一ノ瀬志希「キミが死んだら、その死体はあたしが欲しいな」

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52 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/11/14(火) 07:11:46.58 ID:Cee4lhpwO
【19】


「志希はもう一流のアイドルで、一人前の人間だ。もう昔のように戻ることはないだろ」

志希「にゃはは。そうだといいなぁ」

「大丈夫だ。自信を持っていけ」

「…ここでお別れだ、志希」

志希「……どうして?」

「最初に会った時に言ったはずだ。『一瞬だけ力を貸す』と」

「お前にはもう俺が力を貸す必要が無い」

志希「それがどうしてあたしから離れる理由になるの?」

「…お前がひとり立ちできたからだ。俺は今度は別のヤツに力を貸しに行く」

志希「嘘。それくらいはわかるよ」

「……」
53 : ◆G4Z1KppkgXoT [sage]:2017/11/14(火) 07:12:32.14 ID:Cee4lhpwO
中断
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/14(火) 10:09:24.33 ID:NoO+Hf000
くぅぅぅ....続きが気になるよ!
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/23(木) 19:31:41.61 ID:YdyoKoFdO
はよー!
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/23(木) 21:01:49.81 ID:cbjZdYxB0
ここで中断か… くそう気になる
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/26(日) 21:44:32.91 ID:fymB/HUb0
酷いな
58 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/03(日) 11:53:57.02 ID:Yck/Shj9O
【19】


志希「まず、他の子をプロデュースするとしても、あたしを手放す理由がないよ。合理的じゃない」

志希「あたしを広告塔にすれば、もっとたくさんのアイドル候補生が効率良く集まるわけだし」

「……」

志希「そして、そんなことよりも何よりも…」

志希「キミの眼がもう満足しちゃてる」

「……」

志希「キミはプロデューサー業を辞めるつもりなんじゃないかな?」

「……ああ」
59 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/03(日) 12:05:13.29 ID:Yck/Shj9O
【19】


志希「辞めちゃう理由を教えてよ…あたしは知りたい」

志希「それはもしかして、キミがはぐらかし続けてきた、あたしをスカウトした理由ともつながっているんじゃないかな?」

「…やれやれ。お見通しときたか」

「ああ、その通りだ。志希をスカウトしたこと、アイドルとしてひとり立ちする力を貸したこと、俺が辞めること」

「全部はひとつの理由でつながる」

志希「ねぇ、教えて。あたしはキミのことがもっと知りたい」

「……聞けば後悔するぞ」

志希「なにもしなかったことを後悔し続けたあたしだよ?これからは、後悔するならばやってから後悔したい」

「…わかった」
60 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/03(日) 12:23:50.16 ID:Yck/Shj9O
【19】


「俺はな、外道なんだ」

志希「…外道?」

「女の子に偽物の夢と希望の幻を見せて、アイドル業界に引きづりこむのを生業としている」

志希「……」

「あるところに、ごく普通の女子中学生がいた。平凡で、なんの変哲もない女の子」

「俺は魔法をかけた。『アイドルになってみませんか?』、と」

「彼女はすっかり乗り気だった。『あたしのような子がアイドルになれるなんて!』、と」

「だが、うまくいかなかった。アイドルになった彼女の人気は伸びず、どんどん人気も仕事数も失墜」

「彼女はどんどん憔悴していった」

「それもそのはず。俺は灰被りをお姫様にする魔法使いなどではなかったのだから…」

「……魔法なんて、使えるわけがない」
61 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/03(日) 12:35:54.60 ID:Yck/Shj9O
【19】


「その子は数年で失踪した。今じゃどこの誰にも探せない」

「…俺と関わらなければ、普通に進学し、友達や恋人を作って人生を歩んだだろうに」

志希「それは…キミのせいなんかじゃないよ…」

「そんな折だ。会社の健康診断で俺に病気が見つかった」

志希「……えっ!?」

「そう長くはないらしい。俺は報いだと思った」

志希「ちょっ、ちょっと…ちょっと!?」

志希「う、嘘…だよね?」

「本当だ。志希と出会う前年の段階で、3年後の生存率50%、5年後10%だそうだ」

志希「そんな、そんな…!!」おろおろ

志希「キミ、死んじゃうの!?」

「……人はいつか死ぬ」
62 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/03(日) 12:51:34.11 ID:Yck/Shj9O
【19】


志希「そんなことを言ってるわけじゃなきくて…っ!!」

「そんな中、残された寿命で何をするか考えた末、外道は外道らしい結論に至った」

「『普通の子の人生をダメにしてしまったなら、もう人生終わったヤツをスカウトすればそれ以下にはならないだろう』、と」

志希「!」

「お前だ、志希」

「それらしい場所で噂を頼りに、『人生終わったヤツ』を探していて、たまたまお前を拾っただけだ」

「志希をスカウトした理由を聞きたがっていたな。…それは、ただの俺のエゴだ」

「『金になりそう』でも『力を貸したい』でもない。ただ、自分の余命に火がついた外道のワガママだ」

志希「……」
63 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/03(日) 13:18:00.16 ID:kqwUMreNO
【19】


「…聞けば後悔すると言っただろ?」

志希「うん。…ううん。そんなことない」

志希「キミはあたしに力を貸してくれた。それまでの人生を否定してくれた」

志希「でも、それ以上に熱をくれた!」

「…熱?」

志希「そう!キミと出会って、それまでネコをかぶるだけだったあたしの胸の内側に、温かいものをくれたよ!」

志希「初めての経験だった……心が温かくなるって、こういうことだったんだって思った」

「…そうか」

志希「だから、だからこそ…キミが死んじゃうのは嫌だよぉ…」ぽろぽろ

志希「キミと離れたくないっ!まだまだ、もっともっとキミといたい!」

「……」

志希「ひとり立ちなんて全然できてないよっ!あたしはまだ、あの日キミに胸ぐらを掴まれて立ち上がらせてもらった日のまま…!」

志希「もっと、もっとずっと、あたしに力を貸していてよ……」
64 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/03(日) 13:29:35.29 ID:kqwUMreNO
【19】


「…やれやれ。出会ったあの日と泣き方が変わってないじゃないか」

志希「だっで…キミが、死んじゃ、うって…」ぐすっ、ぐすっ

「ひとり立ちさせるには、まだ早かったか」

志希「!! それじゃあ!!」

「もう少しだけだ。あとほんの少しだけ、お前に力を貸してやる」

志希「〜〜〜〜っ!!」

志希「ありがとぉーーーー!!」ぎゅっ!

「おい、抱きつくな」

志希「ハスハスハスハス〜」

「嗅ぐな」




志希(こうして、彼に拾われて城の頂上までまっすぐ駆け上がったあたしは、今度は彼と共に歪に階段を転がり落ちる)
65 : ◆G4Z1KppkgXoT [sage]:2017/12/03(日) 13:30:06.74 ID:kqwUMreNO
中断
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/03(日) 13:38:15.33 ID:DXM29ZI0O
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/03(日) 18:46:02.03 ID:E8cZYz5nO
おつ
いいぞ
68 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/04(月) 19:56:45.95 ID:/oe8+iSOO
【22】


志希「その頃から彼とは同棲し始めました」

志希「仕事柄、あまり公にはしていませんでしたが、私たちの交際は周囲には公然の秘密でした」

志希「同棲の理由には、交際相手としてだけでなく…もう一つ」

志希「彼の身体がしだいに弱ってきてしまい、介助を必要とする場合があったからです」

志希「息切れをすることが多くなり、椅子に座っている時間が長くなり、ついには杖をつくようになり」

志希「視力も、少しずつ…」

志希「その頃には私と彼の関係だけでなく、彼の病気と余命についても噂が拡まっていたようです」

志希「周囲の人たちが気を使ってくれたのか、私たちは二人きりになる時間がとても増えました」
69 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/04(月) 20:15:07.92 ID:/oe8+iSOO
【20】


♪〜♪〜♪〜

志希「……じゃん!」ピタッ

志希「ハァハァ…今のダンス、どうだった?」

「上出来だ。だが詰めが甘い。もう一度やろう」

志希「ぶ〜!相変わらず厳しいなぁ」ぶつぶつ

志希「ねぇ、今の曲もう一回やる前に別の曲踊っていい?志希にゃん飽きちゃった♪」

「お前なぁ…」

志希「あたしの集中力の持続を勘案すると、その方が結果的に良い成果が出せると思うんだけどにゃぁ〜」

「はぁ。その癖だけは一向に変わらんな…」

志希「これはもう一生モノだよねー」

「……。どうせ気分転換するなら、一つリクエストがある」

志希「なんの曲?」

「曲目じゃない」

「ガラスの靴を履いて欲しい」

志希「へっ!?」
70 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/04(月) 20:28:19.03 ID:/oe8+iSOO
【20】


志希「いいけど…どして?」

「今日は目の調子が良いんだ。視野がスッキリしている」

「それに、このレッスンスタジオは天窓から光が差し込んできてて、良い塩梅なんだ」

「ここでもう一度、ガラスの靴を履いた志希が見たい」

志希「……いいよ。待ってて」





カツーン、カツーン

「どうしたんだよ、そんなドレスまで」

志希「スタジオの衣装室にあったんだよ。どうせなら、ね♪」にっ

「ああ、似合ってる。靴もドレスも」


「そこの光の元へ」


志希(あたしは彼の求めるまま、ガラスの靴を履いて光の元で大きくポーズを取る)

志希(照らされる光で、ガラスの靴はキラキラと輝いた)

志希(あたしは彼の眼をじっと見つめる)


「ああ…綺麗だ……」

「……このまま永遠に時間が止まれば良いのに」
71 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/04(月) 20:59:38.20 ID:uG66s8AfO
【20】


志希「もうっ!ホントに死んじゃうようなこと言わないでよっ!!」


「死ぬんだよ俺は!!!」


志希「…………ッ!」ビクッ

「なぁ、志希。ここいらで終わりにしよう、俺たち…」

志希「……」

「最近では俺が力貸すどころか、お前に助けられてばかりだ」

「お前はアイドルだろう?何で俺の通院手伝うために仕事減らしてるんだよ…」

「今のうちに他のプロデューサーの下につけ。話は通してあるから、大丈夫だ」

「さっきは大声出して悪かったな。すまん」

「最後に良いものを見せてもらったよ…ありがとう、志希」

「それに、家であれこれ家事してくれたことも。お前そういうの苦手だろうに」

「通院の介助も、さっきはああ言ったが本当に助かったんだ。ありがとう」

「俺たちは、出会いはどうあれ、助け助けられた関係になったけど。志希は俺の『死』にまで付き合うことはないんだ…」

「どうか、俺の育てた最高のアイドルとして……新しいプロデューサーと共に歩んでいって欲しい」

「俺の、死を前にした俺の最期のお願いだ…」


「自分の人生を、生きてくれ……」










志希「キミが死んだら、その死体はあたしが欲しいな」
72 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/04(月) 21:14:02.01 ID:uG66s8AfO
【20】


「……なんだよ、それは」

志希「あたしなりのプロポーズのつもり」

「なっ!?」

志希「どうして仕事ほったらかしでキミに付き添うかって?」

志希「好きだからだよ。愛してるからだよ。何よりも!」

志希「キミの死に付き合うことはないって?」

志希「冗談じゃない!一生添い遂げるよ!!」

志希「自分の人生を生きて欲しい?それなら…」


志希「キミと共にいることがあたしの人生だよ」


志希「あたしと結婚して!」


「……」

「…わかった」

「俺と結婚してください」
73 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/04(月) 21:30:03.09 ID:uG66s8AfO
【23】


志希(借り物のドレスと貸しスタジオでの突発的でさえないプロポーズを彼は受けてくれた)

志希(でも、『借り』はあたしと彼をつなぐキーワードと思えば、あたしらしかったのかな?)

志希(翌日、あたしはアイドルを電撃引退)

志希(仕事方面では、あらかじめあたしがこっそり根回しを済ませておいたので支障なし)

志希(世間は蜂の巣を突ついたような大騒ぎだったけど)

志希(あたしと彼の結婚式はそれから間もなく執り行われた)

志希(彼も家族とはあたし同様の関係らしく、呼ぶべき人はいないらしい)

志希(あたしと彼の二人きり……正確には神父さんもいるけど、二人きりの結婚式だった)
74 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/04(月) 21:50:13.42 ID:3cjEJ+WFO
【20】


神父「汝、この者を妻とし、健やかなる時も病める時も、死が二人を別つまでこの者を愛することを誓いますか?」

「はい。誓います」

神父「汝、この者を夫とし、健やかなる時も病める時も、死が二人を別つまでこの者を愛することを誓いますか?」

志希「はい。誓います」

神父「では誓いのキスを!」

「…ありがとう、志希。これからもよろしく」

志希「うん。ずっといっしょだよっ!」

チュッ

神父「ではここに、この二人を夫婦と認めます!」

ゴーン!ゴーン!ゴーン!


志希「……」

志希(死が二人を別つまで…)




志希(その言葉が、ただただあたしの胸に重くのしかかるようだった)
75 : ◆G4Z1KppkgXoT [sage]:2017/12/04(月) 21:50:56.22 ID:3cjEJ+WFO
中断
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 06:35:18.41 ID:hnk00TWho
はえーシリAssやね
77 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/08(金) 07:02:21.52 ID:DTkMvQ73O
【22】


志希「その頃からです。彼と…夫と永遠にいっしょにいられたらと考えるようになったのは」

志希「でも、夫が死んでしまうことは止められない。それは最も近くにいる私がわかっている」

志希「夫の死を受け入れるか、否か」

志希「その葛藤に苛まれました」

志希「私は…彼の死を拒絶する方を選びました」


志希「彼と永遠に添い遂げたい」


志希「私に犯行動機があるとするならば、その思いだけです」

志希「決して看護疲れや、憎しみや怒りの感情、その場限りの感情で実行したのではありません」

志希「完全に私のエゴ、自分勝手な感情に彼を巻き込みました」

志希「計画をはっきりといつから立てていたのかは、もう私にも思い出せません」

志希「彼がほとんどベッドから起き上がることができず、声も枯れて、痛みを麻酔で抑えるようになった頃」

志希「……それは、もういつ死んでしまってもおかしくない状態です」

志希「その時期にはもう全ての用意を済ませていたのは確かです」
78 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/08(金) 07:04:17.93 ID:DTkMvQ73O
【21】


シュコー シュコー

「…」

志希「……」

「…」

志希「ね」

「…」

志希「今度、二人きりで出かけない?」

「…」

志希「何言ってんだって思うかもしれないけど」

「…」

志希「ふふふ、今『できるわけないだろ』って眼したね?」

「…」

志希「それができちゃうんだな〜。志希ちゃんマジックで!」

「…」

志希「……二人きりになれる場所。いっしょに行こうよ」

「…」

「…あ゛あ゛、行ごう゛」



志希(枯れた声で彼はそう応えた)

志希(彼にはあたしの言っている言葉の意味をきっとわかっていたように思う)
79 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/08(金) 07:25:46.35 ID:DTkMvQ73O
【21】


志希「今ごろ病院では大騒ぎかもね。患者が居なくなっちゃったんだもん」

「…」

志希「でも、別にいいよね?終わり方くらい自分たちで決めても、さ」

「…」

志希「ごめんね。こんな結末になっちゃって」

志希「せっかくキミがあたしの人生の正しい道を指し示してくれたのに」

志希「結局、あたしは元の間違った道まで引き返して来ちゃったよ…」

「……別に゛、い゛い゛だろ゛…」

「俺゛も゛、志希も゛、途゛中で、良゛い゛景色は、見ら゛れ゛た゛…」

志希「そう…なのかな?うん。そうだよねっ」

「…」

志希「痛む?寒くない?…痛いよね。待ってて。もう少しで着くから」

「あ゛あ゛」

志希「手、握っててもいい?あたしの方がなんだか寒くって」

「…」

ぎゅっ

志希「ありがと。ふっふっふ〜♪ハスハスハスハス」

「…」


志希(ああ、病院臭い)

志希(早く洗い流さなきゃ…)
80 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/08(金) 07:49:02.51 ID:DTkMvQ73O
【21】


ガチャ


「…ゼェ、ゼェ」

志希「大丈夫?着いたよ…あたしたちの家。帰って来たよ」

志希「やっぱり、ここしかないかなって」

志希「あたしたち、この部屋でちゃんと家族になれてたよね?」

「…」

志希「そだよね。あたしもキミも、ちゃんとした家族なんてわかんないや」

志希「でも、あたしはここで幸せだったよ。キミは?」

「…」

志希「ありがと」

「…ッ」

志希「痛むの!? …待ってて。すぐ楽になるから」
81 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/08(金) 07:59:07.79 ID:DTkMvQ73O
【21】


志希「…これ。あたしが昔作ったドラッグの一種。また作っちゃった」

「…」

志希「鎮痛の作用もあるから、嗅いで、吸い込んで…」

「…スーーーーっ」

志希「ハスハスハスハス」


志希(あたしも彼とともにそのドラッグを嗅ぎ、忘我に身をゆだねる)

志希(もう誰にも止めることなどできない)

志希(あたしは彼の服を脱がせ、バスタブまで運ぶ)

志希(あたしも服を全て脱ぎ、バスタブにいっしょに浸かり、彼の身体を洗う)

志希(病院臭い病院臭い病院臭い病院臭い病院臭い病院臭い病院臭い病院臭い)

志希(彼の匂いを嗅げない)
82 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/08(金) 08:13:42.43 ID:DTkMvQ73O
【21】


「……」ぐいっ

志希「わっ!」

ぎゅっ

志希(彼の身体を洗っていたら、彼が急にあたしを抱きしめた)

志希(あたたかい)

志希(痛みが引いたのか、いつもより穏やかな表情の彼)

志希(…もう十分かな)

志希(もうこのまま彼の体温に身をゆだねることにしよう)

ちゅぱっ

志希(彼にキスをする。より強く、彼はあたしを抱きしめる…)


ハスハスハスハスハスハスハスハス
83 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/08(金) 08:26:14.80 ID:DTkMvQ73O
【21】


志希(彼の匂いがする。彼の温度を感じる)

志希(彼の全身に口づけをする)

志希(でも、こんなんじゃまだ足りない…)

志希(もっと彼の匂いを感じたい)

ハスハスハスハス

志希(彼に抱かれながら、彼の眼を見つめて言う)


志希「キミの匂いが大好き。嗅いでいると、すごく安心する」


ザクリ


志希(そう言いながら、彼の動脈にメスを突き刺した)

志希(どくどくと血があふれ出してきた)



志希(ああ、彼の匂いがする…)
84 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/08(金) 08:31:44.15 ID:DTkMvQ73O
【21】


「うぅ…」

ドクン、ドクン、ドクン

志希「……」

志希(彼は少しだけ苦しそう。……ごめんね)

志希(あたしは彼を浴びる、浸かる、ひたる)

志希(全身で彼を感じられる…)

志希(彼に何度も何度もキスをしながら、彼の内側、彼の本当の匂いを嗅ぎ続ける)


ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅぱっ


ハスハスハスハスハスハスハスハスハスハス
85 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/08(金) 08:40:28.87 ID:DTkMvQ73O
【21】


「志、希…」

志希「うん…」


「お゛、れ゛も゛…」

「志希、の゛、に゛お゛い゛……」

「大゛好゛ぎ、だ……」

にっ


志希「そっか」

志希「キミもかぁ…」

にこっ

志希「ずっとずっといっしょだよ」

「ああ……」


志希(彼の最期の笑顔に、あたしも笑顔で応えた)

志希(あたしは彼が息絶えても、バスタブの中で彼の匂いを堪能し続けた)

志希(彼の全て。彼の全てを全身に浴びて、あたしは彼とひとつになる)


志希(もういつだってずっといっしょにいられる)
86 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/08(金) 08:45:18.47 ID:DTkMvQ73O
【22】


志希「その後、部屋に警察が訪れ、全ては発覚しました」

志希「現象としては、私は彼を殺害し、彼は死にましたが、彼は今も私といっしょにいます」

志希「私は永遠に彼と添い遂げることに成功しました」

志希「……以上です」

裁判長「……。本日はこれで閉廷とする」

志希「ありがとうございました」
87 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/08(金) 08:50:31.44 ID:DTkMvQ73O
【23】


志希(それで…)

志希(無期懲役か)

志希「無期」

志希「永劫、永遠…」

志希(あたしはこの判決に満足していた)

志希(彼があたしの事を『永遠に許さない』と言っているようで)

志希(そうだ。あたしは彼に許されないことをしたんだ)

志希(彼だって、あたしにも自分自身にもこんな終わりを望んでいなかったろう)

志希(あたしはあたしのエゴで、彼を死に至らしめた)

志希「…それでも後悔はしていない」
88 : ◆G4Z1KppkgXoT :2017/12/08(金) 08:57:20.98 ID:DTkMvQ73O


志希「今でも、目を閉じれば彼の匂いがする…」

すーーっ はーーーっ

志希「安心、する…。ずっと彼のそばにいられる…」

志希「永遠に……」


ハスハスハスハス


志希(あたしが出会った、魔法使いになれなかった靴屋さん)

志希(物語の中では、12時の鐘が鳴ると、魔法でできたドレスやカボチャの馬車は消えてしまう)

志希(でも、ガラスの靴はいつまでも残り続けた)

志希(ガラスの靴だけは解けない魔法。永遠にあり続けるあたしの中の宝物)


志希「あたしは、永遠を手に入れた」




89 : ◆G4Z1KppkgXoT [sage]:2017/12/08(金) 09:00:06.79 ID:DTkMvQ73O

『志希Pは志希にゃんに実験材料にされて殺される変態的な願望を持っている』という私の偏見の元に書きました
「志希にゃんに殺されてぇ!」という方以外にはすみません
終わります
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/08(金) 09:10:50.30 ID:Mcn4VyLsO
おつやで
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/08(金) 11:19:40.32 ID:4Ea3Xyn9O
愛した人に愛されながら殺されるって、一番素敵な人生の終わりかただと思う
おつかーれ
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/08(金) 11:27:35.52 ID:U0lQ04mlo
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/08(金) 11:43:24.45 ID:886DXuwy0
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/08(金) 13:11:53.09 ID:/vYAwua60

最高だった
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/08(金) 14:22:46.38 ID:QH/iNdio0

もうちょい長くてもよかったんだよ(懇願)
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/08(金) 15:21:20.69 ID:YPxjWBc7O
良かったけど人一人で無期懲役行くか?
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/08(金) 16:06:25.82 ID:bkjzqKX3o

残虐性及び更生の可能性でも判断されるからね
現象だけ見たら夫を殺害しその血を浴びてトリップしてた猟奇的な殺人犯で、裁判でも後悔した様子を見せてない
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/08(金) 17:26:09.38 ID:VbyR8BIxO
おつおつ
判断理由そんなもんかーふむー
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/08(金) 18:18:10.21 ID:80qIohjzO
裁判って論理は関係ないからね
心証がほぼほぼよ
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/09(土) 01:37:15.80 ID:ZDUXk4R6O
清浄なる世界で 君とこうなりたかった
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/21(水) 05:49:08.25 ID:tIstGQico
綺麗だ
おつおつ
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