【艦これ】吹雪「吹雪と吹雪」

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155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/15(木) 08:15:37.44 ID:SFPPNynyo
おつー
つぎも待ってる
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/19(月) 02:40:20.75 ID:za4mLZ+Qo
おつ
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/21(水) 22:59:37.43 ID:ZDdsetqxo
ほほ
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/24(土) 01:49:56.67 ID:yDMFVqTE0

どうして榛名さんがここに。そう小さく呟いた独り言に。

赤城「失敗しちゃいました」

そう赤城さんの声が聞こえたから、後ろを振り返ると、戯けた雰囲気で、舌を出し、ウィンクをしている赤城さんの姿が見えた。

その隣で、霧島さんがこめかみを押さえて、呆れた顔をしている。

赤城さんを除いて、みんな渋い顔をしている。それでも私は、いまいちわからない。

無理やり、この疎外感を私は飲み込むことにした。
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/24(土) 01:50:51.58 ID:yDMFVqTE0

榛名「まずこの件に関して、留萌鎮守府の提督は、黙殺すると決めており、公式に異議申し立てをしないことを先に述べておきます。そして滞りなく、明日の演習を行うつもりです」

それを聞いて、私は少し安心した。けど、誰も何も言われない、なんて都合のいい話は起きないとすぐに直感した。

そもそも、誰が悪いかなんてわかりきっている。勝手に入れ替わった私が悪い。

そしてその問題は、相手側にあるんじゃなくて、こっちにある。

相手に異議申し立てはしないと言っても、身内ならその配慮はいらないはずだ。

加賀「ええ、そうしてもらえると助かります。お互い、不利益になることは避けたいですからね」

榛名「はい、その通りです。今回の件は、何もなかった。そういうことにしましょう」
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/24(土) 01:51:52.31 ID:yDMFVqTE0

いとも簡単に話がついた。でも司令官がこの話を黙殺するなんて、想像できなかった。

それは私以外の人たちも同じで、みんな気がつかれないよう驚いた顔をしている。それほど意外な話なんだ。

司令官は、艦娘の処女航海の時にはお守りを渡す人だ。それも手作りで、一つ一つ自分で縫い、出撃の際手渡しをする。

それに異動してきてからの、最初の航海でも手渡しをするらしく、みんな司令官が作ったお守りを持っている。

それほど艦娘に対する思い入れが強い人だ。だから、下手をすればこの場に私はいなかったはずの問題を、何も言わないなんて、誰もが思ってもいなかった。

それに、留萌鎮守府創設初期からいる神通さんでさえ、司令官は激怒すると話していたのに、おかしい。

ずっと棒立ちしたままの、向こうの加賀さんは一礼した。そして立ち去ろうとした時だった。

顔を向こうに向けているから、表情が読み取れない榛名さんの声色が、冷たく、呼び止める。
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/24(土) 01:53:05.75 ID:yDMFVqTE0

榛名「まだ話しは終わっていませんよ。勝手に立ち去ろうとされては困ります」

ぴたりと動きが止まった加賀さんは、目だけを動かして榛名さんを捉えると、遅れて体が動き始め、また対面する。もう終わったものだと思っていたんだろう。

加賀「....終わっていないとは?あなたは先ほど、今回の件は何もなかった、と締めくくったではないですか」

榛名「ええ確かにそうは言いました。ですから、これから先は、提督も留萌鎮守府も関係ない、たんなる私怨です」

そちらの艦娘は、私達の吹雪さんに一体何をしようとしたんですか。

あくまで静かに、そして丁寧に。だけど、あえて言葉に棘がある言い方を選んだ榛名さんは続けてこう言った。
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/24(土) 01:53:37.04 ID:yDMFVqTE0

榛名「赤城さんから、吹雪さんがそちらの艦娘と入れ替わったとお話を伺った時には、まだ結果だけ明らかになっている状況で、ことの詳細は不明際でした。そしてもしもの事を考慮し、提督をこの件から引き剥がし、私に一任させるように仕向けたら、どういうことですか、これは。金剛お姉様からお話を聞くと、そこの艦娘は、倒れている吹雪さんに砲身を向けていた、と聞きました」

そこで加賀さんは、榛名さんから目線を外して初めて渋い顔をした。そしてその奥で大井さんは舌打ちを小さくつく。そして。

大井「見間違えじゃないですか?大雨ですし、仕方ないことですよね、北上さん?」

北上「ぅえ?....私にふるの....。うん、まぁー大雨だったし、ねぇ、見間違えることは、ありえるねー」

そう適当に流して、ことなきを得ようとした。

榛名「吹雪さん。それは、本当ですか」
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/24(土) 01:54:32.55 ID:yDMFVqTE0

振り返った榛名に、私は怖くなった。初めて見る怒りを露わにしている榛名さんは、今までの誰よりも、恐ろしかった。

本当の機械のような加賀さんよりも、初めて深海棲艦と戦った時よりも、ずっと恐ろしい。

私を射抜く眼光に萎縮して、声が出せずじまいになってしまう。うまく口が動かせない。

すると私の手がぎゅっと握られた。その手は、瑞鶴さんだ。

瑞鶴「吹雪、大丈夫だから。答えなさい」

私は瑞鶴さんと目が合う。そしてこくりと頷いて、本当に大丈夫だから、と私に思いが伝わってきた。

瑞鶴さんは、加賀さんの一番弟子だ。どんな道筋があって、師弟関係を超えた関係になったかは知らないけど、艦種も違う二番弟子の私の面倒をいつも見てくれる。

そんな瑞鶴さんに後押しされて、私は榛名さんの問いに答える。

吹雪「私は、大井さんに砲を向けられました」

榛名「だ、そうです」
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/24(土) 01:55:11.69 ID:yDMFVqTE0

大井さんが私に向けて明確な殺意と、弔いの言葉。そして重く、鈍い砲弾が装填される音は、紛れもなく、私に向かっていた。

私を気怠げに見ていた大井さんは、みるみる顔色を変え、私を睨みつけてきた。

余計な事を言って、ふざけるな。それは態度だけに現れず、我慢ならないとばかりに、加賀さんを押しのけて、大井さんは前に出てきた。

大井「ええそうよ。私はそこの吹雪を撃とうとしたわよ。何か悪い?」

加賀「大井、あなた....」

大井「加賀さんは黙っててください。話せないなら、私が代わりに話します」

榛名「この後に及んで、開き直りですか?」

榛名さんの呆れた声色を押し返すように、大井さんは強くまくし立てる。
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/24(土) 01:55:46.96 ID:yDMFVqTE0

大井「開き直り?違うわよ。そこの吹雪は進軍もままならないくらい、虫の息だったのよ。ねぇ知ってますか?旗艦は、死にかけの艦娘の介錯をしなくてはならないって決まりごと」

神通さんは、曙ちゃんの介錯をした。それは神通さんはその時旗艦で、大井さんが言うように旗艦は、死にかけた艦娘を楽にしなくてはいけないっていう決まりがあるからだ。

でも私にもわかる。大井さんの言っていることは、単なる言い逃れのことくらい。

急に私の手を握る瑞鶴さんの握力が強くなった。少し痛いくらいに。そして小さく、ふざけんな、と震える声で言う。

榛名「ええそうです。旗艦はその役割があります。ですが、私達の加賀さんが言うには、あなた達の旗艦は、そこの加賀さんでした。大井さん旗艦ではないあなたに、介錯をする権限はない。出すぎた行為です」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/24(土) 01:56:42.30 ID:yDMFVqTE0

大井「だから?誰がやっても結果は変わらないのよ。私がやろうと加賀さんがやろうと、北上さんでも構わないわよ。それが出すぎた行為であっても、私達の鎮守府の方針は誰がやっても構わないの。それに関しては口出しは無縁よ。むしろそっちの方が、出すぎた行為だと私は思うわ」

榛名「そうですね。たしかに私は、あなた達の鎮守府の方針に口出しする資格はありません。どんな事をしていようとも、私達には関係がないことです。例え捨て艦をしていても。ですが今回は、こちらの吹雪さんが入れ替わってしまった。その場合、適用される規定がそちらであっても、吹雪さんの所属はこちらにあります。ですから、最終的な審査はこちらの規定に則り行われます。すなわち、あなた達のルールは吹雪さんには適応されません」

大井「笑えるわね」

大井さんは鼻で嘲笑う。そして腕を組み、芝居掛かった話し方を始めた。

大井「ねぇあなた達は、自分達の大切な吹雪を見分けられなかったじゃないの?そこに座ってる吹雪と入れ替わってても、全然気がつかなかったんでしょ?そうやって偽善者ぶって話してるけど、結局はそんなもんよ。証明できるカード一枚ないと、誰が誰だかわからない。表面上の薄っぺらい関係よ。そんな薄情な人たちに、とやかく言われたくないわ」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/24(土) 02:08:53.63 ID:yDMFVqTE0

榛名「.....なんですって」

榛名さんの表面は見えない。だからお腹を抱えて笑い始めた大井さんに、榛名さんはどう映っているんだろう。

後ろ姿でも、威圧感を感じる榛名さんを前にして、どうしてそこまで余裕なんだ。

孤独で生きてきた人は、孤独を知らない。

不意に思い浮かんだ、矛盾したようで、まるでしていないこれに、私は哀しくなった。

この人たちは、孤独を知らないんだ。孤独だから、他人の痛みも、苦しみもわからない。

いいや、わからないはずはないんだ。もう、そんな感情は、この人たちには、残っていないんだ。

すり減って、壊して、最後に海に投げ捨てたんだ。そうすることで、この人たちは生きていられる。
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/24(土) 02:09:40.42 ID:yDMFVqTE0

大井「そんなに大切だったら、ちゃんと管理しなさいよ。首輪で括り付けるなり、忘れないように烙印を押すなりして、ちゃんと目印をつけとけば、こうはならなかったんだから。もっとも、そうしたところで、一番仲のいいあなた達がわからないようじゃ、提督自身すらもわからないんでしょうけど」

この人たちもう、人の気持ちに共感する器官を、壊されている。

この鎮守府で、ここの司令官に。もう、どうやっても治らないんだ。

榛名「....その通りです」

感情で高ぶっていた声色は、急に温度を下げ、とても寂しげになった。

それには大井さんも少し驚いたみたいで、ぴたりと笑い声は止まった。

二、三秒間が空いた後、榛名さんは噛み締めるように繋げた。

榛名「私たち艦娘は、その艦娘が前世がどんな軍艦であったかを分かっても、現世で個人を特定することはできないんです。どれだけ仲が良くても、です。私たちは、ゲームの中で生きているわけじゃなく、現実に生きています。何かしら識別できるような手段を講じていても、気休め程度にしかならない。それは、大井さんでもわかっているはずです」

169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/24(土) 02:12:20.94 ID:yDMFVqTE0
今日はここまでです。台詞が長くてすみません。あと大井さん本当すみません。中々エグいこと言わせて。エクレアの大井さんは本当に素敵でした、本当に。また頑張ります。
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/02/25(日) 18:40:38.58 ID:/urrNlOO0

大井「....ええ、その通りよ。艦娘は、その艦娘に宿る魂が何かを判別できても、たくさんいる同じ魂を見分けることができないわ。だから、私はこう言わせてもらいます。私たちは悪くない。悪いのは、勝手に入れ替わって迷惑をかけた、この吹雪よ」

そう言いながら歩き始め、座り込み床に釘付けになっている吹雪さんの元へたどり着くと、膝小僧で一度小突いた。力なく吹雪さんは揺れ動く。

大井「あんたが悪いのよ。あんたがあっちの吹雪と入れ替わったせいで、こんなめんどくさいことになったの。大体、あんたなんで生きてるの?捨て艦なら、最初に役割を果たした夕立みたいに、さっさと沈んでくれればいいよかったのに」
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/25(日) 18:41:43.37 ID:/urrNlOO0

私は名前が挙がった夕立ちゃんを、ふと見てしまった。

いつも明るくて、元気で、頼り甲斐がある、私の大切な友達は、真後ろで泣きはじめていた。

夕立ちゃんは、自分が泣いていることに気がついていないみたいで、頬を伝っていく大粒の涙は、ぽたぽたと床に誘われている。

沈んでいった、知らない自分に泣いているんだ。自分がそれだったら何を考えて、動かなくなった体に必死に動けと命令しても、反応しない絶望を共感している。

たぶん、きっとそうだ。そして夕立ちゃんの隣にいる比叡さんが、ポケットからハンカチを取り出して、静かに夕立ちゃんに握らせた。

そうして夕立ちゃんは、自分が泣いていることに気がついた。
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/25(日) 18:42:34.52 ID:/urrNlOO0

瑞鶴さんが私の右手から手を離した。そして床を踏みつける音がした瞬間。

加賀「瑞鶴やめなさい」

と加賀さんが瑞鶴さんを腕で静止していた。

瑞鶴「何でですか。加賀さんの命令でも、私はもう我慢できません。一発ぶん殴らないと気が済みません。退いてください」

私を包み込んでいた瑞鶴さんの手は、強く握りしめられて、今にもあの大井さんに掴みかかると同時に、飛んでいきそうだった。力みすぎて震えている。

加賀「それでもダメです」

瑞鶴「どいて」

加賀「ダメなものはダメです。いいですか、よく聞きなさい。瑞鶴あなたには、しっかりと見てもらいたいんです。吹雪、あなたもです。あれが、壊れる寸前で救いの手を差し伸べられなかった、艦娘の末路です」
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/25(日) 18:44:06.91 ID:/urrNlOO0

その時始めて加賀さんは目を伏せた。そして大きく鼻で息を吸い込み、吐き出す。

ゆっくりと閉じた瞼を開け、よく透き通った瞳の、私が大好きな茶色は、ひどく澱んでいた。

加賀「あれは、もう自問自答を終え、結論を出してしまっています。そしてその信念に従い、戦っている。たとえ今更救いの手を差し伸べても、必ず拒絶します」

あの大井さんだって、最初は私の知っている、本当は優しくて、つい小言を漏らしすぎる世話焼きな大井さんだったはずだ。それが、どうして、こうなってしまったんだろう。

大井「黙ってないで何とか言いなさい。そうやって黙ってればそのうち解放されると思ってるの?ふざけないで。誰のせいだと思ってるのよ」

174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/25(日) 18:45:10.17 ID:/urrNlOO0

どんどん沈んでいく、かつての仲間達を見て、大井さんが行動しないわけがない。

絶対にここの司令官に直談判して、どんな手を使ってでもやめさせようとやけになったはずだ。

私の知っている大井さんはそうするはずだ。そして、昔のこの大井さんだって、そうしたはずだ。始まりは、同じだから。

大井「大体、入れ替わった理由はあんたにあるんでしょ。死にたくないから、上手な口実を並べて無理やり迫ったんでしょ」

吹雪「....違い、ます」

そうだ、大井さんは何も悪くないんだ。悪いのは、こうさせてしまった、司令官にある。

壊れてしまう使い方をした、司令官のせいだ。捨て艦なんてふざけた戦法をしたせいでこうなった。

175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/25(日) 18:46:25.02 ID:/urrNlOO0

でも、と私に、もう一つ考えがよぎる。違う、司令官だって悪くないと。

捨て艦をしなくてはいけない、この状況がおかしいんだ。根っからの悪人はいないはず。

悪いのは、この戦争を引き起こしている元凶。

深海棲艦が、悪いんだ。

悪いのは、全部深海棲艦だ。こんなのがいなかったら、争う理由なんて何もないんだ。

私は、歩き出していた。

大井「何が違うのよ!好き好んで捨て艦と入れ替わるわけないじゃない!」

吹雪「違うんです...違うんです!」

大井「何が違うのよ、じゃあ言ってみなさい」

私の腕が掴まれる。誰だかはわからないけど、それを振りほどいて、私は歩き続けた。
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/25(日) 18:46:57.97 ID:/urrNlOO0

吹雪「それは....」

大井「ほら言えないじゃない。やっぱりあんたが....」

私は吹雪さんと大井さんこ間に割って入る。そして。

吹雪「違います。私の意思で入れ替わりました。だから吹雪さんのことを悪く言うのはやめてください」

そう目の前の大井さんに言ってやる。にやにやとした笑顔の大井さんは、ふーんと言って。

大井「じゃああんた自殺志願者なのね。なら本当にこの吹雪と入れ替わったら?望み通りの結果になれるわよ。それにそこの吹雪も幸せになれて、願ったり叶ったりじゃない」

吹雪「それは...できません」

大井「ほらできないじゃない。自分が可愛いんでしょ。死にたくない死にたくないって。そうやって可愛い自分を守ってる」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/25(日) 18:47:58.62 ID:/urrNlOO0

確かに私は死にたくない。そして吹雪さんの代わりに私はなりたくない。

それは、大井さんの言うところの、偽善者、なんだろう。だから私は大井さんに、その偽善を突き立てる。

吹雪「大井さんはなんで偽善者になれないんですか?」

私たちは一度みんな死んでいる。それは前世の軍艦時代に、死を体験して、生き返っているからた。

そして、ここにいる誰にだってわかるはずなんだ。死の恐怖を、その先に待つ、意識を保ったまま暗闇で動くことができない、生に囚われた牢獄、生地獄を。

大井さんは面食らってたじろいだ。

大井「なんでって、それは...」

吹雪「恥ずかしいからですか。だからできないんですか?」

その死を知っているからこそ、私たちは優しくできるはずだ。

大井「....意味がないからよ。そんなことしたところで、何も変わらない、からよ。変わらないから、何したって無駄なのよ!」
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/25(日) 18:49:44.23 ID:/urrNlOO0

吹雪「そんなはずはないです。確かに大井さん一人じゃ何も変わらないかもしれません!でもみんななら!」

弱い者は強い者の犠牲になる。確かに、一人の力は権力を振りかざす、強い人に太刀打ちできない。

でも弱い人達が集まったら、形勢は逆転するはず。大は小を兼ねられても、大は大を束ねることはできない。

同じ力を持つことができるなら、その願いは叶うはずだ。

大井「みんなってだれよ。まさか加賀さんのこと?北上さん?朝潮?この鎮守府に勤めている艦娘のこと?理想を掲げるのは何も知らない子供だけよ。現実はね、不条理で満ちてる。そしてその不条理の中で、生きていくことを強いられてる私は、少しでもましな道を選んで生きていくって決めたのよ!!」

吹雪「どうして不条理の道から逃げようとしないんですか?どうして、そこからましな道を選ぼうとするんですか!?みんながみんな嫌なら、手を合わせて新しい道を造ることだってできるじゃないですか!」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/25(日) 18:55:48.35 ID:/urrNlOO0

大井「うるさい!あんた達だって何も変わらないじゃない!!あんた達の集まりだって元を辿ればどうしようもない奴らの集まりなんだから!」

大井さんが私を真剣に捉えて右手を挙げた。私は突然のことで対処できず、そのゆっくりと振り下ろされていく残像を追う。そして私は突き飛ばされて尻餅をついた。

榛名「そこまでです」

その振り下ろされた手を、榛名さんが掴み取っていた。掴みとられた手はまだ叩くことを止めようとせず、榛名さんの力と拮抗していた。

榛名「それだけはさせません。私の目の前だけでも、艦娘が艦娘を傷つける行為は、絶対にさせません」

そして榛名さんに掴みとられたままの大井さんの腕は、ゆっくりと体に密着させようと移動を始めた。

でもそれは、大井さんの意思ではないように見える。目を見開いて歯を食い絞り、驚いた顔でその動きを追っているからだ。
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/25(日) 18:56:47.80 ID:/urrNlOO0

榛名「大井さん、落ち着いてください。私は吹雪さんの意見に対して、補足を述べるつもりはありません。そしてこれ以上あなた達への文句も失せました」

どうぞ、このままお引き取りください。その言葉の終わりと共に、大井さんの腕はあるべきところ戻る。そして榛名さんは握力を弱めて、離した。

大井さんは真っ赤に染まった手首を見つめると、摩って震えた声でこう言った。

大井「... バケモノね」

榛名「お好きにどうぞ」

そして大井さんは振り返ると、誰にも目をくれず、そのまま部屋を出ていった。

そして心配したかもしれない、後を追うように、北上さんも急いで出ていった。

ねぇ、と私の近くで、私の声がした。そのすぐ近くにいる私に、私は顔を動かす。
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/25(日) 18:58:48.18 ID:/urrNlOO0

吹雪「....どうしたの?」

今にも泣きそうな、吹雪さんは、ごめんなさいと震える声で何度も言い始めた。何度も、何度も繰り返した。私は。

吹雪「いいんだよ、謝らなくて」

吹雪「だめ、なんです。謝らないと、だめ、なんです!だって私は!捨て艦だってのを隠して吹雪さんにその代わりに押し付けたんだから!」

吹雪「本当にいいの。吹雪さんだって、どうして私がそう言うのか、わかるはずでしょ」

この吹雪さんは、無力で誰の役にも立たなかった、昔の私だ。

吹雪「....わからないです。だって死にそうになったんですよ?それなのに、私を許せるわけがない」

そう、私と同じ吹雪さんだから、この気持ちは理解してくれるはずだ。壊れてしまった大井さんや加賀さんと違うから、同じ気持ち共有できる。

吹雪「だって、もしもあの時、倒れている吹雪さんが私で、あなたが私だったら、同じことするはずだもん。だから、私は怒ってないよ」

吹雪「そんな確証なんてないじゃないですか!」
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/25(日) 18:59:55.83 ID:/urrNlOO0

吹雪「絶対にそうするよ。だって、私だったらそう考えるから」

そして吹雪さんは泣き始めた。おんおんと大きな声をあげて。

私は吹雪さんを抱きしめて、背中をさすってあげる。吹雪さんの体を、真冬の風に晒されたみたいに、冷たかった。

私は想像する。吹き付ける冷たい風に、傷口を嬲られて、深く絶望している姿を。

なんて考えるか。そうだ、こうやって考える。この世界に生まれたことを恨んで、どうして私は生きてしまったんだろうと。

何度も問いかけて、絶望を凝縮させては、次は死ぬんだろうと、違う絶望を混ぜ合わせる。

そして、吹雪さんが私と入れ替わってくれたら、私はどう思う、こう思う。

帰って来なければいいのにと。このまま私が、留萌の吹雪になれば幸せになれる。あんな目にあうのはごめんだと、絶対にそう考える。

だから私は、吹雪さんを恨まない。

榛名「.....加賀さん、一つ、意見してもいいでしょうか」

加賀「ええどうぞ」

榛名「一度、そちらの提督に具申してはどうでしょうか。この吹雪さんの扱いについて」
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/25(日) 19:00:49.78 ID:/urrNlOO0

加賀「....この吹雪だけですか?それは不公平です。この吹雪の他にも捨て艦はいます。それは一日に五体ほど使われます。それなのに特別になんておかしいではないでしょうか?」

榛名「ええ加賀さんのいうとおりです。ですが、最初の一歩を踏み出すことは、必要でしょう?」

加賀「....それも、そうですね」

それを聞いて私は驚いた。そして吹雪さんも驚いたみたいで、加賀さんの方を向いた。もしかしたら。

加賀「この鎮守府には、確かに問題があります、それを認めましょう。私なりに、最善の行動を尽くしてみます」

吹雪「だって!!吹雪さん!!」

呆けた表情で吹雪さんは口を半開きだ。それを私は揺さぶる。

力なく大きく揺れる吹雪さんは、徐々に明るさを取り戻していき、幽霊みたいな、あの顔がなくなっていく。
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/25(日) 19:02:19.96 ID:/urrNlOO0

吹雪「....本当ですか?」

加賀「ええ。本当です」

私は嬉しくなってもう一度吹雪さんを強く抱きしめる。

さっきまで冷え切っていた体は、ほんの少し温かみを帯びていた。そして吹雪さんも私を強く抱きしめ返してくれる。

吹雪「吹雪さん、これから頑張ろう」

吹雪「はい!今は全然弱いですけど、いつか、吹雪さんみたいな強い艦娘に、絶対になります!」

私は吹雪さんから離れて、しっかりとその見知った顔を見つめて。

吹雪「いい!次に私にあう時までには、強くなっててよ!約束だよ」

小指を差し出す。それを見た吹雪さんは、こくりと頷くて、差し出した指に小指を絡めた。

吹雪「はい!絶対に強くなります!でも、次会った時に、私より弱いのはだけはやめてくださいね?」

冗談めかしてそう言うと、吹き出して笑った。それにつられて、私も笑ってしまう。
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/25(日) 19:03:03.32 ID:/urrNlOO0

加賀「吹雪、提督の元へ向かうわよ」

と向こうの加賀さんの、吹雪さんを呼ぶ声がした。その声に吹雪さんは振り向いた。そして。

吹雪「それじゃあ、行かないと」

吹雪さんは立ち上がると、一度私に頭を下げてる。ありがとうございました、そう礼を告げると、加賀さん、朝潮ちゃんと共に部屋を出ていった。

私は吹雪さんを見送った後、急に力でなくなってよろけてしまう。

ふらついて、倒れそうになったところで、誰かに支えられる。

摩耶「よし、よくがんばったぞ。吹雪」

そしてそのまま床に私を座らせる。摩耶さんに、髪の毛をぐしゃぐしゃにかき混ぜられていても、抵抗する力が入らない。くたくただ。

瑞鶴「アホ吹雪、なんでこんなことしたのよ」

瑞鶴さんが、私の目の前に座り込む。すごく怒っているのが伝わってくる。でも、まぁいいかと言うと、笑って私を引き寄せた。
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/25(日) 19:03:57.09 ID:/urrNlOO0

瑞鶴「おかえり。あと、さっきはかっこよかったわよ」

ぱん、と手を叩いた音がした。そして。

榛名「はい!みなさんこれで一件落着です!」

一気に緊張感漂う雰囲気が紐解かれ、解放される。

誰かは布団に飛び込み呻き声をあげるし、喜びの声をあげてある人もいる。

榛名「ですが吹雪さん」

そんな中、瑞鶴さんに強く抱きしめられたままの私に、榛名さんは近寄ってきた。

さっきまでの真剣さと違う、優しさに満ちた、いつもの榛名さんだ。

187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/25(日) 19:05:04.73 ID:/urrNlOO0

榛名「提督にこっぴどく怒られると思うので、それだけは覚悟してくださいね」

怖いですからねと、笑顔で榛名さんは言った。そしてこう続ける。

榛名「人によって、正しさは違います。みんな自分の道が、疑心暗鬼でも正しいと思っています。そして、その正しさを他者に証明するには、その人の正しさに優っていないといけません」

明日からの演習で、私達の正しさを証明してくださいね。

そう言うと、榛名さんは部屋を出ていった。たぶん、司令官の元へ向かったんだろう。

川内「あー!よく寝た。.....なにこの状況」

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188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/25(日) 19:07:24.76 ID:/urrNlOO0
今日ぶんはおしまいです。そして後一回の更新で終わります。たぶん来週あたりで終わらせます。またがんばります。
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/01(木) 18:07:48.23 ID:rwDpaGI+0

私はマイクロバスから流れる風景をぼんやりと眺める。

木々の間からは、見慣れた海原が広がっている。どこまでも続いているような、水平線。

それはいつか陸が遮ってしまって、どこまでも続く水平線、なんて嘘なんだと証明してしまう。

帰りの車内は、行きの活気付いてたのと違って、あんなり馬鹿騒ぎしていた金剛さんと摩耶さんでさえも、今は眠っている。

神通さんも、赤城さんも、司令官に榛名さん。それに夕立ちゃんも、みんな眠っている。

そんな中、私だけは、どうしても眠れない。
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/01(木) 18:08:23.03 ID:rwDpaGI+0

演習の結果は、私たちが、相手を完膚なきまでに叩き潰した。

歴然とした結果だった。相手の艦隊は、私たちには手も足も出なく、私たちはというと、ほとんど無傷の状態で終わった。

その結果に呆然していた向こうの司令官の顔が、今でも忘れられない。

そして圧勝したということは、私たちの正しさが向こうより優れていた、ということだ。

そして、私は入れ替わった事件の後、すぐに司令官に怒られると思っていた。

けど、司令官は演習中、すごく不機嫌だった。そのせいか、まだ私は司令官に怒られてない。

そのことについて、秘書艦の榛名さんは私を呼び出して、こう言った。
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/01(木) 18:09:22.13 ID:rwDpaGI+0

榛名「おそらく提督は吹雪さんを咎めません。ですが、二度と同じことをしないよう、肝に命じてください」

そして遠征が終わるや否や、私たちは挨拶する機会も与えられず、さっさと荷物を纏めて、こうして帰っている。それが原因で、みんな眠りこくっている。

相変わらず続く風景に飽きてしまった私は、加賀さんから貰った睡眠薬を五錠取り出して、飲み干す。

ついさっきも三錠飲んだのに、眠れない。本当にこれは睡眠薬なのかな、と思った私は一応確認するけど、やっぱり睡眠薬だ。もう一錠だけ飲んでおく。

不眠が続いている。原因は、眠りに落ちる寸前になると、一気に意識は呼び戻されるせいだからだ。理由は、もちろんわかっている。

私は鈍痛が響く頭を窓にもたれる。体が熱っぽいと、外の空気に冷やされた窓ガラスが、心地よく感じる。

私は目を瞑り、自然と意識が落ちてくれることに期待する。
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/01(木) 18:10:33.71 ID:rwDpaGI+0

それは笑い声だ。その笑い声はすごく自虐的で、聞いているこっちまで、やりきれなくなってくる。

頭を抱えて泣いてしまった人もいるし、全てがぐちゃぐちゃだ。抑圧された感情が破裂してしまっている。

私は目を開く。やっぱり眠れない。暗闇は、すごく怖い。そのまま引き摺り込まれてしまって、戻れなくなりそうだからだ。

私は強く髪の毛を引っ張り、頭を叩いた。忘れろ、忘れろ。痛さが和らいで消えて無くなるように、この痛みを孕む記憶も、霧が空中でなくなるように、跡形もなく、どこかに行ってほしい。

でも私の願いとは裏腹に、走馬灯のように、記憶が脳裏を駆け巡る。

まだ太陽が顔を出して間もない時間。今日から演習が始まるっていうのに、早起きしてしまった私は、性懲りも無く、また外に出たいと思った。

こっぴどく怒られて、外に出るなって言われていたのに、私は準備を始めた。
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/01(木) 18:11:57.13 ID:rwDpaGI+0

馬鹿だ。本当の馬鹿だ。ポケットに証明カードをしっかりと入れた私は、安心して外に出てしまった。

こう考えていたから、外に出てしまった。あの吹雪さんに会いに行こうと。探せば会えると思っちゃったんだ。

私は初めて吹雪さんと出会った場所に向かった。相変わらず風は私に突き刺さっていた。

昨日よりもずっと痛さは増していて、寒さで身を震わせながら、ゆっくりとむかって行ったんだ。

そのまま諦めて、まぁいいかで終わらせておけばよかった。

でも結局、遅かれ早かれわかってしまったことだ。だってそれを聞く機会は、ここにいる限りいつだってあるんだから。

例えば、この鎮守府の艦娘、人でもいい。誰かにすれ違ってしまえば、好奇心で私は尋ねてしまう。

例えば、演習が始まる間近。挨拶をする時に、当事者だった人に、私はなんとなく聞いてしまうはずだ。
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/01(木) 18:12:36.99 ID:rwDpaGI+0

どうやっても、逃れられなかったんだ。

やっぱりその人達は、そこにいた。早朝の冷え込んだ空気に反して、その人達からは湯気がもくもくと上がっていた。

私は少し戸惑った。あんなに迷惑をかけたのに、のこのことまた近づこうとしているのだから。

どれだけ恥知らずなんだ、私だったらどう思う。嫌に決まってる、顔も見たくない。そうに決まっている。

そうして私がもじもじしていると、向こうの誰かが一人気がついたみたいで、私の方へ歩いてきた。

だれか、決まってる。そんな昨日の些細なことなんか気にしない、心が強い人だ。

大井「あなた所属は?任務時間外は外出は禁止なのは知ってるわよね」

大井さんは眉毛一つ動かさない無表情で、そう言った。胸のあたりが急に苦しくなった。それはもちろん、昨日のことがあったせいだから。
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/01(木) 18:13:23.68 ID:rwDpaGI+0

私は何も答えず、ポケットに手入れて、カードを取り出そうとした、瞬間。

大井「別に出さなくていいわよ。わかってるから」

そう言われて白いため息を吐いた。そして汗が滲んだおでこを拭う。

吹雪「....わかってたんですか」

大井「私だって冗談の一つは言うのよ」

これがブラックジョークだと思った。そして、何の用。と大井さんは言葉を繋げた。私がそれに答えようとすると、なぜか、大井さんは私を制止する。

大井「わかったから、言わないでいいわよ。ついてきなさい」

そして後ろを振り返ると、元いた艦隊の方へ歩き出した。

私は黙ってついて行くことにした。こつこつ、こつこつと、コンクリートを踏みしめる音が、緊張で張り裂けそうな私を圧迫した。


196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/01(木) 18:13:57.38 ID:rwDpaGI+0

そして、本当に昨日と同じメンバーがそこにはいた。加賀さん、北上さん、朝潮ちゃん。私は心から安心した。昨日起こった事件の内容とはかけ離れた感情が、今ではおかしい。

朝潮「本当に手の込んだ自殺をするんですね....」

私を見るやすぐに、朝潮ちゃんはそう言った。ひどく澱んで、昨日よりもました、無表情で。

そして、お疲れさまでした、と言うとすぐにこの場を立ち去って行く。一人いなくなった。

大井「どうしてって、顔してるわね」

その通りだ。私は、わからなかった。その声につられて大井さんを見た。相変わらず表情は冷たい。

大井「どうしてだと思う?聞いてみなさいよ、私じゃなくて、加賀さんに」
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/01(木) 18:14:41.61 ID:rwDpaGI+0

そう言い放つと、朝潮ちゃんと同じようにここから去っていこうとした。慌てた北上さんも、大井さんについていこうとして、一旦止まる。

北上「....まぁ、どんまい」

そして後を追いかけて行った。二人を消えた。人で作られていた壁は、もうとっくに、なくなったも同然だ。

私は、その壁で遮られていると思っていた人を探した。でも、そこにはいない。一気に血の気が引いた。

私は、どうしようもなくなって、加賀さんを見る。

吹雪「ねぇ加賀さん、吹雪さんは、どうしたんですか......?」

ねぇ言ってましたよね、加賀さんは。それは嘘だったんですか。

私と、私に期待させた、あの思いは全部嘘だったんですか。

198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/01(木) 18:16:05.46 ID:rwDpaGI+0

ここまできて、やっと睡眠薬の効果が効いたみたいだ。

再生された記憶は、無理やり電源を落とされて、意識が眠りへとやっと、向かって行く。

そう、あの人は表情一つ、眉毛の一本も動かさないでこう言ったんだ。

そしてフレーズが頭からくっついて離れない。忘れようとして頭をかきむしっても叩きつけてもどうやっても頭から離れてくれない。

まただそうやって、この記憶は私をどれだけ苦しめれば気がすむんだ。

できるなら、次に起きた頃には、綺麗さっぱり、この演習遠征の記憶がなくなっていてほしい。

そう願い、私はようやく眠ることができた。

加賀「あぁあの吹雪なら、もう」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/01(木) 18:18:04.96 ID:rwDpaGI+0
おしまいです。おそらく気分を悪くした人もいると思います。特に大井さんにはひどいことを言わせましたので、本当にすみませんでした。
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/01(木) 18:20:55.37 ID:rwDpaGI+0
次は金剛さんと榛名のお話を考えてます。今回みたいなお話じゃないのを考えてますので、またみてもらえると嬉しいです。
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/02(金) 03:57:12.66 ID:9SMJWxjco
おつー
つぎも待ってる
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/02(金) 21:38:50.29 ID:MnwoKg5L0
おつ
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/03(土) 09:43:38.47 ID:mnZzZpol0
乙です
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/05(月) 08:08:02.04 ID:w7JCTcQ6O
結局捨て艦されて吹雪亡くなったんか
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