勇者「ドラゴンハート」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/20(水) 23:00:11.44 ID:PP+Zd6eA0

魔王「ほう、この子供が勇者だと?」

少年「う……あ……」ガタガタ

奴隷商「疑うのであればこの勇者の紋章をご覧ください」

魔王「ふん、まさか商人風情が勇者を生け捕るとはな」

奴隷商「もちろん様々な困難がございましたがそれはそれ」

奴隷商「偉大なる魔王様が地上侵略を計画中と聞き、及ばずながら何かお手伝いできないかと…」

魔王「よく回る舌だがまあ良い。誰か、この者に望むだけの褒美を与えよ」

家臣「はっ!」

奴隷商「商談成立ですな。さすればこれ≠ヘ魔王様のモノでございます」

魔王「ふふ、まずは目障りな紋章を消すか。焼印の用意は?」

家臣「こちらに」

魔王「皆も心得よ!この者、この時より勇者にあらず!!」


ジュウゥゥゥ!!!

少年「ぎゃあぁぁぁぁ!!!」


魔王「我が、奴隷なり!!」

 

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1513778406
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/20(水) 23:05:39.35 ID:PP+Zd6eA0

【数年後 魔界闘技場】

道化「レディースあ〜んど、ジェントルメン!!」

道化「今宵、皆さまがご覧いたしますわ勇者様の一大スペクタクルショー!」

観客「「「ブーー!ブーー!」」」
観客「しね勇者!」ポイ

奴隷「・・・・」ベシャ

道化「はいはい、モノ投げない」

道化「対するは神話の時代からの生きた伝説」

道化「鋭利な爪はあらゆる盾を切り裂き、強固な鱗はあらゆる剣でも傷付けず、空を飛び、地上を焼きつくす…」

道化「最古にて最強、そして、おそらくは最後の一頭」

道化「ドラゴンの登場だ!!」

ドラゴン「グオォォォ!!!」

観客「「「うおぉぉぉ!!!」」」
観客「すげえ」「かっけえ!」
観客「勇者なんかぶっ殺せ!」

奴隷「・・・・」
 
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/20(水) 23:09:40.82 ID:PP+Zd6eA0

道化「さあ、両者構えて」

ドラゴン「グルル」

奴隷「・・・・」

道化「おい、もうちっとやる気見せろ」ボソッ

道化「あんま呆気ないと惨めな姿を期待した皆さんから苦情出んだよ」

奴隷「・・・・」

道化「チッ!しゃ〜ない!ドラゴンさん、やっちゃってください!!」

ドラゴン「グオォォォ!!」ドスドスドス

奴隷(やる気を見せろ?)

奴隷(戦い方もわからず、どうやって見せろってんだ!!)

ドラゴン「ふん!」
ドゴッ!

奴隷「がはっ!」

奴隷(ほら見ろよ、一撃で腕が折れたぞ)

奴隷「げふっ、ごほっ!」

ドラゴン「・・・・」ギロッ

奴隷「ひい!」

奴隷(ぼろい剣でこんなんが斬れると思ってんのかよ…)

ドラゴン「・・・・」

観客「いいぞドラゴン!そのまま殺せ!」
観客「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」

奴隷(もういいや、どうせ、だれも、おれなんて……)


ドラゴン「情けない…」


奴隷「え?」

ドラゴン「少しは、期待したんだがな…」


グ シ ャ !

 
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/20(水) 23:15:35.27 ID:PP+Zd6eA0

奴隷「」

オーガ「よいしょ」ポイ

奴隷「」ドシャ!

ゴブリン「ったく、オレラも闘奴だぜ?死体運びまでやらすんじゃねえってえの」

奴隷「」

オーガ「運んだの、俺だぞ?」

ゴブリン「いいんだよ。そのでっかい図体の正しい使い方じゃねえか」

オーガ「こいつ、どうする?」

ゴブリン「水汲んでぶっかけてやんな」

オーガ「わかった」

奴隷「ごほっ!」

ゴブリン「あ、生き返った」

オーガ「水汲んで来たぞ」

ゴブリン「よ〜し、ぶっかけろ」

オーガ「わかった」

バシャッ!

奴隷「・・・・」ポタッ

ゴブリン「よう、起きたな。生き返るとはうらやましい」

ゴブリン「だが女神の加護は健在だろうが、闘技場のど真ん中で踏まれ続けてたのを運んでやった、こいつに礼の一言でも…」

奴隷「・・・・」ヨロッ

ゴブリン「お、おい…」

奴隷「」スタスタ

ゴブリン「行っちまった…」

オーガ「ケガ、治ってたな」
 
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/20(水) 23:21:46.53 ID:PP+Zd6eA0

奴隷「・・・・」スタスタ

「あ、おい…」
「チッ、あれだけやられてピンピンしてら」
「忌々しい」「化物が」

奴隷(見世物にされて数年)

奴隷(好き勝手言うだけの連中にも慣れた…)ゴロン

奴隷(部屋の隅で体を丸めて、耳を閉じてなにもかもやり過ごせば…)



ドラゴン「どっこいしょ!!」ドスン!

奴隷「!!」

ドラゴン「隣座るぞ」

奴隷「・・・・」

ドラゴン「大量♪大量♪」っレタス

ドサドサドサ

奴隷「・・・・」

ドラゴン「食べるか?」モシャモシャ

奴隷「・・・・」

ドラゴン「まったく、1個だけだぞ?」

っレタス

奴隷「いらん…」

ドラゴン「ん?言っとくがこれ以上はやらんからな」

勇者「いらんって…」

ドラゴン「・・・・」

奴隷「・・・・」

ドラゴン「はぁ…」

っレタス(2個目)

奴隷「おい」

ドラゴン「わかっておる、確かに農作物は日の差さぬ魔界では貴重品だ…」

ドラゴン「だがな、食べ盛りが遠慮などするな」

奴隷「いらないって言っでりゅんだ!!」

「噛んだ?」「噛んだぞ」
「普段喋らないから…」
「急に大声出して噛んだ!?」

奴隷「////」
 
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/20(水) 23:27:37.69 ID:PP+Zd6eA0

奴隷「・・・・」プイッ

ドラゴン「まあそう言わずもらってくれ」

ドラゴン「なんせ、先ほどお前さんと戦った報償金で得たレタスだからな」

奴隷「・・・・」

ドラゴン「くっくっくっ、一方的でつまらん試合に見合わん、驚くほどの金額に気が引けてな」

奴隷「……俺が、」

ドラゴン「うん?」

奴隷「俺が、ぼろぼろになるほど、魔王が喜ぶんだよ」

ドラゴン「ふむ、自分に仇なす勇者が魔物相手に手も足も出ぬのは愉快かも知れんな」

奴隷「…やっぱりな」

ドラゴン「ん?」

奴隷「たまにいるんだ、勇者の肩書きに釣られて来るのが」

ドラゴン「儂がか?」

奴隷「ああ、女神の加護だか知らんが、どいつもこいつも期待するだけ期待して…」

ドラゴン「くっくっくっ…」

奴隷「勝手に失望して消えて……何笑ってんだ?」

ドラゴン「くはっ!幾百万を超える歳月を生きた儂が新参ぺてん師のおちからを期待していると言うか?」

奴隷「どういう意味だ?」

ドラゴン「くだらんという事だ。儂も神とは縁があるが拝む価値なしだ」

奴隷「…それじゃあ、なんで俺なんかに話しかけてきた?」

ドラゴン「それは…


衛兵「全員、静まれ!!」
 
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/20(水) 23:31:57.04 ID:PP+Zd6eA0

ドラゴン「ん?」

衛兵「静まれ!静まれ!!」

衛兵「おそれ多くも魔王様がご息女、姫様が貴様らに治癒魔法をかけてくださる」

衛兵「傷ついた者は軽微にかかわらず名乗り出よ!」

姫「よ、よろしくお願いいたします…」

「姫さま…」
「ありがとうございます」
「お腹さわって…」
「はあはあ、なでなでして…」


ドラゴン「ふむ、列に並ばんのか?」

奴隷「すぅ…すぅ…」

ドラゴン「おや?」
 
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/20(水) 23:37:08.85 ID:PP+Zd6eA0

ドラゴン「さっきまで起きておったがどうした?」

奴隷「す〜〜す〜〜」

ドラゴン「ふむ、急な昏睡状態はいかんな。もしや強く殴りすぎたか…」

奴隷「す〜」

ドラゴン「それとも、可愛い姫の前に出るのは照れるのか?」

奴隷「!!」

奴隷「げふっ!げふっ!ごほっ!げふっ!」

ドラゴン「ふ〜〜〜ん」ニヤ----リ

「姫さま〜」
「ぼくも」「わたしにも…」

姫「あ、あの…、ちゃんと全員治療しますからおとなしくしてくださいね」

ドラゴン「ふむふむ、このタイミングで眠るとは残念だ。あの魔王の娘とは信じられぬ、可憐な姫君だというのに」

奴隷「ぐ〜!ぐ〜!」

ドラゴン「それに見ろ、あの細く美しいくびれから下に続くなめらかな曲線…」

奴隷「ぐ〜」

ドラゴン「まさに男を虜にする造形美よ!」

奴隷「ぐ〜…」

奴隷「」チラッ

ドラゴン「気が合うな、勇者も尻派か?」

奴隷「ぅぁ.....」

ドラゴン「くっくっくっ」ニヤニヤ
 
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/20(水) 23:46:08.37 ID:PP+Zd6eA0

姫「あ、あの…」

ドラゴン「おおっ♪」

姫「よろしければ、治療しましょうか?」

ドラゴン「どうぞどうぞ♪」グイッ

奴隷「ぐ〜」フルフル

姫「それとも…ご迷惑でした?」

奴隷「ぐ〜」コクコク

ドラゴン「とんでもない!」ガシッ!

奴隷「ぐっ!」ボキッ

ドラゴン「繁殖期のオスが同世代のメスに話しかけられて迷惑などとあるはずがありましょうか?」

ドラゴン「彼の態度はお気になさらず、求愛用の巣を黄金で飾り付けできなくて照れておるのです」

奴隷「」

姫「は、はぁ…」

衛兵「姫様、お待ちを、この者はよいのです」

ドラゴン「ああん?」

姫「え?ですが、先ほどの試合では目を背けたくなるような大怪我をおっていたではありませんか」

ドラゴン「そうだそうだ〜!」

衛兵「姫様もこいつが誰かご存知のはず、本来はお父上に仇なす勇者なのです」

姫「でもね、折れた腕はきちんと治療しないと癖になってしまうし。潰された衝撃で内出血してるかもしれないでしょう?」

衛兵「だから何だと言うんです? 野垂れ死のうが関係ありません」

ドラゴン「黙れ小僧!! 貴様には姫様の慈愛に満ちたお心がわからぬか!!」


衛兵「おまえがやったんだろうが!!」

ドラゴン「それを言ったら…」ガクッ
 
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/20(水) 23:51:30.93 ID:PP+Zd6eA0

ドラゴン「儂がどんなに強く、賢く、生命体として高位の存在だとしても、闘技場奴隷である以上命じられたら戦うしかないのです」シクシク

姫「ええ、つらいですよね」

ドラゴン「はい、竜とは本来は温厚で嘘を嫌う心優しき生物、誰も傷つけたくなどないのです…」

姫「それなのに父に無理矢理連れてこられて恨んでますよね」

ドラゴン「よいのです、姫様には命を助けていただき感謝しております」

ドラゴン「ですが儂で最後の一頭、死ねばこの世に何も残せぬ身にして。この少年が、何故か死んだ息子と重なってしまうのです」

姫「まあ!!」

ドラゴン「というわけで、思春期の若者が気になる異性の接近で慌てふためく様子を笑い、からかい、面白がる」

ドラゴン「などと、そんなことは全くなく、純粋な気持ちで心配しておるのです」

姫「まかせてください!」

衛兵「騙されてますよ!!」
 
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/20(水) 23:56:36.02 ID:PP+Zd6eA0

衛兵「そろそろ部屋にお戻りになりませんと。魔王様より許された時間を過ぎてしまいます」

姫「衛兵、控えなさい」

衛兵「姫さま?」

姫「あなたはドラゴンさんがどんなにこの方を心配しているかわからないのですか?」

衛兵「はい」

姫「え?ほんとにわかりませんか?でも…」

衛兵「…ですが、姫様が一度言い出したら聞かないのも知ってますから手短にしてください」

姫「……衛兵さん、ありがとう」

姫「それでは、はじめましょう!」

ドラゴン「はい!ベッタベッタ触って治療しましょう」グイッ

奴隷(いや!ダメだって!)

姫「は〜い、じっとしててくださいね〜♪」

奴隷(物心つくぐらいに誘拐されて。これが女子との初接触なんです)

姫「・・・・」す〜

奴隷(近い!ヤバい!ニオイとか!もろもろヤバい!)

姫「ん…」ピトッ

ぽうっ

奴隷()ビクン!ビクン!
 
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/20(水) 23:59:31.66 ID:PP+Zd6eA0

【30分後】

姫「思っていたより体内の損傷が蓄積して残ってましたね」

奴隷「」グッタリ

姫「あとは何か栄養のあるものが…」

ドラゴン「レタスがあります!」

ドラゴン「だがレタスは嫌いなようでな、姫様からも食べるよう言ってもらえませんか」

姫「ふふ、好き嫌いしちゃダメですよ」

奴隷「・・・・」

姫「じ〜〜〜」

奴隷「……わかりました」

姫「ふふ、約束ですからね?」

ドラゴン「くっくっくっ」ニヤニヤ

衛兵「…姫様」

姫「は〜い、それではお大事に」

ドラゴン「はは〜!姫様の恩情はこのドラゴン、いつか必ずお返しいたします」ドゲザ

衛兵「・・・・」

ドラゴン「?」
 
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/21(木) 00:06:28.10 ID:D1ozbiZA0

ドラゴン「いつまで寝たフリしておる?もうとっくに行ったぞ」

奴隷「ぷはっ!!」

ドラゴン「息まで止めておったのか?情けない」

奴隷「お前ほんとなんなんだ!」

ドラゴン「子供にはわからぬだろうが、恋に恋する少年少女の背中を押してやるのが大人の義務というものなのだ」

奴隷「わけわからん!」

ドラゴン「まあ、今日のように情けない負け方してるようでは話にならんがな」

ドラゴン「もっと格好いいところを見せねば」

奴隷「戦うなと言われ続けて来たのに、格好つけかたなんかわかんねえよ!」

ドラゴン「儂でよければ教えてやろうか?」

奴隷「…聞けば強くなれるか?」

ドラゴン「何事もやってみなければわからんさ」

奴隷「そうだな…」

ドラゴン「どうやら負けん気は残っておるようだな」

ドラゴン「ならば自己紹介といこう。最古にて最強、そして最後のエンシェントエルダードラゴン」

ドラゴン「まあ、ドラゴンでいい」

奴隷「…奴隷。ただの、奴隷」

ドラゴン「よろしく、ただの奴隷」アクシュ

奴隷「…ほんとに強くしてくれるんだろうな?」

ドラゴン「勿論。竜の心臓にかけて、望むなら魔王にだってしてやろう」
 
14 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2017/12/21(木) 00:09:18.12 ID:D1ozbiZA0
今日はここまでです

こんな感じで勇者の下剋上風魔王堕ちを目指していこうと思ってます
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/21(木) 02:14:34.67 ID:rzPk9847O
ドラゴンさん調子良いなww
映画は名作だよね
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/21(木) 09:26:12.04 ID:wHYhHIY9O

楽しみにしてる
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/21(木) 10:26:06.78 ID:p0gOjEJdo
ドラゴンハートdvd持ってる!楽しみ!
18 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2017/12/21(木) 22:08:12.20 ID:D1ozbiZA0
乙ありがとうございます。更新します

映画俺も好きです
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/21(木) 22:13:14.64 ID:D1ozbiZA0

【翌日 魔界闘技場】

道化「レディースあ〜んど、ジェントルメン!!」

道化「さあ、始まりましたるは勇者様の殺戮ショー」

道化「まぁ、ぶっちゃけ前座なんですが」

奴隷「・・・・」

キュイィィィン!!

奴隷「痛っ…」

『お…い……』

奴隷「頭が、痛い…」

ドラゴン『何を呆けておる?』

奴隷「え?」

ドラゴン『さあ、始まるぞ、準備はいいな?』

奴隷「え?は?なにこれ?」

ドラゴン『どうした!何か問題発生か!』

奴隷「頭ん中でおまえの声がすることだよ!!」

ドラゴン『ま、気にするな』

奴隷「気にするわ!!」

奴隷「え?呪い?病気的な何か?」

ドラゴン『すぐに分かるから前を見ろ。対戦相手が出てくるぞ』

道化「今宵の玩具は魔王様が御自ら作り上げた特注品」

道化「気性の荒いトロルを厳選し、瘴気をふんだんに吸い込ませてより巨大に!より狂暴に進化した!」

道化「ボストロルの登場だ!!」

ボストロル「ゴオオォォォ!!!」ガシャン!
 
20 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/21(木) 22:18:39.28 ID:D1ozbiZA0

ボストロル「フゴッ!フゴッ!」ガシャン!ガシャン!

道化「さあ、この鎖が切れた時!血に飢えた妖魔が今宵も勇者を血祭りに上げる」

ドラゴン『ふむ、さてどう戦ったものか』

観客「いいぞ〜!勇者をぶっ殺せ!」
観客「今日もぶざまに死にな!」

ドラゴン『殺すと一口に言っても色々ある。あの巨躯だ、捕まったら一握りで圧死』

奴隷「おい」

ドラゴン『地面に叩きつけて、引き裂かれて、散々殴られて…』

奴隷「おい!」

ドラゴン『くっくっくっ…、まあ、なんだろうと即死だな』

観客「ま…

奴隷「もう黙ってろ!!」


シーーン


奴隷「あれ?」

観客「だ、黙ってろとは何様だ!」

観客「そうだ!さっさと殺されてしまえ!」
観客「死ーね」「死ーね」「死ーね」


ドラゴン『よく言った。ああいう手合いにはガツンと言ってやらんとな』

奴隷「今のわざとだな?」

ドラゴン『心外な、儂がそんな狡猾なドラゴン見えるか?』

奴隷「今までのなかで一番、狡猾に見える」

ドラゴン『だろ?つまり儂にまかせとけば勝てるってことだ』

ボストロル「フッゴ!」ギリギリ

ブツン!

ドラゴン『くるぞ!捕まるなよ』
 
21 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/21(木) 22:24:15.72 ID:D1ozbiZA0

奴隷「くそっ、簡単に言いやがって!」タッ


ドゴッ!


奴隷「あ…れ?」

ボストロル「ふご?」ポカーン

奴隷「…今の衝撃は?」

ドラゴン『おい、大丈夫か?』

奴隷「…殴られたのか?」

ドラゴン『いや、違うな』

奴隷「でも、なんで俺、壁に埋もれてんだ?」

ドラゴン『自分で後ろに下がっただろ?』

奴隷「下がったけどさ…、なんでボストロルがあんなに遠くにいるんだ?」

ボストロル「フガァァ!!」ドスドス

奴隷「とりあえず壁から出ないと!」グググ

ドラゴン『あ、待て!そんな力の調整も出来ぬうちに全力出せば…』

すぽーん

奴隷「うおぉぉぉ!!」

ひゅ〜〜ん…

奴隷「飛んだ!」

ドラゴン『正確には跳んだ≠セ』

ドラゴン『だから落ちる』

奴隷「へ?」

ベチョ!

奴隷「ぐふっ!」

ドラゴン『もっと地に足つけろ!筋肉を意識的に動かせ!』

ドラゴン『そんな有り様ではせっかく分け与えた儂の魔力が無駄になる』

奴隷「ちょっと待て!今の儂の魔力ってなんだ!」

ドラゴン『儂の魔力は儂の魔力だ』

ドラゴン『昨日の食事に竜の魔力≠混ぜといた』
 
22 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/21(木) 22:26:37.28 ID:D1ozbiZA0



ドラゴン『つまり、竜の眷族になったのだ』


 
23 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/21(木) 22:28:57.39 ID:D1ozbiZA0

奴隷「け…けんぞく?」

ドラゴン『呆ける時間はないぞ!前を見ろ!』

奴隷「はっ!」

ボストロル「グオオォ!!」

ブオン!

奴隷「くっ」タッ

ドゴン!

奴隷「・・・・」パラパラパラ

ドラゴン『動くたびに壁に埋まる気か?いい加減馴れろ!』

奴隷「状況整理もままならないのに無理言うな…」パラパラ

ボストロル「フッゴッ!」ドスドスドス

奴隷「あれ?」ググッ

ドラゴン『どうした?さっさと逃げろ』

奴隷「抜けない…」グググ

ボストロル「フガァァ!!」

ブオン!


ドラゴン『もう間に合わん!腕を交差して防げ!』

奴隷「くっ!」サッ


ガキーン!


ボストロル「うが?」

奴隷「痛くない?」

ドラゴン『腕に生えた鱗が身を守ったからな』

奴隷「もうなんでもありだな…」

ボストロル「グガアアァァァ!!!」


ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!

奴隷「があ!」

ドラゴン『奴め、攻撃がきかんことにプライドを傷つけられたのか?がむしゃらに殴ってきおったわ』

奴隷「落ちついてないでなんとかしろ!」


ドラゴン『ならば深呼吸しろ』
 
24 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/21(木) 22:32:03.55 ID:D1ozbiZA0

奴隷「はあ!?」

ドラゴン『深呼吸だ』

奴隷「おまえ、ふざけ…」

ボストロル「グッガ…」

グッグッグッ…

ボストロル「グガアアァァァ!!!」

ブオン!


ガキーーン!!


奴隷「ぐっ…」ミシミシミシ

ドラゴン『攻撃きかずともそのままでは生き埋めだぞ?』

奴隷「だから…」

ドラゴン『だからこそ深呼吸だ!!』

奴隷「・・・・」スゥ

ドラゴン『まだまだもっと!』

奴隷「」スゥゥ

ドラゴン『恥や外聞は捨てろ』

奴隷「」フォォォ!

ドラゴン『まだだ!胸に溜めた空気を燃焼させるイメージで更に空気を取り込んでいけ!』

奴隷「」コオォォォォ

ドラゴン『ならば共に叫ぼう!』

ドラゴン『ドラゴンブレス!!』


奴隷「」カッ!


ゴオォォォ!


ボストロル「うが?」


チュドォォォォン!!!


ボストロル「グワアァァァ!!」
 
25 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/21(木) 22:33:44.77 ID:D1ozbiZA0

ボストロル「」フラフラ

ボストロル「」ドサッ

奴隷「」

道化「」

観客「」


シーーン…



ドラゴン『よし!』グッ!


奴隷「『よし!』じゃねえよ!!」
 
26 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/21(木) 22:38:12.34 ID:D1ozbiZA0

奴隷「なんか出た!なんか、口から、火の玉が!出たぞ!!」

ドラゴン『これぞ、必殺の竜の息吹《ドラゴンブレス》だ』

奴隷「ぺっぺっ、口の中が焦げ臭い…」

ドラゴン『下手だからな、始めてなら仕方ないが数をこなせば上達しよう』

奴隷「…今何処にいる?」

ドラゴン『ずっと後ろにいたぞ』
ドラゴン「ずっと後ろにいたぞ」

奴隷「そうか…。ところで、こうか?」コォォ

ドラゴン「違う違う、もっと息を丸める感じだ」

奴隷「こう?」コォォォォ

ドラゴン「だいぶ良くなった。儂の息吹は火球だからな、その形を作るように心がければ良い」

奴隷「そう…」コォォォォォォォォ!!

ドラゴン「それだ!そして叫ぶのも忘れるな」

ドラゴン「意外と軽視されがちだが儂は叫ぶことで簡単に身体のリミッターが解除できる説を侮ってはいかんと思うておる」

奴隷「わかった、やってみる」

奴隷「ドラゴンブレス!」カッ!




ドラゴン「oh」


チュドォォォォン!!!

 
27 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2017/12/21(木) 22:40:56.12 ID:D1ozbiZA0
今日はここまでです

書き溜めなくなったし筆遅いけど出来るだけ早く更新したいです
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/22(金) 01:22:10.27 ID:mYgzFGvwO

少年とドラゴンはいいものだ
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/22(金) 08:23:58.03 ID:QAa1pU/KO
やったねドラゴン友達がふえたよ
30 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/22(金) 22:16:25.73 ID:Up1ZoiTA0

ドラゴン「」メラメラ

奴隷「確かに、叫んだ方が威力上がった気がするな」

ドラゴン『くっくっくっ…、まだまだ甘いな』

奴隷「なに!?」

ドラゴン『あれは魔力で作った分身だ』

ドラゴン「」ドロッ

奴隷「何処にいる!!」

ドラゴン『くっくっくっ…』

ドラゴン『はぁ〜はっはっはぁ〜!儂は昨日と同じ場所にいる!』

ドラゴン『心の準備が出来たらはやく来い』

奴隷「上等だ!聞きたいことが山ほどある」

道化「you win !」

奴隷「あ…」

道化「いや〜びっくりしたよ、驚いたよ♪」

道化「壁まで一瞬で移動するかと思ったら飛んだり跳ねたり」

道化「あれ、鱗生えてたよね?」

道化「おまけに最後は口から火の玉…」

道化「ねえねえ、君と僕との仲だろ?ちょ〜っと教えてほしいな〜♪」

奴隷「・・・・」

奴隷(ガツンと言ってやらねば、か…)

奴隷「」スウ

奴隷「惨めな姿が見れなくて、残念だったな」

道化「なっ!?」

奴隷「じゃあな」タッ
 
31 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/22(金) 22:19:59.64 ID:Up1ZoiTA0

奴隷「言ってしまった…」

タッタッタッ

奴隷「いや、今までの事を思えばあれぐらい当然だよな?」

ピタッ

奴隷「影響受けてる気がする…」


奴隷「・・・・」

奴隷(ま、まあ、悪い奴ではないよな?)

奴隷(魔力だっておかげで体が軽いし)ピョンピョン

奴隷「試してみるか…」

奴隷「走って」タッタッタッ

奴隷「壁走り」ダダダダダ

奴隷「そのまま天井走り」シュババババ

奴隷「天井蹴って床に着地」シュタッ

奴隷「・・・・ふふっ」

奴隷(ふぉぉ〜!ちょう楽し〜〜いぃ!!)

奴隷(はっ!これもしかして空飛べんじゃない!?)

奴隷(あ、ありえる…、鱗生えるぐらいなら羽根も生えるでしょ)

奴隷(どうする?ドラゴンに聞けば…)

奴隷(いやいや、ないない…、文句言って結局喜んでるとか思われたらシャクだし)

奴隷「そう!これは実験!!」

奴隷「自分の、体の異変を確認するのは、とても大切!」

奴隷「すぅ〜はぁ〜〜」

奴隷「いくぞ!」カッ!

ドラゴン「あ、おりましたぞ」

姫「奴隷さん」


奴隷「とりゃあぁぁぁ!!!」バッ!


 
32 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/22(金) 22:22:57.80 ID:Up1ZoiTA0

奴隷「とりやあぁ……」

ドラゴン「・・・・」

姫「・・・・」

ドラゴン「…空は飛べんぞ」

奴隷「と、鳥や…草木が、生い茂り……」

姫「あ、あの…初勝利おめでとうございます……」

姫「その…ドラゴンさんが直接伝えたら喜んでくれるって」

姫「えっと、それから……」

姫「何も見てませんから!!」

奴隷「ぐ〜」

ドラゴン「寝たふりするな」
 
33 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/22(金) 22:25:56.64 ID:Up1ZoiTA0

ドラゴン「いやいや姫、これは儂が悪いのです」

奴隷「やめろ」

ドラゴン「説明もなく、あまりに一方的な魔力の譲渡」

奴隷「やめて」

ドラゴン「渡されたら使いたくなるは道理、つまり彼がとりゃあぁなどと 「ぷふっ!」

ドラゴン「?」

姫「つ、続けてください」

ドラゴン「彼がとりゃあぁと 「ぷぷ!」

ドラゴン「・・・・」

姫「なにか?」


ドラゴン「とりゃあぁぁぁ〜〜〜〜!!!!」バッ


姫「ぷっはぁ〜〜〜♪」

姫「うっふっふっふ」

姫「あっはっはっは」

姫「ひぃひぃひぃひぃ………」

奴隷「」

姫「はぁはぁ…わ、わたし、急用を思い出したので…これで失礼します」

タッタッタッタッ

ドラゴン「とりゃあぁぁぁ〜〜〜!!!」

プッハァ-

奴隷「」

ドラゴン「よし、一歩進展したな」

奴隷「黙れ」
 
34 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2017/12/22(金) 22:27:39.63 ID:Up1ZoiTA0
今日はここまでです
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/22(金) 23:05:25.07 ID:bD8F8fjJO

ドラゴンさんとお姫様が仲良しで何よりです
36 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/29(金) 00:17:39.98 ID:988hXKVA0

ドラゴン「くっくっくっ…、そうむくれるな」

奴隷「うっさい」

ドラゴン「恋愛とは良い面ばかり見せてもいかんのだ、悪い面を見ても呑み込む度量がなければ長続きしないぞ」

奴隷「知るか!」

ゴブリン「おう、サンキュー」ポン

奴隷「?」

オーガ「ありが、と」

奴隷「なんだ?」

妖魔A「お、来たな」
妖魔B「はやく来いよ」
妖魔C「こっちだこっち」

奴隷「??」

闘士A「もう先食べてるぞ」
闘士B「食い溜めてるぞ」
闘士C「食べ終わったぞ」

奴隷「食べてる?」

コボルトA「みんな〜肉追加持って来た〜♪」

コボルトB「まだまだ報償金はヨユ―あるよ〜♪」

コボルトC「全部、奴隷のおごりだよ〜♪」


一同「「「ごちんなります!!」」」


奴隷「ちょっと待てーー!!」
 
37 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/29(金) 00:22:14.82 ID:988hXKVA0

奴隷「俺のおごりってどういうことだよ!」

ドラゴン「報償金は勝者の総取り、勇者が勝ってもちゃんと払われる」

ドラゴン「ひとりで使いきるには多い額だ」

奴隷「だからって、何でこんな奴らに!!」

ドラゴン「ふん」ベチッ

奴隷「痛っ」

ドラゴン「ま〜だ、おまえはそんな事言って」

ドラゴン「隅で背中丸めていじけておって、彼等の何を知ったつもりになっておる?」

ドラゴン「おい、ゴブリン!」

ゴブリン「俺か?」

ドラゴン「そうだ。おまえは何故、ここにいる?」

ゴブリン「ん〜…、弟とふたり、家の近くで遊んでたら瘴気浴びちまってさ」

ゴブリン「んで、気がついたらこんな姿よ」

ドラゴン「ところで、妖魔の大多数が瘴気を浴びて変異した元人間だが…、知っておったか??」

奴隷「……いや」

ゴブリン「んで、家追い出されてブラブラしてるとこを妖魔狩りに捕まってここに連れて来られたワケ」

ゴブリン「ちなみに、こいつが8才になる俺の弟」

オーガ「肉うまうま」ガブガブ
 
38 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/29(金) 00:24:16.40 ID:988hXKVA0

ドラゴン「コボルト」

コボルトA「わんわん!俺たち、城産まれ」

コボルトB「俺たち、城の地下で産まれる」

コボルトC「俺たちの母ちゃんは普通の犬」

コボルトD「母ちゃんが産んだら、瘴気を吸わせて妖魔にする」

コボルトE「それが、俺たち」

ドラゴン「他も様々な理由だが、望んでここにいる者はひとりもおらぬ…」

ドラゴン「そこは勇者と同じだろ?」

奴隷「だからなんだって!?仲間だから恵んでやれと?」

ドラゴン「はっはっはぁ〜、それもいいな」

ドラゴン「戦士の代わりに妖魔パーティー引き連れて、魔王と戦うわけだ」

奴隷「バッカじゃねえの?」

ドラゴン「それはともかく、タダでくれてやるのではない。ちゃんと見返りは払ってくれるぞ」


「ほう、それは興味深い」
 
39 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/29(金) 00:25:27.50 ID:988hXKVA0



魔王「見返りが何なのか、余にも教えてくれ」


 
40 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/29(金) 00:32:15.88 ID:988hXKVA0

ドラゴン「ぬあ!魔王!」

魔王「ふっ」

ザシュ!

ドラゴン「ぐあぁ」

奴隷「ドラゴグッ!」

魔王「何を吹き込まれたか知らんが…」グググッ

奴隷「くっ…かっ…」

魔王「はっきり言うが、貴様程度脅威でも何でもない。殺そうと思えばいつでも殺せる」

魔王「生かしておいたのは滑稽な姿を民に見せ、余に逆らおうなどと馬鹿が考えぬようにだ!」ギリッ

奴隷「ぐっ……」

魔王「それを目先の勝利に浮かれ、自らの役割を忘れるならば用はない!」

魔王「この場で殺してやろうか!!」

ゴブリン「何も殺すこたあ…」

ザシュ!

ゴブリン「え?」

魔王「下等妖魔の意見など聞いてない」

ゴブリン「」ドサッ

オーガ「兄ちゃん!」

ゴブリン「ダメだ…来るな……」

魔王「…可哀想に、後を追わせてやろう」

ザシュ!

 
41 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/29(金) 00:35:20.23 ID:988hXKVA0

奴隷「はぁ…はぁ…」

魔王「・・・・」ポタッポタッ

奴隷「…これは?」

魔王「今度は爪が生えたか…」ペロッ


魔王「氷結魔法」

奴隷「うわあぁぁ!!」パキパキパキ

魔王「どうだ? 自力で砕かねば、そのまま氷に埋もれて死ぬことになるぞ?」

奴隷「ぐぅ…、くそ!」ガチガチガチ

魔王「氷像と化し、身の程を知れ。貴様は所詮その程度なのだ」

奴隷「ドラ…ゴ…ン……」カチカチ



ドラゴン「ぐおおぉぉぉ!!!」

ガシャーーーン!

魔王「何っ!」

ドゴッ!

魔王「ぐふぅ!」

ドラゴン「ぬぅん、りゃあぁぁ!」ブン!

ドゴン!ガシャン!ドガァン!ゴロゴロ!

魔王「くう…」ザザー

ドラゴン「ふぅ〜」

ドラゴン「ま、この程度よ」ニィッ
 
42 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/29(金) 00:38:03.85 ID:988hXKVA0

魔王「やはり、あの場あの時に殺しておくべきだったか!」

魔王「ドラゴン!」

ドラゴン「おい、大丈夫か?」

奴隷「げほっ!ごほっ!…ゴブリンは?」

ゴブリン「はぁ…はぁ…」

ドラゴン「いかん、はやく姫を呼んで来い」

オーガ「わかった!」ダッ


魔王「今度は姫がなんと言おうと貴様を殺す!!」

ドラゴン「くっくっくっ…、やるなら早くやろう」

ドラゴン「娘に無様な格好を見せたくないだろ?」

魔王「無様な姿を見せるのは貴様だ!」

ドラゴン「ふん!」バッ!

魔王「出でよ、魔杖!」

ガキン!

魔王「やるな!」

ガキン!ガキン!

ドラゴン「魔王もな!」

ガキーン!

魔王「吹雪!」

ブュオォォ!

ドラゴン「効かん!」

魔王「馬鹿な!」

ドゴッ!

魔王「くっ…」

ドラゴン「どうした?攻撃が効かず動揺したか?」

魔王「氷壁結界!」

ドラゴン「くっくっくっ…」

ザシュ!

ドラゴン「良い事教えてやろう。氷は熱で溶ける」

ジュウゥゥ……

 
43 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/29(金) 00:39:52.13 ID:988hXKVA0

魔王「魔力で体内の熱量を高めて氷を溶かしたか」

魔王「膨大な魔力とそれに耐えうる強靭な肉体をあわせ持った竜族だからこそ出来る力業だな」

ドラゴン「そんな分析している余裕があるのか?」

ダン!

魔王「無論、余裕とは圧倒的な実力差から生まれるのだ」


魔王「凍てつく波動!」


ゴオォォォ!!


ドラゴン「ぐおぉっ!!」

フッ

ドラゴン「熱がかき消された!」

魔王「吹雪」

ザシュザシュザシュ!

ドラゴン「ぐわあぁぁぁ!!」

魔王「さあ、今一度不様に命乞いをしろ!」
 
44 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/29(金) 00:44:36.75 ID:988hXKVA0

ドラゴン「命乞いなど、誰がした!」グオッ!

ガキン!

魔王「ほう、下級魔法では耐えるか…。やはり頑丈だな」

ドラゴン「腕がなまったんじゃないか?」ニヤッ

魔王「大口は最上級魔法を浴びてから言え」

魔王「氷壁結界」

ドラゴン「そんな暇など…与えるか!!」

バキャッ!

魔王「残念だが、貴様の弱点は熟知している」

ドラゴン「言ってろ!」

バッ!

衛兵「…これはいったい?」

姫「父様?」

魔王「来たか」グイッ

姫「きゃあ!」ヨロッ

ドラゴン「ぬぉ、いかん!姫にあたる!?」

ピタッ…

魔王「まったく、その甘さには驚嘆する」

魔王「最上級氷結魔法」

ビュウゥゥゥ

ドラゴン「しまった!」ガチガチガチ

姫「ドラゴンさん!」

ドラゴン「儂は大丈夫です、姫はゴブリンを!」パキッペキッ..

魔王「世にも珍しい、竜の氷像は王の間に飾ってやろう」

ドラゴン「ぬぅ…」パキッパキッ

ドラゴン「」カチーン





ドラゴン『狙う相手を間違えるなよ』


奴隷「ああ、よく溶けるよう全力でいく」コオォォォ!


奴隷「ドラゴンブレス!!」カッ!


ドラゴン「」



チュドォォォン!!
 
45 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2017/12/29(金) 00:48:39.58 ID:988hXKVA0

ドラゴン「」メラメラ

ドラゴン「」プスプス

ドラゴン「」

奴隷「そんな…」

魔王「作戦は悪くなかった」

ドゴッ!

奴隷「がはっ!」

魔王「ただ、氷を溶かすには少しばかり火力が不足していた」

奴隷「もう一度!」コオォォォ!

魔王「氷結魔法」

奴隷「ゴォ!」パキパキッ

魔王「自分が勇者であると忘れられぬ哀れな奴隷よ」

魔王「未だ勇者の夢を見るなら、魔王として目を冷ましてやろう!」

奴隷「勇者だなんて、思って…な……い……」パキパキパキッ

奴隷「」





魔王「…そこを退け」

姫「嫌です!」
 
46 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2017/12/29(金) 00:56:47.24 ID:988hXKVA0
今日はここまでです

魔王無双は書いてて楽しいです
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/29(金) 05:37:08.08 ID:l9KXNiwg0
乙!
魔王と同等のドラゴンさん凄え!
48 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/01(月) 21:25:35.94 ID:r1XfLrOA0

魔王「もう一度だけ言おう…」

魔王「魔王としての命令だ、そこを退け」


姫「嫌です」


魔王「そうか…」

魔王「警告はしたぞ」バチバチ

姫「父様…」

衛兵「ままま、魔王さま、お待ちを!」バッ!

姫「衛兵さん!?」

衛兵「わ、わた、わたしの任務は姫の護衛…も、もし、姫に何か危害を加える者がいるなら…」

衛兵「私が守ります!」

ベシーン!

衛兵「おうっふ!」

ゴブリン「ほっそい体だな、そんなんで魔王の攻撃喰らったら死んじまうぜ!」

衛兵「げほっごほっ…なにをする?」

オーガ「兄ちゃん、死んでない」

ゴブリン「おうよ、つまり盾になるなら俺が適任ってことよ!」

コボルトA「グルル!」

コボルトB「わん!わん!わん!」

妖魔「先越されたな」

闘士「ま、頭数は多いほうが良いわな」

ぞろぞろ…

魔王「貴様ら全員、何のつもりだ?」

ゴブリン「へ、甘く見たな魔王様。ここには姫様に命を救われた奴らがごまんといるんだぜ!」

オーガ「兄ちゃんは、特に多い」

ゴブリン「だからよ、魔王様」

ゴブリン「姫様に手え出すってんなら、ここにいる奴等全員が相手んなるぜ!」
 
49 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/02(火) 00:44:08.77 ID:2UGElP/A0

妖魔A「ゴブリンが代表面してんのは気に食わねえが」ジャキ!

妖魔B「姫の為だ」

闘士A「右に同じ」ガチャ!

姫「いけません、皆さんが束になっても父には敵わないでしょう」

ゴブリン「そんじゃあ俺らが時間稼ぎますんで、姫はその間ドラゴンの旦那を氷から溶かすってのは?」

姫「無理です…」

衛兵「簡単に言ってくれるが魔王様の氷結魔法だぞ? 溶かすには膨大な魔力か深い魔術知識が必要なんだ」

ゴブリン「やべえ、打つ手ねえじゃん」

魔王「ふふふ、今ごろ気づいたか」

闘士A「焦んな!この人数で囲めばなんとかなんだろ」

闘士B「俺らには闘技場で戦い続けた経験値がある」

魔王「そんな脅しで、余が躊躇うと思ったか?」グオォォ!!!


ゴブリン「あ、駄目かもしんねえ」

オーガ「兄ちゃん!?」
 
50 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/02(火) 00:46:45.12 ID:2UGElP/A0

魔王「全員まとめて氷漬けにしてやる! 」

魔王「最上級ひょっ
道化「膝カックン」


魔王「ぬぉ!?」カックン!

道化「か〜ら〜の〜、鎖拘束魔法」


ジャラジャラジャラジャラジャラジャラ

ガッシャン!


魔王「道化、貴様…」

道化「睨まないでよ、魔王様」

道化「無理をすれば余計こんがらがっちゃいますよ?」

道化「鎖も、子供もね」
 
51 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/02(火) 00:50:29.00 ID:2UGElP/A0

魔王「闘技場はどうした?」

道化「とっくにメインまで終わりましたが…。いやはや参った参った」

道化「メインまで全然盛り上がらないんだもの。こんなの初めてですよ」

魔王「それで? 何の用でこの場に現れた」

道化「だって、み〜んな前座の勇者様を注目してるんだもん」

道化「噂になってますよ? 奴隷に堕ちた勇者がついに使命に目覚めた…、ってね」

魔王「だからこそ、こうして芽のうちに摘もうとしているのだ!」

道化「まったまた!魔王様は噂の怖さをご存じない」

道化「火のないところに煙はたたぬ。たった噂は七十五日も続きますよ?」

魔王「回りくどいな、何が言いたい?」

道化「メインイベント♪」

道化「生かすも殺すも客呼んで、衆人環視の場でつけまっしょう♪」
 
52 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/02(火) 00:54:13.00 ID:2UGElP/A0

魔王「ふん、良いだろう。処分は明日のメインまでいったん保留とする」

道化「流石は魔王様。ほらほら、勇者様もお礼言って」

道化「火炎魔法」ボボボ

奴隷「うっ」ガクッ

道化「ほらね、勇者様も頭を垂れて感謝してますよ」

魔王「帰るぞ」

道化「は〜〜い♪」

奴隷「くそ、ドラゴン無事か?」

ドラゴン「・・・・」

奴隷「無事なわけないよな…」

奴隷「今出してやるよ」チャキ

ガキーン!

姫「…奴隷さん、無理です」

奴隷「くそ!くそ!」

ガキン!ガキン!

奴隷「くっそ!!」コオォォォ!!

奴隷「ドラゴンブレス!」カッ!

ドゴン!

ドラゴン「・・・・」

奴隷「くそ…やっぱり俺は、勝ったらダメだったんだ」

姫「奴隷さん…」


ドラゴン「」コオォォォ!!

奴隷「ドラゴン?」

ドラゴン「」ボフン!

奴隷「」ビクッ!

ドラゴン「」ジュウゥゥゥ〜〜

コボルトA「くんくんくん!肉の焼けたニオイがする」

コボルトB「わぉ?ほんとだ!」


ドラゴン「くっくっくっ…はぁ〜はっはっはぁ〜!」


ドラゴン「 復 活 !!」

ドラゴン「これぞ、氷河期を生き抜いた秘技《ドラゴンブレス体内撃ち》だ」ブスブス

ドラゴン「魔王の奴め、勝ちをゆずってやったのを気づかず得意げにしておった!」
 
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/03(水) 00:13:15.66 ID:InC/NuDe0
ドラゴンさん可愛い
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 15:44:22.07 ID:Zir6FnTA0
おつんこ
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/09(火) 10:47:02.42 ID:Nlp8TbvDO
続き!続き!
56 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/11(木) 23:25:01.17 ID:GYg+nuUA0

ドラゴン「くっ、あ〜〜〜〜! 身体がきしむ!」ノッビ---

ドラゴン「やはり変温動物に氷属性はキツいな。体温奪われると急に眠くなっていかん」

奴隷「ふ〜ん」

ドラゴン「何をむくれておる?」

奴隷「別に?ただもっと戦えたと思っただけ」

奴隷「ドラゴンブレスも使わずじまいだし、一撃必殺が聞いてあきれる!」

ドラゴン「そうは言うが不用意に室内でドラゴンブレスを放てば死人が出るしな」

ドラゴン「かといって威力を抑えるのも美学に反する」

奴隷「意味わからん」

ドラゴン「分かりやすく言えば無理な使用は喉を痛める≠セな」

奴隷「それなら分かる」

ドラゴン「機嫌はなおらんか?」

奴隷「…悔しくないのか?」

ドラゴン「くっくっくっ…」

奴隷「何だよ?」

ドラゴン「不思議と悔しいなどとこれっぽっちも思っとらん」

ドラゴン「何故かな?」

ドラゴン「代わりに悔しがってくれる者がいるからかな?」

奴隷「馬鹿じゃねえの…」
 
57 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/11(木) 23:31:28.11 ID:GYg+nuUA0

ドラゴン「馬鹿とはなんだ、馬鹿とは」

奴隷「馬鹿だろ、大馬鹿、馬鹿ドラゴン」

姫「ぷぷぷ」

衛兵「姫様、そろそろ戻りませんと」

姫「あ、そうでした! それでは失礼します」

ドラゴン「おお、姫様を巻き込んでしまいこのドラゴン…。返すべき御恩が増えてしまいました」

姫「恩だとか貸しだとか、気にしてませんよ」

ドラゴン「小僧もただの金魚の糞だと思っておったが、その身を盾にするとは見直したぞ」

衛兵「・・・・」

ドラゴン「ん?どうした?」

姫「あの…」

ゴブリン「あいつ女だぞ」

ドラゴン「!!??」

奴隷「いや、どう見ても女にしか見えないだろ」

オーガ「女だ」

コボルト「臭いでわかるぞ?」

ドラゴン「そうなのか?すまぬな、竜族から見れば人間の性別は分かりにくくてな」

衛兵「いや……」

ドラゴン「だから胸のふくらみで判断しておるのだ」

衛兵「なっ!?」

ドラゴン「だからせめて、せめてもう少し姫のように色気があればわかっただろうに…」

衛兵「殺す!我が家名にかけて、貴様に決闘を申し込む!!」

ドラゴン「は〜〜…、そうか、家系からくる遺伝か…」

衛兵「殺す!!」

姫「はいはい、行きますよ〜」ズルズル

衛兵「姫、放してください!これはプライドの問題なんです!」ズルズル

ドラゴン「また遊びに来てくだされ」パタパタ

衛兵「魔王様に頼み、試合の場を用意していただくから楽しみにしてろ!!」

ドラゴン「ほら、勇者も」パタパタ

奴隷「いや、俺は…」

ドラゴン「ほらほら♪」ガシッ

奴隷「・・・・」パタパタ

姫「ふふふ」ペコ

ドラゴン「くっくっくっ…」

べしーん

奴隷「ごふっ!」

奴隷「げほっ、ごほっ…何で背中叩いた?」

ドラゴン「すごいじゃないか、今日だけで二歩も前進した♪」

奴隷「はぁ!?」
 
58 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/11(木) 23:34:39.10 ID:GYg+nuUA0

ドラゴン「昨日までは恥ずかしくて姫の前に出ることも出来なかった子供が」

ドラゴン「たった1日で姫の側にいながら最後まで寝たふりなどせずに談笑に加わる」

ドラゴン「それを前進と言わずなんと言おう」

奴隷「」

ドラゴン「背中を押す身としても実に感慨深い」

ドラゴン「そうだ、明日勝ったら赤飯を炊こう」

奴隷「言ってろ」

奴隷「だいたい、寝たふりじゃない! 本当に寝てたんだ!」

ドラゴン「うんうん、わかったわかった」

奴隷「それに明日の試合は勝ち目ゼロの実質、処刑だ」

ドラゴン「ほう、気付いていたか。感心感心」

ドラゴン「だが明日を楽しみにしていろ、儂が必勝法を伝授してやる!」
 
59 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/11(木) 23:39:08.58 ID:GYg+nuUA0

【翌日 魔界闘技場】

道化「レディース、あ〜んど、ジェントルメン!!」

道化「奇跡の勝利から一夜明け、本日のメインイベント!」

観客「待ってました!!」
ワー ワー

道化「ありがとうございます! 本日、過去の入場者数を大幅に更新した 満 員 御 礼 !」

道化「大注目のあの人の前に、対戦相手から紹介だ!」

騎士「」チャキッ!

道化「魔王軍の精鋭のみで構成される親衛隊のニューカマー!」

道化「きーしーー!!」


騎士「」ドキドキ

観客「お前にかけたから負けんなよー!」

道化「そして、そして!」

ゴブリン「出番だぞ!」


道化「噂どおりの勇者か、はたまた奴隷か…」


道化「真価はこの試合の勝敗で判明する」


ドラゴン「行ってこい!」ドン!

奴隷「」ガシャン

E はがねのつるぎ
E はがねのたて
E はがねのよろい

奴隷「いっくぞ〜!」

ダン!

道化「あ、まだ口上の途中で!」

奴隷「知ったことかぁ〜!」

ガキィィン!!

 
60 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/11(木) 23:41:53.64 ID:GYg+nuUA0

騎士「ぐぉ…」

ギリギリギリギリ

騎士「馬鹿な、押されてる…」

奴隷「くっくっくっ…」

騎士「?」

奴隷「はぁ〜はっはっはぁ〜!」

奴隷「軽い!」

ガキィン!

騎士「ぐおぁ!」

奴隷「どうしたどうした〜!オーガの一撃はもっと重かった!」

ガッガッガッガッ!

騎士「昨日とまるで別人」

ドゴッ!

奴隷「ゴブリンの攻撃はもっと多彩だったぞ?」

騎士「ごぼっ」

奴隷「複数戦のイロハを教えるため、コボルトが集団で襲っで来るんだ…」


奴隷「ふ、ざ、け、る、な〜〜!!」

ガッガッガキィン!ドガッガキンッガスッ

騎士「」

奴隷「闘士からは得意な得物で入れ替わり立ち代わりで切り刻まれ!」

奴隷「妖魔にぶんまわされて経験値を稼げて良かっただと?」

奴隷「戦闘不能と判断したら、頭をつぶして強制蘇生できるから楽ってなんだ!!」ブワッ

道化「フビン…」

ドラゴン『感謝しろよ、協力を得るため大量の肉で買収したんだからな』

奴隷「それだって、俺の報償金持ちじゃねえか!!」

ドゴアッ!

騎士「げふ」

奴隷「立て〜!騎士!寝たら頭をつぶされるぞ!!」
 
61 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/11(木) 23:44:13.64 ID:GYg+nuUA0

奴隷「ぜはぁ〜、ぜひゅ〜」

騎士「」グッタリ

道化「あ〜、勝っちゃたか〜」

道化「勝っちゃいましたよ、魔王様!」


魔王「うむ、奴隷を勇者と認めよう」


魔王「そして勇者よ、さらばだ」


魔王「これより、勇者を我が野望の脅威となる前に処刑を行い、排除する!!」


魔王「親衛隊よ、総員をもって勇者を取り押さえ、我が前にひざまずかせろ!」


上級騎士×20「はっ!!」

ザザザザッ!

奴隷「ちっ!」


魔王「不死鳥のように復活する勇者よ、貴様を殺す手段は存在するのだ」
 
62 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/11(木) 23:46:31.85 ID:GYg+nuUA0

ドラゴン「うむ、やはりこうなるか」

バサッ!

ドスン!

奴隷「ドラゴン!」

魔王「やはり来たか!かまわん、奴も取り押さえろ!」

ドラゴン「なあ、まだ竜の美学はわからんままか?」

奴隷「今そんな悠長な時じゃねぇだろ!」

ドラゴン「竜の息吹は一撃必殺。ならば、美学それすなわち」コオォォォ!!!


ドラゴン「必ず殺せってことだ」


ドラゴン「ドラゴンブレス!!」カッ!

ゴオォォォォ!!!

上級騎士×20「」

ドッゴォォーーン!!!
 
63 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/11(木) 23:51:13.08 ID:GYg+nuUA0

奴隷「これが、本気のドラゴンブレス…」

観客「すげえ…」
観客「おい、これひょっとしたら」
観客「ひょっとするぞ」

魔王「くぅ、何をしておる増援を


ドラゴン「レディース、あ〜んど、ジェントルメン!!」バッ!

ドラゴン「この少年、勇者に選ばれるも未だ未熟!」

ドラゴン「その実力は奴隷に相応しく、勇者と呼ぶには分不相応」

ドラゴン「よって、勇者の証を立てるまでの猶予をいただきたい!」


ドラゴン「猶予は100日」

ドラゴン「行うは、前人未到の100戦100勝!!」

ドラゴン「100勝の禊《みそぎ》が済みし時こそ少年は、勇者を名乗り魔王を打倒するだろう!」

魔王「」ギリッ

ドラゴン「さあ、これから本番だ!!」
 
64 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/01/11(木) 23:53:17.89 ID:GYg+nuUA0
今日はここまでです

なんか書き直してたら遅くなって申し訳ない
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 02:25:42.19 ID:19itHCXDO

良いよ良いよ〜!
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 07:35:46.00 ID:By1hTihB0
やっぱりドラゴンさん強いw
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 22:49:29.95 ID:OuUwxaVbO

面白くなってきたな
68 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/19(金) 01:26:33.32 ID:c9RzZ07A0

観客「・・・・」

シーーン…

ドラゴン「どうした? ここはもっと盛り上がるところだが」

魔王「何を言うかと思えば…」

ふわっ

すたっ

魔王「ふざけるな! そのような戯れ言を余が聞き入れるとでも思ったか!!」

ドラゴン「ならば腕ずくで押し通すまで!」ブオン!

魔王「ふっ!」チャキ!

ガキーーン!!

魔王「奴隷の処刑は必ずおこなう!この決定は何が有ろうとくつがえらぬ!!」

ドラゴン「ならば早よう、処刑人を連れてこい!」コオォォォ

魔王「処刑は余が直々に執り行う」

魔王「最上級氷結魔法!」
ドラゴン「ドラゴンブレス!」カッ!

ゴオォォ!!!

魔王「やはり強い」

ドラゴン「貴様も魔界の王に相応しい力量よ」
 
69 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/19(金) 01:28:26.69 ID:c9RzZ07A0

【魔界闘技場 下層空間】

奴隷「ぼ〜」ナデナデ

コボルト「はっ、はっ、はっ、はっ」

奴隷「はぁ…」ワシャワシャ

コボルト「くぅ〜ん♪」ゴロゴロ

ゴブリン「おうおう、どした〜? そんなとこで黄昏て」

奴隷「思ったんだけどさ…」

ゴブリン「おう?」

奴隷「俺って、いる意味あるんかな?」

ゴブリン「気づいてしまったか…」
 
70 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/19(金) 01:30:10.55 ID:c9RzZ07A0

【魔界闘技場 上層部】

魔王「すでに噂が流れ、勇者に期待する声が出てきている!」ガッ

魔王「中には勇者を畏れ、余が秘密裏に始末するなどと不愉快な噂まで!」ガッ

ドラゴン「ほう、そんな噂まで耳にしたか」

ガッガッガッ!!!

魔王「だからこそ、こうして聴衆の前で勇者を処刑する必要がある!」

ブオン!

ドラゴン「けっこう、けっこう…」

パシッ

ドラゴン「その噂、儂が流した」

魔王「なに?」

ドラゴン「グオォッ!」

ドゴッ!

魔王「ぐふっ!」

ドシャー
 
71 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/19(金) 01:35:26.31 ID:c9RzZ07A0

ドラゴン「昨日、勇者が勝利したのを見届けた後。仲間と協力し、噂を流した」

ガッガッガッ!

魔王「うっ、何故そんな真似を?」

ドラゴン「判らぬか?すべては奴隷をメインイベントで勝利させ」

ガキン!

ドラゴン「魔王である貴様に勇者と認めさせるため!」

ズバッ!

魔王「ぐう。余の動きを読んでいたとでも言うつもりか!」

魔王「吹雪!」ビュオォォ

ドラゴン「勿論。だから昨日の戦闘で儂はあえて氷漬けになったのだ」

ジュウゥゥゥ

ドラゴン「それは、誰かが止めに入ると読んでいたからこそ、貴様に華を持たせてやったのだ!」

ボッゴーン!

魔王「…なるほど、ならば貴様もこの場で処刑することにしよう」

ドラゴン「くっくっくっ…、もう時間切れだ」

魔王「なんだと?」

側近「まおうさまーー!!」

側近「魔王様、大変でございます!」

魔王「何事だ?」

側近「議会にて、勇者助命嘆願の議題が賛成多数により採決されました!」

魔王「なんだと? 議会など、数年前に形骸化したはずだ!」

側近「そうなのですが突然議会を占拠されて…」

ドラゴン「初仕事にしてはゴブリン議長は仕事が速い」

魔王「ゴブリン議長?」

ドラゴン「さよう、形骸化されていたので乗っ取らせてもらった」

ドゴッシャ!!
 
72 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/19(金) 01:45:55.99 ID:c9RzZ07A0

魔王「くっ…まだまだ」プルプルプル

ドラゴン「ほう、今の一撃を耐えたか」

魔王「側近よ! 早急に本来の議員を招集しろ!」

側近「それが本来の議員は皆様、ゴブリン達を正式な議員と申しているのです」

魔王「なん…だと…」

ドラゴン「くっくっくっ…、長年の冷遇が祟ったな」

ドラゴン「すっかり落ちぶれていたので小金を握らせただけで言いなりよ」

魔王「側近! 議員連中にドラゴンの倍払うと伝えろ」

ドラゴン「軽々しい口約束だが良いのか? 儂と資産を競うとなれば国庫が空になるやもしれぬぞ?」

魔王「ぬかせ、奴隷仲間からかき集めたはした金で嘘を語るな!」

ドラゴン「わかっておらぬな、はした金をかき集め…」

ドラゴン「大穴狙いの大博打こそ闘技場の醍醐味であろう」

魔王「奴隷に賭けたか」

ドラゴン「うむ、出会った時にな」

ドラゴン「だが今回賭けたのは勝利条件、勇者の1分以内ノーダメージ完全勝利!!」

ドラゴン「とくと拝め、これがその配当10倍の賭け札よ」ピラッ
 
73 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/19(金) 01:51:43.69 ID:c9RzZ07A0

ドラゴン「賭け金は貴様が殺した、我が竜の同胞達の遺産!」

ドラゴン「いずれ劣らぬ美しき金色の巣穴を彩る、財宝の数々を売り払って捻出した」

ドラゴン「魔王の喉元に突きつける剣となるなら、同胞達も報われよう」

魔王「無効だ…」

ドラゴン「またそのように駄々をこねおって」

魔王「無効だ! 貴様は何者だ?」

魔王「エンシェントエルダードラゴン!! 余が蒐集品のひとつに過ぎぬ!」

魔王「つまり、貴様に人としての権利などない!」

ドラゴン「それは違う! 捕まり、項垂れて死を待つだけの儂の前に!」

ドラゴン「姫様が身を投げ出して乞うてぐださった時に貴様はこういったのだ」

ドラゴン「好きにしろ≠ニな」

魔王「それで? だから自分の命は姫の物だと? ずいぶんと殊勝な話だ」

ドラゴン「いやいや、好きにやらせてもらったという話だ」ニヤッ

ドラゴン「執事《バトラー》出番だ!!」

老執事「およびでしょうか?」
 
74 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/19(金) 01:59:45.18 ID:c9RzZ07A0

魔王「こいつは誰だ! まだ何かあるのか?」

魔王「質問に答えろ!」

ドラゴン「質問に答えろ!」

老執事「なんなりと」

ドラゴン「儂の所有する土地は?」

老執事「南方20の島々とその海岸より1里まででございます」

魔王「え?」

ドラゴン「儂の使用人」

老執事「小作人1855人と家政婦20人、庭師が8人と私でございます」

ドラゴン「儂の爵位!」

魔王「爵位!?」

老執事「伯爵」

魔王「はぁ!?」

ドラゴン「最後に、儂は誰だ!!」

老執事「南方20の島々を治め、魔界有数の穀倉地帯の荘園が主人」

老執事「エンシェントエルダー卿でございます」

ドラゴン「ご苦労、もう下がってよい」

老執事「ご用件があればお呼びください」

側近「魔王様…。エルダー卿と言えば、大量の貢ぎ物を預かっております」

ドラゴン「つまりだ、貴族である儂に人としての権利がないと…そう言うことになるか?」

魔王「貴族? 南方20の島々の大貴族だというのか?」

側近「魔王様、議会が押さえられた状況で貴族と騒動は不味いことに…」

魔王「どうしてこうなった?」

ドラゴン「ちなみに、魔王にはこれから3つの外交問題、2つの政策問題、1つの芸能ゴシップが待っておるのだが…」

ドラゴン「あらためて言ってくれぬか?」

ドラゴン「好きにしろと」
 
75 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/01/19(金) 02:02:23.26 ID:c9RzZ07A0

今日はここまでです

ただの戦闘だと前回と同じになってつまんなかったんで
政治圧力をかけて乗りきる方針にしました

この方針がいちばん両者の格を落とさないと思ったけど…

どうなんでしょう?
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/19(金) 05:14:38.99 ID:KdT3UfJF0
乙!
ゴブリン達が裏で活躍してるのが何かうれしい
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/19(金) 08:00:20.07 ID:0B7trKWo0
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/19(金) 15:15:28.37 ID:J40hKBODO

79 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/27(土) 11:55:48.88 ID:+qxayZ0A0

魔王「冗談じゃない!!議会を乗っ取り、爵位持ちの領主になるような奴を」

魔王「これ以上好きになどさせてたまるか!!」

ドラゴン「ケチ臭い、自分の発言に責任も持てんのか?」

魔王「側近よ、早急に対処しろ!」

側近「ど、どうやって?」

魔王「大方、裏切者を金で釣ったに違いない」

ドラゴン「ほう? この国は金で爵位を買えるほど腐敗しておるのか?」

魔王「黙れ! 金品の受け渡しに違法性を見つけしだい爵位も剥奪する!」

ドラゴン「違法な取引などせぬわ、儂はただ住宅事情の相談にのった結果」

ドラゴン「解決法として今は亡き、故竜となった同胞の巣穴を提供しただけよ」

ドラゴン「…まあ、昔の住人が残した家財道具は自由にしていいぐらいは言ったがな」

魔王「黄金の家財道具か! 探しだし、没収するだけでひと財産できそうだ」

ドラゴン「そう言うと思い、予め皆に半年ぐらいは隠ってろと言っておいた」

ドラゴン「探しに人手を割いて、ここを手薄にしたいなら止めはせぬ」
 
80 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/27(土) 12:00:50.16 ID:+qxayZ0A0

魔王「半年? ああ、そうか…。奴隷が100試合終わるまでの時間稼ぎか…」

ドラゴン「そのとおり、奴隷が勇者となる」

魔王「結局そこに行き着くのか…」

魔王「馬鹿馬鹿しい! あいつに何が出来る!!」

魔王「あいつは奴隷として過ごし、今もまだ奴隷の刻印を腕に刻まれた無力な子供だ!!」

ドラゴン「子供もやがては成長し、大人になる」

ドラゴン「成長した勇者はやがて魔王を倒すだろう」

魔王「余が倒されるのを誰が望むと言うのだ!」

魔王「余の目から見れば、自分の復讐の道具に利用してだけに見えるぞ」

ドラゴン「自らの国の腐敗すら見えぬ王よ…」


ドラゴン「民が望んでいるのだ」


ドラゴン「だからこそ、儂は背中を押している」
 
81 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/27(土) 12:08:43.82 ID:+qxayZ0A0

魔王「なにを言うかと思えば……」

魔王「魔界の王たる余の敗北を! いかなる理により民が望むなどと言うか!!」

ドラゴン「まわりを見渡せ」

ドラゴン「ここにはひと目、勇者を見ようと闘技場に押し寄せた大勢の観客であふれている」

ドラゴン「この超満員の観客こそが、勇者を望んでいる民そのものなのだ」

魔王「ぐぬぬぬ」

ドラゴン「…だが、そろそろ話し合いも平行線で飽きてきた」

ドラゴン「折衷案を出そう」
 
82 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/01/27(土) 12:17:53.28 ID:+qxayZ0A0

ドラゴン「この場には魔王にとっての邪魔者が2名おる」

ドラゴン「言わずとしれた儂と勇者だ」

魔王「余は処刑により取り除こうとしている」

ドラゴン「うむ、当然それは儂の持つあらゆるツテを使い妨害させてもらう」

ドラゴン「一方」

ドラゴン「これから行われる100の試合」

ドラゴン「それら全ての対戦条件がどれだけ不利であろうと、我々はそれを承諾する」

魔王「意味がわからぬ、対戦相手は・・・・」

魔王「ああ、そうか・・・・」

魔王「・・・・承諾は例外なく絶対にか?」

ドラゴン「ただし、1日1試合に限定させてもらう」

魔王「奴隷はすでに2勝している」

ドラゴン「こすいことは言わん。2勝は無しにして良い」

魔王「・・・・いいだろう、確かに愉快だ」

魔王「100の勝利にて勇者を名乗るなら」

魔王「99の魔物を用意しよう」

ドラゴン「了解した。勇者を見極める最後の魔物として」

ドラゴン「その一戦に儂自らが戦おう」

魔王「決まりだな。明日より勇者の禊《みそぎ》となる100の試合を始める!!」


観客「うおぉぉぉ〜〜!!」
観客「魔王様バンザーイ!」
観客「魔王様バンザーイ!」
観客「魔王様バンザーイ!」

魔王「実に愉快だ」

魔王「勇者のために、最後は命すら捨てることが出来るか見せてもらおう」
 
83 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/01/27(土) 12:21:16.50 ID:+qxayZ0A0
今日はここまでです

100試合やるよーからの最後にドラゴンと戦いますとする流れにもっていくだけですごい苦労しました
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/27(土) 16:56:49.05 ID:frY4qWzd0

最後はドラゴンと戦うのか…
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 03:11:07.43 ID:TJRwmMevO
それだけでもう泣きそう
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 03:32:50.01 ID:anaJFmDDO
87 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/02/25(日) 15:02:37.21 ID:hFpW//rA0
ごめん、歴戦古竜狩れたら一区切りつくと思うからもうちょっとだけ待ってほしい
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 00:59:52.78 ID:0iZJgRDDO
了解
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 01:09:38.65 ID:nHx/b/8OO
がんばれ
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 00:46:05.05 ID:gpNwN/uA0
一区切りついたので再開します
91 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/03/22(木) 00:48:38.68 ID:gpNwN/uA0

【魔界闘技場 下層空間】

奴隷「すぅ…すぅ…」

コボルト「あう?」

姫「し〜〜♪」

コボルト「くぅん?」

姫「ふふ」ナデナデ

コボルト「はっ、はっ、はっ、はっ」パタパタ

姫「し〜、奴隷さんが起きちゃいますよ?」

コボルト「ァォッ♪」

姫「いい子ね」ナデナデ

奴隷「ん……、寝てた?」

姫「あ、目が覚めました?」ナデナデ

奴隷「」ワシャワシャ

奴隷「!!!!」ガバッ!

ゴーーーン!!

奴隷「ぐっ…がっ……」

姫「ぷは♪ すごい音でしたが大丈夫ですか?」

奴隷「姫?」

姫「はい、姫です♪」

奴隷「えっと……、なにしてん、です?」

姫「失礼だとは思ったのですが。ほんとに眠っているのは初めて見たので…」

姫「なにか違うところはないかな〜って、調べてました♪」

奴隷「違いなんかないです…。いつもと同じ、見飽きた寝顔です」

姫「ふふふ♪ それでは、そういうことにしておきましょう」
 
92 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/03/22(木) 00:52:59.43 ID:gpNwN/uA0

姫「よいしょ」ペタン

奴隷「何故横に座った?」

姫「向かい合ったままが良かったですか?」

奴隷「いえ…」

姫「えへへ♪」

奴隷「なんでこっち見てんすか?」

姫「顔が見たいからです」

奴隷「へぇ…」プィ

姫「じ〜〜♪」

奴隷「・・・・」

姫「じ〜〜♪」

奴隷「」チラッ

姫「ふふ、がんばれ」

奴隷「な、なにを?」

姫「奴隷さんは頑張らないといけません」

姫「なんと言っても勇者の証明に100試合! 100回も勝たないといけないんです」

姫「と〜〜っても大変だと思います! だから、頑張ってください!」

姫「わたしも応援しますね!」フンスッ

奴隷「またその話か…」

姫「何か悩んでます?」

奴隷「…俺がこのままドラゴンの助けで勇者になったとして」

姫「ふんふん」

奴隷「そもそも俺は魔王を倒したいとか思ったこと無いし」

姫「ん〜」

奴隷「俺が勇者になる理由ってなんもないな〜…とか」

姫「そうかもしれません」

奴隷「やっぱりか〜〜」
 
93 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/03/22(木) 00:59:05.79 ID:gpNwN/uA0

奴隷「やっぱ、俺ってなんもないんだよな〜」

姫「ふふ、ごめんなさいね。落ち込んでる人に優しくするのは簡単なんですが…」

姫「意地悪したくなりました♪」

奴隷「意外と意地が悪いんだな」

姫「そうなんです。良い子でいないといけないだけで、意外と意地が悪いんです」

奴隷「良い子って自分で言うか?」

姫「まあ、意地悪なわたしは置いといて。 ドラゴンさんの事は信じてあげませんか?」

姫「奴隷さんの事を息子のようだと思っているのは、たぶん本当のことだと思いますから」

奴隷「そうかね? なんか、ふざけてるんだか真面目なんだかわかんない奴だけどな」

姫「疑うならお父さんと呼んでみてください」

姫「きっと、喜んでくれますよ?」

奴隷「あんな大型爬虫類の父親なんていません」

姫「ふふ」
 
94 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/03/22(木) 01:03:03.60 ID:gpNwN/uA0

姫「あ〜あ、奴隷さんがうらやましい」

奴隷「ほ乳類の父親がいるのに?」

姫「はい、わたしなんかより絆がある気がします」

奴隷「いやいや、姫は誤解してるだけ、ほんといい加減な奴だから」

姫「そうなんですか?」

奴隷「そうなんです。だいたい、色々やってくれる理由を聞いたらなんて答えたと思う?」

姫「さあ?」

奴隷「あいつが言うには恋に恋する少年少女の背中を押すのは大人の義務≠ネんだと」

奴隷「あり得ないだろ! 少年少女って!!」

奴隷「少年はともかく少女ってなんだよ!」

姫「・・・・」

奴隷「その言い方じゃ、相手のほうも好き……」

姫「相手?」

奴隷「みたいな?」

姫「好きな人が、いるんですか?」

奴隷「……いや?」
 
95 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/03/22(木) 01:08:11.15 ID:gpNwN/uA0

姫「いるんですね! 誰なんですか!!」

奴隷「……誰だっていいじゃん」

姫「いいですが、よくないです!」

奴隷「どっちだよ…」

姫「それじゃあ、よくないです!」ズイッ!

奴隷「プライバシーの問題だから…」

姫「よ、く、な、い、で、す!!」ズズイッ!!

奴隷「か、顔が近い!」バッ!

ゴーーーン!!!

奴隷「ぐっ…がっ……また……同じとこ……」

姫「大変! 治癒魔法かけますね」

奴隷「いや、お構い無く…」

姫「ですが、頭を何度もぶつけたら心配になります…」

奴隷「傷薬でも塗っとくから…」

姫「そうです!傷薬といえば!!」

ド ス ン !!

衛兵「奇遇だな、傷薬なら私が持っている」ドッサリ

奴隷「うわぁ…。そんな大量にどうした?」

衛兵「気にするな、さあ軟膏から湿布までなんでもあるぞ?」

衛兵「なんだろうとわ、た、し、が≠ハってやるぞ」

奴隷「お、お構い無く……」

『チッ!』

ドラゴン「良い所で邪魔が入ったか…」ニョキッ

奴隷「どっこから湧いた!!」
 
96 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/03/22(木) 01:14:36.69 ID:gpNwN/uA0

ドラゴン「どこからいたかとか細かい事は気にするな」

ドラゴン「儂が魔力を渡した時から感覚の一部を共有しておる」

奴隷「つまり?」

ドラゴン「遠くの会話から感情の変化ぐらいなら筒抜けよ」

姫「え?え?」

奴隷「おまえ、たま〜〜に恐ろしいことをサラッと言うよな」

ドラゴン「そう嫌な顔するな」

ドラゴン「疲労や外傷を一方が肩代わり出来るという利点もちゃんとある」

奴隷「そんな不吉な利点いるか!!」

姫「あの、そんなことより!」

奴隷「そんなことじゃないだろ!かなり重要なことだろ!」

姫「わたし達の会話、ずっと聞いてたんですか?」

ドラゴン「ええ、はじめから」

姫「!!!」

奴隷「姫?」

姫「は、恥ずかしい!!」カァァァ

ドラゴン「わかります、わかります。まわりに誰もいないと思って油断して、かなり素のご自分が出ておりましたからな」

姫「あわわ…」

ドラゴン「しかし儂のような大型爬虫類に聞かれたからと気に病むことは御座いません」

ドラゴン「人間の恋愛など所詮は理解出来ませんからな」

奴隷「意外と傷ついたのか?ごめん」

ドラゴン「なので今回はいっしょに聞いた衛兵殿に解説してもらいましょう」

衛兵「わっ、バカ! 姫様、私は何も聞いてないです!」

姫「あの!用事!大事な用事を思い出しました!だから、あの…」チラッ

奴隷「?」

姫「う〜…、失礼します!!」タッタッタッ
 
97 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/03/22(木) 01:18:30.79 ID:gpNwN/uA0

ドラゴン「うむ、実に初々しいとは思わんか?」

奴隷「止めて!俺まで恥ずかしくなるから止めて!」

衛兵「ふん!」ドサッ

奴隷「重っ!」

衛兵「とりあえず集められるだけかき集めた傷薬だ。受け取れ」

奴隷「受け取れるか! 素人の俺が見ても高価な薬品も混ざってるだろ!」

衛兵「魔王様の命令により、明日から姫様はご自分の部屋から出ることを禁じられた」

奴隷「は?」

衛兵「姫様も今回の騒動に加担していると魔王様が疑いになっての処置だ」

奴隷「訳わからん、自分の娘だろ?」

衛兵「家族の絆など、無いからな…」

奴隷「・・・・」

衛兵「受け取れ、そして高価だろうがかまわず使って傷を治せ」

奴隷「よく運べたな、けっこう重いんだが」

衛兵「オマエも、ワタシをオトコみたいだと?」

奴隷「いやいや、まさか」

衛兵「冗談だ」フッ

衛兵「さてと、用事もすんだし姫様を追いかけるかな」

奴隷「なあ」

衛兵「ん?」

奴隷「傷薬ありがと」

衛兵「その感謝の台詞は姫に伝えよう」

奴隷「・・・・」

ドラゴン「どれ、ぶつけた所を見せてみろ。傷薬をぬってやる」
 
98 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/03/22(木) 01:21:57.26 ID:gpNwN/uA0

奴隷「ん」グイッ

ドラゴン「あ〜、これは染みるかもしれんな」

奴隷「一気にやってくれ」

ドラゴン「痛ければ言え」

奴隷「なあ、ドラゴン」

ドラゴン「痛むか?」ヌリヌリ

奴隷「おまえが色々世話焼くのって…」

ドラゴン「気付いておるだろうが姫の為だ」

奴隷「…そっか」

ドラゴン「儂にとって姫は処刑される時に助けてもらった命の恩人でな」

ドラゴン「残念なことに、魔王は姫にとって良い父親とは言い切れぬ」

奴隷「そうだよな…」

ドラゴン「とは言え儂も歳だ。 脈が無ければ背中を押さぬぞ」

奴隷「それは、その…」ゴニョゴニョ

ドラゴン「うむ、勇者はもっと自信を持て」

奴隷「その…俺のこと……す、好きって……」モジモジ

ドラゴン「だが忘れてくれ」

奴隷「は?」

ドラゴン「勇者になるための理由がないと悩むなら仕方がない」

奴隷「ドラゴンさん?」

ドラゴン「他をあたるとしよう」ヨイショ

奴隷「ちょっと待った! 待て、出来た! 思い出した、勇者になる理由!!」ガシッ!

ドラゴン「くっくっくっ、そうこなくては話にならん」
 
99 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/03/22(木) 01:24:37.35 ID:gpNwN/uA0

ドラゴン「良いか? 糞女神が勝手に決めた魔王を倒す勇者≠ノなんぞならんでいい」

奴隷「そうなのか?」

ドラゴン「そもそも魔王が存在するようになったのは魔界が出来てからの800年以降」

ドラゴン「だがな、勇者はそれ以前から存在する」

ドラゴン「儂が協力するなら当然真の勇者≠ニなってもらわねば」

奴隷「真の勇者…」

奴隷「それで? 真の勇者とはどんなやつなんだ?」

ドラゴン「うむ、真の勇者とは…」

奴隷「真の勇者とは?」

 ド ム ッ !

奴隷「ごふっ!」

ドラゴン「これだ」

奴隷「どれだよ? 俺の背中おもいっきり叩いただけだぞ!」

ドラゴン「解らぬか? 身分違いの姫君に想いを告げる者」

ドラゴン「それを古来より勇者≠ニ呼ぶのだ」
 
100 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/03/22(木) 01:27:46.00 ID:gpNwN/uA0

奴隷「あほくさ」

ドラゴン「何がだ?」

奴隷「想いを告げたら真の勇者? ふざけんなら他をあたってくれ」ヨイショ

ドラゴン「まあ待て待て、ちょっと待て」ガシッ

奴隷「想いを告げるって告白しろってことだろ?」

奴隷「いや勘違いしてるみたいだが、別に好きとかそんなんじゃ…」

ドラゴン「照れるでない、初な少年にとって魔王を倒すより難儀だろうが儂がついてる」

奴隷「だから悩んでんだろ」

ドラゴン「よいか勇者? こういう事は古今東西、男からと決まっておるのだ」

ドラゴン「何を隠そう儂ら竜族も麓の村々から金銀財宝を奪い、巣穴を飾り付けるのはオスしかやらぬ」

ドラゴン「そして金色の巣穴と求愛の踊りを用意してこそ一人前」

奴隷「間違ってるのは生態系からか〜」

ドラゴン「何を言うか、永きに渡り人間の営みを見続けた儂ならば、恋愛にも精通しておるのは当然であろう?」

奴隷「人間の性別の区別もつかない癖に」

ドラゴン「は〜、儂が同族にどれだけモテたか知らんからそのようなことが言えるのだ」

ドラゴン「毎晩のように違うメスを巣穴に誘い、踊りあった遠い昔…」

ドラゴン「儂の自慢の巣穴の前では、どれだけ身持ちの硬いメスも朝になれば卵を残していったものよ…」

奴隷「…すまん、大型爬虫類の特殊な繁殖方法とかまったく興味ないから止めろ」
 
101 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/03/22(木) 01:31:44.28 ID:gpNwN/uA0

ドラゴン「ほう、ならば聞かせてもらおうか」

奴隷「何をだよ?」

ドラゴン「とぼけるな、姫のどこに惚れたかよ」

奴隷「はあ〜? 何で言わなきゃならねえんだよ!」

ドラゴン「まあ良いではないか。感覚感情はわかっても記憶の共有は無理でな」

奴隷「おい、むしろそこらついて詳しく聞かせろ」

ドラゴン「知りたいのだ。 儂の命の恩人の、どこに惹かれたのか」

奴隷「……笑わないか?」

ドラゴン「姫に誓って」

奴隷「……笑ったんだ」

ドラゴン「こうか?」ニィッ

奴隷「そういうんじゃなくて……。俺だって、相手が見下してんのかどうかぐらい分かる」

ドラゴン「ああ、なるほど。 確かに姫の笑い声に侮蔑は込められておらぬからな」

奴隷「・・・・」

ドラゴン「どうした?」

奴隷「やっぱ、言うんじゃなかった」

ドラゴン「くっくっくっ…、話してくれた事に感謝しよう。 やはり勇者は押しがいのある背中をしておる」

奴隷「くそドラゴン」

ドラゴン「はぁ〜はっはっはぁ〜! 拗ねるな拗ねるな!」

ドラゴン「見下してるかどうかぐらい、分かるのであろう?」
 
102 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/03/22(木) 01:34:42.63 ID:gpNwN/uA0
今日はここまでです
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 01:44:10.73 ID:crdEtf/DO

待ってたぜ!
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 11:20:44.74 ID:N3CHGZHG0
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 11:26:50.40 ID:6AqNdke/O

おかえり
106 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/03/28(水) 01:20:23.54 ID:dgPtRM4A0

奴隷「もう知らん! 話しかけるな」ゴロン

ドラゴン「やれやれ、拗ねた子供を物で釣るか」プチッ

奴隷「・・・・」チラッ

ドラゴン「とっておけ、いずれ使うことになる」

奴隷「ウロコ?」

ドラゴン「さよう、竜族のおとぎ話に竜鱗の剣≠ェある」

奴隷「これが剣?」

ドラゴン「古の時代、いくたの国々を滅ぼした邪悪な竜あり」

ドラゴン「荒ぶる竜に対し人々も結託、武器を手に戦いを挑む」

ドラゴン「しかし、あらゆる刃が竜の鱗を傷つける事なく人間側の敗北に終わった」

奴隷「ふんふん」

ドラゴン「生き残った僅かな人々もそのまま滅びるのを待つだけと思われた時、お節介な竜が現れ勇敢な若者に自らの鱗と助言を与えた」

ドラゴン「竜の鱗はあらゆる刃を通さぬ最強の鎧、ならば竜の鱗から最強の剣を作りなさい」

ドラゴン「かくして、助言に従った若者は鱗を研ぎ鋭い剣にし」

ドラゴン「竜鱗の剣は邪悪な竜の鱗を斬り裂き、竜を殺して平和な時代が訪れるのであった」

ドラゴン「以上が竜殺しについて語られた唯一の伝承になる」

 
107 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/03/28(水) 01:23:55.20 ID:dgPtRM4A0

奴隷「これがか?ナイフにしかならなさそう」チャッキ

ドラゴン「稀に周囲から逆らって鱗が生えることがあってな」

ドラゴン「それを逆鱗とよぶのだが、小振りなれど研ぎさえすれば切れ味は保証しよう」

奴隷「ふ〜〜ん…」

ドラゴン「疑うか?」

奴隷「いや、きれいだなって…」

ドラゴン「そうか?」

奴隷「ああ、明かりが透けてぴかぴか輝いてるよ」

ドラゴン「そうか、まあ機嫌が直ったならいい」クシャクシャ

奴隷「わ、なんだよ…頭に手をのせるな。重いんだよ」

ドラゴン「くっくっくっ、ところでお父さんなどと呼ばれてもこそばゆい」

ドラゴン「どうせ呼ぶなら親父にしてくれ」

奴隷「なっ! 誰が呼ぶか!!」

ドラゴン「どれ、息子の恋路の手助けをしてやるかな」

奴隷「うっさい!」

ドラゴン「何せ限られた時間は少なく、教えることは膨大だ…」

奴隷「そうなのか?」

ドラゴン「うむ、格闘、剣術、魔法に一般常識まで」

ドラゴン「竜の魔力を制御する術を学べば、儂との感覚を共有することもなくなるだろう」

奴隷「それだ!それが一番大事!魔力の制御を教えてくれ!!」

ドラゴン「だが明日の試合に勝たねば未来はないぞ?」

奴隷「ぐっ」

ドラゴン「まずは、大振りな一撃をかわして剣を突き刺すことから始めよう」
 
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/28(水) 23:52:33.67 ID:VZbbcL3A0
109 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/03/29(木) 00:20:54.85 ID:3S9dD0TA0

【初戦 闘技場】

道化「レディースあ〜んどジェントルメン!!」

道化「さあ、100試合もあるんだ!巻いていこうか!」

道化「初戦の相手は山羊の頭部に獅子の体躯、おまけに蛇の尾を持つ合成魔獣」

道化「キマイラの登場だ!!」

キマイラ「メエェェェ!!!」

ドラゴン『いいな、大振りな一撃をかわして剣を突き刺す』

ドラゴン『ひたすら避けて一瞬の勝機を逃すな』

奴隷「わかってるよ!」チャキッ
110 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/03/30(金) 00:29:22.22 ID:0DiYeKCA0

【5試合後 下層空間】

ドラゴン「ゆっくり行くからちゃんと避けろよ〜」

奴隷「あいよ〜」

ドラゴン「右からの大振りな一撃」

ブオン!

奴隷「避けて」サッ

ドラゴン「尻尾の追撃」グォッ!

奴隷「お?」

ドゴッシャ!!

奴隷「へぷーーーっ!!」

ドゴーーン!!

奴隷「」ピクピク

ドラゴン「当然だが知性がある相手であれば懐に入ることも簡単にはいかん」

ドラゴン「今日からはそういった相手の対処法を詳しく教えるのだが……」

奴隷「」クッタリ

ドラゴン「生きとるか?」

奴隷「ご……」

奴隷「5分待って……」
 
111 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/03/30(金) 23:56:24.33 ID:0DiYeKCA0

【10試合目 闘技場】

道化「レディースあんどジェントルメン」

道化「今日の相手は魔界最大の妖魔」

道化「単眼の巨人、ギガンテスの登場だ!!」

ギガンテス「ぐおぉぉぉ!!」

ドラゴン『気を付けろ、棍棒に当たればひとたまりもないぞ』

奴隷「わかってるよ!」ダッ

ギガンテス「ぐぉっ!」

ブオン

奴隷「避けて」

ドラゴン『蹴りが来る!!』

ガキーーン!!

奴隷「くっ」

ドラゴン『焦りすぎだ。教えたことだけやれば良い』

奴隷「たまには人間の戦い方も、見せてやるよ」ダッ

ドラゴン『あ、バカ』

奴隷「振り下ろしの一撃を…」ダッダッダッ

ギガンテス「ぐおぉぉぉ!!」

奴隷「かわして!」

ドシャーーン!!

奴隷「棍棒から腕まで一気に駆け上がって顔面ど真ん中」ダッダッダン!!

奴隷「そのでっかい目ん玉をぶん殴る!」

メシャ!

ギガンテス「ぐあぁぁぁ」
 
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/31(土) 15:22:56.34 ID:aRHF7S1xO
がんばれがんばれ
113 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/03/31(土) 23:51:37.55 ID:1nr26hVA0

【19試合後 下層空間】

ドラゴン「たまには違う者とも戦え」

ゴブリン「いっくぜぇぇ!!!」

奴隷「右下方からのすくい斬り」

ガキン

ゴブリン「やるな!だがまだまだぁ!!」

ガッガッガッガッガッ!!!

奴隷「上段斬りが腰にくるのか。極端な低身長も武器になるな…」

奴隷「そして本命の…」

オーガ「そろ〜り」

ブオン!

奴隷「死角からのオーガの奇襲」

サッ

オーガ「おりょ?」

ゴブリン「ブッブー、ハズレだ」

ベチャ

奴隷「き?」

ゴブリン「本命は、厨房でくすねたタバスコを主成分とした特性目潰し=v

奴隷「きえぇぇぇぇ!?!?!?」ゴロゴロゴロ

ゴブリン「ま、弟に本命やるほど妖魔が出来てないんでね」

奴隷「きえぇぇぇぇ!!!!!」ガリガリガリガリ

ゴブリン「おおっと! つなぎに松ヤニ使ってっからな、なかなか剥がれねえだろ?」

奴隷「ぎえ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙!!!!」

ゴブリン「まっ、もっとも?剥がれたころには腫れて三日三晩はマトモに見ることなんか出来ねえだろうがな!」

オーガ「兄ちゃん…」

ゴブリン「おうよ! 勇者の連勝20を前に俺達が止めてやったぜ!!」

オーガ「目が見えないで明日の試合どうする?」

ゴブリン「あ」

奴隷「」ピクピク
 
114 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/04/02(月) 00:58:43.63 ID:KKzN3qYA0

【20試合目 闘技場】

ドラゴン『前に話した感覚の共有を覚えているか?』

奴隷「ああ…」

ドラゴン『つまりだ、目が見えぬとも体内の魔力を制御することで儂の視界から見ることも可能なのだ』

奴隷「・・・・」

ドラゴン『見えたか?』

奴隷「いや、まったく」

ゴブリン「あぶねえ、上だ!!」

ドゴーーン!!

道化「レディース、あ〜んどジェントルメン!」

道化「はやいもので今日勝てば全試合の5分の1を終了」

道化「なんで恥らいもなく物量で攻めさせてもらいました!」

ボストロル×20「「「ゴオォォォ!!!」」」

奴隷「だけどさ……」

ゴブリン「回り込まれるぞ! もっと下がれ!!」

オーガ「左に来た!」

奴隷「だけど負ける気はぜんぜんしないんだ!!」

オーガ「今だ!」

ザシュ!

ボストロル「フゴッ!」

ゴブリン「バッカ野郎!後ろに逃げろってんだろ!!」

オーガ「囲まれた、右が少ない」

ゴブリン「う、し、ろ!!」

コボルト「わんわん!う〜わんわんわんわん!!」(興奮)

奴隷「でも指示は統一してくれ!!」
 
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/04(水) 01:54:28.02 ID:8adrdy+DO
wwwwww乙
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/04(水) 07:54:24.90 ID:zeu2bTrx0
117 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/04/08(日) 00:33:02.40 ID:9HG7st7A0

【30試合後 下層空間】

ドラゴン「渾身の一撃」

ブオン!

奴隷「受け流す」

ガギッ!

ドラゴン「尻尾の追撃」

奴隷「避ける」サッ

ドラゴン「テンポを上げて連撃」

奴隷「了解」

ガッガッガッガッガッ!!

ドラゴン「随分と出来るようになったではないか」

奴隷「お陰さんで」

ドラゴン「よしよし、ではそろそろ本気を見せよう」

奴隷「お?」

ドラゴン「渾身の一撃」

ブオン!

奴隷「特に変わらんけど盾で受けるぞ?」サッ

ドラゴン「そしたら掴んで」ムンズ

奴隷「お?お?」

ドラゴン「壁に叩きつける」

ドグッシャ!!

奴隷「ぐへっ!」

ドラゴン「人間達には柔よく剛を制す≠好む傾向があるが」グリグリグリ

奴隷「ぐふっ、放せ…」

ドラゴン「儂はそれと対になる剛よく柔を断つ≠ニいう言葉が好きでな」

奴隷「潰れる…」

ドラゴン「今までは儂の教えでなんとか勝ててはいるが、魔物の圧倒的な暴力の前に一瞬で逆転もおこりうる」

奴隷「中身でる!」ジタバタ

ドラゴン「さあ、その時はどうする?」

奴隷「放せ!」グググッ

ドラゴン「正解」ポイッ

奴隷「うぉ!」どさっ!

奴隷「いった! なにが正解?」

ドラゴン「時には剛で断つことも覚えろって話だ」
 
118 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/04/08(日) 00:35:18.66 ID:9HG7st7A0

【40試合後 下層空間】

奴隷『しりとり…』

ドラゴン『りんご』

奴隷『ご、ごま』

ドラゴン『孫』

奴隷『また、ご? ご…ご…午後!』

ドラゴン『碁』

奴隷「あ〜もう止めた!!」

ドラゴン「はい、儂の勝ち」

奴隷「ご攻め止めろ!」

ドラゴン「碁で断つ」

奴隷「ふざけてるよな?」

ドラゴン「何度も言うが念による会話は難しい。特に頭を使う場合はな」

ドラゴン「だがこれも感覚の共有の一種だからな、魔力制御の訓練になる」

ドラゴン「魔力制御を怠って、竜になって戻れませんとか笑うに笑えんからな」

奴隷「じゃあ、ご攻め止めたら続ける…」

ドラゴン「わかったわかった…」

ドラゴン『次は、ぎ攻め』

奴隷「うわ〜ん」
 
119 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/04/08(日) 00:37:33.61 ID:9HG7st7A0

【50試合 下層空間】

ドラゴン『そら、右からの連撃!』

ガッガッガッガッ

奴隷「竜の背中の二枚の翼の真ん中の…」

ドラゴン『盾に頼りすぎると肝心なところで割れたりするぞ』

ガキン!ガキン!

奴隷『硬い鱗のわずかな隙間』

ガキン!ガキン!ガキン!パキッ!

奴隷「体内の火炎袋から心臓までを貫く竜の急所」

ドラゴン『通称、竜穴』

ドラゴン『教えた急所を狙うのも良いが、そろそろ盾が割れるぞ?』

奴隷「気にすんな」

バキッ!

奴隷「魔力で作った分身だからな」ドロッ

ドラゴン『知っとるぞ?』クルッ

奴隷「お?」

ドゴッ!

奴隷「ぐほっ!」

ドラゴン『教えたことを実践するのも良いが、バレバレだぞ?』

奴隷「気にすんな…」
 
120 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/04/08(日) 00:39:35.68 ID:9HG7st7A0

【60試合後 下層空間】

ドラゴン『また、右からの連撃!』

奴隷『右右左右尻尾上からの叩きつけ…』

ガガガガガキンサッ

ドラゴン『噛みつき!』

グワッ!

奴隷『そのアゴを蹴り飛ばす!』

ミシッ

奴隷『当たった!』

ドラゴン『足を掴んで』

奴隷『お?』

ドラゴン『振り回して』

ブンブンブンブンブンブン!!

奴隷『おおおおおお』

ドラゴン『投げ飛ばす!』

ドゴーーーーン!

奴隷「」

ドラゴン「ふむ、まともな攻撃を受けたのははじめてか…、着実に進歩しておる」

奴隷「…壁から抜けない」

ドラゴン「なんだなんだ? 壁に埋まるなどボストロル戦いらいではないか…」

ドラゴン「進歩がない」

奴隷「うっさい」
 
121 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/04/08(日) 00:44:12.50 ID:9HG7st7A0

【70試合目 闘技場】

奴隷「横っ面を蹴り飛ばす!」

シュバッ!

上級騎士80「ぐふっ」

どしゃ

道化「おおっと!親衛隊100人で挑んで、今のでちょうど80人目がノックダウン」

道化「このまま親衛隊100人斬り達成なるか!!」

上級騎士81「させるか!」

ガガキン!

奴隷「81…」

ザン!ザシュ!

奴隷「82…、83……」

上級騎士84「あきらめるな!我々は壁際に追い詰めてる」

ドカッ

奴隷「84」

上級騎士85「このまま包囲するぞ!」

ゲシッ

奴隷「これはノーカン」

上級騎士85「俺を踏み台に…」

奴隷「包囲の頭上を飛び越える!」

上級騎士86「こっちきた!」

奴隷「これで85」ゴスッ

上級騎士87「調子にのるなぁ〜〜」

ガシッ!

奴隷「しまった!」

上級騎士87「捕まえた! このままぶっ殺せ!!」

上級騎士88「うおぉぉ!」

ザクッ!

上級騎士「ぬおぉ!!」

ザクッ!ザクザクザクザク

奴隷「」

上級騎士「ぜぇ…ぜぇ…」

上級騎士「どうだ?」

奴隷「残念、分身だ」ドロッ

上級騎士「なにぃ!?」

奴隷「集まったとこ悪いが、一発で決めないと後でうるさいんだ」コオオォォォォ!!!

上級騎士「散れ!」

奴隷「おせえよ」

奴隷「ドラゴンブレス!!」カッ!
 
122 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/04/08(日) 00:45:50.42 ID:9HG7st7A0

【80試合後 下層空間】

ドラゴン「温い!!」

ドゥッ!!

ドラゴン「渾身の一撃」

奴隷「防いで」

ドラゴン「かまわず振り抜く」

ガキーン!

奴隷「後退して」ザザー

ドラゴン「逃がさず追撃」

奴隷「その攻撃を、殴りかえす!!」

バゴッーーン!

ドラゴン「ぐぅ、見事だ」

奴隷「行くぞ!!」

奴隷「こっからは殴り合いだ!!」
 
123 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/04/08(日) 00:47:19.54 ID:9HG7st7A0

【90試合目 闘技場】

側近「ぬあぁぁぁ!! 二十五連・爆裂魔法!!」

ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!

奴隷「効くか!」ダッ!

側近「結界!」

ピキーン!

奴隷「今さらこんなもの!」

ドゴッ!

パリィーーン!

側近「ひぃぃ、こっちに来るなぁ〜〜!!」バチバチ

奴隷「その大振りな一撃を」
 
124 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/04/08(日) 00:49:08.18 ID:9HG7st7A0

【98試合後 下層空間】

ドラゴン「大振りな一撃を」

奴隷「かわして」

ドラゴン「かわさせて」

奴隷「剣を」チャキッ

ドラゴン「剣を…」

奴隷「突き刺す!」

ドラゴン「突き刺せ!」

ザシュ!

 
125 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/04/08(日) 00:51:38.80 ID:9HG7st7A0

【99試合目 闘技場】

道化「レディース、あ〜んどジェントルメン!!」

道化「な〜んて、言うとでも思ったか? この恥知らずの薄情者ども!!」

道化「おまえら全員はした金を誰に賭けたか言ってみろ!!」

観客「「「ユ・ウ・シャ!!!」」」

奴隷「」グッ

観客「行け勇者!」
観客「負けんなよ勇者!」
観客「お前に賭けたんだからな」

道化「僕も賭けたぞ勇者さま!」

観客「ユウシャ!」「ユウシャ」
「ユウシャ!」「ユウシャ!」「ユウシャ!」
「ユウシャ」「ユウシャ!」「ユウシャ!」

道化「さぁ、今日勝てばいよいよ明日は大詰め。 最後の山場」

道化「残す試合は、あと1つ」
 
126 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/04/08(日) 00:55:12.01 ID:9HG7st7A0
今日はここまでです

モンハン第二アップデートまでには更新したいと思います
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/08(日) 01:28:46.81 ID:2Mu4vjkDO

予定は未定って認識で良いんだな?
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/08(日) 01:29:49.41 ID:mDvxhf7QO

師弟関係熱い
129 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/04/19(木) 00:14:41.12 ID:dvLrF4HA0

衛兵「姫さま、お部屋にお戻りください」

姫「い〜や」トタトタ

衛兵「姫さま〜」

姫「お願い、ちょっとだけでいいんです。民の声が聴きたいの」

観客「なぁ、明日の試合どっち勝つと思う」
観客「あ〜?そりゃドラゴンよ」
観客「でもよ、あいつらグルなんだろ?」

姫「・・・・」キョロキョロ

観客「だから勇者の勝目があるってんだろ」
観客「そしたら勇者誕生だな!」

「うおぉぉ!ユウシャ!」
「ユウシャ!」「ユウシャ!」「ユウシャ!」

姫「ふふ、ユウシャ〜♪」

側近「んん!げふん!げふん!」

衛兵「ひ、姫さま?」

魔王「・・・・」

姫「お父さま……」

魔王「部屋から出るなと、命じたはずだが?」

姫「申し訳ありません……」

魔王「だがちょうどいい、あの浮かれきった民を観てみろ」

魔王「あの者達は奴隷が少し勝ったぐらいで余を倒せると本気で信じている…」

魔王「実に滑稽だとは思わんか?」

姫「・・・・」

魔王「黙ってしまったのは姫も同類だからか?」

姫「いえ…」
 
130 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/04/19(木) 00:18:41.73 ID:dvLrF4HA0

側近「んん、ところで姫さま! アレはどうしましたかな?アレですぞアレアレ!」

姫「アレ?」

衛兵「あ〜〜!! アレだろ?アレアレ?」

姫「アレ?」

側近「そ〜アレアレ!」シッシッ

衛兵「アレアレ!」グィッ

姫「アレってなんです?」

側近「魔王様、姫さまには急な用事がアレのようでして」

衛兵「はい、私が責任を持って、お部屋にお連れします!」

側近「アレですからな!」バイバ-イ

姫「アレってなんですか〜〜?」ズルズル

側近「いや〜アレだった〜〜」フー

魔王「ところで、道化の報告によると奴隷の対戦相手を姫に漏らした粗忽者がいるらしい」

側近「はうあ!!」
 
131 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/04/19(木) 00:22:29.86 ID:dvLrF4HA0

魔王「その粗忽者は終いには自らの手の内までさらしたらしい」

側近「お、お、お許しを…」

魔王「かまわん、もとより今の奴隷を倒せるとは微塵も思ってなかった」

側近「ほっ」

道化「あれ?そんなもんで許すんですか?」

側近「道化!何時から!?」

道化「万が一、勇者が100勝しちゃったりしたら反魔王の気運が高まっちゃいますよ?」

魔王「かまわん、刺激もない単調さに飽きてきたところだ」

道化「アレアレ? 姫さまも一枚噛んでるのに同じこと言えます?」

魔王「衛兵経由で情報がもれてる件か?」

魔王「若者は濁流を好み、大衆は若者が濁流に呑まれるのを好むものだ」

魔王「ならば余興として若者を濁流に突き落とすのも統治者としての務めだ」

道化「流石です魔王様、余興のためなら娘だろうと濁流に突き落としてみるそのお考え」

道化「なかなか出来るモノではございません」

側近「ど、道化よ、魔王様にそれはあまりにも無礼…」

魔王「ふふ、白状しよう」
 
132 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/04/19(木) 00:25:51.68 ID:dvLrF4HA0

魔王「余には野心と、野心のためにと温めてきた計画がある」

魔王「しかしいささか、計画にばかり心を囚われ余裕を無くしていたようだ」

魔王「遠方を見るが故にドラゴンに足元をすくわれ、醜態をさらす結果となった」

魔王「……言い訳にしかならんがな」

側近「そのようなことは…」

道化「ほんと、カッコ悪かったよね〜〜」

魔王「ふっ、確かに」

側近「道化!それはあまりにも…」

道化「ですがお気になさらず。これまでの失態も勇者のターンだっただけにございます」

魔王「そうだ、勇者となるならなればよかろう」

魔王「待ち構え、100戦目の決着がつき次第ドラゴンもろとも潰して終わりだ」

道化「そうですとも、終わっちまえばなんてことありません」

道化「耐えて凌げば、魔王様のターンでございます」

魔王「ふふふ、相変わらずよくまわる舌だ」

道化「恐悦至極」
 
133 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/04/19(木) 00:29:36.85 ID:dvLrF4HA0

魔王「それでは余のターンの最終確認だ」

魔王「道化、海に放った稚魚の様子は?」

道化「1000匹のリヴァイアちゃんなら瘴気とお友達を食べてぐんぐん成長」

道化「愛と裏切りのバトルロワイアルも佳境も佳境、2週間もすれば最強の大妖が誕生するかと」

魔王「祭壇の準備は?」

道化「言いつけに従い作業員の身辺調査をおこない」

道化「結果、疑わしき半数を粛清しましたが補充できたんで問題なし!」

魔王「善かろう。ならば明日、奴隷の処刑を最後に闘技場を封鎖しろ」

側近「しかし、それでは民に不満が」

魔王「構わん、血に飢えさせろ」

魔王「まもなく我らのターンが始まる」

魔王「リヴァイアサンによる濁流が地上にある一切合財を呑み込み」

魔王「残った大地を魔物が満たすことになる」
 
134 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/04/19(木) 00:34:49.54 ID:dvLrF4HA0

魔王「さあ、ついに地上侵略だ! 存分に楽しもうではないか」

魔王「女神が創った理を破壊し」

魔王「世界を魔界に!」

魔王「あらゆる生命は魔物に」

魔王「人は妖魔に」

魔王「理性を失い」

魔王「暴力と混沌のみが存在する」

魔王「そして余が! 余が望むように新たな理を塗り替えてやろう!」

道化「やんややんや」パチパチ

側近「・・・・」パチ..パチ..

魔王「ふふ、ふはっ、ふはははは、準備は万全。何を焦る必要があったのか?」

魔王「さあ、明日の試合を楽しもう!!」

魔王「奴隷の奮闘に期待し、ドラゴンの次なる一手を待つとしよう」

魔王「もし奴隷が力尽き、ドラゴンの一手が下らぬものなら覚悟しろ」

魔王「代償に、世界が滅びると思え」
 
135 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/04/19(木) 00:36:37.11 ID:dvLrF4HA0


【 最終戦 】


道化「レディース、あ〜〜んど! ジェントルメン!!」
 
136 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/04/19(木) 00:38:33.12 ID:dvLrF4HA0

道化「ここ、闘技場を舞台とした一幕もいよいよ大詰め!」

道化「二幕より舞台はついに、地上へと移されるわけでごさいます!!!」

道化「ここまで来られたのも皆さま方からの声援あればこそ…」

道化「この道化、関係者を代表して熱く御礼申しあげる次第であります」

ペコッ

道化「それでは、最後を締めくくるに相応しいカードを!」

道化「邪悪な魔王に対抗する女神のカードを!」

道化「今宵、皆様がご覧いたしますわ勇者さまの一大スペクタクルショー!」

道化「対するは神話の時代からの生きた伝説!」

道化「勇者対ドラゴンの一戦をお楽しみください!!」
 
137 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/04/19(木) 00:41:18.29 ID:dvLrF4HA0
今日はここまでです
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 01:02:24.81 ID:8/AhpePDO

待ってた
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 23:56:23.36 ID:XdkWy5ha0
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/20(金) 18:27:25.41 ID:fciclkWJO
乙わくわくするぞ
141 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 21:33:36.21 ID:l4n25ukA0

ゴブリン「合図だ!扉を開けろ!」

オーガ「鎖、引く」ジャラ

コボルト「わん!」ジャラ

ガッタン!

ガラガラガラガラ……

ゴブリン「しっかりな」

奴隷「・・・・」ジャリ

観客「ユウシャーー!!」

奴隷「・・・・」ジャリジャリ

観客「頼むー!勝ってくれーー!!」

観客「負けるなー!勇者さまーー!!」

奴隷「」ジャリジャリジャリ

観客「ユウシャ!」「ユウシャ」
「ユウシャ!」「ユウシャ!」「ユウシャ!」
「ユウシャ」「ユウシャ!」

奴隷「・・・・」

ドラゴン「はじめて会った時を思い出すな」

奴隷「ああ、俺もだ」
 
142 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 21:38:23.41 ID:l4n25ukA0

ドラゴン「それでも、すべて同じというわけでもない」

観客「ユウシャー」「ユウシャ!」「ユウシャサマー!」

ドラゴン「観衆の変わりようを笑うか?」

奴隷「別に? どうでもいい」

ドラゴン「そうか、彼らが変わったように勇者も変わった」

ドラゴン「勿論、良い方にだ。もう皆が心の底で勇者と認めるほど成長した」

奴隷「そんなことより、ここから逃げられるか?」

ドラゴン「そんなことより、か……」

ドラゴン「出口は封鎖され、上から無数の兵が狙っておる。隙を狙うしかあるまい」

奴隷「そっか」チャキ

ドラゴン「勇者よ、魔王に多くの者が苦しめられ、助けを求めておる」

奴隷「へぇ、で? そんなん俺の知ったことか」

ドラゴン「勇者よ、おまえを鍛えるための時間稼ぎとして100試合がどうしても必要だった」

ドラゴン「だが、もしも! もしも、勇者として立ち上がってくれるなら…」

奴隷「そんなつもりはない!!」

ドラゴン「理由がないからか?」
 
143 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 21:42:16.37 ID:l4n25ukA0

ドラゴン「姫に言っておったな、自分には魔王を倒す理由がないと」

奴隷「そうだったかな?」

ドラゴン「…儂はあの時。姫に理由がないと語った おまえを見て、少し腹が立った」

奴隷「?」

ドラゴン「分からんだろ?」

ドラゴン「勇者よ、お前は理由がないのではない」

ドラゴン「知らんのだ」

ドラゴン「何も知らず、知ろうともせず、拗ねて部屋の角でうつむいて」

ドラゴン「子どものまま狭い世界に閉じこもり」

ドラゴン「あの一言がどれほど姫を傷つけたかも気づいておらぬ!」

ドラゴン「儂はそれが! はらわたが煮え返るほど我慢ならんのだ!!」

ダンッ!

奴隷「いつもより速い!」

ガキーン!

奴隷「くっ、速くて……重い!」ザザー

ドラゴン「行くぞ勇者!」

ドラゴン「儂の屍を越えてみせろ!!」
 
144 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 21:47:52.63 ID:l4n25ukA0

奴隷「くっ」タッ

ドラゴン「退くな!」

ブォン

ガキーーン!

ドラゴン「竜を相手に退けば炎で焼かれる、勝機は前に進み掴みとれ!」

奴隷「わかってるよ!」ダッ

ドラゴン「ふん!」

ブオン!

奴隷「大振りの一撃を」

ドラゴン「かわさせん!」

ドゴッ!

奴隷「がはっ!」

ドラゴン「この期に及んで手を抜くようなことをすると思うな!」

奴隷「避けられないなら」

ガッキン!

奴隷「盾で受け流して」

ガッガッガッガッガッガッガッガッ

ドラゴン「盾で受け流して?」

ガッガッガッガッガッガッガッガッ!!

ドラゴン「ほら、どうする?」

ガッガッガッガッガッ

奴隷「くっ」

バキッ!

奴隷「盾が!」

ドラゴン「もとよりそれが狙いだ」

ドゴッシャ!

奴隷「がはっ!!」

観客「ああ〜勇者さま〜!」
観客「負けないでくれー!」
姫「奴隷さん!!」

ドラゴン「勇者よ、濁流が来る」

奴隷「げほっ!ごほっ!濁流?」

ドラゴン「濁流は地上を呑み込み、魔界は沈む」

ドラゴン「理由ならあるのだ!!」
 
145 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 21:51:23.74 ID:l4n25ukA0

ドラゴン「ここにいる皆だけではない。 勇者は世界を救わなくてはならぬ」

奴隷「それで? つまるとこ俺が勇者として魔王を倒せって?」

ドラゴン「うむ、そうだ」

奴隷「くっくっくっ…はぁ〜はっはっはぁ〜!」

ドラゴン「勇者……」

奴隷「知ったことか!!」

ダンッ!

ドラゴン「!!」

ガキーーン!

奴隷「勇者なんかくそ食らえだ!!」
 
146 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 21:54:36.14 ID:l4n25ukA0

奴隷「なんで俺がこいつらの為に戦わないとならない!」

ドラゴン「ぬ?」

ガキン!

奴隷「こいつらが今まで何をしてくれたって言うんだよ!」

カン、カン、カン、カン

奴隷「ウロコが硬すぎて剣じゃ斬れない?」

ドラゴン「いいぞ、儂の動きに慣れてきておる。そのまま胸の中の物をすべて出しきれ!!」

奴隷「だったら、拳で殴る!!」

ドゴッ!

ドラゴン「強くなった…」

奴隷「なんで反撃してこない?」

ドラゴン「約束通り戦いかたなら教えた、残さず教えた」

ドラゴン「竜の心臓にかけて、今の勇者なら魔王だとて倒せよう」

奴隷「心臓なんか要らないよ……」

奴隷「お父さん」
 
147 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 21:58:21.82 ID:l4n25ukA0

奴隷「お父さん…お父さん、お父さん!」

奴隷「ほんとのお父さんの、顔も思い出せないけど…。ずっと、そんな人を待ってたんだ…」

ドラゴン「情をかけすぎたか…」

ザシュ!

奴隷「おと、さ……ん?」

ドラゴン「掴んで」ガシッ

ドラゴン「投げる!」ブォン!

ドゴォォーーーーン!!

奴隷「戦いたくないんだ!」パラパラ

ドラゴン「追撃」

奴隷「くっ」サッ

ドガッ!

ドラゴン「避けたか…」

奴隷「もう止めてくれ!」タンッ

ドラゴン「ならば、これでなれならどうだ!!」コオォォォォ

奴隷「お父さん!!」

ドラゴン「行くぞ!最大5発のいっぱつめ!!」

ドラゴン「ドラゴンブレス!!」カッ!
 
148 :これでなれなら? ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:03:04.64 ID:l4n25ukA0

奴隷「!!」

ドゴォォーーーン!!

道化「おっほ♪これはこれは♪」

側近「直前で相殺でしょうか?」

魔王「まだまだ、これからだ」

ドラゴン「にはつめ!!」コオォォォォ!!

奴隷「この、わからず屋!」コオォォォォ!!

奴隷 ドラゴン「「ドラゴンブレス!!」」カッ

ドゴォォーーーン!!

ドラゴン「まだまだ!」

奴隷「ゼヒュ・・・」

ドラゴン「さんぱつめ!」コオォォォォ!

奴隷「」コオォ…

ドラゴン「ドラゴンブレス!」カッ

グォォォ!

奴隷「!」

ドゴォォーーーン!!
 
149 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:07:04.16 ID:l4n25ukA0

道化「決まりましたな」

側近「今の直撃で勝負ありですかね?」

魔王「ぷはっ、ふははっ」

側近「魔王様?」

魔王「ふふ、奴隷なら無事だ」

側近「土煙で何もみえませんが?」

魔王「それと、上で控えている人数を増やせ」

道化「なにやら、ご機嫌悪からざる様子?」

魔王「なに、いつかどこかで使ってくると思っていたのだが…」

魔王「なかなか、魅せてくれる」



ドラゴン「よんぱつめ!」コオォォォォ!

奴隷「よんぱつめ!」バッ

ドラゴン「ドラゴンブレス!」カッ!

奴隷「極 大 電 撃 魔 法 !」カッ!
 
150 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:14:19.53 ID:l4n25ukA0

バチバチバチ!

グォォォ!

ドゴォォーーーン!!

側近「また相殺?」

魔王「いや、奴隷の電撃が勝った」


ドラゴン「ぐわあぁぁぁ!!!」バチバチバチ

ドラゴン「ぐふっ」ドシャ

魔王「そして最大の攻撃が敗れた以上、勝負はついた!」

魔王「見事だ、最初の宣言通り100の勝利をもって、奴隷を勇者と認めよう!!」

魔王「そして去らばだ、ここから先に勇者は邪魔にしかならないのだ」


魔王「これより、勇者の処刑を執り行う!!」


ドラゴン「まったく、最近の若い者は年寄りを軽く見すぎておる……」

道化「魔王様! なんか企んでますよ!?」

ドラゴン「よわい万歳を越えた、年の功を見せてやろう」

ドラゴン「極 大 真 空 魔 法 !」

ブオオォォォ!!!
 
151 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:18:50.33 ID:l4n25ukA0

ブオオォォォ!!
 ビュオォォォ!!

観客「なんだこりゃ!?」
観客「竜巻だ!」
観客「逃げろ、まきぞえになる!」

ビュオォォォ!

魔王「最後の悪あがきだ! 構わんから竜巻が収まったら射て!」

側近「射撃用意!」

ビュオォォォ!

姫「奴隷さん……、ドラゴンさん……」

衛兵「姫様、行きましょう!」グイッ

姫「行くって何処に?」

衛兵「もっとあの2人がよく見える場所です」グイッ

姫「そうね、行きましょう」

カンカンカン

観客「姫さま?」
観客「危ないですよ」
観客「引き返しなっせ!」

衛兵「私の手を離さないで!」ギュッ

姫「は、はい!」

カンカンカン

衛兵「……修道院よりお戻りになられてからずっと、どうやったら護れるのか考えてました」

姫「あ、あなたは良くやっているわ?」

衛兵「・・・・」

カンカンカン

ビュオォォォ!

姫「ん、すごい風…衛兵さんは何か見えます?」

衛兵「姫様! あれを!!」

姫「どれ?」

衛兵「あれです!!」

姫「だから、どれ〜?」

衛兵「姫様、すみません」

ドン!
 
152 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:21:19.79 ID:l4n25ukA0

姫「え?」グラッ

衛兵「魔界の姫君を突き落とした、私をお許しください」

姫「きゃあぁぁ〜〜〜!!!」

ヒュゥゥ〜〜〜


バサッ!


バッサバッサバッサバッサ!!


ガシッ!!


側近「竜巻が止まった! 全員撃て!!」

騎士「ハッ!」カチャ

衛兵「撃つな! 姫がドラゴンに捕まった!!」

側近「なっ!」


ドラゴン「はぁ〜はっはっはぁ〜! 姫はもらった!!」バッサ!
 
153 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:25:38.54 ID:l4n25ukA0

姫「ドラゴンさん?」

奴隷「ドラゴン?」

ドラゴン「姫も勇者も落ちるなよ! このまま逃げる!」

道化「な〜にやってんの〜? 拘束まほ

ベシャ

ゴブリン「うっし、命中!」

道化「きっ…きえぇぇ〜〜〜!!」ゴロゴロゴロ

ゴブリン「へっへ〜、特性特大目潰しのお味はどうよ?」

オーガ「兄ちゃん、俺らも逃げる」

ゴブリン「おうよ」

ゴブリン「おまえらもいい旅になれよ、勇者様」
 
154 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:26:18.25 ID:l4n25ukA0

姫「ドラゴンさん?」

奴隷「ドラゴン?」

ドラゴン「姫も勇者も落ちるなよ! このまま逃げる!」

道化「な〜にやってんの〜? 拘束まほ

ベシャ

ゴブリン「うっし、命中!」

道化「きっ…きえぇぇ〜〜〜!!」ゴロゴロゴロ

ゴブリン「へっへ〜、特性特大目潰しのお味はどうよ?」

オーガ「兄ちゃん、俺らも逃げる」

ゴブリン「おうよ」

ゴブリン「おまえらもいい旅になれよ、勇者様」
 
155 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:29:56.49 ID:l4n25ukA0

側近「逃がすな! 飛べる者は追え!」

騎士「しかし、ドラゴンほど速くとなると…」

側近「言い訳するな! さっさと動け!!」

魔王「全員、動くな!!」

側近「へ?」

ドラゴン「ごはつめ!」コオォォォォ!!

側近「へ?へ?」

ドラゴン「ドラゴンブレス!」カッ!

魔王「五段・氷壁結界!」

ガコーン!

ドゴォーーン!

魔王「くっ」

ピシッ…

ミシッ…

側近「結界が砕かれる!?」

魔王「ぬぉぉぉぉ!余をだれと思っている!!」バッ

奴隷「魔王だろうが!」バッ


奴隷「極 大 電 撃 魔 法 !」

魔王「極 大 氷 結 魔 法 !」

ドゴッシュゥーーーン!!!
 
156 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:33:02.70 ID:l4n25ukA0

魔王「ゼェ……ゼェ……」

ドラゴン「くっくっくっ…」

バサッ!

バッサ!バッサバッサバッサバッサ!

魔王「ドラゴン……」ギリッ

側近「魔王様……」

魔王「追え、他はどうなろうと姫は無傷で連れ戻せ」

側近「お体のほうは…」

魔王「追え! 2週間以内に連れ戻せなければ、魔界に貴様らの居場所はないと心得よ!!」

側近「は、はいぃ!!」

バタバタバタバタ……

魔王「フゥ……フゥ……」

道化「まんまとやられちゃいましたね」

魔王「道化か…、今は貴様の戯れ言に付き合う気はない」

道化「そうでしょうね、ドラゴンロード♪」

魔王「貴様も行け」

道化「は〜い、目の腫れが治ったらね♪」

魔王「ハァ…ハァ…」

魔王「ふぅ…、耐え凌げぬものは甘んじて受けよう」

魔王「精々、幕間を楽しめ、まもなく余も向かう」
 
157 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:37:53.62 ID:l4n25ukA0

ドラゴン「くっくっくっ…はぁ〜はっはっはぁ〜! 上手くいったな!」

奴隷「上手くいったじゃねえよ!説明しろ!」

ドラゴン「はじめに隙を狙うしかないと言ったではないか」

奴隷「計画あるなら言っとけって意味だよ!」

ドラゴン「わるいとは思ったが、腹芸も出来ぬ勇者に話してバレでもしたら終わりなんでな」

ドラゴン「それに、おかげでお父さんと呼んでもらえたしな」

奴隷「な、ど、どっか行くあてはあるのか?」

ドラゴン「くっくっ、天井の裂け目を抜けて このまま地上に出る」

奴隷「地上に?」

ドラゴン「なに心配するな、土地勘なら魔界よりある」

奴隷「そうだろうけどさ…」チラッ

ドラゴン「残してきた者達なら手を打ってあるから心配しなくてよいぞ」

奴隷「なっ! あんな奴らの心配なんかしてねえよ、ただ俺はいきなり拐われた姫のことを…」

姫「ぷっはぁ〜〜〜♪」

奴隷「あ、うん、そんな気はした」

姫「あっはっはっはっはっ♪」

姫「うっふっふっふっ、さっきのお父様の顔……」

ドラゴン「はぁはっはっはぁ〜! 傑作でしたな!」

姫「ぷっはぁ〜〜〜♪」

奴隷「……ま、いっか」

ドラゴン「地上に出るぞ!」バサッ

 
158 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:43:18.96 ID:l4n25ukA0

バサッ

姫「うわぁぁ〜〜♪ これが、地上」

ドラゴン「夜か、好都合だ。暗いうちに出来るだけ離れる」

姫「きれいな天井…」

奴隷「姫、星です。俺にとっては数年ぶりの星空だ…」

姫「これが地上なんですね」

奴隷「地上に戻ってきたんだ!」

ドラゴン「さあ気を引き締めろ、冒険のはじまりだ」

ドラゴン「世界は広いぞ」

 
159 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/06/17(日) 22:44:52.54 ID:l4n25ukA0

今日はここまでです

遅くなってごめんなさい。次回から地上編になります
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/18(月) 01:15:05.30 ID:klJfFi0DO

待ってた
161 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/07/09(月) 00:07:12.39 ID:A/XBkrGA0

【逃走7日目 山間の宿場町】

宿屋亭主「おっ、そこのお兄さん! こっから山越えかい? 止めときな、次の宿につく前に日が暮れちまう」

旅人A「じゃあ泊まるか?」

旅人B「少しでも進んでおきたいのですが…」

道具屋「おう、騙されんなよ。今から歩きゃ夕暮れには山小屋につくからそこに泊まんな」

宿屋亭主「ばっ!あんな小屋なんぞ人が寝れるか!!」

旅人A「ありがとう、山小屋に行ってみるよ」

道具屋「礼はいいからなんか買ってくんな」

旅人B「ふふ、それでは薬草ください」

道具屋「まいど♪」

宿屋亭主「道具屋ぁ!!!」

道具屋「おぅ、文句なんのか?商売ってな非情なんだよ」

宿屋亭主「白黒つけたるわ!!」グワッ

道具屋「来いや!」チャキッ

「ま〜た、はじまった」
「あいつらも飽きないな」
「商いだけにね」
「すっかり宿場町の名物になっちまったな」


ズッズッズッズッズッ……

宿屋亭主「うぉ?なんか聞こえねえか?」
道具屋「んな子供騙しにひっかかるかよ!」

「キュイイィィィーーー!!!」

ドゴッッ!!

「うぉ、地震だ!」「でかいぞ!!」

ガタガタガタガタ

宿屋亭主 道具屋「きゃあぁぁ〜〜」ダキッ
 
162 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/07/09(月) 00:09:00.70 ID:A/XBkrGA0

【逃走8日目 山道の入り口】

役人「地震により地面が裂けて町ひとつ丸ごと呑み込まれたと報告があってな、悪いが安全が確認出来るまでここから先は通告止めだ」

 
163 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/07/09(月) 00:17:59.92 ID:A/XBkrGA0

今日はこれだけです

まあ、今まで後手後手だった魔王サイドもようやく攻勢に転じましたよってことで
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 00:56:26.47 ID:R+QG0EQDO
165 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/07/12(木) 15:16:21.34 ID:b9OypXhA0

女将さん「やだねぇ、ここら辺もなんだか物騒になってきちまった」

行商人「さて、向こうに行けないと困るんだがな」

役人「そうは言っても山ひとつ崩落してるんだ、道なんか残ってないぞ」

「おと〜さん、疲れたよ〜」
「宿場町に親族が…」
「さかな〜♪ さかなはいらんかぇ〜」

役人「ええい、うるさい!うるさい!我々だって混乱してるんだ!」

役人B「おい、行くぞ」

役人「とりあえず見てくるから待ってろ」

ぞろぞろ…

女将さん「はあ…、なんだか頼りないねぇ」

行商人「はは、まったくだ」

女将さん「ねぇ、あんた各地を回ってたらなんか噂でも聞かないかい?」

行商人「そうだな…、とりあえずよく聞くのはそこらじゅうで地震がおきてるって話だ」
 
166 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/07/12(木) 15:18:17.85 ID:b9OypXhA0

行商人「それから人探しの黒騎士の一団、これがひょっとしたら魔族じゃないかって噂だ」

女将さん「魔族!!?」

行商人「夜になると村を襲い、家に押し入ると腕に印がないか見てまわるらしい」

行商人「こういう…」ガリガリ

行商人「魔王の刻印だな」

女将さん「は〜やだやだ、すっかり物騒な世の中になっちまったじゃないか」

行商人「そうだな、おかげで国中検問だらけで商売あがったりだ」

女将さん「こんな時に勇者さまは何をしてるんだろうねぇ〜」

行商人「勇者か…」

行商人「最近めっきり聞くことが増えた、もっともギルドの人探し依頼としてだが」

女将さん「そういえば数年前に聖剣といっしょに勇者さまが消えちまったって噂話を耳にしたよ」

行商人「もしかしたら黒騎士達も勇者を探してるんかもな」

女将さん「あっはっはっ、まっさか〜〜」

がさがさ…
 
167 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/07/12(木) 15:20:23.17 ID:b9OypXhA0

がさがさ……

がさっ

旅人A「ふぅ、死ぬかと思った」

旅人B「大丈夫そう?」

旅人A「ん……、大丈夫」

旅人B「よかった〜、後ろから道が崩れて来た時はもうダメかと思いました」

旅人A「ほんとそれな!」

旅人A「まあ、この騒ぎのおかげで検問もなく潜り込めたんで結果オーライだぞ!」

旅人B「」ぐ〜

「さかな〜♪ここらじゃ絶対食べられない、海の幸だよ〜♪」

旅人B「」じ〜

旅人A「駄目です」

旅人B「え〜」

旅人A「だって山奥で海の幸だぞ、絶対高いって」

「やすいよ〜」

旅人B「ですって♪」

旅人A「はーー……、今日だけだからな」

旅人B「やったぁ〜♪ お魚屋さん、2匹くださいな♪」


奴隷「へぃ、まいど」
 
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/13(金) 02:01:21.76 ID:D+810F0DO
169 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 18:33:22.10 ID:9j4PztHA0

奴隷「それじゃあ魚の燻製2匹で銀貨2枚ね」

旅人A「たっか!!? 無理だな行こう」

旅人B「ちょっと待って、まけてもらえば買えないもないでしょう?」

奴隷「勝手に決められてもね、こっちも商売なんで」

奴隷「魚を燻すのから、ここまでの輸送もタダってわけにはいかんしな」

旅人A「はっはっはっ、売れるといいな」ノシ

旅人B「待ってください!」グイ!

旅人B「貯えなら家を出るときに少し持ってきたはずです」ヒソヒソ

旅人A「大事な逃走資金、贅沢するため持ってきたわけじゃないだろ」ヒソヒソ

旅人B「でも親族のお住まいまでもうすぐなんでしょう?」ヒソヒソ

旅人A「親族といっても遠縁で仕事もろくにないかもしれない、何より最近物騒だし出来る限りは節約しよう」ヒソヒソ

奴隷「ふふ」

旅人A「何だよ?」

奴隷「いや、ならこうしよう」

奴隷「ここに売れ残りの燻製が5匹ある。 こいつら合わせて銀貨2枚でどうよ?」

旅人B「それはお手ごろ価格ではないでしょうか♪」

旅人A「えらく気前がいいな?」

奴隷「なに、お2人さんを見てたら俺も帰りたくなってね」

奴隷「さっさと売って店終いしたいのさ」

旅人B「せっかくの申し出です買いましょうよ?」

旅人A「ん…しゃあないか」チャリ

奴隷「まいど」

旅人B「わ〜い♪ 見たことないお魚ですね、何か美味しい食べ方ってご存知ですか?」

奴隷「ああ、俺には魚の食べ方とかそんなん全然わからんわ」

奴隷「なんったって海のない魔界に長く居すぎて魚の味すら忘れてたからな」ハッハッハッハッ
 
170 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 19:07:26.44 ID:9j4PztHA0

旅人A「魔界!?」
旅人B「魔界!?」

奴隷「ハッハッハッ……口が滑ったな」

ざわっ… ざわざわ…

女将さん「やだよ、魔界だなんて薄気味悪いこと言って」

奴隷「じょ、冗談だから」

旅人A「冗談でも言っていいのと悪のがあるがな」

旅人B「まあまあ、きっとお家に帰るのが楽しみすぎて口が滑ったんですよ」

旅人A「ああ、そうだ燻製運ぶために馬車か何かで来てるよな? もし方向同じなら乗っけてってくれよ」

奴隷「ああ、ダメダメ、ドラゴンには…

旅人A「ドラゴン?」

ざわざわ…… ざわざわ……

「ドラゴン?」
「おい、誰か役人呼んでこい」

奴隷「人間だから、ドラゴンという名前の人間」

奴隷「別に大量の燻製もドラゴンに運んでもらってないし」

奴隷「そもそも口から火を吐かなければ、鼻から煙りも出ない」

奴隷「その燻製もドラゴンの鼻煙で燻してない」

旅人B「?!」

奴隷「ああ、変なこと言ったな、味は問題ないから」

奴隷「それじゃあ、さようなら」ダッ
 
171 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 19:20:22.06 ID:9j4PztHA0

奴隷「最後の最後でヘマして目立ってしまったな、買っておいた食料拾ってさっさと消えるか」ゴソッ

奴隷「…しっかし、米俵と味噌桶で買いだめする必要あるのかね?」

役人「不審な言動をしたのはおまえか!」

奴隷「違うよ?」

「嘘つき!魔界がどうとか聞いたんだからな!」

役人「嘘をつくとはいよいよ怪しい! ちょっと番所に来てもらおうか?」

奴隷(面倒だな、いかにも融通がきかなそうなタイプだ)

役人B「落ちつきなよ、そんな騒いで皆が不安になるよ」

奴隷(お?)

役人B「別に大事にしようってこともないんだ、ただ腕に魔王の刻印がないか見せてもらえればそれでいいんだ」

奴隷(こっちは疑ってないが職務に忠実で柔軟性があるタイプか、好印象)

役人A「そんなんだから相手に舐められるんだよ!」

役人B「まあいいじゃないか、街中ピリピリしてるからって私達までピリピリする必要はないだろう?」

奴隷(でもまさかこいつら、俺の腕に魔王の刻印があるとは思ってないんだろうな〜)
 
172 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 19:29:33.17 ID:9j4PztHA0

奴隷(さすがに見せたら大騒ぎになるよな…)

役人B「さ、ついて来てくれるね?」

奴隷(めんどうだな、逃げるか!)ダッ

役人A「逃げるたぞ!」

役人C「逃がすか!!」バッ!

奴隷「なぁ!?」

役人A「あらかじめ1人隠れてたのだ」

役人C「そう簡単には逃げれると思うな!」

奴隷「いやいや、余裕さ」スルッ

ダッ

役人A「なにしてんだ!」

役人C「す、すまん…」

役人B「さすがに怪しい、追おう」

奴隷「ハッハッ、去らばだ!」シュタッタッタッタッ


強面「ちょっと待ちな!!」


奴隷「今度は何?!」

チンピラ「おうおう、ここで商いするにゃあ俺っち達に挨拶するのが仕来たりなんだ」

強面「とりあえず、その手に持った荷物渡してもらうか」

奴隷「渡すかボッケェ!!!」ドゴッ!

強面「げほっ!」

チンピラ「アニキーー!!」

役人A「いたぞ!あそこだ!」

奴隷「ちっ」ダッ

チンピラ「ア、アニキ」

強面「なにしてる?こうなったら人数増やして役人よりも先に取っ捕まえるぞ!」

チンピラ「へ、へい!」
 
173 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 19:43:16.77 ID:9j4PztHA0

チンピラB「こっちにいやした!」

チンピラC「そっちに逃げたようでさ!」

チンピラD「あっちに行きやした」

チンピラE「あっち?」
チンピラF「どっち?」
チンピラG「こっち」
チンピラH「こっちってどっち?」

チンピラ「「「あそこだーー!!」」」

ドッドッドッドッ

奴隷「なんか増えた〜!?」シュタタタタ

役人A「くっ、なんなんだこれは?」

役人B「いや〜それにしてもあんなに荷物抱えてるとは思えない速さだね」

奴隷「あったり前だ! つい最近まで空腹が当たり前の底辺奴隷」

奴隷「大事な食糧死んでも放すか!!」


旅人B「放してください!!」
 
174 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 20:13:09.18 ID:9j4PztHA0

旅人B「放してください!」

追っ手A「さあ、捕まえましたよお嬢様」

追っ手B「お屋敷に戻りましょう」

旅人B「いやです!私は旅人さんと…」

旅人A「くっ、お前ら嬢さんに手荒なことをするな!」

追っ手C「おいおい、まずは自分の心配でもしな」

ドゴッ!

旅人A「ぐふっ」

旅人B「旅人さん!!」

追っ手D「旅人さん、だとよ?」

追っ手B「うらやましいね」

追っ手C「もうちょっと痛めつけたら俺らにも優しく話しかけてくれんじゃねえか、な!」

旅人B「やめてーー!!!」

ガッコーーーン!!!

追っ手C「ガッ!痛った……味噌?」

奴隷「1人目」

シュン

シュパーン!!

追っ手C「」ドシャ

追っ手B「えっ?えっ?」

奴隷「2人目」

ベシフッ!

ドッシューン!

追っ手B「」

追っ手A「んなろ!舐めんな!」チャキッ

ドスッ!

追っ手A「へっへっへっ…」

奴隷「3人目」

奴隷「お前は、お前が刺してダメにした米俵の分強めで殴る」

追っ手A「ま、待った!」

奴隷「問答無用」

ドゴッグシャ

旅人B「旅人さん!」

旅人A「嬢さん」

奴隷「ふたりとも下がってろ」

追っ手D「なっ、なんだ!? こいつら助けて何の得があるってんだ」

奴隷「あ? 俺にとっては同類のよしみ以上、商売人と客未満の間柄さ」

奴隷「つまり、こいつはただのアフターサービスだ!!」
 
175 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 20:28:16.47 ID:9j4PztHA0

旅人A「助けてくれるのか?」

奴隷「アフターサービスだって言ったろ?」

旅人B「あふたーさーびす?」

奴隷「知ってるか? 恋に恋する少年少女の背中を押すのは大人の義務らしいぞ」

旅人A「あんたのが年下じゃねえか」

奴隷「くっくっ、突然こんなん言われても胡散臭いよな?」

奴隷「でもちゃんと助けてもらったし、俺も助けてやる」

追っ手D「ふざけたこと言ってんな!!」

奴隷「諦めて寝てる連中つれて帰りな、お前らが束になっても俺には勝てん」

追っ手D「ぐぬぬ…」

役人B「おやおや、また騒ぎを起こしたのかい?」

追っ手D「いいとこに来た! あそこにいるのはある大富豪の一人娘だが話が上手い旅人にそそのかされて家出しちまった」

旅人B「なっ! そもそもは脂ぎった中年を私の婚約者に決めたお父様がいけないのです!!」

追っ手D「わがまま言っちゃいけやせんですぜ、それにあの人はお父様の大切な商売相手」

追っ手D「今までの贅沢だって脂ぎった中年親父のおかげで成り立ってやしたんで」

旅人B「だから私はこれから好きな人と自分の力で生きて行くと決心したのです」

旅人A「嬢さん…」
 
176 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 20:35:33.25 ID:9j4PztHA0

役人B「なにやら複雑な事情のようだね〜」

役人A「難しい問題に加担すると後が面倒だぞ」

追っ手D「お嬢さんのご両親はここいらにも顔がきく大富豪、恩を売っといて損はないぜ?」

チンピラA「だそうですよ?」

強面「そんなら買わせてもらうか」

チンピラB「おらおら」

チンピラC「いくらで売ってんだ?」

役人A「不味いことになって来たんじゃないか?」

役人B「まっ、逃がしたら責任問題になりそうだし捕まえようか?」

役人A「またそんな軽く」

追っ手D「形勢逆転だな」

旅人A「くそ!」

旅人B「どうやらここまでのようですね」

旅人A「あきらめるのか? これからは自分で決めるって誓ったはずだろ?」

旅人B「ままなりませんね」

追っ手D「そうでさ、お嬢様さえあきらめたら丸く収まるんでさ」

旅人B「ただし、条件があります! 魚屋さんは見逃してください」

奴隷「俺か?」

旅人B「せっかく助けに来てくれたのにこのような事になり申し訳ありません」

旅人B「それでも、どうか別の方々の背中を押してあけてください」

奴隷「・・・・」
 
177 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 20:53:59.68 ID:9j4PztHA0

奴隷「くっくっくっ…」

奴隷「はっはっはっはぁ〜はっはっはぁ〜!」

旅人B「魚屋さん?」

旅人A「おい、どうした?」

奴隷「まったく、安く見られたものだ…」

奴隷「これを見ろ!」ビリッ

 
178 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 21:00:43.83 ID:9j4PztHA0

行商人「その刻印は!?」

女将さん「ちょっとやめてくれよ、いきなり大きな声だして」

行商人「間違いねえ、あれこそ魔王の刻印」

行商人「黒騎士騒ぎで持ちきりの王都で散々見たから間違いねえ!」

奴隷「くっくっくっ…、どうやら説明する必要はなさそうだな」

奴隷「聞け! 愚かなる地上の人間どもよ!!」

奴隷「我こそは魔王様直属の中から選び抜かれて、なんやかんやして地上侵略のため潜伏していた魔王軍が尖兵」

奴隷「魔王様による地上侵略はすでに開始されており、度重なる地震もやがて押し寄せる濁流の予兆に他ならない」

奴隷「だが、そのことに気づかず のほほんとバカ面下げた貴様達が哀れだから俺様が親切にも次の地震の発生地点を教えてやろう」

旅人B「突然どうしたんでしょう?」

旅人A「シッ」

奴隷「そう! 気づいた者もいるだろうが次の震源はここだ!!」

奴隷「さぁ、残された時間は10秒! 愚鈍な衆目よせいぜい逃げ惑うんだな!」

奴隷「10」
 
179 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 21:18:17.94 ID:9j4PztHA0

奴隷「9」

追っ手D「……まさかとは思うが信じた奴はいねえよな?」

役人A「いや、あまりに突然で混乱してる…」

役人B「はは、どんどん聞くこと増えてくね〜」

奴隷「8…」

チンピラ「アニキ!」

強面「へ、ビビんなよどうせハッタリだ」

奴隷「7…」

旅人A「助けてくれて礼を言うよ、そのカウントが終わったら俺が足止めするからお嬢さん逃がしてくれないか?」

奴隷「6…、追っ手の数をこれ以上増やすのはごめんだな」

奴隷「そうだろ?ドラゴン!!」

ドラゴン『言うようになったではないか』

バサッ!

バサッバサッバサッバサッ

ドスン!

ドラゴン「グガアァァァァッッ!!!」

役人「」

追っ手「」

強面「」

チンピラ「」



奴隷「3!!」
 
180 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 21:30:08.49 ID:9j4PztHA0

強面「きゃあぁぁぁ!!」ダッ

チンピラ「あ、アニキー待ってくだせえ〜」

役人A「あわわわわ」

役人B「みんな逃げろ〜」

「助けて〜」
「急げ〜」
「地震が来るぞ〜」

追っ手A「んん、何事?」

追っ手D「ぼさっとすんな!」

奴隷「2…」

旅人A「俺達もこの隙に」

旅人B「あの、でも…」

奴隷「1…」シッシッ

旅人B「あのあの、ありがとうございました! 買ったお魚はよく味わって食べますね」

旅人A「行くぞ」


奴隷「0」


シーーン…


ドラゴン「くっくっくっ、はじめての人助けの感想は?」

奴隷「悪くない」
 
181 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/08/09(木) 21:30:54.18 ID:9j4PztHA0
今日はここまでです
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/10(金) 00:36:43.70 ID:gp87dWoDO
乙乙
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/18(土) 18:52:20.31 ID:OB72JOSR0
追いついた、面白い
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/18(土) 21:07:33.71 ID:1C2R9HpoO
おつおつ
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 17:25:36.50 ID:iNfHX798o
面白い
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/15(月) 23:43:07.27 ID:5yljyGOWo
待ってるよ
187 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/16(火) 23:32:29.17 ID:sPTcozIA0
書き込みテスト

なんか復活してから変なんだがガラケーだから?
188 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/16(火) 23:34:53.75 ID:sPTcozIA0

ドラゴン「くはっ、悪くないか!!」

奴隷「うっさい! あんなん勢いだよ! い・き・お・い!!」

ドラゴン「照れんでよいではないか、あの2人に自分たちを重ね合わせたのだろう?」

奴隷「なっ…」

ドラゴン「帰るぞ、姫へも土産話に聞かせてやろう」

バッサ!

奴隷「そこまで分かってんなら止めてくれ!!」

バサバサバサッ!!

ドラゴン「はぁ〜はっはっはぁ〜、悪くない悪くない」

奴隷「調子悪いのか? 低く飛びすぎじゃないか?」

ドラゴン「何を言う…」

ドラゴン「助けた2人がちゃんと逃げられたか気になって仕方がないようだからこうして危険をかえりみず…

奴隷「はいはい! 見つけた! 見つけたからさっさと帰るぞ!!」

ドラゴン「了解、少し散歩を楽しんでからな」

バッサ!

奴隷「お、おい」

ドラゴン「飛ばすぞ! しっかり捕まってろ」
 
189 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/16(火) 23:36:25.13 ID:sPTcozIA0

奴隷「お、おい!速い!」

ドラゴン「はぁ〜はっはっはぁ〜、やはり良い! 地上の空は格別よ」

バッサ!バッサバッサ!

奴隷「速い、速い!」

ドラゴン「限界を気にせず何処までも高く続く青空」

バサバサ!

奴隷「たっ、高……い、いきが…」

ドラゴン「無粋な天井で圧迫されることのない解放感」

グルン!グルン!グリーーン!

奴隷「落ちる!墜ちる!」

ドラゴン「太古の血がたぎる! 久しぶりに飛ばすか!!」

奴隷「まだ飛ばす気か?!」

ドラゴン「何を言う? これからに比べたら今までのは準備体操にすぎぬ」

バシューーン

奴隷「あが、あがががががが」

ドラゴン「感じるか? この全身を打ち付けておる衝撃!!」

ドラゴン「ただの空気も音速に近づけば最早凶器」

奴隷「限界、手、指、感覚ない…」プルプルプル

ドラゴン「だが、儂らは速度をさらに増し音速の壁を超える」

奴隷「も…やめ……」

ドラゴン「遠慮するな、生身で経験するのは人類史上2人目の貴重な体験だ♪」

バシュッ

 
190 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/16(火) 23:49:25.21 ID:sPTcozIA0

ドラゴン「どうだどうだ? 音速の世界は?」

シュバァーーーン!!!

ドラゴン「黙ってないでなんかないのか?」

ビューーーーン……

ドラゴン「勇者?」




奴隷「」←落下中



ドラゴン「ユウシャーーー!!!!」
 
191 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/16(火) 23:51:51.28 ID:sPTcozIA0

奴隷「死ぬかと思った」

ドラゴン「すまんすまん、はしゃぎすぎたな」

奴隷「今どこ飛んでんだ?」

ドラゴン「右手にさきほどの街が見えるの」

奴隷「なっ!? 周回して戻ってきてるってどういうことだよ?」

ドラゴン「最近目が霞んで…」

奴隷「ジジイか!」

ドラゴン「魔王の追っ手に見つかる前に早くこの場から離れるぞ」

奴隷「真っ直ぐ飛んでりゃそんな心配しないですんだんだよ!!」

ドラゴン「平衡感覚も狂ってるかもしれんな?」

奴隷「そんな状態で人を乗せるな!」

ドラゴン「まあまあ、近ごろ話題になっておる地震の大穴もよく見えるぞ」

奴隷「もしかして穴見せたかったのか?」

ドラゴン「くっくっ、ただの老化現象よ」

奴隷「・・・・」

奴隷「なぁ、
ドラゴン「却下」
 
192 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/16(火) 23:53:47.95 ID:sPTcozIA0

奴隷「まだ何も言ってないだろ?」

ドラゴン「『なぁ、おまえだったら地震の予測が出来るんじゃないか?』『もし出来るんならあらかじめ知らせて避難させられないかな?』」

奴隷「ぐっ、当たってる…」

ドラゴン「返事は却下」

奴隷「なぜ?」

ドラゴン「その1 地震予測は不可能」

ドラゴン「この地震は下にいる妖魔が暴れて発生しておる」

ドラゴン「妖魔のその日の気分なぞ儂には預かり知らぬ」

ドラゴン「その2 罠の可能性」

ドラゴン「知っての通り、儂らは現在多数の追っ手より追跡されておる」

ドラゴン「見つけられぬ追っ手が業を煮やし儂らを誘き寄せ餌として喧伝することもあり得る」

ドラゴン「その場合、餌に食い付けば有効と判断され地震の頻度が増えるかもしれぬ」

奴隷「ぐぬぬ…」

ドラゴン「その3」

奴隷「まだ有るのか!!」

ドラゴン「儂にその気がない」

奴隷「しょうもないけど そういうことか…」
 
193 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/16(火) 23:58:05.42 ID:sPTcozIA0

奴隷「う〜ん、そうか〜〜」ゴロン

ドラゴン「人を助けたいという心意気は買うがな」

奴隷「ひどい穴だな…」

ドラゴン「ああ、あそこで住んでいた住人にとっては一足早い魔王の進攻に感じただろうな」

奴隷「こんな穴がそこらじゅうにあるのか?」

ドラゴン「いやいや、ここまで大きいのは10もいかぬ」

ドラゴン「最初は気づかぬ程度の振動」

ドラゴン「それから徐々に山が崩れるまでになり、魔界まで貫通するような穴は最近になってようやくといった具合か」

奴隷「規模が大きくなってる?」

ドラゴン「成長するからな」

ドラゴン「今ならちゃん&tけは失礼にあたる」

奴隷「なぁドラゴン…」

ドラゴン「ん〜? トイレか?」

奴隷「俺に話してない事って、後どれぐらいある?」

ドラゴン「山のようにあるが全部話したらきっと勇者も怖じ気づくから言わん」
 
194 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/17(水) 00:02:53.49 ID:3wrOhc9A0

奴隷「う〜ん、そうか。そうかもな…」

ドラゴン「だが機嫌が良いから質問には答えてやろう」

奴隷「ふむ」

奴隷(妖魔がおこし地震とそれによって空いた大穴…)

奴隷(目的はおそらく魔王の侵攻…。ドラゴンがよく使ってる言い方なら濁流…)

奴隷(ん、濁流? 濁流って何だ?)

ドラゴン「良い傾向だな」

奴隷「どこが? そろそろ始まるんだろ?」

奴隷「隠したってそれぐらい分かるんだからな」

ドラゴン「儂が言っておるのは勇者の事よ」

奴隷「俺の? 俺がなんだよ?」

ドラゴン「だいぶ裾野が広がったのではないか?」

奴隷「そりゃ空飛んでるしな」

ドラゴン「儂が思うに大人と子供の違いは認識している世界の広さの違いだ」

ドラゴン「たった4か月にもなるかならぬかの月日だが、部屋の隅で丸まっていた頃とは ずいぶんと変わったのではないか?」

奴隷「あの頃は…」

奴隷(あの頃は多分何も考えてなかった。 自分の境遇だけが全てで辛い時間が はやくすぎるようにと思考を止めて…)

ドラゴン「まあ、儂のおかげだが」

奴隷(だけど、それはシャクだな)

奴隷「あの頃は世界平和について考えていたよ」

ドラゴン「くはっ
195 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/17(水) 00:07:02.09 ID:3wrOhc9A0

奴隷「う〜ん、そうか。そうかもな…」

ドラゴン「だが機嫌が良いから質問には答えてやろう」

奴隷「」フム

奴隷(妖魔がおこし地震とそれによって空いた大穴…)

奴隷(目的はおそらく魔王の侵攻…。ドラゴンがよく使ってる言い方なら濁流…)

奴隷(ん、濁流? 濁流って何だ?)

ドラゴン「良い傾向だな」

奴隷「どこが? そろそろ始まるんだろ?」

奴隷「隠したってそれぐらい分かるんだからな」

ドラゴン「儂が言っておるのは勇者の事よ」

奴隷「俺の?なんの事だよ?」

ドラゴン「だいぶ裾野が広がったのではないか?」

奴隷「そりゃ空飛んでるしな」

ドラゴン「儂が思うに大人と子供の違いは認識している世界の広さの違いだ」

ドラゴン「たった4か月にもなるかならぬかの月日だが、部屋の隅で丸まっていた頃とは ずいぶんと変わったのではないか?」

奴隷「あの頃は…」

奴隷(あの頃は多分何も考えてなかった。 自分の境遇だけが全てで辛い時間が はやくすぎるようにと思考を止めて…)

ドラゴン「まあ、儂のおかげだが」

奴隷(だけど、それはシャクだな)

奴隷「あの頃は世界平和について考えていたよ」

ドラゴン「くはっ!そうか、なら今と変わらんな」
 
196 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/17(水) 00:10:58.65 ID:3wrOhc9A0

ドラゴン「だがあまり心配するな、儂らが姫を押さえておる限り魔王も無茶は出来ぬ」

奴隷「そうかな?」

ドラゴン「そうとも。 そして儂らがこのまま逃走を続けてゆけば、育ち過ぎた妖魔を必ず魔王がもて余すようになる」

奴隷「そう都合よくいくかね?」

ドラゴン「行くさ、人間がまだ洞窟で暮らし獣を狩っていた時代から見守り続けた儂の、人間観察眼を信用しろ」

奴隷「お、おう…また話が壮大になったな…」

ドラゴン「かつて、人びとはより多くの餌を求め安住の地を後にし、直線距離にして何万キロもの広大な世界を細かい枝分かれを繰り返し群れを形成し、拡散した無数の群れが村を作り、国を成した」

ドラゴン「そして儂は一部の群れで神を騙り、貢ぎ物で働くこともせず人間観察に明け暮れた」

奴隷「ちっさ! スケールでかいくせにやってること ちっさ!」

ドラゴン「ところで勇者よ」

ドラゴン「魔王が何故こんなにも地上侵略に固執するか解るか?」

奴隷「そりゃあれだよ・・・・支配欲とか?」

ドラゴン「地上侵略は魔界に生きる民の望みなのだ」

ドラゴン「だからこそ魔王を討っても止むことはない」
 
197 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/17(水) 00:15:20.09 ID:3wrOhc9A0

ドラゴン「まあ、分かりやすい言葉を使うなら」

「自分たちは飢えと病で苦しいのに地上の人間ばかりが笑ってるのはシャクだ」

ドラゴン「というように魔界の民は常に地上の人間を羨み」

ドラゴン「地上の人間もまた、絶え間ない侵略に悪感情を持つようになる」

ドラゴン「そして女神によって分割されたという過去が容易く善悪の概念を産み、わだかまりを解くという努力を放棄させてしまった」

奴隷「ちょっと待て! いったい何の話しだ?!」

ドラゴン「地上は美しい。 飢えと病で荒れ果てた魔界とは大違いにな」

ドラゴン「そして魔界の苛酷な環境で生きるために虐殺行為を知らず知らず黙認してきたのは間違いではなかったか……」

ドラゴン「と、いうことに地上に来て気付いた」

奴隷「ドラゴン…」

ドラゴン「わだかまりを解く道」

ドラゴン「困難なあまり忘れ、儂では不可能だった選択だが…」

ドラゴン「地上で産まれ、魔界で育った勇者ならば道が開けるかもしれぬな」
 
198 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/17(水) 00:18:53.71 ID:3wrOhc9A0

ドラゴン「だがまだ遠い先の話だ。 頭の隅にでも覚えておけ」

奴隷「その話、姫は?」

ドラゴン「知っているかと? まさか、男が腹を割る時は女に見せるものではないぞ」

ドラゴン「不粋だしカッコ悪いからな」

バサバサ…

ドラゴン「着いたぞ、今はとにかく逃げることが先決だからな」

バサ…

ドスン!

タッタッタッ...

姫「お帰りなさい、お食事のしたくが、出来てますよ♪」

奴隷「ぁ…」

ドラゴン「もうちょっと普通に出来ぬか」ベチッ
 
199 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/10/17(水) 00:22:44.18 ID:3wrOhc9A0
今日はここまでです

>>194は投下失敗しました。やっぱり変みたいです

もうちょっと今後のための布石設置に付き合ってください
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 01:30:10.91 ID:NVS2Yo/TO
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/20(土) 22:03:39.65 ID:i9GMUmvE0
おつおつ
202 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/28(水) 23:49:00.37 ID:dXnUiaqA0
更新します
203 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/28(水) 23:51:00.90 ID:dXnUiaqA0

姫「天気がいいし外で食べませんか?」

ドラゴン「良いですな、儂も小屋の中に首をつっこまなくてすむ」

奴隷「俺が運ぶよ」

姫「今日はお2人が留守の間に小人さんから野菜をもらったので鍋にしました」

奴隷「」カチャカチャ

ドラゴン「小人? ふむ、この近辺ならホビットの集落があったかな?」

姫「分かりませんが皆さん立派なお髭をはやされた…」

ドラゴン「それならばドワーフですな。 彼等には儂から頼み事をしていたので顔を見せに来たんでしょう」

奴隷「例の神と偽って貢ぎ物もらってた奴らか?」

ドラゴン「ぐっ、いや…。それはずっと昔の話だ」

姫「え?え? 神と偽る?」

奴隷「なんか昔そんなことしてたらしいですよ」

ドラゴン「いやいや、まだ人が洞窟で暮らすような大昔のことですぞ」

姫「は〜それでは わたしも貢ぎ物を…と言いたいところですが」

ドラゴン「干し肉の状態を確認したいので食事はけっこう」

姫「ドワーフさん達が麦酒を樽ごと置いていったのですが?」

ドラゴン「素晴らしい、いただきましょう」

奴隷「明日は干し肉を売りに行けばいいのか?」

ドラゴン「いや、そう思っていたが儂らの保存食にしよう」

ドラゴン「勇者が売り歩く度に騒ぎを起こしてはいずれ追手に見つかってしまうのでな」

姫「あ〜、はじめてのお使いは失敗でしたか」

ドラゴン「なんだか最近、姫の物言いが辛辣だとは思わぬか?」ボソッ

奴隷「遠慮がなくなって良いことじゃないか?」ボソッ

姫「何か?」

ドラゴン「いやいや、おまえも一杯どうだと」

奴隷「え〜」

姫「では、一杯だけ♪」

奴隷 ドラゴン「「え〜〜」」
 
204 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/28(水) 23:54:34.42 ID:dXnUiaqA0

姫「えへへ、どれ〜さ〜ん♪」スリスリ

奴隷「ま、こうなると思った」

ドラゴン「えへへ、ゆ〜しゃ〜♪」スリスリ

奴隷「こっちは予想外」

姫「ごはん美味しい? 奴隷さんを想っていっぱい作ったの」

奴隷「え、ええ…美味しいですよ?」

姫「ほんと?」

奴隷「ええ、こんなに美味しい食事ははじめてです」

ドラゴン「む〜〜、勇者これ食べて!」ズボッ

奴隷「ぐふっ!」

ドラゴン「干し肉美味しい?勇者のためにいっぱい作ったの」ズボズボ

奴隷「ん〜〜ん〜〜」

ドラゴン「えへへ、勇者かわい〜♪」

ドラゴン「ほんと…」

ドラゴン「いつもはここで離れろと騒ぐくせに、姫の抱き心地が惜しくて玩具にされるがままの勇者かわい〜」

奴隷「離れろーー!!」ゲシッ

 
205 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/28(水) 23:57:50.40 ID:dXnUiaqA0

奴隷「おまえさては酔ってないな!」

ドラゴン「当然、この程度の酒など儂にとっては白湯みたいなものよ」

奴隷「離れろ大型爬虫類!」ゲシッゲシッ

姫「SAー!YUー!」

奴隷 ドラゴン「「!!??」」

奴隷(え?え?いまの何?)

ドラゴン(白湯? )

姫「えへへ」グビグビグビ

ドラゴン(む、いかん。いつの間にやら酒の量がすごいことになっておる)

姫「はじめて飲むけどおいしいですね♪」グビグビグビ

奴隷「あの…そろそろ止めないと…」

ドラゴン「お、おう…勇者が良いこと言いましたぞ」

奴隷「おい! おまえが飲ませたんだろ」

姫「ああーー!!」

奴隷「今度は何?」

姫「忘れてました! 小人さんからお届けものがあるのでした!!」ヨイショ!

奴隷「あ、俺がとりに行こうか?」

姫「えへへ、だいじょてすよ〜」

奴隷「言えてない」

姫「しんぱいししゅぎですよ〜♪」フラフラ

奴隷「あ〜足どりもあやしくなって…」

ドラゴン「でも酔った姿も可愛いと思った勇者であった」

奴隷「おまえもう喋るな」
 
206 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/29(木) 00:01:09.84 ID:QRwq3FvA0

奴隷「…そんなこと思ってない」

ドラゴン「いいじゃん、いいじゃん。もっとぶっちゃけようではないか」ガシッ

奴隷「あ、こいつも酔ってる」

ドラゴン「いいか?昔のことわざに無くて7癖≠ニあってだな。 普通を自称する者も7つは性癖をこじらせてるそうだ」

奴隷「意味ちがってないか?」

ドラゴン「これでも心配しておるのだ、将来姫から…」

ドラゴン(裏声)「わたしのどこが好きですか?」

奴隷「姫のつもりならキモいだけだぞ」

ドラゴン「それに対し…」

ドラゴン(高音)「え?え?ぜ、全部?」

奴隷「おい、それ誰のマネだ?」

ドラゴン「それを聞いた姫は…」

ドラゴン(低音)「は〜…、それ、予想してた中で1番つまんない理由だから」

ドラゴン「などと失望されることに…」シクシク

奴隷「タチ悪い!こいつの酔い方タチ悪い!」
 
207 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/29(木) 00:07:36.37 ID:QRwq3FvA0

ドラゴン「ふむ、腕を持ち上げた時に筋ができるであろう?」

奴隷「うん?」

ドラゴン「そこにできるウロコと筋肉との境目が昔から好きでな」

奴隷「う〜ん? で?」

ドラゴン「くっくっ、メスってオスに比べてウロコが滑らかであろう?」

奴隷「う〜ん?初耳」

ドラゴン「だがそこだけガサガサになっておるのが逆にそそるのだが…。 解るであろう?」

奴隷「う〜ん、わからない」

ドラゴン「わからぬか? まずオスが全身ガサガサだろ? で、メスはシットリ…でもそこだけガサガサ」

奴隷「うん。わからない」

ドラゴン「そうか、では幼い子竜が飛ぶ時に羽根が」

パタパタ…
パタパタ……
パタパタ………

バ ッ サ ッ !!

ドラゴン「この飛ぶまでのパタパタ感がたまらないのだが」

奴隷「知らねえよ! パタパタ感なんて初めて聞いたよ」

奴隷「おまえあれか? 自分の性癖を暴露してるつもりならもっと人類によってくれないと共感できねえよ」

ドラゴン「羽根のパタパタといってもあれだぞ?」

ドラゴン「つまりは飛行の拙さを照れて笑ったその笑顔が愛らしいと言うわけだ」

奴隷「ああ、それなら…」

ドラゴン「共通部位あげたら瞬殺とは、ちょっとチョロすぎぬか?」

奴隷「甘やかすんじゃなかった〜」
 
208 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/29(木) 00:12:43.48 ID:QRwq3FvA0

ドラゴン「ん?ん? その照れ笑いはどこで見たのだ? いつの姫の笑顔だ?」

奴隷「もうなにも喋らない」

ドラゴン「まあ、焦らす気はない」ニヤニヤ

ドラゴン「姫が聞き耳をたてておるしな」

奴隷「なっ!」

姫「ち、ちがいますよ? 戻ったら楽しそうでしたから邪魔しちゃ悪いと…」

ドラゴン「くっくっ、それでは姫さま、ドワーフの土産は?」

姫「はい、これです」

奴隷「筒?」

ドラゴン「地図だ。 以前、機会があれば竜の巣を見せると約束していただろ?」

ガサッ

ドラゴン「情けない話だが地上に出るのも800年ぶりになると自分の棲みかもわからぬ」

ドラゴン「そこで800年前が爺さんの爺さん世代ぐらいの長命な亜人種ならまだ言い伝えとして伝わっておる者がいるのではと思ってな」

奴隷「仲良いのか?」

ドラゴン「仲は悪いが頻繁に遊びに行っておった」

ドラゴン「金色の巣にはドワーフの作る宝物は必須だからな」

奴隷「タチが悪いのは昔からか」

ドラゴン「人聞きが悪い。 今も昔も土産をもらっているだけだ」
 
209 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/29(木) 00:16:12.13 ID:QRwq3FvA0

ドラゴン「儂の棲みかとした山脈は大陸を南北に遮ってな。 北方は交易路の中継地として世界中の貿易品が集まり。 南に広がる温暖な穀倉地が豊穣の恵みを与えてくれ。 それぞれ違う楽しさがあった」

ドラゴン「そして東に見栄るはドワーフ鉱山、西にはエルフの森! みっつの種族の境界、よっつの国を遊び相手とした賑やかで愉快な毎日であった…」

姫「面白そうですね♪」

奴隷「早速行こうぜ」

ドラゴン「あわてるな、地図は2枚ある」

ドラゴン「まずこちらの世界地図には印がある」

ドラゴン「そしてこっちが印の箇所の地図…」

ドラゴン「・・・・」

姫「ドラゴンさん?」

奴隷「どうかしたか?」

ドラゴン「なにやら地図の余白に文字が書いてあるが…。 すまんが代わりに読んでくれぬか?」

奴隷「別にいいけど…」

奴隷「え〜っと、親愛なるドラゴン…」
 
210 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/29(木) 00:19:44.19 ID:QRwq3FvA0

ドワーフ「親愛なるドラゴン」

ドワーフ「と言っても顔見知りでもなんでもないが…」

ドワーフ「とにかく、俺のひいひい祖父さんの遺言でドラゴンには親切にしてやれとあるから教えてやる」

ドワーフ「自分の巣の場所がわからないから俺たちの鉱山を目印にしたいらしいが、鉱山はひい祖父さんの代で閉山しちまった」

ドワーフ「原因は石が採れなくなったことと、交易を任せていた北の国が滅んだかららしい」

ドワーフ「そのころには南も駄目になっちまって、おまけにエルフは森が枯れるって移っちまった」

ドワーフ「まあ、そんなこんなで喧嘩相手がいなくなって閉めちまったらしい」

ドワーフ「もう彼処は誰も寄りつかない荒野だ」

ドワーフ「だから巣を探すときは一先ず北に残った遺跡を目指すといい。 暗い話題ばかりもつまらんから景気づけに麦酒を贈る」

ドワーフ「追伸。 ドラゴンがいなくなってから財宝目あてに巣を探す連中の話をよく聞くが、見つけたと聞いたことはないから荒らされる心配はしなくていいぞ」
 
211 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/29(木) 00:24:44.01 ID:QRwq3FvA0

奴隷「だってさ…」

ドラゴン「・・・・」

姫「あ、あの…」

姫「なんでもないです…」

ドラゴン「くっくっ、余計な気遣いなどいらぬ。儂のような幾万を越える歳月を生きたら人の一生など一瞬。 よくあることと笑ってすませる」

奴隷「ドラゴン…」

姫「無理しまいでください。 わたしの知るドラゴンさんはそんな方ではありませんよ?」

ドラゴン「買いかぶり過ぎなのです。 それにあの地には悪い思い出も多い…」チラッ

奴隷「?」

ドラゴン「儂の巣となる山裾をわけた4つの国は仲が悪くてな。 争いが絶えなかった…」

ドラゴン「争いはいつも些細な火種から始まり、一度火がつけば消す者もおらず」

ドラゴン「儂もそれを止めることなぞ考えることなく、逆に黄金を略奪する好機としか思っておらぬ有り様…」

ドラゴン「人々を襲い、傷つけ、殺し、喰らい、恐れられ…」

ドラゴン「そんな時だ」

ドラゴン「儂の前に勇者を自称する男が現れたのは」
 
212 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/29(木) 00:27:59.23 ID:QRwq3FvA0

【800年前 竜の巣】

自称勇者「くっくっくっ、おまえがこの近辺を荒らしているエルダードラゴンだな?」

ドラゴン「貴様が勇者だと?」
 
213 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/29(木) 00:31:38.53 ID:QRwq3FvA0

自称勇者「いかにも、俺こそ勇者だ!」

自称勇者「しかし俺が勇者と名乗る前に見抜くとは…。 やはりエルダードラゴンともなれば人を見る目も違うもんだ」

ドラゴン「いや、その…首から下げた木札に書いてあるではないか?」

自称勇者「ああ、気にするな。 これはこの地に来て最初に訪れた村の奴らがやったことだ」

ドラゴン「そ、そうか。 ところで何故縛られておる?」

自称勇者「それは二番目に訪れた村の連中に縛られたからに決まっているだろ?」

ドラゴン「う、うむ…まあそれは正直どうでもよい? よくはないが…その……」

ドラゴン「どうして全裸なのだ?」

自称勇者「はぁ〜はっはっはぁ〜! どうやらエルダードラゴンとやらも大したことはないな!」

自称勇者「知らなければ教えてやろう! 平和のためなら屋外露出魔になることも躊躇わない者」

自称勇者「それを勇者≠ニ呼ぶのだ!!」
 
214 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/11/29(木) 00:33:38.23 ID:QRwq3FvA0
今日はここまでです
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/11/29(木) 13:55:55.32 ID:nanBucOdO
ただの生け贄だろこれ
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2018/11/29(木) 15:39:05.20 ID:EdO2qjIQ0
勇者(意味深)
217 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/25(火) 23:41:29.17 ID:OMFu6NOA0
更新します
218 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/25(火) 23:44:09.42 ID:OMFu6NOA0

ドラゴン「儂が知ってる勇者と違う」

自称勇者「あんたは想像したとおりの邪悪なドラゴンって感じだ」ブチッ

ドラゴン「ほう、縄ぐらいいつでも切れたか。 それで? 勇者よ、弱き村人共の為に儂と戦うか?」

自称勇者「逆に聞くが、縄にしばって竜の生息地に放り投げるような村人の為に戦えると思うか?」

ドラゴン「ふふ、そうであろうな」

自称勇者「ところで、名誉の為に言っておくが俺だって最初から裸で旅をしていたわけじゃない」

自称勇者「白銀に輝く鎧、あらゆる物を斬り裂く魔法の剣、そして剣と対になる魔法の盾」

自称勇者「道行けば誰もが俺を勇者として歓迎してくれた」

ドラゴン「それからどうしたら身ぐるみ剥がされる?」

自称勇者「別に? ただ歓迎の宴でさんざん飲み食いした後で村人全員酔いつぶして村を出ただけさ」
 
219 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/25(火) 23:53:05.49 ID:OMFu6NOA0

ドラゴン「それは…」

自称勇者「そう、連中だって最初は迷う」

自称勇者「『わ〜、きっと、勇者様は見送られるのが恥ずかしかったのね〜』『奥ゆかしい勇者様もカッコいいわ〜』とかなんとか」

自称勇者「自分たちに都合のいいことでっち上げて真実には見てみぬふりしちまう」

ドラゴン「そこまで思わんだろ」

自称勇者「だが、すぐにそんな甘い考えも消え去る」

ドラゴン「当ててやろう。 貴様は違う村でも無銭飲食を繰り返したからだ」

自称勇者「無銭飲食とは人聞きが悪い」

自称勇者「俺はここらに悪いドラゴンがいるか聞いただけだ、倒すとは一言も言ってない」

ドラゴン「ふはっ、そんな言い訳が通用せぬからここに捨てられたのだろ?」

自称勇者「まあな、6つ目の村で薬盛られて眠らされ、騙した村人達からタコ殴りにされて今に至る」

ドラゴン「はっはっ! 馬鹿だ、馬鹿がおるわ」

自称勇者「そんなこと言うなや、こうでもしないと あんたは笑って話もしてくれなかったんじゃないか?」

ドラゴン「!?」

自称勇者「無茶はしないことにしてるんだ。 勇者がやられちゃ格好がつかんからな」

ドラゴン「では何を考えているか教えてくれてもよかろう」

自称勇者「実は勇者になるのは簡単だ」

自称勇者「困ってる奴らを助けてやればいい」

自称勇者「だったら、俺達で勇者を仕立て上げたって構わないよな?」
 
220 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/25(火) 23:57:32.42 ID:OMFu6NOA0

自称勇者「だからさ、ちょっくら俺乗せて村襲ってくれないか?」

ドラゴン「!!?」

自称勇者「飲み食いした村は6つだがなるべく大事にしたいから倍は襲って欲しい」

ドラゴン「…村人が気の毒になってきた」

自称勇者「くっくっ、連中もいい加減知るべきだ。 他人に苦労を押し付けて手にはいるほど平和は安くないってな」

ドラゴン「村を襲ったらどうする?」

自称勇者「そのまま暴れて4国を巻き込みさらに混乱させる」

自称勇者「そして、俺達に いちばん最初に立ち向かってきた奴を勇者に仕立てる」

ドラゴン「そう上手くゆくか?」

自称勇者「昨日までなら泣き寝入りしてたかもしれん。 だが、偶然にも素晴らしい武具を奴らは手に入れちまった…」

自称勇者「白銀に輝く鎧、あらゆる物を斬り裂く魔法の剣、そして剣と対になる魔法の盾」

自称勇者「俺から剥いだ身ぐるみ着こんだお人好し、それが勇者さ」

ドラゴン「ふっふっ、今まで数多くの助力を乞われたことがあるが」

ドラゴン「しかし、ここまで心踊る救援要請ははじめてだ」

自称勇者「人助けだからな、善行は楽しい」

自称勇者「さあ、2人で仲良く世界征服といこう」
 
221 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:00:30.19 ID:dx503BWA0

自称勇者「協力してくれたなら、この巣にある全ての黄金つぎ込んでも買えないような宝を見せてやる」

ドラゴン「それは何だ?」

自称勇者「論より証拠。 実物見たら分かる」

ドラゴン「…まあよい。 ところで名はなんと言う?」

自称勇者「俺のか?」

ドラゴン「ああ、勇者をかつぎ上げるなら勇者≠ェ2人いては不味いのだろう?」

自称勇者「そうだな、そもそも勇者とは他称されて はじめて勇者たりえるのだ」

自称勇者「自称勇者の偽物は勇者にしか倒せず、勇者に敗れることで平和が訪れる存在≠ノ相応しい名で呼んでくれ」

ドラゴン「それは?」

自称勇者「それは……」


ーーーーーー
ーーーー
ーー

【現在】

ドラゴン「実に懐かしい…」

奴隷「魔王かな?」
 
222 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:05:14.96 ID:dx503BWA0

ドラゴン「それから、あやつの提案を飲んだ儂は指示通り村を襲い、家畜を拐い、家を焼き…」

奴隷「おい、もうそれ魔王だろ?」

ドラゴン「西のエルフの森から魔具を盗み、南からは婚礼間近の姫君を連れ去り、東の鉱山に立てこもると逃げ遅れたドワーフ達を不眠不休で働かせ黄金の城を建てさせると、そこを根城とした」

奴隷「すげえ! ドラゴンよりタチ悪い奴がいる!!」

ドラゴン「だが攻撃はここまで。 事態を重くみた4ヵ国は争いをやめ、手を取り合って反撃を開始した」

奴隷「それが魔王の狙いだものな」

ドラゴン「まず、話し合いでまとめ役をかって出た北国の王子のために国中でもっとも優れた武具≠用意させると」

ドラゴン「囚われた姫の身を案じ、少数精鋭による奇襲が計画された」

ドラゴン「パーティーには王子のほか、エルフの魔法使いにドワーフの戦士。 そして南からは僧侶の4人組」

奴隷「画面が魔王対勇者になってる!」

ドラゴン「で、あろうな」

ドラゴン「この露出魔の変態こそ、世界で最初の魔王だからな」
 
223 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:09:26.59 ID:dx503BWA0

姫「あの! もしかするとその方は…」

ドラゴン「いやいや、姫様の血縁ではないです」

ドラゴン「あやつのなろうとしたのは、もっと陳腐なものだ」

奴隷「陳腐?」

ドラゴン「ああ、子どもが悪さをすると母親が悪いことすると魔王が来るわよ≠ニ、叱るだろ?」

ドラゴン「他にも喧嘩したら∞勉強しないと∞飯を残す∞夜更かしすると≠ネどなど…」

ドラゴン「あやつはそういう存在になりたがっておった」

奴隷「だから自分から騒ぎを起こした」

ドラゴン「そして誰よりも自分の身を犠牲にした」

姫「善い人ですね…」

ドラゴン「くっくっ、老人の昔ばなしだ。そうとう美化しておる」

ドラゴン「ほんとはただ理由をつけて裸になりたかっただけかもしれぬ」

姫「あの、質問なのですが…」

姫「そんな方が何故ドラゴンさんに協力を求めたのでしょう? ご自身のお力で出来そうなのに」

ドラゴン「そりゃあ、あれです…。 儂が邪魔だからです」
 
224 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:11:38.94 ID:dx503BWA0

姫「じゃま?」

ドラゴン「考えてもみてくだされ。 せっかく4つの国が仲良くなっても、その真ん中に儂が居座ったら邪魔だと思いませぬか?」

姫「ええ…、まぁ、そうですね……」

奴隷「なんだ? けっきょくは騙されて利用されたのか?」

ドラゴン「利用か…」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

【再び、800年前】

北の騎士「王子に敗れ、手負いのドラゴンを見つけた! 魔王をこのまま逃がすな!」

パカラッ!パカラッ!

南の騎士「苦労して森に誘い込んだんだ! 弓で射殺せ!」

ガタッン!

東のドワーフ「おい、儂らの作って馬車をもっと丁寧に扱え」

西のエルフ「ちょっと耳もとで怒鳴らないでよ!」キリキリキリ

西のエルフ「狙いが…、ハズレる!」

シュパン!

ドス!!

ドラゴン「ひっ、ひいぃぃ〜〜〜!!」

自称勇者「くっくっくっ…はぁ〜はっはっはぁ〜!」

 
225 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:14:08.20 ID:dx503BWA0

ドラゴン「なにが楽しい! なにが可笑しい!?」

自称勇者「だって笑えるだろ? あいつらつい数日までにらみ合って争ってたんだぜ?」

ドラゴン「数日前…」チラッ

ドワーフ「下手くそが! なに外してる!!」

エルフ「五月蝿いわね! あんたの仕掛け弓が欠陥品なんじゃないの?」

ドワーフ「儂の作品が気に入らんなら馬車からさっさと飛び降りろ!」

エルフ「嫌よ!怪我しちゃうじゃない馬鹿!!」

南の騎士「どっちも黙れ!後ろで喧しいと馬車ごと切り離すぞ!」

ドワーフ「やってみろ三下ぁ」

エルフ「末代まで祟ってやるわよ」

北の騎士「いい加減にしろお前ら!まもなく本陣とはさみ撃ちにする事を忘れるな」

エルフドワーフ南の騎士「「「北が仕切ってんじゃねえ(わよ)!!」」」

南の騎士「あんまデカイ顔すると」
エルフ「森の養分か」
ドワーフ「機械の部品にしてやろうか?」

北の騎士「上等だぁ! おまえら後で決闘だからな!」

ドラゴン「仲良く?」

自称勇者「死人が出ないうちは笑って見てろ」
 
226 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:17:08.53 ID:dx503BWA0

ドラゴン「な〜んか、ものすごい詐欺に引っ掛かった気がする」

自称勇者「なにを言うかと思えば、約束通り最高の宝を見せてやっただろ?」

ドラゴン「宝なぁ…」

自称勇者「最高だったろ? 北の王子が助けにきた時の南の姫の笑顔」

自称勇者「寒さに凍える花の蕾が朝日を浴びて開いたようだった」

ドラゴン「だから詐欺だと言ったんだ!!」

自称勇者「そう言うな、望まぬ相手と政略結婚する前に逢いたい人は昔みた君ってな」

ドラゴン「南の姫のことか?」

自称勇者「うんにゃ、北の王子」

ドラゴン「はあぁぁぁ〜〜〜!!??」

自称勇者「そのうちわかるさ。 恋に恋する少年少女を からかうことほど笑えるもんはないってな!」

ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー


ドラゴン「そうかもしれんな……」

 
227 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:22:56.20 ID:dx503BWA0

姫「ドラゴンさん?」

奴隷「急に黙ってどうした?」

ドラゴン「…その後、もともとあった婚約が破談になった南の姫を北の王子がプロポーズして結婚」

ドラゴン「それをきっかけとして、いがみ合っていた4つの国が融和への道を話し合いはじめたと聞いたのは儂らが去った数年先のことだ…」

姫「めでたしめでたし♪」

ドラゴン「だが滅んだ」

姫「あ…」

奴隷「おい、そんな言い方は…」

ドラゴン「事実であるなら仕方あるまい」

ドラゴン「もう一度言うが、儂にとってはよくあること…」

ドラゴン「それは殺しても死なぬと思うていた、あやつとて例外ではない」

ドラゴン「皆が儂の横を通りすぎて行く」

奴隷「あのさ…」

ドラゴン「……少し飲みすぎたようだ」

バサッ!

奴隷「お、おい、どこ行くつもりだ?」

ドラゴン「酔いざましに追手の様子を探ってみるか」

ドラゴン「明日からは儂の巣目指して強行軍となる、やることあるなら今夜中に済ましておけ」

バサッバサッ!

奴隷「行っちまった…」

姫「素敵なお話でした」

奴隷「どこが!??」
 
228 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:25:37.42 ID:dx503BWA0

姫「きっと、今のお話はドラゴンさんの大切な思い出だったんです」

奴隷「そうか? 年寄りの昔は悪かったって自慢されただけじゃないか」

姫「ああ、そうですね、そういう見方もあるかもしれません」クスクス

奴隷「じゃあ姫の見方は?」

姫「自称勇者の自称魔王…。でもドラゴンさんにしてみたら やっぱりこの方が勇者さまなんです」

姫「だから、このお話は奴隷さんにこそ聞かせたかった。 奴隷さんがお話の勇者さまみたいに立派になって欲しいから」

奴隷「勇者さまなんてガラじゃない…」

姫「では、あいだを取って奴隷さまにしましょう」

奴隷「奴隷をさま付けって…」

姫「もう、すねないでください奴隷さま」ダキッ

姫「ドラゴンさんの一番大切な人はわたし達じゃないからって」ギュー

奴隷「くそ…」

姫「ふふ♪」
 
229 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:29:44.76 ID:dx503BWA0

姫「ねえ、奴隷さま…」

奴隷「なんです?」

姫「もうすぐ、わたしの誕生日なんです」

奴隷「え? あ〜、それはおめでとうございます…。 もうちょっと早ければプレゼント用意出来たんだが」

姫「そんなのいりません。 そういえば奴隷さまのお年は?」

奴隷「とし? 拐われてから数えてないが拐われたのが9才だったかな?」

姫「では同い年ですね」

姫「そうだ! 奴隷さまのこれまでの分を含めて、今年の誕生日は3人でお祝いしましょう!!」

奴隷「ん〜、そうだな、それも楽しいかもしれないな」

姫「はい♪ きっと、楽しいですよ」

奴隷「じゃあ、ドラゴンの巣に着いたらやってみるか」

姫「ふふ、決まりですよ」ギュー

姫「奴隷さま?」

奴隷「なんです?」
 
230 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:32:11.66 ID:dx503BWA0


姫「わたし、いままでの人生で今がいちばん幸せです」


奴隷「ああ、俺もです…」

 
231 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/12/26(水) 00:42:55.03 ID:dx503BWA0
今日はここまでです

次回は逃走14日目で行う勇者の誕生日なんですが

今読み返すと>>133でもっと2週間を強調すればよかったと後悔してます
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/31(月) 03:03:57.41 ID:75XEEgODO
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/26(土) 18:07:31.23 ID:+o4mJ/gA0
生存報告

プロットはあるんよ、プロットは…
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/27(日) 03:18:39.67 ID:ZeZyagcDO
能書きなど要らん
欲しいのは続きだ!
235 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/03/20(水) 00:27:08.23 ID:M0a22y/A0

【逃走14日目 竜の巣のある山中】

姫「雪だ〜」ザックザック

奴隷「あまり遠くに行くとはぐれるぞ!」

姫「わかってます♪」ザックザックザック

奴隷「わかってんのかね?」

ドラゴン「元気があっていいではないか」ガタガタガタ

奴隷「平気か?」

ドラゴン「寒さに弱くてな」

奴隷「なんでそんな場所に巣つくるかね?」

ドラゴン「仕方あるまい、まさか800年後に火山活動が停止して雪山にかわるなどと誰がわかると思う!」

奴隷「おまえ、本当そればっかだな!」

奴隷「この調子で竜の巣にあるお宝売って逃走資金にあてる計画は大丈夫だよな?」

ドラゴン「たどり着けたらな…」

奴隷「……おまえまさか」

ドラゴン「まあ、ここは定番のセリフといこうではないか?」

ドラゴン「まず勇者が遭難したのか≠ニ……いや、スマン蹴るのは止めてくれ」

奴隷「遭難したのか!!?」

ドラゴン「遭難です!」

奴隷「死ね!」ドゴッ!
 
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/21(木) 03:27:49.96 ID:yXO0C2PDO
やっと来たか乙
237 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/14(水) 01:59:39.58 ID:zIpWw6PA0

奴隷「このポンコツ!!」

奴隷「地上に来て緩んだのか!? さっさとポンコツ化した頭を治せ!」

ドラゴン「むう、儂とて無策でつれてきたのではないぞ? 昔出かける時には長期の留守にそなえ魔法の符丁、目印、暗号などなど… 思いつくだけ残しておいた」

奴隷「おお、じゃあさっそくそれを探しだせば…」

ドラゴン「うむ、問題は全部雪の下に埋まっとる点だが」

奴隷「この、 ド ポ ン コ ツ !!」

奴隷「どうすんだよ!シャレになんなくなるまえに山を下りるか?」

ドラゴン「だが収穫もある」

奴隷「おお!?」

ドラゴン「そうだな、実際この地に来てみて。わかった事が悪い事と良い事の2つあるのだが どちらから聞きたい?」

奴隷「え?遭難しておいてさらに悪い事あるの?」

ドラゴン「先に良い事から話そう!」

ドラゴン「良い事はエルフがこの地より離れた理由がこの寒さだという点だ」

奴隷「ん〜、その良い事≠チて少なくとも状況の改善になるような事とは違うような…」

ドラゴン「くっくっ、どんな素晴らしい発見だろうと必ずしも状況の改善につながるとは限らぬ」

奴隷「ああ、なるほど! それが悪い事≠ネんだな」

ドラゴン「まさにそれよ! 勇者もわかって来たではないか」

奴隷「はっはぁはぁ〜」
ドラゴン「はっはぁはぁ〜」

奴隷「死ね!」ドゴッ!
 
238 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/14(水) 02:03:45.41 ID:zIpWw6PA0

ドラゴン「ぐう、あまり本気で蹴るな…。寒さで縮んだウロコが響く」

奴隷「山を下りよう」

奴隷「暗くなって動けなくなる前に山を下りよう」

ドラゴン「うむ、それなんだがな…」

奴隷「まだ何かあるのか?」

ドラゴン「追っ手が周囲に囲まれておってな、下手に下りたら見つかるかもしれん」

奴隷「詰んでんじゃねえか!」ガシッ

奴隷「ひどい」ギリギリ

ドラゴン「あ、イタッ」

奴隷「雪山に連れてきて道に迷っただけでも相当なのに下りたら捕まるって空前絶後の壮絶ひどい」ギリギリギリ

ドラゴン「痛い痛い痛い!! 頭をしめるな!!」

奴隷「ゆるんだ頭に刺激あたえてんだからさっさと思い出せ!!」

ドラゴン「そんな都合よく思い出せるか!」

ドラゴン「よいか! 儂の巣とはそれすなわち儂が生涯をかけて集めた財宝を隠した宝物殿」

ドラゴン「見た目はただの洞窟なれどあらゆる者の侵入を防ぐために施された術は、高位の魔術師でさえ不可能!!」

姫「あっちに洞窟があったので休みませんか♪」

ドラゴン「おお! それこそ儂の巣に違いあるまい!」

ドラゴン「なにをしておる、置いていくぞ」ザックザックザック

奴隷「この旅の行先が心配になってきた…」
 
239 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/14(水) 02:05:35.11 ID:zIpWw6PA0

ドラゴン「ふむ、やはりここで正解か…」ペタペタ

奴隷「そんな入口で何やってんだ? 先に奥 行くぜ?」

ドラゴン「わかっておらぬな〜、そんなあからさまな場所罠があるに決まっておるだろ」

奴隷「あ〜、そうかい。 んで?秘密の入口に「開けゴマ」と呪文を唱えるのか?」

ドラゴン「くはっ、おとぎ話じゃあるまいし、勇者は自分の家に帰る時にはそう言うのか?」

奴隷「こいつ、巣を見つけたとたんに偉そうに」

ドラゴン「自分の家に帰る時はこう言うのだ」

ドラゴン「ただいま」


コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛


 
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 10:39:09.61 ID:KJSuxD1rO
生きてたんか!
ただ期間空きすぎて内容忘れたから少し読み直さんといけんな
241 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:31:11.16 ID:1iyQQEhA0

姫「ふわぁ」

奴隷「すげえ…」

キラキラキラキラ

ドラゴン「くっくっくっ、素晴らしいであろう?」

ドラゴン「数多の権力者を見てきたが金山まるごとくり貫いた天然の宝物殿を所有するのは、儂ぐらいよ」

姫「わたしの城とはスケールが違います…」

ドラゴン「で、あ〜ろ〜う〜な〜♪ ま、卑屈になることはない」

ドラゴン「魔界が出来て精々800年」

ドラゴン「それに比べて儂の黄金収集歴はざっと5000万」

姫 奴隷「ごせんまん!!?」

ドラゴン「くっくっくっ、言っておくが正解な時間はわからぬぞ。 何しろその時代には人間の祖先すら見当たらぬでな、暦の概念がまだなかったのだ」

奴隷「おまえ、歳いくつだよ?」

ドラゴン「ふむ、儂も実はよく知らぬのだ。 一度学者にいちばん古い記憶を聞かれ隕石の墜落≠ニそれによる氷河期≠ニ答えたらえらく驚いておったから驚くほど古いのであろう」
 
242 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:32:04.11 ID:1iyQQEhA0

ドラゴン「ま、こんな物は序ノ口よ」ガシッ

奴隷「急になんだよ?」

ドラゴン「よいか? ここでモテる雄のアドバイスよ」

奴隷「ああ、あのいつも役にたたないやつな」

ドラゴン「よいか? 雌は雄のナニを見て魅了されるかわかるか?」

奴隷「はいはい、財宝財宝。 すごいすごい」

ドラゴン「ブッブー! やっぱり勇者にはわからぬか〜〜」

奴隷「巣を見つける前もイラッとしたけど今も別の感覚でイラっとさせるな」

ドラゴン「それは強さ、すなわちパワー≠誇示させるのだ」ムキッ

姫「わーー」パチパチパチ

奴隷(疑いの眼差し)
 
243 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:34:39.43 ID:1iyQQEhA0

ドラゴン「これを見よ!」バッ

奴隷「木片?」

姫「わーー」パチパチ

ドラゴン「否っ! これこそ深海の主が住まい、竜宮城の大黒柱であるぞ!」

奴隷「つまり…木片?」

姫「わーわー」パチパチ

ドラゴン「これは大昔に儂と深海の主が知恵比べをした時の戦利品」

ドラゴン「当時のあやつは儂の所有するとある宝具にえらくご執心でな、儂に取り入ろうと猫なで声でまと割りついてきたのだ」

ドラゴン「それこそイカのように」

奴隷「それはどうでもよくね?」

ドラゴン「そこで下心の見抜いておった儂が双方の住みかで最も価値のあるものを交換しようと提案してな。乗ってきた瞬間、竜宮城の大黒柱をへし折って崩壊させてやったのよ」

奴隷「ひでぇ…」

姫「わぁ…」
 
244 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:35:43.04 ID:1iyQQEhA0

ドラゴン「いやいや、儂とて無傷とはいかぬかったのだぞ?」

ドラゴン「見よ見よ、柱のここに触手の跡がはっきりと残ってあるだろ?」

奴隷「その上のでっかい凹みは?」

ドラゴン「儂の反撃の一撃を頭に叩きつけた跡だな」

奴隷「ひでぇ」

ドラゴン「そうは言っても深海の主と豪語する海生軟体動物の高周波をともなう猫なで声は寛容な儂でも我慢の限界というのがあって」

奴隷「だからって家壊す必要ないだろ!」

ドラゴン「ならば次だ!」

ドラゴン「こちらは北端の呪術士集団ドルイドが造りし最古の魔獣!!」

ドラゴン「知識の象徴であるオウムの頭と当時の最強生物、人喰いクマをあわせもったその名もアウルベア!!」

ドラゴン「くっくっくっ、その噂を聞きつけた儂はさっそく挑みかかり、一捻りで倒したのち剥製にして持ち帰ったのだ…」

姫「この頭部、作り物ですね」

ドラゴン「ギクッ!」

姫「それにこれ剥製じゃなくて服のように着ることが出来るようになってます」

ドラゴン「ギクッギクッ!」

奴隷「ドラゴンさん?」
 
245 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:36:53.56 ID:1iyQQEhA0

ドラゴン「はい?」

奴隷「この魔獣はつまり偽物だったんだな?」

ドラゴン「だがよく出来た作りでな、動いたところなど本物と見間違えても仕方ないと…」

奴隷「よく出来た偽物だったんだろ!」

奴隷「何か? 噂聞きつけて行ったはいいが中に人が入っただけの偽物で?」

ドラゴン「うむ…、見た目は中に人間が入っているとは知らなかったのでな…」

奴隷「んで? 中の人ごと戦利品として持ち帰ったのか?」

ドラゴン「勇者よ、中の人などおらぬと言ってだな…。そこはなかなか繊細な案件なのだ」

奴隷「要するにただの着ぐるみじゃん!」

姫「着てみました♪」
 
246 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:39:56.95 ID:1iyQQEhA0

奴隷「ジー」

ドラゴン「なんだその目は?」

奴隷「おまえの言ってることをどこまで信じたらいいかと疑ってる目」

ドラゴン「何を言っておる、金銀だけが財宝ではない。 こういった物にも文化的価値というものが存在し」

奴隷「んで? これ見せたメスの反応は?」

ドラゴン「・・・・」

奴隷「ほらな〜」

ドラゴン「いや、これ、あれだから、まだ古い時代のだから」

ドラゴン「これから先は人間の他に亜人も生まれ文化も多様性に富み、儂の収集物も多彩な彩りをもってゆくぞ」

奴隷「多彩なゴミじゃないのか?」

ドラゴン「くっくっ、舐めてもらっては困る」

ドラゴン「儂の巣は次元の断層を利用しており想像よりずっと広い」

ドラゴン「見てまわるだくでも幾日もかかるダンジョンのような構造は全…」

ドラゴン「全…、何部屋だったかな?」



道化「全57部屋にそれを結ぶ305の通路と清潔な水場が30」
 
247 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:43:42.34 ID:1iyQQEhA0

ドラゴン「なっ…」

姫「どうして…」

奴隷「ここに?」


道化「ずっと待ってたのに遅いよ」
 
248 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:45:27.45 ID:1iyQQEhA0

ドラゴン「逃げるぞ!」ガシッ

バサッ!

姫「ドラゴンさん!」

道化「逃がすか! 槍隊整列!」

兵士「はっ!」

ガシャガシャガシャ

ドラゴン「くっ!」

バサッ!

姫「ドラゴンさん!」

ドラゴン「くはっ、逃げ道などいくらでもあるから心配するな!」

姫「うしろーー!!」

ドラゴン「なに?」

道化「無駄無駄ァ!」

ズバッ!

ドラゴン「ぐうっ」

ドザァーーー!!!

姫「ドラゴンさん!」

道化「さあ、年貢の納め時だせドラゴンさん」

ドラゴン「ナメるなぁぁーーー!!!」コォォォォ!!

ドラゴン「ドラゴンブレス!」

道化「灼熱閃光魔法!」


ドゴオォォーーン!!!!

ドラゴン「ぜぇぜぇ…」

姫「嘘? 相殺した?」

道化「今のはメラではない……」

道化「ギラだ」
 
249 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:48:03.69 ID:1iyQQEhA0

ドラゴン「それがどうしたー!」

ブォン!

道化「これはイオ」

ボゴン

ドラゴン「ゴホッ!」

道化「これはバキ」

ザシュザシュザシュ

ドラゴン「ぬう…」

道化「んで、こいつがメラ」

ボム!

ドラゴン「ぐっ!」

姫「大丈夫ですか?ドラゴンさん!」

ドラゴン「頭を出すな! こやつは姫を狙っておる」

道化「そうだよ♪ だからちゃんと守ってあげないと、姫様に当たったら僕が魔王様に叱られちゃう」

ボッボッボッボッボッボッボッボッボン

ドラゴン「ぐふっ!」

ドスーン!

姫「ドラゴンさ〜ん!」

ドラゴン「」

道化「ほい、拘束魔法」

じゃらじゃらじゃらじゃら

道化「ガッキン!」

道化「はい、一丁完了。 姫様のお帰りは魔王様もずっと待っておられます」

姫「嫌…」

道化「嫌って言われても三人仲良く捕まっちゃったらどうしようも…」

道化「あれ? 勇者様は?」

奴隷「後ろだ!!」
道化「後ろだ!!」

ガキーン!!

奴隷「ちっ」

道化「よう、久しぶり。 また剣の腕あげた?」
 
250 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:49:02.85 ID:1iyQQEhA0

道化「でもな」

パキッ!

奴隷「剣にひびが!」

道化「いけねぇな、勇者様。 地上より魔界のほうが武器の性能がいいのはロールプレイングゲームの基本だぜ!」
 
251 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:51:29.53 ID:1iyQQEhA0

道化「つまり、馬鹿にハサミ持たせたら危ねえってことだ!」

ザンッ!

奴隷「ちっ」

道化「さあ、いつまで持つかねぇ」

ザンッザンッザンッ

奴隷「くっ」

キン!

パキッ

道化「そらそら、気をつけないと折れちゃうぞぉ〜っと♪」

奴隷「くぅ…」

キン、キン、キン!

バキッ!

道化「さあ、こいつで仕舞いだ!!」

ブォン!

奴隷「くっはっ、うまくいった」


パーーーン!!!


道化「なっ、白羽取りだとぉ〜!?」

奴隷「馬鹿は馬鹿だな」

ドゴッ!
 
252 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:53:08.47 ID:1iyQQEhA0

道化「ごはっ、糞…」

奴隷「悪いな、折れた剣のかわりにこっちをもらうぜ」

道化「そりゃないんじゃない? 人の物を盗るなって言われなかった?」

奴隷「どの口が? まあ、惜しむ気持ちもわかるほどの良い剣だけど…」

奴隷「…なんだろう? 手に馴染む」

ドラゴン「勇者よ、ボサッとするより止めを!」

奴隷「お、おう」チャキッ

道化「きゃ〜助けて〜!」


道化「衛兵さ〜ん!」


衛兵「…気色の悪い声を出すな」スタッ

奴隷「なに!?」

ガッキーーン!!

衛兵「・・・・」

姫「衛兵さん…」

奴隷「おまえは…くそ! 敵か味方かはっきりしろ!!」

衛兵「悪いな、私も微妙な立場なのだ」
 
253 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:55:04.56 ID:1iyQQEhA0

奴隷「だから微妙じゃなくてはっきりしろと言ってるんだ!」

衛兵「…本心では戦いたくないと思ってるよ」

ドスッ!

奴隷「がはっ!」

衛兵「だがそれ以上に魔王様が怖いのだ!」

ドム!

奴隷「なんだそれ! 魔王のどこが怖いってんだ!」

衛兵「おまえは知らないだけだ」

ガスッ!

奴隷「またそれか、ドラゴンも何かあるならちゃんと言え」

衛兵「知ろうともしなかった子供が偉そうなことを言うな!!」

ボゴッ!ドガッ!

奴隷「なら俺はどうしたらいいか教えろ!」

衛兵「姫をつれて遠くまで逃げて欲しかった…」

奴隷「!!?」

ドゴッ!

メキッ!

奴隷「ぐうっ」

衛兵「それをピクニック気分であっさり見つかって、期待外れもいいとこだ」

奴隷「…ごめん」ドサッ
 
254 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:57:24.07 ID:1iyQQEhA0

ドラゴン「いかんな…」

姫「衛兵さんは魔界でも選り抜いた実力者ですから」

ドラゴン「それもあるが勇者に攻撃の意志がなさすぎる」

姫「なさすぎる?」

ドラゴン「うむ、どうも勇者は敵味方の判定が極端でな。一度仲間と思えば訓練中の手合わせでも剣筋に乱れがでるのだ」

姫「…長く友人がいない年月が続いたせいでしょうか?」

ドラゴン「…それ、本人には言うでないぞ」

姫「でも、それならどうしたら?」

ドラゴン「拘束を砕いて援護する。姫は隠れていてくだされ」グッグッグッ

姫「戦えますか?」

ドラゴン「お陰さまで友には恵まれておる」

バキッ!

ドラゴン「さあ、逃げろ!」

バサッ!

衛兵「!!?」

ドラゴン「ぬおぉぉぉ!!!」

バサッバサッバサッ!!

ドゴォ!!

衛兵「ぐぉっ! ドラゴン! そもそもはキサマがぁ!!」

ドラゴン「怒るでない、友人だろ?」
 
255 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 02:01:52.72 ID:1iyQQEhA0

道化「ほい拘束魔法」

じゃらじゃらじゃらじゃら

ガッシャン!

ドラゴン「ぬあ、また!?」

衛兵「道化、私ごと拘束してなんのつもりだ!!」

道化「はぁはぁ、剣はかえしてもらいますよ。 これがなくっちゃ魔王様からの密命が実行出来ないからね」

衛兵「密命だと!?」

道化「ええ、魔王様はこうおっしゃいました」

道化「籠の鳥は籠の中だからこそ価値がある。 価値もないのに手間どるようなら無理に連れて帰ることもない」チャキッ

姫「嘘? お父様が…」

道化「はい、手間なんでちゃっちゃっと死んでください姫様!!」

シュバッ!

奴隷「くそっ!!」

ドスッ!

姫「奴隷さまーー!!」
 
256 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 02:04:37.41 ID:1iyQQEhA0

道化「ほらよ!」

ズバッ!

奴隷「っあ!」

道化「あらよ♪」

ズブッ!

姫「やめてぇーー!!」

奴隷「はぁはぁ…」

道化「奴隷、さま、ね…」

奴隷「がはっ!」

姫「待っててください! 今、治癒魔法をかけます」

道化「無駄ですよ〜、3度目が致命傷になってます」

姫「なんてことを!」

奴隷「はぁはぁ、安心しろ姫。不本意ながら俺には女神の加護があるかぎり死んでも復活する」

道化「不本意か、そりゃけっこう!!」

ビリッ!

姫「何を!?」

道化「さあ姫様! 勇者様の背中を見てください、ほらここ魔王様の印と勇者の紋章があってごちゃごちゃしてたのがずいぶんとスッキリしたと思いません?」

姫「勇者の紋章が消えたから?」

道化「はい、こいつはまもなく復活することなく死んで本意をとげることとなります」

姫「何をしたの?」

道化「嘘をつきました」
 
257 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 02:08:55.08 ID:1iyQQEhA0

道化「その1、姫を殺せと魔王様からの密命を受けたと言ったこと」

姫「そんなことでは!」

道化「そう、そんなこと≠ヘあり得ない」

道化「とっても特別な可愛い可愛い一人娘だから」

姫「そんなんじゃないです」

道化「ええ、ええ、そんなんじゃなくても勇者様は身をていしてかばってくれると思ったんです」

道化「だって、勇者様にはこの剣で刺されてもらう必要があったのだから」

奴隷「その剣は…なにがおかしい…」

道化「でしょうね、この剣は魔界の武器と言ったのも嘘なんですよ、勇者様」


道化「さあ、とくとご覧じあれ」

道化「この剣こそまだ幼き勇者が女神より加護と共に授かり」

道化「魔王殺しにして勇者の加護を消し去り勇者を殺せるたったひとつの武器」


道化「そう聖剣≠ネり!!」


 
258 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2019/08/15(木) 02:13:07.79 ID:1iyQQEhA0
今日はここまでです
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/16(金) 20:25:22.52 ID:m2te1SYDO
乙乙
待ってたで
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/17(月) 00:57:55.31 ID:IHuDNWy0O
エタったな
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