エンド・オブ・オオアライのようです

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1 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/12/28(木) 23:21:33.56 ID:Pmfv7QUi0
前作
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1512862935/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1514470893
2 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:23:25.69 ID:Pmfv7QUi0



AM 4:20

《第8駐在所より艦橋保安室、応答願う》

《此方艦橋保安室、どうぞ》

《船舶科生徒より通報あり、緊急で設備点検の依頼が入った。整備班から出せる人員はあるか?》

《根賀班が夜勤で詰めてるからすぐにも回せるが………この時間に生徒から通報?》

《“ヨハネスブルク”からな。何でも、金属が擦れるような異音と人の………それも赤ん坊の笑い声のようなものが断続的に聞こえるらしい》

《金属音はともかく赤ん坊?幽霊にしちゃ季節外れだな、いたずらじゃないのか?》

《あくまで此方が聞いた限りだが、通報した生徒の声は真剣に不気味がってはいた。いたずらだとは思えない。

ヨハネスブルクの生徒はそもそも甲板上の人間と交流すること自体嫌がってるだろ》

《………確かにな。

それに、艦底で異音というのが機器の異常からくるものなら一大事だ。根賀班を急行させる》

《了解。通報があったのは第6層W-7区になる》

《確認した。通信を終了する》
3 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:24:30.85 ID:Pmfv7QUi0
AM 4:45

《第10駐在所より艦橋保安室、応答願う》

《此方艦橋保安室、どうぞ》

《当所駐在員の萩本巡査が警邏終了時刻になっても戻らない。其方に何か連絡は着ていないか?どうぞ》

《今交信記録を確認したが、連絡はきていない》

《確認を感謝する。………どこほっつき歩いてんだあの野郎》

《保安室より10駐、もしトラブルに巻き込まれている可能性があるなら応援を出すか?》

《………いや、必要ない。警邏先は第2商業区だ、“ヨハネスブルク”ならいざ知らず夜のあそこで何か起こるとは思えん》

《それもそうか》

《萩本はまだこの学園艦に赴任して間もないからな、大方道に迷ってるんだろう。

地理を覚えて貰うための警邏だったんだが、それで迷われたら世話無いな》
4 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:25:32.25 ID:Pmfv7QUi0
AM 5:18

《16駐の小沼巡査より艦橋保安室、聞こえますか?》

《此方艦橋保安室、どうぞ》

《居住区警邏中に、路上に倒れている女性を保護。身につけているものから水産科の生徒と思われ───きゃっ!?》

《小沼巡査、何かあったのか?》

《す、すみません!垣田さん、この娘抑えておいて下さい………っヶほ、申し訳ありません》

《保安室より小沼巡査、何が起きた?》

《保護した生徒が意識を取り戻したのですが、私の首を突然絞めようとして………今同行している垣田巡査が取り押さえました。

その、酷く身体が冷たかったのでもしかしたら何か病気のせいで倒れて錯乱しているのかも知れません》

《………人一人が錯乱するほどの病状となると危険なウィルスや伝染病の可能性もあり得る。

小沼巡査、垣田巡査と共にその生徒を最寄りの医療院まで移送し二人もそこで検査を受けるように。16駐には此方から連絡しておく》

《了解しました》
5 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:26:41.38 ID:Pmfv7QUi0
AM 6:30

《保安室より8駐、応答せよ》

《此方第8駐在所、どうぞ》

《整備科より、根賀班から点検作業開始の報告後定時連絡が無いと申告があった。其方に何か連絡はきていないか?》

《8駐より保安室、現状連絡はない。作業が難航しているのでは?》

《だとしても定時連絡もないのはおかしい。8駐、場合によっては捜索依頼を出すかも知れない、待機しておいてくれ》

《了解。………そうだ、第5駐在所の方で何かあったのか?》

《そのような報告は受けていない。何故だ?》

《あぁいや、すこし用事があって無線で呼びかけたんだが応答がなくてな。急ぎの用事じゃないし、後で改めて声をかけてみるよ》

《了解した。通信を終了する》
6 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:29:16.03 ID:Pmfv7QUi0
AM 8:00

《【Good Morning Japan】の時間がやって参りました、皆さんおはようございます!

まずは、今日のお天気ですが───》

《保安室より第19駐在所、第19駐在所、すまないが無線の調子が悪いようだ、もう少し大きな声で頼む》

「それじゃ、行ってきまーす!!」

「ちょっと優花里!お弁当忘れてるわよ!!」

《第2駐在所より医療院、居住区で急病人を1名保護したので其方に移送する。年齢は60代前半の男性、病状は体温の低下───》

「今日、仲子来てないの?」

「なんか具合悪そうでさぁ、朝から水産科寮の医務室で寝てるよ」

《為替と株の値動きです。ヨーロッパの危機的な状況にユーロの暴落が止まらない中、ドル・円はそれぞれ安定した値動きを見せ────》

《東欧連合軍司令部は、昨夜行われた深海棲艦への奇襲攻撃は成功したと発表。この戦闘の結果凡そ20kmに渡って戦線を押し上げた模様です》

「ええ、申し訳ありません。本日は体調が悪いため欠勤とさせていただければ………あれ?もしもし?部長、聞こえますか?」

《【艦娘自己自衛権】法案の設立に対する一部市民団体の抗議行動は激しさを増しており、国会だけでなく警察署前や鎮守府前でデモを行う人々も増えている現状が───》
7 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:30:13.32 ID:Pmfv7QUi0
AM 9:23
「んじゃ、次のページを………磯部さん、読んでくれおー」

「んえっ!?ね、寝てないです!!?」

「ぉK、寝てたんだな」

《此方第3駐在所、第1商業区で観光客同士の諍いが発生したと通報あり。これより確保に向かう》

《根賀班からの連絡はまだないのか?作業開始からもう四時間は経ってるんだぞ?》

《プロリーグ発足に伴う戦車道チームの選考は最終段階に入り、東京ウォーリアズ、茨城ボコクマーズなど候補30チームから12チームに絞られる見込みで───》

「ア゛ー……マジ社会人辛い。アンコウチーム見られると思ったのに………」

「美瀬君、口を動かす前に手を動かすべきだと思うがね私は」

《続いては北朝鮮の核実験問題に関するニュースです。先日核開発再開宣言とも取れる発表をした北朝鮮に対して日本政府とアメリカ合衆国政府、そしてロシア政府は圧力を強めていく方向性で意見を一致させています。しかしながらこれについて北朝鮮側の反発は極めて強いものになると予想され────》
8 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:31:16.46 ID:Pmfv7QUi0
AM 10:28
「第1商業区より通報あり。飲食店の従業員が酔った客に“噛まれた”らしい。取り押さえたので連行して欲しいとのことだ」

「か、噛まれた……ですか?」

「飲んだくれは何をしでかすか解らんな全く。二田巡査、すまんが学区警備の方には一人で向かってくれ。私は商業区の騒ぎを収めて後から行く」

「了解ですニダ!」

《此方は茨城県警察署前の様子です!えー、先日鎮守府への抗議行動中に逮捕されたデモメンバーの解放を求めているようで、数百人がシュプレヒコールを上げています!》

「………何よこの白い納豆って。安いし美味しいじゃない。司令官へのお土産はこれ一袋で十分ね」

《水産科寮医務室より医療院、生徒複数人の容態が悪化していて此方では対処しきれません!収容をお願いします!》

「No, No, No………Help, Help!!」

「あの外人さんどうしたんだろう、もの凄い形相で駆けていったけど……」

「えぇ、まるで出満部長が腹痛を我慢しているときのような酷い顔つきでした」

「失礼だな君……」
9 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:32:50.32 ID:Pmfv7QUi0
AM 11:48
《ムルマンスク襲撃事件から二週間が経ち、クレムリンはヨーロッパ戦線への本格的な介入を示唆する声明を発表。この件についてロシア連邦国内では賛否がくっきりと分かれている状況で───》

「アレ?ボンドと両面テープが切れてるだーよ。予備もない、困ったねー」

「あっ、じゃあ僕がお昼休みに買ってきますお白根先生」

「本当かい?助かるんだーよ」

《見てくださいこの新鮮なサンマ!実はこれ、艦娘の皆さんとヴァイキング水産高校が共同で漁を───》

《───wWwが──■■をけて──死──ww──》

《保安室より8駐、電波状況が悪すぎるぞ。聞こえない、繰り返せ》

「今日、普通科の子たちもお休み多いですね……」

「風邪でも流行ってるのかな?華も気をつけなよ、生徒会長ってなんだかんだ忙しいんだしさ」

《此方第17駐在所、駐在員が一人急病。医療院に向かわせるため1名欠員となる》

《保安室より17駐、確認した。待機人員から代替を1名送る》
10 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:33:42.98 ID:Pmfv7QUi0
PM 12:17
「ねぇ、そこの貴方?」

「おっおー、僕ですか─────お?」

「そうよ。他に、誰かいるかしら?」

《だから何度も言ってるだろう、突然女に噛みつかれたんだよ!しかも他にも何人も俺に飛びかかってきたんだ!警察は何をやってるんだよ!》

「ぶーんせ・ん・せぇ♪」

「これは拡散ですねぇ〜〜〜♪」

「」

《保安室より各駐在所に通達。どうも今日は観光客や住人同士のトラブルが頻発している。警邏を強化、諍いを発見したら治安維持の観点から積極的に介入するよう心がけてくれ》
11 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:37:41.44 ID:Pmfv7QUi0
PM 12:31
《電撃的に東欧連合軍への支援を表明したイギリスのショボン=ウィリアムズ首相は、本日レイクンヒース空軍基地を視察しました。

リスボン沖事変以来独自路線を歩んできたイギリスの孤立主義的な姿勢を覆す動きに、専門家の間では様々な意見が出ており───》

「諜報活動ご苦労様ですお、アリサさん」

「………ゲ」

《全国戦車道大会での優勝効果から、大洗町や大洗女子学園商業区への観光客は例年の2倍を超え───》

「いってぇ、いってぇ!?」

「このアマんなもん振り回すんじゃねーよ!」

《第4商業区にて新たに4件通報あり。付近駐在員は至急現場にむかえ》

《此方第2商業区、10人以上の集団が騒いでいる!第22駐在所で対応しているが人数が足りない、付近で手伝える奴はいるか?!》

《居住区の方でも幾つか通報がありました。第一、第二、第六で───》












《8駐より保安室、8駐より保安室!……何で繋がらないんだ畜生!》

《発砲を許可、全責任は俺が取る!!“彼女”らを甲板上に出すな、ここで食い止めろ!!》
12 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:38:20.93 ID:Pmfv7QUi0










PM 12:43
「…………ねぇ、なんか向こうで煙上がってない?」

「えー?梓の見間違いじゃない?学園艦内で火事とか起きたら放送出るでしょ」

「そう、だね……見間違いだよね、うん」
13 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:40:57.64 ID:Pmfv7QUi0





PM 1:31

《駐在所の半分以上から応答がない、何が起きている!》   《学園校舎とも連絡が付きません!携帯も無線も有線電話もダメです!》
「今なんか揺れなかった?」
「怖い怖い怖い」    「えっ、何?地震?海の上で?」
《保安室、保安室、応答を願う!第2商業区にて暴動が発生、被害拡大中!》 「逃げろ、殺される殺される!!」

「やだぁ、噛まないで、噛まないでぇ………」「来た来た来た逃げろ逃げろ!」
  《発砲許可も増援も無いのにどうやって食い止めればいいんだ!?》
  「なんだよあいつらヤバいって!!」
《未確認ですが、大洗女子学園甲板上で火災を確認したとの通報が複数警察に届いている模様です》
   「おい、なんかあいつらの頭から飛び出してきたぞ!」
「化け物いる化け物いる!向こうダメだ、逃げろ!」
《商業区の封鎖が困難!暴徒の人数が増える一方です!》

















『─────ァアアアア……………』






.
14 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:41:32.18 ID:Pmfv7QUi0
.





     PM 1:51





.
15 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:42:14.71 ID:Pmfv7QUi0
「……ああ、そっちには今叢雲が……警備府があったろ。そこの戦力だけじゃ対処できねえのか?

いや、動ける。大丈夫だ。直ぐに急行する。わかった、じゃあな」

「叢雲さんがどうかしたんですか?」

「……」

「司令官……司令官!!」

「青葉、今から言う連中に緊急招集をかけろ」

「先に事情を説明してよ。何を焦っているのさ?」

「学園艦だ……」

「え、待ってよ、まさか……」


「連中に目を付けられた。


大洗が……戦場になるぞ」
16 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/12/28(木) 23:42:48.22 ID:Pmfv7QUi0




〜エンド・オブ・オオアライのようです〜



.
17 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:44:15.05 ID:Pmfv7QUi0
本日分投下完了です。明日の同じくらいの時間帯で続き投下します。

マッ鎮コラボ第三段、ご静聴いただき、またお楽しみいただけるなら望外の喜びです
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/29(金) 00:25:27.98 ID:kuVJJxxAo
乙であります!
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/29(金) 02:21:29.98 ID:RBG/zpTA0
超待ってました!
てかバイオハザードヤバすぎる…
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/29(金) 18:02:15.69 ID:Wes8Ik2Z0
おっ乙
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/30(土) 01:09:34.16 ID:KMd4aD2h0
つまんね
22 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/30(土) 17:23:41.25 ID:/c6p2HyV0
仕事納め終わってるのに風邪っぴきワロス

申し訳ありません、大晦日より更新再開します
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/30(土) 18:57:15.52 ID:pwUlzFCA0
あららドンマイです…体調には気をつけて
24 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/31(日) 23:22:45.42 ID:5+6NfdaHO






ふと、幼馴染みとの思い出が脳裏を過ぎる。

女の子でありながら大の怪獣好きというシュールな趣味を持っていたその幼馴染みに、視聴を半ば強要された某怪獣王映画のビデオシリーズ。ジャンプ漫画よりも司馬遼太郎作の【坂の上の雲】が好きといういけ好かないガキだった僕でも、日本映画界が世界に誇る特撮シリーズの出来の良さには目を奪われたのをよく覚えている。




『─────アァアアアアアアアアアアッ!!!!』


そして“それ”は、まさに映画の怪獣のように僕たちの前に現れた。
25 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/31(日) 23:52:56.59 ID:5+6NfdaHO
厚さ数メートルにも及ぶ、鋼鉄の甲板と、その上に敷かれたコンクリートの道路が捲れ上がる。居住区に立ち並ぶ家々が、土煙と轟音を伴って崩れ落ちていく。錆びた鉄の板を満身の力を込めて摺り合わせているような、おぞましい叫び声が防音ガラスを突き抜けて耳朶を震わす。

ヌラヌラとした光沢を放っていることが遠目にも解る青白い胴は、まるで樹齢数百年の大木のように太くたくましい。頭部は対比するかの如く深い黒色をきていて、位置的に眼と思われる亀裂の奥からは金色の光が覗く。

全長は大凡20Mといったところだろうか。怪獣王には初代にさえ遠く及ばないが、あまり高い建造物が多くない大洗女子学園の甲板上にあってそれは十分に異質な存在感を放っていた。

そして────何より異質なのは、左目に当たる箇所から生えた“砲門”と、頭頂に備わる4門の“魚雷発射管”だ。

(;゚ω゚)「……………」

「あれが、深海棲艦………なのか?」

『───キィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!』

冷泉さんのか細い呟きに応えるように、“それ”はもう一度あの鳴き声を上げる。先程よりも僅かに音程が高く長い咆哮は、まるで歓喜の雄叫びのようにも感じられた。

《たった今入ったニュースです。大洗女子学園の甲板上に、深海棲艦と思われる全長20M程の巨大な生命体g─────》

「きゃあっ!?」

テレビから流れていたアナウンサーの声が不自然に途切れ、画面がブラックアウトする。直後、商業区と思われる方角で灰色の煙が爆発音とオレンジ色の炎を伴って吹き出す。

ここでようやく、指一本すら動かすことが出来なかった僕は恐怖による金縛りから解放された。
26 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:58:33.76 ID:jDuEGwJ2O
(;゚ω゚)「外に出るんだ!早く!!」

「玄関、玄関に向かって!!すぐに河嶋達が放送を流すから外での避難先はソレに従うよ!」

「一つの出口に集まらないで!後ろ半分の席の人達は後ろから、前半分の席の人達は前から出て下さい!!」

僕の叫び声に、角谷さんと西住さんが的確な指示で続く。他の面々も弾かれたように動き出し、西住さんの指示通りに混乱を避けながら教室の外へと走り出て行く。

(;^ω^)「そうだ、アリサさん───」

簀巻きにされている彼女の拘束を解こうと振り向いた瞬間、斬鉄剣が抜き打たれた時のような金属音が鳴る。そこに居たのは生け花剪定用のハサミを振りきった体勢の五十鈴さんと、両断されたロープを見て呆然とした表情のアリサさん。

「こ、これがジャパニーズ・イアイ………」

(;^ω^)「多分違うかな!」

「先生、アリサさんの拘束は解きました!行きましょう!」

(;^ω^)「何で生け花用のハサミ持ち歩いて……ええいツッコミは後だ!!」

五十鈴さんを先に行かせ、アリサさんを助け起こして駆け出す。入り口で待っていた角谷さんが教室内を一瞥し、残っている者がいないことを確認して僕等のしんがりを勤める形で続く。

(;^ω^)「っおお!?」

「っととと!?」

「きゃああ?!」

ぐらり。

直後に足下を襲う、大きな揺れ。まるで大波を打ち付けられた船のようだが、僕等が乗っているのは全長7.6kmの【学園艦】だ。神話に出てくるクラスの大波でもなければここまで揺れるはずがないし、実際この艦内ではこれほどの揺れは経験したことがない。

………いや、これは正確な言い方じゃない。

“ついさっき”までは、一度も経験したことがなかったといった方が正しいか。

『『ギィアアアアアアアアアアアアッ!!!!』』

「ひぁっ!?」

二つに増えた咆哮。耳にした澤さんの肩がびくりと大きく震える。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/01(月) 18:47:45.30 ID:0HehjtpE0
投下乙
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/01(月) 19:58:22.05 ID:irmZtu4I0
は?つまんねーな
29 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/01/05(金) 23:11:40.35 ID:dCQGlBda0
間髪を入れず、再び響く爆発音。廊下から窓の外を見れば、商業区の方でもう一つ大きな火柱が上がっていた。

西住さんたちが操る戦車のものに酷似した───だけど、より大きく重い「砲声」を直前に挟んだ上で。

「………何今の。ひ、火ィ噴いたよアイツ!!」

「向こうの方燃えてない?」

「じゃああれ……本当に深海棲艦なの……?」

「ねぇ、こっち見たよ!」

「逃げて、早く逃げてぇ!!!」

他の教室からぽつりぽつりと廊下に漏れる、授業中だった他の生徒達のざわめき。それらは瞬く間に校舎全体に波及し、やがて爆発的な悲鳴へと変わっていった。

「おわっ!?」

「Shit!!」

「っ、皆さん落ち着いて下さい!すぐに広報から指示があるので一度それを聞いてから避難を!」

(;^ω^)「闇雲に逃げるなお!かえって避難が遅くなる!」

この4階にも、他の教室から生徒達が溢れ出す。僕や生徒会長である五十鈴さんが呼びかけても、狂乱状態の生徒達は聞く耳を持たず僕たち戦車道履修者一行を飲み込みながら我先にと階段や非常口へ殺到する。

《放送室、生徒会広報より全生徒へ!さっきのJ-ALERTは訓練ではありません、速やかに指定避難場所まで移動して下さい!

避難経路は風紀委員や先生方の誘導に従って!冷静に対応するようにして!》

「早く行って早く!」

「ちょっ、押さないでよ!」

「落ち着いて!まずは外に、今の生徒会からの放送に従って避難を!」

「校舎の中に止まるな!正面玄関からの避難者と非常口からの避難者に別れろ、一つの入り口から出ようとすると混雑するぞ!!」

疾うの昔に止まっていたJ-ALERTに変わって武部さんの声が聞こえても、納まる気配は無い。他の教員や風紀委員も懸命に誘導しようとしているが、狂乱する群衆の濁流に組織的な活動を殆ど出来ないまま僕等同様押し流されていく。
30 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/05(金) 23:25:36.65 ID:dCQGlBda0
「痛っ、痛い!?やだ、押さないでよぉ!!」

「……“人海”とはよく言ったものだ、溺れそうになる……!」

「麻子さん、優花里さん、大丈夫ですか!?」

「ご心配なく、私達はなんとか!」

「こ、コミケ並みの人込みは筋力つけてもつらい……」

「バレー部、アリクイさんチームとウサギさんチームを守れ!!根性だ!!」

「「「了解!!」」」

西住さんたち戦車道履修組は、やはりこの中では一番組織的に「避難」ができている。だが、いかんせん校舎内が丸ごと狂乱状態という現状に翻弄されていて、ともすればバラバラになりかねない隊列をかろうじて維持している。

(;^ω^)「指定避難場所は第2グラウンドだお!皆、そっちに向かえお!!」

「……ダメだねブーン先生、これ、私ら意外で話聞ける余裕持ってる生徒いないや」

「桃ちゃん、放送はいいから早く武部さん連れて下に───もう、なんで通じてくれないの………!」

いつもの飄々とした様子は吹き飛び、険しい声色で呟く角谷さん。その横では、スマートフォンを操作していた小山さんが真っ青な表情で肩を落とす。

二度目の廃校宣告が突きつけられた時ですら、二人がこんな表情を見せたことはなかった。そしてそれは、きっと今の僕にも共通する表情の筈だ。

(;^ω^)(………学園艦に深海棲艦が現れたってのもマズいけど、それ以上に不安なのが「J-ALERT」は“別の個体”の出現に対するものだって事だお)

届かないと知りながらそれでも喉をからして叫びつつ、僕の脳裏に過ぎるのはJ-ALERT直後に流れていたニュース速報。

フィリピン海に現れたという新型の深海棲艦。航空戦力を保持するとはいえ、日本本州到達まであとほぼ一日分の猶予があるにも関わらず出された大々的な緊急避難勧告。それは当然、学園艦に対して極めて深刻な脅威になる。

混乱の渦中にある大洗女子学園は、尚更に。

(;^ω^)(蝶野教官が、それが無理でもせめて交代人員が居てくれれば……っ!)

無い物ねだりが無駄と解っていても、そう思わずにはいられない。

粗野な言動ながら自衛官として確かな規律と腕を持っていた蝶野一等陸尉は、インド派兵こそ部隊再編の流れで先送りとなったが原隊復帰に伴って退艦済。代わりの教官となる二等陸尉は、明後日の赴任予定はずだった。

現役の自衛官による避難誘導があれば、どれほど混乱を避けることが出来ただろうか。

教師として生徒を守らなければいけない立場にありながら、混乱を一向に収拾できず他人に頼るしかない自分の無力さがひどくもどかしい。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/05(金) 23:45:38.19 ID:lpmGg2Ck0
つまんないし読みにくい出直して
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/05(金) 23:55:36.08 ID:dCQGlBda0
《緊急車両が通ります!道を空けて、道を空けて下さい!!》

幾らかの時間を経て、僕の身体は校舎の正面玄関から西住さんたちや他の多くの生徒・教員と共に外へ転がり出る。同時に、正門から赤ランプを回転させけたたましくサイレンをかき鳴らしつつ数台の車両が飛び込んできた。

《一号車、二号車、もう少し車間詰めろ!しっかり入り口を塞げ!》

《車両はまだ来ます、進路に入らないで!》

学園艦の甲板上では、生徒・居住者の安全という観点から自動車の所持には厳しい制限が設けられている。陸付け時の遠出用に民間車両も詰まれてはいるが、大半は第三層の立体駐車場区画に収納されていて“上”を走ることがない。

ただし、それでも7.6kmという大きさを考慮すると徒歩のみでの移動は様々な事態に対応できなくなるため、例えば商業区を走るバスなど一部に例外が存在する。

今僕たちの目の前で次々と停車していくそれらも、“例外”の一角を担っている。

公共に属し、緊急時の機動力を必要とする組織。

《総員降車、総員降車!!展開、射線形成急げ!!》

「生徒の皆さんは早く指定避難場所に向かって!大丈夫、すぐに県警と自衛隊から救助が来ます!」

警察庁管轄下にあり、学園艦において唯一乗船が許可されている武装集団。

「我々保安隊も現在艦内各所で事態の収拾に動いています、どうか安心してください!!」

学園艦保安隊の、装甲車だ。
33 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/06(土) 00:25:38.82 ID:Gd5bPsEi0
ローカルバスほどもある大きな車体に赤い回転灯を光らせた装甲車が、合計6台正門をくぐって停車する。

学園の外に側面を向けてさながらバリケードのような陣形を組んだそれらから降りてきたのは、紺色の制服に身を包んだ70人前後の集団。全員が防弾仕様のヘルメットを被り、サブマシンガン───H&K MP5を構えている。

「………マジかよ」

彼らが展開を完了すると、様子を見ていた同僚の教員の一人が目を丸くした。

「艦橋保安室の直属部隊動かすって、相当ヤバいじゃねーか……」

各学園艦で編成されている保安隊は、大まかに2種類の保安官で構成されている。

一つは、陸でいうところの交番に相当する“駐在所”に赴任した保安官。これは働き場が学園艦の上というだけで内容も交番勤務とほぼ変わらず、装備もニューナンブM60と警棒という一般的なものだ。

もう一つが、司令部に当たる“艦橋保安室”直下の保安官部隊。此方は主に学園艦上でテロや重大犯罪が発生した場合の備えという立ち位置のため、国際条約で許されるギリギリのラインで────具体的にいえば、銃器対策部隊とほぼ同様の装備が支給される。

無論、このため直属部隊の運用には非常に多くの制限があるのだが、これほどの緊急事態となれば動くのは当然といえば当然だ。寧ろ、指揮系統も混乱しているであろうこの状況下でこれだけ素早く展開に踏み切れた艦橋保安室の判断はかなり迅速な方だと思う。

『ォオオアアアアアアアアアアアアッ!!!!』

………ただし、今回の場合あまりにも相手が悪い。

『キィアアアアアアアアアアッ!!!!』

声高に吠える2体の“生ける軍艦”の20m近い巨体に、たかが70挺のH&K MP5の火線が通用するとはとても思えない。
34 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/06(土) 01:00:29.26 ID:Gd5bPsEi0
生徒達の多くも、やはり保安隊と深海棲艦の間に横たわる力の差は解っているのだろう。幾らか恐慌は治まったように見えるが、それでも一刻も早くこの場から離れようと大半の生徒は第2グラウンドの方へ駆けていく。

だが、その行動を“全員”が取ったわけではなかった。

「………!お父さん、お母さんが!!」

「優花里さんダメ!!」

「こっちは通れない、戻りなさい!死にたいのか!」

「だって、だって妹が居住区に!」

「お願いです、おばあちゃんの無事を確認させて下さい!」

「通して、通してよぉ!ママ、ママぁ!!」

真っ青になって学園の外に向かって走り出した秋山さんを、背後から西住さんが抱き留める。他のあちこちでも、警官や教員に制止されながらも正門から出ようとする生徒が何人も居た。

深海棲艦の内1体が現れたのは“居住区のど真ん中”───相当数の生徒の家族が住まい、生活を送っている場所だ。秋山さんの両親が経営している理髪店もここにある。

街の惨状を、更にいえば深海棲艦の背後で燃え盛る商業区の有様を目にし、自分たちだけではなく“自分たちの家族”が置かれた危機に気づき、彼女達の理性は跡形も無く吹き飛ばされていた。

「西住殿、離して下さい!家に、私の家族のところに行かせて下さい!!!」

「お願い………落ち着いて優花里さん!」

(;^ω^)「秋山さん、気を確かに持てお!」

「グデーリアン、冷静になれ!頼むから行くな!!」

装填手としての怪力を遺憾なく発揮して今まさに西住さんの手を振り切ろうとしていた秋山さんを、僕と松本さんも加わって何とか押さえる。

「離して、離して……お父さん……お母さん………っ!やだっ、やだぁ!!」

3vs1、しかも内1名成人男性という状況でも、秋山さんは抜け出そうと更に激しくもがき続ける。

『オァアアアアアアアアアッ!!!!!』

潤む彼女の視線の先で、深海棲艦はみたび咆哮し────そして、家々を突き崩しつつゆっくりと此方へ進撃を開始した。
35 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/06(土) 01:01:44.59 ID:Gd5bPsEi0
短いのですが仕事の兼ね合いのため復活更新ここまでで一度切ります。明日(今日)から投稿ペース上げたいと思います、お待たせして申し訳ありませんでした。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/06(土) 01:25:06.84 ID:cCMQXamq0
きっついなぁ、つまんなくて
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/06(土) 01:37:26.53 ID:NcVYYHZA0
おつおつ
目と鼻の先でこんな事態が起きれば、そりゃまともじゃいられないはな…
おまけにまだ開幕に過ぎないとか恐ろしい
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/06(土) 05:53:33.79 ID:bJZv84qhO
つまんないならわざわざ見に来なきゃ良いのに気持ち悪い暇人だね^^
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/06(土) 10:50:03.25 ID:gheLiOvGO
この手の返しするやつって読む前から面白いつまらないの判断できるエスパーなのかなって思うよね。頭悪いんだろうな
読んだ上でつまらないってことでしょ
作者が悔しくて自演しちゃったなら、気持ちは分かるけど我慢しなよ
つまらないのは本当のことだし。勿論、面白いと思う人もいるかもだけどね
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/06(土) 13:11:33.34 ID:5VHwcqyyO
今回も期待大です。楽しみに更新を待ってます。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/06(土) 15:13:10.95 ID:3lnPnLZ6o
暴言単発アンチが湧くのは人気の証拠
楽しみに待ってる
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/06(土) 20:47:17.61 ID:cCMQXamq0
気持ち悪いは確かにひどいよな
43 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/01/06(土) 23:05:01.77 ID:Gd5bPsEi0
「対象A、移動開始!接近してきます!!」

「前衛各班に通達!射撃開始、繰り返す、射撃開始!

住民の避難誘導と平行して対象Aを牽制しろ!!」

指揮官と思わしき保安官が手元の無線機に向かって叫び、居住区の方から響くは連続した銃声。躙り寄ってくる深海棲艦めがけて周囲から幾十本の火線が延び、銃弾が胴や頭部で次々と炸裂した。

『ォオオオォオオ………』

「………クソッ!!」

だが、その火花は相対する敵の巨躯に比してあまりにも小さく儚い。素人目に見ても、毛ほどのダメージにもなっていないのがよく解る。

「対象A、依然進行中!移動速度に変化無し!」

「前衛班より通達、付近市民の避難は区画の混乱と人員の不足により遅延!“暴徒”の鎮圧も難航中とのこと!」

「艦橋保安室に部隊の増強を要請!それと商業区との連絡回復も────うおっ!?」

『ギィアアアアアアアアアアッ!!!!』

深海棲艦が、その図太い胴で周囲を薙ぎ払った。

家屋や、電柱や───遠目故断定はできないが、“人の形”をした小さな点が勢いよく宙に舞う。

「おい、アレ……」

「退避、退避ィ!!」

(;゚ω゚)「伏せろ!!」

「きゃああっ!?」

長方形の巨大な何かが激しく回転しながら飛来し、突風を残して僕等の頭上を飛び過ぎた。

振り向けば、後方50M程の位置に酷く拉げた装甲車が転がっている。
44 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/06(土) 23:18:18.32 ID:Gd5bPsEi0
数秒の間を経て、爆発的な悲鳴が辺りを包み込んだ。

保安隊の到着によって一時沈静化していたパニックが、改めて目の前に突きつけられた“脅威”によって再び激しく燃え上がる。居住区に向かおうとまでは行かずとも、半ば興味本位、半ば楽観的に玄関や校門付近にたむろしていた多くの生徒達が再び津波のような勢いをもって第2グラウンドの方へ逃げ散っていく。

「あぁ……ああぁっ……!!」

ただし、これも“全員”に共通した動きではない。秋山さんを筆頭に、元々居住区の方面に行こうとしていた生徒達は寧ろますます激しく抑え付けようとする人間に対して抵抗を始める。

「行かせて、行かせて……行かせてよぉ!!私が行かなきゃ………お父さん、お母さぁん!!」

「優花里さんっ……!」

(# ω )「────秋山ァ!!!」

こめかみの辺りでプツリと音が鳴り、気がついたら僕は勢いよく平手を振りかぶっていた。

「ひぐっ………」

人を殴った感触がビニール袋を破裂させたような音と共に僕の掌に伝わり、秋山さんが後ろに蹈鞴を踏む。倒れかけたその身体を、両肩口を掴んで引き起こす。

PTAに見付かれば懲戒免職待ったなしだろうが、構うものか。今更自分の職歴に頓着していられるような状況じゃないのだから。

(# ω )「いい加減にしろよお前!!てめえは何だ!?ウルトラマンか?魔法少女か?それとも艦娘か!?

陸なら10式戦車数台束にして迎撃しなきゃいけない化け物に、素手で立ち向かえるようなスーパーパワーをいつの間に身につけたんだ!?」

「……内藤教諭、行かせてください、お願いです、教諭………

お父さんも、お母さんも、あそこに……あそこに……っ」

「っ、先生!」

「落ち着けブーン先生!」

もう一度、秋山さんの頬を打つ。先程まで彼女を押さえていた西住さんと松本さんの手が、今度は僕の腕や肩に添えられていた。

(#^ω^)「家族が心配なのはよく解る!特に君は人一倍両親想いなのを教師として知ってるからな!行かせられるならそうしてる!

でもお前さっきの保安隊の会話聞こえていたよな!?学園艦上の最重武装部隊が避難誘導に尽力してて、それでもなお進捗は芳しくないって!

ただでさえ混乱状態のところに、戦車から降りたら何の技能も持たない───せいぜいクラブ活動で使えるサバイバル技術程度しかない一般人が飛び込むことが………どれだけその避難誘導に対して“妨げ”になるかって考えてるか!?」

「────えっ」

a暴れなくなったものの虚ろな表情で解放を懇願していた秋山さんの目が、はっと見開かれた。

(#^ω^)「しっかりと思い出させてやるけどな、お前はなんら怪物を倒せる力を持ってないただの2年C組の秋山優花里なんだよ!僕がただの無力で無能な現国教師であることと同じで!!

その無力なお前があそこに飛び込んで、負担が増えた保安隊はどうなるだろうな!?それこそ、巡り巡ってお前の両親さえ危険に晒しかねないって事を理解しろよ!!!」
45 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/06(土) 23:54:19.53 ID:Gd5bPsEi0
学園艦保安隊の人数は、決して潤沢とは言い難い。この未曾有の大混乱の中にあっては、例え一人分であっても守らなければいけない対象が増えることは大きな負担だ。

ましてや居住区は、今まさに混乱の“元凶”が暴れくるっている場所なのだ。たった一人分でも負担が増せば、防衛線全体に影響する綻びになり得る。

そもそも本来なら、今この瞬間彼女の説得に割いている時間さえ生死を分けかねない程の異常事態なのだから。

(#^ω^)「………本気で両親の事が心配なら、それこそ学園艦の外に一刻も早く避難してやれお。せっかく保安隊に救助された君の両親が、避難生徒名簿の中に“秋山優花里”の名前がなかったらどれほど悲しむか解るかお?

両親だけじゃない。この状況でも先に逃げず、君が落ち着くのを待ってくれてる西住さんたちだって悲しむお」

「……アリサさんはどうか知らないが」

「強制徴用され巻き込まれた挙げ句この仕打ち、実にFuckね」

「………」

麻子さんが低い声で茶々を入れ、アリサさんがわざとらしく眉を顰めて肩を竦める。少しだけ周りの空気が弛緩したが、秋山さんは僕が手を離した後も俯いたままだ。

とはいえ、先程の狂気じみた雰囲気は消えたし居住区に向かおうとするような素振りも見せてはいない。ひとまずはこれでよしとする。

(#^ω^)「他の奴等、聞こえたか!?お前らがやろうとしてる事も同じだ!!

自分が死にたいだけじゃなくて、実は積極的に家族を殺したい生徒だけ居住区に行け!!それが嫌なら、速やかに第2グラウンドまで走れ!!」

暴れくるう深海棲艦の騒音に負けぬよう、精一杯声を張り上げる。秋山さん同様居住区を目指そうとしていた生徒達も、徐々に抵抗をやめて同級生や風紀委員、教員達に連れられて正門から離れていく。
46 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/07(日) 00:12:50.17 ID:dUa8vtWv0
( ^ω^)「小山さん、河嶋さんと武部さんは?!」

「それが、まだ連絡が……あっ、今二人とも玄関から出てきました!」

( ^ω^)「二人をこっちに誘導してくれお!西住さんと松本さん、秋山さんに肩を貸して!」

「じゃあ皆、駆け足で行くよーー!!戦車道でしっかり鍛えたんだ、たかが第2グラウンドまで走るのにばてちゃダメだからね!!」

『ギィアアアアアアアアアアッ!!!!』

角谷さんの号令に従って、僕等も校内生徒のしんがりを担う形で避難を再開した。背後からは相変わらず深海棲艦による暴虐の音が聞こえてくるが、幸いまた此方にモノがとんできたり進撃する速度が速まったりといった事態は起きていない。

「………ダメだ、ボクのスマホ、うんともすんとも言わない」

「猫田にゃーさんもか〜、実は私も、なんだよね。麻子は?」

「……お婆から着信が入っていたから折り返そうとしたが、繋がらない。何も起きずに切れる」

(;^ω^)「……避難中に私語はやめなさいお私語は」

怯えるときは怯えるが、彼女達は修羅場慣れしているせいかイヤに立ち直りが早い。まだ深海棲艦の鳴き声やら何やらが余裕で聞こえてきているというのに、小走りで避難場所へ向かいつつ早くも情報交換が始まっている。

「みぽりんのスマホはどう?」

「ごめん、私のも無理みたい。……あれ、でもメールは送れる」

「あ、本当だ。今隊長のメールが私の所に来ました」

「えっ!それ本当梓ちゃん!じゃあ私も家族に───送れなーーーい!!やだもーーーーー!!!!」

武部さんが、走りながら肩を落として落胆するというなかなか器用なアクションを見せた。ややオーバーな動きながら家族に連絡が出来なかったというのはわりかし本当にダメージを受ける内容だったらしく、眼にはうっすらと涙が浮かぶ。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/07(日) 00:13:43.38 ID:5MI42vUe0
何か読んでて恥ずかしくなった
48 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/07(日) 00:46:57.93 ID:dUa8vtWv0
「………余所者な上についさっきレイゼンにノって巫山戯たばっかりの私がいうのも何だけど、まだあの化け物からろくに距離を取ってすらいないのに大したリラックスぶりね」

( ^ω^)「HAHAHA」

漫画学科で使う教科書に載せてもいいレベルの典型的な「ジト眼」を見せるアリサさん。僕としても些か反論に困るため、乾いた笑いで誤魔化しておく。

( ^ω^)「ま、足でも止めるならともかく避難とに支障が出ないなら多少はね。

……それに、これは多分彼女達なりの思いやりでもあるんだお」

「………あぁ」

アリサさんはちらりと秋山さんの方に視線を向け、合点がいったとでも言いたげに頷く。

秋山さんの表情は相変わらず暗く、5歩10歩という短いスパンで頻繁に後ろを振り向いている。西住さんと松本さんが横で併走しつつ様子を窺っているが、仲のいいこの二人に対してもろくに反応を返していない。

秋山さんは本来、角谷さんから直々に副会長への立候補を依頼される程度には聡い生徒だ。自分が居住区に無理やり行くことの“愚”は、十分に理解していると思う。

ただし、それでも“家族があの災禍の只中にいる”という事実は変わらない。不安に思うな、心配するなと言う方が無理な話だろう。

「他にも居住区に家族がいる奴等もいるでしょうに、それでもオッドボールの事心配してやれるのね」

( ^ω^)「大洗女子学園の戦車道チームは、そういう子たちの集まりだお」

有事の中にあっても、他人を思いやる気持ちを忘れない────口で言うのは感嘆でも、それを自然に出来る人間は極稀だ。そして彼女達は、西住さんを筆頭に全員がそれを出来てしまう。

戦車道は座学部分にしか携わっていないただの現国教師が言うのも烏滸がましいが……本当に、彼女達は素晴らしい「チーム」だ。
49 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/07(日) 01:25:52.37 ID:dUa8vtWv0
(;^ω^)「しかし、真面目な話こんなことに巻き込んでしまって申し訳ないお。アリサさんはここの生徒じゃないわけだし」

「ええ全くね───と言いたいところだけど、私は私でオッドボールの真似事してなきゃ今更こんなことにはなってないしね。学区から追い出されたとしても幾らかは遊んでから退艦する予定でもあったし、どのみち巻き込まれてたわ」

そう言ってやれやれと肩を竦めるアリサさんのアクションは、非常に様になっていた。流石はサンダース大附属の生徒と言ったところか。

「で、そこの一年生がなんでこっちを睨んでるのかって貴方心当たりは?」

(;^ω^)「えーと、宇津木さん?何かあったかお?」

「…………いーえー?特には?」

意味ありげな視線に気づき問いかけるが、宇津木さんはぷいとそっぽを向く。

「ただ、生徒に私語を注意しておいて自分はアリサさんと喋りすぎなんじゃないかなーって、思っただけよ〜?」

(B´ω`)「…………言われてみればその通りだおね。気をつけるお」

おさない、かけない、しゃべらない。小学校の避難訓練でさえやるような初歩の初歩を教師が自ら破っていては世話がないし、ましてや秋山さんを怒る資格などない。自分の愚かさに、自己嫌悪が胸の内を満たし顔に縦線が降りる。

「ヘイ一年?boonの奴割と本気でヘコんでるわよ」

「えっ、へっ!?せ、先生〜?軽い冗談だからそこまで気にしなくてもいいんじゃない〜?」

「………あー、ブーン先生?第2グラウンドってそこまで遠くないし着くまでに気を確かに持って貰った方がいいんだけど」

「内藤教諭、私は気にしてませんし寧ろ感謝しておりますので元気をお出しください!!」

(B ω )「おぉーん………」

「ダメだこりゃ。皆ー、ブーン先生一時的に沈んじゃったけど第2グラウンドまであと少しだから頑張って────」
50 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/07(日) 01:44:11.42 ID:dUa8vtWv0
更新ペース上げる(+1P)
明日というか今日というかもまた同じ時間帯で投稿します。ご静聴ありがとうございました。
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/07(日) 02:20:05.08 ID:+u1jOlRA0
おつおつ、先生よく頑張った…
ベルリンの時に比べれば今後対応できる戦力は桁違いでも、現場での対応力がなきゃ無理ゲーだしなあ
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/07(日) 15:53:22.36 ID:iStEIucI0
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/07(日) 16:00:36.50 ID:b2hh+Oh9O
これはひどい
54 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/01/07(日) 23:17:08.00 ID:dUa8vtWv0
三度目の揺れ。角谷さんの言葉が、途切れる。

三度目の轟音。僕の意識が、現実に引き戻される。

僕も、角谷さんたちも、周りの生徒や教員も、誰もが足を止めて後ろを振り返る。それが“避難”として正しい行動ではないと知りつつも、足を止めずには居られない。

正門に展開する保安隊の眼前で道路が隆起する。砕けたコンクリートの下から、二本の腕を使って“それ”はゆっくりと這い出てきた。

『─────』

二本の腕に二本の足、股と腰、胸部の三つのパーツで構成された胴。オタマジャクシの出来損ないのような形状をした先の2体に比べると、それは───15m近い巨体と蝋のように白く血の気のない体色を除けば、幾らか僕たち「人間」に近い形をしているように見える。

故に、肩から上の異様さが尚のこと際立った。

「ひっ……………」

先の2体とはまた別種の“異形”を目の当たりにして、大野さんが微かに悲鳴を上げる。

胴に対して明らかに大きすぎる、楕円球形の頭部。「それ」の艤装と思われる砲塔や銃座が、実用的とは到底言えない無秩序さでそこかしこから伸びる。左目に当たる位置は無造作に刃物を入れられたような歪な“切れ目”となっているのに対し、右眼に当たる位置からは単装砲が生えている。

人を2、3人纏めて飲み込めそうな顎には唇がついておらず、剥き出しにされた白い歯が無機質な輝きを放っていた。

“人間を作ってごらん”と言われた年端もいかぬ子供が、無造作に粘土を捏ねくり回した挙げ句に出来たようなおぞましい姿。

パブロ=ピカソが描いた【ゲルニカ】の中にコイツの模写が混じっていたってきっと気づけやしない────そんな化け物が今、学園艦の甲板上に佇んでいる。
55 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/07(日) 23:29:15.20 ID:dUa8vtWv0

「…………何なの、あれ」

「……………決まっているだろ沙織、アレも深海棲艦だ」

「言われなくても解って───ぴぃっ!?」

『──────ゲア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛…………』

武部さんのヒステリックな叫びを遮る形で、“3体目”が唸る。

『グガア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』

先の2体が上げる咆哮よりも遙かに低い響きの、例えるなら蒸気船の汽笛を幾つも重ねたような鳴き声。それを耳にして、全身の肌がブワリと泡立つ。

2匹のバカでかく不細工なオタマジャクシに関しては、僕は“深海棲艦”であることしか解らない。後は、見た限りの形状から駆逐艦種と推測できる程度だ。

だが3体目の個体については、僕は“別の呼び名”を知っている。

( ゚ω゚)「…………いしろ」

「……内藤教諭?今何と────」

(;゚ω゚)「皆、散開しろ!教員も生徒もとにかくばらけて、できることなら木の下や建物の影に逃げ込め!!」

2011年10月27日。同月に重巡リ級との交戦で確認された“ヒト型種出現”の衝撃から2週間と経たぬ内に発生した、タイ海軍と深海棲艦の海戦。

タイ王国が保有する唯一の空母【チャクリ・ナルエベト】が海の藻屑と化すことになるこの戦いで、人類は初めて“艦載機を運用”する個体と─────








「“空襲”が始まるお!!!」

─────“軽空母ヌ級”と、遭遇した。
56 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/07(日) 23:59:51.56 ID:dUa8vtWv0
唸り声はいつの間にか止まっている。にもかかわらず、ヌ級の顎は閉じられない。身体を折り曲げ、四つん這いになりながら奴は寧ろ口をますます大きく、普通の人間なら間違いなく顎関節が外れるほど目一杯に開けた。

「一体、」

何をするつもりなのか。言葉を発した女生徒の一人がその台詞を最期まで言い切る前に、その答えを示す形でヌ級の口から黒く小さな点が群れを成して飛び出した。

(;゚ω゚)「っ、もう一度言うけど皆急いでここから離れろ!とにかく頭上を遮れる場所に移動を急げ!!」

「皆さん、内藤教諭の指示に従って下さい!!お友達同士で固まってる方達はばらけて、開けた場所を避けるように!」

「幸い300M先に自然観察用の樹木園がある、そこまで遮蔽物になるべく身を隠しながら走れ!!」

「こっちの屋根の下に行こう!高さも広さもある!」

「ゴミ箱の影………き、汚いけど我慢!」

僕の剣幕に何かを感じ取ってくれたのか、秋山さんが続けて指示を飛ばしたのを皮切りに一斉に周囲の皆が動き出す。同僚達も避難誘導に加わってくれ、西住さんたち以外の生徒も多少の「慣れ」が出てきたのか素早く行動に移し始める。

だが、如何せんあまりにも時間が足りなさすぎた。

「────っ、───!!」

「────!!?」

「───っ、…………」

風に乗って聞こえてきた、入り乱れる銃声と叫び声。保安隊の人達が上げているものと思われるそれらは、十秒と経たぬ内により別の騒音に掻き消され、徐々に小さくなっていきやがて完全に聞こえなくなった。

そして、その代わりに僕等を背後から追いかけてくる「音」がある。
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 00:21:52.47 ID:oslAuK/oO
絶望的なのはつまらなさ
58 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/08(月) 00:29:41.21 ID:ZkbNveRG0
飛び回るハチドリの羽音のような、或いは獰猛な肉食獣の威嚇音のような、連続的な音色。風切り音を伴ったそれは、僕たちに近づくにつれて高く大きくなっていく。

「何、何?何この音ぉ!?」

「う、上から、何か近づいて来て………」

降ってくる音────最早現代の空からは駆逐されたはずの、レシプロエンジンの駆動音。何十機分もが重なって上空で鳴り響く中、突出してきたらしき一際大きな音の主が僕の頭上に差し掛かった。

(;^ω^)「────やっべぇっ!!!」

「きゃんっ!?」

「Ou!?」

背筋に走った、氷柱を直接突っ込まれたかのような強い悪寒。咄嗟の判断で、僕のすぐ前を走っていた宇津木さんの腕を掴み横に居たアリサさんを肩で突き飛ばす。

二人ごと宙を浮いた身体は、通路を飛び越えて道脇の自転車置き場の中に転がり込む。直後、僕等が居た位置をアスファルトを削り取り機銃掃射が駆け抜けた。

悲鳴があちらこちらで上がるけれど、他の誰かが犠牲になった様子もない。樹木園への避難を開始する前に予め全員を散開させたのは幸い功を奏してくれたようだ。

「いたたたた………や、やだもぅ〜、先生ったらだいたーん」

「Damn………Hey boon!!タカシに振り向いて貰う前に傷物になったらどうしてくれるのよ!!」

(;^ω^)「まだいつものノリを出せるのは賞賛に値するけど自重してくんねえかな!?」

まぁ元気そうなのは何よりと言えば何よりだが、この状況下で脱力させにかかるのはやめてほしい。
59 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/08(月) 01:03:51.06 ID:ZkbNveRG0
「っ、ブーン先生!宇津木さん、アリサさん、怪我は!?」

(;゚ω゚)「園さん、戻っちゃダメだお!!」

「そど子、上だ!!!」

「────へ?」

僕たちの安否を気遣い、逃避行を中断して踵を返す園さん。そこに、直上から急降下する“機影”が一つ。

「園さん、危ない!!」

「ひゃっ!?」

火線が放たれるのと園さんに西住さんが飛びついたのはほぼ同時だった。間一髪、弾丸は西住さんの靴底を掠めて地面に突き刺さり、敵機はそのままボールが跳ね返るような軌道を描いて空へと戻っていく。

「「きゃああああああっ!!!?」」

何十メートルか向こうでは、更に別の機影が生徒二人を追い回す。彼女達が鉄製ゴミ箱の影に飛び込むと、そのまま放たれた掃射が表面で火花を散らし無数の穴を開けた。

その様子に、ぞわりと全身の毛が逆立つ。あんなもの、一発食らっただけでも手足の一本や二本は確実に引き千切られる。

(;^ω^)「西住さん、園さん、怪我は無いかお!?」

「こっちは大丈夫です!」

「私も!西住さんのお陰で傷一つ無いわ!」

(;^ω^)「ゴミ箱の所の二人は!?」

「こっちも大丈夫です!」

「すぐに動けます!」

(;^ω^)「あいつらがまた来る前に避難再開!

とにかくエンジン音の接近に注意するお!!」
60 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/08(月) 01:21:29.02 ID:ZkbNveRG0
加速どころか寧ろ更新ページ数が減ってしまった……申し訳ございません。

明日は18:00以降フリーなので大盛り更新頑張らせていただきます
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 01:44:57.04 ID:LnUCpndSO
そど子・デア=フォーゲルヴァイデ
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 01:46:07.31 ID:MCfQLJAA0
おつおつ
まったりペースでも構わないのにw
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 09:18:11.21 ID:oslAuK/oO
更新ペースよりも内容と文章を読み返したら?きついわ
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 10:44:12.95 ID:MCfQLJAA0
年末年で熱心に始張り付くその姿勢は認めるけど、いい加減もう少しマシな事にその労力使えばいいのに…
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 11:32:05.00 ID:y/gB/ajD0
お、ブーメランかな?
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 21:16:08.52 ID:i+bVVDkMo
あまりボッチをいじめないでやってくれ
67 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/08(月) 22:00:14.89 ID:4Tt2hLBIO
単純に書きためが間に合わなかったので更新明日お昼にずらさせていただきます。申し訳ございません。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/09(火) 01:23:25.42 ID:2JzqNIWxo
>>67
気にすんな。頑張れ
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/09(火) 08:57:14.12 ID:+Jgp1YMPO
単発あらし君はいつも夜の12時くらいに書き込んでるけど底辺社畜かな
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/09(火) 09:12:02.21 ID:8zXxVDGJ0
↑ここまで自演
↓ここからも自演
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/09(火) 12:00:47.14 ID:ymQYnkowO
自演はみんなやってるから良いだろ
72 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/09(火) 20:08:35.36 ID:mMdsrWauO
新年の忙しさ嘗めてた……お昼どころか今日の更新自体が難しいです、お待たせしてすみません。
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/09(火) 20:30:36.75 ID:87CCs8AA0
ドンマイですw
気長に待ちますよ〜
74 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/11(木) 23:04:11.47 ID:XQqGvl4N0
三人同時に路上に飛び出し、走る。視界の端に、他の四人も駆け出す様子がちらりと映った。

たちまち、十数機が奏でる独特の風切り音が頭上から僕等に迫る。

「やっ……」

(;^ω^)「止まるな!」

何条かの火線が上から降り注ぎ、僕等の周りで機銃弾がコンクリートを砕き白い煙を上げる。身を竦めかけた宇津木さんの腕を取って強引に併走させていると、すぐさま新手の編隊が追ってきた。

「Fuck、速いわね!」

(;^ω^)「そりゃ二次大戦時のとはいえ戦闘機の性能持ってるからな!!」

樹木園まではあと250m程だろうか。軽いランニングでも一分かからないような距離だが、何せ追いかけっこ相手の最高時速が600km/hだ。

今の僕たちにとって、この逃走距離は42.195kmのフルマラソンより険しく長い。

「敵機来ます、皆伏せて!!」

(;^ω^)「おぉおっ!?」

西住さんの叫び声に、全員が身体を投げ出すようにして地面に突っ伏す。

銃火が頭上を過ぎ去り、ほんの数メートル先のアスファルトが無数の弾痕に覆われた。
75 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/11(木) 23:21:44.84 ID:XQqGvl4N0
「内藤教諭、西住殿、皆さん此方へ!!」

「他の子たちはもうだいたい指定避難場所に向かってるよ、安心して!」

「後は西住隊長と先生達だけです、早く!!」

僕達七人が意図せずして囮のような役割を果たし深海棲艦機の攻撃が集中したことによって、他の生徒・教員の大半は既に空襲から退避した。樹木園の入り口には秋山さんと角谷さん、澤さんが待機しこっちに向かって必死に呼びかけている。

「其方の二人はまだ走れますか!?」

「は、はい!大丈夫です!」

「私も佳奈も走れる!西住さん、心配しないで!」

(;^ω^)「あと少しだお、次の空襲が来る前に辿り着ける!!」

「は、はぃ……」

「おぇっ……」

少々息が荒いアリサさんと宇津木さんを引き起こしながら励ましの言葉を掛けるが、あと150m程の距離を奴らが来るまでに0に出来るだろうかと僅かに不安が過ぎる。現に、もう次の“波”が突っ込んでくる音が────

( ^ω^)(…………あれ?)

ふと、違和感。奴等が奏でるエンジン音は確かに相変わらず頭上で鳴り響いていたが、それが徐々に遠ざかっているように感じられた。

だが、それが何故なのかを考察する必要性はすぐになくなる。








(;゚ω゚)「おっ─────」

オレンジ色の炎を吹き出し、此方へ向かって猛烈な速度で落下してくる“何か”を目にした瞬間に。
76 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/11(木) 23:58:05.43 ID:XQqGvl4N0
「─────西住ちゃん、先生、早く逃げて!!!」

「What, what, what!!!?」

「な、な、何よアレぇ!!?」

「とにかく今は前だけ見て!!走れ、走れェ!!」

「────痛っ!?」

未だかつて聞いたことがないほどの焦りを含んだ角谷さんの叫び声と、西住さんの鬼気迫る檄。全員が弾かれたようにその場から走り出すが………一秒と経たぬ内に、一人が小さく悲鳴を上げる。

「うっ……」

「優季ちゃん!!?」

(;^ω^)「っええい!!」

深海棲艦機の空襲によってひび割れたアスファルトに足を取られ、宇津木さんが転倒する。痛めたのか膝のあたりを押さえ蹲る彼女のもとへとって返すが、“落下物”はもう既にあと数秒と経たずに地面に到達するだろう。……しかもよりによって、落下地点は宇津木さんの直上ときている。

(;^ω^)「────宇津木さん、痛くなるけどすまんお!!!」

「えっ………ひゃああっ!!?」

考考えるより前に、身体が自然に動いた。宇津木さんを抱え上げると、反動をつけて後ろへと放り投げる。同時に、僕自身はその勢いを駆って物体の落下地点の向こう側へと身を躍らせる。

「…………ッ!!」

「きゃっ!?」

投擲先には、僕と同時に踵を返していた西住さんが居る。彼女は持ち前の身体能力で宇津木さんをお姫様抱っこの要領でキャッチしつつ、後ろに自分から倒れ込むことで衝撃を逃がしていた。

(;゚ω゚)「うぉうっ!?」

流石西住さんと感心する間もなく、目の前に火達磨になって拉げた“落下物”が眼前に突き刺さる。腹を下から突き上げるような、“ズンッ”という震動が視界を揺らす。
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 00:15:34.33 ID:AqBPqhNZ0
どんな顔してこんなもの書いてんだ
78 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/12(金) 00:34:18.90 ID:zkSUgY8K0
────落下物の側面、拉げ穴だらけになった扉に【日ノ出テレビ】の文字を見つけ、それが深海棲艦機に撃墜された報道ヘリだと気づいたときには、僕にはもう時間は残されていなかった。

(; ω )「うあっ………」

バチバチととんでいた火花が燃料にでも引火したのか、機体が一際大きなオレンジ色の炎を吹き出した後に爆散する。幸い3m程の距離があったため巻き込まれて木っ端微塵になることは避けられたが、爆風に吹き飛ばされた僕の身体は5メートルほど後ろで花壇に叩きつけられた。

(メ; ω )「ゲホッ………」

肺から酸素が逃げていき、体中を苛む激痛と併せて意識を朦朧とさせる。著しく機能低下した耳が、何かがひび割れていくような音が近づいてくるのを捉える。

「ブーン先生!!!」

音の正体が、ヘリが爆発炎上した場所から伸びるひび割れが僕のもとまで到達したのと、宇津木さんの叫び声が響いたのはほぼ同時。

アスファルトが砕け、甲板が崩落し、身体の下から地面が消失する。ぽっかりと口を開けた暗い裂け目に、為す術無く落ちていく。








(メメ ω )(………シュー)

死の間際の走馬燈の代わりに、脳裏に浮かんだのはシュールな幼馴染みと最後に飲んだときの光景。

それを噛みしめる間すらなく、僕は意識を手放した。
79 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/12(金) 00:59:23.38 ID:zkSUgY8K0



《ご覧いただけますでしょうか!?これは【テレビ日ノ出】の独占スクープ映像です!大洗女子学園の至る所が炎上し、甲板上に………おい、なんか上がってくるぞ!回避しろ、回h》

《…………………え、えー、ただ今、映像に乱れがありましたことをお詫び申し上げます。テレビ日ノ出では、引き続き番組の予定を変更して深海棲艦関連ニュースを放送致します》

《現在大洗港近辺には陸上自衛隊が展開、交通を制限。また百里基地にも自衛隊車両が複数入ったとの情報が───》

《大洗女子学園上空を飛んでいたテレビ局の報道ヘリが、何らかの攻撃を受けて墜落し甲板上で爆発が起きたとのことです。繰り返します、現在真偽は確認中ですが、大洗女子学園上空で───》

《フィリピン沖から日本本州へ向けて北上中の“新型”に関する情報はまだ公開されていませんが、既に関東・中部・近畿沿岸部には緊急避難警報・空襲警報が発令され、付近警察・消防による避難誘導が───》

《大洗港に停泊中だった船舶はプラウダ学園を初め民間・公共問わず全隻が緊急出港。また、海上自衛隊の防空指揮艦【かが】並びに艦載機部隊も一時洋上退避し───》

《茂名官房長官は先程緊急記者会見を開き、大洗女子学園の混乱の収拾と新型深海棲艦の撃滅を両方約束すると宣言。国民に落ち着いた行動を取るよう呼びかけ───》

《たった今入ったニュースです。政府は先程、太平洋海上において新たに極めて大規模な深海棲艦艦隊の浮上を確認したと発表。この艦隊は戦力を二手に分け、ハワイ方面と………南鳥島方面へ向かっているとのことです》

《政府は自衛隊・艦娘による領海の死守を約束する一方、東北沿岸の一部にも空襲注意報を発令しました。

該当区域の皆様はテレビ・ラジオを注視し、避難指示があった場合すぐに動けるようにして下さい。

また、今後鳴らされるJ-ALERTは全て訓練ではありません。J-ALERTが鳴った場合、必ず内容を確認し、適切で冷静な行動を心がけて下さい》
80 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/12(金) 01:02:58.61 ID:zkSUgY8K0
ここまで二日ぐらいで来たかったのに2週間って………明日から改めて加速できるようガンバリマス。
本日はひとまずここまでです
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 10:44:34.08 ID:XjXQebbA0
おつおつ
主役補正(丸腰の一般男性・女子高生)じゃ為す術無いとは言え、先生も頑張ってたが…
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