サーバル「こわい夢」

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102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:04:08.83 ID:PoruoH2d0
『夜遅くにすみません。かばんです』




『ぼくから、フレンズのみなさんにメッセージがあります』




『夜行性のフレンズさんも、昼行性のフレンズさんも、どうか聞いてください』






『今、ぼくのフレンズのサーバルちゃんが苦しんでいます』




『サーバルちゃんはこわい夢を見ているんです』




『夢の中では、この前倒したはずの巨大セルリアンが出てきて、サーバルちゃんを苦しめています』




『みなさんに、お願いがあります』






『もう一度、セルリアンを倒すのに協力してください!』
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:05:46.95 ID:PoruoH2d0
――――




――――




――――




――――






地響きのような音。






辺り一面の真っ暗闇。






何も見えないのに、「何かがいる」と野生の本能が感じ取る。






その「何か」は巨体の向きをぐるりと変えて、






一つ目が、ギョロリと私を見つめている。








大きな、大きなセルリアン。






そのあまりの巨体に、思わず頭が真っ白になる。






逃げなきゃ――!






そう思った私は、すぐさま体を動かそうとする。
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:06:30.80 ID:PoruoH2d0
……あれ?







動かない?






いくら動こうとしても、体が言うことを聞こうとしない。






逃げられない。






このままじゃ、私――――






どすん






「うみゃあっ!」






ぐらりと体の中心が傾き、その場で尻もちをついてしまう






「いっ…………たた…………」






痛い。






ずきずきと痛みを感じて、体に力が入らない。






手でなんとか後ろに後ずさるが、それだけで逃げられるはずもなかった。
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:06:57.29 ID:PoruoH2d0
それを見下ろすセルリアンは、大きな目を下に向けて、私をじっと凝視する。






あまりの大きさに圧倒されて、体から力が抜けてしまう。






ぐらっ






セルリアンは大きく傾いた。








ああ。






私、死ぬんだ。




これまでも、そしてこれからも。




私はこの夢を繰り返す。




終わることのない奈落を落ち続ける。




セルリアンの体に飲み込まれる直前、私の頭に浮かんだのは――――






空気を裂くような、滑空音?
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:07:28.54 ID:PoruoH2d0
ずばっ!




「……え」




「ふう……危なかったわね」






ふわりと宙に浮き、体が何かに引っ張られ、セルリアンの攻撃をギリギリで回避した。




その正体――――私を救ったフレンズは、なんとトキだったのだ。






「トキ!? どうしてここに……!?」




「さあ、なぜかしら。それよりも、早く移動した方がいいわ。またすぐに攻撃してくるわよ」






トキはそう言うと、近くの地面に向かってゆっくりと降下し、私を降ろした。
何が起きているのか分からず、混乱したままだったが、トキに「あっちに行きなさい」と告げられ、言われるがままに進んでいく。






まっすぐ向かうと、平原から森に入る辺りで、ビーバーとプレーリーが私を待っていた。






「ビーバー! それにプレーリー! ど、どうして……?」




「それを説明するのは後っス! 今はとにかく、セルリアンを倒すことに集中するっス!」




「そのためにも……これを使うのであります!」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:08:00.22 ID:PoruoH2d0
「かみ……ひこーき?」






プレーリーが取り出したのは他でもない、かばんちゃんが作ったかみひこーきだった。プレーリーはそれを「えいっ!」と、セルリアンとは反対の方向へ飛ばした。






「あれを追いかけるのであります! きっとサーバル殿を導いてくれるのであります!」




「わ……分かった! 追いかけてみる!」






一か八か、私は二人の言うことを信じて追いかけることにした。
何度も何度も繰り返したこの夢に、確かな変化が生まれ始めている。この変化を利用すれば、もしかすれば……今までになかった、新しい何かにたどり着くかもしれない。
不安と希望が入り混じった状況の中、私はとにかく、木々の間を不規則に飛ぶかみひこーきを追いかけ続けた。






ぐらっ




どすん!




「みゃっ!」






突如、どすんと音が鳴り、大きな巨木が道を塞いだ。




得意のサーバルジャンプも、さっきの足の怪我のせいで、思うように飛べそうにない。






「どうしよう、このままじゃ……」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:08:27.72 ID:PoruoH2d0
「怪我はないですか? サーバルさん」




「その声は……キンシコウ、リカオン!」




「ほら、何ぼさっとしてんだ。早くそこをどきな」




「ヒグマまで……!」




「下がってろ。今からこれを持ち上げる」






トキ、ビーバー達に引き続き、今度はセルリアンハンターのフレンズがずらりと出てきた。




ヒグマは木の下に手を入れ、ぐぐぐ……と力を入れ始める。






「だ、大丈夫……? バスより重いと思うけど……」




「なあに、今は夢の中なんだろ? その気になれば空だって飛べるんじゃないか?」






そして、ヒグマは本当にやすやすと巨木を持ち上げてみせたのだ。






「す、すごい……」




「ほら、見てないで早く行け! かみひこーきとやらを見失ったらどうする!」




「あっ、そうだった! ありがとう、ヒグマ!」




ヒグマのパワーに見とれるのもつかの間、私は再びかみひこーきを追いかけ走り出した。
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:10:24.01 ID:PoruoH2d0
かみひこーきはどんどんスピードを上げていく。






「はっ……はっ……」






かばんちゃんが投げたかみひこーきはセルリアンの弱点を、私が投げたかみひこーきは、セルリアンの行く先を示した。それなら今度のかみひこーきは、一体何を私に示すというのか。




足がずきずきと痛んで、狩りごっこの時のように全速力で走れないけれど、ただ、かみひこーきを追いかければ何かが変わるという漠然とした期待から、私は走ることをやめようとはしなかった。






「遅いのです」




「遅いのですよ」




「……!」






長らく飛び続けていたかみひこーきが、ようやく地についた場所、そこに立っていたのはコノハ博士とミミちゃん助手だった。






「さあ、ぐずぐずしてる暇はないのです」




「さっさと始めますよ」




「始めるって……何を?」






博士と助手は答える代わりに、私の後ろに立ち、着ている服を掴んで羽を広げる。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:10:50.53 ID:PoruoH2d0
「おとなしくするのです」




「暴れないのですよ」




「え、なになに……?」




ふわっ




「え!?」




ばさっ!




「みゃああああああぁぁぁ!!!」






ふわりふわりと足が地面から離れ、博士たちの目が光ると、数秒後、博士たちは私を掴んだまま一気に飛び上がった。






「だから暴れるなと言ったじゃないですか! おかげでセルリアンに気づかれたのです!」




「博士。お言葉ですが、この計画を立案したのはあなたでしょう? いきなり空を飛んだらサーバルが驚くことぐらい、考慮しておくべきかと」




「ぐっ……」




「……ま、バレてもバレなくても、さほど問題ではないと思いますけどね」






そうこう言っているうちに、博士と助手はさらにスピードを速め、セルリアンのすぐ近くまで飛んでいく。
会話しているはずなのに、息がぴったりな二人に私は驚いていた。
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:11:16.32 ID:PoruoH2d0
「あいつらは上手くやっているみたいですね」




「ですね」




「あいつら……?」






「たあああああぁっ!!」ぱりーん




「アライグマ!?」




「アライさん、がんばってるねえ……私も負けてられないな」ばっ




「フェネック!」






「待たせたな、セルリアン!」




「かばんを救うためなら、我々はいくらでも戦うぞ!」




「ライオン、ヘラジカ……!」






「サーバル、聞こえてますの? 困っているなら早く言うこと! 一人で抱え込むのはだめですのよ!」




「私たちも助けに来たぞ、サーバル!」




「応援しにきたー」




「ったく、勘違いするなよ! 仕方なくだからな!」




「よし、その調子だ! みんなでサーバルを助けるぞ!!」






それだけじゃない。以前の巨大セルリアンとの戦い……いや、もっとたくさんのフレンズが集まって、セルリアンに一斉に攻撃をしかけていた。
空に浮かぶ私たちを攻撃しようにも、地上のフレンズの攻撃で体は削られ、バランスを維持するのに精一杯のようだった。
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:11:46.14 ID:PoruoH2d0
「サーバルのために、ちほーに住まうフレンズが集まってきてくれたのです。後で感謝するのですよ」




「攻撃を加え続けたおかげで、石もむき出しになりましたね、博士」




「そうですね。全て計画通りなのです」






セルリアンの様子を確認すると、博士と助手は一気に加速し、セルリアンの真上に到達した。
視界から消えた私たちを、セルリアンは必死に探している。






「あれが見えますか、サーバル」




「セルリアンの中に、かばんが閉じ込められているのが見えるでしょう」




「……!!」






博士たちが目指する方向……巨大セルリアンの石の近くに、かばんちゃんの体がぷかぷかと浮かんでいる。






「どんなに足元を攻撃したところで、セルリアンにとっては焼け石に水。あの石を攻撃しない限り、とどめは刺せないのです」




「行きなさい、サーバル。悪夢の元凶を……そしてこの夢を、自分自身の手で終わらせるのです」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:12:15.39 ID:PoruoH2d0
どく、どく、どく




心臓が高鳴る。全身の血が沸騰するような、熱い感情が奥底からこみ上げてきた。




二人の顔を見る。博士も、助手も、優しい顔をしている。
ちょっと不器用だけれど、島のフレンズを大切に思っているって気持ちが、熱となって伝わってくる。




地上では、今もフレンズのみんながセルリアンを取り囲んでいる。私とかばんちゃんを救うために、危険を顧みずに戦っている。




みんな……みんなありがとう。




心の中の感情が燃え上がった。






「……行く。私、かばんちゃんのところに行く!」




「そうと決まれば、さっさとやりますよ! さん、にー、いちで手を離すのです!」




「分かった!」




「いきますよ!」






待ってて、かばんちゃん!




今行くから!!
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:12:55.58 ID:PoruoH2d0
「さん!」






「にー!」






「いち!」






「「いっっっけーーーーーーー!!」」ばっ






「みゃーーみゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃ!!!」








「うみゃーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」








ぱっかーーーーーーーーーーん…………
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:13:21.95 ID:PoruoH2d0
――――




――――




――――




――――




――――




―――




―――



――





























「…………」




「…………ん……ぅ……」もぞもぞ
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:13:47.79 ID:PoruoH2d0
「…………眩しい」ごしごし




「……朝?」






「すー……すー……」




「か……かばんちゃん!?」






朝。




窓から差し込む太陽の光に目がくらんで、少しずつ慣れてきた時。




真っ先に目に入ったのは、私の右手を包んだまま寝ている、かばんちゃんの姿だった。






「ん…………ぁ、サーバルちゃん、おはよ…………」




「な、なんでかばんちゃんが……」




「ふふ……いい夢見れた?」




「!!」






かばんちゃんは私の手袋を外し、自らの左手と、私の右手を絡めていく。
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:14:13.91 ID:PoruoH2d0
「どうして……それを……///」




「……よかった。やっと夢から覚めたんだね」




「も、もしかして、かばんちゃんがあの夢を……!?」




「まさか……そんな夢みたいなことがあると思う?」






かばんちゃんはゆっくりとベッドの上に乗ってきて、私の体を覆い、向かい合う。疎い私には、それが何を意味しているのか、まだ分からない。
でも、心臓の鼓動は、確かに速くなっていた。






「顔、赤いよ」




「あ、あれ、おかしいな。早起きしたからかな……?///」




「…………」びとっ




「ひゃっ……」




どく、どく、どく




「サーバルちゃんのここ、すごくどきどきしてる」




「や、聞かないで……」




「どうして?」




「よく分かんないけど…………恥ずかしい…………///」




「恥ずかしくないよ。ぼくも今、すごくどきどきしてる」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:14:40.44 ID:PoruoH2d0
「かばんちゃんも……? どうして……?」




「分からない?」






かばんちゃんはふわりとした笑みを浮かべる。
どうしよう。どきどきが止まらない。






「ぼくは、いつ、どんな時でもサーバルちゃんと一緒にといたい。サーバルちゃんを笑顔にしたい。幸せにしたい。もっともっと好きになりたい」




「そう思うだけで、心臓がどきどきするんだ」






かばんちゃんは私の視界を独占して、私はその中に捕えられて。
とろんとして、少し熱っぽいかばんちゃんの目を見ているだけで、切なさや愛しさが溢れてくる。






「サーバルちゃんは、ぼくのことをどう思ってるの?」




「私は…………!」






「大好き」という言葉を期待しているんじゃないと、私には分かった。私がこれまで言ってきた「大好き」と、かばんちゃんの感情は、似ているようで、全く違うから。




それなら、私の答えは。
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:15:12.61 ID:PoruoH2d0
「私も、かばんちゃんと同じ気持ちだよ……」






名前は知らない。
でも、言葉で表現できなくても伝わる。見つめ合うだけで理解ができる。
悲しくないはずなのに、涙がゆっくりとつたっていく。






「泣かないで」






私の顔を流れる涙を、かばんちゃんは丁寧に拭いとる。






「……えへへ」




「やっぱり、サーバルちゃんは笑顔が似合うね」






ありがとう、かばんちゃん。




私に笑顔を取り戻してくれたのも、夢から覚ましてくれたのも、全部かばんちゃんのおかげなんだね。




ああ、愛しい。かばんちゃんの全てが愛しい。やっぱり、私はかばんちゃんが好き。大好き。




世界で一番、誰よりも。
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:15:44.31 ID:PoruoH2d0
「サーバルちゃん」








「愛してる」








二人は重なる。






二つの心臓は共鳴した。
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:16:19.60 ID:PoruoH2d0
というわけで終わりです

以下おまけ
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:16:46.95 ID:PoruoH2d0
エピローグ






「あれから1ヶ月、無事セルリアンを倒せた&かばん何の動物か分かっておめでとうの会をするわよ!」






計画していたパーティーは無事開催され、島中から大勢のフレンズが集まった。
仕事をしているフレンズも、今日だけはお休み。
みんなで歌って、踊って、遊んで。疲れたら、ぼくがヒグマさんに直伝した特製カレーが待っている。






「それでは、みんなでいただきましょう!」




「「「いただきまーす!」」」






みんなで食べるカレーは、二人で食べるジャパリまんよりずっとおいしい。
「サーバルも治ったのだし、早くカレーを食べさせるのです」とヘソを曲げていた博士さんも、ようやくありつけて満足してくれたみたいだ。






「まったく……ヒトは話が長いのです……もぐもぐ」




「博士、カレーが口についてますよ」ふきふき




「ありがとうなのです、助手」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:17:15.36 ID:PoruoH2d0
「ところで、ジャパリまんとりょうりを組み合わせるとさらにおいしくなる、とライオンたちが言ってましたよ、博士」




「そ、それを早く言うのです!! さっそくジャパリまんを取ってくるのです!!」だっ




「あ、博士! まだ口に汚れが……!」




「……まったく、仕方ないのです」






「かばんちゃん、口開けて!」




「あー」




「はいっ」




「んっ」もぐっ




「どう? おいしい?」




「うん……おいひい」もぐもぐ






博士さんたちのやりとりを横目に、ぼくはサーバルちゃんと一緒にカレーを食べる。
あれからサーバルちゃんはすっかり元通りになった。
……それどころか、さらに元気になったような気がする。
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:17:43.03 ID:PoruoH2d0
「私にも食べさせてー!」




「いいよ」




「みゃーーむっ」ぱくっ




「もぐもぐ…………おいしー!」




「あはは……///」






食べさせあいっこって、されるのは構わないけど、するのは何だか恥ずかしい。
あの出来事があってから、サーバルちゃんとはすっかりラブラブだ。告白したのはぼくの方なのに、今では積極的なサーバルちゃんに翻弄されっぱなしである。






「かばん殿ーー!」






二人で食事していると、ビーバーさんとプレーリーさんがぼくたちのもとへやって来た。






「やっと見つけたのであります!」




「ここはフレンズが多くて探すのも疲れるっスね〜……」




「かばんさんはお元気でありますか?」




「おかげさまで、ぼくは元気だよ」




「よかったっスねえ。サーバルも元通りに戻ったし、これで一件落着……」
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:18:11.50 ID:PoruoH2d0
「あっ、その声はビーバー!! そんな呑気な顔して、ジャパリまんはどうなったのですか!?」




「うええっ、は、博士!?」




「散々待たされたのです……もちろんそれ相応のジャパリまんを用意してあるのですよね?」




「か、かばんさん、伝えてくれるって言ったはずじゃ……」




「あ…………忘れてた…………」




「お、お先に失礼するっスーーーー!!!」




「こらーーー!! 待つのです!!」






「ビーバーも大変だねー」




「後で謝らないと……」




「…………」




「プレーリーさん、どうかしました?」




「いや、気のせいかもですが……」




「かばん殿とサーバル殿、前より仲良くなったように見えるであります」




「ほんと!?」




「えっ、そう見えますか……?///」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:18:47.02 ID:PoruoH2d0
確かに仲は一層深まったけど、目に見えていちゃいちゃしてたと思うと……それはそれで恥ずかしくなる。
ぼくがもじもじしていると、プレーリーさんはくるっとサーバルちゃんの方に目を向けた。






「サーバル殿ー! 突然ですがプレーリー式のあいさつをしようであります!」




「え?」




「えっ!?」






何を言い出すかと思えば、既にプレーリーさんはサーバルの頬に両手を添えている。







「プレーリー式のあいさつってなんだっけ?」




「忘れたのでありますか? ならもう一度教えてあげるのであります!」






「ま、待って!」






考えるより先に言葉が出る。






「ご…………ごめん、ぼくたち用事があるから。サーバルちゃん、行こう!」




「え、かばんちゃん? 用事って何?」






状況を飲み込めていないサーバルちゃんを、ぼくは半ば無理やり連れていった。






「……へえ。やっぱり一歩進んでるのでありますね」




「お幸せに、であります」
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:19:27.59 ID:PoruoH2d0
サーバルちゃんの腕を掴み、ぼくは人気のない場所までひたすら走り続けた。






「はっ……はっ……」




「ね、ねえ! かばんちゃん! どこ行くの? 用事って何? 私そんなの聞いてないよ?」




「っ…………」






ぐっ




「!」






今度は言葉より行動が先に出る。




サーバルちゃんの目が見開いてから数秒、体を引き寄せる力をゆっくりと抜き、重なっていた唇を離す。






「……こういうこと、他のフレンズとしないで」




「……!」




「っ……///」








「もしかして、プレーリーにキスされるのが嫌だったの?」




「は、はっきり言わないでよぉ……///」
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:20:03.36 ID:PoruoH2d0
「……くすっ、あははっ」




「え……?」




「かばんちゃん、なんだかかわいいなって」




「か、かわいいだなんて!///」




「かわいいもん。かばんちゃんって、ちょっとしたことでも気になっちゃうんだね」




「うぅ……///」






「…………心配しなくていいんだよ?」ぎゅっ




「!」






サーバルちゃんはそっとぼくの手を取る。






「私、いつもかばんちゃんしか見てないんだよ。それに、もうどこにも行ったりしない。離れたりなんてしないよ」




「だから、安心して…………ね?」






ぼくと向き合って、彼女は少しはにかみながら微笑んだ。




……やっぱり、サーバルちゃんには敵わない。
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:20:52.53 ID:PoruoH2d0
「……サーバルちゃん」






ぼくは彼女と両手を取り合う。




お互いの存在を確かめるように。




お互いの鼓動を合わせるように。




二人は笑い合う。




誰にも負けないと自信を持って言える、強い絆と、




何にも変えがたい、たくさんの思い出を胸にしまって。




もう大丈夫だよ。もう離さないよ。




二人は相手に、自分自身に、そう伝え合う。






「かばんちゃん」




「サーバルちゃん」








「「これからも、ずっと一緒だよ!」」




〜fin〜
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/20(火) 02:22:36.79 ID:PoruoH2d0
これにて本当に終わりです
もとはpixivに投稿していたSSなので、いろいろ読みづらい部分もあったかと思います。その辺はすみません
ありがとうございました
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/21(水) 10:08:07.06 ID:hDW7c72To

サバかばとても良い
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