【艦これ】鳳翔「天龍型と提督の居酒屋での記録」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:35:41.21 ID:xeBVZAH/0

天龍『リ級の身体中が腫れあがって、顔の見分けがつかなくなったころ、こいつを処刑しようって、電が言ったよな』

龍田『そうねぇ。そのとき私達、なんて言ったかしら』

天龍『さあ、覚えてねえな。ボーっと見てたんじゃねえか?』

龍田『そうだったかもしれないわね。私達、何もできなかったものねぇ』

天龍『普段はあねごぶって、あいつらの面倒を見ている気でいたが、いざってときは頭すら動かなかったもんな』

33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:36:19.97 ID:xeBVZAH/0

天龍『響がリ級を口汚く罵って、電が折れた単装砲をリ級の頭に向けたとき、』

天龍『暁が電達の前に両手を広げて立ちふさがった』

天龍『あんとき暁が言ったセリフが忘れられねえ。ヒーローもびっくりのセリフ回しだった』

34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:36:55.43 ID:xeBVZAH/0

天龍『撃つなら私を撃ちなさい』

天龍『すべての憎しみを込めて撃ちなさい。二度と誰かを恨むことのないように』

天龍『憎しみではじめた戦いは、誰かを憎しみ終えるまで終わらない』

天龍『それはきっと、人も、深海棲艦も、いっしょ』

天龍『だったら、そんな哀しさだけが広がる前にここで終わらせて』

天龍『怨念返しは、もうたくさん』

35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:37:30.08 ID:xeBVZAH/0

龍田『…………ふふふ』

天龍『…………ククク、あの暁が言ったんだぞ?』

天龍『夜中にひとりでトイレにも行けない怖がりが、なけなしの勇気を振り絞って言ってのけたんだ』

天龍『あいつだって、殺したいほどリ級を憎んでいただろうに。それでも、』

天龍『善悪の向こうを、暁は見つけていたんだ』

36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:38:04.73 ID:xeBVZAH/0

天龍『俺もいままで結構戦ってきたけどよ、敵を沈めるたびに、仲間が沈むたびに暁の言葉を思い出す』

天龍『怨念返しは、もうたくさん、か』

龍田『それからの暁ちゃんたち、成長したものね』

天龍『頼りなかったガキ共が、今じゃ駆逐達のあこがれの的だもんなぁ』

天龍『十三年も戦って生き延びてりゃ、そうなるか』

龍田『あら、それって自慢〜?』

天龍『ちゃかすなよ!』

37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:38:35.44 ID:xeBVZAH/0

ザァァァァ…………

『もう何なのよ!この雨!』

『ずぶぬれなのです………』

『鳳翔さん、雨宿りしてもいいかな』

鳳翔『もちろん。奥にかけてください。今お茶を用意しますね』

『レディは髪の毛が命なのに〜!』

『夜中にひとりでトイレに行けない怖がりはレディとは程遠いのです』トテトテ

『言えてるね』スタスタ

『ちょ、ちょっと!いつの話をしてるのよぉ!―――――』タタタッ………

天龍『………ふふ』

38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:39:13.65 ID:xeBVZAH/0

ザァァァァ………

天龍『雷と、暁達に』

龍田『雷と、暁達に』

天龍『………』グビッ

龍田『………』ゴクッ

39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:39:41.11 ID:xeBVZAH/0

天龍『それにしてもよ、十年以上も戦い続けてるのに未だに戦争が終わらねえってのはどういうことなんだよ』

龍田『戦局は良くなってるじゃない〜、深海棲艦側の一部とコンタクトも取れたし、そろそろじゃないの〜?』

天龍『それ前にも聞いた』

龍田『そうだったかしら〜』

40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:40:08.29 ID:xeBVZAH/0

天龍『そろそろ俺らも限界だっつーの。あっちは新型がバンバン出てくんのに、こっちは間に合わせの装備に旧式の艤装で立ち向かってんだからよー』

天龍『い、いや、別に提督を責めてるわけじゃねえって!お前はよくやってるよ、現にこうして俺らが生きていて、酒を飲んでるんだからさ』

天龍『でもよ、愚痴りたくもなるぜ。死ぬか生きるかの瀬戸際を十年以上、行ったり来たりしてんだからよ』

龍田『私達、何回死にかけたっけ〜?』

天龍『数えたこともねえな』

龍田『ふふふ〜』

41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:40:40.82 ID:xeBVZAH/0

天龍『ほんと、こうして生きてることに幸運の女神のキスを感じざるを得ねえよ。長生きしてるよなぁ』

龍田『提督の指揮のおかげね〜』

天龍『いまだにうずしおに突っ込まされるけどな』

龍田『え〜?楽しいじゃない〜あれ〜』

天龍『お前だけだっつーの………』

42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:41:08.68 ID:xeBVZAH/0

天龍『えっ?戦いが終わったら何したいかって?』

天龍『うーん………龍田は?』

龍田『私はね〜看護師になりたいわ〜。沢山の人を癒してあげたいわ〜』

天龍『はっ、お前が?無理無理』

龍田『ひど〜い、天龍ちゃんが怪我しても治療してあげないから〜』

天龍『メスで愉快に斬り刻むのは治療とは言わないんだぞ?』

43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:41:36.81 ID:xeBVZAH/0

天龍『俺はな〜…………そうだなぁ〜…………保育士!保育士になりてえ!』

龍田『………ぷっ』

天龍『あぁ!笑うなよ!おい、提督も笑うなって!』

天龍『ったくよー………せっかく答えたのによー…………ガラじゃねえのはわかってるっつーの………』

龍田『いいえ、似合わないから笑ったわけじゃないのよ』

天龍『ならなんだよ』

龍田『あんまり天龍ちゃんが優しいから〜』

天龍『それ笑うところじゃねえだろ』

44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:42:09.80 ID:xeBVZAH/0

天龍『でもまぁ、きっとなれねえだろうなぁ』

天龍『どうしてかって?そりゃ俺はこのままずっと艦娘として戦い続けるからだよ』

天龍『戦争ってのは終わんねえよ。人がいがみ合い続ける限りなぁ』

天龍『ましてやその人間様はどんどん増えやがんだから、なおさらな』

龍田『でも、深海棲艦との戦いはいつかは終わるんじゃないの〜?』

45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:42:42.06 ID:xeBVZAH/0

天龍『そりゃ終わるだろうよ。あっちだって感情のねえモンスターじゃねえんだ』

天龍『戦い続けるのは辛いだろうし、いつかは休戦になるだろうな』

天龍『でもよ、人同士の争いは永遠に消えやしねえよ』

天龍『近頃じゃ、ちらほら水を求める紛争が起こってる。人は水が無きゃ、生きていけねえからな』

天龍『人はようやく水の上を走れるようになったってのに、皮肉なこった』

46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:43:45.56 ID:xeBVZAH/0

天龍『人が争う理由なんてそこらへんにいくつも転がってる』

天龍『土地、水、食料、金、社会への不満、恨み、数えだしたらきりがねえ』

天龍『理由が小さけりゃ喧嘩、大きけりゃ戦争さ』

龍田『そうね〜戦争が無い時代なんて無いものね〜』

天龍『だから俺らは戦い続けなきゃいけないのさ。兵器だからな』

47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:44:11.93 ID:xeBVZAH/0

天龍『………悲しそうな顔すんなよ、提督。しょうがねえじゃねえか』

天龍『俺らは兵器だ。それも効率の良い兵器だ。それはお前も分かってるだろう?』

天龍『いくら道徳や倫理を叫んだところで、社会は体のいい理由をつけて俺らの叫びを跳ね返しやがる』

天龍『そんなもんだろ、人間なんてさ』

48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:44:38.18 ID:xeBVZAH/0

天龍『近頃じゃ、俺達はネットでアイドル扱いさ。武器を片手に海を駆ける可憐な少女達、へっ』

龍田『天龍ちゃん、ヘタレだしかわいいものね〜』

天龍『俺はヘタレでもねえし、かわいくもねえ!』

龍田『そういうところがかわいいのよ〜』

49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:45:09.35 ID:xeBVZAH/0

天龍『メスガキに武器持たせて喜んでる奴らに道徳や倫理を求めたって、どうしようもねえだろ。そんなもんなんだよ』

龍田『ずいぶん悲観的なのね、天龍ちゃん』

天龍『酔ってるからなぁ。悪いな』

龍田『いいのよ〜毒抜きしたって〜』

天龍『こんなこと、お前らにしか言えねえしな。溜まるんだよ』

50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:45:43.18 ID:xeBVZAH/0

天龍『ん?………ちょ、ちょちょ!なに、なにやってんだよ提督!頭をあげろって!もう遅いんだし他の奴らが見てるぞ!』

龍田『ダメよ提督〜、立場があるでしょう〜?』

天龍『別に気にしてねえって!別に世の中のいっさいを白い目で見てるわけじゃねえんだからよ!だから顔上げてくれって!』

龍田『ごめんなさいね、みなさん〜、提督酔ってるのよ〜』

51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:46:09.34 ID:xeBVZAH/0

天龍『ったくよー…………ひやひやさせんなよな』

天龍『だからぁ〜、言っただろ?世の中のことは嫌いじゃねえよ』

天龍『たしかに、そんなに綺麗な所じゃねえけどよ、急いで出ていくほど腐ってるわけでもねえだろう?』

天龍『まあ………たまに出ていく奴もいるけどさ、それもそれでいいじゃねえか。自分で決めた事だろ?自分が信じた道を行くのが一番いいさ』

天龍『俺はわりかし信じてるよ。人生はすばらしい、ってな』

52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:46:38.03 ID:xeBVZAH/0

龍田『私も信じてるわ〜、だってみんなに出会えたもの〜』

天龍『だよな。こうやって気分がいい酒がお前らと飲めるから、人生はやめられねえよ』

天龍『つらいこともいっぱいあるけどな』

龍田『そんなときはいっぱい泣けばいいじゃない〜』

天龍『龍田はそういうとき泣くもんな』

龍田『も〜!余計なことは言わないでいいの〜』

天龍『ははは、わりいわりい』

53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:47:06.25 ID:xeBVZAH/0

龍田『私達って現実よりも〜現実を思いわずらう空想に悩んでいるのよ〜』

天龍『おっ!龍田節がはじまったぞ!だいぶ酔ってるな、こいつ』

龍田『空想はどこまでも広がるけれども〜現実はちょっとしたことで解決するから〜』

天龍『ははは、いいぞいいぞ』

龍田『そんなに急いで出ていくほど腐ってるわけでもねえだろう〜?』

天龍『それ俺が言った!』

龍田『え〜もうおぼえてない〜』

54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:47:40.47 ID:xeBVZAH/0

天龍『誰の言葉か知らねえけどさ、まったくその通りだよな』

天龍『戦争は終わらねえ。終わらねえけどさ、ちょっと手を加えてやりゃあ、もっと違った道が見つかるかもしれねえよな』

天龍『俺はそれを子ども達に見せてやりたいんだ。争いは終わりません、だなんて澄まし顔で教えたところで何かが変わるわけでもねえんだ』

天龍『だから俺は、俺の戦いを信じて戦い続けるよ。いつかはきっと希望が見つかるさ』

天龍『俺はそう、信じてる』

55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:48:14.53 ID:xeBVZAH/0

天龍『だからよ、最期まで付き合ってくれよな。お前ら』

龍田『もちろんよ〜ここまで来たんだもの〜』

龍田『とことん最期まで付き合ってあげるわ〜』

天龍『へへっ、ははははっ!』

天龍『よっしゃ!帰って寝るか!明日も仕事だ!』

龍田『肩貸して〜』

天龍『んだよ、ふらふらじゃねえか』

56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:48:45.74 ID:xeBVZAH/0

鳳翔『お帰りですか?』

天龍『明日も頑張らなきゃいけないんで!』

鳳翔『ふふふ、いつでもいらしてください。私にできる事ならなんだって手伝います』

天龍『ははは、こりゃ甘えるしかねえな。な?提督』

天龍『あ、そうだ。そのビデオカメラ、鳳翔さんにあずけとけよ。ここに来るたび録画していこうぜ。記念だ!記念!』

鳳翔『わかりました。お預かりします。でも私、メカには疎くって………』

天龍『メカって………』

57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:49:14.39 ID:xeBVZAH/0

暁『あっ、天龍!帰るの?』

天龍『おう、こいつを運ばなきゃいけないしな』

龍田『すぅ………すぅ………』

電『あいかわらず龍田はお酒に弱いのです』

響『私達も肩を貸そう』

天龍『そりゃ助かる。んじゃ、提督!俺ら全員の勘定まかせたぜ!』

暁『司令官のおごりなの!?やったー!』

電『男気あふれるいい男なのです!』

響『さすが私達の司令官』

天龍『ははは、ここぞとばかりに調子づきやがって、はははは!』

58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:49:44.09 ID:xeBVZAH/0
ザァァァァ………

暁『あー、まだ雨ふってる』

天龍『よぉし、ひとっぱしり行くか!』

響『いいね。雨はいつか止むさ』

電『人の決めゼリフを盗っちゃダメなのです』

龍田『んん〜………あんまり揺らさないで〜………』

59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:50:29.98 ID:xeBVZAH/0

天龍『いくぞ、お前ら!』

天龍『自分の信じた道をどこまでも駆け抜けろー!』タタタッ

龍田『あうう〜………気持ち悪い〜…………』ブラブラ

暁『もー天龍は酔うとすぐ熱くなっちゃうんだからー!』タタタッ

電『雨に打たれればすこしは冷えるのです!』タタタッ

響『そのくらいじゃ天龍の想いは冷めないよ、残念だが』タタタッ

天龍『おーい!なにしてんだー!提督―!はしれはしれー!』

60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:50:56.62 ID:xeBVZAH/0

ザァァァァ―――


タタタタッ―――――



ザァァァァ―――――――




タタタタッ―――――――――――――





61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:51:28.10 ID:xeBVZAH/0





――――五十五年後―――――


ザァァァァ・・・


62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:51:53.87 ID:xeBVZAH/0


「おばあちゃーん?おばあちゃーん!」

「あっ!おばあちゃんいた!なにしてるのー?」

「昔の思い出を見ていたんですよ」

「わたしたちにもみせてみせて!」

「おばあちゃん〜、このひとたちだれ〜?」


63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:52:26.23 ID:xeBVZAH/0

「おばあちゃんが昔、艦娘だったころの大切な仲間達ですよ」

「あっ!俺知ってる!この人天龍だ!」

「龍田もいる〜」

「ええ、そうです。よく知っていたねぇ」

「へへん!俺、天龍にあこがれてるんだ!」

「だから俺っていってるのよね〜ふだんは私なのに〜」

「ばっ!そんなんじゃねえよ!」

64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:52:57.06 ID:xeBVZAH/0

「ふふふ、お前たちはこのふたりによく似ているねえ。優しくて、暖かい」

「ねえ、おばあちゃん!この人たちいまどうしてるのかな!」

「そうさねえ。ここに映っている人たちはみんな、亡くなられたよ」

「亡くなられた?死んじゃったってこと?」

「そうだよぉ」

「ふーん、でもどうしてー?」

65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:53:38.92 ID:xeBVZAH/0
ザァァァァ・・・

「そうさねぇ、天龍さんは大破した一人の艦娘を逃がすためにひとりで敵の大軍の立ち向かい、勇敢に散っていかれたねえ」

「かっこいい!すごい!」

「龍田さんは怪我してねえ、戦う事が難しくなったから看護師になったんだよぉ。沢山の人を苦しみから救って、最期はガンで亡くなられたねえ」

「ふぅ〜ん〜すてきなひと〜」

66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:54:13.18 ID:xeBVZAH/0
ザァァァァ・・・

「暁さんはねぇ、姫級というとても強い敵と戦って、長い長い戦いの末、相打ちとなって倒れてしまわれたよ」

「駆逐艦が姫級をたおしたの?うそだぁー」

「おばあちゃんはうそつかないよ〜しってるでしょ〜?」

「だってさー、信じられないもん」

「あの子はねえ、駆逐艦の小さな体に、戦艦のような強い意志を持っていたんだよぉ。誰よりも臆病で、誰よりも強い勇気をもっていたの。立派なレディだったんだよぉ」

67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:54:47.61 ID:xeBVZAH/0
ザァァァァ・・・

「電さんはね、たくさんの駆逐艦たちのリーダーになったの。すこし皮肉屋なところがあったけれども、決して味方を沈めさせず、敵の命も奪うことをしなかった。でもそれが仇となって、捕虜に背中を撃たれて亡くなられてしまったねえ」

「なんだそれー、だめじゃん」

「いいえ、ちがうのよ。彼女は命の重さが消えてしまう戦場で、自分が撃たれる覚悟のうえで、敵も味方も救ったのよ。憎しみを抱かず、抱かせずにね」

「おばあちゃんの言ってる事〜むずかしいよ〜」

「ふふふ、おっきくなったらきっとわかるかもねぇ」

68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:55:19.94 ID:xeBVZAH/0
ザァァァァ・・・

「響さんはね、第六駆逐隊で最後まで戦った最後のひとりなの。大切な仲間たちが旅立っても、決して彼女たちが離さなかった想いを受け止め、そして、雪の降るロシアの海で散っていかれたんだよぉ」

「さびしくなかったのかな」

「淋しかっただろうねぇ。でも、奮い立ったのよ。仲間たちが信じた希望のともしびを、決して絶やすことの無いように」

69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:55:51.44 ID:xeBVZAH/0
ザァァァァ・・・

「提督はね、深海棲艦と和平を結んだ、ただひとりの人間なんだよぉ。いまも彼女たちとの戦いは続いているけれども、昔ほどはひどくないの。深海棲艦の一部は人と共存することを選んだからねぇ」

「しってる!学校でならった!」

「わたしも〜」

「提督は最後までねぇ、艦娘たちを想いながら、たくさんの孫たちに看取られて安らかに旅だったと、噂に聞いたねえ」

70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/24(日) 10:56:20.18 ID:xeBVZAH/0
ザァァァァ・・・

「おいで、お前たち」ギュゥ

「わはは!」

「うふふ〜」

71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:57:17.15 ID:xeBVZAH/0
ザァァァァ・・・

「いいかい?彼女達の想いを背負って生きろとは言わないよ。お前たちはお前たちの道をただまっすぐに歩みなさい」

「でも、知っておいてほしいの。いま、私達が生きている世界はすべて繋がって出来ている」

「希望も絶望も、たのしいこともいやなことも、ぜんぶね」

「だから、あなたたちも自分の信じた道を進みなさい」

「それも必ず、誰かの未来につながる道しるべとなるのだから」

72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:57:53.69 ID:xeBVZAH/0

「おばあちゃんむずかしいよ!」

「わからない〜」

「ふふふ、そうかもねえ。まあ、元気にいなさいということだよ」

「だったら大丈夫!俺はとっても元気!」

「元気すぎてめんどくさいわ〜」

「なんだよ!うるせっ!」

「ふふふ〜」

73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:58:20.24 ID:xeBVZAH/0


サァ…………





「おや………」





74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:58:50.85 ID:xeBVZAH/0



「おばあちゃん!雨、やんだ!」



「わぁ〜おひさまがまぶしい〜」




「そうだねえ…………まぶしいねぇ……………」




75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 10:59:21.44 ID:xeBVZAH/0


「?おばあちゃん泣いてるの?」

「どうしたの〜?」

「なんでもないよ。どれ、散歩でもいこうか。手を貸しておくれ」

「やったー!いくぜいくぜー!俺は世界水準を超えてるんだー!」ギュ

「も〜うるさ〜い」ギュ

「ふふふ」


76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/24(日) 11:00:34.14 ID:xeBVZAH/0


―――みなさん、あの高く澄み渡る空から私が見えていますか?




「水たまりいっぱいだー!」




―――みなさん、あなた達が信じた希望が私の両手を繋いでいるのを見ていますか?





「あ〜みてみて〜お空!すご〜い!きれ〜い!」





―――みなさんが繋いでくださった未来への道は今――――















鳳翔「天龍型と提督の居酒屋での記録」 おわり



77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/24(日) 23:49:01.23 ID:uB2LWzUk0
乙。感動した…目頭が熱くなるな。
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/25(月) 06:23:41.37 ID:KXapJiFR0
スタンディングオベーションを送りざるを得ない
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/25(月) 09:38:17.23 ID:qrjQkSqjO

良い話でした
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/26(火) 13:37:50.98 ID:yDc5Qaroo
いい話だった乙
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/26(火) 19:56:55.35 ID:1C+BcK8A0
ウルっときた
32.81 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)