミングアウトを受けるのは初めての経験ですから。こういう時、どういう顔をすればいいのか解らないんですけども」

青葉「……んー、でも今の時代、そういう悩みを抱えた人も大勢いると思いますし。社会もようやくそういった人たちを受け入れられるようになってきましたから」

長門「なに、そうなのか?」

青葉「はい! でもまだまだ問題もあるとも聞きますし、本当大変だと思います。青葉は皆が笑って暮らせるような社会を望みますけどね」

長門「ああ。その通りだな。私達もその平和を守るために頑張らねば……。で、誰か心当たりはいないか?」

青葉「……んー、そうですね。方法を知っているかは解りませんが、そういう事に詳しそうな子なら心当たりがありますよ!」

長門「本当か。いや、良かった。さすがは情報通だな。頼りになる」

青葉「今の時間でしたらー、そうですね。間宮さんの所でコーヒーでも飲みながら原稿を描いていると思います。ついてきてください!」

長門「すまない、本当に助かる。……やはりこういう事は一人で悩まず、誰かに相談するべきだな」

青葉「そうですね、一人で抱え込むには大きすぎる問題ですから。……で、お相手は? 誰なんです?」

長門「相手? ワ級だが」

青葉「深海棲艦ですか! え、敵!? なんかもうロックですね!」

長門「そうか?」


_
____
_________
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/30(金) 22:24:40.92 ID:N9GCCT5Wo
_________
____
_


食堂間宮


秋雲「……っんー、あーもう全っ然ダメ。なーんも浮かばない。……秋雲さんもしかして、才能枯れちゃった?」

秋雲「……いやいや、どーするのこれ。ネームも何も手がつかないって、初めてだよこんなの〜……」

秋雲「印刷所間に合うかなぁ……。こりゃ早期割りはまず無理だし……、また武蔵さんのツテに頼って、刷ってもらうってのもなぁ〜」

秋雲「……あーもう。すいませーん、間宮さん。コーヒーおかわりお願いしていいっすか〜……」


青葉「あっ! いましたいました! あーきぐーもーちゃん!」


秋雲「んん? やー青葉さん。どーしたの?」

青葉「秋雲ちゃん秋雲ちゃん! 実はですねー、秋雲ちゃん相談したいって方いるんですが。お時間ありますか?」

秋雲「え〜何、相談ー? ……んー、今ちょっと立て込んでんだよねー……」

青葉「そうなんですか? それにしてはどの画紙も白紙のようですけどー」

秋雲「うっ……、それはまぁ……ね。こう、アイディアが出てこなくさ……」

青葉「あーつまりスランプって奴ですね! この時期に大丈夫なんですか?」

秋雲「大丈夫かなんてこっちが聞きたいよぉー……。まぁギリッギリ大丈夫、とまだ言える時期。……かなぁ」

青葉「……でもこの惨状じゃ落としちゃいますよ? ペーパーで誤魔化す気なんです?」

秋雲「そ、それだけはこの秋雲の同人魂にかけて! ない! ……と、言いたい所なんだけど……いやー秋雲さん、今回ばかりは本当に大ピンチで……」

青葉「……なにやら重症のご様子ですねぇ。こういう時は焦ったらダメなんですよ? つまり、気分転換が必要だと青葉は思うのです!」

秋雲「……気分転換ねぇ、だから相談に乗れって?」

青葉「はい! ご明察ですー!」

秋雲「……んん、まー確かに。このままだとなーんにも進みそうにないし。……しょうがないなぁ」

青葉「それはOKって事です? ですよねですよね?」

秋雲「はいはいオッケーオッケー。もー青葉さんには敵わないよ……。まぁ、絵描き教えてほしいとかそういうのでしょ? 誰なの? 駆逐の子?」

青葉「長門さーん! オッケーですよー! 入ってきてくださーい!」

長門「そうか。それは良かった」

秋雲「ぅえ゛ぇぇ!?」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/30(金) 22:29:15.69 ID:N9GCCT5Wo
秋雲「え? えぇー……? 相談相手って長門さんだったの!?」

長門「ああ、……変か?」

秋雲「……いやー、てっきり駆逐の子が絵描きについて聞きたいのかなーって……ええ? じゃあ長門さん、絵を描きたいわけ?」

長門「いや、そうではないが」

青葉「秋雲ちゃん。長門さんはですね、とーっても重大なお悩みを持って、ここに来られたのですよ?」

秋雲「へ? 重大なの?」

青葉「とーっても重大です。で、そういう本を読んだり描いたりしている秋雲ちゃんを、青葉が紹介させていただいたというわけです」

秋雲「ん? んん? 話がよく見えないんだけどさぁ……。なに? 同人の話なの? おすすめ本知りたいとか?」

青葉「……この話はひじょーにセンシティブかつクリティカルなお話なので、秋雲ちゃんは細心の注意を払って聞いてあげてくださいね?」

秋雲「え、えぇ……? なんかすっごい重そうなんだけどぉー……」

青葉「長門さん。秋雲ちゃんはその手のお話のプロですから、ドーンと胸を借りてお話してみてください! 良い手がかりが掴めるように、青葉も祈っていますから!」

長門「ああ、ありがとう青葉。本当に助かったよ」

青葉「それじゃ、青葉はこれにて! お二人とも、幸運を祈ります! では!」タタタッ

秋雲「……」

長門「……」

秋雲「……あのぉー、まず何か頼みます?」

長門「ん? ああ、そうだな。じゃあいちごオレを頼む」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/30(金) 22:33:01.37 ID:N9GCCT5Wo
伊良湖「はいこちら、コーヒーといちごオレですー」


秋雲「あ、どーもどーも」

長門「うむ、ありがとう」

秋雲「……で、そのー……お話って何なんです? ……まあこの秋雲さんに聞くって事は、そういうお話なんでしょうけど」

秋雲「……んまぁ〜、確かにねぇ。長門さんがそういう本に興味持ってたって、見方によっちゃあイメージ壊しちゃうのかなぁ」

秋雲「んでも、恥ずかしがらなくてもいいんですよ。もー今はそういうのも溢れてる世の中だし。……ま、受け入れられてるとは言えないかもだけど、重く考える事はないんじゃないですか?」

長門「ふむ、そうなのか。青葉も同じような事を言っていたな。お前たち二人が言うのならそうなのだろう」

長門「実はな、私は女同士で子を作る方法を探っているんだ。青葉は秋雲がそういう事について詳しいと言っていたんだが、解るだろうか?」

秋雲「……ありゃ〜、こりゃ驚いたよ。え、何々? TS物の話だよね? それとも生やすだけ? 生やすだけだと玉をつけるかつけないかで喧嘩するよね? 意外とマニアックな所突いてくるねぇ〜」

秋雲「長門さんはもっとこう、ノーマルカプとか王道が好みだと思ってたんだけど。ん〜そっかそっか! 確かに言い出しづらいのも解るわぁ〜」

秋雲「でもね、安心して欲しいです。そういうやや特殊なジャンルはね、同好の士の濃ゆい繋がりがあるもんだから。本っ当に好きな者同士が集まってるもんだから」

秋雲「それにある意味ね。広く受けるのを最初から度外視してね、最大公約数的な描き方や話作りをしないで好きに描く人が多いから、純粋さを感じやすいジャンルだと秋雲さんは思うよ。マジで」

秋雲「もー秋雲さんもね、同人長くやってるとさぁ。何が受けるのかとか考え出しちゃってね。いやそれはそれで重要なんだけども、でも初心忘れちゃってるっていうかさ。自分が本当に描きたいものって何だったっけとか」

長門「……ちょ、ちょっと待ってくれ。言葉の洪水を浴びせるのはやめてくれ。一つも理解できんぞ」

秋雲「……へ? 違った? TSの話じゃないの?」

長門「私はただ、ワ級が女同士でどう繁殖するかについてだな……」

秋雲「……え、異種姦? いや獣姦か。んー獣姦ですかぁー。そうなるとだいぶディープなジャンルだねぇ。正直言ってあんまり見かけないよね」

秋雲「いやもちろんさ。浜風が犬と演習したりさ、逆に浜風が犬になって提督と演習してたりするものもあるけどさ。あれってどうなのかな? 浜風が犬になるってそれもう最初から犬で良くないかな? 良くないんだろうね」

秋雲「あーでもね、ほらあの巨人と戦う人気漫画あるじゃん? で、その主人公と兵長のカプが界隈では人気なんだけども、なぜか主人公がウナギになって兵長がケツに挿れるっていう、薬でもやってんじゃないのかってシチュもあったりしてさ」

秋雲「そういうのは読んでて勉強になるっていうか、こう頭のネジ外す練習になるよね。うん、秋雲さんそういう意味でもけっこう好きだよ。そっち系のジャンル」

長門「……ええい、まてまてまて。私はウナギの話などしてないぞ。ちょっと説明させてくれ!」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/30(金) 22:36:03.49 ID:N9GCCT5Wo
_________
____
_


秋雲「……え゛え゛ぇぇー!? ほんっとーにワ級の話だったの! マジで!」

長門「ああ……。どうにも話が噛み合わないとは思っていたが……」

秋雲「そりゃあ鎮守府でワ級育ててるなんて、フツーに考えたらあり得ない話だし……。秋雲さんも驚いちゃったよ」

長門「ふむ、確かにそうだな。先に説明すべきだったか。……やれやれ、しかし誤解が解けてよかった」

長門「ではあらためて聞く。私はワ級が女同士で子を作る方法を探している。青葉が言うには秋雲はそういう話に詳しいらしいが、何か知らないだろうか」

秋雲「……んー、秋雲さんに聞かれても、薄い本思考でしか答えられないんだけどもぉ……。やっぱりTSしかないんじゃないかなぁーって」

長門「さっきから何度か言っているが、そのTSというのは一体何なんだ?」

秋雲「トランス・セクシャル。性別転換って事ですよ。男が女に、女が男になるやつだね」

長門「……面妖な事を言うな。まあ確かに、片方がオスになってくれれば世話はないが……とても現実的とは思えん」

秋雲「いやいや、ところがどっこい。これね、現実でもある現象なんです」

長門「なに、本当か?」

秋雲「雌雄同体と言いまして。環境によってオスになったりメスになったりっていう、薄い本みたいなパンチの効いた特性を持つ生物が世の中にはいるのよ」

秋雲「それも海洋生物に多くてね。魚類の約2%はこの雌雄同体って話です。チョークバスって魚なんかは、一日に20回もオスメス変化しちゃったりしてね」

長門「そんなに……。……ふむ、しかし確かにワ級がその雌雄同体であればこの問題は解決するな。そのオスメスを切り替えるにはどうすればいいんだ?」
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/30(金) 22:39:58.65 ID:N9GCCT5Wo
秋雲「んー。普通は繁殖時にペアになるように起こるんだけど、例えば、他の群れと縄張り争いする時にオスが居なかったりすると変化する場合もあるし」

秋雲「まぁ一言で言えば、『ストレス』なんじゃないかなぁ。繁殖への衝動や外敵ってのは、詰まるところストレスだからねぇ。そういうのが引き金になるんじゃないかと」

長門「ストレス……か。ふーむ。となるとワ級にストレスを与えれば、オスになるかもしれないというわけだな?」

秋雲「そそ。ま〜仮定の話なんだけども」

長門「……しかし考えてみれば、今の時点でもワ級はストレスまみれの気もするが。敵に捕まって生け簀に入れられているんだぞ?」

秋雲「ストレスにも種類があるからねぇ。さっきも言った通り、外敵の脅威があって変化したりもするわけで」

秋雲「安全な生け簀の中で、餌も貰えてるって環境じゃあ起こりづらいのかもしれないねぇ」

長門「……つまり必要なのは外敵か。そしてワ級を脅かせ、ということだな。ふむ、……じゃあ駆逐艦を集めて投石してもらうか」

秋雲「いやいや、深海棲艦が投石くらいで生命の危機を感じるとは思えないよ」

秋雲「言っても艦船なんだしさ。投石じゃビックリはしても、『やっべ、子孫残さないと! オスになろ!』っとはならないでしょ?」

長門「そうか。ならば多少手荒に……至近距離に51cm砲を撃ち込むか……それとも陸攻による波状攻撃か……」

長門「……いや待て。生け簀が壊れてしまうぞ。というか更地になる。それに直撃しなくとも衝撃で沈んでしまっては、皆に合わせる顔がない」

秋雲「じゃあ……ここはやっぱり心理戦術じゃないの? 言葉で戦意を削ぐ。投降を呼びかける。降伏を促す。……もう自分たちの命は目の前の敵の手中にある、と思わせる。秋雲さんたちも沢山やってきたからねぇ」

長門「確かにな。敵の泊地を取り囲んで、泊地棲姫が泣いて出てくるまで野次を飛ばし続けたこともあったか……」

長門「しかし、なるほど心理戦術か。うん、それなら被害も出ないし弾薬もかからない。それにワ級が沈む心配もない……」

長門「……いい案だな。青葉が紹介してくれただけのことはある。さすがだな」

秋雲「いやいや、どういたしまして。それに秋雲さんも、ちょっと今の話に興味出てきちゃったよ。……何か新刊のいいアイディアになりそうだし」

長門「と、なると……ワ級にどんな野次を投げかけるかだが……」



大井「……その役目、私にやらせてもらえないかしら」
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/30(金) 22:43:45.35 ID:N9GCCT5Wo
長門「む? ああ、大井か。ようやく喋ったな」

秋雲「やー大井さん。秋雲さんたちのテーブルに座ってずっと無言で本を読んでたけど……今の話聞いてたの?」

大井「ええ、聞かせてもらってたわ。盗み聞きなんて悪いとは思ったけど、……ごめんなさい。聞き逃せなかったの」

秋雲「そりゃまたどうして?」

大井「……だってそのワ級たち、女同士で子作りをしようとしているんでしょ?」

長門「ああ、そうだが。しかし、それで何故……?」

大井「……応援したいの。成功させてあげたいのよ。痛いほどわかるもの、その気持ち……」

大井「……あなた達の話を聞いていて、始めのうちは……ワ級に嫉妬したわ。ううん、許せないって思った。私じゃ出来ないことを、そのワ級たちは出来るかもしれない」

大井「ええ……そうよ、私には出来ない。魚類じゃないもの。無理よ。……だけど、そのワ級たちは女同士で愛し合っていて、そして子供を作れるかもしれないのに、何かの問題で作れないでいるんでしょう?」

大井「そう思った時。ああ、私と同じなんだって。絶望に打ちひしがれているんだなって。……雌雄同体とか、難しいことはわからないわ。でも、ワ級たちにはその希望から、逃げないでいてほしいの」

大井「……それは私にはないものだから。……だから、背中を押してあげたいの。諦めないでほしいの。私にはそれしか出来ないから。……私にはそのくらいの手助けしか、その二人には出来ないから」

長門「……そうか。なんだかよく解らんが、熱意だけはこの長門にもひしと伝わってくる」

秋雲「……そうだねぇ。情熱っていうのかな。秋雲さんも、同人に対して久しく忘れてた感情だよ……」

長門「それに大井は野次の名手だ。いや、トップエースと言ってもいい。深海棲艦を何度も泣かせた実績もある。……私は任せてみても良いと考えている」

秋雲「秋雲さんも賛成。大井さんなら上手くやってくれる気がするねぇ」

長門「わかった。……大井、頼む。お前の力で……ワ級たちに子を作らせてやってくれ」

大井「ええ、任せておいて。……性別なんてくだらない壁を越えて。必ずワ級たちに愛の結晶を身ごもらせてみせるわ」


_
____
_________
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/30(金) 22:44:49.26 ID:N9GCCT5Wo
とりあえずここまで
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/30(金) 23:02:36.34 ID:AUPKlpCsO
冷静に皆狂ってるなw。乙。
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 00:19:25.72 ID:Ab48v38RO
キチ度上がってきたなw
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 00:24:22.01 ID:elK5okcA0
提督あ行しか話せないから残当だな
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 01:23:39.31 ID:udBP7zmeO
ああ、頭のおかしい娘ばっかりなんだな最高だ
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 02:52:42.04 ID:0J9sa2Vho
オモシロヒッ!
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 03:59:48.38 ID:hFD7E3RW0
めっちゃおもしろい
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 09:37:08.53 ID:aI5g11qCo
沈んだ後に遺されるアルバムの写真がアヘピーって卯月的にはどうなのよ
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 14:40:36.89 ID:54GE+zFmO
>長門「確かにな。敵の泊地を取り囲んで、泊地棲姫が泣いて出てくるまで野次を飛ばし続けたこともあったか……」

お前ら人間じゃねえ!!艦娘だけど!
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 16:21:35.39 ID:IL50x0IBo
相対的に秋雲がクッソまともに見えるという終末的異常事態に草を禁じ得ない
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 22:51:30.61 ID:FWsGKbo40
お薬どれくらい増やせばいいんですかね(困惑)
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/19(水) 14:14:29.48 ID:WiZ0uGYOO
クレイジーサイコレズという言葉がここまで似合う大井も珍しい。
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/17(木) 23:13:04.16 ID:qSWKAAlKo
生存
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/31(木) 08:09:14.35 ID:KA23FhUb0
髪の話は提督に効く…
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/27(月) 19:19:37.41 ID:8g/79CytO
マダー?
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/10(日) 01:02:28.37 ID:uJGfHq7A0
まだか?
97.85 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)