渋谷凛「GANTZ?」 その3

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133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/07(月) 03:38:49.70 ID:kZd3IEN20
最近、思うんだけどさ。
HACHIMANとかいうタグ付ける奴うざくね?
八幡tueee!が嫌いとか言ってる奴、多すぎ。
「キリトの活躍奪うんじゃねえ!」
「ハチアスとかやめて!」
「上条さんの役割奪うなよ!」
「デレマスのヒロインNTRさせんな!」
これ、マジでキモいからね。
いやさ、お前らの気持ちも分かるよ?
何でも出来て、最強の八幡に嫉妬してるんだよね。お前らは葉山みたいな性格だもんね。
でも、落ち着いて考えてみろよ。
お前らが何と言おうと八幡が最強なのは誰の眼に見ても明らかんだから仕方ないじゃん。
ヒロインを奪われる〜とかさ、クソみたいなキリト、上条辺りに救われるよりも八幡に救われる方が幸せに決まってるよね。
まずは誰よりも八幡が強い事実から目をそらすなよ。それは誰の目にも明らかだろ?
それを劣っている立場の奴等が「俺達の役割を奪うなよ」っていうのは成り立たないでしょ。
いやね、作品を汚すなってのは分かるよ?
例えばキリトが総武高校に転校してきてヒロインNTRしたなら、俺もキレて潰しにかかるわww
でもさ、八幡なんだから仕方ないじゃん。
もうワガママ言うのやめろよな。
八幡が主人公なら皆が救われるんだって。
キリトも上条も士道も必要ないからね?
あんなん好きな奴等はガイジだからね?
もうさ、他作品をsageするなとかいうガイジの話なんか聞くのも飽々してるんだわ。
あのね、sageしてるんじゃないの。
八幡が最強だから、周りが雑魚に見えてしまうのは仕方ない事なんだよ。
八幡が最強なのが気持ち悪いとか言うけど、実際にその世界に八幡がいれば最強なのは間違いないんだから当たり前だよね。
ゴミみたいな作品なんて八幡に蹂躙されて然るべきなんだよ。それによって俺達の目に触れる機会も増えるんだから感謝しろよ。
以上、クソアンチ共を完全論破。全員、速やかに砕け散れよ。
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/07(月) 03:39:34.40 ID:kZd3IEN20
最近、思うんだけどさ。
HACHIMANとかいうタグ付ける奴うざくね?
八幡tueee!が嫌いとか言ってる奴、多すぎ。
「キリトの活躍奪うんじゃねえ!」
「ハチアスとかやめて!」
「上条さんの役割奪うなよ!」
「デレマスのヒロインNTRさせんな!」
これ、マジでキモいからね。
いやさ、お前らの気持ちも分かるよ?
何でも出来て、最強の八幡に嫉妬してるんだよね。お前らは葉山みたいな性格だもんね。
でも、落ち着いて考えてみろよ。
お前らが何と言おうと八幡が最強なのは誰の眼に見ても明らかんだから仕方ないじゃん。
ヒロインを奪われる〜とかさ、クソみたいなキリト、上条辺りに救われるよりも八幡に救われる方が幸せに決まってるよね。
まずは誰よりも八幡が強い事実から目をそらすなよ。それは誰の目にも明らかだろ?
それを劣っている立場の奴等が「俺達の役割を奪うなよ」っていうのは成り立たないでしょ。
いやね、作品を汚すなってのは分かるよ?
例えばキリトが総武高校に転校してきてヒロインNTRしたなら、俺もキレて潰しにかかるわww
でもさ、八幡なんだから仕方ないじゃん。
もうワガママ言うのやめろよな。
八幡が主人公なら皆が救われるんだって。
キリトも上条も士道も必要ないからね?
あんなん好きな奴等はガイジだからね?
もうさ、他作品をsageするなとかいうガイジの話なんか聞くのも飽々してるんだわ。
あのね、sageしてるんじゃないの。
八幡が最強だから、周りが雑魚に見えてしまうのは仕方ない事なんだよ。
八幡が最強なのが気持ち悪いとか言うけど、実際にその世界に八幡がいれば最強なのは間違いないんだから当たり前だよね。
ゴミみたいな作品なんて八幡に蹂躙されて然るべきなんだよ。それによって俺達の目に触れる機会も増えるんだから感謝しろよ。
以上、クソアンチ共を完全論破。全員、速やかに砕け散れよ。
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/07(月) 03:40:25.73 ID:kZd3IEN20
最近、思うんだけどさ。
HACHIMANとかいうタグ付ける奴うざくね?
八幡tueee!が嫌いとか言ってる奴、多すぎ。
「キリトの活躍奪うんじゃねえ!」
「ハチアスとかやめて!」
「上条さんの役割奪うなよ!」
「デレマスのヒロインNTRさせんな!」
これ、マジでキモいからね。
いやさ、お前らの気持ちも分かるよ?
何でも出来て、最強の八幡に嫉妬してるんだよね。お前らは葉山みたいな性格だもんね。
でも、落ち着いて考えてみろよ。
お前らが何と言おうと八幡が最強なのは誰の眼に見ても明らかんだから仕方ないじゃん。
ヒロインを奪われる〜とかさ、クソみたいなキリト、上条辺りに救われるよりも八幡に救われる方が幸せに決まってるよね。
まずは誰よりも八幡が強い事実から目をそらすなよ。それは誰の目にも明らかだろ?
それを劣っている立場の奴等が「俺達の役割を奪うなよ」っていうのは成り立たないでしょ。
いやね、作品を汚すなってのは分かるよ?
例えばキリトが総武高校に転校してきてヒロインNTRしたなら、俺もキレて潰しにかかるわww
でもさ、八幡なんだから仕方ないじゃん。
もうワガママ言うのやめろよな。
八幡が主人公なら皆が救われるんだって。
キリトも上条も士道も必要ないからね?
あんなん好きな奴等はガイジだからね?
もうさ、他作品をsageするなとかいうガイジの話なんか聞くのも飽々してるんだわ。
あのね、sageしてるんじゃないの。
八幡が最強だから、周りが雑魚に見えてしまうのは仕方ない事なんだよ。
八幡が最強なのが気持ち悪いとか言うけど、実際にその世界に八幡がいれば最強なのは間違いないんだから当たり前だよね。
ゴミみたいな作品なんて八幡に蹂躙されて然るべきなんだよ。それによって俺達の目に触れる機会も増えるんだから感謝しろよ。
以上、クソアンチ共を完全論破。全員、速やかに砕け散れよ。
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/07(月) 03:42:53.03 ID:kZd3IEN20
最近、思うんだけどさ。
HACHIMANとかいうタグ付ける奴うざくね?
八幡tueee!が嫌いとか言ってる奴、多すぎ。
「キリトの活躍奪うんじゃねえ!」
「ハチアスとかやめて!」
「上条さんの役割奪うなよ!」
「デレマスのヒロインNTRさせんな!」
これ、マジでキモいからね。
いやさ、お前らの気持ちも分かるよ?
何でも出来て、最強の八幡に嫉妬してるんだよね。お前らは葉山みたいな性格だもんね。
でも、落ち着いて考えてみろよ。
お前らが何と言おうと八幡が最強なのは誰の眼に見ても明らかんだから仕方ないじゃん。
ヒロインを奪われる〜とかさ、クソみたいなキリト、上条辺りに救われるよりも八幡に救われる方が幸せに決まってるよね。
まずは誰よりも八幡が強い事実から目をそらすなよ。それは誰の目にも明らかだろ?
それを劣っている立場の奴等が「俺達の役割を奪うなよ」っていうのは成り立たないでしょ。
いやね、作品を汚すなってのは分かるよ?
例えばキリトが総武高校に転校してきてヒロインNTRしたなら、俺もキレて潰しにかかるわww
でもさ、八幡なんだから仕方ないじゃん。
もうワガママ言うのやめろよな。
八幡が主人公なら皆が救われるんだって。
キリトも上条も士道も必要ないからね?
あんなん好きな奴等はガイジだからね?
もうさ、他作品をsageするなとかいうガイジの話なんか聞くのも飽々してるんだわ。
あのね、sageしてるんじゃないの。
八幡が最強だから、周りが雑魚に見えてしまうのは仕方ない事なんだよ。
八幡が最強なのが気持ち悪いとか言うけど、実際にその世界に八幡がいれば最強なのは間違いないんだから当たり前だよね。
ゴミみたいな作品なんて八幡に蹂躙されて然るべきなんだよ。それによって俺達の目に触れる機会も増えるんだから感謝しろよ。
以上、クソアンチ共を完全論破。全員、速やかに砕け散れよ。
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 06:31:02.68 ID:W+pmM9ig0
おっつおっつ
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/07(月) 09:13:49.49 ID:nEqk3jGDO
おっつおっつ☆ばっちし
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/07(月) 14:14:15.94 ID:mFhYeQkzo
これラスボスは凛ちゃんなのでは??
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/07(月) 16:05:51.05 ID:arSZl/LkO
乙乙
まってた
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/07(月) 17:58:48.66 ID:DZaph+dWo
今回のボスってルシファーなのか?
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/09(水) 01:31:25.40 ID:fCQGXPsh0
堕天使はその手に持った紫電迸る三つ又の槍を凛達に突いて来る。

その攻撃は凛の背から生み出される黒い翼によって防がれていたが、黒い翼は攻撃を受けるたびに小さくなっていた。

その間にも凛の足が黒いドロドロとした液体に包まれていき、膝下まで真っ黒な液体が不気味に躍動していた。

西「チッ、敵さんは待ッちゃくれねェか」

凛「ねぇ……これって……何を転送してるの?」

西「スーツだ。ハードスーツよりもさらにパワーアップしたシロモンで、お前の意思を汲み取ッて形状を変化させる。イメージしてみろよ、お前だけのスーツッてヤツを」

凛「ふぅん……」

すでに凛の腹部まで真っ黒な液体で満たされていたが、液体は凛の身体にへばりつく様にして覆い被さっており、液体形状なのに重力に反して凛の身体を登って行った。

液体は凛の身体を包み込み、凛の首元まで来た液体は少しの間首下で蠢いていた。

西「な、なんか見た目は黒いスライムに包まれてるみたいだな……お前、気持悪くねェの?」

凛「……結構心地いいよ? 水の中を漂ってるみたい……」

西「物怖じとか全くしねーんだな……」

凛「……今更でしょ?」

西「そりゃそーか、血のシャワーを浴びて平然としてるヤツがこんなモンにビビるワケねーよな」

凛「……」
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/09(水) 01:32:07.53 ID:fCQGXPsh0
凛は黒い液体に頭も飲み込まれて、ウゾウゾと蠢く黒く不気味なスライムにその身を預けた。

それは数秒。

すぐに黒いスライムに亀裂が入る。

亀裂は広がり、その中から白い肌が見えた。

スライムは割れた場所から粘着質の液体が、ふわりと絹のように柔らかい形状に変化していく。

まるで布のような状態に変化したそれは、内部にいた凛の肌を優しく包んでいた。

それはスーツとは言えない形状。

手には漆黒のオペラグローブ。

背中が大きく開いた露出が大目の漆黒のイブニングドレスが凛の身体を包み込み、

その姿は、凛がいつか見た夢で着ていたシンデレラガールになった時の衣装をそのまま漆黒に変化させた姿だった。

凛「何……コレ……ドレス?」

西「お前のイメージを反映させるスーツなんだけど……お前、そンな趣味あッたン?」

凛「イメージ……か。まだ私は、こんな事を……」

凛は少しだけ自分の着ているドレスを見てほんの少しだけ悲しげな表情をする。

それもほんのわずかで、凛は攻撃をし続ける堕天使に視線を向け、

凛「……それじゃ、倒してくるから、その槍貸して」

凛は西に渡していた槍を受け取り、堕天使と向き直り槍を構え、凛の槍と堕天使の槍は激しくぶつかり合った。
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/09(水) 01:32:42.10 ID:fCQGXPsh0
トレビの泉に集まった様々なガンツチームの人々は一様に空を見上げている。

視線の先には、堕天使と激しい空中戦を繰り広げる黒く輝く翼で空を駆ける漆黒のドレスの少女。

少女、凛が戦い始めた当初、何人かは凛の援護をしようと銃を堕天使に向けていた。

しかし、堕天使も凛もその動きは速すぎた。

照準など合わせることも出来ないほどのスピードで動き、戦っている両者。

両者が止まる時は、槍と槍がぶつかり合い、周囲一帯に衝撃波が巻き起こる瞬間だけ。

その衝撃波の威力は数百メートルは離れた場所にいるスーツを着た人間が吹き飛ばされるほど。

やがて、地上にいる人々はただ空を見上げることしか出来なくなっていた。

あまりにもレベルの違う戦い。

今までミッションを生き抜いてきた人間ですら、今までの戦いは児戯に等しいと感じさせるほどの戦い。

この場にいる半数以上が何が起きているのかもわからない戦い。

そんな戦いに介入できるものなどいなかった。

戦場で猛者たちは凛の姿を見続ける。

吉川「アイツが……渋谷か……」

武田「ああ……」

前嶋「……すッげ」

メアリー「何……あれ……」

岡のロボットの上で、襲いかかる衝撃波に耐えながら戦いを見る男達だいた。

安孫子「化け物だ」

藤本「間違いねェ」

関根「お、女の子……だよな?」

矢沢「ハッハッハ、こりゃもうどーすることも出来んわ」

そして、トレビの泉の広場の中央。

池上「ふ、ふふ……何よ、これ……」

黒名「すご……い……」

桑原「……あのバケモン嬢ちゃん……うまそうやな……」
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/09(水) 01:33:40.00 ID:fCQGXPsh0
そんな中、凛と堕天使の戦いの真下に駆けて来た人間がいた。

岡「……渋谷凛……俺が守る必要ないやんけ……」

上空で恐ろしい速度で戦っている凛を見上げてひとりごちる岡。

岡「島村卯月に本田未央……そんで、アイツも合わせて俺よか強い人間が3人もおるとはなァ……しかも、まだガキんちょで……女やで……」

岡が見上げる戦いが一層激しさをましていく。

岡「なッさけないわなァ、俺……なんかドッと疲れてもーたわ……」

戦いが終わりを迎えようとしていた。

凛の槍が、堕天使の額に突き刺さる。

激しい金属音がギュインギュインと鳴り響いて堕天使の頭は爆発し、同時に肉体も爆散して空に残ったのは凛だけとなった。

岡「やりおッた……」

上空の凛に西が近づいて戦いの勝利を労っているようだったが岡は視線を落としてその場に座り込んだ。

そしてタバコを取り出して火をつけると一服を始めた。

岡「これで……終わりかのォ……」

岡の視界に転送されていく人間が見えた。

それは敵が完全に倒されてミッションが終わったという証。

岡「あの嬢ちゃんを守る必要も無くなッた以上、カタストロフィに備えんとあかんな……」

タバコを吸いながらもこれからの事を考える岡。

その岡の元に近づいてくる3つの影があった。
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/09(水) 01:34:43.71 ID:fCQGXPsh0
玄野「ここなら、いけッぞ……」

加藤「け、ケイちゃん……何をするつもりなんだ?」

玄野「渋谷のヤツを捕まえる。多分アイツは俺達とは別のどこかからこの場所に来たんだ……俺達のガンツ部屋に戻ッてもアイツとは会う事はできない。そンなら、アイツが転送される前に捕まえて、無理矢理俺達のガンツ部屋に連れ帰ッてやる」

岸本「で、でも、渋谷さん……空を飛んでるし、捕まえるッてどうやッて……」

玄野「決まッてッだろ。あそこまで飛ぶンだよ。全力でジャンプすりゃ届くはずだ」

十数メートル上空の凛を見ながら玄野はその場で屈んで足に力を込め始める。

その玄野達に岡は声をかけた。

岡「お前、なにやッとんのや?」

玄野「アンタ……岡か……」

玄野は座りながらタバコを吸う男が先ほどまで獅子奮迅の戦いをしていた岡だという事に気付く。

岡「もう終わッたやろ、戻されとるで大人しくしとれや」

玄野「……まだ終わッてねェ。アイツを……渋谷のヤツを止めねェと、とんでもねェ事になる……」

岡「何ィ?」

玄野「あの馬鹿野郎……島村さんと本田さんが死んじまッて、昔のブチ切れてた頃に戻りやがッて……冗談じゃねェッてーの……」

岡「おう、お前今、島村と本田言うたか?」

岡は玄野が言った卯月と未央の名前に反応する。

岡「お前、あの嬢ちゃん等とも知り合いなんか?」

玄野「あ? ああ、そーだよ! 渋谷のヤツも島村さんも本田さんも俺達のチームの仲間だ!」

岡「ほぉ……そんで、あの嬢ちゃんは何をやらかそうとしとるんや?」

玄野「アイツは…………!! やべェ!! 渋谷が転送され始めた!!」

岡との会話も途中、玄野は凛が転送され始める場面を見て、急いで跳躍の構えを取る。

しかし、その玄野に加藤から声が掛かる。
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/09(水) 01:35:28.35 ID:fCQGXPsh0
加藤「ケイちゃん!!」

加藤は両手をバレーのレシーブのように前に出して、両手を重ねた。

それを見てすぐに加藤が手を足場にして凛に向かって投げてくれる体勢を取ってくれていると判断した玄野は、跳躍するより加藤に投げてもらうほうが速いと考え、

玄野「おうッ!!」

二人同時に頷きあって玄野は加藤に向かい全力で走り、加藤の前に到達した瞬間軽く地面を蹴って、加藤の手に足を乗せる。

加藤は玄野が自分の手に足を乗せた瞬間、全力で上空の凛に向かって玄野を押し上げた。

大気を切り裂き高速で空を飛ぶ玄野は一瞬で凛の元にたどり着いて、凛の身体を羽交い絞めにした。

玄野「捕まえた!!」

凛「……アンタ、何するのよ……」

西「!? てめェッ、玄野ッ!!」

凛は玄野が飛んでくる姿を見えていた。

しかし、自分に向かって飛んでくる玄野を叩き落したり回避したりしようとはしなかった。

玄野が自分に攻撃をしてくる様子もなく、ただ近づいてくるだけだったから。

しかし、まさか抱きつかれて羽交い絞めにされるとは考えておらず、振りほどこうとするが、振りほどく寸前に凛の頭は完全に転送されきった。

同時に凛に接触している玄野も転送されていく。

玄野「よしッ!!」

玄野は自分の目論見がうまく行ったのだと考えながら転送されていき、その様子を舌打ちしながら西は見続ける。

西「チッ……コイツを別に転送……くッそ、間にあわねぇ……」

西「……まァいい。今更コイツがどうこうできるかッてーの」

西は凛と玄野が完全に転送された所を見て、自分もその場から姿を消す。

その様子を地上から加藤と岸本と岡は見続けていた。

加藤「ケイちゃん……頼んだぞ……」

岸本「玄野君……渋谷さん……」

岡「……蚊帳の外、やのォ……まァええわ」
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/09(水) 01:37:26.06 ID:fCQGXPsh0
玄野がまず目にしたのはかなりの広さがあるホールだった。

自分は今、少し高い壇上にいてホールを見渡している状態になっていると気付く。

その次に気付いたのは、腕全体から伝わる柔らかい感触。

自分の視線のすぐ下に黒い髪、凛をまだ拘束しているのだと気がついた。

その拘束している凛から、

凛「……ちょっと、放してよ」

玄野はここが東京のガンツ部屋でないことに小さな疑問を抱いたが、すぐに今時分がすべき事は凛を説得する事だと思い出し、

玄野「放さねェぞ!! お前がバカな考えを止めるまでこのままだ!!」

凛「はぁ……」

凛を絶対に放さないと両腕に持てる力を入れ続ける玄野だったが、玄野の拘束はいとも簡単に凛に外されてしまった。

玄野「なッ!?」

そのまま玄野は凛に軽く押されてその場で尻餅をついて凛を見上げた。

その玄野に横から声が掛かる。

西「ハッハッハ!! おまえ何やッてンの? 何をどーしたいわけ?」

玄野「……渋谷を止める。お前もだ、西」

西「ハッ!! 止める? 俺達を? ハーッハッハッハッハ!! バーーッカじゃねェの? おまえ如きが俺達を止める? できるワケねーだろ!!」

玄野「……渋谷!! 目を覚ませよ!! お前はこいつみたいなヤツじゃねーだろ!! 世界を支配するとかバカな事言ッてンじゃねーよ!!」

西「おいおい、俺達の夢にケチつけてンじゃねーよ。渋谷、お前もこいつに何か言ッてやれ」

西が凛の横に立ち、凛の肩を叩く。

無言で玄野を見下ろしていた凛は、暗い目で玄野を見ながら、

凛「……私の邪魔をしないで。私はみんなの笑顔が曇らない素敵な世界を作らないといけないんだからさ……」

玄野「……渋谷……ッくそ……」

西「つーワケだ、邪魔しなけりゃおまえも生かしておいてやるッてンだから、黙ッてろッつーの」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/09(水) 01:38:22.65 ID:fCQGXPsh0
玄野は凛の目を見て、今の凛は何を言っても聞き入れようとしないと理解してしまった。

自分など見ていない、凛は別のものしか見えていないのだということが分かり。

説得なんて無理……そう思い絶望しかけた玄野は背後に人の気配を感じて振り向いた。

そこにいたのは、加蓮と奈緒。

少し離れた場所にPと真っ青な顔をした美穂達もいた。

凛「あ、加蓮、奈緒。ごめん、待たせちゃったね」

明らかに声質が違う凛の声に玄野は再び凛の顔を見る。

すると凛の顔は卯月と未央と一緒にいるときに近い表情にまで戻っていた。

それに小さな希望を抱き、玄野は凛の説得を続けようとしたが、加蓮と奈緒は玄野と凛の間に入ったことで玄野は出掛かった声を止めた。

加蓮「凛」

奈緒「凛、お前……」

凛「どうしたの? 二人共、難しい顔して……?」

凛は加蓮と奈緒が浮かべる表情を見ていた。

二人共、特に奈緒が言葉を出しずらく戸惑っている表情をしている。

奈緒が言いあぐねいていると、加蓮が凛に聞いた。

加蓮「凛。さっきの話の続き。一体何があったのかを教えて」

奈緒「あ、ああ、そうだ。教えてくれよ凛、お前に何があったんだよ……?」

凛「あっ、うん。そうだよね、二人には話さないといけないね……」

凛は加蓮と奈緒の顔を交互に見て、視線を落としながら話し始めた。
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/09(水) 01:38:51.76 ID:fCQGXPsh0
今日はこの辺で。
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/09(水) 02:04:44.35 ID:8phcNhCMo

話せばわかる
凛の方はわかるかな?
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/09(水) 09:28:22.04 ID:1QbBOOyiO
おっつおっつ
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/09(水) 19:46:51.15 ID:87XmKIako
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/31(木) 19:36:13.77 ID:Uh2NBEhwO
西君が最高に楽しそうで何よりです
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/07(木) 21:50:45.23 ID:fd+Lqc6o0
保守
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/17(日) 23:55:43.31 ID:1ISX7sAYo
まだかな
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 12:05:53.06 ID:jwaybzZdO
そろそろ帰ってこないかな
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 21:13:23.61 ID:dhhaly5t0
しぶりんと西くん全部手に入れて俺TUEEEE状態で面白くないし風呂敷も畳めず逃げたってところかな
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/01(日) 14:06:43.09 ID:tW90JyQl0
凛「最初はさ、みんなを生き返らせたかったんだよ」

凛「もう一度みんなと会いたかった、それだけを考えていた」

凛「でも、みんなを生き返らせる前にやらないといけないことが出来た」

加蓮「それって、凛がさっきやってた事?」

凛「そう、私は生きる価値の無いクズ共をこの世界から消し去る」

奈緒「っ!」

凛の言葉に加蓮と奈緒は息を呑む、二人だけではなく玄野もP達も皆、凛を見続けその言葉を聞き続ける。

加蓮「本気なの?」

凛「本気だよ。それに見たでしょ? 私はもう行動に移している」

加蓮「……ふぅ、なんでまたそんな事しようと考えたワケ? アタシの知ってる凛はそんな事をするような子じゃなかったと思うけど?」

凛は下を向いて息を吐く。

凛「みんなを生き返らせようと考えた私はガンツを作り出した張本人に会いにいったんだ。そこで私は地獄を見た」

加蓮「地獄?」

凛「人がさ、沢山殺されてたんだよ」

奈緒「殺されて……?」

凛「本当にたくさん人が殺されてた……子供から老人まで、全員が人としての尊厳を踏みにじられて殺されていた」

凛「ある人達は実験動物のように扱われて、麻酔もかけられずに全身バラバラにされていた。別の人は宇宙人の細胞を移植されて人間としての形も無くなってもだえ苦しんだ挙句殺されていた。他にも、様々な薬や道具を使われて何かのデーターを死ぬまで記録されていた」

凛「小さな子供が身体中の血や内臓を生きたまま取り出されて死んでいた。小さな女の子が身の毛もよだつような男に汚された挙句殺されてた。私達と同じくらいの年の人達が死ぬときにどんな事を考えるのかを聞きたいという意味の分からない理由で殺されてた」

凛「全部ガンツを作り出した人間がやらせていたことだったよ」

加蓮「……」

奈緒「なんだよ……それ?」

凛「信じられなかった、あんな事をする人間が存在するなんて……ううん、あんな奴等は人間なんかじゃない。ゴミクズ以下の存在共……死んで当然のクズ共……」

奈緒「ちょ、ちょっと待てよ!」

凛「どうしたの?」

奈緒「どうしたのって……何言ってるんだよ凛……」
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/01(日) 14:07:22.33 ID:tW90JyQl0
奈緒は凛の言う事がいまいちピンと来なく、困惑した表情で凛に問いただす。

言葉で聞いただけでは凛の見たものがどれほどモノだったのかが分からないといった様子で。

それを察した凛は、

凛「……見てもらったほうがいいよね。西、映像、残ってるよね?」

西「ん? ああ」

凛「立体映像で出して」

西「へいへい」

西は凛に言われるがまま立体映像を生み出した。

壇上にあるガンツから少し離れた場所に生々しい立体映像が浮かび上がり始めていく。

それは凛があの日見た光景と同じもの。

様々な人体実験、研究員達が非道な実験を被験者達が死ぬまで行なっている光景。

被験者達は皆、生きたまま苦しみもがき地獄のような実験を受けさせられていた。

研究員達の中にはニヤケ顔で実験を行なう者もおり、その様な研究員が行なう実験は特に常軌を逸した実験で、被験者達は皆、人としての形も残らずに死んでいっていた。

その映像、まるですぐ傍で行なわれているかの錯覚を起こすほどリアルな映像を見て加蓮と奈緒は、

加蓮「酷いね」

奈緒「うっ、ううっ……」

加蓮は少しだけ顔を顰めて、奈緒は口元に手を押えてこみ上げてくる吐き気を抑えていた。

さらに凛は続けようとしたが、先ほどからこちらを伺っていたPと美穂達がその映像を見て、

P「うっ、げほっ!」

Pは今までの人生で見たことも無いようなグロテスクな映像を直視し、逆流してきた胃液と吐瀉物を吐き出し、

「「「「」」」」

美穂達4人は、あまりにもリアルに人が解体されるシーンを見て、その場で気絶してしまった。

それは平和な日常を送っていた5名にとってあまりにも厳しすぎる映像だった。

Pがその場で吐き続ける所を見て、凛は映像を止めるよう西に呼びかけた。

凛「西、もういいよ。映像消して」

西「おー」

映像が消え、凛はPに少し視線を送っていたが、すぐ落ち着くだろうと結論付けて加蓮と奈緒との話に戻る。
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/01(日) 14:07:55.51 ID:tW90JyQl0
凛「今のは私の見たものの一部」

加蓮「一部?」

奈緒「ま、まだ何かあるのかよ……」

凛「……うん、あった」

凛はその時の事を思い出したのか歯軋りをして瞬きもせずに下を向きながら零し始めた。

凛「……未央も、卯月も、同じような目に会わされてた」

加蓮「っ……」

奈緒「え……え? 未央と卯月が?」

凛「二人共必死に助けてって懇願してた。何度も何度も何度も……だけど、あのクズ共は二人を少しずつ傷つけていった。二人がどんなに叫んでも止めなかった……それどころか楽しむように二人を傷つけて……二人の身体……ぼろぼろになって……反応が無くなったら、もっと酷い事をして……」

凛の瞳から涙が零れ落ち始めた。

凛「二人共……女の子なのに……あんな……何人もの男達に……ぐちゃぐちゃにされて……何度も何度も……あんな酷い事を……信じられない……許せない……」

凛の血走った目から涙が落ち続けて、握り締めた手はスーツが無ければ爪が食い込んで手の肉を抉り取ろうかというほど力が込められていた。

凛はその状態のまま視線を二人に向けて続ける。

凛「だから、私もあのクズ共を殺してやったんだよ」

凛の目は狂気の光が宿っていた。

凛「二人を傷つけ苦しめたクズやそれに加担するクズ共は全て始末してやった」

凛「私のこの手で、一匹ずつね、ふ、ふふ……」

凛が握り締めた手を開きながら、小さく笑い始める。

その様子をその場にいる皆が見ていた。

加蓮は小さく息を吐いて何かを考えながら。

奈緒は戸惑う様子で凛と加蓮を交互に見ている。

Pは吐き気がおさまったのか口を押えながら。

玄野は苦虫を噛み潰したような顔で。

西だけはニヤニヤと笑いながら。

その中で、戸惑いながらも奈緒は凛に言葉をかけた。
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/01(日) 14:08:48.10 ID:tW90JyQl0
奈緒「そ、そんな事があったんなら凛の気持ちも分からないことも無いけどさ……」

凛「そうだよね? 奈緒もそう思ってくれるよね?」

奈緒「あ、ああ」

凛「ふふ……なら、奈緒もこれから私と一緒に生きる価値の無いクズ共を消していくことに手を貸してくれるよね?」

奈緒「な!? ま、待てよ! 卯月と未央に酷い目をあわせた奴等を殺したことでお前の気は済んだんじゃないのか!?」

凛「気が……? ああ、そっか、そうじゃないんだよ奈緒」

奈緒「何がだよ!?」

凛「未央と卯月を苦しめたクズ共は当然殺した。だけど、それに勝るとも劣らないようなクズ共がこの世界には蔓延っている。そんなクズ共が残っていたら、みんなを安心して生き返らせることができないでしょ?」

奈緒「く、クズ共って……そんな奴等一体どこに……?」

凛「例えばさっき私が殺した奴等。奴等は権力を持ったクズ共。権力やお金を使って自分達の欲望を満たし、その為に罪も無い人達を何人も殺していたような連中。死んでも構わないようなクズ共」

奈緒「お、おい……」

凛「そんな奴等はまだまだ腐るほどいる、そしてそういう人間を消していくのと平行して凶悪犯罪者のような明らかに生きている価値の無いクズも消す。例外なんて一切無い、クズは全て処分してやる」

奈緒「ま、待てって……」

凛「大変だと思うけどさ、そうやってこの世界に存在するゴミクズをきれいにしたら、そこはとても素晴らしい世界になると思わない? みんなはもう傷つけられることなんて無い、苦しむことなんて無い、みんな笑顔でいられる!」

奈緒「待てってんだろ!! 聞けよ!!

凛「奈緒?」

奈緒「お、お前のやろうとしてることは人殺しなんだぞ!? それは理解してんのかよ!?」

凛「人殺しじゃないよ。私が殺そうとしているものは人なんかじゃない、人の形をした別の生き物……そういつも狩りをしている宇宙人のようなもの。奈緒だって宇宙人を殺すことに躊躇いはしないでしょ?」

奈緒「ち、違うだろ!! 人は人だ!! 悪人だろうがなんだろうが人を殺すのは駄目だって!! お前後悔するって!!」

凛「後悔? するわけないでしょ? 私のやっている事は正しいんだから」
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/01(日) 14:09:19.75 ID:tW90JyQl0
自身の行いを正当と断言する凛にそれまで目を瞑って考えていた加蓮が問いかけた。

加蓮「はぁ……正しい正しくないって言ったら、アンタのやってる事は間違いなく正しくないんだよね」

凛「加蓮?」

加蓮「凛、アンタは間違ってるって言ってるの」

凛「……何が? 私の何が間違ってるっていうの?」

加蓮「何もかも、今アンタがやってること全部」

加蓮から己の行いを全否定された凛は身体を震わして固まった。

そんな事を言われるとは考えてもいなかった凛。

呆然としている凛に加蓮はさらに続ける。

加蓮「何人も何人も人を殺していった先に何があるって? みんなが笑顔でいられる? そんなワケ無いでしょ」

凛「っ!! どうしてそんなこと言うの!? クズ共を消していった先には間違いなく誰もが笑顔でいられる世界があるのに!」

加蓮「ないって、そんなもの」

凛「そんなこと……」

加蓮「だって、ほら。もうアタシ達、アンタの行動を見て笑えてないもん」

凛「……あ」

凛はその言葉で加蓮と奈緒の顔を見た。

加蓮は真顔で冷たい視線を凛に向けている。

奈緒は明らかに苦しげな表情をしている。

二人共笑っていない。

加蓮「それにアンタの言うみんなって卯月や未央も含まれるんでしょ? あの子達が今のアンタを見たら…………絶対泣くよ?」

凛「っぅ!!」

凛の脳裏に卯月と未央の姿が浮かび上がる。

凛には何故かはっきりとその光景が見えた。

今の自分のしている事を卯月と未央に話して、その結果二人が泣き崩れてしまう光景を。
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/01(日) 14:10:26.14 ID:tW90JyQl0
加蓮「そんな事も分からないくらいアンタは追い詰められてるってこと。いつものアンタならそんな事くらいすぐ気付いてたでしょ?」

凛「ぅっ……うぅ……」

加蓮「少し休みなよ。今のアンタはマトモな思考も出来ないほど心が荒んでる」

奈緒「そ、そうだぞ凛! 今のお前はいろんなことがありすぎて疲れてるんだよ、一回さゆっくり休めばお前も冷静になれると思うよ」

凛「うぅ……加蓮……奈緒……」

凛は頭痛が起きはじめた頭を押えながら二人を見やる。

二人共凛を気遣うような優しい視線を送っている。

凛は二人に向かい手を伸ばし始めたが、凛の手は背後から発せられた西の怒号によってピタリと止まる。

西「お、おいッ!! 渋谷ァ!! お前まさか今更になッて俺達の世界征服を止めるとか言うんじゃねーだろうな!?」

凛「西……」

加蓮「……世界征服?」

奈緒「何を……」

西は振り向いた凛の表情を見て目を見開く。

凛は弱弱しく今にも泣きそうな表情だったからだ。

この数日の凛は全てを飲み込むような闇色の眼をしており、狂ったように人を殺していく最中も表情を変えることもなかった。

西が見ていた凛は悪魔のようであり、途方も無い威圧感をもつ魔王の様であった。

だが、今の凛はただの少女にしか見えず、その凛を見て西は焦るように叫んだ。

西「ふざけンなよ!? お前も俺も戻ることなんてできねーンだぞ!? 今更止めるなンてぜッてーに言わせねえぞ!?」

凛「あ、あぁ……」

さらに凛の頭に痛みが走る。

ここ数日の記憶が蘇っていく。

何人も何人も殺している自分の姿。

凛は髪を掻き毟りながら数歩後退し始めた。

加蓮「凛!」

奈緒「おい、凛っ!」

凛「わ、私は、もう後戻りなんて、出来ない、出来ないの」

一歩ずつ加蓮と奈緒から離れていく凛。

凛「私、たくさん、殺して、さっきも……」

数歩後退した凛の肩に手が添えられる。

それは西の手。
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/01(日) 14:10:57.68 ID:tW90JyQl0
西「そーだ!! お前はもう後戻りなんてできねェ!! お前の進むべき道も一つしかねェンだよ!」

凛「私、は……」

加蓮「ちょっと……まさか凛をそこまで追い込んだのは……アンタ?」

奈緒「っ! おいテメー!! 凛から離れろっ!!」

西「るッせェ!! テメー等は黙ッてろ!!」

西は凛の手を引き加蓮と奈緒から距離をさらに取る。

そうして、傍の凛に耳打ちを始める。

西「……おい、渋谷。アイツ等はここにおいて転送で飛ぶぞ……」

凛「……え」

西「……お前はアイツ等と一緒がいいとか言ッてやがッたが、やッぱダメだ。アイツ等はお前をダメにする。今のお前は何なンだよ? 数百人殺しても眉一つ動かさなかったお前はどこに行ッたンだよ?」

凛「待って……私……加蓮と奈緒に……」

西「……チッ……アイツ等がいない場所で俺達がやるべき事をもう一度話しあわなけりゃなンねェな……」

西は加蓮と奈緒を睨みながら自身の周囲に光のキーボードを展開し始めた。

加蓮と奈緒から凛を引き離すために。

これ以上、あの二人と言葉を交わさせないための行動。

しかし、西が転送のプログラムを打ち込む前に、西の眼前に黒い影が現れ西を殴り飛ばした。

西「!? なンッだ……クッソッ!!」

自身を殴り飛ばした人間の姿を見た西は怒気を含ませた声でその人間の名を叫ぶ。

西「玄野……てめェ!!」

玄野「西……お前にこれ以上はやらせねぇ……」

西「なンなンだよ……おまえはよォ!!」

玄野「よくわかッた。止めるべきは渋谷じゃない。アイツはまだ戻れる、話も通じる……お前を止めさえすれば」

西「ンだとォ!?」

玄野「北条さん! 神谷さん! 渋谷の説得は任せた! 俺はコイツをどうにかする!!」

西「…………クッ……ハハハハハ!! ざッけんな! このクソ野郎!! ぶッ殺してやる!!」

西と玄野がお互いだけを見据え、同時に自身の拳をお互いの顔面に向かい繰り出した。
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/01(日) 14:12:04.38 ID:tW90JyQl0
西が玄野によって吹き飛ばされた後、凛は頭を押えてその場に蹲っていた。

その凛に声が掛かる。

加蓮「凛」

奈緒「凛……」

凛「加蓮……奈緒……」

頭を上げて二人を見る凛。

その凛はもうこの数日間変わることすらなかった表情を崩しきってまるで迷子の子供のような表情を作っていた。

強固な意志で自分の行動を自己肯定し続けていたが、自らが助けたかった相手に己の行動を全否定されて凛の幾重にも塗り固められた意思にあっけなくヒビが入ってしまった。

凛「私……もう、沢山人を、殺しちゃったんだよ……」

加蓮「……知ってるよ」

奈緒「ああ……」

凛「なんでかな……? さっきまで間違ってるなんてこれっぽっちも考えてなかった……ううん、今もそう、間違ってないって思ってるのに……なんでこんなに苦しいの……? 私、間違ってるの?」

加蓮「凛……今はそれ以上考えないで」

凛「……ふふ、私は間違ってるのかな? よくわかんない……私は何をしたかったんだっけ? ああ……そうだったよね……みんなが笑って幸せで傷つかない世界を……あれ? でも、加蓮も奈緒も未央も卯月も笑ってくれない……あれ?」

ひび割れた凛の心は加速度的にその傷を広げていく。

奈緒「お、おい、凛!? 大丈夫か!?」

凛「あたま、いたい……私、みんなを、助けたくって……みんなとまた会いたくって……でも、未央も卯月もまた死んで……お父さんもお母さんもハナコも死んで……加蓮と奈緒は生きて……あれ? 未央も卯月も生きて……? でも死んじゃって……あれ?」

加蓮「り、凛?」

徐々に視線が定まらなくなっていき、うわごとを呟くような状態になっていく凛に加蓮と奈緒は焦り始める。

焦る二人を無視するがごとく凛の状態はさらに悪化していく。
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/01(日) 14:13:22.22 ID:tW90JyQl0
凛「わたし……なにをしたかったんだっけ……? みんなを……あれ? みんな……かれんもなおもいる……なにがしたいの……わたしはなにをするの……あれ? わたしのしたいこと……」

加蓮「ちょっと凛!? しっかりして!!」

奈緒「おい! こっちを見ろ! 目を覚ませよ凛!」

凛「わたし……みんなといっしょに……いつまでもいっしょに……そのために……みんなもわたしみたいに……あっ……そっかぁ……いっしょに……わたしみたいに……」

ボロボロと壊れ続ける凛の心はあることを思い出してその崩壊が一時的に停止した。

それは凛の心が安定していた頃の記憶。

卯月も未央も加蓮も奈緒も生きており、その時の自分が強く願っていた想い。

凛「いっしょに……みんなと……いっしょに……みんなも……わたしみたいに……」

虚ろな目線で宙を見上げていた凛だったが、それを思い出した凛は目線だけを動かして加蓮と奈緒を見る。

凛は加蓮と奈緒をその視界に捕らえると、ゆらりと立ち上がり二人を見たままにへらと壊れたような笑顔を浮かべ、その笑顔を見た加蓮と奈緒はビクリと全身を強張らせる。

凛「かれぇん……なおぉ……」

加蓮「り、凛?」

奈緒「お、おい……どうしちゃったんだよ……凛?」

凛「かれんもぉ……なおもぉ……わたしと……いっしょに……なって?」

加蓮「い、一緒?」

奈緒「な、なんなんだよ? か、加蓮、凛はどうしちゃったんだよ!?」

加蓮「アタシもわかんないって!!」

凛「ふたりもぉ、わたしとぉ、おんなじようにぃ、くるってよぉぉぉ!!」

突如、凛は二人に向かって突進し、加蓮を押し倒していた。

加蓮「きゃァッ!?」

奈緒「か、加蓮!?」

凛は加蓮に馬乗りになると加蓮の頭を両手で触れながら吐く息の温度すら感じられるくらいまで近づき、

凛「かれぇぇぇん……わたしといっしょにぃぃぃ……なろぉぉぉよぉぉぉ!!」

加蓮「ひっ!?」

加蓮は凛の眼を至近距離で見て思わず上ずった声を出していた。

完全に焦点も合っておらず、爛々と光る狂った眼。

お互いの額が触れ合うくらい接近していたが、その明らかに異常な凛の顔は加蓮の視界から遠ざかっていった。

奈緒「凛っ!! 何やってんだよ!?」

奈緒によって羽交い絞めにされて無理矢理引き起こされたことによって。
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/01(日) 14:14:15.80 ID:tW90JyQl0
加蓮「な、奈緒」

奈緒「おい凛! とにかく落ち着けよ! 一回…………」

凛「なおぉ?」

凛は奈緒の声を背後から耳にして、そのまま振り向いた。

奈緒が羽交い絞めにしているにもかかわらず。

加蓮「!?」

奈緒「うっ、わぁっ!?」

その結果、凛の首が180度回転し、奈緒は凛と目が合ってしまい、奈緒は反射的に凛の身体を離していた。

凛は蹈鞴を踏んで加蓮と奈緒から離れ、バランスを崩してそのまま倒れてしまう。

四つんばいで蹲っているにも関わらず、首が180度回転している為に顔は天井を向いているという異様な光景。

だが、すぐに凛は首を元に戻しゆっくりと立ち上がり、再び加蓮と奈緒に視線を向けた。

その狂った眼光を向けられた二人は全身を震わせて小さく唾を飲み込んだ。

凛「かれぇん。なおぉ」

加蓮「……奈緒、今の凛、おかしくなってる」

奈緒「……見りゃ分かる」

凛「ふたりも、わたしと、いっしょにぃ」

加蓮「話も通じない、凛の行動も読めない、ならどうする?」

奈緒「……そんなもん、どうにかしてあいつを止めるしかないだろ」

凛「みんなでくるっちゃおぉよぉぉぉ、かれぇぇぇん! なおぉぉぉ!」

加蓮「多少乱暴になっても?」

奈緒「しかたねぇよ! 来るぞっ!」

加蓮と奈緒は突進してくる凛に対処する為に構えを取って3人は交錯した。
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/01(日) 14:14:55.15 ID:tW90JyQl0
玄野と西は激しく殴り合っていた。

西「玄野ォッ!! てンめェェェ!!」

玄野「おおおおおおおおおおおお!!」

最初はお互いの拳が当たっていた。

だが、すぐに差が生まれ始めていた。

西「ッンだよ!! 何で当たンねーンだよッ!!」

西の拳は当たらない。

しかし、玄野の拳は西の顔面に吸い込まれていく。

玄野は西の攻撃を悉くかわし自身の攻撃を一方的に撃ちこんでいた。

西「ざッけンなァ!! クッソォ!! 玄野ォーーーーーー!!!!」

玄野「うッおおおおおおおお!!」

西の渾身の右拳がこれでもかというほど大振りで玄野に襲い掛かる。

しかし、玄野はその拳を半身になりかわすと、身体をねじりながらアッパーを繰り出す。

その玄野のアッパーは攻撃を回避されて無防備な西の顎に吸い込まれ、西は数メートル浮き上がり吹き飛ばされた。

玄野「西……もうわかッただろ……もう……やめろ……」

西「ッグァ……」

戦闘経験の差だった。

積み重ねた戦闘経験の差で西は玄野を正攻法で倒す事は不可能だった。

何度も何度も死線を潜り抜け、100点の星人とも真正面から戦い、それでいて今日まで生き抜いてきた玄野。

かたや不意打ちや隠れて攻撃を行なうスタイルで、さらには再生されてからはまともに戦う事もなかった西。

ハードスーツを装備していれば話は変わったのかもしれない、しかし西は先のミッション時は本体をこの場において立体映像の状態で凛と共にしていた。

ガンツを操作するコンソールを操るには通常スーツの指が一番動かしやすかった為に西は通常のスーツで玄野と殴り合ってしまった。

万能な力を手に入れたといっても過言ではない西には玄野などただの雑魚という認識でしかない。

しかし、現実は真正面から戦えば西は玄野に100回やっても勝つ事はできないのだ。

そう、激昂して肉弾戦を玄野に挑んだ時点で西の敗北は決定していた。
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/01(日) 14:15:51.05 ID:tW90JyQl0
西「クソ……クッソォ!! この俺がなんでテメェなんぞにやられねーといけねーンだよ!? ンなンだよォ!?」

玄野「お前じゃ俺に勝てねーよ……これ以上は俺もやりたくねェ……あきらめろ……」

西「ハァァァ!? テメーーー何俺を見下してンだ!? このカスが調子に乗ッてンじゃねェぞ!!」

さらに頭に血が上った西は玄野に殴りかかるが、先ほどと同じようにカウンターで吹き飛ばされる。

西「グッアアア!? く、クッソ……意味……ワカンねェ、何でこんなクソカスにこの俺が……」

玄野「西……考え直せ。他の道もあるはずだ……」

西「アァッ!?」

玄野「世界を支配するだとか、そんな事を考えるのはもう止めろ……お前にそンな事なンてできるわけねーよ……」

西「ンだと!? 舐めてんのか!? 俺は世界の支配者になる男だ!! テメーのような凡人がこの俺に意見してンじゃねーよカスが!!」

玄野「……世界の支配とか言ッてッけどよ」

玄野「お前、俺にすら勝てねーじゃねーか。そんなヤツが世界を支配するとか……できるわけねーよ」

西「」

プチンという音が西から聞えたような気がした。

同時に西はさも愉快そうに笑い始める。

西「ハッハハハハハッ!! ハッハッハッハッハッハッハ!!!! ハーーーーッハッハハッハハハハハハハハ!!!!」

玄野「ッ!」

西「もういい、よーくわかッた」

西の周りに光のキーボードが現れて西はゆっくりとキーボードに指を伸ばし始める。

西「おまえ、舐めてンだろ? この俺がおまえに勝てない? 寝ぼけてンのか?」

玄野「……」

西「今までおまえを生かしておいてやッたのは単に気紛れにすぎねェンだよ。おまえの生死なんぞ指一本で操れンだよ」

玄野「!!」

西と玄野は今10メートル近く離れていた。

西はその指を光のキーボードに降ろしていく。

それをいつの間にかクラウチングスタートのような姿勢になっていた玄野は見続ける。

西はその玄野を蔑むように笑い、

西「玄野ォ…………逝けよ!!!!」

玄野の脳内の爆弾を発動させるコマンドを入力した。
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/01(日) 14:16:17.02 ID:tW90JyQl0
だが、

西が指を落とした瞬間、

西の視界は目まぐるしく回転していた。

西(なッ!?)

西(何が起きたッ!? 何だッ!? どうなッてンだ!?)

高速で移り変わる視界だったが、背中に強い衝撃を受けると共に西の視界は元に戻った。

西「グハァッ!?」

西は見た。

数メートルはあろう高さから見下ろし、自分を見上げている玄野の姿を。

西(ッンだ? なンでアイツがまだ……)

同時に浮遊感。

西(!?)

どうやら自分は落下していると気がつく。

そして、同時にゲル状の液体も周囲に飛び散っていることに気がつく。

西(何が、一体、なん…………)

そのまま西は数メートルの高さから受身も取らずに床に叩きつけられた。

同時に頭も強く打ち、その意識を闇に落とした。

玄野の最後の攻撃によって限界を向かえ、壁に叩きつけられて壊れてしまったスーツは西の身を守ることは叶わなかったのだ。

油断し、慢心し、玄野を侮りきっていた西は玄野に完全に敗北した。

玄野「ハァッ! ハァッ!」

西が床に叩きつけられてピクリとも動かない様子を、西に向かって全力の体当たりを決行した玄野は見続ける。

少しでも動けばもう一度全身の力を使った体当たりをブチ込んでやると考えながら。

玄野「やッた……みてーだな」

1分近くその状態を維持し、西は動かず完全に気を失ったか、死んだと判断した玄野は西に近づいてその様子を伺った。

玄野「生きて……いる。気絶してるだけか」

小さく呼吸をする西を確認すると玄野はようやく警戒をといた。

玄野「ふぅ……」

玄野は一息ついたその瞬間、鈍い音を聞いた。

メキメキという何かがひしゃげるような音。

その音の方向に咄嗟に顔を向けると、

玄野「なッ!?」

そこには、凛によってハードスーツの中から無理矢理引きずり出される加蓮の姿。

玄野「あ、アイツ、何やッてンだよ!?」

玄野は西を放置し凛によって優しく抱きしめられている加蓮の元に向かった。
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/01(日) 14:16:45.78 ID:tW90JyQl0
今日はこのへんで。
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/01(日) 14:33:29.02 ID:Hye5epciO
乙乙
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/01(日) 14:35:36.24 ID:4yZfTGJ6o
乙乙
更新待ってました。

加蓮負けたのか
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/01(日) 14:58:52.57 ID:f9znM/UvO
ハードスーツ相手にノーマルスーツで勝つとかやべぇな
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/01(日) 15:31:36.20 ID:qxAS1XuC0
今の凛を単騎で狩るのは誰もできんだろ
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 05:06:33.57 ID:62O8zZrBo
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:06:55.55 ID:GVSticqD0
突進してくる凛を止めようとしたのは加蓮。

今の凛は完全に正気を失っていて、無理矢理止めるとなればハードスーツの自分が一番適任。

先ほど押し倒された時に分かったが、今凛が纏っているアイドルの衣装のような真っ黒のドレスは恐らくスーツ。

そうでなければあんなにもあっさりとハードスーツが力負けをして押し倒されるわけがない。

それも自分達も知らないようなスーツ、即ちハードスーツよりも上位のスーツの可能性がある。

全力で掛からないと止める事なんて出来ない。

そう一瞬で判断した加蓮は、ハードスーツの両手を開き、凛の身体を押さえ込もうと両手を突き出す。

加蓮「っ!?」

しかし、凛は加蓮の手に納まる寸前に身を低く落として這うように動き、加蓮の背後に回りこんでいた。

背後に回りこまれて両手を首に回されて抱きつかれた加蓮は凛の声を耳元で聞いた。

凛「これ、じゃま、かれんに、ふれられない」

加蓮「!?」

ベキリと鈍い音を加蓮は聞く。

凛の手が無造作にハードスーツの一部を掴んで剥ぎ取っていた。

少しずつハードスーツが剥ぎ取られていく。

奈緒「凛!! お前、止めろって!!」

凛の行動を止めようと奈緒が先ほどと同じように凛の背後から羽交い絞めをかける。

しかし、

凛「あぁ、なおだぁ、なお、あったかぁい」

奈緒「っ!? か、加蓮! ダメだ、あたしじゃ止めらんねぇ!!」

凛「かれんも、そこからでて、わたしとふれあお? ねっ?」

加蓮「あ、アタシも動けな……キャァッ!?」

凛の手はハードスーツの中心に埋まり、そこから無理矢理ハードスーツをこじ開けていった。

ヘルメットは外して加蓮の顔は見えている、その加蓮の全身が凛の手によって顕になり、ハードスーツから完全に引きずり出される加蓮。

加蓮は凛によって抱きしめられることで完全に拘束される。

優しく抱きしめられているにもかかわらずに身動き一つ取れない加蓮。
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:07:45.23 ID:GVSticqD0
加蓮「うっ、うごけ、ないっ!?」

奈緒「加蓮! 凛っ! おいっ!! もう止めろっ!! 正気に戻れよっ!!」

凛「かれんもなおもかんじる……うれしい……あれ? みおは……うづきは……?」

何かを思い出したように凛が加蓮を見て問いかける。

凛「かれぇん、みおは?」

加蓮「っ! 未央はっ、死んだんでしょっ!?」

凛「し、ん、だ……? あれ……? あれぇ? うづきは? うづきはどこ?」

奈緒「目を覚ませって!! 二人共死んだんだろ!? お前は二人を生き返らせようとしてるんだろ!?」

凛「あっ、あっ、あっ、そうだったよね? ふたりともいきかえってかいほうしないと、わたしがいっぱいてんすうとって……あれ? みんなでいっしょに……しんでる? みおもうづきも……まっしろなひかりにつつまれて……ぱぁーってひかって……いなくなって……でもひどいことされて……いきてて……またしんで……あれ? あれぇ? あれれあれぇえぁぁ?」

凛の眼球がぐるぐると回りだし、凛の身体が痙攣を始める。

それを加蓮は見て、声をかける事は逆効果だと判断して凛を抱きしめた。

凛「かぁれぇん?」

加蓮「凛、アタシを見て、何も考えずアタシだけを見て」

凛「かれぇん……」

加蓮の胸中を察したのか奈緒も同じように凛を背後から抱きしめる。

凛「なおぉ……」

奈緒「凛……あたしも加蓮もここにいるから……あたし達だけ感じろ……他の事は考えるな」

凛「かれん……なお……」

凛の痙攣が小さくなっていく。

凛は二人に抱きしめられながら、二人の体温を感じながら凛はその目を閉じていく。

しかし、その目が閉じきる前に、一人の男の姿と声を聞いた。

玄野「おいッ!! 渋谷ッ!! 止すんだッ!!」

加蓮「っ!」

奈緒「!!」

凛「う……あ……?」

玄野「お前何をしようとしてンだよ!? 北条さんまで殺すつもりか!?」

玄野の目には凛が加蓮をハードスーツから引きずり出して、静止しようとしている奈緒に構わずに加蓮を押しつぶそうとしているように見えていた。

それゆえに何とかして考え直させようと放った言葉だった。

しかし、その言葉が凛の耳から脳まで届き、凛が内容を理解した瞬間、凛の目はカッと見開かれて、
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:08:11.67 ID:GVSticqD0
凛「わたし、かれんを、ころす? わたしが、かれんを?」

加蓮「ちょっ、と!?」

凛「わたし、ころした、かれんも、なおも、みごろしに」

奈緒「や、やばいぞ!? 加蓮っ!! 凛が、凛がっ!!」

玄野の言葉が崩壊寸前の凛の心を後押ししてしまう。

凛の様子はそれまでと比べ物にならないくらいの状態になっていった。

眼球は目まぐるしく動き続け、涙も鼻水も涎も零れ落ち、全身をガクガクと痙攣しながらうわごとを呟き続けている。

凛「おとうさんも、おかあさんも、はなこも、わたしが、みごろしに」

玄野「お、おいッ?」

加蓮「凛っ!! アタシを見てっ!! 凛っ!! ねぇっ!!」

凛「みおも、うづきも、わたし、が、ころ、した」

奈緒「凛っ!! りーーーーんっっっ!!!!」

凛「みんなを……ころしたのは……ワタシ?」

凛が呟いたと同時、凛の脳内で雷鳴が轟くように今までの記憶思い出され、今まで自分が行なっていた行為が津波のように押し寄せてきた。

ネギ星人を刺し殺した記憶。

そのネギ星人が卯月に変わった。

凛「あ」

田中星人を爆殺した記憶。

爆発する寸前の田中星人が未央に変わった。

凛「あがっああぁぁ」

千手観音の額に剣を突き入れた記憶。

千手観音の顔が加蓮に変化する。

凛「あががぎがぐぇあぁぁがが」

チビ星人を吹き飛ばした記憶。

チビ星人が奈緒に変わり、奈緒がぐちゃぐちゃに飛び散った。

凛「あぎぎぎがぎがががががげぇぇぇぇ」

それからも今まで凛が殺してきた全ての星人や人間が、卯月や未央、加蓮に奈緒、父、母、愛犬の姿に変化して、その全ての記憶を凛は余すことなく脳裏に焼き付けてしまう。

ひと際大きく全身を痙攣させて呂律も回らなく唸り声だけを上げていた凛はグルリと白目をむいてその場に倒れた。

凛「あは、ひひひひ、はははは、あぁっはぁっいぃっ」

加蓮「凛!!」

奈緒「おいっ!? 凛!! しっかりしろ!!」

玄野「し、渋谷?」

P「……し、ぶや、さん……?」

凛の精神は限界だった。

加蓮の死体を見て、腕だけの奈緒を見て。

卯月と未央が光の中に消えていく姿を見て。

慣れ親しんだ実家が押しつぶされ、その中にいたであろう両親や愛犬も押しつぶされた瞬間を見て。

凛「あっ、ああっ、あああああっ」

さらに自身の手で人間を何人も何人も殺すことは、悪人だからといえど凛の精神を確実に蝕み続け。

蝕まれ続けた凛の精神は、加蓮と奈緒によって自分の行いを否定され決壊を始め、

最後に玄野が崩壊寸前だった凛の心に一撃を加え、

凛「あ」

凛の心は完全に壊れた。
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:08:51.58 ID:GVSticqD0
走っている。

――はぁっ! はぁっ!!

暗闇の中を私は走り続けている。

――た、たす、たすけっ! うあっ!?

何かに躓いて転んだ。

――ひぃっ!?

私が躓いたもの、それは死体。

――うあああああああああああああ!!

一つじゃない、どれだけあるかも分からないくらいの死体。

人間や星人、折り重なるように沢山の死体が辺り一面に散乱している。

――や、やだっ、やだ……いやああああ!!

立ち上がって再び私は走り始める。

一体何から逃げているのかも分からない。

私は逃げ続けるうちに足元は全て死体で埋め尽くされて身動きが取れなくなっていた。

――や、やだ、助けて、助けてぇ!!

助けを叫ぶ私は何かの音を聞く。

何かが近づいてくる。

私はその何かに目を向けると、
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:09:25.22 ID:GVSticqD0
――う、卯月?

卯月がいた。

だけど、何かがおかしい。

身長が180以上はあり、手からはカマのような爪が伸びている。

その卯月は私に近づくと、私の頭をそのカマのような爪で掴み力を込め始めた。

――や、やめて、卯月、痛い、痛いよっ……

私は卯月に懇願した。

そして、私は卯月を右手で持っていた剣で刺し殺した。

――え?

死体が増えた。

卯月は私を見ている。

――や、や、やだ……な、ん……なに……

また音が聞える。

今度は未央が近づいてくる。

鳥のような身体で顔だけが未央。

私に突進してくる未央を、左手で持っていた銃で撃ち殺す。

――あぁ、ぁぁぁ、ちが……

死体が増える。

未央と卯月が私を見ている。
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:09:51.69 ID:GVSticqD0
――ちが、ちがう、ちがうのぉ……

また音が聞えた。

――いやだ。

沢山の腕を生やした加蓮が私の傍にいた。

私は加蓮の眉間を貫いて縦半分に割って殺した。

――いぃぃゃぁぁぁぁ。

死体が増えて、私を見る目が増えた。

音だ。

――やだやだやだやだやだやだ。

小さい奈緒。

私は銃で撃った。

死体。

見られてる。

――ここここ、ちちちち、わわわわわ、うああああああああああ。

他の死体も見てくる。

お父さんが、お母さんが、ハナコが。

卯月、未央、加蓮、奈緒。

みんな見ている。

私を。

みんなころした。

わたしがころした。

わたし。

わわわわわたたたたたたたころろろろろろろろ。

ろぉおおお。

おぉぉ。

お。

ぉ。




――凛ちゃん。




184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:10:29.50 ID:GVSticqD0
凛「えっ」

真っ暗な世界が消えた。

凛「こ、こ、は?」

見渡す限り一面の白。

白以外何もない世界。

そんな所に私はいた。

凛「な、何? 何が?」

「凛ちゃん」

凛「っ!?」

背後から声がかけられる。

知っている声。

反射的に振り向いた先には、

卯月がいた。

卯月「もう大丈夫ですよ、凛ちゃん」

卯月だ。

何故か分かる。

この卯月は本物の卯月。

あの時、光に消えた卯月なんだって分かる。

その卯月を目にした私は、

凛「ひ、ひっ、ひぃぃぃぃ!?」

叫びをあげて逃げ出した。

怖かったからだ。

目の前の卯月をさっきみたいに殺してしまうのではと。

だけど、逃げる私を卯月はいとも簡単に捕まえて後ろから抱きしめてきた。

卯月「逃げないで下さい」

凛「や、やっ! こ、怖い、わ、私、卯月、殺しちゃう!!」

卯月「大丈夫です。さっきまでのは幻です。凛ちゃんが自分で作り出してしまった幻想です」

凛「だ、だめっ! ころ、わたし、ころし……」

卯月「大丈夫。落ち着いて、凛ちゃん」

凛「あっ……」

卯月が私の頭を撫でてくれている。

卯月の手の温もりが、身体の温もりが、私と触れ合っている部分から伝わってきて、私の全身から力が抜けていく。

すぐに私の身体は卯月にもたれかかるように倒れていた。

私を受け止めて、頭を撫で続けてくれる卯月。

されるがままでずっとそうしていたい気分になっていた。
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:11:21.08 ID:GVSticqD0
どれくらいそうしていたのだろうか。

卯月が小さく声をかけてきた。

卯月「落ち着きましたか?」

凛「…………うん」

卯月「よかったです」

微笑む卯月。

でもすぐに、少し悲しそうな表情を浮かべて、私に告げる。

卯月「凛ちゃんの心、壊れちゃったんです」

凛「壊れ……?」

卯月「凛ちゃんはずっと限界だったんです。自分を騙してずっと頑張ってましたけど、自分を騙しきれなくなってついに壊れてしまったんです」

凛「ちょ、ちょっと、何を言ってるの?」

卯月「今、凛ちゃんがどうなっているのか、ですよ」

凛「今の、私…………あっ」

記憶が蘇ってきた。

加蓮と奈緒に私を否定されて、頭が割れるように痛くなって、もう一度加蓮と奈緒に、何かをしようとして……それで、何かを聞いて……

卯月「思い出しましたか?」

凛「少し……でも、殆ど覚えてない……」

卯月「直前の記憶は完全に壊れてしまっているみたいです。これが、今の凛ちゃんの心ですよ」

そう言って卯月は両手に持った黒ずんだ何かを見せてくれた。

粉々になったガラスの破片のようなもの。

これが、私の心?

凛「ちょ、ちょっと、待って、それが私の心って……なんで卯月がそんな事を……っていうか、何で卯月はこんな所にいるの!?」

卯月「私が凛ちゃんの心の中にいる理由ですか?」

卯月は掌に乗せた黒ずんだ破片に触れながら、

卯月「私の最後の力です」

凛「最後の力?」

卯月「凛ちゃんが本当に危なくなった時、私の力で凛ちゃんを一度だけ守ってあげれるようにって。凛ちゃんの頭の中に、爆弾を取り除いた場所に私の力を残しておいたんです」

あの時の卯月のはかなく透き通った笑顔が思い出される。

卯月「それが凛ちゃんの心が壊れる形で発動して、こうやって凛ちゃんの心を守る為にもう一度会えるなんて、私嬉しいです」

凛「そんな、事って……卯月の力って一体……」
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:11:51.28 ID:GVSticqD0
思い出すのはあの私の姿をした星人を圧倒するほどの魔法のような力を使っていた卯月。

恐らくは自分の命を燃やして使う力。

確か、あの人達の、坂田さんが卯月と未央に教えたって……

凛「あの人達の超能力って物を動かしたり……卯月が見せたような力なんてなかったはず……」

卯月「凛ちゃんを守りたいって強く思ったからできた奇跡かもしれないですね」

凛「私を……」

卯月が私を……

その言葉を聞いたとき、卯月の手にある物体がさらに黒ずんだような気がした。

凛「私なんて、卯月に守ってもらう価値なんて、ないよ……」

卯月「凛ちゃん……」

止まらない。

考えたことが全部声に出てしまう。

隠していたかったことも何もかも。

凛「私、卯月達を騙し続けていたんだよ?」

凛「卯月達を騙して、私みたいにしようとしてた。生き物を殺して喜ぶような人間になってもらおうと考えていた」

卯月「……はい、凛ちゃんの心の中に来てそのことも知っちゃいました」

凛「知られてた……かぁ」

卯月「それを知って思っちゃいました。ちょっとだけショックだったのと……」

卯月の顔が見れない。

多分卯月は軽蔑の視線を私に向けている。

次に間違いなく拒絶される。

『凛ちゃんがそんな人間だ何て思っていなかった。もう友達でもなんでもない』

そんな言葉が出てくると思った。

でも、卯月から出てきたのは拒絶の言葉ではなかった。

卯月「……それ以上に嬉しかったなぁって」

凛「……え?」
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:12:27.69 ID:GVSticqD0
卯月「凛ちゃん、本当に私達と一緒に何かをしたいって心の底から思ってくれてたんだなぁって知れて嬉しかったんです」

凛「何、言ってるの? 嬉しい?」

卯月「はい、とっても嬉しいです」

卯月の顔を見た。

そこには私を拒絶するような表情ではなく、本当に喜んでいる笑顔があった。

凛「ば、馬鹿言わないで!? そんなワケないでしょ!?」

卯月「何がですか?」

凛「卯月も未央も騙していたんだよ! ずっと、出会ったときからずっと!!」

卯月「仕方なかったじゃないですか。出会ってすぐなんて凛ちゃんは誰にもあの部屋のことを話せなかったんですし」

凛「私は二人を狂わせようとしてたんだよ! 私と同じような変態に、生き物を楽しんで殺すようなクズにしようとした!! 私と同じように狂わせて一緒に殺し合いを楽しもうとしていた!!」

卯月「私達も凛ちゃんを私達と同じようにアイドルになってもらおうと考えてました。私達と同じようにアイドルとしてみんなでステージに立ちたいなって考えてましたよ?」

凛「そ、それとこれとは全然違うでしょ!?」

卯月「一緒ですよ。凛ちゃんも私達も同じようなことをしていただけです」

なんで、なんで卯月は私を責めないの?

こんな私を、二人を騙し続けた最低の私を。

卯月「ふふふ、凛ちゃんはやっぱり真面目ですね」

凛「……え? 真面目?」

卯月「結局、凛ちゃんは根っこのところが真面目でいい子なんですよね」

……いい子?

私が……?

何を言ってるの?

凛「い、いい子? そんなワケ無いじゃない……」

卯月「凛ちゃんは真面目で優しくていい子ですよ」

凛「やめて……私は最低で最悪の人間なんだから……」

卯月「そんなこと無いです、凛ちゃんは最低でも最悪でもありません」

凛「どこが!? 生き物を喜んで殺して、友達を騙し続けて、挙句の果てには人を殺して殺して殺しまくった大量殺人鬼が私なんだよ!! そんな人間、最低で最悪で生きてる価値も無いじゃん!!」

詰め寄ってまくし立てる私を卯月は変わらぬ笑顔で見つめてくれている。

やめて、そんな優しい視線を私に向けないで。

なんで、私を責めないの?
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:13:06.09 ID:GVSticqD0
卯月「やっぱり真面目なんですよ……そんな凛ちゃんだから、あんな恐ろしい環境に放り込まれて、真面目にゆっくりと壊れていっちゃったんです……」

凛「え……?」

卯月「拒否も出来ずに殺し合いを強制させる場所……あんな所にいたら誰だっておかしくなってしまいます」

凛「ち、違う、私は自分の意思であの部屋に残り続けて……」

卯月「そうしないと凛ちゃんは自分を保てなかったんですよ……真面目で優しいから、あの部屋で星人を殺してしまったことにも真面目に考え込んで、凛ちゃんはああやって自分を壊していくことでしか自分を保つことが出来なかった」

凛「違う……私は、何かを殺すのが好きで……気持ちよくって……」

卯月「そうやって自分自身を偽らないともうどうしようもなかったんですね。本当は何かを殺したくなくって、あんな戦いもしたくなかったのに」

凛「違う…………あそこが…………ガンツの部屋が…………殺しの世界が…………私の生きる…………」

卯月「いいんです。もういいんですよ。自分を偽らなくても……凛ちゃんは今までずっと我慢をし続けていたんですから……もう我慢しなくてもいいんですよ」

卯月が私の背中に手を回して優しく包み込んでくれる。

我慢をしなくていい……その言葉が私の中に染み込むように入ってくる。

前が見えない、なんだろう?

凛「なに? これ……涙?」

泣いてる? 私が?

凛「あれ……? 涙が止まんない……なんで? どうして……」

卯月「泣いてください、全部受け止めてあげますから」

卯月が私を抱きしめてくれた。

卯月の胸に私の顔が納まる。

暖かい温もりと卯月の優しい言葉が私の中で閉じ込めていた何かを解き放った。

凛「うっ、あああぁ、うあああああああああん!!」

泣き叫ぶ私を卯月は包み込むように抱きしめてくれる。

私は全身で卯月を感じながら卯月の胸の中で泣いた。

泣いて泣いて泣き続けるうちに、私は今まで隠し続けていた本音を吐露していた。
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:14:14.10 ID:GVSticqD0
凛「苦しかった、あんな事、本当はしたくなかった……」

凛「怖くて……死ぬのが怖くて……殺しちゃって……どうしたらいいのかわかんなくなって……」

凛「それでも敵を殺さないといけなくて……沢山の人が死んでて……わけわかんなくなって……」

凛「それで……私は殺しが大好きだ何て思いこむことにして……そうやっているうちに卯月も未央もあの部屋に来ちゃって……」

凛「卯月も未央も解放したかった……だけど一緒にいたくて……こんな私を慕ってくれる二人とずっと一緒にいたくて……でもやっぱり二人には元の場所に戻ってほしくて……」

凛「加蓮と奈緒とも出会って……みんなで一緒に何かをしているときはすごく楽しくて……でもみんな死んじゃって……お父さんもお母さんもハナコも死んじゃって……」

凛「みんなを助けようとして……でも気がついたら沢山の人を殺していて……それも怖くて認めたくなくて……もう何もかもが分からなくなって……自分がなにをしているのかさえも分からなくて……」

私は卯月の胸の中で独白を続けていた。

そんな私を卯月は何も言わず私の頭を撫でてくれている。

それだけで私が過去を思い出すたびにザワつく心が安らいでいく。

全てを卯月に吐き出していた。

あの部屋に来てやってしまったこと。

あの部屋に来る前に思っていたこと。

全部を卯月に吐き出して、ぶつけて、吐き出すものもぶつけるものもなくなったら私は卯月に助けを求めていた。

凛「卯月……助けて……私もう……どうすればいいかわかんない……何もわからないの……助けて……お願い……」

何を助けてほしいのかも分からない。

もう、何も考えられない。

ただ助けてほしかった。
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:14:58.97 ID:GVSticqD0
卯月「いいですよ、私が凛ちゃんを助けちゃいます」

凛「ほんと……?」

卯月「はい、凛ちゃんが苦しかったこと、辛かったこと、耐え切れないこと、全部私が持って行っちゃいますね」

凛「ど、どういう事?」

卯月「見てください。これは、私の最後の力です」

そう言って卯月は淡く光る手を私に見せた。

卯月「この力を、この壊れた凛ちゃんの心に使って、凛ちゃんの心を元通りに治しちゃいます。……あの部屋に呼ばれる前の状態に」

凛「あの部屋に呼ばれる前……それって……」

卯月「はい、凛ちゃんの記憶を消すってことです」

凛「っ!!」

卯月「全部忘れちゃうんです。辛かったことも、苦しかったことも、嫌なことも、何もかも全部」

凛「それ、は……」

卯月の手が徐々に私の壊れて黒ずんだ心の残がいに近づいていく。

卯月「もう苦しむことなんて無いんです。何もかも忘れてしまいましょう」

凛「ま、待って……」

卯月の手がどんどん私の心の残がいに近づき、

凛「駄目!!」

触れる寸前で私は卯月の手を掴んでいた。
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:15:33.68 ID:GVSticqD0
卯月「どうして止めるんですか? 楽になれますよ?」

凛「わ、忘れるなんて駄目、あんな事をした私が何もかも忘れてしまうなんて……」

卯月「どうしてですか? いいじゃないですか、凛ちゃんはこんなにも苦しんだんですから」

凛「駄目だって……私が……あんな事を……自分のした事にも責任を取らないで忘れるなんて……」

卯月「責任、ですか?」

凛「そうだよ……自分のしてしまったことに対する責任……」

卯月「それはなんですか?」

凛「……沢山の人を殺しちゃった責任……」

卯月「悪い人達だったんですよね?」

凛「……それでも、人殺しだから……」

卯月「そうですか」

凛「……それに、沢山の生き物を殺してしまった……」

卯月「星人のことですか? 仕方ないじゃないですか、殺さないと殺されていましたよ?」

凛「……でも、何かを殺すって事は、それ相応の責任がついてくる……」

卯月「そうですか」

凛「……そして、みんなを騙し続けてきたこと……」

卯月「私は凛ちゃんに嘘をつかれたって気にしませんよ? 未央ちゃんも、加蓮ちゃんも、奈緒ちゃんも一緒だと思います」

凛「……みんなが気にしなくてもけじめはしっかりと取らないといけない……」

卯月「……」

私が思いの丈を言いきると静寂が辺りを包む。

卯月を見ると、卯月は小さく微笑んでいた。
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:16:19.20 ID:GVSticqD0
卯月「本当に生真面目なんですね……逃げちゃってもいいのに……」

凛「卯月……」

卯月「凛ちゃんは、これからどうするんですか?」

凛「どうする……って」

卯月「自分のした事に責任を取る。言うのは簡単ですけど、凛ちゃんのやってしまったことに対する責任なんてどうするつもりなんですか?」

凛「……まだ、わからない……だけど、沢山考えて必ず償いの形を導き出して見せる」

卯月「それはまた、一人で考えるつもりですか?」

凛「え……うん……」

そう言った私に初めて卯月は怒った顔を見せた。

卯月「もう、駄目ですよ! そんな大事なこと、一人で抱え込んじゃったら!」

凛「えっ? だ、だって、これは私の問題で……」

卯月「凛ちゃんだけの問題じゃないです! 私の問題でもあるんですから、私にも、みんなにも相談してください! そうじゃないと、また凛ちゃんは壊れちゃいますよ!」

凛「うっ……」

卯月「今まで凛ちゃんは一人で悩んで抱え込んでこうなってしまったんです。これからはもうみんなに話してください! 一人で苦しまないでみんなに打ち明けてください!」

凛「あ……」

卯月の言葉がストンと胸に納まった。

そうだった、私は今まで何でもかんでも自分で考え込んで、間違った事でも正しいって思いこんで、それでこうなった。

みんなに相談していれば解決していた事は沢山あった。

みんなに相談していれば違う道もたくさんあった。

全部、一人でやろうとして……

卯月「はい、もう一人で悩まないで下さい。私に、私達に頼ってください」
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:17:57.79 ID:GVSticqD0
ああ……

本当に馬鹿だ。

私は馬鹿で意固地で結局誰かに頼ろうだなんて考えなかった。

卯月「でも、これからは私達にも頼ってくれますよね?」

うん。

みんなに頼らせてもらう。

もう、嘘はつかない。

卯月「よかったです。それじゃ、これを」

卯月が掌に持った半透明の淡く輝く何かを私に差し出してきた。

卯月「凛ちゃんの心、私の最後の力で治しておきましたよ」

私の、心……

さっきまでバラバラに壊れていたもの。

今は傷一つなく、さっきまで卯月の手にあった輝きに包み込まれている。

卯月「凛ちゃんを待っている人達は沢山いるんですから」

卯月が私の胸に輝くそれを押し込むと私は卯月から引き離され始めた。

ま、待って、卯月も一緒に。

卯月「私は凛ちゃんとはいけないです」

なんで!?

卯月「私はこの場所で、凛ちゃんの心の奥で眠るんです。私は、島村卯月の最後の力の欠片ですから」

眠るって……

卯月「もうこうやってお話をする事はできないと思います。力は使っちゃいましたし」

卯月は真っ白な世界に腰を下ろして私に微笑み続ける。

卯月「悲しむ必要もないですよ、ずっと一緒ですから」

卯月はその場で寝そべって目を瞑る。

卯月「凛ちゃん……さようなら……」

私は真っ白な世界で眠る卯月に手を伸ばし続けた。

だけど、私は後ろに後ろに引っ張り続けられて、

卯月の姿は完全に見えなくなってしまった。
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:18:38.25 ID:GVSticqD0
後ろに引っ張り続けられている私は、真っ黒な世界を飛んでいた。

真っ黒な世界を飛び続けている私に声が届く。

――卯月に助けられたね。

この声って……

真っ黒な私。

――もうこうやって会うこともないと思ったけど、会っちゃったね。

真っ黒な私が私の目の前に現れた。

でも、その姿は、真っ黒と言うよりは淡く光っていて……

――私はアンタの心その物だから。

それって……

――そ。さっき卯月に治してもらったのはアンタの心であり、私だった。

そうなんだ……

――そうだよ。

……ねぇ。

――わかった。

私、何も言ってないんだけど。

――私はアンタ、アンタは私。それ以上の回答はないよ。
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:19:16.03 ID:GVSticqD0
……わかった、なら、卯月を、お願い。

――うん、あの卯月は絶対に一人にしない。あんな所まで来てくれた卯月をあんな場所で一人で永遠に眠らせることなんて絶対にしない。

ありがとう……

――礼なんていらない。アンタはアンタでやるべき事をやってくれればいいから。

うん。

――私が言うのもアレだけど、もう間違えないでよね。アンタは一人じゃないんだから。外の世界で、みんなと共にこれからを歩んでいって。

分かってる、分かってるよ。

――私も、卯月も、アンタの中でずっとアンタを見守っているから。

…………ありがとう。

――だから礼なんていらない。

真っ黒な私はそうやって姿を消した。

あの私とは多分もう二度と会わないと思う。

真っ黒な私もそれは分かっていたはずだ。

別れの言葉も何もない。

けど、それでいい。

あの私は私の心。

いつだって私の中にいるんだ。

そして、あの卯月も……

真っ黒な世界に小さな光が生まれた。

その光に向かって私は進んでいる。

あの先には何があるのか分かる。

あの光まで進んだら私は目を覚ますんだろう。

私は光に包まれる寸前、後ろを振り返った。

そこには、真っ白な世界で、私と卯月が肩を寄せるように眠っている姿を見た。

それを目に焼き付けて、私は光に包まれた。
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:19:55.24 ID:GVSticqD0
凛「けほっ……こほっ!」

凛の目に光が戻る。

凛はぼやけていた視界が定まっていき、その視界に数人の顔を映した。

加蓮「凛っ!! しっかりして!!」

奈緒「凛!! 大丈夫か!? あたしがわかるか!?」

玄野「し、渋谷、オイッ! 目を閉じンなよ!!」

P「渋谷さん! 呼吸は……している、しかし、意識は……」

凛「ごほっ……はぁっ……あっ……私……」

凛は今の自分の状態に気がつく。

仰向けに寝ているようで、自分の周りには加蓮、奈緒、玄野、そして上半身裸のPの姿。

そして自分に、Pのものであろうスーツがタオルのように被されている。

凛「……何?」

状況が飲み込めず身を起こすと、すぐに加蓮と奈緒に抑えられてしまった。

加蓮「凛! アタシは分かる!?」

凛「か、加蓮……どうしたの?」

奈緒「あたしは分かるのか!?」

凛「奈緒……ふ、二人共一体……?」

加蓮「正気……みたいね」

凛「正気? どういう……」

凛が一体何が起きているのかと疑問を浮かべていると、泣きそうな顔の奈緒が、

奈緒「どういうことって……お前大変なことになってたんだぞ!? いきなりあたし達に襲い掛かってきたかと思うと、完全に頭がおかしくなったような顔して、ぶっ倒れて……息もしてなかったんだぞ!?」

凛「え……えっ……」

凛は意識を失う寸前、心が崩壊する直前の記憶は完全に失っていた。

覚えているのは加蓮や奈緒に自分の行いを咎められたあたりまで。

それ以上は完全に壊れていて、卯月の力でも元に戻らなかったのだ。
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:20:26.30 ID:GVSticqD0
玄野「本当にヤバかッたンだぞ……お前白目向いて、全身痙攣したあとはピクリとも動かなくなッてよ……」

凛「私が……」

P「……意識ははっきりしているようですね。呼吸も完全に戻って……渋谷さん、頭痛や眩暈は感じますか?」

凛「特に無いけど……うっ……」

Pに聞かれて自分の身体に気を向けると、すぐに胸から鈍い痛みを感じた。

凛は自分の胸の中心付近に手を持っていくと、

凛「少し……胸が痛い……」

P「……呼吸が停止していたので心臓マッサージを行ないました。数分間行ないましたので、骨にヒビなども入っているかもしれません……しばらく安静にして病院に……」

凛「心臓マッサージ?」

凛は被せられているスーツを動かすと、はだけた自分の胸が見えた。

ドレス状のスーツが半分程脱がされてその上にPのスーツが被せられている状態。

凛はPのスーツではだけた胸を隠しながら自分のスーツを元に戻すと、心配する4人に、

凛「ごめん……多分、すごく迷惑かけた」

玄野「め、迷惑ッて……お前、大丈夫なのか……?」

凛「うん、もう大丈夫」

玄野は凛の目を見て違和感を感じた。

さっきまで凛は全てを否定するような暗く濁った目をしていた。

しかし、今の凛は、吹っ切れたような顔をしている。

それを問いただそうとしたが、加蓮と奈緒が凛に声をかけたため言葉を飲み込んだ。
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:20:58.53 ID:GVSticqD0
加蓮「凛、本当にアンタ大丈夫なの?」

凛「うん……大丈夫。加蓮にも奈緒にも迷惑かけたね」

加蓮「迷惑って……何?」

凛「……加蓮も奈緒も、私の狂った妄想に引き込もうとしていたこと」

加蓮「……」

奈緒「妄想って……」

凛「みんなが死んで、ワケわかんなくなって、それでも行動して、気がついたら人殺しなんてとんでもない罪を犯していた。それを認めたくなくって、私が殺すのはみんなの為にって理由をでっちあげてさ、挙句の果てには私のする事は全てみんなが喜んでくれるなんて考えるようになっていた。本当に狂っていたんだよ……私」

加蓮「……」

奈緒「凛……」

凛「そんな馬鹿な私の妄想に二人も巻き込もうとしていた。二人が私を否定してくれなかったら、私は二人を死ぬまで離さずに、地獄の底まで道連れにしていたと思う……」

凛「本当にごめん……そして、私を否定してくれてありがとう……」

二人の目を見て話し続ける凛。

目をそらすこともなく、思いの丈を二人に。

すると、今まで硬い面持ちだった加蓮は、表情を崩して、

加蓮「なんだ、眠ったら目が覚めたんだね」

凛「うん……目が覚めたよ、色んなことから」

加蓮「なら、アタシから言う事なんて何もないよ。奈緒は何か言う事ある?」

奈緒「り、凛……ほんとに正気に戻ったんだよな……」

凛「奈緒……うん。今は何が悪くて何がいけなかったのかが分かるくらいには正気に戻れたと思う」

奈緒「よかった、よかったよぉ〜〜〜……ほんとに心配したんだからなぁ〜〜〜……あのまま凛がおかしくなって……死んじゃうって……」

凛「な、奈緒!?」

奈緒は両目から止め処なく涙を零しながらも半笑いで凛に縋り付いていた。

そんな奈緒を見て凛は慌てふてめいて、加蓮もやれやれといった感じで笑っていた。

玄野も凛が世界を支配すると言う考えを改めていることが分かるとその場に座って大きく息を吐いた。

そこで玄野は気が付いた。

視界の端で黒い影が動いている。

黒い影は、西。

玄野の背中にゾクリと寒気が襲い掛かった。

西は最後に何をしようとしていた?

玄野「ッッッ!!」

玄野は身を起こして駆け出した。

しかし、玄野の視界から西は消えていく。

西は玄野を見ずに、視線を別の方向に向けて消えていった。

すると、玄野は加蓮と奈緒とPの声を聞いた。

加蓮「凛!?」

奈緒「凛!!」

P「渋谷さん!?」

振り向くと、凛の身体が転送されて消えかかっており、

加蓮や奈緒が凛に触れようとして完全に転送されるところを見てしまった。
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/09(月) 01:21:44.75 ID:GVSticqD0
今日はこの辺で。
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/09(月) 01:30:15.00 ID:JLa3R3J2o

西が殺しを好きな理由はなんだろう?
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/09(月) 16:20:45.55 ID:yZBBQYMao
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/09(月) 21:06:34.11 ID:Qo/gjZQqO
乙乙
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/25(土) 23:10:23.64 ID:QkpDIJX/0
保守
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 21:54:46.28 ID:auSjxfEy0
凛は急に視界が暗転したことに驚き咄嗟に身を起こす。

凛「何が!?……ここは?」

凛にはその場所が見覚えがあった。

何度か訪れたことがある部屋。

西の家だった。

凛「転送……された? 西の部屋?」

西「あァ……そーだよ……」

凛が振り向くと西が頭を押えながらソファーに倒れこむように座っていた。

西が押さえる手から血が溢れていて怪我をしていることに気がつくと。

凛「怪我してる……大丈夫?」

西「あァ……大した怪我じゃねぇよ……クソッ……」

西は忌々しげな表情で、光のキーボードを展開して高速で打ち込み始める。

凛「何をしてるの?」

西「あのクソ野郎をぶッ殺してやる……舐めやがッて……この俺をこんな目に会わせてただで済むと思うな……俺に手を出したことを後悔させた上で殺してやる……」

凛は宙に浮かび上がるモニターの表示を見て、西が玄野に対して何かしようとしているのだと気がつく。

凛「ちょっと……玄野をどうするつもりなの?」

西「ブッ殺してやるンだよ……死にたくても死ねねえような殺し方だ……あのクソ野郎には生まれてきたことを後悔させてやる……」

目を血走らせながら高速でタイピングを行なう西の手を柔らかな感触が伝わった。

凛が西の手を握っていたからだった。

西は咄嗟に凛の顔を見るが、凛の顔を見た西は今まで血走った目でモニターを凝視していた視線を凛に向けていた。

その表情をありえないようなものを見るものに変化させて。

西「お、おい……お前、まさか……」

西は凛の表情を見て何かに感づいてしまっていた。

凛の顔はこの数日見ていたものとは全く違い何か憑き物が落ちたようなそんな顔。

西は先ほどまで抱いていた玄野への殺意などどうでもよくなるほど焦燥を抱いていた。

そして、次に凛が出した言葉で自分の予感が正しかったことを悟る。
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 21:56:02.90 ID:auSjxfEy0
凛「西……もう、止めよ……」

西「」

凛の言葉に西は途轍もない喪失感を感じ、どこまでも落ちていくような感覚に捕らわれた。

凛「もうこんなこと止めよう……私達のやってる事は間違ってるよ……」

西「………………」

凛「誰かを殺すなんて駄目……私達はそんな事すら分からないくらい狂っていた……」

西「…………ろ」

凛「もう沢山の人を殺してしまった……償いの方法なんてどうすればいいかも分からない……」

西「……めろ」

凛「私達は「止めろォォォッ!!」」

西は凛の胸倉を掴みその場に押し倒して馬乗りになった。

西「ふッざけんなァッ!! お前ッ!! 今更何言ッてやがンだよ!?」

凛「西……」

西「もう少しなんだぞ!? もう少しでこのクソみてーな世界をぶッ壊して俺達の新世界を作りだせるンだぞ!! お前もワカッてンだろ!? 俺達の力はもう誰にも止められねェし俺達が望めば何だッてできる!!」

西は顔をゆがめながら絶叫を続けていた。

西「お前だッて望んだ事だろ!? 誰も傷つかない世界を作るッてよォ!! そんな世界をもう少しで作り出せンだぞ!? それを今更止めるッて何考えてンだよ!?」

凛「…………」

西「なァ、考え直せよ、お前だッて望んだ事だろ? 俺達が新しい世界を作ッてその世界で俺達は一緒に夢を……」

西の叫びは少しずつ懇願に近いようなものになっていた。

凛の身体の上に跨り、いつの間にか凛の頭の横に両手をつき、西は凛の顔を至近距離で覗き込みながら懇願していた。

しかし、凛が放った言葉は西の望むものではなく、

凛「もう……私は誰かを殺したくなんてない……」

西の顔が歪んだ。

凛「私達がやろうとしてたことはこれからどれだけの人を殺していくかも分からないような血塗られた道……私にはもうそんな恐ろしい事は……できない」

西の目元が痙攣し始める。

凛「今までやってきたことを考えたら今更何を言っているのかって話かもしれないけど……もう私は誰も殺したくないし、誰かを殺した上で手に入るような未来なんて……ほしくない」

西の口元も痙攣し始め歯軋りが始まった。

凛「西……もうこんなこと止めよう……私達のやっていたことは……」

西の手が震えながら動き始めた。

凛「間違ってる」

西「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 21:56:36.88 ID:auSjxfEy0
絶叫と共に西の手が凛の首に伸びて凛の細い首を締め付けた。

凛に馬乗りになりながら、凛の首を絞めながら西は絶叫を続けた。

西「クソックソックッソォ!!!! 意味ワカンねェ!!!! 何なンだよ!? 何でそーなンだよォッ!!!!」

凛「……西」

西「お前は違うだろ!? お前は俺と一緒だろ!? なのに何でそんな事言うンだよ!? お前はもッと悪魔みてーなヤツでそんな事を言うワケねーンだ!! 目を覚ませよッ!! なァッ!!」

凛は西に首を絞められながらも息苦しさも何も感じていなかった。

先ほどの玄野との戦いで破壊された西のスーツでは凛を害する事などできなかった。

振り払おうと思えばいつでも振り払えるのに凛はあえて西にされるがままになりながら考えていた。

凛(こんなに必死になってる西は始めて見る……)

凛(でも、言っている事とやっている事が噛み合ってない……)

凛(私を説得しようとしているのに、私の首を絞めて私を殺そうとしている……)

凛(でも……それに気付いてない……言ってる事とやっている事が分かってない……)

凛(……まるで、さっきまでの私……)

凛の瞳には西が自分の姿のように見えていた。

鬼のような形相で自分の首を絞めてくる西。

しかし、その姿が自分自身を見ているようで胸が苦しくなる。

凛(私にはみんながいてくれた)

凛(みんながいたから私は正気に戻れた)

凛(でも、もしも……みんなと出会えなくて……あの部屋で一人ぼっちでいたら……)

凛(私は……)

凛は気がついたら西を抱きしめていた。

凛の中の世界で卯月がそうしたように凛も西を抱きしめていた。
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 21:57:02.87 ID:auSjxfEy0
西「ッ!?」

凛「私達は似たものどうしなんだよね……」

西「な、何やッてンだよ!? は、離せ!!」

凛「もしも、私とあなたの立場が逆だったら……今のあなたは私だったんだろうね」

西「お、おいッ!! 離せッて!!」

凛「みんながいてくれたから私は正気に戻ることが出来た……でも、あなたは止めてくれる人がいなかったんだよね……」

西「き、聞けよッ!! おいッ!!」

凛「今のあなたを見てると自分自身を見ているようで辛い……道を間違ってしまったままどこまでも進んでいく私を見てるようで……」

凛に抱きしめられながら身動き一つ取れない西は混乱していた。

玄野に敗れ、煮えたぎるような激情をぶつけようとしていた所に、凛が完全に自分と決別する言葉を出した。

それによって西はかつて無いくらいに自分の感情を爆発させていたのだが、凛に抱きしめられることによってその激情が急速に小さくなっていった。

西(な、なンなンだよ!? なンでコイツは俺を抱きしめてンの!?)

西(い、意味ワカンねェ……なンなンだよ……)

激情が薄れ、少しずつ西は何かが自分の心から溢れてくるのを感じていた。

西(コイツが何か言ッてるけど頭に入ッてこねェ……)

西(暖かくて……柔らかくて……)

いつの間にか西は目を閉じていた。

感じるのは凛の体温と鼓動。

身動き一つとれない、いや西はすでに自分から動こうとしていなかった。

凛の言葉も何も頭に入ってこない。

ただ柔らかい感触と鼓動に包まれて目を瞑りその感覚に身を委ねて、無意識に一言呟いた。

西「…………ママ」

それと同時、西に急激な脱力感が襲い掛かった。

玄野に与えられた傷、凛によって与えられた精神的ショック、さらには凛に抱きしめられることによって感じた不思議な安心感によって急激に意識を飛ばしてしまった。
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 21:57:36.90 ID:auSjxfEy0
西「……」

西「……あ」

西が目を覚ましたとき、視界に朝日が入り込みその目を細める。

少しして目が慣れてくると、西の目に凛の顔が映し出された。

凛「起きた?」

西「あ、ああ」

自分の顔を覗き込んでいる凛、そして今の自分の体勢が凛の膝を枕にして眠っていたことに気が付いて慌てて飛び起きるが、自分の手がしっかりと凛に握られていることで凛から離れようにも離れれない状態になっていた。

西「お、おま!? 何で手ェ握ッてンだよ!?」

凛「え……? あなたが眠ってる間ずっと私の手を握り続けてたんだけど……」

西「はァ!?」

離そうとしても手が離れない。

西は意識して指を動かすことによって漸く凛の手を離し凛から距離を取った。

だが、そうすると何故か西は喪失感に襲われて更に距離をとる前に立ち止まってしまった。

西「……何だ……これ……?」

凛「大丈夫?」

立ち上がって自分の手を見続ける西に凛は声をかけてそっと肩に手を触れた。

西「ッ!」

反射的にその手に触れた西は、凛の手に触れたその状態で再び固まってしまった。

西(なん、だよ……なんで俺、こんな……)

西(こいつの手を握ってると……安心できる……?)

西(……ママの手みたいに)

凛「ねぇ、大丈夫なの?」

西「あァ……」

凛「そっか……」

西は凛の手を握りながら呆然としていた。

握り締めてくる西の手を軽く握り返して凛は西に声をかけ始めた。
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 21:58:08.29 ID:auSjxfEy0
凛「ねぇ、西」

西「……あ?」

凛「あなたはどうしてこの世界を壊そうとするの?」

西「……なんだよ急に」

凛「私達、結構長い間一緒にいたけどさ、そういう話しなかったでしょ。何だかあなたのこと知りたくなっちゃって、さ」

西「…………」

西はすでに冷静になっていた。

凛が心変わりしてしまったことにも何故か冷静に受け止められていた。

そして凛の質問にも正直に話し始めていた。

西「……お袋が自殺したんだ」

凛「っ!」

西「……俺にとッて母親はこの世界で唯一の大切な人間だッた。優しくて、俺を認めてくれて、笑顔が綺麗で……生きる意味だッたンだよ」

西「だけど、クソみてーな父親が浮気して、他のクソ女と一緒になッて、お袋は壊れちまッた。……壊れたお袋が自殺するまで時間はかからなかッたよ……」

凛「そう……」

西「その後俺も後追い自殺をした。生きる意味なんて何にも無くなっちまッてなー……だけど俺は死ねなかッた」

凛「それでガンツの部屋に……」

西「ああ。そンでそッからはもう死のうとも思わなかッた。死んでも死ねねー、何度死んでもああやッて生き返らされるんじゃねーかッて、死んで逃げることも出来ねーのかよッて」

西「そッからはもう結構自暴自棄になッてた。こんなクソみてーな世界、お袋もいなくなッちまッた世界に何の意味があるんだッて……俺の周りにいる人間は全部クソ。目に付く奴等も全部クズ。あの部屋に来る連中も同じよーな奴等ばッかりだッた」

西「いつもいつも思ッてたよ。こんな世界滅びちまえばいいッて。お袋が死んでしまッた世界はいらねーッて。俺の存在を否定するようなこんな世界はなくなッちまえッて」

凛「そう、なんだ……」

西は小さく笑った。

それは自分の本心をどうして打ち明けているのか? という自虐の笑みだったのかもしれない。
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 21:59:15.12 ID:auSjxfEy0
西「何でこんな事話してるんだろーな……はははッ」

凛「ま、待って、あなたがこの世界を憎む理由がお母さんの死なら、あなたのお母さんを生き返らせて……」

西は更に自虐気味に笑った。

西「出来なかッた」

凛「っ!!」

西「ガンツのデーターのどこにも、お袋はいなかッたんだ」

凛「そん、な……」

西「……ッ!」

呆然とした凛の顔を見ながら西は口元を歪ませて言葉を発する。

その表情は何かを期待するようなものであった。

西「あァーそういえばよォ……お前の両親の事だけどよォ……」

凛「え?」

西「お前の両親のデーターも存在しなかった」

凛「…………う、そ……だって……」

西「島村と本田のデーターは確かに見つけた。だけどよォ、お前の両親のデーターを見つけたッて俺は言ッてねーぞ? その様子だとお前の両親も生き返るッて勘違いしてたみてーだな」

凛「…………」

凛が頭をたれて西から凛の表情が見えなくなった。

西「あ? どーしたんだよ? ショック受けてンのか?」

凛「……」

西「笑えるなァ! ハハハッ! そーだ! 島村と本田のデーターも消してやるよ! そーすればもうアイツ等を再生する事はできねェ!!」

凛「…………」

凛の手が西の手首を握り締める。

西「その後はアイツ等だ! 北条と神谷も頭ン中の爆弾を起動してブッ殺してデーターも消してやるよ! そーすればお前は一人だ! この世界でお前は一人になる!!」

凛「…………」

凛の手は西の手首から離れて、西の首元まで伸びていった。

西「そーなればお前はどーするんだろーな? またこの世界を壊そうとするんじゃねーのか? 絶ッてーにそーなるだろーな! 俺もお前に殺されるかもしンねーけどもうどーだッていい。俺はお前がブッ壊れる姿を見てから死んでやるよ! ハハハハハハッ!!」

凛「…………」
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 22:00:06.44 ID:auSjxfEy0
凛が伸ばした腕は西の首をすり抜けて、西の両肩にそっと触れられた。

西「……おい、なんだよ……」

凛「もう、止めよ」

凛はどこまでも悲しげな顔で西を見つめていた。

西「……俺はお前のトモダチを殺すッて言ッてンだぞ?」

凛「お願い、そんな事言わないで」

西「……おい、俺を殺さないと本当に全員殺すぞ」

凛「……お願い。もう誰かが死ぬとか、そんな事嫌なんだ……」

西「…………なら俺を殺せよ」

凛「……殺せないって」

西「………………クッソォ!!!!」

西は凛の手を乱暴に振り払ってソファーに深く腰を埋めた。

両手で顔を覆いながら小さく震えて。

西「……もう、駄目なのかよォ」

凛「西……」

西「せッかく……もうちょッとで……お前と一緒に……」

凛「……」

凛は西の前で立ち尽くして西の様子を伺っていた。

西はしばらく顔を伏せていたが、やがて顔を上げて凛を見て呟いた。

西「さッきのは嘘だ。お前のトモダチには手をださねーよ……」

凛「……うん」

西「何だよ……その気の抜けた返事は……」

凛「信じてたから」

西「……お前の両親を再生できねーッてのは嘘じゃない」

凛「……うん」

西「……納得できるのかよ?」

凛「出来るわけないよ……でも……もう、無理なんでしょ?」

西「……あァ」

凛「……」

西「……はァ、なンか……もう疲れちまッた……」

大粒の涙を零して声も上げず泣く凛を見ながら西は全身の力を抜いてソファーにもたれかかっていた。
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 22:00:46.17 ID:auSjxfEy0
西「……お前さ、これからどうすンの?」

凛「……これから?」

西「ああ。お前にはもう帰る場所なんかどこにもねーだろ……家も無い、テロリストとして全国指名手配のお尋ね者で、お前の手は血に汚れきッてるンだ……何をどーするのかと思ッてな」

凛「……まずは、卯月と未央を再生する。それからは、私のしたことに対して責任を取って行こうと思ってる……」

西「意味ワカンねー……俺達がした事の責任なんてお前一人でどーすることができると思ッてンだよ」

凛「沢山考える……私一人じゃなくてみんなにも意見をもらって一番いい方法を見つけたいと思ってる」

西「ワカッてンのか? 俺達がブッ殺して来た奴等は国や社会の重要な位置を締めてる奴等がほとんどだッた。そんなヤツ等がいなくなッて今の世界がどれだけ混乱するか……俺達がトドメを刺さないでももうこの世界は壊れるかもしれねーッてのに、そんな事に対する責任なんて取れるわけねーだろ」

凛「……それでも」

西「デモじゃねーよ。お前何にも考えてねーンだろ? ワカッてンだよ、お前が行動するときは先の事はほとんど考えねーで行動するッて」

凛「う……」

西「もう陽の当たる所で何かできるなんて思うな。やるならやるで先の先まで考えろ。お前は考えもコロコロコロコロ変わるンだからよ」

凛「うぅ……」

西「……俺が言えるのはそンくれーだ」

西は立ち上がり手元に光のキーボードを展開すると高速で何かを打ち込み始める。
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 22:01:28.13 ID:auSjxfEy0
凛「ちょっと、何を……」

西「……安心しろよ、もう世界を支配するとか考えてねェ、何かどーでもよくなッた」

凛「え?」

西「……お前にもガンツの制御方法は最低限教えておいたから俺がいなくても再生やら転送やらできッだろ?」

凛「っ!……どこに行くつもりなの?」

西「……ワカンねェよ。お前は責任を取るとか言ッてッけど、俺はそんな馬鹿な事考えねーから、テキトーに人間のいない所で生きて行くか、それともどッかでの垂れ死ぬかのどッちかだろーな……もうお前には関係ねー事だ」

凛「……」

西「……おい、手を放せよ」

凛「……嫌だ」

西「放せッて」

凛「嫌だよ……」

西「放せッてンだろ!? 何なンだよ!? お前はもう俺を見限ッてアイツ等と一緒に行くンだろーが!? 俺を捨てたくせに今更何なんだよ!?」

凛「……一緒にさ」

西「あァ!?」

凛「あなたも一緒に……私は、あなたとも一緒に生きて行きたい……」

西「ッ!…………それこそふざけんな、だ。何で俺がお前なんかと……」

凛「だって……放っておけないんだよ……」

西「は?」

凛「私にとって……あなたも大事な友達だって、そう思ってるから……」

西「…………はッ、バッカじゃねーの?」

凛「馬鹿じゃないよ……真剣だから」

西「……」

西は展開した光源を全て消してもう一度ソファーにドカッと腰をおろした。

手をつかんでいた凛も体勢を崩して西の隣にストンと座る。

西は凛と密着してその体温を感じながら、
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 22:01:57.67 ID:auSjxfEy0
西(一体なんなんだろーな……)

西(さッきはこいつの事、一瞬ママみたいに思えたのに……)

西(ただ……はッきりワカッちまッた事がある……)

西(俺、こいつと一緒に何かしてーンだ)

西(世界を支配するッてのもこいつが本気でノッて来てから俺も本気になッた)

西(こいつがその気じゃなくなッたら、どうでもよくなッた……)

西(それで……こいつが俺を引き止めてくれたことが……嬉しい……)

西(一緒に生きて行きたいなんて言われて……嬉しかッた……)

西(ママみたいな女なのに……何か違ッて……一緒にいたいヤツ……)

西(…………)

凛「西?」

西「……なァ、本当に俺達みたいな人間がもう一度やり直せると思うか?」

凛「! うん、思うよ」

西「そッか……」

凛「うん」

西(……どうせもう何もねーンだ。それならこいつの傍で、こいつの行く末を見届けてやるのも悪くねェな……)

西と凛はお互い寄り添いながら差し込む朝日を眩しそうに見続けた。

二人の瞳には今まであった真っ暗な闇は無く、差し込む朝日のような光が映し出されていた。
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/09(土) 22:02:30.52 ID:auSjxfEy0
今日はこの辺で。
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/12/09(土) 22:23:35.52 ID:b+tH1jKWo

西君に救いがあって本当に良かった……
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/09(土) 22:45:56.74 ID:dhNORgkt0

この世界情勢まだカタストロフィ前なんだよな
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/25(月) 14:15:47.04 ID:qopBQtRIO
西くんも救われそうな展開でよかったわ
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/31(日) 17:19:53.36 ID:8+ViXghwo
おつおつ
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/15(月) 23:24:58.40 ID:3+oZiS950
保守
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/22(月) 19:51:16.64 ID:f2dn8/bj0
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2018/02/02(金) 23:19:50.05 ID:d572ILh+o
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/09(金) 22:40:38.29 ID:UyA24OAy0
まっています
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/24(土) 06:26:15.42 ID:pHNAt84X0
保守
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/14(月) 17:57:29.81 ID:d7sA7Zal0
上げ 続け
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 13:16:37.46 ID:5mqT5upm0
【最悪のSS作者】ゴンベッサこと先原直樹、ついに謝罪
http://i.imgur.com/Kx4KYDR.jpg

あの痛いSSコピペ「で、無視...と。」の作者。

2013年、人気ss「涼宮ハルヒの微笑」の作者を詐称し、
売名を目論むも炎上。一言の謝罪もない、そのあまりに身勝手なナルシズムに
パー速、2chにヲチを立てられるにいたる。

以来、ヲチに逆恨みを起こし、2018年に至るまでの5年間、ヲチスレを毎日監視。

自分はヲチスレで自演などしていない、別人だ、などとしつこく粘着を続けてきたが、
その過程でヲチに顔写真を押さえられ、自演も暴かれ続け、晒し者にされた挙句、
とうとう謝罪に追い込まれた→ http://www65.atwiki.jp/utagyaku/

2011年に女子大生を手錠で監禁する事件を引き起こし、
警察により逮捕されていたことが判明している。
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 13:17:17.60 ID:5mqT5upm0
>>226
>私こと先原直樹は自己の虚栄心を満たすため
>微笑みの盗作騒動を起こしてしまいました

>本当の作者様並びに関係者の方々にご迷惑をおかけしました事を
>深くお詫びいたします

>またヲチスレにて何年にも渡り自演活動をして参りました
>その際にスレ住人の方々にも多大なご迷惑をおかけした事を
>ここにお詫び申し上げます

>私はこの度の騒動のケジメとして今後一切創作活動をせず
>また掲示板への書き込みなどもしない事を宣言いたします

>これで全てが許されるとは思っていませんが、
>私にできる精一杯の謝罪でごさいます

http://i.imgur.com/QWoZn87.jpg
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 13:17:56.61 ID:5mqT5upm0
>>226
>私が長年に渡り自演活動を続けたのは
>ひとえに自己肯定が強かった事が理由です

>別人のフリをしてもバレるはずがない
>なぜなら自分は優れているのだからと思っていた事が理由です

>これを改善するにはまず自分を見つめ直す事が必要です
>カウンセリングに通うなども視野に入れております

>またインターネットから遠ざかり、
>しっかりと自分の犯した罪と向き合っていく所存でございます

http://i.imgur.com/HxyPd5q.jpg
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 13:18:28.86 ID:5mqT5upm0
>>226
ニコニコ大百科や涼宮ハルヒの微笑での炎上、またそれ以前の問題行為から、
2013年、パー速にヲチを立てられるに至ったゴンベッサであったが、
すでに1スレ目からヲチの存在を察知し、スレに常駐。
自演工作を繰り返していた。

しかし、ユカレンと呼ばれていた2003年からすでに自演の常習犯であり、
今回も自演をすることが分かりきっていたこと、
学習能力がなく、テンプレ化した自演を繰り返すしか能がないことなどから、
彼の自演は、やってる当人を除けば、ほとんどバレバレという有様であった。

その過程で、スレ内で執拗に別人だと騒いでいるのが間違いなく本人である事を
確定させてしまうという大失態も犯している。


ドキュメント・ゴンベッサ自演確定の日
http://archive.fo/BUNiO
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/10(火) 22:48:38.22 ID:CqtXVdro0
続きが読みたい
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/18(木) 23:07:57.76 ID:74Nba3uM0
きっと更新がある
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/19(金) 04:17:13.81 ID:EareozG20
落ちない限り待ってる
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