二宮飛鳥「ボクはアスカ、二宮飛鳥。バラガン陛下の忠実なる従属官(フラシオン)だ」

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91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/10(木) 21:45:32.56 ID:4ydfEmvH0


アビラマ「小難しいがお前の言いたい事は大体わかった。だがどうして俺たちが現世に向かうと藍染を裏切ったってことになるんだ」


飛鳥「その場の状況がそのまま裏切りを証明することになってしまうからさ」


飛鳥「ボクたちが現世に向かえば“現世にバラガンとその部下が集結する”ことになる」


飛鳥「虚夜宮の側から見れば“バラガンが部下を引き連れ現世に離脱、藍染惣右介に対し離反の意思を示した”。真意は違えどそう捉えられてもおかしくない」


飛鳥「藍染惣右介と少なからず因縁のある陛下なら特にそうだ」


アビラマ「……」


飛鳥「理解してくれとはいわない。ただこれも一つの意見として受け止めてほしい」


アビラマ「確かにお前の言う事にも一理ある。だが俺も大虚の時代から陛下に仕えてきた一人だ、正直今すぐにでも陛下のもとに向かいてえ」


アビラマ「改めて訊くがお前はどう思う。俺たちはこのまま虚夜宮に留まるべきか、それとも現世に向かうべきか、陛下の従属官であるお前の意見を聞かせてくれ」

92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/10(木) 21:46:45.88 ID:4ydfEmvH0


飛鳥「ボクの考えは変わらないよ。宮で陛下の帰りを待つのが得策だと思う」


アビラマ「そうか」


アビラマ「覚えてるか? 少し前にクールホーンがお前と俺たちは陛下の従属官として対等な立場だって言ったよな」


飛鳥「ああ」


アビラマ「仕えた期間は違っても、お前と俺たちは志を共にするバラガン陛下の従属官だと、俺もそう思いてえ」


アビラマ「だがな、俺はどうしてもお前の言ったことが陛下の従属官としての立場から出た言葉だとは思えねえんだ。お前はどこか、陛下から離れた場所で物を言ってるように聞こえちまう」


アビラマ「お前が新入りだからとかそういうのじゃねえ。何だ、上手く言えねえんだが、お前は……」


飛鳥「いや、キミの言いたい事はよくわかる。そしてきっとキミの言いたい事は正しい」


飛鳥「ごめんよアビラマ。やっぱり最初に本当のことを話しておくべきだった」

93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/10(木) 21:51:36.62 ID:4ydfEmvH0


飛鳥「最初に会った時、ボクはキミたちのことを知っていると言ったよね」


飛鳥「あれは名乗り口上でもなんでもないんだ。ボクは“本当にキミたちのことを知っている”」


飛鳥「アビラマ・レッダー。解号は「頂を削れ」。帰刃名は『空戦鷲(アギラ)』」


アビラマ「!!」


飛鳥「可笑しいだろう。キミにしか分からないはずのことをボクが知っているんだ」


飛鳥「これだけじゃない。バラガン陛下のこと、キミたちのこと、他の十刃や従属官のこと、死神のことも滅却師のことも、後の大戦のことも、全て知ってる」


飛鳥「それとボクは破面じゃなくて人間なんだ。何の因果か在るべき別のセカイからこのセカイに飛ばされたらしくてね」


飛鳥「でも、破面ではないとはいえボクにはこのセカイで成すべきことがある。成すべきことを成して元あるセカイに戻るんだ」


飛鳥「ボクの心は此処にある。在るべきセカイに戻るその時まで、陛下の従属官として全ての力を尽くすことをここに約束するよ。この言葉に偽りはない」

94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/10(木) 21:56:35.24 ID:4ydfEmvH0


アビラマ「……」


飛鳥「ごめんなさい、やっぱりこの事はもっと早くキミたちに伝えておくべきだった」


アビラマ「くっくっく。やっぱ面白いヤツだぜお前は」


アビラマ「俺が悪かった。こんな突拍子もないハッタリかましてまで陛下のために俺を説得しようと思ったんだろう」


アビラマ「お前がマジなツラで俺の帰刃名を言い当てて自分が人間だの何だの言い出したときはついお前の言うことを信じちまいそうになったが、お前は一度陛下にお会いになってる」


アビラマ「その時に俺たちのことを陛下に訊いたとすりゃ俺のことについて知っててもおかしくねえ」


アビラマ「よく考えりゃお前の言ってることはごもっともだ。こんな時にわざわざ十刃同士かちあわせる必要なんてねえ」


アビラマ「俺たちが現世に向かったところで陛下の立場が悪化するってのもお前の言う通りだろう」


アビラマ「ちっとは不安が残るが、今回はお前の意見に従うぜ。お前は確かに俺たちと同じ志を持つ陛下の従属官だった」


飛鳥「待ってくれ、ボクは本当に……」


アビラマ「なにボーっとしてんだ、さっさと宮に戻るぞ。俺たちに今できるのは陛下のお戻りを待つことだけだ」


飛鳥「……」


飛鳥(ボクのことは、いずれその時が来たらみんなに伝えよう)


飛鳥(彼らの行く末も、虚夜宮の未来も、今は話すべきではないのかもしれないね)


95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/10(木) 21:59:24.36 ID:4ydfEmvH0


―第2十刃の宮―


クールホーン「んもおおおおおおおおおおお!!! このあたしがノイトラごときにやられたなんて納得いかないのよおおおおおおおおお!!!!」ギリギリ


アビラマ「いでででで! 俺に八つ当たりすんじゃねえ!!」


ジオ「クールホーンもすっかり快復したな」


クールホーン「フフフ、休みすぎたくらいよ。もう霊圧があり余っちゃって仕方ないわ」ギリギリ


アビラマ「だから痛えんだよ! 放せっつーの!!」


飛鳥「紅茶を淹れてみたんだけど、みんな飲むかい?」


ジオ「ん、紅茶か。貰おうかな」


クールホーン「いい香りじゃない。ちょっと前にこっちの鳥頭が淹れた紅茶とは雲泥の差ね。思い出しただけでも吐き気がしてくるわ」


アビラマ「あの時は少し失敗しちまったんだよ。つーかそんなに酷くなかっただろ」


ニルゲ「さすがに灰色の紅茶が出てきた時は何事かと思ったけどな…」


ジオ「パッと見は完全に雑巾のしぼり汁だったもんな。味の方もまあ、アレだったし」

96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/10(木) 22:01:53.87 ID:4ydfEmvH0


アビラマ「はっ、紅茶の上手い不味いなんてのはこの際どうでもいい」


アビラマ「そんなことより分かってんだろうなお前ら。陛下の現世任務の件に関してはアスカの意見に従ってもらうぜ」


ジオ「分かってるって。何回目だよその話」


ニルゲ「でもよ、もしも陛下に何かあったら……」


ポカッ


ニルゲ「いてっ」


ジオ「何もないさ、俺たちが付き従ってるのは誰だと思ってる。神である王に“何か”なんてのはないんだよ。万が一にもな」


アビラマ「ン゛ン゛ッ」


ジオ「ん、どうした?」


アビラマ「いや、何でもねえよ」


97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/10(木) 22:03:47.76 ID:4ydfEmvH0


―現世・空座(からくら)町―


グリムジョー「よォ、見つけたぜバラガン」


バラガン「随分と使いを寄越すのが遅かったのオ。貴様一人で来たのか」


グリムジョー「だったらどうするよ」


バラガン「……」


グリムジョー「……」


バラガン「フン、差し当たっての用は終えた。これより虚夜宮へと帰還する、黒腔を開け」


グリムジョー「あァ? こっちはわざわざてめえを連れ戻しに来てやったってのにどうして俺が……」


ドガッ!!


グリムジョー「ぐっ!?」


バラガン「この儂に口が過ぎるぞグリムジョー。黒腔を開けと言ったのが聞こえんかったか」


グリムジョー「てめえ!!」

98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/10(木) 22:06:01.28 ID:4ydfEmvH0


ウルキオラ「やめろグリムジョー」


グリムジョー「!」


ヤミー「一人で突っ走って行きやがったと思いきやこれだ。あんまり余計なことしたら藍染さんに叱られるぜ?」


ウルキオラ「バラガン、虚夜宮へ帰還する前に一つ訊きたい」


バラガン「何じゃ」


ウルキオラ「俺たちが現世に到着するまでの数日、ここで“誰と会っていた”」


バラガン「何の話だ」


ヤミー「お前いったい何を企んでやがんだ。まさか本当に藍染さんに逆らおうってんじゃねえだろうな」


バラガン「ほざけ、儂の行動の全てはボスの為。貴様らにとやかく言われる筋合いはないわ」

99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/10(木) 22:12:05.19 ID:4ydfEmvH0


ウルキオラ「何にせよこれで大方の指令は終えた、これより虚夜宮へと帰還する」


ヤミー「くぁぁ… ったくつまんねえ任務だったぜ」


グリムジョー「結局“警戒すべき対象”なんてのはどこにもいなかったじゃねえか。てめえの目論見もアテにならねえな、ウルキオラ」


ウルキオラ「ああ、どうやら“到着が遅かった”らしい」


バラガン「……」


バラガン(奴の命令に背いてでも現世に来たのは正解だった)


バラガン(あの小娘の言ったこともまんざら虚言という訳ではないらしい)


バラガン(奴は使える。必ずや藍染惣右介を追い詰めるための儂の牙となるじゃろう)


バラガン(儂がこの手で貴様を殺すまで、精々偽りの王の座にて虚圏の神を気取っているがいい。藍染惣右介)


100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/10(木) 22:13:04.19 ID:4ydfEmvH0
ここまで
プロローグおわり
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/10(木) 22:49:41.31 ID:ctepj7kIO
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/10(木) 23:25:52.18 ID:KfcOwHkCO
あげちゃう
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/11(金) 00:35:33.32 ID:o/L/j8dcO
乙乙
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/12(土) 10:50:43.13 ID:FVjj/Oo6O
風呂場で行われる全裸の口論からハッテンするストーリー
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/17(木) 00:44:01.60 ID:C5H00LED0


数日後 第2十刃の宮


アビラマ「急げアスカ! 食事の準備だ!」


飛鳥「はい!」ダッ


クールホーン「アスカちゃん! そっちのグラスとボトル取ってちょうだい!」


飛鳥「はい!」ダッ


飛鳥(結局あれから、彼らの心配をよそに陛下は無事現世から帰還した)


飛鳥(あんなに慌ただしかったこの宮も、今では別の意味で賑やかだ)


フィンドール「これが新しい“正義のレシピ”か。この完成度ならばきっと陛下もお気に召されることだろう」


ジオ「フィンドール、お前も手持ち無沙汰なら手伝ってくれよ」


フィンドール「俺はこの宮での調理及び給仕関係における最高責任者だ。全体の作業が滞りなく行われているか常に監視しておく必要がある」


ニルゲ「サボりの言い訳に聞こえるぜ…」

106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 00:50:03.68 ID:C5H00LED0


フィンドール「――虚圏の海で育った半虚風トルティーヤ。アロマゾン&ヘルマンティスを添えた反膜色のパエリア。以上が本日のメニューとなります」


バラガン「フム」


クールホーン「長ったらしい料理名ばかりね。それに虚圏に海なんて無いでしょうに」


フィンドール「うるさいぞクールホーン!」


飛鳥「バラガン陛下、お飲み物をお注ぎします」


アビラマ「くくく…」


ジオ「何ニヤついてるんだよ、不気味だぞ」


アビラマ「いやなに、アスカも陛下の従属官として大分サマになったんじゃねえかと思ってよ」


ジオ「そうかもな。あとは戦闘能力さえ身に付けてくれれば言う事ないんだけど」


ニルゲ「うん、美味い美味い」モグモグ


アビラマ「あっ! お前なに勝手に俺の分のメシ喰ってんだ!」

107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 00:52:24.11 ID:C5H00LED0


バラガン「ところで飛鳥。鍛錬のほうは順調か」


飛鳥「はい、まだまだ未熟者ではありますが皆の指導のもと全力で修行に励んでおります」


バラガン「そうか、じゃが無理はするなよ。お前を失うことは我が宮にとって大きな損失となる。己の身を案じて励め」


飛鳥「ありがたき御言葉」


アビラマ「なあ、アスカが来てから日に日に陛下が穏やかになっていくように感じるのは俺だけか」


ジオ「俺もそう思う。最近はめっきり怒らなくなったしな」


クールホーン「あれじゃまるで孫ができて丸くなったお爺ちゃんね」


バラガン「何か言ったかクールホーン」ギロッ


クールホーン「い、いえ、何も…」

108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 01:08:54.73 ID:C5H00LED0


フィンドール「陛下、差し支えなければ本日のお食事に関して評価を頂きたく存じます」


バラガン「何とか及第点と言ったところじゃな、レシピの考案者である東仙要にもそう伝えておけ」


フィンドール「はっ!」


バラガン「そうじゃ、貴様等に支給しておかねばならん物がある。入って来い、ポウ」


ポウ「お持ちしました」ドサドサッ


クールホーン「これは…?」


バラガン「破面用義骸(ぎがい)。死神の仮の肉体である義骸を破面用に作り替えたものだ」


バラガン「これにより霊体ではなく実体を持ってして現世での活動が可能となる」


バラガン「貴様等にも休暇が必要じゃろう。現世に赴く際はこの義骸を使うといい」


アビラマ「休暇ァ!?」


バラガン「何じゃアビラマ、不服でもあるのか」


アビラマ「あっ、いえその、申し訳ありません、驚いた拍子につい声が… 不服など微塵も御座いません」


バラガン「まあよい、この義骸は全員分用意してある。各自支給品を紛失せぬよう自室にて保管しておくがいい」


※義骸(ぎがい)…自らの姿を模した着ぐるみの様な人形。この中に入ることで人間と同じように実体での活動が可能になる


109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 01:16:46.29 ID:C5H00LED0


―第2十刃の宮・大広間―


アビラマ「オイ! 休暇ってなんだよ! 休暇ァ! 休暇だぞ! 陛下の口から休暇などという御言葉が…」


ジオ「うるさいな、落ち着けよ」


クールホーン「ぶっちゃけあたしも驚いたわよ。陛下がこんな大々的に休みを取れ、なんて言ったこと今までなかったじゃない」


フィンドール「不正解、お前たちは少し勘違いをしているな」


フィンドール「陛下はあくまでも“俺たちに休暇が必要”と仰られただけだ」


フィンドール「休暇がいつから始まるか、その日時が指示された訳ではない。陛下の寛大なる御言葉にそう浮かれていては……」


ポウ「明日より二日間自由に休暇を取れ。陛下はそう仰っていた」


アビラマ「二日もだァ!? しかも明日からだと!?」


ジオ「ああもう! 耳元で叫ぶなっての!」

110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/17(木) 01:20:21.00 ID:C5H00LED0


アビラマ「だが複雑だぜ、俺たちはバラガン陛下の忠実なる従属官。陛下の為に尽くす事こそが俺たちの使命、その俺たちが陛下の側から離れて休むってのは…」


フィンドール「ポウの言葉が正しいのなら休暇を取れというその御言葉が陛下の命令ということになる。従わない訳にはいかないだろう」


ジオ「陛下にご確認を取ってきた。確かに明日から二日間休暇を取れということらしい」


クールホーン「決まりね、それじゃあたしはこの休みを有意義に使わせてもらうわ。現世で化粧品漁りでもしようかしら」


アビラマ「現世か、そういや破面化してからは一回も行ってねえな」


ニルゲ「霊体で現世に行っても魂魄を喰うくらいしかやることなかったしな…」


ジオ「アスカはどうするんだ、お前も現世に行くのか」


飛鳥「ボクはそうだね、このセカイの現世に興味が無いワケじゃないけど今はどうにも気が乗らなくてね」


飛鳥「休暇を使って何をするか、少し自分の部屋で考えてみることにするよ」


111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/18(金) 21:39:25.81 ID:ub5/iyF7O
バラガンのフラシオンって誰が一番強いん?
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/18(金) 22:52:46.32 ID:2vQz6Gm+o
強いけどネタキャラなシャルロッテじゃない?
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/19(土) 02:01:40.01 ID:Qy8I9oeeo
強いのはシャルロッテ、ポウ
弱いのはニルゲ、その次にフィンドールってイメージ
アビラマもあそこまで相性が悪くなければまぁまぁ強そう
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/19(土) 04:53:22.93 ID:BfQVEVlBO
砕蜂相手にある程度戦えたジオヴェガ
ゾンビエッタ叩きのめせるクールホーン
バラガンが直々にスカウトしたポウ
こいつらの中の誰かな気がする
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/20(日) 07:55:36.22 ID:qo6aS1zpo
デレプロは現世にあるのか…?
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 13:40:29.81 ID:HR6DJYoc0


休暇1日目 虚夜宮・回廊


飛鳥「理解ったかい、このように現世というのは数多あるヒトの想いが複雑に交錯するセカイなのさ」


リリネット「うーん、全然わかんないけど、なんか面白そうなトコじゃん現世って。あたしもいつかスタークに連れてってもらおっかなー」


飛鳥(休暇の過ごし方も特に思いつかず、ただ虚夜宮の中をフラつくだけになってしまった)


飛鳥(でも、まさか成り行きで第1十刃の従属官であるリリネットとの仲を深めることになるとは思いもしなかったけどね)


飛鳥「しかし、いいのかい? ボクはバラガン陛下から休暇を貰っているから自由に動けるけど、キミはそういうワケにもいかないだろう」


リリネット「なに言ってんの、今日と明日は十刃以外みんなお休みでしょ」


飛鳥「ん、そうなのかい」


リリネット「ちょっと前にあった会議でそう決まったんだってさ。スタークが言ってた」


リリネット「たまには従属官にも休みを取らせろー、ってバラガンが藍染サマに頼んだらしいよ」

117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/20(日) 13:54:48.72 ID:HR6DJYoc0


飛鳥「成程、この休暇は陛下の進言によるものだったんだね。てっきり藍染惣右介の施策だと思っていたよ」


ロリ「ちょっと待ちなさい、今聞き捨てならない言葉が聞こえたわよ!」


リリネット「あ、ロリだ」


飛鳥「破面No.33ロリ・アイヴァーン、だね」


ロリ「今あんた藍染様のこと呼び捨てにしたでしょ」


ロリ「藍染様の右腕であるアタシの前でそんなコト言ってタダで済むと思ってるんじゃないでしょうね」


リリネット「どうせスタークもヒマだろうし、今から現世に連れてってもらおっと。アスカも一緒に行くよね?」


飛鳥「ボクかい? そうだね… まあ、いいか。特にやることもないしご一緒させてもらおうかな」


ロリ「シカトしてんじゃないわよ!!」

118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/20(日) 13:57:36.19 ID:HR6DJYoc0


リリネット「うっさいなー、あたしたち忙しいからまた今度にしてよ」


ロリ「逃げようったってそうはいかないわよ」


メノリ「待ちなよロリ。別にそっちのコも悪意があって呼び捨てにしたワケじゃないだろうし、突っかかることでもないでしょ」


飛鳥「いや、こっちも軽率だった。虚夜宮現当主である藍染惣右介に対しては尊崇の証明として敬称を遣うべきだったのかもしれないね」


飛鳥「ただ、別に彼を蔑むとか嫌忌しているとかそういった意図はないんだ。誤解させてしまったなら謝るよ」


ロリ「ぐぬぬ…」


リリネット「アスカとメノリもこう言ってるしもう行くよ」


ロリ「どうしてアンタが仕切ってんのよ! 第1十刃の従属官だからって調子に乗らないでよね」


ロリ「大体第1十刃なんて毎日寝転がってるだけで会議でも碌にハナシ聞いてないくせに……」


リリネット「ふんっ!」ゲシッ


ロリ「痛ったぁ! 何すんのよこのガキ!」


リリネット「スタークの悪口言うなっ!」


119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/20(日) 14:04:20.08 ID:HR6DJYoc0


―第1十刃の宮―


リリネット「スターーーク!! 起きろーーーっ!!!」


スターク「zzz…」


リリネット「ふんっ!」ゲシッ


スターク「zzz…」


リリネット「もう! 起きてったら!」グイグイ


スターク「zzz…」


飛鳥「どうやら、ボクたちの力量では彼を眠りから覚ますのは難しいみたいだね」


リリネット「ぐぐ… こうなったら最後の手段! キ○タマ蹴とばしてやる!」ドガッ!


スターク「ぐおあっ!!?」

120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/20(日) 14:07:13.21 ID:HR6DJYoc0


スターク「痛っててて… 何なんだ全く…」


リリネット「おっす、スターク!」


スターク「リリネットか、起こす時はもう少し優しく頼むって言ったばかりだろ…」


リリネット「何やっても起きないスタークが悪い」


スターク「それで、俺を叩き起こしてなんか用でもあるのか」


リリネット「そうだった、スターク寝てばっかで暇だろ。やることないならあたしたちを現世に連れてってよ」


スターク「嫌だよメンドくせぇ。つーかあたし“たち”って何だよ」


飛鳥「お初にお目にかかるね。ボクはアスカ、二宮飛鳥。キミはボクの事を知らないだろうけど、ボクはキミのことを知っている」


リリネット「この子アスカって言うんだ、あたしの友達だよ」

121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/20(日) 14:10:44.95 ID:HR6DJYoc0


スターク「アスカ… あー、バラガンとこの従属官か」


リリネット「なあいいだろースターク、どうせ暇なんだから連れてってよー」


リリネット「スタークもこの前藍染サマから義骸?っての貰ったじゃん。一緒に遊びに行こうよ」


スターク「そりゃ無理だ、これでも一応任務中なんだよ。藍染サマにも自宮で待機してろって命じられてる」


リリネット「ええ、そんなぁ…」


リリネット「スタークが無理ならどうやって現世に行けばいいんだろ。あたしの黒腔は不安定だから使うと危ないし…」


飛鳥「ボクも色々とワケがあって黒腔は使えないんだ。どうしたものか…」


スターク「……」


スターク「分かった分かった、メンドくせぇけど俺が黒腔を開く。開くだけなら待機命令を破ったことにはならねえだろ」


リリネット「やった! ありがとスターク!」


122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 22:19:21.58 ID:HR6DJYoc0


―現世・空座町―


リリネット「とうちゃーく!」


飛鳥「ふう、黒腔の中を歩くのは初めてだから少し緊張したよ」


リリネット「あれ? アスカって現世に来たことあるんじゃないの。黒腔を歩いたことがないって…」


飛鳥「確かに来たことはあるよ。むしろ暮らしていたと言った方が正しいかもしれない」


飛鳥「“このセカイとは別の現世”にだけど、ね」


リリネット「?」


飛鳥「ま、破面としてのボクの出自は少々特殊なのさ。だけど心配はいらないよ、今日はボクと共に現世でのひと時を楽しもう」


飛鳥「既にプランは構築してある」


飛鳥「これからボクとキミが向かうのは欲望と喧騒が渦巻く無秩序なセカイ。その魔力に取り憑かれないようくれぐれも用心することだ」


123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/20(日) 22:22:25.79 ID:HR6DJYoc0


―空座町・ゲームセンター―


リリネット「何ここ! うるさっ!」


飛鳥「ここは世間一般的にゲームセンターと呼ばれる場所さ。この場に流れる旋律は立ち入る者の強欲を呼び起こす狂想曲… 恐ろしいところだよ」


飛鳥「かつてはこのボクでさえ、俗楽の粋を集めたこの舞台で多くのモノを失った」


飛鳥「だけど、失落と同時に得るモノもある」


飛鳥「この酔狂で無秩序なセカイ、純粋無垢なキミにもきっと気に入って貰えることだろう」


リリネット「ごめん! 何言ってるか全然聞こえない!」


飛鳥「……」


飛鳥「まあいいさ。キミもここは初めてだろう、最初はボクが手取り足取り案内するよ」


飛鳥「まずはそうだね、クレーンゲームなんてのはいかがかな」

124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/20(日) 22:24:28.37 ID:HR6DJYoc0


リリネット「ぐうう… なにこれ! 全然取れないじゃん!」スカッ


リリネット「もう一回!」チャリン


飛鳥「どうやらキミも堕ちてしまったようだね。ヒトの欲望を支配する、この罪深きマキナリアに」


リリネット「よっし、掴んだ!」ウィーン


リリネット「あっ」ポロッ


リリネット「……」


リリネット「もうっ! あとちょっとだったのに!」ドンッ


飛鳥「おっと、コレを叩くのは止した方がいい。物言わぬ鉄塊となってしまえばそれこそ何も対価を吐きだしてはくれなくなる」


リリネット「でも向こうのヒトも同じことやってるよ」


飛鳥「えっ」

125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/20(日) 22:30:27.94 ID:HR6DJYoc0


アパッチ「おい! この何とかキャッチャーっての! ホントにこれ中のモン取れるようになってんだろうな!」ガンガン


スンスン「自分の思い通りにならなければ暴れ出す、みっともないったらありはしませんわ」


アパッチ「あァ!? 何か言ったかスンスン!」


ミラ・ローズ「どけ、脳筋のお前じゃコイツを手に入れるのは無理だ。私がやる」


ミラ・ローズ「よく見てろ、こういうのはアタマを使ってだな」ウィーン


ミラ・ローズ「ほらな、後は持ちあげるだけ…」


ミラ・ローズ「あっ」ポロッ


アパッチ「へー、なるほどなるほど」


アパッチ「で? 今のはどこでどうアタマを使ったってんだよ、ミラ・ローズ」


ミラ・ローズ「クソっ! つうか何なんだこのブサイクな面したタヌキ人形は! いちいちヒトの神経を逆撫でしやがる!」ドンッ!



リリネット「ほら」


飛鳥「アレは悪い例だ、見なかったことにしよう」


126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/20(日) 22:36:15.34 ID:HR6DJYoc0


―空座町・時計台―


飛鳥「さて、どうだったかな。現世でのひと時は楽しんでもらえたかい? とは言っても殆どゲームセンターに入り浸るだけになってしまったけど」


リリネット「楽しかったよ、あの緑の変なぬいぐるみも取れたし」


リリネット「今度はスタークとも一緒に来れたらいいな」


飛鳥「二頭の白狼は綻ぶことの無い絆の糸で結ばれている。その繋がり、少し羨ましく感じるよ」


リリネット「?」


飛鳥「おっと、何でもない。独り言さ」


飛鳥「少し喉が渇いた。飲み物を買ってくるけど、キミも何か飲むかい?」


リリネット「あたしはいいや、虚夜宮に戻ってからにする」


飛鳥「わかった、それじゃ少しだけ待っててくれるかな」

127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/20(日) 22:39:01.56 ID:HR6DJYoc0


飛鳥(さて、どれにしようか。久しぶりにブラックコーヒーなんてのもいいかもね)ピッ


飛鳥(リリネットの分も一応… 紅茶にしておこう)ピッ


飛鳥(……)


飛鳥(今日は此処に来てよかった。ここは在るべきセカイの現世ではないけれど、それでもボクが居た日常を思い出せる)


飛鳥(最初は現世を訪れることに対してどうにも気乗りがしなかった。心の奥底で、何か妙な胸騒ぎがしたんだ)


飛鳥(だけど、それも杞憂に終わったらしい。案外ヒトの感覚なんてのはアテにならないのかもしれないね)


飛鳥「っ……」ゴクッ


飛鳥「フフッ、破面になってもこの苦みには慣れないか。まだ少し、黒に溶ける甘味の白砂に頼ることになりそうだ」


「……!!?」


飛鳥「ん?」


「そんな……」


「嘘、でしょ… 本当に会えた…! 本当に… 言ったとおりに……!」

128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/20(日) 22:40:03.34 ID:HR6DJYoc0








「飛鳥ちゃん……!!」







129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/20(日) 22:40:32.63 ID:HR6DJYoc0
ここまで
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/20(日) 23:25:32.77 ID:lwddNIPNo
そういえば仮面と孔はどこについてるんだろう
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/20(日) 23:28:07.38 ID:Y0u5cZDT0
BLEACHはキャラのだった奴が多いから優しい世界でもおもろい
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/21(月) 02:03:05.80 ID:rm2VMpd6O
飛鳥死んでるんじゃないかこれ
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/21(月) 09:19:51.07 ID:z0bzirmZ0
>>130
この飛鳥はエクステが骨っぽくなってるんじゃね
孔は知らないザエルアポロみたいに見えにくいとこにあるのかも
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/21(月) 17:16:17.66 ID:usSW81jZo
今日からデレでダークイルミネイトイベだから色々と来るな
飛鳥死んでるのか?
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/27(日) 23:18:32.60 ID:TlA6lgY/0


「飛鳥ぢゃん!!」ダキッ


飛鳥「うわっ!」


「よかっだ、また会えてッ…! うぇぇ… ぐすっ… ひっく……!」


飛鳥「ちょっと待った、キミはいったい…」


「ごべんなざいあずがぢゃん… ごめんなざい……!」


飛鳥「……」


飛鳥「泣かないでくれ。キミが涙を流す姿を、ボクは見たくない」


「うえっ… ううっ……」


飛鳥「……」ナデナデ

136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/27(日) 23:21:08.61 ID:TlA6lgY/0


飛鳥「落ち着いたかい?」


「う゛ん……」ズビッ


飛鳥「最初は人違いか何かだと思ったけど、どうやらキミはボクのことを知っているらしい」


飛鳥「その証拠に、キミはさっき確かにボクの名を呼んだね。“飛鳥”と」


飛鳥「ボクはキミのことを何も知らないのに、どうしてキミがボクのことを知っているのか…」


飛鳥「興味は尽きないが、別段キミのプライヴァシーに踏み込むつもりもない」


飛鳥「ただ一つ、キミの名前を、教えてくれないか」


飛鳥「何故だか、これだけは訊いておかなければいけない気がしてね」


「わ、私は…… 私の名前は……」


蘭子「神崎っ、蘭子…!」


飛鳥「……」


飛鳥「――、――?」


――――
――


137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/27(日) 23:24:40.45 ID:TlA6lgY/0



――――!



いつだったか、聴いた憶えがある



――――!!!



この煩わしいノイズを、ボクは知っている



気に――こ―――ない――



これは、ヒトの声か



ボク――――心―――ま―に―――



囀(さえず)り響くのは、祈りか、願いか、叫びか、それとも



泣―――くれ―――な――



…………



―――さようなら、蘭子


138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/27(日) 23:29:02.68 ID:TlA6lgY/0


蘭子「飛鳥ちゃん…?」


飛鳥「ああ… すまない、少し眩暈がしてね」


飛鳥「神崎蘭子、と言ったかな」


飛鳥「華やかで、力強く、それでいて凛々しい。それにどこか… 懐かしい響きがするよ」


蘭子「……」


蘭子「そう、だよね… こういうこともあるかもって、言ってたッ…」


飛鳥「ん…?」ポタ…


飛鳥「おや、どうやら雨が降ってきたみたいだ。空はこんなにも綺麗な夕焼けを映しているというのに、不思議なこともあるものだね」


飛鳥「キミも、濡れないうちにこの場を離れたほうがいい」


蘭子「嫌だ…」

139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/27(日) 23:32:29.27 ID:TlA6lgY/0


蘭子「嫌だよ、行かないで…」


蘭子「私まだ、飛鳥ちゃんと何も話せてない… 言いたいこと、言えてない…!」


飛鳥「言わなくていいんだ。キミのその想いは、ボクに向けられるべきじゃない」


蘭子「?」


飛鳥「どうしてキミがボクのことを知っているか、理解ったよ」


飛鳥「キミはきっと、“このセカイのボク”を応援してくれている一人。ボクのファンなのだろう」


飛鳥「驚いたよ、まさか御伽話のセカイの現世にも偶像… 二宮飛鳥の軌跡が存在しているなんてね」


飛鳥「だけど、ここにいるボクはキミの知っている二宮飛鳥とは違うんだ」


飛鳥「キミのその想いは“このセカイに在る偶像・二宮飛鳥”に向けられるべきだと思う」

140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/27(日) 23:35:44.32 ID:TlA6lgY/0


蘭子「違うよ、飛鳥ちゃん」


蘭子「間違えるはずがないよ。あなたは紛れもない、魂を交わした私のともだち…」


飛鳥「雨も、強くなってきた」


飛鳥「悪いけど、ヒトを待たせていてね。ボクはこの辺りで御暇(おいとま)させてもらうよ」


蘭子「っ……」


蘭子「我が盟友(とも)、飛鳥!!」


蘭子「贖罪の咎、巣食う煉獄の炎は未だ双翼を蝕み続ける! 魔王の穿つ楔は最期の私心よ!」


蘭子「禁忌を解き放ち、共に深淵に沈むも一興! 交わる魂と言霊は流るる雫を浄化せん!」


蘭子「日天子堕ちし黄昏の刻! ノルンの宿る聖告の塔にて我が片翼を待つ!」


飛鳥「……」


飛鳥「ごめんよ。キミが何を言っているのか、ボクには理解できないみたいだ」


141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/27(日) 23:38:45.61 ID:TlA6lgY/0


―空座町・街路―


アパッチ「くそがッ! ちょっとばかし騒いだだけだってのにどうして私らが追い出されなきゃならねーんだ!」


ミラ・ローズ「テメェがいきなり暴れ出すからだろ。見たトコあのクレーンゲームとかいうのはあの店の商売道具だ、それを蹴り壊したお前が悪い」


アパッチ「はァ!? てめえも散々あの機械ぶん殴っといてなに上から物言ってんだ!」


スンスン「お止めなさいな二人とも。無駄な諍いは控えるようハリベル様からも忠告されたでしょうに」


アパッチ「くっ……」


ドンッ


アパッチ「おっと。オイ、てめえどこ見て歩いて……」


飛鳥「……」


アパッチ「ってこの前の新入りじゃねーか。お前も現世に来てたのかよ」

142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/27(日) 23:50:54.91 ID:TlA6lgY/0


アパッチ「ちょうどいいや、アタシらそこの店から追い出されちまってよ。代わりに緑のブサイク人形取ってきてほし… むぐっ」


ミラ・ローズ「ちょっと黙ってろ。コイツ、どうも様子がおかしくねえか」


飛鳥「ん……」


飛鳥「ああ、キミたちか…」


飛鳥「すまないが、今は少し気分が悪くてね… 用があるならまたの機会にしてもらえるかい…」


飛鳥「それじゃ……」




アパッチ「何なんだよアイツ、ひっでえツラしてやがったけど…」


アパッチ「あっ、もしかしてアイツもアタシらみたく暴れて店からつまみ出されてたりしてな」


アパッチ「それでもあんなに気落ちすることはねえだろうによ。そうは思わねえかお前ら」


ミラ・ローズ「アホ」


アパッチ「は?」


スンスン「アホですわね」


アパッチ「は?」


143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/27(日) 23:59:33.71 ID:TlA6lgY/0


―空座町・時計台―


リリネット「アスカ、おっそいなあ… いつになったら戻ってくるんだろ」


飛鳥「……」


リリネット「あっ! 来た! ドコほっつき歩いてたんだよ!」


飛鳥「ん… 飲み物を売っている場所を中々見つけられなくてね、少し待たせてしまったかな」


リリネット「少しどころじゃないってば! あれからどんだけ時間が経ったと思って… あれ、アンタなんか元気なくない?」


飛鳥「元気がない、か」


飛鳥「フフッ、平易で簡便な言い回しだが、今のボクを表わすにはその至極飾り気のない言葉が最も適しているのかもしれないね」


飛鳥「この言い表しようのない心の疼きは、さっきの俄雨(にわかあめ)に打たれたから、かな」


飛鳥「いつもはボクの全てを洗い流してくれるハズの冷たい雨が、今日は己の身を焼き焦がすかのように、熱かった」


リリネット「雨……?」


飛鳥「キミを長らく待たせてしまったことについては、いずれこの身をもって償わせてもらうよ」


飛鳥「もう、日も暮れる」


飛鳥「帰ろうか。ボクたちの虚圏へ」


144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/28(月) 00:00:02.99 ID:D/PDcKZJ0
ここまで
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/28(月) 00:52:54.99 ID:7cWOgmn8O
おつ
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/01(金) 22:58:27.69 ID:JElUEOLPO
身体能力
ルックス
ボイス
美的感覚
そして何より自分磨きを欠かさない圧倒的向上心
シャルロッテこそがトップアイドルにふさわしいのでは?
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/02(土) 02:12:29.85 ID:FNdCO7h3O
>>146
> 美的感覚
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/12(火) 12:37:44.48 ID:X09gdjEOO
破面は魅力的なキャラ多いからすき
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/16(土) 12:55:35.52 ID:FwrLjnDMO
うんちまだ?
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/19(火) 12:27:39.20 ID:CSNG+FbOO
ブレソルの破面イベント見てると割と本気でラスノーチェスは優しい世界なんじゃないかと錯覚しそう
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/07(土) 22:57:29.91 ID:TxEJ9mUn0


休暇2日目 第2十刃の宮


飛鳥「神崎蘭子、か」


飛鳥「あの少女はボクのことを知っていた。それも、偶像・二宮飛鳥ではない、恐らく“ボク自身”のことを」


飛鳥「ボクは、あの少女にとって一体どんな存在だったのだろうか」


飛鳥「涙を流し抱擁を交わすほどにまで、一体なにが彼女をそこまで駆り立てたのだろうか」


飛鳥「いつも気付くのが遅いんだ。あの時もっと彼女の話に耳を傾けるべきだった」


飛鳥「去り際に叫んでいた不可思議な言語の数々も、ボクには到底理解できそうもない」


飛鳥「これで彼女への手掛かりは完全に潰えてしまったというワケだ。後悔先に立たず、ってヤツだね」


飛鳥「フフッ、この通り今のボクは少々ナーバスでセンチメンタルなのさ。不意に、こういう俗な感情に浸りたくなる時がある」


飛鳥「キミにも理解るだろう? アビラマ」


アビラマ「さっぱりわからん」

152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/10(火) 00:05:39.74 ID:JzQ6XQL9o
来たか
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/10(火) 19:34:56.38 ID:AvFp24UZ0


アビラマ「で、その独り言を聞かせるためにわざわざ俺を呼び止めたのかよ」


飛鳥「そう睨まないでくれ。今の話は単なる序曲のようなものさ、これから始まる物語のね」


飛鳥「結論から言わせてもらうと、折り入ってキミに頼みたいことがある」


アビラマ「まさかそのカンザキとかいう人間を探してくれ、って言うんじゃねえだろうな」


飛鳥「む、その通りだけど… よく理解ったね」


アビラマ「お前の遠回しな物言いにもだいぶ慣れてきたからな」


飛鳥「フッ、それで、引き受けてくれるかい? ああ、もちろんキミだけじゃなくてボクも含めた二人体制で彼女を探すことになるけど」


アビラマ「そうだな、明日の宮内清掃係を俺と代わってくれるなら考えてやってもいいぜ」


飛鳥「交換条件というワケだね。承知したよ」


154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/10(火) 19:38:14.84 ID:AvFp24UZ0


―現世・空座町―


アビラマ「現世に来たはいいが、居所も分からねえ人間をどうやって探しゃいいんだか」


飛鳥「手掛かりがない以上、町全体をしらみつぶしに当たってみるしかないだろうね」


アビラマ「デタラメに町中探し回ってちゃどれだけ時間があっても足りねえだろう。義骸に入った状態じゃ身体能力も人間にケが生えた程度だしよ」


ゾマリ「何やらお困りのようですね」ヌッ


アビラマ「うおっ!」


飛鳥「第7十刃のゾマリ・ルルー、だね。休暇を貰ったのは従属官だけだと聞いたけど、どうしてキミが現世に?」


ゾマリ「貴方たち従属官が現世で不要な騒ぎを起こさぬよう、藍染様より監視の任務を仰せつかったのです」


ゾマリ「昨日はハリベルの従属官三名が市街地で乱闘騒ぎを起こし、この町の警ら隊までもが出動する始末… 全く嘆かわしいものです」


アビラマ「あそこの三馬鹿は口も汚ねえ上にすぐ手が出やがるからな」


ゾマリ「貴方も他者のことをとやかく言える立場ではない筈ですよ。アビラマ・レッダー」


アビラマ「うっ」

155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/10(火) 19:40:34.21 ID:AvFp24UZ0


飛鳥「何かあったのかい?」


アビラマ「いや大したことじゃねえんだが、昨日この辺で木刀持ったツルッパゲと言い争いになってよ」


アビラマ「肩がぶつかっただの何だの喧しくて一歩も引きやしねえから軽く小突いてやったんだよ」


ゾマリ「おや、証言はもう少し正確に頼みたいものです。殴打の応酬を小突くとは言いませんよ」


アビラマ「ちっ、どこから見てたんだよ…」


アビラマ「まあ何だ、そいつがまた人間にしてはなかなか戦いのセンスがよくてよ。死神や破面と戦ってるみたいでついムキになっちまってな」


ゾマリ「人間相手に我を忘れるなど言語道断です。感情の自制も出来ないようでは破面としての格もその程度が知れるものです」


アビラマ「ぐうっ…」

156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/10(火) 19:42:56.54 ID:AvFp24UZ0


アビラマ「だ、大体何なんだお前のそのカッコはよ。変な帽子にダボついた装束、ジャラジャラと無駄な装飾もぶら下げやがって。とても任務中とは思えねえぜ」


飛鳥「ものすごく強引に話を逸らしたね」


アビラマ「うるせえ」


飛鳥「でも、言われてみれば破面がいつも身に付ける白装束とは大きくかけ離れているね。現世で言うヒップホップ系の衣装、と表現すればいいのかな」


ゾマリ「現世の文化に慣れない貴方たちが私の身なりに違和感を覚えるのも当然と言えば当然」


ゾマリ「何故私がこのように奇怪な格好をしているのか、その解を示す前にこちらから一つ質問をさせてもらいましょう」


アビラマ(変な格好だって自覚はあるのか…)


ゾマリ「休暇と同時に貴方たちへ支給された現世の通貨、いったい誰がどうやって調達したのか疑問に感じたことはありませんか」


ゾマリ「そう、貴方たちが現世にて使用する遊興費を調達しているのは他でもないこの私。いや、正確には“調達していた”と言うべきでしょうか」

157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/10(火) 19:45:49.15 ID:AvFp24UZ0


ゾマリ「今より少し前、私は藍染様より三つの任務を与えられました」


ゾマリ「一つ、『一斉休暇の通告時期までに現世の通貨を一定量収集すること』」


ゾマリ「二つ、『二日間の休暇中に従属官が不要な騒ぎを起こさぬよう監視を怠らないこと』」


ゾマリ「三つ、『万が一従属官が問題を起こした際には速やかにそれを制圧すること』」


ゾマリ「二つ目と三つ目の任務は現在も遂行中ですが、真に厄介だったのは一つ目の任務です」


ゾマリ「いくら私が十刃といえど、この慣れぬ指令には四苦八苦しました。最初は日夜路地裏でビートとラップを刻み日銭を稼ぐ日々」


ゾマリ「人間如きに施しを媚びるなどという辛酸を舐めるにも等しい屈辱を味わわされましたよ」


ゾマリ「しかしそれも済んだこと、今ではその界隈で私の名を知らぬ者はいません」


ゾマリ「もはや私の一声で数万数十万の民衆が一堂に会するのです。資金の調達程度ならば半刻もあれば御釣りがきます」


飛鳥「……」


アビラマ「……」


ゾマリ「ほう、その疑念とも困惑ともとれる視線。私の言葉を信用、もしくは理解していない眼ですね。全く驕りが過ぎる」

158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/10(火) 19:49:30.73 ID:AvFp24UZ0


ゾマリ「唄い、躍り、それそのものを力に変え民衆へと愛を振りまく。そういった存在がこの現世には複数存在している」


ゾマリ「それは貴女もよくご存じの筈です、二宮飛鳥」


飛鳥「……!」


ゾマリ「そう、今や私は現世における“偶像(アイドル)”の一人。人間に愛と力を与える使者といったところでしょうか。破面には似つかわしくないものですがね」


飛鳥「待ってくれ。いったいキミは何を言っているんだ」


ゾマリ「それは私の境遇についての問いですか。それとも貴女自身の境遇についての問いですか」


ゾマリ「どちらにせよ、どうやら貴女は私の想像以上に自らの置かれた立場というものを理解しておられない」


ゾマリ「貴女は知っている筈ですよ。自らのことも、偶像・神崎蘭子のことも」


飛鳥「!?」


ゾマリ「因果とは、かくも奇妙なものです。悲劇に見舞われ現世を去った偶像、その魂は今、生前と姿を共にし――」


159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/10(火) 19:54:43.12 ID:AvFp24UZ0


―現世・空座町―


アビラマ「アスカ!!」


飛鳥「はっ!」ピクッ


アビラマ「ようやく反応しやがった。突っ立ったまま微動だにしねえから何事かと思ったぜ」


アビラマ「カンザキとやらを探しに行くんだろ。お前がそんな調子でどうすんだよ」


飛鳥「すまない、ボクから物を頼んでおいてこの体たらく、返す言葉もないよ」


アビラマ「しかしゾマリのヤツも気味が悪ぃな。十刃が従属官に見返りナシで手を貸すなんて何か裏がありそうだぜ」


ゾマリ「私の愛を疑っているのですか?」ヌッ


アビラマ「うおあっ!? まだいたのかよお前!」


ゾマリ「博愛の精神とは実に美しいものです。私も探索への協力という形で貴方たちに無償の愛を与えましょう」


飛鳥「無償の愛、イデア論の一欠片だね。いずれは理解したい概念の一つだけど、ボクにはそれを受け入れるだけの知識と経験が足りていない」


飛鳥「何にせよ、ボクの身勝手に付き合ってくれることにお礼を言いたい。ありがとう、ゾマリ」


160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/10(火) 20:02:44.22 ID:AvFp24UZ0


数時間後 空座町


飛鳥「はぁっ… はぁっ…」


飛鳥(駄目だ、見つからない。こんなもの砂漠に紛れた塩粒を探すようなものだ)


飛鳥(手掛かりが、何か手掛かりがほしい)


飛鳥(もう、ボクが縋りつけるものは彼女が最後に発した言葉だけ)


飛鳥(理解するんだ、彼女の言葉の意図を。あの時、ボクに何を伝えようとしたのかを)


飛鳥(……)


飛鳥(もしかしたら、ボクは前提の部分から思い違いをしているのかもしれない)


飛鳥(彼女の発した言葉が、ただ比喩的な言い回しを極限にまで昇華させたものだったとしたら)


飛鳥(自らの内に抱くセカイと想いを、現存する言葉に乗せてボクに伝えようとしていたのなら)


飛鳥(それはさながら、面倒で、直情的で、身勝手な… フフッ、これじゃまるでボクがよく知る何処かの誰かに瓜二つじゃないか)


飛鳥(そしてボクの仮定が正しいなら)


飛鳥(きっと、彼女はそこにいる)


161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/10(火) 20:07:31.03 ID:AvFp24UZ0


―空座町・時計台―


飛鳥「……」


飛鳥「『夕暮れ時、時計台の下であなたを待っています』」


飛鳥「さっきまでは名のある探偵にでもなった気分だったけど、現実はそう上手くはいかないか」


飛鳥「自分に酔って彼女の言葉を理解した気になっていたボクの姿は実に滑稽だったよ」


飛鳥「そうは思わないかい。ゾマリ、アビラマ」


ゾマリ「それを驕りと言うのです」


飛鳥「ハハッ、言い得て妙だ。心に響くよ」


ゾマリ「まあ、十刃である私の力を持ってしても対象の人間を探し出すことは出来なかったのですから、従属官である貴方が恥じることはありませんよ」


アビラマ「これだけ探して見つからねえってことは、ソイツもうこの町には居ねえんじゃねえのか」


飛鳥「そうかもしれないね」


ゾマリ「さて、まだ探索を続けますか? 帰還の時間までは少々猶予がありますが」


飛鳥「やめておくよ。これ以上探してもきっと何も成果は得られない。そんな気がするんだ」


飛鳥「戻るよ、虚圏に」


162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/10(火) 20:11:10.19 ID:AvFp24UZ0


―虚夜宮・第2十刃の宮―


飛鳥「ふう」


アビラマ「辛気くせえツラしてんじゃねえよ、たかが人間一人またそのうち探しに行けばいいじゃねえか」


飛鳥「ああ、そうだね、都合よく道筋を示してくれる物語なんて在りはしないってことを思い知らされたよ」


飛鳥「キミとゾマリにも、随分と無駄な時間を過ごさせてしまった。謝っても謝り足りない――」



『んもぉ〜っ! 待ちなさいったら!』


『いやーっ!』


『逃げちゃダメよォ〜! 次はこの服着てみてちょうだい!』



アビラマ「何だ今の声、クールホーンか?」


飛鳥「大広間のほうから聞こえたね」

163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/10(火) 20:20:24.35 ID:AvFp24UZ0


アビラマ「おい! なに騒いでんだクールホーン!」



クールホーン「逃げないでって言ってるじゃないのォ〜!!」


蘭子「混沌の魔物よ! 幾たび我が衣(ころも)を取り替えれば静まるのだ!」


クールホーン「蘭子ちゃんカワイイんだも〜ん! コッチの服も着てみない?」


蘭子「いや〜!」



アビラマ「なんだこりゃ」


飛鳥「それはこっちのセリフだよ、まさかボクの探し人がこんなところにいるなんてね」


クールホーン「あら、やっと帰ってきたのねアスカちゃん。待ってたわよ」


蘭子「飛鳥ちゃん!?」


飛鳥「まったく、今なら困惑の絶頂に置かれた人間の心情がよく理解るよ。案外、思考が纏まらなくなるものだ」


飛鳥「コミュニケーションの一歩として、とりあえずボクはキミにこう声をかけるべきなんだろう」


飛鳥「こんにちは、神崎さん」


164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/10(火) 20:24:29.81 ID:AvFp24UZ0
ここまで 
※飛鳥の仮面はエクステ部分がそのまま三つ編み状の骨の装飾に変化しています
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/10(火) 22:13:47.15 ID:X6vnET+AO
お帰り乙乙
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/14(土) 17:25:00.04 ID:47TSRKGi0
おつおつ
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 18:50:18.81 ID:QYgRD4hc0
保守
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/12(日) 23:28:41.10 ID:B5RORvM50
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/14(火) 10:44:55.66 ID:jBGgm1LlO
まだかネ?
グズグズするんじゃあないヨ
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/18(土) 19:57:13.92 ID:ybb1dRIK0
12月14より再
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/03(日) 14:08:50.56 ID:PtErXDQ30
 
※認識同期…第9十刃アーロニーロの固有能力。自身が見聞きした情報を瞬時に他の同胞に伝えることができる
 
※白伏(はくふく)…死神が用いる霊術の一つで鬼道に分類される。相手の意識を混濁させ、一時的に昏睡状態に陥れることができる
 
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/04(月) 19:03:49.17 ID:HSYxcf410


―第2十刃の宮―


フィンドール「――テレスホルカンとベキュネスを添えたヴィシソワーズ。虚圏の清酒で煮込んだ大虚仕立てのミートローフ。以上が本日のメニューとなります」


バラガン「フム」


蘭子「これが王族の晩餐…!」


クールホーン「どう? 蘭子ちゃん。気に入ってもらえたかしら」


蘭子「うむ、我が身に余る豪華絢爛よ」


飛鳥「まさかクールホーンがボクたちより先に神崎さんを見つけ出しているなんてね、驚いたよ」


アビラマ「そういや、何でお前はそのカンザキとやらを虚夜宮に連れてきたんだ。俺たちがソイツを探してるってことは知らなかったハズだろ」


クールホーン「それなんだけど、実は昨日見ちゃったのよね。アスカちゃんと蘭子ちゃんが一緒に話してるトコ」


飛鳥「アレを見られていたのか」


クールホーン「あのままじゃお互いすれ違ったままだと思ってね。放っとけばアスカちゃんの士気にも関わりそうだし」


クールホーン「だから良かれと思って二人をこうやって引き合わせたのよ。お節介だったかしら」


飛鳥「確かに大きなお節介だ。でも、ありがとう」

173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/04(月) 19:08:15.73 ID:HSYxcf410


蘭子「ところで混沌の魔物よ、かの者たちの真名は如何に?」


クールホーン「ああ、そういやこいつらの名前を教えてなかったわね」


クールホーン「アタシたちの向かいに座ってる三つ編みがジオ。その隣のデカいのがニルゲ。もう一つ隣のさらにデカいのがポウよ」


ジオ「なんだよ、テキトーな紹介だな」


ニルゲ「まァ、俺たちの名前を教えるだけみたいだしな… こんなもんでいいんじゃないか…?」


ポウ「……」モグモグ


クールホーン「いま調理室に戻っていった細いのがフィンドール」


クールホーン「あとアスカちゃんの隣に座ってるのがさっきちょっと話したアビラマね。クソやかましいヤツだからあまり近づかないことをオススメするわ」


アビラマ「オイ」


クールホーン「そしてッ!!!」


蘭子「!?」


クールホーン「あちらで悠然と座して居られるのが我らの君主であり、神であり、王である、“大帝”バラガン・ルイゼンバーン陛下よ!!!」

174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/04(月) 19:12:25.34 ID:HSYxcf410


バラガン「儂とその小娘とは既に一度顔を合わせたじゃろう。二度も儂の名を伝える必要はないわ」


クールホーン「も、申し訳ありません…」


蘭子「老練なる王よ!」


蘭子「我を導き、我を罰し、そして私をこの白城へといざないし其方に、今一度、魂の礼拝を…」


バラガン「人間如きの礼などいらん。そもそも貴様をここへ連れてきたのはクールホーンだ」



ジオ「なあ、人間ってのはどいつもあんな妙な言葉を遣うのか?」ヒソヒソ


ニルゲ「いや、俺に聞かれてもなぁ…」ヒソヒソ


ポウ「虚圏の辺境ですら、ああまで訛りが酷い者は見たことがない」


フィンドール「だが、真に恐るるのはあの人間の言葉をさも当たり前のようにご理解なさっている陛下の見識の深さだろう」


ジオ「あれ、お前いつの間に戻ってきたんだ」

175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/04(月) 19:15:40.71 ID:HSYxcf410


飛鳥「そういえば神崎さん、クールホーンと随分打ち解けてるみたいだね」


蘭子「虚ろなる世界より現れし混沌の魔物は我が言霊を読み解きしものの一人、私と飛鳥を繋ぐ者よ」


蘭子「それと、その… 飛鳥ちゃん… 我が真名すら灼熱の業火に焼き尽くされた、か?」


飛鳥「?」


クールホーン「『下の名前で呼んでほしいなあ』って言ってるわ」


飛鳥「む、もしやキミも神崎さんの言葉が理解るのかい?」


クールホーン「ある程度はね。アスカちゃんの喋り方に慣れたせいか蘭子ちゃんの言葉も案外すんなり理解できるのよね」


アビラマ「ホントかよ。俺には何言ってるのかサッパリわかんねえけどな」


飛鳥「ボクと神崎さんの遣う言葉には、クールホーンにだけ感じ取れる独自の共通点があるのかもしれないね」


飛鳥「ああそうだ、呼称のハナシをしてたんだっけか。蘭子さん… いや、さん付けよりも呼び捨てのほうがしっくりくるかな」


飛鳥「キミも、ボクのことは自由に呼んでくれて構わないよ」


飛鳥「そういうワケで。改めてよろしく、蘭子」


176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/04(月) 19:20:42.19 ID:HSYxcf410


―虚夜宮・玉座の間―


ゾマリ「藍染様。任務完了のご報告に上がりました」


藍染「ご苦労だったねゾマリ。十刃である君には似つかわしくない不慣れな仕事を任せてすまなかった」


ゾマリ「滅相もございません。私のような者には勿体なき御言葉です」


ゾマリ「ところで、宜しかったのですか。二宮飛鳥と神崎蘭子の接触を許してしまっても」


藍染「構わないよ。互いを知った彼女たちがどう動くのか、気になってね」


藍染「そうだ、確か第一次報告では君は自ら現世の“偶像”を体現したと言っていたね」


藍染「キミが感じた“偶像”とはどんなものだったか、よければ私に聞かせてくれないかな」


ゾマリ「はい。“偶像(アイドル)”とは群衆にとっての輝きであり象徴。その力は人心すら容易に支配し、その身を興らせ、また破滅にも導く。そんな存在でしょうか」


藍染「象徴と支配、か。それはある意味で神の領域にすら迫る力だろう」


藍染「矮小な一存在である筈の人間が、また別の人間の心を支配する」


藍染「面白い話だ」


177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/04(月) 21:03:58.73 ID:HSYxcf410


―虚夜宮・回廊―


飛鳥「“正義のレシピ”の改善報告書の提出か。これは本来フィンドールが行うハズのモノだったんだけどね」


飛鳥(たぶん、陛下が敢えてボクと蘭子が二人きりになれる場を作ってくれたんだろう)


蘭子「飛鳥よ、我らは何処へと降り立つのだ?」


飛鳥「ええと… ボクたちはこれから東仙ってヒトに会いに行くんだ。この報告書を届けにね」


飛鳥「そうだ、一つ訊いておきたいんだけど、キミはいつまでこの虚夜宮に滞在できるんだい」


蘭子「クックック、裁きの鎖とて我が翼を繋ぎ止めることはできぬ! 友の力となるならば、この命尽きるまで如何様にも従おう!」


飛鳥「……」


蘭子「あっ… しかし、大神たちの嘆きが… 未だ断罪の儀を結んでおらぬ故…」


飛鳥「フム、どうやらそれほど長居はできそうにないみたいだね」


飛鳥(もう少し彼女のことを理解してから込み入った話をするつもりだったけど、そうも言ってられないかな)

178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/04(月) 21:07:05.28 ID:HSYxcf410


蘭子「大きなお城… この白城は全てが彼(か)の王のものであるのか?」


飛鳥「彼の王… ああ、違うよ。今の虚夜宮の主はバラガン陛下ではなく藍染惣右介ってヒトだ」


蘭子「むう、それでは一つの城に二人の王が… かくも奇矯な…」


飛鳥「元々は陛下がこの虚圏を支配していたんだけど、その座を藍染惣右介によって奪われてしまったんだ」


飛鳥「まあ、この虚夜宮には色々としがらみってモノがあるのさ。それは一朝一夕でどうにかなるものじゃない」


蘭子「眷属たちの諍いか。その双剣を収め、共に歩むことはできぬのか」


飛鳥「んん… そうだね。キミが居たプロダクションを思い出してみるといい。誰もがみんな仲良しこよしってワケじゃなかっただろう」


飛鳥「それはこの虚夜宮も例外じゃない。それぞれが相容れないなんてことは往々にしてあるものさ」

179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/04(月) 21:13:28.37 ID:HSYxcf410


アーロニーロ「そういうことだ」「キミノヨウナ新参者ヲ快ク思ッテナイ奴モイルンダヨ」


蘭子「ぴぃ!?」ビクッ


飛鳥「キミは、第9十刃のアーロニーロ・アルルエリだね」


アーロニーロ「聞かせてもらったぞお前の噂」「ノイトラニ奇襲ヲ仕掛ケテ一方的ニ叩キノメシタンダッテナ」


飛鳥「ハナシが飛躍しすぎてないかい。ボクにそんな力は無いよ」


アーロニーロ「謙遜するなよ最上大虚」「霊圧ヲ抑エテイルノハ僕ラニ実力ヲ悟ラセナイ為カナ」


飛鳥「これは変に弁解しないほうが穏便に済む気がするね」


蘭子「あ、飛鳥よ、この者はいったい?」


飛鳥「彼はアーロニーロ。この虚夜宮において秀でて絶大な戦闘能力を誇る破面の一人で、第9の数字を持つ十刃だ」


蘭子「エスパーダ… 彼の王が語りし十の賢人の一人か!」

180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/04(月) 21:30:23.77 ID:HSYxcf410


アーロニーロ「妙な喋りの女だな」「コイツカラハ破面ノ霊圧ヲ感ジナイケド、何者ダ?」


飛鳥「彼女は神崎蘭子。バラガン陛下の客人で、人間だよ」


アーロニーロ「客だと? あのバラガンが人間を招いたのか」「ニワカニハ信ジ難イハナシダネ」


飛鳥「嘘をついたところでボクたちに利点はないよ。キミには認識同期もあるし、虚言はボクらの立場を悪くするだけさ」


アーロニーロ「別にお前たちのことを藍染様や他のヤツらに逐一報告するつもりはないがな」「警戒心ガ強イノハ悪イコトジャ無イケドネ」


飛鳥「でも、わざわざキミたちからボクに話しかけてきたってことは、何かそれなりの理由があるんだろう」


アーロニーロ「……十刃ってのは破面の頭領だ」「ソレハ、キミモ判ッテイルヨナ」


アーロニーロ「最上大虚のお前が十刃に昇格すれば追い落とされるのは必然的にNo.9のオレだろ」「キミガ十刃ノ器デナケレバ、コノ場デ喰イ殺シテヤロウト思ッテタンダ」


アーロニーロ「だが、お前は第9十刃であるオレを前にしても顔色一つ変えやしなかった」「恐ラク、ソノ実力ハ噂通リナノダロウ」


アーロニーロ「オレもわざわざ負け戦に臨むような真似をする気はねえ」「キミニ手ヲ出シテ、バラガンヲ敵ニ回スノモ嫌ダシナ」


飛鳥「随分とボクを評価してくれてるんだね」


飛鳥「でも心配はいらないよ。ボクの主はバラガン陛下ただ一人、彼の許(もと)から離れる気はないし、そもそもボクは十刃の地位に足る存在じゃない」

181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/04(月) 21:39:53.88 ID:HSYxcf410


アーロニーロ「いけ好かねえ奴だな」「謙遜モ、度ガ過ギルト相手ノ神経ヲ逆撫デスルコトニナルヨ」


アーロニーロ「まァ、せいぜい気を付けろよ。虚夜宮ってのは案外敵が多いもんだ」「寝首ヲ掻カカレナイヨウ、用心シテ歩クコトダネ」


飛鳥「ああ。忠告ありがとう、アーロニーロ」


アーロニーロ「じゃあな最上大虚」「キミガ僕ノ脅威ニナラナイコトヲ祈ッテルヨ」



飛鳥「さて、待たせて悪かったね蘭子。先を急ごうか」


蘭子「」フラフラ


飛鳥「ん?」


蘭子「ハロウィンのオバケに… 食べられちゃう…」クラッ


飛鳥「おっと」ガシッ


蘭子「」


飛鳥「気絶してるね。もしかしたらアーロニーロの霊圧にあてられたのかも」


飛鳥「無理に起こすのも気が引けるし、東仙さんのところまでボクが背負っていくか」


182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/04(月) 21:45:33.09 ID:HSYxcf410


―虚夜宮・調理室―


東仙「やはりバラガンの批評は参考になる。第2の宮の報告書、確かに受け取った」


飛鳥「第2の宮の報告書、ということは、他の宮にも同じようなものを?」


東仙「そうだ。とはいえまともな報告書が届くのは第3の宮と第7の宮くらいだが…」


飛鳥「ハリベルとゾマリだね。その二人はボクのイメージ的にも勤勉でマメな印象があるよ。でもその言い方だと他の宮では問題が生じている、のかな」


東仙「ああ、どうにも私に対して協力的ではない者が多くてな」


東仙「スタークからは5回に1回報告書が届けば良い方。届いたとしても殴り書きで『うまかった』とだけ、恐らくリリネットが書いているのだろう」


東仙「ウルキオラは毎回白紙、ノイトラからはボロ屑のようになった紙切れが届くだけ」


東仙「グリムジョーも従属官が報告書を記入しているのか当たり外れが大きい。ザエルアポロに関しては何故か自らが行ったであろう実験結果が事細かに記してある」


東仙「アーロニーロとヤミーは量を増やせと催促してくるばかり。ヤミーに至っては従属官のクッカプーロが届けに来るため涎で報告書が読めたものではない」


東仙「私は一刻も早くこの“正義のレシピ”を完璧なものに仕上げなければならないというのに…」


飛鳥「苦労しているんだね。ボクには何もできないけれど、心中お察しするよ」


飛鳥「あっ、そうだ、貴方に懐いているワンダーワイスならレシピ完成にも快く協力してくれるんじゃないかな」


東仙「あの子は私が与えるものならば何でも『おいしい』と言ってしまうからな。純粋ゆえか、粗探しをするようなことには不向きなんだ」


飛鳥「なるほど」

183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/04(月) 21:51:32.26 ID:HSYxcf410


蘭子「ううん…」


東仙「破道の五十四、『廃炎(はいえん)』」



ボウッ!!



蘭子「ぴゃあ!? な、何事かっ! それに、あなたは誰!?」


東仙「すまない、起こしてしまったか。私は東仙要、この虚夜宮で破面の統括官を務めている。今は飛鳥と共に鬼道の鍛錬をしているところだ」


飛鳥「理解ってはいたけど、隊長格ともなると五十番台の詠唱破棄すら楽にこなしてしまうんだね」


飛鳥「破道の一、『衝』!」シーン


東仙(霊圧の操作に関しては既に御しつつあるが、鬼道の発現までには至らない。やはり死神と破面では霊絡の組成が異なることが原因だろうか…)


飛鳥「鬼道の習得がここまで難しいものだなんて思ってもみなかったよ。手をのばしてもその一端にすら届く気がしないなんてね」


蘭子「はどう? きどう? それに未だ残滓燻る業火はいったい…」


東仙「飛鳥、少し休むとしよう。君の同行者も慣れぬ事態に困惑しているようだからな」


東仙「その間に、彼女への状況説明も済ませてしまおうか」

184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/04(月) 21:55:54.87 ID:HSYxcf410


東仙「――鬼道とはその番数ごとに定められた言霊を詠唱し、術名を叫ぶことにより発動する霊術の一つだ」


蘭子「うむ!」


東仙「鬼道は主に「破道」「縛道」に大別され、それぞれに一番から九十番台まで番数と詠唱が定められている。術者にもよるが基本的には番数が高ければ高いほど強力な鬼道となる」


蘭子「うむ!!」


東仙「例えば、私が先程使っていたものは破道の五十四番『廃炎』といい、大まかに割り振れば中級鬼道に該当する」


蘭子「うむ!!!」


東仙「これだけ興味を持ってもらえると、私もつい解説に熱が入ってしまうな。君に教えた時と同じだ、飛鳥」


飛鳥「ボクらのような年頃だと、どうしてもこういう類のものに心惹かれてしまうのさ。14歳の性(さが)ってヤツかな」


蘭子「言霊より出ずる禁じられし魔術! その力、我が身に堕ろすことは可能か?」


東仙「破面である飛鳥と違い君は人間だ。残念だが鬼道の習得は不可能と言っていいだろう」


蘭子「うう… 無念よ」


飛鳥「ん? そういえば東仙さんも蘭子の言葉を理解しているみたいだけど…」


東仙「純粋なものはそれ同士引かれ合うものだ。言語の違いなど取るに足らないことだよ」


東仙「しかし、この短期間で君に続いてまたも鬼道に関心を持つものが現れるとは、風変わりなこともあるものだな」

185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/04(月) 21:59:31.70 ID:HSYxcf410


飛鳥「『南の心臓、北の瞳、西の指先、東の踵、風持ちて集い、雨払いて散れ』」


飛鳥「縛道の五十八、『掴趾追雀(かくしついじゃく)』!」シーン


飛鳥「くそっ、ダメか」


東仙「逸る気持ちは分かるが、一番台の鬼道すら発現していない君に五十番台の鬼道はまだ早い。先日も同じことを言っただろう」


蘭子「飛鳥よ! 我が言霊の力、しかとその瞳に焼き付けるがよい!」


蘭子「『君臨者よ! 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ! 真理と節制! 罪知らぬ夢の壁に僅かに爪を立てよ!』」


蘭子「破道の三十三!『蒼火墜(そうかつい)』っ!!」ドヤッ



ドガアアアアアン!!!!!!



蘭子「!?」


飛鳥「!?」


蘭子「これはまさか、我の中の秘めたる力が…!?」


東仙「今の爆発音、外からか」


186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/08(金) 13:54:54.60 ID:uBGLGa7Xo
勘違いする蘭子ちゃんかわいい
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/10(水) 11:34:24.57 ID:7WrUvx8R0
保守
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/11(木) 12:51:17.76 ID:k6enzAqW0
 
多忙で書く時間が取れそうにないので夜になったら結末までの大まかなプロットを投下します
大体の流れだけなので一部のエピソードや本来挿話として入れるつもりだった幾つかの小話は入っていません
最後まで書き上げられず申し訳ありません


※現世で命を落とした飛鳥と破面飛鳥は同一の存在。物語上で時折飛鳥が言っている“元のセカイ”“在るべきセカイ”などというものはなく、飛鳥は同一の世界線上で命を落としている
※飛鳥は死後、魂魄として辿るはずのさまざまな仮定をすっ飛ばして破面として“発生”しており、また最大の例外事項として心を失っていないため虚(破面)でありながら身体に孔はない
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/11(木) 12:55:21.62 ID:2QtOyk13o
時間あるときにゆっくりでいいから続けてくれてもいいのよ
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/11(木) 13:18:46.53 ID:EJNgrVtUO
なん…だと…
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