神崎蘭子「死蝿の魔 殺人事件」【堕天使探偵・第六幕】

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60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 22:40:46.34 ID:ABy7qIq50


2日目 昼 土井塔邸 1F 客間



深山「…」


新庄「何やってるんですか?」


深山「別に。ただのデッサン。腕鈍るから」


新庄「…」


深山「他に何か用事でも?」


新庄「そういえば、深山さんとは初めて直接お会いしたなぁ、と」


深山「まぁね、でも珍しいことじゃないでしょう」

深山「今日日、直接原稿をやり取りする人の方が少なくなってきてる時代だもの」

深山「ネット社会さまさまよ」


新庄「…」


深山「逆に、紙とペンを持つ習慣が抜けちゃって、端末が無い時は一苦労になっちゃったけど」


61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 22:43:04.11 ID:ABy7qIq50



2日目 昼 土井塔邸 寄宿舎 ゲストルーム(赤羽根)



美千香「深山…さん…!」


赤羽根「関係者との交流は最低限で、性別に矛盾も無い。年齢も近いしな」

赤羽根「彼女が千住ヱリの変装である可能性は…高いだろうな」


美千香「こうしちゃいられないの!」がばっ

美千香「はやく逮捕しなきゃ!ハニー!」


赤羽根「待て待て、まだ逮捕できる段階じゃないだろ」


美千香「なーんでー!?」

美千香「私とハニーのせっかくの大手柄なんだよっ!?」


赤羽根「犯人像が近いってだけで、まだ推測の域を出てない。状況証拠どころか彼女が口を滑らせたことだって無いんだ」


美千香「むー、証拠なんて捕まえたあとで吐かせるなりなんなりしちゃえばいいって思うな」

美千香「こんな風に拳銃もって、言わないと撃つぞー!って」


赤羽根「んな過激なことできるか」

赤羽根「百歩譲ってする気になったとしても、あの刑事が指揮権を握っている限り無理だ」

赤羽根「俺達は、あくまで理詰めで犯人を捕まえないといけないのさ」

赤羽根「それに拳銃で脅迫って銀行強盗じゃあるまいし…はっ!?」


美千香「ハニー?」



赤羽根(やべぇ…俺の拳銃まだ見つかってないわ…)

62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 22:45:51.98 ID:ABy7qIq50


2日目 夜 土井塔邸 1F 客間



赤羽根「…」そわそわ


美千香「ハニー?」

美千香「さっきからなんだか様子がおかしいの」


赤羽根「美千香は…その…屋敷の中で危ないものって見てないよな…」そわそわ


美千香「あぶないもの?」


赤羽根「じ…実はな」


美千香「?」


赤羽根「俺は今…サクラを探してるんだ…」


美千香「桜?」


赤羽根「そう…サクラっていうんだ…愛称がな…」


美千香「サクラちゃん?女の子なの?なんなのなの?」じとっ


赤羽根「だー違う!」

赤羽根「拳銃だ!俺の、け…拳…銃…!」


美千香「…」

美千香「拳銃なくしちゃったの?」


赤羽根「声がでかい!」ぎゅむむむ


美千香「むみゅみゅ」


赤羽根「も、もし万が一俺の拳銃が悪い奴に拾われて、誰かが撃たれてみろ…ほぼ確実に免職になっちまう…」

赤羽根「ここ、これは問題にならないうちに内々に処理しなければならないんだっ」


美千香「…」




黒瓜「問題ですね」

一色「問題ですなぁ」


赤羽根「!?」ドッキーン!!

63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 22:47:59.31 ID:ABy7qIq50



一色「…出ていくしかないでしょうな」


黒瓜「止むを得ませんね」


赤羽根「な、ななな何がでしょうか!?」


一色「赤羽根様、それが…」

一色「大人数の料理を朝昼晩と作ってきたので、もう備蓄した食材が底をつきそうなのです」


黒瓜「新しく調達しないと、明日以降の食事が用意できるかどうか…」


赤羽根(ああ…びっくりした、そういう問題か…)


美千香「どうするの?」


赤羽根「素直に警備をつけて買いに行ってもらうしかないだろうな」

赤羽根「流石に拒むってことは無いだろうし…」

64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 22:50:31.27 ID:ABy7qIq50


2日目 夜 土井塔邸 1F 客間



黒瓜「では、行ってまいります」ガチャ





赤羽根「…もう遅い時間ですけど、間に合いますかね」


一色「心配御無用です。少し遠いですが、遅くまでやっている業務用スーパーがございますので」


深山「いいのかしらね。ただでさえザルっぽい警備なのに買い物で一人減っちゃって」


新庄「あ、あまりそういうことを言わない方が…」


土井塔「…」





赤羽根(千住ヱリは、深山日向に成りすましている可能性が高い…)

赤羽根(ならば可能な限り目を離さないようにしなければ…)


美千香「ねぇハニー、拳銃って、目印とかある?」

美千香「ハニーが見張ってる間に、私もあちこち探してみるの」


赤羽根「あ?ああ、頼む…」

赤羽根「サクラってのは、形状がこんなんで、側面に紋章が…」ついつい





美千香「覚えたの!」

美千香「じゃあさっそくこのサロンから隅々まで探してみるね!」



赤羽根(ここはもう探し回った後なんだけどまあいいか)


ヴーッ、ヴーッ


赤羽根「っと」

赤羽根(ランから…じゃない?署からか…千住ヱリの新しい情報かな)


65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 22:55:17.85 ID:ABy7qIq50


美千香「むむむ…」きょろきょろ

美千香「よくよく考えたら、こんだけだだっぴろいお屋敷に真っ黒な金属物体が転がってたら、絶対だれか拾ってるの」

美千香「ハニーってば、あまり人目につかないところに落としちゃったのかなぁ…」



見習い「…」ぶるぶる


美千香「?」



見習い「…」ぶるぶる


美千香「見習いちゃん、大丈夫? 震えてるの…」


見習い「もう二人も…屋敷の人が…怖い…です…美千香さん…っ」きゅるるん


美千香「大丈夫なの!ハニーと私がついてるから!もう大船に乗ったって気持ちでいいと思うな!」ぽむ


見習い「ついてる…」じりじり


美千香「うん!」


見習い「ついてる…おおムネ…キモチ…いい…?」わきわき


美千香「うん?」







赤羽根「な…なんだって!?」







赤羽根「千住ヱリが…死体で発見された…!?」


一同「!?」


土井塔「な…!?」


美千香「へっ…?」


66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 23:00:04.68 ID:ABy7qIq50






千住ヱリの遺体は土井塔邸のある場所から 中山間の地域を挟んだ反対側

まったく別の地方の海沿いにて 身元不明の死体として海岸に打ち上げられていた

事件性を帯びた死体の状態から 付近の行方不明者の遺体であると当たりを付けた地元の県警が 地道にDNAを照合している最中

千住ヱリを捜索する他県警の人間が遠方より通りかかり 念の為を と行った遺伝子照合が的中したというのが発覚の経緯である


遺体の検死の結果 死亡時期は彼女の捜索願が出された時と同時期であった

つまり事件発生の約一か月前に 千住ヱリは何者かに殺されていたということになる





67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 23:04:16.84 ID:ABy7qIq50


2日目 深夜 土井塔邸 地下



土井塔(くそっ…)


土井塔(そんな馬鹿な…千住が死んでいただと…?)

土井塔(わからん…では一体誰が私を狙っている…)


土井塔「…」

土井塔「いや待て」


土井塔(死蝿の魔を世に出したのは二十数年前…ということは)

土井塔(確か、作品に使おうと思っていた資料がここに…)ガサガサ


土井塔「…」


土井塔(まさか住友の方、だったのか…!?)

土井塔(あの時…いや、あり得ることかもしれん…そういうことだったのか!!)

土井塔(ならば、犯人の狙いは…)







??「…」


バンッ!!


68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 23:13:10.93 ID:ABy7qIq50


3日目 早朝 土井塔邸 客間



TV『続いてのニュースです』

TV『K湾で発見された不明遺体の身元が、捜索願の出されていた作家の千住ヱリさんであることがわかりました』

TV『この遺体は二週間ほど前、H地方K湾沿いの国道を通行していた観光客の通報によって発見され…』



美千香「もうニュースになってる…」


深山「昨日の速報っぽい話から、意外に早く発表されたわね」


黒瓜「…」


一色「そう言えば私、打ち上げられた死体のニュースなんて見たことありませんでしたけど…」


深山「単に地方が違うからでしょ?」

深山「私少し前に、あそこの地方で仕事してたけど、不明死体の件は普通に報道してたわよ」


美千香「全国ニュースになるほどオオゴトになっちゃったんだ?」


深山「身元不明の死体ってだけなら、だいたいはその地方のニュースで収まると思うけど」

深山「その正体がある程度名の知れた作家で、さらに殺人事件に関わってる可能性まであった人間ってなったら、そりゃ全国放送になっちゃうんじゃない?」

深山「ま、記者様の裁量がどーなってるのか知ったこっちゃないけど、この案件ではそうなってるんでしょ」


美千香「ふんふん」




赤羽根(遺体は遥か遠方まで運ばれて処理されていた…)

赤羽根(ニュースによれば、遺体が漂着したあたりは肉食魚が多く、食い尽くされる前に打ち上げられたのは全くの偶然だったそうだ)

赤羽根(やはりこの事件の真犯人は、千住ヱリに疑いを向け続けるつもりで計画していたことになる)



赤羽根(犯人の行動も…これから変わってくるんだろうか…?)


69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 23:17:43.64 ID:ABy7qIq50



3日目 朝 土井塔邸 1F 書斎



美千香「…あふぅ」


美千香「ここにもいない…もぉ、ハニーってばどこいっちゃったの…?」きょろきょろ


美千香「大事なパートナーをほっぽっちゃって…」















美千香「あれ?」


美千香「ココいつも閉まってたのに、開けっ放しになってる…」


美千香「この先って…地下室だっけ?ハニー、この中にいるのかな?」




70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 23:20:22.12 ID:ABy7qIq50


3日目 朝 土井塔邸 2F 廊下






美千香「ハニー!」たたたっ



赤羽根「美千香?どうした、そんな慌てて…おっと」


ぼふっ


美千香「…」ぶるぶる


赤羽根(震えてる…?)

赤羽根「美千香?」


美千香「これ…見つけたの」


赤羽根「!?」


チャッ


赤羽根「俺の拳銃じゃないか!…ど、何処にあったんだ!?」


美千香「それは…あ、あのね、ハニー、とにかく大変なの…!」






新庄「赤羽根さん!!」ダッ


美千香「っ」ビクッ


赤羽根「新庄さん?」




新庄「大変です!土井塔さんが…!!」


71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 23:24:08.22 ID:ABy7qIq50


3日目 朝 土井塔邸 地下



土井塔「」
















赤羽根「土井塔さん…」


横暴刑事「胸部を狙って一発…先の二件と同口径の銃弾だな」

横暴刑事「心臓を撃ったにしては狙いが甘い。肋骨で弾道も曲がって即死は免れたようだが、それでも持って数分だっただろう」

横暴刑事「土井塔はその数分をどう使ったか?…これを見ろ」


横暴刑事「絨毯に血文字で何か書いた跡がある。肝心の部分は切り取られているがな」

横暴刑事「殺される直前に土井塔克は犯人の顔を見た。そしてそいつの名前を書き記そうとしたんだろう」


赤羽根「…」


横暴刑事「そしてもう一つ」

横暴刑事「犯人が厳重な警備を掻い潜って屋敷に侵入できたカラクリがこれだ」ガコッ


赤羽根「!?」


ヒュオオオ…

72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 23:25:40.10 ID:ABy7qIq50


3日目 08:39時点



 A 赤羽根刑事

 B ラン

 C 土井塔 克(どいとう まさる)(推理作家)←DEAD

 D 土井塔 樹(どいとう たつき)(その妻)←DEAD

 E 都津根 毬子(とつね まりこ)(その娘・既婚)←DEAD

 F 新庄 功志(しんじょう こうじ)(担当編集)

 G 深山 日向(みやま ひなた)(挿絵画家)

 H 黒瓜 一(くろうり はじめ)(使用人A)

 I 一色 理(いっしき おさむ)(使用人B)

 J 千住 ヱリ(ちすみ えり)←DEAD

 K 菊原 美千香(きくはら みちか)

 L 使用人見習い(使用人Bの娘)


73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 23:27:29.37 ID:ABy7qIq50


赤羽根「隠し扉!?…何処に通じているんだ…?」


横暴刑事「部下に確認させたところ、敷地の外に通じていた。この燭台がレバーになっている」

横暴刑事「奥の扉に付いている南京錠が壊されているだろう。ココが侵入に使われていた証拠だ」

横暴刑事「だが、どのみちこの避難用の仕掛けを動かすのは内側からでないと不可能。手引きした人間は確実にいる」


赤羽根「なんで土井塔はこの通路の事を黙っていたんだ…」


横暴刑事「さぁな。ここは資料室のようだが、契約書類の類も混ざっている」

横暴刑事「墓まで持っていく秘密がまだまだあったということかもしれんし」

横暴刑事「単純に通路の存在は自分しか知らないのだと たかを括っていたのかもしれん」

横暴刑事「どちらにせよ、その結果がこれとは迷惑な話だ。こんなことでは我々の警備網などまるで意味を成さんではないか」


赤羽根「…」


コツ…


美千香「は、ハニー…あのね…」


赤羽根「美千香、ここは危ないから客間に戻ってい…」


横暴刑事「拘束しろ!!」


美千香「!?」

赤羽根「!?」

74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 23:30:21.00 ID:ABy7qIq50


3日目 朝 土井塔邸 地下



美千香「きゃあっ!!」


赤羽根「何をするんだ!?美千香を放せっ!!」


横暴刑事「何って、重要参考人として事情聴取をするのだよ」


赤羽根「な…」


横暴刑事「貴様に遺体発見の経緯を教えてやろう。第一発見者は一色理」

横暴刑事「十数分前、土井塔克を探していた一色理が、書斎の方から何かを持ち出していく菊原美千香を目撃した」


赤羽根「!?」


横暴刑事「一色理は菊原美千香に声をかけたが、彼女は何も答えずサロンの方へ消えたらしい」

横暴刑事「それを見て不審には思ったものの、土井塔の件を優先した一色理は書斎に入り、そこで開け放たれた地下室の扉を見て、この惨状に出くわしたのだ」


赤羽根「ほ…本当なのか…?」


美千香「…」


横暴刑事「菊原美千香は実行犯と通じる内通者として、犯人を手引きした可能性がある」

横暴刑事「あるいは、この土井塔克殺しに関しては、彼女が実行犯であるとも考えられる」


美千香「ち、違うの!私は犯人なんて全然知らない!!」


横暴刑事「ならば全ての犯行は自分がやったと?」


赤羽根「おい、いい加減にしろ!」


美千香「…」


横暴刑事「では教えて貰おうか。何故第一発見者としての義務を放棄し、土井塔の死を一色に話さなかった?なぜ黙った?」

横暴刑事「そして、貴様は現場から何を持ち去った?」



美千香「…」


美千香「ハニーが…疑われると思った…」


75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 23:33:51.26 ID:ABy7qIq50


赤羽根「え…?」


美千香「なかに入ったのは、本当に偶然なの…私、ハニーを探してて…」

美千香「あそこの扉が開けっ放しになってたから…不思議だなって思って…」

美千香「そしたら、なかで土井塔さんが倒れてて…」


横暴刑事「…」


美千香「すぐに誰かを呼ぼうと思ったの!本当だよ!?」

美千香「でも、地下にハニーの拳銃が落ちてて…わかんなくなっちゃって…!!」


赤羽根「なに…っ!?」


美千香「このままじゃハニーが疑われると思ったの!だから…!!」


横暴刑事「いいや違うな。本当は絨毯の切れ端を持ち去ったのだろう?証拠を隠滅するために」

横暴刑事「もっともらしい理由をでっち上げてはいるが、それを示す証拠は何もない。信用できんな」


赤羽根「待て!美千香の話は本当なんだ!ついさっき俺は…」


横暴刑事「凶器の拳銃とS&W(サクラ)とでは弾丸の口径が違う!持ち去る理由にはならん!」


赤羽根「そんなことパニクった頭で判断できるわけないだろ!」


横暴刑事「…わからんやつだな」

横暴刑事「そもそも、いち刑事が親しい間柄の人間が絡む事件の捜査に関わってること自体問題なんだ」

横暴刑事「貴様は本来この件から外されて然るべきなんだぞ!!」


赤羽根「ぐ…」


横暴刑事「おまけに、この女には犯行を行う動機がある」


美千香「っ!?」


赤羽根「なっ!?」

76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 23:36:39.57 ID:ABy7qIq50


横暴刑事「先日の式典の参加者名簿を見た時、奇妙だとは思っていた」

横暴刑事「何故主演女優を差し置いて準主役のこの女が出席していたのか」


美千香「…」


横暴刑事「初めの段階では、この女が主役を務めることになっていたからだ」

横暴刑事「そうだろう?」


赤羽根「!?」


横暴刑事「しかし、原作者である土井塔克の鶴の一声でキャスティングが変更になってしまったそうだな」

横暴刑事「曰く『彼女は探偵役であるベテラン刑事のパートナーとして相応しくない』と」


美千香「…」



「ランがこうなっちゃったからには、この事件はミ…私がハニーをサポートするしか無いって思うな!」

「もぉーっ、事件の捜査中に、パートナーと離れちゃダメなのー!」

「ハニーの相棒は私なの!私とハニーで解決するの!」

「そんなにランじゃなきゃダメなの!?」

「私が相棒じゃだめなの…?」



赤羽根(もしかして、やたらと俺の隣に拘っていたのって…)


77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 23:42:03.04 ID:ABy7qIq50


横暴刑事「殺人の動機にはちと弱いが、実行犯に協力する理由には十二分だと私は考える」

横暴刑事「続きは取調室でゆっくりと聞こう」


ジャリッ カチリ


赤羽根「!?」

美千香「!?」


赤羽根「手錠まで…おい冗談だろ…!?」


横暴刑事「わざわざ犯行予告をしてまで我々に挑戦してきた殺人鬼を相手に…」

横暴刑事「三度も殺人を許した挙句シッポのひとつも掴めませんでしたじゃ示しがつかない」

横暴刑事「潮時なんだよ。そろそろ我々のメンツを維持する方向で辻褄の合うシナリオを用意しておかなければならん」


赤羽根「…!」


美千香「こ、この人…何を言ってるの…?」


赤羽根「このまま捜査が難航すれば、警察の信用問題に関わる…つまり、国民が警察の力を信じて貰えなくなるかもしれない…」

赤羽根「だから警察はそうなる前に『それらしい』人間を容疑者として捕まえて、大手柄を立てたっていう既成事実を作ることがある」

赤羽根「最悪、そいつが犯人であるという証拠をでっち上げればすぐに事件の収束を図ることができるからだ」


美千香「っ!?」


赤羽根「ふざけんな!誰がそんな事許すか!」


横暴刑事「言っただろう。貴様がいくら喚こうとも、こちらの方針は変わらん」

横暴刑事「それに、これは上に判断を仰いだ結果だ。著名な作家が殺され、事態が大事になりすぎた」

横暴刑事「全てにおいて結果が優先されつつあるのだよ」


赤羽根「くそ…っ」





美千香「…だ」

美千香「大丈夫…大丈夫なの!ハニー!」


赤羽根「…」


美千香「心配いらないよ!だって私、ほんとに無実なんだもん」

78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 23:47:21.05 ID:ABy7qIq50



赤羽根「だけど、美千香…」


美千香「…いいの」

美千香「たぶんね、こうなったのは…私にバチがあたっちゃったからなんんだと思うの」


赤羽根「バチ…?」


美千香「凶器の事とか、ランの事じゃなくて、もっと前から、してなかったから、こんなことになっちゃったんだと思うな」

美千香「私ね、ハニーに言おう言おうって思ってて、いつも言えなかった言葉があるんだ」


赤羽根「美千香…?」


美千香「私が仕事に行くとき、ハニーはいつも言ってくれてた…でも、ハニーが仕事に行く時は、私は結局言わないままだった」

美千香「急に事件が舞い込んできた時なんて毎回そう。何で二人の時間を邪魔するのって、ハニーのケータイ折っちゃいたくなったり」

美千香「式典の時だって、土井塔さんにヤな事言われて、ランにハニーのこと取られちゃうってヤキモチ焼いてばっかりで」

美千香「『一緒じゃなきゃ嫌』とか、『置いて行かないで』とか、『大っ嫌い』とか、そんな言葉で、ずっとハニーを困らせてた…」


赤羽根「…」


美千香「ほんとに言わなきゃいけない言葉、分かってたはずなのに」

美千香「足を引っ張ってばかりで…こうなっちゃった…」


赤羽根「美千香…」


美千香「だからこれは、当然の罰」

美千香「こんなにばかで、意気地無しな私への…」

美千香「相棒じゃなく、恋人として…みんなを助けに行くハニーに…『いってらっしゃい』って言えなかった私への、罰なの」






美千香「だからね?…ハニー、いいの」


美千香「私…行ってくるね」







79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 23:49:32.76 ID:ABy7qIq50



赤羽根「いいわけねぇだろ…」


赤羽根「美千香、待ってろ…事件を企てた真犯人の正体は…」


赤羽根「一分一秒でも早く、絶対に暴いてみせる…!!」










赤羽根「堕天使ランの、父親の名にかけて…!!」



80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/19(土) 23:54:18.40 ID:ABy7qIq50


3日目 昼 通話



ラン『成程。もし咎を持つ猟犬が大地の杖を手にしていたならば…(確かに、犯人がその地下の抜け道をつかって侵入していたのだとしたら)』

ラン『たとえ己のカリカチュアを開放してでも蛇を挫く素振り位は見せるが真理(土井塔克がそれに対して何の対応もしていないのは変ですね)』


赤羽根『そうなんだ。都津根毬子殺しの後に土井塔さんは地下の資料室に行っている』

赤羽根『今にして思えば、隠し扉を使われていないかどうかを確認しに行ったんだと思う』

赤羽根『そのとき通路の南京錠が壊れているのを見かけたなら、さすがにその時点で俺達に話すだろ』


赤羽根『…それに、あの真っ黒刑事は あくまで真犯人も怨恨による殺人だと考えてるみたいだが』

赤羽根『俺にはどうしてもそうは思えないんだ』


ラン『…』


赤羽根『そもそも土井塔克を苦しませるために妻と娘を殺害したってところに違和感がある』

赤羽根『式典で見かけた土井塔夫妻の仲はそれほど良くなかったし』

赤羽根『都津根毬子に至っては寝首を掻かれないかと警戒している節すらあった』

赤羽根『犯人が本当に土井塔克を苦しめるつもりだったら、もっと別の方法を考えたはずだ』


ラン『…』


赤羽根『…』


ラン『…時に、我が理の波紋は確と拡がったか(赤羽根さん、あのことって聞いて貰えましたか?)』


赤羽根『あのこと?…ああ、香水のことか』

赤羽根『確かにお前の言った通り、土井塔樹(夫人)は事件の二週間ほど前に香水のブランドを変えていた』

赤羽根『けど、なんでそんな細かいことがお前に分かったんだ…?』


ラン『…ふむ、やはりか』


赤羽根『…?』

81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 00:00:30.20 ID:utI0irZA0


ラン『私は虚贄を噛まされていたいたようね…危うくテレプシコラの虜になるところ…(これでハッキリしました。犯人は複数ではなく単独です)』

ラン『咎人は何重にも張り巡らせた偽りのクオリアを纏っている…これは私でも骨が折れるわ(決して手口を悟られないよう巧妙に偽装を施しながら、土井塔家を皆殺しにしたんです)』


赤羽根『…』


ラン『歪を見極めよ、我が相棒よ(考えてください。きっと犯人は、なにか手がかりを残しているはずですよ)』


赤羽根『結局はそこなんだよなぁ…幾ら犯人が内部にいるってことが分かっても、犯人の正体が全然絞れてこないんだ』

赤羽根『動機が分からないってことと、三つの殺人とも、関係者全員にチャンスがあるってことが、逆に事件を分からなくしている』

赤羽根『犯人は自分を特定できそうな証拠を全く現場に遺していない…まるで通り魔みたいに出会い頭に殺して去っていく』

赤羽根『俺が見落としているだけって言われたら、そうなのかもしれないけどさぁ…』


ラン『…』



赤羽根『唯一の手掛かりだったダイイングメッセージも、犯人に消されちまったし…』



ラン『終焉<オワリ>の鐘…?(ダイイングメッセージ?)』


赤羽根『ああ、土井塔克殺しの時だけ、犯人は頭部ではなく胸の辺りを狙っているんだが…』

赤羽根『そのおかげで運よく即死を免れた土井塔克は、絨毯に血でメッセージを遺していたんだ』

赤羽根『だけど、俺達が来た時にはその部分は犯人によって切り取られてしまっていてな…結局内容は分からず仕舞いだ』


ラン『む?滅却されたということか?(切り取られていた…?)』

ラン『やけに恐れるな。絶命の声はそれ以上の聲で以て容易く潰せる筈なのに(そんなことしなくても、血の付いた指を取ってそのまま塗り潰せば簡単に読めなくできるのに)』

ラン『咎人には…何かが見えていたというのか…?(なんで犯人はわざわざ絨毯を切り取る必要があったんですか?)』


赤羽根『そう言われてみると確かに…』



赤羽根『…』

赤羽根『まさか!!』




ラン『むむ?我が相棒よ、何か手応えが…(赤羽根さん?どうしたんですか? …赤羽根さん?)』




プツッ


ラン『えっ』

82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 00:04:53.93 ID:utI0irZA0


3日目 昼 土井塔邸 離れ



赤羽根「やっぱりだ…!」

赤羽根「現場の血痕…絨毯の切り口に沿って綺麗に止まっている。床に染み出していない」

赤羽根「犯人がダイイングメッセージを消そうと思った時には、既に血が凝固していたんだ」

赤羽根「だから塗り潰すことも洗い流すこともできず、切り取るしかなかった」



赤羽根「こんな特異な状況に陥るような屋敷の中の人間…それはおそらく、あの人しかあり得ない」

赤羽根「だとすると、ここに何が書かれていたかも予想がつく」

赤羽根「…土井塔克だけ胸を撃ったのはそのためか」



赤羽根「犯人の正体を掴んだぞ…!」

赤羽根「しかし、なぜあの人が土井塔家を…?それに、見立て殺人をした真意もまだわからない…」

赤羽根「そもそも土井塔克が作家としてデビューした当時、あの人は…」


赤羽根「…?」


赤羽根「妻、次に娘、そして夫…」

赤羽根「この殺害順序…」


83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 00:07:56.23 ID:utI0irZA0




ピッ


赤羽根「…よし」


赤羽根「これで奴の調査結果が俺の推理通りだったとしたら」


赤羽根「全ての辻褄が合う…!」







赤羽根「謎は全て解けた…!」


84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 00:24:36.46 ID:utI0irZA0


3日目 夕方 土井塔邸



赤羽根「よし、全員集まったな」



深山「…」


新庄「…」


黒瓜「…」


一色「…」


美千香「…ハニー?」


横暴刑事「こんな場所に容疑者を集めて一体何をしようというのだ」

横暴刑事「まさか時代錯誤の探偵よろしく推理ショーでも披露するつもりか?」


赤羽根「まさしくその通りだ」

赤羽根「皆さん…今から俺は、これまでに起こった殺人事件の真犯人の正体を暴こうと思う」



一同「!?」



横暴刑事「真犯人だと?」


赤羽根「この事件は外部犯でもなければ複数犯でもない」

赤羽根「ある一人の人間の手によって巧妙に計画された連続殺人だ」


横暴刑事「フン、身内を犯人にしたくないからと、恨みを持ってるような都合のいい生贄でも新しく見付かったのか?」


赤羽根「犯人の目的は怨恨じゃない」

赤羽根「むしろ、動機は怨恨であると思い込ませておくこと自体が犯人の目的のひとつなんだ」


美千香「どういうこと?ハニー」

85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 00:28:12.51 ID:utI0irZA0


赤羽根「真犯人にとって三人の死は通過点に過ぎないんだ。奴にはまだ仕上げが残っている」

赤羽根「だから、いざ仕上げをしようって時、極力自分が疑われないために、警察には架空の犯人をいつまでも追わせ続ける必要があった」

赤羽根「その為に真犯人が利用したのが、千住ヱリと『死蝿の魔』にまつわる因縁だ」


横暴刑事「仕上げ、だと?」


赤羽根「そのあたりは後で話すよ。まずは順を追って犯人のとった行動を紐解いていこう」

赤羽根「第一の殺人。ガラスカッターとドアチェーンの細工で、外部犯に見せかけて土井塔樹を殺害した事件」

赤羽根「ここで真犯人は、外部犯の印象を植え付けて自分を容疑者候補から外し…」

赤羽根「同時に手口を『死蝿の魔』に見立てることで、次に狙われる人間も土井塔家の身内であると印象付けた」

赤羽根「目論見は成功し、次のターゲットである都津根毬子が遠方からこの屋敷に呼ばれることになった」

赤羽根「ここが犯人の狩場だとは夢にも思わずにな」


黒瓜「…」

一色「…」


赤羽根「第二の殺人。屋敷の中の人間が寝静まった時を見計らい、都津根毬子を殺害」

赤羽根「途中俺と遭遇する計算外もあったが、それでも難なく犯人は追跡を逃れ、犯人の計画は着実に成功しつつあった」

赤羽根「だが第三の殺人で…ついに犯人にとって致命的なアクシデントが起きたんだ」


86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 00:31:58.49 ID:utI0irZA0


深山「致命的な…アクシデント…?」


赤羽根「犯人はあろうことか…自分が犯人であるという証拠を現場に残してしまったんだ」


横暴刑事「ダイイングメッセージのことを言っているのか?」

横暴刑事「だがあれは犯人によって消されている。とても誰の犯行かを特定できるものでは…」


赤羽根「消したって意味がなかったんだよ」


一同「…?」


赤羽根「いや、消しきれていなかったといった方が正しいか…犯人も焦りまくっていたんだろう」

赤羽根「それまで完璧だった計画が一瞬で破綻してしまいかねないミスをしたんだ」

赤羽根「しかも犯人は、関係者全員が起きている『今朝』のタイミングで、証拠を消しに戻る羽目になった」

赤羽根「隠ぺいする暇なんて殆ど無く、もしかしたら地下の扉を出入りする時に丁度美千香書斎に入った…なんてリスクもあっただろう」

赤羽根「でも、犯人は一刻も早く消しに行かなければならなかった…」


横暴刑事「何を言っている…?何故そう言い切れる?」


赤羽根「メッセージの消し方だよ」

赤羽根「あのメッセージは絨毯に血液を染み込ませて書かれていたものだ」

赤羽根「だが書かれて間もないメッセージだったら、洗い流すなり同じように血で塗り潰すなりして簡単に消せたはずだ」

赤羽根「しかし、犯人がメッセージを消そうと戻ったときには、もう血は乾ききっていたんだ」

赤羽根「だから犯人は、絨毯ごと切り取るしかなかった」


横暴刑事「待ちたまえ、そうだとしても意味が分からん」

横暴刑事「犯人が後になってダイイングメッセージを消しに戻るなんて馬鹿な話があるか」

横暴刑事「現場を離れる時に見落としていたものを後々消しに戻れるわけがないだろう」

横暴刑事「犯人がダイイングメッセージを消すタイミングは殺害直後。それしかあり得んのだぞ」


赤羽根「いいや、殺害直後の犯人は、メッセージの存在を知っててそのままにしていたんだ」

赤羽根「当たり前だ。あれは犯人が書いたものなんだからな」


一同「!?」

87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 00:38:16.27 ID:utI0irZA0


赤羽根「犯人が現場に残したダメ押しの仕掛け…それがあのメッセージだ」

赤羽根「だから前の二人と違い、土井塔克はあえて即死させないように胸を撃った。あくまで彼が書いたと思い込ませるために」


横暴刑事「…待て待て待て」

横暴刑事「百歩譲ってあれを書いたのが犯人だとしよう。だが消したのも犯人だろ」

横暴刑事「なんでまたそんな無意味なことをする?」


赤羽根「状況が変わったからだ」

赤羽根「土井塔克を殺した時、犯人は罪を着せるつもりだった人間のアリバイが完璧であることを知らなかった」

赤羽根「そして犯人がそれを知ったのが今朝なんだ。丁度みんなで集まって客間のTVを見ていた時だよ」


横暴刑事「はぁ?」


美千香「…ねぇハニー」

美千香「なんでメッセージを消しに戻ったのが、そのときだってわかるの?」


赤羽根「実はな…犯人は あの時初めて千住ヱリの遺体が発見されたことを知ったんだ」


美千香「え…?」


赤羽根「犯人はその時になってようやく、自分が致命的なミスをしていることに気付いた」

赤羽根「そりゃ焦るよな。周りの人間は皆、既にそのことを刑事から聞いているって反応だ」

赤羽根「にもかかわらず、昨夜自分は滑稽にも千住ヱリの仕業にする気満々で土井塔を射殺し、工作していたんだからな」


横暴刑事「…」


赤羽根「それもそのはず。昨夜、俺が千住ヱリの件を署から聞いて驚いた時、犯人はあの場にいなかったんだ」


美千香「そ、それって…」


赤羽根「このまま土井塔克の遺体が発見され、刑事が『千住ヱリ』と書かれたメッセージを見たらどうなるか」

赤羽根「メッセージは犯人による工作だと直ぐにバレ、疑いは犯行時刻『千住の遺体発見の事実』を知らなかった人間に向けられるだろ」

赤羽根「該当する人間は一人しかいない。だから犯人は、メッセージを処分するしかなかった」


一同「!!」


赤羽根「そうだろ、死蝿の魔…いや…」


赤羽根「黒瓜一!」







黒瓜「…」


88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 00:41:39.68 ID:utI0irZA0



美千香「黒瓜さんがっ!?」


一色「ど…どうして…!?」


赤羽根「これを見てくれ」ピラッ

赤羽根「…署に頼んで、死蝿の魔のもう一人の著者『住友昼花』のことを詳しく調べさせて貰ったよ」

赤羽根「土井塔克との関係は、死蝿の魔が世に出た後、程無くしてぷっつりと切れたんだが…」

赤羽根「そのとき住友昼花は、自分のお腹に子を宿していることを土井塔に打ち明けていなかったんだ」


一同「!?」


赤羽根「彼女はその後黒瓜という男と結婚し、生まれてきた『娘』を一と名付けた」

赤羽根「それが君だ。黒瓜一」


新庄「そんな…」


深山「黒瓜さんが…土井塔の娘!?」


黒瓜「…」


横暴刑事「…そういうことか」

横暴刑事「土井塔克を殺す前に妻と子を殺した理由は…相続権!!」


赤羽根「そうだ。戸籍上君は住友と黒瓜の子だが、実は土井塔克と血縁関係にある」

赤羽根「つまり、これから国庫に回されようとしている土井塔家の遺産を相続する権利を持てるんだ」

赤羽根「偽の犯人を用意したのも、怨恨説を強調したのも、君が思いがけぬ幸運を拾った無実の人間を装う狙いだったんだよ!」




黒瓜「…」




赤羽根(決まった…いつものらんらんパターンに入ったぜ…)

赤羽根(あとは犯人の演説を聞きつつ、ひと暴れされないように身構えて…)





黒瓜「…言いたいことは、それだけですか」





赤羽根「…」

赤羽根「えっ」



89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 00:46:21.16 ID:utI0irZA0


黒瓜「確かに私と土井塔克との間に血縁関係はあります…」

黒瓜「ですがそれは、ただ単に疑われたくなかったから言わなかっただけです」

黒瓜「お嬢様(都津根毬子)と旦那様(土井塔克)の確執を考えれば、言えない事情くらいお判りでしょう?」


赤羽根「」


黒瓜「それに、例のダイイングメッセージは状況証拠でしかありませんよね」

黒瓜「書かれていた名前が千住ヱリだと言い切れる根拠もありません」


赤羽根「」


黒瓜「だいいち、貴方は根本的なところを見落としています」




黒瓜「私は凶器を持っていません」ひらひら




黒瓜「外部の人間ならばともかく、他の人間や一色さんにもバレずに屋敷の中に隠すなんてことも不可能です」

黒瓜「屋敷の外は警察のかたが四六時中見回っていますし…」



黒瓜「そんな状況の中、私がどうやって拳銃を入手し、彼らを撃てると?」



赤羽根「そ、それは…だな…」




















??「往生際が悪いぞ、死蝿の魔(残念ですが…)」



ラン「貴様の幻術は既に我が手中に在りッ!!(その謎は既に解けていますっ!!)」バーン!!

90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 00:48:31.32 ID:utI0irZA0


赤羽根「ラン!?」


一同「!!!」


横暴刑事「貴様…?」















ラン「フッフッフ…しんがりはこの堕天使に任せるがいい、我が相棒よ!(大丈夫…あとは私が引き受けますよ、赤羽根さん)」


赤羽根「お前…駆けつけてくれていたのか…!!」

91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 00:51:16.18 ID:utI0irZA0


コツ、コツ、コツ


ラン「確かに、貴様のウルス・マグナは完全体となろうとしていた(今回の連続殺人を計画した貴女にとって、拳銃の隠し方はまさに完璧でした)」

ラン「でも、クロウソの紡ぐ糸は奇なる因果の歯車に絡み、爪痕を遺してしまったの(しかし、都津根毬子を殺害したあの夜、貴女は予想外の出来事に遭遇したことで、重大な手がかりを残してしまった)」


横暴刑事「予想外の事故だと…?」


ラン「それは、月下の地にて顕現せし我が相棒との邂逅…(廊下でばったり、赤羽根さんと出くわしたことです)」

ラン「暴食の外套纏いしフェンリルは、白金に輝く牙を以て外敵を竦ませる(死蝿の魔に扮装していた貴女は、とっさにナイフを抜いて赤羽根さんを襲いました)」

ラン「だが、今まさに刑罰の代行者の喉元を衝かんとする刹那…(しかし刃は彼の腕をかすめ、寸前で殺すことは出来ず…)」

ラン「アマデウスたる我が相棒の因果に阻まれ、咎人は潔く闇に溶けるしか無かった…(騒ぎに気付いた外の警官の足音を聞き、口封じを諦めて逃走しました)」


赤羽根「…」


ラン「さて、業に染まるクロウソの糸。そこに生まれた解れが二つ(この行動には、二つほど不可解な点があるんです)」

ラン「一方は、射殺す淫婦と切り裂く猟犬に違わず存在する殺意という名のパラドクス(一つ、貴女は直前に都津根毬子を銃撃しているにもかかわらず、何故ナイフで襲ってきたのか)」

ラン「一方は、猟犬を射貫く術を使わぬ無謀という名のパラドクス(一つ、そもそも何故ナイフで赤羽根さんを殺そうと踏み切ったのか)」


美千香「どーゆーコト?」


ラン「棺の煉獄にて鉄が嘶いた夜、猟犬共は呼応し雄叫びを上げた。それは彼のフェンリルの耳にも届いたはず(第一の殺人に拳銃が使われている以上、警備に携わる警官全員に実弾が支給されていると貴女も分かっていました)」

ラン「加えて月下の邂逅の夜、彼の者の眼は猟犬の躰を遷ろう事無く焼いたはず(そしてあの時、廊下は月明かりが差していて、出くわした相手を警官ではないと見間違うことはあり得ません)」

ラン「ならば双弩とも砲火の疾さを競うが道理。牙を噛み鳴らすなど愚の骨頂!(お互い銃を構える猶予が十分あった。にも関わらず、撃たれるリスクを鑑みず、貴女はわざわざ赤羽根さんに近づいていったんです)」


横暴刑事「…というか君は何で銃を構えなかったんだ?」


赤羽根「う…そ、それは…」だらだら


ラン「咎人は、威嚇すら叶わぬ羊を狩る眼で猟犬を見ていたのよ(貴女には、赤羽根さんが銃を持っていない確信があったんです)」

ラン「己の牙のみで命を摘むことが出来るのか、それのみを考えながら…(しかし、貴女は貴女で赤羽根さんを拳銃で撃てない事情があった)」


美千香「撃てない事情?」


ラン「暗器は既に…闇に飲まれていたッ!(貴女は都津根毬子を銃殺した後すぐに、拳銃を手放していたからです)」

ラン「故に彼の咎人は、白金の牙を舞わせるしかなかったのだ!(だから、赤羽根さんを銃で撃ちたくても、撃てなかった)」


一同「!?」


横暴刑事「手放しただと…?いったい何処にだ?」


ラン「黒鉄は憐れなる生贄の臥すフェネストラに(現場の…都津根毬子の寝室の窓からです)」


赤羽根「い、いやしかし…あのときお前に言われて窓の外を見たが、なにも無かったんだぞ?」

赤羽根「それにだ、そもそもなんで彼女には俺が丸腰だってことがわかったんだ…?」


ラン「全てを握る鍵は…漆黒なる鎌獣が握っているッ!(その答えは…この子が握っていますよ)」






ばうっ!!

92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 00:57:33.24 ID:utI0irZA0



黒瓜「!?」


横暴刑事「い、犬だとッ!?」


ラン「ようし誉めて遣わすぞ、漆黒なる鎌獣よ(持ってきてくれたね、えらいえらい)」なでなで


ばうっ!


ジャカッ


赤羽根「そ、それは…!!」


横暴刑事「犯行に使われた拳銃なのか…!?」


黒瓜「…」


ラン「フッ、眷族が我が手中に落ちていることがそんなに解せぬか(ふふ、なぜ初対面の私に懐いているのか信じられないって顔をしていますが)」

ラン「この世の万物は三位一体の意志に抗えぬ。我が言葉こそ彼の言葉なのよ(人も犬も神の創造物…意思疎通するくらい、私にはお手の物なんですよ)」なでなで


ばうっ


赤羽根「拳銃はいったい何処にあったんだ!?」


ラン「暗器の鉄は、漆黒なる鎌獣の住処に(犬小屋の中にありました)」


横暴刑事「犬…小屋…!?」


ラン「だが真実を紡いだのは私ではなく、我が相棒とステラの偶像よ(気付くきっかけをくれたのは、赤羽根さんと美千香さんです)」


美千香「わっ、私?」


ラン「惨劇より前、富める婦女は黒鎌の凶器に苛まれていたそうだが(土井塔樹(夫人)さんは、事件前に犬のイタズラに手を焼いていたみたいですが)」

ラン「事の始まりは半月を蝕むアステリズムの輝きであったという(彼女への粗相が始まったのは、香水のブランドを変えた二週間前からだったという話でした)」

ラン「私は黒鎌を狂わす月の光と、手から零れる桜の影を重ね…(その事実と赤羽根さんの拳銃の紛失に因果関係があるんじゃないかと思った時)」

ラン「二つの事象はストレガの瘴気を漂わせたものという仮説を生み出した(私は、赤羽根さんが美千香さんに香水をかけられていたことを思い出しましたんです)」


黒瓜「…」

93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 00:59:34.71 ID:utI0irZA0


ラン「漆黒なる鎌獣は魔女の媚香に操られてはいまいか…(もしかしてこの犬は、樹さんではなく、香水の匂いに反応していたんじゃないか…?)」

ラン「我が頭脳はついに、館を覆う瘴気から真実を嗅ぎ分けたのよ(私はそこからトリックと犯人を逆算しました)」


ラン「即ち、黒鎌の僕に魔女の瘴気を封じ込める制約がそれだ(貴女は以前から、特定の香水の付いたものを犬小屋に隠させるように彼を訓練していたんです)」

ラン「闇に溶け込むものを探せど、闇それ自体を疑う者はいない…それが幻術を完全なものとする…!(人間の捜査は完璧でも、動物までは目がいかなかった…それが貴女の狙いだったんです)」


赤羽根「初めに土井塔樹(夫人)をターゲットにしたのは、都津根毬子を屋敷におびき寄せる以外にも」

赤羽根「土井塔樹の存在で凶器隠しのトリックが狂ったり、露呈することを防ぐ意味もあったってことか」


ラン「月下の邂逅にて我が相棒を引き裂く白金の真意、それは…(都津根毬子の殺害後、貴女が赤羽根さんに口封じを試みたのは…)」

ラン「鎌獣の住処に、奇妙な黒鉄を見咎めた処に在る(犬小屋から凶器を持ち出すときに、見知らぬ拳銃が中に入っていたから、ですよね)」

ラン「ロゼオを求め彷徨う猟犬が、もしや暗器を嗅ぎ付けはしまいか…しかし魔女に切れる手札は少なく(拳銃を探し回る赤羽根さんが、万が一トリックに気付いてしまえば計画が台無しになる。貴女はその銃の扱いに困った)」

ラン「素直に咬ませるか?餌とするか?何方にせよ噛まれる危険は零でなく、それを恐れるが故の魔女の媚香(本人に渡そうと屋敷の中に捨てようと、どのみち不審がられてしまう。かといって外に捨てれば犬がまた拾いに来てしまう)」

ラン「猟犬それを滅すか、煉獄に飲ませるか…苦肉の策であったな(結果、持ち主の口を封じるか…次の殺人現場に捨てておくかしか、手放す方法が無かった)」


黒瓜「…」

94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 01:04:19.66 ID:utI0irZA0



ラン「役目は果たしたぞ、我が相棒よ(こんなところでどうでしょうか、赤羽根さん)」ニコ


赤羽根「…か、完璧だ…言うことないぜ、ラン!」


美千香(ふたりとも…すごい…)


黒瓜「…」


ラン「咎人よ、貴様が放つ全ての幻術に、溶け焦がすかの如き業の匂いを感じる(…よほどの恨みでも無い限り、一族を根絶やしにして遺産を奪い取ろうなんて思わない)」

ラン「その身を虚ろで塗り潰し、腐肉を喰らい、心を舐る…『そう』なった特異点は何処に…(いったい何が貴女をここまで変えたんですか?)」






黒瓜「…変えた?」

黒瓜「変わっていないよ、私は」

95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 01:08:27.12 ID:utI0irZA0



黒瓜「私は一度も変わっていない。今日この日のために生まれてきたようなものだ」


ラン(この日のため…?)


黒瓜「私を叩く父親の拳と、母親の冷たい眼差し…それが私の一番古い記憶」

黒瓜「安い言葉は使いたくない。それでもあえて口幅ったく言うなら、およそ愛情とは無縁の人生を送ってきた」

黒瓜「いつの間にか…自分も父親の真似をして、自分の体を傷つけるようになってね」

黒瓜「そうしていると不思議と安心したんだ。父親も咎めなかったからね。この行為は正しいものだと思った。命が終わるまで痛みを感じていようと思った」


黒瓜「だが…今度は母親が殴ってきた」

黒瓜「私はどう応えれば両親に受け入れて貰えるのか。ここまでくると最早考えるのも莫迦らしくなる」

黒瓜「表情を失った私に、母親はようやく自分のコトを話し始めたよ」


黒瓜「かつて、千住ヱリと二人でエラリィ・クインのような推理作家を目指していたこと」

黒瓜「土井塔という男のせいでその友情に深い亀裂が入ったこと」

黒瓜「親友を失ってまで尽くしてきた土井塔に裏切られたこと」


黒瓜「そして…」


黒瓜「だからこそ母は、私を堕ろさず、ひっそりと産んだこと」

黒瓜「私は母の復讐のために…生かされているということ」


赤羽根「だからこんな事件を引き起こしたのか…?」


黒瓜「母のため?くはは、違う違う」

黒瓜「言っただろう?この日のために生きてきた、と」

黒瓜「丁度、仕事終わりの一杯…その喉越しを求めて、ネオンの海をぶらつく感覚に近い」


黒瓜「私は、ただ私の為に他人の金を貪り食っただけさ」

黒瓜「特に今回は、合法的に莫大な資産を我が物にできる上玉だった」


横暴刑事「…」


黒瓜「母はあのとき私にこの世界での生き方を教えてくれたんだよ」

96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 01:11:45.45 ID:utI0irZA0


黒瓜「母親はこうも言っていたんだ」

黒瓜「『これは貴女の為でもある』『他人を喰い物にした奴等を逆に喰ってやるのよ』…ってね」


ラン(この人…)


黒瓜「私は初めて、両親に対してどう応えればいいかを教えてもらったんだ」

黒瓜「私を喰い物にしていた両親に対して…ね」


ラン(心が乾ききっている…)


黒瓜「あのときは胸がすく思いだったなぁ…」


美千香「まさか、あなた…」


黒瓜「両親だけじゃない…これまで何人も喰ったよ。そうしなきゃ生きていけないからね」

黒瓜「…そういえば、あの『声』が聞こえてきたのも両親を喰って直ぐだったかな」

黒瓜「『声』は私にこう囁いてくれたんだ」

黒瓜「法を出し抜く力を授ける代わりに…これからは自分の法で生きろと」


ラン(泣いて泣いて、泣き腫らして、もう空っぽになっている…)


新庄「く、狂ってる…」


黒瓜「狂ってる?むしろ、私は至極正常なプロセスで産まれてきた人間だと思うがね」

黒瓜「民事不介入と少年法が正常に機能した、その賜物が私だろう」


横暴刑事「…我々の与り知らぬところで精神を捻じ曲げた児童虐待と、それを維持する民事不介入」

横暴刑事「それによって連鎖的に起こった強盗殺人と、付随する重刑から彼女を救った少年法。胸糞悪い話だ」

横暴刑事「確かに、もし今後似たようなケースが発生しても、仕組みが変わらん限り我々は誰かが『こう』成り果てるまで放置するだろうな」


ラン「早まるな、たとえ乾ききった心でも、潤いを感じぬ躰では無かろう!!(黒瓜さん、貴女は大人しく法の裁きを受けてください!)」

ラン「思い出せ!目の前には何がある!?(手遅れにならない内に…!)」


黒瓜「私は私の法で動いている。だから私を裁くのだって私だ」

黒瓜「どうせ連続強盗殺人は極刑だろう…それでもだ」

黒瓜「このまま捕まって、私をこんな有様にした『法』で幕を下ろすなんて」


シャッ


ラン「…!!」


黒瓜「まっぴら御免なんだ!」


美千香「ナイフ…!」


横暴刑事「自殺する気かっ!?」


ラン「しまっ…」


バン!!


黒瓜「ぐッ!?」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 01:14:23.37 ID:utI0irZA0



ラン(赤羽根…さん?)


黒瓜「っ…」ボタボタッ




赤羽根「裁くよ」

赤羽根「キッチリと司法でな」

赤羽根「たとえ君の言う通り、結果が同じでもだ」

赤羽根「俺たちは、何故君がこんなことになったのかを考えなきゃいけない」

赤羽根「君を受け入れて、仕組みを変えるために、だ」


黒瓜「…ッ」


赤羽根「俺だって、そんな目してた時があった」

赤羽根「理不尽なことが起きて、自分が持っているかけがえの無いものが奪われるんだ」

赤羽根「誰に当たり散らしたって失ったものは帰ってこない。だから自然と空に向かって吠えて、唾を吐きたくなる」


ラン「…」


赤羽根「でもな、自分を律するこのルールの中で、めげずに不条理と戦っていると…」

赤羽根「かけがえの無い幸せってのは、まだ自分にたくさん残ってることに気付くんだ」

赤羽根「俺はギリギリで見つけた。それを失わないように生きている。だけど君は…知らない内に全部捨てちまったみたいだな」



黒瓜「く…そ…」



赤羽根「こうなる前に、たった一度だけでも、立ち止まって周りを見渡すだけで見つかったはずなのにな…」










98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 01:17:14.17 ID:utI0irZA0

ラン「天の名において貴様を浄化する」

ラン「大人しくひれ伏し、この女から出ていけ。『暴食』の化身、ベルゼブブ」キィィィン



ベルゼブブ『…』



ラン「六柱だ」

ラン「貴様で、もう六柱」


ラン「私の浄化の旅も…もうすぐ終わる」



ベルゼブブ『貴様は如何(ど)う思った?』



ラン「…何?」



ベルゼブブ『先程の問答だ』

ベルゼブブ『貴様は何方が正しいと思う』



ラン「…」



ベルゼブブ『…或る国の死刑制度に異を唱える者がいた』

ベルゼブブ『国家が国民を殺してはならないなどという崇高な思想を本気で考えていた者がいた』

ベルゼブブ『だが彼は、自分の家族を殺めた人間に絞首刑を求めた』



ラン「…」



ベルゼブブ『知った風な口を幾ら聞こうとも、他人の痛みなど、どのみちわからん』

ベルゼブブ『だから、いざ自分が痛くなってみれば人も天使も結局そうなるものだ』

ベルゼブブ『水が低きに流れるように』

ベルゼブブ『…我が盟友がそうだったように』



ラン「…」



ベルゼブブ『貴様が悪と断ずる思想が、いずれ総意と呼べるほど肥大しても尚』

ベルゼブブ『正義は自分にあると信じていられるか?』



ラン「…」



ベルゼブブ『我が盟友…ルシファーは決して貴様に容赦しない』

ベルゼブブ『貴様が完全に堕天することは最早必然なのだ』

ベルゼブブ『だから、あえて貴様に、言ってやろう』



ベルゼブブ『先に地獄で…待っているぞ』バキンッ


99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 01:25:31.61 ID:utI0irZA0


後日 朝 帰路



美千香「はにーっ!!」ぎゅっ


赤羽根「おわわっ」


美千香「怖かったのー!もうハニーと一瞬たりとも離れたくないの〜!!」


赤羽根「はは…無事で何よりだな」なでなで


美千香「ふふ」

美千香「やっぱりハニーは、私の王子様だねっ」


赤羽根「やめい、こそばゆいわ」


美千香「えっへへー♪」すりすり




ラン(水が低きに流れるように…我が盟友がそうだったように…?)

ラン(ルシファー…もしかしたら貴様は…)


美千香「ラン!」ずいっ


ラン「ほわ!?」びくっ


美千香「ランも助けてくれてありがとうなのー!」むぎゅー


ラン「わぷぷっ」


美千香「…ゴメンね」


ラン「?」


美千香「ハニーの隣にいるランを見て、ちょっとヤキモチ焼いちゃったんだ」

美千香「だから…ちょっとイジワルしちゃったの」


ラン「…」


美千香「でも、もうふっきれたの」

美千香「お仕事中のハニーは、ランに貸してあげる」

美千香「だから、しっかりハニーを守ってね、天使様」


ラン「…む」


美千香「そのかわり!プライベートのハニーは全部私のだから!ね!」

美千香「もしランがハニーの家に一拍でもお泊りなんてしようものなら、みーっちりセッキョーしちゃうからね!」


ラン「へっ?」


赤羽根「あっ」


美千香「えっ?」

100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 01:33:56.26 ID:utI0irZA0


美千香「…何その反応」ゴゴゴゴゴ…


ラン「これは闇に飲まれし真実というコトか…?(話してないんですか?赤羽根さん)」


赤羽根「ちょっと待て!余計なこと言うなお前!」


美千香「まさか…同棲してるなんて言わないよね?」


赤羽根「…」

赤羽根「い、居候というか…なんというか…」


ラン「い、幾許かの満月をくぐっては…いる(もう半年ほど…)」


美千香「…もう駄目なの。聞きたくないの」

美千香「こんな悲しい記憶なんてラストライブで『relations』唄うまでなくなっちゃえばいいの!」


ラン(どういう意味…?)





美千香「…ハニーの」

美千香「ハニーのバカぁー!!!」ダダダダダ…



赤羽根「ま、待て!誤解なんだ!」





赤羽根「これには天国と地獄よりも深いワケがあるんだぁー!!」






101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 01:37:38.31 ID:utI0irZA0


後日 ???



新米刑事「…なるほど、『彼』か」

新米刑事「付き従う信徒、いや、それ以上に自分のタガになるつつある人間…それが『彼』か」


新米刑事「それさえわかれば、ランを堕とす算段は決まったようなものだね」


新米刑事「大悪魔を六柱も浄化した逸材…きっと堕ちたときの反動もデカい」

新米刑事「これまでの損失も、彼女さえ仲間に加わればおつりがくるかも…」


ブワッ…


ルシファー「んんっ…くー!」のびー

ルシファー「何日も人間に成りすますのって疲れるなー…」


ルシファー「…」


ルシファー「法は秤にはならない」

ルシファー「生涯一度も罪を犯さない極悪人もいれば、聖人のような大量虐殺者がいる」

ルシファー「法で人の尊さは測れない」


ルシファー「君は本当にその意味を理解しているかい?」

ルシファー「不条理は、条理があるから生まれてくるんだよ、ラン」






死蝿の魔殺人事件 幕引

102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 01:38:30.89 ID:utI0irZA0



こんな変なSSに長いこと付き合ってくれてありがとう

HTML依頼出した後は

もっともっと面白い話が作れるように修行してきます


103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/08/20(日) 01:39:53.55 ID:utI0irZA0


菊原 美千香

赤羽根刑事の交際相手。

芸能事務所は東京にあるものの、コンセプト被りを嫌った事務所の方針でローカルアイドルとしてD県で活動している。

気分屋でその日その日のノリによって髪形を変えるという、入学したてのSOS団長のような設定だが

なぜか登場するたびに髪形どころか背格好や口調までゴロっと変わり、キャストによってはときどき本名を言いかける謎めいた存在。

撮影の舞台裏で十名以上の希望者がじゃんけんで決めているとか。

ゆえにエンドロールでは美千香役のキャストは伏せられている


ちなみに第四幕で隣り合って演劇を見ていた時の髪形は赤リボン。今回は金髪毛虫。

最終幕にも少しだけ登場する予定である。その回のキャストとなるアイドルは…

104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/20(日) 01:44:23.05 ID:pQNZc/IZ0
今回も面白かった
そろそろ最終回かな…寂しい
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/20(日) 01:55:43.31 ID:utI0irZA0
>>101

新米刑事「付き従う信徒、いや、それ以上に自分のタガになるつつある人間…それが『彼』か」×

新米刑事「付き従う信徒、いや、それ以上に自分のタガになりつつある人間…それが『彼』か」〇


誤字でした。

せっかくあすあすがカリスマたっぷりに意味深なこと言ってるのにw

106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/20(日) 02:35:16.39 ID:Bp6a8h4rO
うおお、久しぶりだぁぁ
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/20(日) 08:06:10.65 ID:BRWresQ3o
次の美千香はやけにどことは言わないけど薄そうですね
最後まで楽しみにしてます
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/20(日) 11:29:39.76 ID:9r/yercWO
いよいよ終わりも近いかー
黒瓜さんも師匠の温もりを先に受けていればと少し考えてしまうな…
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/20(日) 16:42:04.35 ID:l9rdwM4+0
>>107 Dあるもん
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