神通「カリブの、海賊?」【艦これSS】

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1 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:22:26.78 ID:ediltvGc0
日本近海//





水平線に日が落ちるとともに、海は沖の方からゆっくりとかすみ始めた。
輸送艦の艦長を任されていた男は、ちらりと外を見ると、部下に船速を上げるよう促した。



艦長「これは急いでもかなり遅い時間になりそうだな」



彼は規律と時間に厳しい、模範的な帝国軍人であった。
そんな彼にとって、自分の輸送船が遅れるというのはプライドが許さなかったのだろう。
艦長の男は焦るように、軽く歯噛みする。



部下「とはいえ艦長、これは仕方のないことです。なにせ海の機嫌が悪かったんですから」

艦長「ううむ……」



上官の苦悩を宥めるように、部下の男が軽口でフォローした。
とはいえそのフォローはただの慰めではなく、正しい見解だったといえよう。
事実、今日この船はどうも海に嫌われていた。出航して1時間程度経った頃だろうか。
湾を出た頃は全くの快晴であったにも関わらず、次第に波が高くなり、空も淀み始めた。
雨こそ降らなかったものの、風も強く、荒れた海模様に見舞われたのである。




そんな海を半日、歯を食いしばりながら耐え、ようやく穏やかな海になったのがついさっきのことだ。







SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1502720546
2 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:22:46.01 ID:ediltvGc0







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*注意書き



「パイレーツ・オブ・カリビアン」と「艦隊これくしょん」のクロス。




構成はパイレーツ・オブ・カリビアンの感じをベースに。
文字数は約17万4000字。文字で見れば、ノベライズ版のパイレーツ換算で、
最長の「ワールド・エンド」の1.3倍くらい。一貫完結の「生命の泉」、「呪われた海賊たち」の2倍程度。
大体平均的な文庫本2冊分くらいになるので、お時間のある方はお付き合いください。

時間軸は「生命の泉」終了時点から数か月後。
後、ネタバレにならないであろう程度には、最新作の要素が出てきます。ご注意ください。


艦これ側は特に準拠する設定はありません。
ただ、神通のキャラが若干二水戦仕様になっております。違和感があるかもしれません。重ねてご注意ください。



日にちをかけての不定期更新になるかと思います。
後、検索すると、他にもパイレーツSSがあったので大丈夫だと思いますが、
原作が原作なので、万が一掲示板に警告が来ようものなら問答無用で停止・削除していただいて結構です。




では、長くなりましたが、前置きは以上。よろしくお願いします。





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3 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:23:59.98 ID:ediltvGc0




部下「あの海を切り抜けただけでも勲章ものですよ。事情を説明すれば、遅刻を責められるどころか、
   寧ろ『よくぞ荷と船を守った!』って賞賛されますって」



そんなポジティブな部下の言葉にほぐれたのか、艦長の眉間が柔らかくなる。



艦長「……そうだな。私も焦りすぎていた。どうもあの頃の記憶が抜けないようだ」


部下「あぁ、深海棲艦の?」


艦長「あの頃は輸送船がこうして海を往くだけで自殺行為だったからな。どうしても、
   一秒でも早く陸につきたいと思ったものだ」

部下「あはは、でもまぁ、今はそれも過去の話ですよね」

艦長「そうだな。戦線を拡大し、制海権の多くを取り戻した我々にとって、こんな日本海近海は
   舗装道路と変わらん。……よし、通信で多少遅れると内地に伝えろ」


部下「了解」



そういうと部下の男は無線で連絡を取り始めた。艦長が再び外を見る。通り過ぎてきた海の空は
まだ鉛色の雲で覆われ、既に雨まで降りだしていた。対してこちらの海は実に静かであった。



部下「? あれ?」




静かすぎるほどに。





4 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:24:50.46 ID:ediltvGc0




艦長「どうした?」

部下「いえ、何やら……、どうしてでしょう。通信がつながりません」


艦長「なに? こんな穏やかな天気で、本土の近い所でか?」

部下「うーん……」



近年の通信設備は優秀だ。たしかに距離は近すぎるほど近いわけではないが、ここら一帯の島には
日本軍がこしらえた電波中継の塔がいくつもある。つながらない道理はない。



部下「とすると、故障でしょうか?」

艦長「だとすると厄介だな、うーむ……」




今度は艦長が唸る番であった。






と、その時である。





5 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:26:14.29 ID:ediltvGc0




轟音。同時に、船全体が衝撃で包まれる!





部下「うわああっ!!?」

艦長「なんだ!?」




船体が不自然に揺れる。まるで飛ばしていた車が急停止したかのように。
「何かにぶつかったか!?」と外が慌ただしくなる。艦長も急いで甲板に出た。
すると……、




艦長「な、なぁっ……」

部下「艦長! どうし……ひぃっ!?」




そこにあったのは白い腕だった。


海の底から巨大な白い腕が船体をつかんでいた。






部下「な、こ、これは……、」

艦長「落ち着け! レーダーには何が映っている!?」




部下「れ、レーダーには、……。なんだこれ……」




部下の男の視線の先には、ノイズでホワイトアウトしたレーダー画面が表示されていた。




艦長「こ、これは……、一体!?」




慌てふためく船長。対してその部下は、死を前に現実感が喪失したのか、
場違いな程に静かに語り始めた。





部下「俺、聞いたことがあります。ウチの島の住民たちが畏れ敬う海域があるって。
   ……この辺りの海域には、出るそうなんですよ」



艦長「何……?」




6 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:27:36.80 ID:ediltvGc0



虚ろな目で抵抗を止める部下に気づき、叱咤しようと肩をゆする。
同乗している船員たちが小銃で応戦するも、効果はない。



艦長「おい! しっかりしろ! 何が出るというのだ!
   幽霊か! ゲリラか! どれも敵ではないわ!」


部下「違います。違うんですよ、艦長。それは、」


外を見ると、船員たちが敵の姿を確認するため、ライトを当てていた。
するとその光に誘われるように、轟音を上げ、海から現れた。


部下「それは、」



それは、巨大な口。

真っ黒で無骨な外殻を持ち、鋭利な歯が何本も並んでいる。
顎は大きく開かれ、人のそれとは違い、顔の形状は口が前方に長く伸びている。



艦長「ひっ」


『ウ゛ゥゥヴウ゛ゥウゥウ゛ウ……』



響くような、唸り声。
そう、海から突き出たその姿はまさしく、






部下「――ドラゴン」







『ア゛アアア゛アァアア゛アァァ゛ァァア゛アァ!!!』






咆哮と共に、その輸送艦は爆炎に包まれた。






7 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:28:07.73 ID:ediltvGc0








後に残されたのは、戦闘などまるで無かったかのような、


ただ、嘘の様に静かな海だけであった――。








8 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:28:34.05 ID:ediltvGc0





















9 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:29:55.48 ID:ediltvGc0
とある海岸//




穏やかな稜線に豊かな草。そんな自然のキャンパスにぽつぽつと浮かぶように描かれた人とヤギたち。
清涼な青空と、美しい自然の台地は見るものの目を奪う。そんな陸地から少し目をよそに向けると、
目の前にはこれまた美しいエメラルドブルーの海が広がっていた。これもやはり見るものの目を引く。


だがそれ以上に、多くの人の目は彼らに釘付けになるだろう。




???「nasse z uuy tieuo yz nai! bira kubo ut〜eriap……、ukas〜nisias……」



潮風にくたびれたボロ纏ったその男は、顔や体にあちこち奇妙奇天烈なペイントを施し、
ドルイド教やブードゥ教の司祭を誤って融合させてしまったような出で立ちだった。


???「…………」


そんな気が違っているような男の傍で、ヘトヘトになりながらラッパを吹いている毛むくじゃらの男がもう一人。
うつろな目で音階の合わないラッパをならしつづけていた。



???「……、おい、ほらもっと元気な音を出せ」


???「…………」



パーッ! と大きな音を出すと、それに合わせて、また司祭の男が呪文を唱えだす。



10 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:30:52.59 ID:ediltvGc0




???「enatt!! akisohna〜〜! bedottom〜an〜atotusebazire〜〜〜!!!」




知らぬ間に神でも降したのか、臭い口からよだれをまき散らしながら、一層激しく、祈りをささげる。
アテン神教の如く両手を開き、仏教の如く手を合わせ、キリスト教のように手を握りしめ、
忙しく色々な動作を繰り返している。素人が見れば一見、奇抜ながらも意味のある行動に思えるが、
少しでも宗教を知る者からすれば、あまりにデタラメで意味のない行動であるとすぐにわかる。


???「!? あぁぁあ! 神よ!! あなたが神なのですね!!」


???「はぁ……」


そしてまた、この似非宗教者のような男の人となりを、少しでも知る者からすれば、
この男がいかにデタラメで、意味のない行動をとっているかすぐにわかる。



???「おいジャック」



???「神よ! ははぁ、立派な御髪で。実はですね、ここに救いを求める敬虔な信者が――」






???「おいジャーック!!! ジャック・スパロウ!! 聞いてんのか!?」






ラッパを吹いていた男に怒鳴られたジャック・スパロウは、珍妙な呪文と踊りを取りやめる。
痛んだドレッドの黒髪は肩までかかり、無精ヒゲを生やしているが、鋭い眼差しと精悍な顔立ち
がはっきり見て取れる。ジャックは気分を害されたと言うようにいかにも大げさに肩を落とすと
ラッパの男に向き直った。







ジャック「ギブス! ジョシャミー・ギブス! このブヨブヨした醜い猫背のブタ野郎め!
     何度言わせればわかる!? 俺は"キャプテン"だ! "キャプテン"ジャック・スパロウ! お分かり?」







11 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:31:34.83 ID:ediltvGc0



そこまで一息で言うと、ジャックは頭から被っていた呪術師まがいのフードを鬱陶しそうに海に放り投げ、
木の傍においていた海賊帽を丁寧に被った。




ギブス「お、おぅすまねえ。……だがようキャプテン。この儀式はいつまで続けりゃいいんだ?
    俺は後何時間ラッパを吹いてりゃいい?」



そういってギブスはラッパを前に突き出す。熊の様な風体をした灰色のヒゲの男とラッパの組み合わせは
実にミスマッチで、いまさらながらジャックは内心で笑いそうになる。




ジャック「そりゃお前……、そらお前、……それはお前」


ギブス「……なぁジャック。わかっちゃいたが、やっぱこれデタラメだな?」


ジャック「なんのことでござぁましょう」


ギブス「ジャック、お前ぇ」



ギブスが立腹し、ジャックに掴み掛る。



12 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:32:25.34 ID:ediltvGc0



ジャック「おぅちょ待て待て! 別に嘘を言ったわけじゃない! あの時はそうかもしれないと思ったんだ! ホントに!」


ギブス「ホントに……?」

ジャック「ホントに。……ホントホント」


ギブス「……ジャックの話を真に受けるんじゃなかったぜ」

ジャック「ちょいとギブス君。そりゃ酷いんじゃないの?」

ギブス「5時間も意味不明の儀式で、吹けもしないラッパ吹かされた俺の身にもなってみろ!」

ジャック「いいじゃないか。音楽家、似合ってるぞ。手に職だな」

ギブス「あの生贄用のヤギ3頭買った金も無駄になった!」

ジャック「海の男がみみっちいこというな。食えば旨そうだ」



ギブス「ジャック。本当にブラック・パール号を元に戻せるんだろうな!?」




13 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:33:05.61 ID:ediltvGc0



そういうとギブスは砂浜に指した。先ほどまで儀式の中心だったビン。
そのビンには船が入っており、いわゆるボトルシップというやつであった。

ただこのボトルシップが尋常のものではない。

普通のボトルシップはビンの中に模型の船が入った工芸品だが、
このボトルシップの中に入っている船は、この海最速と謳われた、
彼らの愛船、ブラック・パール号。その本物が入っていたのだった。



ジャック「戻せる戻せる!」

ギブス「じゃあホントに、頼むぜキャプテン。こいつがなきゃ俺たちの冒険は立ちいかねえ」

ジャック「……。船のない海賊、ってのもユニークで斬新じゃ――」

ギブス「あ゛ぁ?」

ジャック「いやぁ、なんでもない」




ギブスに気圧されるようにして、ジャックはそのビンを受け取らされる。ビンの中に入ったブラックパール。
海で聞いた財宝伝説にありがちなパターンとして、財宝は堅固に守られている、というのがあるなとジャックは思った。
狂暴な怪物、凶悪な罠、強固な壁。人が語る財宝伝説にはいつだってそんな「邪魔者」が居た。
今のジャックにとって、至高の黒真珠を得る為の「邪魔者」は、まさにこのビンであった。



14 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:34:07.59 ID:ediltvGc0



そもそもなぜこのようなことになったのか?


詳細に起こすと長くなるが、要するに、船を奪われ、ビンに閉じ込められたのだ。かつて、といってもつい最近まで、
この海で悪名を誇った"黒ひげ"エドワード・ティーチが、当時のブラックパール号船長であったバルボッサを倒し、船を接収。
不思議な魔術を使い、ボトルシップのコレクションに加えたのだ。このビンは、その一つだった。



ジャック「黒ひげめ……。余計なことしやがって」

ギブス「なんか言ったか?」

ジャック「いやなにも」


ともかく、ジャックスパロウは今後も自由な海賊を続けていくつもりだ。
そしてその為には、彼の代名詞でもあり、彼の自由の象徴でもあるブラックパール号が不可欠であった。



ジャック「ふむ、少し考えを変えてみよう」


ギブス「というと?」


ジャック「俺たちは問題を難しく考えすぎてたんだ。答えはきっと、もっと簡単だった」




15 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:35:28.07 ID:ediltvGc0



そういうとジャックは脇に避けてあった麻袋から別のビンを取り出す。
それは先述した黒ひげの帆船コレクションの一つであり、こちらも中に船が封じ込められている。



ジャック「ビンが俺たちの邪魔をしているなら、そのビンを壊しちまう。これが最適解さ」



ギブスは一瞬目から鱗がとれたようにジャックを見たが、その鱗の下の目は疑惑の色に満ちていた。
ここまで数時間騙されてきたことや、ジャックがインチキな人間であることも理由ではあったが、
何より、あの魔人・黒ひげの呪術がそんなことで破れるとは到底思わなかったからだ。

だがジャックは朗々と続ける。



ジャック「いいかいギブス君? 簡単な推理だよ。黒ひげは恐ろしい海賊だったが、でも所詮は海賊だ。
     西インド会社の碩学様なんかじゃない。複雑な仕掛けを施すような頭を持っているとは思わない」

ギブス「ううん……」


唸るギブスにジャックは続ける。


ジャック「それに考えてもみろ。きっと黒ひげだってこれらを趣味で集めてたわけじゃない。
     こんだけの艦隊コレクションだ。世界の海を支配できる。黒ひげも機を見て使おうとしたはずだ。
     だとすれば! 黒ひげは気軽に、簡単な方法で解除できたはずだ! 儀式に5時間も使ったりしない!」

ギブス「まぁ、確かにそうかもな」

ジャック「だろう?」




ギブス「でぇ、ビンを割るってか」

ジャック「そういうことだ。まぁみてろ……」



16 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:36:27.17 ID:ediltvGc0


そういうとジャックは浜に置いていたカットラスを抜き、船を避けるようにしてビンのショルダーを思い切り斬りつける!
するといとも簡単にビンはキレイに真っ二つになり、中からもくもくと煙がでてきた。


ギブス「! これはいけるんじゃないか!? いけるんじゃないか!?」


ジャック「それみたことか!」


ここにきて展開が急に動き始め盛り上がる二人。
煙が徐々に収束していき、中から船のこすれるような異音がし始めた。


ギブス「来い!」
ジャック「来いっ!」




が、中から出てきたのは少量の水と小さな木くずだった。




ジャック「……」

ギブス「えぇ……」


正確に言えば、それは小さな船の残骸だった。例えではなく、本当にボトルシップの中身を
壊してしまった状態であり、当然、人が乗るスケールではなく、贔屓目に見ても失敗といえた。



17 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:37:19.82 ID:ediltvGc0




ギブス「それみたことか!」


ジャック「お前だって乗り気だったろう!!」


ギブス「いーや俺は反対したね! 何が簡単な推理だ!
    絶対に手順が違うんだ! もっと鍵の様なものが必要なんだ!!」


ジャック「だったらお前はどうすんだ!」


互いに溜まった鬱憤が爆発し、醜く砂浜で男二人が言い争う。
長い付き合いなので手は出なかったが、流石に限界が来たようだ。


ジャック「邪魔だこんなもん!!」



ジャックはやけくそとばかりに、手の中の残骸を海に放り投げた。



ギブス「まずは今をどうするか考えようぜ。この近辺じゃ顔見知りはいねえが造船所がある。
    とりあえずボトルシップの珍品としていくらか売って金にして、まず船を買おう!」

ジャック「売るって!? お前これがどんな価値のもんかわかってないな!?」


ギブス「んなことは分かってる! その辺のお宝より何百倍も値打ちがある! 
    だが今は仕方ないだろう! お前が陸で生きられるタマかよ!」

ジャック「ギブス! 俺は海でも陸でもタマなしじゃない!」


ギブス「そうじゃなくて――」





18 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:38:20.98 ID:ediltvGc0



ザパン! と、急に海から大きな音がした。
何事かと二人して振り返ると、そこには、先ほどの残骸となった船舶が浮かんでいた。


もちろん依然として残骸のままだったが、その大きさは、正しく多くの船員を乗せた在りし日の船の大きさそのままであった。



ギブス「……、成功? したのか?」

ジャック「いや、残骸は残骸のままだが……」

ギブス「水に漬けたら大きくなったってわけか」

ジャック「そっちは多分そうだろうな」

ギブス「だが海にこんなゴミを増やしても仕方ねえだろ」

ジャック「いや待てギブス」



ジャックは真剣な顔でギブスを制止した。


ギブス「なんだよ」


ジャック「あれ、海賊船に見えるか?」

ギブス「んん? ……、あぁ確かにありゃ多分商船だな。それがどうした?」


19 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:39:27.57 ID:ediltvGc0



ジャック「黒ひげはナッソーやカロライナで死ぬほど略奪を繰り返した。
     そりゃとんでもない財産だったはずだ。しかし俺が乗った奴の船には、そんな量の宝はどこにもなかった」

ギブス「そりゃどっかの拠点にため込んでんだろ」

ジャック「普通ならそうさ。でも考えてみろ? 莫大な宝の守りを誰かに任せるのは勇気がいることだ。
     それも世界中の海軍から狙われて、本人も人どころか娘すら信じられない疑い深い奴ならなおさらな」


ギブス「?」

ジャック「そんな奴の手元に、船ごとまるっと身近に置いておける便利な金庫があったら、……どうすると思う?」

ギブス「そりゃ……、!」


ハッとしてジャックを見る。そうなのだ。そんな黒ひげならば、商船を丸ごとビンにしておいたはずだ。
当然、中身の荷物ごとだ。二人して海の方を見やる。船としては藻屑であるが、船と同じようにして、
中身も元の大きさになっているならば……、そうなれば、藻屑が一気に宝の山になる。



ジャック「なぁに、簡単な推理だよ、ギブス君」


上着を脱いで二人して海へ急ぐ。
ビンから船を解放する方法はまだわかっていないし、この儀式のために必死で集めた材料や、
5時間にも及ぶラッパと呪文の祈祷は、全くの無意味となったわけだが、二人はそんなどうでもいい過去は忘れ、
海賊らしく、目の前のお宝のを心から喜んだ。



ヤギ「メヘェー」



ヤギたちはそんな光景を眺めながら、潮風にさらされた草を黙々と食んでいた。





20 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:39:56.36 ID:ediltvGc0



















21 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:41:38.29 ID:ediltvGc0
横須賀鎮守府 提督執務室//




天龍「――はぁ?」


多少は我慢しようと思っていた天龍だったが、流石にうんざりした。



漣「おおっと、も、もう一度おっしゃっていただけますか?」

神通「……」



提督「だから遠征任務だ。捜索の」


天龍「またか」


提督「まただ」


天龍がガックリと肩を落とす。日頃軍務に忠実な神通でさえ、多少気落ちしていた。



漣「七連荘で捜索任務キタコレっ! うがー!」



漣は持ち前のテンションで誤魔化そうとしたが、彼女もまたうんざりした様子だった。



提督「君たちにはほんっとーにすまないと思っている。だが人手が足りないんだ。
   それに君たちは経験豊富だ。やってくれるね?」


漣「おうふ、ご主人様マジ鬼畜。……いや、割とリアルガチで」



そういうと漣も肩を落とす。


22 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:42:11.31 ID:ediltvGc0



天龍「なぁ提督、オレも軍人として命令には従うけどよ、……さすがに休暇がほしいぞ」

提督「勿論だ。この2週間の捜索任務が終われば、君たちに休暇を与える」



漣「それ先週の今日にも同じこと言いましたけどねっ!!!」



ふてくされる漣に同意するように、うんうんと天龍が頷く。神通は何とも言えない表情でと提督を見ている。
提督も彼女たちの気持ちは分かっていたが、捜索任務は一分一秒が乗員の命につながる。早期発見の為には
即座に動くことが重要である。


本来、こうした探索任務は神経を使い何日も洋上を駆ける任務であるため、
もっと大人数のローテーションで回すべきだが、ここ最近の急速な戦線拡大によって猫の手も借りたい今、
手練れは全員鎮守府を離れており、捜索任務には手透きの彼女たちに頼るしかなかった。


よってここで一日休憩をとらせるわけにはいかなかったのである。



漣「いやぁ、それは知ってますけどぉー……」



提督が何度目かになるこの説明をすると、漣は観念したようにもろ手を挙げた。



23 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:43:38.07 ID:ediltvGc0



天龍「それで、今度はどこの何なんだ?」


早く終わらせてくれ、とばかりに天龍が先を促すと、提督は真面目な表情でコホンと改めた。


提督「今回の、……というより今回も。場所は南方海域から鎮守府正面海域。艦種は帝国海軍の輸送艦。
   石油等の輸送任務に就いていたそうだが、またしても出航してからしばらくして連絡がつかなくなったそうだ」


全員「…………」




まただ。ここにいる全員がそう思った。




この数か月の間に連続で起きた、七件の失踪事件。



ことの始まりは、本州での会議に向かうため出航した、グアム警備府の司令長官以下要職たちを乗せた通常軍艦
が全くの行方知れずになってしまったことにある。

ちなみに通常軍艦とは艦娘に搭載されている妖精技術を使っていない船を指す。
機動力に欠けているため戦線では使われないが、内側であれば人間や人間用の物資を運ぶために今でも使われている。


この事件はは戦線から遠く離れた領域での出来事であったことと、
深海棲艦に反応する帝国製のソノブイに反応履歴がなかったことから、事故による沈没ということで片が付いた。



24 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:44:46.66 ID:ediltvGc0



しかしその後、民間の漁船や帝国の艦に至るまで、通常艦が次々と姿を消していった。
艦種、乗組員の熟練度、航行目的。7件は全て様々な面で差異があるが、
全く同じなのが「失踪場所が南方海域から鎮守府正面海域であること」。
そして「出航後しばらくして連絡がつかなくなったこと」である。



神通「……」



神通は考え込む。帝国海軍の練度は世界でもトップクラスだ。

民間の漁船はさておき、まさか偶然の事故がここまで立て続けに起こるだろうか。
当日は綺麗な快晴だったと言われている。嵐の予兆もない。物資不足からの慢性的な整備不良で、
一斉にエンジントラブルなどが起きていると仮定しても、全ての艦に通信障害が起こるとは考えがたかった。



提督「というわけでお前たちに託す。……やってくれるな天龍?」

天龍「まぁ、それは分かるんだけどよ……」



煮え切らない表情をする天龍に、提督は優しく続ける。



提督「彼らを救えるのはお前しかいないんだ。やってくれるか?」


提督が天龍の頭にポンと手を置くと、天龍は決意の籠った目で「しゃーねぇな!」と快諾した。


提督「よし、じゃあ頼む。下がっていいぞ」



期待されたら応えたくなる天龍。そんな手を使って話を終わらせたからか、
それとも別の理由からか、漣は「ズルい!」と抗議の声を上げたのだった。





25 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:45:18.95 ID:ediltvGc0


















26 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:46:06.09 ID:ediltvGc0
酒場//


ルンペンじみた男がマンドーラを弾き終えると、店の中では喝采が響いた。
酒場は所狭しとならず者でごった返し、汗や酒や煙草のツンとした匂いが立ち込めていた。
だがそんな匂いも、海賊であるジャックたちにとってみればなつかしい匂いであり、
お貴族様がおつけるお上品なお香りよりも、ずっと落ち着ける匂いであった。


そんな喧しい酒場の奥を陣取ったジャックはギブスに見せつけるように、手持ちのビンをテーブルに置いた。



ジャック「みたまえギブス君。これが、今の我らの財産だ」



ジャックが大きな麻袋から取り出したそのビンの中には、先ほどのブラックパール号の様に、本物の船が
ボトルシップの如く封印されていた。



ギブス「伝説の海賊黒ひげがその生涯をかけて集めたコレクションだ。この価値は図り知れない!」




麻袋の中にはそうした計り知れない財宝がいくつも入っていた。ギブスとジャックは中の品を漁り始める。



27 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:47:03.43 ID:ediltvGc0



ジャック「こっちのビンはポルトガルの軍艦だな。でかそうな船だ」

ギブス「こっちはイギリスの軍艦だ。名前は……、えーっと、ス、スカーボロー号か?」

ジャック「おいおい、ギブス、見てみろよ! 初期のガレオン船だぜ。こりゃ随分な骨董品だな」


ギブス「他には、どれどれ……、! お、おい見ろよジャック!!」

ジャック「ん? ……うおっ!?」


ジャックは驚き、ガタンと大きな音を立てて椅子から立ち上がる。
騒がしい酒場の店内だったが、あまりの様子に少なくない目がジャックたちに注目した。
それに気づいたギブスは「なんでもねえ」と周りの視線を散らし、椅子に座って再びその船を眺めた。



ギブス「こいつぁすげえぞ。スペインの戦列艦だ!」

ジャック「大砲はーひぃふぅみぃ……、……あぁまだるっこしい!」

ギブス「まぁパッとみた限りでも、こいつは一等艦でまちがいねえだろ」

ジャック「あぁ違いない!」



戦列艦というのはこの時代における最新鋭の軍艦である。
大量の大砲を積み込み、単縦陣で敵船を塵にする、というオーバーキルを特徴としていた。
中でも一等艦とは、3層の砲列に100門以上の砲を搭載した最大級の戦列艦で、
多くは本国近海の最重要ラインにおける旗艦として用いられた当時の究極兵器であった。



28 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:47:51.76 ID:ediltvGc0



ジャック「こっちにゃイギリスの戦列艦もあるぜ。二等艦か三等艦だが、それでも十分すぎる」

ギブス「黒ひげの野郎、どこでこんな大量の船を……」

ジャック「恐らく最近の戦争でこっちに来てた船だろう。『ジェンキンスの耳の戦争』か、『ハプスブルクのお家騒動』か。
     どっちにしろ、哀れにもこのカリブの海に足を踏み入れた船を黒ひげが奪ったんだろうよ」

ギブス「……今さらながら、黒ひげってぇのは恐ろしい海賊だなぁ……」

ジャック「だがもう死んだ」



そういうとジャックは少しぬるくなったエールを飲み干す。



ジャック「この船は俺たちのもんだ」



ギブスはその言葉を聞くと、顔に悪い笑みを浮かべた。



ギブス「それもそうだな」

ジャック「そうに決まってるさ」



29 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:48:54.99 ID:ediltvGc0



ギブス「あぁ、だがその為には船員がいる。この大艦隊を動かせる大人数の部下たちが」


ジャック「その通り。だがまずは欲張るな。まずはさっき買った船を動かせるだけの人数が必要だ」

ギブス「おぉそうだったそうだった。焦りすぎてたぜ」

ジャック「落ち着けギブス君。慌てなくても船は逃げやしない」



ジャックはボトルシップをフラフラと揺らして見せた。相変わらず囚われの哀れな船はビンの中だ。


ジャック「よし、じゃあいってくる」

ギブス「じゃあ頼んだぜ、キャプテン」


そういうとギブスはビンを麻袋に詰め治す。




ジャックは酒場のど真ん中に、フラフラとした仕草で歩き出した。
別に酔っているわけではない。これが彼の普段の歩き方なのだ。

そんな彼を周りの客が何事かと睨み付ける中、
ジャックはピタリと立ち止まり、ざわめきを掻き消す音量で叫んだ。





ジャック「ちゅうもぉーく!!」






しん。あれほど騒がしかった酒場が一瞬で静まり返る。



ジャックはふてぶてしく続ける。




30 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:49:56.29 ID:ediltvGc0




ジャック「おめえらよぉく聞け! 酒場で飲んだくれてやがるクソッたれのならず者ども!
     ただ生きてるだけしかできない穀潰しども! てめえらタマナシにこの俺が本物の海を見せてやる!」



「だれだてめへは!?」



前歯の欠けた年寄りがジャックに向かって叫ぶ。それを聞くと、ジャックは待ってましたとばかりに老人の方へ向き直った。



ジャック「俺を知らない? 馬鹿言うな。この辺りで俺をしらないなんて、さてはお前モグリだろう」



芝居がかった大げさな口調で続ける。さながら舞台劇の役者である。




ジャック「なら聞かせてやる。俺の名前はジャック・スパロウ! カリブ最速の船、ブラック・パール号の船長を務める、
     泣く子も黙る"キャプテン"ジャック・スパロウ様だ!!」



その一言に酒場の空気は一気に緊張が走る。目の前にいるのは伝説の大海賊。
そんな人間がこんな場末の酒場のど真ん中で快弁をふるっているのだ。
自分たちは何か気を悪くすることでもしただろうか? 皆そう考えて震えた。


そんな空気をみて、ジャックは今この瞬間、完全にこの場を支配していることを確信すると、言葉をつづけた。



ジャック「俺は別にお前たちをどうこうしようなんて思っちゃいないさ。むしろ逆だ、お前たちが気に入った」



ジャックが高く手を挙げる。




ジャック「よく聞け! ならず者ども! この伝説の大海賊、ジャック・スパロウの船に乗せてやる栄誉をてめえらにくれてやる!」




瞬間、一気に酒場が沸騰する。横から来たギブスが間に入り、これから一人一人を面接していくわけだが、
面接希望者だけは良く集まりそうだ。ジャックは満足そうに、髭先を指でつまんだ。






31 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:50:44.28 ID:ediltvGc0


















32 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:51:10.98 ID:ediltvGc0
横須賀鎮守府 詰所//




鎮守府本部から出て少し歩く。

工廠を挟んでやや海沿いの場所に、第七駆逐隊の詰所はあった。

コンクリートブロックと鉄板で構築された、こじんまりとしたその詰所はまるでトーチカで、
やや瀟洒な風情を持った本部に比べ、まさに軍事用の建造物といった様子だ。


鎮守府は現代において重要軍事拠点である。


よって警備を万全とするために、艦娘たちはこうして
鎮守府内の各地に点々と隊ごとにまとめられている。

より重要度の高い艦は本部に近く、そして逆に低いものは、
こうして遠くの粗末な拠点に置かれるのだ。差別的な意味ではなく、
単純に軍として効率を求めた結果である。


だがこれにより、自分たちがいかに軽んじられているかというのも一目で
分かってしまうのもまた事実であった。




33 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:52:33.06 ID:ediltvGc0



天龍「ただいm……うわ、あっつぅ」

漣「せ、扇風機扇風機!」


詰所の扉を開けるや否や、漣がへこたれる。


夏真っ盛りの今、ずっと閉じっぱなしだった部屋は
まさに蒸し風呂だった。特に窓も閉じたままの、分厚いコンクリートの建物の中ならなおさらだ。


天龍「あ゛あぁー。扇風機の風すら暑い〜」

漣「大気圏突入ができるビームシールドでさえこのざまですよ、ええ!」


風が無いよりはマシだが、つけたならそれはそれで暑いようだ。
漣は自前の連装砲を盾にして遊んでいたが、本当に暑すぎたのか、すぐさま放り出して寝ころんだ。


漣「クラウン……、漣には大気圏を突破する性能はない……。ばたっ」

天龍「ほんと、クーラーがほしいなー」

漣「それな」

天龍「なぁー、神通も提督に直訴しようぜー。これじゃあ怪我が悪化しちまうってな」


34 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:54:16.24 ID:ediltvGc0



天龍が寝転がりながら神通に目を向けると、
神通は自前の三角巾とはたきで、一週間のうちに溜まった部屋の埃を払っていた。


天龍「何してんだ?」

神通「ほこりが溜まっていたので、掃除を……」

天龍「いやいや、放っといて寝ろよ。すぐにまた遠征任務なんだし」

神通「でしたら、なおさらお掃除しておかないと汚れる一方では?」

漣「でも捜索遠征出たらどうせまたまともに寝れない1週間なわけですし、半日とはいっても、
  たまの休みくらい布団で寝た方がいいですよー、ホントに」


神通「そうですが……」

二人「ですが?」

神通「やはり、部屋は大事にしておかないと……」


それを聞いた二人は「かぁー」と唸る。


漣「神通先輩は意識高いっすねー!」

天龍「まぁオレ達が意識低いだけだろうけどな」

漣「それな!」


天龍をビシッと指差した漣は、満足そうにして再び寝ころぶ。



手伝う気はまるでないようだ。
神通はそんな漣をみて、同類になりたくないのか、しばらく掃除を続けていたが、
蓄積した疲労には勝てず、途中で眠りに落ちていった。



35 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:54:42.89 ID:ediltvGc0






















36 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:55:29.24 ID:ediltvGc0
???//




川内「やばい! 舵効かない!」



焦りと恐怖と興奮が限界に達したのか、笑顔にも見える壮絶な表情で川内が叫んだ。
舵が故障し、敵機から爆撃を受け、なおも敵爆撃機集団の第三波を待つだけの状況。
川内の命運は尽きようとしていた。


那珂「……っ」

神通「姉さん! 捕まってください! 曳航します! まだ、まだだいじょうぶだから……!」


川内「ごめんね、二人とも」


神通「うぅ……っ!」



37 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:56:11.60 ID:ediltvGc0





ソロモン諸島群、コロンバンガラ島沖海戦。




敵味方入り乱れての大混戦の結果、深海棲艦を多数の大破・沈没させる大戦果を得た。

半世紀以上前に終わった、彼女たちの前世ともいえる第二次世界大戦の戦いでは、
大戦果と引き換えに神通が沈没を遂げた戦いである。


艦娘は過去の死に引っ張られる。必ずしもそうであるとは言えないが、これは世界中の艦娘たちの
共通認識でもあった。故に、死に場所となった海戦では、より一層の注意と、戦力増強を以て挑むのが常となっていた。


この戦いもそうだった。駆逐艦や軽巡も増やし、神通も沈没原因となった
夜戦でのサーチライトによる照射射撃を行わないようにした。


だが、変わったのは相手も同じだった。深海棲艦も戦力を増強し、終いには、決死の夜間空爆を行ってきた。
これにより戦況は激化。幸運が重なり、日本側は沈没はこの時点でゼロだったが、皆傷を負い、夜明けを迎える頃には
広い海をバラバラに散ってしまっていた。






史実にはありえなかった、コロンバンガラ島沖・撤退戦。その悪夢の顛末がここから始まった。






38 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:56:57.51 ID:ediltvGc0


神通たちは当初、はぐれた味方を集結させようと川内・那珂を含めた7人で海を走り回っていた。
が、敵はここで更に艦爆を投入してきた。海軍本部肝いりの第十一号作戦により、セイロン島攻略のため、
インド方面のカレー洋に戦力が集結してしまっている。敵空母たちは悠々とその隙をついた形になる。


夜も明け、敵の駆逐や軽巡といった戦力も合流した。戦力の逐次投入というよりも、潤沢な戦力からなる
波状攻撃といった方が正しかったかもしれない。少なくとも、この増援により、日本側の戦意は折れた。

制空権を完全に取られ、海上でも包囲・追跡が始まった。史実では神通が時間を稼いでいたがそれもなかったので、
頼みの魚雷も投射済み。再装填されていないままであった。


後は的として、いかに当たらないかを願うだけの逃走劇となる。



第一波で神通たちは難なくよけ切るも、随伴していた駆逐達は燃料切れで捕まり、沈められた。
夜戦で縦横無尽に活躍したことが仇となった。



第二波では合流を目指していた味方艦隊が壊滅。
そして姉の川内も度重なる無茶な機動とダメージにより舵を故障。
走行負荷となる絶望的な状況に陥る。



39 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:57:56.48 ID:ediltvGc0



そして、あと10分もすれば第三波が来るだろう。見捨てなければ、全滅する。
川内は、悲痛な顔で説得する神通から目をそらし、那珂に視線を向ける。


那珂は短く瞼を閉じる。そして決意を込めた表情で川内から顔をそらし、
神通の手を勢いよく引っ張っていった。



神通「いや! 那珂! 離して!」

那珂「ごめん! ごめん!! 川内ちゃん! 神通ちゃん! ごめんっ!!」



悲鳴のような謝罪の言葉が水平線に消えていく頃には、反対側から爆撃機のエンジン音が近づいてきた。



川内「あぁ、せめて夜のうちに死なせてほしかったなぁ……」




夜戦に生きた川内は、ついに夜を無敵のまま生き抜き、真昼の太陽に見降ろされたまま逝った。



40 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:58:55.72 ID:ediltvGc0



残すは那珂と神通だけになった日本帝国海軍。
第四波が殲滅を試みようと迫ってくる。
燃料も、砲弾も、気力すら残っていなかった。

空を覆う夥しい爆撃機の影。爆弾の風切り音が死を告げる。

死んだ。

神通がそう思った時、



那珂「神通ちゃん……」

神通「えっ……?」



直前に、那珂は神通に覆いかぶさった。渾身の力で抱きしめられ、
妹にこんなに力があったのかと、危機を前にして的外れなどうでもいい感想が芽生えた。


そして、憎たらしいほどに精密な空爆が直撃する。
鼓膜が破れ、壊れたノイズの様な音が脳を刺激する。思考が覚束ない中で、
手足の感覚がないことに気づいた。背骨真っ二つに折れてしまっているかもしれない。



目だけを横に向けると、那珂が仰向けに沈んでいくところであった。
起きてと声を振り絞ろうとしたが、波に転がされた彼女には、ごっそりと背中がなかった。
後頭部も消え失せており、明らかな即死であった。




神通「…………」



短時間のうちに、自分をかばって死んでいった姉と妹の死にざまを見て、
膨大な感情が去来し、神通の思考は完全に失せてしまった。
神通も真っ二つ寸前ともいえる重体であった。このまま逝けば自分も同じ場所に行けるかもしれない。




41 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/14(月) 23:59:37.66 ID:ediltvGc0










しかし。








吹雪「神通さんっ!!」


神通「ぁ……」






開戦から数日を経て、海軍史に刻まられるコロンバンガラ島沖・反撃戦が始まる。


撤退戦で日本海軍を殲滅しにきた空母や無数の敵艦隊を、日本軍南方戦線の残存兵力が
殲滅し返したという戦い。敵味方問わず夥しい死傷者を出したが、結果としては、
日本軍は多数の駆逐・軽巡を失った代わりに、その数倍の敵駆逐・軽巡を、そして
多数の空母級を大破・轟沈させた、熾烈極まる戦いとなった。




42 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/15(火) 00:00:16.02 ID:sE/Vv+Mi0
鎮守府・詰所//




神通「は、っ………!」



気が付くと、そこは鎮守府の詰所であった。
夢を見ていたのだろう。時計の針は既に6時間も経っていた。

詰め所の蒸し暑さのせいか、半袖でも身体は汗だくになり、呼吸も浅くなっていた。


天龍「ぐぅ、ぐぅ」

漣「くー……」


同僚二人も寝苦しそうにしているが、疲れからかばっちり熟睡しているようだった。
穏やかそうな寝姿に、コロンバンガラ島沖の忌まわしき記憶が多少和らぐ。



神通「うぇ……」


それでも悪夢がもたらした後遺症はつらく、少しだけ吐き気がこみ上げ、
ぎゅっ、と敷布団に爪を立てる。


コロンバンガラ島沖・反撃戦。
神通はこの際、南方基地から駆け付けた援軍によって救助。
随伴艦や姉妹艦の仇はすべて援軍が壊滅させた。

救助された神通は一時危篤状態に陥るも、本土の提督の判断により、
竜骨を交換する長時間の修理が行われ、なんとか一命をとりとめた。





神通「…………」





皮肉なことに。



史実において唯一の犠牲者となった神通は、
コロンバンガラ島沖海戦における、緒戦からの唯一の生存者となった。





43 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/15(火) 00:00:43.15 ID:sE/Vv+Mi0
















44 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/15(火) 00:01:37.47 ID:sE/Vv+Mi0
カリブ近海 海上//





カリブ海を離れ、島々が遠ざかり、大西洋に入る。波穏やかで、順風。空はこの上ない快晴。
そんな絶好の船出日和だというのに、ジャックの顔は優れなかった。



ギブス「おいテメーら! モタモタしてんじゃねえ! 船を沈めたいのか!?」



ギブスが厳しく叱咤するが、船員の士気は上がらない。多くの船員がヘバっており、
一部では船酔いしている者も散見される。ギブスは大分マシな者を選んだつもりだったが
それにしても不甲斐ない。


「しかたあるめへ、こいつらは海に慣れてねへんだ」


酒場で乗せたうちの一人である、前歯のない老人はそういった。今この船で彼は数少ない
まともに立っていられる男の一人であった。


「背伸びしたかったならずもんってやつだ」


ニカリと笑う老人の顔はどこか間抜けだ。だがそんな老人がまだマトモな部類のこの船は、
もっと間抜けなのだろう。ギブスはため息をつく。



ギブス「こいつぁマトモになるまでには随分かかるぜ船長」


ジャック「想像以上にタマナシの集まりだなおい」


呆れたように肩を落とすジャック。かつての船員たちは嵐の海どころか、世界の果てにすら挑んだ
船乗りの中の船乗りたちであった。そんな彼らと比べるのは些か厳しすぎたが、それにしても……、
とジャックは前の船員たちを渇望した。数年前に、黒ひげに壊滅させられたブラックパールの船員は、
全員、離散してしまったと聞く。多くは死に、多くは命からがら逃げだした。




45 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/15(火) 00:02:39.01 ID:sE/Vv+Mi0



ギブス「とはいえ、まぁ天下のブラックパールに乗れるって聞いて来たら冴えない二流帆船だったんだ。
    士気が下がるのも当然だぜ」

ジャック「仕方ないだろう。いいのがこれくらいしかなかったんだ」



ジャックの駆るその真っ黒の船は、その代名詞ともいえるブラックパールではなく、色だけ似た
買ったばかりの中古帆船だった。一応どこぞの海軍で使われていたもののレストア品ということだが、
見てくれも性能も、良くも悪くもない一品であった。

色が似ているのは、せめて見た目だけでもとコールタールを塗りたくったためであり、
その結果として、まだ船内は独特の刺激臭が残っている。


ジャック「金がない時は、こういう女も味があるってもんだ……」


差し当たって、ジャックはこの船に「フーチー号」という名をつけていた。
フーチーは英語で「化粧の濃い女」「軽い女」「安っぽい女」という意味で、言ってみれば「あばずれ号」といった所だ。

名前の由来は、フーチー号購入のお釣りをたかる為に、噂を聞きつけた安い商売女共が押し寄せてきたから、という適当な
ものであったが、事実、ダサい船体を濃いコールタールの化粧で誤魔化した、軽装備の安っぽい船で、しかも散々使い回された中古。
黒い宝石を抱く前の、短い一夜の間の女に付ける名前としては意外にもピッタリだった。




ギブス「で、船員たちはどうするキャプテン?」



46 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/15(火) 00:03:08.33 ID:sE/Vv+Mi0


ジャック「まぁいいさ。どっかに着くころには統制もとれるだろ」


ギブス「随分気が長いな」


ジャック「当たり前だ。別に急ぐ理由もない。航海はいつだって自由が一番だ」


そうやって昼寝に入ろうと目をつむる。





だが彼は気づいていなかった。すぐそこに急ぐ理由が迫っていた。









47 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/15(火) 00:03:58.15 ID:sE/Vv+Mi0
大西洋 海上//



あれほど飛んでいたカモメもいなくなり、ようやく大西洋の大海に入ったと確信する一同。
帆は風をとらえて順調に進む。そんな様子を見て、多少まとまりを覚えてきた船員たちは
どっと腰を下ろす。


ギブス「よぉし! 全員休憩だ! しっかりメシくっとけよ!」


ギブスの声に船員たちは緊張を解く。ジャックは未だに眠りの中だった。
フーチー女史は現在休暇満喫中。だからだろう。その船の接近にしばらく誰も気づかなかった。


のんびりと海原を行くフーチー号に凄まじい勢いで近づく船。
焼け焦げた肉のような色をした船体だが、すみずみまで凝った装飾が施された
その船は、一見にして尋常ならざる船だとわかる。


「て、敵だあぁあああ!!!!」


そんな恐ろしい船の接近にようやく気付いた船員が大声を上げ、フーチー号は
上を下への大騒ぎ。そんな様子を見て、片足の男が笑った。




???「撃て」





48 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/15(火) 00:04:33.41 ID:sE/Vv+Mi0


ドォン! と大きな音を立てて一発の鉄球がフーチー近くの海面に叩き込まれる。
大きな水柱をあげられ、ようやくジャックが飛び起きる。


ジャック「!? なん、なんだ!? どうした!?」



???「ようジャックぅ。ご機嫌はいかがかな?」



男は義足の先を甲板に踏むようにして叩きつける。
ジャックは驚いた眼を向けた。その音にではなく、その顔にだ。



ジャック「どっちかというと最悪。何しに来たヘクター」




バルボッサ「何しに来ただと? 釣れないことを言うな。俺とお前の仲だろう?」



ジャック「あぁ、そう」




49 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/15(火) 00:05:10.69 ID:sE/Vv+Mi0



バルボッサ「今生では永遠の別れだと思っていた俺のパールに会いに来たんだ。
      まさか邪魔はしないよなぁ?」


ジャック「そりゃパールも喜ぶだろうな。だけど一つ訂正。『俺の船』。お前んじゃない」




そんな会話をしながら、ジャックの船は徐々に離れ、バルボッサの船は徐々に近づいて行った。

二人は白々しく笑いあう。すぐに逃走指示に入りたいジャックだったが、かなりの者が怯え竦んでいる。



練度が低いこともあるが、なにより目の前にあるのは、暴君・黒ひげの旗艦「クイーン・アンズ・リベンジ」。
その知名度が中途半端に海賊なならずものどもを縛った。




50 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/15(火) 00:06:45.80 ID:sE/Vv+Mi0



ジャック「昔の恋人に会いに来るのはいいが、今の嫁さんを大事にしろよ? アン女王が悲しむぞ」

バルボッサ「イギリスの女王なんぞ、俺様にとっちゃその辺の娼婦と同じよ」

ジャック「よう、イギリス海軍さんよ!」

バルボッサ「今は海賊だ!」

ジャック「イギリスに戻ればまた栄華な暮らしができるぞヘクター」

バルボッサ「ふざけろ。そんなもの、サメにでも食わせてしまえ。そんなものより、俺は海の男として、
      奴への復讐をとったのだ!」


ほんの少し前まで、バルボッサはイギリス海軍に服従し、私掠海賊となっていた。それは栄誉や金の為ではなく、
イギリス海軍の力を利用し、宿敵黒ひげを殺すためであった。不器用な男である。


バルボッサ「これは奴から奪った復讐完了の証。
      いわば今この船の名は『キャプテン・ヘクターズ・リベンジ』! ヘクター提督の復讐号だ!」



バルボッサは剣を抜く。剣先は折れていたが、刀身は通常の倍はある、
紅い宝石の付いたナックルガードが特徴の、重く鋭い剣だった。



51 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/15(火) 00:07:19.57 ID:sE/Vv+Mi0



ジャック「あそ。良い名前だ。……黒ひげへの復讐を済ませたことだし、ピッタリの名前だ、うん」


バルボッサ「そう。……だが! まだ足りん。まだ復讐する相手がいる」


バルボッサはおべっかを使ってきたジャックを一蹴する。





バルボッサ「お前だよ、ジャック。見事、俺を殺してくれた我が怨敵、ジャック・スパロウよ!!」




復讐号の装填が完了する。




ジャック「面舵いっぱぁーーい!!!!」


バルボッサ「撃ぅてぇええ!!!!」




52 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/15(火) 00:08:13.48 ID:sE/Vv+Mi0




フーチー号の周囲に鉄の砲弾が殺到する。ジャックの船員たちはその攻撃に目もくれず風に乗って離脱する。
見事、すんでのところで、アウトレンジから放たれた初手の攻撃をよけきって見せた。



バルボッサ「追えぇええ!! 絶対に逃がすなぁ!」


ジャック「絶対に捕まるなぁ! ゾンビにされたくなかったらな!!」



二人の名船長による苛烈な逃走劇。フーチー号は名船とはいいがたかったが、身軽なため、
バルボッサの駆る重装備の名船リベンジ号から辛くも逃げ続けていた。


が、徐々に、徐々にバルボッサの復讐号が差を詰める。船員の差があまりにも大きかった。




ギブス「船長! これじゃあ追いつかれちまうよ!!」


ジャック「わーってる! 良いから全速力で走れってんだ!!」




そして、復讐号がフーチー号の目と鼻の先に近づいたころ。状況が一変する。




53 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/15(火) 00:09:41.85 ID:sE/Vv+Mi0




全員が神経をとがらせて敵に集中していたからだろう。その異変に気付くのが遅れた。
鼻に水滴が当たり、ジャックが空を見上げる。深く暗い雨雲が覆っていた。先ほどまでの快晴が嘘のように。


突如、海が荒れ始めた。



ジャック「うぉっ!?」

ギブス「ぐえっ!」


突風にあおられ、フーチーの動きが止まる。復讐号も波に煽られ、フーチー号と接触してしまう。
当然、船は大きく揺れた。船員たちは動揺し始める。気づけば周りは嵐の只中の様に荒れていた。



ジャック「野郎ども! 剣をとれ! うちのアバズレを汚い男に触らせるな」



真っ先に動いたのはジャック。敵味方問わず、雨と高波で火薬が濡れてマトモに機能しない今、
必要なのは剣。そして先手を打つこと。



バルボッサ「船員を皆殺しにしろ! 船は奪って艦隊に加える! 極力傷つけるな!」



バルボッサも遅れて指示を出す。
黒ひげが作った屈強なゾンビ兵を先頭に、船員たちがフーチー号に殺到する。

だが先に陣地を構えたフーチー号の船員たちが徒党を組んでそれを阻む。
幸いにも、水夫としてのならず者らは素人同然だが、兵士としての腕前はなかなかのものだった。




バルボッサ「チィッ!」


業を煮やしたバルボッサは、味方の死体を盾に自らフーチー号に乗り込んだ。




54 : ◆JjxDNGokTU [saga]:2017/08/15(火) 00:10:46.47 ID:sE/Vv+Mi0


フーチーのならず者たち数名が、ひとり乗り込んできたバルボッサに駆け寄る。だが、力の差は歴然。
バルボッサならず者たちをたちどころに切り伏せると、辺りを見渡し、突き進む。赤いバンダナが目立つ、
ジャック・スパロウへと切りかかった。

直前、ジャックはバルボッサに気づき、何とか剣で受け止めた。


ジャック「不意打ちかよ! 卑怯者!」


バルボッサ「お前にそう呼ばれる筋合いはないっ!」



剣の重さを活かし、上段できりかかってくるバルボッサ。その懐に入りに逆手に取ろうとするジャック。
並みならぬ剣の腕を持つ二人は十数合ほど打ち合い、再び距離をとる。だがこの距離はジャックにとって
不利になるばかりだった。

バルボッサは途切れた呼吸のまま笑みを浮かべると、折れた剣先をジャックに向ける。
そして、つい、とタクトの様に振るう。するとフーチー号がきしんだ音を立て始めた。

不味いと思ったジャックはバルボッサに接近するが、船のロープが触手の様に唸りジャックを鞭打つ。



ジャック「っぐぁ!」


ジャックはその衝撃に剣を落としてしまう。
ボルボッサが黒ひげより奪った『トリトンの剣』によってバルボッサは、船のすべてを操ることができるのだ。


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