【ミリマス】P氏、海美を抱きしめ腰痛になる

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76 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:07:13.44 ID:h206M/Hho

否! 全ては現実に起きた出来事であり、海美も地上人として召喚されたりはしなかった。

どちらかと言えば彼女たちに起きたのはその逆だ。

次第にぼやけていた感覚が戻って来る。次いで眩んだ視界に捉えたのは複数の怪しい人影と、
部屋の入り口に仁王立ちする偉そうな少女の姿だった。

その少女はP氏たちに向かって二度、三度と不愉快そうに口をパクパクさせ、
周りの大人たちになにやら身振り手振りで指示を出すと。

「……で? アンタたち一体なにしてんの?」

時間と共に機能を取り戻し始めた聴覚がこれまた機嫌の悪さを隠そうともしない彼女の声音を拾った時、
P氏たち二人はようやく自分たちの置かれた状況を理解できた。

寝耳に水の……どころではない。就寝していたベッドごと、
冬の日本海に放り込まれたかのような言葉を失くす衝撃だ。

そうして自分たちを睨みつける立腹少女――誰あろう、
水瀬伊織の後ろからひょっこりと姿を現したのは奈緒と美奈子の二人である。
77 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:08:57.82 ID:h206M/Hho

「あ〜……こんばんわ、お邪魔してます」

奈緒が申し訳なさそうにそう言って、顔の前で謝るように手の平を立てる。

「ビックリさせたんじゃないですか? でもでも私らの方も余裕なくて……。
あのぅ――まさかとは思いますけどプロデューサーさん、海美と一線超えたりなんてことは」

「し、してませんよね? お二人の声、廊下にまで聞こえてましたけど」

そう言う彼女たちはどちらも不安に心配、
そして僅かばかりの好奇心を含んだ表情で伊織の隣に立っている。

さらには物々しい服装をした四、五人のガードマンが驚きの余り咄嗟に互いを庇い合った
――要するに、抱きしめ合っているのである――P氏と海美を囲んでいた。

これで二人が裸なら、間違いなく「イタしていた」と判断するべき状況だ。
室内をぐるりと見回して、伊織がうんざりするように口を開く。

「美奈子が相談してきたの。アンタたち二人が揃っていなくなってるって」

するとP氏は驚き顔のまま彼女を見上げ。

「そ、それでMSSを使ったのか? 民家に突入させたのか!?」

「悪い? ウチの警備会社なんだもの。私のマンションで何か事件が起きて無いか、
調べるのに使ったって誰にも文句は言わせないわ」

素朴な疑問をズバリ一蹴。

いつまで経っても海美と連絡がつかないことに焦り始めた美奈子たちは、
こういう事態が起きた時、一番頼りになる伊織に協力を要請したのだった。

連絡を受けてからの伊織の行動は実に素早い。すぐさまMSSを動員すると最寄りの温泉を全てチェック。
だがどこにもP氏の姿が無いことや、美奈子たちの話から二人と一緒にマンションへ。

部屋の前まで来たところでなにやら怪しげなやり取りを耳にすると、
躊躇なく扉を開けさせ"たまたま"持っていた護身用のフラッシュバンを室内に放り込んだというワケだ。
78 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:10:14.68 ID:h206M/Hho

「……相変わらずなんて無茶苦茶する娘だ」

伊織から一通りの説明を受けたP氏が頭を抱えて唸り出す。

「アンタにだけは言われたくない。……で? もう一度聞くけどホントにここでなにしてたの?」

「何してたって……そんなの見れば分かるだろう」

「あら、私が決めつけちゃっていいワケね? だったらすぐさま飛行機を手配するわ」

そう言って意地悪そうに伊織が笑うと、横に控えていた美奈子と奈緒が「ひぇっ」と声を揃えて怯えだした。

「プロデューサーさん、ここは絶対ボケたりしちゃダメです!」

「何してたって聞かれてナニしてたなんてアホなこと言わんといてくださいよ!?」

「阿呆はお前たちの方だ! ……俺はただ、晩飯を海美と食べていただけだって」

すると伊織は叱られているということでしおらしくなってる海美に視線をやり、「そうなの?」と彼女に問いかけた。

一瞬びくりと肩を震わせて、海美が無言のまま小さく頷く。

さらにはP氏も彼女が手に持つお皿とスプーンを指さして。

「ほら、この皿が一応の証拠だよ」

例の美奈子盛りされていたエビ天は、今やお店の並サイズ程の量までP氏に食べられ減っていた。

美奈子がしょんぼりしている海美に言う。

「それ、私がこの前教えてあげた」

「……うん。先生みたいに上手に作れなかったけど。
それでもプロデューサーは美味しいって……味も好みの味だって」

「あー……。その好き好き言うとったんが外まで聞こえて来たワケか」
79 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:11:33.62 ID:h206M/Hho

奈緒は合点がいったと手を打った。伊織は「呆れて物が言えないわ」と矛盾した台詞を口にした。
ただ一人、美奈子が海美の傍に寄り添うようにしゃがみ込むと。

「これ、私も一口貰っていい?」

「えっ?」

「見た目、私と練習した時よりだいぶ良いよ。多分だけど、あれから何度か一人で作ったりした?」

「……うん」

「やっぱり! だから私、味の方も随分変わってるって思うんだけど……海美ちゃん、確かめてみてもいいかな?」

美奈子が優しく尋ねると、海美は持っていたスプーンを彼女に手渡した。
そうして周囲の注目が集まる中、美奈子は掬ったエビ天を口に入れ。

「うん、うん……ふむふむ、へぇ……」

もぐもぐもぐと咀嚼して、時間をかけて飲み込むと見つめる海美に言ったのだ。

「……なるほど。これだけ美味しい料理なら、プロデューサーさんに独り占めしてもらいたくなるのもしょうがないね」
80 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:13:31.99 ID:h206M/Hho

その一言こそが決め手になった。伊織がパンと両手を打ち鳴らし、
「撤収、解散、お疲れ様。このバカにはもう少しだけ話があるけども、今日のところはこれで終了」

ぞろぞろと退出して行くガードマン。その様子を間抜けに眺めるままのP氏。
海美は美奈子と奈緒の二人に挟まれて座っている。

「食感はだいぶ個性的やけど、味はホンマに悪くないね」

「でしょ? しかもプロデューサーさんが好きな味だって言うんだよ。……私もこの味出したいなぁ」

スプーンをはみはみ感想を言い、奈緒はしょげかえってる海美の額を「元気だしや」と軽くデコピンした。
彼女が"らしくなく"消沈しているその理由を年上の二人は分かっており、だからこそ奈緒たちはこう言うのだ。

「海美、張り紙の件はコレに免じて許したる。美奈子がおったら料理は作ってしまうもんな。
……私だって自信作のたこ焼きを食べて貰おう思ったら、海美とおんなじことやったかもしれへん」

「でも落ち着いたところで連絡の一つは欲しかったかな。すっごく心配したんだよ?」

そんな二人に、海美は心の底から申し訳ないと感じていた。
その為「ごめん、二人とも……。本当にごめんなさいっ!」と、ただただ謝罪の気持ちを言葉にする。

「せやから謝らんでもええよって。人間、たまにはそんな気持ちの日もあるよ」

「第一、皆で決めてる一線はちゃんと守ってるし。
何かの事件に巻き込まれたとかでも無かったし……むしろ私、ホッとしちゃった!」

そうして美奈子は明るく笑い、奈緒も同じように笑い出した。

だが笑顔で笑い合い許し合う少女たちのすぐ傍では、
暗く淀んだ水溜まりよりも景気の悪い顔をした男が無理やり正座させられてもいるのである。
81 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:14:57.36 ID:h206M/Hho

「ところでプロデューサー。ここの契約をする時に私は確かに言ったわよね?
絶対に家の中でアイドルと二人きりにはなるなって」

「……はい」

「で、それを覚えててこのザマなの?」

「いや、帰ってもらおうとは思ったんだ。でも無理やりってのも可哀想で――」

「だからそういうところが馬鹿だって毎回言ってるんじゃないの! 再三注意してるように何かあってからじゃ遅いのよ?
やっぱりアンタはケダモノだって、お父様が判断すれば私のアイドル人生も終わっちゃうの!」

「……事務所、辞めなくちゃいけなくなるもんな。――ホントにごめん。
悪かった。伊織が心配してるように、すぐにでも連絡しておくべきだったよ」

自分の思っていた反応とは違う、意外にも殊勝な態度を見せたP氏に伊織も言葉を詰まらせる。

だがこれで下手に出るワケにはいかなかった。

なにせ彼女の方はP氏の上に立ち続ける主人であると、氏は生涯の下僕であると兎に誓った仲なのだ。

「そ、そうよ! 初めから私に相談すればよかったの。
……そうすればアンタの居場所を探してる間、馬鹿みたいにそわそわすることも無かったのに」

「えっ?」

「なんでもっ! と、とにかくアンタはこの伊織ちゃんに心ぱ――じゃなくて迷惑かけたワケなんだから。
契約違反でココを追い出されたくなかったら、お詫びとして週末の清掃作業を手伝いなさい」
82 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:16:22.65 ID:h206M/Hho

ご主人伊織の命令にP氏がサッと青ざめる。

週末の清掃作業とは彼が住んでいるマンション周りの掃除全般を言うのだが、
自身の記憶が正しければ実施されるのは明日の朝。

当然、P氏は心の中で憤慨した。
腰を痛めている状態の人間になんてことを命令するのだと!

だが伊織は「そうそう」と芝居がかった調子で何かを思い出すように指を振り。

「だけどアンタ、腰を痛めたって言ってたっけ。……若い私には
全然関係無いから知らないけど、聞くところによると結構シンドイって言うじゃない」

「あ、ああ! そうだ。実はそうなんだ伊織! 今だってほら、この通り治療の為に横になって――」

「でも寝てばっかりって言うのもかえって治りが遅くなるそうよ。
今はね、動かして治すのが主流なの。新堂だって言ってたわ」

そうして「にひひ♪」と笑った少女の瞳は悪戯心に溢れていた。

これは逃れようのない決定事項。

また、P氏が無事に明日の昼を迎えられるかどうかは定かでなく――。

「あ……あの、いおりん!」

だからこそ海美は二人の間に割って入った。

「それ、私にも手伝わせて? ……っていうか手伝いたい!
だってプロデューサーが腰を痛めたのも、そうやって掃除することになるのも全部私のせいなんだし」

「……ダメよ。海美には悪いけど」

ところがだ。伊織はその申し出をいとも冷たくあしらった。
だがすぐさま「なんで!?」と返した海美には断られた理由が分からない。

……そう目で訴える彼女に伊織がやれやれと嘆息する。
83 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:18:05.58 ID:h206M/Hho

「別にこれがプロデューサーへの罰ってワケじゃないからよ。
あくまで私からのお願いであって、自分の罪悪感を誤魔化すための贖罪には使ってなんて欲しくない」

しかし、伊織の説明はかえって海美を混乱させた。……贖罪の意味が皆目分からなかったのだ。
その事に伊織が気づけたのも、海美がチラチラと美奈子に視線をやったからである。

「……アンタねぇ」

まるで予想外の反応を前に伊織は脱力したように肩を落とすと。

「いいこと? つまり私が海美に言いたいのは」

「う、うん! いおりんが私に言いたいのは……?」

「そんな切羽詰まったような顔で自分を貶めることは無いってことよ。
このバカに怪我をさせただとかなんだとか、手伝いたいならそういうのは一切言わなくてもいいの」

言って、手間のかかる子供を見るように今度はやれやれと肩をすくめた。

「アンタ、今回怪我をさせた相手がプロデューサーだからそこまで意地になってるんでしょ?
これが見ず知らずの赤の他人だったらどうなのよ? ここまで熱を入れて謝ることができるワケ?」

「い、いおりん、それは……」

「できないでしょ? 即答。……だから軽々しく"自分のせいで"なんて口にしないでって言ってるの。
人にはそれぞれの身の丈ってものが……あるんだから」

伊織の陰を含んだ物言いによって僅かな沈黙が訪れる。
P氏たちも二人に口は出さず、しばらく自分でも考えた後で海美がおずおず口を開いた。

「なら、要するにただ手伝いたいってことだけを言えばいいの?」
84 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:19:09.99 ID:h206M/Hho

そうして伊織を見つめる眼差しは、どこまでも真っ直ぐ前を向いている。

……先に根負けしたのは伊織だった。

彼女が「まぁ……そうね。もうそれでいいわ」と出された答えに頷くと、
海美の方も「じゃ、私も掃除手伝いたい!」とシンプルな意志を言葉にする。

すると二人の会話を聞いていた美奈子も手を上げて。

「なら私も。みんなでやればすぐ終わるだろうし……ね? 奈緒ちゃん」

「へっ!? あ、それ私も数に入ってたんや?」

結局、急に話を振られて驚いた奈緒も掃除を手伝うことになった。

その場の流れだったとはいえ、三人もの助力を取り付けられたP氏が
「ありがとう、ありがとう!」と彼女たちに頭を下げる中、一人面白くないのは伊織である。

本来の彼女の予定では、汗だくでひぃひぃ掃除をするP氏の姿を眺めてしばしの退屈を満たした後、
冷たい飲み物の一つでも差し入れて彼に恩を売る計画でもあったのだ。

そうでなくても「一人では無理だ!」とP氏が泣きついてくるならば、
少なからず作業を手伝うのも別にやぶさかではないと考えて――。
85 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:19:58.61 ID:h206M/Hho

「……いおりん! ねっ、聞いてくれる?」

考えていた伊織だったのだが、突然声をかけられた彼女は少々びっくりしながらも「な、何よ?」と海美に訊き返した。

「別にそんな……大きな声出さなくても聞こえてるわよ。で、なに?」

「あのね、良かったらいおりんも一緒に掃除しない? 四人より五人の方がきっと早く片付くって言うし、
終わったらそのままみんなで美奈子先生のご飯にしようって」

 ねているのは海美だけじゃない。美奈子も、奈緒も、そしてP氏も伊織の返事を待っていた。
そんな四人の視線から逃れるように「し、仕方ないわね」と、伊織が照れ臭そうにそっぽを向く。

……だがそのうち全員と向き合うと、この場を収めるためにもコホンと大きな咳払いをしてから締めくくった。

「また今日みたいに暴走されてもたまんないし、お目付け役は必要でしょ?
……全く、プロデューサーもアンタも世話が焼けてしょうがないんだから!」
86 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:20:26.35 ID:h206M/Hho
===
さて――P氏が腰を痛めたことにより始まった小さな騒動はこれで閉幕。
これを女難と見るか僥倖と見るかは受け取る者の心持ち次第。

それでは、最後までご覧いただき真にありがとうございました。
87 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:23:00.47 ID:h206M/Hho
>>85訂正

○尋ねているのは海美だけじゃない。美奈子も、奈緒も、そしてP氏も伊織の返事を待っていた。
× ねているのは海美だけじゃない。美奈子も、奈緒も、そしてP氏も伊織の返事を待っていた。
88 : ◆NdBxVzEDf6 [sage]:2018/03/12(月) 01:40:02.78 ID:kyMhcmLc0
羨ましい、乙です

>>9
高坂海美(16)Da/Pr
http://i.imgur.com/mUXI7vq.jpg
http://i.imgur.com/cuDRFvG.jpg

>>49
横山奈緒(17)Da/Pr
http://i.imgur.com/p8MwLq9.jpg
http://i.imgur.com/uyLqr0V.jpg

佐竹美奈子(18)Da/Pr
http://i.imgur.com/IvjaW1Y.jpg
http://i.imgur.com/3jWPs9K.jpg

>>76
水瀬伊織(15)Vo/Fa
http://i.imgur.com/XacpF2d.jpg
http://i.imgur.com/Yut9h0v.jpg

あれ本当にあの世行ってたのか……
http://i.imgur.com/SIfKAyv.jpg
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/12(月) 08:57:00.25 ID:+7p1Vv56o
味は100%食べれるようになったなら十分な進歩だな
しかしまっすぐなうみみはかわいい
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