【ミリマス】P氏、海美を抱きしめ腰痛になる

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40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/03(土) 23:09:14.84 ID:29CWqjPbo
がんばれうみみ
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/04(日) 14:34:41.20 ID:70fd7/WQo
宦官ってことは玉ないんですかね
42 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/06(火) 00:08:33.45 ID:AWCgvPWLo

事実、P氏に対する欲望の抑止は予想以上の効果を出す。

やせ我慢は大得意だと日頃から吹聴している彼である。

アイドルが意味なく肌を晒そうと、一時の衝動に身を任せ、押し倒すなどといった野生を理性で押さえ込む事は、
金払いの渋いスポンサーをだまくらかすより遥かに容易であると言えた。


その仮説を決定的とした出来事が、ファンとの水着交流会で起きてしまった豊川風花のポロリ事件。

765プロ随一のバストサイズを誇る女性のポロリ。
突然のハプニングに参加していたファンたちは当然の如く歓喜した。

が、風花の最も傍にいたP氏だけは、能面のような表情を一切崩さず事態の収拾に当たったのだ。

人は言った。「彼は男が惜しいのだ」と。

いつぞやの宦官宣言が効果的に働いていたという証拠である。
43 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/06(火) 00:09:55.43 ID:AWCgvPWLo

だがしかし、生粋のヤセガマンサーではないアイドル達はどうだろうか?

基本的に出会いは少ないこの職場。恋愛沙汰は公然のタブー。

文字通り恋に恋するお年頃でもある純真無垢な彼女たちが、平時長い時間を共に過ごす異性、
P氏に対して信頼以上の感情を持つのは自然な流れであると言えよう。

第一だ。既に彼ら彼女らが頼り頼られの関係性を構築しているのは事実であり……とはいえ、
そこから相手を異性として意識するにはもう一段、段階を踏まえなくてはならないのが愛と恋愛の常でもある。


そこに来て今回の階段落下騒ぎ。

生まれて初めて力一杯異性に抱きしめられた乙女海美は、
あの瞬間(とき)よりP氏に対する恋心の芽生えを急速に認識し始めた。

諸氏らは吊り橋効果という言葉を耳にしたことがあるだろうか?

運悪く彼女は悪い魔法にかかったのだ。
恐れていた麻疹が発症した。

「すわ外道プロデューサー許すまじ!」と義憤に駆られるファンの方々は今すぐ二本の蝋燭を頭に巻き、
P氏の身の不幸を願って金づちを振るうもまた一興。

釘を一寸ずつ幹に打ち込むたび彼の背には悪寒が走り、
腰と玉袋には原因不明の痛みがズキズキと襲いかかるはずだ――そう、例えばこのように。
44 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/06(火) 00:13:18.45 ID:AWCgvPWLo
===3.

「ねっ、プロデューサー気持ちいい?」

「あ、ああ……。気持ちいいよ」

海美の囁きにP氏が応え、ベッドはギシギシ音を立てる。

今、少女は未知なる充足感に酔っていた。

己の動きに合わせて大の男が涎を垂らして悦ぶ姿、
相手を手玉に取っている感覚は麻薬のような魅力を持つ。

「ん……こうすると、どう? ちょっとキツいのもイイでしょ」

「う、あ……はぁ、う、海美……!」

「ふふっ、だらしない声出しちゃって。……激しくするよ? それ! それ! それぇっ!!」

「ま、待てっ、あ、ぐあっ!? くっ、うぅ――!!」

部屋を満たすは歓喜の声、満足気な海美が額に流れる汗を拭う。

その左右十本の指だけにとどまらず、手の平、甲、肘まで使った巧みな彼女のマッサージは、
P氏の体に突如として訪れた激痛をたちまちのうちに和らげ気持ちは天へと昇らせた。

あの衝撃の臨死体験から復活を果たしたその直後、
原因不明の腰痛(及び股間痛)に悶える氏は頼れる海美に肩を貸されなんとかベッドに辿り着いた。

その後、彼は「腰、痛くて辛いよね? ……遠慮しないで、私が優しく揉んであげるっ!」
と意気込む海美に流されるまま腰を揉み揉み揉まれており。

「――ハイ、終わりっ! 良かったでしょ?」

「うん……全くかたじけない。随分腰も楽になった……気がする」

感謝の言葉を述べられて、海美は照れ臭そうに頬を掻いた。


ちなみに水を差すようだが、発症直後の腰痛をマッサージでほぐすのは余りよろしくないらしい。

何事もケースバイケースだと思われるが、
基本的には炎症が治まるまでは患部を冷やし、姿勢は安静。

湿布でも貼って大人しくしているのが実際のところは良いのだとか。
45 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/06(火) 00:15:50.39 ID:AWCgvPWLo

「えへへ〜。それじゃあ他のことも私がやったげるから、プロデューサーはゆっくり横になって休んでてね!」

そう言って彼女は立ち上がり、P氏は急速に青ざめた。

なぜなら現在時刻は午後六時。
海美がこの家を訪れてかれこれ三十分は経過している。

既に日も傾き、これからは年頃の娘なら自宅に帰っているのが相応しい時間となるだろう。

そんなP氏にとっては「もう六時」、だが海美にとっては「まだ六時」。

「ま、待つんだ海美。そろそろ時間も遅くなる、家に帰らなくちゃ……。
一応謝罪も聞いたのだし、俺の方なら十分助けてもらったから」

「でもプロデューサー家事もできないんでしょ?
お腹も空いて来る頃だし、ご飯ぐらいは代わりに作らせてっ☆」

「しかし海美! 君の料理の腕前は――」

「大丈夫大丈夫まーかせて! これも乗り込んだ船ってやつだし、ねっ!」

生憎と乗せた覚えは無いのだけれど――P氏が反論する間もなく船は港を離れていき、
密航者海美は勝手知ったる家の中を改めてぐるりと見回した。

実のところ、海美が氏の自宅にお邪魔するのは今回が初めてではない。

と、言うよりもP氏の所には普段から、
「仕事についての相談がある」といった名目でちょくちょくとアイドル達が顔を見せた。

また、訪れる者の中にはここぞとばかりに日頃のお世話の恩返し、
P氏の役に立ちたいと情熱を燃やす娘もいる。

「お部屋、少し荒れてますね。手伝いますから片付けましょう」

「普段は出来合いばかりですか? ダメですよ、ご飯は出来立てを沢山食べなくっちゃ!」

「よし、今日の飲み屋はココに決定! 愚痴ならお姉さんにトコトン吐き出しなさい♪」

そうしてあれよあれよと流されるまま、氏の自宅は事務所にとっての寄合所のような存在に。

今ではアイドル達の私物も増え、食器棚にはそれぞれが使う専用のコップまで置かれているという始末だった。
46 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/06(火) 00:19:13.66 ID:AWCgvPWLo

これをP氏に対する信頼と友情、ひいては敬慕の証と捉えるか、
周りの恋敵へ対する僅かばかりのけん制と考えるかは見る者次第の任せ事。

……今、心新たに生まれ変わった海美は自信をもってこう答える。

「今までの私はお子ちゃまで、駆け引きの"か"の字も知らない阿呆でした」


まだ小さく頼りないとはいえ、海美が灯した恋の種火に照らし出される室内には女の影がちらほらと。

浮かび上がって来る違和感、次第に炙り出されていく不自然。

その一端に触れてみるだけでも、来客用のスリッパ群に圧迫されている玄関に、洗面台には歯ブラシがずらり。

食器棚には先にも述べたコップ類の他にも麺棒を始めとしたお菓子作りの道具一式に使い込まれたたこ焼き器。

本棚には多種多様なジャンルの本が絵本と混ざってごっそりと、
冷蔵庫の中にはお酒やつまみがぎっちりと。

部屋の隅ではアロマが焚かれ、ベランダを使用したガーデンには野菜が栽培されており、
テレビ周辺にはアイドル物のDVDとゲーム機が複数のコントローラーと一緒に収納されているではないか。

こうなってくると棚に並べて飾られた、別段怪しいところの見受けられないイルカやサメのぬいぐるみでさえ、
恋に目覚めたうみみアイを通せば誰かしらの主張が透けて見える如何わしい代物へと早変わり。
47 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/06(火) 00:20:22.84 ID:AWCgvPWLo

「ねえプロデューサー。この辺に私用のルームランナー置いても良い!?」

開口一番、P氏の前へと戻るなり海美は焦った様子で提案した。
が、当然のようにこの申し出は彼に却下され。

「じゃあダンベル! ハンドグリップは? 私も女子力のカケラを残したいのっ!!」

「じょ、女子力とは形で残せる物なのか……?」

「多分、きっと、残せるはず……? とにかく! 私も何かプロデューサーの家に置きたいよっ!」

全くもって要領を得ない話である。P氏は頭を抱え途方に暮れた。

第一彼女は先ほどまで、自らの手料理を振る舞おうと無駄に息巻いていたというのにだ。

ものの数分と経たぬうちに今度は室内運動器具を置こうなどと――
ただこれは、考えようによっては有り難い話だと言えなくもない。

なにせ海美は日々「練習してる!」と言い張るが、
彼女のこしらえる"料理"の出来栄えは常々試食者のコメントを詰まらせてきたような代物だ。

本日もそんなシェフうみみが自慢の腕を振るったところで結果を予想するは容易い。

恐らく惨劇の食卓は免れまい。

ならば財布は多少痛めようと、胃袋がはちきれんばかりに膨らもうと、
ここは味の確実な中華料理屋にデリバリーを頼むが最良策。
48 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/06(火) 00:21:23.51 ID:AWCgvPWLo

「分かった。海美、認めようじゃないか。……ダンベルだったら置いても良い」

「ホントにいいの? やったーっ!」

「ただし! 認める代わりに家に帰れ。料理の方も出前を取るから大丈夫だ」

勝った。完璧な作戦である。P氏は海美に気取られぬよう細心の注意でほくそ笑んだ。

相手の提案を一つ飲み、代わりにこちらの案をも通させる。
おまけに氏はどさくさに紛れて二つの要求を通したのだ。

これを勝利と言わずしてなんと呼ぼう?

伊達に駆け引きの修羅場はくぐっていない。
小娘相手に負ける気はしない。

現に海美は「分かった!」と快く返事をし。

「じゃあ一回、プロデューサーに言われた通りダンベル取りに家に帰るね。ついでに買い出しも済ませて戻るから!」

待て、どうしてそんな流れになる? たまらず首を捻った氏には悪いが、
言語は周波数が合わねば意味はない。理解できなければ負けも無い。

「……ん?」と間抜けに訊き返すP氏に少女は笑顔で答えると、
目についたスケッチブックに何やらサラサラと書き始めた。

「だって冷蔵庫の中お酒と変なのしかないんだもん。お米は炊いてあったから……
キチンとした材料を揃えてきて、美味しいおかず作っちゃうね!」
49 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/06(火) 00:23:12.79 ID:AWCgvPWLo

――さて、それからしばらく経ってのことである。

P氏の自宅、玄関前に二人の少女がやって来た。
彼女たちはそれぞれ扉に貼りだされた奇怪な文書に目を通すと。

「なんじゃこりゃ? "留守です。湯治のため二、三日温泉に浸かりに行って来ます"?」

「何って奈緒ちゃん書き置きだよ。プロデューサーさんが温泉に行きましたよっていう」

「いやいやいや、それは誰が見たって分かる話やろ?」

「だね」

「私がココで言いたいのはな、美奈子。なんでプロデューサーさんは
わざわざこんな貼り紙を玄関に貼っとるんかってトコやないの」

おまけにその貼り紙はスケッチブックのページにクレヨンで書かれた物である。

横山奈緒と佐竹美奈子。

流石に大勢で押しかけるのは迷惑だろうということで、厳正なる話し合いとあみだくじの結果、
事務所のメンバーを代表してお見舞いに訪れたこの二人は、なんとも腑に落ちないといった様子で互いに顔を見合わせる。
50 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/06(火) 00:24:46.17 ID:AWCgvPWLo

「大体、私らより先に来とる海美はドコ行ったん? あの子怪我させてしもた張本人やから言うて、
早や抜けしてまでプロデューサーさんに謝りに行ったはずやのに」

「そう言えわれてみればそうだよね。貼り紙を見て帰ったとか」

「私らに連絡の一つも寄こさんと? ……それか最寄りの温泉に押しかけて、プロデューサーさん探してたりしてな」

冗談めかして言う奈緒だが、ここで「まさか!」と気軽に笑い飛ばせないのが
二人の知る高坂海美という少女だった。スマホを取り出し美奈子が言う。

「じゃ、電話してみよっか」

「どっちに?」

「まずはプロデューサーさんからじゃない?
もしかするとコレ、無駄な来訪者はお断りって意味かも知れないし」

すると奈緒も揃いの携帯を取り出して。

「せやったら、私は海美に電話するわ。……一応チャイムも押しとこか」

ピン、ポーン! フロアに音楽が戻って来た。

だがオーディエンスは既に解散、いくらコールを呼び掛けてもレスポンスは一向に戻って来ず。

「う〜ん……プロデューサーさん、電源入れて無いのかな?」

「海美もや、うんともすんとも出てくれへん」

「家も、中で誰かが動いた気配はないし」

「普通に考えれば留守やろうけど……怪しい」

奈緒が表情を曇らせ考え込む。
自分たちの置かれた現状に疑問を持っている顔であった
51 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/06(火) 00:25:58.61 ID:AWCgvPWLo

「臭う、臭うで。こりゃ事件の匂いがプンプンや」

「事件?」

「せやろ! プロデューサーさんは電話に出ん。海美の方にも繋がらん。
こりゃあ二人して何処かにしけこんどる可能性も無きにしもあらずのパターンで――」

「あー……。温泉に行こうとしてたところに、海美ちゃんが丁度やって来てそのままついてっちゃったとか?」

「それや! 海美の押しの強さとあの人のヘタレ具合から察するに、その可能性はアリアリやな。……ええ勘しとるで、美奈子!」

ポンと手を打つ奈緒だったが、美奈子は素直に頷けない。

なぜならP氏は腰を痛めているハズである。
治りかけならいざ知らず、まだ腰が痛むであろう初日に無理して遠出などするだろうか?

そのことを奈緒に訊いてみると、彼女は「むむむ」と唸ってこう答えた。

「なら可能性としては居留守やな。私らと顔を合わせられへん二人が声を殺して家の中に」

「待って待って。どうして私たちと顔を合わせれないとかなっちゃうの?
プロデューサーさんはともかく、海美ちゃんは私たちが来るの知ってるのに」

「そりゃ、なんか後ろめたい事でもあるんとちゃう?
人に知られたらマズいような何かが私らのおらん間に巻き起こって――」

その時だ。二人の脳裏にある種の仮説が浮かび上がる。

居場所を隠すあからさまな貼り紙、つかない連絡、男女二人が行方知れず……。

たちまち美奈子の顔からは余裕が消え、
奈緒もあたふたと取り乱しながら辺りをキョロキョロ見回した。
52 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/06(火) 00:26:54.84 ID:AWCgvPWLo

「どっ、どないしよう美奈子!? もしも、もしもの話やけどあの二人が……!!」

「お、おおお落ち着いて奈緒ちゃん! まだそうだと決まったワケじゃないよ!」

「でもでも、私ら確認する術持ってへんし……」

「それを今考えてるんじゃない! どうしよう? こういう時はまず警察に――」

「警察はダメ! 大事にしたらアカン真実もあるねんで!?」

「じゃあ一体どうやって探すつもり!?」

美奈子が叫び、奈緒が呻く。
二人はちょっとしたパニックだ。

そのうちこの世の終わりのような顔をした奈緒が観念するようにこう言った。

「あああ〜、嫌や〜。こうしてる間にも二人でタイとか行ってたらどないしよう……」

すると美奈子は大げさに驚いて。

「ちょ、ちょっと待って奈緒ちゃん。わざわざタイまで行くってどういうこと?」

「どういうって……。ほな、モロッコかな? 流石にアメリカとかは何かちゃうし」

何やら会話が噛み合わない。

そう感じた美奈子は訝しみながらこう続けた。

「ねえ奈緒ちゃん。私たちプロデューサーさんと海美ちゃんがどうしてるかって話をしてるよね?」

「せやで。美奈子もあの人の宦官宣言は知ってるやろ?」

言って、奈緒が拳を握る。
53 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/06(火) 00:27:46.61 ID:AWCgvPWLo

「日頃から誘惑の多い劇場で健気に頑張るプロデューサーさん!
その貞操をあの人に目をかけて貰ってる私らが守ってあげんでどないするん!」

「そうだよ、それは分かってるよ! だから二人で一緒に来れるよう、あみだくじに細工をしたのもこのためで……。
って、違う違う! 今日はそういう危険無いハズでしょ? 相手があの海美ちゃんだもん」

「せやから焦ってるんやないの。……海美は安全やと思ってたんやけどな〜。見通しがちっと甘かったね」

だがここで美奈子は大げさに一度ため息をつくと。

「え〜……っと。つまりその、奈緒ちゃんはさ、二人ができちゃってるかもって話してる?」

「へっ? そのケジメをしっかりつけるために、タイくんだりまで手術受けに行ったゆー話をしとったやろ?」

「違うよ! 全然噛み合ってない! 私はプロデューサーさんに怪我をさせちゃった海美ちゃんが、
どっちが悪いとかの責任の取り合いで刺しつ刺されつの大惨事に――で、逃亡したり、心中したり」

「怖っ!? なんや美奈子のその仮説は! ドロドロドラマとちゃうねんで!?」

「だ、だって〜……。海美ちゃん性格のいい真っ直ぐな子だから、逆に思い詰めるとそれぐらいやりかねないかもって心配に……」

なんともはや、彼女はとんでもない想像をしていたものだ――
奈緒は思わず額を押さえると、芝居がかった仕草で嘆息した。

それと同時に、自分たちが随分と長い間ここに居たことにも気づく。
54 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/06(火) 00:29:00.48 ID:AWCgvPWLo

チャイムは押したというのにだ。
未だ扉は閉ざされたままであり、人が出て来る気配もやはりない。

手術や心中の可能性は限りなくゼロに近いとして、
コンビニにでも行っていると考えるのが現実的な解答だろう。

それでも奈緒は手詰まりに陥った刑事のようにガシガシと頭を掻きむしると。

「でもな〜、居留守の線も捨てきれんし。こうなったら出るまでチャイムを連打して――」

「ダメだよ奈緒ちゃんそんなことしちゃ! ご近所さんにも迷惑でしょ」

「せやけど美奈子〜。合鍵持っとったりせえへんの?」

「どうして持ってるなんて思うかなぁ」

呆れたように美奈子は言い、少しの間考えてから彼女は奈緒にこう返した。

「……けど、いつまでもこうしてばかりいられないし、一度ウチのお店に帰ろっか。
もしかすると、プロデューサーさんから出前の注文がかかるかも」

「……海美はどうするん? 連絡つかへんけど」

「それもウチに来てたりしないかな? 電話に出ないのだって、
移動中で気づいてないだけだとか。……ほら! そろそろお腹も減る頃だし」

「せやのうても、向こうも私ら探して美奈子の店に、か。……ありうる」

結局、悪い方にばかり考えていてもしかたないという美奈子の意見を受けた奈緒は、
己の食欲とも審議した結果、この場を一旦引き上げることにしたのだった。

「そういや私もお腹空いて来たな〜……。サービスあるん?」「勿論だよ!」と、

遠ざかっていく二人の会話を鉄の扉越しに訊いていた、
死にかけている男の存在にはとうとう最後まで気づかずに――。
55 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/06(火) 00:30:25.16 ID:AWCgvPWLo
===
とりあえずここまで。
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/06(火) 03:30:55.44 ID:+JLjFllXo
マラケシュで魔翌羅消す
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/06(火) 13:42:49.37 ID:o3Z/1HZfO
うみみがかしこいだと……?
58 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/09(金) 05:57:29.18 ID:78N2qSGMo
訂正

前回更新分、「貼り紙」ではなく「張り紙」です。
59 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/09(金) 05:59:02.69 ID:78N2qSGMo

「ダメだ、行くな、待ってくれ!」

そう願うだけで時間を止めてしまえると言うのならば、世界はもっと平和であり、
人はバスや電車に乗り遅れる悲劇を二度とは繰り返さぬだろう。

時を支配する超能力。誰もが欲するそのパワー。
だが実際のところは現実味にやや欠けている。

事実、P氏が伸ばしたその右手は、思わず漏らした呟きは、
彼の周囲にたゆたう時間の流れを止めてしまうなどできなかった。

とはいえ、後一息の所までは来ていたのだ。

チャイムが鳴り、ベッドから降り、ままならぬ体は這って進んだよ玄関へ。
その地で新聞受けの隙間より、そよ風が耳に運んだ嬉しいニュースの一報は。


「この声、美奈子と奈緒じゃないか!」

佐竹が来た! 美奈子が来たっ!! ついでに奈緒もいるようだが、
この時のP氏の気持ちは劣勢の戦況に援軍を迎えた兵卒の如く躍っていた。

しかしながら現実は彼に非情でもある。

満を持して登場した佐竹・横山飛行隊はP氏の頭上を素通りし、颯爽と現れ出でた鉄の鳥は、
無情にもそのシルエットを徐々に彼方へと遠ざけ明後日の空へと飛んで行く。

待ってくれ! 友軍はココだ! どうか見捨てて行かないで!!

……けれども声は届くことなく、腰痛が起こす爆音で彼の願いは掻き消された。
60 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/09(金) 06:00:23.93 ID:78N2qSGMo

そも、全ては海美が施したマッサージ。

その荒々しい揉み手によって、腰の炎症が活性化したのが敗因と言って差し支えない。

やはりやせ我慢に魅入られた男である。顔は笑って腰で泣く。

痛みを堪えて紡いだ「気持ちいい」は少女の笑顔を引き出したが、
その腰は悪化の一途を辿り巡って流れ着いた先は泥犂。

戦う前から負けていた。もはや若くして介護を必要とするその身である。

ベッドに戻れば通信機(スマホ)だってありはするが、事ここに至っては進むも地獄退くも地獄。

ああ、薄れゆく意識の中、海美と交わした会話が蘇る。


「見て、留守にしてますの張り紙だよ! コレを玄関に貼っておけば、
私がいない間に誰かが来ても無理に呼び出したりはしないはずっ♪」

そう言って、書き上げたばかりのペラ紙を掲げる彼女の顔は自信に満ちていた。
満面の笑み、してやったりの笑み、上手いこと言ったつもりの笑みでもある。

なるほど確かに言う通り、スケッチブックから破り取られたその紙には
クレヨンを使って"留守です"とデカデカ書いてある。

この清々しいまでのお知らせを、その目にしてなお誰がチャイムなど押すだろうか?

実に理に適っている作戦だ。提示した海美にとっても目から鱗のと言った所。
だがP氏は半魚人でもなく、落とすべき鱗も持っていない。
61 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/09(金) 06:01:43.14 ID:78N2qSGMo

「……海美、君ってやつは本当に――」

「ナイスアイディアでしょ? ふふっ、偉い?」

「大バカ者、こんな物で人が化かされるか」

褒められたがりにピシャリ一喝。
P氏は用済みとばかりに放り出されたスケッチブックを手に取ると。

「まず筆跡が乙女乙女し過ぎている。次にいつまで留守かも抜けている。
こういう物は数日家を空けておくと書けば真実味だってグッと増す!」

などと上から目線でのたまって、たちまちのうちに見本を書き上げ渡したのだ。

正に救い用の無い阿呆である。
先の見えない馬鹿でもある。

この張り紙が仕事をしたせいで、時が過ぎた今美奈子たちは引き上げ己は這いずり待つのは天の助けばかり。


もはやふて寝すらできない孤独なP氏。……それからどれほど経っただろう?
いまだに彼はまんじりともせず冷たい廊下に伏せていた。

こうなってしまってはもう物を考えるのも億劫で、腰の痛まぬように背(せな)を丸め、
四肢を投げ出し転がる様は嵐の後、浜辺に打ち上げられたクラゲとさして変わらない。

沖から波がよせぬ限り決して海には戻れぬのだ。

そう、海。母なる海。人は、命は、生命は、いつしかその穏やかな自然の揺りかごに還るもの……。
62 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/09(金) 06:03:07.41 ID:78N2qSGMo

「プロデューサー、たっだいま〜……って、うわぁっ!!?」

そうして今、タイミングよく戻って来た海美がP氏のことを救い出した。

家の中で行き倒れていた彼の体を起こしながら、
恐らくは効果があったであろう張り紙作戦の結果に少女は一人感心する。


――極論、それは恋する少女のワガママだ。なるべくならば二人きりと心が求める欲望だ。
その為に策を巡らすは常勝の為の一手であり、これに対して「卑怯だ!」などと野次を飛ばすはお門違い。

なぜなら真剣勝負の恋愛では、「好きな人を独り占めしたい!」と欲張ることこそ許されてしかるべき乙女の美学であるのだから。
63 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/09(金) 06:04:08.49 ID:78N2qSGMo
===4.

そもそもの話、高坂海美は女としての魅力が弱い。

有り体に言えば「女子力が足りない」と一等思っているのが海美自身で、
それは彼女を本格的な恋愛から遠ざけてきた一つの遠因でもあった。

特に同年代の少女たちと比べて自分は数段見劣りする……と、本人は今でも悩んでいる。


なぜならば、彼女は生まれてこのかた一つ所にジッとしていた覚えがないからだ。

赤子の頃から寝返りをうてば這いずり出し、喋るより先に歩き出した。

常に体を動かしているのが大好きで、体育の授業をなにより好む子供であり、
男子と混ざって遊び倒しては泥だらけになって帰宅する典型的な元気娘。

案の定座学の成績は悪かったが、明朗快活な彼女の周りには自然と多くの友が集い、
学校での生活は楽しいものだったようである。
64 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/09(金) 06:05:39.75 ID:78N2qSGMo

とはいえ本格的なスカートデビューを果たしたのが中学に進学してからと言うのだから、
当時の彼女がどれほどお転婆だったのかは推して知るべしと言ったところ。

それでも休み時間になれば相変わらずの騒々しさで校舎や校庭を走り回り、華麗にスカートもひるがえす。

その無自覚なチラリズムは純朴なる思春期男子に悶々とした気持ちを植え付け、
計らずも彼らの性の目覚めを促進したりするのだった。

こうなると学友女子一同も黙ってはいない。とうとう海美も年貢納め。
今までは「子供だから」で済まされていた多くの無作法を矯正する時期が来たのである。


まずは恥じらいを持ちなさいと彼女はとみに注意された。

座る時にはスカートの端までちゃんと押さえ、
余計な布の露出機会を減らすようにも指導された。

異性への気軽なボディタッチ、男子と混ざって球技遊び、野郎共もひしめく夏の蒸し暑い教室で、
無防備に胸元を扇ごうものならたちまちのうちに孟母三遷。

甘えを許さぬ女子たちは、男共の放つ野獣のような眼光から海美を守ろうと必死なのだ。
65 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/09(金) 06:06:57.55 ID:78N2qSGMo

「海美、よーく聞いて覚えときな」

「女の子が持つ落ち着きや恥じらい、そこから出て来るちょっとした仕草」

「可愛い髪型にすることも、流行の服を着こなすのも」

「相手をドキッとさせるコト。これ、全て女子力なの!」

「いい? 女子力は女の戦闘力」

「女子力を常に磨いておけば、どんな敵でもイチコロだよ?」

「それにね、女子力がある女の子は男子に対して最強だから」

「女の子相手でも効果あるよ? どんな時でも一番強い」

「そういう諸々含めたのが、女子力の高い女なワケっ!!」

……と言った有難い助言の数々は、
海美が面倒見の良いクラスメイト達から賜ったアドバイスを一部抜粋したものだ。

ご覧の通り、およそ「女子力とは?」と首を傾げたくなるワードが散見されるのはこれが苦肉の策であり、
彼女たちがどうにか海美の興味を引きつつ「羞恥心」だの「忍耐力」だの「お淑やかさ」だのを叩き込もうかと頭を捻った証である。

また、初めこそ「女子力なんて別にいいよ。面倒!」と乗り気でなかった海美にしても、
事あるごとにその魅力を説かれるにつれて意識の改革が進んでいく。

「強い・デカい・早い」を好む男児的嗜好の子うみみから、
「可愛い・綺麗・お洒落」の三本柱を中心とした第二次性徴うみみへと。
66 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/09(金) 06:08:32.70 ID:78N2qSGMo

ではその甲斐あってどうなったか?

結果を話すためにもここで登場人物を一人増やそう。

彼女は海美の実の姉だ。この時点で人生の先輩でもあるお姉さんは、
妹にとって手本となる対象の一人であり、同時に慕うべき存在でもあった。

そんな姉がある日のことだ。宿題をしていた手を止めると、
卓上鏡をむつかしい顔で覗き込む海美に話しかけた。

「海美ちゃん、最近なんだか変わったね」

この姉妹、元気ハツラツな妹に対して姉は随分と物静か。
大人びた落ち着きのあるお姉さんと、子供じみている落ち着きのないその妹。

小さな頃より目を離すと、すぐにでも行方をくらます妹を持てば
このようなしっかり者の姉ができる――そんな見本のようにバランスの取れた姉妹だった。


その姉がいつもの優しい調子ではなく、少なからずの驚きを含んだ口調で尋ねたのだ。
すぐさま「えっ?」と訊き返した海美だったが、"変わった"と言われてパッと思い当たる節も無い。
67 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/09(金) 06:09:35.24 ID:78N2qSGMo

だかしかし、姉はキョトンとする妹の顔をまじまじと見つめ返したのち。

「うん、変わった。成長した。海美ちゃんってば随分女の子らしくなってるよ」

それは最近になって成長著しい自分の体つきのことか?
それとも姉の真似をして伸ばしている髪がようやく腰まで届いたことだろうか?

眉をひそめ、考えだし、答えを求める海美の姿に姉はくすくす笑い出した。

「もー! お姉ちゃん何がおかしいの〜?」

海美が頬を膨らませ抗議すると、こしらえたばかりの三つ編みが動きに合わせてバッと揺れる。
つい最近になって姉に作り方を教わったばかりの髪の束は、編み慣れていないせいかまだまだ粗さが残る出来。

しかしながら、それは姉から見ると明らかなお洒落への目覚めだった。

中学に入ってからは多少の落ち着きすら身に着け始め、これまではとんと興味も示さなかった
ファッション雑誌をこっそりとチェックする妹の姿も何度も目撃していたのだ。

「好きな人でもできたのかな?」

からかうような姉の発言に、愛らしい妹はただただ頬を赤く染めた。

当時は柄にもないことをしているという照れ隠しの反応だったのだが、
恋を理解した今ならば、彼女は真なる意味で真っ赤になれるに違いない。
68 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/09(金) 06:11:04.40 ID:78N2qSGMo
とりあえずここまで。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/09(金) 09:39:11.34 ID:rYR3vOlnO
こういう時の美奈子は頼りになりそうだよなぁ
うみみの策でつゆと消えたけど
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/09(金) 16:35:42.81 ID:RG2Otj0pO
美奈子は甲斐甲斐しくお世話してくれそう
71 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:00:19.92 ID:h206M/Hho
===5.

さて、その確認を取る為にも舞台をP氏のマンションへと戻そう。

時刻はまもなく午後八時。

もはやベッドと同化せんばかりに打ちのめされている彼の鼻が、
室内に広がるスパイシーな香りに反応する。

見よ、匂いを辿ればテーブル上に出来立てほやほや手料理が。

炊飯器から米をよそい、形の崩れた具材たっぷりオムレツを乗せ、海美特製のエビチリソースをかけたなら。

「お待ちどうさまプロデューサー! 美奈子先生直伝の、スペシャルエビチリ天津飯だよっ!」

そう言って海美は美奈子盛りされたお皿をP氏の鼻先に突き出した。

すぐに旨そうな匂いが彼の食欲を刺激する。見た目もそれほど悪くはない。
ピリ辛だって嫌いじゃない。おまけに目の前の少女は銀のスプーンで一口分を掬い取ると。

「あっ、無理に起き上がらなくても大丈夫。私が食べさせてあげるから!
……ふーっ、ふーっ……冷めたかな? はい、あーん!」

立ちのぼる湯気を優しい吐息で吹き飛ばし、照れるP氏に口を開けるよう催促した。

断る理由は無い。むしろ断っても無理やり突っ込まれそうなので断れないと言うべきか。

……氏は、乙女の涙にも弱いのである。
72 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:01:37.03 ID:h206M/Hho

だがなにも、涙を流す可能性があったのは海美一人だけではなかったのだ。

男は度胸。差し出されるままパクっと一口食べた瞬間、P氏は思わず落涙する。

これは一体何事か? 蜂にでも刺されたようにまたまた腰が痛んだのか? 思ったより料理が熱かった?

違う。ならば献身的な海美の介護に感激の証で流したか?

もぐもぐもぐと咀嚼しながらP氏は海美と目を合わせた。
案の定、この不憫な少女は不安げな面持ちで味の感想を求めている。

「……海美、海美。一つ訊きたい。このエビチリ天津飯なのだが」

「な、なに? ……何でも聞いて!」

「君、味見はちゃんとしたかい?」

「した! エビチリスッゴク赤いよね!」

「オムレツの方も味見したかい?」

「した! ほんのちょこっとだけ……ううん、結構だいぶ、焦げてるよね……!」

「……いやいや海美。見た目は問題にしていない。
むしろこうまで不格好だからこそ、一生懸命に仕上げようとした努力も分かって好評価」

「ホントに!? うれしーっ!」

「ただね、海美。そう無邪気に喜ぶより先に、俺は教えて欲しいんだよ。
君がキチンとこのエビチリ天津飯の味見をしたのかどうかをだ」

そう、不憫な海美には是非ともそこを訊きたいのだ。

もう少し詳しく尋ねるなら、一体全体どうやれば餅のような食感のオムレツを焼き上げることが可能であり、
炎のように赤いぷりぷりのエビを落雁の如く甘くして……にも関わらず、ソースは鬼のように辛いまま仕上げられるのかということを。
73 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:02:53.82 ID:h206M/Hho

そうして、そんな魔界料理を完成させた海美から返って来た答えは。
途端に顔を赤らめて、もじもじと口にした呟くようなその答えは。

「え、えぇっとぉ……味見だったらちゃんとしたよ?
卵がちょっともちゃもちゃして、エビチリの味もちぐはぐしてたけど……」

P氏は未だ飲み込むタイミングを計りかねている
餅オムレツをもぐもぐさせながら「そうだろうそうだろう」と頷いた。

どうやら自覚はあったようだ。失敗することは悪くない。
反省点が見つかったならば経験は次回に活かせば良い。

それが素直にできるのが海美の持つ美徳の一つであり、
今回の犠牲となったオムレツとエビチリへの最低限の手向けと言える。

「ただ目立って悪いのはそれぐらいで、後は十分食べられる出来じゃないか」

ようやく口の中を空にできたP氏がエビ天の味について述べた。

大分やせ我慢をしたうえに言葉を選んだものだったが、
この感想を受けた海美はすぐさま彼に詰め寄ると。

「じゃあ、それって美味しいってこと?」

「まぁ……嫌いではない味だ」

彼女が嬉しげに尋ねるものだから、氏としてもそう返すしか道はあるまい。

だがその直後、料理の腕を褒められた喜びの余り大興奮した海美によって、
彼は開いていた口を超物理的手段で塞がれた。
74 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:04:32.08 ID:h206M/Hho

「うぅぅ〜〜〜! 嬉しいよー! プロデューサーっ!!」

唇に押しつけられたぷりぷりの感触に一瞬呼吸ができなくなる。

その原因である海美は衝動のまま次なる喜びを彼に求め、
P氏も彼女にされるがまま全てを悟って受け入れた。

現在時刻は午後八時半。窓の外はすっかり暗くなっており、
室内はいつの間にやら夜戦という表現が実に相応しい戦場だ。

二人っきりの密室で、互いの体、心の温度が時間と共にヒートアップ。

そのうち「もっともっと!」と海美は昂り、彼女の熱に当てられたP氏も
「こうなりゃヤケだ!」と徹底抗戦の構えを見せるようにまでなっていた。

両者の激突、再び。それから一合二合と重ねる度に、
氏は自らの体が石のように固まって行くのをハッキリ感じることになる。

結果、男らしく真っ向からぶつかってくる氏の対応に我慢もきかなくなってしまった海美は。

「ねえプロデューサー、ホントのホントに嫌いじゃない?」

「嫌いじゃない、嫌いじゃないぞ!」

「私のために無理して言ってるんじゃなくて?」

「海美にはこの顔が無理をしてる顔に見えるのか!?」

「ううん、見えないっ!」

「だったら俺を信じてくれ!」

「なら、私信じるから! プロデューサーのこと信じるから!」

「海美……!」

「だからお願い! 嫌いじゃないなら好きって言って!」

「んなっ!?」

「その方が私嬉しいもん! 私、好きって言われたいよ!!
プロデューサーのその口から、大好きだって言って欲しいっ!!」
75 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:05:52.27 ID:h206M/Hho

もはや彼女の心は汗まみれ。恋する乙女以外の何者でもない恍惚としきった表情で、
どうにかP氏の口より「好き」の単語を引き出そうとする大興奮の灼熱うみみ。

その様は愛の女神すら裸足で逃げ出し嫉妬の悪魔さえ匙を投げだす熱っぷり。

今こそ情熱猪突恋進撃! どストレートなLOVEを求む声に浮かされるままP氏は噴き出る汗を物ともせず。

「好きだっ!」

「ホント!?」

「嘘じゃない、ホントだ! 好きだー!」

「もっと言って、もっと言ってっ!」

「ああもう何度でも言ってやるさ! 好きだ! 好きだとも!
大好きだよ!! これほど愛しく思ったのも初めてだ!!」

「プロデューサーっ!! 私、私……今が人生の中でいっちばん嬉しい瞬間だよーっ!!」

嬉し涙と興奮で海美の目と顔はもう真っ赤っかだ。
プロデューサーの顔も汗をダラダラ真っ赤っか。

二人のバカ騒ぎが狭い室内に反響する。振動で窓がガタガタ揺れる。

そうして、喜びの感情を爆発させるように海美が氏の顔を思いきり抱き締めた時であった。

閃光。一瞬のうちに世界が光りで包まれる。

同時に起きた耳鳴りによって音という音も失われると、
P氏と海美が感じるのは互いの肌を通して伝わる熱のみに。

一体何が起こったのか?

幸せの絶頂を突破して高まり過ぎた海美の精神力が異界への道を開いたのか!?
76 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:07:13.44 ID:h206M/Hho

否! 全ては現実に起きた出来事であり、海美も地上人として召喚されたりはしなかった。

どちらかと言えば彼女たちに起きたのはその逆だ。

次第にぼやけていた感覚が戻って来る。次いで眩んだ視界に捉えたのは複数の怪しい人影と、
部屋の入り口に仁王立ちする偉そうな少女の姿だった。

その少女はP氏たちに向かって二度、三度と不愉快そうに口をパクパクさせ、
周りの大人たちになにやら身振り手振りで指示を出すと。

「……で? アンタたち一体なにしてんの?」

時間と共に機能を取り戻し始めた聴覚がこれまた機嫌の悪さを隠そうともしない彼女の声音を拾った時、
P氏たち二人はようやく自分たちの置かれた状況を理解できた。

寝耳に水の……どころではない。就寝していたベッドごと、
冬の日本海に放り込まれたかのような言葉を失くす衝撃だ。

そうして自分たちを睨みつける立腹少女――誰あろう、
水瀬伊織の後ろからひょっこりと姿を現したのは奈緒と美奈子の二人である。
77 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:08:57.82 ID:h206M/Hho

「あ〜……こんばんわ、お邪魔してます」

奈緒が申し訳なさそうにそう言って、顔の前で謝るように手の平を立てる。

「ビックリさせたんじゃないですか? でもでも私らの方も余裕なくて……。
あのぅ――まさかとは思いますけどプロデューサーさん、海美と一線超えたりなんてことは」

「し、してませんよね? お二人の声、廊下にまで聞こえてましたけど」

そう言う彼女たちはどちらも不安に心配、
そして僅かばかりの好奇心を含んだ表情で伊織の隣に立っている。

さらには物々しい服装をした四、五人のガードマンが驚きの余り咄嗟に互いを庇い合った
――要するに、抱きしめ合っているのである――P氏と海美を囲んでいた。

これで二人が裸なら、間違いなく「イタしていた」と判断するべき状況だ。
室内をぐるりと見回して、伊織がうんざりするように口を開く。

「美奈子が相談してきたの。アンタたち二人が揃っていなくなってるって」

するとP氏は驚き顔のまま彼女を見上げ。

「そ、それでMSSを使ったのか? 民家に突入させたのか!?」

「悪い? ウチの警備会社なんだもの。私のマンションで何か事件が起きて無いか、
調べるのに使ったって誰にも文句は言わせないわ」

素朴な疑問をズバリ一蹴。

いつまで経っても海美と連絡がつかないことに焦り始めた美奈子たちは、
こういう事態が起きた時、一番頼りになる伊織に協力を要請したのだった。

連絡を受けてからの伊織の行動は実に素早い。すぐさまMSSを動員すると最寄りの温泉を全てチェック。
だがどこにもP氏の姿が無いことや、美奈子たちの話から二人と一緒にマンションへ。

部屋の前まで来たところでなにやら怪しげなやり取りを耳にすると、
躊躇なく扉を開けさせ"たまたま"持っていた護身用のフラッシュバンを室内に放り込んだというワケだ。
78 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:10:14.68 ID:h206M/Hho

「……相変わらずなんて無茶苦茶する娘だ」

伊織から一通りの説明を受けたP氏が頭を抱えて唸り出す。

「アンタにだけは言われたくない。……で? もう一度聞くけどホントにここでなにしてたの?」

「何してたって……そんなの見れば分かるだろう」

「あら、私が決めつけちゃっていいワケね? だったらすぐさま飛行機を手配するわ」

そう言って意地悪そうに伊織が笑うと、横に控えていた美奈子と奈緒が「ひぇっ」と声を揃えて怯えだした。

「プロデューサーさん、ここは絶対ボケたりしちゃダメです!」

「何してたって聞かれてナニしてたなんてアホなこと言わんといてくださいよ!?」

「阿呆はお前たちの方だ! ……俺はただ、晩飯を海美と食べていただけだって」

すると伊織は叱られているということでしおらしくなってる海美に視線をやり、「そうなの?」と彼女に問いかけた。

一瞬びくりと肩を震わせて、海美が無言のまま小さく頷く。

さらにはP氏も彼女が手に持つお皿とスプーンを指さして。

「ほら、この皿が一応の証拠だよ」

例の美奈子盛りされていたエビ天は、今やお店の並サイズ程の量までP氏に食べられ減っていた。

美奈子がしょんぼりしている海美に言う。

「それ、私がこの前教えてあげた」

「……うん。先生みたいに上手に作れなかったけど。
それでもプロデューサーは美味しいって……味も好みの味だって」

「あー……。その好き好き言うとったんが外まで聞こえて来たワケか」
79 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:11:33.62 ID:h206M/Hho

奈緒は合点がいったと手を打った。伊織は「呆れて物が言えないわ」と矛盾した台詞を口にした。
ただ一人、美奈子が海美の傍に寄り添うようにしゃがみ込むと。

「これ、私も一口貰っていい?」

「えっ?」

「見た目、私と練習した時よりだいぶ良いよ。多分だけど、あれから何度か一人で作ったりした?」

「……うん」

「やっぱり! だから私、味の方も随分変わってるって思うんだけど……海美ちゃん、確かめてみてもいいかな?」

美奈子が優しく尋ねると、海美は持っていたスプーンを彼女に手渡した。
そうして周囲の注目が集まる中、美奈子は掬ったエビ天を口に入れ。

「うん、うん……ふむふむ、へぇ……」

もぐもぐもぐと咀嚼して、時間をかけて飲み込むと見つめる海美に言ったのだ。

「……なるほど。これだけ美味しい料理なら、プロデューサーさんに独り占めしてもらいたくなるのもしょうがないね」
80 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:13:31.99 ID:h206M/Hho

その一言こそが決め手になった。伊織がパンと両手を打ち鳴らし、
「撤収、解散、お疲れ様。このバカにはもう少しだけ話があるけども、今日のところはこれで終了」

ぞろぞろと退出して行くガードマン。その様子を間抜けに眺めるままのP氏。
海美は美奈子と奈緒の二人に挟まれて座っている。

「食感はだいぶ個性的やけど、味はホンマに悪くないね」

「でしょ? しかもプロデューサーさんが好きな味だって言うんだよ。……私もこの味出したいなぁ」

スプーンをはみはみ感想を言い、奈緒はしょげかえってる海美の額を「元気だしや」と軽くデコピンした。
彼女が"らしくなく"消沈しているその理由を年上の二人は分かっており、だからこそ奈緒たちはこう言うのだ。

「海美、張り紙の件はコレに免じて許したる。美奈子がおったら料理は作ってしまうもんな。
……私だって自信作のたこ焼きを食べて貰おう思ったら、海美とおんなじことやったかもしれへん」

「でも落ち着いたところで連絡の一つは欲しかったかな。すっごく心配したんだよ?」

そんな二人に、海美は心の底から申し訳ないと感じていた。
その為「ごめん、二人とも……。本当にごめんなさいっ!」と、ただただ謝罪の気持ちを言葉にする。

「せやから謝らんでもええよって。人間、たまにはそんな気持ちの日もあるよ」

「第一、皆で決めてる一線はちゃんと守ってるし。
何かの事件に巻き込まれたとかでも無かったし……むしろ私、ホッとしちゃった!」

そうして美奈子は明るく笑い、奈緒も同じように笑い出した。

だが笑顔で笑い合い許し合う少女たちのすぐ傍では、
暗く淀んだ水溜まりよりも景気の悪い顔をした男が無理やり正座させられてもいるのである。
81 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:14:57.36 ID:h206M/Hho

「ところでプロデューサー。ここの契約をする時に私は確かに言ったわよね?
絶対に家の中でアイドルと二人きりにはなるなって」

「……はい」

「で、それを覚えててこのザマなの?」

「いや、帰ってもらおうとは思ったんだ。でも無理やりってのも可哀想で――」

「だからそういうところが馬鹿だって毎回言ってるんじゃないの! 再三注意してるように何かあってからじゃ遅いのよ?
やっぱりアンタはケダモノだって、お父様が判断すれば私のアイドル人生も終わっちゃうの!」

「……事務所、辞めなくちゃいけなくなるもんな。――ホントにごめん。
悪かった。伊織が心配してるように、すぐにでも連絡しておくべきだったよ」

自分の思っていた反応とは違う、意外にも殊勝な態度を見せたP氏に伊織も言葉を詰まらせる。

だがこれで下手に出るワケにはいかなかった。

なにせ彼女の方はP氏の上に立ち続ける主人であると、氏は生涯の下僕であると兎に誓った仲なのだ。

「そ、そうよ! 初めから私に相談すればよかったの。
……そうすればアンタの居場所を探してる間、馬鹿みたいにそわそわすることも無かったのに」

「えっ?」

「なんでもっ! と、とにかくアンタはこの伊織ちゃんに心ぱ――じゃなくて迷惑かけたワケなんだから。
契約違反でココを追い出されたくなかったら、お詫びとして週末の清掃作業を手伝いなさい」
82 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:16:22.65 ID:h206M/Hho

ご主人伊織の命令にP氏がサッと青ざめる。

週末の清掃作業とは彼が住んでいるマンション周りの掃除全般を言うのだが、
自身の記憶が正しければ実施されるのは明日の朝。

当然、P氏は心の中で憤慨した。
腰を痛めている状態の人間になんてことを命令するのだと!

だが伊織は「そうそう」と芝居がかった調子で何かを思い出すように指を振り。

「だけどアンタ、腰を痛めたって言ってたっけ。……若い私には
全然関係無いから知らないけど、聞くところによると結構シンドイって言うじゃない」

「あ、ああ! そうだ。実はそうなんだ伊織! 今だってほら、この通り治療の為に横になって――」

「でも寝てばっかりって言うのもかえって治りが遅くなるそうよ。
今はね、動かして治すのが主流なの。新堂だって言ってたわ」

そうして「にひひ♪」と笑った少女の瞳は悪戯心に溢れていた。

これは逃れようのない決定事項。

また、P氏が無事に明日の昼を迎えられるかどうかは定かでなく――。

「あ……あの、いおりん!」

だからこそ海美は二人の間に割って入った。

「それ、私にも手伝わせて? ……っていうか手伝いたい!
だってプロデューサーが腰を痛めたのも、そうやって掃除することになるのも全部私のせいなんだし」

「……ダメよ。海美には悪いけど」

ところがだ。伊織はその申し出をいとも冷たくあしらった。
だがすぐさま「なんで!?」と返した海美には断られた理由が分からない。

……そう目で訴える彼女に伊織がやれやれと嘆息する。
83 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:18:05.58 ID:h206M/Hho

「別にこれがプロデューサーへの罰ってワケじゃないからよ。
あくまで私からのお願いであって、自分の罪悪感を誤魔化すための贖罪には使ってなんて欲しくない」

しかし、伊織の説明はかえって海美を混乱させた。……贖罪の意味が皆目分からなかったのだ。
その事に伊織が気づけたのも、海美がチラチラと美奈子に視線をやったからである。

「……アンタねぇ」

まるで予想外の反応を前に伊織は脱力したように肩を落とすと。

「いいこと? つまり私が海美に言いたいのは」

「う、うん! いおりんが私に言いたいのは……?」

「そんな切羽詰まったような顔で自分を貶めることは無いってことよ。
このバカに怪我をさせただとかなんだとか、手伝いたいならそういうのは一切言わなくてもいいの」

言って、手間のかかる子供を見るように今度はやれやれと肩をすくめた。

「アンタ、今回怪我をさせた相手がプロデューサーだからそこまで意地になってるんでしょ?
これが見ず知らずの赤の他人だったらどうなのよ? ここまで熱を入れて謝ることができるワケ?」

「い、いおりん、それは……」

「できないでしょ? 即答。……だから軽々しく"自分のせいで"なんて口にしないでって言ってるの。
人にはそれぞれの身の丈ってものが……あるんだから」

伊織の陰を含んだ物言いによって僅かな沈黙が訪れる。
P氏たちも二人に口は出さず、しばらく自分でも考えた後で海美がおずおず口を開いた。

「なら、要するにただ手伝いたいってことだけを言えばいいの?」
84 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:19:09.99 ID:h206M/Hho

そうして伊織を見つめる眼差しは、どこまでも真っ直ぐ前を向いている。

……先に根負けしたのは伊織だった。

彼女が「まぁ……そうね。もうそれでいいわ」と出された答えに頷くと、
海美の方も「じゃ、私も掃除手伝いたい!」とシンプルな意志を言葉にする。

すると二人の会話を聞いていた美奈子も手を上げて。

「なら私も。みんなでやればすぐ終わるだろうし……ね? 奈緒ちゃん」

「へっ!? あ、それ私も数に入ってたんや?」

結局、急に話を振られて驚いた奈緒も掃除を手伝うことになった。

その場の流れだったとはいえ、三人もの助力を取り付けられたP氏が
「ありがとう、ありがとう!」と彼女たちに頭を下げる中、一人面白くないのは伊織である。

本来の彼女の予定では、汗だくでひぃひぃ掃除をするP氏の姿を眺めてしばしの退屈を満たした後、
冷たい飲み物の一つでも差し入れて彼に恩を売る計画でもあったのだ。

そうでなくても「一人では無理だ!」とP氏が泣きついてくるならば、
少なからず作業を手伝うのも別にやぶさかではないと考えて――。
85 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:19:58.61 ID:h206M/Hho

「……いおりん! ねっ、聞いてくれる?」

考えていた伊織だったのだが、突然声をかけられた彼女は少々びっくりしながらも「な、何よ?」と海美に訊き返した。

「別にそんな……大きな声出さなくても聞こえてるわよ。で、なに?」

「あのね、良かったらいおりんも一緒に掃除しない? 四人より五人の方がきっと早く片付くって言うし、
終わったらそのままみんなで美奈子先生のご飯にしようって」

 ねているのは海美だけじゃない。美奈子も、奈緒も、そしてP氏も伊織の返事を待っていた。
そんな四人の視線から逃れるように「し、仕方ないわね」と、伊織が照れ臭そうにそっぽを向く。

……だがそのうち全員と向き合うと、この場を収めるためにもコホンと大きな咳払いをしてから締めくくった。

「また今日みたいに暴走されてもたまんないし、お目付け役は必要でしょ?
……全く、プロデューサーもアンタも世話が焼けてしょうがないんだから!」
86 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:20:26.35 ID:h206M/Hho
===
さて――P氏が腰を痛めたことにより始まった小さな騒動はこれで閉幕。
これを女難と見るか僥倖と見るかは受け取る者の心持ち次第。

それでは、最後までご覧いただき真にありがとうございました。
87 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2018/03/11(日) 23:23:00.47 ID:h206M/Hho
>>85訂正

○尋ねているのは海美だけじゃない。美奈子も、奈緒も、そしてP氏も伊織の返事を待っていた。
× ねているのは海美だけじゃない。美奈子も、奈緒も、そしてP氏も伊織の返事を待っていた。
88 : ◆NdBxVzEDf6 [sage]:2018/03/12(月) 01:40:02.78 ID:kyMhcmLc0
羨ましい、乙です

>>9
高坂海美(16)Da/Pr
http://i.imgur.com/mUXI7vq.jpg
http://i.imgur.com/cuDRFvG.jpg

>>49
横山奈緒(17)Da/Pr
http://i.imgur.com/p8MwLq9.jpg
http://i.imgur.com/uyLqr0V.jpg

佐竹美奈子(18)Da/Pr
http://i.imgur.com/IvjaW1Y.jpg
http://i.imgur.com/3jWPs9K.jpg

>>76
水瀬伊織(15)Vo/Fa
http://i.imgur.com/XacpF2d.jpg
http://i.imgur.com/Yut9h0v.jpg

あれ本当にあの世行ってたのか……
http://i.imgur.com/SIfKAyv.jpg
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/12(月) 08:57:00.25 ID:+7p1Vv56o
味は100%食べれるようになったなら十分な進歩だな
しかしまっすぐなうみみはかわいい
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