【安価でUNDERTALE】ANCHOR TALE

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62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/20(水) 00:12:49.50 ID:8/Ct1P90o
メサイヤは、トリエルから放たれる炎弾をよく見つめた。

ぎゅんぎゅんと通り過ぎる火の玉を、ギリギリのところで避けようとする。

頬が焼けた。髪が焦げた。

もうとっくに、身体に力が入らない。

それでも、なんとか炎を見つめて避けつづけた。



やがて、メサイヤは気づいた。

とっくに自分が動けなくなっていることに。

そして、自分が避けているのではなく、トリエルがわざと火の玉を当てないようにしているのだとわかった。


メサイヤは、下を向きながら火の玉を打ち出し続けるトリエルを見つめた。


トリエル「……何を、しているのっ……」


メサイヤ「…………」


トリエル「たたかうか、にげるかしなさい!!」


メサイヤは、どうする。

>>63
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/20(水) 00:15:28.97 ID:SBpCaoHvo
>>61
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/20(水) 00:26:49.00 ID:8/Ct1P90o
残る力を、なんとか振り絞って、メサイヤは言い放った。


トリエルの攻撃が止んだ。


トリエル「…………」

メサイヤ「…………」

トリエル「……おねがいだから、おへやにもどって」


トリエルは、きのう、メサイヤをベッドまで連れて行ったときと、同じ目になっていた。


トリエル「わたしが ちゃんと おせわをする… やくそくするわ」


トリエル「たしかに ここは なにもない ところだけれど…」


トリエル「わたしたち きっと たのしく くらしていけると おもうの」


メサイヤは、トリエルの目を見つめ続けた。


トリエル「…これいじょう、わたしを こまらせないで ちょうだい…」

メサイヤ「…………」

トリエル「おねがいだから、おへやにもどって」

メサイヤ「…………」

トリエル「…………」

メサイヤ「…………」


無音の空間で、ぼろぼろになったメサイヤと、トリエルは、見つめ合った。


やがて、トリエルはふっと笑った。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/20(水) 00:30:14.04 ID:8/Ct1P90o
トリエル「フフフ……」


メサイヤ「…………」


トリエル「わたし ほんとうに ダメね……

こどもひとり まんぞくに すくえないなんて」


トリエル「……いいの。わかっているわ。

いっしょう ここで くらすなんて あなたはイヤよね。

なれてしまうと いせきは とてもせまい ところだもの。

ここは あなたにとって よい かんきょうとは いえないわ。」


メサイヤ「…………」



トリエル「わたしの のぞみも…

さみしいきもちも…

しんぱいも…


あなたの ために いまは ぜんぶ わすれましょう」


トリエルは、両手をあげた。

場に張りつめていた緊張感が、解け壊れた。


66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/20(水) 00:39:50.62 ID:8/Ct1P90o
トリエル「あなたが どうしても いくというのなら…

わたしは もう とめません。

でも いちど このとびらの そとに でたら…

にどと ここへは もどらないこと。

どうか わかって ちょうだいね」


トリエルはそう言うと、しゃがんでメサイヤを抱きしめた。

つよく、つよく抱きしめた。


トリエル「さようなら。わたしの だいじなこ…」



トリエルは、今まで何人ものニンゲンが、同じ運命を辿るのを見てきたと言った。

きっと何度も何度も、こうやって、ニンゲンたちを送り出してきたのだろう。

メサイヤはトリエルを抱きしめた。


これが、きっと、彼女との最後の時間。

たった一日でも、家族でいられたことを、感謝した。

そして、ずっと胸に秘めていたことを、静かに打ち明けた。
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/20(水) 00:50:18.27 ID:8/Ct1P90o
メサイヤ「……わたしは」

トリエル「……?」


メサイヤ「わたしは……この先に、行かなければいけない」

トリエル「……そうね。あなたには、かえるところがあるんだものね」


メサイヤ「……そうじゃないの」

トリエル「?」


メサイヤ「わたしは……あるひとを、さがしにきたの」

トリエル「!!」はっ


メサイヤ「わたしのたいせつなひとが……きっと、このせかいのどこかにいる」

トリエル「…………」


メサイヤ「……だから……わたしは、この先に、行かなければいけない」

トリエル「……あなた……」


トリエルは、慈愛に満ちた顔をしていた。


トリエル「あなた……おなまえは?」

メサイヤ「……メサイヤ」


トリエル「メサイヤ……そう。あなたは、やさしいこね」

メサイヤ「…………」


トリエル「あなたなら、だいじょうぶ。きっと、そのひとをみつけだせるはずだわ」


トリエルは、満開の笑顔になった。


メサイヤ「……トリエル……」

トリエル「いいのよ。わたしのことは……もう」


メサイヤ「…………」

トリエル「いきなさい。わたしの だいじなこ」


トリエルはそういって、最後にきゅっと強く抱きしめて、帰っていった。


私は、目の前の大きな扉を、ゆっくりと開けた。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/20(水) 00:55:57.76 ID:SBpCaoHvo
おお、喋った
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/20(水) 01:03:14.64 ID:8/Ct1P90o
ながいながい廊下を歩く。

どんどん暗くなってゆく。

じきにあたりが真っ暗になってしまう。

すると、目の前に、にょっきりとフラウィが現れた。


フラウィ「……なるほどね。

キミのことが ようやく わかりかけてきたよ。メサイヤ。

こんなこともあるんだね。

キミは、このせかいにとっての イレギュラーみたいだ。

キミ、あれだろ? ともだちか だれかを さがしに来たんだろう?

キミには、ニンゲンのともだちがいた。

そのニンゲンは、このせかいに、いぜんおちてきた ニンゲンのひとり。

キミは そのてがかりを さがしに きたってわけだ。

まったく がっかりだよ。

もっと おもしろいことが おこるとおもったのに…

ふたをあけてみれば こんなことか。

つまらないバグだね。追いかける価値もないよ」


フラウィは、吐き捨てるように言った。

メサイヤは、フラウィをにらみつけた。
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/20(水) 01:21:51.94 ID:8/Ct1P90o
フラウィ「でもまあ、かんしんしたよ。

てっきり、トリエルをころして むりやり前に すすむとおもってたからさ。

きみ、じぶんでは うまくやったつもりでしょ?

でも このせかいでは ころすか ころされるかだ。

たまたま じぶんのルールが つうようしたからって いいきに なるなよ。

たったひとりの いのちを すくったからってさ」


フラウィは不気味な笑い声をあげた。

メサイヤは、悪魔みたいな顔をするフラウィを、まけじとにらみ返した。


フラウィ「さぞかし、いいきぶんだろうね。

きみは こんかい だれも ころさなかった。

だけどさ、もしも こんご さつじんきに でくわしたら どうする?

そいつに なんども なんども ころされて…

とうとう こころが くじけたら?

そのときは どうするの?

イラだちに まかせて そいつを ころしちゃう?

ああ、そうさ。ころしてしまえばいい。

キミは 異端者だ。

キミが なにをしたって このせかいは なにもかわらないよ。

ころしたいなら、ころせばいいんだ。

そして おともだちを みつけて さいかいのあくしゅと いこうじゃないか。

その ちにまみれた てでさ」


フラウィは、メサイヤに顔を近づけて、吐き捨てた。


フラウィ「せかいを かえる ちからを もたない

キミに ようはない。

だけど あがくだけ あがいてみなよ。

ひまつぶしには なるだろうからさ」


四方八方から反響するフラウィの狂った笑い声を、目を閉じて、黙って跳ね除けた。


気が付けば、暗闇の中に、一人になっていた。

目の前には、大きな大きな扉がある。

メサイヤは、意を決して、

大きな扉を、開いた。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/20(水) 01:22:20.15 ID:8/Ct1P90o
ANCHOR TALE
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/20(水) 01:27:50.61 ID:ct+6a1NX0
面白い 支援
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/20(水) 18:12:58.63 ID:cSwVNJwHo
gじゃないだと!?
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 09:31:24.06 ID:JLkpjSoL0
大きな音を立てて、扉は勝手に閉まった。

もう二度と開くことはないと思わせるほど、重く重く。


抜けた先には、高い木々と雪道が広がっていた。

メサイヤはぎゅっぎゅっと雪を踏みしめながら、何の音もしない静かな道を進んでいった。


この道はどこへ続いているのだろう……そんなことを考えていたとき、後ろの方で何か音がした。

振り返ると、木の枝が粉々に折られていた。

あたりを見渡しても誰もいない。

先に進もうとすると、背中に重いものを感じた。


……誰かが、いる。
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 09:39:12.63 ID:JLkpjSoL0
メサイヤは無視するように前へと進む。背中にかかる重圧が増す。誰かの視線を強く感じる。

ふと、目の前に木の柵のようなものが現れた。

ただ丸太を組んで作ってあるだけで、門にしては殺風景すぎる。

なんだろうと思いながら見上げていると……後ろから、雪を踏みしめる音が聞こえた。


後ろにいる。

もうそこまで来ている。

メサイヤは振り返るに振り返れない。

背中のすぐ後ろにヒンヤリとしたものを感じる。

誰かが真後ろに立っている。


「お い 、ニ ン ゲ ン」

メサイヤ「っ……」


「はじめて あうのに

あいさつも なしか?

こっちを むいて

あくしゅ しろ」


メサイヤは、おそるおそる振り返る。

目の前に、誰かが立っている。

「誰か」は、こちらに手を差し出していた。

メサイヤは……意を決して、その手を思いきり掴んだ。
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 09:43:40.04 ID:JLkpjSoL0
……下品な音が鳴った。


音はすぐに雪景色の中に吸い込まれ、静寂が戻ってくる。

目の前には、パーカーを着た白くて大きなガイコツが、笑みを浮かべていた。


「……手に ブーブークッションを

しかけて おいたのさ。

おやくそくの ギャグ だよ」


ガイコツはパーカーのポケットに両手を突っ込んで、満足そうに笑った。

メサイヤはあっけにとられた。


「それはそうと、アンタ ニンゲンだろ?

ははは、ウケるな」


ガイコツは肩を揺らした。


「オイラは サンズ。

みてのとおり スケルトンさ」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 09:51:43.81 ID:JLkpjSoL0
サンズ「ニンゲンが こないか

ここで みはってろって いわれてんだ。

っつっても… オイラてきには

ニンゲン つかまえるとか どーでもいいんだけどな」


ガイコツ……サンズは笑い飛ばすようにいった。

まだ少し警戒しているメサイヤを見て、ニタニタと笑顔を浮かべる。


サンズ「でも おとうとの パピルスは

すじがねいりの ニンゲンハンターだぜ。

あ、うわさをすれば… パピルスが きたっぽいな」


サンズは空虚な目でメサイヤの後ろの方を見ながら言った。

メサイヤは驚いて振り返ったが、特に誰もいなかった。


サンズ「とりあえず、この ゲートっぽいのを くぐれよ。

ふつうに とおれるだろ?

パピルスが つくったんだけどさ、 イミないよな」


メサイヤはサンズに視線で押されながら、ゲートっぽいのをくぐった。

背の高い木々の林がひらける。


サンズ「その ちょうどいい かたちの

ランプに かくれてくれ」


メサイヤは言われるがままに、メサイヤと同じ背格好のランプに身を潜めた。

すると、先の方から、赤いマントを羽織った背の高いガイコツが、のしのしとやってきた。
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 09:58:15.46 ID:JLkpjSoL0
サンズ「よう パピルス」

パピルス「よう! …では ぬぁぁいっ!!

パズルを ちょうせい しておく ようにと

8日まえに いいつけたのに…

いまだに なにも せず!

かってに もちばを はなれて フラフラと…!

こんなところで なにを しているのっ!!」


サンズがパピルスと呼ぶガイコツは、雪を踏みしめながら怒り散らした。

まったく動じていないサンズは、肩を揺らして笑う。


サンズ「そこの ランプを 見てたんだ。

いい ランプだろ? おまえも 見ろよ」


メサイヤは一瞬ギクリとした。

自分から隠れていろといったくせに、なぜこちらに注意をむかせようとするのか。メサイヤにはわからない。

しかしパピルスはこちらに見向きもせず、地団駄を踏んで怒りをぶちまけた。

「そんな! ヒマは! ぬぁぁいっ!!

ニンゲンが ここを とおったら どうする!

ニンゲンの しゅうらいに そなえるのだぁっ!

そして! かならず! このパピルスさまがっ!

ニンゲンを つかまえて やるのだぁっ!」


パピルスは曇り空を指差しながら高々と叫んだ。

サンズの言っていた「すじかねいりの ニンゲンハンター」というのは、嘘ではないようだ。少なくとも気合いだけは。
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 10:06:40.07 ID:JLkpjSoL0
パピルス「そうすれば、このパピルスさまの

のぞみは すべて かなう!

にんきものになって、そんけいされて…

ついに あこがれの ロイヤルガードになって……」


スカスカの胸に手を当てて未来の展望を夢見るパピルス。

サンズはパピルスの発言を特に気に留めずに、適当に相槌をうった。


サンズ「それなら、この ランプに

そうだん してみるのが いいかもな」

メサイヤ「!」ぎょっ


サンズはランプではなく、ランプの奥に隠れるメサイヤを見つめながら言った。

しかしパピルスは、またもドンドンと地団駄をふんだ。


パピルス「ちょっと!

てきとうな こと いわないでよ!

この くされ スケルトンめっ!

まいにち なーんも せずに

ホネくそ ほじって ばっかの くせに!

そんなだと えらいひとに なれないんだぞ!」


サンズ「いやいや。こうみえても

トントンびょうしに しゅっせ してるんだぜ?

…スケルトンなだけに?」


サンズは渾身のジョークをキメた。


パピルス「さむっ!」


パピルスには こうかは いまひとつのようだ。
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 10:13:31.13 ID:JLkpjSoL0
パピルス「はぁ… なんで おれさま ほどの

いだいな スケルトンが こんな くろうを

しないと いけないのか…」


パピルスがフラフラとしながら苦悩をこぼす。

サンズは一歩前に踏み出した。


サンズ「おいおい たまには

かたのちから ぬけよ。

これが ほんとの ホネやすめ…!

…なんつって」


パピルス「ぬぁぁぁぁぁ!!」


サンズが2発目をキメて、パピルスの怒りは頂点に達したようだ。


パピルス「もういい! オレは

じぶんの パズルの かんりで いそがしいんだ!

まったく… ニイちゃんは ほんとに

『ホネ』の ずいまで なまけものだな!」


今度はパピルスがジョークをキメた。

サンズはスルーした。


パピルス「ニャハハハハハハ!」


パピルスは笑いながらどこかへいってしまった。

81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 10:25:21.32 ID:JLkpjSoL0
サンズ「よし もう でてきていいぜ」


メサイヤはランプを離れる。

パピルスは、もうどこか見えないところまで行ってしまったようだ。


サンズ「はやく いかないと パピルスが もどって くるぜ?

そしたら…

オイラの キレッキレの ダジャレが

ふたたび さくれつ するぜ?」


今のうちに早く進めということらしい。

メサイヤはサンズにお礼を言って、パピルスの足跡が続く方へと向かった。


サンズ「なあ ちょっと いいか?」

メサイヤ「?」

サンズ「ああみえて パピルスは

ここ さいきん ずっと おちこんでる…

アイツの ゆめは ニンゲンに あうことだから

アンタ あってやってくれよ。

だいじょうぶ。 パピルスは

そんなに キケンな やつじゃない」


サンズは曇り空を見上げながらいった。

パピルスがキケンなやつじゃないことは、メサイヤもなんとなく察していた。


サンズ「だから ひとつ よろしく たのむぜ。

オイラは このさきで まってる」


サンズはメサイヤと反対の方向へ行ってしまった。

だが「このさき」というのは、パピルスが向かっていった方向のことだろう。

メサイヤはきびすを返し、再び雪道をぎゅっぎゅっと歩いた。

82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/01(日) 13:59:18.07 ID:6kEwN+lvo
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