【ラブライブ】海未「罪と罰」【仮面ライダーW】

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169 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/18(日) 22:35:02.85 ID:C/Za1RMU0


海未「っ」

にこ「!?」



その声に反応して、にこたちはこの声の主の方を向く。

息を切らして。
それでも、こっちを……いえ、海未を見つめるそいつは。
手にした『それ』の刃先を海未に向けて、叫んだ。




穂乃果「大バカ海未ちゃんっ!!」

穂乃果「海未ちゃんは、穂乃果が止めるっ!!」




にこ「はぁ……?」



思わず、間の抜けた声が出てしまった。
いや。
だって、たぶん誰だってそうなるわよ。
穂乃果が持っていたのは、だって……『竹刀』だったんだもの。
170 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2018/03/18(日) 22:43:42.48 ID:C/Za1RMU0


海未「…………穂乃果」

穂乃果「なに!」



呆然として、穂乃果の方を見ていると、海未が穂乃果に声をかけていた。
銃は下ろしてる。
けど、相変わらず警戒はしたままで、じっと穂乃果を見つめている。



海未「言っておきますが、これは遊びではありません」

穂乃果「知ってるよっ」

海未「…………私は姿こそ変わっていませんが、ドーパント。貴女を確実に……殺す力を持っています」

穂乃果「それも、知ってる」




海未「っ、なら、ふざけるのは止めなさいっ!!」




声を荒立てる海未。
苛立ちと怒気が伝わってくる。
これは、穂乃果にも伝わってるはず。
なのに、



にこ「穂乃果……?」

穂乃果「にこちゃん、ごめんね。アイドルなのにボロボロにさせちゃって……」



穂乃果は申し訳なさそうに笑う。

なに、ワケわかんないこと……。
171 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/18(日) 22:50:13.05 ID:C/Za1RMU0





ーー カチャッ ーー





ふと。
穂乃果はポケットからなにかを取り出した。
それって……?



にこ「メモリ……?」



にこの言葉に、穂乃果は静かに頷いた。
それは少なくとも、ドーパントになるために使うものじゃない。
『ジョーカー』や『サイクロン』と同じ、純正化されたもの。



海未「…………貴女が、戦うと?」



仮面ライダーになるってこと?
でも、あんた、どのメモリとも適合率が低いって言われて……?



穂乃果「これは、違うんだ」



海未の言葉と、にこの心の声を否定するように、首を振る。
それじゃあ、そのメモリは?



穂乃果「これは…………」





穂乃果「メモリの効果を完全に無効化するメモリ」

穂乃果「名前は『     』」


172 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/18(日) 22:51:37.36 ID:C/Za1RMU0


穂乃果「……そう、だよ」

穂乃果「このメモリはーー」




穂乃果「ーーことりちゃんを助けるためのものだよ!」



173 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/18(日) 23:00:54.80 ID:C/Za1RMU0



海未「!?」



にこ「あんた、いつの間にそんなもの!!」

穂乃果「……最初から作ってもらえるように頼んではいたよ」



できたのは最近で、しかも、一回しか使えないらしいけど。

穂乃果は苦笑しながらそう言った。
けど、それがあれば……!



海未「………………ことりを……救えると?」

穂乃果「うん」



海未の言葉に、穂乃果は力強く頷く。



にこ「あんた……」

穂乃果「あはは、ごめんね、にこちゃん。これのこと話してなくて」

にこ「ホントよ……」



こんなのがあるなら、にこがここまで体張った意味ないじゃない。
これなら、海未も納得してーー




海未「……運よく、それを使ったとして……」

海未「成功したとしても、『彼女』がいます」

海未「穂乃果、あなたでは『彼女』には勝てない……」

174 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/18(日) 23:07:25.64 ID:C/Za1RMU0
そう、だった。
この化物染みた海未でも勝てなかった相手。
それがいる。

…………穂乃果は一体どんな策をーー




穂乃果「穂乃果が倒すよ」

にこ「……………………は?」




穂乃果「穂乃果が倒す!」




あぁ、そうだったわね。
こいつは……。



海未「………………話は分かりました」

穂乃果「! 海未ちゃん!」



海未「それを私に渡しなさい」



まぁ、そうなるわよね。
うん。
にこが海未でもそう言うわよ。
175 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/18(日) 23:11:55.97 ID:C/Za1RMU0



穂乃果「渡さない」



海未「!」

穂乃果「今の海未ちゃんには絶対渡さないもん!」

海未「穂乃果!!」



まるで、駄々っ子みたいに。
そう言う穂乃果。

あんた、何考えて……?



海未「いい加減にしなさいっ!」

穂乃果「いい加減にするのは、海未ちゃんでしょっ!」

海未「っ、減らず口をッ!」



穂乃果「これが欲しかったらーー」




穂乃果「穂乃果を倒して奪ってみろ!!」




にこ「あんた、ほんとに……」



なに、考えてんのよ……。
176 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/18(日) 23:12:53.98 ID:C/Za1RMU0
本日はここまで。
あと1、2回で終わります。
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 21:08:58.29 ID:8LswzIyOo
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 22:18:54.76 ID:iEwHEMUDO
来てた
179 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/25(日) 21:17:50.83 ID:POzr8+aS0
本日更新します。
180 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/25(日) 21:55:04.96 ID:POzr8+aS0
ーーーーーー
181 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2018/03/25(日) 22:05:18.16 ID:POzr8+aS0
〜〜〜〜〜〜




「か、はっ……っ」



息ができない。
どうにか呼吸しようとしても、それは叶いません。



『……………………』



私の上に馬乗りになって、私の首を絞める。

私の隣で、柔らかく、優しく笑っていた貴女。
私の名前を愛おしそうに呼んでくれていた貴女。
そんな貴女はもういない。
ただ、感情が抜け落ちたような表情で私を見下ろしています。



「こ…………と……」

『………………』



か細い声。
それはもう目の前の彼女には届かない。



「こ………………」

『………………』



ーー スッ ーー



最後の力で、彼女の頬を撫でる。
その温度は燃えるように熱くて、彼女がもう人間でなくなっているのが嫌でもわかってしまった。

あぁ。
そうですか。
私は今、貴女に殺されるのですね。
……それもいいかもしれません。

だから……。




「なか……な、い…………で……」




〜〜〜〜〜
182 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2018/03/25(日) 22:11:33.11 ID:POzr8+aS0
それが、いつか見せられた光景です。
私があの人に敗北する度に見せられる悪夢。



ことりがドーパントとして『孵化』し、涙を流しながら私を手にかけるという光景。



……最悪の光景ですね。

それが恐らくあの人の……亜坂真白のメモリの能力なのでしょう。
まだ詳細は分かっていませんが、幻覚の類いの能力。
それ以外にも複数のメモリを取り込んでいるようですが。



………………。



……えぇ。
だから、私はこの光景が未来とならないために、力をつけたんです。
あの人を殺し、ことりを取り戻すための力を。

最悪の光景を見ないために。



そのためならばーー!



ーーーーーー
183 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/25(日) 22:18:10.96 ID:POzr8+aS0
ーーーーーー




ーー ザシュッ ーー



穂乃果「っ!!」

にこ「穂乃果っ!」



手応えあり。

戦闘……と呼べるものではありません。
穂乃果が私と戦うと宣言してから、数太刀で穂乃果の竹刀は私の日本刀に両断されました。
……当然の結果ですが。



海未「…………」



先程は、穂乃果の言動に掻き回されてしまいましたが、落ち着いた今は違います。
何の感慨もありません。
私は力ずくででも、穂乃果の持つメモリを手にいれればいいのですから。

さて。




海未「決着はつきました」

海未「穂乃果、貴女の敗けです」




尻餅をつく穂乃果へ向け、言い放つ。
元々勝負にすらなっていませんでしたが、勝ちは勝ちです。
メモリをーー




穂乃果「まだだよ!」




海未「………………は?」



184 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/25(日) 22:20:55.05 ID:POzr8+aS0
折れた竹刀を構えて、立ち上がる穂乃果。
…………貴女は……。



海未「馬鹿、なのですか」

穂乃果「バカじゃないよ」

海未「…………勝てる見込みがあると思ってるんですか?」



この状況で。
この戦況で。
まだ勝てると思っているのならば、貴女は……。




穂乃果「………………」スッ



海未「っ、本当に貴女はッ!」




愚か者です!
185 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/25(日) 22:25:19.29 ID:POzr8+aS0



ーー ブンッ ーー



刀を再度振るう。
今度は、さらにギリギリを。



ーー スパッ ーー



柄だけを残して斬り捨てる。
これで、



穂乃果「っ…………」

海未「構えることすらーー」



穂乃果「…………」スッ



海未「っ」




それでも、穂乃果はまた構えました。
こちらを真っ直ぐ見て。
186 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2018/03/25(日) 22:31:13.22 ID:POzr8+aS0
一体、貴女は……!



海未「なんなのですかっ!!」

穂乃果「………………」



それには答えない。
ただ、こちらを見てくるだけで……。

……いえ。



穂乃果「ねぇ、海未ちゃん」



穂乃果が口を開きました。

静かに。
けれど、こちらをしっかりと見つめながら、こう言いました。




穂乃果「本当に、海未ちゃんは『人を殺せる』の?」




187 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/25(日) 22:33:34.71 ID:POzr8+aS0



海未「……………………」



穂乃果の問い。
それは、愚問、でした。

ことりが連れ去られた時。
そして、最悪の光景を見せられた時。

もう私の覚悟は決まったのです。



どんなことをしてでもことりを取り戻す、と。



だから、今の私は、あの人を殺せる。
188 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/25(日) 22:42:39.29 ID:POzr8+aS0

穂乃果「…………そっか」

穂乃果「本気、なんだね」



海未「……………………はい」



穂乃果「………………」




私の言葉を聞いて、穂乃果は静かに目を閉じた。
竹刀も下ろす。




海未「…………穂乃果?」



穂乃果「…………………………よし」



しばらくして、穂乃果はポツリと呟き、目を開けました。
そして、おもむろに例のメモリを握り締める。
それから、先程私が壊したにこのドライバーを取り上げ、



ーー ベタッ ーー



海未「は!?」

にこ「穂乃果っ!? あんた、なに、やって……」

穂乃果「…………まだ少し柔らかい部分あったから」

海未「っ! そんなことをしたら、そのメモリは……!」

穂乃果「うん」



穂乃果「メモリは穂乃果の手のなかにあるよ」

穂乃果「もしこれが欲しいならさーー」




穂乃果「穂乃果の手ごと斬ってよ」



189 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/25(日) 22:49:20.40 ID:POzr8+aS0
覚悟を決めたならできるよね。

そう言って、穂乃果は私をじっと見つめる。
まるで、私を試すように。

その視線に、私は、




海未「っ」




っ!
なにを、たじろいでいるのですかっ!

私は、ことりを救うと決めた。
どんなことをしてでも救うと……。
そのためならば、あの人も、亜里沙も、凛やにこだって殺せます。

だから、穂乃果。
私はたとえ貴女であっても……。




海未「っ」



ーー スッ ーー




刀を構える。
ゆっくりと上へ掲げるように。
それならば、降り下ろすだけでいいから。



穂乃果「…………」

海未「…………」



穂乃果「……いいよ」

海未「っ」



190 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/25(日) 22:56:06.27 ID:POzr8+aS0


にこ「止めなさいっ!!」

にこ「穂乃果! 海未っ!」



穂乃果「…………」

海未「……っ」



満身創痍のにこが叫んでいます。
けれど、穂乃果はやめる気はない。
こちらを見て、メモリを握ったその左手を掲げている。



穂乃果「…………海未ちゃん」

海未「っ」



名前を呼ばれて、体が跳ねました。

な、なぜ、今……。
いえ、違います!
私はーー



穂乃果「きて?」



海未「っ、あ、あぁぁぁっ!!!」



にこ「止めなさいっ!! 海未ィィィっ!!」





ーーーーーー ブンッ ーーーーーー




191 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/25(日) 22:57:31.04 ID:POzr8+aS0






ーーーーーー バキッ ーーーーーー





192 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2018/03/25(日) 23:02:18.98 ID:POzr8+aS0



海未「…………っ」



そっと、目を開ける。

私が刀を降り下ろした先。
穂乃果を見る。
私がしてしまったことの、結末を見るために。

そこにはーー




穂乃果「……やっぱり、いたいね」



少し涙目の穂乃果がいた。
左手は、ある。




海未「……………………ごめん、なさい……」




それが、私の答えでした。




私には、誰も殺せない。



193 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/25(日) 23:10:50.64 ID:POzr8+aS0



海未「あっ、うぅぅ…………」



ーー カランッ ーー



手から、それが落ちる。
同時に力が抜けて、へたり込んでしまいました。



穂乃果「大丈夫? 海未ちゃん?」

海未「っ、ごめんなさいっ、穂乃果……穂乃果っ」

穂乃果「……ううん。いいんだよ」

海未「うっ、あっ……あぁぁっ……」



私の背中を撫でてくれる穂乃果。

カッコ悪い。
自分でもそう思います。
けれど、涙が止まらない。
これが、なんの涙なのか、自分でも分からなくなってしまって……。




海未「っ、ほ、のか……っ、ほのかぁぁぁっ」




私は泣きました。
その間も、穂乃果はずっと私のことを抱きしめてくれて。
その優しさがなんだか辛くて、私はまた泣きました。




ーーーーーー
194 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2018/03/25(日) 23:24:07.69 ID:POzr8+aS0
ーーーーーー




本当は少し怖かった。
海未ちゃんが本当に人を殺してしまいそうで。

でも、思ったんだ。


もし、亜里沙ちゃんを手にかけるつもりだったなら。
きっと、もっと前に出来たはずだし。
それにそもそもドーパントから助けたりしないよね。


もし、凛ちゃんが邪魔だったなら。
凛ちゃんを倒した後、トドメをさせばよかったんじゃないかな?


もし、にこちゃんが邪魔だったなら。
ドライバーを壊すだけなのは変だもん。


もし、穂乃果からメモリを奪いたかったなら。
あの刀で穂乃果の腕を切ればよかったはず。
それで、穂乃果が死んじゃったとしても、結果オーライだったはずだから。




…………ううん、違うよね。
ほんとは、そういうんじゃない。
難しいことは考えてなかった。



穂乃果はただ、海未ちゃんを信じただけ。



真面目で、恥ずかしがり屋で。
いつも口うるさくて。
穂乃果のことだらしないって怒って。
でも、やっぱり優しくて。

穂乃果も。
ことりちゃんも。
μ'sの皆も。
みんなみんな大切にしてくれる。



そんな海未ちゃんを信じただけだよ。



だから……ね?
泣かないで、海未ちゃん。




ーーーーーー
195 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/25(日) 23:25:51.31 ID:POzr8+aS0
本日はここまで。
あと更新1回で終わりかな?
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/26(月) 00:01:25.15 ID:gBc10HnSo
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/27(火) 12:41:24.37 ID:BfpRzaYm0
198 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/27(火) 20:56:58.21 ID:2CrYxa9V0
ーーーーーー
199 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/27(火) 21:02:32.82 ID:2CrYxa9V0
ーーーーーー




海未「お見苦しいところをお見せしてしまいましたね……」




しばらくして、海未はそう言った。

憑き物が落ちたように笑う海未。
どうやら、穂乃果に抱きついて、泣いて、全部吐き出して。
目元は少し赤くなってるけど……うん。



にこ「…………いつもの海未ね」

海未「……にこ……その、ご迷惑をおかけしました!」



勢いよく頭を下げられる。

まぁ、そうね。
迷惑も迷惑だったわ。
あれだけやられたらね。



海未「す、すみません……」

にこ「はぁ、冗談よ」



ちょっと意地悪だったかしらね。
けど、これで一段落だし、これくらいは許してよね。
200 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/27(火) 21:05:48.89 ID:2CrYxa9V0


穂乃果「海未ちゃん」

海未「穂乃果……」

穂乃果「…………」

海未「…………」



二人でお互いの名前を呼び合う。
会話は他にない。
けど、この二人にはいらないんでしょ。
やがて、



穂乃果「えへへ」

海未「ふふっ」



そんな風に穏やかに笑い合う。

…………まぁ、うん。
体張った甲斐はあったわね。
201 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/27(火) 21:13:09.31 ID:2CrYxa9V0
その後、海未が穂乃果やにこが怪我をしていないか一通り確認して。
それが終わった後のこと。



穂乃果「って、そうだ! 海未ちゃん、メモリは!?」



穂乃果は思い出したようにそう言った。

って、そういやそうか。
海未はずっとメモリを使っていた訳だし、毒素のこともある。
早くもらって破壊しなきゃいけないわ。

にこもそう思って、海未にメモリを渡すように促した。
けど、海未はにこたちの思いに反して、



海未「……これは渡せません」



そう言った。
って!!



にこ「なっ!? あんたねぇ!!」

海未「すみません」



すみませんじゃないわよ!
まだわかってないっての!?



穂乃果「……にこちゃん、待って」

にこ「穂乃果……?」



分からず屋の海未に語気を荒らげる。
と、そんなにこを止めたのは穂乃果
穂乃果は静かに、それを聞いた。



穂乃果「……海未ちゃん」

穂乃果「それはなんで?」


202 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/27(火) 21:19:52.44 ID:2CrYxa9V0
穂乃果の問い。
それに、海未はしっかりと穂乃果の目を見て答える。




海未「いざという時、あなたたちを守るため…………です」




そう答えた海未は、さっきまでの鬼気迫る表情とは一転して穏やかで。
でも、力強さも感じるような表情だった。

これは……違う。
メモリに呑まれた人の顔じゃない、わよね?



穂乃果「……そっか」

海未「はい」



海未の答えに満足したのか、穂乃果は静かに頷いた。

そういうことだけどいいかな?
にこちゃん?



にこ「あんたが納得してるなら、にこも文句は言わないわよ」



穂乃果にそう答え、ため息を吐く。
……仕方ないわねぇ。



海未「ありがとうございます」

にこ「ん」


203 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/27(火) 21:26:32.53 ID:2CrYxa9V0
……さて。
それじゃ、



にこ「絵里たちを迎えに行くわよ」

穂乃果「あ、うん!」

にこ「どこに隠れてるわけ?」

穂乃果「えっとね……」



海未のことは解決したし、今度は亜里沙ちゃんの方ね。
それに、絵里たちに、もう海未は大丈夫だって説明もしなきゃ。
あとは、凛たちにもーー。









ーーーーーー ザザザザザザザッ ーーーーーー






何かが、聞こえた。
204 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/27(火) 21:32:21.59 ID:2CrYxa9V0



ーー ゾワッ ーー



にこ「っ!?」



ノイズのような音。
そして、同時に感じた悪寒。

咄嗟に振り返る。

そこで目にしたのは、




海未「………………あ、アァァァ……」




穂乃果「海未、ちゃん?」

にこ「海未……?」



ガタガタと震える海未の姿だった。
そして、数秒後に



ーー バタン ーー



海未は気を失い、力なく倒れた。

なに?
メモリの副作用?
それが今来たってこと!?



穂乃果「海未ちゃんっ!!」



考えるより先に穂乃果が駆け寄……ろうとして、止まる。
それはきっと『それ』に気づいたから。





『………………』





いつの間にか目の前にいた『それ』に。
205 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/27(火) 21:39:52.54 ID:2CrYxa9V0



『………………』




真っ黒なボロボロの布を纏った姿。
フードのようなものを被っていて、その奥には2つの青い光が冷たく光っていた。
『それ』が何か、一体なんなのか、にこはわからなかった。
ただ、漠然と恐怖だけを感じていた。




穂乃果「……あ、なたは……」




ポツリ、と。
穂乃果が小さな声をあげる。

それに答えるように、『それ』は音を出した。
いや、声を発した。





『お久しぶりね、高坂穂乃果ちゃん』




206 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/27(火) 21:49:58.56 ID:2CrYxa9V0
ノイズとエコーがかかった不気味な音が、声だと理解するまでに少しかかって。
それから、それが穂乃果の名前だと認識するのにも少しかかった。

そして、その穂乃果の一言で、




穂乃果「…………『亜坂真白』……」

にこ「っ!」




『フフフ、もう、バレてしまっているのねぇ』




目の前の『それ』が、全ての元凶だってことを理解した。



『ハァ……しかたないわねぇ』



それはひとつため息をついて、姿を変えた。
異形の化物から人間へ、姿を変えた。



真白「…………フゥ」



美人、なのだろう。
下手な芸能人よりはずっと整った顔立ちだった。
きっと町中ですれ違えば、思わず振り返ってしまう程度には……。

ただ、今はそんなことどうでも良かった。

だって、それ以上にーー
207 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/27(火) 21:51:47.70 ID:2CrYxa9V0



真白「……この姿では、はじめまして」

真白「私の名前は『亜坂真白』」





真白「『井坂深紅郎』を継ぐ者よぉ」






『それ』が浮かべた笑みからは、吐き気を催すほどの不気味さと悪意を感じたから。
208 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/27(火) 21:58:33.77 ID:2CrYxa9V0

にこ「っ、穂乃果っ!!」

穂乃果「っ」

にこ「海未を!!」

穂乃果「うんっ」



ぼんやりしてる暇はない。
今は、あいつから逃げるのが先よ!



『スタッグ』

『スパイダー』

穂乃果「いって!!」



穂乃果がガジェットを起動させる。
たぶん歯は立たない。
けど、隙くらいは作れるはず。
その間に海未を担いで逃げるわよ!



真白「……あら、怖いわね」



怖い?
そんなこと思ってないでしょうが!
心にもないことを口にする『それ』をじっと見つめる。

たぶん、さっきのドーパントになられたら勝ち目はないわ。
こっちはドライバーすらない状態だから。
あるのは『サイクロン』のメモリだけ。
なら、やることはひとつしかない。

使われる前にメモリを奪う!

そのために、その時を待つ。
メモリを使おうとした、その時に飛びかかってやるわよ!
209 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/27(火) 22:02:14.23 ID:2CrYxa9V0
けれど、次にそいつがとった行動は予想外のものでーー。



真白「本当に、怖いわぁ」

真白「だからーー」




ーー ガシッ ーー



海未「………………」




にこ「!?」

穂乃果「海未ちゃんっ!!」



意識のない海未の腕を掴んだ。
って!



にこ「海未を盾にするつもり!?」

穂乃果「っ、これじゃ……」



手が出せない。
210 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/27(火) 22:07:33.03 ID:2CrYxa9V0

意識のない海未を盾にすること。

…………いえ、違うのよ。
予想外の行動っていうのは、そのことじゃない。



真白「…………盾に? フフッ……違うわよ」

真白「そんな可哀想なことするわけないでしょう?」



そう。
そんなことはしなかった。
だって、そいつは



真白「…………ええと…………あったわぁ」

穂乃果「っ、それ、海未ちゃんのメモリ!」

真白「そうよ、私が貸してあげた、この子のメモリ。だからねーー」




真白「ーー私のために使ってもらいましょうぉ?」




ーー ガチャッ ーー




なにかを、メモリにはめた。
銀色の機械。
それと組み合わせたそのメモリを、意識のない海未にーー





にこ「止めなさいっ!!!」

穂乃果「海未ちゃんっ!!」



211 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/27(火) 22:08:27.88 ID:2CrYxa9V0







『アームズ』

『アップグレード』






ーーーーーー
212 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/27(火) 22:10:41.61 ID:2CrYxa9V0
ーーーーーー




アームズ『ア、アァぁ……』




なんで、こんなことになってるんだろう。

目の前には、正気を失ってる彼女の姿。



穂乃果「もう、やめて……」

アームズ『…………あ……ウァ……』

穂乃果「お願いっ」



逃げなさい!

悲痛な叫びが聞こえる。
だけど、目の前の人を放っておけないよっ!

そうだ。
そうだよっ!

止めなきゃ!
やっと、分かってくれたんだから。
だからーー



穂乃果「ねぇ、お願い」

穂乃果「戻ってよっ!」



穂乃果「いつもの貴女にっ!!」




ーーーーーー
213 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/27(火) 22:15:10.26 ID:2CrYxa9V0
〜〜〜〜〜〜




これはきっと『罰』なのでしょう。

何人もの人を傷つけようとして。
その気持ちを踏みにじって。
そして、貴女を守れなかった、そんな私への『罰』。



……分かっています。
因果応報だということは。
なにもなかったように、穂乃果たちに許されるのは違うのだろうということは。

けれど、どうかこんな罪深い私の願いを1つだけ聞いてもらえるのであれば。



どうか。
貴女を傷つけませんように。





ーーーーーー fin ーーーーーー
214 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/27(火) 22:20:13.14 ID:2CrYxa9V0
以上で
『海未「罪と罰」』完結になります。

レスをくださった方
読んでくださった方
稚拙な文章・表現にお付き合いいただき、ありがとうございました。

以下過去作等です。
よろしければどうぞ。
1作目
にこ「さぁ、お前の罪を数えろ!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1500978922/
2作目
凛「さぁ、お前の罪を数えろ!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510213255/
3作目
海未「私の罪を」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1512647204/
4作目
真姫「その罪は何色か」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1515243825/

次作は百合orコメディ寄りになるかと思います。
一応次に過去のss一覧も挙げときます。
では、また。
215 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/03/27(火) 22:52:18.48 ID:2CrYxa9V0
凛「10年後に行けるお香?」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416603707/
海未「私たちの恋愛ゲーム、ですか?」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417028287/
凛「凛、病気なのかもしれない」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417454685/l50
にこ「貴女の外側には」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417890274/
穂乃果「私たちが真姫ちゃんの目になるよ!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1418568037/
希「えりちはポンコツさんやから」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1420556406/
雪穂「あの日からずっと私の心は彼女に奪われていた」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1422/14222/1422288745.html
にこ「にことにこにー」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1424791780/
花陽「凛ちゃんと一夜の間違い?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1426733320/l50
真姫「私だけの」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1428761231/
真姫「マキマキ超会議?」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1430039332/
凛「三種の返し技にゃ!!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1433327958/
ことり「小さくなった花陽ちゃん」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1436011982/
絵里「恋愛が苦手な貴女」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1437987070/l50
ほのキチ戦隊ソルゲジャー
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1438494608/
花陽「凛ちゃんと」凛「かよちん」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1440673282/
花陽「雨、絵里ちゃんと一緒の土曜日」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443178719/
にこ「海未のお姉ちゃん」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1444644429/
ほのかんさつ日記
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1447502133/
穂乃果「テニスをしよう!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1451052732/
海未「花陽と歩く帰り道」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1455969755/
穂乃果「テニスをしよう!」ツバサ「おもしろそうね」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1462620200/

備忘録代わりに。
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/28(水) 23:01:54.44 ID:0ut2W6fbO

ソルゲジャーとか超会議とか読んでたわ
続き待ってる
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 08:53:40.28 ID:Pzhrb5hOO
ソルゲジャーの人だったのか…
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/14(土) 23:26:28.18 ID:cAPR7pX60
fin…
まさかこれで終わりなのか…
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