鬼姫「わたしの愛は美しいでしょう?」

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1 : ◆IULkuZ.Noal. [saga]:2017/10/29(日) 20:07:13.56 ID:hGr+6DsHO

この世界には、大きく分けて二つの種がある。

一つは人間、魔物と呼ばれる化け物に怯えながら暮らす弱い弱い種族だ。

まあ、中には化け物より強い奴、化け物を狩って生きてる奴もいる。 極少数だが。

魔法なんていう奇っ怪なものを扱う人間もいるが、それもまあ少数だ。

もう一つの種は魔族、こっちは魔物なんかよりもずっと凶悪だ。

生まれながらにして魔法を使える奴なんてざらにいるし、素手で岩を砕くくらいわけない。

まず、普通の人間なんかが太刀打ち出来る相手じゃないだろう。

会ったら最後、あの世逝きだ。

勿論、言葉も話せれば人間とさほど風貌が変わらない奴もいる。中身はまったく違うけどな。

俺は前者、弱い弱い人間だ。

化け物と戦える強さもなければ、魔法なんてものは使えやしない。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1509275233
2 : ◆IULkuZ.Noal. [saga]:2017/10/29(日) 20:09:27.66 ID:hGr+6DsHO

ただの人間、人間の中の人間。

それとあちらさん、魔族にも国や政治があって、魔王と呼ばれる王様もいる。

そこら辺は人間と変わりない。決定的に違うのは、強い奴が偉いってことだ。


そんで、今現在の魔王。


一番強くて、一番頭の切れる御方が人間と和平を結んでくれたお陰で、世界は随分と平和になった。

人間は、魔族に怯えて暮らすこともなくなったわけだ。

和平が結ばれてから随分経って、今じゃあ魔族領に住む人間もいるくらいだ。

俺も、その一人。

両親と兄弟は人間領で暮らしてる。

俺が魔族領に行くと決めた時、そりゃあ反対されたけど、事情が事情だったんだ。

あまり裕福じゃないし、弟は体が弱いし、色々と大変で金が必要だった。

そんな時、人間領に来ていた魔族の姫様に気に入られ、私の屋敷で働かないかと誘われたわけだ。

庭仕事や掃除、言ってしまえば雑用係みたいなもんだったが、給料はかなり良かった。

俺は反発する両親を説得して、身支度を済ませ、姫様の屋敷で働くことにした。
3 : ◆IULkuZ.Noal. [saga]:2017/10/29(日) 20:11:01.54 ID:hGr+6DsHO

うまい話しには裏がある。

そんな、馬鹿でも知っている言葉を忘れて、目の前の餌に飛び付いちまったんだ。

これが、俺の人生で最初で最後の大失敗だった。

庭仕事も掃除もすることはなかったが、金はきちんと故郷に送られている。

じゃあどうやって金を得ているかって? それは……


鬼姫「あなたの瞳って本当に綺麗ね」


くそっ、目玉を舐められた。相変わらず気色悪い女だ。

声に出して言ってやりたいが声が出ない。俺は、この女に声を奪われた。

餌を待つ鯉みたいに口をぱくぱくさせるだけ。間抜けなもんだ。

どうやって金を得ているかだったな。簡単な話し、俺はこの女の玩具になった。

勿論、家族は知らない。真面目にお屋敷で働いていると思っているだろう。

言っておくが好んで玩具になったわけじゃない、無理矢理に玩具にさせられたんだ。
4 : ◆IULkuZ.Noal. [saga]:2017/10/29(日) 20:12:32.47 ID:hGr+6DsHO

玩具って言っても特殊な玩具だ。

皮膚を灼かれたり削がれたり、鞭で叩かれたり爪剥がされたり、肉を喰われたり。

まあ、他にも色々やられたよ。

どうもこの鬼姫って女は、痛めつけるのが大好きな加虐趣味の変態らしい。

本当の本当に、毎日が苦痛だ。

いや、苦痛なんてもんじゃない。激痛だ、激痛。

ズタズタに傷付けておいて魔法で治すってんだから余計に質が悪い。

何しろ、死にたくても死ねないんだからな。

舌を噛み切ろうとしても、妙な力で自害出来ないようにされちまったんだ。

魔法、まったく忌々しい力だよ。


鬼姫「いいわ。とてもいい……その目で見つめられると、ぞくぞくする」


黙れ。睨んでんだよ、変態女。

小さい頃から気にしていた目つきの悪さ。それを初めて褒めてくれたのが、この変態女だ。

この女の何も知らなかった頃は、それはそれは嬉しかったもんさ。舞い上がるくらいに。

何しろ綺麗だし、肌は真っ白、腕なんか凄く細くて、守ってやりたくなった。
5 : ◆IULkuZ.Noal. [saga]:2017/10/29(日) 20:14:22.31 ID:hGr+6DsHO

正直、目を奪われた。

こんなにも美しい女性が、この世界にいるのかと思った。

彼女と一言二言を交わすだけで、その日は最高の気分になれたんだ。

でも、今は違う。


鬼姫「わたし、男と二人きりになるなんてことないのよ。あなただけ……んっ」


耳の中に舌を入れるな、そんなこと言われても全然嬉しくないんだよ屑女。

絶世の美女が、今じゃあ気狂いの変態女だ。

ったく。男ってのは本当に単純で馬鹿な生き物だよなぁ。

自分の馬鹿さ加減と愚かさに呆れ果て、情けなさすぎて涙が出てくる。

あ〜あ、本当に阿呆だよな。


鬼姫「あなたは、わたしの物。あなたがいれば何も要らないわ」


だったら真っ当な愛情表現をしろ。舐めるな、噛むな、服を着ろ変態。
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