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【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その2だよ」【×影牢】

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331 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:04:19.76 ID:KchNE/3fo
それでは、リスタートです。
332 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:05:49.86 ID:KchNE/3fo

時雨「それでエフェメラ、これから僕たちはどうすればいいのかな?」

エフェメラ『……これより過去に遡り、運命の分岐点を探します』

エフェメラ『時雨様には、そこで手を貸していただきたく……』

時雨「大丈夫かな。僕が沈んだのはずっと昔だよ」

時雨「それに……エフェメラ、君はだいぶ消耗してるみたいだけど?」

エフェメラ『……仰る通り、幽閉から空間から脱出を図ったため、私にはあまり力が残っていません』

エフェメラ『ですが……たったひと押しです』

エフェメラ『それだけで……未来は、変わります』

時雨「……わかった。信じるよ」

エフェメラ『時雨様。目を閉じてください』

時雨「……」

エフェメラ『参ります……!』


 グ ニャ ァ

333 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:06:50.30 ID:KchNE/3fo

 * 墓場島? *

 メラメラメラメラ…

時雨の幽霊『……』

時雨の幽霊『……』

時雨の幽霊『えっ?』

エフェメラの声『……時雨様』

時雨の幽霊『エフェメラ!? 僕の体が透けてるんだけど!? エフェメラはどうしたの!?』

エフェメラの声『申し訳ありません、時雨様……私は声を飛ばすだけで精一杯です』

時雨の幽霊『!』

時雨の幽霊『……それは仕方ないにしても』

 メラメラメラメラ…

時雨の幽霊『これは……墓場島が溶岩に包まれて、全部燃えてしまうところじゃないか』

時雨の幽霊『こんな状況なのに、みんなを助けることができるのかい!?』

エフェメラの声『はい』

時雨の幽霊『……僕は、あの悲しい結末をもう一度見るつもりはないよ?』

エフェメラの声『先ほど申し上げました通り、ただひと押し……それだけでいいのです』

エフェメラの声『彼女の持つ魔法石を、あの方に使えば……』

時雨の幽霊『……あの方?』

エフェメラの声『はい、そうです。力を失い、消えてしまったあの方に』

エフェメラの声『ですから、ブラックホールのメディウムに、石を使わせなければ良いのです』

時雨の幽霊『……まさか』
334 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:07:34.88 ID:KchNE/3fo
.



 * 分岐ポイント 790 より再開します。 *

ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1467129172/790



.
335 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:08:20.17 ID:KchNE/3fo

 * 島の南東 X中佐所有の医療船近辺 *

通信(提督)『さてと、名残惜しいが、そろそろお別れだ』

足柄「な、何言ってんのよ! あなた、そんな簡単に死ぬ男じゃないでしょ!?」

エレノア「そうよ、どうせ脱出の方法とか残してるんでしょ!?」

黒潮「あるんやったら、はよ脱出せな!」

チェルシー「そうよキャプテン! どんな手を使ってもいいから、早く!!」

通信『……』

千歳「なんで黙ってるんですか!」

オリヴィア「アミーゴ! 諦めるのは早いよ!」

通信『……もういいんだ。お前らがそう言ってくれるだけで、俺には充分だ』

五十鈴「何を弱気なこと言ってんのよ!」

古鷹「提督らしくありません!!」

通信『そうは言うが、しょうがねえだろ。俺はこの島の鎮守府以外のどこに行けると思ってる?』

通信『余所へ行きゃあ、どうせ余計な真似をしないか監視されて、またそのうちありもしねえ疑いをかけられて騒ぎになるのが目に見えてる』

五月雨「そう言って、提督も、私を置いていくんですか」

通信『……五月雨か』

五月雨「前の鎮守府の仲間たちも、前の提督も、私を残して死んでしまったこと……提督は御存知ですよね!」ポロッ

五月雨「提督も、私を……私を置いてどこかに行くんですか!」ポロポロポロ

通信『……悪いな。俺は、俺に好意を寄せてくれた奴を、死なせたいと思わない』

五月雨「……提督……勝手です! そんなの、あなたの勝手すぎます!!」

五月雨「だったら、私も一緒に死にに行きます! 私もあなたと……」

通信『そういうのは許さねえ、っつったろ。しょうがねえ奴だな』

通信『俺は人間だ。人間は愚かだ。だから、俺は死んでもいい存在なんだ。前からそう言ってるだろうが』
336 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:09:04.91 ID:KchNE/3fo

 * 墓場島の南東部 溶岩に囲まれた丘の上 *

通信『提督!』

提督「なあ五月雨よ。こっちにもお前みたいな奴がいるんだ。困ったことになあ」

軽巡棲姫「ソウヨ……モウ、私タチノ帰リ道ハ、ナイノ……私ハ、提督ト運命ヲトモニスルノヨ……!」ギュウ

提督「……どうせ言っても聞かない奴だ。だったら仕方ないと思ってな……」ナデ

軽巡棲姫「アア……提督……!」

 トンッ

軽巡棲姫「!?」

 イビルシュート< ゴォッ!

軽巡棲姫「ッ!?」ドガッ!!

提督「無理矢理にでも、帰ってもらうことにした」

軽巡棲姫「テイ……ーーーーッ!?」ピューーーーン
337 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:09:50.25 ID:KchNE/3fo

 * 島の南東 X中佐所有の医療船近辺 *

那珂「無理矢理って、提督!? それってどういう意味……」

 ヒュウウウ…ドボーーーーン!

黒潮「!? な、なんや、なんか飛んできたで!?」

軽巡棲姫「プハッ!?」ザバァ

筑摩「け、軽巡棲姫……!?」

軽巡棲姫「……テイ、トク……?」

軽巡棲姫「ドウシテ? ドウシテ、私ヲ……」

軽巡棲姫「ドウシテナノォォォオオオオ!!!!」

ル級「チョッ……落チ着イテ!」

通信『軽巡棲姫はそっちに着いたか?』

加古「ついたかじゃないよ! 軽巡棲姫ってばめっちゃ怒り狂ってるじゃんか!!」

武蔵「ここまで女心を理解していないとは……見損なったぞ!!」

軽巡棲姫「提督! テェトクウウウウウ!!! ドウシテナノォォォ!!」

通信『……軽巡棲姫、お前は駄目なんだ。どうもお前は娘みたいに思えてな……幼い姿を見た所為だろうな。お前を道連れにしてはいけない』

通信『それにお前には、お前を受け入れられる奴らがいる。泊地棲姫たちがいる』

通信『お前を任せて安心できる奴がいる。お前は、俺の分まで生きるべきなんだ』
338 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:10:34.83 ID:KchNE/3fo

軽巡棲姫「何ヲ……提督コソ、コンナニ大勢ニ求メラレテイルノニ、何故、死ニ急グノヨ……!!」グスッ

軽巡棲姫「アナタコソ、生キルベキ者ナノニ、何故、自ラ命ヲ捨テヨウトスルノヨォォ!!」

通信『俺が面倒ごとを呼んでるからだ。他の人間どもが、俺や俺の周りを利用して争いを仕掛け、結果、俺の身内が傷付くことになる』

通信『それでも俺が生きるべき者だと言えるのか』

軽巡棲姫「言ウ! 私ハ、生キルベキダト、言ウ!!」

大和「……提督。今、軽巡棲姫を、どんな方法を使ったか知りませんが、こちらまで吹き飛ばしましたよね?」

大和「同じことをすれば、提督も助かるのではないのですか!?」

通信『……そりゃあ無理だな。もう魔力も、歩く体力も気力も残ってねえ』

霞「はあ? なによその言い訳! 甘ったれてんじゃないわよ! 這ってでも出てきなさいよこのクズ!!」

大淀「提督。私たちは、あなたの次の指示を待っているんです……はやく、私たちの前で指揮を執ってください!」

通信『はは……無茶を言ってくれるな……』

長門「どうすれば……どうすればあいつを助けられるんだ!?」

潮「め、メディウムのみんなは……」

カトリーナ「こ、ここに居る連中じゃあ……きついよな」

ニコ「仮に魔神様の所へ飛んだとしても、戻って来られないよ……」

ル級「陸ノ上デハ勝手モ違ウシ……」ムムム…
339 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:11:19.85 ID:KchNE/3fo

比叡「ど、どうしましょう……どうしましょう金剛お姉様!!」

金剛「……ぐぅぅ……」ギリッ

通信『だから諦めろっつってんだよ。丘に埋めてた墓標代わりの艤装が、もう半分以上溶岩に飲み込まれた。ここもそのうち焼失する』

扶桑「そんな……それじゃ、時雨の艤装も……!」クラッ

山城「ふ、扶桑お姉様!? しっかりしてください!!」

通信『そろそろ熱さで俺の頭もぼんやりしてきた。酸素も足りねえな……そろそろ、休ませてもらうか』

由良「提督さん!?」

中佐「……ふざけるなよ提督少尉! いや、提督!!」

古鷹「ちゅ、中佐さん!?」

中佐「貴様の部下は皆、貴様の無事を望んでいるんだぞ! 深海の友人にも! メディウムたちにも!」

中佐「これほど慕われていることをわかっているにも関わらず、その望みを自ら切るなんて不義理もいいところだ!!」

中佐「貴様が人間かどうかは関係ない! 人でなしだろうと外道だろうとこの際知ったことか!!」

中佐「戻って来い! 提督!! 僕は、君の友人として、戻って来いと言っているんだ!!」

神通「……中佐……」
340 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:12:04.97 ID:KchNE/3fo

通信『……あんたみたいな奴ばかりなら、俺もまともな学生生活を過ごせてたのかもな』

通信『悪いが、本当にもう手はないんだ。俺は死ぬ。ただ、その前に言わせてくれ』

通信『俺に付き合ってくれて、ありがとう。楽しかった』

朝潮「……司令官! どうして……どうして!!」ボロボロボロ

金剛「そんな台詞、聞きたくありまセン!」

通信『聞き分けがねえなあ……ははは』

不知火「……司令」

通信『……なんだ?』

不知火「……不知火は、いつか必ず、司令をお迎えに上がります」

通信『……はは……お前らはどいつもこいつも……』

通信『ゴトンッ』

中佐「提督少尉!? なんだ今の音は!!」

金剛「テートクッ!?」

大和「提督!!」

ニコ「魔神様!」
341 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:12:50.43 ID:KchNE/3fo

 * 墓場島の南東部 溶岩に囲まれた丘の上 *

地面に落ちた通信機『提督!』

通信機『魔神様ー!』

通信機『司令官!』

提督「……」フラ

提督「なんで、こんなことになっちまったのかねえ」

提督「妖精が見えるってだけで仲間はずれにしやがって……」

提督「俺はただ、普通の人間の生活を送りたかっただけなんだ」

提督「この島で、やっとそれができそうだったのにな……やっぱり人間なんて碌なもんじゃねえや、くそっ」

提督「……お前らも、そう思うだろ?」

朧「」

電「」

初春「」

吹雪「」

如月「」

提督「……ああ、良く寝てるな……はは、この分なら怖い思いをさせずに済むな」
342 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:13:35.09 ID:KchNE/3fo

提督「悪かったな、守ってやれなくて……」ゼンインヒキヨセ

「……しれいかん……」

提督「!?」

如月「司令官……?」

提督「き、如月!? お前、生きてたのか!?」

如月「ええ……でも、体が思うように動かないの。ここはどこ? とっても、熱くて……」

提督「島の丘の上さ。海底火山が噴火した。もうすぐここは溶岩で覆われる」

如月「……司令官も、死ぬ気なの……?」

提督「ああ。メディウムたちに指示して、たくさん人間を殺したからな。俺ももう人間社会じゃあ生きられねえ」

提督「お前らも守ってやれなかった。何もかも嫌になっちまった。悪いな、甲斐性なしで」

如月「いいえ……ねえ、司令官。この島も、消えるのね」

提督「ああ。全部、消える」

如月「……私たちも……」

提督「……そうだな」
343 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:14:19.17 ID:KchNE/3fo

 メラメラメラメラ…

如月「……ねえ、司令官? ……最後のお願い、聞いて貰えないかしら……」

提督「……? ……ああ。わかった……」スッ

 ゴォォォォ…

如月「……ふふ。司令官のくちびる、暑さで乾いてるわ……」

提督「悪い、な……」

如月「……でも、嬉しい。あなたから求めてくれたのは、初めてだから……」

提督「……」

如月「……司令官?」

提督「……」

如月「……脱水症状で気を失ったのね……」

如月「ふふ、こんな時に仕方のない人……」

如月「私も疲れちゃった……司令官。如月は、最後まで、ご一緒しますね……」

如月「……おやすみ、なさい……」

344 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:15:05.85 ID:KchNE/3fo

 メラメラメラメラ…




 ギュワ…


.
345 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:20:04.87 ID:KchNE/3fo

 ブラックホール<ギュワアァァァァ…

 ピョコッ

ベリアナ「ふう、やっとここまで来れたぁ……って、あっつうい!」

ベリアナ「もう、こんなに熱気がこもってたんじゃ、汗で全身べっちょべちょになっちゃうわ」プンプン

ベリアナ「こんなとこ、早くサヨナラしないと……ええっと、マスターはどこ?」キョロキョロ

提督「」グッタリ

ベリアナ「いた! ねえねえマスター! こんなところで寝てないで、早く逃げましょ!?」ユサユサ

提督「」

ベリアナ「大変……マスターの魂の力が弱まってるわ」

ベリアナ「急いでここから避難しないと、マスターが死んじゃうかも」ゴソゴソ

 ベリアナの胸の谷間から出てきた革の袋<ジャラッ

ベリアナ「マスターの救出が必要になったときのためにニコちゃんに預けられた、魔法石の袋!」ジャーン

ベリアナ「ここに来るまでに魔力を使いすぎちゃったしぃ……」

ベリアナ「この袋に入れた魔法石で魔力を回復してから、マスターたちをブラックホールで運べばいいのよね」ジャラ…
346 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:20:50.57 ID:KchNE/3fo
.




  『今です』




.
347 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:21:34.65 ID:KchNE/3fo

 トン

ベリアナ「きゃああ!?」ゾワッ

ベリアナ「な、なに!? 今、誰が私を……って、あっ!」

 革の袋<ツルッ

ベリアナ「や、やだ、大切な魔法石が……!」

 革の袋<ガシャガシャガシャン

ベリアナ「!?」

ベリアナ「今の音、なに! ……魔法石が砕けちゃってる!?」

ベリアナ「落とした程度で壊れるような石じゃないのに、砂みたいに……」

 革の袋<カラッポ

ベリアナ「」

ベリアナ「」マッサオ

ベリアナ「嘘でしょ……」

 海底火山<ドゴォォォン!!

ベリアナ「ひぃっ!?」
348 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:23:20.17 ID:KchNE/3fo

ベリアナ「や、やだ! マスター、目を覚ましてよ! このままだとみんな死んじゃうよ!?」ユサユサ

 溶岩<ドドドドドド…

ベリアナ「マスター! マスターーー!」

ベリアナ「い、いやあああああああああ!!!」

 溶岩<ドドドドドド…!!



 ゴォ…ッ!



ベリアナ「……」

ベリアナ「……あ、あれ?」

(ベリアナや提督たちの周りに作られた円柱状の光の壁が、溶岩の流れを防いでいる)

ベリアナ「た、助かったの……!?」

??「その石、すごい力を持ってるんだね」

ベリアナ「え?」

??「ありがとう、その石の力、わたしが使わせてもらったよ」

ベリアナ「え? え? あ、あなたはだれ!?」

??→応急修理女神「わたしは妖精。あなたのおかげで、戻ってこられたよ」ニコ
349 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:24:35.17 ID:KchNE/3fo

 * 島の南東 X中佐所有の医療船近辺 *

H大将「なんだあれは……」

 光の柱<キィィィン…

H金剛「あれは……ダメコンが発動した時の光に似てますネー?」

霧島「だ、だめこん?」

ニコ「なにそれ?」

H金剛「応急修復女神の妖精さんのことデース。皆さん、お世話になったことありませンカ?」

武蔵「我々はないよな?」

金剛「ありまセンネー」

祥鳳「発動の様子は私たちも初めて見ます」

ビスマルク「私たちの鎮守府にもいるけど、そもそも載せたことはないわ。いつも暇そうにしてるわね」

H大将「なんだお前たち、女神を載せたことがないのか?」

X中佐「ええ、僕は大破したら引き返してましたから」

W大佐「同じく。無理は禁物と考えています」

H大将「なんだ勿体ない。せっかくいるのに、強行偵察とかで活用しないのか」

大和「そ、それより、その女神の発動が、島の中で起きているということですか?」

ニコ「それって魔神様を助けられるってこと!?」

ル級「デモ、ドウヤッテ、アノ火ノ海カラ連レ出スノヨ……!」
350 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:25:35.83 ID:KchNE/3fo

 * 墓場島の南東部 溶岩に覆われた丘の上 *

ベリアナ「いくら光の壁を作っても、ここから出られなきゃ私たちも……」

応急修理女神(以下「女神」)「そうだね。でも、大丈夫」

女神「みんなが力を貸してくれるから」

ベリアナ「みんな……?」

女神「君たちメディウムは、魂の力を感じられるんだよね?」

ベリアナ「え……!」ゾワッ

女神「さあ『みんな』、力を貸して……!」

 ボッ

ベリアナ「……! マグマの下から、光が……!」

 ボッ

 ボッ

 ボボボボッ
351 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:26:50.08 ID:KchNE/3fo

 * 島の南東 X中佐所有の医療船近辺 *

カトリーナ「な、なあ、光の数が増えてないか?」

ル級「ソウ言エバ……」

ローマ「なんだか幾何学的な並びになってるわね……?」

神通「あの並び……もしかして」

敷波「ねえ神通さん、あの光ってるとこ、墓標代わりの艤装が置いてあったとこだよね?」

山城「! そういえば……!」

五月雨「さっき、あっちの金剛さんが、女神妖精さんの力だって言ってましたよね!?」

足柄「ま、まさか、轟沈した艦娘が蘇ろうとしてるってこと!?」

W大佐「さすがにそれは……」

川内「ううん、あり得るよ。私も幽霊見てるし!」

H大将「幽霊!?」

雲龍「幽霊かどうかさておいても、あの光からは命の力を感じるわ」

ニコ「そうだね……あれは、魂の輝き……!」

 ズズン…

「!!」
352 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:27:35.40 ID:KchNE/3fo

 ゴゴゴゴ…

中将「なんという光景だ……」

W大佐「島の大地が盛り上がって、マグマを堰き止めているのか……!?」

H大将「海と陸が逆ではあるが、まるでモーゼの十戒のワンシーンだ……」

X中佐「丘の上までの道を開いたってこと……!?」

 ザァッ!

不知火「!」

X中佐「し、不知火!?」

 ザザザァッ!!

H大将「お、おいっ! お前たちまで!?」

朝潮「朝潮は司令官を助けに行きます!!」

霞「説教なら後で聞くわ!」

潮「わ、私も行きます!」

長門「潮、頼む!!」

潮「は、はいっ!!」バッ
353 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:28:20.24 ID:KchNE/3fo

敷波「あたしも行くよっ!!」

白露「島風、トップスピードで行くよ!」

島風「うんっ!」

古鷹「私も行きます!」

朝雲「司令ったら、世話が焼けるんだからっ!」

初雪「そう言う割には、嬉しそう……」

山雲「ねー?」

神通「行きましょう……!」

那珂「那珂ちゃんも行っきまーす!」

川内「軽巡棲姫、あんたも来る?」

軽巡棲姫「!!」

那智「駆逐艦だけでは提督を運べるか心配だ、私たちも急ぐぞ!」

最上「うん、行こう!」

五十鈴「ここで行かなきゃ後悔するわ! 急ぎましょ!」

龍驤「大淀! 指揮、頼むでぇ!」

大淀「は、はい!」

雲龍「通信、私たちがサポートするわ」
354 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:29:05.11 ID:KchNE/3fo

 ザザザァッ…

ルミナ「ヲ級君、ヲ級君?」ツンツン

ヲ級「ヲ……ナンダ?」

ルミナ「悪いが艦載機を飛ばしてくれないか? 軽巡棲姫へ上空から島の様子を伝えて欲しいんだ」

ルミナ「いくら溶岩を堰き止めているとはいえ、あの光の壁と即席で作った土手がいつまで持ちこたえられるかわからないからね」

ヲ級「……」コク

千歳「その役目、私たちもサポートするわ! 隼鷹は島の南側をお願い!」ジャコッ

隼鷹「任せといて! いっけぇぇ!」バシューッ

若葉「よし、若葉も行……グゥッ」ズシッ

摩耶「馬ー鹿、お前、重たいメディウム載っけたまま出るわけにはいかねーだろ?」

摩耶「今度はあたしたちがいい恰好する番だぜ! なあ、霧島さん!」

霧島「……摩耶……!」

金剛「Yes !! 霧島、下を向いている場合ではありまセーン!!」

大和「ええ、これは提督を助けられる唯一無二の好機!!」
355 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:30:04.61 ID:KchNE/3fo

ニコ「金剛! 大和! 魔神様を……お願い!!」

大和「はいっ! 身命に変えても!」

武蔵「私も行くぞ! この一大事に指をくわえて見ていられるか!」

金剛「さーあ、比叡! 榛名! 霧島! Are you ready !?」

霧島「……お任せください!」

比叡「気合、入れて!」

榛名「全力で参ります!」

金剛「Follow me !! 金剛型高速戦艦の諦めの悪さ、テートクに見せつけてやるデーース!!」

 ウォォォオオオオ!!

 ザシャァァァ…!

若葉「……若葉も行きたかった」ガックリ

カサンドラ「だ、だからってこんな場所で降ろされても困ります……!」

マルヤッタ「申し訳ないじょ……」

伊勢「まあまあ、若葉がメディウムのみんなを一手に引き受けてくれたから、みんな行けたんだもの。ね?」

日向「ああ。若葉も功労者であることに違いはない」

若葉「……わかった。我慢しよう」
356 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:31:05.14 ID:KchNE/3fo

X中佐「……」

長門「む……すまない、X中佐。あなたがたの指示を待たずに勝手なことをした」

X中佐「僕は別に行くなと指示してはいないよ?」

H大将「命令違反ではないということか」

X中佐「はい。それで良いでしょう?」

中将「……うむ。彼女たちの行動が実を結ぶことを……提督少尉の無事を、祈るばかりだ」

祥鳳「提督、私たちはどうしましょう」

X中佐「僕たちは待機だ。みんながやりたいことの邪魔をしないほうがいいだろう」

X中佐「そもそも、僕たちはここにいる深海棲艦のみんなと交渉の最中だったと思うけど?」

祥鳳「え、ええ……確かにそうでした」

ル級「私タチモ、変ナ気ヲ起コスツモリハナイワヨ?」

長門「ああ、わかっているさ」

W日向「……お前たちは行かなかったのか」

山城「足の遅い私たちがついていったって足手まといなだけよ。伊勢型ならわかるでしょ?」
357 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:31:50.32 ID:KchNE/3fo

山城「ついでに言えば、私なんかいないほうが提督が生きて帰ってくる可能性が高まるわ」フン

陸奥「そんな悲観的にならなくてもいいじゃない。ねえ、扶桑?」

扶桑「山城なりの優しさよ。根拠はないけど、その場にいないほうがいいって、思っているだけでしょう?」フフッ

扶桑「でも、私たちのジンクスなんて関係ないわ。目の前で起きているのが奇跡でもなんでもいいの。私は提督の無事を祈るだけ……」イノリ

扶桑「これ以上、私たちから大事な人を奪わないで欲しいの……!」

日向「……伊勢」

伊勢「? どうしたの」

日向「確かに、我々伊勢型も低速艦だ。しかし、誘導や中継地点の監視くらいはできないかと思ってな」

伊勢「ああ、そうね。ごめん長門、ここは任せちゃってもいい?」

長門「じっとしていられないか。ああ、いいぞ、任せておけ」

W日向「それなら少し待ってくれないか」

日向「! 君は……W大佐のところの日向か」

W日向「ああ。君にいいものをやろう……水上機の最高傑作、瑞雲だ」フッ

日向「……!」

W伊勢「ちょっ、日向!?」
358 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:32:35.20 ID:KchNE/3fo

日向「なるほど……だが、すまない。私はまだ改装を受けていないんだ」

W日向「!?」

W伊勢「えぇ!? まだ戦艦なの!?」

日向「ああ。その瑞雲がどんなものかは存じないが……今の私には過ぎたるものだ。受け取ることはできない」

W日向「」

日向「では、失礼する……伊勢」

伊勢「あ、うん。じゃあ、行ってきます」フリフリ

W伊勢「あ、ああ、いってらっしゃい」フリフリ

W日向「」

W伊勢「おーい、日向ー!?」

コーネリア「あたしたちはこんな奴らに負けたのかよ……」ボロッ

タ級「……不覚ダワ」ボロッ

W大佐「しかし、瑞雲の素晴らしさがわからない日向がいるなんて、信じられんな……」

中将「W大佐は航空戦艦がお気に入りかね」
359 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:33:04.77 ID:KchNE/3fo

日向「なるほど……だが、すまない。私はまだ改装を受けていないんだ」

W日向「!?」

W伊勢「えぇ!? まだ戦艦なの!?」

日向「ああ。その瑞雲がどんなものかは存じないが……今の私には過ぎたるものだ。受け取ることはできない」

W日向「」

日向「では、失礼する……伊勢」

伊勢「あ、うん。じゃあ、行ってきます」フリフリ

W伊勢「あ、ああ、いってらっしゃい」フリフリ

W日向「」

W伊勢「おーい、日向ー!?」

コーネリア「あたしたちはこんな奴らに負けたのかよ……」ボロッ

タ級「……不覚ダワ」ボロッ

W大佐「しかし、瑞雲の素晴らしさがわからない日向がいるなんて、信じられんな……」

中将「W大佐は航空戦艦がお気に入りかね」
360 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/12/20(日) 21:33:50.13 ID:KchNE/3fo

H大将「そういえば近々伊勢型の改二構想が計画されていたな……」

W伊勢「えっ!?」

W大佐「やったぜ」ガッツポ

山城「ああ、これでまた伊勢型に差を付けられるのね。不幸だわ」ズーン

陸奥「まあまあ」ポンポン

扶桑「そんなことより、提督が心配なんだけれど……」

長門「悲観的ではないのは悪いことではないが……」

ル級「脱線シスギヨネ?」

X中佐「うん……Wがああなのはごめんね」

ニコ「みんな魔神様が心配じゃないのかな」ハァ

若葉「山城さんが提督に対して憎まれ口を言うのはいつものことだ」

若葉「それにこちらの海軍のお偉方は、そもそも提督が海軍に反目していないかを追及しに来ているんだ」

若葉「言ってしまえば部外者だからな。提督がそこまで重要ではない人たちもいるだろう、それなら猶更にやむ無しだ」

ニコ「……」

ビスマルク「でも、墓場島の艦娘はみんな島に向かったじゃない。慕われてる証拠よ」

長門「ああ。残った私たちも、みんなが無事帰ってくるのを待つだけだ」

ニコ「うん……!」

タチアナ「ところで若葉さん、あなたに載せていたオリヴィアなんですが……」

若葉「うん……そういえば。どこへ行ったんだ?」キョロキョロ
361 : ◆EyREdFoqVQ [saga]:2020/12/20(日) 21:39:21.48 ID:KchNE/3fo
今回はここまで。
二重書き込みになった>>359は無視でお願いします。

応急修理女神も魔法石も課金アイテムなので
その力を変換したと解釈しちゃってください。
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 10:47:26.25 ID:N2GV1v0j0
ほしゅ
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/31(水) 16:47:31.23 ID:XVgTKTgNO
保守
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/05/06(木) 23:26:07.77 ID:fDY7kzdDO
保守
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/05/14(金) 21:19:00.22 ID:/NsYoCwx0
そろそろ更新来ないかな?
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/13(日) 18:27:02.56 ID:IOCo11OE0
半年たっちまったな
墓場島鎮守府は更新してるし俺はずっと待つよ
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/06/28(月) 07:39:27.83 ID:6Q+9yk1/O
こっちは終章が近いし、時系列はこっちが後だから墓場島がある程度進んでからの更新になるんじゃないかな?
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/07/03(土) 16:22:04.48 ID:XRG8cHWMO
のんびり待ってるわ
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/04(日) 09:45:00.28 ID:FfXhEXaJ0
時間経ちすぎていつか次投稿する時コメントで埋まってそう
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/26(月) 18:21:32.56 ID:EuLnhtAU0
保守
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/18(水) 14:46:37.29 ID:6Z2an0L/0
保守
372 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2021/09/05(日) 13:14:14.56 ID:WAM6fwFIo
続きです。
373 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2021/09/05(日) 13:15:02.33 ID:WAM6fwFIo

 * 島の内部 丘の上 *

ベリアナ「すっご〜い……!」

ベリアナ「海までの道が開けちゃった……!!」

女神「これでみんなを沖まで運べるね」

ベリアナ「良く見たら、艦娘のみんなの傷も消えてるし!」

ベリアナ「ほぉら、起きて起きて! みんな早く逃げようよ!」ユサユサ

女神「あ、ごめん。みんなの目を覚ますまでの力は確保できなかったんだ」

ベリアナ「えぇ〜っ!? ちょっとぉ、あたしみたいなか弱いオンナノコに、オトナのオトコのひとなんて運べないよ〜!?」

女神「ブラックホールは作れないの?」

ベリアナ「もう魔力ないもん……魔法石、全部割れちゃったし……」

女神「……うーん、ごめんね?」

ベリアナ「っていうか、このままじゃあたしも蒸し焼きになっちゃうよう……やだぁぁ、こんなところで死にたくなぁい!」

ベリアナ「死ぬときはベッドの上でマスターに跨って、って決めてるのぉ〜!」

女神「それ、如月が聞いたらただじゃすまないよ?」
374 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2021/09/05(日) 13:15:49.76 ID:WAM6fwFIo

 * 島の海岸 *

不知火「ここから陸地……!」ダッ

霞「……なんて熱さなの」

朝潮「こんな熱気の中にいては、司令官が危険です!」

潮「い、急ぎましょう……!」

 ドドドドドド…

敷波「!?」

白露「いっちばーーーん!」ドドドドドド

島風「はっやぁーーーい!」ドドドドドド

不知火「……」

霞「この時ばかりは頼もしいわね……」



 * 丘の上 *

 ドドドドドド…

ベリアナ「なにこの音……!?」

白露「いっちばーーーん!」キキーッ

島風「とうちゃーーーく!」キキーッ
375 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2021/09/05(日) 13:16:32.00 ID:WAM6fwFIo

女神「きみたちは……!」

ベリアナ「やったあ、助けに来てくれたのね!?」パァッ

島風「島風のほうが速かった!」

白露「あたしのほうが一番でした!」

ベリアナ「ちょっとぉ!? 話を聞いてよぉ!!」ガーン

女神「ふたりとも、時間がないんだ。急げばみんなを助けられる、みんなを連れて島を離れて」

島風「ええ!? みんなって、6人もいるの!?」

女神「この悪魔ちゃんも含めて7人だね」

白露「私たちだけでみんなを運ぶのは無理だね……」ウーン

島風「とにかく助けを呼ぼう!」ダッ

 バユーン

島風「!」

白露「あれは……龍驤さんの彩雲だ! おーい!」ズババババ

女神「えっ、なにその不思議な踊り」

島風「手旗信号だよ?」

ベリアナ「そんなので通じるの!?」
376 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2021/09/05(日) 13:17:18.00 ID:WAM6fwFIo

 * 海岸付近の海上 *

龍驤「うん? 彩雲が映像送ってきてるなあ……」

雲龍「え?」

大淀「なんですか、この不思議な踊り……もしかして」

龍驤「……キュウエンモトム、テイトク、クチクカンゴ、メディウムイチ、やて」

大淀「早っ!?」

雲龍「提督、生きてるの?」

龍驤「メディウムイガイイシキナシ、て言うてるから、ちょっち危ないかもなあ……雲龍、通信準備」

雲龍「はい」

龍驤「あーあー、巡洋艦のみんな、目的地に提督がおるで!」

龍驤「駆逐艦の子たちとメディウムもひとりおるから、連携して連れてってや!」

通信『了解!』

大淀「あのハンドサイン、ちゃんと解読できたんですか」タラリ

龍驤「ちょろいで」ビシッ

雲龍「素敵」
377 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2021/09/05(日) 13:18:16.80 ID:WAM6fwFIo

 * 丘の上 *

白露「よし、龍驤さんには連絡届いたみたい!」

島風「みんな来たよ! こっちこっち!!」

 タッタッタッ

不知火「はぁ、はぁ……」

朝潮「司令官……!」

霞「……まだ、生きてるのよね?」

不知火「司令、失礼します」スッ

 (手袋を外して提督の額に手を当てる不知火)

不知火「こんなに熱いのに、汗をかいていない……脱水症状を起こしているのかもしれません」

不知火「朝潮、霞、お二人に司令をお願いしたいのですが」

朝潮「ええ、任せて! 霞!」

霞「とにかくここから離れるわよ!」ヨイショ

 タッタッタッ

敷波「司令官!!」

潮「提督……生きてるんですか!?」
378 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2021/09/05(日) 13:19:02.24 ID:WAM6fwFIo

不知火「二人はこちらを手伝ってください。不知火は如月を連れて行きます」

女神「みんなを早くドックに入れてあげて。わたしの力も、いつまで持ちこたえられるかわからないからね」

潮「妖精さん……!」

敷波「……それじゃあ、電はあたしが連れてくよ!」グッ

潮「お、朧ちゃんは、私が連れて行きます!」

白露「よし、それじゃ、初春は私が運ぶね!」

島風「私が吹雪ちゃんかあ」ヨイショ

不知火「皆さん、重巡や戦艦の皆さんと合流出来たら、そちらに引き渡してください」

不知火「ここに来るまで、熱気や坂道で私たちも消耗しました、くれぐれも焦らず慎重にお願いします……!」

潮「わ、わかりました!」

敷波「了解っ!」

白露「島風、競争はなしだからね?」

島風「わかってるってば!」

不知火「……妖精さんは、どうするおつもりで」

女神「わたしはここでお別れかな。力を使ってる間は動けないからね」
379 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2021/09/05(日) 13:19:47.39 ID:WAM6fwFIo

女神「でも、死ぬわけじゃないから大丈夫。力を使った後はしばらくこの世界から消えちゃうだけだから」

ベリアナ「ああ、もしかして、異世界に逃げちゃう感じ?」

女神「んー……多分、そんな感じかな。私たちの力が回復すれば、また戻ってこられるから、心配しないで」

ベリアナ「それで私が持ってきた魔法石が消えちゃったのね……」

女神「それより、きみも早く逃げないと。死ぬときは提督の上でなんでしょう?」

不知火「!?」

ベリアナ「んもう、わかってるったら! 行きましょ、えーと……シラナイ?」

不知火「不知火です」

ベリアナ「うん、シラヌイちゃん、イこっ!」タッ

不知火「……は、はあ」ポ

不知火「それでは……妖精さん。行ってまいります」ケイレイ

女神「うん。みんなと、提督をよろしくね」

不知火「……」コク

 クルッ スタスタ…

女神「……さあ、みんなが脱出するまで、もうひと頑張りだ」
380 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2021/09/05(日) 13:20:31.98 ID:WAM6fwFIo

 * *

朝潮「……はぁ、はぁ……」

霞「朝潮姉、大丈夫?」

朝潮「こ、このくらいでへこたれたりは……」

ベリアナ「本当に大丈夫? 汗びっしょりで、息も荒いし、まるでセ」

不知火「おやめください」ガシッ

ベリアナ「んもう、冗談だってばぁ」

敷波「そういう疲れる冗談言ってる場合じゃないよ……」ゼーゼー

潮「……」ハーハー

島風「もー、あっつーい!」

白露「叫んじゃ体力消費するってば……」

オリヴィア「やれやれ、そろそろアタイの出番かい?」ポンッ

潮「!?」

ベリアナ「オリヴィア!? どこに潜んでたの!?」
381 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2021/09/05(日) 13:21:32.10 ID:WAM6fwFIo

オリヴィア「アタイかい? ウシオの艦内にこっそり紛れて入ってたんだよ」

潮「ぜ、全然気づきませんでした……」

オリヴィア「どんくさい子だねえ」

潮「どんくさい……」ズーン

オリヴィア「それはさておいて、ほら、そこの二人。アミーゴを背負うのはアタイがやるよ」ノッシノッシ

朝潮「……」ゼーゼー

霞「あ、あんた……」ハーハー

オリヴィア「成人男性担いで歩くにゃあ、あんたたちじゃガタイが足りないよ」ヒョイ

霞「あ……」

オリヴィア「陸の上ではこのアタイに任せて、海についたら交代だ。いいね?」テイトクカツギアゲ

朝潮「……わ、わかりました、お願いいたします……!」ペコリ

 タタタッ

黒潮「不知火! ……良かった、みんなおるんやな!?」

朝雲「山雲、みんなを運ぶの手伝うわよ!」

山雲「は〜い」

初雪「……熱い、死にそう……早く海に行こう」ダラー

朝雲「いま、軽巡や重巡のみんながこっちに向かってるわ」

黒潮「うちらが運ぶより、重巡や戦艦のみんなに運んでもらったほうがええやろしな!」

不知火「……少し、急ぎましょう」コク
382 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2021/09/05(日) 13:23:02.71 ID:WAM6fwFIo
今回はここまで。


こちらのお話は、外伝的な「墓場島鎮守府?」のお話で発生した
フラグを回収するルートになっていますので、もうしばらくお時間戴きたく。
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/09(木) 03:26:23.92 ID:vZmqntzU0
更新乙。
ええんや、全然待たせてくれてもええんやで。
俺らは必ず待ってるから。
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/10(水) 02:28:38.73 ID:itL1GlDs0
保守
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/01(水) 12:31:50.01 ID:VWJq7oee0
保守
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/13(月) 00:34:28.44 ID:8hWR+MEa0
こりゃ更新は来年かな
387 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2021/12/26(日) 20:05:55.25 ID:TSQ7cZ5Qo
申し訳ありませんが、こちらの更新はまた来年に。

保守のついでに、ル級のアイデア元のネタはこちらです。
 https://www.pixiv.net/artworks/49459721
 https://www.pixiv.net/artworks/49607618
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/01/10(月) 00:55:07.16 ID:Me/MyNbK0
保守
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/22(土) 00:34:53.14 ID:NEJF5c6b0
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/02/10(木) 14:48:57.88 ID:TtZib6N80
保守
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/02(水) 14:27:27.75 ID:VIfHK7f30
保守
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/10(日) 12:51:18.49 ID:/bd7d8EL0
保守。いつまでも待ってやる
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/06(金) 17:58:00.57 ID:rYV+b3N9O
SS避難所
https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196/
394 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 21:50:22.90 ID:dPdn6WLgo
長らく長らくお待たせしました。
ようやく整いましたので、続きです。
395 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 21:51:30.87 ID:dPdn6WLgo

 * 島の南東岸 *

神通「この上ですね……!」

川内「うひゃあ、熱気がすごい!」

五十鈴「駆逐艦のみんなはもうあそこにまで行ってるのね……!」

由良「急ぎましょ!」ダッ

軽巡棲姫「……グ……!」ガクッ

那珂「! け、軽巡ちゃん大丈夫!?」ガシッ

川内「もしかして、さっきふっ飛ばされたときのダメージが残ってるんじゃない?」

那珂「みんなは先に行ってて! 私が軽巡ちゃんを看るから!」

川内「わかった!」ダッ

神通「お願いします!」ダッ

 ザザザァッ

那智「む……何があった!?」

那珂「軽巡ちゃんのダメージがひどいみたいなの! 私が看てるから、先に行ってて!」
396 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 21:52:16.14 ID:dPdn6WLgo

那智「あ、ああ、わかった。具合がひどいときは引き返せよ!」ダッ

古鷹「私たちは行きましょう!」ダッ

利根「よおし筑摩、吾輩たちも突入するぞ!」ダッ

筑摩「はい、姉さ……ん!?」

利根「ん? どうしたん……うおっ!?」ガクッ

??「ど、どうしたんじゃ!?」

利根「い、いや、急に力が……って……」フリムキ

筑摩「……」

利根「……」

??→利根の幽霊「む?」

筑摩「……」

利根「……」
397 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 21:53:04.83 ID:dPdn6WLgo

利根の幽霊「利根? 筑摩も……なんじゃ? もしかして、吾輩が見えるのか!?」

利根「吾輩がいるううううう!?」ヒョェェェ!?

筑摩「利根姉さんが幽体離脱してるうううう!?」キャアアアア!?

那珂「うーん」フラッ パタリ

軽巡棲姫「チョッ!? シッカリシナサイ!?」

利根の幽霊「い、いや、吾輩たちは別に幽体離脱しておるわけでは……」

筑摩「はやく! 早く利根姉さんの体に戻ってください!」オロオロ

利根「う、うむ! 早く戻ってこい!」ダッ

 スカッ

筑摩「体をすり抜けた!?」

利根「モノホンの幽霊じゃああ!?」

利根の幽霊「いや確かに幽霊だけれども!?」

利根「き、き、貴様、何者じゃ!?」

利根の幽霊「な、何者と言われても……吾輩たちも利根である!」

軽巡棲姫「……アナタ、幽霊ノ『レギオン』ネ?」

利根の幽霊「うむ……集合体である」

筑摩「集合体?」
398 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 21:53:46.22 ID:dPdn6WLgo

利根の幽霊「利根よ、貴様は覚えているか? あの地下室に並べられた利根の標本を」

利根「……!」

利根の幽霊「吾輩たちは、あの地下室で殺された利根の集合体である!」

利根「な、なんじゃとおお!?」

筑摩「……あ、あの写真の……!?」

利根の幽霊「まさか貴様たちと話ができるとは夢にも思わなんだが……」

軽巡棲姫「コノ光ノセイヨ……」

利根「む?」

軽巡棲姫「コノ忌々シイ光ガ、私ノカラダヲ拒ミ、オマエヲ呼ビ起コシタ……海底トハ、真逆ノコノ光ノセイデ」

利根の幽霊「……そ、そうか、この光は女神妖精の光であったな……!」

筑摩「轟沈から救うための力が、幽霊になった利根姉さんたちに力を与えたってことですか……!」

利根「なるほど、軽巡棲姫が光に包まれたこの島に近づけないのは、その身に深海の力を宿すからということか……?」

軽巡棲姫「多分、ネ……島全体ヲ覆ウホドノ光ダ、オマエノ復活モ、光ノチカラガ強スギルセイデ起コッタハズヨ」

筑摩「そ、それはわかりましたが、利根姉さんの体に幽霊の利根姉さんたちが戻らないと、生身の姉さんの力が戻らないのでは?」

利根の幽霊「戻ろうとして戻れなかったのが、ついぞさっきじゃぞ?」

利根「今はそれはどちらでも構わぬ。まずは動けるものが動いて提督を助けるのが先である!」
399 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 21:54:31.16 ID:dPdn6WLgo

利根「筑摩、おぬし一人でも行ってくれるか? 皆の力になって欲しい……!」

筑摩「! ……わかりました。ここも危ないですから、利根姉さんは避難しててください!」タッ

利根「筑摩! 必ず戻ってくるのじゃぞ!!」

筑摩「はいっ!」バッ

利根「……吾輩の体が重いのは、やはり、おぬしが離れてしまったせいなのか……?」

利根の幽霊「ふむ……ずっと、一緒におったからな。吾輩たちは、いつの間にか、おぬしの一部になってしまっていたのかもしれぬ」

利根「そうか……おぬしは、吾輩とずっと一緒におったのだな」フフッ

利根「頼みがある。できるのであれば、吾輩の代わりに筑摩を守ってほしい……筑摩に危険を知らせてやってくれまいか」

利根の幽霊「……ああ、任せよ!」ニッ

利根の幽霊「可愛い妹のため! そして、外の世界を……海を教えてくれたおぬしのため!」

利根の幽霊「その願いに報いようではないか!!」ゴォッ!

利根「……頼むぞ……!」

軽巡棲姫「幽霊ニ支援ヲ頼ムナンテ、非現実的ネ……」

利根「……ふふ、深海棲艦のおぬしでも、そんなことを言うのだな」ヨロッ

利根「さあ、吾輩たちは避難するとしよう。気絶した那珂も連れて行かねばな」
400 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 21:55:15.85 ID:dPdn6WLgo

 * 丘から海への道 *

不知火「はぁ、はぁ……っ」

朝潮「なんて、熱さ……」

潮「……」

朝雲「み、みんな大丈夫……?」

黒潮「……朝雲こそ、足元、やばいんちゃう……?」

山雲「……」

初雪「……早く、海に出たい……」

白露「あたしが、一番に出る……!!」

島風「負けない……!」

霞「ったく、もう……!」

オリヴィア「こりゃあまずいね……みんなへばっちまってる」ホッソリ

ベリアナ「オリヴィアも細くなってるんだけど……」

オリヴィア「ああ、せっかく肉を付けたのに、この暑さで強制的にダイエットさせられちまったよ」

オリヴィア「ベリアナ、悪いんだけどあたしのレスリングウェア、余ってる分を後ろで縛っとくれ。ゆるゆるだ」
401 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 21:56:16.05 ID:dPdn6WLgo

ベリアナ「毎回不思議なんだけど、なんでオリヴィアは胸だけ脂肪が落ちないの?」ムスビムスビ

オリヴィア「知らないよそんなの。それよりべリアナも運ぶの手伝いな」

ベリアナ「無理よぅ、私が非力なの知ってるでしょ? だれか担いだら飛べないし!」

 ドーン!

不知火「……!」クルッ

オリヴィア「なんだい!?」クルッ

 溶岩<ドパァァン!

オリヴィア「げっ! 溶岩が壁を乗り越えてきたのかい!?」

ベリアナ「やっばいじゃない! みんな逃げて!?」

オリヴィア「逃げるったって、逃げられるわけないよ!!」

霞「……そんな……!」

 溶岩<ゴォォオ!!

ベリアナ「嫌ァァ!! こっちに流れてきたああ!!」

黒潮「こんな、ところで……」

 ゴォッ!

島風「な、なに!? 今の速い気配!!」
402 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 21:57:00.68 ID:dPdn6WLgo

利根の幽霊「やらせはせんぞ!! どりゃあああ!!」

 ドガァァンン!!

ベリアナ「きゃああ!? なに今の!!」

オリヴィア「……地面が盛り上がって壁ができてるよ。おかげで助かったけど、こりゃいったいどういうことだい」

朝潮「今の声は……利根さん……?」

 タッタッタッ…

不知火「あれは……」

由良「や、やっと追いつけた……」ハァハァ

敷波「由良さん……!」

大淀「皆さん無事ですか!?」

川内「滅茶苦茶暑いね……ほら、肩を貸すよ!」

五十鈴「みんなよく頑張ったわ!」

朝雲「良かった……山雲! しっかりして! みんなが来てくれたわ!」

山雲「あ……良かったぁ……」

神通「すぐに重巡の皆さんも来ます、それまで少しでも歩きましょう!」

那智「おおーーーい!!」
403 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 21:57:45.98 ID:dPdn6WLgo

古鷹「みんな大丈夫!?」

ベリアナ「古鷹!? ふるたかぁぁぁぁ!!!」ピューン!

古鷹「ふえっ!? ベ、ベリアナさん、どうしてここに!?」

ベリアナ「ニコちゃんの指示で、ブラックホールを通してみんな逃げさせられないかって頼まれたのぉ!!」ヒシッ

古鷹「そ、そうだったんですか……無事で良かったです!」ニコッ

ベリアナ「んもう、古鷹が助けに来てくれるなんて、これってきっと運命なのね……?」テヲニギリ

古鷹「へっ」

ベリアナ「私、もう汗でベトベトなの……戻って二人でお風呂で洗いっこしましょ……?」ピトッ

古鷹「あ、あのっ」アセアセ

ベリアナ「やぁん、照れちゃってぇ、古鷹ったらカワイィ」

 ゴチーン

ベリアナ「……いったあああい! 何するのよお、オリヴィア!!」

オリヴィア「ふざけてないで避難しな。悪いね、アタイもそろそろ体力の限界だ、誰かに乗せてってもらえると助かるよ」

古鷹「そ、それじゃあ、私の艤装に乗ってください。ベリアナさんも一緒に」

ベリアナ「ああん、古鷹ダイスキぃぃ!!」ダキツキー
404 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 21:58:45.74 ID:dPdn6WLgo

加古「とりあえず、みんないるかい?」

朝潮「あ、あの、利根さんの姿が見えないのですが……」

霞「さっき、声が聞こえたような気がしたんだけど……」

利根の幽霊「うむ! 吾輩のことは構わず、早く逃げるのじゃ!!」

朝潮「!?」

黒潮「透けてるーー!?」ガビーン!

初雪「……は、はらったま、きよったま……!」ガタガタ

筑摩「と、利根姉さん! そんなに急いで、何があったんですか!」ハァハァ

大淀「そうですよ! 利根さんにいったいなにがあったんですか!!」

利根の幽霊「幽体離脱したようなものじゃ! 簡単に言えば!」

五十鈴「簡単すぎよ!!」

利根の幽霊「それより丘の上の光の柱を見よ!」

利根の幽霊「この島に埋葬された艦娘の魂がこの奇跡を起こしたわけじゃが、それを呼び起こした女神妖精の光の力が衰えつつある!」

利根の幽霊「吾輩が新たに壁を作ったが、吾輩たちの力も長くはもたん! 我らが活動できる間に、島を離れ海に出るのじゃ!! 急げ!!」

足柄「そ、そういうことね……!」

不知火「……早く脱出しましょう、司令のためにも」ググッ

三隈「軽巡のみなさんは意識のある駆逐艦のみなさんに肩を貸してあげてください」

最上「提督と、気を失った駆逐艦のみんなは、僕たちが運ぶよ!」

大淀「急ぎましょう!!」
405 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 21:59:30.93 ID:dPdn6WLgo

 * 島の南東岸近く *

金剛「テートクゥゥゥ!!!」ダダッ

比叡「金剛お姉様! みんなすぐそこまで来てます!」

那智「おお、金剛型の到着か! 助かる!」

霧島「お姉様、私たちは疲弊している駆逐艦娘を優先して運びましょう!」ヒョイヒョイッ

霞「き、霧島さん……!」カツギ

朝潮「あ、ありがとうございます……!」アゲラレ

比叡「よーし、みんな連れていくよーー!」ヒョイヒョイ

敷波「ふいー、助かったぁ……」コワキニ

潮「お、お世話に、なります……」カカエラレ

榛名「さあ、行きましょう!」ヒョイヒョイッ

朝雲「あ、ありがとうございます……!」セナカニ

山雲「たすかったわ〜……」セオワレ
406 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:00:15.95 ID:dPdn6WLgo

金剛「急いで引き上げるデース!」ヒョイヒョイッ

白露「金剛さんありがと……!」リョウテニ

島風「もう、あっつーい……!」ダキカカエ

武蔵「我々も来たぞ!」

大和「さあ、急いで引き上げましょう!」

三隈「最上さん、提督は大和さんにお任せしましょう!」

最上「そ、そうだね、その方が早いかも!」

大和「わかりました、お任せください!」ダキカカエ

足柄「武蔵は陽炎型の二人をお願い!」

武蔵「よし、しっかりつかまれ!」ヒョイヒョイ

黒潮「お、おおきにな……!」ギソウニ

不知火「助かります……」ノセラレ

 ドドーン

筑摩「火山の噴火が……!」
407 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:01:00.41 ID:dPdn6WLgo

 * 沖合 *

ヲ級「……マズイナ」

ルミナ「なにがあったんだヲ級君!?」

ヲ級「丘ノ上ノ光ガ弱マッテイル。溶岩ヲ押シトメテイタ壁ガ、乗リ越エラレソウダ」

ル級「……!」

泊地棲姫「ナニゴトダ」ザザァ…ッ

中将「!!」

X中佐「は、泊地棲姫……!」

ビスマルク「大丈夫よ。私たちがいるわ」スッ

泊地棲姫「……」ジロリ

長門「それより、ルミナの反応を見るに、なにかあったのか?」

ヲ級「取リ残サレタ人間ヲ助ケニ陸ニ上ガッタハイイガ、溶岩ノ流レガ速イ」

長門「……!!」

泊地棲姫「ナルホド……艦ガ、陸ノ上デハ遅クナルノモ当然ダ」
408 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:01:45.98 ID:dPdn6WLgo

泊地棲姫「手ヲ貸ソウ……!」

 ザザザザァァァ

プリンツ「な、なななっ、なんですか!? この音!!」

扶桑「これは……」

カ級たち「「……」」ズラッ

ヨ級たち「「……」」ズララッ

泊地棲姫「潜水艦隊、単横陣ノママ、海面下ヲ島ニ向カッテ直進。陸地ノ手前デ潜航シ、引キ返セ」

深海潜水艦たち「」ザザァッ!

ローマ「なにをするつもり……?」

泊地棲姫「水ノ上ナラ速度ガ出セルダロウ。ダカラ、波ヲ起コシテ陸地ニ水ヲ送リコム」

ビスマルク「……津波の原理ね。引き潮に乗れば、島からの離脱も早まる……か」

泊地棲姫「アトハ……」

長門「あとは?」

泊地棲姫「コノ島ノ艦娘ト、メディウムノチカラヲ借リル。ヲ級」

ヲ級「……了解」

 深海艦載機< ヒュオァァッ シュパアァァァ…!
409 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:02:30.96 ID:dPdn6WLgo

 * 島内部、南東岸近く *

 溶岩< ドドドド…!

金剛「Hurry! Hurry!! Hurryyyyy!!」

那智「もうすぐ海だ! 気を抜くな!!」

加古「ひぃ、へぇ、はぁ……海が、遠い……」

那智「諦めるな! 生きたまま溶鉱炉もどきに入りたくないだろう!」

加古「わ、わかってるよぉ……!」

摩耶「喋ってないで、走れ!!」

 溶岩< ドドドド…!

足柄「迫ってきてるううううう!」ヒィィ!

武蔵「後ろを見るな! 前を見ろ!!」

 ザパァァァン!!

霧島「! 波が強い……!?」

榛名「あの波に乗れれば、間に合うのでは!?」

 溶岩< ドドドド…!

足柄「音が近づいてきてるわあああ! 嫌ああああ!!」

五十鈴「足柄さんそういうこと言わないで!!」
410 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:03:15.90 ID:dPdn6WLgo

由良「ま、間に合うのかしら……!?」

古鷹「! あれは……前を見てください!」

海上に浮かぶ浮遊砲台×5「」フヨッ

摩耶「ありゃあ、泊地棲姫の浮遊砲台と……五月雨!?」

神通「利根さんと軽巡棲姫も……!」

三隈「五月雨さん、いないと思ったら、あんなところに!?」


軽巡棲姫「……コレガ、ヲ級カラノ距離情報ダ」

利根「ふむ……であれば、このタイミングじゃな」

五月雨「わ、私にできるんでしょうか……!?」

利根「大丈夫、吾輩たちがサポートしておるんじゃ」

軽巡棲姫「今、浮遊砲台ノ制御ガデキルノハ、オマエダケ……シッカリナサイ」

ミリーエル「こちらも準備できました!」

グローディス「外すなよぉ、責任重大だぜ」ニヒヒ

ディニエイル「そうやってプレッシャーをかけて遊ぶのはやめてもらえますか」

浮遊砲台「ギュエ……」

ディニエイル「大丈夫です。狙って打つだけ。我々の仕事はそれだけです」

利根「さあ、参ろうか! 五月雨、頼むぞ!」
411 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:04:00.90 ID:dPdn6WLgo

五月雨「……はいっ! 行きます、観測着弾射撃!」

 ヲ級の深海艦載機< ギュォォォオ…!

軽巡棲姫「今ヨ!」

五月雨「撃てええええ!!」

泊地棲姫の浮遊砲台たち「」ドガドガドガァン!


加古「な、なんだなんだあ!? 撃ってきた!?」

那智「着弾地点が近いぞ!?」

 砲弾< ドガドガドガァン!

 バキッ

 (着弾した地点から乾いた音が響いて)

 氷の壁< バキバキバキバキーッ

メアリーアン「おらだずの魔力の結晶だあ!」

ヒサメ「そうやすやすと溶けたりはせぬぞ!!」


加古「うおっさぶっ!?」ヒンヤリ

白露「うわあ、氷の壁が溶岩を遮ってる……!」

金剛「今のうちデース!!」

武蔵「次の波が来るぞ! 飛び込めええええ!!」

 ザパァァァン!!

412 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:04:46.72 ID:dPdn6WLgo

 * 沖合 *

千歳「龍驤さんから、全員の無事が確認できました!! 全員海上に出たようです!」

ヲ級「……潜水艦隊モ、海域カラ離脱完了シタ」

長門「提督と駆逐艦たちはどうなったんだ……!?」

ヲ級「イマ、コチラニ向カッテキテイルナ」

隼鷹「逃げ遅れの艦もいないみたいだね! あとは海軍の人が海に放り出されてる!」

X中佐「祥鳳! 僕たちは一旦、本船に戻る! 深海のみんなとは今後も連絡を取りたい、連絡先の交換を頼む!」

祥鳳「わ、わかりました!」

X中佐「僕たちは提督少尉の受け入れ準備だ! それから叔父さんと、WとH大将の怪我も診てもらいます!」

X中佐「それから生き残った海兵の救助を! 中将閣下、救助隊の指揮をお願いできませんか!?」

中将「……うむ、承知した」

 大型ゴムボート< バウゥゥ…!

ル級「……提督ハ、助ケラレルノカ……?」

ビスマルク「それは保証できないけれど、医療船のスタッフは全力を尽くしてくれるわよ」

泊地棲姫「助ケテモラワナイト、ココマデ手ヲ貸シタ意味ガナイワ」

ニーナ「その通りです。魔神様の無事のお帰りこそ、私たちの望み!」

ケイティー「旦那様のいない世界なんて、存在しなくていいのよ……!?」ユラリ

ローマ「過激派がいるわね……」タラリ

ニコ「でも、ぼくたちメディウムの望みは概ねその通りだよ。僕たちはそれこそ、数百年待っていたんだ」
413 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:06:00.82 ID:dPdn6WLgo

伊勢「やったよ! みんなが戻って来たよ!」ザァァッ

祥鳳「ローマさんとリベッチオさんは、墓場島の艦隊の皆さんの、医療船への誘導をお願いします!」

リベッチオ「わかったー!」

ローマ「了解」

 ドドーン…

ヴェールヌイ「! 島が……!」

長門「……」

扶桑「全部、燃えてしまったわね……鎮守府の建物も、丘の上の艤装も……なにもかも」

陸奥「……」ウツムキ

扶桑「私たちは、これからどこへ行けばよいのかしら……」

山城「……お姉様……」

祥鳳「……」

泊地棲姫「……」

ル級「……」


 * * *

 * *

 *
414 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:06:55.42 ID:dPdn6WLgo
今回はここまで。

これから提督の出生の秘密や、
まき散らしたフラグの回収をしていきます。
415 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/25(土) 22:43:27.17 ID:r0JdSGTYo
続きです。
416 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/25(土) 22:44:16.33 ID:r0JdSGTYo

 * ??? *

(提督らしき人影が花畑の中に大の字で倒れている)

提督「……」

提督「……」

提督「ん……」

提督「んん……?」パチ

提督「……」ムクッ

提督「……なんだここ?」キョロキョロ

提督「俺は確か……如月や吹雪たちを抱きかかえて、島にいたよな」

提督「島が燃えてて、熱くて頭が朦朧としてて、その後……」

提督「……ちっ、俺らしくもねえ」

提督「つうか、あいつらどこいったんだ。そもそもここどこだ? 夢でも見てんのか……?」

提督「服も燃えたり汚れたりしてねえし……ん? 俺、こんなに色白だったか?」ソデマクリ

提督「……まあいいや、どうせ夢なら寝直すか。誰もいねえんじゃしょうがねえ」ゴロン
417 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/25(土) 22:45:01.26 ID:r0JdSGTYo

提督「……」スー

時雨「……」ザッ

提督「……」スー

時雨「ねえ、提督」

提督「……」

時雨「寝てる場合じゃないよ。ほら、起きて」ユサ

提督「……んん?」パチ

時雨「おはよう、提督。僕のこと、覚えてるかな?」

提督「……」プイ

時雨「? 提督、いきなりそっぽを向くなんてひどいんじゃないかな?」

提督「そうじゃねえ、近付きすぎだってんだよ。お前、俺にスカートの中を見せたいのか」ムクッ

時雨「!」バッ

時雨「……見た?」セキメン

提督「ああ、見ちまったよ。黒か」

 ベシッ

提督「いてっ」
418 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/25(土) 22:45:46.44 ID:r0JdSGTYo

時雨「信じられないよ、僕の名前より先に履いてるパンツの色を口にするなんて」

提督「見えたもんはしょうがねえだろうが。それよりお前……俺と面識ねえよな? 見覚えはあるんだが……」

時雨「そういえばそうだね。でも、僕はずっとみんなを見てたから、良く知ってるよ」

提督「見てた?」

時雨「うん。僕は、白露型駆逐艦、時雨。よろしくね」

提督「時雨? ……扶桑たちを追いかけてきた奴の同型か?」

時雨「同型じゃなくてその本人だよ。あの時轟沈してあの島に埋葬されたのが、この僕さ」

提督「なに? ……足はついてやがるな」

時雨「下着の次は脚を見るなんて、提督はいやらしいね。けだものだ」

提督「興味ねえよ」

時雨「そう言って油断させて僕を食べる気なんだね?」

提督「……」

時雨「その、相手にするのが面倒臭そうな顔をするの、やめてくれないかな」

提督「その手のネタは俺の趣味じゃねえ。つうか、お前ってそういうキャラだったのか?」

時雨「冗談も言えない状態だったんだもの。少しくらい付き合ってくれてもいいじゃないか」
419 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/25(土) 22:46:32.15 ID:r0JdSGTYo

提督「だったらもう少し上品な冗談にしてくれ。それより、お前がいるってことは、ここはあの世か?」

時雨「うーん……あの世とこの世の境目、かな? 賽の河原みたいなものだね」

提督「つまり、俺も死んだのか」

時雨「死にかけている、と言うのが正しいかな。提督の肉体は無事みたいだからね」

提督「そうなのか……? でも俺がここにいるってことは、ほぼ死んでるのと同じじゃねえのか? お前もここにいるわけだし……」

時雨「うーん、それにはもうちょっと複雑な事情があるんだけど……」

提督「そうだ、如月たちもここに来てるのか?」キョロ

時雨「みんなは来てないと思うなあ」

提督「あいつらは無事だって言えるのか?」

時雨「うん、おそらくね。とにかく、提督がなぜここに来たか、その理由は提督の顔を見ればわかるよ」

提督「どういう意味だ?」

時雨「丁度良くそこに池があるから、そこで自分の顔を見てみなよ」

提督「……?」

 (提督が池を覗き込むと水面には、陶器のような真っ白な顔にひびが入ってオレンジ色に発光している顔が映る)

提督「なんだこりゃ……!?」
420 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/25(土) 22:47:16.16 ID:r0JdSGTYo

時雨「肉体から引き剥がされて魂だけになった姿だから、よくわかるでしょ?」

提督「魂……!?」

時雨「そう。提督、あなたは、深海棲艦の魂と人間の魂が混ざりあった魂を持つ人間だよ」

提督「混ざっ……深海棲艦と!? 俺が!? なんでだ!?」

時雨「提督のお母さんが、学生の時に海難事故に遭ったことは知っているかい?」

提督「……いいや、知らねえ。初めて聞いた。母親が海の近くに行きたがらないのはそのせいか?」

時雨「だと思うよ。提督のお母さんは君が生まれる前、その事故で、深海棲艦に接触していたんだ」

提督「……」

時雨「数年前、海に突然現れた深海棲艦。そのもととなっている魂そのものは、海に姿を現す以前から存在していたんだ」

時雨「その眠っていた魂が、生きている人間……つまり、海難事故によって海に放り出された人間を感知し、接触した」

時雨「そこにいた人たちは体を奪われたり、彼らの持つ怨嗟によって精神を蝕まれ狂わされたり……たくさんの人が『人』ではなくなった」

時雨「提督のお母さんも、深海棲艦の魂に襲われた一人なんだよ」

提督「……」

時雨「本当なら、提督のお母さんも狂人になるはずだったんだけど、そうならなかった理由がふたつ」

時雨「ひとつは、乗り移った深海棲艦の魂が弱っていたせい。もうひとつはに救助されてから海から離れたこと」

時雨「そのおかげで、提督のお母さんは狂うことなく生き延びたと思うんだ」
421 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/25(土) 22:48:02.10 ID:r0JdSGTYo

時雨「そして提督のお父さんと結婚し、新たな命を宿したときに、その命が持ってきた『人間』の魂と結合した」

時雨「そうして生まれたのが、提督……君なんだ」

提督「……」

時雨「……」

提督「あいつが……母親が、俺に異常なくらい怯えていたのは、そういうことか?」

時雨「多分ね。そして、その君の出生に目を付けたのが魔神の手先だね」

提督「ニコのことか?」

時雨「ううん、魔神のために作られた自動人形(オートマタ)……エフェメラって名前なんだけど」

時雨「彼女が君のお父さんに接触して、不幸を君に押し付けるように仕組んだ、って聞いてるよ」

提督「じゃあ何か。俺は生まれる前から魔神に目を付けられてたってことか」

時雨「そういうことだね」

提督「冗談きついぜ……最初っから俺の人生ハードモードだったんじゃねえか」

時雨「でも、結果的に魔神に食べられたりしなかったんだ。妖精に感謝しないとね」

提督「食べる!? なんだそりゃ!?」

時雨「魔神の目的は、邪悪な魂を食らうこと。本当なら提督は、魔神に捧げられる生贄となるはずだったんだよ?」

時雨「ハードモードどころか、最初からバッドエンド直行が既定路線だったんだ」

提督「……」
422 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/25(土) 22:48:46.26 ID:r0JdSGTYo

時雨「君があらゆる人間から忌み嫌われ、謂れのない恨みや悪意を一身に浴びれば……」

時雨「いずれはすべての人間を憎み、世界そのものを憎むような、凶悪極まりない人間になるはず」

時雨「ましてや魂の半分は深海棲艦。そうなっていたら人間ですらなくなってたかもしれない」

提督「……俺は魔神の餌になるためにこんな目に遭ったってことか」

時雨「深海棲艦が混ざった君の魂が、御馳走に見えたんだろうね」

時雨「その目論見を狂わせたのが、妖精との出会いさ。あんなに早く、提督が妖精と出会うなんて、彼らも予想外だったみたいなんだ」

提督「それだけでそんなに変わるのか?」

時雨「ねえ、提督は、妖精から何を教えてもらった?」

提督「……」

時雨「本当なら、周囲の人間から教えてもらうはずのいろんなことを、妖精たちから教えてもらったんじゃないかな」

提督「……ああ、そうだ。俺に『常識』を教えてくれたのはあいつらだ」

提督「人の世に絶望しても、あいつらは俺を励ましてくれた。よく声をかけてくれたし、俺を見捨てたりもしなかった」

時雨「提督は人間に失望していたんだよね? でも、妖精には良い感情を持っていた」

提督「……」コク

時雨「妖精たちの干渉を想定してなかったエフェメラは、君を邪悪に染めるため、それ以降も君のお父さんに何度も接触してる」
423 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/25(土) 22:49:31.26 ID:r0JdSGTYo

時雨「あることないことを焚きつけて君の立場を悪くしつつ、彼の政治活動を裏から支援して」

時雨「君のお父さんの信頼を得ながら、結果的に君が人間を憎むように仕向けていたんだよ」

提督「……だからあいつは、ぽんぽんと調子よく出世していたのか」

時雨「弟さんがいたのもそれに拍車をかけた感じだね。父親と弟の評価が高ければ高いほど……」

提督「俺に対する風当たりは強くなる、ってか。まさしくその通りだな、その時点でそのエフェメラとかいう奴の術中にはまってたわけか」

時雨「その結果があの島への左遷だね。でも、それで結果的に人間社会から離れることができたのは、ある意味一番の幸運だったと思うよ?」

提督「……もしかして、お前もあいつらに巻き込まれたのか?」

時雨「さあ、どうだろう? わからないけど、僕がいた鎮守府はエフェメラの存在に関係なく、もともとそうだったんだと思うよ?」

時雨「その人の場所から君のいる鎮守府に流れ着いて……そこでみんなを見守っている中で、君を守りたいという人と出会った」

提督「俺を……?」

時雨「エフェメラは、実は一体だけじゃなく、数体いるらしいんだ。それこそ僕たち艦娘みたいに。そのエフェメラもそれぞれに思いがあって……」

時雨「魔神のために君を魔神の贄にしたがっている個体もいれば、魔神となりうる君の力になりたいって個体もいる」

時雨「僕は、その君の力になりたいっていうエフェメラに、協力してほしいと言われているんだよ」

時雨「今の話も、そのエフェメラから聞いて知ったんだ」

時雨「まさか、ここでこうやって君と話ができるなんて、思ってもいなかったけど、ね?」

提督「……」
424 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/25(土) 22:51:01.32 ID:r0JdSGTYo

時雨「それから、君がここに来たのは、君と一緒にいた女神妖精のおかげだよ」

提督「妖精の……!? あいつは、消えたんじゃないのか」

時雨「そう。君と一緒にいた女神妖精は、深海棲艦で作った弾丸によって、この世界から消滅した」

時雨「でも、それは死ではなく、現世に存在し続ける力を失っただけ。ようは、世界から一時的に追い出されちゃったんだ」

時雨「君が気を失った後、ブラックホールのメディウムが君を助けに来てくれて……」

時雨「その時に彼女が持っていた、魔力の元である魔法石の力で、妖精が戻って来ることができたんだ」

時雨「本当は、そういう用途で魔法石を持ってきたわけじゃないみたいだけどね」

提督「……」

時雨「その後、提督や如月たちを島から脱出させるため、女神妖精の力が島を包み込んで君たちの肉体を守り……」

時雨「それと一緒に、これまでに島に埋葬された艦娘の魂が力を得て、君たちを炎や溶岩から逃がす手伝いをしてくれた」

時雨「だから、さっきの如月たちがこっちに来ているか、と言う質問には、こっちには来てないと思う、って答えられると思うんだ」

時雨「女神妖精の力が発揮されたということは、如月たちの傷は治って、魂は自分の体に戻っているはずだから」

提督「そうなのか!? ……生きて、いるんだな……!?」

時雨「おそらくね?」

提督「でも、そういう見込みなんだな? それなら……良かった」
425 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/25(土) 22:51:46.61 ID:r0JdSGTYo

時雨「ただ、君たちを救助するために島に近づこうとした軽巡棲姫は、女神妖精の光に近づいたときに苦しんでいたんだ」

時雨「女神妖精のあの光は、深海を棲み処とする深海棲艦にとって毒なんだと思う。要は、轟沈から艦娘を救うための力だからね」

提督「……じゃあ、俺は……」

時雨「君は、半分深海棲艦だからね。肉体から追い出されたっていうか、強制的に成仏させられたんじゃないかな?」

提督「成仏……」チーン

時雨「だからこんなところにいるんだと思うよ」

提督「……いや、まあ、そうかもしれねえが」

提督「それよりも、よく俺とあいつが何十年も一緒にいられたな!? 俺とあいつって相反する属性持ちじゃねえか」

時雨「だからこそ出会ったのかもしれないね。君みたいな沈みかけの魂を救えるのが、女神妖精なんだから」

提督「……もしかしなくても、俺が妖精たちと話ができたのも、俺が半分深海棲艦だからってことだよな?」

時雨「うん、きっとそうだね」

提督「……ああ、くそ。俺の今の見た目からして信じられねえが、いろいろ納得できる辺りどうしようもねえな……!」

時雨「ねえ、提督? 君がなぜそんな姿なのか、ここにいるのか……僕の言いたいことを理解はしてもらえたと思うんだけど」

提督「……」

時雨「今度は、僕の質問に答えて欲しいんだ」

提督「……なんだ?」
426 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/25(土) 22:52:32.29 ID:r0JdSGTYo
.



時雨「提督。君は、死にたいのかな? それとも、生きたいのかな?」

提督「……」



.
427 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/25(土) 22:53:17.08 ID:r0JdSGTYo

時雨「……」

提督「はぁぁ……」

時雨「ため息ついてないで答えて欲しいんだけどな」

提督「急かすなよ。まさかここで、俺がその質問をされる側に回るなんてなあ……」

時雨「……」

提督「……正直、俺の出番はここまでだと思ってたんだ」

提督「如月たちを巻き込んじまった。だから俺も、嫌な奴らを焼き払って、一緒に燃えてしまおうと思ってた」

提督「でも、あいつらは……如月たちは、無事なんだよな?」

時雨「多分ね?」

提督「ル級たちはどうしてんだ? 海軍の連中に捕まってないだろうな?」

時雨「さあ?」

提督「ニコたちも……あっちで待ってんだろうなあ。わざわざ別の世界から訪ねてくるくらいだし」

時雨「……」

提督「……戻るか」アタマガリガリ

時雨「!」
428 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/25(土) 22:54:01.62 ID:r0JdSGTYo

提督「どの面下げて、って気もするが……このままじゃあ、如月たちにも、ル級たちにも、ニコたちにも迷惑かけちまう。未練が残っちまう」

提督「つけられる始末はきっちりつけとかねえとな。死ぬのはそれからだ」

時雨「……素直じゃないね?」

提督「そうか?」

時雨「まあ、いいか。早く帰って、みんなを安心させてあげよう」

提督「そうだな。そうと決まれば……」

提督「……」

提督「どこ行ったらいいんだ?」

時雨「……」

提督「どこ行くと戻れるんだ? 時雨、知ってるか?」

時雨「……」メソラシ

提督「視線が泳いでるぞ。俺を焚きつけておいて、それはねえだろ」

時雨「僕が知るわけないじゃないか……僕は、エフェメラが行けって言った通りに行かざると得なかっただけなんだから」ムー

提督「時雨も丸投げされたのかよ……んじゃ仕方ねえ、とりあえず手掛かり探すか?」

時雨「そうだね、そうして欲しいな」
429 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/25(土) 22:54:46.52 ID:r0JdSGTYo

提督「とはいえ……どこに行くかだな」ウーム

時雨「……」

提督「なあ時雨? ありきたりな発想だけどよ、仮にここが天国だとしたら、下は下界っつーか、人間界、って認識してもいいよな?」

時雨「うーん、そうかも……ね?」

提督「……」

時雨「なにか気になることでもあったの?」

提督「さっき、鏡代わりに見たその池の水。綺麗すぎて、水面というより薄い膜みたいなんだよな」

時雨「……確かにそうだね?」

提督「もしかして、あの池の底がもといた世界につながってたりはしないか……って思ったんだ」

時雨「そう……だね。可能性はあるかも」

提督「ちょっとあの池の中を覗いてみるから、俺が落ちないように足を抑えててくれ」ネソベリ

時雨「うん、わかった」ツカミ

提督「よ……っと」チャプン

 ゴォォォォ…

提督「おお……」チャパッ

時雨「どうだった?」
430 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/25(土) 22:55:31.37 ID:r0JdSGTYo

提督「この下は地獄だった。地獄の天井につながってるぞ、ここ」

時雨「」

提督「あちこち燃えてるわ血生臭えわ、燃えた人間やら人骨やらが転がってるわ悲鳴上げてるわでマジ地獄だった」

時雨「えええ……」

提督「洞窟っつうか、ただっ広い洞穴に篝火がたくさん置いてあって、筋骨隆々の獄卒もいて、これが地獄絵図かーって感じですごかったぞ!」ワクワク

時雨「……なんでそんなにテンション高いの?」

提督「もうちょっと見てていいか」チャプン

時雨「提督!?」


提督「おお、マジすげえ……獄卒もちゃんと牛頭馬頭(ごず・めず)じゃねえか、すげえな」キラキラ

提督「うん? なんだありゃ。女の鬼か? 体にツギハギ模様があるな……」


女の鬼?1「貴様なぞこうじゃ!」

女の鬼?2「我等の痛み、思い知れ!」

燃えている亡者「ぎゃあああ!」


提督「あの鬼……もしかして」

 グイグイ

提督「ん? どうした時雨」ザパッ
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