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【ペルソナ5】春「美少女怪盗を名乗る前の話」
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以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/08/23(水) 03:22:31.54 ID:/e4K++fi0
感情から切り離した笑顔は得意だった。
「美味しいです。素材の味が生きていて、素敵ですね」
実際は単に薄味なだけだったけど、大人たちは笑っていたから自分も笑顔で合わせていた。
「奥村さんとこの娘さんはよくできていますなあ。うちのドラ息子とは大違いだ」
「父さんはいつもそう言うんだ」
ははは、と何が面白いのかわからない会話。ドラ息子は単なる謙遜であって、それが事実だとは思いもしていない親バカの言葉。
奥村春は、どんどん心が冷えていくのが自分でもわかっていた。
今時政略結婚だなんて。
くだらないと思う。だけど会社の経営のためだと言われれば仕方がなかった。
父がオクムラフーズをここまで再建するのに、どれほどの努力を、あるいは執念を燃やしていたか、自分は知っている。強引なやり方でたくさんの人が泣いてきたことも、身を以て知っている。
その犠牲の搾取としての富に浴してきた者としては、犠牲を無駄にするわけにはいかない。富は維持してこそ意味があるのだから。だから経営に必要ならば、奥村春には義務がある。
本当に、必要ですか? お父様。
「春」
「はい、お父様」
「式場の打ち合わせがある。お前は帰っていいぞ」
「でしたら僕が送りましょう」
「お前と春さんの披露宴だ、お前がいなくてどうする」
私の意思は必要ないのですね。
どうでもいいことだったから構いはしない。それよりは、この空間を早くに脱出できることの方がありがたかった。
父が、婚約者が、せせら笑った気がした。
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