男「元奴隷が居候する事になった」【安価有】

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299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/03(水) 09:41:21.49 ID:TKKPjbVqO
あけましておめでとうございます。
お身体を大切に、無理はなさらぬよう…
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/03(水) 14:24:27.45 ID:Ic+MS72qo
>>298
あけましておめでとうございます。
御自愛ください
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/04(木) 07:49:44.14 ID:nQQw/K0bO
天龍で草
お体に気をつけて過ごしてください
302 :(´ω`) :2018/01/08(月) 05:16:54.74 ID:SgrNZwah0
体調にお気をつけて無理せず更新してください…
私も年末にインフルエンザにやられたクチです…
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/09(火) 21:03:28.39 ID:xcA863R90
楽しみに待っていますよ
304 :NATHAN [sage]:2018/01/15(月) 01:40:12.44 ID:UDMIs4Zw0
保守
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/15(月) 17:01:08.96 ID:Hql4hg9c0
保守
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/16(火) 15:30:51.79 ID:Ng5+RBxr0
肺炎一歩手前でした。(挨拶省略)

週末には元の住まいに戻れるとの事なので、ようやくまともに書けそうです。
長らく投下できずに申し訳ありません……。
新年のあいさつや体調を気遣って頂けるレス、スレが落ちないための保守など有難うございます。心が温まりました。

ところで、私のようなぽんこつは脳内でよく物語のイメージソングを垂れ流してしまう性(さが)でして。
それを皆様にも共有したいと思い、このスレを想起しながら聞いた曲を一つ紹介させてください。
https://www.youtube.com/watch?v=I79m_otKgJI


本編に関しては、今週の土曜か日曜辺りにでも改めて覗いて頂けると幸いです。
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/16(火) 16:45:55.87 ID:LZPRrAq90
待ってます!
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/17(水) 17:57:05.64 ID:uGMrt0jSO
まだかなー?
309 :名無し [sage]:2018/01/17(水) 19:21:59.54 ID:DbbzBz000
肺炎手前とは危なかったですね・・・。
無理をなさらずに更新してくださいね、待ってます(∩´∀`)∩
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/19(金) 23:35:49.01 ID:zdfdEQWn0
保守
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:03:24.21 ID:Qhwvu5580


【二人のエピソード】  


季節は夏
夏祭りで花火を見る



【視点:男 or サンディ】






【サンディの最近の趣味】


猫観察

 
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:08:37.57 ID:Qhwvu5580


部屋の窓から見える敷地に、桔梗の花が濃紫の花弁を慎ましく覗かせていた。

梅雨の空けたこの時期は吹く風みなに湿気が纏わりついているような気がする。

その風色が頬を撫でると涼やかさを少し感じた。

本格的に始まる夏が一歩一歩近づいているような兆しで、

緩やかでも確実に四季が巡っているのだと再確認できる。

朗らかな気持ちに流され軽く背伸びをしようと手を伸ばす。

ずきり、と右の肘が少しだけ疼いた。先月の怪我が未だ完治していないようだ。

この手の傷は何度か負った事がある。手酷いものではないので、そのうち治るだけでも良しとしておこう。

そのまま軽くストレッチでもしようかと思うと、不意に後ろから呼びかけられる。


「お兄さん、今日も行ってきます」


声のした方向を向くと、そこには少しだけ日に焼けた健康的な肌色の少女が居た。

名前はサンディ。去年の秋から一緒に住んでいる同居人だ。

 
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:10:47.04 ID:Qhwvu5580


七分袖の白いシャツにショートパンツ。

そして日除けの麦わら帽子を被った格好で、

ピシッと音が立つような真っ直ぐな姿勢を向けてくれる。


「おぉ、今日も元気だね。ちゃんと飲み物は持ったかい?」

「はい、万全です。ぬかりはありません」


ふんす、を鼻を鳴らすような動作をしつつ、

肩にかけたポシェットから清涼飲料水を出して見せてきた。可愛い。

ポシェットの中には飲み物の他に筆記用具とノート、

そして塩飴、更にはGPS付防犯アラームが常備してある。

五月の事件以降、特に防犯アラームだけは絶対に手放さないよう言いつけていた。

素直な彼女はしっかりと言いつけを守ってくれているようだ。

よしよし、とサンディの頭を麦わら帽子の上からぐりぐり撫でてみる。

ショートパンツの裾をぎゅっと摘まんでサンディは僕の手を受け入れてくれた。

もじもじしている仕草からして、ひょっとすると照れているのだろうか。

それがまた何とも可愛らしいと思い、もう少しだけ愛おしむように撫でてみた。

君の今日が幸せでありますように、と。

ひとつまみだけ愛を添えて。

 
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:15:31.60 ID:Qhwvu5580


「お、お兄さん!そろそろ修行に行ってきますね!」

「はい、いってらっしゃい」


玄関前で一度振り返って僕に向けて手をぱたぱた振り、サンディは外出した。

最近サンディは一人で外に出る事ができるようになった。

さらに外出先で趣味に興じるようになったのも非常に喜ばしい。

昔はどこに行くにしても僕が傍にいたが、以前に比べれば随分と快活に変わってくれたものだ。

もちろん彼女に気付かれないよう、当面の間は組織に頼んで護衛をつけてもらってはいるが。

外で遊ぶのも健康的で子どもらしいから大変喜ばしい事である。

ただ、遊ぶ、というのはひょっとするとサンディ的には語弊があるのかも知れない。

そう、あくまで彼女にとっては“修行”なのだ。

修行の内容は、猫の観察。ほんと愛らしすぎて悶死しそう。

 
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:19:25.70 ID:Qhwvu5580


なぜサンディが修行などという言葉を使うようになったのか。

事の発端は彼女と一緒に図書館へ行ったときに遡る。

あの子に知識の幅を持たせるために、僕はそこへよく連れていくのだ。

図書館に赴き、いつもの如く読書用スペースに各々本を数冊持ってきた。

僕はノンフィクション小説、そして新書コーナーにあった本を幾つか見繕う。

サンディは多種多様な本を六冊持ってきた。

背表紙を見る限りは本当にジャンル不問の模様。

まさか青色申告関連の本まで読むのかい、君は。

もし本当にその手の専門書の内容を理解できているのならば、

年中火の車である我が探偵事務所の経営を一緒に回してほしい。

切に。切に。いや本気八割くらいで切に。

 
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:22:50.23 ID:Qhwvu5580

サンディが持ってきた本の中でも特に僕が目を引いたのは、職業に関する本だった。

そういったものは僕も就職活動をしていた頃に読んだ事がある。

どういう職種や職業があるのか、どうやったらなれるのか、どのくらい稼げるのか。

夢への道筋、その先の現実、そんな未来の在り方が書かれているような内容だ。

ひょっとすると、サンディには将来の夢があるのだろうか……。

小さな声で問いかけてみた。


「サンディ、将来は何になりたいの?」


それを聞いたサンディは顔を真っ赤にした。まさかの地雷だったか。

彼女は耳まで紅潮させつつ、なにやら索引ページから探し始めた。

そして本をパラパラと捲ると、彼女はその項目を開いて僕にそっと差し出した。

そこにはこう書いてあった。



 『 探偵 』  と。

 
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:29:03.20 ID:Qhwvu5580


サンディはその項目を一所懸命に読んでいた。

その中で彼女が学んだ重要な点は、職業内容。

特に今の自分に出来そうな所をブラッシュアップしていた

探偵の探しものは人や動物。専門的に人を探す所もあるが、大体は動物を取り扱う方が多い。

そしてサンディは動物探しなら自分にも手伝えるかも知れないという結論に至った。

いつか自分が探偵の仕事を手伝えるようになるために、最近は“修行”を始めたというわけだ。

 
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:31:30.30 ID:Qhwvu5580

これは只の余談になる。

それからしばらく僕らは読書に耽り、読み終えていない本を借りて図書館を後にした。

車の中で互いに今日読んだ本の感想を語りつつ、その合間で僕はふと思った。

読書をさせてみることで気づいたが、彼女の日本語に関する語学力は同年代よりもかなり高い。

難しい言葉をすらすらと読めて、且つ漢字の読み書きは中学生と同じかそれより上のレベル。

どうしてこんなに日本語が堪能なのか。それをふと聞いてみた。

曰く、日本に連れていかれるのは自分が奴隷になった早期の段階で決まっていたと。

国外の売却先であるご主人様に迷惑かけないように、

日本語、というか学問の分野に関しては相当仕込まれたとか。

それを聞き終えた後、衝動的に僕は彼女を抱きしめた。

突然抱き着かれたサンディは僕の胸のうちであわあわと慌てふためいたが、

ひとしきり手をパタパタさせたあと、観念したように僕の背中へとおもむろに手を伸ばしてくれた。

常人では耐えきれないような、そんな辛い経験を経て覚えた日本語は嫌いなのかも知れない。

彼女のことを鑑みず、勉強が出来る理由を聞いた事に対して「ごめんね」と呟く。

すると僕の耳元でサンディは囁く。


「あの辛かった時間も、こうして貴方とお喋りするためにあったと思うと、幸せなんです」


僕はまた、ぎゅっと彼女を抱きしめた。

 
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:36:59.88 ID:Qhwvu5580


閑話休題。

それからサンディは探偵見習いと自称して、その修行のために動物の動きを見ていた。

僕らの住まいは周囲に野良猫が多いから、観察の場としては打って付けだろう。

サンディは動物好きという事もあり、まさに趣味と実益を兼ねている。

最近は猫の気持ちになりたいから、と猫耳付カチューシャを所望された事があった。

用途をもう少し深く訊ねると、それをつけて動物探索のために町内を闊歩するつもりだったとか。

現状あまり人目についてはいけないサンディだが、流石に色々と注目されそうなので却下した。

だが、シュンとしたあの子を見てしまうと僕の心はどうにも脆弱になってしまう。

家の中だけならいいよ、と買ってあげたのはここだけの話に留めておいてほしい。

 
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:39:22.52 ID:Qhwvu5580


最近の修行場所は近所の空き地に住まう猫たちの観察が主流のようだ。 

今日もそこに向かっており、持っていたノートに何やら色々と書いているのだろう。

そういえば、実際に修行している場面って見た事がなかったなと思い出す。


……尾行してみるか。


決して仕事が入らず暇なワケではない。

ハードボイルド探偵として、それこそ修行の一環を最近怠っていたのを失念していたのだ。

ここ一つ、サンディに本物の探偵の尾行をお見せしよう。いや見せたら尾行にならないけれど。

傍から見れば女子小学生に付き纏うアラサー青年になるという事か。

なるほどちょっと死にたくなる光景だ。

サンディに持たせている防犯アラーム、初めて鳴り響く相手が僕じゃありませんように。

 
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/20(土) 00:40:01.88 ID:Qhwvu5580
今宵はここまで。続きは近日。
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/20(土) 01:11:26.33 ID:T2FWtZAZo
おつ
ネコミミサンディを家に監禁(語弊)とか……マスターこっちです
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/20(土) 06:51:47.59 ID:YUXyrn6S0
五月の事件とは一体…気になる
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/20(土) 07:57:31.75 ID:Tt+9yqQ5O
おつ、楽しみ!
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/21(日) 00:21:41.91 ID:eL2mP0RHO
乙です。サンディ…
やっぱり翔太郎で再生される…
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/21(日) 02:17:09.20 ID:gEuhmUohO
更新きてるー!うれしい!!
サンディぐぅかわなんだよなあ……
327 :m [sage]:2018/01/21(日) 06:14:41.99 ID:T8WsVcJI0
更新キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
待ってます!
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/26(金) 14:25:27.29 ID:NrLW8VxQ0
相変わらず癒される...
無理しない程度でいいので更新待ってます
329 :m [sage]:2018/01/29(月) 02:10:19.02 ID:ZHfM2+Rs0
ほしぅ
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/31(水) 03:17:09.62 ID:VSRPkGtqO
ほしゅ
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/01(木) 04:28:50.39 ID:g3o3GpUFO
保守
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/01(木) 04:30:01.93 ID:g3o3GpUFO
保守
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/03(土) 12:43:19.75 ID:y3/GEi8TO
ほしゅるん
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/07(水) 02:06:10.28 ID:gEc+r8DH0
保守
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 19:20:57.49 ID:e9FipieJ0
保守
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 17:56:28.17 ID:ROQA8ONmO
ほっこりしたくなったらたまに読み直してる
更新のんびりまってます
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 18:08:50.20 ID:K3sHqXN7O
ほしゅ
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 06:40:53.93 ID:AYOUkIcBO
保守
読み返したけどやっぱ癒されるわ……
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 13:42:04.15 ID:DiJEXGug0
保守
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [m]:2018/02/13(火) 00:23:47.81 ID:EfUJyyZh0
保守ううう!!!!!!!!
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/13(火) 00:45:48.34 ID:nmHWO3L10
何度読み返してもホッコリする…
続きを気長に待ってます
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/13(火) 08:44:12.76 ID:mXkgRK7bO
つづきのんびり待ってます
小説とかになればいいのに
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/13(火) 23:05:22.49 ID:95Pvhgo00
保守
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/14(水) 00:22:11.55 ID:lqfaoJaX0
ほしゅ
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/17(土) 01:20:42.45 ID:V0xcROtO0
保守
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/17(土) 15:32:02.67 ID:Jku2EmAH0
今更だけど保守いらんぞここ
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/18(日) 00:21:23.56 ID:iDaniB1b0
保守
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/19(月) 17:13:27.12 ID:IrgpWKrk0
月日が経つのは早いもので。年が明けたと思っていたら、いつの間やら年度末。
企業戦士リーマンが忙殺される頃であり、漏れなく私もその屍の一部になっておりまして。
この時期の慌ただしさは毎年の事ながら未だ慣れません。
只々「楽がしたい」という雑念と煩悩に塗れて日々を過ごしている昨今です。
探偵と元奴隷の小話は今しばらくお待ちをば。
保守に関して調べてみましたが、二ヶ月ルールなるものがあるようで特に無くとも大丈夫のようです。
落ちないようにレスして下さった方々のお気持ちに感謝を。
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/20(火) 06:45:11.64 ID:S1KcoW/4O
生存報告来てて安心。のんびり待ってますので、余裕ができて気が向いたら書いてくだちぃ。
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/27(火) 00:45:08.17 ID:R+LLoqif0
生きてたぁ!
よかったぁ…前の肺炎で体調悪化されたのかと…
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/05(月) 23:00:19.09 ID:iSeL06nIo
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/16(金) 23:46:06.96 ID:zXRklIi+0
久しぶりに読み直した。
あーすばらしい(語彙力)
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/17(土) 13:23:13.59 ID:yaP+5VPlO
定期的に読み返したくなるクオリティ
のんびり待ってますので、どうか無理をなさらぬように
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/01(日) 23:40:05.39 ID:DDWde19wo
まだ待ってます
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/02(月) 05:33:08.83 ID:nA3eOcSSO
まだまだ待てますよー。
それじゃあ読み返してくるか……。
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/03(火) 01:30:22.83 ID:Da7jFV5NO
行間まで読みこんで隅々まで考察した結果…
サンディが尊い…その他に言葉はいらぬ…
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/08(日) 22:59:43.41 ID:RgvwPJJBO
4月だし今まで以上に忙しいんだろうなぁ……のんびり待ってますので頑張ってください。
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/19(木) 06:24:20.05 ID:DE8J+aTm0
新年度を迎えて繁忙期も治まるかと思いきや、何故か慌ただしさは増すばかり。
自身の時間の使い方を見直す機会なのやも知れない……。
今週末は久々に連休が取れそうなので、その際に投下できれば良いかと。
お手透きの方はお目通し頂けると幸いです。
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 10:51:49.69 ID:Culsvb3oo
待ってましたぁ!無理しないで頑張ってくだせぇ
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 12:28:51.50 ID:jfaifRPVO
待ってるぜええええ
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/21(土) 22:55:23.72 ID:aP2GD9YT0


蝉の声が遠くで聞こえてくる。

本格的な時雨の音が鳴り始めるほどではない。

しかし夏の暦を捲るには充分だろう。

照りつける日射しの強さが肌を焦がしていくような錯覚を感じた。

無意識に手を上に掲げて影を作る。

日除けにもならないが、まぁ幾分はマシだろう。

群青色のクリアスカイ。暑い季節は苦手だが、この空の色合いは割と好ましい。

深い藍をした空に白い線が一本引かれていた。

飛行機雲だ。これもまた夏の空の風物詩。

ただ、これが見えるのは天候が崩れる兆候でもある。

早めに切り上げるべきかどうかの良い判断材料になってくれるだろう。

それは何の事かって?


子どもの尾行に決まっているじゃないか。


……文字面だけだと、やたら業が深くなるなぁ。

 
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/21(土) 23:12:21.36 ID:aP2GD9YT0

とあるキッカケで一緒に住んでいる同居人のサンディ。

昔過ごしていた環境の影響からか塞ぎがちな子だったが、最近は朗らかな笑顔を見せてくれるようになった。

そんな彼女の趣味、もとい修行の一環は猫の観察。

一体どういう風に観察対象をチェックしているのか、実は前々から気になっていた。

観察ノートを見せてほしいと言ったら「恥ずかしいので……ちょっと……」と濁されたので

以来僕からはあまりその事に触れないようにしていたのだ。

まぁ、保護者として遠目から成長を見守ってみたいという気持ちは父性に似たサムシングだろう。


そんな僕は今現在、アロハシャツに身を包みサングラスをかけて電柱の陰に潜んでいる。

視線の先には空き地の土管を見つめる同居人の姿。

正確には土管ではなくその上に鎮座している三毛猫だろう。

なるほど、あの猫が観察対象か。

ふと目線を右に逸らしてみると、電柱の付近に立つカーブミラーに映るぐぅの音も出ない変質者と目が合った、気がした。

その格好はアロハシャツにサングラス。紛う事なく自分の姿だった。

ハードボイルドは今日だけ家に置いてきた事にしておこう。
 
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/21(土) 23:17:28.19 ID:aP2GD9YT0

彼女が今いるのは近所の空き地。

そこに長らく放置されている土管の上に、猫が数匹ほど座っている。

人慣れしているのか逃げる様子も特に無い。

その中心にいる三毛猫の首には鈴が付いていた。飼い猫だろうか。

くしくしと手で顔を掻いたり、大きい欠伸をしていた。

ふとサンディの方を見てみる。

顔でも痒いのだろうか。右手の甲で何度か頬をさするような仕草をしていた。

もう少しだけ注視してみる。

サンディは一生懸命に猫を見ながら口を大きく開けた。

くあぁぁ、と欠伸をするような吐息を漏らすが、顔は真剣そのもの。

これはまさか……猫の真似をしているのだろうか。

更にもう少し観察を続けてみる。

猫が伸びをする姿勢をすると、彼女もまた同じポージングをしていた。

うむ、確定だ。猫の素振りを真似ているぞこの子。

 
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/21(土) 23:18:16.19 ID:aP2GD9YT0

謎の感情に心臓がキュッとなる。うっ、と思わず声が出そうになった。

それと同時に自分が隠れている電柱とは対面にそびえている電柱の陰で、

黒いスーツに身を包んだ女性が胸の中心を抑えつつ悶えている様子が見えた。

うっ、と声を上げてそうな素振りをしている。

変質者発見。いや違う、向こうから見たら僕もそんな感じだった。

対面側の彼女はあれか、組織から派遣されたサンディの護衛の人か。

不意打ちでこんなの見せられたらそうなる気持ちは重々理解できるので今回は不問にしておこう。

 
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/21(土) 23:34:21.12 ID:aP2GD9YT0

悶えるのを耐え続ける怪しげな大人たちに囲まれている。

そんな小さな地獄絵図を露知らず、サンディは猫の観察を続けている。

猫の挙動や仕草を真似つつ、ノートに何某かをカリカリと綴っていた。

書いている内容に全く想像がつかないのがまた何とも言えない。

ふと、あの子のいる空き地が薄暗くなった。

よくよく見たら空き地だけではなく、自身のいる辺り全体がどんよりとしている。

空を見上げると厚い雲が太陽を遮っている。

すん、と鼻腔をくすぐるのは仄かな梅雨の香り。夕立の顔(かんばせ)が上から覗き込んでいる。

それに感化されたかのように、遠雷がゴロゴロと重い音を響かせた。

雨が降り出すのはそう遠くないだろう。

サンディもそれに気づいたのか、ポシェットにノートをしまいこみ、帰宅の準備を始めている。

僕と対面側の女性もそそくさと帰り支度を整え、その場を後にした。

帰路に着く自身の脳裏には、先ほどの空き地で過ごしていたサンディの情景。

彼女の無邪気なその様に、しとど濡れるアスファルト以上に僕の心は潤っていた。

なんだか小さな世界に蔓延る幸せが彼女を包んでくれているようで。


 
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/21(土) 23:58:43.19 ID:aP2GD9YT0


「ただいま、帰りました」


おかえり、と僕は言葉を返す。少しだけ肩で息をしながら。

急いでアロハシャツから着替えて出迎えたのが要因だ。

彼女は訝しむ様子もなく、洗面所で手洗いうがいを終えて、

冷蔵庫にしまってある冷えた麦茶を取りに向かった。

台所の奥から声が聞こえてくる。お兄さんも麦茶を飲みませんか、と。

一杯もらおうかなと返事をしつつ、自分の手元にある小型カメラに目線を下ろす。

そこに写るのは先ほどの空き地にいたサンディの一部始終。

撮ってはみたものの、これは多分バレたら怒られるだろうな……。

そっと削除にカーソルを合わせて決定ボタンを押してみた。

可愛らしい様子であったが、写真を撮る際はやはり本人に許可を取ってなんぼというもの。

少しだけ勿体ない気もしたけれど、これでいいのだ。

軽くため息をついたところでペタペタと台所の方からスリッパの音が近づいてくる。


「はい、お麦茶です」


サンディはそう言いながら、そっと優しく麦茶を僕の前に差し出してくれた。

謎の丁寧語が妙に可愛らしくてついぞ口元が綻んでしまう。

 
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/22(日) 00:11:22.19 ID:L18Uo7f10

お盆を胸の前に添えてにこやかな笑顔を向けてくれる彼女。

いい表情をするようになったなぁ、と何だか嬉しくなってしまう。

ふと思い立ち、カメラを起動した。


「サンディ、一枚撮らせて」

「はい?」


パシャリ、と一枚。

カメラの中には無防備な笑顔のサンディが映し出されていた。

急に撮られて驚いたのか、あわあわと狼狽する彼女が愛くるしい。

顔の熱さを誤魔化すように手をパタパタさせて、その後にサッサッと前髪を整えている。

不意打ちみたいに許可を取ってみたが、これはもう一枚くらい良さそうかな。

僕は彼女を自分に軽く抱き寄せて、自撮りのような様でファインダーを降ろしてみる。

真っ赤な顔をした少女とハードボイルド探偵の様子が一枚増えた。

何気ない僕らの只の日常の一ページ、積み重ねていきたい幸せの名残。

今度連れて行く予定の夏祭りで、更に枚数が増やせたらいいなと思ってしまうのだ。


 
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:13:12.05 ID:L18Uo7f10
少しだけ投下させて貰いました。
読んでくれるのなら、それだけで有難い。
肝心の夏祭りは次の投下時にでも。
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 00:26:54.05 ID:2Fob7RNIo
おつおつ
こんなん不審者量産されちまう
来週からも頑張ろう
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 01:57:18.95 ID:LdAz9hcmo
良い……
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 05:19:15.87 ID:0MyZ8VqAo
お疲れ様です
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 07:34:31.38 ID:riq/95pMo
嗚呼尊い
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/23(月) 19:07:04.98 ID:JilGHsPSO
癒されました・・・
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 07:07:35.96 ID:OFor3nMTO
乙かれ様です
ニャンディ…
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/26(木) 07:03:00.60 ID:kGaOfU7hO
更新されてるぅううううう!!!???
気づくのが遅くなってしまった……更新お疲れさまでした。とても尊い……。
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/05(土) 03:26:17.31 ID:E8sYXJhQ0
語彙が来い(しゅき)
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/15(火) 02:41:49.95 ID:cZXKolcGO
>>376お前が語彙にナルンダヨォ!
ニャンディはそういえばお魚さんが好きだったね。
懐かしい食事として今度は回るお寿司連れて行ってあげたい想像したかわいいやばいしぬ
378 :sage :2018/06/01(金) 02:59:52.22 ID:ud9NdqNj0
夏祭り編は夏に投下するのかな
乙だね
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 23:29:02.09 ID:kHWgRYZzO
まだ期待して待ってますよー!
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/06(水) 08:41:05.35 ID:CLNIGgDD0
久々に半休が取れて、特に予定も無し。
小話書くなら今のうちということで、今日の夕方頃に少しだけ投下します。
夏祭りになるか幕間になるかは検討中。
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 10:40:00.17 ID:BHQxpnkQO
ありがとうございます!
お忙しい中お疲れ様です
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 13:04:04.96 ID:/Vv2tK3YO
可愛さに癒やされながら追いついた

元奴隷という共通点からかサンディが某同人ゲームの娘で再生されてしまう
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 18:48:06.70 ID:CLNIGgDD0
思った以上に時間がかかって申し訳ありません。
本日夕方までに書き上げられるのは難しかったです……。
近日中には必ず投下しますので、気が向いた際にお目通し頂ければ幸いです。
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 19:09:19.02 ID:q9UdEIMG0
ところで思ってたんだけど酉つけないの?
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:16:08.60 ID:JHw0RtO20


夜明けの空に蛍が哭いた。

時刻は午前四時を少し過ぎた頃。

薄い青を纏う空は雲一つ無い。淑やかな景色だ。

窓を開けると、白みがかった月の横に寄り添うような星が見える。

それと同時に、人肌程度のぬるい湿気を重ね着した風が部屋に忍び込む。

香水のように仄かに鼻腔をくすぐる朝露の香り。

季節が巡る。

彼女と過ごす初めての夏は、いつの間にか本格的に始まっていた。

 
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:19:14.38 ID:JHw0RtO20

早起きをしたので寝室の窓際で夏の朝を噛みしめていると、

ベッドの方から「うぅん……」と声が聞こえてきた。

そちらの方に振り返って音の出処を確認してみると、

同居人のサンディから発せられていた声だったようだ。

寝汗で冷えているかも知れない。

近づいて軽く頬を撫でてみるが、特に汗をかいたような形跡はなかった。

頬を撫でた際、寝ている彼女は軽く微笑んだ。

起こさない程度に冗談半分で顎の下を少し擦ってみると、

嬉しそうな、くすぐったそうな顔をしてむにゃむにゃ声を上げている。

日々の修行の成果か、徐々に猫の魂がインストールされているのかも知れないな。
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:21:43.91 ID:JHw0RtO20

それにしても、幸せそうな寝顔をしてくれるなぁ。

ここに来た時は毎夜の如く魘されていて、ひどい歯ぎしりをしていた彼女が

今はこうして穏やかな眠りを享受できている。

本当に喜ばしいことだ。

きっと彼女を怖がらせるような外敵がいないという、安心した環境下がそうさせてくれるのだろう。

そこに少しでも僕が介添え出来ているのなら、それだけで良い。

いつか僕の元を離れて、それから先の世界を生きる彼女。

今のように安寧で過ごしてくれるよう、少しずつ整えていかなければならない。


サンディと過ごし始めてから早九ヶ月。

当初の予定だった一年契約は、今のところ相手先からの変更は無し。

季節が巡る。時の流れは寄せては返す波のように。

出会いの季節に近づいて、別れの季節へ還っていく。

388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:23:14.30 ID:JHw0RtO20


「おはようございます、お兄さん」

「おはよう、サンディ」


目を爛々と輝かせたサンディは元気よく挨拶をしてくれる。

よく眠れた証拠だろう。

彼女は颯爽と台所に向かい、朝ごはんの準備を始めた。

料理の楽しさを知ったのか、居候なりの気遣いか。はたまた両方か。

もはや我が家の朝食に関してはサンディの領分と成っていた。

僕としては非常に有り難い限り。

まぁ任せっぱなしも何なので、洗い物くらいは担わせてもらってはいるが。
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:26:12.38 ID:JHw0RtO20

コトコトとお味噌汁がうっすら噴きそうな、美味しそうな音が聞こえてくる。

エプロンを着けたサンディは慣れた手つきでコンロを止めて、お玉で軽く中身を一掬い。

ふーっ、ふーっ、と息を吹きかけて熱を冷まし、ずずっと啜る。

次の瞬間には花が咲くような目映い笑顔。どうやら美味しく出汁が取れたようだ。

やたら素敵な表情をするので、ちょっとだけ味見をしたくなる。


「サンディ、サンディ。僕もちょっと味見がしたいな」

「はい、勿論です。味の濃さは如何でしょうか?」


そう言いながら同居人は再びお玉に汁を掬い、

またしてもふーふーしながら一所懸命に冷ましてくれる。

これは何とも至れり尽くせり。

息を吹きかけるサンディに、からかいがてら擽るように告げてみた。


「なんだか新婚さんみたいだね」

「ふーーーーーーーーーーーー!!!???」


サンディの吐く息の量が凄まじい事になり、お玉の中身は全てキッチンの排水溝に吸い込まれた。

390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:33:59.42 ID:JHw0RtO20

目線は宙を浮き、握ったお玉を剣道の竹刀の構えのように僕に向けてきた。

しどろもどろの擬人化、とは今の彼女を指すのかも知れない。


「いや、え、あの、その、そ、そんなつもりでは……その……!!」

「いやゴメンゴメン、驚かせちゃったね」


耳まで真っ赤にしている彼女が何とも可愛らしい。

僕がカラカラ笑うと、サンディはもうっと言いながら改めて一口分だけお味噌汁を掬う。


「はいお兄さん。ご自身でふーふーしてくださいね」


どうやらちょっぴり拗ねてしまったようだ。それすらも愛おしい。

391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:38:16.71 ID:JHw0RtO20

僕は自分で軽く二息ほど吹きかけ温度を覚まし、さっそく味見をしてみる。

うん、良い出汁が出ている。これは随分と料理上手になったもんだ。

年齢的にはまだ幼いという言葉が当て嵌まるのに、本当に君はしっかりしている。

思わずサンディの頭に手を置いて、くしゃくしゃと軽く撫でてみた。

彼女はうひゃっ、と声を上げて驚いてはいたものの、少し俯きがちに僕の手を享受してくれた。


「うん、美味しい。サンディは良いお嫁さんになるよ」

「ほ、本当ですか!!」


とても嬉しそうな顔で喜んでくれるサンディ。

良いお嫁さんになるのは本心だ。確定事項と言ってもいい。

まだまだ小さいけれど、もう数年もすれば

世の男性が放ってはおけない素敵なレディになるだろう。

あとは悪い虫が寄って来ないよう、撃退方法を伝えておくのが僕の役目か。
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:43:03.39 ID:JHw0RtO20


サンディはもじもじしながら、僕に一つ質問を投げかけた。


「お、お兄さんは、私のそういう姿を見たいとか、思いますか……?」

「勿論だよ。君のウェディングドレスを見る事を、僕の人生目標にでもしようかなぁ」


なんて冗談交じりに言ってみる。

するとサンディは大きい目をキラキラさせたかと思うと、とたん僕の胸に飛び込んできた。

顔を胸元に埋められて後頭部しか見えないゆえ、どういう表情をしているのか読み取る事はできない。

うずまってきた胸の内側で彼女は言葉を紡いだ。


「じゃあ、いちばんちかくで、みてくださいね……!!」

393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:43:55.58 ID:JHw0RtO20


バージンロードを歩く父の代役という意味だろうか。

とりあえず、うんと答える。

すると彼女はうずめた顔を僕の胸にぐりぐり摺り寄せてきた。

僕の後ろに回されている手もギュっと力が入って、抱きしめられているような感じになっている。

ここまでサンディが表現するのは珍しい。嬉しいのだろうか。

とりあえず頭を再び撫でながら僕は言う。


「とりあえず、朝ごはんの準備しよっか」

「…………は、はいっ!」

394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:44:46.40 ID:JHw0RtO20


和食で彩られた朝食。今日も彼女の料理の上達具合を味と共に楽しめた。

僕は食器洗い、サンディは食後のお茶の準備をこなし、穏やかな朝の時間が始まる。

テレビを点けると朝のニュースが流れている。

サンディは食い入るようにゴシップに見入っていた。君って割とそういうネタ好きだよね……。

その合間に僕はポストから朝刊を取る事に。

ポストの中には新聞に紛れて、町内会のチラシが投函されていた。

内容は「夏祭りにおける道路規制について」。

そういえば今日は夕方からお祭りだったな、と思い出す。
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:47:03.75 ID:JHw0RtO20

お祭りは特に花火に気合を入れていて、近くの湖に面したところで打ち上げる事になっている。

割と規模の大きい打ち上げ花火が見られるから、近隣住人における夏の風物詩にもなっているのだ。

そのチラシを片手に事務所へ戻り、

芸能人の飲酒問題に興味津々のサンディさんの背中に向かって問いかける。


「サンディ、今日はお祭りに行かないかい?」

「……はい?」


お祭りが何たるかいまいちピンと来ていないのだろうか。

首を傾げる動作がキュートで愛らしい。

後ほど祭りの活気と花火の綺麗さを軽くレクチャーする必要がありそうだ。



僕と君はいつか離れる事になっている。

それまでに、うつくしいものを一つでも、君に差し上げたいんだ。

396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/09(土) 00:49:17.97 ID:JHw0RtO20
今宵はここまで。今回は幕間がてらの二人の近況の話。
次回こそ夏祭り編。
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/09(土) 03:04:14.85 ID:/FOcTVXeo
おつ
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/09(土) 08:28:06.16 ID:DKEQHvuzO
>夜明けの空に蛍が哭いた

すごい美文だとおもいました(小並感)
次更新も楽しみにしてます
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/10(日) 09:42:58.60 ID:rvzZOGDi0
おつです
次回も待ってます!
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/10(日) 15:25:12.42 ID:LNB86qPLO
見てあげてほしいですね"誰より"も近くで。
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/10(日) 17:46:44.89 ID:9leKWHIwo
これは間違いなく勘違いのパターン…
後から修羅場になるんだろうなぁ…
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/11(月) 04:23:11.97 ID:sy8ph5kK0
アッアッアッほぶぁぁぁあ尊い死ぬ(語彙)
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/29(金) 00:43:30.77 ID:y4MdAdNyO
大人の女性になる近道は恋と嫉妬と勘違い
サンディはきっと素敵なレディになるだろう
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/02(月) 22:05:49.76 ID:tv3J+4f90
もうほんと…浄化される…
いつもありがとうございます
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 02:15:14.49 ID:DNR4q8jP0


【番外編〜未来はミルクで作られる〜】


ここは喫茶店、リーブル・ド・イマージュ。

フランス語で絵本という意味らしい。

僕は今この店のカウンター席に座り、注文したエスプレッソを堪能している。

飲み慣れたこの味は、目を閉じても香りだけで酒類を当てられる自信がある。

苦みの強い筈なのに、不思議とそれが心を解きほぐす要因となっているようだ。

暦の頃は二月上旬。冬の冷え込みとしては最後の時期。

カウンターから外を眺めると、ちらちらと粉雪が舞っていた。

店内の穏やかな温度とは裏腹な景色がガラス一枚を隔てた向こうに広がる。

そんな風景を横目にして、ずずっと音を立てコーヒーを体に浸透させてみた。

じんわり広がる温かさ。仄かな幸せを舌先から感じる。

うん、やはりマスターの淹れるコーヒーは美味しい。

 
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 02:19:50.38 ID:DNR4q8jP0

彼はいま僕を背にして、コーヒーミルを使い自身の手で豆を挽いていた。

マスターの無骨な背中には哀愁を覚えてしまう。

何の歌詞だったか。男には自分の世界がある、と。

背中で謳う男の物語。

奥深さを醸し出し、それを感じ取る僕もまた男だから。

共鳴にも似たハードボイルド同士の性(さが)だというものか。

多くを交えず、ただ黙さず。

ごりごりと豆を荒く擦る音だけが店に響く。
 
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 02:23:57.90 ID:DNR4q8jP0

僕が手元の飲み物を半分ほど飲み終えた頃。

ふと、彼が手を止めて僕に語りかけてきた。


「気付いていたか?」


僕は飲んでいたコーヒーカップをソーサ―に置き、渋めの声を意識して答える。


「もちろん」


マスターは、ふっと軽く肩をすくめながら笑う。

彼には見えていないだろうが僕は口角を軽く上げて答える。

再びミルで豆を挽きながら彼は告げる。


「すまん注文間違えてた。
 お前に出したコーヒーな、コロンビアだったわ」


僕は答えずに手元のコーヒーを再び啜る。

やっぱりコロンビアだったか。

気付いていたけどね。ほんとほんと。

408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 02:39:52.10 ID:DNR4q8jP0


芳醇な香りのコロンビアはやはり良いものだ。

エスプレッソとはまた一味違ってくる。味も苦くてなんとなく似ているなぁ。

心に芽生えた羞恥を誤魔化すように、僕は言葉を紡いだ。


「それにしても、今日も今日とて閑古鳥が鳴いてるね」

「お前が来るといっつも客が去っていくんだよな。ホント貧乏神かってんだ」


彼は手作業を止めて僕に向き合ったかと思うと、

しっしっと追い払うように仕草を見せてくる。

慣れ切った僕は、受け流すように笑みだけ浮かべておくことにした。

まぁこういうのは、堅苦しい客と店員の会話よりも心地よかったりするから不思議なものだ。

 
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 02:40:50.97 ID:DNR4q8jP0

やれやれ、という表情のマスターは続けて言う。


「そういえば今日はあのお嬢さんはどうした?」

「ああ。ここの店のすぐ傍に出来た本屋さんにいるよ」

「一人にしてもいいのか?」

「あんまり僕がべったりなのも息苦しいのかなって。
 本を買ったらこの店に来るように伝えているよ」

「なんだ、少しは何某かを考えてるんだな」

「まぁね。一応保護者だし」


鼻垂れ小僧がえらくなったもんだ、と何故だかマスターは少し嬉しそうだ。

そんなに昔からの知り合いじゃないでしょ、と突っ込んでみると

会ったときからずっと鼻垂れ小僧だよ阿呆、と返された。

貴方には頭が上がらないから、そりゃぐぅの音も出ないときたもんだ。

410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 02:51:29.99 ID:DNR4q8jP0

マスターは意地の悪い笑顔を浮かべて僕に向き合う。


「そういやお前、気に入った子がいると昔よくここに連れてきてたな」

「いやまぁそんな事もあったような無かったような……」

「『ここ雰囲気が良いところでしょ?隠れ家なんだ』が店に入ってからの毎度の切り出しでよ」

「どうだったかなぁ……」

「一緒に来るのは決まって胸のでかい年上ばかり」

「おいやめろ馬鹿店主、情報漏洩で訴えるぞ」


かっかっか、と実に楽しそうなマスターの笑顔が憎たらしい。

僕は照れ隠しを込めて一気にコロンビアを飲み干して、マスターに告げる。


「そもそもね、胸の大きい子が嫌いな男子はいないでしょ」

「視線が尻にいかねぇ辺りはヒヨッコよ」

「いや尻もいいけれど今は胸の話だから。大は小を兼ねるのさ」

「大は小をねぇ……」


このマスターは胸の大きい子の素晴らしさを分かってないな。

ここは一つハードボイルドに熱く語ってみるか。

411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 03:02:03.94 ID:DNR4q8jP0

店の入口に備えられていた鈴の音を背中に受け、それを合図に僕はまくしたててみた。


「いいですか?そもそも胸が大きい子は良いんですよ」

「ほぅ」

「あのたわわな感じで、両の手にギリギリ収まらない辺りがベストですかね」

「ほほぅ」

「弾力性があり、先端の部位すらも神々しく思えるようなお椀形で
 水着に着替えたらはちきれんばかりのグラマラスさがたまらないと思わないんですか!?」

「お前のタイプは胸の大きい子ってわけでいいんだな?」

「いやそれだけがタイプじゃないですが、大きかったら最高のオプションですね」

「んじゃ、胸の小さい子はどうすんだよ?」

「そりゃ牛乳でも飲んで育ててもらうほか無いでしょう!?」


「だってよ、お嬢ちゃん」

「………………は?」


マスターは僕の後ろに向けて言葉をかける。

僕は間髪入れずに振り返って、その言葉の方向を見る。


そこには、玄関付近に本屋の紙袋を抱えたサンディがいた。

412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 03:10:36.21 ID:DNR4q8jP0

い、いつの間に店内に!?

まさかあの時の鈴の音は来客を知らせるための……!?

いやしかし、割と距離もあるし、僕とマスターの会話って意外と聞こえてないのでは。

俯きがちで前髪がぱさりと垂れたサンディの表情は分からない。


「さ、サーンディ。こっちおいで。欲しい本は買えたかい?」

「……はい」


そのまま僕の横に空いている席にちょこん、と座る。

おいおい謎の空気の重さですよ奥さん。

ハードボイルド力を高めていないと到底耐えられないぞ。


「ま、マスター。コロンビアのおかわり一つ」

「あいよ。そこのお嬢さんは何か飲むもの決まったかい?」


一瞬の静寂。そして紡がれた言葉は。


「…………………ミルク、お願いします」


か細い声でミルクを注文しおったわ。

これ絶対さっきの会話聞かれてますやん。

413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 03:16:39.49 ID:DNR4q8jP0


この喫茶店での一件以来、サンディの日課が一つ増えた。


<コップ一杯の牛乳を毎日飲むこと>


うんうん、健康的で大変よろしい。

僕は僕で、あそこで喋った事柄を早めに忘れなければならないだろう……。



414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 03:19:40.24 ID:DNR4q8jP0
この手の番外編たくさん作っておりまして。昨今長くお待たせしているゆえ投下する事こそが大事。
もちろん本筋も大事にしております。
こうして未だに見てくださる方々に感謝をば。感想レス本当に嬉しいです。
これからも緩く続いていければと思うので、たまに見に来てくれると幸いです。
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 04:08:36.10 ID:IFXF04iLo
お疲れ様です

頑張れ豊かな胸を目指して
416 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 19:38:24.32 ID:mPKtNRVtO

コーヒー飲んでるのに酒?と思ったら種類か…
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/06(金) 01:55:33.91 ID:ytdShLoP0
はーもう、好き!!!(大声)
清らかな気持ちを思い出すわ
418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/08(日) 20:34:59.29 ID:pkUJ8PXm0
あーーー、かっわいいなぁ!!!!サンディさんよぉ!!!!!
めっちゃゆるゆると待ってます、がんばってください…癒される…
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/14(土) 00:31:15.42 ID:nEf2QhjR0
はい尊いーーマジ無理ーー好きーーー
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/14(土) 22:10:30.83 ID:vPPy4PT50
萌えエネルギーが足りないぞ!
もっとくれ(´・ω・`)バンバン
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/03(金) 11:39:36.77 ID:JiZBB5bX0
保守
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/06(月) 01:31:29.74 ID:MBIdpBwTO
夏休みだしアメリカの孤児院に住んでる子がホームステイ(?)に来たらサンディ慌てそうだな
と、夏休み編きぼんぬ
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/10(金) 02:21:32.68 ID:rJ5jODG8o
待ってるよー
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 19:33:15.34 ID:qIEG0TPV0
机バンバン三c⌒っ.ω.)っ シューッ
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 08:07:04.86 ID:i8Hk4PN/o
まだかなー?
426 :terra [sage]:2018/09/02(日) 19:55:57.16 ID:mgJVcrdA0
まだ!私は!尊み成分が足りてない!お願いします!夏祭りを!!!
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/09/03(月) 07:27:41.81 ID:jf1cxdO+0
【若者のすべて】
https://www.youtube.com/watch?v=IPBXepn5jTA
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 20:48:30.43 ID:4uI/TZsD0


耳に届くは夏の風物詩。

遠くから太鼓の音が聞こえてきた。

実際に叩いてはおらず、どうやら町内放送用の

大きいスピーカーで流しているようだが、

それだけでも祭りの雰囲気をこれでもかというほど増幅してくれる。

湖畔の傍にある公園のベンチで、僕はのんびりと空を仰いでいた。

薄橙色の黄昏だったカーテンはゆっくりと黒を纏い始めている。

夕暮れ頃に浮かんでいた入道雲も夜に染められているようで、

今は蝉の声と共に鳴りを潜めているようだ。

 
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 20:50:04.96 ID:4uI/TZsD0
 
周りを見渡せば人の波が視界に飛び込んでくる。

中々に壮観な混雑具合で、人混みが苦手は僕としては

この中に後から飛び込むのかと考えると少しだけ肩が重い。

只、がやがやとしているが、その実なぜだか妙に心地良い。

祭りの賑わい故だろうか。

下駄足が奏でるカランカランという音と共に、

耳に入ってくるのは笑い声を基調とした穏やかな喧騒。

家族か、友人か、或いは想い人か。

様々な人間模様が目の前をゆっくりと通り過ぎていく。

 
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 20:53:56.36 ID:4uI/TZsD0

ふと、下駄の音が背後から自分に近づいてくるのを感じた。

振り返ってみると、そこには一人の女の子。


「お兄さん、お待たせしました」


和装の定番とも言える浴衣に身を包んだサンディがそこにいた。

日焼けした褐色の肌、烏の濡羽色を想起する黒艶な髪からのぞかせる、ほんのり紅潮した頬。

何やら少しもじもじしているのは、着慣れない服装に戸惑っているのかもしれない。

そんなしおらしい動作も兼ね揃えていて、奥ゆかしい大和撫子を体現しているようだ。

 
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 20:55:31.94 ID:4uI/TZsD0
 
濃紺の藍色を基調とした浴衣に身を包んだサンディ。

それを見た僕は率直な感想を告げてみた。


「うん、綺麗だね」

「………………っ!!!」


彼女はぼっと顔を更に真っ赤にして、しゅんしゅんと肩を縮こませるような素振りをする。

俯きがちに口元をもにょもにょさせる仕草もこれまた愛らしいというか何というか。

お祭りのために慌てて浴衣の買い出しにいったのは、どうやら正解だったか。

 
432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 20:59:36.47 ID:4uI/TZsD0

サンディの分だけ買うと彼女は気後れするだろうから、

いちおう僕も大人用のそれを購入して、いま実際に着ていたりする。

和の心を形だけでもと整えてはみたが、こうして実際に袖を通してみると

なかなかどうして粋なものだ。


「お兄さんも、とっても似合ってます……」

「え、本当!? 似合ってる?」

「ほ、本当です! すっごく、すっごく格好いいです!!」


両手をグーの形にして胸元に構え、ふんすと鼻息を荒げつつサンディは褒めてくれる。

なんだが言わせちゃったみたいで申し訳ないなぁと、頭を軽くかいてみる。

そのまま余った方の手をサンディの頭に添えて、整えられた髪を乱さない程度に少し撫でてみた。

ふふ、と少しくすぐったそうに顔をほころばせてくれる。

困ったことに、どうにも可愛い以外の言葉が出てこない。

彼女の微笑みは、見た人の語彙力を無くす効力でもあるのだろうか。

 
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 21:02:24.39 ID:4uI/TZsD0

「そ、それにしても思ったより時間がかかって申し訳ありません」

「気にしないで。少しは下駄に慣れたかい?」

「む、難しいところです……」


彼女は浴衣用の下駄を初めて履くものだから、

玄関を出た先の足取りなんてそれはもう覚束なくて危なっかしい。

なので近隣にある公園の周りを少し歩いて練習してくるとの事で遅くなっていた。

僕は祭りのために備え付けられていた公共用ベンチから腰を上げ、

さてどこから屋台を周ろうかなと思案をしながら一歩二歩と歩みを進める。

すると後ろから「うわっと、とと……」とこけないよう慌てるような声と共に

不規則なリズムの下駄音が聞こえて来た。

サンディはやはり歩き慣れていないようで、少しフラフラしながらも

カルガモの赤ちゃんみたいに一所懸命ついてくる。

靴擦れ防止のため、鼻緒が当たる指間にはバンドエイドを貼ってはいるものの、

それでもこすれて痛まないように歩く歩幅には気をつけておきたいところ。

 
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 21:04:51.81 ID:4uI/TZsD0

目線を下にして足元を注視しながらも、わたわた歩きをするサンディは実に可愛い。

だがそれ以上にハラハラしてしまう……。

折角の楽しい場でケガをさせてしまうのは保護者失格。

浴衣と下駄を見立てたのは僕だし、そこはしっかり責任を持たねば。

支えになるため、彼女の左手を優しく握ってみた。

手が触れた驚きからか、下を向いていたサンディは顔を上げ、

まん丸になった彼女の目が僕の視線とぶつかる。

すると途端にまた俯いて、ぽつりと呟いた。


「あ、ありがとう、ございます……」


身長差も相まって彼女の表情は見えないが、耳元がこれでもかというほど赤くなっている。

一足早い秋の訪れか。まるで紅葉のようだった。

 
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 21:12:59.53 ID:4uI/TZsD0

まぁ、おじさんに片足を踏み込んだような僕と手を繋ぐのは恥ずかしいのだろう。

中々に慣れてくれないから何だかこっちも妙に照れ臭くなってしまうのは困りもの。


「ゴメンね、嫌だったら離してもいいからね」


そういうとサンディは首を勢いよくブンブンと振って、

繋がっている手を少し強く握り返してくれた。


僕らは人込みの中にゆっくりと歩みを進めていく。

今日はお祭り。荘厳な意味合いではなく、人の笑顔で包まれる賑やかな世界。

美味しいものでも食べながら、ぶらりと歩いてこの空気を堪能してみよう。

その中で、一秒でも長く彼女の笑顔が続くよう

喧騒が好きな神様へ向けて少しだけ祈ってみた。

 
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/15(月) 21:20:03.24 ID:cWIBgpyuO
更新お疲れ様です
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/15(月) 21:21:02.76 ID:Nerc9FuGo
お疲れ様です
あー、かわいいかわいいかわいすぎる
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 21:30:12.58 ID:4uI/TZsD0

ちんとんしゃん、と祭りの雰囲気を色濃く醸し出してくれるBGMが聞こえてくる。

そんな中でダラダラ歩みを進めていると、くぅぅと横から可愛らしいお腹の音が聞こえて来た。

発信源になった子は、それはもう恥ずかしさでいたたまれないような表情をしている。

そういえば夕飯を済ませていなかった事を思い出し、

僕とサンディは屋台の並んだ通りを歩くことに。

当の彼女はチョコバナナ、綿菓子、林檎飴と見慣れない食べ物に非常に興味をそそられており、

おのぼりさんの様に首を忙しなく左右に振っていた。

 
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 21:33:04.35 ID:4uI/TZsD0


「お兄さん、あれはなんですか?」

「あれはヒーローを催したお面だよ」

「食べられるんですか?」

「食べられないよ」

「え、でもアンパン〇ンのお面があります……」

「彼は稀に食べられない顔を持っているからね」


「あ、ではあれは何をしているんですか?」

「あれは型抜きだよ。くりとった型の出来で賞金や商品がもらえるよ」

「食べられますか?」

「素材的に食べられなくはないけれど、たぶん止めといた方がいいよ」


「じゃあ、あれは何ですか?」

「金魚すくいだね。掬った金魚を持って帰って育てたりできるよ」

「食べられますか?」

「お刺身の文化はあるけれど、あれは食べられないよ」


今日のサンディさんは突然の腹ペコ属性を手に入れてしまったようだ。

このままでは射的の屋台を見ても食べ物の可否判定をしそうな勢いじゃないか。
 
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 21:36:41.52 ID:4uI/TZsD0

「へい、サンディ」

「な、なんでしょうか?」

「お好み焼きとタコ焼き、どっちが好き?」

「ど、どちらも好きですが……強いて言えば、たこ焼きです」

「よっしゃ任せて、どっちも買ってくる」

「え、お兄さん!? お兄さん!?」


何故に一回泳がせる質問をしてしまったのか、それはきっと祭りの魔力。

ハードボイルドらしからぬ言動だが、そこはそっと目を瞑ってほしい。

たぶん僕も空気にあてられ、少し浮かれているのだろう。

お祭りとは得てしてそういうものか。童心をふっと思い出してしまうのも已む無し已む無し。

 
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 21:44:36.17 ID:4uI/TZsD0

少し離れた屋台にて双方の食べ物を購入し、サンディの所へ戻ろうと振り返ってみると。

遠目だと分からないが、どうやら浴衣姿の女性と話し込んでいるようだ。

知り合いなのだろうか? 屈託のない笑顔を浴衣の女性に向けていた。

例の事件のこともあるし、心内で少しだけ警戒レベルを上げながら元居た場所に歩みを進める。

だが、近づくにつれて自分の心配が杞憂なのが分かった。

サンディと話し込んでいるのは、よく買い物に行く洋服屋の店員だった。

確かサンディと初めて会った頃、動物園に向かう前に寄ってからあの店は贔屓させてもらっている。

当然僕も顔なじみになり始めていたので、まぁ互いに見知った仲ではある。

浴衣姿の店員がこちらに気付いて手を振ってくれた。

少し気恥ずかしさを覚えながら、食べ物の入った袋を片手に一任し、空いた手で手を振り返してみた。


その時にふと、気がつく。

その店員の背中に隠れるように、サンディと同年代の子どもがいる事に。

 
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 21:53:37.90 ID:4uI/TZsD0

「あら、お兄さん。偶然ですね!」

「いや本当に。店員さん、浴衣姿も似合っていますね」

「本当ですか!? いやー、イケメンから言われると悪い気はしませんね!!」


はっはっは、と互いに笑いながらも邂逅する。

こちらとしては偽りなく褒めているつもりだが、まぁ向こうの返しは社交辞令だろう。

アパレル系の方は何かとお上手なものだ。

ふと何やらピリッとした視線を感じる。

店員の後ろから発せられるそれは、子どもから生じていたものだった。

なんだか敵意のようなものを向けられているような気がする。

知らぬ間に嫌われるようなムーヴを見せてしまっていたのだろうか……。

 
443 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 21:56:46.59 ID:4uI/TZsD0

大きな目、クリっとした癖毛、中世的な顔立ち。

例えがあまり思い浮かばないが、芸能人の有名子役と言われても違和感のない子だ。

まぁ、うちの子も負けてはいないが。

背丈と雰囲気から察するに年齢はサンディと近いと予想する。

……ただ、この子は男の子か?女の子か? 一体どっちだ?

とりあえず質問してみることに。


「あの、後ろの子はご家族ですか?」


店員はからから笑って答える。


「この子は従弟ですよ。年の離れているのもあって可愛いのなんのって」

「そ、そうですか……」


男の子であったか。

うむ、探偵としてのカンが男の子と告げていたからね。やっぱりか。

などと誰にも聞こえない謎の強がりもとい勝利宣言を頭の中だけで考えていた。

 
444 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 22:07:46.52 ID:4uI/TZsD0

そういえばサンディは、日本に同じ年頃の子の友人が今の所いなかったのを思い出す。

もしこの子が友人になってくれたら、きっと彼女は喜ぶだろう。

いつの間にやら僕の背中に隠れるように収まっていたサンディの頭を軽く撫で、

そっと背中を押して前に出す。


「ほら、自己紹介」

「あ、え、あ……、さ、サンディです。 こ、こちらのお兄さんにお世話になっています」


よく言えました、と褒美のように手元のたこ焼きを手渡しする。

えへへ、と笑顔を見せる彼女は可愛い。

何でこんなに可愛いのかよ、と孫を歌う某演歌の歌詞の一部が想起されてしまう。


負けじと店員さんも、背中にいた子をグイグイ押し出してきた。


「ほら!あんな可愛い子が挨拶してきたんだから、アンタも自己紹介しなさいな」

「……みなせ、まお、です。真っすぐ生きるって、書きます」


なるほど、真生(まお)君か。良い名前だな。

確か中国の猫も、マオと呼ぶんだったか。そちらの意味も妙にしっくりくる。

サンディにとって、こっちでの初めての友達になってくれたら嬉しいけれど、

まぁそこまで干渉するのは庇護が過ぎるか。

両人でどこか気が合う所があればいいのだけれど、などと思ってしまう。

 
445 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 22:19:24.64 ID:4uI/TZsD0

店員のお姉さんは、よくできましたと言わんばかりにマオ君をぐりぐり撫でくりましている。

当の彼は、やめろよと口では言いながらも、嫌がる事無くされるがままだった。

どことなく照れているような素振りすら伺えてしまう。

……おや、これはひょっとして?

ひとしきり撫で終えたあと、店員はこちらを振り返って笑顔を向けてくる。


「それにしても、お互いに子ども連れって奇遇ですね。
 お兄さんは彼女さんとかいらっしゃらないんですか?」

「いやぁ、あいにく縁が無いものでして」

「モテそうなのに意外ですねぇ」

「それを言うならそちらこそ。彼氏さんとは予定が合わなかったんですか?」

「謙虚に地雷を踏むタイプの人ですか、お兄さん……!
 彼氏なんてもう長いこといませんよ……」


店員のお姉さんは、げんなりと肩を落とすような仕草で、これみよがしに大きなため息をつく。

僕はこういう男女が絡む話は苦手なんだ、ハードボイルドだから。

 
446 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 22:20:56.47 ID:4uI/TZsD0

「で、でもお姉さんはきっとその内いい人ができますよ。お綺麗なんですから」

「いいんです、いいんです……。その優しさにしばし癒させてもらいます……」

「何なら僕が嫁さんにしたいくらいですよ」

「えー、ほんとにですか……?」


何となくお姉さんがまんざらでもない顔を向けてくる。

と、同時に空いた片手がギュッと握られた。

なんぞと思いながら視線を向けると、無表情でたこ焼きをもぐつかせながら

サンディが僕の手を握ってきていた。

よくよく顔を覗き込むと目は虚ろで、瞳の中にはまるで出会った時のような

感情を殺したようなどんよりとした黒が見える。

えっ、サンディさんこわい。どうしたの?

 
447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 22:28:33.23 ID:4uI/TZsD0

謎のプレッシャーを感じつつ、ふと相手の方を見てみると、マオ君が店員さんの手を握っていた。

彼女はポカンとしながらも握られるがまま。

マオ君は顔を見られないように俯きながら、しかして真っ赤な耳で呟いた。


「姉ちゃんは俺がもらうから、いいだろ」


男前ですやん。なんて分かり易い初恋なんだ……!

敵意の目線を向けられていた事も理解した。

なるほど、お兄さんは全力で君の応援をするぞ。

そんな事を言われた当の本人は。


「はーーーー!! もう、可愛い!!!
 姉ちゃんね、アンタがそんな事を言わなくなるまで、ずっと甘やかしてあげるからね!!!」


それを聞いたマオ君は、サンディと同じように無表情で死んだ魚のような目をしていた。

 
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 22:38:21.02 ID:4uI/TZsD0

サンディは握っていた僕の手を放して、つかつかとマオ君に近づいていく。

そうして悲しみの抱擁が終わった彼の前に立ち、次はサンディが彼にハグをした。

そして背中を二度三度、ポンポンと叩く。


その後にサンディとマオ君は初めて向かい合い、互いの目を見つめた。

はっ、とマオ君はサンディの何かを察したような仕草をする。

サンディと僕を交互に数度見て、その様子が終わったあとにサンディは無言で彼に向けて頷く。

次はマオ君が無言でサンディに抱擁を返した。

そして背中を二度三度、ぽんぽんと叩く。


抱擁が解かれたあと、彼らはほんの数秒だけ見つめ合い、何故か堅い握手を交わした。

この動作が行われている間、たったの一言も言葉を交わしていないのに。

何故かサンディとマオ君の間には確かな友情らしきものが生まれていた。

二人の表情を見るに、友情というか、同盟というか、仲間意識というか、そういうものすら感じてしまう。


彼らの思いなぞ終ぞ知らぬ僕と店員さんは、きっと同じ事を思っていたに違いない。

最近のシャイな子どもって、何も言わなくても友達になれるんだなぁ、と。

 
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 22:54:45.87 ID:4uI/TZsD0

そうして僕らは二言三言と世間話をしたあと、

もうすぐ花火が始まるとのアナウンスを機にそれぞれ解散した。

お姉さんは別所に二人分だけスペースを事前に作って陣取ってあるのだとか。

僕たちよりその場を早めに去る二人の背中を見つめる。

目に見えて分かるのは、身長差。

頭一つ少々足りていない背の高さが、きっとマオ君にはもどかしいのだろう。

願わくば、彼の初恋が実りますように。

前を向いてずんずんと歩き、何事もないような振りをしながらも

おそるおそる好きな人の手を握ろうとする、一所懸命なマオ君の姿を応援したくなった。

日本でのサンディの初めての友達。いつか家に招いてみたいものだ。

サンディと手を改めてつなぎ直し、僕らは花火の見える広場へと向かった。

 
450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 23:13:18.54 ID:4uI/TZsD0

温い夏風が頬を撫で、耳を賑わす人込みの喧騒。

祭りのメインイベントとなる花火の打ち上げ会場には、沢山の人でごった煮していた。

これは冗談抜きで油断したらはぐれそうだ。


「ゴメンね、サンディ。人酔いしてないかい?」

「は、はい。平気です。こんなに多くの人が周りにいるのは初めてで、少し楽しいくらいです」

「そっか、良かった。はぐれないように、腕を掴んでもらってもいいかな?」

「え、その……いいんですか?」

「いいんです」


えいっと掛け声付きでサンディは僕の腕に抱き着きながら、下駄の音を響かせる。

最初に比べたら随分と歩き方も慣れたようで何よりだ。


「これから、その、花火が始まるんですね」

「そうだよ。テレビで見た事あるかも知れないけれど、本物は迫力が違うからね」

「楽しみです……♪」


はにかみながら、嬉しそうな声色で答えてくれる。

サンディの片手は僕の左腕、空いた手で広場に向かう途中で手に入れた林檎飴を持っている。

甘い物が好きな彼女は、これを買ったときが一番興奮していた。

林檎一個が丸々包まれたものは流石に入らないとの事で、

カットされている小サイズのものを購入して大事そうにペロペロと舐めていた。

それを見つめるのは、広場でたむろっていた小学校高学年くらいの年頃の少年たち。

まぁ気持ちは分かる。綺麗だもんね。そりゃ目をひくだろう。

実際にここに来るまでに、同年代の男子がすれ違うたび、彼女を振り返っているからなぁ。

ほんと何人かの初恋を奪っていってるのではなかろうか。

 
451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 23:21:24.24 ID:4uI/TZsD0

そんな事を露知らず、サンディは夜空を仰いでいた。

雲は少なめ。視界は良好。

星の輝きは特になく、ぼつんと黄色の欠けた月が申し訳程度に浮かんでいる。


「この真っ暗な景色に、色がつくんですね」

「うん、きっと綺麗だよ」

「はい、ワクワクします」


そう言って、吸い込まれそうなほどキラキラした目で再び空を見上げた。

見えない筈の星空を瞳に映しているかのようだ。

 
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 23:35:06.44 ID:4uI/TZsD0

彼女が日本に来てから数ヶ月。

そのほとんどは、僕との生活の思い出になっているだろう。

虐げられてきた彼女は、昔の記憶に今も苛まれている。

僕は、サンディに、幸せを一房でも与えられているのだろうか。

誰かの幸せを願うような、幸せな気持ちでいっぱいだから。


彼女の笑顔が続くような日々を思うばかりで、自分がしっかり事を成しているのか自信は皆無で。

蕾のような子に綺麗な花を咲かせてあげることはできるのか。

もうすぐ秋が来る。

別れになるかは分からないが、一つの終わりがやってくる。

もしそうなった際に、僕との思い出が美しいもので彩られますように、と。

愛しい気持ちで僕は祈るのだ。

 
453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 23:35:34.64 ID:4uI/TZsD0


そんなことを考えていたら。

ぱぁん、ぱぁん、と。始まりの音が聞こえて来た。

空に轟音が鳴り響く。

少し遅れて、頭上は色鮮やかな花々で埋められる。

綺麗な花が空で咲いて、僕の横では小さな笑顔の花が咲く。

今日という一日の締め括りには最高だ。

明日もまた、良い日でありますようにと。

喧騒のどこかで微笑んでいるであろう、祭りの神様にお願いをしてみた。

 
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 23:43:35.66 ID:4uI/TZsD0


〜〜


   僕「うーん……うーん……」

サンディ「二日酔いですか、お兄さん……」

   僕「み、水がここまで美味しいとは……」

サンディ「買い過ぎた屋台の品を片付けるがてらに、普段飲まないお酒を飲んじゃうから」

   僕「ま、祭りの雰囲気でイケるかなって思っちゃってさ……。
     ビールを二缶空けただけで、まさか翌日まで響くとは……」

サンディ「これに懲りたら、お酒は程々にしておいてくださいね」

   僕「ぜ、善処します……それよりサンディ、一緒に祈ってくれないか?」

サンディ「何を祈るんですか?」

   僕「“二日酔いが早く治りますように”って……」


 
455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/15(月) 23:47:16.86 ID:4uI/TZsD0
板の復活記念がてら書きましたが、今宵はここまで。
途中で紛らわしい感じの間を空けて申し訳ありませんでした。
頂いたレスとっても嬉しかったです。本当に。
今後ともゆるりと宜しく願います。次回は>>422を書きませう。

作業用BGMを一曲紹介
https://www.youtube.com/watch?v=22mOCjkwQjM
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/15(月) 23:49:02.71 ID:BFFLeZUgo
おつおつ
続きめっっっちゃうれしい!!
お兄さんは察しが良い所と悪い所の差がすごい
サンディ尊い…尊い…
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/16(火) 23:52:04.57 ID:+vSB1e/G0
3 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2018/10/06(土) 23:34:38 ID:OAMNkNAg
男「奴隷が欲しいんだけど」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1529059481/

53 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2018/09/19(水) 21:45:00 ID:swo1vipc
もうこなくていいよ
どいつもこいつも奴隷奴隷って自分より立場の弱いやつを従えることに優越感だったり優しくしてやってるところに満足感得てるんだろうけど気持ち悪いわ
リアルが充実してないやつほど奴隷スレ立てたり読んだりもてはやしたりするんだろうな
最近はそういう陰キャが増えたせいで奴隷ものが量産されててうざい
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/25(木) 20:57:46.72 ID:wo6SUZ9lO
ハクが付いてきたってもんだ。
続き、楽しみにしてるよ
459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/27(土) 18:50:16.73 ID:PJIlaZYmO
乙ー!続き見られてよかったー
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/15(土) 11:21:48.54 ID:SYnR9S3+0
忙殺されて更新できずに申し訳ない、近日中には何か投下します

作業用BGMより
https://www.youtube.com/watch?v=1_lap6dzSUc
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/12/15(土) 11:39:52.30 ID:rAc+9G2O0
3 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2018/10/06(土) 23:34:38 ID:OAMNkNAg
男「奴隷が欲しいんだけど」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1529059481/

53 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 投稿日:2018/09/19(水) 21:45:00 ID:swo1vipc
もうこなくていいよ
どいつもこいつも奴隷奴隷って自分より立場の弱いやつを従えることに優越感だったり優しくしてやってるところに満足感得てるんだろうけど気持ち悪いわ
リアルが充実してないやつほど奴隷スレ立てたり読んだりもてはやしたりするんだろうな
最近はそういう陰キャが増えたせいで奴隷ものが量産されててうざい
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/15(土) 15:30:49.85 ID:aB4lL0+dO
ぼく林檎飴になる(なぜ純粋に楽しめないのだろう)
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/15(土) 15:56:28.49 ID:X9mgViid0
ID:rAc+9G2O0
散々ここで(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1544829613/)イキりながらコピペ荒らしか
あの作者と同レベルのクズ野郎だということ自覚しろよ
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/18(月) 01:14:33.77 ID:mJdm+o5r0
もう投稿してくださらないのかしら……楽しみに待っているんだけれども(´・ω・`)
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/18(月) 23:15:59.34 ID:P4pRc4fp0
ほぼ1クールほど追加で書けていないので、スレ落ちしていないか確認してみたら
有難いお言葉を頂けていて嬉しい限り
昨年秋から多忙になっていたゆえ恐縮です……
話そのものは多々思いつけるので、短い話でも何でも兎に角新しい小話を置いていけるように善処致します

https://www.youtube.com/watch?v=NQ12-0TYgAs
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/18(月) 23:16:53.51 ID:P4pRc4fp0
ほぼ1クールほど追加で書けていないので、スレ落ちしていないか確認してみたら
有難いお言葉を頂けていて嬉しい限り
昨年秋から多忙になっていたゆえ恐縮です……
話そのものは多々思いつけるので、短い話でも何でも兎に角新しい小話を置いていけるように善処致します

https://www.youtube.com/watch?v=NQ12-0TYgAs
467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/21(木) 02:14:01.84 ID:99S53SMYO
yattaze
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/23(土) 13:48:34.86 ID:Tf0K8hqO0
支援
尊い
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/01(金) 08:11:19.88 ID:RWFTRho/O
マターリと更新待ってます
470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/16(土) 20:19:22.88 ID:JOssD2tk0
支援

のんびり待ってますので、無理はなさらぬよう
471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/29(金) 02:51:55.70 ID:GsAPJROLO
おっと失礼、ちょっと通るよ
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/04/02(火) 14:56:15.00 ID:YmoQ0jae0


【番外編〜甘くて苦い義理人情〜】


ここは喫茶店、リーブル・ド・イマージュ。

フランス語で絵本という意味らしい。

僕は今この店のカウンター席に座り、注文を待ちながら外の景色を眺めている。

街灯に照らされている雪の色は、蛍のような柔らかい色合いだ。

もう夜の帳はおりていた。

壁にかけられている時計を見ると、時刻は夜の六時半。

夏と比べるのは流石に早計だが、冬の日が落ちる早さを否が応にも感じてしまう。

待ち人である同居人のサンディは近場の本屋で物色中。

彼女の買い物を待つがてら、馴染みのこのお店で時間を潰しているところだ

 
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/04/02(火) 15:03:46.67 ID:YmoQ0jae0

マスターが挽く豆の音をBGMに、喫茶店に置いてあった新聞に目を通す。

一面記事には昨今話題のニュースが掲載されている。

よくテレビで報道されている内容と記事の中身もさして変わらなかったので

興味は薄れて目線を紙面の右上に逸らしてみる。

そこには日付が描かれていた。

今日は二月十四日。世間ではバレンタインデーというものか。

そんな些末はハードボイルド探偵である僕には何の関わり合いもない。

甘いものは凄く好きだけれど別に関係ない。

ほんと興味とかないし、ホントホント。
 
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/04/02(火) 15:13:16.71 ID:YmoQ0jae0

日付から注意を反らすように新聞の頁をめくったところで

対面のカウンターにいるマスターが声をかけてくれる。


「あいよ、お待ち」

「ん、どうも」


そんな他愛もないやり取りだが、何か違和感を覚えた。

確かアメリカンコーヒーを頼んだ筈だが、

差し出された飲物からは妙に甘い匂いが醸し出されている。

香りを嗅いで、ずずっと一啜り。

なにこれ、ココアじゃないか。


「マスター、注文間違えてますよ。口を付けちゃって言うのもなんですが」


僕が指摘すると、ヒラヒラと手を振った仕草のあとに

悪そうな笑みで返答がくる。


「誰からもチョコ貰えてねぇ輩への奢りだよ。ハッピーバレンタイン」


おいなんだ急に苦みが増してきたぞ、このココア。
 
475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/04/02(火) 15:20:01.11 ID:YmoQ0jae0


「いいんですよ、別に。そもそもバレンタインとか今思い出したくらいです」


そう言いながら、ずずっとココアを一啜り。うん、甘くておいしい。

マスターはニヤニヤしながら、カウンターに置かれている沢山のチョコを

これ見よがしにと僕へ向けてくる。


「あぁ、俺も忘れていたクチだがよ。いい男の前には自然と集まっちまうみたいだぜ」

「それ全部マダム達からの義理チョコですか?」

「おぅよ。義理でも人情味がある分だけマシってなもんだ」


ぐぬぬ。皮肉を綺麗なカウンターで返されると切り返す言葉もない。

誤魔化すために再びココアを口元に運んでみた。

鼻腔をくすぐるカカオの香り、程よい温かさの後に舌先から広がる甘いテイスト。

義理人情のチョコとしては申し分ないほど美味しいのが難点だ。
 
476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/04/02(火) 15:29:12.78 ID:YmoQ0jae0

「まぁでも、お前も一つくらいチョコ貰えるだろ」

「おあいにく様ですが、そんな人なんていませんよ」

「何言ってんだ。同居人の嬢ちゃんがいるじゃねぇか」


おお、サンディの事か。

今は例の如く喫茶店付近にある本屋で書籍を物色中な彼女だが、

果たして今日がそんなイベントだと知っているのだろうか。

テレビを好んでよく見ているので、バレンタイン特集とか放送されていたら

賢い彼女は色々と察してそうではある。


「どうでしょうね。もし知ってるなら有難く義理チョコを貰いたいところですよ」


僕がそう言うと、マスターは苦い顔をして軽くため息をつく。


「いや、嬢ちゃんの義理チョコねぇ……」

「友チョコくらい親近感を持ってくれてるなら尚更嬉しいですね」


僕の言葉を聴いたあと、マスターは振り返って洗い物のために炊事場に向かう。

その道中で何故か目頭を押さえる仕草を見せてきた。

こいつ相手は嬢ちゃんも大変だな、とカウンターの奥から聞こえてくる。

モテないハードボイルドはそんなに駄目ですか親父殿……。

 
477 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/02(火) 15:44:55.82 ID:YmoQ0jae0

そんな話をしていたら、カランコロンと来客を知らせる入口ドアのベルが鳴った。

噂をすれば何とやら。そこに居たのは、本屋の紙袋を抱えたサンディだった。


「お兄さん、お待たせしました」

「ううん、全然待ってないよ。何か良い本は買えた?」


僕の言葉に、サンディは軽く首を縦に振る。

そして嬉しそうにはにかんだ笑顔を浮かべてくれた。

言葉にせずとも十二分に買い物を堪能できたと分かる仕草だ。あいくるしい。

彼女をよく見ると頬と鼻が少し赤い。

外気の寒さから暖かいお店に入って血色がよくなった影響か。

いつまでも入口に立たせているのは申し訳ないので、手招きをしてカウンターに呼んでみる。

とてとて、とやや早めに歩いてきて、そのまま僕の横に着座。

耳までほんのり紅色している。これは思ったよりも外が寒そうだ。


「マスター、サンディにココア」

「あいよ」


奥の炊事場で洗い物していた彼に声をかけて、温かい飲み物が出てくるまでは小休止。

その間にさて何を話そうかなとサンディの方を向いてみると、はたと彼女と目が合った。

僕が向くまでにずっとこちらを見ていたのだろうか。

目が合った後は、ハッとした顔をして目をテーブルに伏せるサンディ。

まだまだシャイな所は相変わらずかな。それもまた可愛いらしくて良いところ。

うむ、これは友チョコを貰える線は薄そうだ。

 
478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/02(火) 16:03:20.09 ID:YmoQ0jae0

今日も色々な本を購入しているのか、紙袋はパンパンになっていた。

行きつけの本屋のロゴが入った袋の他に、見慣れぬ名前のお店の名前の袋がある。

はてこれは一体何だろうと思いつつ、まずは買った本でも聞いておきたい。


「サンディ、今日は何を買ったの?」

「えっと、お料理の本と、お勉強の本です」

「そっか。自分の好きな本とか買えたのかい?」

「はい。お勉強自体は好きですし、最近はお料理も楽しいです」

「そうだね。サンディはどんどん料理上手になっているから、これからの食卓が楽しみだなぁ」


僕がそういうと、サンディはコクコクと首を縦に振りながら

お任せください、お兄さんの健康のためにも更に腕に磨きをかけます、と

片手に拳を軽く作る素振りで意気込んでいる。

その仕草を見て、うちの子本当に可愛いんですよ、と危うく絶叫しそうになってしまった。

最近本当に目に入れても痛くない程度にまでサンディの可愛さ度数が上昇しているから、

ちょっと気を緩めたらすぐお小遣いを上げそうになってしまう。

これって親戚のオジサン化現象らしいのよね。

ハードボイルド強度が下がってしまう行は程々にしたい事と、

金銭感覚を身に着けさせる意味合いで、その欲求はグッと堪えた。

ほんま魔性のガールやでサンディはん……。
 
479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/02(火) 16:16:45.94 ID:YmoQ0jae0

ふっと目線を他の紙袋に移してみる。

何やら英語の表記で書かれているお洒落なロゴだ。

見た事のないお店だが、一体何を買ったのだろう。


「ねぇサンディ、そういえばもう一つの袋って何を買ったの?」


それとなく訊ねてみると、途端サンディの肩が跳ね上がた。

直後に彼女に現れる、顔全体の紅潮と、モジモジするような手の動く。

え、なに、ヤバイ代物なの。


「あ、別にそんな詮索するつもりとかないから、無理に言わなくてもいいよ」


僕なりの優しさを見せたつもりだが、それを聞いた瞬間に

サンディが体全体を僕の方に向けてきて、おもむろに紙袋を開けてきた。

そしてそこから出てきたのは。

丁寧にラッピングされた、チョコレートだった。


「そ、その! て、テレビで今日は親しい人に気持ちを送る日だと聞いたので!」


ラッピングされたリボンに挟まるように、メッセージカードが添えられている。

折り曲げられていて中身は見えないが、“お兄さんへ”というタイトルだけで

サンディが自分で書いたカードだというのが一目で分かった。


「ハッピー……バレンタイン、です……!」

 
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/02(火) 16:28:42.49 ID:YmoQ0jae0

天使はいるか、と聞かれたら。

眼前に降臨している、と今なら答えられる。

今まで貰ってきた義理チョコの中でも一番嬉しいチョコレートだ。

言葉にならない喜びをどう表現していいのか分からないから

サンディの頭をワシワシと撫で繰り回してしまう。

あわわわ、とちょっと髪が乱れながらも、気持ちよさそうな表情を浮かべる彼女が一層愛おしい。


「ありがとう、サンディ。大事に食べさせてもらうよ」

「は、はい……っ!」


幸せそうな、でもどこかでやり遂げたような顔をしているサンディ。

丁度そんなタイミングで、カウンター奥から気配がする。

どうやら注文したココアが出来上がったようだ。


「あいよ、お待たせ」

「有難う、マスター」

「あ、ありがとうございます」


マスターは僕の手元を見たあとに、サンディを見て破顔一笑。

サンディも彼を見ては何度もコクコクと頷いている。

なんだ、この一言も発さずに互いを察するようなやり取りは。

いつの間に二人とも仲良くなったんだろうか、などと少し気になったりもする。
 
481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/02(火) 16:37:43.13 ID:YmoQ0jae0


まぁ、それはさておき。

僕は手元に備えていたサンディからの義理チョコをマスターに

借りを返すかの如くこれ見よがしにとちらつかせる。


「いやー、マスター。確かにいい男の前には自然と集まってしまうみたいですな」

「良かったじゃねぇか。なぁ、嬢ちゃん?」


そう言いつつサンディに話を振ると、当の彼女は真っ赤になった顔を隠そうと俯きつつ、

両手をマスターに向けてパタパタと振っている。かわいい。


「確かに、義理でも人情味があるとチョコの良さも一際グッときますね」


パタパタ振ってたサンディの手が止まった。

そして油の切れたロボットのようなぎこちなさで顔を上げ、マスターの方に向ける。

向けられた彼は片手で顔を覆いつつ、天を仰ぎながらも何某かのジェスチャーをサンディに返す。

あの阿呆には俺から言ってやろうか、的なモーションだ。

するとサンディは首をブンブン振って、ガッツポーズのような動きを取る。

これからも頑張ります、的なモーションだ。


「嬢ちゃん、そのココアは奢りだ……。ゆっくり飲みな……」

「ありがとう、ございます……」

「いいってことよ……」


僕の知らない所でハードボイルドが繰り広げられている気がする。

 
482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/02(火) 16:49:05.50 ID:YmoQ0jae0


それからしばらく喫茶店でココアを堪能したのち、僕とサンディは帰路に就いていた。

帰り道の途中にある、街灯のオレンジ色に淡く灯る光が、僕らを緩く照らしてくれる。

サンディは僕の少し後ろを歩いているようだ。

がさがさと紙袋の擦れる音で、彼女がしっかりついて来てくれているのが分かる。

僕は僕で、サンディから貰ったチョコレートを割らないように

普段よりも注意深く歩いている。

鞄にしまったチョコレート、添えられたメッセージカードの真心が嬉しい。

僕もメッセージくらいは準備しておくべきだったかな。
 
483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/02(火) 16:53:59.72 ID:YmoQ0jae0

一直線に長い遊歩道の中間あたりで、足を止めてみた。

誰もいない夜の狭間。静けさだけが僕らを包む。


「サンディ、おいで」

「はい」


あえて前を向いたまま呼んでみる。

少し小走りな足音が後ろから聞こえてきて、丁度僕の横に並んだ。

止まったままの僕を何事か、と彼女は覗き込んでくる。

そのタイミングで、僕は鞄から物を取り出した。

縦に長いそれは、黒を基調とした入れ物に赤色でラッピングがされている。

それを、サンディに渡してみた。僕なりの真心を。


「はい、ハッピーバレンタイン」

「……え?」

 
484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/02(火) 17:08:57.94 ID:YmoQ0jae0

サンディは目を丸くして驚いている。

まさか自分が貰えるとは、といった心境だろうか。

昨今は男性から女性に送るバレンタインも珍しくないらしいので

僕からの小さなサプライズを送ってみた。


「い、いいんですか……?」

「いいも何も、君のためだけに準備したチョコだよ。受け取ってくれたら嬉しいな」


なんだか少々照れ臭い。いや結構照れ臭いなこれ。

サンディが僕にチョコ渡す前に顔が真っ赤になっていた理由が何となく分かった。

自身の耳が赤くなってそうだが、そこはハードボイルドらしく冷静に振舞っておこう。

そんな僕の義理チョコを受け取ってくれた彼女は、

胸いっぱいにそれを抱きしめている。

幸せそうに、幸せそうに、抱きしめている。

 
485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/02(火) 17:10:51.20 ID:YmoQ0jae0

「じゃ、じゃあ用件も済んだことだし、帰ろうか」

「はい……!」


サンディは僕の横に並んだかと思えば、スキップするような足取りで軽やかに抜き去って

数メートル先の街灯の下まであっという間に辿り着いていた。

喜んでくれたのは素直に嬉しく思う。

こういう些細な喜びがある日々をもっと増やせていけるよう、僕なりの努力はしてみたい。

義理と人情で引き受けたサンディとの共同生活だけれど。

一握りくらいは愛を込めてもいいのかな。

そんな事を思いながら、サンディの待つ橙色の光が灯る街灯まで駆け出した。

 
486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/02(火) 17:18:50.78 ID:YmoQ0jae0


〜 後日談 〜


サンディから受け取ったメッセージカードには、

沢山の感謝の言葉が綴られていた。

出会った頃に助けてもらった事から始まり、何でもない日々の中で本人すら覚えていないような

些細な気遣いの行動に関して等、とめどなく溢れるような沢山の感謝の言葉。


締め括りの文章に書かれていたのは下記の通り。



“私と居てくれてありがとう、おにいさん。 好きです。大好きです。”



それを夜中に読んでいた探偵は、

あまりの尊さにおうおう涙を零しながら、うわごとのように

「うちの子本当に可愛いんですよ……」を只々繰り返すだけのマシーンと成っていた。

 
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/02(火) 17:29:54.08 ID:YmoQ0jae0
「季節感」とかいう置いて行かれるためだけにある言葉よ。
ネタはあるものの書き溜めしていないと、どうしても時間がかかりますね。

業務多忙の日々も少し落ち着いたゆえ、久々に綴ってみまして。
読んでくださった方々が少しでも楽しんでくれたのなれば幸いです。

作業用BGMより一曲
https://www.youtube.com/watch?v=nS32IXrNgfw
488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/02(火) 21:29:32.70 ID:Vjx0L5x2O

浄化される…
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/03(水) 01:20:56.84 ID:lIPkH7iso
いやー…尊い
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/03(水) 08:21:17.97 ID:AXP6EEd0O
更新乙です

あぁ、癒される??
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/03(水) 08:23:44.34 ID:AXP6EEd0O
せっかくの感想誤字ってる( ̄▽ ̄;)

でもこれで研修頑張れます
492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/05(金) 22:04:36.33 ID:fCLfJEqw0
更新乙です
ソフトマイルドなお兄さんよりハードボイルドしてますねサンディさん…
493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/01(水) 05:05:40.57 ID:XMZ3frEk0
令和記念
494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/07(金) 21:00:08.85 ID:gsIZWItq0
保守
495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/16(日) 13:23:48.74 ID:MPJ0sY3a0
まだ待ってますよ〜 (*^−^*)ノ
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/29(月) 19:57:10.56 ID:1u2H/ZMS0
保守
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/08/15(木) 20:46:17.00 ID:dn7JADrJ0
保守
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/18(水) 16:37:49.44 ID:W6AdXEGX0
保守
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/08(火) 11:41:58.30 ID:DAHSTfS1O
保守
500 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/07(木) 06:57:56.58 ID:37vZtoMZO
保守
501 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/01(日) 22:03:46.73 ID:qyKV0/ei0
保守
502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/06(月) 16:51:00.93 ID:lpdju8Jx0
新年あけましておめでとうございます。
今宵どこかで投下をば。
503 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/06(月) 18:12:48.12 ID:uhGUIKFFo
あけおめ!
504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/06(月) 20:50:20.17 ID:lpdju8Jx0
 
秋の兆しよりも、夏の名残が風に乗って頬を撫でてくる。

そんな九月の半ばを迎える暦の頃。

私は探偵事務所のテーブルで、とある同年代の子と一緒に向き合って勉強をしている。


体面にいる男の子の名前は、水瀬 真生(みなせ まお)くん。

先月の夏祭りで知り合ったばかりだが、

なんとなく彼とは非常に気が合いそうな気がしている。

日本語でいう“同好の士”とでもいうのだろうか。

いや、何か違うような気がするが、それに近い空気を感じるのだ。


>>444
 
505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/06(月) 20:55:31.70 ID:lpdju8Jx0

彼は非常に中性的な顔立ちをしていて、

黙っていると女の子にも見えてしまう。

同じくらいの年の友人なんて殆どいないけれど、

テレビで見るような賑やかな子ども達とは違う、独特の雰囲気がある。

そんな彼を見つめていると、チラッとだけ目が合った。


「……なに?」

「あ、いや、別に……なんでも、ないです……」


ふーん、とだけ言葉を残して、マオくんは再びテーブルの下に目を落とす。

人の動向を見過ぎる仕草は失礼に値する。

昔そう教えられていた事もあり、反省をしつつ

私も机に敷かれた積本を崩す作業に戻ることにした。

カリカリ、カリカリと鉛筆が滑る音に紛れて

ペラリ、ペラリと本を捲る音が、私たちのいる空間に反響する。

とても静謐で淑やかな時間だと感じている。

マオくんとは出会ったばかりなのだけれど、あまり緊張しないのは

こういう空気を共有できるからなのかも知れない。
 
506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/06(月) 21:01:10.70 ID:lpdju8Jx0

そのまましばらく時が流れて、私は本を一冊読み終えた。

さて次は何を読もうと考えていると、体面で机に噛り付いている子が目に入る。

ふと興味が湧く。マオくんが何を一心不乱に学んでいるのか。

そっと覗いてみると、どうやら国語の四字熟語を覚えるために

何度もノートに書きなぐっていたのだ。


私も日本語は文字通り叩き込まれながら覚えたのだけれど、

当時を振り返ると四字熟語は結構苦手だったりした。

慣用句と違い、漢字のみで形成される言葉の成り立ちがイコールで結び付けづらいから。

設問を間違えた回数分、シャープペンを腕に突き立てられた事もある。

私は無意識に左腕の少し肉厚になった傷跡に手を添えていた。

過去の記憶を思い出しそうになり、思わずぶんぶんと頭を振ると、

訝しげな表情でマオくんが見つめてきていた。


「なに? ……どこか痛いの?」

「え、う、ううん。大丈夫です、大丈夫……」


そっか、と言いながらも、チラチラと私を気にするように、

目が合う頻度が少し上がった気がする。

マオくん、優しいなぁ。
 
507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/06(月) 21:07:00.63 ID:lpdju8Jx0

ただ、私がいることで彼の気を散らせてしまっているのなら申し訳ない限り。

ずっと勉強を続けているマオくんの息抜きになればと、

ほんの少し勇気を出して話しかけてみた。


「それ、何の勉強をしているんですか?」

「ん、塾。宿題とは別にテスト勉強してるだけ」

「へぇ……すごいなぁ。私、そういうのやった事ないから」

「そうなの?」


マオくんが不思議そうに首をかしげる。

何となく猫を想起させてくる仕草だなぁ。

私は、うん、と首を縦に振りながら、思っている事を口から紡いだ。


「ちょっとだけ憧れているんだ、学校みたいなこと」

「学校に来たことないの?」

「うん」

「そっか……」

「マオくんは、学校楽しい?」

「別に。俺は早く大人になりたいから、学校に居ること自体、なんかもやもやしてる」

「大人になりたいの?なんで?」

「それは、その、そう……何となく、かな。
 せ、背伸びしてるみたいでダサいよな……」


そう言いながらも、彼は耳を真っ赤にしている。

ふと笑顔の素敵なお姉さんが脳裏をよぎった。

きっと、好きな人に一秒でも早く追いつきたいんだ。


「わかります」


私は思わず口に出していた。
 
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/06(月) 21:12:26.37 ID:lpdju8Jx0

彼はきょとんとした顔で、私を見つめてくる。

次は私の鼓動が早くなる番だった。

何も考えずに零れた言葉、私の心。

言葉の裏に思い描くのは、私の神様。

あの人の横に並べる女性に成りたいから、私は大人になるまで生きていたい。

生きていたいと、願ってしまうのだ。


「君も、そうなんだ……」


コクリ、と首を振ってマオくんからの質問に答える。

何故か凄く恥ずかしい。耳まで真っ赤になっているのが分かる。


「じゃあ俺たち、戦友だな」


マオくんが、二カッと無邪気な笑顔を返してくる。

私は、ようやく彼が男の子と認識できたような気がした。

何故か不思議と嬉しくなって、返事の代わりに笑顔を向けてみた。


イザベル、クロエ。

わたし、友達ができたよ。
 
509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/06(月) 21:15:35.35 ID:lpdju8Jx0

それから私とマオくんは、他愛もない話を交わしていく。

マオくんは学校の友達のこと。通っている塾のこと。

そして、お姉さんのこと。

私は基本的にお兄さんのことが話の内容として多くなってしまう。

そんな話の流れは、マオくんが勉強をしている四字熟語の事にスポットが当てられた。


「マオくんは何の四字熟語を勉強していたの?」

「ん、色々。 今は“岡目八目”ってのを覚えていた」

「岡目八目?」

「サンディにはあんまり馴染みないかもね。
 囲碁っていうゲームから生まれた言葉だし」

「それってどういう意味?」

「ああ、それはね……」


マオくんがその解答を告げようとしたその時、

探偵事務所の扉がきぃ、と音を立てて開いた。


「ただいまー。 二人ともお留守番ありがとね。
 アイス買ってきたから、お利口さん方は好きなの選んじゃって」


朗らかな声が私の鼓膜と心を震わせてくれる。

お兄さんの声だ!!
 
510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/06(月) 21:19:14.86 ID:lpdju8Jx0

「おお、マオくん。勉強いつも頑張ってるね。
 お姉さんから『塾が始まるまでの一時間だけ預かってくれ』って頼まれてるし、
 時間がくるまでゆっくりしていっていいよ」


お兄さんはマオくんにそう告げると、

マオくんは、「……りがとざっす」と、小さな声でお礼を返す。

そしてお兄さんは手元のコンビニ袋を私たちに差し出してくれた。

マオくんが「先にいいよ、サンディ」と気を使ってくれるので

なんだか恐縮してしまって「ま、マオくんからいいよ!」と返事をする。

じゃあ遠慮なく、と言わんばかりにラムネ味のアイスバーを彼は選んだ。

残る一つはなんだろうと袋の中に手を入れ、それを取り出してみる。

私が選んだアイスは、千切ると二つになり、啜るように食べるものだった。

パ〇コと書いてある。

前にお兄さんと分けて食べた事があるが、チョコ味でとても美味しかったのを覚えている。

おもむろに袋からそれを取り出し、二つに分けてお兄さんに差し出す。

お兄さんは嬉しそうにそれを手に取り、余った手で私の頭を撫でてくれた。

嬉しさ半分、こそばゆさ半分。

いや、やや嬉しさが勝っている。体感の比率では8:2くらいか。

マオくんが何か考えながら私たちを見ているような気がするが、気のせいだろう。


「ありがとう、サンディ」


お兄さんは嬉しそうに言う。

わたしは、それが、とってもうれしい。
 
511 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/06(月) 21:24:58.75 ID:lpdju8Jx0


「でもサンディのご褒美で買ったんだから、二つ食べていいんだよ?」

「あ、そ、それはですね……今日読んだ本に……」

「何か書いてあったの?」

「“愛する人には、全てを注ぐの。何も見返りを望まずに。”って……」


視界の端でマオくんが、やるじゃん、と言わんばかりの顔をしている。

お兄さんがパ〇コを返そうとしたから、口から咄嗟に出た言葉なんだけれど。

愛などと大層な言葉を使ってしまい、恥ずかしさが止まらない。


「『献身』か。僕もそう在りたいな。いい本を読んでいるね、サンディ」


そういうと、またしても頭を優しく撫でてくる。

慈しむように触れてくるから、胸がいっぱいになってしまう。
 
512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/06(月) 21:29:52.70 ID:lpdju8Jx0

アイスをガリガリと齧りつつ、何やら考えていたマオくん。

「ああ……そういう事ね……」と呟きながら、

ハズレの表記が出たまま半分残っているアイスを銜えつつ、テーブルを片付け始めた。

お兄さんはそれに気づいて、事務所に置いてある時計に目を向けた。


「もう塾の時間か。自分で気づけてえらいね。
 またこうしてサンディと一緒に遊んでくれたらうれしいな」

「はい、また来ます。 俺、サンディと気が合いそうなんで」


お兄さんは嬉しそうに、うんうんと頷いている。

そして勉強道具をすべて仕舞い込んだマオくんが、帰る前にそっと私に耳打ちする。


「大変だな……」

「なにが?」

「いや、なんでもない……。二人のおかげで、一つ勉強になったよ」

「?」



「岡目八目、ってやつ」
 
513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/06(月) 21:37:52.89 ID:lpdju8Jx0
ご無沙汰しております。
またこうして、ゆっくりと綴っていけたらいいな、と。
たまには覗いてくれると嬉しい限り。
514 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/06(月) 21:42:15.94 ID:4RYyFHTu0

ずっと待っていたよ
515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/06(月) 22:09:28.80 ID:uhGUIKFFo
おつおつ!
よろしくお願いします
こいつ…中々の察し、どこかのソフトマイルドさんは見習って?
516 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/06(月) 22:14:29.05 ID:lpdju8Jx0
感想を頂ける喜びを噛み締めつつ、
話を綴る楽しさを改めて思い出しています。
有難うございます。感謝。
517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/09(木) 06:37:58.01 ID:eXxQ/tD40
あけおめ更新乙
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/01/09(木) 08:20:02.51 ID:utGKCd1V0
昨日読み始めて追いついたけどすごくいいねファンになったわ
519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/21(火) 10:22:41.38 ID:cnAJyixHO
相も変わらずオサレだなぁ……
更新お疲れ様です
520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/26(日) 10:51:19.00 ID:uZ4Ygj190
【二人のエピソード】  ※連れて行きたい場所、日常の一コマ、未来の話など

>>521


【視点:男 or サンディ or その他】

>>523
521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/26(日) 11:22:49.25 ID:5H/sa4jy0
たまには仕事帰りのお兄さんを
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/26(日) 11:23:20.83 ID:xQE9gnT5o
イザベル、クロエ、会いに来た
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/27(月) 08:33:47.84 ID:TeAvOi/SO
サンディ視点で
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/04(水) 10:48:14.35 ID:KaEFgGcH0
保守
のんびりとお待ちしております
525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/04(土) 21:00:54.26 ID:oQRrTn2I0
保守
526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/11(土) 07:13:09.11 ID:Y25hWkHhO
引き込まれますね
続き楽しみです
保守
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/11(土) 10:29:11.41 ID:awJL6YJno
読み返したくなる名作
そして毎回クリスマスで死ぬ
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/05(火) 05:56:13.01 ID:reK9YqafO
保守
529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/12(火) 14:20:11.10 ID:GSr3VfmPO
保守
530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/03(水) 08:19:30.35 ID:uokk9BjHO
保守
531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/24(水) 00:32:02.60 ID:5DmSTfA6O
保守
532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/02(木) 19:58:55.23 ID:xBNddiV40

【二人のエピソード】  ※連れて行きたい場所、日常の一コマ、未来の話など

たまには仕事帰りのお兄さんを


【視点:男 or サンディ or その他】

サンディ視点
 
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/02(木) 20:00:49.06 ID:xBNddiV40
 
六月中旬。夕刻の頃。

どんよりとした空模様から、しとしとと降っている生温い雫がアスファルトを濡らす。

天気予報の週間予想は、一昨日からずっと傘マークを示していた。

これほどまでに雨が続くと、恵みの雨と表するには少々供給が過ぎているようにも感じる。


夏が始まる前の日本の空のカーテンは、グレイの色合いをしていた。

今まで私が居た場所の天井を想起させてきて、何だか少し気が滅入る。

ただ、外の景色を歩く人々は、色とりどりの傘を差していて

灰色の用紙にビビットな色彩の絵の具を撒いたような

高翌揚感のある風景も一緒に見せてくれる。
 
534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/02(木) 20:03:00.90 ID:xBNddiV40
 
街並みを探偵事務所から見下ろしながら、私は一人の影を探す。

探し人は、居候先でお世話になっているお兄さんだ。

今日はお仕事で午前中から外出していて、帰宅が夕方頃になるとの事。

お兄さんを玄関で「おかえりなさい」と迎えたいので、

帰路の姿を見つけられるよう、こうしてチラチラと外を気にしてしまう。

まだ来ない、まだ来ない……。

待ち続けること三十分。

その間、「ただいま」と私に向けてくれる、ほんわかとした笑顔を思い描くたび。

何故だか耳が紅潮してしまい、どうしても落ち着かない。
535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/02(木) 20:04:08.16 ID:xBNddiV40
 
既に家事は粗方片付いており、強いて言えば夕飯をどうするか悩んでいるくらい。

いつも夕方の時間帯はテレビを見ているか、読書、勉強をしているけれど、

今日はそんな気分ではない。

窓の外に映る景色が気分を落ち着かせてくれているのか、

もしくは昔の景色が瞼の裏に映って気分が落ち着かないのか。

お昼寝をしたらお兄さんの帰宅のタイミングを逃すかも知れないので、

何某かの行動はしておきたいところ。

何か良いものは無いものかと事務所内を見渡してみると、

旧型のラジオが目に飛び込んだ。

早起きした時にお兄さんがそれをよく聞いているので、

周波数は合っていると考えられる。


ご飯の準備の片手間に、ラジオでも聞いてみようと思い、

電源スイッチをオンにしてみると、丁度のタイミングで曲が流れてきた。

美しく澄んだ女性の声が耳に心地よくて。

それ以上に、歌の最初のフレーズに私は心を鷲掴みにされた。
 
536 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/02(木) 20:05:45.55 ID:xBNddiV40


Someday I want to run away
(いつか私は 逃げ出したい)

To the World of Midnight
(真夜中の世界へ)


曲自体は二分となく、短いものだった。

でも、その歌がずっと頭の中をリフレインしている。

覚えたフレーズだけ、自然と口から紡がれる。

 
537 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/02(木) 20:06:33.16 ID:xBNddiV40


「さーむでぃ……あい、うぉんと…とぅ、らなうぇい……」


いつか私は 逃げ出したい。


「とぅ……ざ、わーると…おぶ、みっどないと……」


真夜中の世界へ。
 
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/02(木) 20:08:01.30 ID:xBNddiV40
 
私が、ずっと、ずっと考えていた事。

逃げ出して、どこかに行きたかった事。

あの時に居た暗がりよりも、暗いところに行きたかった事。
 
539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/02(木) 20:08:50.62 ID:xBNddiV40

堅い木材で頭を殴られた事を思い出すような衝撃だった。

不意に前に居た場所を思い出し、呼吸が少し荒くなる。

苦しさを顔に出すと更に折檻を受けた事を体が覚えていて、もっと息が辛くなる。

いきているのが、つらくなる。

お兄さんから渡されている青い錠剤を、ポケットから取り出し、

台所から水を調達して急いで胃の中へ流し込んだ。
 
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/02(木) 20:09:31.00 ID:xBNddiV40

ぜぇぜぇ、と肩で息をしながら、ふっと深呼吸をする。

深く息を吸い、ゆっくりと吐く事を数度。

心拍数はやや乱れているものの、先ほどよりも幾分か気分が楽になった。

それでも、あの美しい歌声が、頭の中で優しく響いてくるのは変わりなく。

悲しい曲。けれど、とても美しい曲だな、と感じたから。

つい、ぽつぽつと、私のか細い声帯はその歌を奏でてしまう。


雨音にかき消されるように小さく歌うその曲が、

誰もいない探偵事務所に反響する。


それを数度繰り返していると、その中で一番大きな音が鳴り響いた。

ピンポン、ピンポンというチャイムが二回。

お兄さんが帰ってきた合図だ。
 
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/02(木) 20:10:06.57 ID:xBNddiV40

私はバタバタと慌てて玄関まで走り、お兄さんを出迎える準備をする。

お兄さんが濡れているかも知れないから、タオルを片手に持ち、ドアのチェーンを外した。

金属を擦る無機質な音が聞こえてから一拍、ドアがきぃ、と開いた。


「ただいま、サンディ」

「おかえりなさい、お兄さん」


優しく微笑む彼の顔を見て、私は嬉しくなり、笑顔を返す。

そして手に持っていたタオルを渡すと、ありがとう、と受け取ってくれた。
 
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/02(木) 20:11:13.24 ID:xBNddiV40

「いやー、外は思ったより降っていたけれど、大きめの傘だったから殆ど濡れなかったね。
 出かける前に一緒に見ていたテレビの天気予報さまさまだよ」

「ふふ、それは良かったです」

「だからね、サンディ。気になる所は一つだけ」


お兄さんは手に取ったタオルを、優しく、優しく私の顔に添えてくれる。


「君の頬の方が濡れてる」

「えっ?」

「そりゃっ!」


お兄さんはそのまま、私の顔をタオルで覆い隠すようにぐるりと巻いて、

肩と膝裏に手を添え、お姫様抱っこの要領で私を持ち上げた。

突然の事に、うひゃあっ、と声が漏れてしまう。

顔が真っ赤になっているのが直ぐにバレそうだったので

恥ずかしさを隠す為にタオルはそのまま顔に添えて、

後はもうお兄さんの好きにしてほしいと言わんばかりに身を預けた。
 
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/02(木) 20:13:07.62 ID:xBNddiV40
 
そしてそのまま事務所のソファまで運ばれ、一番フカフカのクッションを敷いた所に私を置いた。

どうやら無意識のうちに滂沱の如く涙を流していたようで、

ようやく首元の襟筋まで濡れていることに気づき、割と新品の服を汚したようで申し訳ない気持ちがある。

お兄さんは心配しながらも、内証について深くは聞かず、

私にホットミルクを作ってくれた。じんわりと心まで温めてくれる、優しい味。

彼は私がミルクに口を少しずつ付けるのを、見守るように微笑んでいたあと、

部屋着に着替えるために自室へ戻った。

ふっと、また歌が頭を駆け巡る。

美しい歌の歌詞が、私の口から零れてくる。


「サンディ、声が綺麗だね」


自室の奥からお兄さんの声が聞こえ、私は気恥ずかしくなって俯いた。
 
544 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/02(木) 20:14:21.15 ID:xBNddiV40

恰好を部屋着にシフトしたお兄さんは、片手にコーヒーを持って私の横に腰を下ろした。

そのまま何も言わず、私の頭にそっと右手を伸ばして、自分の肩元に抱き寄せる。

何故だかまた涙が溢れてきた。

雨のような生温さのそれは、私の頬をポロポロと零れてゆく。

ふと、自分の頭の上から、調子が少し外れた歌が聞こえてくる。


「Someday I want to run away、To the World of Midnight……♪」


私が聞いたあの曲を、楽しそうにお兄さんが歌っていた。
 
545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/02(木) 20:15:15.50 ID:xBNddiV40

「サンディ、懐かしい歌を知ってるね」

「え、あの……さっきラジオで聞いていたので……」

「この曲をラジオで流すのもまた凄いな……最近のFMを見くびっていたよ……」

「お兄さんはどうしてこれを知ってるんですか?」

「ああ、前の所長がジャンル問わずで音楽を車内で流す人でね。
 好きな作品で使われた曲だってのを熱弁された事があるんだ」


そう言いながら事務所の天井を見上げるお兄さんは、

どこか遠くの暗い場所を覗き込んでいるような、寂しい目をしていた。
 
546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/02(木) 20:16:05.75 ID:xBNddiV40
 
「サンディ、ハードボイルドが生きる時間帯って知ってるかい?」

「いえ……分からないです……」

「ハードボイルドは真夜中に生きているんだよ」


ハードボイルドは生き物だったのか。

などと一瞬思ったがそうではなく、恐らく活動時間帯の事を指しているのだろう。


「だからね、サンディ」


お兄さんはくしゃり、と私の髪を撫でてくる。


「ハードボイルドたる僕は真夜中の世界にいるからさ」

「逃げてきたんじゃなくて、僕の所に走ってきたと思えばいいさ」


あの歌を聞いて、原因の分からない気持ちを抱えていた私は、

ようやく泣いていた意味を理解する。

あの場所から、この世界から、逃げ出したかった気持ちの後ろめたさを

全て包んでくれるような言葉を貰ったような気がした。

この人は、どうして私の事が分かるのだろう。

私でも分からない所を、分かってくれるのだろう。

色々な感情が混ざり合い、何も思考が出来なくなって。


私はふっと立ち上がり、お兄さんの額を右手で捲り、

そこに唇を当ててみた。

 
547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/02(木) 20:16:45.09 ID:xBNddiV40

その感触で正気に戻り、お兄さんの顔を見つめる事無く、

我ながら物凄い勢いで台所の奥へと駆けだした。

この状態で目が合ってしまえば、きっと息が出来なくなる。

どうしようもないほどに心拍数や脈拍が上がってしまうけれど、

これはきっと、悪い症状ではないのだと、自分に言い聞かせる。


「お兄さん! 今日の晩御飯は何がいいですか!?」

「え、あ、じゃあ、ハンバーグで……」

「承知しました!いっぱい作りますね!」

「おおぅ、急に元気になったね、サンディ……」

「はい、もうずっと元気です!!!」


貴方が居てくれるから、私は元気でいられます。
 
548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/02(木) 20:18:26.20 ID:xBNddiV40
 
 
貴方は自分を真夜中の世界の住人みたいに仰いましたけれど。

それを聞いた私は、貴方の事をそうは思っておりません。


私は生きている。

明るくて、温かい、お日様の世界に。

 
549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/02(木) 20:21:05.34 ID:xBNddiV40
日々なかなかの勢いで忙殺されていて、家の役割が風呂と就寝くらいしか果たせていない今日この頃。
投下が遅くなって申し訳ございません。
ボチボチと書いてはいますので、またゆるりとお付き合い頂ければ幸いです。


※サンディが聞いていた楽曲
https://www.youtube.com/watch?v=6Yg6uDKdvHU
550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/02(木) 20:24:53.51 ID:HhIAA2dDo
待っててよかった、…、!
551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/02(木) 21:03:42.02 ID:6Oaw9sEq0

待ってた
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/04(土) 06:31:07.02 ID:ZkPPyWBy0
投下乙です
日向に生きるハードボイルドがいたっていいじゃない
553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/07(金) 05:44:17.94 ID:F+vZmmib0
保守
554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/06(日) 23:25:42.59 ID:rjRU/foq0
保守
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/18(金) 07:22:36.32 ID:lilqAKcVO
保守
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/09(金) 05:37:18.40 ID:esmYg5Nh0
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