【安価でUNDERTALE】ANCHOR TALE

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33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 20:05:04.63 ID:+906MjCjO
ウ ウ ウウウウウ と不気味な歌を歌う
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 20:06:25.54 ID:XJzj4yON0
耳のそばでどへたくそなこもりうたをうたう
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 20:17:34.22 ID:H8ebF82xo
メサイヤは、グーグーと寝たふりをするオバケに対抗して、こちらも唸ってみた。

メサイヤ「ウ ウ ウゥゥウゥウ……ゥゥウウ ゥゥウウ……♪」

「あ……」

オバケはメサイヤの行動に、つい反応を示してしまった。


メサイヤ「……」

「……キミ、なかなかいいネ。いいアンビエンスを かんじちゃッタ」

メサイヤ(?)

「あー……でも、そうだネ……そうだよネ」


オバケはウロウロと悩んだようにうろついてから、遠慮がちに言った。


「ぼくは……ナプスタブルークっていうノ。

いつもは 誰にも会いたくないから

この いせきに いるんだけど…

でも… きょうはネ いいひとに であっちゃッタ…」


メサイヤ「……」

ナプスタ「あ……ゴメン、じぶんがたりするのが クセで… つい」


メサイヤ「……」

ナプスタ「…ジャマだよね。いま どくネ」


オバケはすうっと消えかかった。

メサイヤはどうする?

>>36
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 20:29:17.69 ID:XJzj4yON0
いつかまた遊ぼう
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 20:49:27.61 ID:H8ebF82xo
メサイヤ「い、いつか」

ナプスタ「……?」


メサイヤ「いつか……また、遊ぼう」


ナプスタブルークは、身体の上半分だけ消えかかった状態のまま、止まった。


ナプスタ「また……そうだネ。また、だネ」

メサイヤ「うん」


ナプスタ「ハハ……ごめんネ。半分消えちゃったまま、話すなんて、失礼だよネ」

メサイヤ「……」


ナプスタ「でも……ありがとウ……」


ナプスタブルークは、今度こそ消え去った。

地面には、ぽつぽつと、濡れた跡があった。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 20:59:03.38 ID:H8ebF82xo
メサイヤは、またしばらく進んだ。

誰でも解けてしまいそうな、簡単なパズルを潜り抜け、ふと気が付くと、大きな黒い木が目の前に現れた。


「たいへん…よていより

ずいぶん じかんが かかってしまったわ」


木の向こうから、懐かしく感じる声がした。

トリエルが、ケータイで電話をかけながらこちらに向かって歩いてくる。

ちょうどメサイヤの持っていたケータイが鳴って、トリエルがこちらに気づいた。


トリエル「まあ! ひとりでここまで来たの?

だいじょうぶ? ケガはない?

こっちへ いらっしゃい。

かいふくして あげましょうね」


怖いことがあったわけでもなかったけど、

トリエルにまた会うことができて、メサイヤは安心した。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 21:03:08.55 ID:H8ebF82xo
トリエル「ずっと ほったらかしにして ごめんなさいね。

あなたを おどろかせようなんて かんがえた

わたしが バカだったわ」


トリエルは、なぜだか心配そうな目をしていた。

大人しく待っていなかったことを、今になって少しだけ後悔した。


トリエル「ふふ……これ以上、隠しても仕方ないわね。

こっちよ。ついていらっしゃい!」


トリエルはそう言うと、ウキウキとしながら木の向こうにある、なんだか可愛らしい家へとメサイヤを案内した。
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 21:16:35.07 ID:H8ebF82xo
家の中はあたたかくて、甘い匂いが漂っていた。


トリエル「いいにおいでしょう?

サプラーイズ!

バタースコッチシナモンパイを 焼いたの。

あなたが きてくれた おいわいにね。

ここでたのしく くらして もらいたくて…

だから こんやは カタツムリパイは がまんするわ」


なんだか聞き慣れない恐ろしい単語が聞こえてきた気がするが、気に留めないことにした。

トリエルは、メサイヤをこころから歓迎してくれているようだった。


トリエル「さあ はいってはいって!

ほかにも みせたいものが いっぱい あるのよ」


トリエルは右手の廊下へと歩いて行った。


メサイヤはどうする?

>>41
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 21:17:42.53 ID:FV4++UDsO
ヘドバンしながら歌い出す
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 21:34:17.94 ID:H8ebF82xo
メサイヤ「VOOOOOOOOOO!!!」ドンドン


メサイヤはおもむろに、頭をぶんぶん振りながら大声をあげた。


トリエル「どうしたの!? どうしたの!?」


慌ててトリエルが飛んできて、荒ぶるメサイヤを抱きしめて落ち着かせた。


トリエル「ごめんなさい。そうよね。

いろんなことが きゅうに たくさんおこったから

つかれて こんらんしてしまったのよね。

きょうのところは、しずかにおやすみなさい。

あなたのための ベッドも ちゃんと用意したのよ。

だいじょうぶ、バタースコッチシナモンパイは

ちゃあんと とっておきますからね」


まだ少し手足をじたばたさせているメサイヤを抱き上げ、トリエルは子ども部屋に行き、ベッドに寝かせた。


トリエル「おやすみなさい。かわいい子」


もふもふの手でメサイヤのおでこを撫で、トリエルは部屋を後にした。

メサイヤはどうする?

>>43
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 21:39:23.90 ID:HO6TyJtIo
夢の中へ
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 21:39:23.94 ID:XJzj4yON0
なにかおもしろいものないかさがしてみる
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 21:55:43.09 ID:H8ebF82xo
メサイヤはおとなしく眠ることにした。

寝かされたベッドは、もちろん初めて使うものだけれど、かすかに、私の知っている匂いがしたような気がした。





気が付くと、目の前は眩しいオレンジ色だった。

感じられないけれど、ここちよい そよ風を感じる。

感じられないけれど、隣に温かいものを感じる。

感じられないけれど、愛しさを感じる。

私の隣に、誰かがいる。


「…………」


聞こえないけど、何かを話しかけられた。

話せないけど、私は何かを話そうとして……




何も、言えなかった。



そうだ、私は何も言えなかった。

あの子に、何も言えなかった。

言いたいことがあったのに、言えなかった。

今も、ずっと、言えないままだ。


世界は止まっている。

そよ風は吹き続けているけれど、時間は止まっている。

私の世界は、止まっている。


――――――
――――
――
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 22:05:15.15 ID:H8ebF82xo
目が覚めた。

ここはどこだろう。眠い目をこすりながらベッドをおりると、目の前に、パイのようなものが一切れ置いてあった。

そうだ。これはバタースコッチシナモンパイ。

トリエルが焼いてくれたものだ。

部屋を出て、ぱちぱちと音のする方へと向かってみる。

暖炉のそばで、トリエルが本を読んでいた。


トリエル「おはよう。よく眠れたかしら?」


今が朝なのかどうかもわからないけれど、トリエルはたぶん早起きだ。


メサイヤはどうする?

>>47
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 22:06:59.42 ID:YpVXP81Po
なんとなく不安になったのでトリエルママに抱きつく
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 22:24:22.98 ID:H8ebF82xo
メサイヤは、本を読んでいるトリエルのおなかへと飛び込んだ。


トリエル「あら! まあ、まあ

どうしたの? いったい」


メサイヤは、特に何も言わなかった。

トリエルは本を置いて、メサイヤの頭を撫でた。


トリエル「こわいゆめでも みたのかしら?

だいじょうぶ。もう心配はいらないわ。

あなたはもう わたしのかぞくよ。

あたらしいかぞくができて、わたしも とてもうれしいわ」


トリエルの服は、あたたかい匂いがした。



49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 22:26:34.15 ID:H8ebF82xo

「あなたに よませてあげたい ふるいほんが たくさんあるの」

「とっておきの ムシとりスポットにも つれていって あげましょうね」

「それから、おべんきょうは わたしがみてあげますからね」

「いがいかも しれないけれど じつは がっこうの せんせいに なるのが ゆめだったのよ」


トリエルは、楽しそうに喋った。

メサイヤは、相槌をうつ代わりに、トリエルのおなかへ顔をおしつけた。

ゆるやかな時間が流れた。

メサイヤはトリエルに抱き着いたまま、暖炉の方を見た。

ゆらめくオレンジの炎が……

ほんのすこし、夢の中の景色を、思い起こさせた。


トリエル「……どうしたの?」


メサイヤ「……>>50
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 22:37:28.08 ID:+906MjCjO
さっきたくさん生えてた黄色い花は何?
あれも食べれるの?
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 22:50:21.93 ID:H8ebF82xo
トリエル「きいろいはな?

ああ あのはなは このせかいに

わずかしか さいていない

きちょうな はななのよ。

わたしのへやにも おなじものが かざってあるわ。

ただ、食べることはできないわよ。

もしかして、おなかが空いたのかしら?

バタースコッチシナモンパイが まだたくさんあるけど たべる?

それとも なにかべつのものを つくりましょうか?」


メサイヤは、べつにお腹が空いているわけではなかった。


トリエル「どうしたの?

なにか いいたいことが あるなら

なんでも いってちょうだいね」


メサイヤ「>>52
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 23:08:25.37 ID:/5/qr5puo
街とか人が沢山いる場所に行きたい
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 23:12:47.50 ID:H8ebF82xo
トリエル「え……」

メサイヤ「…………」

トリエル「…………」


トリエルは表情を氷らせ、黙ったまま、本をとじた。


トリエル「……わたしは ちょっと

ようじが あるから……

ここで まっていなさい」


そう言うと、トリエルは、そそくさとどこかへ行ってしまった。

階段を降りる音が聴こえた。

メサイヤは、様子のおかしいトリエルを追いかけた。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/19(火) 23:17:05.89 ID:H8ebF82xo
階段を降りると、無機質な廊下が続いていた。

しばらく歩くと、トリエルが背中を向けながら立ち尽くしていた。


トリエル「まちや ひとが たくさんいるばしょ…

あなたは、『おうち』に かえる

ほうほうを しりたいのね?」


メサイヤは、うなずいた。

トリエルは、振り向かずに言った。


トリエル「このさきに いせきのでぐちが あります

そのむこうは ちていのせかい。

いちどでたら もう なかへもどれません。



これから わたしは その でぐちを こわします。


もう にどと だれも ここから いなくならないように」


トリエルの声は、冷え切っていた。


トリエル「いいこだから、おへやにもどっていなさい」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/19(火) 23:25:18.83 ID:H8ebF82xo
トリエルは、すたすたと廊下を進んでいった。

メサイヤは走って追いかけた。


トリエルは立ち止まって、また振り返らずに喋った。

トリエルの声は、メサイヤがまだ聞いたことのなかった、つめたいものだった。


トリエル「ここに おちた ニンゲンは

みな おなじ うんめいを たどる…

わたしは このめで なんども みてきました。

ここへ きて…

ここを でていって…

そして、しんでしまう。

あなたは なにも しらないの…

この いせきから でれば…

あなたは かれらに… アズゴアに… ころされてしまうわ」


トリエルが、どんな顔をしているのか、メサイヤは、わからなかった。

怒っているようで、悲しんでいるようで、焦っているようで、絶望しているようだった。

さっきまでかんじていた、あたたかさは、

いまでは、すっかり かんじられなかった。


トリエル「これは あなたを まもるためなの…

…おへやに もどるのよ」


メサイヤはどうする?

>>56
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 23:29:57.59 ID:Vdu4Td7Do
ぼくを あなたの ペットにしようとするのは やめてほしい
ぼくは あなたの さびしさを まぎらわせるために うまれてきたんじゃない
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/19(火) 23:42:29.49 ID:H8ebF82xo
トリエル「っ……」


先ほどから、肩のひとつも動かさなかったトリエルが、明らかに反応示した。

そして、ゆっくりとこちらを振り向いた。

悲しさと、悔しさと、みじめさに満ち溢れた目をしていた。

トリエルの想いが、メサイヤの心に、刺さった。


トリエル「…………」

メサイヤ「…………」


トリエル「……とでも……っ」


トリエル「なんとでもっ……いいなさいっ!」


トリエルはそう叫んで、メサイヤに背を向けた。


トリエル「とめても ムダよ。これが さいごの けいこくです。」


トリエルは、また無言でずんずんと奥へ歩いて行ってしまった。

メサイヤは、全力で追いかけた。
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/19(火) 23:50:50.21 ID:H8ebF82xo
やがて行き止まりにつきあたって、トリエルが立ちどまった。

メサイヤはその後ろに立った。


トリエル「どうしても でていくと いうのね…」

メサイヤ「…………」


トリエル「そう… あなたも ほかの


ニンゲンたちと おなじなのね。


なら のこるしゅだんは 1つしかない…


わたしを なっとくさせて ごらんなさい。


あなたの つよさを しょうめいするのよ」


トリエルに、ゆくてをふさがれた。

59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/19(火) 23:58:55.99 ID:H8ebF82xo
トリエルは、メサイヤと目を合わせようとしない。

両手をあわせて、魔法攻撃を放ってきた。

メサイヤは必死に避けたが、攻撃は強烈で、大きなダメージをうけてしまった。

トリエルは、よそよそしい態度をしているが、なおもいくつもの火の玉を飛ばしてくる。

強さを証明すると言っても、メサイヤは、決して強いわけではない。

話し合いで解決しようとしても、何を話せばいいのかもわからない。


メサイヤは、どうする。

>>60
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/20(水) 00:05:33.11 ID:42LjFxcJ0
炎の動きをよく見る
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/20(水) 00:07:49.04 ID:e6d19fN1o
ずっと ここに とじこめ られる なんて ごめんだね
いっそ わたしを ころしてよ
といって戦闘態勢を解く
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/20(水) 00:12:49.50 ID:8/Ct1P90o
メサイヤは、トリエルから放たれる炎弾をよく見つめた。

ぎゅんぎゅんと通り過ぎる火の玉を、ギリギリのところで避けようとする。

頬が焼けた。髪が焦げた。

もうとっくに、身体に力が入らない。

それでも、なんとか炎を見つめて避けつづけた。



やがて、メサイヤは気づいた。

とっくに自分が動けなくなっていることに。

そして、自分が避けているのではなく、トリエルがわざと火の玉を当てないようにしているのだとわかった。


メサイヤは、下を向きながら火の玉を打ち出し続けるトリエルを見つめた。


トリエル「……何を、しているのっ……」


メサイヤ「…………」


トリエル「たたかうか、にげるかしなさい!!」


メサイヤは、どうする。

>>63
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/20(水) 00:15:28.97 ID:SBpCaoHvo
>>61
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/20(水) 00:26:49.00 ID:8/Ct1P90o
残る力を、なんとか振り絞って、メサイヤは言い放った。


トリエルの攻撃が止んだ。


トリエル「…………」

メサイヤ「…………」

トリエル「……おねがいだから、おへやにもどって」


トリエルは、きのう、メサイヤをベッドまで連れて行ったときと、同じ目になっていた。


トリエル「わたしが ちゃんと おせわをする… やくそくするわ」


トリエル「たしかに ここは なにもない ところだけれど…」


トリエル「わたしたち きっと たのしく くらしていけると おもうの」


メサイヤは、トリエルの目を見つめ続けた。


トリエル「…これいじょう、わたしを こまらせないで ちょうだい…」

メサイヤ「…………」

トリエル「おねがいだから、おへやにもどって」

メサイヤ「…………」

トリエル「…………」

メサイヤ「…………」


無音の空間で、ぼろぼろになったメサイヤと、トリエルは、見つめ合った。


やがて、トリエルはふっと笑った。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/20(水) 00:30:14.04 ID:8/Ct1P90o
トリエル「フフフ……」


メサイヤ「…………」


トリエル「わたし ほんとうに ダメね……

こどもひとり まんぞくに すくえないなんて」


トリエル「……いいの。わかっているわ。

いっしょう ここで くらすなんて あなたはイヤよね。

なれてしまうと いせきは とてもせまい ところだもの。

ここは あなたにとって よい かんきょうとは いえないわ。」


メサイヤ「…………」



トリエル「わたしの のぞみも…

さみしいきもちも…

しんぱいも…


あなたの ために いまは ぜんぶ わすれましょう」


トリエルは、両手をあげた。

場に張りつめていた緊張感が、解け壊れた。


66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/20(水) 00:39:50.62 ID:8/Ct1P90o
トリエル「あなたが どうしても いくというのなら…

わたしは もう とめません。

でも いちど このとびらの そとに でたら…

にどと ここへは もどらないこと。

どうか わかって ちょうだいね」


トリエルはそう言うと、しゃがんでメサイヤを抱きしめた。

つよく、つよく抱きしめた。


トリエル「さようなら。わたしの だいじなこ…」



トリエルは、今まで何人ものニンゲンが、同じ運命を辿るのを見てきたと言った。

きっと何度も何度も、こうやって、ニンゲンたちを送り出してきたのだろう。

メサイヤはトリエルを抱きしめた。


これが、きっと、彼女との最後の時間。

たった一日でも、家族でいられたことを、感謝した。

そして、ずっと胸に秘めていたことを、静かに打ち明けた。
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/20(水) 00:50:18.27 ID:8/Ct1P90o
メサイヤ「……わたしは」

トリエル「……?」


メサイヤ「わたしは……この先に、行かなければいけない」

トリエル「……そうね。あなたには、かえるところがあるんだものね」


メサイヤ「……そうじゃないの」

トリエル「?」


メサイヤ「わたしは……あるひとを、さがしにきたの」

トリエル「!!」はっ


メサイヤ「わたしのたいせつなひとが……きっと、このせかいのどこかにいる」

トリエル「…………」


メサイヤ「……だから……わたしは、この先に、行かなければいけない」

トリエル「……あなた……」


トリエルは、慈愛に満ちた顔をしていた。


トリエル「あなた……おなまえは?」

メサイヤ「……メサイヤ」


トリエル「メサイヤ……そう。あなたは、やさしいこね」

メサイヤ「…………」


トリエル「あなたなら、だいじょうぶ。きっと、そのひとをみつけだせるはずだわ」


トリエルは、満開の笑顔になった。


メサイヤ「……トリエル……」

トリエル「いいのよ。わたしのことは……もう」


メサイヤ「…………」

トリエル「いきなさい。わたしの だいじなこ」


トリエルはそういって、最後にきゅっと強く抱きしめて、帰っていった。


私は、目の前の大きな扉を、ゆっくりと開けた。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/20(水) 00:55:57.76 ID:SBpCaoHvo
おお、喋った
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/20(水) 01:03:14.64 ID:8/Ct1P90o
ながいながい廊下を歩く。

どんどん暗くなってゆく。

じきにあたりが真っ暗になってしまう。

すると、目の前に、にょっきりとフラウィが現れた。


フラウィ「……なるほどね。

キミのことが ようやく わかりかけてきたよ。メサイヤ。

こんなこともあるんだね。

キミは、このせかいにとっての イレギュラーみたいだ。

キミ、あれだろ? ともだちか だれかを さがしに来たんだろう?

キミには、ニンゲンのともだちがいた。

そのニンゲンは、このせかいに、いぜんおちてきた ニンゲンのひとり。

キミは そのてがかりを さがしに きたってわけだ。

まったく がっかりだよ。

もっと おもしろいことが おこるとおもったのに…

ふたをあけてみれば こんなことか。

つまらないバグだね。追いかける価値もないよ」


フラウィは、吐き捨てるように言った。

メサイヤは、フラウィをにらみつけた。
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/20(水) 01:21:51.94 ID:8/Ct1P90o
フラウィ「でもまあ、かんしんしたよ。

てっきり、トリエルをころして むりやり前に すすむとおもってたからさ。

きみ、じぶんでは うまくやったつもりでしょ?

でも このせかいでは ころすか ころされるかだ。

たまたま じぶんのルールが つうようしたからって いいきに なるなよ。

たったひとりの いのちを すくったからってさ」


フラウィは不気味な笑い声をあげた。

メサイヤは、悪魔みたいな顔をするフラウィを、まけじとにらみ返した。


フラウィ「さぞかし、いいきぶんだろうね。

きみは こんかい だれも ころさなかった。

だけどさ、もしも こんご さつじんきに でくわしたら どうする?

そいつに なんども なんども ころされて…

とうとう こころが くじけたら?

そのときは どうするの?

イラだちに まかせて そいつを ころしちゃう?

ああ、そうさ。ころしてしまえばいい。

キミは 異端者だ。

キミが なにをしたって このせかいは なにもかわらないよ。

ころしたいなら、ころせばいいんだ。

そして おともだちを みつけて さいかいのあくしゅと いこうじゃないか。

その ちにまみれた てでさ」


フラウィは、メサイヤに顔を近づけて、吐き捨てた。


フラウィ「せかいを かえる ちからを もたない

キミに ようはない。

だけど あがくだけ あがいてみなよ。

ひまつぶしには なるだろうからさ」


四方八方から反響するフラウィの狂った笑い声を、目を閉じて、黙って跳ね除けた。


気が付けば、暗闇の中に、一人になっていた。

目の前には、大きな大きな扉がある。

メサイヤは、意を決して、

大きな扉を、開いた。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/20(水) 01:22:20.15 ID:8/Ct1P90o
ANCHOR TALE
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/20(水) 01:27:50.61 ID:ct+6a1NX0
面白い 支援
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/20(水) 18:12:58.63 ID:cSwVNJwHo
gじゃないだと!?
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 09:31:24.06 ID:JLkpjSoL0
大きな音を立てて、扉は勝手に閉まった。

もう二度と開くことはないと思わせるほど、重く重く。


抜けた先には、高い木々と雪道が広がっていた。

メサイヤはぎゅっぎゅっと雪を踏みしめながら、何の音もしない静かな道を進んでいった。


この道はどこへ続いているのだろう……そんなことを考えていたとき、後ろの方で何か音がした。

振り返ると、木の枝が粉々に折られていた。

あたりを見渡しても誰もいない。

先に進もうとすると、背中に重いものを感じた。


……誰かが、いる。
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 09:39:12.63 ID:JLkpjSoL0
メサイヤは無視するように前へと進む。背中にかかる重圧が増す。誰かの視線を強く感じる。

ふと、目の前に木の柵のようなものが現れた。

ただ丸太を組んで作ってあるだけで、門にしては殺風景すぎる。

なんだろうと思いながら見上げていると……後ろから、雪を踏みしめる音が聞こえた。


後ろにいる。

もうそこまで来ている。

メサイヤは振り返るに振り返れない。

背中のすぐ後ろにヒンヤリとしたものを感じる。

誰かが真後ろに立っている。


「お い 、ニ ン ゲ ン」

メサイヤ「っ……」


「はじめて あうのに

あいさつも なしか?

こっちを むいて

あくしゅ しろ」


メサイヤは、おそるおそる振り返る。

目の前に、誰かが立っている。

「誰か」は、こちらに手を差し出していた。

メサイヤは……意を決して、その手を思いきり掴んだ。
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 09:43:40.04 ID:JLkpjSoL0
……下品な音が鳴った。


音はすぐに雪景色の中に吸い込まれ、静寂が戻ってくる。

目の前には、パーカーを着た白くて大きなガイコツが、笑みを浮かべていた。


「……手に ブーブークッションを

しかけて おいたのさ。

おやくそくの ギャグ だよ」


ガイコツはパーカーのポケットに両手を突っ込んで、満足そうに笑った。

メサイヤはあっけにとられた。


「それはそうと、アンタ ニンゲンだろ?

ははは、ウケるな」


ガイコツは肩を揺らした。


「オイラは サンズ。

みてのとおり スケルトンさ」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 09:51:43.81 ID:JLkpjSoL0
サンズ「ニンゲンが こないか

ここで みはってろって いわれてんだ。

っつっても… オイラてきには

ニンゲン つかまえるとか どーでもいいんだけどな」


ガイコツ……サンズは笑い飛ばすようにいった。

まだ少し警戒しているメサイヤを見て、ニタニタと笑顔を浮かべる。


サンズ「でも おとうとの パピルスは

すじがねいりの ニンゲンハンターだぜ。

あ、うわさをすれば… パピルスが きたっぽいな」


サンズは空虚な目でメサイヤの後ろの方を見ながら言った。

メサイヤは驚いて振り返ったが、特に誰もいなかった。


サンズ「とりあえず、この ゲートっぽいのを くぐれよ。

ふつうに とおれるだろ?

パピルスが つくったんだけどさ、 イミないよな」


メサイヤはサンズに視線で押されながら、ゲートっぽいのをくぐった。

背の高い木々の林がひらける。


サンズ「その ちょうどいい かたちの

ランプに かくれてくれ」


メサイヤは言われるがままに、メサイヤと同じ背格好のランプに身を潜めた。

すると、先の方から、赤いマントを羽織った背の高いガイコツが、のしのしとやってきた。
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 09:58:15.46 ID:JLkpjSoL0
サンズ「よう パピルス」

パピルス「よう! …では ぬぁぁいっ!!

パズルを ちょうせい しておく ようにと

8日まえに いいつけたのに…

いまだに なにも せず!

かってに もちばを はなれて フラフラと…!

こんなところで なにを しているのっ!!」


サンズがパピルスと呼ぶガイコツは、雪を踏みしめながら怒り散らした。

まったく動じていないサンズは、肩を揺らして笑う。


サンズ「そこの ランプを 見てたんだ。

いい ランプだろ? おまえも 見ろよ」


メサイヤは一瞬ギクリとした。

自分から隠れていろといったくせに、なぜこちらに注意をむかせようとするのか。メサイヤにはわからない。

しかしパピルスはこちらに見向きもせず、地団駄を踏んで怒りをぶちまけた。

「そんな! ヒマは! ぬぁぁいっ!!

ニンゲンが ここを とおったら どうする!

ニンゲンの しゅうらいに そなえるのだぁっ!

そして! かならず! このパピルスさまがっ!

ニンゲンを つかまえて やるのだぁっ!」


パピルスは曇り空を指差しながら高々と叫んだ。

サンズの言っていた「すじかねいりの ニンゲンハンター」というのは、嘘ではないようだ。少なくとも気合いだけは。
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 10:06:40.07 ID:JLkpjSoL0
パピルス「そうすれば、このパピルスさまの

のぞみは すべて かなう!

にんきものになって、そんけいされて…

ついに あこがれの ロイヤルガードになって……」


スカスカの胸に手を当てて未来の展望を夢見るパピルス。

サンズはパピルスの発言を特に気に留めずに、適当に相槌をうった。


サンズ「それなら、この ランプに

そうだん してみるのが いいかもな」

メサイヤ「!」ぎょっ


サンズはランプではなく、ランプの奥に隠れるメサイヤを見つめながら言った。

しかしパピルスは、またもドンドンと地団駄をふんだ。


パピルス「ちょっと!

てきとうな こと いわないでよ!

この くされ スケルトンめっ!

まいにち なーんも せずに

ホネくそ ほじって ばっかの くせに!

そんなだと えらいひとに なれないんだぞ!」


サンズ「いやいや。こうみえても

トントンびょうしに しゅっせ してるんだぜ?

…スケルトンなだけに?」


サンズは渾身のジョークをキメた。


パピルス「さむっ!」


パピルスには こうかは いまひとつのようだ。
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 10:13:31.13 ID:JLkpjSoL0
パピルス「はぁ… なんで おれさま ほどの

いだいな スケルトンが こんな くろうを

しないと いけないのか…」


パピルスがフラフラとしながら苦悩をこぼす。

サンズは一歩前に踏み出した。


サンズ「おいおい たまには

かたのちから ぬけよ。

これが ほんとの ホネやすめ…!

…なんつって」


パピルス「ぬぁぁぁぁぁ!!」


サンズが2発目をキメて、パピルスの怒りは頂点に達したようだ。


パピルス「もういい! オレは

じぶんの パズルの かんりで いそがしいんだ!

まったく… ニイちゃんは ほんとに

『ホネ』の ずいまで なまけものだな!」


今度はパピルスがジョークをキメた。

サンズはスルーした。


パピルス「ニャハハハハハハ!」


パピルスは笑いながらどこかへいってしまった。

81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 10:25:21.32 ID:JLkpjSoL0
サンズ「よし もう でてきていいぜ」


メサイヤはランプを離れる。

パピルスは、もうどこか見えないところまで行ってしまったようだ。


サンズ「はやく いかないと パピルスが もどって くるぜ?

そしたら…

オイラの キレッキレの ダジャレが

ふたたび さくれつ するぜ?」


今のうちに早く進めということらしい。

メサイヤはサンズにお礼を言って、パピルスの足跡が続く方へと向かった。


サンズ「なあ ちょっと いいか?」

メサイヤ「?」

サンズ「ああみえて パピルスは

ここ さいきん ずっと おちこんでる…

アイツの ゆめは ニンゲンに あうことだから

アンタ あってやってくれよ。

だいじょうぶ。 パピルスは

そんなに キケンな やつじゃない」


サンズは曇り空を見上げながらいった。

パピルスがキケンなやつじゃないことは、メサイヤもなんとなく察していた。


サンズ「だから ひとつ よろしく たのむぜ。

オイラは このさきで まってる」


サンズはメサイヤと反対の方向へ行ってしまった。

だが「このさき」というのは、パピルスが向かっていった方向のことだろう。

メサイヤはきびすを返し、再び雪道をぎゅっぎゅっと歩いた。

82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/01(日) 13:59:18.07 ID:6kEwN+lvo
おつ
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