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モバP「あべこべとか美醜逆転とか、いろいろ」
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16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/12(日) 21:29:39.46 ID:PAb0ZZtSo
言え。私、言ってしまえ。
ここで言えてこそのデキる淑女。いけ、この流れならいけます。
いける――ハズ!
「私が今まで見てきたどんな人よりもステキですよ」
き、決まったァ!決まりましたっ!
私の容姿の余りある欠陥を補っての淑女台詞。になると信じてます。……信じていいですよね?
「そうかぁ」
プロデューサーは微笑を浮かべて、立ち上がる。
そしてゆっくりと窓際まで歩を進め、窓を開け放つ。
強い風が吹いた。
ばさばさ、と部屋の中に吹き込んできた風がデスクの上の書類を数枚攫う。
私の頬にどこからか飛んできた水滴が当たる感触。
そちらへ視線を向けるとプロデューサーが事務所ビルの窓枠に足を掛けた状態で涙を流していた。
「ごめん、ごめん……。向こうの響子。こんな全身”R-15G”みたなヤツと根気よく向き合っててくれたんだなぁ」
……なんということでしょう。
私のデキる女アピールにより、恩人にして、誰より愛する彼が一瞬で自死一歩手前に。
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/12(日) 21:30:33.45 ID:PAb0ZZtSo
「ま、まって。待ってください……まって、んぅ、うぅぅぅ゛!」
私は慌てて駆け出し、奇怪な声を上げながら情けなく彼の足に両手両足で縋り付く。
胸が痛い。というか、物理的に痛い。
私の胸の中の何かがここで彼を死なせたらこの心臓破ってやるとばかりに暴れている気がします。なんでしょうこれ。本当に痛い。
そして、大切な人が居なくなってしまうかもしれない恐怖と謎の胸の痛みで私がもう殆ど泣いているような状態であることに気づいたプロデューサーはようやく正気に戻るのでした。
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/12(日) 21:30:58.40 ID:PAb0ZZtSo
一旦ここまで。
おやすみ。
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/12(日) 22:36:00.78 ID:0kv8lDGzo
おつおつ
続きも期待してる
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/12(日) 22:44:41.20 ID:W2sVQsImo
tsもきっとあるよね
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/13(月) 23:53:19.26 ID:iGaJXac3o
期待
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/14(火) 17:22:06.11 ID:HxzSgDRio
「ごっ、ごめん。本当にごめん。嘘、さっきやってたのは冗談だから!」
私に向けられる彼の瞳は忙しなく右往左往している。
冗談だって、許されないことがある。
あなたは知らないだろう。
私がどれだけあなたに執着しているのか。
私はなにを犠牲にしても、それだけは手に入れてみせます。
だからこそ、私は諭す。
まるで、ドラマの中で見たように。
まるで、小説の一シーンのように。
私の中の足りないものとマイナス振り切ったものを補うように。
格好良く、気丈に、冷静に、女らしく。
デキる女性の仮面を被って、私はあなたの価値を諭すのだ。
――……出来るだけ好感度上がりそうな感じで!
◇
「う゛ぅ。んんっ!んんんっ!」
――無理でした。ダメです。
言葉は結局出なくて、私は情けなく目に涙を溜めて只々あなたの胸元を叩く。
女々しくてもダメダメでも下心前回でも私は頑張りますから……。
「ごめん。冗談でももうしないから……。許してほしい」
正面から背中に手を回されるように抱きしめられる。
……嗚呼。
あったかい。やさしい。…………しゅきぃ。
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/14(火) 17:24:20.00 ID:3ekGSlDR0
アイドルがアイドルできないだろ、美醜逆転してるから
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/14(火) 17:26:38.68 ID:0+PotG8Ho
事務所としか言ってないからアイドル事務所じゃないのかもしれないですね
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/14(火) 18:02:54.06 ID:HxzSgDRio
事務所中央に立てかけられたモニタの向こう側からは歓声が聞こえてくる。
少しでも気分転換になれば、と付けたそれの向こう側では年頃の少女たちがステージで舞い踊っている。
極彩色の衣装を纏い、地鳴りのようなステップを踏みながら観客を魅了する少女たち。
ガマガエルのような歌声に続くように、観客の歓声があがる。
「あれは……なんだ?」
「……へ?知りませんか?」
「し、知らない」
それを眺めながら、プロデューサーは肩を抱いて震えている。
この仕事をしているだけあって感受性豊かなのか、それとも彼女たちの才気を感じっているのか。
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/14(火) 18:04:20.73 ID:HxzSgDRio
「確か最近になって流行りだした……えっと、なんでしたっけ」
――だとしたら、なぜ、彼は私を、私なんかを彼女たちと同じステージに引き上げようとしているのでしょう。
「メンバー全員の体重合わせて重さが4.8tになるプロジェクトで……んと、ごめんなさい。忘れちゃいました」
ステップに合わせて踏み鳴らしたステージの床板が一際大きく物理的な悲鳴を上げるのと当時にフィニッシュ。
「素敵な……素敵な……サバトだ……な」
プロデューサーはなぜか両の掌で瞼を覆い、涙を流し始めた。
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/14(火) 18:05:15.68 ID:tGsfFhbzO
悪夢すぎる
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/14(火) 18:05:41.87 ID:HxzSgDRio
な、なんでっ!?
嗚呼、私だ。きっと私が至らないから。むしろ、至らないところしかないから。
――慰めなければ。私の全てを賭して。
私は縋るようにその瞼を覆う掌にそっと手を添えて言葉を紡ぐ。
例えそれで嘘をつくことになると、分かっていても。
「こんな私じゃ、あの場所に手を伸ばすのもおこがましいですけど、がんばって、あれに届くようにしますから」
プロデューサーは涙を流すどころか今度は嗚咽を漏らし始めた。
もはやギャン泣きでした。
……あれ?
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/14(火) 18:19:07.44 ID:3ekGSlDR0
エロ本とかはトロールの裸しか見れないってことか
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/14(火) 18:28:43.14 ID:HxzSgDRio
プロデューサーがスーツの袖で自分の涙を拭う。
瞼は紅く腫れ、悲しげな表情も相まって痛々しいものすら感じる。
「響子」
「は、はいっ!」
涙で少しだけ濡れた瞳が私を真っ直ぐ射抜く。
あぁ、そんな目のあなたもステキ、ステキです!
「そのままでいいんだ」
真剣な言葉に思わず息が止まる。
「誰かになろうとしなくていい。響子が響子のままでいてくれればそれでいいんだよ」
「で、でも――」
「いいんだ!」
聞きたくないとばかりに私の言葉を遮られる。
「響子が響子のままで救われる人が少なくともここに一人いるから」
まるで、心臓を穿たれるような言葉でした。
――この人は私を私のままで許容してくれる。
意図しない涙が勝手に溢れては、落ちていきます。
私の貰い泣きなのか、プロデューサーもまた、瞳に涙を溜めて呟く。
「……マジでやめて……やめてね……?」
なぜだか、その呟きこそが今日聞いた言葉の中で一番重みのあるものだと感じた。
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/14(火) 18:29:19.38 ID:HxzSgDRio
一旦ここまで。
考えるな。わたしはなにも考えていない。
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/14(火) 18:34:31.54 ID:AL7IqYuz0
乙
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/14(火) 20:41:35.36 ID:SyPZqZHz0
おつ
まさかモバPはこの世界線で響子をアイドルにしようとしてるのか?
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/15(水) 00:34:15.62 ID:VwbT+thd0
ドルヲタ(小奇麗でセンスある格好で整った顔立ち)
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/15(水) 01:16:53.64 ID:Wk5OQaNBO
乙
この世界に俺がいたらジャニーズなんて目じゃない程の
トップアイドルになれるわ
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/15(水) 10:25:07.09 ID:XhoQaFTT0
迷い込んだ世界で元の世界と似た人をPが好きになった場合、物凄いブス専かキチ〇イ扱いされるなコレ
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/15(水) 16:34:52.91 ID:D421QuK80
ジャンクフードが美容食品になるな
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/15(水) 21:50:01.20 ID:KkEmJjUBo
加蓮…
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/15(水) 23:56:40.62 ID:hUxDZyVyo
――とてもではないが仕事どころではない。
そうとしか言いようのないプロデューサーの憔悴具合だった。
とはいっても、私に元から仕事と呼べるものなどなかったのだが。
そもそも、私と彼はまだ出会って一ヶ月。
更には、アイドルの卵未満、”みにくい白鳥の子”ですらない私に関心を持つ人などいないですし。
あぁ、でも侮蔑とか憐憫とかそういう意味でなら……ううん。
……そんなことを考えていても思った以上に平静な私がいます。
「あの、顔色、悪いですよ……?」
私は、掌をそっとプロデューサーの額に添える。
――これが。
これこそ、これが自然なボディータッチ。
私にはまっっったっくっ!関係ないが世の女性による男性へのセクハラ被害は後を立たない。嘆かわしいことです。
これも全く関係ないが、肉体の距離は心の距離なのです。
だけど、これは大丈夫。医療行為みたいなものだから。医療行為みたいなものだから!
その距離を縮めることを私が厭う理由などないのでした。
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/15(水) 23:57:54.67 ID:hUxDZyVyo
プロデューサーの額の熱を掌を通して感じる。
同時に彼の前髪の毛先が私に触れている。
――出来ることならばこのまま頭を撫で回してしまいたい。
そんな衝動を前歯を奥歯を噛み砕かんばかりに噛み締めて押さえつける。
例えば創作界隈には”ナデポ”という用語がある。
なんかこう、都合良く弱ってたり弱ってなかったりする男性キャラクターの頭を撫でた女性キャラクターが都合良く”ポッ”と惚れるのだ。惚れちゃうのだ。
つまり、つまりです。
基本的に私たち女性はこう、好みこそあれ男性の髪を撫でたくて仕方ない。
ぶっちゃけ撫でたい。
…………でも。もし私みたいなのが撫でて、……引かれないかなぁ?
他人になら、どれだけ蔑まれてもいい。
だけれど。だけれど……はぁ。意気地なし、なのかなぁ。この人に嫌われるのだけはこわい、なぁ。
「……悪いね。心配を掛けるよ」
「気にしないでください」
プロデューサーは弱々しく微笑んだ。
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/15(水) 23:58:30.74 ID:hUxDZyVyo
みじかい。
おやすみ。
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/16(木) 09:44:56.47 ID:7RAFsd5hO
おつー
男女の性的価値観も逆転してるのかな
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/16(木) 12:15:20.96 ID:fq0KsOkfO
撫でた側が惚れるのか(困惑)
おつ
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/16(木) 23:55:34.69 ID:XYO4AVUMo
きゅっと拳を小さく握りしめる。
酷く弱った異性に頼りになる態度で颯爽と振る舞う私。
これはキています。
私の積み重ねた男性経験が確信を持って囁く。
今まで男性にこんな淡い情を持たれたことがあっただろうか、――いや、ない。
瞳を閉じて思い返す。
これまでの私の軌跡を、辿る。
◇
――姉ちゃん、邪魔。
――父さん!姉ちゃんのと一緒に洗濯物洗わないでって言ったじゃんっ!
――そんなんだからさ、姉ちゃん学校で女々しいって言われるんだよ。
――今日友達連れて来るからさ、姉ちゃん部屋から出てこないでね。
――姉ちゃん、うっさい。あと、ウザい。
◇
――大体弟でした。
苦渋の日々を思い返し、そして唇を噛み締める。
……お姉ちゃんは彼氏が出来たらしつこいくらいキミに付き纏って自慢しますから覚えているように。
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/16(木) 23:56:21.85 ID:XYO4AVUMo
ともあれ、執着している異性からの新鮮な対応には自然と心が踊ります。
人間、弱い部分を曝け出すには信頼関係が必要です。必要なはず。たぶん。
つまり、つまりです。
彼と私は非常に近いところに居るはずなのです。こう、精神的に。精神的にっ!
この反応ならば、しれっと次の巻では主人公の女の子のハーレムメンバーに入ってるやつです。
少女漫画で見ました。
あぁっ、でもご安心くださいプロデューサー。
私、五十嵐響子はあなた一筋ですからっ!んふっ、んふっ、うへへへぇ。
「今日はもうお帰りになった方がいいですよ」
「……いや、大丈夫だよ」
「駄目ですっ!それでなにかあったらどうするんですかっ!」
私の強い言葉に困ったように、眉尻を下げる。
やがて、頑として譲らない私の態度に諦めたように肩を竦めた。
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/16(木) 23:57:12.65 ID:XYO4AVUMo
自信有りげに、頼りがいのあるような振る舞いで、私は自らの胸に左の掌を添える。
「ご安心ください。私、五十嵐響子が責任を持ってプロデューサーを自宅までお送りします」
はきはきと、断固たる意思を以って告げる。
「……送るって、えっ?」
困惑したように首を傾げるプロデューサーの姿が可愛らしくて少し心踊る。
責任ある大人の男性(ここが大事)がちょっとした隙に見せる愛らしい姿に心動かさらない女性が居るでしょうか。いや、居ないはずです。
「お世話になっているプロデューサーを無責任に返す訳にはいきません。ほら、私も女性ですから、近頃は物騒ですし」
ぽかん、としたプロデューサーの表情。
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/16(木) 23:57:56.40 ID:XYO4AVUMo
――心底不思議そうに。
どうしてそうなるのか分からないとばかりに。
少しだけ考えるように思案する仕草を見せて、プロデューサーは「あぁ、なるほど」とぽつりと呟いた。
「響子は”女の人”だもんな」
そんな言葉をプロデューサーはなぜか吟味するように告げる。
「はい」
「あっ、あーっ、でもほら、俺、車で来たから響子を家に送り届けられないし……なっ?」
「私はタクシーで帰りますから、いいんです」
「えっ、それって意味がなくないか」
「だから、プロデューサーは私にお世話されてください」
「いや、俺は別にどこか悪い訳じゃないし」
しどろもどろに弁解するようにプロデューサーはそう言う。
「……やっぱり、その……ご迷惑ですか?」
「あぁ、いや……参ったなぁ」
プロデューサーは人差し指で頬を掻く。
そして、根負けしたとばかりに小さくはにかんでから口を開く。
「……わかった。あと、ありがとう。響子が居てくれてよかったよ」
「お役に立てそうでよかったですっ!」
こうして私は限りなく自然に、合法的に、好感を持たれつつプロデューサーの住所を手に入れました。
やったっ、やったぁ!
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/16(木) 23:58:25.80 ID:XYO4AVUMo
一旦ここまで。
ヨゴレ系ヒロインすき。
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/17(金) 00:29:38.53 ID:WI95bTNJo
キモチワルイモードの響子か…
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/17(金) 20:08:25.68 ID:KAY0MLZ/0
やる夫スレでこういう設定の奴たくさんあるよ
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/17(金) 20:14:23.75 ID:bm9rceBfO
何が言いたいんだ
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/17(金) 23:19:28.54 ID:AfFddOPUo
――男性の部屋とは異世界のようなものである。
世界中の女子高生が願ってやまない異性の部屋へのチケット。
それを手に入れた今の私はあらゆる非モテ女子から石を投げられても仕方ないだろう。
しかも、年上成人男性のお部屋です。
そこらの男子高生との、その場の流れ、保護者監視下の下での馴れ合いではありません。
つまりは勝ち組。今の私は実質勝ち組なのです。
「どうぞ」
そして、私は今、プロデューサーに促されるままに、マンションの一室に足を踏み入れた。
家具や家電の大半がシンプルな白と黒のモノクロで大半が構成された部屋。
――味気がない。
こう、男性の部屋というのは桃色とか桜色とかピンクとかで構成されていて、ついでに”ハロー菌糸”のぬいぐるみとか”腹筋マウス”のステッカーで出来ているもののはずだ、――と。
素人ならそんな感想が出るかもしれません。しかし、私は違います。
――そう、このシンプルさが大人の男性になる、という過程を経た結果であることに違いありません。
「えっ?なんかあった?」
私はプロデューサーへと顔を向け、静かに頷いた。
「……………?」
只々不思議そうにプロデューサーは首を傾げていました。
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/17(金) 23:21:40.09 ID:AfFddOPUo
時代が変わるのに合わせて、常識も変わります。
過去の常識が必ずしも現代の常識とは限らないのです。
フライパンを振るいながら、私は考えます。
料理の得意な女の子。これはアドバンテージ。現代社会におけるアドバンテージなのです。
出来ないよりは、全然出来たほうがいい、といいますか。
女の人の方が男の人より料理が上手いと男の人の立つ瀬がない、という意見もありますが、これは考えない方向で。
――だって、これくらいしか誇れること、ないんですもん。……うぐぐ。
……いえ、辛い現実は忘れるべきです。
ふと、ぺたり、ぺたりと足音が聞こえる。
そして、リビングの扉が開く音。
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/17(金) 23:22:33.61 ID:AfFddOPUo
「……ふぅ。ありがとう。シャワーを浴びてずっと考えてたことが少しすっきりしたよ」
現れたのは薄手の部屋着を纏ったプロデューサー。
素足がフローリングを踏みしめ、髪は湿っており、頬は上気していて赤い。
そのうえ、普段は寝間着に使っているのか、大きめの水色のシャツの胸元がやや開いている。
……こう、その、むらむら……といいますか、若干黒い欲望が沸いてくるような姿でした。
「響子」
「は、はひっ!」
プロデューサーの真っ直ぐな瞳が私を捉えた。
真剣な、本気の瞳に見つめられて、思わず声が裏返る。……我ながら挙動不審で情けなくてちょっと悲しい。
「大事な話が、伝えたいことがある」
心臓が跳ねる。
聞いたことのない真剣な声音。
異性の部屋。大切な話。少しすっきりしたという、ずっと考えてたらしいこと。
ここまで条件が揃っている。
ごくり、と思わず生唾を飲み込む。
わかる。わかるわ。じゃない、わかります。
―――これは、告白だ。
見えないように小さくガッツポーズ。
お父さん、お母さん、あと、ついでに弟。お姉ちゃんは幸せになります――。
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/17(金) 23:23:54.21 ID:AfFddOPUo
「ようやく伝える覚悟が決まったんだ。聞いて欲しい」
だが、これでよいのだろうか。
思わず、唇を噛む。
ソファーなどない部屋だ。プロデューサーはベッドの端に腰掛けている。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「響子。驚くかもしれないけど俺は――」
そう。そうだ。私が女として生まれた以上、気持ちを伝える努力を怠ってはならない。なにより、私は私の気持ちに嘘を吐くつもりなど毛頭ありませんでした。
「――んむっ!?」
私はプロデューサーの唇を自らの唇で塞いだ。
目を白黒させるのはプロデューサー。唇が離れた後に「へっ?」とか「えっ?」とかひたすら状況を理解出来ないとばかりに困惑している。
大丈夫。大丈夫です。私は全部わかってますから。
意識せず熱い吐息が漏れる。
私という存在が熱を持っていくのがわかりました。
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/17(金) 23:25:05.46 ID:AfFddOPUo
「えっ、なに!?なんでっ!?手が……動かな……。というか、目がこわっ――」
きゅっとプロデューサーの両の手首を掴んでベッドに押し倒した。
「は、ぁっ。わたしも、すき。すきです。ずっと、ずうっとだいすきでしたよ」
私も非力な方ですけれど、一応女の端くれです。流石にプロデューサーを少し抑えるくらいなんてことありません。
そんなことより、この体中を焼かんばかりの熱をぶつけたくて、しょうがない。
再び、私は唇を塞ぐ。今度はねぶるようにその存在を味わうかのように。
「んっ、むっ。ちがっ、響子!聞いてくれ!」
「はいっ。聞きます。聞いちゃいます。なんでも響子に言ってください」
なんだって聞きます。
だからぜんぶ、ぜんぶ、ぶつけて欲しい。
プロデューサーは吐き出すように、叫ぶようにトドメの言葉を放った。
「おれは、……俺にはっ、他の人と違って響子がかわいいし、優しいし、魅力的な女の子に見えるってことを打ち明けたくて――」
――あはっ♪
私には自分の理性の最後の糸が呆気なく溶けて消えていくのがわかりました。
きっとわかっていないんでしょう。私にとって、今のあなたこそがどれだけかわいらしく見えているのか。
でも、大丈夫。すぐに、わかりますから。
嗚呼、なんてしあわせな両思い。
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/17(金) 23:26:06.86 ID:AfFddOPUo
◇
かつ、かつ、かつ。
アスファルトを踵が叩く音がどこかから聞こえる。
少女は辺りを見渡すように頭を揺らす。
しばらくして、目的のものを発見したのか、再び小気味良い足音を立てて駆けていく。
少女は一人の男の背後から背中に勢い良く抱きつく。
男はよたよたとよろけた後、目を細めて掌を差し出す。
それを見た少女は満面の笑みを浮かべてそれを握った。
「もてもて?」
「娘にモテてどうすんの」
「いーじゃん。いーじゃん。貰い手の予定もないんだから」
にんまりと笑む少女とは対照的に呆れたように息を吐く男。
「お前、俺が今度”鏡の扉”を見つけたら覚えとけよ。お前も死ぬ気で探せ。こっちの世界じゃ叶わん夢もある」
「たまにとーさん変なこと言うよね」
「そしたら向こう側でかーさんと一緒に死ぬほど歌ったり踊ったりさせてやるから」
「なにそれ、ちょっとこわい」
「見つかんなかったら死ぬまで俺が飼い殺してやる。ぜってー男にはやんねー」
「それはそれで、ちょっと倒錯的なものを感じるよとーさん」
◇
モバP「あべこべとか美醜逆転とか、いろいろ」 END
58 :
◆yIMyWm13ls
[saga]:2017/11/17(金) 23:27:18.08 ID:AfFddOPUo
完結〜。
やりたい放題感。
多分黒歴史。
お付き合い頂き感謝感謝。
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/17(金) 23:28:03.59 ID:4M64tDkdo
おわっちゃうのか
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/17(金) 23:34:49.94 ID:5P1aiG0a0
終わったか
響子が可愛くてよかったおつ
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/17(金) 23:50:00.09 ID:+ie2xYilO
もっと読みたかった
おつ
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/18(土) 00:31:57.70 ID:wvxMv08no
つまり最後は誰なんだぜ?
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/18(土) 11:23:23.01 ID:Yqeu9JZSo
>>62
プロデューサーの娘ちゃん(元世界基準で美人)
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/20(月) 02:09:27.66 ID:X52nU7Mmo
二人で行動してるけど響子ちゃんどうなったの
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/21(火) 02:04:04.02 ID:k5cdzLcWo
>>53
を見る限りこちらでも料理上手みたいだから普通にお家でご飯作って待ってるのでは
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荒巻@中の人 ★
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