このスレッドは950レスを超えています。そろそろ次スレを建てないと書き込みができなくなりますよ。

【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その2だよ」【×影牢】

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

919 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:16:01.60 ID:HHe/6brVo

最上「住んではいなかったけど、僕が来た時には戦艦ル級が普通に遊びに来てたよ?」

W伊勢「は?」

W熊野「マジですの?」

W鈴谷「あはは、熊野が『マジ』だって! ウケるー!」

W球磨「そこ笑うところクマ!?」

W熊野「鈴谷!? 私がマジとか言ったらおかしいとでも言うんですの!?」

W球磨「今その話はしてないクマ。話が逸れるから静かにするクマ」

W熊野「厳しくありませんこと!?」

W伊勢「ちょっと待って。ル級?」

最上「うん、深海棲艦の戦艦ル級。割と昔から、あのル級とは交流があったみたいだよ」

三隈「あくまで提督との個人的な付き合い、ということらしいですわ」

最上「大佐が連れてきた泊地棲姫を追い返すときも協力してくれたから、仲は良いんだろうね」

W球磨「どうやって仲良くなったんだクマ……」

W鈴谷「きっかけはとにかく、仲良くなれたのをわざわざぶち壊そうとしなくてもいいと思うんだけどー」

三隈「それだけ、曽大佐の深海棲艦への恨みは深いということなんでしょうね……」
920 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:16:46.80 ID:HHe/6brVo

W鈴谷「あそこの鎮守府の艦娘、あたし苦手なんだよねー。みーんな曽大佐に感化されてて、すっごいピリピリしまくっててさぁ」

W球磨「わかるクマ。全然余裕がなさそうで息苦しい鎮守府クマ」ウンウン

W伊勢「とにかくそういうわけだから、最上と三隈はしばらくあの島には戻らないほうが良さそうだ、って伝えたかったの」

三隈「……とりあえず、わかりました」

最上「あーあ、提督も大変だね。曽大佐がどんな恨みを持ってるのかしらないけど、提督にしてみればとばっちりだよ」

W熊野「とばっちり……」

最上「そうじゃないのかな? あの島に集まった深海棲艦のうちの誰かが曽大佐に何かしたって言うんならわかるけど、そうじゃないんでしょ?」

最上「例えば、ある国の人に家族や友達を殺されたからって、その国に住む人間は全員悪だ、なんて理屈は横暴だと思わない?」

最上「その人が嫌いになるのはしょうがないと思うけど、それで皆殺しにするほどかな? 提督にしてみたら絶対にとばっちりだよね?」

三隈「とばっちりかもしれませんけど、どちらにしても、あの提督にはきっと関係ないでしょうね」

W大佐「……最上たちに訊きたいんだが、島に住む深海棲艦が提督に、ある場所を攻撃してほしい、と頼んだらそれは聞き入れると思うか?」

最上「そこは深海棲艦のお願いの内容によるんじゃないかな?」

最上「お願いを聞くにしても、提督は島にいる艦娘や深海棲艦が巻き込まれないようにするだろうし、無理なお願いなら突っぱねると思うなあ」

三隈「かつての島の、ゆるりとした生活を取り戻したいとは思っているでしょうけど……そのために他の国や拠点を攻撃するとは思えません」

三隈「そもそも厭世的な方でしたから、他国を攻めたりして目をつけられることのほうが嫌だと思うのではないでしょうか」
921 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:17:32.01 ID:HHe/6brVo

最上「そうだね。島の住人が増えたとしても、提督自身は人の世界に関わろうとはしないんじゃないかな?」

三隈「その島の住人が、提督に黙って勝手にどこかへ攻め込むことはあるかもしれませんね」

最上「……そうなったら、提督はどうするかなあ」ウーン

W大佐「なるほど。提督が、自分の意志で外へ攻め込む可能性は低いとみていいのか?」

最上「だと思うけど、そこまで突っ込んだ話だと、僕たちに訊くより比叡さんのほうが詳しいんじゃないかな?」

最上「僕たちよりずっと前から鎮守府にいたって言うし」

W大佐「ふむ……後で聞いてみるか」

W伊勢「ちなみにその比叡は?」

W熊野「榛名さんと一緒に工廠の方に行っているはずですわ」

W鈴谷「めっちゃテンション高かったよねー。あんなに笑ってる榛名さんは初めて見たよ?」

W熊野「せっかくですわ、あの比叡さんもこちらに移籍していただいたほうがよろしいんじゃありませんこと?」

W球磨「球磨もそれがいいと思うけど、あの比叡は轟沈を経験してるクマ。そのあたり、大丈夫なのかクマ?」

W鈴谷「うあー、そっかー。そのへんダイジョブになんないと、確かにいろいろ怖いよねー」
922 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:18:16.88 ID:HHe/6brVo

W熊野「……うーん、仮に比叡さんが深海棲艦になったとしても、話が通じれば良いのではなくて?」

W球磨「ちょっと何を言ってるかわからないクマ」

W熊野「艦娘が深海棲艦になったとしても、人を襲わないのなら問題視しなくても良い、と思ったのだけれど……そうではないのかしら」

W熊野「話が通じなくて、かつ、分別なく人を襲うからこそ危険なのは、なにも深海棲艦に限った話ではなくてよ?」

W伊勢「あぁ……まあ、そうなるかな?」

W球磨「熊野の言わんとしてるところはわからなくないクマ。でも、艦娘が深海棲艦になるって状況自体、相当のことだと思うクマ」

W球磨「球磨は、艦娘が正気を保てなくなったから深海棲艦になると思ってるクマ」

W球磨「轟沈自体が艦娘にとって絶望的なものなんだから、深海棲艦になった時点でまともじゃなくなってると思ってるクマ」

W熊野「でも、あの島には話の通じる、まともな深海棲艦がいたんでしょう? 深海棲艦がまともじゃない、という理屈は通じませんわ」

W球磨「そう言われればそうなるクマ……」ウーン

三隈「いずれにせよ、艦娘が深海棲艦になった記録もあの島にはありませんし……」

最上「あの島にいて誰も深海棲艦にならなかったんだから、あの話自体がでたらめなのかもね?」

全員「「……」」

W大佐「いずれにしろ、安易に引き取るというわけにはいかないだろう。向こうの都合もあるだろうしな」

W鈴谷「手続きもいろいろ面倒臭いもんねー」
923 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:19:01.82 ID:HHe/6brVo

 *

W大佐「最上たちの話を聞く限り、提督が島から外へ出てどこかへ攻め込むということはなさそうだな?」

W伊勢「そうみたいですね。船であちらの提督の話を聞いたときの話と、だいたい符合してますし」

W大佐「Xが作った共存への道を曽大佐が潰すのは避けたいが、深海棲艦の跋扈を許したくない曽大佐の気持ちもわかる」

W大佐「できればうまく潰しあって痛み分けになってくれればいいんだが……」

W伊勢「W提督は、あの島に深海棲艦がいないほうがいいとお考えでしたよね?」

W大佐「ああ。そうでなければ、あの島に深海棲艦がいたとしても、海軍が支配した状態になっているのが望ましい」

W大佐「あの提督がいる限り、それも難しそうだがな」

W伊勢「海軍に協力してくれなさそうだ、って意味で?」

W大佐「……ああ。二度も海軍の人間に殺されそうになったんだ。俺たち海軍は……いや、人間は恨まれていると思ったほうがいいだろう」

W大佐「Xのように協力的な姿勢を見せる人間がいなければ、彼が人間を滅ぼそうと考えてもおかしくないように思えるしな」

W大佐「そもそも、妖精と話ができる人材をあんな離島に追いやったことを、なぜ上は誰も疑問視しなかったのか……」

W伊勢「そこはもう、手遅れだったとしか思えないけどなあ。W提督も聞いてるでしょ? あの島の提督、もとから相当な人間嫌いだって」
924 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:19:48.15 ID:HHe/6brVo

W伊勢「艦娘を唆して人間を裏切るんじゃないかってことを懸念して、中将閣下とその息子である大佐に押し付けたって、誰かも言ってたし」

W大佐「だったら、海軍が信頼できる組織だということを、彼に示せば良かったんだ」

W大佐「妖精から不祥事を聞かれたくないというのなら、普段からそういう行動をしていればいいだけのこと……」

W大佐「裏切る要素があるからと、保身のため、責任逃れのためにたらい回しにしたのでは、不信感を持たれて当然だ……!」

W大佐「もっとも……あのとき、J少将の目論見を見抜けなかった俺が言っても、説得力がないのかもしれないがな」ハァ…

W伊勢「……」

W大佐「いずれにしろ、いまは提督の言い分を聞くしかないだろう」

W大佐「不本意だが、リンガ泊地の城塞鎮守府も、あの提督のおかげで落ち着きを取り戻したとO大尉から報告を受けた」

W大佐「彼が海軍のために動いてくれたのであれば、我々も応えるのが礼儀、と言うものだ」

W伊勢「……曽大佐はやりづらいでしょうね」

W大佐「だろうな。曽大佐は、あの島を攻撃する口実を作ろうとしているようだが……いま動くのは下策と言わざるを得ん」
925 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:20:31.73 ID:HHe/6brVo

 * 一方 *

 * 曽大佐鎮守府 *

曽大佐「なぜだ!? あれほど深海棲艦の撃滅に協力的だった仲間が、あいつらの撃滅を躊躇するんだ!!」

通信『し、仕方ありませんよ大佐! もしかしたら、この戦争を終わらせることができるかもしれないんですよ!?』

曽大佐「なにが終戦だ! 人に仇なす存在でしかない深海棲艦がいる限り、戦いが終わるわけがないだろう!」

曽大佐「これまでさんざん戦ってきた深海棲艦がどういうものか、お前は忘れたのか!?」

曽大佐「あいつらと人間が共生できるわけがない!? 寝言は寝て言えと言うんだ!」

通信『し、しかし、共生は無理でも、住み分けが……』

曽大佐「あいつらのために譲っていい場所などあるものか!! 奴らは侵略者だぞ!? 甘い顔を見せつけあがらせる気か!」

曽大佐「海の平和を乱すものを徹底的に叩いて排斥し、海に秩序をもたらすのが俺たちの使命じゃないのか!!」

通信『で、ですが、その秩序を作るために話し合いを……』

曽大佐「あいつらに我々の望む秩序を守れると思っているのか!? 人ですらないんだぞ!」
926 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:21:16.48 ID:HHe/6brVo

曽大佐「駆逐艦を見ろ! あれを人と呼べるのか!? 戦艦棲姫を思い出せ! 誰もが化け物だと言わなかったか!!」

曽大佐「人間は、深海棲艦に恐怖したんじゃなかったのか!! 陸の人間はもう忘れたのか!! 俺たちはまだ戦争中なんだぞ!!」

通信『……』

曽大佐「情けないことに、我々人間が奴らに直接対抗する術はない。未だに艦娘頼みだ……!」

曽大佐「その状況で深海棲艦と和睦だと!? 思い上がりも甚だしい!! 身の程を知れと言うんだ!!」

通信『お、落ち着いてください大佐……!』

曽大佐「落ち着いていられるか……! 深海棲艦が領土を持つことの重要性と危険性を、本営は何も理解していない!」

曽大佐「最悪、我々だけであの島から深海棲艦を追い出す算段を考えねばならん……!」

曽大佐「だからこそ戦力を募っているというのに、終戦などという世迷言に惑わされる愚物ばかり……お前はどうなんだ」

通信『っ……じ、自分は、まだ……』

曽大佐「そうか。俺はまもなくあの島への攻撃を予定している。準備しておけ」

通信『……い、急ぎ、準備、いたします……!』

 プツッ

曽大佐「そこで『はい』と言えんのか……!? 腰抜けばかりか、この国は……!!」ギリッ
927 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:22:02.12 ID:HHe/6brVo

 * 翌日 *

 * 墓場島 埠頭 *

提督「はぁ……こんなに早く人間を上陸させることになるとはな。ま、与少将がうまく抑止力になってくれりゃいいんだが」

ヲ級「!」

提督「ん? お前、あの打ち合わせに出てたヲ級か? お前が時雨を見つけてくれたんだったな?」

ヲ級「提督ヒトリカ……コンナトコロデ、ナニヲシテイル」

提督「散歩だよ。新しい鎮守府がどういう感じか、見て回ってる」

ヲ級「艦娘ハドウシタ」

提督「人間が島に来てるんで、護衛を押し付けてきた。俺もたまにゃあひとりで適当にぶらぶらしたいときがあるんでな」

ヲ級「……」

イ級「」ザバー

ロ級「」ザババー

提督「おー……作った水路、いい感じに機能してるみたいだな」

ヲ級「……」コク
928 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:22:47.44 ID:HHe/6brVo

提督「深海の駆逐艦って、改めて見るとでけえな。イルカよりでかいか? イルカの実物、見たことねえけど」

ヲ級「イ、ルカ……? アア、アイツラヨリハ大キイナ」

提督「けど、分類としては駆逐艦なんだよな。こうやって見ると、お前やル級より装甲硬そうに見えるんだが」

ヲ級「イイヤ、ソウデモナイ。ソレニ、私タチヨリ身体ガ大キイブン、被弾モ多イ」

提督「ああ、なるほど……確かに、そこはでかけりゃいいって話じゃねえか」

提督「それにしても……なあ、知ってたらでいいから教えてほしいんだが、いいか?」

ヲ級「ナンダ?」

提督「深海の駆逐艦が人型じゃないのはどうしてなんだ?」

ヲ級「……」

提督「軽巡は顔が隠れてるが人の体や腕を持ってるし、潜水艦も人の顔を持ってるけど、駆逐艦は人らしい要素がないんだよな」

提督「逆に艦娘はどんな艦であっても人型だ。この違いは一体何だろうな、と思ってな」

ヲ級「……ソレハ、考エタコトモ、ナカッタ……」

提督「そうか。まあ、生活に不自由しなきゃいいなと思ってるだけだから、あまり深く考えなくていいぞ」

ヲ級「……生活?」

提督「ああ。俺や艦娘、それからメディウムたちも一応は人の姿を取ってるから、人間と同じような生活をしてるんだが」

提督「お前たちは海中で過ごすんだろ? 寝るときに布団に入ったりしないだろうし、風呂の習慣もないよな?」
929 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:23:47.53 ID:HHe/6brVo

提督「食事だって、まさかテーブル囲んで食べてるとは思えねえ。お前もそうだが、あの駆逐艦たちは普段は何を食ってんだ?」

ヲ級「食事? ……燃料補給ノコトカ。ソレナラ海底ノ重油ダナ」

提督「油か。まさか、自分で堀りに行ったりしてるのか?」

ヲ級「場所ガワカッテイルカラ、ソコマデ行クトキモアルシ、オマエタチガ鬼級ヤ姫級ト呼ブ艦ニ用意シテモラウトキモアル」

ヲ級「泊地棲姫ノトコロニイタトキハ、駆逐艦ガ集メタ燃料ヲ分ケテモラッテイタ」

提督「その時も燃料なのか。魚とかは食べないのか?」

ヲ級「タマニ魚モ食ベルガ、エネルギーヘノ変換効率ハ良クナイト思ッテイル」

ヲ級「ソレニ私ハ、アマリ生魚ヲ美味シイト思ワナイカラ、イツモ燃料ヲ貰ッテイル」

提督「そうか。じゃあ、補給用の設備が整ってれば、いまのところは安泰と思っていいか」

提督「ん? となると、俺たちと同じ飯を食うル級は変わり者ってことになるのか?」

ヲ級「イヤ……タブン、私タチニハ調理トイウ概念ソノモノガ、抜ケ落チテイタンダト思ウ」

ヲ級「深海ニイタトキニ、アタタカイ食ベ物ヲ摂ルコトハ、ナカッタ。ソレガ普通ダッタカラ、ナ」

提督「なるほど。駆逐艦の見た目も食い物も、指摘されるまで疑いすらしなかった、ってことか」

ヲ級「私タチノ名前モソウダ。私タチニハ、名前トイウ概念ガ、ナカッタ。名前ヲツケル自由ガアルコト自体、考エニ至ラナカッタ……」

ヲ級「ダカラ、人間タチガツケタ名前ヲ、私タチモ使ウヨウニシタ。私タチガ、イッタイ何者ナノカ、考エラレナカッタカラ……」フラッ

提督「お、おい、大丈夫か!?」

ヲ級「……少シ、記憶ガ、混乱シテイル」
930 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:24:31.93 ID:HHe/6brVo

ヲ級「オマエト、話シテイルト、イロイロナコトヲ……忘レテイタコトヲ、思イ出スヨウデ……」

ヲ級「……私ハ……ワタシ、ハ……」

提督「おい!? しっかりしろ!」

ヲ級「……ッ!?」

提督「大丈夫か……? 何かしら思い出すのはいいのかもしれねえが、ふらふらしてたぞ?」

ヲ級「……大丈夫ダ。私ガ何者ナノカ、思イ出セソウナ、感ジガシタダケダ」

提督「……」

ヲ級「艦娘ニハ、艦名ガアル。ダガ、私タチニハ、ナイ」

ヲ級「タブン、私タチガ、自分自身ヲ何者ナノカガ、ワカラナイカラダト思ウ」

ヲ級「私タチ……『ヲ級』ト呼バレル個体ノ姿ガ似テイルノモ、艦娘ノヨウニ、本来ノ自ラノ艦名ヲ、思イ出セナイカラダト、思ウ」

提督「そうなのか……?」

ヲ級「……ナントナク、ソウ思ッタダケダ。当タッテイルカドウカハ、ワカラナイ」

ヲ級「私ガ推測シテ、納得デキソウナ答エヲ考エタ結果、ソウイウ結論ニ至ッタダケダ」

提督「そうか。どっちにしても、無理はすんなよ」

ヲ級「……?」

提督「なんでそこで不思議そうなするんだよ。お前が何かを思い出そうとしてたとき、倒れそうだったじゃねえか」
931 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:25:17.10 ID:HHe/6brVo

提督「体を壊したら元も子もねえ。少し休んでからでもいいだろ、って思っただけだ」

提督「忘れてる、ってことは、もしかしたら思い出したくないことかもしれないからな。やばいと思ったら無理すんな」

ヲ級「……ソウカ」

提督「さてと、俺はもう少し館内を見回ってくる。お前はまた哨戒に行くのか?」

ヲ級「……」コク

提督「んじゃ、気を付けて行けよ。何かあったらすぐ連絡しろよ」

ヲ級「待テ」

提督「なんだ?」

ヲ級「ナゼ私ガ、時雨ヲ見ツケタ個体ダトワカッタ?」

提督「ん? 普通に顔を見てわかったんだが」

ヲ級「……ソウカ」

提督「おう。んじゃな」

 スタスタ…

ヲ級「……」

ヲ級「ナルホド。アノ、ル級ガ、ヨク笑ウワケダ」
932 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:26:01.68 ID:HHe/6brVo

イ級「」ザバー

ロ級「」ザババー

ヲ級「……!」

イ級「ホキュウオワリ」

ロ級「ミマワリデカケル」

ヲ級「……ソウダナ」

ロ級「?」

イ級「ナニカアッタッポイ?」

ヲ級「……イヤ。今日ハ、アタタカイナ」

イ級「タシカニ、イイオテンキ」

ロ級「オデカケビヨリ」

ヲ級「……サア、行クゾ」ザァッ

イ級「リョウカイ」ザバー

ロ級「ナノデス」ザババー
933 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:28:32.14 ID:HHe/6brVo

 * その少し後 *

 * 埠頭そばの休憩スペース *

 (屋外にいくつか並んだ丸いテーブルの一つに、泊地棲姫とル級が向かい合って座っている)

泊地棲姫「自分ノ名前?」

ル級「海域ノ哨戒ヲ任セテイタ、ヲ級ガソウ呟イテイタノヨ」

ル級「私ハ一体、何ダッタノカ、ッテ」

泊地棲姫「……オ前ハ、考エタコトハ、ナイノカ?」

ル級「……ウッスラト、ソレジャナイカ、トハ思ッテイルケレド、アマリ深ク考エナイヨウニシテルワ」

泊地棲姫「考エナイヨウニ、シテル? ドウシテダ?」

ル級「イロイロ思イ出セバ、私ガ変ワッテシマイソウダカラ。今ノママガ、一番良イ気ガスルノヨネ」

泊地棲姫「……アノ男トノ関係ヲ、変エタクナイカラ、カ?」

ル級「……マア、ソウイウコト、ネ」

泊地棲姫「フフ……可愛イコトヲ言ウヨウニナッタナ。オ前モソノウチ、変異スルンジャナイカ」

ル級「……ナニソレ」

泊地棲姫「私ノコレマデノ見立テデハ、人ノ愛憎ヲ多ク知ル者ガ、強大ナ深海棲艦ニナルト考エテイル」

泊地棲姫「強イ感情ガ、強イ意志ヲ生ミ、強イチカラヲ作ル。憎悪ヤ未練ガ残ッテイルホド、ソレガ私タチノチカラトシテ顕現スル」
934 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:29:18.72 ID:HHe/6brVo

泊地棲姫「生マレタテノ深海棲艦ガ、最初ニ破壊衝動ヲ抱クノモ、同ジ理由ダト思ッテイル」

ル級「憎悪ヤ未練ガアッタカラ、無意識ニ人間ヲ襲ッテイタ……ッテコト?」

泊地棲姫「私ハ、ソウ考エタ。オ前モ、提督ガ死ニカケタトキ、突然パワーアップシタダロウ? ダカラ、ソウ考エタンダガ」

泊地棲姫「考エレバ考エルホド、感情ヲ知レバ知ルホド、私タチハ深化シ、知恵ヲ得テ、ソレガチカラト成ル……オ前モソウジャナイノカ?」

ル級「……」

泊地棲姫「イマノ話カラスルト、ソノヲ級ノ身ニモ、ソノウチ何カ起コリソウダナ」スクッ

ル級「……? ドコヘイ行クノヨ」

泊地棲姫「ドコニモ行カナイゾ。コーヒーヲ淹レルダケダ」

ル級「コーヒー?」

 タタタタッ

ロゼッタ「やっほー! 美味しいコーヒーがあるって聞いてきたんだけど!」

ル級「!?」

タチアナ「不躾に申し訳ありません。ロゼッタ、はやる気持ちはわかりますが……」

タ級「姫ー! コーヒー、アルンダッテ? 早ク出シテクレ!」シュバッ!

タチアナ「……」
935 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:30:16.76 ID:HHe/6brVo

ル級「ドウイウコトダ?」

泊地棲姫「オ前ハ聞イテナイノカ? 提督ガ、知リ合イノ艦娘カラ、コーヒーヲ貰ッタンダ。ソレヲ分ケテ貰ッタ」

泊地棲姫「良イ豆ダッタカラ、飲ミタイ者ヲ誘ッテイタンダガ……」

タチアナ「私どもは、こちらのタ級さんたちがコーヒーの話をしていた時に丁度居合わせまして」

タ級「賑ヤカナホウガイイダロウ? 他ニモ誘ッテルゾ」

ヲ級「……誘ワレタ」(←哨戒中のヲ級とは別個体)

ツ級「同ジク」

ヘ級「同ジクー」(←ツ級に背負われている)

泊地棲姫「ヨシ。デハ少シ待ッテイロ」

ロゼッタ「えへへー、楽しみ!」

ヲ級「哨戒中ノアイツハ誘ワナカッタノカ?」

タ級「アイツ、真面目ダカラ、仕事ガ終ワッテカラ、ッテ言ッテタゾ」

ル級「……」
936 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:31:03.28 ID:HHe/6brVo

 *

タ級「コレ、ウマイナ!」キラキラッ

ロゼッタ「おーいしーー!」キラキラッ

タチアナ「良い香りですね……!」ウットリ

ヲ級「……」キラキラッ

泊地棲姫「フフ、ソウダロウ?」ドヤッ

ツ級「……」チュー

ヘ級「……」チュー

タチアナ「あちらのお二人はストローで飲んでいるのですが……」

タ級「マスクガ邪魔ダカラナ」

ツ級「!」キラキラッ

ヘ級「!」キラキラッ

泊地棲姫「好評ダナ」ドヤァァ
937 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:32:01.70 ID:HHe/6brVo

ル級「コレハ、アメリカンテイスト、トイウヤツカ」

泊地棲姫「私ハ軽イ方ガ好キダカラナ。アノ男ハ、濃イ目ノエスプレッソノホウガ好ミダソウダガ」

タチアナ「お茶でも渋いほうが好きだと仰っていましたね」

泊地棲姫「ル級ハドウナンダ? 濃イ味ノホウガイイノカ?」

ル級「濃サハ、アマリ、気ニシナイガ……ナントイウカ……」

泊地棲姫「?」

ル級「……懐カシイ、香リダナ……」

タ級「ル級ハ、コーヒーヲ飲ンダコトガアルノカ」

ル級「イヤ、紅茶ヲ勧メラレタコトハアルガ、コーヒーハ初メテダ。ナノニ、懐カシイ、ト……」

ヲ級「確カニ……言ワレテミレバ」

タ級「……?」

泊地棲姫「カツテ艦ダッタコロノ記憶ガ、ソウ思ワセテイルンダロウナ」

タ級「私ガ、コーヒーガオイシイト思ウノモ、昔ソウダッタカラダッテ言ウノカ……?」

泊地棲姫「カモシレナイ、ナ」

タ級「……フーン」

ル級「……」ズズッ
938 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:33:02.31 ID:HHe/6brVo

ロゼッタ「あ、お菓子食べる?」

ヲ級「……イタダク」

タ級「太ルゾ?」

ヲ級「私ハ大丈夫」パク

ヘ級「……」チュー

ツ級「……」ズゾゾゾ…

泊地棲姫「……フフ。平和ナモノダ」

ル級「……」

タチアナ「どうしました?」

ル級「……泊地棲姫モ、変ワッタナ」

タチアナ「現状に満足しているというのであれば、良い傾向だと思います」

ル級「……提督モ、ソウダ。今ノトコロハ、良イホウニ変ワッタト思ウ」

ル級「メディウムノ奴ラニ、身体ヲイロイロ弄ラレテイルノハ、気ニ入ラナイガ」ジロリ

タチアナ「……」

ル級「誰モカレモ、提督ニ多クヲ求メスギナノヨ。提督デアリ、魔神デアリ、イマヤコノ島ノ最高責任者」

ル級「アノ男ガ壊レルヨウナコトガアレバ、私ハ……!」

タチアナ「……」

泊地棲姫「メディウムガ、アノ男ヲ崇拝シテイルノハ、理解シテイル」

泊地棲姫「ダガ、ダカラト言ッテ、オ前タチノ好ミニ作リ変エラレルノハ、艦娘モソウダロウガ、我々モ黙ッテハイナイゾ……?」

泊地棲姫「アノ小娘ニ伝エテオケ。アレハ、オ前タチノモノデハナイ、トナ」ニヤリ

タチアナ「……ええ、承知しました。確かに、伝えておきましょう」ニヤッ
939 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/05/14(日) 13:34:46.79 ID:HHe/6brVo
というわけで今回はここまで。

次スレの最初に深海勢とメディウムの紹介文も用意しておかなきゃ……。
940 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/06/01(木) 14:15:04.84 ID:H8U6al+fO
しばらく読んでなかったらめっちゃ進んでた。
墓場島も完結したし、また最初から読むか。
941 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:30:47.46 ID:MAX3x8VTo
>940
いま読み直すと、辻褄の合わない場所が多くて
恥ずかしさのあまり顔が赤くなります。
見直しって大事ね……。

続きです。
942 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:31:31.49 ID:MAX3x8VTo

 * 昼過ぎ *

 * 鎮守府本館から埠頭への通路 *

キャロライン「ふええ……ダーリン、ごめんネー……」グスグス

提督「別にお前が悪いわけじゃねえだろ。それとこれとは話が別だし、そもそもありゃあ事故だ」ナデナデ

如月「あら? 司令官、こんなところに……どうしたの? メディウムの子を泣かせるなんて」

提督「ん、如月か。なんつうか、キャロラインがニコたちの会話を聞いたらしいんだけどよ……」

提督「深海棲艦の連中が俺の心配をしてるらしくて、メディウムにクレームいれたんだと」

如月「クレーム?」

提督「ああ。俺をこれ以上、作り変えるな、ってよ」

如月「……」

提督「俺が一番最初に魔力槽に入ったときに、俺の体が溶けて消えて、一から作り直されたって話は覚えてるよな?」

如月「え、ええ……」

提督「その時に一緒にいたのがキャロラインだったんだが、その出来事が結構ショックだったらしくてな」

キャロライン「ダーリンが消えちゃったトキは、本当にビックリしたノー……」グスグス

提督「それが忘れられなくて、また同じことが起こったらどうしよう、ってことで、俺のところに相談しに来たんだ」

キャロライン「ダーリンが、まだホントの魔神のチカラに目覚めてない、って、ニコちゃん言ってたノ」
943 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:32:16.08 ID:MAX3x8VTo

キャロライン「ワタシ、ダーリンが強くなったり、ワタシたちと仲良くなるのは嬉しいケド……」

キャロライン「今の優しいダーリンが消えちゃうのもイヤなノ……!」グスッ

如月「……そういうことだったのね」

提督「まあ、人間じゃなくなるのは俺としては嬉しい話だったんだが……」

提督「この島を守るためには、少し人間の部分が残ってねえと、ちょっと都合が悪いかも……って考えてる」

如月「それって、外交的な意味で?」

提督「ああ。どうせ人間どもは自分たちとは違う連中に『権利』を持たせる気がねえはずだ」

提督「人に近しい艦娘に人権を持たせてねえのが、その証左だ。だから、この島の支配を『権利』として主張するためには……」

提督「俺に人間である要素がちょっとでも残ってねえと、連中との話し合いに不利になりそうな気がしてんだよな」

如月「うーん……」

提督「まあ、なるようにしかならねえけどな、こういうもんは。結局は、自分に都合のいい屁理屈の押し付け合いだ」

提督「そこで折り合いがつかないから戦争が起こる。自分の言うことを聞かせたくて、屈服させるために、武器を振りかざして命を脅かす」

提督「そもそも、人間どもが俺たちにそういう譲歩をするつもりがあるか、ってのも疑わしいが……」

提督「そういうのが面倒臭いから、引き籠るっつってんのによぉ……本っ当に面倒臭え」

キャロライン「ダーリン……?」
944 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:33:00.79 ID:MAX3x8VTo

提督「まあ、話が脱線したが、俺も俺が俺以外の誰かの意志で変えられちまうのは御免だ」

提督「できればこのまま、いまのままで過ごせりゃあいいんだけどな」

キャロライン「? なら、そうすればいいんじゃないノ?」

提督「そのつもりだけどよ。どうしても長く生きると、考え方とかが知らないうちに偏っちまう」

提督「これからメディウムや深海棲艦と一緒に過ごすわけだが、俺の考え方がいつの間にかそいつらに染まったりするかもしれないし」

提督「俺がジジイになったら、いろいろボケて馬鹿なこと言い出すかもしれねえし……そういう人間もたくさん見てきたからなあ」ウーン

如月「そういうことなら大丈夫よ、きっと。私たちが、お傍にいますから、ね?」

キャロライン「ワタシモ、ダーリンとずっと一緒にいるヨ!」ダキツキー

提督「……まあ、そうだな。キャロラインも俺のことが心配で話しに来てくれたんだろうし」

提督「如月も、俺が変なら何かしら言ってくれるだろうしな。そこは頼りにさせてもらうぜ」ナデ

如月「うふふっ、任せてちょうだい」ニコニコ

キャロライン「ダーリン、優しくてダイスキー!」スリスリ

キャロライン「ニコちゃんが言ってた魔神って、ワタシたちが失敗したら消しちゃうかも、って言ってたカラ、ちょっと怖かったノ!」

提督「……」

如月「なんだか、他人事とは思えないわね……」

提督「気を抜かないように、って考えてのブラフなのかもしれねえが……もしかしたら、どこの組織も、似たようなもんなのかねえ」

如月「ニコちゃんもああ見えて責任感っていうか使命感が強いし、誰にも容赦しないタイプなのかもしれないわね?」

提督「そうだなあ……適度に肩の力が抜けるようにしてやるか」
945 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:33:46.43 ID:MAX3x8VTo

 * 午後 *

 * 医療船内 大会議室 *

与少将「まさか本当に深海棲艦と話ができるとはのう……」

仁金剛「緊張しましたケド、意外とフレンドリーでしたネー」

X大佐「今日はお土産のコーヒーがあったおかげかな? 前回よりいくらかフランクに話せましたね」

提督「ガンビアベイには礼を言っとかねえとな。それにしても、仁提督はビビりすぎだろ」

仁提督「仕方ないだろう! 俺は昔、あいつらに砲撃されてるんだからな!?」

仁提督「個人的な恨みがないわけでもないし……艦娘を使って間接的に恨みをぶつけてきた自覚もある」

提督「だったら島に行かなきゃ良かったじゃねえか」

仁提督「そんな真似ができるか! 少将だけ行かせて何かあったらどうする!」

提督「ぶっちゃけ護衛のために金剛だけ行かせても良かったろ。一番後ろで青い顔してたくせに」

仁提督「ほっとけ!」

与少将「そがいにからかってやるな。聞けば、あの島に漂着した艦娘の艤装も、みな焼失したんじゃろう?」

与少将「仁提督からは、演習と、沈んだ艦娘に手を合わせるために島へ行くと、何度か報告を受けちょったからのう」

提督「……ふーん」
946 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:34:32.27 ID:MAX3x8VTo

仁提督「まあ……自分が雪風たちを連れてこの島へ来るための口実に使ったところもあったが……」

仁提督「事情はともかく戦って沈んだことに変わりはない。最後に手を合わせておきたいと思うくらいはいいだろう?」

仁提督「俺がこの島に来る機会も、もうないと思っているからな」

仁金剛「ン−? そこは黒潮次第ではありまセンカ?」

仁提督「……」

仁金剛「ヘーイ、テイトクー? まーだ魔神提督に苦手意識持ってマスカー?」ズイ

提督「別に苦手でいいぞ? 俺自身、人間と関わる機会は減らしてもらったほうがいいと思ってる」

提督「普通の人間なら深海棲艦を恐れるだろうし、深海棲艦に生活圏を脅かされたなら憎いと思うのも当然だ」

提督「うちに来た深海棲艦にも、人間と関わりたくない、艦娘に攻撃されたくない、って奴がいるからな」

提督「そういう時ゃあ、お互い無理にお近づきになる必要はねえ。距離取って関わらないようにすりゃいいんだよ、こういうのは」

与少将「まさしく大人の対応じゃな……」

提督「普通だろ? 犬嫌いに犬を押し付けても、ろくなことにならねえのと一緒だ」

仁提督「確かにな。下手をすると、犬が怪我させられかねん」ウンウン

仁金剛「なんだか実感こもってますネー……」
947 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:35:17.45 ID:MAX3x8VTo

与少将「魔王と言うからもっと好戦的かと思っちょったが、思いのほか話せる男じゃな……」

仁金剛「イエース。ついでに少将ー? 魔王じゃなくて魔神デス、マジン提督デース」

与少将「んむ……ま、まあとりあえずじゃ、わしはこれから神戸に向かう。L少佐がどんな鉄火場を迎えちょるんか、見とかんとな」スマホトリダシ

与少将「それから部下にも事の次第を伝えにゃあならんし……時間だけ決めとくかのう」シャシャシャッ

提督「電話機でできるのか?」

仁提督「電話機……お前はスマホを知らんのか」

提督「ほぼ触ったことねえな」

X大佐「提督にもスマホを持ってもらったほうがいいかな?」

与少将「いや、まお……魔神提督が個人のスマホを持つのはもう少し先でいいと思うがのう?」

仁提督「便利だと思いますが……」

与少将「うんにゃ、この大事な時期に、魔神提督がスマホの説明書とにらめっこしちょる暇はないじゃろ」

与少将「使えるようになったらなったで、スマホいじりに夢中になってもらっても困るけえ」
948 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:36:01.07 ID:MAX3x8VTo

与少将「それに万が一、海軍内で魔神提督の連絡先が流出でもしたら、そこに電話が殺到するはずじゃ」

X大佐「……なるほど。L少佐の事務所と同じことになる、と」

与少将「じゃけえ、スマホでもガラケーでもピッチでも、持たせるにはもちっと余裕ができてからのほうが良えと思っちょる」

与少将「大淀あたりに持たせるんならええかもしれんが、それよか今は海軍の中に正式な窓口を設けたほうが良えじゃろ」

与少将「X大佐たちにとっても、魔神提督に接触を図りたい者が誰なのか、把握も管理もしやすくなるけえの」

X大佐「それが良いですね、承知しました。そのように取り計らいましょう」

与少将「魔神提督も、ひとまずそれで良いな?」

提督「ああ、その方が助かる」

仁提督「むしろ当分持たないほうがいいだろうな……」

仁提督「お前の場合、ただでさえ対応が面倒だと言いそうだし、電話口でどんな暴言をひり出すかわからん」ハァ…

提督「おう。よくわかってんじゃねえか」ニタァ

仁金剛「相変わらず悪い笑顔デース……」ヒキッ

与少将「……ほんに大丈夫なんじゃろな、この男」ヒキッ

X大佐「え、ええ、まあ、大丈夫ですよ。多分……」タラリ
949 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:36:46.20 ID:MAX3x8VTo

 * 本営 中将の執務室 *

H大将「結論から言えば、あの島は深海棲艦へ割譲する扱いになった」

H大将「提督は中佐として海軍を退役。戸籍や国籍の問題は残るが、そのまま島に残り、その島に住む深海棲艦をまとめてもらう運びとなる」

中将「不知火と赤城には、海軍の代表として、引き続き提督の応対とX大佐の補佐を頼みたい」

不知火「承知しました」

赤城「お任せください」

H大将「大井、俺たちはひとまずこの件から離れることになる。もし何か問題が発生すれば、まず北上に対応してもらうことになるだろう」

H大井「そうですか……わかりました」

中将「それから早速だが、政府から提督と面会したいとの申し出があった」

不知火「……!」

H大将「海軍を離れる提督たちとは、現在X大佐が主体となって対応してくれているわけだが……」

H大将「深海棲艦との話し合いができると聞いた各省庁が、我々に任せてほしいと口を挟んできたらしい」

赤城「それでは、提督少尉は今後、政府と対話を持つということになるのですか」

H大将「どうだろうな。まず、あの男が素直に政府との面会に応じてくれるかどうかがわからん」

H大将「それに俺たちと話した時ですらあの態度だ。国家間交渉の場でどんな物言いをするか……俺は落ち着いて見ていられる自信はないぞ」
950 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:37:31.31 ID:MAX3x8VTo

赤城「そうですか? 私は楽しみですよ。政府の要人が彼と話して、いったいどんな顔をするか……ふふふっ」ニヤリ

H大井「赤城さん!?」

中将「赤城は、彼らの話が友好的に終わるとは思っていないのだな?」

赤城「はい。正直に申し上げて、彼らの道理が深海棲艦に通用するかどうかがわかりかねます。私たちがそうなのですから」

H大井「……そう、そうなんですよね。私も心配なのはそこです」

H大井「これまでさんざん戦ってきた私たちだって、深海棲艦と話すとなったら、どう接したらいいかわからないっていうのに……」

H大井「政府は深海棲艦と話をして、なんらかの成果を得られる目算があるんでしょうか……?」

中将「儂はむしろ期待している。仮にも国家の外交のプロが赴くのだ、何らかの成果を出してくれると良いと思っているが」

H大井「そうだと良いんですが……なぜこのタイミングで政府が出てくるんでしょう」

H大将「それは、これ以上、制海権のことで海軍に大きな顔をさせたくないからだろうな」

H大将「深海棲艦の対応に関しては、政府どころかどこの国も、艦娘を統括する海軍に頼りっぱなしだ。そんな状況を打開したいんだろう」

H大将「残念ながら今の元帥も権威主義的なところがあるからな。間違っても『今の状況が続くと良い』なんて考えていなければいいんだが」

H大井「それで提督を政府サイドに引き込もうと……?」

H大将「深海棲艦と話し合うきっかけを作った人間が海軍から出ていくんだ。これ以上ないヘッドハントのチャンスだと考えているんだろう」

赤城「十分考えられますね。提督が応じるかどうかは甚だ疑問ですが」
951 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:38:15.89 ID:MAX3x8VTo

中将「不知火はどう思うかね」

不知火「……政府の話が、島にいる艦娘や深海棲艦にとって有益なもの、安全を確保できるものであるならば、司令は応じると思います」

不知火「しかし、皆さんが仰る通り、司令が政府の人間に対しどのような態度をとるかは、不知火も保証できません」

不知火「これまでも、ご自身や艦娘を意のままに操ろうとしたり抑圧しようとしたりする相手を、司令は様々な手段で返り討ちにしてきました」

不知火「いくら政府の人間と言えど、対応を誤れば、最悪の事態になるのではないかと推測します」

中将「ふむ……」

不知火「深海棲艦たちも、おそらくは司令と同じか、それ以上に気難しいと思っています」

不知火「あの島の深海棲艦は、自分たちから人間や艦娘に攻撃しないことを決めただけです」

不知火「彼女たちが認めた人間もおそらく司令だけで、司令以外の人間は敵であるという認識は変わっていないはず」

不知火「そして、彼女たちが人間を殺すことも躊躇しないでしょう。仮にそこに司令が同席していたとしても……」

不知火「話の内容によっては、制止することもしないでしょうし、最悪、司令自ら手を下すかもしれません」

中将「そこまでかね」

不知火「はい」

中将「うむ、よくわかった。となると、先方には慎重になるよう断りを入れるべきだな」ウナヅキ
952 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:39:01.18 ID:MAX3x8VTo

赤城「この話は、まだ提督には伝えていませんよね?」

H大将「ああ、まだだ。しかし、確認するまでもなく断りを入れるべきだろう」

中将「結論は出てしまったが、もうひとつ君たちに伝えておきたい情報がある」

中将「政府は、提督と交渉にあたる代表団のメンバーに、彼の弟を参加させるつもりでいるそうだ」

赤城「本当ですか……!?」

中将「うむ。兄と再会の喜びを分かち合いたい、ということだ」

不知火「それは……最悪ですね」

H大井「あの、恐れながら……中将閣下には、あの提督が家族とは絶縁したとご報告していたと思うのですが……」

中将「聞いているとも。日本にいる提督の家族とは、引き合わせるべきではないと言う話だったな。儂もそう思う」

中将「この点についても、政府へは通達しておく。さすがに政府も、虎の尾を踏ませるような真似はさせんだろう」

H大井「……なんだか嫌なフラグが立った気がするわ」ボソッ

中将「ん? どうかしたかね」

H大井「あ、いえ! なんでもありません、ウフフ……!」

中将「そうかね……?」

H大将「……大井、思っていてもそういうことは言うんじゃない。俺もそう思ったのは確かだが」アタマオサエ
953 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:39:46.28 ID:MAX3x8VTo

中将「それから、この件に関連して、H大将に謝罪せねばならん」

H大将「? 謝罪、とは……失礼ですが、なにをです?」

中将「儂の倅……大佐が、提督の身柄を海軍に引き渡す名目で、政治家である提督の親へ金を渡していたことについてだ」

H大将「それは……!」

中将「君たちが、その金が流れを調査し、証拠を掴めずにいることも承知している。息子が、本当に申し訳ない」

赤城「中将! それは中将のせいではありません。すべてはこの私が……」

中将「赤城。その責を負うのは君ではなく、大佐とその上官の儂でなければならん。そもそも君すら与り知らなかった件ではないか」

赤城「で、ですが、私は秘書艦です! それに、彼は父親であるあなたすら殺そうと……!」

中将「その父親が悪いから、寝首を掻かれかけたのだ。結局、儂は……あれの父親になりきれなかったということだ」

赤城「っ……!」

中将「この戦争を終わらせるには手段は問わん……そう言い訳してあれを甘やかし、影での悪事を見逃してきた結果である」

中将「妖精と話ができるという提督にも、手段を問わないという意味で、働きを期待しておったのだが……」

中将「結果として彼は海軍を離れた。ひとえに、儂の力不足だ」

赤城「……」
954 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:40:30.49 ID:MAX3x8VTo

不知火「中将。司令は中将に感謝しているはずです」

不知火「司令が提案した、轟沈した艦娘を運用する特例を認めてくださったのは、あなたではありませんか」

不知火「それがなければ、私も、司令も、如月も、今頃どうなっていたかわかりません」

赤城「……私も、そうですね。彼に救われたことが、何度あったことか」

赤城「中将も、結果的にですが提督に助けられたではありませんか」

中将「……」

H大井「あの、H提督? ちょっと言いづらいんですけど、大佐を罠にはめるために、提督が中将閣下を利用したという可能性は……」ヒソヒソ

H大将「それはわからん。どうなんだ不知火」

不知火「……それはあったかもしれませんが、そもそも大佐の企みを利用したからそうなったと、不知火は考えています」

不知火「大佐を油断させ、慢心させてその足元をすくう……そのために司令は中将も欺いたのでしょう」

赤城「私ですらひどい目に遭いましたしね……」フフッ

中将「……」

H大将「……あの男は攻撃的な印象があるが、考えなしのバーサーカーと言うわけでもない」

H大将「お互いの思惑の合致による協力、と言う意味では、提督と大佐の間でも成り立っていた部分はあったらしいからな」

不知火「はい。提督は、大佐が提督を他人と接触させないように離島へ隔離させたのは、結果的に都合が良かったと言っていました」
955 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:41:16.17 ID:MAX3x8VTo

中将「……思惑か」

中将「提督の……彼の望みは、艦娘と深海棲艦が人間に頼らず安心して暮らせる場所、だったな?」

H大将「はい」

中将「おそらく政府は、海軍任せの現状を打開すべく、世界の混乱の原因になっている深海棲艦との条約締結を目指しているのだろう」

中将「しかし、提督にしてみれば、そんなことは知ったことではない。なぜなら彼らは、深海棲艦と言う種族の一部でしかないからだ」

中将「人間が多くの国に分かれて暮らしているのと同じだ。政府には、それをゆめゆめ忘れぬよう、釘をさしておく必要があるな」

H大将「そうですね。話し合いの場を設けた、程度の認識が適切でしょう」

中将「では、この件については儂がX大佐と協力して対応しよう」

不知火「中将、関連して一つご報告したいことがございます」

中将「? なにかね」

不知火「中将は、与少将と、呉の和中将をご存知でしょうか」

 * * *

 * *

 *
956 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:42:01.26 ID:MAX3x8VTo

 * 数日後 *

 * 墓場島鎮守府 執務室 *

提督「机、もう少しこっちに寄せてもらっていいか? あと2センチくらい」

大和「こんな感じでしょうか?」グッ

提督「……うん、いいんじゃねえかな。曲がってねえよな?」

榛名「はい、大丈夫です!」

ル級「ソファハ、コノ辺デイイノカ?」

提督「ああ、もう少し後ろに下げていいぞ。それだとテーブル近すぎて、足がぶつからねえか?」

タ級「コノクライカ!」

提督「座って確かめてみてくれよ。狭いか遠いか、丁度いいくらいに調整してくれ」

カトリーナ「キャビネットはここでいいのか?」

提督「おう、いいぞ。思ったよりスペースが余ったな」

オリヴィア「いいんじゃないか? ここに神殿のドアを出しておくつもりなんだろう?」

吹雪「司令官! 新しい椅子を持ってきました!」

イブキ「筆記具とかも持ってきたぞ!」

提督「お、やっときたか。んじゃこっちに……」
957 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:42:46.46 ID:MAX3x8VTo

如月「電気ポットとティーセットも持ってきたわ!」

アマナ「タオルと布巾もお持ちしました!」

軽巡棲姫「コーヒーメーカーモ持ッテキタワ」

タ級「ココデモコーヒー飲メルノカ!?」キラーン!

提督「俺は別に水でいいんだけどな……」

扶桑「私は冷蔵庫をお持ちしました。自動製氷だそうですよ」

提督「個人的に一番うれしいのが来た」キラッ

如月「そうなの?」

提督「氷作るの地味に面倒臭えんだよ……とりあえずその茶道具は全部そっちの給湯室においてくれ」

如月「はーい」

提督「……ふう。やっと執務室が執務室らしくなってきたな」

カトリーナ「家具が入っても結構広々としてんなあ。ハンマー持ち歩いても余裕だし!」

提督「艦娘や深海棲艦の艤装がでかいからな。それを踏まえて、泊地棲姫がタチアナと相談して広めに作ったらしい」

榛名「これだけ人がいて狭く感じないなんて、すごいですよね!」
958 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:43:31.09 ID:MAX3x8VTo

提督「まあ、それはいいんだけどよ。なんでこんなに搬入に時間がかかったんだ?」

如月「それは、調度品をいろいろ選んでいたらすごーく悩んじゃっただけよ?」

提督「じゃあ、寝室のベッドの搬入がくそ早かったのはなんでなんだよ」

如月「それは司令官の体が大事だからじゃないかしら」

大和「最重要事項ですよ?」

榛名「榛名もそう思います!」

ル級「寝床ハ大事ダゾ?」

提督「ル級まで言うのかよ」

ル級「泊地棲姫ガ力説シテタシ、私モ経験済ミダカラネ」フフッ

軽巡棲姫「デ、イツカラ寝ルノ? 一緒ニ寝テアゲルワヨォ……?」ニヤァ

扶桑「提督との同衾は、ちゃんと順番が決まっていますから、日程は確認してくださいね?」

提督(決まってんのかよ……)シロメ

カトリーナ(アニキが白目むいてる……)タラリ
959 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:44:16.63 ID:MAX3x8VTo

朧「提督、海軍から預かった資料を持ってきました。これでこっちの荷物は全部です!」

陸奥「提督、終わったらこっちも手伝ってもらえるかしら」

提督「ん? ああ、わかった。資料は後で目を通す、こっちは任せて大丈夫か?」

大和「はい、お任せください! あとは搬入で出たごみをまとめるだけですから!」

アマナ「お掃除なら任せてください!」キラキラッ

ル級「瞳ガ輝イテルナ……」

提督「アマナがやる気ならこの場は任せるか。どこ手伝えばいい?」

陸奥「それじゃ、一緒に食堂に行ってもらえるかしら」スタスタ…

カトリーナ「そんじゃあ、あたしも余所の搬入を手伝ってくるかあ」

オリヴィア「アタイもそうしようかね」ノッシノッシ

タ級「……メディウムノ奴ラッテ、意外トパワータイプガ少ナインダヨナ」

イブキ「そうだなあ、純粋な腕っぷし自慢だと、さっきの二人と、コーネリアとグローディスくらいかな?」

吹雪「どうしてそのコーネリアさんたちは来てないんですか?」

イブキ「コーネリアは戦闘狂だからなあ……」

吹雪「うわー、そういう……」

タ級「戦闘以外ニ興味ガナイタイプカ」
960 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:45:01.33 ID:MAX3x8VTo

アマナ「こういった家事全般を積極的に手伝うかと言われたら、グローディスさんはともかくコーネリアさんは来ないでしょうね」

イブキ「グローディスも、そのコーネリアにしょっちゅう勝負吹っ掛けられてるし。良くも悪くもいい勝負すんだよな」

扶桑「……そういえば、深海棲艦も普段は何をしているの?」

タ級「……」

ル級「ソウイエバ、私タチモ、戦ウ以外ハ、ナニモシテイナイワネ」ウフフ

タ級「……アトハ、補給デキル場所ヲ確保スルクライカ? ソレガ時間ガカカルノヨ」ウーン

吹雪「遠征任務みたいな感じですかね?」

大和「そうかもしれないわね」

タ級「コレマデ、『ヒト』ノヨウニ椅子ニ座ッテ、コーヒーヲ飲ムヨウナコトハ、ナカッタカラ……」

タ級「今ノ暮ラシガ、新鮮デワクワクスル、トイウノハ、アルナ」

榛名「なるほど……ずっと海中や海上だと、くつろぐこともできなかったと」

タ級「独自ノ拠点ヲ持ッテタ泊地棲姫ハ、コウイウ暮ラシニ、ソレナリニ慣レテルミタイダケド」ソファニスワリ

タ級「……オォ、コノソファ、柔ラカイナ」ポヨンポヨン

タ級「ル級ハ、一足先ニ、コンナ生活シテタノカ? ズルイナ、オ前」ニヤッ

ル級「アラ、私ガイナカッタラ、コンナ生活デキナカッタワヨ?」ニヤッ

タ級「言イ方ガズルイゾ、オ前」ククッ

吹雪「……なんだか、楽しくなりそうですね!」ニコニコ

如月「そうねえ」ニコニコ
961 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/06/04(日) 22:46:06.53 ID:MAX3x8VTo
今回はここまで。
次スレを立てるときは連絡します。
962 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/06/12(月) 02:16:54.48 ID:9L42fznR0
おつおつ。
うわー政府、そう出るかぁ…こりゃ下手したらってかほぼ確実に弟死ぬだろ。敵、というか、提督に関わろうとする奴らはつくづく地雷を踏むなぁ…。
963 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/07/20(木) 23:46:33.49 ID:E2wV6OqPo
>962
基本、提督のことを舐めてかかってる人が多いと思ってください。
というより、まともな人なら、こんな境遇の相手に関わろうとも思わないし
そもそも関わる機会自体ないのかもしれないですが……。

というわけでお待たせしました、ほんの少しだけ続きです。
きりのいいところまで書いて次スレに移りたいので……。
964 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/07/20(木) 23:47:49.19 ID:E2wV6OqPo

 * 食堂 *

提督「食堂から、直接外に出る出入口作ってどうすんのかと思ったけどよ……」

電「ウッドデッキとオープンテラスなのです! とってもおしゃれなのです!」ワーイ!

提督「良く作ったな、こんなの」

電「このために木材が届くのを待っていたって泊地棲姫さんが言ってたのです!」

陸奥「こうなると景観が大事だからって、メディウムも張り切ってるのよ。ほら、この奥の水路の対岸にも花壇を作ってて……」

提督「ありゃあ、タチアナとニーナか? あいつらが花壇の手入れしてんのか」

電「さっきまでミュゼさんもいたんですが、持ってたテツクマデをどこかにおいてきたらしくて、まだ戻ってきてないのです」

提督「なにやってんだあいつは……」

スズカ「おー、魔神くんきよったんか! 見てみい、綺麗じゃろ? 新しい厨房!」

セレスティア「一応、機材搬入は済ませましたが、シェフ長の比叡さんが不在ですので、かつての厨房の記憶をたどって配置しています」

提督「ふーん……まあ、大丈夫じゃねえか? だいたい似たような配置になってると思うぞ」

セレスティア「そうでしたか。では、これで配線してしまいましょう」

提督「比叡の個人持ちの道具はまだ医療船にあるから、あとで持ってきてもらえばいいな。そういや保冷庫も使えんのか?」

 厨房の奥の扉<ガチャッ

明石「うう、さっぶい!」
965 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/07/20(木) 23:48:48.67 ID:E2wV6OqPo

ヒサメ「そうかのう? まぁだ、ぬくいと思うんじゃが?」

提督「明石? 工廠にいたんじゃないのか」

明石「工廠の整頓はとっくに済ませましたよ。今は保冷庫の整備に来たんです」

明石「ヒサメさんのせいで、もう保冷庫って言うより冷蔵庫ですけど!」

ヒサメ「もうちょっと冷たくなれば快適じゃ♪」

スズカ「おいおい、ここはヒサメの部屋じゃのうて、食い物の保管場所じゃからな?」

セレスティア「つまみ食いしないようにしてくださいね」

ヒサメ「心配せんでも、そんなさもしい真似はせぬわえ。さっきまでそこにおった悪い見本にこそ、その説教は必要じゃろうて」

セレスティア「……確かに、しょっちゅう足がもつれて転んでいるけれど」

電「もしかしてマーガレットさんですか……」

ヒサメ「そうじゃ。パティシエだからと洋菓子ばかりこさえて、そのたびに自分で平らげておっては、当然の帰結じゃ」

提督「最悪すぎる地産地消だな。で、そのマーガレットはどこに行ったんだ」

セレスティア「今頃危機感を持ったのか、走り込みに行きました」

提督「それ、今やる話かよ……」アタマオサエ

電「今頃テツクマデを踏んづけていそうなのです」

提督「くっそ、目に浮かぶな。あ、そういや、こっちに深海棲艦は来てないのか?」
966 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/07/20(木) 23:49:37.97 ID:E2wV6OqPo

電「数人のヲ級さんたちが、厨房を外から興味深そうに眺めていたのですが、どこかに行ってしまったのです」

陸奥「物珍しそうに見てたわよ。椅子や机を運び入れるところは手伝ってたけど、厨房の配置はメディウムに任せてたみたい」

提督「ふーん……この前、ヲ級の一人と話したんだが、深海には調理の概念すらなかったって言ってたんだよな」

スズカ「そうなん? 声かけてくれりゃあウチが教えたったのに!」

電「今は今で、花壇を見に来た深海棲艦がいっぱい集まってるのです……!」

陸奥「花が珍しいのかしら。駆逐艦が集まってて水路が渋滞してるわ」

ヒサメ「ここであの水路を凍らせたら面白そうじゃのう?」ニマァ

提督「やめとけ」ジロリ

ヒサメ「冗談じゃ。おまえさまは毎度毎度、冗談が通じぬのう」ニマニマ

電「……」

陸奥「電ちゃん? どうしたの?」

電「沈んだ敵も助けたい、と思っていたのですけれど……」

電「沈んでなくても、深海棲艦と分かり合えそうな雰囲気がしてきて、ちょっとだけ……嬉しいなって、思うのです……!」

陸奥「フフ、そうね……!」ニコ

提督「……」
967 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/07/20(木) 23:51:26.52 ID:E2wV6OqPo
というわけで本当に短いですが今回はここまで。

次スレ準備できたらお知らせします。
968 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2023/07/22(土) 19:49:21.92 ID:8YcaGZNqo
次スレを立てました。
こちらでもよろしくお願い致します。

【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その3だよ」【×影牢】
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1690021595/
846.03 KB Speed:0.4   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)