佐久間まゆ「悪い人でよかった」

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46 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:17:52.86 ID:c6PUDvkw0

茜「おや、二人ともどうしましたか? なんだか顔色が悪いですよ?」

乃々「…………」

輝子「…………」

茜「あ、泣き疲れて喉が渇きましたか? 私の飲みかけでよければ、お茶をどうぞ!」ゴソゴソ

乃々「…………む、」

茜「む?」

輝子「…………ヒ、」

茜「ひ? むひ? 虫刺されですか?」

乃々「……」

輝子「……」

茜「?」

乃々「むうううりいいいいいいいい!!!!!!!」ダダダダ

輝子「ヒャアアアアアッァアアぁアァアア!!!!!!!」ダダダダ

茜「うわっ! どこ行くんですかー! 乃々ちゃん! 輝子ちゃーん!」

茜「……行っちゃいました」

茜「うーん、どうしましょう……」

茜「…………」

茜「色々と気になるし、とりあえず追いかけますか!」

茜「うおおおお! ボンバーーーーーーっ!!!!」ダダダダ

47 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:19:27.42 ID:c6PUDvkw0

乃々「来ないでくださいいいいいいい!」ダダダ

輝子「来るなあああああ! ほっといてくれえええええ!」ダダダ

茜「そういうわけにはいきません! 落ち込んでる後輩を励ましてこそのアイドルです!」

乃々「なんか立派なこと言ってますけど、私たちがこうなってる原因は茜さんなんですけど!?」

輝子「むしろそう思うなら追いかけてくるのを止めてくれ! それが一番の励ましだあ!」

茜「私は一度走り出したら止まれません!」

乃々「馬鹿なんですか!?」

茜「よく言われます!」

輝子「の、乃々ちゃん……」

乃々「輝子ちゃん!?」

輝子「わ、私はもう駄目らしい……。体力の限界だ……」

乃々「そんな! 一緒に逃げきるって約束したじゃないですか!」

輝子「ごめんな……。せめて乃々ちゃんだけでも……」

乃々「輝子ちゃん!」

茜「そうはいきませんよ!」ガッシ

輝子乃々「ひぃ!」

48 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:20:08.40 ID:c6PUDvkw0

茜「さあ、追いつきました! 一切合切吐いてもらいますからね!」

乃々「い、一部始終聞いてたんでしょう!? 聞いた通りですけど!」ハァハァ

茜「え?どういうことですか?」

乃々「やっぱり馬鹿なんですか!? 余計に惨めで悲しくなるんですけど!」ハァハァ

輝子「リア充には分からない感情なんだ、きっと……」ハァハァ

茜「あーいや、そういう意味ではなくてですね……」

乃々「え?」

輝子「フヒ?」

茜「んー、なんて言えばいいんでしょうか。まゆちゃんのことについてです!」

茜「私にも協力させてください!」

乃々「き、協力って……」

輝子「……どうせ私たちには何にもできないんだ。机の下に隠れてるのがお似合いなんだ……グス」

乃々「……グス」

茜「あーあー! 泣かないでください! 大丈夫です」

茜「……二人は優しいだけなんです」


乃々「え……」

輝子「優しい……?」

49 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:24:23.38 ID:c6PUDvkw0

茜「はい。傷つけられる痛みを知っているから。それを他の人に覚えてほしくないから。だから関わりを少なくしようとしてしまうだけなんです」

乃々「……」

茜「……私も昔はそうでした」

輝子「茜さんも?」

茜「はい。私、昔から考えるより先に体が動いちゃう性分でして。そのせいで色んな人に迷惑をかけてきました。えへへ」

輝子「……」

茜「……『お前は馬鹿だ』『もっと周りのことを考えろ』と言われたことも一度や二度じゃないですね。現に今さっきも乃々ちゃんから言われましたから!」

乃々「あ……。……ごめんなさい」

茜「あー! いいんですよ!さっきは突然追いかけた私が悪いんですから!」

茜「……あの頃は変に縮こまって、自分を見失いそうでした。自分ってなんだろう? って考えて、考えて、それで出会ったのが」


輝子「……アイドル」

茜「そうです! 正確には会ったのはプロデューサーですけど!」

茜「こう言ってくれたんです! 『お前は前だけを向いて、走り続けていればいい。周りは俺が見といてやるから』って!」

茜「それで気付いたんですよ! 私には支えてくれる人がいる。私も皆を支えながら、皆を引っ張っていけばいいんだ!」

茜「……ちょっとゴーマンかもしれませんね! でもそれを知ってからは毎日が楽しいんですよ!」

50 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:26:04.13 ID:c6PUDvkw0

乃々「……私は茜さんとは違うんですけど」

茜「?」

乃々「茜さんは明るいです。眩しいです。太陽みたいです。……私もそんな風に前向きに割り切れたら、どんなに楽だったか」

輝子「……」

乃々「じゃあ茜さん。教えてほしいんですけど。私はどうしたらいいんですか?友達が困ってるかもしれなくて、でも迷惑になるかもしれなくて。私はどうし
たら、私のままで、前に進めるんですか?」

茜「んー……」

茜「……後ろ向きでいいんじゃないですかね!」

乃々「……どういうことですか?」

茜「えーとですね、無理に前を向くことはないんじゃないかな、ってことです」

乃々「じゃあどうやって……」

茜「後ろを向きながらでも、前には進めますよ!」

乃々輝子「!」

茜「……周りの顔色を見て、後ろばかり見て、でも前を向くことは怖い」

茜「大丈夫です。それも二人のいいところ。私は周りを見るのが苦手ですから!」

乃々「……」

茜「……まだ自信が持てませんか? じゃあこうしましょう!」

茜「私が前を向いて二人を引っ張ります! だから二人は後ろを向きながら、ゆっくり後ずさりすればいいんです!」

輝子「……」

茜「これで二人は前に進める。私は周りを気にせずに突っ走れる。どうですか!」

乃々「……グス」

輝子「……グス」

茜「あれ?」

乃々輝子「うわああああああん!!!」ビエー

茜「あああ!泣かないでくださいよぉ! よーしよしよしよし!」

乃々輝子「うわああああああん!!!」ビエー

51 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:27:20.95 ID:c6PUDvkw0

茜「……どうですか?落ち着きましたか?」

乃々「はい……」ズビ

輝子「も、もうしわけない……」ズズ

茜「もー! 突然泣き出したらびっくりするじゃないですか!」

乃々「だって……」チラ

輝子「だって、な……」チラ

茜「? まあいいでしょう! で、どうですか? 私も協力させてくれませんか?」

輝子「それはいいんだけど……」

乃々「実際、何をすればいいんですか……?」

茜「そうですね……さしあたっては……」

茜「……まゆちゃんのことを教えてください!」

乃々「まゆちゃんのこと?」

輝子「いいけど……。そんなに詳しいことは知らない、かも」

茜「それでも私よりよく知ってると思うんです! 特に……」



茜「……凛ちゃんとの関係、とか!」

52 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:28:38.90 ID:c6PUDvkw0

未央「……はい! やってきました! どこにでもある、普通のコンビニです!」

奏「なんだか説明口調ね……」

加蓮「奈緒、ほらかご持って」

奈緒「はいはい……」

卯月「マスクは……わぁ、色んな種類があるんですね」

未央「ほんとだね。色とか大きさとか。男性用女性用でも結構違うんだ」

奏「これは口の中が蒸れにくくて呼吸がしやすいのね。いいじゃない。これを人数分買いましょう」ポイポイ

加蓮「あ、奈緒ー!」

奈緒「ん?どうした……げっ」

加蓮「新発売のポテトだって! 買ってくれるって約束だったよね!」

奈緒「あー分かったよ……せっかくだし私も食べようかな」

未央「あ、ゴリゴリくん! 私、サイダー味がいいな!」ポイ

卯月「! じゃあ私は月見大福がいいです!」ポイ

奏「あら、じゃあ……ソフトクリームにしようかしら」ポイ

奈緒「おいおい! 加蓮以外は後で払えよ!」

未央「ちえー」

卯月「はーい」

奈緒「全く…………ん?」

加蓮「奈緒? どしたの?」

53 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:30:37.45 ID:c6PUDvkw0

奈緒「いや、あれってPさんとまゆか?」

加蓮「Pさんとまゆちゃん?どこ?」

奈緒「ほら、向こうの通りの……」

未央「んーどれどれ……あ、ほんとだ」

卯月「二人っきりなのかな……何してるんでしょう?」

未央「さあ、スタジオに送り迎えしてるとか?」

奏「……さあ、どうなんだろ。向こうはこっちに気付いてないみたいね」

奈緒「……あ、向かいのコンビニに入ってった」

加蓮「まゆちゃん、変装も何もしてなかったけど……やっぱり仕事帰り?」

卯月「でも最寄りのスタジオはあっちですよ?」→

未央「で、事務所はこっち」←

加蓮「二人が歩いてきたのは……こっちからだったよね?」←

奈緒「じゃあ今から収録なのか?」

奏「でももう夕方だし……今からだと終わるのがだいぶ遅くなるわよ」

54 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:32:08.77 ID:c6PUDvkw0

卯月「あ、そういえば茜ちゃんが何か言ってませんでしたか? Pさんの伝言……」

未央「あ、あれってまゆちゃん関連だったっけ?」

奈緒「……忘れちゃったなぁ」

未央「……何はともあれ、これは怪しいですなぁー」

加蓮「……うん。怪しいー」

奏「……怪しいわねー」

卯月奈緒「?」

未央「まゆちゃんのPへの愛はすごいからねー」

加蓮「恋する乙女だよねー」

奏「時々、妬いちゃうくらいだわ。あれくらい積極的になれたらって思うと……」

卯月「え!? 奏ちゃんってPさんのこと……」

奏「あら、恋愛感情は持ってないわよ。ただPさんにはいつもお世話になってるから……感謝の気持ちをいつか伝えたいなって思ってるの」

卯月「あ、そういうことですかー……。勝手にびっくりしちゃった」

加蓮「Pさんのこと好きって子は少なからずいるんだろうけどねー」チラ

未央「そうそう、まゆちゃん以外にもねー」チラ

卯月「え、そうなんですか? 知りませんでした!」

未央「そりゃねー……」チラッチラッ

加蓮「まあねー……」チラッチラッ

卯月「……?」

卯月「……」

卯月「……あっ」

卯月「そうですね! もしかしたらいるかもしれませんね! まゆちゃんの他にもPさんのこと好きな子!」

奏「?」

55 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:33:35.37 ID:c6PUDvkw0

奈緒「おーい、なんやかんやしてるうちに会計終わらしといたぞー。自分の分のマスクとアイスとポテト取れー」

未央「おお、さんきゅー! 気が利くね!」

奈緒「で、Pさんとまゆはどうだ?」ヒョイ

奏「ありがと。二人はまだ出てきてないわね」

加蓮「そこそこ時間経ってると思うんだけど……あ」モグモグ

卯月「出てきましたね! やっぱり二人一緒です!」

未央「で、事務所側に戻っていく……と。こりゃ偶然会ったわけでもなさそうですな」ペロペロ

奈緒「あれも気になるけど……私たちは早く凛のとこ行ったほうがいいんじゃないか?だらだらしてたらほんとに暗くなっちゃうぞ」

卯月「そうですね。凛ちゃんの分のアイスも溶けちゃいますし」

加蓮「凛の分? ……あぁ、そういうことか」

未央「しまむーとしぶりんはよく月見大福を二人で分け合ってますからなー」

卯月「えへへ。喜んでくれるかな」テクテク

加蓮「きっと喜んでくれるよ。風邪で寝込んでるとき、ベッドで食べるアイスは格別なんだ」テクテク

奈緒「加蓮が言うと説得力あるよな……」テクテク

56 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:35:06.38 ID:c6PUDvkw0

奏「でも分かるわ。体が弱って火照ってる時って、甘くて冷たいものが無性に欲しくなるのよね」テクテク

未央「多分体が欲しがってるんだろうねー……ん?」

卯月「? どうしたんですか?」

未央「…………なんでもないよ! はいしまむー、これ!」

卯月「ひゃっ!? 未央ちゃん、冷たいですー!」

未央「へへへ、ソフトクリーム攻撃だー! 白くて甘いものでべとべとになってしまえー!」

卯月「やめてくださいー!」キャッキャッ

奈緒「何やってんだあいつら……」

奏「仲いいわね、あの二人」

奈緒「ほんとだよ……ってあつっ!?」

加蓮「揚げたてポテト攻撃だー」

奈緒「それはまじで熱いからやめろ!」

加蓮「うりうりー」

奈緒「だあああ! しつこい! そこまでするなら食べさせろ!」

奏「……あなた達も十分仲いいわよ」

奈緒「?」

奏「さ、遊んでないで。早く凛の家に向かいましょ」

卯月「はい! 島村卯月、ちょっとべとべとするけど頑張ります!」

奈緒「だから加蓮はやめろって……熱い! いきなり口の中に放り込むなあ!」



未央(P、まゆちゃんと手、繋いでた?)

未央(……)

未央(……気のせいか)

57 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:40:35.56 ID:c6PUDvkw0

まゆ「……」

P「……まゆ? どうした?」

まゆ「いえ、なんでもないですよ?」

P「……そうか」

まゆ「それにしてもPさん、それで良かったんですか?」

P「なにが?」

まゆ「ほら、そんな小さなおにぎり一つで足りるのかなって……」

P「……あんまり食欲がないんだ」

まゆ「そうなんですかぁ……」

P「……まゆこそ、それで足りるのか? 菓子パンと、アイスだけで」

まゆ「はい。私、小食なんです。それと……」

P「……?」

まゆ「……二人で分け合って食べられますから。パンと、ほら、このアイスも」

P「……そうか」

まゆ「はい♪」

58 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:42:29.74 ID:c6PUDvkw0

P「……」テクテク

まゆ「……」テクテク

P(……)

P(まゆが言っていた劇の主役が、凛だとしたらどうなる?)

P(……)

P(主役、物語の中心、ヒロイン)

P(……青春恋愛、とも言ってたか)

P(……分からない)

P「……なあまゆ」

まゆ「なんですかぁ?」

P「……」

まゆ「……」

P「…………なんでも……!?」ギュッ

まゆ「うふふ♪ 手、繋いじゃいましたぁ♪」ギュッ

P「馬鹿、やめろ! こんなところ見られたら……」

まゆ「こんなところって、どんなところですかぁ?」

P「それは、アイドルとPが……」

まゆ「人目のつかない所で抱き合ってるところ、とかですかぁ?」

P「!!!」

59 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:43:37.25 ID:c6PUDvkw0

まゆ「私、Pさんのことなら何でも知ってるんですよぉ?」

まゆ「あの日、あの時Pさんが何をしてたのかも」

まゆ「ぜぇんぶ」

まゆ「知ってるんですよぉ?」

P「う、あ……」

まゆ「……なら、これくらいは許してくれますよね?」ギュッ

P「…………」

まゆ「…………」チラッ

P「…………」

まゆ「……もういいです」

P「……え?」

まゆ「早く帰りましょう? アイスが溶けない内に」

P「…………」

P「…………あぁ」



P(飲み込んだ言葉は三つ)

P(なんであのことを知ってるのか。まゆは俺を憎んでいないのか。それと……)

P(この物語は、ハッピーエンドなのか)

60 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:44:50.58 ID:c6PUDvkw0

茜「……」

乃々「あ、茜さん?」

茜「え? あっはい! なんでしょうか!」

輝子「いや、めっきり黙っちゃったから……どうしたんだ?」

茜「いえ、色々と考えていました!」

乃々「茜さんが……!?」

輝子「考える……だと……!?」

茜「あれ、私、もしかして馬鹿にされてますか?」

乃々「い、いや、そんなつもりじゃ……」

茜「まあ否定はしません! 考えるのは苦手です!」

輝子「だろうな……フヒ」

乃々「というか、考える要素が少なすぎるんですけど……。もっと情報が欲しいんですけど」

輝子「情報?」

茜「お、前向きですね! いい方向です!」

乃々「……つまり。茜さんは何か、まゆちゃんのことについて知ってるんですか?」

茜「聞きたいですか!」

乃々「そりゃあ……まぁ」

輝子「まぁ……な」

茜「それでは話しましょう! えーと……」

乃々輝子「……」ゴクリ

茜「実は……」

乃々輝子「実は……?」ゴクリ


茜「……まゆちゃんの部屋のトイレは壊れてるらしいです!」

乃々輝子「……」

乃々輝子「……」


乃々輝子「……は?」

61 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:50:10.93 ID:c6PUDvkw0

卯月未央奈緒加蓮奏「……は?」

凛父「えーと……」

未央「ちょ、ちょっと待ってください!? 今、なんて言いましたか?」

凛父「えっと、凛は今、家にいないって……」

卯月「凛ちゃん、風邪じゃないんですか!?」

凛父「風邪? 今朝、家を出る時には元気そうに見えたが……」

奏「……」

奈緒「そういうことじゃなくて! 凛は今日の収録を風邪で休んでるんです! そうだよな、奏!?」

奏「……そうよ。そう、聞いていたわ」

卯月「今日は私たち、ずっとレッスンだったけど……」

未央「しぶりんのこと、一度も見てないよね……?」

加蓮「どういうこと……?」

62 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:51:55.50 ID:c6PUDvkw0

凛母「あら、凛なら今日は帰ってこないわよ」

卯月未央奈緒加蓮奏「え!?」

奈緒「あの、帰ってこないってどういう……!」

凛父「ああ、あの子の所に泊まるのか」

奏「あの子?」

加蓮「あの子って、誰ですか!?」

凛父「えっと、なんて言ったかな。ささき……ささら……さくら……」

奈緒「誰だ……?」

凛母「もう、お父さん。まだ覚えてないんですか。『さくま』さんですよ」

凛父「ああ、そうだったな。思い出した。『佐久間』さんだ」

未央「『さくま』?」

卯月「……! 『佐久間』ですか!? 誰がそれを!?」ズイッ

凛母「え、ええと、凛からメールが来てたのよ。……ちょっと待っててね」

63 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:52:58.44 ID:c6PUDvkw0

加蓮「佐久間、って……」

奏「……『佐久間まゆ』だったわね」

未央「あぁっ! 忘れてた!」

奈緒「凛がまゆのところに!? なんで!?」

凛父「ん?なんでって……なんでだ?」

奈緒「え、だって……」

凛父「二人はしょっちゅう遊んでたみたいだが……。凛が佐久間さんの所に泊まるのもそう珍しいことじゃないだろ?」

加蓮「…………知ってた?」

未央「…………知らなかった」

奈緒「マジかよ…………」

卯月「…………そう、だったんだ」

奏「…………」


凛父「ん? あれ? 俺、なんかまずいこと言ったか?」

64 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:53:48.46 ID:c6PUDvkw0

凛母「お待たせ。あれ? 皆どうしたの?」

奏「……メールを見せていただけますか」

凛母「ああ、はい。今日の昼前に来てるわね」

奏「ありがとうございます。……読むわ」

卯月未央奈緒加蓮「……」コクリ

奏「……『お母さんへ。今日の収録が終わったら、佐久間さんの家に遊びに行きます。明日の昼までには帰ります』……終わりよ」

凛母「……凛に何かあったの? あの子、最近、元気がないみたいだったし……」

奏「……もしかしたら、何かあったのかもしれません」

奈緒「奏!? 何言ってるんだ!?」

凛父「何かって、交通事故とか!? 誘拐とか!? もしかして立てこもり事件の人質に!?」

凛母「そんなわけないでしょ」ペシ

凛父「いてっ」

65 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:55:11.14 ID:c6PUDvkw0

卯月「……あの」

凛母「……あなた達、凛のお友達でしょう?」

未央「……はい」

凛母「そう……。いつもありがとうね」

奈緒「……」

凛母「……まあ、凛なら大丈夫よ!」

加蓮「え?」

凛母「あの子、ああ見えてかなり図太いんだから。というか図太くないと、いきなりアイドルになったりしないわよ」

凛父「母さん……」

凛母「それに、こんなに凛のことを想ってくれてる友達がいるんだから、ね?」

卯月「……はい」

凛父「そうか……そうだよな!」

66 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:56:24.97 ID:c6PUDvkw0

凛母「そういえば卯月ちゃん、さっき何を言いかけてたの?」

卯月「あああの、これを。溶けちゃうんで」ガサッ

凛母「これ……もしかしてお見舞いに持ってきてくれたの?」

卯月「……」コクリ

凛母「……ありがとうね」

奏「お母さん、携帯、ありがとうございました」

凛母「はいはい。あら、あなた。凛にちょっと雰囲気が似てるわね」

奏「ありがとうございます」

凛母「ああでも、凛のほうがまだ子供っぽいかしら。見た目も、中身も」

未央「……皆、行こう。お邪魔しました!」

奈緒「そうだな。……お邪魔しました」

加蓮「……お邪魔しました」

奏「お邪魔しました」

卯月「……」

未央「しまむー?」

卯月「……」

卯月「凛ちゃんは、私の大切な友達です」

凛父母「……」

卯月「……お邪魔しました」ペコリ

凛父「……またみんなで遊びにおいで」

凛母「これからも凛を、よろしくね」

卯月未央奈緒加蓮奏「……はい!」

67 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 04:57:05.79 ID:c6PUDvkw0

凛父「……いい子たちだな」

凛母「本当に。さて、仕事に戻らなきゃ」

凛父「おい。これ、冷蔵庫に入れたほうがいいんじゃないか?」

凛母「ああ、そうでしたね。プリンとゼリーと……月見大福」

凛父「……凛が好きなやつだな」

凛母「ええ……」グス

凛父「……全く。すぐに泣くんじゃないよ。ほらハンカチ」

凛母「ありがとう……」グスグス

凛父「……本当に。お前は幸せ者だよなぁ、凛」グス

凛母「私たちもですよ、お父さん」グスグス

凛父「……全くだ」グスグス

68 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:02:14.91 ID:c6PUDvkw0

卯月「……凛ちゃん」

未央「……走ろう」タッ

加蓮「どこに向かうの?」タッ

奈緒「決まってるだろ。凛がいるところだ!」タッ

奏「じゃあそれはどこ?」タッ

奈緒「それは……まゆのとこじゃないのか? 女子寮のまゆの部屋に……」

加蓮「……もし、そこにもいなかったら……」

奈緒「いるに決まってるだろ!」

加蓮「……そうだよね。ごめん」

奏「……気になることがあるの」

未央「どうしたの?」

奏「凛が仮病で仕事をさぼってまゆの部屋にいる……。その行為自体に不自然な点は無いわ。誰だって、そういう気分になる時はあるもの」

卯月「……」

奏「でも今の状況は違う。第一、凛がそういうことをする子には見えないし」

奈緒「そりゃそうだ。凛が仕事をさぼったりしたことなんて、今までに一度も無かったし」

奏「……私がちひろさんから連絡を貰ったのは、昨日だった」

卯月「……あっ」

69 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:03:38.00 ID:c6PUDvkw0

加蓮「そ、それって、おかしくない?」ゼェゼェ

奏「そう。さっき凛のお父さんは『今朝家を出る時には元気だった』と言ってたでしょ?」

卯月「代役を立てるくらいの風邪を前日にひいてるのに、今日になって元気に家を出るなんて……ありえないです」

未央「え、どういうこと? こんがらがってきた!」

奏「考えられるのは二つ。一つは『凛にとってどうしても今日の収録に出たくない理由があって、前日にちひろさんに嘘を言った』」

奈緒「それは……無理があるだろ。それなら今日、仮病がバレるリスクを背負ってまで家を出る意味がない」

卯月「…………凛ちゃんは今日、まゆちゃんにどうしても会いたかった……?」

加蓮「……」ゼェゼェ

70 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:05:23.67 ID:c6PUDvkw0

未央「ちひろさんは仮病なんかじゃ騙せないと思うし……」

奏「えぇ。私もこの説には意義があるわ。そこでもう一つ。……私はこっちが正しいと思ってる」

未央「それは……?」

卯月「……」

奈緒「……」

加蓮「……」ゼーハー

奏「……」


奏「『ちひろさんとまゆが共謀して、凛をどこかに監禁している』」


卯月未央奈緒加蓮「……」

卯月未央奈緒加蓮「…………は?」

71 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:06:19.15 ID:c6PUDvkw0

乃々輝子「……は?」

茜「まゆちゃんの部屋のトイレが壊れてるんです!」

輝子「いや聞こえてるぞ……というか、え?」

乃々「そ、それだけですか……?」

茜「あ、あと、まゆちゃんは大丈夫らしいです! どういうことでしょうね!」

乃々「それはもう聞いたんですけど……」

輝子「ぼんやりしすぎてる……」

茜「いやー!考えても全然分かりませんね!」

乃々「そんなのノーヒントに等しいじゃないですか……分かるわけないんですけど……」

茜「あ、後ろ向きに戻ってますね!?」

輝子「これは仕方ないと思うぞ……かくいう私も……フヒ」

茜「あらら、二人とも落ち込んじゃいました」

72 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:06:58.60 ID:c6PUDvkw0

乃々「……」ドヨーン

輝子「……」ドヨーン

茜「……」

茜「よし!」ガシッ

乃々「うえっ!?」ガシッ

輝子「おおっ!?」ガシッ

茜「行きましょう!」

乃々「い、行くって……」

輝子「どこに行くんだ……?」

茜「そりゃあ決まってるじゃないですか!」

乃々「……まさか」

茜「まゆちゃんの部屋です!」

輝子「え……」

茜「考えても分からないことが分かりました! なら直接本人に尋ねるのが一番分かりやすいです!」

乃々「そ、それは」

茜「……怖いですか?」

乃々「……うぅ」

輝子「……」

73 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:07:42.85 ID:c6PUDvkw0

輝子「……行こう、乃々ちゃん」

乃々「……はい」

茜「……おお!」

乃々「…………実は怖い、怖いんですけど……」

輝子「嫌われるかも、とか、迷惑がられるかも、とか考えたらな……」

乃々「でも……」チラッ

輝子「……うん」チラッ

乃々「……大切な友達をなくすことの方が、何倍も怖いから」

輝子「……私たちが進む方向、間違ってないよな? 茜さん」

茜「…………ばっちりです!」

乃々「……」

輝子「……」

茜「……行きましょう!」

乃々輝子「……はい!」

74 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:08:15.22 ID:c6PUDvkw0

まゆ「ただいまぁ」キィ

P「……ただいま」バタン

まゆ「さ、Pさん。食べましょう? お腹が減ってなくても、何か口にしないと元気が出ませんよ?」

P「……あぁ」ガサ

P(……暗くなってきたな)モグ

まゆ「おいしいですかぁ?」

P「……あぁ」

まゆ「お茶、出しますねぇ」パタン

P「……ありがとう」

75 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:08:57.21 ID:c6PUDvkw0

P(……分からない)

P(目の前にいる、まゆという女の子が、分からない)

P(俺をどうしたいんだ? なぜちひろさんと協力してるんだ?)

P(……凛のことも気がかりだ)

P(あのことを知ってるなら……まゆは真っ先に凛を恨むだろう)

P(もしかして凛もどこかで、同じように監禁されているのか?)

P(……ちひろさんは、なんでまゆに協力しているんだ?)

P(……もしかしてこれは、凛に対する復讐なのか?)

P(……分からない。分からないことが多すぎる)

P(俺は、なんのためにここにいるんだ)

76 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:10:23.54 ID:c6PUDvkw0

まゆ「はい、温かい紅茶ですよぉ♪」

P「……ありがとう」

まゆ「……」

P「……」

まゆ「……心配しなくても、変なものは入っていませんよ」

P「……そうか」

まゆ「不安なら、口移しで飲ませてあげましょうかぁ?」

P「……大丈夫だ」ゴク

77 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:11:17.62 ID:c6PUDvkw0

P(……一つできることがある)

P(自分を持つことだ。俺は俺だと、気を保つことだ)

P(いくら誘惑されても、唆されても、罪悪感を抉るような言葉を投げつけられても)

P(……俺はまゆを好きになることはできない)

P(……冷静になれ)

P(俺は……)



ダダダダ……



P「……ん?」

まゆ「どうしたんですかぁ?」

P「地震か? ちょっと揺れたような……」

まゆ「言われてみれば……」



ダダダダダダ



P「いや、音が段々近くなってないか!?」

まゆ「……もしかして」

P「なんだこれ!? 電車が駅を通過するときみたいな振動と音が……!」

まゆ「…………存外、早かったですねぇ……。まぁ、あの子がいたからこそ、でしょうか」ボソッ

P「どんどん……近づいて……!」



ドドドドドドド




ドン!

78 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:12:09.35 ID:c6PUDvkw0
P「……」ドキドキ

まゆ「……」

P「……な、なんだったんだ?」

まゆ「……」



ドンドンドン!



P「! だ、誰だ!」

まゆ「あ、鍵なら開いてますよぉ」

P「え」



ガチャ

79 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:12:56.25 ID:c6PUDvkw0

茜「とうちゃーく! そしておじゃましまーす!」

乃々「も、もうむぅーりぃー……」

輝子「景色がぐるぐる回って……頭がふわふわして……まるで浮いてるみたいに……」

P「茜!? 乃々と輝子も……どうしたんだ?」

乃々「え、あれ、Pさん?」フラフラ

輝子「な、なんでシンユウがここにいるんだ」グルグル

P「それは……」

まゆ「……」

輝子「分かったぞ乃々ちゃん、これは幻覚だ……」

乃々「幻覚ですか……確かにそれなら納得がいくんですけど……」

まゆ「……Pさんは私のために、ここにいるんですよ」

輝子「あ、まゆちゃん……」

乃々「こ……こんにちはなんですけど」

まゆ「はい、こんにちは。ここまで走ってきたんですかぁ?」

茜「はい! だいぶ駆け足で来ちゃいました!」

まゆ「そうですかぁ。どうぞ上がってください」

まゆ「喉が渇いたでしょう? いまお茶を出しますねぇ」パタン

茜「ありがとうございます!」

乃々「あ、おかまいなく……」

輝子「まゆちゃん、キッチンに行っちゃった……」

乃々「……」

輝子「……」

P「……」

80 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:13:40.08 ID:c6PUDvkw0

乃々「……やっぱり元気ないみたいなんですけど」

P「……なんでお前らはここに来たんだ?」

輝子「まゆちゃんが心配だったからな……」

乃々「……Pさんと同じです」

P「……茜、お前が?」

茜「はい! あ、ちひろさんにはちゃんと伝言、伝えましたよ!」

P「あぁ、ありがとう……」

81 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:14:18.28 ID:c6PUDvkw0

P(……どういう状況だ)

P(茜たちが来ても、まゆは動揺してる風じゃなかった。寧ろいつか来ることが分かってたようだった)

P(買い物から帰ったとき、わざと部屋の鍵をかけずに。監禁していた俺を隠そうともせずに……)

P(…………ん?)

P(……)

P(……なんか引っかかる)

82 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:15:52.19 ID:c6PUDvkw0

茜「それにしても、ここがまゆちゃんの部屋ですか! 初めて入りました!」

P「ん……あぁ。部屋の間取りは他の部屋と変わらないけど……」

茜「なんというか、すごく『女の子!!!』って感じですよ!」

乃々「とっても可愛らしいです……私と輝子ちゃんは偶に遊びに来てましたけど」

輝子「でも、最近は来てなかったな……」

P「……」

茜「Pさんはなにか知ってますか? まゆちゃんが最近、元気ないことについて!」

P「……知らないな」

茜「そうですか! じゃあ部屋でなにをしてたんですか?」

P「……話を聞いてたんだ」

茜「そうですか! それで、まゆちゃんはどうですか?」

P「……どうって……さっき見た通りだよ」

乃々「あの、茜さん……?」

茜「そうですか! では『まゆは大丈夫だ』という伝言の意味は?」

P「……なぁ、茜」

茜「はい!どうしましたか?」

83 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:16:28.13 ID:c6PUDvkw0
P「なんでまゆのことをそんなに俺に尋ねるんだ? そこに本人がいるんだから、直接聞けばいいだろう」

茜「おや、Pさんにそれを言われるとは心外ですね!」

P「……は?」

輝子「ちょっと、茜さん……」

P「……どういうことだ?茜」

茜「原因って、Pさんでしょう?」

乃々輝子「え?」

P「……え?」

茜「細かい事情は知りませんが……まゆちゃんが落ち込んでる原因って」


茜「Pさんが選んだのが、まゆちゃんじゃなくて、凛ちゃんだったからじゃないんですか?」

84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/07(木) 05:21:53.90 ID:F9uMLnaBo
かしこい
85 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:22:56.40 ID:c6PUDvkw0

奏「……それ、本当なの?」タタタ

卯月「……はい。見ちゃったんです。Pさんと凛ちゃんが抱きしめあってるのを……」タタタ

奏「それで最近、凛の元気が無いように見えたのね……なるほど」

未央「え、気付いてたの?」タタタ

奏「なんとなくね。そんなことになってるとは思わなかったけれど」

加蓮「……『まゆが凛を監禁している』……ね」ゼーゼー

奈緒「そんなことあるわけない……わけでもなさそうだな」タタタ

卯月「まゆちゃんはPさんのことが好きで……」

未央「そのPをしぶりんが奪ったから、それで……ってこと?」

奏「そういうこと。なんでそこにちひろさんが絡むのかは分からない。けれど私を凛の代役に立ててスケジュールを埋めるのには、ちひろさんかPの協力が不
可欠よ」

奈緒「その二択なら……ちひろさんだよな。というかPが凛を監禁する理由がない」

未央「……とにかく、女子寮に急ごう」

卯月「乱暴なこととか、されてませんように……」

86 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:24:09.22 ID:c6PUDvkw0

奈緒「そうだ、携帯! もしかしたら……」

奏「多分無駄ね。今日凛の電話に連絡して、応答が一度でもあった?」

加蓮「そっか。あのメールを送ったの、まゆちゃんだったら、凛の携帯はまゆちゃんが持ってることに……」

奈緒「何もしないよりましだろ!」ピポパ、プルルルル、プルルルル

加蓮「……」

未央「……」

奈緒「出ろ……! 凛、出ろよ……!」プルルルル、プルルルル、プルルルル

奏「……」

卯月「……凛ちゃん」

奈緒「………………」プルルルル、プルルルル、プルルルル



ピッ

87 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:24:59.64 ID:c6PUDvkw0

奈緒「……!!! もしもし!? 凛か!? 私だ! 奈緒だ!」

未央「え!?」

加蓮「……!」

奏「……あら」

卯月「繋がったんですか!?」

奈緒「あぁ! 凛、今どこだ!? やっぱりまゆの部屋なのか…………え?」

未央「ちょ、ちょっと、しぶりん!? 無事なの!?」

卯月「凛ちゃん! 聞こえますか!?」

奈緒「……いや、待って。違う」

未央「違うって……どういうこと?」

卯月「え……どうしたんですか?」

奈緒「……凛じゃない」

卯月「……え?」

奏「……」

奈緒「その声……Pか!?」

88 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:26:12.19 ID:c6PUDvkw0

茜「Pさんが選んだのがまゆちゃんじゃなくて、凛ちゃんだったから」

茜「だからまゆちゃんは落ち込んでるんじゃないんですか?」

P「…………」

輝子「……どういうこと?」

乃々「ぜ、全然話が飲み込めないんですけど……」

茜「どうなんですか? Pさん」

P「…………そうだ」

茜「そうですか! じゃあしょうがないですね!」

P「……茜、お前、どこまで知ってるんだ?」

茜「どこまでって言われても……私は噂を耳に挟んだだけですよ」

P「噂って……誰から?」

茜「それは……」

乃々「ちょ、ちょっと待ってほしいんですけど!」

輝子「そうだ。私たちにも分かるように話してくれよ……。親友とまゆちゃんが、どうだって?」

乃々「私たちに言ってないことがあったってことですか? 茜さん」

茜「ん? えーと。言ってなかったというか、確かめたかったというか……」

乃々「確かめ? なにを?」

茜「まゆちゃんの部屋に、Pさんがいるかです!」

89 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:26:59.70 ID:c6PUDvkw0

輝子「いたから……それがどうなるんだ?」

茜「おおよその見当がついたんです! Pさんと、まゆちゃんと、凛ちゃんの関係。それと私が耳に挟んだ話を組み合わせると、自然にそういうところに落ち
着きました!」

P「……そうか」

乃々「だから、その耳に挟んだ話っていうのを聞きたいんですけど!」

茜「言ってもいいんですか?Pさん」

P「……今更だろ」

茜「では!」

P「でも、ちょっと待ってくれ。その話はまゆと一緒に、俺の口からしたいんだ」

P「……それでいいか?」

乃々「……分かったんですけど」

輝子「そう言えば、遅いな……まゆちゃん。紅茶って入れるのにそんなに時間かかるのか……?」

茜「それもそうですね……?」

90 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:30:29.65 ID:c6PUDvkw0


……ルル



P「…………おい、何か聞こえないか?」

乃々「え……もりくぼには聞こえませんけど……」



……ルルル



P「……いや、する」

輝子「?」

P「まゆ!」ダッ

茜「Pさん!?」

P「……いない」

乃々「……え」

輝子「ま、まゆちゃん……?」



……ルルルル



乃々「……あ、聞こえる、聞こえます! これは……携帯の着信音?」

茜「……確かに聞こえますね」

輝子「ど、どこから……?」

P「ここからだ……」

P「…………」



「私の部屋、お手洗いの水道が壊れちゃってるんです」

91 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:32:17.08 ID:c6PUDvkw0

P「…………」

乃々「……Pさん?」

輝子「まゆちゃん? いるのか? 返事してくれ」コンコン

茜「鍵がかかってるんですか? それなら私が……」

P「……いや、鍵はかかってない」

乃々「じゃあなんで……」

P「……」

輝子「まゆちゃん? 気分でも悪いのか?」コンコン

P「……」

P「……」

P「……」カチャ


P茜乃々輝子「!!!」


輝子「まゆちゃん!? どうしたんだ! まゆちゃん!」ガバッ

茜「大丈夫ですか! まゆちゃん!」

乃々「……まゆ、ちゃん。と……」

P「……」

P「……あぁ」

P「そういうこと、かよ」

92 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:33:11.51 ID:c6PUDvkw0

P(そこにいたのは床に倒れて意識の無いまゆ。そしてもう一人)


P「……凛」

93 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:34:34.19 ID:c6PUDvkw0

乃々「凛さんが、なんでここに……?」

茜「凛ちゃんも! 大丈夫ですか!」

茜「……二人とも、意識がありません! 救急車呼んできます!」

P「……」


プルルルル


P「……携帯が、二つ」

P「……」

P「……」ピッ

P「……もしもし」

P「……」

P「あぁ。俺だ」

94 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:37:09.71 ID:c6PUDvkw0

卯月「Pさん!」ダッ

P「……おぉ。お前らか」

奈緒「凛はどうなったんだ!?」

P「……さっき、救急車で運ばれていった」

加蓮「うそ……」

未央「どこの病院!? 私たちも行く!」

P「346系列の一番近い病院だけど……お前らは今日は帰れ」

未央「なんで!」

P「今日はもう遅い。面会時間もあるし明日また……」

奈緒「遅いとか、そんなの関係ないだろ! 凛が心配なんだよ!」

卯月「そうです! お願いします!」

95 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:38:08.35 ID:c6PUDvkw0

P「……駄目だ」

奏「……凛の状態は?」

P「詳しいことは分からない。けど俺たちが凛を見つけた時には、もう凛の意識は無かった」

奏「……そう」

加蓮「……眠ってるんだったら、私たちが行っても邪魔になるだけだね」

奈緒「加蓮!」

奏「そうね。私も同感だわ」

卯月「奏ちゃんまで……!」

加蓮「……勘違いしないでね。私だって凛のことが心配でたまらないよ。けど、目を背けちゃいけない。私たちにはできること、できないことがある。今、凛
のところに行って、私たちができることがあると思う?」

奈緒「それは……」

卯月「……じゃあ私たちができることって」

奏「事の始まりと顛末を知ること。つまり……」

P「……俺か」

奏「……話してくれるわよね? 知ってるんでしょ?」

P「それは……」

96 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:39:01.23 ID:c6PUDvkw0

ちひろ「戻りました」ガチャ

P「! ちひろさん……! 二人の容体は?」

ちひろ「安心してください。さっき電話で確認したら、凛ちゃんもまゆちゃんも、睡眠薬をちょっと多めに飲んじゃっただけらしいです」

P「……!」

未央「睡眠薬って……!」

ちひろ「大丈夫ですよ。死ぬことはありません。ただ……」

加蓮「……目を覚ますかどうか、ってこと?」

ちひろ「……体が衰弱している原因は恐らく精神的なものだろうと。体には基本的に異常は無いみたいですから」

奈緒「……くそ」

卯月「……凛ちゃん」

未央「しぶりん……」

奏「……」

ちひろ「……で、Pさん。どうするんですか?」

P「……分かったよ。皆、今から俺のデスクに来てくれ。そこで話すから」

ちひろ「あ、乃々ちゃんと輝子ちゃん、それと茜ちゃんもいますからね」

P「……あいつらはまゆと病院に行ったんじゃないんですか」

ちひろ「私が引き留めました。あの三人だって、話を聞く権利はあるはずですから」

P「……そうですか」

97 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:39:59.10 ID:c6PUDvkw0

茜「あ、Pさん! お疲れ様です! ちひろさんも!」

乃々「……」

輝子「……」

卯月「……あ、茜ちゃん」

茜「お、卯月ちゃん達も! お疲れ様です!」

奈緒「……茜はすごいな。いつも元気で」

茜「それだけが取り柄ですから!」

奏「……」

加蓮「……」

P「……全員揃ってるな」

ちひろ「……そうですね」

P「……」


P「……話すよ。俺が知ってること、全部」

98 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:49:25.02 ID:c6PUDvkw0

P「……まず、今日あったことについて話す」

P「昼過ぎ頃、俺は森久保と輝子から相談を受けた。『まゆが事務所に来ない』って。そうだな?」

輝子「……ウン」

P「俺はちひろさんに相談した。そしたら女子寮の鍵を貸してくれた。無論、まゆの部屋のだ」

加蓮「……それで?」

P「話を聞くためにまゆの部屋に行った。俺はそこで監禁されてたんだ」

P「……内側から南京錠をかけられた。どうすることもできなかったよ。まゆの言いなりになるしかなかったんだ」

卯月「……凛ちゃんは、どこにいたんですか?」

P「……まゆは俺にと嘘をついていた。トイレが壊れているって。凛も俺と同じように、まゆに監禁されてたんだ」

奏「じゃあPさんが監禁される前から、凛はトイレにいたってこと?」

P「……そうなるな」

ちひろ「……トイレにあった二つの携帯。一つは凛ちゃんので、もう一つはまゆちゃんのでした。それとイヤホンが隠してありました」

乃々「イヤホン……?」

ちひろ「二つ携帯には今日の通話履歴が残ってました。それもかなり長い時間の」

P「……まゆは凛に、電話越しに俺たちの会話を聞かせていたんだ」

99 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:50:43.58 ID:c6PUDvkw0

奈緒「な、なんでそんなこと……」

P「……一度だけ、一人でまゆの部屋を出ることができた。そのまま逃げるわけにもいかなかったから、偶々そこにいた茜にちひろさんへ伝言をした」

茜「『まゆちゃんは大丈夫』『トイレが壊れている』の二つですね!」

P「……ちひろさんもまゆとグルだったから、意味は無かったらしいけどな」

ちひろ「……さあ、なんのことでしょう?」

奏「ちひろさん。一ついいかしら」

ちひろ「なんですか?」

奏「私がちひろさんから凛の代役の連絡を受けたのが、昨日。凛は体調を崩してるって。でも今朝、凛が自宅から出るのを凛のご両親が見ている。それについ
てはどう説明するの?」

ちひろ「あら。昨日の時点で体調が悪くても、よく眠ったら翌日に回復するなんて。よくあることですよ。大事を取って、スケジュールは開けておいたんで
す」

奏「……そう」

100 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:51:46.23 ID:c6PUDvkw0

P「お前ら、凛の家に行ったのか?」

卯月「……凛ちゃんも最近、元気がなかったから。心配で……」

加蓮「そーだ! Pさんとっまゆちゃんと言えば! 私たち、事務所の近くのコンビニで買い物してるの見たんだよ! どういうこと?」

P「……見られてたのか」

未央「……」

P「そうだ。まゆと二人で夕飯を買いに出た。すぐに部屋に戻ったけどな」

奏「いくらでも逃げる手段はあったんじゃない? 少なくとも、その間は」

P「……申し訳ないような気がしてな」

乃々「……」

P「……それからすぐ、部屋に茜たちが来た。まゆはすぐに部屋に入れた。特に困った様子でもなかった」

奈緒「諦めたってことか?」

P「……分からない」

卯月「……」

P「……まゆはお茶を入れにキッチンのほうに行った。俺たちは話をしながら待ってたが、やけに遅いことが気になって様子を見に行った」

輝子「あ、携帯の着信も……」

P「そうだ、着信音でまゆがトイレにいることが分かった。奈緒が凛にかけた電話だ」

P「……まゆと凛は倒れていた。意識が無かったから、救急車を呼んで病院に運んでもらった。……こういうことだ」

101 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:52:35.17 ID:c6PUDvkw0

ちひろ「Pさん? 肝心な部分が抜けてますよ?」

乃々「そうです。Pさんがまゆちゃんじゃなくて凛さんを選んだって言うのは……」

未央「え、それってもしかして……」

茜「……ごめんなさい! 聞いちゃいました!」

加蓮「え、茜ちゃん?」

P「……茜。あの話は未央から聞いたのか?」

茜「正確には卯月ちゃん、未央ちゃん、加蓮ちゃん、奈緒ちゃんが話しているのを……」

卯月「あ……」

P「……そうか」

ちひろ「……私が言いましょうか。これは博打だったんですよ。乃々ちゃん」

乃々「……」

P「……どういうことですか」

ちひろ「言った通りですよ。まゆちゃんは博打をしたんです」

輝子「……博打?」

ちひろ「そうです。それも小さなものじゃなく、まゆちゃんはとても大きなものを賭けました」

乃々「……自分の恋心、ですか」

P「……!」

102 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:53:17.24 ID:c6PUDvkw0

卯月「でも、なんでそんなことをしたんですか?」

加蓮「そうだよ! 凛を拘束したりして。そんなの不公平じゃん!」

ちひろ「…………Pさん? こうなったら話さざるを得ないですよね?」

P「……」

奈緒「まだ何か隠してることがあるのか? プロデューサー!」

P「……」

ちひろ「Pさんが話さないなら私が話しますよ?」

P「……いや、俺が言います」

輝子「……フヒ」

乃々「…………洗いざらい、吐いてもらうんですけど」

卯月未央奏茜奈緒加蓮「……」

103 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:54:53.38 ID:c6PUDvkw0
P「……凛に抱き着かれて告白された。そのことは知ってるんだよな?」

輝子「あぁ……」

卯月「……私が見ちゃいました。ごめんなさい」

P「いや、卯月は悪くないんだ。悪いのは全部俺なんだよ」

未央「どういうこと?」

P「……あの日、あの時。俺が凛に告白されてたときに……」

加蓮「何かあったの?」

P「……同じスタジオで収録してたまゆを一人にするべきじゃなかったんだ」

奈緒「……くどいぞPさん! 何があったんだ! Pさんが凛の告白を聞き流してた間に、まゆに何があったんだよ!」

P「……」

P「…………強姦、レイプされそうになってたんだ」


輝子乃々卯月未央奏茜奈緒加蓮「…………え?」

104 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:55:56.32 ID:c6PUDvkw0
P「…………まゆが襲われてたんだよ。番組のスタッフに」

乃々「え、それって……」

ちひろ「……熱狂的なファンだったらしいですね。まゆちゃんのファンは過激な人が多いですから」

加蓮「いや多いですからって……洒落になんないでしょ、それ」

卯月「Pさんはその時……あっ」

P「……俺は凛に告白されてた。スタッフは数人がかりのグルだったらしい。楽屋の警備員さんもそいつらに嵌められてた。まゆを守る人は誰もいなかったん
だ」

輝子「それでまゆちゃんは事務所に来なくなってたのか……」

奏「……初耳なんだけど」

ちひろ「他のアイドルがそれを知ったら仕事に支障が出るでしょう?」

P「まゆを襲った本人は警察に突き出した。各テレビ局、ラジオ局にも注意を厳重に喚起した。警備も増やした」

未央「……」

P「でも俺がやったのは後始末だけだ。結局まゆを助けたのは、幸運にもそこを通りかかった茄子さんだった」

ちひろ「突然まゆちゃんの楽屋だけ停電して、焦った犯人が机の角に小指を思いっきりぶつけ、転げ悶えてるところに楽屋のドアがいきなり倒れてきて下敷き
になったらしいです」

輝子「こ、幸運って怖いな……」

105 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:57:06.24 ID:c6PUDvkw0

P「結果としては服を強引に脱がされそうになっただけで済んだ。だがまゆは深く傷ついた」

奈緒「当たり前だろ……!」

加蓮「奈緒、冷静になって」

奈緒「なんだよ! こんなの聞かされて冷静になんかなれるか! まゆの気持ちを考えると……!」

未央「……でも、誰も悪いわけじゃないんだよね。悪いのはまゆちゃんを襲った人で」

奈緒「じゃあ悪いのはまゆのそばを離れた、Pさんじゃないのか!? どうなんだよ!」

P「……」

未央「それは……」

ちひろ「……確かにPさんにも責任の一端はあります」

P「!」

奈緒「……だよな。そうなんだよな、Pさん」

P「……あぁ。さっきも言っただろ、悪いのは全部俺だ」

ちひろ「でもこれは本当に偶々起こった、不幸な事件だったの。誰も、誰かを責めたりはできない。Pさんもそのことについて負い目を感じる必要は、無いっ
てことです」

奏「……そうね。私も、そう思うわ」

奈緒「なんだよ……! 皆して大人ぶりやがって……!」ガチャ

加蓮「奈緒! どこ行くの!」

奈緒「病院だよ! 凛の所に行く! こんな話を聞くよりもずっと凛の方が心配だ!」

加蓮「待って! ねぇったら!」バタン

輝子「……」

乃々「……」

卯月「……」

未央「……」

茜「……」

奏「……」

106 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:58:01.17 ID:c6PUDvkw0

P「……ちひろさん。自分がやったことは話しました。次はちひろさんの番です」

ちひろ「博打のことですか? Pさんなら大体の察しはついてると思ったんですけど」

P「……とても危険な賭けです。そこまでしてまゆが欲しがったのは、いったい何なんですか?」

奏「それはPさんの……」

P「いや、それは分かってるんだ。まゆは俺に好かれたがってた。そのために俺を拘束して、誘惑して、その様を凛に見せつけて……」

卯月「……」

ちひろ「なら何が分からないんですか?」

P「……まゆはいい子なんです」

ちひろ「……」

P「佐久間まゆっていう子は可愛くて、気が利いて、面倒見が良くて、料理が上手で……」

P「……何より、誰よりも恋愛に対してまっすぐなんです」

輝子「…………私もそう思うぞ」

乃々「わ、私も……」

ちひろ「……それはPさん達がそう思い込んでただけ、じゃないんですか?」

P「! 何を……!」

ちひろ「まゆちゃんはどこか歪んでる。ただの可愛い女の子じゃない。Pさんもそこにアイドルとしての魅力を感じたんでしょう?」

P「そ、それは……」

107 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 05:59:12.88 ID:c6PUDvkw0
ちひろ「じゃあ監禁されてるときは? 『まゆちゃんがこんなことするはずない』って本気で思ってましたか?」

P「……くっ」

ちひろ「……この際だから言っときますけど」

ちひろ「私たちは所詮他人同士なんですよ。職場が同じで、同じユニットになって、一緒にいる時間が増えたところで、心の底から信頼できる仲間なんていな
いんです」

輝子乃々「うぅ……」

ちひろ「誰しも心の中に闇を持ってるんです。今回のことだってまゆちゃんの闇から目を背けていたPさんの責任……と言われても仕方ないですよね?」

卯月「……それは言い過ぎじゃないですか?」

ちひろ「あら、卯月ちゃんはそう思いますか?」

卯月「だってそんなこと言い出したら……まゆちゃんがPさんのことを好きな事自体を否定してるみたいで……」

ちひろ「……もしかしたらそうかもしれませんね」

卯月「え……」

ちひろ「成就しない恋なら、しない方がマシだったのかも」

P「ちひろさん!」

108 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:00:04.52 ID:c6PUDvkw0

ちひろ「ふふ。分かってますよ。年頃の女の子にこんなこと、言うもんじゃないですよね」

卯月「……私も凛ちゃんのところに行ってきます」ガチャ

輝子「……わ、私も……」

乃々「……もういいです。もりくぼは疲れました」

奏「……ここは空気が悪いわ」

P「……」

ちひろ「……」

未央「……」

茜「……」

P「……未央と茜は凛のところに行かないのか?」

茜「……いえ! ちょっと気になることがありまして!」

ちひろ「まゆちゃんのことですか?」

茜「もちろん! でも凛ちゃんとまゆちゃんが病院でああいう状況なんで、とりあえずPさんとちひろさんに聞いてみようかなー、と思いまして!」

P「……いいぞ。もう隠してることなんてないし、なんでも聞いてくれ」

茜「はい! では僭越ながら……」

茜「これは乃々ちゃんと輝子ちゃんに聞いたことなんですが、まゆちゃんと凛ちゃんってそんなに仲が良かったんですか?」

ちひろ「特別仲が悪いわけじゃないですよね」

P「そうだな。むしろいい方だと思ってたが……実際はそうでもなかったってことなのかな」

茜「いえ、私もそう思ってたから混乱してるんです」

P「どういうことだ?」

茜「じつはですね……」

109 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:04:58.22 ID:c6PUDvkw0


数時間前


茜「凛ちゃんとの関係……とか!」

乃々「ひっ」

茜「どうしましたか?」

輝子「あー……乃々ちゃんはちょっと凛ちゃんに苦手意識が……」

乃々「あーいえ……トラウマってほどじゃないんですが……」

茜「おおう、大丈夫ですか? 話すのがしんどいなら……」

乃々「……大丈夫ですけど。もりくぼは自分にできることをするって決めたんですけど……」

輝子「おお……乃々ちゃんが成長している……」

茜「そうですか! じゃあよろしくお願いします!」

乃々「と言ってもそんなに知ってることはないんですけど……精々仲がいいってことくらいしか……」

茜「仲がいい? それは初耳です!」

乃々「え……知らなかったんですか?」

輝子「私も知らなかった……。仲がいいって、どのくらいだ?」

乃々「頻繁に家に遊びに行くくらいには……? しょっちゅう凛さんからその話を聞かされてますし……」

輝子「え……そんなにか」

乃々「泊まりとかも結構してたみたいですけど……本当にそれくらいしか……」

茜「いえいえ! 十分ですよ! ありがとうございます!」

輝子「凛さんが……なにか関係しているのか?」

茜「んー……」

乃々「まさか凛さんと喧嘩して?」

輝子「そ、そうなのか? 茜さん」

茜「……」

乃々「な、なにか言ってほしいんですけど!」

茜「んー、わかりません!」

輝子「なんだそれ……」

茜「私の勘ですから! そんなに気にしないでください!」

乃々「はぁ……」

輝子「ほ、本当にダイジョウブなのか……」

110 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:06:48.90 ID:c6PUDvkw0

茜「……と!」

P「頻繁にお互いの家に遊びに行く? それだけ仲が良かったら……」

ちひろ「こんなことにはならなかった? 仲が良かったからこそじゃないですか?」

茜「それはありますね! 仲がいいほど喧嘩するっていいますし!」

P「それを言うなら喧嘩するほど仲がいい……まあ意味はそんなに変わらないが」

茜「というか、私も最初はそう思ってたんです。でもそれだとなんだかぱっとしないんですよねー」

ちひろ「パッとしない……ですか?」

未央「あ、それ。私も思ってたんだよね。それを言いたくて残ってたんだけど……」

茜「おお! やっぱり未央ちゃんとは気が合いますね!」

P「未央、何が腑に落ちないんだ?」

未央「あー。ちひろさんがさっき言ってましたよね? 誰しも心の中に闇を飼っている、って」

茜「まさにそこです! 私ももやもやしてたんです!」

ちひろ「それがどうかしましたか?」

未央「えーと、怒らないでくださいよ?」



未央茜「私たちから言わせてもらうと、そんなのちゃんちゃらおかしいからね!」



ちひろ「……は?」

111 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:07:52.67 ID:c6PUDvkw0

P「お、おい……」

未央「……今まで私たちは一緒に色んな困難を潜り抜けてきた。毎日のレッスンやライブツアー。ドラマや映画の役作りにも、皆で真剣に取り組んできたんだ
よ」

未央「そうだよね?」

P「……あぁ。それは間違いない」

茜「アイドルは皆に光を届けるんです。そのために、私たちはここまで頑張ってきて、これからも頑張ろうとしてるんです」

茜「……そしてそれはまゆちゃんだって、同じはずなんです!」

ちひろ「……だから?」

未央「だから今回のことも、そんな耳障りのいい言葉で簡単に片づけさせない。諦めない。まゆちゃんにはまゆちゃんの考えがあって、あんなことをしたはず
だから。私はその理由が知りたい」

茜「心の中の闇? 上等です! そんなもの、皆の力で振り払ってやりますから!」

P「お前ら……」
ちひろ「……そうですか。それじゃ精々頑張ってください」クル

ちひろ「私が知ってることは全部話しましたし、これ以上、協力できることはないですから」

未央茜「はい! ありがとうございました!」

未央「……プロデューサー!」

P「……なんだ?」

未央「……私は男じゃないし、Pみたいに大人でもないから分かんないけど」タタタ

P「?」

未央「……好きな人には好きって素直に伝えるべきだよ?」コソッ

P「……!? おまっ……」

茜「?」

112 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:08:38.72 ID:c6PUDvkw0

未央「それじゃあ私も皆のところに向かいます! 失礼しました!」

茜「失礼しました!」

ちひろ「……ねえ、二人とも」

未央「? どうしたんですか?」

ちひろ「……どうしてそこまで信じられるの? 赤の他人同士なのに」

茜「そんなことないですよ! ね、未央ちゃん!」

未央「……そうだね、茜ちん!」

未央茜「だって凛ちゃんもまゆちゃんも、私たちにとって大切な友達だから!」

ちひろ「……そうだったわね」

茜「あ、あと私はもう一つ」

ちひろ「?」

茜「約束しましたから! 私は前だけ向いて突っ走るって!」

113 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:09:22.52 ID:c6PUDvkw0

P「……行っちゃいました」

ちひろ「……」

P「……太陽みたいですね」

ちひろ「……えぇ。私には眩しすぎます」

P「……」ガチャ

ちひろ「凛ちゃんですか?それとも、まゆちゃんですか?」

P「…………ちひろさんは意地悪ですね」バタン





ちひろ「……」

ちひろ「……」


ちひろ『成就しない恋なら、しない方がマシだったのかも』


ちひろ「……」ハァ

ちひろ「……よく言ったもんよね。ほんと」

114 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:10:12.27 ID:c6PUDvkw0

未央「やー、盛大に啖呵切っちゃったね」

茜「かっこよかったですよ!」

未央「褒めるな褒めるな。して、茜殿よ。一つ尋ねたいのじゃが」

茜「はっ、なんでしょうか!」

未央「……私たちができることって、なんだろうね」

茜「……探偵ごっこや謎解きをするつもりはありませんよ」

未央「だよね。そう言うと思った」

茜「……難しいですね」

未央「私たちがしたいのはさ。自己満足とか、事件解決とか、そういうのじゃないじゃん?」

茜「そうですね!」

未央「……じゃあ、具体的に何をしよう?」

茜「……さしあたっては、お二人が目が覚めるのを待ちつつ! 私たちは私たちの仲間を慰めるべきだと思います!」

未央「だよねー、そうなるよねー……」

茜「?」

未央「……ま、それは仕方ないか!」

茜「あの、未央ちゃん? それはどういう……」

未央「すとーっぷ! 女にはしぃくれっとの一つや二つはあるものですぞ、茜どの?」

茜「な、なにー! それでは仕方ありません!」

未央「うむ、理解が早くて助かるね」

茜「それじゃあ私は病院に向かいます!」ダッ

未央「いや、行動も早いな! 待ってよー! 私もしぶりんのところ行くんだから! 一緒に行こうよー!」ダッ

115 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:15:35.55 ID:c6PUDvkw0

卯月「……」

奈緒「……」

加蓮「……」

奏「……」

凛「……」スースー

卯月「……ほんとに、眠ってる」

奈緒「そうだな。かわいいもんだ」

加蓮「……かわいそうに」

奏「……」

卯月「……死んでるみたい」

奈緒「卯月!」

卯月「だって……」

加蓮「いや、私もそう思う。凛は今、死んでるようなもんだよ」

奈緒「加蓮まで!」

奏「……凛の知らないところを覗いて、怖くなった?」

卯月「…………怖くなった、のかな。凛ちゃんが遠くに行っちゃって、帰ってこないんじゃないかって……」

奈緒「縁起でもないこと言うなよ……死んだりすることは無いって言ってたじゃんか!」

加蓮「目が覚めたとして、それは今まで私たちが知ってた凛じゃないかもしれないんだよ」

奈緒「凛は凛だろ……! そんなの私には関係ない」

奏「奈緒が気にしなくても、凛はどうかしらね」

116 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:16:23.63 ID:c6PUDvkw0

卯月「……まゆちゃんがやったことは、凛ちゃんをどれだけ傷つけたんでしょうか」

奏「どうかしら。本人に聞いてみないと分からないわね」

加蓮「……まゆちゃんってちょっと変わってるとは思ってたよ。でもほんとにこんなことする子だとは、思わなかった」

奈緒「それほど抜け駆けされたのが許せなかったんだろ……」

奏「もしも私たちがその立場だったら?」

奈緒「……想像できないよ。そんなの」

加蓮「……」

卯月「誰が悪いわけでもないのに、なんでこんなことになっちゃったんだろ……」

奏「……恋って、そういうものよ」

奏「少なくとも誰かが誰かを好きになることは尊いこと。こじれたら色々と面倒になるけれどね」

奈緒「まゆがやったこともしょうがないってことか?」

奏「ちょっと行動力が過ぎたわね。ある意味計画的でもあったようだけれど……」

加蓮「はぁ……博打のこと? あれって勝算低すぎると思うんだけど」

奏「どうかしら。そんな当て馬にあのちひろさんが乗るとも思えないけれど」

卯月「……」

凛「……」スースー

卯月「……凛ちゃん」

117 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:16:51.76 ID:c6PUDvkw0

乃々「……」

輝子「……」

まゆ「……」スースー

乃々「……かわいい寝顔ですね」

輝子「そうだな……」

乃々「……まゆちゃんがしたことは、間違ったことだったんですか」

輝子「ど、どうだろう。やったこと自体は悪いことだと思うけど……」

乃々「……」

輝子「まゆちゃんは私たちよりもずっと大人だったからな……。恋愛とか、私には分からない」

乃々「私にも分かりません……」

輝子「……私たちは、まゆちゃんを止めるべきだったのかな」

乃々「もっとちゃんと話を聞くべきだったのかも、ですけど……」

輝子「……」

乃々「……」

まゆ「……」スースー

乃々「……少なくとも、まゆちゃんは歪んでなんかいません」

輝子「あぁ。私もそう思うぞ」

118 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:17:25.06 ID:c6PUDvkw0

未央「しぶりーん……っと、みんないるんだ」

卯月「あ、未央ちゃん……」

奈緒「遅かったな。何してたんだ?」

未央「いやーあのちひろさんに喧嘩売っちゃったよ」

加蓮「? なにそれ」

未央「いやいや。こっちの話こっちの話」

奏「……大丈夫なの?」

未央「だいじょぶだいじょぶ。で、お姫様はまだ起きてないの?」

卯月「……はい」

加蓮「まだ一回も起きてない。私たちが来てからもずっと眠ったまま」

奈緒「凛、未央も来たぞ? そろそろ起きてもいいんじゃないか? な?」

凛「……」スースー

奈緒「……くそ」

奏「……」

未央「……そっか」

奈緒「……なあ。未央はどう思う?」

未央「それは……まゆちゃんのやったことについて? それとも……」

奈緒「諸々含めたぜんぶについて」

未央「……中々難しいこと聞くねー」

119 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:17:59.62 ID:c6PUDvkw0

未央「そうだなー、まずはちょっと信じられない気持ちがある」

加蓮「あー……それは私にもあるかもしんない。まさかこんなことになってるなんて思ってなかったよ」

奏「私なんか、あなた達が楽屋に来てなかったら、このことについて一切知らないままだったわよ」

奈緒「今日、私たちが卯月と未央に凛のことを相談してなかったら……奏と同じようになってただろうな」

加蓮「そう考えたら、こうやってしぶりんとまゆちゃんの境遇を少しでも知れたってことは、すごくラッキーだよね」

卯月「でも……私たちには何もできなかった……」グスッ

未央「それは違うよしまむー。私たちが今こうやってしぶりんの側にいてあげられるってことはとっても大事なことなんだよ」

卯月「でも……」

未央「……さっき茜ちんとも話したんだ。私たちがするべきことについて」

卯月「……」

未央「しぶりんとまゆちゃんが目覚めたとき、私たちがそこにいてあげられればいいな。って思うんだけど……どう?」

奏「……いいんじゃない?」

加蓮「私たちが口出しできる問題でもないからね……それがいいよ」

120 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:18:36.18 ID:c6PUDvkw0

奈緒「……」

加蓮「奈緒? またへそ曲げちゃうの?」

奈緒「……いや。もうそれはやめた。凛とまゆの気持ちとかPの対応とか、釈然としないのは変わらないけどさ」

加蓮「へえ、偉いじゃん?」

奈緒「……眠ってる凛を見たら、な。無事に目を覚ましてくれさえすればいいやって……そういう気持ちになってくるんだよ」

奈緒「それと……さっき加蓮が言ってたこと、思い出した」

加蓮「なんか言ったっけ?」

奈緒「『できることとできないことがある。目を背けるな』って」

加蓮「あはは。そういや言ったね、そんなこと」

卯月「……」

凛「……」スースー

卯月「……」

未央「……しまむー?」

卯月「……ちょっと、一人にさせてください」

未央「……いいよ。私たちはここで待ってるから」

卯月「……ありがとうございます」

121 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:19:09.08 ID:c6PUDvkw0

茜「まゆちゃん、こんばんはー……っと」

乃々「あ、茜さん……」

輝子「……流石に病院では静かにしてるんだな」

茜「ここに来るまでに看護師さんに三回も注意されましたからね!」

輝子「あ、やっぱり……」

茜「で、どんな感じですか?」

乃々「見ての通りです……反応も無いし起きる気配もありませんし……」

茜「ほあー……。人形みたいにかわいい寝顔ですねぇ」

乃々「……何してたんですか?」

茜「戦ってました!」

乃々「え、誰とですか?」

茜「ちひろさんとです!」

輝子「あー……」

乃々「あー……」

茜「な、なんですかその目は」

輝子「……茜さん。ちひろさんが言ったことについて、どう思う?」

茜「ちひろさんのどの発言についてですか?」

輝子「なんでもいい。例えば……」

乃々「『まゆちゃんは歪んでいる』って言ってました」

茜「ああ、言ってましたね」

輝子「私たちはそんなことないって思うんだけど……どうかな?」

茜「私は……歪んでない人なんかいないと思いますよ」

乃々「……」

茜「普通の人ってどこかしら歪んだり、罅があったり、弱点があったりするものですから!文字通り、完璧な人なんていないと思いますよ」

122 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:19:55.88 ID:c6PUDvkw0

乃々「完璧な人なんていない……」

輝子「……」

茜「……耳元で『おはようございます!!』って叫んだら目が覚めたりしませんかね?」

輝子「そ、それはよくないと……」

茜「あはは。冗談ですよ!」

乃々「茜さんが言うと冗談に聞こえないんですけど……」

茜「二人はどうですか?」

乃々「え?」

茜「まゆちゃんの目が覚めたら……なんて声をかけるつもりですか?」

乃々「そ、それは……」

輝子「……」

茜「ああ、そんなに難しく考えないでいいですよ!」

乃々「……」

輝子「……」

茜「……二人とも考え込んでしまいました」

輝子「む、難しいな……フヒ」

乃々「んー……」

茜「ま、まあ考えることは悪いことじゃないですからね!」

まゆ「……」スースー

輝子「……ちょっと外の空気を吸ってくる」

乃々「……わかりました」

茜「いってらっしゃい!」

輝子「……ありがとう」

123 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:27:46.79 ID:c6PUDvkw0

P「……」

P「……」

P「……俺はどうすればよかったんだろうな」

P「なぁ。教えてくれよ」

P「凛」

P「まゆ」

P「……ははっ」

P「俺なんかに答えてくれるわけないか」

P「……」

P「……俺が出来ること、しなくちゃいけないこと」

P「……」

P「……物語を、終わらせるんだ」

124 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:28:29.96 ID:c6PUDvkw0

卯月「……」グスッ

卯月「……泣いちゃダメだよ。皆だって、泣いてないでしょ?」

卯月「だから……」

卯月「……凛ちゃん」グスッ

輝子「……フヒ」

卯月「!」

輝子「ご、ごめん、なさい。偶々なんだ。本当に偶々……通りかかっただけで」

卯月「み、見ちゃいました?」

輝子「……うん」

卯月「あはは……。かっこ悪いですよね、私」

輝子「……そんなことないと思う」

卯月「……輝子ちゃんは優しいですね」

輝子「……」

卯月「……」

125 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:29:14.23 ID:c6PUDvkw0

輝子「凛さんは……?」

卯月「……」

輝子「そっか、凛さんもまだなんだ……」

卯月「……まゆちゃんも?」

輝子「……うん」

卯月「……」

輝子「……」

卯月「なんでこんなことに、って考えても、無駄なのは分かってるんです」

卯月「それでも考えちゃう。なんで、どうして、って」

輝子「……私も、だ」

輝子「……それで悲しくなって、何もできなかった自分が歯痒くて」

卯月「勝手に辛くなって」

輝子「そんな自分が嫌になって……」

卯月「……私、凛ちゃんのことなら何でも知ってると思ってたのかもしれませんね」

卯月「本当はそんなわけないのに」

輝子「……」

卯月「……」

126 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:30:12.29 ID:c6PUDvkw0

輝子「……なんて言えばいいと思う?」

卯月「え?」

輝子「まゆちゃんが目を覚まして、私はまゆちゃんになんて声をかければいいんだろうな」

卯月「……」

輝子「……それがわかんなくて、逃げてきたんだ」

輝子「私は今日、まゆちゃんに会ってるんだ。なのに止められなかった。気付けなかった」

輝子「……どんな顔したらいいかも、分かんなくて」

輝子「……怖くなって」

卯月「……私もそうです」

卯月「凛ちゃんの顔を見るのが怖くなった。私の知ってる凛ちゃんじゃないような気がして、それで……」

卯月「……」グスッ

輝子「……」グスッ

127 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:30:47.74 ID:c6PUDvkw0

輝子「……泣いてもいいのかな」

卯月「……もう泣いてるじゃないですか」

輝子「……卯月ちゃんもな」

卯月「……内緒にしてくれますか? これで終わりにしますから」

卯月「二人が目を覚ました時に、笑って迎えてあげられるように。弱い自分を倒すために……」

輝子「うん。大丈夫」

卯月「……ありがとう」

輝子「おあいこってやつだから……な」

卯月「……う」

輝子「……う」

卯月輝子「うええええん」

卯月「凛ちゃあああん」

卯月輝子「うええええええん」

128 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:31:27.24 ID:c6PUDvkw0

凛「……」スースー

奈緒「……遅いな」

未央「そうだね。ちょっと心配になってきたな」

加蓮「迎えに行く?」

未央「いや、待ってるって言っちゃったからね」

加蓮「あ、そうだった」

奏「……こんなこと言うのはあれだけど、暇ね」

奈緒「……確かにな」

加蓮「そういや私たち、いつまでここにいていいんだろうね? もう夜中だし、手続きとかしてないし」

奏「別にいいんじゃない? ここって346の直系の病院みたいだし。そこらへんはちひろさんかPがどうにかしてると思うわよ」

加蓮「あ、そうだった」

未央「ちひろさんと言えば……退屈ついでにちょっと考えてみたんだ。なんでちひろさんが関わっているのか」

奏「あら、いいじゃない」

奈緒「なんだよ奏。随分乗り気じゃんか」

奏「他人の粗を探すのって存外楽しいものよ。特に秘密を多く抱えた相手だと、ね」

129 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:32:04.28 ID:c6PUDvkw0

加蓮「……もしかして、奏って結構根に持つタイプ?」

奏「どうかしらね」

未央「あ、しぶりんが聞いたら嫌がるだろうし……ちょっとこっち寄って」

奈緒「はいはい……。で?」

加蓮「本田先生の中ではどういう結論になったの?」

未央「うん。ちひろさんは、まゆちゃんの計画を阻止したかったんじゃないかなって」

奏「それは……有り得るわね」

加蓮「うん。確かに」

奈緒「そうか? それなら最初から協力なんてしなきゃよかったじゃん」

未央「なんか弱みを握られてた……とか。完全に妄想の域になっちゃうけど」

加蓮「実は裏から手を引いてた……。十分考えられる話だね」

奈緒「確かにあのちひろさんが、黙ってまゆに従うとも思えないしなー」

奏「完全に無関係の私を巻き込んでまで……というか、凛の代役が私じゃないといけない理由って、あったのかしら?」

未央「む、それは一考の余地ありだね」

130 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:33:36.59 ID:c6PUDvkw0

加蓮「……それにしても卯月、遅いね。病院だし滅多なことはないはずだけど……」

奈緒「……私だけでも探しに行こうか」

奏「これってどんどん生存者が減っていくパターンね」

奈緒「それこそ縁起でもないこと言うなよな……」

卯月「……すいませんー。遅くなっちゃって」

奈緒「卯月! ちょうど探しに行こうと……」

輝子「お、お邪魔します……」

奈緒「輝子! どうしたんだ?」

卯月「さっき偶然会ったんです。凛ちゃんの様子も見たいって」

奈緒「そうか……。まゆはどうだった?」

輝子「眠ってる。かわいい寝顔だった……」

未央「……」

卯月「? どうかしましたか?」

未央「……いや、なんでもない」

卯月「?」

未央「……もう大丈夫?」

卯月「……はい。大丈夫です」

未央「そっか。よかった」

加蓮「……」

奏「……」

凛「……」スースー

131 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:34:54.27 ID:c6PUDvkw0

P「……」ガチャ

P「……」

P(……なにか、あるはずなんだ)

P(物語を終わらせる、なにか)

P「……」

P「……これって、不法侵入かな」

P「……」

P「……」ガサガサ

P「……」ガサガサ

P「……!」

P「……日記帳か」

P「……」ペラ

P「……これか」

P「……」

P「……これが、俺の役割だったのか」




『凛ちゃんへ』




P「……」

P「……くそ」

132 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:39:13.72 ID:c6PUDvkw0

未央「……んがっ」

卯月「……ふふ、未央ちゃん。よだれ垂れてますよ」

未央「おっと失礼……。うとうとしてた」ジュルリ

奏「無理もないわね。一日中動き回ってたんだし。ほら。あの子は完全に入っちゃってる」

奈緒「ぐおおお、すぴいいい」スヤア

未央「これはこれは……いい爆睡っぷりですな」

輝子「いびきで凛さんが起きないか心配だ……」

加蓮「それはそれでいいんじゃない? 『奈緒、うるさい』ってさ」

奈緒「うえっ……?」

奏「眠り姫のお目覚めね」

奈緒「だ、誰か私の名前呼んだ?」ゴシゴシ

加蓮「呼んでない、呼んでないよー」

卯月「いい子のなおちゃんはもうちょっと寝てていいんですよー」

奈緒「い、いや。私だけ寝るなんて嫌だ」

未央「かみやん、よだれ」

奈緒「え、あっ」ジュルリ

加蓮「凛につけてたら大惨事だったねー」

奈緒「……そうか、まだ凛は寝てるのな」

卯月「……」

133 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:39:54.09 ID:c6PUDvkw0

乃々「あ、あのー……」

卯月「あ、乃々ちゃん」

茜「こちらに輝子ちゃんがお邪魔してませんか?」

輝子「あ、はい」

乃々「戻ってこないからちょっと心配したんですけど……」

輝子「あ。そうだった……」

茜「私たちも凛ちゃんの様子を見たかったので。ちょうどよかったですよ」

輝子「ということはまゆちゃんもまだ……」

乃々「……はい」

輝子「……」

未央「こーら。また暗くなってるじゃん。くよくよしてても仕方ないよ」

奈緒「だな」

卯月「……はい」

134 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:40:28.72 ID:c6PUDvkw0

茜「……そういえば。輝子ちゃん。答えは出ましたか」

輝子「……その時になったら。自然と言葉は思いつくと思うんだ」

輝子「こんなんでいいかな……?」

茜「上出来です! ね?」

乃々「……私にもできるでしょうか」

奏「安心して? ここにも長いことぐずってた子がいるから」

奈緒「私のことか。まあ否定はしない」

卯月「……」

奏「……ふふっ」

乃々「……頑張ります」

輝子「一緒に……な」

135 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:42:00.91 ID:c6PUDvkw0

茜「……皆さんはいつまでここに?」

未央「そりゃ二人の目が覚めるまで……と言いたいけど、そういうわけにはいかないよね」

加蓮「とりあえず今晩はここに泊まるつもり。というか今から帰るにも電車ないしね」

奈緒「というかもうこんな時間か。始発までそう時間もないし、それで帰るかな」

奏「私もそのつもりよ」

茜「そうですか! じゃあそれまで皆で話しませんか?」

未央「いいね! なんについて話す?」

卯月「あの、私、考えたんですけど……」

奏「どうしたの? まゆちゃんのこと?」

卯月「はい。なんでそんなことしたんだろう、ってことが……」

加蓮「なんでって、Pさんと凛を引き離すためでしょ?」

卯月「あ、いえ……。それはそうなんだけど、私が気になったのはもっと細かいところで……」

136 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:42:43.40 ID:c6PUDvkw0

乃々「……確かに違和感はあるんですけど」

輝子「それって……?」

卯月「私がもしもまゆちゃんの立場だったら、って考えたんです。自分より先にPさんに告白した凛ちゃんに嫉妬して、引き離すために二人を監禁する……」

卯月「……なんで二人で外に出たんだろう、って」

奈緒「……確かに。言われてみれば、そんなことする必要はないよな」

茜「それなら私も!」

未央「おぉ、なんだい茜ちん?」

茜「まゆさんはその前にも一度、Pさんを部屋の外に出してます。 しかもPさんだけで!」

加蓮「あー、茜ちゃんが伝言を預かったとき?」

茜「そうです! 私がまゆちゃんなら、絶対にPさんを一人で外に出したくないです!」

輝子「……確かに」

137 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:43:34.50 ID:c6PUDvkw0

奏「茜ちゃんたちが来たとき狼狽える様子が無かった、っていうのも不自然ね。今の私たちじゃ、推論しか立てられないけれど」

乃々「……」

輝子「……乃々ちゃん? どうかしたか?」

乃々「…………まゆちゃんの目が覚めたら、そこらへんもちゃんと話してもらわないといけないんですけど」

卯月「……そうですね」

未央「……まゆちゃんは悪い人じゃないんだよね。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ不器用なだけで」

加蓮「……そうだね」

奈緒「……全く、不器用だよなー! 凛も、Pさんも、まゆも!」

加蓮(え、奈緒がそれ言う?)

輝子「でも、私たちも同じ……。そのままのキモチを誰かに伝えるのは、思ったよりも難しい……んだよな」

茜「黙っているんじゃ、気持ちは伝わらないですからね!」

奏「……面倒な生き物ね。人間って」

138 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:44:32.87 ID:c6PUDvkw0

乃々「……まゆちゃんが帰ってこないと、やっぱり机の下が寂しいんですけど」

卯月「……きっとこのことも時間が経てば、笑って話せるようになります」

加蓮「時間なんか必要ないよ。笑って迎えてあげよう。まゆちゃんや凛のためだけじゃなくて、皆の為にも」

茜「……あ、見てください!」

奈緒「どうしたんだ?」

茜「……朝焼けです! とっても綺麗ですよ!」

卯月「あ……ほんとだ……」

未央「……すごいね」

加蓮「……うん」

奈緒「……あぁ」

奏「……きれい」

乃々「ま、眩しい……」

輝子「綺麗だな……」

茜「太陽、って感じですね……」

卯月「……凛ちゃん、まゆちゃんとも、一緒に見たいですね」

未央「……見られるよ。だって毎日、陽は昇るんだし。ね?」

卯月「……はい」

加蓮「……ね、話は変わるけどさ。こないだの収録で奈緒がやらかしたこと、知ってる?」

奈緒「おい! それは秘密にするって約束しただろ!」

加蓮「いーじゃん。どうせオンエアでバレることなんだしさ」

未央「なになに? なにしたの?」

奏「興味があるわね」

卯月「気になります!」

茜「参考にさせてください!」

奈緒「なんでこう食いつきがいいかなぁ! もう!」

加蓮「えっとねー……」

奈緒「だああああ! 私をおちょくって遊ぶの、いい加減やめてくれえええ!」

「あははははは!」


凛「……」スースー

139 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:46:20.50 ID:c6PUDvkw0

数日後の深夜、一人の患者が病室から抜け出した。看護師がそれを見つけ、戻るよう説得したが、患者は聞く耳を持たなかった。小指に赤いリボンを巻いたその患者は看護師の必死の制止も聞かず、七階の窓から身を投げ出した。

地面に頭を強く打ち、即死。血に塗れながらも、その顔は幸せそうに笑っていた。

140 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:52:32.84 ID:c6PUDvkw0
*
141 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:53:42.48 ID:c6PUDvkw0

まゆ「あはは、凛ちゃんってば、おかしいですね」

凛「えー? そうかな?」

まゆ「そうですよぉ。だってゲームに負けたほうが恥ずかしい話をするっていう罰ゲームなのに、それって奈緒ちゃんの話じゃないですかぁ」

凛「そうだよ。誰にとって恥ずかしい話かは決めてなかったからね。多分さっきの話を奈緒にしてあげたら、顔真っ赤にして恥ずかしがるだろうし」

まゆ「ずるいですよぉ。まゆは凛ちゃんの恥ずかしい話が聞きたかったのに」

凛「あはは、それはまた今度ね」

まゆ「むぅー」プクー

凛「そんなにほっぺた膨らませてもかわいいだけだよ。ほらこれ見せてあげるから。機嫌直して?」スッ

まゆ「あ、これは……」

凛「前に見たいって言ってたでしょ。ハナコの写真。沢山撮ってきたよ。どう?」

まゆ「……かわいいです」

凛「でしょ? あ、それはハナコが一緒に布団に入ってきたときで、それはお風呂からあがった後のハナコで、それは……」

凛「ってごめんね。横でわーわー言って。うるさかったかな」

まゆ「いやそんな、大丈夫ですよぉ?」

凛「まあゆっくり見てよ。私は本でも読んでるからさ」

まゆ「あ、はい……」

142 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:54:52.73 ID:c6PUDvkw0

まゆ「……」

凛「……」ペラ

まゆ「……」

凛「……ペラ」

まゆ「……あ」プルルルル

凛「……ん。まゆ、どうしたの?」

まゆ「お母さんから電話みたいですよ?」プルルルル

凛「あれ、もうそんな時間?」

まゆ「はい」プルルルル

凛「ありがと」ピッ

凛「……もしもし?……うん。…………そうなんだ」

まゆ「……」

凛「……ううん、大丈夫。わかった。気を付けてね」

まゆ「……」

143 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:55:36.92 ID:c6PUDvkw0

凛「え? ……大丈夫。まゆのとこだから。……うん、わかってるって、私から言っとくから」

まゆ「ご挨拶しましょうかぁ?」

凛「いや、いいよ。はい……はい。じゃあね、おやすみ」ポチ

まゆ「……どうしたんですかぁ?」

凛「うん。お母さんとお父さんがデートで帰ってくるのが遅いんだって。それで晩御飯は自分でどうにかしなさいってさ」

まゆ「あ、じゃあ……」

凛「うん。また厄介になってもいいかな? ……実はこないだ食べたまゆの料理がすごくおいしかったから、また食べたいなって思ってたんだ」

まゆ「構いませんよぉ。むしろ凛ちゃんなら大歓迎です」

凛「ありがとう! 何か手伝おうか?」

まゆ「大丈夫ですよ。凛ちゃんはお客さんなんだから、座って待っててください」

凛「そういうわけには……」

まゆ「……じゃあ食器を並べておいてくれますか?」

凛「! わかった。任せて!」

まゆ「ふふふ」

144 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:56:21.74 ID:c6PUDvkw0

凛「ごちそうさま」

まゆ「お粗末様でしたぁ」

凛「まゆの料理はおいしいね。うちのお母さんより上手だよ。あ、食器運ぶね」

まゆ「そんな、いいですよ。お客さんなんだから……」

凛「私がしたいから、いいの」

まゆ「……じゃあお願いしますね」

まゆ「……」

凛「……一緒に、しよ?」

まゆ「……はい♪」

145 : ◆Si5ECPaBLY [sage saga]:2017/09/07(木) 06:57:22.84 ID:c6PUDvkw0

凛「さて、どうしようか?まゆは何かしたいこと、ある?」

まゆ「凛ちゃんがしたいことなら、なんでもいいですよ」

凛「そう言われてもな……。あ、じゃあアイス食べたいな」

まゆ「アイスですか……コンビニに買いに行かないと」

凛「私が行ってくるよ。何か欲しいものある?」

まゆ「じゃあまゆも一緒に……」

凛「いーの。私がしたいって言ってるんだから。まゆはゆっくりしててよ」

まゆ「……そう、ですか」

凛「……」

まゆ「……」

凛「じゃ、行ってくるね。近いからすぐに戻ってくるよ」

まゆ「……いってらっしゃい」

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