渋谷凛「GANTZ?」 その3

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33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:45:00.56 ID:IRzUbXNj0
西は男を転送した後、酷く不機嫌な表情で、

西「……あー、クッソ、折角色々やッてやろーと考えてたのによ、なんかどーでもよくなッた」

酷く投げやりな感じを出しながら西はホールに集まった人間たちに視線を向けて宣言した。

西「そんじゃ、ゲーム開始だ。さッさとくたばッて来てくれ。万が一生き残れたら開放してやッからよー」

その宣言と共にホール中の人間は転送されていった。

全員、スーツも武器もなしで。

それを見届けた後、西は壇上のガンツの前にソファーを二つ転送しそれに深く腰掛けて足を組んだ。

西「悪りーな渋谷。色々お前にも手伝ッて貰おうと考えてたけど、やッぱやめた。気分がのらねーわ」

凛ももう一つのソファーに腰をかけるとソファーの縁に肘を置き西を見据えた。

凛「……別に良いけど。アイツ等はどうしたの?」

西「ああ、ライブ映像を今出すわ」

すぐに二人の目の前にあるガンツ球の上空に立体映像が二つ浮かび上がった。

一つは、先ほど凛に固執していた男が、どこかの部屋で何か小さな虫の様な生物に襲われている映像。

もう一つは、西によって転送させられた人間達が、イタリアと思われる街並みの場所に転送されて互いに何かを言い争っている映像。

凛は男にはすでに興味を失っているのか、興味も持ちたくも無いのか、男の映像には視線を向けずにもう一つの映像を見る。

凛「……外国?」

西「ああ。イタリアにそーとーやべー星人がいたからそこに送ッてやッた」

凛「……わざわざ星人に殺させるっていう事?」

西「奴等の死に様に相応しいと思わねーか?」

凛「……そうかもね」

西「だろ? 前々から思ッてたんだよ。俺達のミッションを見て楽しんでる奴等がいるなら、自分達もミッションに参加させてその楽しさを味あわせてやりてーッてな」

凛「……因果応報ってやつだね」

西「違いねーな。はははは」

西は少しずつ機嫌が治まってきたのか凛に笑いかけて、凛との語らいを楽しんでいた。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:45:56.62 ID:IRzUbXNj0
西はさらに液体の入った二つのグラスを転送して、一つを凛に渡す。

西「奴等の死に様でも見ながら乾杯しよーぜ」

凛「……お酒?」

西「ああ、超高級ワインだ。味も折り紙つきとかッて書いてあッた」

凛「……私達未成年でしょ?」

西「おいおい、これからは俺達がルールで、俺達が全てを作ッてくンだぜ? 旧世界のルールに縛られてンなよ」

凛「……」

凛は少しだけグラスの液体を見ていたが、やがて西から受け取った。

西「そうこなくッちゃな」

凛「……乾杯するって言うけど何に?」

西「そりゃ、俺達の未来にだろ」

凛「……ならそれで」

凛と西はお互いのグラスを軽く合わせてワインを一口口に含んだ。

すると、お互い顔を見合わせて、

西「……」

凛「……美味しくないんだけど」

西「……俺もそー思ッた」

凛は西があまりにも顰め面をしているのに少しだけ表情を緩めて、

凛「……飲めもしないお酒なんか用意するから」

西「ッ!? の、飲めねーワケねーだろ!? ンッンッ……オラ! どうだ!?」

凛「……無理しちゃって」

西「無理なんてしてねーし!?」

西が立ち上がって赤い顔で凛に言い寄っている背後では、イタリアに送られた人間達が美術品のような星人に次々と殺されていく様子が流れ続けていた。
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:46:35.96 ID:IRzUbXNj0
凛と西が会話をしながら立体映像が星人の蹂躙を映し出している中で、凛はふと映像に何か違和感を感じて映像を見た。

西「ん? どーした?」

凛「……あれ? さっきあのクズ共を転送したときスーツとかも転送した?」

西「いや、してねーぞ?」

凛「それじゃ……あれは?」

凛が立体映像を見ると、そこにはスーツを着た人間が星人と戦っている姿が映し出されていた。

しかし、その人間もあっという間に星人に殺されてしまう。

西「何でスーツを着た人間が……あッ」

西は何かに気がついたのか手をポンと叩き、光のキーボードを展開し何かを調べ始めた。

すぐに西は自分の調べたい何かを見つけて凛に答えた。

西「なんか全世界のガンツが同時起動しちまッて、世界中のガンツメンバーがイタリアに転送されちまッたみてーだ」

凛「……何やってんの」

西「ま、特に問題ねーか」

凛「……」

凛は何気なく立体映像を見た。

すると、そこでありえないものを見て思わず立ち上がった。

凛「!?」

西「どーした?」

凛「なんで……あの人が?」

立体映像が映し出すのは目つきの悪い長身のスーツの男が数人のスーツを着た少女達を守るように映し出されていた。

その男は、卯月と未央のプロデューサーであり、ガンツとは係わり合いがないはずの男だった。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:48:39.32 ID:IRzUbXNj0
少し時間は遡り、1台の車が高速道路を走っていた。

その車を運転するのは卯月と未央のプロデューサー。

彼は後部座席に乗せた4人のアイドルの仕事を終わらせて、アイドルの少女達を送迎していた。

P「皆さんお疲れ様です」

Pは後部座席の4人に労いの言葉をかけて、後部座席の4人もそれに反応し、

「あっ、は、はい! お疲れ様でした」

ショートカットの女の子が少し緊張気味にプロデューサーに返し、

「今日は学生さんたちに囲まれて質問されっぱなしで緊張しちゃいました……」

サイドテールの女の子が今まで行なっていた仕事の感想を言う。

「美穂ちゃんと響子ちゃん、すっごく質問攻めにあってたからね〜」

ゆるくほんわかした雰囲気を出す女の子がニコニコしながら美穂と響子と呼んだ女の子に言い、

「藍子ちゃんは恋愛相談なんて受けてたじゃないですかっ! あんなに的確な回答、私感動しましたよっ!」

ひと際元気な女の子が藍子と言う女の子を見ながらうんうんと頷いていた。

藍子「茜ちゃんなんて男の子の進路相談に乗ってあげていたじゃない」

茜「それを言うなら美穂ちゃんと響子ちゃんも一緒でしたよねっ!」

美穂「あはは、私はあんまりうまく相談に乗ってあげられなかったかも……」

響子「そんなことないですよっ、緊張してオロオロしていた私をフォローしてくれて……」

Pが後部座席の4人をバックミラーで見て、お互い仲が良さげに会話している所を見て一息をついた。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:49:21.01 ID:IRzUbXNj0
P(渋谷さんが島村さんと本田さんを連れ戻すと言って下さってから数日)

P(私は渋谷さんの言葉を信じ、シンデレラプロジェクトのメンバーには島村さんと本田さんはもうすぐ戻ってくると伝え彼女達の不安を和らげた)

P(私自身も渋谷さんの言葉を信じて、こうして彼女達がいつ戻ってきても良い様に彼女達の仕事を進めている)

P(今日も、彼女達の新ユニット……ピンクチェックスクールとポジティブパッションが新曲を収録するロケ地である学校に行っていた)

P(島村さん、本田さん……あなた達の居場所は私がいつだって用意し待っています……ですから、早く、戻ってきてください……)

Pは凛を西の自宅に送ってからすぐに仕事を再開し、アイドル休止中のはずの卯月と未央が行なうための仕事を取り始めていた。

今回のメンバーにはまだ卯月と未央が同じユニットとなる事は伝えていない。

しかし、大まかなスケジュールは作り上げて、それを進めていた。

それらの事は全てPの内から来る不安から逃げるためのものだった。

Pは凛の言葉を信じていたが、どうしても小さな不安が残っていた。

もしかすると、このまま凛も消えてしまい、卯月も未央も戻ってこないのではないかと。

そんな思いを払拭する為に、Pは二人が行なうための仕事を作り出そうとしていた。

そうすることによって、二人は戻ってくる、凛と共にまたあの笑顔を見せてくれると信じ。

そうやって考えながら運転するPに運命のいたずらが襲い掛かってきた。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:49:48.02 ID:IRzUbXNj0
ガンッ!

藍子「きゃっ」

茜「わわっ!?」

美穂「えっ?」

響子「きゃぁっ!?」

車が大きく揺れた。

P「!?」

Pがバックミラーを見た時、そこには大きなトラックが存在していた。

ガンッ!!

再び大きな衝撃が車を襲う。

美穂「な、何?」

響子「え? と、トラック?」

藍子「え……うそ?」

茜「ぷ、プロデューサー!! ま、前っ!!」

Pが前を見るとそこは急なカーブ。

Pがハンドルを切ろうとするが、

ガンッ!!!!

さらにひと際大きな衝撃が車を襲い、次の瞬間にはPはエアバックに包まれて、浮遊感を感じていた。

「「「「きゃああああああああああああああああああ!?」」」」

後部からアイドル達の悲鳴を聞きながら、数秒の浮遊間を味わった後、Pは全身に衝撃と爆発音を聞き意識を暗転させた。

Pが運転していた車は、後方から飲酒運転のトラックに衝突されて、カーブを曲がりきれずに崖の下に落ち車は爆発し炎上していた。

その中にいる全員が落下した衝撃と、炎にまかれて死亡してしまった……。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:50:44.67 ID:IRzUbXNj0
P「…………」

P「……っ」

死んだはずのPは薄っすらと目を開ける。

そこは古びた教室。

中心に黒い球がある教室だった。

P「こ……れは……」

その球にPは見覚えがあった。

先日、菊地というフリーライターに見せられたガンツと言われる黒球。

そこまでPの脳で認識して、Pの全身が酷い悪寒に襲われた。

咄嗟に教室を見渡すPの目に入ったのは、スーツを着た7人の男女。

それと、自身が送迎していたアイドル4人。

7人の男女は自分の事を品定めするような視線を向けており、4人のアイドルはいまだ気を失っていた。

Pはすぐに4人の傍に駆け寄り、

P「小日向さん! 五十嵐さん! 高森さん! 日野さん! 目を覚ましてください!」

普段では考えられないほどの声量で、焦燥感を出しながら4人を呼び続けた。

そのPを見ながら、7人の男女は、

「……知り合いか?」

「……みたいだな」

「えーッ、違うッて! アイツ絶対変質者だよ! だッて眼つき悪いし!」

「森下さん……見た目で判断しちゃだめだよ……」

「焦ッてる……? 何で……?」

「安孫子さん、藤本さん、今回もまた前回みたいに違うパターンですかね?」

「……」

Pを見ながらもそれぞれの考えを零し、

Pが4人を起こしたと同時に、7人のうち2人の男がP達に声をかけた。

美穂「うぅ……あれ?」

響子「え? ど、どうなったんですか?」

藍子「え〜っと……私、さっき……」

茜「んん!? ここはどこですかっ!?」

P「皆さん無事でしたか……」

「はい、全員目を覚ましたところで聞いてもらえるかな?」

P「……貴方方は……」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:51:30.17 ID:IRzUbXNj0
スーツの男二人は説明を始める。

「これからみなさんは違う場所に強制移動させられます」

「その先であなた達を待つのは奇妙なハンティングゲームです」

「そこで星人と呼ばれる生き物をハント……つまり殺すわけですが」

「いッぱい殺して点数を集めないと自由にはなれません。そして、星人に殺されたら本当に死んでしまいます」

「その黒い球からもうすぐ指令が出ます。我々はその球をガンツと呼んでいます」

P「っ!!」

「ガンツの中には一人ずつのオートクチュールのスーツが入ッています」

「絶対にスーツを着てください。着ない人はすぐ死にます」

「以上です」

まくし立てるように言ったその言葉をP以外の4人はぽかんとした顔で聞いていた。

何を言われたかも分かっていない表情を浮かべていたが、その4人の意識を戻すためにPが言う。

P「みなさん……この人達の言っている事は真実です……」

美穂「え?」

「おッ?」

P「まずは今言われたように、そのガンツと言う球に内蔵されているスーツの確認を行ないましょう……」

響子「あの? え?」

「なんだ……この男……?」

P「すみません……この、ガンツから我々の分のスーツを取り出せるのはどのタイミングになるのでしょうか?」

藍子「あの……プロデューサーさん?」

「……もうすぐ指令が出る。それからガンツの両扉が開いて中からスーツが入ったケースを取り出せる」

P「ありがとうございます……みなさん、ガンツが開いた後、スーツを必ず着て下さい」

茜「あーっ!! もしかしてこれは撮影ですかっ!?」

P「……日野さん、これは撮影ではありません。そして遊びでもありません……」

Pは小さく唾を飲み込んで4人に向かってはっきりと言った。

P「……本当の……殺し合い……戦争が始まります……」

4人は目を大きくしPを見つめ、

7人のスーツを着た男女は訝しげな視線をPに向けていた。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/23(日) 04:51:57.58 ID:IRzUbXNj0
今日はこの辺で。
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 05:57:55.00 ID:9SfScgyR0
乙、G?だっけのメンバーが出てくるとは思わなかった
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 06:33:47.94 ID:1Ra3AFn4O
Oのメンバーだね、珍しい
おっさんのキモさたるやよ
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 06:49:41.29 ID:8IX5GiqPO
おっつおっつ
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 09:54:25.38 ID:EC86xL2Do
八幡出してもええんやで
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 12:16:14.40 ID:4XTa9K0ho

>>西「テメーが渋谷を手に入れる? ンなことできるワケねーだろ? コイツは俺のパートナーだ」
>>西「コイツはテメーのモンじゃねー。俺のモンだ」

後から自分の台詞を思い出すかも
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 12:38:36.87 ID:xBg6o7I0o
まさかのメンバーだ
続き楽しみ
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 17:38:47.83 ID:IUpSyrr30
まさかのGANTZ Gメンバー
7人って女の子4人と内木と我孫子、藤本 か
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 21:08:46.18 ID:vAeRMt8XO
しぶりんの親を殺したのも指名手配の男なのかね
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/23(日) 22:51:57.81 ID:dLBLl4wI0
Part1から一気読みしてきた。
おっつおっつ
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:51:58.48 ID:Zwi3F1RV0
Pが4人に言った言葉に対し、おずおずと藍子が手を上げて質問を返した。

藍子「あ、あの〜、プロデューサーさん? せ、戦争って一体どういう事なんですか?」

P「……混乱される気持ちも分かりますが、頭を切り替えてください……私達は巻き込まれてしまったようです……恐ろしい命を懸けた戦争ゲームに……」

藍子「えっと、その……やっぱりこれお仕事ですよね?」

P「違います! これは……違うのです!」

藍子「う〜ん……」

藍子は困った表情で首をかしげている。

美穂と響子も同じだった。

茜だけがガンツに興味津々と言った感じで触れたりしていた。

Pが焦る気持ちとは裏腹に4人はまったくこの状況を理解できていなかった。

Pは何とかして4人に危機感を持ってもらいたかった。

だが、このままでは4人は何の気構えも無く、菊地の話していた凄惨なデスゲームに放り出されてしまう。

それだけは避けたいと考えていたP。

そして、Pへ思わぬところから助け舟が出された。

「あなた達、これを見なさい」

Pたちの前に来て語りかけてきたのは、スーツを着た黒髪ロングの少女。

少女は持っていた鞄の中から黒いオモチャのような短銃と飲みかけのペットボトルを取り出して、ペットボトルをガンツの上に置くとそれに狙いを定めて引き金を引いた。

数秒後、ペットボトルは爆発して、中の水がガンツに降り注いだ。

美穂「ひっ!?」

響子「きゃぁ!?」

藍子「ば、爆発!?」

茜「おおっ!?」

「これが今からあなた達が使う銃の威力。こんなペットボトルどころか車なんかも一発で破壊できる性能がある。そのことを理解して」

P「貴女は……」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:52:54.58 ID:Zwi3F1RV0
黒髪ロングの少女はさらに、

「次はスーツの性能。……黒名! やるよッ!」

「! うんッ!」

黒髪ロングの少女はショートカットの黒名と呼んだ少女に向かって、突然飛び蹴りを繰り出す。

二人の距離は5メートルほどあったが、そんな距離を黒髪の少女は一回の跳躍で無くし、黒名という少女の顔面に足が触れる寸前、

黒名という少女はその足を掴んで、黒髪ロングの少女を一回転振り回して、少女の蹴りの勢いをプラスして投げ飛ばした。

黒髪ロングの少女は投げ飛ばされながらも、空中で体制を整えて教室の黒板の上に位置する壁と天井の隙間に張り付いた。

僅かな引っ掛かりを指で掴み自身の全体重を固定して不自然な体制を保っているようだった。

黒髪ロングの少女は壁を蹴ってくるりと回転して降り立つと、Pたちの前に再び来て、

「どう? これがスーツの性能。超人的な力を着ている人間に与えてくれる」

美穂と響子は口をあんぐりと開けながら驚いており、藍子は口を押えて目をまん丸にしていた。

そして、一人、茜は、

茜「す、す、す、すごいですねっ!!」

「ちょ!?」

黒髪ロングの少女に詰め寄って手を握り締めていた。

茜「私、あんな動きを出来る人初めて見ましたよっ!! ラグビーの選手よりも早く動けるなんてあなたは一体何のスポーツをやってるんですかっ!?」

「ちょ、ッと!!」

茜「ああ、すみませんっ!! 私、日野茜と言います!! あなたのお名前を教えていただいても宜しいでしょうか!?」

池上「い、池上季美子よ」

茜「池上さんですねっ!! では池上さんっ!! 私と一緒に全力ランをしませんかっ!? 走って走って頂を目指しましょうっ!!」

池上「な、何、この子……」

P「……日野さん、落ち着いてください」

茜「どうしましたかっ、プロデューサー!?」

P「……彼女は私達に何かを伝えてくれています。それを遮ってしまうのは彼女に失礼です……」

茜「ハッ!? こ、これは失礼しましたっ!! 池上さんの動きに感動してしまいついつい……。池上さん、日野茜、全力で謝罪しますっ!!」

池上「え……いや、いいけど」

茜「ありがとうございますっ!! では、お話の続きをお願いしますっ!!」

小さな茜から発せられる全力な元気に池上は少し圧倒されていたが、小さく咳払いをして再度話を元に戻した。
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:53:52.60 ID:Zwi3F1RV0
池上「コホンッ……見てもらッたように、今からあなた達もこのスーツや銃を使ッて生き残りをかけたゲームをやらなくてはいけない……それを理解して。そうしないと……あなた達全員、死ぬわよ」

緊迫感の伝わる表情で死ぬと断言する池上に4人の顔色も真剣なものに変わっていった。

池上がそうやって説明している間にも、スーツの男達は、

「あいつ、変わッたなー」

「俺達が死んでる間に結構色々あッたらしいぞ」

「色々ね……しッかし俺達情けねーよな。二人揃ッて年下の女達に生き返らせて貰ッてんだぜ?」

「……言うな」

「そんでもッて、まだ俺達を信頼してくれてるッてな。……もう俺達よか、アイツ等のほうがずッとしッかりしてるッてのになぁ……」

「……頼られるなら答ないといけないだろ。あの子達の中ではまだ俺達はこのゲームの先達であり、生き残り方や戦い方を教えた師匠みたいなものだからな」

「デキる後輩を持つ先輩の気分だな。そんじゃ、俺達ももう少しデキる先輩をアピールしとくか」

「ああ」

そこまで小声で話して、男達は池上に近づいてその肩を叩くと、

池上「藤本さん……」

藤本「はい、この池上が言うように今からあなた方は私達と共に生き残りをかけたゲームを行なわなくてはいけません……安孫子」

安孫子「ですが、全員がスーツを着て力を合わせることによって生き残る確率は飛躍的に上昇します。ですので、スーツを着ること、武器を持ッていく事は必ず行なッてください」

藤本と安孫子という男達も池上と同じように真剣かつ緊張した面持ちでPたちに再度忠告を行なった。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:54:41.27 ID:Zwi3F1RV0
さらに二人は話を続けて、

藤本「後、あなたは先ほどこの状況を冷静に分析……いや、この状況を知ッているような発言をしましたよね?」

藤本はPに問いかける。

P「……ええ、私は今、置かれているこの状況と、このガンツと言う物についてある程度の知識を持っています」

藤本「……まさかあなたは一度解放された人間では?」

P「いえ、私はこのガンツと調べている人間、そしてこのガンツによって戦争ゲームをさせられている人間に話を伺ったことがあるのです。詳しい情報はその時に知りました」

藤本「……調べている人間?」

安孫子「……ガンツのメンバーから話を聞いた? 一体どういうことだ……」

P「あなた方に聞きたいのですが、あなた方のチームには渋谷凛さんという女性はいらっしゃいますか?」

藤本「……渋谷凛? もしかしてあのテロリストのことですか?」

P「……そうですか、彼女はこのガンツチームの所属ではないようですね……」

安孫子「……」

Pがさらに何かを問いかけようとしたところで、安孫子が手を叩き全員の注目を集める。

安孫子「色々な質問、疑問が互いにあると思う」

安孫子「だが、俺達がまず優先させる事は、今からの狩りを生き残ることだ」

安孫子「その為の作戦をここにいる全員で話し合いたい。あなた達も協力をしてもらいたいのだが構わないかな?」

安孫子は他に転送されてくる人間がもういないと判断し、今この場にいる新規の5人に提案した。

アイドルの4人はPの顔を伺っていたが、Pは安孫子の提案に頷いて、

P「はい」

小さく一言だけ返事をした。

しかし、その表情は真剣そのものであり、安孫子と藤本はPから出される気迫に少しだけ笑い、こいつは使えるかもしれないと同時に思った。
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:55:08.68 ID:Zwi3F1RV0
安孫子はスーツの少女達をPたちの近くに呼ぶと全員を円陣状にして座らせた。

安孫子「時間ももう無いと思うから手短に説明する」

安孫子「俺達はチーム全員で動き、お互いの死角をカバーして行動する」

安孫子「前衛は基本3人。こッちの藤本と俺、プラスこッちの池上、黒名、梶のうち誰かだ。3人が前に出た時点で残りの2人は後衛を守る為に後衛チームと行動を共にする。その基本パターンで星人の足止めを行なッて、後方からの銃撃で星人を削ッて倒す戦法だ」

安孫子は前衛という藤本と池上、そして先ほどのショートカットの少女、黒名と派手目の金髪の少女、梶に指を刺す。

安孫子「今回あなた達は、後衛からの狙撃を担当してもらう。銃の使い方は……池上、銃を貸してくれ」

池上から銃を受け取った安孫子は銃の説明をPたちに行なっていく。

安孫子「引き金は上と下の二つのトリガー、これは全ての銃で統一されている。上を引くことによりロックオンをかけることができ、その状態で下のトリガーも引くと発射される。銃のモニターを確認して誤射しないようにしてくれ」

安孫子「この他に武器は、刀とバイクも存在する、そッちの武器は指令が出た後に隣の教室から持ッてくるんだが……数の限りもあッてあなた達は今回銃のみを使ッて貰うことになるだろう」

武器の説明をした後、安孫子は一呼吸を置いて、P以外の4人のアイドルに向かって言う。

安孫子「最後に、一番重要なことを言う。どんな状況になッても散り散りに逃げないでくれ」

安孫子「恐怖にかられて逃げた先に待つものは……確実な死だ。君達のような女の子は特にそういッた傾向があるから、どんな状況になッても自分を見失わず、今いッた言葉を忘れないでくれ」

4人は真剣な表情で忠告する安孫子に対し、唾を飲み込みながら首を縦に振った。

ある程度であるが、4人とも今のこの状況を飲み込んでいる証拠だった。
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:55:52.55 ID:Zwi3F1RV0
藤本「と、こんな所で、自己紹介でもやッとくとするか」

安孫子「……藤本」

藤本「もう基本的な事は伝えただろ? 次は残された時間でお互いのチームワークを得る為に出来ることをやんねーとな」

安孫子「そうだな」

藤本は全員を見渡しながら簡単に自己紹介を始めていった。

藤本「そんじゃ、言いだしッぺの俺から……俺は藤本、大学生。こッちの安孫子とは同じ大学で同学年です。好きなものはラーメン。次、安孫子」

安孫子「……俺は安孫子、藤本とは腐れ縁ッて奴だ……次」

本当に簡単に自己紹介をした安孫子は視線を池上に向ける。

その視線に池上は頷くと、

池上「私は池上季美子。藤本さんと安孫子さんがいない間はリーダーをやッていたからある程度は助けてあげることもできるし、頼られればそれに答えるわ」

池上「でも、自分勝手な行動を取るようなら、私は頼られてもあなた達を見捨てる覚悟もしている。生き残りたかッたら協調してお互いを助け合う気持ちを忘れないで……私からはそれだけ」

池上は真剣な面持ちでPたちに言い、全員を見定めていた。

次に池上の隣の黒名と呼ばれていた少女が立ち上がって自己紹介をする。

黒名「あたしは黒名蛍。えッと……池上さんは厳しい事言うけど、あなた達を見捨てるような事なんて本当は考えてないから安心して」

池上「黒名、余計な事は言わなくていい」

黒名「あはは……とにかくみんなで協力して生き残ろう! どんな時だッて希望はあるんだから! 次、よッちゃん!」

黒名によッちゃんとよばれた眼鏡をかけた少女はおずおずと自己紹介を始めた。

宮崎「あ、あの……私、宮崎美子です……えッと……その……私、弱いですけど……その頑張ります……」

「なーにが私弱いですーッてアピールしてんの? この女ゴルゴさんは? この中でも一番星人を殺してんのはアンタでしょーに」

宮崎「も、森下さん!?」

森下「はーい、あたしは森下愛、こッちの美子と同じ後衛からのスナイパーでーッす! ちなみにメジャーデビューを控えたアイドルでもあるから、サインしてあげてもいいよ?…………あれ?」

ツインテの少女、森下が宮崎を後ろからハグしながら自己紹介をする。
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:56:31.81 ID:Zwi3F1RV0
そうして、P達を目を細めてじっくりと見て何かに気がついたようで、

森下「……ちょッとまッて。もしかして、小日向美穂?」

美穂「え? は、はい。そうです」

森下「ちょッ!? 本物じゃん!? ウソウソッ!?」

薄暗い教室でお互いの顔も近づかないとはっきりと分からなかったのだが、近づいたことによってお互いの顔が分かるまでになっていた。

森下は、目の前に自分とは違ってすでにメジャーデビューを果たして一線で活躍しているアイドルがそこにいることに気がついて驚きの声を上げていた。

森下「うッわー、ほんとに本物じゃん……やッば、さッきのあたしの言葉忘れて!」

美穂「えっと……あなたもアイドル、なんですか?」

森下「うぐッ……ま、まだ地下アイドル卒業手前だけどね……来月にはメジャーデビューも控えてるんだけど……」

その森下の言葉に美穂は今まで緊張していた表情を崩して笑顔になって、

美穂「それじゃあ、これからお仕事が一緒になることもあるかもしれないですね! その時は一緒に頑張りましょうね!」

森下「こ、これが一流アイドルの笑顔……くッ、ま、負けられない……」

美穂「響子ちゃん、藍子ちゃん、茜ちゃん、こちらの森下さんも私達と同じアイドルなんだよ……「うぇ!?」 ひゃっ!?」

美穂が他の3人の名前を呼ぶと、森下は身を乗り出して美穂の近くにいる3人に近づいて、その顔を見て大きな声を上げた。

森下「ちょッ!? 五十嵐響子に高森藍子、日野茜もいるじゃん!? どうなッてんのこれ!?」

池上「森下……アンタいい加減にしなよ。もう時間も無いッて言うのに」

森下「だ、だッて、こんな所にアイドルが4人もいるんだよ!? しかも現役のトップアイドル達がだよ!?」

池上「そういう話は全部終わッてからしなさい。次、梶。手短にね」

池上は森下を引きずって美穂達から引き離すと、金髪の梶と呼んだ女性に自己紹介するように促す。

梶「……梶芽衣子。生き残りたかッたら戦いな。私からはそれだけ」

森下と違い立ち上がって一言だけ言うと、すぐに座った梶。

そうしてスーツ組みの自己紹介が終わり、次はP側、まずは美穂が立ち上がって自己紹介を始めた。
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:57:54.31 ID:Zwi3F1RV0
美穂「こ、小日向美穂です。す、すみません……まだ何が起きているのかいまいちわからないんですけど。その、私に出来ることを頑張りますので、よろしくお願いします」

そのまま大きく頭を下げる美穂。

美穂「えっと、それじゃ、響子ちゃん」

響子「あっ、はいっ」

美穂に促されて立ち上がった響子は同じように、

響子「五十嵐響子です。えっと……みなさんが言ってる事、生き残りをかけたゲームが今から始まるっていう事は本当なんですよね?」

響子が再確認するように聞くと、スーツ組みは全員が頷く。

響子「そうですか……私、みなさんの足を引っ張らないようにしますので、その、よろしくお願いします!」

美穂と同じように深々と頭を下げる響子、その様子を見て藤本と安孫子は小さな不安を覚えた。

響子「それじゃあ、藍子ちゃん。お願いします」

藍子「あ、は〜い」

二人の挨拶を見ていた藍子は少し緊張を解いて、自己紹介を始める。

藍子「高森藍子です。あの、戦いって私には出来ないかもしれないですけど。私に出来ることを精一杯やりますので、どうかよろしくお願いします」

またも深く頭を下げて締める。

それを見て藤本と安孫子は小声で話し始めた。

藤本「……おい、マズいぞ」

安孫子「……あぁ、さッきまでの緊張感が消えちまッた」

藤本「……チッ、自己紹介が裏目に出たな……森下のヤツが張り詰めた空気を壊しやがッた」

安孫子「……なッちまッたものは仕方無い、協力はしてくれるみたいだから後は実際に星人との戦いに突入したときにどうなるかだが……」

そうしているうちにも、小声で話している二人の声を打ち消すような声量の挨拶が始まった。

茜「こんにちはっ!! いえっ、こんばんはっ!! 日野茜です!! ゲームとかよくわかりませんが、やるからにはトップを狙いましょう!! 日野茜、全力で頑張りますよーっ!!」

藤本「……あいつ等の中で使えそうなのはあの男だけか」

安孫子「……そうだな」

茜「では、プロデューサー! どうぞっ!」

茜が全員に挨拶をした後、プロデューサーに次と促すが、その直後にガンツから音が漏れた。
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:59:10.87 ID:Zwi3F1RV0
それは、何かの歌のようだったが、途切れ途切れになっており聞き取ることが出来なかった。

『あーー ブチッ らしー ブツッ さがー ブツッ きー ブツッ』

藤本「何ッだ!?」

安孫子「ッ!?」

池上「!?」

次にガンツに解読することも出来ないような記号が浮かび上がり、突如ガンツの両脇が開放されて、中から銃とスーツが取り出せるようになった。

黒名「何……? こんな事、一度もなかッたのに……池上さん、これッて……」

池上「……藤本さん、安孫子さん」

藤本「俺達も……ワカらねェ……けど……」

安孫子「……ああ、何かヤバイぞ」

今まで余裕の表情を崩さなかった藤本と安孫子だったが、今までにないガンツの表示に一抹の不安を感じる。

その様子を見たPは、すぐにガンツに近づいて、中からスーツの入ったケースを取り出し中身を確認すると。

P「みなさん、早く自分の分のスーツケースを取り出して確認してください!」

美穂「え? は、はい……!? く、くまさんパンツ女……ちょ、ちょっと、何で私の秘密を!? 家で寝るときにしか穿いてないのに……」 

響子「ごじゅうあらし……これって私ですか?」

藍子「ゆるふわ貧乳……あの、これは……」

茜「ボンバー、これは私ですねっ!!」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 02:59:37.70 ID:Zwi3F1RV0
P「自分のスーツを手にしたらすぐに着替えてください!……池上さんでしたか、こちらに着替える更衣室などはありますか?」

池上「え……ああ、今は隣の教室にいけるから、そこで着替えることができますけど……」

P「申し訳ありませんが、みなさんを案内すると同時にこのスーツの着方を教えてあげていただけますか」

池上「……わかりました」

スーツケースを見ながら何かを考えている二人がいたが、池上はすぐに4人を連れて教室を出て行った。

それを確認して、Pもすぐにスーツに着替え始め、少し手惑いながらもスーツに着替えたPは次にガンツの中から銃を取り出して確認を行ない始めた。

P「……玩具のようにも見える……だがこれは本物の銃……」

重量感のあるショットガンタイプの銃を手にしてゴクリと息を呑むP。

そのPの耳に焦る声が届いた。

森下「ちょッ!? 転送!? 速いよッ…………」

安孫子「!? マズい!! 藤本、デカ銃を…………」

藤本「チッ!!」

安孫子が頭半分ほど転送されてから藤本に叫んだ、藤本はすぐに教室の隅に置いていた2丁のZガンに飛びついて転送されていく。

宮崎「う、ウソ、じゅ、銃を…………」

黒名「よッちゃん…………」

次々に転送されていくメンバーたち。

梶「くッ…………」

梶がガンツに飛びつこうとしたが、すでに顔が全て転送されて見当違いの場所に走って行ってしまう。

P「!!」

その中で一番最後に転送をされ始めたPはガンツに内蔵されていた銃を全て取り出して持てるだけその両手に抱えた。

何丁かは持つ事はできなかったが、4丁のショットガンタイプの銃と5丁のハンドガンタイプの銃と共に転送されていき、Pの視界は暗転した。
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:00:07.81 ID:Zwi3F1RV0
P「……ここは」

今まで夜だったはずなのに、Pの視界が写すものは太陽の光。

そして、見慣れぬ外国の街並み。

P「イタリア……?」

Pは辺りを見渡していたが、すぐに頭を切り替えて、美穂達のことを思い出す。

P「っ! 小日向さん! 五十嵐さん! 聞えますかっ!?」

P「高森さん! 日野さん! 返事をしてください!!」

Pがそうやって美穂達を探すために声を上げて叫んでいると、建物の間から何かが飛び出してきた。

P「!?」

安孫子「ッ……アンタか……」

P「安孫子さん、でしたね」

安孫子はPの傍らに銃が何丁も散らばっていることを確認すると、小さく笑みを作って、

安孫子「その銃、アンタが持ッて来たのか?」

P「ええ……」

安孫子「良い判断だ」

安孫子は散らばった銃を手に取ると、すぐに行動を開始する。

安孫子「恐らくはこの付近に全員転送されているはずだ。探すのを手伝ッてくれ」

P「わかりました」

安孫子「後、大声はあまりあげないほうが良い。星人によッては聴覚の鋭いヤツもいるかもしれない。声に反応して寄ッてくるヤツもいるかもしれない……」

P「……それは経験則というものでしょうか?」

安孫子「いや……あらゆる可能性を考えておくことが生き残る秘訣だ。アンタも生きて帰りたいなら頭を動かし続けるんだな」

P「……はい」

安孫子の忠告を受けながら、Pは辺りを警戒して美穂達を探し、

数分もしない内に全員合流することが出来た。
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:00:57.42 ID:Zwi3F1RV0
合流してPはすぐに美穂達に駆け寄ったが、美穂達は教室にいた時とは違いかなり不安な表情になっていた。

美穂「あ、あの、プロデューサーさん……ほ、本当にこれ、何が起きてるんですか?」

響子「わ、私達、頭からその、少しずつ無くなっていって、えっと……」

藍子「ほ、本当に、戦い……を、するんですか?」

茜「み、みなさん、大丈夫ですっ! な、なんとか、なるはずですっ!」

P「……」

不安を感じている4人にPは少し考え、まずは落ち着かせることを第一と考えた。

P「……大丈夫です。不安にならなくても私が何とかします……」

P「……みなさんに危害が及ぶ事はありませんので、安心してください」

目つきの悪いPが精一杯表情を緩め4人の不安を取り除くように言い、それを見て4人とも少しだけ顔色を良くしていった。

そうしていると、傍でパソコンと小さな機械を操作していた宮崎が焦った声を上げる。

宮崎「い、一匹、近づいてきます……」

黒名「ッ! 池上さん!」

池上「黒名、行くよ」

黒名「うんッ!」

すぐに黒名と池上が前に出て、それに続くように梶も二人の後を追った。

その様子を見ながら、Pは残っている藤本と安孫子に問いかける。

P「……まさか、星人が近くに?」

安孫子「1匹かなりのスピードで近づいてきているな……」

藤本「宮崎、森下、準備しろ」

安孫子「アンタ達も出来るなら狙撃する準備をしておいてくれ。敵の姿を確認したと同時にロックオンをしたらモニターを確認するんだ。敵の姿が映ッたままならロックオンは成功、引き金を引け…………来るぞッ!」

宮崎がショットガンとパソコンに繋いだハンドガンを両方構えて体育すわりの姿勢になる。

森下も寝そべりながらショットガンを構えて敵の姿を待つ。

藤本と安孫子はZガンを手にして、レーダーで周囲の警戒を怠らずに前後左右を見渡していた。

前から来る敵は完全に池上達に任せるかのように。

そして、Pはショットガンを構えて前方に現れるであろう星人を隠すように4人の前に立ち、その星人の姿を見た。

それは小さな子供に羽が生えた彫刻のような星人。

かなりの速度で飛んでいるのか、その姿が見る見る大きくなって、前衛の池上、黒名、梶と邂逅した。
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:01:35.43 ID:Zwi3F1RV0
前衛の3人と星人の戦いは一瞬だった。

池上が持っていたガンツソードを黒名に投げ渡し、二人は同時に星人に斬りかかった。

しかし、二人のガンツソードは星人に触れた瞬間、刀身がガラス細工のように砕け散ってしまった。

池上(そんな……)

黒名(バカな……)

今まで折れたことなど一度も無いガンツソードが砕けた事実は二人を硬直させる。

その二人に目がけて、星人は空中で軌道を変化し、二人の頭を目がけて高速で飛来し、二人に衝突する直前であらぬ方向からの衝撃によって吹き飛ばされた。

それを行なったのは梶。

彼女は星人が二人に攻撃する直前で殴りつけて二人を助けていた。

しかし、その殴りつけた梶の拳は、

梶「ッぐぅぅッ!?」

池上「梶ッ!?」

黒名「梶さんッ!?」

スーツを着ているにもかかわらず、梶の右腕は肘まで粉砕するようにはじけ飛んでおり、血を噴き出していた。

黒名と池上は梶に一瞬気を取られたが、すぐに吹き飛ばされた星人に視線を向けて、手に持ったガンツソードを捨ててハンドガンタイプの銃を構える。

星人は再び二人に向かって二人の頭を目がけて飛び込んでくるが、二人共その直前でかわして星人に数発の銃撃を撃ちこんだ。

しかし、

池上「ウソ、でしょ?」

彫刻のような星人にほんの少しだけヒビが入っただけで、まるで効果があるように見えなかった。

星人は何事もなかったかのように飛行し、今度は黒名と池上ではなく、吹き飛んだ腕を押えて膝をついている梶に狙いを定めて飛んだ。

梶「……グッ、く、くそッ……」

梶と星人の距離が数メートルほどとなった時、重い音と共に突然星人の姿が消え去った。

梶の目の前には円状の窪みが発生しており、それを作り出した銃を持った男が梶の背後に立っていた。

藤本「梶、下がッて手当てをしとけ、その怪我じゃ万が一もありえる」

梶「……藤本、さん」

腕を押えながら、藤本を見てほっとする梶。

池上と黒名も藤本が梶を助け星人を倒してくれたということが分かり表情を緩める。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:02:15.69 ID:Zwi3F1RV0
だが、すぐにその表情が固まった。

Zガンで押しつぶされたはずの星人が先ほどよりも身体にヒビや傷が入っていたが勢いよく飛び上がってきたからだ。

藤本「なッ!?」

藤本は再度Zガンの引き金を引いて星人を押しつぶす。

しかし、星人はすぐに飛び上がり藤本に襲い掛かる。

藤本「うッそッだろォッ!?」

Zガンを乱射する藤本だったが、星人はやがて、Zガンの重力砲を受けながら藤本に突撃し、藤本は紙一重で避けたがZガンを星人によって破壊されてしまった。

星人はかなり傷ついていたが、高速で空を飛びまわって藤本に狙いを定めると上空から隕石のように降下して来た。

藤本「やッべェ……」

それを見上げながら藤本は、星人が横殴りにあった様な光景を見た。

藤本「ッ!!」

藤本は反射的に視線を宮崎と森下のいる後方に向ける。

そこには、宮崎と森下の銃口が激しく何度も光り輝いており、自分を窮地から救ったのは彼女達だという事を知り苦笑した。

藤本「あー……ッたく、カッコ悪りィな俺……」

藤本は傍らの梶を抱えて飛び上がり、後方に撤退すると、自分と入れ替わりで走り抜ける男に言った。

藤本「バトンタッチだな」

安孫子「休んでろ」
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:02:58.13 ID:Zwi3F1RV0
安孫子は空中で何度も吹き飛ばされる星人に向かってZガンを撃ちこんだ。

一瞬で地面に叩きつけられる星人にさらにZガンとは別の手に持ったハンドガンで追撃していく。

しかし、それでも星人は動き出しかけていた。

信じられないといった表情で星人から目をそらさずに攻撃を続ける安孫子。

その安孫子の目に、突如黒いものが映りこんだ。

その黒いものは、Zガンで押しつぶされていた星人の罅割れた身体に食い込んで星人を四分割にしていた。

咄嗟に顔をあげる安孫子が見たのは、別方向から、Zガンの範囲に入るようにガンツソードを振り下ろしている黒名と池上の姿。

安孫子は星人が完全に死んだことを確認して、息を吐いて黒名と池上に声をかけた。

安孫子「何とかなッたな」

池上「倒せ……ました?」

安孫子「ああ」

黒名「……ふぅ〜〜〜、ッて、梶さんッ!」

星人を倒したと分かった黒名は深い息をつくと共に、酷い怪我をした梶の様子を見に駆けて行った。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:03:30.32 ID:Zwi3F1RV0
その様子を見ながらも、安孫子はレーダーを取り出して索敵を行なっていた。

池上「敵はまだいますか?」

安孫子「……いや、いないな」

池上「あれ……ボスだッたんですかね?」

安孫子「恐らくな……デカ銃が効かない星人なんてそうそう出る事はない。十中八九今回のボスだろう」

池上「……今回は、誰も死なずに戻れますかね?」

安孫子「……戻れるといいな」

二人共、今回のボスであろう星人を倒したと考えてほんの少しだけ緩んでいた。

その二人がレーダーに新たに3つの星人の姿を捉えたのは同時だった。

安孫子「休む暇もなしッて事か」

池上「3体……黒名ッ!! 敵が近づいてる!! フォーメーションを組んで!!」

黒名「ッ! わかッた!」

後衛の下へ駆けていた黒名だったが池上の呼びかけにすぐに踵を返して安孫子と池上の元に駆け寄る。

3人が敵を迎え撃とうとして、近づいてくる星人の姿をその視界に入れて、3人共目を見開いた。

安孫子「……マジかよ」

池上「……ちょッと」

黒名「……ウソ」

その星人は先ほど全員で倒した星人と同じ姿をした小さな子供の彫刻星人。

それが3体同時に高速で近づいてきていた。
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:04:05.24 ID:Zwi3F1RV0
後衛の宮崎は先ほど倒した星人の点数を確認して息を呑んでいた。

宮崎「な、75点……」

森下「ハァ!? さッきのヤツが!?」

宮崎「う、うん」

藤本「……そりゃそれくらいあるだろ……デカ銃も効かなかったし、梶のゲンコツでダメージも与えられなかッたんだぞ」

梶「……くぅッ……」

藤本「まあ、さッきのヤツがボスだろうからこれ以上はヤバイやつは出てこねーだろうし、慎重に行動すれば今回は帰ることが出来るだろ」

梶の腕をきつく縛りながら藤本は宮崎と森下に話していた。

そして、その様子をP達は青ざめた顔で見ていた。

美穂「あ、ああ、あの……う、うう、腕が……」

藤本「ああ、大丈夫だ。狩りを完遂してあの教室に戻れればこの怪我も治る」

響子「ち、ち、血が、あ、あんな、あんなに……」

藤本「……出血は確かにマズイな、梶、何とかいけそうか?」

梶「……意識はしッかりしてるよ」

藤本「なら問題ないな、最後まで意識を無くすなよ」

藍子「も、問題ないって……お、おかしいですよ!?」

茜「そ、そうですっ! て、手当てを、いえ、病院に早くいかないとっ!!」

藤本「……ちッ、やッぱりか……」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:05:01.15 ID:Zwi3F1RV0
梶の手当てをしながらも藤本は、やはりアイドルの4人がまったく今の状況を理解していないことに少しだけ苛立つ。

初回の人間など皆こんなもの、それは分かっているのだが、どうしても苛立ちが湧き上がってしまう。

それと同時に、早くボスを倒せたことに安堵していた。

もしも、あのボスが他の星人を倒して疲弊したあとに現れたらもっと被害は大きく、美穂達はパニックを起こしていたかもしれない。

そう考えて、藤本は今回は運がよかったと考えた。

その直後、前衛の池上の敵が近づいてきたという声を聞き、視線を前に向ける。

そうして、向かってくる星人たちの姿を見て固まった。

藤本「……バカな」

先ほどの星人と全く同じ姿の星人。

そんなわけがない、75点の敵が複数現れる狩りなど今まで一度も無かった。

黒名たちが経験したという100点のはんぎょじん星人が今まででも最高の点数の敵だったが1体のみの出現だった。

そうやって思考を続ける藤本に、宮崎の震える声が届く。

宮崎「……うそ、ま、また75点……蛍ちゃん……に、逃げて……」

75点が3体、先ほどのように高速で動かれて銃撃ももろともせずに攻撃されたらどうなってしまうのか。

最悪の思考を頭から拭い、藤本は宮崎と森下に強めに言った。

藤本「おいッ! すぐに迎撃準備だ! 俺達で安孫子達の援護をするんだ!」

藤本「梶も出来るなら狙撃しろ! そッちの……アンタも銃を使えるなら使ッて援護しろ!」

藤本はアイドル4人にはどうすることも出来ないと判断し、まだ動けそうなPに援護指示を出したが、Pも青ざめた顔で銃を持つ手は震えていた。

それを見て、Pも銃を撃つことも出来ないと判断した藤本はPの銃を奪い取り、2丁のショットガンを手にして安孫子達の援護を始めた。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:05:28.97 ID:Zwi3F1RV0
黒名は向かってくる星人の突進を必死に避けていた。

黒名「うッ……くッ……」

先ほどの星人は1体だったから全員で集中して攻撃できた。

しかし、今回の星人は3体、黒名も池上も安孫子もそれぞれ向かってくる星人に攻撃を仕掛けていたが圧倒的に火力が足りず、後方からの援護も意に介さずに成人は3人に攻撃を仕掛け続けていた。

そして、黒名は気がついた。

星人の攻撃が掠った場所、スーツの上にも関わらずに痛みを感じ、血が出ている。

即ちこの星人にスーツの防御は意味が無いという事を。

黒名「みんなッ! コイツの攻撃を貰ッちゃダメ! コイツ、スーツが効かない!!」

その黒名の叫びは全員に小さな絶望感を植え付ける。

全ての攻撃を回避しなくてはならない。

それも、かなりのスピードで飛びまわる星人の攻撃を。

前衛の三人はその事実に焦りを隠せずにいた。

そして、更なる絶望が近づいてきていた。

安孫子「……なん、だッ……あれは……」

安孫子が見たもの、それは子供のサイズの彫刻ではなく、数メートルはあろうかという彫刻の星人。

その星人が石の翼をはためかせ近づいてきていた。

3体の星人と必死に戦っていた安孫子たち。

あの星人に襲われたら今均衡が保たれているこの状況が一気に覆される。

まずい、下手したら全滅してしまう。

その思考が安孫子の脳裏に浮かび上がり、近づいてくる星人を忌々しげな目で見ていた。
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:06:13.96 ID:Zwi3F1RV0
そうやって小さな子供の星人をZガンで押しつぶしながら近づいてくる星人に気を向けていると、数メートルの星人は突如地面に叩きつけられた。

安孫子「ッ!?」

藤本がZガンで援護をしたのか? いや、藤本のZガンは先ほど破壊された。

ならば一体何が、誰が、と考えた安孫子の視線の先で、放電現象が起きていた。

次の瞬間には、立ち並んだ建物が崩れ落ちて、星人の周囲も爆発したような衝撃波が発生した。

それが何度かおき、近づいてきていた星人はいつの間にか半分になっていた。

透明な何かに斬りつけられたようであったが、安孫子はすぐにその透明な何かの正体を見ることとなった。

バチバチと放電が起きて安孫子たちの眼前に十数メートル近い黒い機械の巨人が姿を現した。

その巨人の手にはかなり刃こぼれをした巨大な剣が握られており、先ほどの星人はその巨大な剣によって斬り潰されたのだという事を知った。

そして、その巨大な機械の巨人の頭頂部に人影を見た。

その人影は巨人から跳躍して自分達に向かって飛んできた。

安孫子はその人影が空中で叫んだ言葉を耳にする。

「死にとおないなら、避けぇや!!」

安孫子「黒名ッ! 池上ッ! 下がれッ!!」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:06:45.91 ID:Zwi3F1RV0
安孫子の声に反応して黒名と池上は全力で後方に跳躍した。

星人の攻撃を回避しながらの跳躍。

すぐに星人は黒名たちを追おうとしたが、上空から降り注いだ無数の光線に押しつぶされるような形で地面に縫い付けられる。

無数の光線が雨霰のように降り注ぎ、地面が爆発を起こし続ける。

その爆発の中心地に、空から降り注いだ黒い影が突っ込んでいった。

安孫子たちはその様子をただ見ていた。

土煙で見えなくなったそこからいつ星人が出てきてもいいように。

しかし、その土煙の中から姿を現したのは星人ではなかった。

安孫子達が見たことも無いスーツを身に纏った人影。

その黒い人影は、先ほどの星人3体の首を持って安孫子たちに近づいてくる。

その男は、パーマの掛かった髪で精悍な顔つきをしていた。

「9回目のクリア報酬のスーツ……悪くないやんけ」

軽量型のハードスーツを身に纏い、星人達の首を途中で投げ捨てて手を握り締める。

「おお、お前ら、丁度ええわ、武器を俺に寄こさんかい。今回の敵は固くてアカン、刀がもう何本も根元からポッキリや」

別の手に持っていたガンツソードは柄の部分が壊れていてもう起動しないようだった。

そのガンツソードも投げ捨てて男は安孫子たちに手を出した。

「ほれ、はよせんかい。今回の敵はお前らには荷が重いやろ? 俺が殺ッてやるから武器を寄こせ言うとるんや」

安孫子「……アンタは、何者だ?」

「ああ? 俺か?」

男は安孫子の問いかけに対して名乗りを上げた。

岡「岡や。俺の名は岡八郎や」

大阪最強の男が、イタリアの地に舞い降りた。
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/24(月) 03:07:28.95 ID:Zwi3F1RV0
今日はこの辺で。
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 03:12:46.93 ID:uKtGCBlQo

世界ランカーもいっぱい居るだろうし逃げ切ったりもありえるはず
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 06:15:26.60 ID:n5r9IN+y0
初戦がイタリア戦ってのはキツすぎだろ
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 07:30:18.85 ID:Jyltc3RfO
おっつおっつ
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 07:42:34.09 ID:QhZe85rzO

やっぱダビデも硬くなってるのね
絶望感すごいけど岡さんや武田とかもいるだろうしなんとかなるんじゃないかとなる
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/25(火) 00:49:39.08 ID:RCNfKUvdO
クロスなら八凛にしろや、ゴミ
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/26(水) 21:53:38.36 ID:2khnKKpj0
おつおつ
そっか大阪メンバーも生き残ってるのいるんだよな
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/27(木) 04:35:52.35 ID:KWjSOHMB0
内木は生き返ってないルートか。
しかし大集結だな期待
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:19:08.86 ID:wGALB0W20
安孫子は岡を見て思考を回転させていた。

安孫子(……前回の狩り、転送されてすぐに終了して何もする事はなかッたが……)

安孫子(……転送された時点で、俺達の知らないスーツの人間が何人も死んでいた……)

安孫子(……そしてあの後、テレビで見た大阪の破壊状況と、あの日見た転送された先の崩壊した一帯……間違いなく前回のあの転送された場所は大阪だった……)

安孫子(……この男の口調……大阪弁……まさか……前回、大阪で狩りをしていた人間の一人か?)

安孫子「岡か……大阪弁という事は、アンタは大阪の人間なのか?」

岡「せやで」

安孫子「それならアンタは前回、大阪で狩りをしていた当事者か?」

岡「……せやな、前回、あの場所に俺もおッたわ」

安孫子(!! やはりか! この男の戦闘能力、さッきの3匹の星人をアッという間に倒してしまッた事を含めて、あの黒い巨人……前回の狩りを終わらせた張本人か!)

安孫子(今回の狩り……ヘタするとさッきの星人クラスが雑魚の可能性がある……だが、この男と協力関係になれれば……)

安孫子は岡が現れてから現在の状況を分析しながら思考を続けていた。

1体だけでも苦戦した星人が数体現れた時点で今回のミッションの危険性を数段階引き上げていた。

しかし、その星人をいともたやすく葬った岡を前にして何とか協力を取り次ごうと考え、

安孫子「提案があるんだが聞いてくれないか?」

岡「なんやねん」

安孫子「俺達はアンタと協力してこの狩りを生き残りたい。アンタは恐ろしく強い男だという事はすぐワカッたが、それでも狩りでは何が起きるか分からない。後方援護を行なッてアンタのサポートくらい出来るはずだ」

岡「協力やらサポートやらしたい言うなら勝手にせぇ、俺は俺でやらなあかん事があるでお前らに何かするッちゅーことは無いけどな。それでもええなら後付いて来て勝手にしとれや」

安孫子(くッ……協力関係は結べないか……しかし、この男の戦闘力があれば俺達に対処することも難しい星人が現れてもこの男に何とかさせることが出来る……)

安孫子「わかッた。それならば俺達はアンタのサポートを勝手にやらせてもらう」

岡「ほうか。そんなら、まずはさッさと武器をよこさんかい」

安孫子「ああ……池上、黒名、刀をこの男に渡してくれ」

それまで岡と安孫子のやり取りを見守っていた池上と黒名は安孫子の指示で岡にガンツソードを手渡した。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:21:02.30 ID:wGALB0W20
岡「よし…………あぁ、そうや」

ガンツソードを受け取って刀身を延ばした岡は安孫子に一つの質問をした。

岡「お前ら、渋谷凛ッちゅー女を見とらんか?」

安孫子「……あのテレビでテロリストと言われている女の事か?」

岡「そうや。そいつや」

安孫子「いや、俺達は見ていないが……それが一体何なんだ?」

岡「そいつを見たら俺に教えろ。俺はそいつを守らなあかんのや」

安孫子は岡の言った言葉を考察しようとしたが、岡が黒いロボットに向かって移動し始めたのを見ると、後衛の藤本達に合流するようにジェスチャーをして、全員が合流した後は自分の考え、岡と協力することが生き残る確率が上がるという事を説明しながら岡の後を追った。

岡はロボットに搭乗してレーダーを確認していた。

岡「敵は……何か固まッとる場所があるのォ……100点反応は今んとこ一つ……」

岡「まァ、どーせ前回同様何か起こるんやろーがな……それまでに見つかるんかいな?」

岡「我ながら、厄介な口約束をしてもーたわ……あの嬢ちゃん全国指名手配やらアホみたいな厄介ごとに巻き込まれよッて……」

岡「守るゆーて簡単に言わんとけば良かッたわ。ッたく……」

岡はロボットを動かそうとしたところで、レーダーに新たな星人の反応がある事に気が付いた。

岡はガンツソードを伸ばし、飛んでくる2体の星人に向かって跳躍の構えを取る。

岡「まァ、しゃーないわな……」

岡の脚部の筋繊維が異様な盛り上がりを見せる。

岡「男なら女の最後の願いを……」

跳躍と同時に岡が踏みしめていたロボットの装甲がへしゃげる。

岡「叶えんわけにいかんやろーが!!」

弾丸のような速度で岡は星人と交錯し、岡と星人たちの激しい空中戦が始まった。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:21:45.25 ID:wGALB0W20
安孫子達は、岡がロボットから急に飛び出した姿を見ていた。

その先には数メートルはある彫刻星人が2体。

岡は激しい空中戦を行ないながら、2体の星人の攻撃を身動き取れないはずの空中で巧みに避けながら、2体の星人を地面に叩き落して地上戦を始めていた。

その様子を見ていた安孫子達は、

安孫子「……マジかよ」

藤本「……安孫子、アイツは一体何者なんだ?」

池上「れ、レベルが違いすぎる……」

黒名「すごい……」

前衛組みは岡の動きに目を見張り、自分達とは明らかに違う次元の戦いを行なう岡を見続けていた。

その前衛組みの少し後ろで、今回初ミッションとなるPや美穂達は同じように岡の戦いを見上げていた。

P(い、生き残りをかけたゲーム……し、しかし……これは……もう……)

P(あの男性のように戦わないといけない……?)

Pの視線の先で岡が星人を叩き落し、ガンツソードを投げつけながらも掌から閃光を放ち、星人たちが爆発する瞬間が映る。

P(……不可能だ。私はもちろん……小日向さん達にあのような戦いを行なうことなどできるわけ……ない)

岡が地面に着地し、爆発したものの殆ど傷の無い星人と激しい斬りあいを始め、その剣戟はPの動体視力では見る事すらできなかった。

P(島村さんや本田さんは……この恐ろしい戦いに巻き込まれてしまった……?)

P(あの二人が……こんな……人知を超えるような……恐ろしい戦いに……)

Pの脳裏に柔らかな笑顔を浮かべる卯月と元気な笑顔を浮かべる未央が浮かび、同時に卯月と未央が恐怖に震えながら星人に襲われるシーンが浮かびあがる。

しかし、すぐに浮かび上がったそれを頭から追い出して別のことを考え始めた。

P(……二人共生きている……渋谷さんと共に逃げ延びている……)

P(私が今すべきこと……この恐ろしい戦いを生き延びる為にやれることをやらなければならない……)

Pが震えていた手を握り締めて、歩みを進めて安孫子に声をかけた。

P「……あの男性を援護しましょう」

安孫子「あ? あ、ああ……」

安孫子はPに声をかけられて漸く自分が戦場で棒立ちの状態で岡の戦いを見ていたことに気付く。

安孫子は頭を切り替えて岡の援護を始めようとするが、その安孫子達の耳に関西弁の声が届いた。
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:23:17.17 ID:wGALB0W20
「おーおー、相も変わらずド派手にやらかしとんのぉ……」

「あッ、あのッ!! お、俺達、どうすればええんですかッ!?」

「どーもこーもあるかい。最初の一匹で俺はもうマジメにやるんはあきらめたわ、岡に任せときゃアイツが何とかしてくれるやろ」

その声の方向に全員が振り向くと、くせっ毛の男と眼鏡をかけた少年、そしてその眼鏡の少年に背負われて震える小さな女の子がいた。

くせっ毛の男は岡の様子を見ながら建物の屋根の上にいたが、安孫子達に気が付いたようで、

「おッ? おおォッ!」

屋根から飛び降りて安孫子達の前にやってきて声をかけた。

いや、その目線は安孫子や藤本やPは入っておらず、その場にいる少女たちに向けられていた。

そして、男は池上の前に立つと、

「そこのネーちゃん。一発やらせてくれんか?」

池上「はァ?」

「く、桑原さんッ!? アンタ何言うとるんや!?」

くせっ毛の男、桑原は目を血走らせながら少女達を見て、己の欲望のままに言葉を発した。

桑原「せやからセックスさせてくれ言うとるんや、ええやろ?」

池上「セ、セッ!?」

藤本「……おい、アンタ……いきなり現れて何言ッてんだよ」

桑原「なッ、ええやろ? 俺もう辛抱たまらんのや。一発でええから頼むわ」

池上の胸に手を伸ばす桑原だったが、その手が触れる寸前、

池上「……死ねッ、変態!!」

池上が銃を向けて発砲しようとした。

それを見て慌てて距離を取る桑原。

桑原「うッおお!? 危ないやろ、そんなモン向けんなや!」

池上「……」

軽蔑の視線を向ける池上。

その視線に何も感じないのか桑原は再度池上に近づこうとしたが、視界の端に明らかに困惑している4人の少女達を見つけた。

桑原「おッ……ほーー、こいつは……」

その4人の少女、美穂達を舐め回すように見て、

桑原「最近どッちかと言うと巨乳ばッか食ッて来たで、あーゆーロリッぽいのもたまにはええなァ……」

桑原は4人の前に立つと、

桑原「可愛らしい嬢ちゃん等、セックスしようや」

目だけは血走っていたが、爽やかな笑顔で言い切った。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:24:39.91 ID:wGALB0W20
美穂達は戦いに巻き込まれてから感じていた不安が一瞬にして羞恥心に塗りつぶされ、顔を真っ赤にして桑原の言った言葉に反応する。

美穂「せ、せせ、せせ、セセセセセセセ…………」

響子「セッ〜〜〜〜!?」

藍子「ななな、何を言ってるんですか〜〜〜!?」

茜「」

桑原「何や? その反応。全員まさか処女か?」

「「「「     」」」」

4人とも顔が赤くなりすぎて、まるで顔が爆発した後のような状態になっていた。

さすがに見かねてPが桑原と美穂達の間に割って入ろうとするが、何かが走る走行音が聞えてPや桑原含めて全員が音のする方向に目を向けた。

そこには黒いバイクに乗った男達、

「おい、ロボットが見えたぞ前嶋!」

前嶋「……他の人間もいる、前回と同じか」

全員が新たに現れた前嶋達に声をかけようとするが、それもつかの間建物の屋根の上から戦闘音が聞えてきた。

戦闘音は屋根の影になって見えなかったが、一つの影が姿を現すと共にそれを追うように一匹の小型の彫刻星人が飛び出してくる。

影は金髪の外国人の美少女だった。

少女は右手を骨折しているようで、痛みに顔を引きつらせながら星人から逃げているようだった。

その少女を見て、バイクの男達は、

「外人もいんのかよ!?」

前嶋「ッ!!」

「お、おい前嶋ッ!!」

前嶋はその少女を助ける為に瞬時に反応して星人を殴ろうと跳躍するが、

前嶋の行動を見た少女は、流暢な日本語で前嶋に言った。

「殴ると手が壊されるッ! 投げ技を使ッて!」

前嶋「!!」

前嶋は殴りつけようとしていた手を開いて星人の翼を持つと、明後日の方向に向かって投げ飛ばした。

その星人は、投げ飛ばされていったがすぐに空中で軌道を変えて今度は前嶋に向かって襲い掛かってきた。

しかし、星人は前嶋に近づくに連れてその身が破損し始めていき、前嶋の目の前で急に星人の背後に現れた桑原が、

桑原「おう、表面割れて中身見えとるのォ」

桑原が星人にガンツソードを突き入れる。

銃撃によってひび割れた隙間に滑り込ませるようにガンツソードを差し込むと星人の中から血が噴き出して星人の動きは停止した。

星人が完全に死んだことを全員が理解すると、追われていた少女は屋根の上で息を吐き、攻撃をしていた前嶋や桑原、星人に銃撃を加えていた宮崎や森下達も緊張を解いた。
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:25:18.86 ID:wGALB0W20
外国人の少女は右手を抑えながら前嶋の前に飛び降りると、

「感謝するよ」

一言だけ言って視線を黒いロボットに向けた。

前嶋「……日本語、喋れんのか?」

外国人にしか見えない少女が短いながらも流暢な日本語を喋ったことに少し驚いて聞き返すと、

「……日本語しか喋れないし、あたしは日本人だよ」

さらに前嶋は少女に質問をしようとしたが、戦場にまた複数の影が現れたことにより、新たな星人が現れたのかと戦闘態勢をとるが、その複数の影はスーツを着た男女。

「計ちゃん! あれは本当に渋谷さんが出したロボットなのか!?」

「ああッ!! 間違いねぇ!! やッぱりアイツも来ていた!!」

「加藤君!! 後ろから敵が来たよッ!?」

「玄野クン、あッちからも大きい星人がッ!!」

黒いロボットに向かって屋根を駆け抜けていく4人の男女、玄野達東京チーム。

玄野達は建物の下にいた他のチームには気付かずに駆け抜けていくが、すぐに星人と交戦を始めていた。

前嶋「アイツ等……前回の」

安孫子「また人が増えた……しかも明らかに戦いに慣れている人間……これなら……」

桑原「あの爆乳はレイカやんけッ!! やッぱ乳デカいほうがええわーーー!!!!」

各々が交戦を始めた玄野達の元に向かう。

共闘をしようとするもの、助けようとするもの、自身の欲望を満たそうとするもの、それぞれだったが、Pは玄野達のチームの一人加藤が発した言葉を聞いていた。

P(確かにあの男性は渋谷さんと言った)

P(では、この場に渋谷さん……そして、島村さんと本田さんも来ている?)

P(……確かめなければならない)

Pは美穂達を連れ、先に玄野達の元へ向かった面々を追いかけていく。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:27:42.92 ID:wGALB0W20
玄野達はロボットの足元までたどり着くとその場でロボットに背を向けて襲い掛かる小さな彫刻星人と戦い始めた。

玄野「剣もッ、効かねェのかよッ!!」

星人をガンツソードで切りかかった玄野だったが、ガンツソードが砕け散った瞬間を見て瞬時にZガンの持ち替えて攻撃を行なった。

しかし、そのZガンの攻撃も足止め程度にしか効果が無かった。

何度も何度も玄野がZガンを撃ち込み続けて、急に星人の動きが止まった。

いつの間にか星人の身体に光のワイヤーが巻きついており、星人は頭からどこかに転送をされて行っていたのだ。

銃口を向けて荒い息をつくのは加藤と岸本。

完全に送ることが出来たとほっとしたのもつかの間、

レイカ「玄野クンッ!! ダメッ!! この銃じゃ通用しないッ!!」

ショットガンを2メートル強の彫刻星人に撃ち込んでいたレイカだったが、ショットガンでは通用しないのか星人は高速で襲いかかって来ていた。

それを玄野はZガンで対抗しようとする。

だが、Zガンの重力砲は確かに星人に当たったに関わらず、星人は若干スピードを落とした程度でレイカに襲い掛かった。

レイカはその星人の突進をギリギリのところで避けて玄野の元に駆け寄って星人に再び銃を向けた。

玄野「やべェ……この銃も効かねェのか……」

加藤「ならッ! このYガンでッ!!」

加藤が星人に向けて放ったYガンのワイヤーは星人を巻きついて拘束したかと思った瞬間はじけ飛んでしまった。

岸本「うそ……」

レイカ「玄野クン……」

自分達の持つ全ての武器が通用しないという事が分かってしまい、玄野以外の全員に絶望感が襲う。

だが、玄野は。

玄野「あきらめんなッ!! まだなんとかなるッ!!」

レイカ「で、でも、どうやッて……」

玄野「無敵の生物なんていねェ!! ぜッてーに弱点があるはずだッ!! まずはそれを見つけるぞッ!!」

岸本「弱点……」

玄野「それにだッ!! このロボットがある以上、渋谷も近くにいるはずだ!! アイツが来て一緒に戦えばこんなヤツ瞬殺だぜ!!」

加藤「渋谷さん……」

玄野「全員集中しろよォ!! ヤツの攻撃を受けるんじゃ…………」

玄野が3人に激を入れていたその時、星人に光の閃光が雨霰のように降り注ぐ。

その発生源を探すと、玄野の視線の先に、星人2体の死体を足蹴にして、凛の着ている軽量ハードスーツを着ている岡の姿を目にした。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:29:03.39 ID:wGALB0W20
玄野「あれは……」

岡に気を取られていた玄野だったが、星人の周囲が大きな破壊痕が発生していることに気が付いた。

玄野が首を動かすとそこには玄野の知らないガンツチーム、安孫子達が星人に攻撃を仕掛けていた。

玄野はその攻撃に合わせるように自身のZガンも星人に向けて引き金を引いた。

2丁の重力砲と岡の閃光、さらに様々な面子からのショットガンの乱射を受けて星人の頭部に傷が発生した。

それを見た岡は閃光を止めてガンツソードを伸ばして跳躍の姿勢を見せる。

しかし、岡が跳躍する前に、二つの影が星人の上空に現れて、

傷の入った星人の頭部にガンツソードを突き入れ、星人は完全に沈黙した。

玄野はその二つの影を見て、すでに顔見知りになった男達の名前を呼ぶ。

玄野「武田……吉川……」

武田「あの目立つロボットを目指して来てみたら……これで君達とは3回目の合同ミッションになるのか?」

吉川「おゥ、今回お前ら大所帯だな? それとも別のチームの奴等か?」

お互い顔を見合わせて口元を緩ませる。

その3人にハードスーツの男、岡が声をかけた。

岡「おー、そこの兄ちゃん、お前さッき渋谷がどーとか言うとらんだか?」

玄野「アンタは?」

岡「お前の言う渋谷言うのは渋谷凛ちゅー女の事か?」

玄野「!! アンタ、渋谷を知ッてンのか!?」

岡「……何や、お前もあの嬢ちゃんの居場所を知ッとるわけやなさそうやな……」

岡は落胆した様子で玄野の質問を適当にいなし始めた。

そうしている間にも、安孫子は集まってくるガンツチームの人間を見て不敵な笑みを見せていた。

安孫子「おい、藤本……」

藤本「なんだよ」

安孫子「どいつもこいつも化け物ぞろいだぜ」

藤本「んなもん見りゃわかる。アイツ等どんな修羅場潜ッて来たらあの星人を瞬殺できんだよ」

安孫子「まッたくだ……だけど、今回で終わることが出来るかもしれない……」

藤本「そうだな、あれだけの点数の敵……池上や黒名たちも全員解放できるほど稼げそうだな」

安孫子と藤本はこれほどまでの戦力をもつメンバーを見て、共闘することにより今回で確実に終われると考えていた。

そうして、ここにいる人間に協力を取り次ぐ為に玄野や岡達に話しかけていた。

その頭には、今回新しいメンバーのPたちの事は抜け落ちて、元の場所から建物を何棟も飛び越えたこの場にPたちがいないことに気が付かなかった。
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:30:14.43 ID:wGALB0W20
玄野達が星人を撃退した頃、P達5人は舗装された道路を走っていた。

美穂「あ、あのっ、プロデューサーさん、さっきの人達は……」

P「あの方々はあそこに見える大きなロボットの元に向かったようです。私達も向かいましょう」

響子「大きな、ロボット……本当にこれ、撮影じゃないんですか?」

P「……ええ、撮影ではありません。これは現実に起きている事です」

藍子「信じられないです……でも、先ほどの人は……腕があんなに酷い怪我で……」

P「……急ぎましょう」

茜「は、はいっ」

不安になるような事は語らずPは走る。

全員不安で一杯だった。

美穂や響子はもちろん、藍子も茜も普段のマイペースさを保てないほどになっていた。

車がトラックにぶつかり、何かが起きた。

その後見知らぬ教室にいて、さらには気が付けば外国の地。

そこで美術品の彫刻のようなものに襲われて、一緒に来ていた人は酷い怪我を負った。

そして、今、自分達だけの状態。

不安にならないわけが無かった。

そのPたちの正面に無常にも子供の彫刻星人が現れた。

P「っっ!!」

美穂「あれ……」

響子「さっきの……」

藍子「こっちに……来ますね」

茜「ま、まずいんじゃないですか?」

4人を守るように一歩前に出るP。

そのPにゆっくりと星人は近づいていった。
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:31:18.57 ID:wGALB0W20
Pが星人に襲われる様子を立体映像で見る凛と西。

西「あー、ありゃダメだな。武器も何も持ッてねーじゃん」

凛「……西、あの人を助けてあげて」

西「あン?」

凛「……あの人は死ぬべき人じゃない」

西「何? あのオッサンお前の知り合いなン?」

凛「そう。あの人には助けてもらったし、何よりもあの人は未央と卯月のプロデューサー……あの人がいなくなったら未央と卯月が悲しむ」

西「……わーッたよ。アイツをここに転送してやるよ」

少しだけ不機嫌な声色で西は凛の頼みを聞こうと光のキーボードを展開させた。

その時だった。

立体映像に映し出される星人が光の閃光に焼かれたのは。

西「お? 何だ?」

凛「……?」

凛にはすぐにその閃光がハードスーツの攻撃のものと分かった。

誰かがPを助けたのか? そうやって立体映像を見ていると、星人がZガンの重力砲で押しつぶされていく瞬間も映し出された。

Pとの間に誰かが割って入った。

軽量化前のハードスーツを装備した誰かだった。
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:32:32.69 ID:wGALB0W20
ヘルメットに覆われて顔が見えないその人間はPに声をかける。

「あの子達はアンタのチームの子達? 脅えてるから早くいって落ち着かせてあげなよ。ここはアタシ達が何とかするからさ」

P「貴女は……?」

立体映像から届いた音声に凛の全身が強張り、闇色に染まっていた眼に光が戻った。

凛「う、うそ。で、でも、う、ううん、聞き間違えるわけない」

西「渋谷?」

立体映像に向かって震える足を進める凛に、立体映像はさらにもう一人の姿を映し出した。

「オラオラオラオラオラオラ!! ブッ潰れろーーーー!!!!」

2丁のZガンを乱射しながら歩みを進める少女。

凛「あ、あぁぁ、あああああぁぁぁ……」

西「あいつ……確か……」

少女はZガンを撃ちながら、飛び上がったハードスーツの人間に叫んだ。

奈緒「加蓮!! トドメ任せたっ!!」

加蓮「オーケー、奈緒!! たぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

Zガンと閃光によってボロボロとなった子供の彫刻星人は、加蓮のハードスーツのブレードによって胴体を斬り飛ばされた。

その様子を凛は呆然と見続けていた。

その瞳から気付かないうちに大粒の涙を流しながら。
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/29(土) 20:33:46.30 ID:wGALB0W20
今日はこのへんで。
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/29(土) 21:16:00.20 ID:MoAZ5S840
乙 
生きてた……これでPの情報(凛がガンツの製造元に向かった事)が関東チーム&岡に伝わるかな
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/29(土) 21:32:50.29 ID:ezkduan60
アイマスとのクロスだからって桑原自重させてなくて良かった。
てかなんで千葉2人生きてたんだろ
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/29(土) 21:42:38.58 ID:XzMcKJEtO
乙乙
誰かが奈緒加蓮を生き返らせたってことなのかな
オールスター共演すると最後の戦い感あっていいね
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/29(土) 23:06:19.51 ID:EpC13osg0
このイタリア戦は途中で終わるのか最後までやるのか
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/30(日) 03:20:35.89 ID:y6VCMaL20
おつおつ なおかれ尊い
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/30(日) 03:41:42.78 ID:9Vd547pGo
よしアイドルに勧誘だな
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/30(日) 07:02:40.25 ID:xZFpk8sG0
アメリカに岡より強いのいたよね確か。
意外とダヴィデまではイージーかも
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/30(日) 08:03:32.02 ID:FD6YFZj2O
おっつおっつ
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/30(日) 20:46:39.95 ID:i2nzrGMZ0
最期はイヴァにやられたけど巨人とタイマンして完膚なきまでに叩きのめしてたアメリカの人達とかもいるしまだまだ強キャラは残ってるな
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/31(月) 17:16:02.78 ID:TydsRY+90
ランキング2,3位の市長とかも出るの期待
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:16:19.01 ID:KEXbtpzP0
凛はその場で立ち尽くして涙が零れ続けるのも構わず加蓮と奈緒の姿を見続けていた。

凛「か、加蓮、奈緒ぉ」

西「どういうこッた? アイツ等は死んだンじゃなかッたのか?」

凛「あ、あなたが、再生して、くれたんじゃないの?」

西「いや、俺はなんもしてねーぞ?」

凛「そう、なの? ううん……そんな、こと、どうでも、いいや」

凛は加蓮や奈緒も再生するのはこの世界から腐った人間を一掃しきれいにした後と考えていた。

しかし、加蓮と奈緒の姿を見た瞬間そんな考えはどこかに消え去ってしまった。

今凛の頭にあるのはただ一つ。

凛「西、私をあそこに送って」

西「……あン?」

凛「加蓮と奈緒に、謝ってくる、あの時、私だけ、逃げちゃって、ごめんって……」

西「……わーッたよ」

西は凛が自分のほうを見ずに、映像を見続けて言葉を発している状態が気に入らないのか明らかに不機嫌な様子だったが、凛の頼みを聞き入れて、

西「……戻る時は言え、転送すッから」

凛「うん、ありがとう……」

凛はそのまま転送されていった。

残された西は立体映像を無言で見始める。
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:16:56.65 ID:KEXbtpzP0
子供の彫刻星人が分割されて道路に転がり、それを行なった加蓮は肘の部分にあるブレードが刃こぼれを起こしていることにため息をついていた。

加蓮「マズいね……このまま戦ったら次辺りで刃が折れそう」

奈緒「今回の敵、固すぎだよな……」

加蓮「ま、凛と合流すれば刃が無くても大丈夫でしょ。最悪ハードスーツを脱いで凛から剣を貸して貰えばなんとかなるし」

奈緒「ほんっと、やっと会えるって事だな……世間ではあんな事になってるし、凛の家も滅茶苦茶になっちゃったし、凛、電話にも出ないし……探すアテが全く無い状態だったもんな……」

その二人の会話をPは聞いていた。

りんという名前。

P「貴女方は…………」

その時だった。

Pの視界の先、加蓮と奈緒の背後に何かが起きていた。

上空から光の線が降り注ぎ、何かをかたどっていく。

すぐにそれが人の顔だという事が分かった。

そして、それが先日見送った凛だという事に気がつき、Pは声を出していた。

P「し、渋谷さん!」

Pの発した言葉に加蓮と奈緒はPを見る。

加蓮「あの人……今、渋谷さんって?」

奈緒「ああ……言ったよな」

加蓮と奈緒はPを見ながら、自分達の背後に何かの気配を感じ取った。

それが何なのかもすぐに分かった、そして二人は同時に振り向き、

何か柔らかいものが自分達にぶつかってきてそれを受け止めた。

その柔らかいものは涙にかすれた声だったが二人のよく知る声。

凛「かれぇん! なおぉ! ごめん……ごめんね……本当に、ごめんなさい……」

加蓮「り、凛!!」

奈緒「う、うわっ、えっ? ええっ!?」

自分達に抱きついて泣きながら謝る凛の姿を見た。

凛「あの時……私だけ逃げちゃってごめん……二人共私のせいで……死なせちゃってごめんなさい……私のせいで……加蓮は……奈緒は……」

加蓮「ちょ、ちょっと凛!? ど、どうしたの!?」

奈緒「り、凛! なんかよくわからないけど、とにかく落ち着けって!!」

凛「うぅ……ごめん、ぐすっ……本当に……ごめんね……」

加蓮「な、奈緒……」

奈緒「あ、あたしに助け求めんなよ……」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:17:46.14 ID:KEXbtpzP0
しばらく凛は二人を抱きしめて泣き続けていた。

少しして、漸く落ち着いてきたのか、凛は二人と向き合ってまともに会話を出来るような状態になった。

しかし、凛を待っていたのはヘルメットを外していたずらっ子な表情をした加蓮とニヤニヤ笑う奈緒。

加蓮「奈緒〜〜〜、アタシ達、なーんだか、とーっても凛に愛されてるみたいじゃない?」

奈緒「言えてる。あたし、あんなに抱きしめられたの初めて……いーや、これから先あんな熱烈なハグされることなんて絶対無いな」

凛「ちょ、ちょっと、ふ、二人共っ」

加蓮「ここまで愛されちゃったら、アタシ達凛のお嫁さんになるしかなくない?」

奈緒「あ、ああ、そうだな! あたし達、凛の嫁ってやつだな!」

凛「や、やめてよ、からかわないでよ」

戦場だというのに加蓮と奈緒は凛をからかい続け、凛は泣きはらした赤い眼と同じくらい赤い顔をして二人を制止しようとしていた。

加蓮「ふふっ、からかうのはこれくらいにしてあげよっか」

奈緒「そうだなー。まだここは戦場なんだからマジメにやんないと前回みたいになっちゃうかもしれないもんな」

凛「!! そ、そうだよ、前回は確かに……加蓮も奈緒も……」

凛は奈緒が発した言葉で前回のミッションで二人共死んでしまったことを思い出す。

目の前でバラバラの肉片と化してしまった加蓮。

腕だけになってしまった奈緒。

凛「……二人共、誰かに生きかえらせてもらったの? そういえば千葉のチームって二人以外にもいたんだっけ?」

まず凛は二人のガンツ、千葉のガンツの事が思い浮かんだ。

千葉の二人以外の誰かが加蓮と奈緒を生き返らせてくれたのかと。

しかし、奈緒は凛の問いかけにすこし言いにくそうにしながら、

奈緒「……あー、あたし達の……チームはね……その、なんだ……」

加蓮「前回死んだのはアタシ。それでアタシを生き返らせてくれたのは奈緒。ね、奈緒そうだよね」

奈緒「あ、ああ。そう、そうなんだよ」

言いにくそうにしている奈緒に被せるように加蓮が言う。

自分が死んで、奈緒が生き返らせてくれたと。

それに凛は疑問符を浮かべる。
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:18:42.35 ID:KEXbtpzP0
凛「え……で、でも……あの手は……間違いなく奈緒の……」

奈緒「あー……あの時レーザーで両腕を切り飛ばされたからなー……」

頬を掻きながら奈緒は思い出すように前回のミッションのことを凛に話し始めた。

奈緒「あたし達、凛が消えた後にあの凛のニセモノから集中攻撃を浴びちゃってさ」

凛「う……ご、ごめん……本当に……」

奈緒「あー、もう謝んなって! あたし達は凛が逃げたとも思ってないんだから気にするな! なっ、加蓮!」

加蓮「そーそー、むしろ凛があの網目レーザーを回避できてよかったとしか思ってないし」

凛「奈緒……加蓮……」

奈緒「話し戻すぞ! それで、あたしと加蓮はお互いあのトンデモ攻撃を数回避けきってたんだけど、あたしがレーザーで両腕を切り飛ばされちゃってさ」

奈緒は気まずそうに加蓮を指差しながら、

奈緒「体制崩して絶体絶命のあたしをさ、加蓮が投げ飛ばしてくれたんだよ……あの凛のニセモノの攻撃で出来上がった大穴の中に」

加蓮「まっ、ギッリギリだったよね。その直後の記憶がアタシにはないから多分奈緒を投げた後にアタシは死んだんだと思うけど」

奈緒「戻って気付いたよ……加蓮があたしを助けて死んだんだって……前回100点取れてなかったらあたし、どうなってたか……」

加蓮「戻るまでアタシのことに気が回らないほど奈緒ちゃんは大穴の中でパニックを起こしていたんだよー、暗いの怖いよー、出してよーってね、酷いと思わない?」

奈緒「……かーれーんー……人がマジメに話してるのに……」

加蓮「と、いうわけで、アタシが死んで奈緒は生き残って運よく100点取ってた奈緒がアタシを生き返らせてくれたってワケ。いやー、本当に運がよかった、アタシってラッキーガールだと思わない? 思うでしょ?」

奈緒「もう……」

奈緒は加蓮が自分が死んだことで重くなりそうだった場の雰囲気を無理矢理和ませていると気がついて口を挟むのは止めた。

以前死んだ自分が加蓮に生き返らせてもらった時に同じようなやり取りをした事を思い出して。
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:19:23.83 ID:KEXbtpzP0
その二人のやり取りを聞いた凛は再び涙を零し始め、

凛「そう……だったんだ……よかった……よかったぁ……」

心の底から安心した表情を浮かべる凛に二人共顔を見合わせて、

加蓮「な、奈緒、何だか凛の様子、ヘンじゃない?」

奈緒「あ、ああ……凛? 本当にどうしたんだ?」

明らかに情緒不安定な凛を本当に心配し始めていた。

凛は二人からの視線を受けながら心の内にあったものを吐き出していく。

凛「だって……だって……みんな死んで……私だけになっちゃって……」

加蓮「え……?」

奈緒「それって……」

凛「未央も……卯月も……あんなに酷い目にあわされて……」

加蓮「ちょ、ちょっと!!」

奈緒「う、うそだろ……」

凛の言葉で二人共気付いてしまう。

この場にいない二人の少女がどうなってしまったのか。

加蓮「卯月と未央……死んだの?」

凛「……うん」

奈緒「……連絡、つかないワケだ……」

先ほどまで空気を和やかにしていた加蓮もその事実に愕然としてしまう。

奈緒もその場で俯いて手を握り締めて震え始める。

そして、そのやり取りを黙って聞いていた男がその言葉に反応して初めて声をだした。

P「……そんな、島村さんも本田さんも……」

凛の口から二人が死んでしまったと言う言葉を聞きその場で膝をついて絶望するP。

Pの脳裏には凛が言った、必ず連れて帰るという言葉が思い出されていた。

凛も巻き込まれた人間、悪くはないと分かっていても、Pは凛に己の心境をぶつけそうになっていた。

あの言葉は嘘だったのか、何故希望を持たせるような事を言ったのかと。

しかし、Pを含め、全員の思考は中断させられた。

目の前からやってくるスーツを着ていない人間たちと、その人間たちを追うように大量の星人がやってくる光景を見て。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:21:11.20 ID:KEXbtpzP0
まだかなり先だったが確かに何人もの人間が凛達に向かって、星人を引き連れて走ってきていた。

その人間たちは西によって転送された人間たち。

全員が恐怖の表情を浮かべながら全力で逃げてきている。

しかし、途中で何人も捕まってバラバラにされている姿も見えていた。

奈緒「……くっそ、話してんだから邪魔すんなってのに……」

加蓮「多い……凛、今回の敵は相当固いけど、あれだけの数何とかなると思う?」

凛「…………」

P「……あ、あれは……」

美穂「え……? ひ、人が、え?」

響子「み、見間違えですよね……あ、あはは」

藍子「あ、あ〜、わかりました〜、私、夢見ちゃってるんですね。うん、そうですよ、私疲れて眠ってるんですよ……そ、そうじゃないと……」

茜「あ、藍子ちゃん! そ、そういうことですねっ! 私とした事が疲れて眠るなんて! もっともっと体力をつけないといけませんねっ!」

加蓮と奈緒は襲ってくる敵に冷静に向き合い、

Pはその数に絶望し、

美穂達は現実逃避を始める。

そして凛は、

凛「……あぁ、本当に、イライラするなぁ……」

加蓮「……凛?」

凛「……あのクズ共は、やっぱり生きている価値なんか無い、生きているだけでこうやって害が発生する……」

奈緒「ど、どうした? 凛?」

二人共、三度様子が変化する凛を見て、その凛の眼が真っ暗に濁っていることに気が付いた。

二人共凛に声をかけようとするが、凛は先に一歩踏み出し、

凛「西、聞いてる?」

西「おォ」

凛の隣に突如現れた少年に全員が驚く。

凛「武器出して」

西「おッ? お前がやンの?」

凛「あれ、煩過ぎるし、邪魔すぎるから。さっさと消したいの。強力な武器を出して」

西「ハハッ!! いいねェいいねェ!! オーケェ!! リクエストに答えて強力なヤツ出してやンよ!!」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:22:27.51 ID:KEXbtpzP0
その直後、凛の前に何かが転送されてきていた。

その形は剣の柄。

真っ黒な剣の柄、しかし刀身は存在せずに、刀身が存在するはずの場所に不思議な揺らぎが発生していた。

その剣を見た全員が身体を震わせた。

何か、危険なものであるという事を本能的に感じていたのだ。

戦闘経験が豊富な加蓮と奈緒は言うまでも無く、戦闘経験が皆無で一般人であるPたちにもその危険性を感じ取れるほどのもの。

それを凛は臆することも無く手に取り、

凛「使い方は?」

西「振れ。以上、そンで終わる」

凛「わかった」

凛は黒い剣の柄を正眼に構えた。

すると、剣の柄から発生する揺らめきが黒く輝く光と変化して、剣はその真の姿を現した。

黒く輝く光は振動し、周囲一帯の空間にもその振動が伝わっていく。

まるで大地震が起きているような錯覚を全員が感じていた。

そして、それを生み出している黒光を凛は逃げてくる人間と星人たちに向かって振り下ろした。

ビシリという奇妙な音が発生する。

その音と共に、黒光が通った空間に奇妙な痕跡が発生していた。

まるでガラスが割れたような跡が空中に発生している。

その傷跡は徐々に大きく広がり、直線状にいた人間や星人にも伝播していく。

不思議な光景だった。空中に生まれた傷跡が人間や星人にも発生し、まるで割れる寸前の鏡のような状態になっていた。

直後、甲高い破砕音と共に空間が割れた。

それは人間や星人達も同じく、割れる空間に巻き込まれて割れ始めた。

人々はお互い自分達に何が起きているのかも理解できていなかった。

ただ、自分達の身体がバラバラになっていく様を見て、恐怖しながら砂のような粒子となって消えていった。

星人も同じく粉々になり、数秒もたたずに消滅し、凛達の前から終われて逃げていた人間もそれを追っていた星人の姿も完全に消滅していた。
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:25:13.81 ID:KEXbtpzP0
凛「……ふぅ……やっと静かになった……」

西「死因、五月蝿かったから。あいつ等も気の毒になー。合掌ー」

半笑いで数秒ほど手を合わせている西。

だがすぐに西は凛の持っていた剣をどこかに転送していった。

西「ンじゃ、その剣回収しとくな。あンま通常空間に出しとくと色々ヤベーことになッからな」

凛「……一体どんな武器だったの?」

西「効果は、空間……いや、俺達の存在する次元を切り裂く武器だ。次元断層を何重にも発生させて、範囲内にあるものはどんなもんだろーとグッチャグチャのバッラバラにしちまう。まァ、直撃すりゃ、どんな生物だろーが100%消滅するッて攻撃を生み出せるッつーわけだ」

凛「ふーん……よくわからないけど、すごく強力な武器の割には周りの被害が少なかったね?」

西「そりゃ、俺が出力の調整やらをしてッからだ。そーじゃなきゃ、直線状にあるモンは全て消滅しちまうッつーの」

凛「……そっか、ありがとね」

西「おぉ! お安い御用ッて奴だ! しッかしあのジジィ、マジでアホだぜ? この武器75回目の報酬で先着1名の唯一品なんだけどよ、出力の調整もなンもなしで渡される予定だッたみてーだぞ。コレ、下手したら地球を真ッ二つにすることも出来ンのにだぜ? つーか75回クリアとか出来るヤツいるワケねーだろッつーの」

凛「……あのクズの事は思い出したくも無いんだけど」

西「おー、悪りィ、悪りィ」

その二人の様子を加蓮や奈緒はずっと見ていた。

固まっていた二人だったが、凛が振り向いて自分達に微笑みかけたことによって漸く硬直状態を脱することが出来た。

凛「ごめん、待たせちゃったね」

加蓮「え、っと……」

凛「?」

奈緒「り、凛? お、お前、今……人を……」

凛「人? 人なんかいなかったけど?」

加蓮「……凛、アンタ……」

奈緒「お、おい。凛、お前……どうしたんだ?」

凛「……あ、そっか、そうだったよね……」
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:26:40.74 ID:KEXbtpzP0
凛は思いだしたかのように二人から視線をそらしていた。

しかし、西に二人から反らした流し目を送ると、

凛「……西、私はさ、間違った事をしてるかな?」

西「あン? 何がだよ?」

凛「人の皮を被った悪魔……ああいうクズ共を殺す事は間違っている?」

西「! そーいうことか、いやいや、お前は何一つ間違ッてねーよ。だッてお前、思い出せよ、島村と本田がどんな目にあッたのかッつー事を」

凛「…………あぁ、うん、そうだった…………」

西のその言葉に凛の瞳に闇が落ちた。

その様子を加蓮と奈緒は見て、さらに違和感を増してしまい、まるで自分達の知っている凛はそこにいないような錯覚を覚えてしまう。

その違和感を肯定するように、凛はとても歪んだ笑みを浮かべて加蓮と奈緒に、

凛「加蓮、奈緒。二人共、私の事、信じてくれる?」

加蓮「……信じるって、アタシは凛の事を疑ったりしたことなんてないよ?」

奈緒「あ、あたしも、そうだけどさ……」

凛「ふ、ふふ……嬉しい……二人共……私を受け入れてくれる……こんな私を……」

加蓮「凛……」

奈緒「な、なあ、凛、一体何があったのか話してくれよ」

凛「あ……そうだよね。そっか、そうだ……二人にも……今のこの世界がどんなに腐ってるか知ってもらって……みんなで一緒に素敵な世界を作っていければ……」

凛はさらに口元を歪めて、チェシャ猫のように笑う。

凛「西、加蓮と奈緒、後あっちの男の人と女の子たちを元の場所に転送してもらえるかな?」

西「おー、わかッた」

加蓮「転送?」

奈緒「お、おい、凛……」

西が操作し始めるとすぐ加蓮と奈緒は転送されて行く。

P「し、渋谷さんっ! 島村さんと本田さんは……」

凛「……ごめん、後で説明するよ……」

Pも転送され始め、

美穂「ひっ、ひぃぃぃ!?」

響子「い、いっ、いやぁぁぁぁっ!?」

藍子「あ、あは、美穂ちゃんと響子ちゃんもプロデューサーさんも頭がなくなっちゃったぁ……あはは………………」

茜「あ、藍子ちゃんっ!! こ、これ、やっぱり夢とは違うような……」
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:27:54.18 ID:KEXbtpzP0
その場に残ったのは西と凛。

西は凛を転送する前に聞いていた。

西「何? お前、アイツ等をどーするつもりなン?」

凛「え? どうするも何も聞いていたでしょ? 加蓮も奈緒も私達に力を貸してくれる。私達4人で、未央や卯月やお父さん達が帰ってこれるような新しい世界を作り出すの」

西「あの二人もか……」

凛「……何? 不満なの?」

西「……別に不満ッつー事はねーけどよ……あぁ、そう睨むなよ! わーッたッて!! あの二人と協力すンのに不満なんてねーよ!!」

凛「そう、それならよかった」

西「はァ……そンで、他のオッサンと女4人はどーすんの? まさかアイツ等も一緒にとか言い出すんじゃねーだろーな?」

凛「あの人には未央と卯月のことを話さないといけない……二人共あの人の元に返してあげないといけないから……他の子達は……帰してあげて、あの子達確か未央と卯月と同じ事務所のアイドルだったはずだから」

西「へいへい、わかりましたよ」

そうやって一区切りが付いたとき、大きな爆発音が二人に届いた。

二人共その爆発音が発生した方角を見ると、そこには空中を走るバイクが翼の生えたダヴィデ像の星人に叩き落されている光景があった。

ダヴィデ像は空中でバイクに乗っていた欧米系の顔立ちの男を握りつぶしたかと思うと、急降下し建物の影に隠れて二人の視界から消え去った。

凛「……西、もう終わりにしなよ」

西「終わり? このミッションをか?」

凛「そう、あのガンツチームの人達ってあなたが間違えてここに送ったんでしょ? もう死ぬべきクズは全滅したと思うしさ、もう他の人達は戻してあげてよくない?」

西「ンー……そーだな、確かに送ッた奴等は星人とお前が殺しただろーし、終わらせッか……」

凛「うん、それがいい………………」

西「ん?」

西は凛が完全に固まった姿を見て疑問を浮かべる。
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:28:30.53 ID:KEXbtpzP0
凛は目を見開いて視線をある場所に送っていた。

西もその視線の先を追うと、そこには一人の男が建物の屋根の上でショットガンを構えていた。

どうやら星人に狙いを定めているようだったが、西はその男に見覚えが無かった。

一体なぜそれほどまでに凛がその男を注視しているのかと聞くと、

西「アイツがどーかしたのか?」

凛「……クズはまだいた」

西「あン?」

凛「お父さん達を殺したクズが、ここに来てる……そいつらを殺さないといけないよね?」

首だけを動かして瞬きもせずに西に問いかける凛。

西「お、おう。そーだな」

凛「そうだよね。それじゃ、この場所に来ている4匹のクズを殺しに行ってくるよ」

西「お、おう……ッて、ちょッと待て!!」

西の静止も聞かずに凛は視界に入っている男に向かって飛び出していった。

西「あのバカ……今回のヤツらはスーツの防御性能が意味ねーッつーのに……」

立体映像の西は、通常スーツで戦場に飛び出した凛を呆れたような苦笑したような顔で見ながらその後を追い始めた。

西「本当にブチ切れてやがるぜ。だけど、アイツをサポートできるのは俺くらいなモンだし付き合ッてやッかな!」

凛の後を追う西は自分でも気付いていないほど自然な笑みを作っていた。

まるで親を追う子供のような表情で凛の背中を追っていた。
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/06(日) 16:29:01.40 ID:KEXbtpzP0
今日はこの辺で。
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 19:06:58.25 ID:vvPHZNdI0

加蓮と奈緒が二人のブレーキ&ハンドルにならないとカタストロフィ以前にトップが軒並み神隠し喰らった人類社会がヤバイ
しかし間接的に通称・神星人の凄さが分かる。これが最低限の軍事技術って事は別の宇宙に移動するとか時間遡行ぐらい余裕で出来そうだね
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 21:31:23.49 ID:NI6JzgfRo

凛がこの調子なら某ニートから神になった男宜しくアイドルから神になった少女になるかも
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 23:21:20.98 ID:RzcLux6Ao

それで出来る世界ってディストピアだよね
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 23:48:59.49 ID:bl6hLPYzO
おっつおっつ
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 02:08:41.54 ID:eHk7CPs50
イタリアのトレビの泉。

観光名所であるその場所は今戦場と化していた。

様々な国籍のガンツチームの人間が続々とトレビの泉に集まって来ている。

それらの人間を追うように彫刻星人も集まってくる。

何故この場所にガンツチームの人間が集まってくるのか、それは単に目立つ目印があったから。

今回のミッションでかなりの初期段階で行動した男、岡が駆る巨大ロボット。

ロボットはトレビの泉の傍に佇んでおり、その持ち主の岡は次々と集まってくるガンツチームの人間を見て自身の目的の人物がいないかと探し回っていた。

岡「なんやねん!? 敵も人もドンだけおるんや!?」

岡の姿もすでにハードスーツは壊れ通常のスーツのみの状態。

それでも岡は襲い掛かる星人を巧みに避けながら撃破し続けていた。

その岡を中心にして日本人の集団が集まっていた。

その中でも声をあげて集団を鼓舞している童顔の男がいた。

玄野「岡に武器を回し続けろォ!! 刀やデカ銃を持ッてるヤツは岡に回せェ!! ショットガンを持ッてッヤツは星人に集中砲火をするンだ!! 表面が割れた部分には銃が効くぞォ!!」

玄野の指示に集まっているガンツメンバー達は従うように行動をしている。

集まっているメンバーは玄野よりも年上の人間や人の言葉など耳にしないような人間もいた。

しかしそういった人間たちも玄野の言葉を聞き入れてこの場に50人を超すような大規模な集団が出来上がっていた。

何故彼らは玄野の言葉に従っているのか、それはこの場において岡の次に星人たちを倒していたのが玄野だったからに過ぎなかった。

さらに言うなら玄野は加藤やレイカや岸本と協力しながら助けられる人々を救いながら戦い続けていた。

その姿はどこか不思議なカリスマ性を持つ物で、玄野達に助けられた人々に限らず玄野達の戦いを見る人々も彼らと共に戦えば生き残れるのでは? と思わせるほどのものであった。

玄野「全員踏ん張れよォ!! 後少しの辛抱だァ!! この防衛ラインを突破されンじゃねーぞ!!」

叫ぶ玄野に星人が襲い掛かるが、玄野が星人の攻撃を紙一重で避け、至近距離でXガンを連続で撃ち込んで破損した表面に飛び込んできた黒い影の集中砲火が炸裂して星人は爆発していく。

その黒い影と玄野は背中合わせになり戦闘態勢を継続する。

玄野「助かッた!」

玄野と背中合わせで荒い息をつきながら索敵を続けるのはショートヘアの少女。

黒名「どういたしましてッ!」

二人はXガンを襲い掛かる星人に乱射しながらお互いをカバーしながら戦い続ける。
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 02:09:09.43 ID:eHk7CPs50
すでに乱戦状態になっている戦場でいつの間にか岡のロボットによじ登り銃撃を行っている人間達がいた。

それは安孫子達のチーム、そして眼鏡をかけたインテリ風の男のチーム。

安孫子「アンタ等も気が付いたか? このロボットの装甲……あの星人の攻撃も何発か防ぐぞ」

眼鏡の男、関根は安孫子の言葉に小さく笑みを作りながら、

関根「ああ、つまりは背後からの不意打ちの可能性はかなり減る……しかし、一撃でこのロボットの装甲を貫いてくる星人もいるかもしれない」

藤本「そういうヤバイ奴が来たらお手上げだ。誰かがやられてる間に全員で攻撃すりゃ何とかなんだろ」

「そういうバケモンが出たときゃ、俺が身体張ッて何とかしてやる」

頭上から聞えた声に全員が見上げると、そこには年配の男が剥き出しになったロボットのコクピットに胡坐を掻いて座っていた。

安孫子「お、おい、アンタそんな所にいたら狙われるぞ!!」

「若けぇのが年寄りの心配してんじゃねぇ、ワザと目立つ所にいるンだよ」

藤本「おいおい……オッサンは死にたがりか何かか?」

矢沢「オッサンじゃねぇ、俺は矢沢年男ッつー名前があんだよ……まあ、お前らから見たらオッサンかもしれねーがな」

矢沢「やべェのが来たらお前らに教えてやッから、お前らはあのバケモン共を援護してやれ」

関根「矢沢……さん、でしたか? 貴方は……」

矢沢「戦力にならねぇオッサンは囮か見張りになるくらいしかねぇだろ。ほら、手ェ止めてねぇで撃て撃て!」

そう言いながらも剥き出しのコクピットからショットガンを構えて打ち続ける矢沢。

それに合わせて安孫子達も地上の星人や空中の星人に向かって撃ち始める。
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 02:09:47.46 ID:eHk7CPs50
殆どの人間が銃を使う中、銃を使わずに素手で戦う男女とガンツソードで戦う男が建物の屋根の上で空中から襲い掛かってくる星人と応対していた。

ガンツソード二刀流の男は素手で戦う男女に呆れた物言いをしていた。

吉川「おい、前嶋にメアリーだッたか!? お前ら素手じゃなくて剣くらい使えよ!!」

前嶋「銃も剣も必要な奴にくれてやッた」

メアリー「剣なんか要らない、あたしが信じるのはあたしの身体から繰り出す攻撃だけ」

吉川「おーい武田ァ! コイツ等、イカれてんぞ!! 剣でも砕かれる硬さの敵に格闘戦を挑んでんだからよォ!!」

武田「……アンタは人のことを言うな……無駄話は後だ、また団体様のお出ましだぞ」

全員が10体近くの星人たちを捉える。

その星人たちを見ても吉川達は動じずにそれぞれが構えを取る。

武田「前嶋、メアリーさん、二人は敵を地上に落とすことだけを考えてくれ」

前嶋「ああ、ワカッてる」

メアリー「承知の上だよ」

吉川「リーダー達とあの大阪弁のヤローにまかせるッつーワケか」

武田「ああ、流石にあの数をマトモに相手をするのは厳しいだろ?」

吉川「正論だな。俺達の武器じゃマトモに戦えない……」

吉川は武田の言葉に賛同しながらも星人たちに向かって一歩踏み出す。

吉川「だけどよォ……通用しない武器を駆使して敵を斃すッてのは、ある意味漢のロマンッてやつだと思わねェか?」

武田「……前前から思ッていたが、アンタ戦いを楽しんでないか?」

吉川「アァ? おいおい、お前の目に俺はどう映ッてんだよ?」

武田「……そうだな。強いヤツに挑む剣士ッてヤツがアンタのイメージに一番近いな。どんなにヤバい敵でもアンタは剣2本で戦い続ける……そんな感じか?」

吉川「ンだよ……お前には俺が正義のヒーローに見えねェのか?」

武田「……は?」

吉川「俺はよォ、ガキの頃から戦隊モノとか特撮系のヒーローが好きでな、いつかああいう正義のヒーローになりてェッて思ッてたんだよ」

武田「……そうなのか」

吉川「ああ、あーいうのは男なら誰でも夢みるモンだ。お前もそー思うだろ?」

武田「……」

武田が吉川の思わぬ質問に返答できないでいると、いつの間にか傍に来ていた前嶋が小さく言った、

前嶋「……少しはワカる」

吉川「おォ!! やッぱそーだよな!!」

前嶋「……ああ」

武田「……」

吉川と前嶋が思わぬ意気投合を行い、武田はどうしたものかと二人を見ていた。

その男達3人を見るメアリーは。

メアリー「……ホント、男ッて馬鹿しかいないんだね……」

冷めた目で3人を見つつも、襲い掛かってくる星人を対処する為に構えを取った。
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 02:10:19.26 ID:eHk7CPs50
その集団の中で攻撃もしようとせずに様々なガンツチームの女性を見続けている男がいた。

桑原「……おォ、白人女に……ありゃロシア人か? 黒人の女もおるなァ……あッちはヒスパニック系……選り取りみどりやんけ……」

その桑原に小さな女の子を抱えた眼鏡の少年が悲鳴を上げるように声をかけ続けていた。

「くッ桑ッ原さんッ!! な、何スーツをッ!! 脱いでンのや!?」

すでに半裸状態になっている桑原は何を馬鹿なことを聞いて来るんだという顔で、

桑原「そら、脱がな犯れんやろ? 何ワケわからんこと聞いとんのや?」

「アンタはアホかァァァ!? こないな状況で何トチ狂ッた事やろうとしとんのやァ!?」

桑原「何言うとんのや……俺は今日いっぺんもセックスしとらんのやで? もう限界なんや、誰でもええで犯らな死んでまうんや」

「アホォ!! アンタ、全裸になッてホンマに死ぬで!?」

桑原「アホ、一発ヤるまでは俺は不死身や、死ぬわけなかろーが」

あろうことかスーツを脱ぎ捨てた桑原は近くの少女に近づいていく。

するとその少女にタイミングを見計らったかのように星人が襲いかかってきてしまった。

すると桑原は少女を星人から守る為に飛びついて、星人の脅威から少女を救った。

桑原「大丈夫か、ネーちゃん……おォ、お前、さッきの」

その少女は黒髪ロングの少女、先ほど桑原から直球の言葉をかけられていた池上。

池上「あ、ありがと…………!?!?!?!?」

池上は間一髪助けられたことに礼を言いかけたが、桑原の姿を見て絶句した。

桑原は全裸で、その股間はいきり立っており、さらに桑原の手は池上の胸と股間に伸びていたからだった。

反射的に池上は叫びをあげながら桑原の顔面にグーパンを繰り出した。

池上「ッきゃあああああああああああああああああ!!!! こ、こンのド変態ぃぃぃぃぃ!!!!」

桑原「おぉッ」

しかし、その攻撃を桑原は難なく避けて池上の背後を取り、両手で胸を鷲づかみにする。

桑原「いいモンもッとんなー。ヨダレでてきたわー」

池上「!?!? く、黒名ァーーー!! た、助けッーーー!!」

スーツも着ていないのに超人的な動きを見せた桑原に池上はパニックに陥り、戦いの中で信頼するようになった少女の名を叫ぶが、池上の叫びに反応したのは先ほど襲い掛かってきた星人だった。

星人は池上と桑原目がけて急降下し、二人共星人に貫かれるかと思ったその瞬間、

桑原「おォ、邪魔すんなやァ!!」

またも異様な動きで星人の背後を取った桑原が池上のホルスターからいつの間にか奪い取っていたXガンで連続射撃を行なう。

同時に四方から星人に銃撃が加えられて星人はやがて爆発して四散した。

それを見て桑原は仕切りなおしといった感じで池上のいたところを見るが、

桑原「なッ!? お、おい、どこ行ッたンや!? 俺をその気にさせといてそりゃないやろーーー!!」

戦場で全裸でしかも股間を膨張させている異様な男には誰も近づかず、桑原の周囲は不思議な空間が発生していた。

それを先ほど銃撃で星人を倒した男、加藤は。

加藤「なんて……ヤツだ…………」

一瞬だが戦場だという事も忘れて桑原を見続けてしまっていた。
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 02:11:32.73 ID:eHk7CPs50
呆然としていた加藤に岸本から声が掛かる。

岸本「加藤君! また人が増えたよ!」

加藤「ッ!? あれは……何だ……?」

岸本はその装備のことを聞いてはいたがそれを手に入れるのにどれほど大変なのかという事がまだピンと来ていなかった。

しかし、加藤はその装備を……その装備を装着した集団を目の当たりにして先ほどの桑原を見た時とは違う驚愕が襲う。

そこには100点6回目の報酬であるハードスーツを身に纏った集団。

全員がハードスーツを身に纏い、数人は凛が着ていた軽量型のハードスーツを着ている。

その集団はまるで統率の取れた軍隊のように、飛行バイクと地上を走るバイクで編成を組みトレビの泉に現れた。

「The battle is starting!! Hurry up,hurry!!」

「Are they Chinese!?」

「Anything is fine, I will find a boss!!」

集団は襲い掛かる星人たちを軽々と倒しながら何かを探すようにトレビの泉を駆け抜けていった。

一瞬だったが、その集団が通り抜けた後には星人たちは存在せず、恐ろしい戦闘能力を保有した集団もこの場に来ているという事を知り、彼らが発していた言葉が英語だったことから、

加藤「アメリカ人……か?」

岸本「アメリカ……世界中から来てるのかな……?」

加藤「多分……そうかもしれない。ここは日本人が多いけど、外国人の顔も見える……」

岸本「本当に……あたしたち……どうなッちゃうの……?」

不安めいた声色で加藤に聞く岸本の問いに答えたのは加藤ではなかった。

二人の傍に着地した二つの影、玄野とレイカだった。

玄野「大丈夫だ、俺達は死なねェ、現に今この状態で誰も死んでねェ」

岸本「玄野君……」

玄野「俺達は今日誰も死なずに帰ることが出来る、そンで前回死んだおっちゃん達も全員生き返らせることが出来る、だろ? 加藤」

加藤「……ああ、そうだ」

加藤「どんなに絶望的な状況でも俺達は立ち向かッて乗り越えることができる……俺はそれをケイちゃんに教えてもらッた」

玄野「へッ」

加藤「ケイちゃん! 岸本さん! レイカさん! 他の人達と共に絶対に生き残るぞ!!」

玄野「おうッ!」

岸本「うんッ!」

レイカ「……はい」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 02:12:14.22 ID:eHk7CPs50
加藤の言葉に3人が頷いたその時だった。

大気が震えたかと思うと、玄野達がいるトレビの泉から少し離れた場所の空が黒く輝いたのは。

玄野「……何だ?」

レイカ「地震?」

加藤「まさか……星人の攻撃か?」

岸本「ッ!! みんなッ、あそこッ!!」

さらに岸本は黒い光が発生した場所とは逆方向の空を指差した。

そこには明らかに今までの星人とは違う圧力を持った、翼の生えたダヴィデ像が空中に浮んでいた。

その星人をレーダーで確認したのは加藤。

加藤「……ケイちゃん。この表示は……」

玄野「……100、だな」

真っ黒な点が4人の汗を冷たくさせる。

しかし、4人とも緊張感は増していたが恐れはなかった。

それはこれだけの集団がいるから。

今までの戦いで一番戦力が揃っているこの戦い。

100点の敵が出てきても、玄野達は臆することも無く戦闘準備を始めようとしていた。

そして、さらに玄野はある少女の姿をその目に捉えてこの戦いの勝利を確信した。

玄野「ッたく……アイツどこにいたんだよ」

その少女は建物の上で何かを探しているようだった。

玄野の視線に他の3人も目を向けると、

加藤「あれは、渋谷さんか!!」

岸本「うんッ! よかッた、渋谷さんも生きててくれたんだ!」

レイカ「でも……何か変な……違和感が……」

レイカが凛に対して妙な違和感を感じた。

それは他の3人もすぐに感じたことだった。

その違和感の正体、それは凛が手にしている武器にあった。

4人共見たことの無い武器。

両刃の真っ黒な槍のような武器。

その先端に何か丸いものがついていた。

遠目からだから4人ともそれが何なのかわからない。

それの正体を確かめる前に、凛は槍を振るってその丸いものをどこかに飛ばしてしまった。

4人とも自分達が感じた違和感は一体なんだったかと考えていたのだが、次に凛が起こした行動でその全てが頭の外に追い出されてしまった。
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 02:13:39.80 ID:eHk7CPs50
凛が手に持った黒い槍を振りかぶりその槍を投げた。

するとその槍は意思を持ったかのように動き、先ほど100点の表示を示していたダヴィデ象に向かって飛び進み、

ダヴィデ像に槍が接触した瞬間、ダヴィデ像は風船が割れたように弾け飛んでしまった。

玄野「えッ?」

加藤「な、何が、起きたんだ?」

その光景を見ていたのは玄野達だけではなかった。

他にも戦場で戦いながら、ダヴィデ像に気付いたもの達は皆その光景を見ていた。

岸本「あ、あの槍……」

レイカ「まだ動いてる?」

さらにダヴィデ像を貫いた槍はさらに空中を不可思議な軌道で飛び、ダヴィデ像の近くにいた星人を貫いた。

それだけではなく、1体2体と次々と星人を貫き始め、見える範囲全ての星人を貫くとその槍は主人の元に帰るかのごとく凛の元に戻り、凛の手に収まった。

一瞬で戦場は静まり返り、戦場にいる全ての人間が凛を見ていた。

その視線を受けながらも凛は何かを探すように周囲を見渡し、何かを見つけたのかその背に黒い光の翼を生み出して飛翔し始めた。

その様子を玄野は乾いた笑いを上げて見ていた。

玄野「は、はは、アイツ、やッぱすげーわ……」

加藤「け、ケイちゃん……俺の見間違いじゃなかったら……渋谷さん、100のヤツ倒したよな?」

玄野「俺の目がイカれてなけりゃ間違いなく倒したな……レイカ、岸本、お前達も、アレ見たよな?」

岸本「う、うん」

レイカ「み、見たよ」

玄野「どーやら間違いないみてーだぜ」

加藤「ま、マジかよ……」

玄野「はー、本当にアイツ人間なのか? ミッション毎に人間離れして行き過ぎだろ……ボスをワンパンッて……信じられねぇ……」

空を飛び建物の向こう側に飛び去る凛を見て玄野は呆然と凛を見ていた状態から、凛を追いかける為に行動を開始する。

玄野「ッて、アイツまた勝手にどッかに行こうとしやがッて!! 加藤!! 渋谷を追うぞ!!」

加藤「あ、ああ」

玄野と加藤はすぐに凛を追いかけるように跳躍し建物の屋根に上る、その二人を追うようにレイカと岸本も跳躍して4人は凛を追いかけて、すぐにその後姿を見つけた。
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 02:14:40.93 ID:eHk7CPs50
そこには凛と共にもう一人、西の姿もあった。

4人は凛に近づき、二人の会話が聞える範囲まで近づくと、

西「そーそー、スイッチ押したまま刺せば弾け飛ぶぜ。さッき投げた時と同じ様にな」

凛「……」

玄野達には見えづらかったが、凛と西の他に二人の前に誰かがいるようだった。

その声も聞こえてくる。

「た、助け…………」

凛「黙れ」

凛が手に持った槍を押し出すと共に、パンという乾いた炸裂音と共に真っ赤な液体が飛び散った。

それが何なのか玄野達はわからなかった。

西「うォ……結構血飛び散るなァ……」

凛「これで、そこにいるクズが最後の1匹、か」

その時点で玄野は凛に声をかけた。

玄野「お、おい、渋谷?」

玄野の声に振り向く凛と西。

凛は玄野を見て知り合いにあった程度の表情を向け、西は凛とは違って舌打ちをして無言になる。

凛「……あぁ、玄野か。どうしたの?」

玄野「そ、そりゃこッちのセリフだ。お前一体今までどうしてたんだよ……」

凛「私……? そっか……アンタ達と違って今回は転送で直接ここに来たんだもんね……」

玄野「直接?……また、何かやッたの……か……?」

加藤「ケイちゃ……」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 02:15:30.94 ID:eHk7CPs50
玄野が凛に近づいて今まで見えなかった場所が見えてきた。

そこは血の海だった。

そして、その血の海に口をパクパクさせながら絶望と恐怖の表情を浮かべた女性が尻餅をついていた。

そのあまりにもな光景に玄野や加藤は口を紡ぐ。

すぐに頭に浮かんだのは星人によって襲われたのではないかということ。

しかし、何かがおかしい。

その違和感は、先ほど感じたものと同じ。

玄野達4人ともその違和感を感じて、凛にこの状況はいったい何なのかと聞こうとした。

だが、

凛「確か……あの時、デカ銃を使っていたのは、アンタだよね?」

「   」

凛は血まみれの女性に近づいて質問をし始める。

凛「私の家、潰したの、アンタだよね?」

「   」

女性は口をパクパクとさせながらヒューヒューと息を漏らすだけ。

凛「お父さん、お母さん、ハナコ……苦しかったよね……痛かったよね……」

すでに凛は女性を見ずに明後日の方向を見ながら喋り続けている。

凛「潰れて……死んじゃうなんて……そんな酷い死に方……ありえないよ……」

凛は涙を零しながら、しばらく空を見上げていた。

しかし、少しすると、首をカクンと落として女性に恐ろしいほどの殺気が篭った視線を送り始める。

凛「西、銃を」

西「……」

凛の手にZガンが転送され始める。

玄野「お、おい、渋谷?」

加藤「し、渋谷さん……何を……」

Zガンが転送され切り、凛は女性に向けてZガンを構える。

玄野「し、渋谷ッ!?」

加藤「なッ!?」

凛は一切の躊躇をすることもなく、

凛「アンタも潰れろ」

女性に向かってZガンの引き金を引き、女性がいた場所には円形の破壊痕とその跡に血だまりだけが残った。
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 02:17:08.44 ID:eHk7CPs50
玄野「お、おま、え……」

加藤「あ、あぁ……」

岸本「ウソ……」

レイカ「こ、殺し……」

凛は使用したZガンをその場に落とすと、深く深く息を吐き出して、傍らにいた西に話しかけた。

凛「これで、また一つ綺麗な世界に近づいたね」

西「……」

凛「どうしたの?」

西「……くッ……い、いや、お前もついに偽善者星人の皮被らなくなッたなーッて……ククク……」

凛「あぁ……」

凛は血だまりに冷たい視線を向け、自分の行なった行動に対し驚愕している玄野達に、

凛「何か言いたいことでもあるの?」

玄野「お、お前……今、人を殺したのか?」

凛「人じゃない、私はこの世界に存在する価値の無いクズを消しただけ」

加藤「な、何を言ッてるんだ!? 君は今確かに女性をその銃で!!」

凛「……だから言ってるでしょ? 私が消したのは男でも女でもない、存在する価値の無いクズ……ゴミを処理しただけ、アンタも掃除するでしょ? それと一緒、私は今ゴミを処分しただけ」

加藤「馬鹿なことを言うなよッ!! どう見たッて君は人を殺したじゃないか!! 一体どうしちまッたんだよ!?」

凛「…………」

西「おいおい、ケンカは止めようぜ! 言い争いをしても意味はないだろォ!?」

加藤が凛を攻め立てる様子を見て、西はニヤニヤと笑いながら何故か仲裁に入り始めた。

今まで自分から加藤に係わり合いをしようともしなかった西が。
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 02:19:30.88 ID:eHk7CPs50
加藤「お前……」

西「加藤クンよォ、渋谷はな、やーッと自分に正直になッたンだよ。お前らみてーな偽善者とは違ッて、俺と同じよーに気に入らねーやつはブッ殺して、自分の欲望を満たすために好き放題やッて行くッてな。それを否定しちゃダメじゃねーか」

加藤「お前……渋谷さんに何を吹き込んだんだ!?」

西「おッ? おおッ!? 俺? 俺が渋谷に何か吹き込ンだッて!? 何々? どーいう事?」

加藤「渋谷さんが間違ッてもあんな……人を殺すようなことをするわけない! お前、一体何をしたんだッ!!」

西「……ぷッ……ハッ、ハーッ!! ハーッ!! ハァッ!! クハッ!! お、おい、ま、待て、わ、笑いが、やべ……」

加藤「〜〜〜ッ!!」

加藤は挑発するような物言いの西に限界を向かえたのか西に掴みかかるが、西にふれたかと思うと西の体をすり抜けて倒れこんでしまう。

西「〜〜〜!! ハァーッ!! くッ!! はひッ!! ちょ、ちょ……お、俺……本体じゃ……や、やべッ……」

西は顔面から突っ伏した加藤を見て腹を抱えて笑い続けていた。

西「あァー、やべェ、こんなに笑ッたの、生まれて初めて、だぜ……いや、ホント、クソみてーにムカつく奴だッたのにお前のこと好きになッちまいそーだ」

玄野「……おい、渋谷」

西「お?」

今度は玄野が西を無視して頭を垂れている凛に問いかけ始めた。

玄野「お前、一体どーしたんだよ!? 前に言ッてたよな? お前は星人を殺すことは出来ても、無関係の人間を殺すことなんてできないッて!!」

凛「…………」

玄野「それにだッ! お前、島村さんと本田さんをいつも守ろうとしてただろ!! そんなおま、え、が…………」

玄野が卯月と未央の名前を出したその時、玄野の目にゆっくりと顔を上げて眼を見開いて自分を凝視する凛の姿を見てしまった。

凛「そう……私は守れなかった……」

凛の眼は負の感情で埋め尽くされたような状態になっており、玄野はその凛の眼を見て硬直してしまう。

凛「二人を守ることも出来なかった役立たずの私……」

凛「そんな私が出来ることなんてさぁ……二人が二度と傷つけられないような……二人の笑顔が二度と曇らないような……そんな世界を作るしかないよね……?」

玄野「……お、おま」

凛「この世界にはさ、私が今まで知らなかっただけで、信じられないくらいの腐りきったクズやゴミが溢れ返ってるんだ。それを全部無くして、綺麗な人達だけの世界になったらさ……そこはみんなが笑って生きていける世界だと思わない?」
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 02:21:06.12 ID:eHk7CPs50
皆が理解してしまった。

凛の言うクズやゴミというのは人間のこと。

凛は自分の意思で、先ほど、本当に人を殺してしまったんだという事を。

全員が愕然とする中、西は凛に近づいて、凛の肩に手を回して玄野達に勝ち誇った笑みを浮かべる。

西「と、言うわけだ。俺と渋谷はこれからこの腐ッた世界をブッ壊して、新しい世界の支配者として君臨するッつーワケ。ああ、お前らも同じガンツに呼ばれた仲ッてことで俺達の新世界に存在することを許可してやンよ。感謝しろよー」

加藤「……な、何をそんなバカな事を……」

西「あン? どうしちゃッたンですかー? 加藤クンよォー」

加藤「……そんな夢物語……世界を支配するだ……」

西「あー、そうか。お前達にはまだ俺達が何をしたのかッて知らねーンだッたな」

玄野「……何、言ッてんだよ……」

西「まァ、簡単に言うとだな。俺達はガンツを完全に支配化においた。ついでに言うとガンツを作り出した黒幕をブッ殺して、そのついでにこの世界の権力者たちでどーしよーもねーカス共をブチ殺してやッた。この時点でこの旧世界の崩壊まであとほんのちょッぴりなんだな、これが」

玄野「が、ガンツを……」

加藤「支配下に……?」

岸本「それッて……」

レイカ「ウソ……」

西「マジ。たとえばそこの女をよォ……こーやッて」

西がレイカを指差すと、レイカは頭頂部から光に包まれてどこかに転送されていく。

レイカ「な、何ッ?」

玄野「れ、レイカッ! 西ッ!! テメェ、何をしてんだッ!?」

レイカ「い、嫌……玄野ク…………」

西「あン? いや、その女をガンツの部屋に送ッてやッただけなんだけど?」

玄野「え……」

レイカが完全に転送されきった後、西は玄野達の前に立体映像を生み出して東京のガンツ部屋の様子を映し出す。

そこにはレイカがガンツを見ながら周りを見渡している姿が映っていた。
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 02:21:55.60 ID:eHk7CPs50
西「こんなモン、今の俺の力の一部にすぎねーけど。お前らにとッてはありえねー事だろ? ミッション中に部屋に戻ることができるなんてよー」

玄野「……マジ、か」

加藤「……くッ」

岸本「信じられない……」

西「以上、そんなワケで、お前達は俺達の偉業を指咥えて見てろ。今ここで宣言してやる。俺達は1週間でこの世界を破壊して新しい世界を作り上げる。おお、1週間後ッたらカタストロフィカウンターが0になる日じゃン」

西「まァ、今更カタストロフィなんざ昼下がりのティータイムと変わらねぇ、とるに足らねぇ出来事にすぎねーからな、何がこよーと俺達が全部破壊して……あァ? もしかしてあのカタストロフィカウンターッてーのは俺達の偉業が達成されるまでの時間なのか? なァ、どー思う渋谷ー?」

凛「……なんだっていいけど、1週間で全部終わらせるっていう事には賛成するよ」

西「おッ! 乗り気だねぇ!」

玄野達は凛と西が話している内容が理解しがたかったが、凛が先ほど見せた100点の敵をいともたやすく倒してしまったあの光景を思い出していた。

アレほどまでの力を、人を殺すことに躊躇しなくなった凛が今の現代社会に向けて解き放ったとしたら……。

玄野達の脳裏に、どこかの映画で見た世界が崩壊するシーンが浮かび上がる。

その崩壊した世界で高笑いをする西と暗い瞳で世界を見下ろす凛の姿がはっきりと想像でき、全身に身震いが起きる玄野。

何とかして止めなければならない。

そう考えた玄野だったが、

西「そんじゃお前ら、またなー」

凛「……」

二人は空中に浮かび上がっていく。

玄野「く、くッそ!!」

加藤「ま、待て!!」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 02:22:50.77 ID:eHk7CPs50
数十メートル上空まで浮かび上がった二人は、そのまま転送で戻ろうとした。

しかし、その二人に向かって閃光が走った。

途轍もない熱量の閃光。

それが二人を焼きつくさんと襲い掛かったが、凛の背から伸びた黒い光の翼が閃光を完全に防ぎきっていた。

凛「……何?」

西「あぁ……今回のボスだわ」

凛「さっきの槍で倒したのはボスじゃなかったの?」

西「ありゃ中ボスだ。本命はアレ」

西が指差す場所にそれはいた。

下半身は蛇、上半身は人間のような姿で、背には巨大な翼がなびいており、頭上には天使の輪が存在する生物。

その翼の先端に、ハードスーツを着た人間が何人も突き刺されて息絶えていた。

それは先ほど加藤が見たアメリカチームの人間たち。

今回のボスにダメージを与えられたようには全く見えず、全員が今回のボスに刺し殺されていた。

そして、そのボスは明らかに凛と西に敵意を向けていた。

西「どーする? お前、戦う?」

凛「……殺さないとさ、追いかけてきそうだよね、アレ」

西「そーだな……結構知能も高けーみてーだし、ここでサクッとブッ殺しておいたほうがいいな」

凛「わかったよ……それじゃ、武器とサポートお願いね」

西「おー、任せとけ!」

西が光のキーボードを展開し何らかのコマンドを打ち込むと凛に何かの武装が転送され始めた。

凛の姿が変化する中、天界を追放された堕天使のような姿のボスは凛に向かって襲い掛かってきた。
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/07(月) 02:23:18.73 ID:eHk7CPs50
今日はこの辺で。
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