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【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その2だよ」【×影牢】

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607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/11(火) 15:15:33.81 ID:Ktr4r0zy0
乙です。このシリーズ死ぬほど好き
608 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:29:47.32 ID:0D02rL2Vo
刹那五月雨撃ち

続きです。
609 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:30:47.03 ID:0D02rL2Vo

 * 墓場島沖 洋上 *

 ザザーン…

(提督を艤装の上に乗せた大和と艦娘の一団が、島に向かって航行している)

霞「勝手に抜け出してきたけど、大丈夫なのかしら……」

明石「心配なら、霞ちゃんだけ戻る?」

霞「わ、私は朝潮姉や明石さんのほうが心配よ!?」

提督「まあ、不知火に言伝を頼んだし、あいつらが俺たちを攻撃するような真似もしないだろう」

如月「司令官のお世話をしてた看護師さんも、本営から来た船医さんが暴走気味だから気をつけて、なんて言ってきたものね……」

提督「あの野郎、まじめに俺を解剖するつもりだったのかね」

大和「あぶないところだったかもしれませんね?」

明石「あの看護師さんの立場が悪くなってないといいですけどね……」

提督「……」

明石「あ、メディウム使って船医さんに何かしようとか考えないでくださいよ!?」

提督「なんだ、駄目か」
610 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:31:32.81 ID:0D02rL2Vo

明石「駄目ですよ! あの人、看護師なんですから! 怪我人出したら、悲しむのも忙しくなるのもあの人ですよ!?」

提督「しょうがねえな……」

朧「というか、提督に手を出した時点でニコちゃんたちが黙ってないと思うんだけど」

榛名「それを考慮しても、今後も検査はお断りしたほうがよろしいでしょうね」

那珂「そのほうがいいね〜」

提督「……ああ」チラッ

如月「どうしたの司令官?」

提督「……ちょっと人数多すぎねえか?」

如月「それはまあ……そうねぇ……」

長門「……いま提督がこちらを見たな」

伊8「やっぱり、人数多すぎだって思ってるんじゃないですかね?」(←長門の艤装に乗っかり)

金剛「Hey, 長門! 島に行くということは、あなたは島に残るつもりデスカ!?」

長門「いいや、そこはまだ決めていない。金剛は残るつもりなのか?」

金剛「私は残るつもりでいマース!」

長門「……そうか。それはそれで構わないが」チラッ
611 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:32:31.83 ID:0D02rL2Vo

由良「……」チラッ

電「……」チラッ

敷波「……? なんか、みんなあたしを見てる?」

長門「ああ。敷波、お前も島に残るのか?」

敷波「うん。残るつもりだよ?」

由良「……!」ビックリ

電「……!」ビックリ

敷波「あ、何その顔。もしかしてあたしだけ余所に行くと思ってたの?」

電「そ、それは……」

由良「だ、だって、轟沈してないし……」

敷波「ふーん」

伊8「初雪ちゃんも残るって言うし、その辺は自由でいいんじゃない?」

初雪「うん……」コク

敷波「そうだよー、ほら、大淀さんも追いかけてきてるしさ?」ユビサシ

大淀「!?」ギクッ!

伊8「なんで離れてついてきてるんですかねえ……」

敷波(大淀さんもなんていうか、意外と臆病なんだよね。わかるけどさ)

吹雪「司令官! 建物が見えてきましたよ!!」

提督「!」

朧「……近くで見ると、本当に岩だらけですね」

提督「そうだな……」

612 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:33:17.49 ID:0D02rL2Vo

 * 島の東岸 *

提督「すげえな……この辺りはほぼ元通りじゃねえか?」

大和「この辺りも溶岩で覆われていたはずなのですが……全部綺麗に取り払われてますね」

如月「むしろ前よりも綺麗になってる気がするわ」

榛名「提督! あそこにニコさんが!」

朧「ル級さんたちもいますね」

 *

ニコ「やっと来てくれた……遅いんだから、もう」

泊地棲姫「ル級ノ言ッタ通リ、余計ナ奴ラモ、大勢連レテ来タナ」

ル級「……ソレ、提督ガ聞イタラ、怒ルワヨ?」

軽巡棲姫「アア……提督……!」ソワソワ

 ザザザァ…

大和「提督、到着いたしました!」ヒョイッ

提督「うおっ……と、ありがとな、大和」ストン

軽巡棲姫「提督!!」タタタッ
613 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:34:01.57 ID:0D02rL2Vo

軽巡棲姫「アア……提督、会イタカッタ……!」ヒシッ

提督「おお、いきなりだな……わざわざ出迎えてくれるなんて、悪いな」ナデナデ

泊地棲姫「フ……光栄ニ思エ」

軽巡棲姫「……♪」スリスリ

ニコ「……」ジト…

泊地棲姫「イツマデ、クッツイテル」グイ

軽巡棲姫「……何ヲスル」ピキッ

泊地棲姫「コノ男ハ、私ト話ヲシニ来タノダ」

ニコ「違うよ。魔神様は、ぼくに逢いに来てくれたんだよ」ニコニコ

軽巡棲姫「……」ピキキッ

泊地棲姫「……」イラッ

ニコ「……」フンッ

 火花< バチバチバチ…

提督「……」

ル級「アノ3人ハ放ッテオクトシテ。提督ハ、体ハ大丈夫ナノ?」
614 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:34:47.02 ID:0D02rL2Vo

提督「ん−……いまいち本調子とは言えねえが、そんなことよりお前たちや、この島がどうなったかのほうが気になってな」

ル級「ソウカ」ニコ

如月「ねえ、ル級さん? ちょっと気になったんだけど……」

如月「この港といい、ここから見える白い建物といい、その見た目とかが以前とそっくりなのよね」

提督「如月もそう思うか?」

ル級「ソレハソウダ。前ノ鎮守府ノ建物ヲ真似テ作ッタンダカラ」

提督「マジか。けど、なんでわざわざそんなことを?」

ル級「最初ハ、泊地棲姫ガ自分ノ思ウママニ作ロウトシテイタノ」

ル級「デモ、アノ船ノ話シ合イデ、提督ガ今後執務シヤスイヨウニ……ト考エルト、前ノ建物ノ間取リガ丁度良イコトニ気付イテネ」

ル級「私ヤ、メディウムタチノ記憶ヲ頼リニ、作リ直スコトニナッタノヨ」

大和「それで、違和感をあまり覚えなかったんですね……!」

提督「とはいえ、この港は以前とは比べ物にならないくらい綺麗だな。それに、少し広くなってないか?」

ル級「ソコハ私タチモ使イヤスイヨウニ直シテイル」

提督「前の鎮守府と同じでリサイズもして、か……そうだとしたらありがたいな。もしかして、ドックとか食堂とかも同じなのか?」

ル級「ドックモ拡張シテイル。食堂モソウダガ、マダ作リカケダ」

明石「ドックができてるんですか!?」
615 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:35:31.65 ID:0D02rL2Vo

ル級「明石モ来テイタノカ。見テモラエルト助カル。厨房ヤ共同ノ風呂モ設計中ダカラ、見テホシイ」

比叡「厨房もできるんですか!?」ワクワク!

那珂「ステージはあるの!?」キラーン!

初雪「……あと、畑も作ってほしい……!」ソワソワ

伊8「お風呂も気になります……!」

ル級「ソレカラ、今後コノ島ヲ訪レル人間タチヲ招キ入レル、館モ作ル予定ダ」

提督「ああ……なるほど。島の役割としちゃあ、そりゃ必要だな」

ル級「案内シヨウ。コンナニ大人数デ来ルトハ思ッテナカッタガ……」

 <ダーーーーリーーーーーーン!

提督「うん?」

キャロライン「ダーーーリーーーーン!!」トテテテッ

ミュゼ「ま、待ってえぇぇ!」ゼェゼェ

タチアナ「な、なんで、下駄と着物であんなに速く……」ハァハァ

ソニア(あの2人の足が遅いだけなんだけどなあ)タッタッタッ
616 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:36:16.88 ID:0D02rL2Vo

提督「おう、キャロラインか。ちょっとしか離れてねえはずだけど、なんだか久し振りだな」ナデナデ

キャロライン「エヘヘー、ダーリンの新しいおうち、作るの手伝ってるノ!」ニパー

ソニア「あっ、ずるーい! あたしも手伝ってるしー!」

提督「ソニアもか。ありがとな」ナデナデ

ソニア「えへへ……」ニコニコ

ミュゼ「ぜぇ、はぁ……あ゛ー、疲れたぁぁ……ご主人様、来るなら来ると連絡してくださいよ〜。まだお掃除終わってないんですから!」

キャロライン「あれ、お掃除だったノ? お掃除してるのか散らかしてるのか、わからなかったヨ?」

ミュゼ「!?」

ソニア「だよねー、それでよくテツクマデをどこかに置き忘れてきちゃうし」

ミュゼ「そ、そそっそ、そんなことありませんー! 今回はちゃんと持ってきてますー!」

提督(今回は、か……)

タチアナ「そ、それで、魔神様は本日はどうして急にこちらに?」

提督「単純にお前らの顔を見に来たのと、こっちの整地を始めてるって言うから、その様子を見に来たんだ」

タチアナ「そうでしたか……! ご足労いただきありがとうございます」
617 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:37:01.51 ID:0D02rL2Vo

提督「この辺りも溶岩に包まれていたはずだが、よくここまで作り直せたな?」

タチアナ「それはそちらの泊地棲姫の力ですね。名の通り泊地を作る能力を備えておりまして……」

タチアナ「彼女の力と深海の謎のテクノロジーによって、溶岩から軽量かつ頑丈な石壁を生成しております」

タチアナ「それらを特殊な工法で組み上げることで大幅な工数減を実現し、ただいま驚異的な速度で復旧しております」メガネクイッ

提督「よくわかんねえが、すげえことやってんだな」

タチアナ「ただ、木材だけは調達できませんので、それらを使用しない箇所を中心に工事を進めております」

提督「木材以外にも不足してるものはあるだろ? 発電機だったり、食堂の設備や食器類だったり……」

提督「そういった外から買う必要のある不足品を調べに来たってのも、今回の目的だ」

タチアナ「……ま、魔神様直々に選定なさるのですか!?」

提督「ああ。つうか、なんでそんなにショック受けてんだ?」

ソニア「それはタチアナが設計に携わってるからだよー」

提督「そういうことか。そこまで緊張すんな、小姑みたいなつまんねーケチをつけるつもりはねえからよ」

提督「とにかく工廠あたりから見に行くか。案内頼めるか?」

タチアナ「はい、お任せを。ル級さんも同行していただけますか」

ル級「エエ、ソノツモリヨ」
618 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:37:46.45 ID:0D02rL2Vo

キャロライン「ダーリン、一緒に回るネ!」ミギテツナイデ

ソニア「私も一緒に行くね!」ヒダリテツナイデ

如月「あらら……先を越されちゃったわ」

大和「越されちゃいましたね」フフッ

金剛「Holy shit !!」グォォ!

長門「ちびっこ相手にむきになるな、大人げない」

キャロライン「コンゴーも一緒にお手々繋ぐ?」ミギテサシダシ

金剛「Um...Charrolline、まずはその右手の剣山を外してくだサイ……」

キャロライン「オーゥ、ソーリーネ」ゴソゴソ

明石「新しい工廠かあ〜、楽しみ〜!」ワクワク

朝潮「明石さんが元気になってる……」

霞「まあ、良かったんじゃない?」

長門「おい、お前たちも仲違いしている場合じゃないぞ?」

軽巡棲姫「!?」

泊地棲姫「イツノ間ニ!?」

ニコ「ま、待ってよー!?」
619 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:39:16.57 ID:0D02rL2Vo

 * 島から帰船して *

 * 墓場島沖 医療船内 *

H大将「あの男は医者の言うことも聞かずに何を勝手な真似をしているんだ……!」

朧「その軍医さんですが、本当に提督の体を心配しているんでしょうか?」

H大将「なに?」

朧「提督が、治療に関係のない検査が多すぎるって、訝しんでましたよ」

朧「提督を看ていた看護師さんも、心配して如月に声をかけてきたくらいですし」

H大将「……」

朧「それに、島に移住しようとしている深海棲艦だって、いつまでも提督が船から降りてこなかったら心配します」

朧「痺れを切らして船が攻撃されたりでもしたら……」

H大将「わかったわかった。朧君の言うことも一理ある。しかしだ、せめて行くなら行くと事前に連絡しろ」

H大将「この船の乗組員に混乱を招いたり、本営の反対派を刺激したりするような真似はよせと言っているんだ」

朧「……わかりました、すみません」

H大将「とにかく、本営から来たあの軍医が、提督に悪い意味で興味を持ち始めたということだな?」

朧「そうですね。そのうち提督を解剖させろと言ってくるんじゃないか、とも言ってました」

朧「なので、この船での治療も終わりにしたいと言っています」

H大将「まったく……本営も余計なことをしてくれたものだ」

朧「それから、これからの島の出入りについて、提案があるんですが……」
620 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:40:16.78 ID:0D02rL2Vo

 * 同医療船内 *

 カリカリ…

提督「よし。こんなところか。やっぱ見に行って正解だった」フー

大淀「提督、朧さんはどちらへ?」

提督「H大将んところへ報告させに行った。ついでに、島への出入りの条件についても決めるように伝えてもらってる」

提督「でだ、大淀は輸入とか貿易の話は詳しいのか?」

大淀「え? ええ、一応は」

提督「発電機やユンボみたいな大型機材とかを島に持ち込むのに、非該当証明書とか面倒な手続きが多くてよ……」

提督「欲しいものリストは作ったが、それを軍事目的には使いませんとか、逐一書面に起こさねえと駄目なんだと」

大淀「これまでは最初から軍事的な作業で使うということで、特例扱いで簡略化していましたから、それは仕方ありませんね」

大淀「もう一つ心配なのは財源ですが……」

提督「それはもう、最初はタチアナの言ってたアレを使うしかねえだろうよ」

大淀「……やはりそうなりますか……」ウーン
621 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:41:14.27 ID:0D02rL2Vo
短いですが、今回はここまで。
622 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:04:00.00 ID:pdfJKJ4Go
続きです。
623 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:04:49.56 ID:pdfJKJ4Go

 * 医療船内 小会議室 *

提督「……というわけで、この鎮守府に滞在したことのある艦娘を、島に入るときに同行させてもらいたい」

X中佐「なるほど。信用できる人間の安全を確保する方法としては、至極わかりやすいね」

大淀「X中佐には軽巡洋艦川内と駆逐艦暁。H大将にはこちらにいる……」

北上「重雷装巡洋艦、北上様だよー」

大淀「……それから、駆逐艦霰と満潮を移籍させていただきたいと考えています」

X中佐「暁たちは、響が探していたI提督時代の仲間だね。そういうことなら歓迎させてもらうよ」

H大将「……」

北上「ありゃ。なんかあたし、歓迎されてない?」

H大将「そういう意味じゃない。単純に、島に上陸するための条件としては、かなり厳しいなと思っただけだ」

朧「そんなに厳しいですか?」

H大将「俺はそう思う。やはり、そこまでしないと人間は信用されないのか?」

提督「できねえだろうな。例えば軽巡棲姫を説得できると思うか?」

H大将「弾丸にされた深海棲艦か? それは貴様にしか無理だろう」
624 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:05:32.77 ID:pdfJKJ4Go

H大将「それよりその条件では、将来的に貴様の艦娘が大忙しになるんじゃないか? 少尉の部下の艦娘はそこまで数が多くないだろう?」

提督「? そんなに何度も頻繁に来るつもりでいるのか?」

H大将「そうじゃない。これから各国の代表がこぞってこの島に来ることになれば、その分だけ艦娘が必要に……」

提督「待て待て、気が早えよ。今はまだ『日本の海軍』と『深海棲艦の一部の勢力』の話し合いの場ができただけだ」

提督「是が非でも成功させる気でいるんだろうが、俺はそこまで簡単に話が進むとは思ってねえぞ」

X中佐「少尉は深海棲艦たちと仲が良いんじゃないのかい?」

提督「俺たちが以前から交流していたのはル級一人だけだ。それもあくまで個人的にだぞ」

提督「いきなり見知らぬ深海棲艦呼びつけて、お前ら仲良くしろなんて言って聞かせられるような力はねえんだぞ?」

X中佐「泊地棲姫とはどうなんだ?」

提督「あいつとも割と最近の関係だ。大佐が泊地棲姫に喧嘩を売って、泊地棲姫を使って俺と中将を謀殺しようとしたとき初めて接触したんだ」

H大将「そうなのか……? 俺たちは、それ以前から泊地棲姫とお前に関係があって、大佐を挟み撃ちにしたとも考えていたんだが」

提督「あー、そこから説明がいるのか。まず、泊地棲姫が島に攻めてきたのは、大佐のせいだ」

提督「大佐の部下が艦娘に、泊地棲姫の塒を荒らすだけ荒らして、墓場島へ引き上げて誘導しろ、と指示したんだとよ」

提督「俺の艦隊を泊地棲姫にぶつけて、島の中が手薄になったところで、戦渦に巻き込まれた形で俺と中将を暗殺する算段だったらしい」

X中佐「……泊地棲姫を挑発して、その敵意を墓場島に向けさせたわけか」
625 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:06:17.42 ID:pdfJKJ4Go

提督「信じられないなら、中将のところの赤城や加賀たち航空部隊や、うちの名取、弥生、初霜あたりに話を聞いてくれ」

提督「名取たちは、大佐の部下だったB提督の元部下で、泊地棲姫の塒に特攻させられた当事者だからな」

北上「そこはあたしも証言できるよ。A提督の計画書見つけたり、名取たちが墓場島へ逃げてるところを助けたりしてるからね」

提督「俺たちが泊地棲姫の軍勢を追っ払えたのも、半分以上はメディウムに頼ったおかげなところもある」

朧「まともにぶつかってたら、物量に押されて息切れしてたと思います」

H大将「……追い払ってから、またお前が会ったのか?」

提督「ああ。とりあえず、順を追って説明すると……」

提督「初めて俺があいつに会ったのは……確か、俺が大佐に軽巡棲姫の弾丸で撃たれて死んで、深海棲艦化して……」

X中佐「え?」

提督「海の上走って、元凶の大佐の身柄を泊地棲姫に引き渡した時だな?」

朧「ですね」

H大将「……」

提督「で、そのあと、泊地棲姫が島に出向いてきて、俺に深海に来ないかって誘われて……」

提督「お詫びみたいな感じで、泊地棲姫が鹵獲してた初霜を引き渡してもらって、それからしばらくは島の洞窟に住んでたんだよな?」
626 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:07:01.68 ID:pdfJKJ4Go

朧「そうでしたね」

X中佐「……」

H大将「……」

北上「いやー、すごいことやってるよね。正直、いま聞いても何言ってるかよくわかんないし、事実なら事実でドン引きするよね〜」

H大将「ああ……その話、本当なんだな?」

大淀「事実です。提督が大佐に撃たれて脈が取れなくなったときや、後に深海棲艦化して海へ出たときは、私がその場にいて確認しました」

朧「朧も海上で深海棲艦化してる提督を見ましたし、それからしばらくして泊地棲姫が初霜を連れてきていたところも見ています」

提督「ああ、泊地棲姫がこっちに来た時は、朧もいたんだっけか」

朧「はい。確か、初霜が裸にリボンぐるぐる巻きにされてましたよね?」

X中佐「ぶっ!!」

提督「……それ、言わなかったほうが良かったんじゃねえか? 初霜の名誉のためにも」

北上「いったいどんな格好させられてたのさ……」

朧「えっと、後ろ手に縛られて、脚はこう、がばーっと……」

X中佐「言わなくていいよ!?」
627 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:07:46.64 ID:pdfJKJ4Go

H大将「それより、お前が深海棲艦化したというが、どうやって人間に戻ったんだ」

提督「深海棲艦化できたのは、俺の体に弾丸が埋まっていた間だけだ」

提督「生き返って身体が元通りになりかけた時、傷も塞がって、胸の奥に埋まっていた弾丸が体の外側に出てきて……」

提督「それを取ったら、深海棲艦の力が抜けていった、って感じだな」

H大将「弾丸になっていた軽巡棲姫が力を貸していた、と解釈できるわけか。聞けば聞くほどすさまじい話だな……」

H大将「もうひとつ訊こう。少尉、泊地棲姫がお前を深海に誘ってきた理由はなんだ?」

提督「理由? 理由……そういやその辺は全然聞いてなかったな」

提督「深海棲艦化して海の上を走って泊地棲姫と遭遇してたから、単純に俺を仲間だと認識したからだと思うが……?」

大淀「チッ……この朴念仁が」ボソッ

朧「!?」

提督「!?」

H大将「……」

北上(心の声がだだ洩れだねえ……)

H大将「まあ……なるほど、よくわかった。泊地棲姫の態度からして、薄々……いや、多分そうではないかと思っていたが」

朧「多分、そうですね……」
628 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:08:34.49 ID:pdfJKJ4Go

H大将「……質問を続けよう。大佐の部下はどうしたんだ」

提督「俺がメディウムに指示して全員を始末させた」

X中佐「……!!」

H大将「貴様がやったと?」

提督「ああ。あの日、俺とメディウムが丘の上でやって見せたように、全員、嬲り殺した。艦娘たちには手を出させていない」

X中佐「……」

H大将「……」

北上「それ。あたしは、すこーし、すっきりしたけどね」

X中佐「な……!?」

北上「あたしの前の司令官だったA提督はさ、金のために自分の艦娘に裏帳簿作らせて、用が済んだら雷撃処分するような男でさ」

H大将「……」

北上「で、その不正を手伝わされてたのが明石。あたしたちに欠陥品を装備させる、とか言って引きずり込んだらしいんだ」

北上「あたしは、その明石と一緒に魚雷の開発をしてたくらいには仲が良かったんだけど……」

北上「よりによってあいつはあたしに明石を雷撃させたのよ。丁度、重雷装巡洋艦に改装した直後だったせいでねえ」

北上「明石の置手紙であいつの不正をあたしが知ったのは雷撃処分の前日。どっちみち、あたしは明石を助けられなかった」
629 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:09:16.91 ID:pdfJKJ4Go

北上「どうしようもないから、明石と一緒に作った失敗作の魚雷で、明石を沈んだように見せかけるしかなくて」

北上「間違って直撃しないように調整しながら、ばんばん撃ちまくって明石が処分されたように思わせて。でも結局、明石とはそれっきり」

提督「……」

北上「そのあとはA提督があたしを怖がっちゃってね。あたしが友達相手でも容赦しなかったって思ったんだろうねえ」フフッ

北上「それ以来、A提督の直接の指揮から外れてさ。霰と満潮と一緒に、愚連隊じゃないけど、支援艦隊みたいなことをしてたわけよ」

北上「そのおかげで……いつだったか、中将の暗殺なんて物騒な計画書を見つけて」

北上「決行日に墓場島へ行ったら、めちゃくちゃ深海棲艦がいて。あたしが雷撃したあの明石たちがいて……」

北上「ちょうど、A提督がメディウムたちに始末されるとこだったんだよね」

X中佐「……」

北上「まあ、そういうわけなんで、これでも提督には感謝してるんだ。明石と再会できたし、あたしがA提督を撃たなくて済んだし」

H大将「……少なからず問題のある提督たちだったと?」

朧「そう、ですね。潮も、あの中の一人が大嫌いだった、って言ってました」

提督「潮はくっそ凶悪なセクハラされてたからな。内容は吐き気と頭痛がするから言わねえぞ」

H大将「そうか。なら後で聞かせてもらうぞ」ハァ…

朧「結局聞くんですか……」

H大将「内容が惨たらしいものなら、そうであるほど聞かざるを得ん。不始末は起因元から断たねばならんし、再発防止策の検討も必要だ」
630 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:10:01.81 ID:pdfJKJ4Go

H大将「で? 大佐の部下をそうしたのなら、大佐もそうするつもりだったのか?」

提督「大佐は、泊地棲姫に始末させるつもりだった。落とし前をつけさせる意味でな。そこで俺がヘマしてあいつに撃たれちまった」

大淀「……あの時は、本当に生きた心地がしませんでしたよ」

提督「実際死んだしな。深海棲艦になって生き返ったのはもっとびっくりしたが」

提督「で、まあ、いろいろあったが、とりあえず全部大佐と泊地棲姫がやったことにして、ごまかしながら後始末をした」

H大将「それを俺たちが怪しんだ、というわけだな。それを察知した貴様が泊地棲姫を呼んだと」

提督「いいや、そこは違う。泊地棲姫との共闘を画策したのはメディウムたちの独断だ」

H大将「貴様が泊地棲姫を呼んだわけではない、と?」

提督「俺がいろいろ知っていたら最初からメディウムを島の中に待機させたし、朧だってみすみす殺させたりしてねえよ」フンッ

朧「提督……」

H大将「……なるほど。信じよう」

X中佐「しかし、どうしてメディウムたちは泊地棲姫たちと手を組んだんだ? 少尉にはそういう意図はなかったんだろう?」

朧「うーん、もしかしたら、島に来た人間全員を殺すのに最適な方法を選んだ、とかじゃないですか?」

提督「そうかもな。それに、準備で島に来るのが遅れてしまったとも言ってたし……」

提督「ニコにもニコなりの考えがあったんだろうが、海軍側もそれぞれ思惑が違っていたせいで、いろいろ予定が狂っちまったのかもしれない」
631 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:10:46.79 ID:pdfJKJ4Go

提督「そもそも、あんな騒ぎにするほうが俺としては想定外だったんだ。島だって燃やすつもりはなかったし……」

提督「あんたたちを適当にやり過ごして、何もせずそのまま帰ってもらうつもりでいたんだぞ。信じなくてもいいけどよ」

大淀「もしかして、提督がそういうふうに平和的に構えていたのを、ニコさんたちが危ないと思ったんじゃありませんか?」

提督「俺のどこが平和的なんだよ……」

大淀「結果的にはそう見える、という話です。大将たちをやり過ごそうとしたのは、提督が平和的だからじゃなくて、厭世的だからでしょう?」

提督「まあ、そうだけどよ……」

H大将「俺たちが警戒されていたわけか?」

提督「まあ、警戒せざるを得ない状況ではあった」

提督「誰の差し金か確かめられなかったが、大将たちが来る少し前に、艦娘を引き連れた船が島の周りを探ってたりしてたからな」

H大将「ふむ……」

提督「ところで、ちょっとひとつ確認させて欲しいんだが、いいか?」

H大将「なんだ?」

提督「死んだ奴らの狙いは、大将二人の暗殺と、その罪を俺におっ被せるつもりだった、ってことでいいんだよな?」

H大将「ああ。証拠はないが、俺もそうだと認識している」
632 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:11:31.76 ID:pdfJKJ4Go

提督「大将とX中佐は俺たちを引き入れるつもりだったようだが、H大将は俺たちをどうするつもりだったんだ?」

H大将「俺は、深海棲艦と関わりを持っているであろう貴様を拘束するつもりでいた」

H大将「俺もJ少将も、深海棲艦との和睦は無理だと考えていたし、深海棲艦を殲滅するならばスパイの存在は絶対に許せないと考えていた」

H大将「深海棲艦を海から排除するという一点においては、J少将と志を同じくしていたというのは間違いない」

提督「それなのに、あんたも消されそうになったのは、なぜだ?」

H大将「おそらく、深海棲艦から武器を作る話に反対していたからだろう」

H大将「製造するにしても、そのために深海棲艦を鹵獲するにしても危険が付きまとうだろうし」

H大将「研究するまでは良いだろうが、深海棲艦の遺骸を武器として流用したと知れては、深海棲艦も黙ってはいないだろう」

H大将「深海棲艦が人間に対する怒りや恨みから生まれていたとしたら、却ってそれを煽ることになる」

H大将「そもそも、敵とはいえ、ご遺体から武器を作ろうというのは、人の道としてもどうかと思っている」

提督「J少将には、それを話したのか?」

H大将「ああ、話している。あいつにも思うところはあるだろうが、倫理観を外れるような真似はやめて欲しかったからな」

H大将「しかし、島の南側で見つけたJ少将の部下の狙撃手も、朧君を撃ったあの士官も……」

H大将「深海棲艦から作った弾丸を持っていたのだから、俺の理屈は通じなかった……むしろ目障りだったと、いうことなんだろうな」

提督「……」
633 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:12:17.35 ID:pdfJKJ4Go

X中佐「……はぁぁ……」

北上「んおぉ、でっかいため息ついて……大丈夫〜?」

X中佐「あんまり大丈夫じゃないよ……同じ海軍だというのに、なんでこんなに、みんな仲良くできないんだ……」

X中佐「対立があるのはわかる。仕方ないと思ってる。けど、ここまで……誰かを亡き者にしようって考えて実行するのは理解できないよ」

提督「ったく、このお人好しめ……つくづく軍人に向いてねえな」

X中佐「ちょっ……!?」

H大将「まあ、こういう人物だからこそ、俺たちに見えないところを見つけてくれる人物だと思って、重用されているわけだが」

提督「そうかもしれねえが……それで無防備に何度もあの島に入ろうとしてたのは、危なっかしいにもほどがあるだろ」

X中佐「危なっかしい?」

提督「ああ、考えてもみろ、あの島は悪さするのにもってこいの場所じゃねえか。舞台として整いすぎてんだ」

提督「潮の流れのせいで行き来しづらい、拠点としても大して重要じゃない、過去に流刑地扱いされてるようないわくつきの島」

提督「不慮の事故が起こって死んだって、まああの島だからしょうがないで片付けられる。こんなに人殺しに適した場所、ほかにあるかよ」

提督「そういう場所にほいほいお忍びで来やがって、危ねえって言う外ねえってんだよ。島への道中に誰かに暗殺されたらどうすんだ?」

X中佐「……」
634 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:13:01.78 ID:pdfJKJ4Go

提督「それに、妖精たちが言うには、島に俺が着くより前は、大佐が気に入らない奴を島へ放置して餓死させてたらしいぞ?」

X中佐「そんなことまで!?」

H大将「そういう話も知っているなら早くしろ……!」

提督「それ聞いたのはおとといだぞ、おととい。妖精たちが俺に気を使って言えなかったっつうし、しょうがねえじゃねえか」

北上「えー……じゃあなに? 提督も文字通り島流しにされてたってわけ?」

提督「ああ、初期艦すらつけてもらえず、建造ドックも壊れたままで働けとか、寝ぼけたこと言われたからな」ケッ

提督「しかも通信機は大佐の鎮守府に直通回線一本だけだ。この間は赤城と事務的な話しかしてねえ」

H大将「よく生き延びてこられたな……」

提督「俺の場合は、中将に気にかけてもらってたおかげで物資が多少は届いていたのと……」

提督「妖精と話せたおかげで、いろいろ協力してもらえたから生活できてたってところが違うかな」

提督「とにかく、今回の騒ぎも、そのひとつ前の中将と俺の暗殺計画も、あの島で起こったことだからしょうがない、で済まそうとしたんだろ」

提督「丁度ここに、濡れ衣を着せるのに都合のいい下っ端もいる。一緒に始末すりゃあ証拠も消せるしよ」ヘッ

X中佐「笑っていられる話じゃないよ……」

提督「笑ったっていいだろ。結果的に馬鹿どもが返り討ちになったんだ、笑い飛ばさねえと俺がやってらんねえよ、くそが」

H大将「……あの娘が言っていた通り、人間の自業自得と言わざるを得ないな」ハァ…
635 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:13:47.14 ID:pdfJKJ4Go

北上「その場所が海軍と深海棲艦の話し合いの場になるっていうのも、なんとも皮肉が効いてるねえ」

大淀「本当にそうですね……」

X中佐「……」ガックリ

H大将「……X中佐」

X中佐「すみません……さすがにちょっと、滅入ってしまって」

X中佐「状況は、良くなっているんです。深海棲艦と話し合える場所ができたのは、本当に喜ばしいことです」

X中佐「しかし、ここまで……結果的に、海軍の不始末を少尉一人に押しつけ、全部処理してもらってます」

X中佐「かつ、これからも深海棲艦との対話で間に立ってくれると言ってくれています」

X中佐「何から何まで全部、少尉に頼りすぎですよ……!! 僕たちは海軍ですよ? なんて情けない……」

H大将「X中佐……」

X中佐「……それでも。それでも、やっていくしかないですけどね」

X中佐「深海棲艦と……戦いを回避する方法を……なんとか、模索していかないと……」

提督「そうだな。いつまでも俺が手を貸せるとは限らねえ。むしろ、俺がいなくても何とかしてもらえるようにしてもらわねえとな」

X中佐「……」コク
636 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:14:31.95 ID:pdfJKJ4Go

提督「……ま、あんたは俺にいらねえお節介焼いてきてたからなあ。心配ではあるが、信用してないわけじゃない」

提督「変な真似さえしなきゃあ、話し合うくらいはできそうだと思ってる」

X中佐「……!」

提督「まずは実績を作ることだろうな。例えば、島の海域に入ったら、絶対に戦闘しない、とか」

提督「深海棲艦を相手にひとつ約束事を作って、それが守れるかどうか……深海棲艦が約束を守る奴かどうかって見極めもいるだろうが」

H大将「……」

提督「ま、こういうのは、時間をかけて見守るしかねえさ。俺が、轟沈した艦娘を保護したように」

提督「俺が……こいつらに、信じてもらえるようになったように」

朧「提督……!」

大淀「提督……!!」

X中佐「……うん……そうだね……!」

H大将「……」

北上「……いやー、本っ当になんでだろうね? こんなこと言う人が魔神だよ? 罠の頭領だよ? いろいろ間違ってない?」

提督「いや、俺はあくまで妖精と艦娘とメディウムと深海棲艦を保護するってだけで、人間はどうでもいいからな?」
637 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:15:17.06 ID:pdfJKJ4Go

提督「俺自身も晴れて人間じゃなくなったし。ぶっちゃけ人間が死滅しようが最早全っ然構わねえんだからよ」

大淀「提督!!」ギョッ

X中佐「……」

H大将「……」

提督「ま、俺の本音はこうだからな。人間が深海棲艦とこれからどう接していくにしても、俺からは基本、口は出さねえぞ?」

H大将「ああ。責任重大だな、中佐」

X中佐「ええ、そこは何とかしてみせます……!」

H大将「それで、島での我々の安全は保障してもらえるのか?」

提督「そこは……まあ、そこはそうだな。俺が信頼している艦娘と一緒なら危害を加えないよう、周知徹底させる」

提督「とはいえ、泊地棲姫の艦隊が全員俺に従うかわからねえから、それはこれからしっかり統制しなきゃな……」ウーン

朧(大丈夫なんじゃないかなあ……あの洞窟にいた時も、提督の言うこと聞いてた気がするし)

提督「あの島の海域が非交戦地域であることを、他の深海棲艦にも通達したいし……」

大淀「海軍にしても私たちにしても、話し合いを持つためにはもう少し準備期間が必要ですね」

H大将「そうだな。海軍の中でも、今後深海棲艦と交渉にあたる人材を用意せねばならん」
638 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:16:02.78 ID:pdfJKJ4Go

大淀「私たちも同様に、島の中の整備を整える必要があります。そこで……海軍と取引をお願いしたいのですが」

H大将「取引?」

大淀「はい、例えば、かつて島で使用していた発電機や、小型のショベルカーなどの設備、電気工事用の電線や水道管の敷設……」

大淀「それから艦娘用の入渠ドックや建築用木材、私たちが使用していた生活必需品の購入をお願いしたいのです」

H大将「……ふむ」

提督「工事が必要なら、その期間は泊地棲姫たちには島から離れてもらう。メディウムたちも退避させよう」

提督「代金は、こいつで支払いたい」ゴソッ ゴトゴトッ

X中佐「なんだい? その石は……」

H大将「……!! 少し、見せてもらっていいか」

提督「ああ」

H大将「……」

X中佐「H大将?」

H大将「……少尉。お前は、どこでこれを?」

提督「噴火した海底火山の溶岩の中から採掘した」

H大将「なるほど……」
639 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:16:46.85 ID:pdfJKJ4Go

X中佐「H大将、この石は一体……?」

H大将「……これはもしや、ダイヤの原石か?」

X中佐「え!? こ、これがですか!?」

H大将「ああ。もし本物なら、こんな手のひらに収まらないサイズの石は見たことがないぞ……!?」

提督「炭素を高温で圧縮して作られるのがダイアモンドだって聞いたことがある。マグマの中で作られるとも言われてるらしいな」

提督「それでだ。その原石がどの程度の価値があるか、そいつを持ち帰って鑑定してほしいんだ」

提督「その上で業者を4、5件回ってもらって、それぞれに見積もりを取ってもらいたい」

提督「俺たちは、信頼できそうな値を付けたところにそいつを売って、その金で備品の調達をしたい」

提督「その業者が他にも欲しいというなら、採掘できた分のなかからいくつか渡そうと思ってる」

H大将「……これは何かの罠ではないだろうな?」

提督「その石自体は罠でもなんでもねえよ、ごくごく真っ当な取引だ。ただまあ、違う意味では罠だと言える」

H大将「何を企んでいる」

提督「……メディウムはな、悪人の魂を欲しているんだよ」ニタリ

X中佐「……」

提督「そのダイヤは撒き餌みたいなもんさ。このサイズなら確実に値はつくし、どこで採れたか確実に訊かれるはずだ」

提督「訊かれたらこの島で採掘されたものだと、正直に答えてくれていい。島に深海棲艦が棲みついていることも忘れずにな」
640 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:17:31.70 ID:pdfJKJ4Go

提督「島がいかに危険かを聞いて、まともな奴なら諦めるだろう。だが、危険を承知で採掘しに来るっていうのなら……」

提督「メディウムたちが諸手を挙げて歓待してやろう、ってだけさ」ニヤァ…

H大将「……」

X中佐「……」

大淀(またそこでそういう悪い笑顔を……)

北上(こういうところはマジでメディウムの親玉だよねえ……)

H大将「……怪我をさせずに捕縛というわけにはいかんのか」

提督「命の保証は無理だ。言ったろ? 魂を欲しているって。ストレートに言えば、メディウムにとって人間は餌に等しいんだ」

X中佐「餌……」

提督「料理をするとき、食材を切ったり、煮たり、焼いたり、塩コショウを振ったりして、おいしくするだろう?」

提督「それと同じように、欲にまみれた人間を、華麗に吹き飛ばし、屈辱的な目に遭わせ、残虐に殺すことによって……」

提督「悲憤と無念にまみれた、魔力が満ち満ちた魂に磨き上がる。ちょっとひと手間、というやつだ」

提督「メディウムはそういう昏(くら)い感情を含んだ魂が大好きで、特に極悪人の魂は念入りに磨き上げる傾向にある」

提督「どうせ食うなら、おいしく召し上がりたいだろう? メディウムたちにもそういう『ささやか』な欲望があるんだよ」

H大将「……」
641 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:18:17.60 ID:pdfJKJ4Go

提督「俺が、人間がこの島に入って欲しくないと考える理由の一つがそれだ。来てもいいが、友好関係を築きたいなら、長居はして欲しくない」

提督「さすがに海軍だって、発布した忠告を無視して面倒を起こす奴らにまで、世話を焼くなんて下世話な真似はしねえよな?」

H大将「……それは、そうだな」

X中佐「ですね……我々では注意喚起が関の山でしょう」アタマカカエ

提督「それでいい。金に目がくらんだ命知らずが、どこかへ消えるだけの話だ、海軍が気に病んだり責任を感じたりすることじゃない」

提督「そういうわけなんで、メディウムも深海棲艦に負けず劣らず危険な存在だ」

提督「あんたたちの身の安全のためにも、俺が信頼する艦娘と同行してもらって、メディウムの捕食対象ではないことを示してほしい」

X中佐「……わかった。さしあたり、艦娘の帯同の件と、この原石の査定の件だね。すぐに取り掛かろう」

提督「そうしてもらえると助かる。俺も島で、海軍を受け入れる準備に取り掛かる」

提督「何せ話し合う場所すら、いま作っている途中だからな。準備ができ次第、連絡を取らせてもらう」

大淀「あの、提督? 通信販売のカタログの取り寄せもこの場で一緒にお願いできないでしょうか」

H大将「カタログ?」

大淀「はい。以前、私たちは生活用品や私物を買うのに、市販の通信販売のカタログを使っていました」

大淀「例えば長門さんのミシンですとか、比叡さんの包丁ですとか。執務室のソファやドライヤーなどもそれを見て購入しています」

H大将「長門がミシン……だと?」クビカシゲ
642 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:19:02.37 ID:pdfJKJ4Go

X中佐「通販で? お金はどうしていたの?」

大淀「そ、それは、提督のお給料から出していただいて……」

X中佐「えええ……」

提督「俺が金を使う機会がなかったんでな。朧は小説本買ったんだっけか」

朧「はい! ハードカバーの新書を買いました!」

提督「娯楽もなかったんで、余所の鎮守府から遊び道具を寄付してもらったこともある。例えばトランプとか、将棋盤もそうだったよな?」

大淀「あ……! そういえば、そうですね……」ガックリ

朧「大淀さん、将棋のセットを島から運び出してなかったんですか」

大淀「それもありますが、それよりも有名棋士の指南本が……」

朧「ああ……」

H大将「……わかった。そういうことなら、取り寄せさせよう。予算についても問題のない範囲で検討させる」

大淀「ありがとうございます!」ペコリ

朧「あ、提督のお給料が入ってる口座とかもそのままにしてもらえますか?」

H大将「不知火が言っていた件か? 経理ができる奴を呼んだほうが良さそうだな」

X中佐「そうですね。契約が継続できないなら、ご家族への相続とか考える必要もありますし」

提督「……」ビキッ

朧「あ」ビクッ
643 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:19:47.50 ID:pdfJKJ4Go

提督「悪い……もうひとつ、大事なことを言い忘れていた」

H大将「なんだ?」

提督「俺に、親と、弟がいることは知っているか?」

X中佐「? 君の家族がどうかしたのか……?」

提督「……あいつらには、絶対に連絡を取るな」

X中佐「! ……理由を聞いても?」

提督「あいつらは俺の敵だからだ。あいつらは俺にとって家族でも何でもない……!」

X中佐「……」ゾク

H大将「……過去に、大佐がお前の父親へ献金していた記録があったな。それが関係しているのか?」

提督「いや、それはそうじゃねえ……」

朧「提督は、妖精さんが見えるっていうだけで、両親からもひどい扱いを受けてきたんです!」

提督「……おい」

大淀「朧さんの言う通りです。提督の人間不信は、提督のごりょ……両親の影響が最も大きいと思われます」

大淀「その献金は、大佐が提督の身柄を買い取るために、提督がどうなっても口出しされないようにするために支払ったものです」

北上「うわあ……マジで?」ドンビキ
644 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:20:34.95 ID:pdfJKJ4Go

大淀「はい。提督はその両親から疎まれていました。提督もその人たちを家族と呼ぶことはできない、と、過去にも仰っていましたし……」

大淀「そもそも提督は父親から勘当されています。縁を切ったはずなのに、お金のやり取りがあること自体、おかしいと言わざるを得ません」

提督「……」

X中佐「……そうなのか?」

提督「喜んだのは違いないだろうな。勘当したはずのゴミを引き取ってもらえた上に金まで貰えたんだ」ケッ

X中佐「……」

提督「そういうわけなんで、間違っても、連中を俺に会わせようとか考えるなよ」

提督「この場で話し合ったことも何もかも、この船もろとも怒りに任せてひっくり返しちまうかもしれねえからな……」

H大将「なるほど。献金がお前に関係ないのならそれでいい。遠慮なく告発していいな?」

提督「ああ、遠慮はいらない、思う存分やってくれ。俺はあいつとは縁が切れてるし、二度と会いたいと思っていない」

提督「あの男は自分の名誉が一番大事な人間だ。そのために俺の名前を利用するかもしれねえが、それも全否定してくれていい」

H大将「わかった。先方がお前のやることに口を出してこないよう、念入りに叩き潰しておくとしよう」

提督「……」ペコリ
645 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:22:16.84 ID:pdfJKJ4Go

 * *

北上「……提督も苦労してんだねえ」

提督「まあ、な。家族に相続、って言葉が出てこなかったら伝え忘れるとこだった。危なかったな」

北上「なんかさあ、H大将もこれで提督に貸しを作れたとか思ってんじゃない?」

提督「それはそれで別に構わねえさ。あいつを社会的に潰そうってんなら俺は協力するし」

提督「そもそも海軍の不始末を処理するために必要なことをやってるだけだろ? この話には貸しも借りもねえと思ってるがな」

朧「とりあえず、いい方向に進むといいですね。今回は嘘も言ってませんし、すっきりできたと思います!」

提督「……一点だけ、嘘ついてんだけどな」

大淀「え? どこですか?」

提督「メディウムが悪人の魂を欲しているって言ったろ?」

北上「うん。間違ってんの?」

提督「ああ、悪人も善人も関係ねえんだ。本当は」

大淀「……」

朧「……」

北上「……あー、うん。まあ、そうね……」

大淀「あの、提督? それでは、メディウムが人間をいたぶって殺すというところは……」

提督「あれは本当だ。あれはニコから聞いたのをそのまま話した感じだな。魂に対する味付けって聞いてる」

提督「とにかく、俺たちと友好的な相手には手を出さないように教育するさ」

提督「四方八方に喧嘩売って敵を増やして、とんでもない奴を相手にしなくちゃいけなくなった、ってのが一番面倒臭えしな」

大淀「ええ、ぜひそのようにお願いします」
646 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:24:21.70 ID:pdfJKJ4Go
今回はここまで。
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/18(火) 12:35:02.86 ID:raMf9AyV0
乙です。ハッピーエンドは近いかな?
648 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:31:04.18 ID:1LUsbeXzo
>647
概ね解決はしそうですが、まだまだフラグが残ってますので……今回も回収です。

続きです。
649 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:31:45.94 ID:1LUsbeXzo

 * 翌日 昼前 *

 * 墓場島沖 医療船内 小会議室 *

卯月「少尉! 無事だったぴょん!?」

弥生「元気そうで良かった……」

望月「いやあ、やばいことになったんだねえ、あの島。また住めるの? せっかくだし、あたしたちのいる大湊に来ない?」

提督「……」

W大佐「どうかしたか、少尉」

提督「……いや、珍しい顔が出てきたなと」

鳳翔「そんなに珍しいでしょうか?」

提督「ああ、久し振りというか、お前たちとはもう会うこともないと思っていたくらいだが」

卯月「少尉ったらつれないぴょーん! うーちゃんが少尉を放っておくと思ったら大間違いだっぴょん!」

提督「いたずらする気ならやめとけよ? 洒落にならない連中が来たからな」

卯月「ぷっぷくぷぅ〜! そーんな脅しに屈するうーちゃんじゃないっぴょーん!」

卯月「艦娘ならぬ罠娘だって聞いてるぴょん? うーちゃんとは仲良くできそうだっぴょん!」ニヒヒヒッ
650 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:32:30.94 ID:1LUsbeXzo

提督「やめとけ。お前は洒落が通じない相手に粗相して、追いかけられてズタボロになる未来しか見えねえ」

弥生「わかる」ウンウン

望月「卯月って、触っちゃいけない相手ほど触りたがるもんね」ウンウン

卯月「みんな辛辣ぴょん!?」

鳳翔「大丈夫な人もいるでしょうけれど……」

提督「そうだなあ、フウリやマーガレット、ハナコ、シャルロッテ……あとジュリアか。あのあたりなら、罠的にまだ洒落が通じそうだがなあ」

鳳翔「まあ。その方々は、どんな罠なんですか?」

提督「ん−、タライ、フライングケーキ、ウォッシュトイレ、バナナノカワ、ハリセンってとこか」

卯月「めっっっっちゃ興味あるぴょん!!」キラキラッ!

提督「よし、卯月にはルイゼットとエレノアを紹介してやるか。ギロチンとメイデンハッグのメディウムだ」

卯月「死ぬぴょん!? 少尉はうーちゃんを殺す気ぴょん!?」

提督「冗談だよ。それより……」

鳳翔「はい、ご紹介させていただきますね。こちらはW大佐」

W大佐「……よろしく。こいつは秘書艦の伊勢」

W伊勢「よろしくね!」
651 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:33:15.71 ID:1LUsbeXzo

W大佐「それから、軽巡洋艦の球磨と、戦艦の榛名だ」

W球磨「よろしくだクマ」

W榛名「よろしくお願いします」

提督「……ああ」

鳳翔「こちらのW大佐はX中佐のご友人で……」

W大佐「先日の作戦に参加していた一人だ。H大将閣下に懇意にさせてもらっている」

提督「……艦隊を出していたのか」

W大佐「ああ、作戦時にはこの球磨と榛名を出撃させていた」

W球磨「球磨は、まさかあんなコトになるなんて、思ってなかったクマ。とりあえず、あの罠の女の子たちは、ここにはいないんだクマ?」

提督「……まあ、一応は、な」

W球磨「ふーん……潜んでてもいいけど、襲ってこなければいいクマ」

W球磨「かかってくるなら球磨は容赦しないクマ。でも、仲良くできるんなら、そうしたいクマ」

W伊勢「まあ、今日は懇親を深めるって話で聞いてたから、さすがにここでまで警戒はしなくてもいいと思うけどね」

W球磨「そうあってほしいクマー」ウナヅキ

提督「……H大将の部下なら、深海棲艦は殲滅するべきって思想の連中が多いと思っていたが……そうじゃねえのか?」

W大佐「確かに、そういう思想を持つ者は多いな。今回の件で、H大将がお前たちや深海棲艦との話し合いを始めたことに動揺している者もいる」

W大佐「しかし私自身は、深海棲艦とどのように向き合うかについては、特にこうだと決めつけてはいない。普段からX中佐とも話をしているしな」

W大佐「むしろ、深海棲艦とはいったい何者なのか。何が目的なのか。それを知ることのほうが、戦争の終結には重要だと思っている」

提督「……」
652 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:34:00.84 ID:1LUsbeXzo

W大佐「今日はあくまで顔合わせの場だと聞いている。かかわった以上、君がどんな人物なのか、色眼鏡なしに見てみようと考えている」

提督「……この先、どのくらい顔を合わせるかはわからねえがな」

W大佐「ふむ。まあ、そうなるかな」

提督「……なんつうか、日向みたいな男だな?」

W伊勢「そう! そうなのよ! 最近ほんっとに日向に似てきたの! あなたもやっぱりそう思う!?」ズイッ!

提督「お、おう……」

W球磨「伊勢、食いつきすぎクマ……落ち着くクマ」

W大佐「それからもう一人。そっちにいるのが……」

卯月「司令官も早くこっちに来るぴょん!」

W榛名「……」

W大佐「V提督だ。今はここにいる卯月たちの艦隊を指揮しているそうだ」

V提督「……」ペコリ

鳳翔「N提督が鎮守府をおやめになってからいらした、後任の提督です」

提督「ふーん……」チラッ

W大佐「俺と同じく、V提督もX中佐と同期なんだ」

提督「同期? そう言う割には、部屋の隅っこで随分と控えめにしてんじゃねえか?」

提督「おそらく、穏やかじゃねえ空気を放ってる奴が、そこにいるからだろうけどな。どうなんだ? 榛名……!」

W榛名「……」

V提督「……」
653 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:34:45.68 ID:1LUsbeXzo

W大佐「まあ、無理もない事情があるんだ。君に話すほどのことでもないんだが……」

鳳翔「ええと、みなさん? 今日は特別な席を用意しておりまして」

望月「鳳翔さーん、大丈夫? なんか違う意味で特別な席になってるっぽいんだけど」

提督「だな。なんでこんな険悪な雰囲気なんだか……卯月がいなけりゃ息苦しくてかなわねえ」

卯月「……うーちゃん、褒められてるぴょん?」

提督「おう。素直にMVP喜んどけ」

 トントン

大和「失礼いたします、準備が整いました!」

鳳翔「あら、丁度よかった。ではみなさん、こちらへどうぞ」

W大佐「……鳳翔、あなたは何を企んでいる?」

鳳翔「企むだなんてそんな。一緒に昼餉をと思いまして」

W大佐「……?」

鳳翔「さあ、V提督もこちらへ」

V提督「あ、ああ……」

W榛名「……」ジロリ
654 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:35:30.78 ID:1LUsbeXzo

 * 廊下 *

大和「こちらです」

W大佐「……ん? この匂いは、カレーか?」

V提督「……!」

W榛名「これは……!」

卯月「鳳翔さんのカレーの匂いだっぴょん!!」パァッ!

望月「やっりい! おなか減ってたんだー」

鳳翔「ふふっ、私の作ったものよりおいしいと思いますよ」

V提督「鳳翔……まさか、お前……?」

鳳翔「逃げてはいけませんよ……提督」ニコッ

V提督「……!」

大和「お待たせしました、お連れしましたよ!」

雲龍「噂をすれば、ね」

陸奥「!」

比叡「あ……!」

龍驤「お、来よったんか!」
655 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:36:15.92 ID:1LUsbeXzo

提督「比叡はともかく、雲龍に陸奥に龍驤? なんでお前たちがここに?」

龍驤「おってもええやんか、うちと陸奥は懐かしい顔と話しとったんよ?」

提督「懐かしい?」

球磨「なんで間宮さんが二人いるクマ?」

鳳翔「はい、ご紹介します。こちらは私たちの鎮守府の間宮さん」

間宮「少尉、おひさしぶりです」ニコッ

鳳翔「そしてこちらは、かつて幌筵の以提督鎮守府にいた、間宮さんです」

提督「!!」

以間宮「はじめまして……!」ペコリ

提督「以提督……あの骨と皮だけになってた、あの写真の間宮か!?」

鳳翔「はい、御覧の通り、一生懸命リハビリしまして、ここまで回復いたしました」

球磨「リハビリ、クマ?」

提督「こっちの間宮は働かされすぎてガリガリに痩せてたんだよ。うちの龍驤と陸奥も同じ鎮守府にいたんだ」

陸奥「昔話に花が咲いちゃってね。みんなの邪魔はしないから安心して」
656 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:37:00.62 ID:1LUsbeXzo

鳳翔「そしてもう一人、ここにいる皆さんにご紹介したいのが、こちらの墓場島鎮守府の比叡さんです」

V提督「……まさか」

W大佐「おい、もしかして……」

W榛名「あなたは……!!」

鳳翔「はい。もと、V提督鎮守府所属の、比叡さんです」

比叡「……」ニコニコ

V提督「っっ!!」

W榛名「……い……生きてらしたんですね……!!」

比叡「え?」

W榛名「私です、比叡お姉様!! 私は……私はかつて、V提督のもとで働いていた、あの榛名です!!」

比叡「ひええええ!? そうなの!?」

W大佐「鳳翔。これがあなたの狙いだったのか?」

鳳翔「はい」

提督「なるほど、榛名が睨みを利かせてたのはそういう理由か」
657 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:37:45.67 ID:1LUsbeXzo

卯月「……みんななんで驚いてるのか、よくわからないぴょん」

W大佐「それは……」

V提督「待ってくれ。俺が話そう」

弥生「司令官……?」

V提督「これは俺の失態だ。俺が……比叡を傷付けたのが、すべての発端であり、原因だ」

提督「原因、ねえ……? とりあえず話してもらおうじゃねえか」

V提督「俺とW大佐、それからX中佐が同期だったことは、Wからもあった通り……」

V提督「海軍に入った当初は、そこにUとYを含めた5人で、いつも決まった時期に飲み会を開いていたんだ」

V提督「初めてうちの艦隊に戦艦が来たとか、いまだに空母が来ないとか……自分の艦隊自慢をしていたんだが」

V提督「だんだんと戦艦の……金剛型の話題になって、比叡の作る料理の話になった」

V提督「UにしてもYにしても、各々の鎮守府の比叡が作る飯はどうしようもなくマズかったらしい」

V提督「だが、うちの比叡は違った。全然、そんなことはなく……初めて出されたカレーも、あっという間に平らげたくらいだった」

比叡「……!」

V提督「それを、俺は……」

W榛名「……」
658 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:39:00.96 ID:1LUsbeXzo

W大佐「……その酒の席では、Vが、自分のところの比叡のカレーはおいしいと言っていたんだ」

比叡「!!」

W大佐「ただ、それをUとYがことあるごとに馬鹿にして囃し立てていたんだ。お前の味覚はおかしい、と」

W大佐「あいつらはあいつらで自分たちの経験からそう言っていたんだろう。それ自体は間違ってはいなかったと思う」

W大佐「だが、あれは言いすぎだった。俺が傍から聞いていても、その貶め方は不愉快だった」

W大佐「かといって俺やXが制止しても、比叡が着任してないからとわからないんだと聞き入れられることもなく」

W大佐「だったら、Vの鎮守府に来て、比叡の出したカレーを食べてみろ、という話になって……」

V提督「……そこで俺が、やっちゃいけないことを、やったんだ」

比叡「……」

W榛名「それで……あんなことを……っ!!」ギリッ

W大佐「……」

提督「そうか。そこで、用意した比叡のカレーを、皿ごと投げ捨ててみせた、ってことか」

望月「なんだそれ!?」

W榛名「そうです……ご友人を招いた席で……なぜあのようなことを、V提督がしたのか……!!」
659 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:40:45.81 ID:1LUsbeXzo

W大佐「おそらくだが。あれは、UやYに対する当てつけだろう? UやYが『こんなもの』と言っていたのをあいつらに認めさせ……」

W大佐「そして自分は、あいつらが称賛したものを捨てて見せて、自分のほうが上だと見せつけたかった。そんなところじゃないか」

弥生「……本当、ですか」

V提督「……そうだ……おおむね、そんなところだ……」

W大佐「それで後悔して自分の腹を撃ったと。まったく、馬鹿な男だ」

卯月「撃ったぴょん!?」

W大佐「ああ、拳銃でな」

鳳翔「……」

W榛名「そんな……そんなつまらない理由で……!!」ギリギリッ

W榛名「その、つまらないプライドのせいで! 比叡お姉様がどれだけ苦しんだか……!!」ジロッ

提督「ああ、まったくだ。島に比叡が流れ着いて目を覚ましてから一週間……いやそれ以上か。飯を食おうとしなかったからな」

提督「下手すりゃあ、そのまま死んでたぜ」ジロッ

鳳翔「……」

提督「何を考えてこんな席を作ったのかは知らねえが……おい、比叡。この場は、お前の好きにしていいぞ」

比叡「! いいんですか?」
660 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:42:16.34 ID:1LUsbeXzo

提督「ああ。この場はお前が一番優先されていいだろう。そっちの榛名も、それでいいか?」

W榛名「……わかりました。比叡お姉様にことを委ねるということであれば、異論ございません」

W大佐「……」

比叡「それでは……」コホン

比叡「みなさん椅子におかけください」

全員「「……」」

提督「は?」

W榛名「比叡お姉様?」

比叡「いや、は? とかじゃなくて。これからご飯を食べるんだから、みんな座って、って言ってるんだけど」

V提督「……ひ、ひえ」

比叡「ストップ!!」

 (手のひらをV提督へ向けて制止する比叡)

比叡「ごめんなさいとか、すみませんでしたとか、そういうセリフは聞きたくありません!」

V提督「……」

比叡「だから、おとなしく座っててください」

W榛名「……」
661 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:46:01.98 ID:1LUsbeXzo

鳳翔「さ、比叡さんもそう仰ってますし、みなさんもお座りください」

球磨「確かに、そう言われて突っ立ってる理由はないクマ」

望月「ま、まあ、そういうことなら……」チャクセキ

卯月「座るしかないぴょん!」チャクセキ

W伊勢「そうだね、みんな座ろ?」

大和「さ、提督もどうぞ」イスヒキ

提督「お、おう……」

望月「あれ? 鳳翔さん、なんか椅子多くない?」

鳳翔「実はもう一組、この席に招いている方がいるんですが、まだ来ていないようで……」

<ハ、ハナセ!!

<オトナシクシテクダサイ!!

提督「あれは……!!」
662 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:49:31.50 ID:1LUsbeXzo

N大尉「俺が行く必要はないだろう!? 妙高、放してくれ!」エリクビツカマレ

妙高「いい加減、覚悟を決めてください! 磯波さん、提督の足を持ってください!」グイグイグイ

磯波「は、はい……!」ガシッ

N大尉「い、磯波!? は、放せ! はな……!!」

提督「お前、N中佐か!?」

N大尉「て、提督准尉……!!」

妙高「ふう……鳳翔さん、N大尉をお連れしました」

鳳翔「ありがとうございます。いけませんよN大尉、秘書艦を困らせては」ウフフッ

N大尉「い、いや、しかし……」

鳳翔「それから、今の提督は少尉です。少尉も、今のN提督は大尉ですので、お間違えないよう」

提督「ああ、そういやそうだったか」

N大尉「はぁ……いやはや失礼した。まったく、またみっともないところを見せる羽目になったな」

龍驤「おぉお! N大尉やんか!! ひっさしぶりやあ!!」

N大尉「!? 龍驤と……陸奥? も、もしかして、以提督のところにいた二人か!?」

陸奥「はい、あのときはありがとうございました」ペコリ
663 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:50:30.88 ID:1LUsbeXzo

龍驤「見てみい! あの鎮守府にいた間宮も、回復したんよ!」

以間宮「N大尉、大変お世話になりました」ペコリ

N大尉「おお! 顔色が全然違うなあ、元気になったみたいで良かった! 俺はあの時は何の役にも立てなくて……本当にすまなかった」

龍驤「そんなことないって! あの啖呵を切ったあの時は格好良かったで!!」

N大尉「いやあ、それほどでも……ところで、後ろの胸の大きなお嬢さんはどちら様で?」デレッ

龍驤「」ズコッ

雲龍「?」

妙高「N大尉? 鼻の下が伸びていますよ?」コメカミヲコブシデハサンデ

N大尉「あだだだだだ!?」グリグリグリ

球磨「この人は何をしに来たんだクマ」

鳳翔「この方はN大尉。こちらにいる龍驤さんたちを以提督鎮守府から助け出したきっかけを作った方です」

望月「え、N提督、そんなことしてたの!?」

提督「知らなかったのか?」

卯月「全然知らなかったぴょん」
664 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:53:31.29 ID:1LUsbeXzo

妙高「こちらの間宮さんが私たちの鎮守府に来た時のことは承知していますね?」

望月「うん、前の鎮守府で働かされすぎてガリッガリだったんだよね?」

妙高「その間宮さんを助ける手助けをしたのも、N大尉ですよ」

卯月「全然知らなかったぴょん……!!」

望月「N提督かっこいいじゃん!?」

弥生「見直しました……!」

球磨「そのN大尉を、なんでこっちの駆逐艦たちが知ってるんだクマ?」

W大佐「V提督が来る前は、N大尉が鎮守府を仕切っていたからだ。かつて洗脳ツールを使った提督がいただろう、N大尉がその一人だ」

球磨「マジかクマ……」

提督「ついでに言うと、うちの大和をそのツール使って横取りしようとしやがった」

球磨「うわ、それマジで駄目なやつクマ……」

妙高「そういう過去もありますが、こちらの間宮さんの快気祝いということもあって、N大尉をこの席にお招きしたという次第です」

提督「なるほどねえ……」

N大尉「正直、どの面下げて准尉……じゃなかった、少尉のいる場にいたらいいのか、わからないんだが……」

提督「今まさに似たような状況の奴がいるから、お前までぐちぐち言わなくていいぞ」

N大尉「その理屈は意味が分からんぞ!?」
665 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:54:32.53 ID:1LUsbeXzo

鳳翔「W大佐とV提督には一度お会いしていると聞いてますので、紹介は不要ですね?」

N大尉「あ、ああ、そうだな。まあ一度しか挨拶したことがないんだが……」

比叡「お待たせしました!!」ガチャ

望月「うおおおおーー!?」ガタッ

卯月「カレー来たぴょおおん!!」ガタッ

比叡「鳳翔さんたちは配膳のお手伝いお願いします!」

鳳翔「ええ、お任せください」

間宮「さ、行きましょう!」

以間宮「はいっ!」

W榛名「あ、私も……」

比叡「大丈夫! 榛名は座ってていいから!」ニコッ

W榛名「あ……」

鳳翔「N大尉たちもどうぞおかけください」

N大尉「あ、ああ」

 カチャカチャ…
666 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:55:31.28 ID:1LUsbeXzo

W球磨「おお……実際に目の前に並ぶと、においだけで涎が出てくるクマ」

W伊勢「すごいね、なんかいろいろ光ってるっていうか、輝いてる気がする」

W大佐「あの時以来……あの時以上だな」

N大尉「これは、提督少尉のところの比叡が作ったのか?」

鳳翔「はい、そうですよ」

N大尉「そうか。これはすごいな、香りだけでこんなにそそられるカレーは初めてだ」

W球磨「大尉は、これが比叡の作ったご飯だと聞いても驚かないクマ?」

N大尉「ああ、俺はあの島で執務をしたことがあって、そのときに比叡の作ったご飯を三食いただいたことがある」

W球磨「最初から腕前を知ってたクマ?」

N大尉「いやあ、さすがに最初は俺も驚いたよ。比叡が作ったと聞いて思わず聞き返したのは確かだ」

N大尉「しかしそこの大淀から、比叡は仮にも御召艦なのだからこのくらいはできて当然だ、と窘められてな……」

N大尉「確かに失礼だとも思ったし、御召艦だったというのも事実なんだから、なるほどとも思ったんだ」

V提督「……」

N大尉「だから、驚きはするが、大袈裟に驚くのも失礼かと思っている。が、これはちょっと大袈裟に驚いても良さそうだよな?」

W球磨「良さそうクマ」ウンウン
667 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:56:30.72 ID:1LUsbeXzo

比叡「熱いので気を付けてくださいね!」コトッ

V提督「! ……俺も……いいのか?」

比叡「はい、どうぞ!!」

W榛名「……」

鳳翔「行き渡りましたね。それではお召し上がりください」

提督「んじゃまあ、いただくか」

卯月望月「「いただきまーす!!」」クワッ!

弥生「ふたりともうるさい……」

卯月「ぱくぱくぱくぱく」

望月「もぐもぐもぐもぐ」

間宮「一心不乱に食べ始めましたね……」

弥生「……静かになった」

卯月「止まんないぴょん……」モギュモギュ

望月「うっめ……マジうっめ……」モギュモギュ
668 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 14:01:02.09 ID:1LUsbeXzo

N大尉「本当にうまいな……磯波はどうした? 遠慮しないで食べていいんだぞ?」モグモグ

磯波「は、はい……では……」オソルオソル パクリ

磯波「……」モグモグ

磯波「んんん〜〜〜〜〜!!!」キラキラキラッ

V提督「おお、光ってる光ってる。妙高も遠慮するなよ?」

妙高「はい、そのようにいたします」ニコ

W大佐「俺たちも食べるとしようか」

W球磨「おかわりいただけるクマ?」キラキラ

W伊勢「早っ!?」

W球磨「カレーは飲み物クマ」キリッ

W大佐「訳わからんこと言ってないで、ちゃんとよく噛んで食べろ」

V提督「……」

W榛名「……」ジトッ

比叡「あれ? お召し上がりにならないんですか?」

V提督「あ、いや……」
669 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 14:02:01.04 ID:1LUsbeXzo

比叡「どうぞ、お召し上がりください!」

V提督「俺……いや、私は……」

比叡「どうぞ!!」ズイ

V提督「……」

W榛名「……」

V提督「……」カチャ…

V提督「……」パク

V提督「……」モグモグ…

比叡「お味のほうは、いかがですか?」

V提督「ん、あ、ああ……そうだな……」

比叡「……」ジッ

V提督「うまい、な……」

比叡「良く聞こえなかったんで、もう一回お願いします!!」

V提督「!?」

W榛名「!?」

提督「……」
670 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 14:03:01.19 ID:1LUsbeXzo

V提督「い、いや、その……おいしい、ぞ……?」

比叡「えっ? やっぱりよく聞こえないですね!?」

V提督「」

比叡「すみませんが、もうちょっと大きな声でお願いします!!」

比叡「おいしかったですか? おいしくなかったですか?」

W榛名「……」

V提督「お……おいしくないわけがないだろう!?」

全員「「……」」

V提督「こんなうまいカレーを食べたのは、初めてお前のカレーを食べた時以来だ!!」

V提督「衝撃的過ぎて、言葉が出なかった」

V提督「こんなにおいしいものを、なんであいつらはまずいなんて言ってたのか、さっぱり理解できなかった!!」

V提督「いくらおいしいと訴えても、笑いながら否定されるのが悔しくて……俺も、比叡も馬鹿にされているみたいで耐えられなかった!」

V提督「俺は、あいつらに……恥を、かかせたかった……」

W榛名「……」ギリッ

提督「……」
671 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 14:04:16.49 ID:1LUsbeXzo

V提督「比叡……すまない……俺は」

比叡「はいストップ!!」

V提督「……」

比叡「だーかーらー! 私は、あなたから謝罪の言葉を聞きたいんじゃないんです!」

比叡「おいしかったか、おいしくなかったかを聞きたいんです!!」

比叡「どっちなんですか? 『司令』!!」

V提督「……!!」

V提督「おいしいとも」

V提督「涙が出るほど、おいしい……!」

比叡「……はー……」

W榛名「比叡お姉様……」

比叡「……」ニコ

比叡「……なら、頑張った甲斐がありました!!」フンス!

比叡「じゃ、別の料理も持ってきますね!」クルッ
672 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 14:05:16.23 ID:1LUsbeXzo

W榛名「比叡お姉様!? ……あ、あなたは、それだけで……それだけでよろしいんですか!?」ガタッ

比叡「え? それだけって……うん、いいよ?」

W榛名「……」

比叡「だって、あの鎮守府にいた時に、一番聞きたかった言葉が聞けたんだもの」ニコ…

W榛名「!!」ブワッ

V提督「……」

比叡「あれ、司令も食が進んでいませんね?」

提督「いいんだよ、俺はゆっくり味わって食いたいんだ。それより、ほかに料理があるって?」ガタッ

比叡「し、司令は座ってていいんですよ!?」

提督「いいから厨房へ行くぞ」チラッ

大和「……!」

鳳翔「では私たちも……」

大和「鳳翔さん……少しだけお待ちください」ヒソッ

鳳翔「! そういうことですか、致し方ありませんね」ニコッ
673 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 14:06:30.16 ID:1LUsbeXzo

 * 厨房 *

 パタン

比叡「……」

提督「……」

比叡「……はぁ……」

提督「それで、お前の気は済んだのか?」

比叡「……はい」コクン

提督「そうか」

比叡「……こういうの、なんて言うんですかね」グスッ

比叡「この世の、未練が、なくなった、って、言うか……」ポロポロ

提督「おいおい、それじゃまるで幽霊じゃねえか。お前、これから成仏して消えるのか」

比叡「あ、あはは……なんか、もう、本当に、消えてもいいくらい、ふわふわしてて……もう、長かったなあ、って……」ボロボロボロ…
674 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 14:07:44.70 ID:1LUsbeXzo

提督「……お前が望んでいた答えが聞けたんだ。嬉しくて浮足立ってるだけだろ」

比叡「司令、私……わた、し……っ!」ヒシッ

提督「ほら、ハンカチやるから、好きなだけ泣いとけ」ナデナデ

比叡「ひぐっ……ふえぇ……うええええ……!」グスグス

 *

比叡「はぁ……あー、すっきりした」

提督「もういいのか?」

比叡「はい! 嬉しくて天にも昇る気持ちって、こういうことを言うんでしょうね」

比叡「本当に飛んでっちゃいそうな感じだったけど……司令に捕まえててもらって、本当によかったです!」ニコー

提督「……そうか」アタマガリガリ

比叡「さあ、みんな待たせちゃってるし、早くこっちのお料理も持っていきましょう!」
675 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 14:09:46.13 ID:1LUsbeXzo

 * 食堂 *

W榛名「えぐっ、ぐすっ」ボロボロボロ

W伊勢「あーもう、泣きすぎだってば。よしよし」セナカサスリ

N大尉「おいしいと言ってもらいたかった、か……」

N大尉「……まあ確かに、これを比叡が作ったと余所の鎮守府で言ったとしたら、信じない人のほうが多そうだ」モグモグ

妙高「提督!?」

N大尉「仕方ないだろう? 俺が知ってるだけでも、比叡がカレーを作ってとんでもないことになった鎮守府が結構あるんだ」

N大尉「もちろん、ここ以外にも料理上手な比叡がいるだろうが、少数派である以上、いま広まっている噂をひっくり返すのは難しいと思うぞ?」

W大佐「確かに……同意する者は残念ながら少数だろうな」

N大尉「その噂を断つとしたら、実績を作るしかない」

N大尉「さっきも言ったが、比叡は本来は料理下手ではないはずだ。ここの比叡と、余所の比叡との違いは何か……」

N大尉「それを調べてほかの鎮守府でも対策を打って改善することができれば、こういう不名誉な話も徐々に消していけるだろう?」

妙高「提督……」
676 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 14:10:31.29 ID:1LUsbeXzo

N大尉「さしあたって、そこの榛名が比叡と古い知り合いなら、理由というかコツみたいなものを教えてもらうのがいいかと思うんだが……」

W榛名「うっ、ぐずっ、比叡お姉様ぁああ」ボロボロボロ

N大尉「その話は後にしたほうが良いみたいだな?」

鳳翔「今でなくても、あとからゆっくり比叡さんご本人から聞いてもいいと思いますよ。私も教えていただきましたし」

N大尉「ああ、そうしよう。比叡以外にも問題のある艦娘がいるらしいから、同様の対応ができないか進言してみようかな」

比叡「お待たせしましたー!」ガラガラガラッ

望月「!!」ガタッ!

卯月「!!」ガタッ!

W伊勢「あのふたりの目が血走ってるんだけど……」

W球磨「何が来たクマ?」フリムキ

比叡「からあげです!」ドンッ!
677 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 14:11:15.71 ID:1LUsbeXzo

卯月望月「「いただきまあああああす!!」」グワッ!!

弥生「速っ!?」

 ムシャーー

 パァァ…

W伊勢「? なんか光ってる?」

卯月(全裸)「うますぎぴょん……!!」フワァ

望月(全裸)「マジうっま……!!」フワァ

W伊勢「!?」

W大佐「!?」

N大尉「!?」

大和「!?」

以間宮「!?」

妙高「……」

鳳翔「……」

比叡「ひえぇ……なんで私のからあげ食べて飛んでるの……?」

弥生「ふたりとも……お行儀悪い」モギュモギュ

間宮「お行儀とか言ってるレベルじゃないのでは!?」

提督「そうだぞ、ちゃんと野菜も食え」サラダドサッ

間宮「少尉も何がそうだぞなんですか!?」
678 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 14:12:15.92 ID:1LUsbeXzo

N大尉「……いったい何が起きたんだ? からあげ食っただけだよな?」

磯波「これ、ですよね……お、おいしそう……! わ、私もいただいてみます……はむ」シャクッ

妙高「あ」

 ペカー

磯波(全裸)「……素敵……!」フワァ

N提督「」

妙高「」

磯波(全裸)「これ……イけます……!!」グッ

妙高「どこにイく気ですか!?」ガビーン

N大尉「……でっ……っっか……!!」ハナヂポタポタ

妙高「どこを見てるんですか!!!」バチーン!

N大尉「はぶァ!?」

弥生(どこかで見覚えのある光景が……)

W大佐「一体何が起こっているん……んんん?」

熊?「ヴォー……」カラアゲモッシャモッシャ

W伊勢「」

W大佐「」

W球磨「はっ!? いま、一瞬野生に戻ったような錯覚に陥ったクマ!!」モシャッ

W伊勢「ウソでしょ?」シロメ

W大佐「ウソだろ?」シロメ
679 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 14:13:15.58 ID:1LUsbeXzo

比叡「と、とにかく、みんなに喜んでいただいてるみたいで嬉しいです!」

W榛名「比叡お姉様ああああ!」ヒシッ ウワーン

比叡「榛名……! 心配かけてごめんね?」ナデナデ

W榛名「そ、そん、そんなこと……うわああああん!!」ナミダジョバー

龍驤「一応、まあるく収まったんかな?」

提督「くっそカオスだけどな」

雲龍「狂喜乱舞を通り越して阿鼻叫喚ね」カラアゲモグモグ

島妖精B「それよりこっちにも早くご飯取り分けてよー!」ピョンピョン

島妖精C「私たちも手伝ったんだからねー!」

陸奥「わかったわ、ちょっと待ってね」ヨソイヨソイ

島妖精D「からあげにはビールだが、カレーには赤ワインを合わせたい……! 悩む……!」ウーン

龍驤「キミは真っ昼間から飲むんやないよ」ツッコミ

雲龍「私はからあげにはレモンサワーがいいと思う」

陸奥「ハイボールもおしゃれだと思うけど?」

島妖精D「!! それもアリだな……!!」ジュルリ

龍驤「完全に飲兵衛の会話やないかい!」ツッコミ
680 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 14:15:00.88 ID:1LUsbeXzo
今回はここまで。
681 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:20:48.91 ID:Q55X+O8qo
続きです。
682 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:21:31.33 ID:Q55X+O8qo

 * 食事会終了 *

提督「鳳翔、ありがとな。比叡の奴もすっきりできたみたいだ」

鳳翔「いえ、私どものV提督のためでもありますので。それに以前、少尉には鎮守府そのものを助けていただきましたから」

提督「その礼はすでに受け取ってると思ったんだがな……」

提督「ああ、そうだ、そのことで卯月達には謝らなきゃいけねえ」

卯月「何の話ぴょん?」

提督「俺が島を焼いたせいで、お前たちから譲ってもらった将棋盤とか雑誌とかいろいろを、一緒に燃やしちまったんだ」

提督「せっかくの贈り物を、申し訳ない」ペコリ

卯月「……」

望月「……」

弥生「いえ、それは、しょうがない、です」

鳳翔「そうですよ、少尉たちが無事だっただけでも奇跡的だったんでしょう?」

提督「それはそれだ。あれはわざわざ買い物までしてきて、贈ってくれたものだろう?」
683 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:22:21.33 ID:Q55X+O8qo

弥生「お買い物は、気分転換も兼ねてました。私たちは私たちで、お買い物が楽しかったから、別にいい、です」

鳳翔「ええ、どうかお気になさらずに」

提督「大事に使いたかったんだがな。すまない」

卯月「……」

望月「……」

弥生「ふたりとも、どうしたの」

卯月「少尉に謝られたぴょん」マガオ

望月「今夜、雹でも降るんじゃね?」マガオ

弥生「冗談はほどほどにして」

提督「お前ら俺をなんだと思ってんだ」

卯月「スーパーひねくれアイアンクロー魔神ぴょん」ユビサシ

望月「そうじゃなかったら、男になったあたしだね」ユビサシ

提督「……んん? 間違ってねえな?」クビカシゲ

弥生「そこで納得しちゃだめです」ツッコミ
684 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:23:15.71 ID:Q55X+O8qo

以間宮「そんな! 駄目なんですか!?」

提督「ん?」

妙高「今の大尉の立場では難しいですね……」

N大尉「そうだな……申し出は嬉しいんだが」

鳳翔「少尉のことではなさそうですね……どうかなさったんですか?」

妙高「こちらの元以提督鎮守府の間宮さんが、N大尉のところで働きたいと仰っていたんですが……」

N大尉「俺はまだ、鎮守府を任される立場にないんだよ」

鳳翔「まあ……」

N大尉「俺はこのところずっと、あちこちの鎮守府の問題を見て回る特警もどきの任務をやってるんだ」

妙高「私と磯波さんがお目付け役です」

鳳翔「いいように使われてらっしゃるんですね……」

N大尉「ああ。俺もいい加減に大湊に帰りたいんだが、本営が俺に任せたい任務はまだまだあるらしい」

N大尉「俺みたいに自由に動けて、艦娘とも問題なくコミュニケーションが取れる人間というのがなかなかいなくて……」

N大尉「本営からは、代役も立てられないから、今の任務を継続してくれ、と」ハァ
685 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:24:05.76 ID:Q55X+O8qo

N大尉「そんな状況で間宮が加わっても、間宮本来の力は発揮できないだろう? まさか行く先々で厨房を借りるわけにもいかないし」

鳳翔「それはそうですね……」

提督「……新任の礼提督に聞いてみるか。まだ間宮が着任してないなら……」

龍驤「あー、あっちはもう準備できてるらしいよ?」

提督「なに? そうなのか?」

龍驤「うん。うちら、礼提督のところにお世話になろうと思ってるんよ、そのときに聞いたんやけど」

雲龍「外の世界を見に行くのも大事だと思って。挨拶に行ったときに、そんな話をしていたわ」

提督「そうか、お前らは転籍する気になったか。それならなおのこと、龍驤たちと一緒のほうがいいかと思ったんだが……」

陸奥「じゃあ、提督のところでお世話になったらいいんじゃない?」

提督「は!? 俺のところで!?」

N大尉「……悪くないな」

提督「待て待て、何を見て言ってんだ!?」

N大尉「轟沈した艦娘と3年近く一緒にいて、その艦娘たちが原因でなにか起きたことはなかったんだろう?」

N大尉「そしてその艦娘たちからは信頼を得ている。十分すぎる実績じゃないか」
686 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:24:46.07 ID:Q55X+O8qo

鳳翔「そうですね。その意味では、提督少尉は適任ですね」

陸奥「それに、私も残るんだし、四六時中提督が見てる必要はないから大丈夫よ」

提督「はあ!? 陸奥は残るのか!?」

陸奥「あら、不満?」

提督「不満とかそういう問題じゃねえよ……龍驤は転籍するんだろう? お前こそ大丈夫なのか?」

陸奥「あらあら、それこそ失礼しちゃうわ。いつまでも長門や龍驤がいないと何もできないなんて思ってる?」

提督「……いや、お前がそう言うなら、信用するし尊重もするけどよ。間宮が俺たちの鎮守府で生活できるかどうかは、また話が別だぞ」

提督「深海棲艦も一緒に暮らすんだ、問題なくやっていけるか?」

龍驤「以提督と向き合うよりは楽なんちゃうかなあ?」

妙高「ええ。深海棲艦や少尉のほうがお相手しやすいかと」

提督「どんだけ人間離れしてたんだよ、そいつ……いや、写真見たことあるし確かに人間離れした感じだけどよ」

N大尉「まあとにかく、我々が何を言おうと一番肝心なのは当人だろう。どうだ間宮、少尉のもとで働いてみる気はないか」

以間宮「は、はあ……だ、大丈夫なんでしょうか」

N大尉「環境が環境だけに気乗りはしないだろうが、艦娘にはこの上なく優しいはずだぞ?」
687 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:25:30.33 ID:Q55X+O8qo

陸奥「ええ、きっと大丈夫よ。少なくとも提督から私たちに手を出すことは絶対にないし……」

陸奥「仮に手を出せるようになってたら、そこにいる大和が提督を放っておかないはずだもの」ウフフッ

大和「!?」マッカ

提督「……」

陸奥「大和以外にも提督を狙ってる艦娘、たくさんいるものね」ウフフ

提督「……あまり茶化してくれるなよ」アタマガリガリ

以間宮「陸奥さんがそこまで仰るなら……」

提督「可能であれば海軍へ復帰できるように準備しててほしいもんだが……」

鳳翔「そうなるとしたら、N大尉が鎮守府に戻れた時ですね」

N大尉「そうだなあ……それもいつになることやら」
688 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:26:15.73 ID:Q55X+O8qo

卯月「ところでうーちゃん、ひとつ重大なことに気付いちゃったぴょん」

望月「ん、なに? またろくでもないこと思いついたの?」

卯月「辛辣ぴょん」

弥生「……なに?」(←心底興味なさそうな顔)

卯月「……うーちゃんたちは海域で見つけてもらったドロップ艦ぴょん?」

弥生「うん」

望月「そだねえ」

卯月「うちの初雪や磯波や潮や村雨は、建造艦だったぴょん」

弥生「うん」

望月「それがどうかし……あ」

卯月「もしかして提督の好みが建造に影響してるんじゃないかと思ったぴょん……!」

望月「……」

弥生「……」

望月「そんなわけないだろーって言いたかったけど、そーいや鳳翔さんも建造艦だよね。一緒に入渠したことあるけど、結構……」ポ

弥生「うん……ある」ポ
689 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:27:00.91 ID:Q55X+O8qo

卯月「もしかして提督少尉もそうだぴょん!?」ハッ!

望月「いや、少尉に限っては、そういうのないない。絶対ない」

弥生「うん。そういうの、面倒だって言ってたし」

卯月「そういえばそうだったぴょん……大和さんは少尉が建造したから少尉が好きなのかと思ったけど、そういうわけじゃないぴょん?」

望月「うーん、どーだろ? だいたい、建造したらその人を好きになるって、あの大和さんがそんな単純でいいの?」

大和「あら、大和を呼びましたか?」

望月「あ、呼んだっていうか、なんていうか」

弥生「えっと……大和さんが、少尉を好きなのは、なんでか、って……」

大和「え? そ、それは……」ポッ

望月「あたしたちは海域で見つけてもらったんだけど、大和さんは建造艦っしょ? そこでなんか違いとかあったのかなーってさ?」

大和「うーん……」

島妖精A「なんだ、大和の建造の話か?」テクテク

卯月「そうだぴょん! 大和さんが少尉のことを大好きなのは、少尉の影響じゃないか、って考えてたぴょん」
690 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:27:45.92 ID:Q55X+O8qo

島妖精A「それだったら考えられる影響はふたつだな」

大和「あるんですか?」ヨウセイヒロイアゲ

島妖精A「そういえば大和に話すのは初めてだったか。デリケートな話になるが、話してもいいか?」ヤマトノカタニノリ

大和「ええ、お願いします」コク

島妖精A「考えられる理由のひとつは、大和を建造したのが私たちだっていうところだ」

望月「え? 少尉が建造したんじゃないってこと!?」

島妖精A「ああ、そうだ」

大和「そうだったんですか……!?」

卯月「ほえ〜……なんでそんなことになったんだぴょん?」

島妖精A「自分で言うのも少し恥ずかしいが、その当時、私たちは少尉に恩義というか、感謝の気持ちを持っていたんだ」

望月「へー、なんかしてもらってたの?」

島妖精A「提督が来るまで、あの島には艦娘の遺体が砂浜を埋め尽くさんばかりに漂着していたんだ」

島妖精A「人間のために戦って沈んだのに、あの島に来た人間たちは、それを見て悲鳴を上げたり目を背けたり、ひどいもんだった」
691 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:28:30.69 ID:Q55X+O8qo

島妖精A「……とはいえ、あの島に連れてこられた人間が、みんな大佐に島流しにあった人間だと思えば無理もないかもしれないが」

望月「待って待って、さらっと物騒なこと言ってない!?」

卯月「あの島のことにちょっと深入りすると途端に話が重たくなるのは、何とかしてほしいぴょん……」

島妖精A「それは仕方ないだろう。実際にわたしたちが見たんだから」

島妖精A「とにかく、そのせいで私たちも人間を嫌悪していた時期がある。提督も追い出すつもりでいたくらいだ」

卯月「そんなとこに少尉が来たら、余計に悪化すると思うぴょん……」

島妖精A「それが、提督がその野晒しになっていた艦娘を埋葬したいと言ってきたんだ。あの申し出には驚いたが、それ以上に嬉しかったな」

島妖精A「それ以降も流れ着いてきた艦娘を埋葬したり、一緒に畑を作ったりしてるうちに、まあ悪い奴じゃないかもな、と思えるようになって」

島妖精A「決定的だったのは、初めてこの島に生きて流れ着いた艦娘を、提督が助けようとした時だ」

島妖精A「その一件で、設備も修理してもらったりして、鎮守府がまともに運営できるようになったっていう経緯がある」

望月「ふむふむ」

島妖精A「それまでは修理用のドックすらまともに動かなかったから、それを修繕するために鉄屑とか油とか、そういう資材を集めていたんだ」

島妖精A「ところが、それが提督のおかげで不要になって、使う機会を失った」

島妖精A「じゃあどうするか、という話になったときに、建造に使うか、ということになったんだ」

弥生「それで大和さんができたの……?」
692 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:29:30.64 ID:Q55X+O8qo

望月「っつうか、妖精さんが勝手にそんなことしていいの?」

島妖精A「言われてみればそうだが……提督が許さないとは思わなかったな。私たちに対しても常々好きにしろと言っていたし」

島妖精A「提督自身は艦娘の建造をしないと公言しているが、私たちが勝手に使う分には悪いとは言っていない、と勝手に解釈したというのもある」

卯月「自由すぎるぴょん……」

島妖精A「ともあれ、そういう経緯があって私たちが、提督の力になってくれるような艦娘を期待しながら、建造ボタンを押したんだ」

島妖精A「私たちのそういう願いと祈りが込められていたのが、大和の建造時に影響したんじゃないかと思っている」

大和「……」

卯月「それじゃあ、少尉にとっては大和さんはサプライズだったぴょん?」

島妖精A「そういうことになるな。それからふたつ目の理由は、その大和の建造に使った資材だな」

島妖精A「大和の建造に使ったのは、轟沈して流れ着いた艦娘の壊れた艤装のかけらや、燃料、弾薬を回収して集めた資材なんだ」

弥生「轟沈艦の……!?」

望月「埋葬してもらった艦娘の艤装かあ……」

島妖精A「大和が提督に夢中なのも、そういう私たちの思いと、轟沈してから弔ってくれた艦娘たちの思いが載ったんだろうと思っていた」

大和「……」
693 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:30:16.17 ID:Q55X+O8qo

望月「ってことは、妖精さんの気持ちや境遇も建造される艦娘に影響するってことなのかな?」

島妖精A「可能性としてはあるかもしれない。ただ、ここまで喋っておいて今更だが……」

島妖精A「大和の提督への好意が最初から作られたものだとは思いたくないな」

望月「え?」

島妖精A「大和には最初から提督が必要だった。わたしはそれでいいと思う」

大和「……!」

島妖精A「提督自身の生い立ちも考えると、運命……というより因果と呼んだほうがいいな。ここに来るまでにいろんなことがあったはずだ」

島妖精A「それを乗り越えてきて邂逅したんだ。そういう出逢いがあったっていいと思う」

卯月「急にのろけ話っぽくなったぴょん……」

島妖精G「昔のAちゃんなら考えられない、ロマンチシズム溢れるセリフだねえ? いちばん提督にキツく当たってたのに」ヒョコッ

島妖精A「ふん、昔は昔だ。冷やかすな」プイ

島妖精H「でもまあ、Aちゃんの話にはわたしも賛成かな〜」ヒョコッ

島妖精A「ああ。私たちも直接、大和に、提督を好きになれ、と言ったこともないわけだからな。それに……」

望月「それに?」
694 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:32:31.04 ID:Q55X+O8qo

島妖精A「そういう影響も考えられるというだけで、一番なのは、純粋に提督が大和の好みだっただけなんだと思うが?」

大和「ほえっ!?」カァッ

卯月「ほ〜ぅ……そう思う理由はなんだぴょん?」

島妖精G「提督の写真を見せた瞬間、大和の主砲が最大仰角になってたんだよね」

島妖精G「自分で抑えきれないくらいテンションが上がったんだと思うよ?」

大和「ちょっ」マッカ

島妖精A「まあ、昔はどうあれ今も提督のことが好きなんだし、昔がどうだったかなんてのは些末なことだ」

島妖精G「それもそうだねえ」

卯月「大和さんと提督の話、もっと聞かせるぴょん!」

望月「そういう誘い受けは関心できないなあ?」

島妖精A「それなら大和から直接聞いたほうが早いだろう? 本人が一番わかっているはずだからな」

卯月「それもそうだぴょん」クルリ

望月「さあさあ、少尉とどんな恥ずかしいことをしたのかなあ?」ニチャア…

大和「ちょっ!?」ミミマデマッカ

弥生「……」アタマオサエ
695 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:33:15.76 ID:Q55X+O8qo

卯月「なるほど……建造時に妖精さんが影響している説のほうが説得力あるぴょん……はっ!? ということは!!」

望月「なんだあ?」

弥生「?」

卯月「うーちゃんたちの鎮守府の工廠に、おっぱい大好きな妖精さんがいるぴょん!?」

望月「」

弥生「」

大和「」

島妖精G「あー、うん、まあ、そうねえ……」

島妖精A「……いったい何の話だ?」

島妖精H「さあ?」
696 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:34:00.68 ID:Q55X+O8qo

 *

W大佐「そうだ。少尉、せっかくなのでこの場で聞いておきたい」

提督「なんだ?」

W大佐「君は、深海棲艦の目的を知っているか?」

提督「目的……目的、ねえ……改めて聞かれると、俺も知らねえな?」

W大佐「知らないのか?」

提督「あいつらには俺の目的を伝えて、それで協力してもらおう、って頭だったからな。あいつら自身の戦う理由は聞いてなかったな……」

W大佐「……もし、深海棲艦の目的が世界中の海を支配することであれば、我々は退くわけにはいかない」

W大佐「その足掛かりにされるような拠点を作られるのは、正直に言えば望ましくないことだ」

W大佐「これはあくまで私自身の個人的な感想だが……」

W大佐「たとえあの島の海域だけでも深海棲艦に引き渡すことにしたのは、間違いだと思っている」

W大佐「人類は、過剰に……必要以上に深海棲艦に譲歩しすぎたと思っている」

提督「……」

W大佐「悪く思わないでくれ。だが、おそらく世界中のトップは、深海棲艦に領土を作られたことを面白くないと思っているはずだ」

提督「まあ、言いたいことはわからなくもねえよ。深海棲艦と言えば、民間人も見境なく襲っていた異形の化け物どもだからな」

提督「いくら話ができるようになるとはいえ、知らないものに恐怖を抱くのは至極当然のことだろうさ」
697 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:34:45.86 ID:Q55X+O8qo

W大佐「……君が深海棲艦の目的を知らないのに、楽観視しているのはなぜだ?」

提督「別に楽観視してるつもりはないが……俺たちが望んでいるのは、俺たちが平穏と安寧を得られる居場所であって、戦争じゃない」

提督「泊地棲姫にも専守防衛を頼んで、わかったと言ってもらえたしな。それ以上あいつらに踏み込んでないだけだ」

W大佐「……では、彼女たちは外海へ出て他を脅かすつもりはないと?」

提督「その認識でいいはずだ。俺としてもそんなことをさせる気はない」

提督「とりあえず今は島の整備もしてくれてるし、今の俺たちにはありがたい存在だ」

W大佐「……」

提督「……まだ何かあんのか?」

W大佐「これは、君に言っても仕方のないことなのかもしれないが……君はすべての深海棲艦と友好関係にあるわけではないんだな?」

提督「そうだな。俺に協力してくれているのは、いまのところ泊地棲姫の勢力だけだ。他にどんな連中がいるのかすらわかってねえ」

W大佐「……では、深海棲艦からの侵略行為は、一部は収まっても、これからも止まることはない、という認識でいいだろうか?」

提督「それでいいだろうな。少なくとも、俺の知らない連中の暴走を止めろと言われても、止めようがねえ」

W大佐「ふむ……それなら、間違ってはいないか」

提督「……?」

W大佐「先の話し合いで、君はあの島を深海棲艦が強奪したことにすればいいと言っていたそうだが」

W大佐「私は、話し合いで君たちに割譲したことにしたほうが良い、と、H大将閣下に具申させてもらった」
698 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:35:33.43 ID:Q55X+O8qo

W大佐「もし仮に深海棲艦が強奪したことにしてしまうと、深海棲艦が人間から領土を強奪できた事実ができてしまう」

W大佐「そうなった場合、他の深海勢力も、我も我もと人間の領土に押し入り、深海棲艦との戦闘が激化することは容易に予想できる」

W大佐「それよりは、我々が泊地棲姫との停戦を認め、一時的にでも割譲したことにしたほうが深海棲艦の姿勢も変わるのではないかと考えた」

提督「なるほど、そういうことか……」

W大佐「戦わずに済む前例ができれば、それに従う他の深海棲艦が現れる希望も持てる」

W大佐「ただ、それを望まない深海棲艦もいるだろう。人間に極端な憎悪を持ち、復讐と滅亡を誓う者もいるはずだ」

提督「俺にそれを止めろと?」

W大佐「……仮に止めろと言われたら、できるか?」

提督「おそらく、できねえな。俺としても、それがそいつの望みなら立場的には見送るしかねえ」

W大佐「であれば、いまの話と逆に、深海棲艦に並々ならない憎悪を持つ者がいても、それを否定しないな?」

提督「……」

W大佐「君の話を聞いて私が気になったのは、君が艦娘と戦えるか、という点だ」

提督「あぁ……艦娘とだと!?」

W大佐「全ての深海棲艦を忌み嫌い、排斥を望む提督と、それに賛同する艦娘にとっては、深海棲艦との和睦を訴える派閥は裏切者でしかない」

W大佐「H大将閣下の配下には、君が会食前に指摘した通り、深海棲艦の殲滅を望む提督たちがいて、今回の対話に少なからず異を唱えている」
699 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:36:31.08 ID:Q55X+O8qo

W大佐「これから海軍を離脱し、深海棲艦と一緒に暮らそうという君もまた、排除されるべき敵と認識されるはずだ」

W大佐「これまで艦娘を救うことに尽力してきたという君が、そういう強硬派、過激派と言える艦娘と躊躇せず戦えるのか」

W大佐「その覚悟があるのかを、確かめておきたかった」

提督「……なるほど。そいつは想定外だった」

提督「深海棲艦を無条件で敵視する艦娘か……まあ、いるんだろうな。何言っても聞く耳持たねえ困った奴が」ハァ…

W大佐「それからもうひとつ」

W大佐「海軍は、これまで発生した深海勢力を、どのようなかたちであれ、いずれも邀撃し、殲滅してきた。それこそ、どんな犠牲を払ってでもだ」

W大佐「これまでそうしてひたすら血を流して正義を示してきた者たちにとっても、君のやり方を素直に受け入れられない者がいるだろう」

提督「……まあ、和解できるんなら最初からそうしろ、って、言われそうではあるな……」

W大佐「最悪、同じ台詞を深海棲艦からも浴びせられるかもしれないな」

提督「ありえるな……面倒臭え……」ゲンナリ

W大佐「深海棲艦を討ち滅ぼすために、我々人間は多くの犠牲を出してきた。人間にも、艦娘にも」

W大佐「その犠牲になった艦娘たちを弔い、救ってきた君が彼らの標的になるのが納得いかないとは思ってはいるのだが……」

W大佐「君には、そういう悩める者たちがいることを、どうか覚えておいてほしい」

提督「……ああ」コク
700 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/11/10(木) 22:37:15.70 ID:Q55X+O8qo
今回はここまで。
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/12/07(水) 13:03:48.45 ID:x1ergJr3O
保守
702 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/12/11(日) 22:32:27.81 ID:zj9ZaBPqo
お待たせしました、続きです。
703 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/12/11(日) 22:33:18.77 ID:zj9ZaBPqo

 * 1週間後 *

 * 墓場島 新埠頭 *

長門「前に来た時より工事が進んでいるな」

利根「ほうほう、これが新しい港か……確かに間取り的には見覚えのある光景じゃな」

筑摩「深海っぽい素材の建物なんですね。普通の人が来たら驚くでしょうね」

神通「ここで、深海棲艦との交渉が始められるんですね……」

提督「実際に交渉の舞台になる建物は別に用意する予定だ。こっちは今までと同じく、俺たちが執務するスペースだ」

陸奥「奥へ行くと居住区ね」

龍驤「なんか、昔より広く見えるなあ?」

提督「おう、実際に広いぞ。深海の連中には体が大きい奴もいるからな」

雲龍「……ねえ、提督? ほら、あそこ。メディウムの子がいるわ」

提督「うん? ……ありゃ、ニコか?」

 *

ニコ「ああ、来た来た。待ってたよ、魔神様」

提督「よう。ニコはなんでここにいるんだ? 今日から海軍の人間が入るから、離れ小島に避難する手筈だったよな?」

ニコ「お知らせがあるんだ。魔神様に何人かお客様が来ているよ」

提督「俺にか?」

ニコ「うん。魔神様もここに来るだろうから、待ってたんだ」

提督「長門、悪いがこの場は任せていいか? 俺たちはニコと一緒に行ってみる」
704 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/12/11(日) 22:34:03.02 ID:zj9ZaBPqo

 * 墓場島 北の離れ小島(ル級の塒) *

ル級「アラ、来タノネ」

メリンダ「お待ちしておりました、ご主人様」

提督「よう、俺に客だって?」

ル級「ソウヨ。アナタニ会ワセロ、ッテ」

??「やーせーんーーー! 早く夜戦させてよーーー!!」

提督「!?」

神通「あの声は……川内姉さん!?」

??→川内?「もー! やっと体ができたのに、なんで鎮守府がなくなっちゃってるのさ!!」

??「少しは落ち着かぬか。おぬしは過去に提督たちに迷惑をかけているのだぞ」

筑摩「……利根姉さん!?」

利根「吾輩じゃと!?」

??→利根?「おお、利根と筑摩が来たのか! たまたまかもしれぬが、これもまた巡り合わせじゃな!」ニコニコ
705 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/12/11(日) 22:34:48.88 ID:zj9ZaBPqo

提督「あとの二人は初めて見る顔……いや、お前は確か……」

メリンダ「ご紹介いたします。こちらは早霜様」

早霜「……」ペコリ

ル級「コッチハ集積地棲姫ネ」

集積地棲姫「……オ前ガ提督カ。私タチトノ、交渉場所ヲ作ッタトカイウ……」ジロリ

提督「……」

神通「姫級……!」

龍驤「大物やないか……!」

川内?「そんなことより夜戦ーーー!!」

提督「ああもう、うるせえなこいつ!」

雲龍「提督」

提督「ん?」

雲龍「このふたり、なんとなくだけど、気配に覚えがあるわ。もしかしたら、あの島で出会った幽霊かも」

提督「幽霊? おい、まさか……こいつ、うちの川内になり替わろうとしてたあいつか!?」

神通「川内姉さんに取り憑いていた、あの……!?」

幽霊だった川内(以下、幽川内)「なんだよぅ、いまの私は幽霊じゃないよ!」
706 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/12/11(日) 22:35:33.63 ID:zj9ZaBPqo

幽川内「ちゃんと体だって元通り……ってわけじゃないけど、新しくできたんだから!」

利根「それではこちらのもう一人の吾輩は……!」

筑摩「利根姉さんに憑依していた、あの利根姉さんですか!?」

利根?→幽利根「うむ。長らく、そこの利根の背後でおぬしたちを見守ってきたのが、この吾輩である!」

幽利根「火山の噴火から難を逃れた提督たちの無事を見届け、ひとまず安心しておったわけじゃが……」

幽利根「何の因果か、こうやってまた再び艦娘として生まれ変われたわけじゃ!」

提督「これはあれか? 時雨と同じように、ドロップ艦として体を得たってことか?」

ル級「多分ソウイウコトジャナイカシラ。私モ見タワケジャナイケド」

幽川内「とにかく、提督が来てくれたってことは、私が夜戦してもいいってことだよね!?」

提督「その前に、こっちの川内に詫びを入れてからにしろ」

幽川内「えー?」

幽利根「えー、ではない。艦隊に加わる以上、手続きと挨拶は忘れてはならん。さもなくば……」

神通「……」ギラッ

幽利根「そこに控えておる神通が容赦せんだろうよ」

幽川内「うー……」タラリ
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