少年「俺のクラスは亜人だらけ」

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113 :亜人好き ◆HQmKQahCZs :2018/11/12(月) 14:18:12.35 ID:NX/rimYL0
さてはてどうしたものか。しつこく悩んでいると―――

「キャッ」

誰かにぶつかってしまった。完全に現実を認識してなかった俺は軽々と転倒し、衝突した相手を下から見上げることとなった。

なぜ俺が転倒したのに相手は倒れてないのだろうか。そういえばぶつかったとき何か大山的不動感覚………なんだ大山的不動感覚って。

要するにびくともしなかったように思えた。

「す、すいませんっ、すいませんっ。私なんかがいたから」

可愛らしい悲鳴の後に続いたのは矢継ぎ早に繰り出される謝罪の嵐。

一体これは何事かとごめんなさいの雨あられを掻い潜りその主を見る。

男「あ」

教室で見たことのある姿だった。クラスメートだった。

ノヘジが言ってたレベルの高い女の子。さすが牛の亜人。びくともしないのは納得だ。

「ごめんなさいごめんなさいっ」

………この子ならあの不良にも勝てるのではないか?

そんな考えが頭をよぎるがクラスメートとはいえ見ず知らずの相手にそんなことは頼めない。

というか女の子にそんなことを頼むべきではない。

男「すいません、よそ見してて。怪我はないですか?」

「は、はいっ。大丈夫です。頑丈だけがとりえなんですっ」

にしては包帯だらけだけども。

「そちらはお怪我はないでしょうか」

男「大丈夫です」

「もし後でなにかあったらご連絡ください、えっとクラスは」

男「同じクラスですよ。同じクラスの男です。第に………人間です」

「あっ、同じクラスの人間さんですね。すいません思い出せなくて」

「えっと私はリンネです。鬼のリンネです」

わぁ。
114 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 14:48:37.60 ID:NX/rimYL0
鬼というとさすがの俺でも知っている。

亜人の中でも最強と呼ばれ、絶対数が少ないながらも歴史に多く名を遺す種族。

その性質は剛健にて豪放そして粗野で自己中心的。

多くに憧れられ、多くに恐れられるその鬼と目の前の少女がどうしても同じものに思えなかった。

もし………もし本当に鬼であるならば

リンネ「あ、あのぅ、どうかされましたか? ! もしかして内蔵に損傷がっ」

男「い、いえ大丈夫ですから。えっと用事があるので失礼して」

リンネ「もし気分が悪くなったりしたら責任を取らせていただきますから!!」

男「………」

1.じゃあ責任をとってもらおうか。

2.全然平気だからきにしないでください。

>>115
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/12(月) 14:49:48.69 ID:zi30GZDq0
1
116 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 15:02:37.29 ID:NX/rimYL0
男「じゃあ責任をとってもらおうか」

リンネ「えっ! もしかして内蔵が使い物にならなくなったんですか?」

んなわけあるか、恐ろしい。

リンネ「そ、それじゃあ私の内蔵を………差し上げます!」

いらねぇよ。

男「実は今から恐ろしい不良を捕まえるためにいくんだが」

男「あんたとぶつかったから万全の状態じゃなくなった。このままだと取り逃がしてしまうかもしれない」

男「だから手伝ってくれ」

リンネ「おおお、恐ろしい不良ですか!?」ガクブル

鬼だろ。震えるなよ。

そんな俺の口八丁の嘘にリンネはコクコクと震えながら頷く。

だましてなんだが頼りになるのだろうか。

もしかしたら鬼になりたいだけの気弱な女の子なんじゃないかとふつふつと罪悪感が湧き出てくる。

えぇいっ、それでも人間よりは強いはずだ!

気をしっかりもて、俺。
117 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 15:11:51.26 ID:NX/rimYL0
そんなこんなでリンネが仲間になった。

リンネ「え、えっと捕まえるってどうするんですか?」

リンネ「あっ、ケーキを囮にして夢中になってるところを後ろから網で捕まえるんですか?」

虫か。

男「相手は何人もいますから戦うことになるでしょうね」

リンネ「戦い、ですか。戦いはあまり好きではなくて」

リンネ「す、すいませんっ。責任をとるっていったのにこんなこと言っちゃって」

男「鬼は…戦いが好きだと聞いてましたけど」

リンネ「あ、はい。大体みんなそうです。いえ、私以外はたぶんそうです」

リンネ「私は……出来損ないですから」

男「………」

リンネ「………」

気まずい。地雷を踏んでしまったらしく、リンネの顔が曇る。

そりゃあ種族すべて同じ性格なわわけがない。あくまで傾向があるだけでおとなしい鬼がいてもおかしくはないんだ。

リンネの性格だって個人差の範疇なんだから別におかしくはない。

………そうだ。そのはずなんだ。

当然のごとく差別をしてしまったことに反省する。きっと彼女は今までずっと偏見の目に脅かされてきたんだろう。

人々がこうであれと押し付けられた鬼の影に押しつぶされて。

男「すいません」

リンネ「そ、そんなっ。私が出来損ないなのは事実ですし」

男「鬼がどうのこうじゃなくて、リンネさんはリンネさんでした。勝手な想像をリンネさんに押し付けてしまってすいません」

リンネ「………男さん」

リンネ「励ましてくれてありがとうございます。でも出来損ないの鬼ってわかってますから」

そういってリンネは寂しそうに。諦めたように笑った。
118 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 15:22:38.88 ID:NX/rimYL0
「暴れんなおらぁ!」

巨大な校舎の中を例の不良を探してクタクタになっていたときだった。

渡り廊下を渡る最中に一度聞いた怒号を耳にした。

リンネ「ふわっ、な、なにがあったんでしょうか」

男「あいつらです」

渡り廊下から見下ろすと例の不良が再び何かと格闘していた。

「まーお!!」

猫だった。

しかしなんであいつらはそう猫を追い求めてるんだ。

やっぱり食べるのか?

男「リンネさんは猫って食べますか?」

リンネ「えっ、食べませんよ。いくら鬼でも野良猫ちゃんは食べませんよぅ」

男「ですよね」

………ん?
119 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 15:31:07.19 ID:NX/rimYL0
リンネ「とにかく野良猫ちゃんを襲うのは許せませんっ。どうすればいいですか男さんっ」

男「………」

どう、すればいいんだろうな。

渡り廊下から地上まで約10メートル。

不可能ではないが飛び降りたら怪我を負う高さ。というか下手したら死ぬ。

男「ここからあそこまでの行き方わかりますか?」

リンネ「えっ、はい!」

男「なら―――」

ピョンッ

そんな軽い効果音を立て

リンネ「よ、弱いものいじめはいけませんよぉ〜っ!」

リンネは渡り廊下から飛び降りた。

ドスンッ

リンネ「男さん! 男さんもはやく!!」

無茶を言うなよ。

男「俺は階段使っていきますからリンネさんは不良をお願いしますっ」

「な、なんだてめぇは!」

リンネ「ひぅっ、いいい、いじめはだめですっ、絶対!」

ガクガク震えながら人差し指を不良たちに向けるリンネ。

その姿はか弱く思えるが10メートルをちょっとの段差程度にしか思ってない女だ。

きっと大丈夫のはず。

そう願いを託し、俺はちゃんと階段を探した。
120 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 15:48:24.35 ID:NX/rimYL0
急いで下に降りるため校舎の中を走り回る。まだ多い生徒の間を抜けひたすらに校舎の中を走り回る。

しかしなんだ。この校舎は利用する生徒のことを考えているとは思えない。なぜに一階まで降りれない階段や一階を通り越して地下まで行く階段があるんだ。

そんなみょうちきりんな構造に俺は翻弄され、リンネの元へ行くのに10分近くかかってしまった。

男「リンネさんっ!」

一応心配しておく。もちろんリンネさんをだ。

さっきまで不良がいた場所には不良だったものの死屍累々

ではなく

リンネ「えへへ、かぁいいねぇ」

「んなぁ〜おっ」ジタバタ

猫と戯れる(猫は全力で嫌がっているが)リンネさんの姿だった。

リンネ「あっ、男さん」

男「無事だったんですね」

リンネ「不良さんは野良猫ちゃんを置いてどこかへ行ってしまいました」

そりゃあ上空から女の子が降ってきてしかも無事だったら驚くだろうな。

それかリンネの額に生えている角を見て鬼と察したからか。

どちらにせよ、大事に至らなくてよかった。

けしかけておいてなんだが、リンネさんが傷つかなくてよかった。

………ヒョウカさんに怒られるからな。
121 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 16:06:22.90 ID:NX/rimYL0
男「あれ?」

リンネ「どうかしましたか?」

男「その猫。洗ってあげたんですか?」

姿かたちは確かにさっきの猫だ。

ただ綺麗になっている。

毛艶は良く、光を浴びて光っているし目の周りにこびりついていた目やにもなく大きな目を開けて助けてとでも言いたそうにこっちを見ている。

リンネ「いいえ? 私はなにもしてないですよ?」

男「……誰か綺麗にしてあげたのかな」

その優しさは不良にとっての食べやすさになっただけだったが。

男「リンネさんはその猫の面倒を見てあげててくれませんか? また不良に狙われたらいけないんで」

リンネ「は、はい。全身全霊で野良猫ちゃんを守り抜いてみせましゅっ」

リンネ「///」

猫もリンネさんといたほうが安全だろう。

問題は猫がリンネさんから全力で逃げ出そうとしていることだが許せ猫。お前のためなんだ。

男「それじゃあ俺はあの不良たちを探してきますんで」

リンネ「き、気を付けてください」

男「えぇ。猫のことよろしくお願いします」
122 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 16:09:32.99 ID:NX/rimYL0
とりあえず今のところの心配は解決した。

あとはあの不良たちがどんな悪事を働くのかは知らないが見つけて捕まえ………

リンネさんがいない今俺はどうすればいいんだろうな。

自分の抜けてしまった考えを後悔する。

別にリンネさんじゃなくても安全そうな場所に猫を非難させるだけでよかったのに。

しかし起きてしまったことは仕方ない。

「何やってんだおらぁ! 今隠したもんだせおらぁ! ジャンプしろやぁ!!」

男「!!」

怒号と悲鳴。

またか―――!!
123 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 16:16:38.05 ID:NX/rimYL0
男「お、お前らそこまでだ!」

遮二無二声がしたほうへ飛び出す。

えぇいっ。やらないで怒られるより、やって失敗して怒られたほうがましだ!!

アータル「あ?」

男「………え?」

そこにいたのはクラスの担任であるアータル・オルファンだった。

壁際に生徒を押し付けてる姿はどうみても担任どころか教師に見えない。

アータル「お前はロードんところの人間じゃねぇか。どうしたこんなところで」

男「もっと言うならあなたの生徒ですよ。ってなにやってるんですか? カツアゲですか?」

アータル「おぉ、こいつが煙草を持ってたからな没収してるところだよ」

「も、持ってないって」

アータル「嘘つけや俺の煙草に関する嗅覚なめんなよおらぁ!!」ドンッ

「ひぃっ」

男「も、もう少し穏便に」

アータル「ガキが煙草吸ってんじゃねぇぞおらぁ!! イキりやがっておらぁ! さっさとよこせおらぁ!!」ドンドンッ

「ひぃぃぃぃっ!!」

………この人煙草奪いたいだけじゃないよな?
124 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 16:26:42.86 ID:NX/rimYL0
「す、すいませんでしたぁぁぁ」

アータル「素直にだしゃいいんだよ。次持ってきたらただじゃおかねぇからな あん?」

「わかりましたぁぁぁ」

アータル「よし、行ってよし」

「ひぃぃぃぃっ」

アータル「ったく、なんでは俺はこんな使命感に燃えた理想の教師なんだろうな」

………なにいってんだ?

アータル「で、お前はなんでここにいるんだ?」

男「ちょっと人探しを………!」

これでも教師だ。俺よりずっと学園について詳しいはずで。

だからもしかしたら不良がいそうな場所を知ってるんじゃないか?

男「あの、ちょっと聞きたいんですけど、不良達がいそうなところって知ってますか?」

アータル「あ? 俺の前で非行は許さねぇぞ?」

男「違いますって、ちょっと用事がありまして」

アータル「あぁん!?」ズイッ

男「人探しですから! そんなに顔を近づけないでくださいよっ」

アータル「人探しねぇ………不良なんてこの学園にマカロニみたいにいるが」

アータル「集まるっつったら番長連か。まってろ地図書いてやるから」

男「あ、ありがとうございます」

………番長連ってなんだ?

アータル「ほらよっ」

そう言って手渡してきた地図は短い時間に書いただけあって簡素で粗雑。

つまりとても分かりにくい地図だった。

アータル「なんだかよくわかんねぇけど頑張れよ」

そう言って去っていく担任アータル。その背中を見て俺は

男「………わかんねぇよ。これ」

深い溜息をついた。
125 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 16:27:39.07 ID:NX/rimYL0
今日はここまで

こっちはお久しぶりですいません
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/12(月) 16:47:48.71 ID:lDq7y6JtO
乙乙久しぶり
こっちも楽しんで読んでるでよ
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/12(月) 17:06:49.19 ID:HFx93mbUO
乙待ってた!
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/12(月) 17:14:42.67 ID:PD4P/QbDO

待ってた
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/12(月) 17:57:53.29 ID:AC31tLtVO

少年くん男になってるゾ
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/12(月) 18:33:29.57 ID:LASyqxABO
乙乙
はたしてリンネは本当に頑丈なだけで弱っちいのかそれとも
何にせよ鬼繋がりのヒヅキと手合わせしてもらいたいものですね(ゲス顔)
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/12(月) 19:20:22.56 ID:FrQg789wO
更新来てるやん!乙!
132 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/14(水) 15:52:55.25 ID:s5u9ySEi0
少年の名前が男になってるorz
133 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/14(水) 16:18:07.35 ID:s5u9ySEi0
地図に書かれた下手な絵に何とか頭を捻りながら道を作り出していく。明らかにゆがんだ形の校舎を現実の校舎に当てはめ悪戦苦闘すること小一時間、俺は校舎から外れた鬱蒼と生い茂る木々の中にいた。

地図には一本道で書かれているが現実ではどうかわからない。まっすぐな校舎がゆがんでいるのだからまっすぐな線が現実では歪んでいるということも十分考えられる。

希望は地図にある最後の目印、聳え立つ大木だが………

少年「あれか」

確かに目立つ。背の高い木々の中でもなおさら高い大樹。あれを目印にすれば迷うことはないだろう。

が、如何せん距離がある。行って帰ってくる(無事帰って来られるのであればの話ではあるが)と太陽はとうに暮れているだろう。

そんなことになればまたミレイアに罵られ、ユキムラに撃ち抜かれるであろうことは簡単に想像つく。

俺だってやりたくてやってるわけじゃないのにな。

ままならないものだ。

「止まりなさい」

男「!」

声がかかる。一体どこからと見渡す前に俺の首根っこをひやりとした手で掴むやつがいた。

男「がっ、あっ」

あがけどもがけど力は緩まない。両手で首に当てられた手をはがそうと試みるが万力のごとくピクリともしない。さらにその手には硬い鱗が生えており、剥がそうとする際に手を深く切った。

痛いし、苦しい。それは思考能力をたやすく奪っていく。

「見たことない奴だ。それに我々側とも思えない」

「誰だ?」

その返事を聞きたければ手を放せ。なんとかそう言おうと思ってもうめき声と泡しかでない。

どうしようもなくただ苦しさに沈むだけ。まるで水中にいるかのような感覚にどんどんどんどん頭が痺れてくる。

死にはしないだろう、だけれどこの感覚は―――
134 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/14(水) 16:39:55.48 ID:s5u9ySEi0
「弱いな。風紀委員とも思えない」

意識を失う直前に手が外された。支えをなくしてそのまま膝を折って倒れ伏す。

体が勝手に酸素を求めてあえぐ。口の中に土と砂が入ってきたがそれでも呼吸を止めることはできなかった。

「ここから先は迷い込んだじゃすまない場所だ。痛い目を見たくなければ帰ったほうがいい」

少年「げほっ、けほっ」

少年「人さがし、だ」

何度か大きく深呼吸をし、やっと脳の痺れが取れる。そうすればいきなり襲い掛かってきた相手をようやく余裕をもって見ることができた。

おそらく女だ。というのは薄暗いのと肌が鱗でおおわれているたに判別がしにくいためだ。

ドラゴニュートよりもドラゴンに近い。爬虫類の怖気が走る眼が俺を見下ろしている。鬼に続いてドラゴン。なんでこうも俺よりずっと強い奴らばっかりなんだろうな。

本当にリンネと別れたことを後悔する。

「人探し?」

少年「ここに来れば会えるかもしれないって、人に聞いた」

「………誰だ?」

少年「あー」

確か名前はイズナ。かまいたちのイズナだ。

少年「…イズナってやつだ」

「イズナ………イズナか」

反応があった。ドラゴンは俺をじろりと見て小さく頷いた。

「ここにはいない」

少年「え? でもこっちに」

「あいつはこっちには来ない」

「だが心当たりはある。案内してやろうか」

少年「!」

それは確かに魅力的な提案だ。だがしかしさっきまで俺の首根っこを掴んでいた相手の言うことを鵜呑みにしてもいいものか。

おそらくこいつは番長側の人間だ。なら同じ仲間であるイズナを売るはずがない。油断させておいてなにかされるのがオチだろう。

だがもし、だがもし本当にイズナのところへ案内してくれたら?

高い絶望と低い希望を天秤にかけるほど俺は愚かじゃない。普通ならば

だけど手詰まりの今、その提案は本当に魅力的に思えた

だから俺は―――

1.言うことを信じる
2.言うことを信じない

>>135
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/14(水) 16:46:12.28 ID:9LP6l+Zqo
1
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/14(水) 19:30:58.04 ID:36GN+i9RO
乙乙
クロは女何かな
137 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/15(木) 11:09:55.07 ID:wSd/ZYkt0
信じよう。

ただでさえ今は手掛かりもなく手詰まりなのだ。だから今は蜘蛛の糸ほどの可能性でさえ希望に見える。

普段の俺ならば絶対に選択をしないだろう。リスクを冒すくらいなら、現状維持を、それすらできないのならゆったりとした衰退を望むことなかれ主義的思想を持つ俺だったら。

「どうする」

男「案内してくれると助かる」

「そうか」

ドラゴンの手が差し伸べられる。その手を握り返すとそのまま腕の力だけで立ち上がらされた。おかげで手首の間接が痛む。

しかし大きいな。ドラゴンなだけあって俺の身長よりずっと高い。並んで歩けば俺が子供に見えるくらいの身長差だ。

こいつからみたらミレイアなんて赤ちゃん程度に見えるんだろうな。

「何を見ている」

「いや、大きいなと」

「ふん。当然だ。私は人間ほど矮小ではない」

むかっ。

少し頭にきたが掴みかかることもできなければ言い換えすこともできない。

力量差も当然だが、相手からみたら事実だからな。

「ついてこい。こっちだ」

そう言ってのっしのっしと歩き出す。

ついて行くのは大変だった。あれだけ身長差があるのだ。当然歩幅も全然違う。

向こうがただゆっくりと歩いているのですら俺にとっては早足と同じなのに、向こうが早足になればもう走るしかない。

男「はぁ、はぁ」

「ふん。軟弱者め」

軟弱者で悪かったな。こちとら数か月前まで栄養失調だ。ミレイアやユキムラからの暴力で耐久力だけはついたかもしれないが体力はからきしなんだ。

息を切らしている俺を一瞥するも速度を落としてくれそうにない。

これだから不良は。これだから人のことを考えない人種は。

人のこと、あんまり言えないけどさ。それにたぶんミレイア達のほうが人のこと考えてないし。
138 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/15(木) 11:22:33.40 ID:wSd/ZYkt0
また男になってるorz
139 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/15(木) 11:32:58.82 ID:wSd/ZYkt0
歩いたにしても結構時間かかったんだ。その距離を走るとなるとしんどいのは当然。

学園が見えてきたときにはもう口の中が鉄の味。それに対してドラゴンは息一つ乱してない。

人生努力すればなんて言葉はよく聞くが、肉体的なものに関しては到底埋めようがないこともあるわけで

「あっ、何しに来たんですかっ」

「!」

近くで声がかかる。その声を聴いた瞬間ドラゴンは森の中へ走っていった。

ガサガサと木々が揺れる音。誰かがドラゴンを追い回す声。

少年「い、いったいなんなんだ?」

あ、ドラゴンがいないと不良のところへ行けない。

困ったな、ドラゴンを追って俺も森へ入るか? と考えていた時だった。

ガサガサ

「また逃げられてしまいましたね」

頭をかきながら誰かが森の中から出てきた。その両耳は頭上に生えた金色の三角形。

同じく金色の隠しきれないほど豊かな二本の尾を携えた男……女………どっちだ。

声も、どちらともとれるような………。

「なんですか? そのようにみられると照れてしまいますよ。なんてね」

どっちだ。

いやまぁ、どうでもいいか。

「大丈夫ですか? あのドラゴンに襲われていたように見えましたが」

少年「あー、大丈夫です。道案内してもらってただけなんで」

「道案内!? あの恐ろしいドラゴンがそんなことするわけがありませんよっ。たぶん騙されて食べられる寸前だったのでしょう。あぁ、恐ろしいっ」

芝居がかった感じでくらりと額に手を当てる性別不詳の狐。

危ない所………だったのか?

少年「あ」

狐の腕には腕章がついていた。風紀委員の。

「そんなに見ないでください。人目がないからって///」シナッ

うるせぇ。

「あは、冗談ですからそう怒らないでください」ニコッ

少年「あなたも風紀委員なんですか?」

「あぁ、はい。そうですよ。学園の規律を守るのが僕の役目。おっとこれは申し遅れました。僕はクロと申します。よくある名前ですから風紀委員のクロと覚えてくださいね」ニコッ

男「えっと、ヒョウカさんに仕事を頼まれた男です。風紀委員には所属してませんけど」

クロ「あぁ、あなたが例の」

男(例の?)

クロ「しかしあのドラゴンに道案内してもらっていたとは、どこに行きたかったんですか? 僕でよければお送りしますよ」

男「え、いいんですか?」

クロ「それもまた風紀委員の活動ですから」ニコッ
140 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/15(木) 11:42:59.00 ID:wSd/ZYkt0
渡りに船とはこのことだ。

あのドラゴンなら懸念すべきところはあったが、この人は風紀委員だ。

心強い味方になってくれるだろう。本当にちょうどいい時に来てくれた。

クロ「なるほど、イズナを探している、ですね?」

ヒョウカさんから渡された封筒の中身をクロさんに見せる。クロさんはふむふむと頷きながらそれを読むとぱちんと指を鳴らした。

クロ「お任せくださいっ」ニコッ

おぉ、さすが風紀委員。

………だったら俺に頼まずこの人が行けばよかったんじゃ?

クロ「こっちですこっちです。ささ、どうぞ」

案内継続。

しかしクロさんはあのドラゴンと違いしっかりと歩幅を合わせてくれた。

うーん。まともで優しい人に久しぶりに会った気がする。

クロ「さ、この道をまっすぐです」

複雑な学園をするすると迷わず進んでいくクロさん。俺も何年かいればこんな風に移動することができるようになるのだろうか。

少年「ありがとうございます」

クロ「それでは、頑張ってください。では」

………助けてはくれないのか。

俺の力で何とかしないといけないみたいだが、さっきのドラゴンの件もあるし………。

少年「それでも、行かないとな」

成功にしろ失敗にしろ早く終わらせることだ。

そうしたら元通り面倒ながらも平凡な日常に戻れるはずだ。
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/15(木) 13:55:46.79 ID:wn++dj18O
乙クロ演技かわいい
142 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/15(木) 15:27:50.94 ID:wSd/ZYkt0
森ほどではないが薄暗い。それに学園内でも外れのほうだから一目にもつきづらい。

確かにここならばこっそりなにかするにはもってこいの場所だな。例えば………

頭に浮かんだ恐ろしい想像をかぶりを振ってかき消す。

はは、まさかそんなことはしないだろう。

………そういえばあのドラゴンが言ってた、イヅナは番長連に行かないという言葉。

それは一匹狼だからということなのだろうか。

もしそれが番長連に出れるような存在ではないということだったら?

例えば弱い、例えばそれほど悪くない。

確かにそれならあのドラゴンの言うことも納得がいく。

それならヒョウカさんが俺に任せたのも合点がいく。

だったら俺はただ想像が作り出した影におびえる愚か者だ。

言ってはなんだがとんだ張り子の虎だったな。それにおびえる俺は差し詰めネズミってところか?

男「………!」

木がはじける火の匂い。

さすがに校内で火の匂いがするのは穏やかじゃないな。

まだ肌寒い日があるとは言え、それでも焚火をするほどじゃない。

こっそり、こっそり様子を見ながら近づいていこう。

死角にあるということは向こうからもこっちが死角になるということだ。

注意深く進みさえすれば近づくのは容易だった。話し声が聞こえる。

何やら大声をあげているようだが緊張と心音でよく聞き取れない。

俺は静かに物陰から様子を伺うと―――
143 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/15(木) 15:35:01.30 ID:wSd/ZYkt0
男「!!」

火がはじけていた。メラメラと。

そう、火がはじけていたんだ。

イヅナ「火が強すぎるだろうが! 強火にもほどがあるだろうが!!」

鉄板の下で。

「す、すいませんっすっ。でも料理は火力だってオルレインちゃんも」

そして鉄板の上で踊る焼きそば。

なんだよこれ。

イヅナ「これじゃあソースが焦げ付いて不味くなっちまうだろうが!」

確かに気づけばソースの焦げる匂いはした。

でもまさか不良が焼きそば作ってるだなんて誰が思う。

しかも割と本格的な設備で。

「これでお客さんいっぱい来てくれるっすかね」

イヅナ「おうよっ! 俺様特性の焼きそば食っちまえばどんな奴だってイチコロよぉ!

特性!? イチコロ!? なにやら不穏な言葉が

「イヅナさんの焼きそばは美味しいっすもんねぇ〜」

………そっすか。

なんか緊張してたのが馬鹿らしくなった。

実は悪い奴じゃないんじゃないかこいつら。

………! まさかあの猫を焼きそばの具にする気では。

有りうる! よくわかんないけど有りうるかもしれない!
144 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/15(木) 15:40:34.41 ID:wSd/ZYkt0
その考えも瞬時に否定された。

「いたっ、うぅ、水が傷口にしみるっすよぅ」

イヅナ「けっあの猫。みすぼらしいから綺麗にしてやったってのに恩をあだで返しやがった」

「なんか変な女に猫捕まってたっすけど、も、もしかして食べられたんじゃ?」

イヅナ「お、おい。猫食う奴なんかいるわけねぇだろ」

「そ、そっすよね。でも鬼だったし」

イヅナ「………くっ。自分が情けねぇぜ! 鬼にビクついて猫一匹守れないんじゃよう!!」

「し、仕方ないっすよ。相手は鬼っすし。そうだ、あの猫のお墓を立てるっすよ」

イヅナ「ならなるたけ立派な奴作ってやらねぇとな。それがせめてもの弔いってやつだ」

「猫ぉ」ウルウル

ごめんリンネ。なんか猫食べてるって思われてるらしいぞ。
145 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/15(木) 15:55:46.08 ID:wSd/ZYkt0
とりあえず見たままをヒョウカさんに説明しよう。

そうすればヒョウカさんも大目に見てくれるだろう。

そう思って踵を返したときだった。

ボキッ

少年「!!」

ベタに足元に落ちてた枝を踏み折ってしまった。大きくないとは言え、普通に聞き取ることのできる程度の音だ。

イヅナ「! 誰がそこにいやがる!!」

「お、俺見てくるっす!!」

やばい、逃げろ!!

と思った瞬間には捕まっていた。

今日は良く捕まる日だな。

イヅナ「誰だてめぇ………いや見たことある顔だな」

「あっ、猫を追ってた風紀委員っすよっ!」

イヅナ「なにぃ!? てめぇもあの猫食い女の仲間だなっ!?」

本当ごめんリンネ。

というか俺が追ってたのは猫じゃない。お前だ。

それにまだ風紀委員でもない。

色々弁解したいことはあるが

イヅナ「けっ。風紀委員上等だボケェッ! 俺は俺の正義があんだ」

イヅナ「疾風怒濤のイヅナ。弔い戦と行くぜ!」

「イヅナさんっ、構え太刀っす!」

スラリ

少年「!!?!?」

あ、やばい。

イヅナに手渡された刀は優に本人の身長を超えていた。

あんなんで切られたら一たまりもない。頭から足まで真っ二つになるのも当然と思わせるほどの迫力。

もしかしてさっきのドラゴンよりもやばいんじゃあ?

なんとか弁解して、刃を収めてもらわないと

少年「いや、俺は――――――」

べリア「そこまでだ下郎どもめ! モブはモブらしくモブのように消え失せるといい! それがモブがモブとして生まれたさだめであり宿命! 貴様らは自分がモブであることを自覚し、精々主役様を立てることに尽力し、それ以外は慎ましやかに無害な生活を送ることを心掛けよ! このモブ式目に己が血で捺印し、この式目に従うことを誓いますか? 誓いますか!? 誓ってくれますか!? 誓ってくれますよね!? ねぇ!! つーか誓え!!!!!」

―――罵詈雑言をあしらった意味不明な文句を垂れ流しながらあいつが現れた。
146 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/15(木) 16:38:13.10 ID:wSd/ZYkt0
今日はここまで

毎度ありがとうございます
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/15(木) 16:54:52.77 ID:qL1GkPYLO
乙乙
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/15(木) 17:30:54.85 ID:4qvxYgRCO
おっつ
最近更新が多くて嬉しい
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/15(木) 18:15:29.73 ID:CVauM0fEO

今進んでる話は少なくとも学園祭より前なのか
そういえば少年くんってまだ正式に生徒会に入ってないんだっけ?
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/15(木) 21:33:42.83 ID:TkZHhgj7o
おつー
151 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/19(月) 11:09:44.22 ID:NCWYoFgi0
奴がいるのは校舎の屋上。

校舎と校舎の間に位置する場所にいる俺たちの行動は丸見えだっただろう。

しかしなんのためにそんなところにいたのか。訝しがる俺たちを後目に奴は逆光の中で高笑いを上げた。

べリア「今行くぞっ、まって、んぐなぁ!?」

そう叫び奴は屋上から飛び降りる。黒いマントが棚引いたかと思えば

ぐちゅっ

そのまま顔面から地面にたたきつけられ、辺り一面に血液をまき散らした。

「ひ、ひぃやぁっ! す、スプラッタっすよぉ!?」

血の匂い自体嗅ぎなれたものだが、それでも目の前に死体があるという光景は何度見ても慣れるものではない。

たとえそれがべリアだとしてもだ。その光景は否が応でも脳内で警鐘を鳴らし続ける。

というか飛べよ! 飛べるだろ!?

べリア「んぐばぁっ!」

ガバっと奴が起き上がる。その勢いでピチャっと血液が俺の顔面に付着した。温い。

「ずぉ、ゾンビっすよぉ〜 逃げるすよぉ〜!!」

イヅナ「お、おいお前ら!!」

散り散りになってくイヅナの仲間たち。

そりゃそうだ。目の前で人が投身自殺を試みただけでショッキングなのに。しかもそれが元気に起き上がるんだからな。正直俺も冷静なふりして吐き気をこらえてる。さすがに顔面に血液つくと気持ち悪い。生臭いし、変に暖かい。

べリア「ふ、ふわはははっ! 我に恐れおののいたか凡人共よ! んなぁ〜っはっはっは」

イヅナ「ち、ちくしょう!! 覚えてやがれ!!」

そんな三流悪役染みたセリフを吐いてイヅナも逃げていく。

正直、なんだこれ。

いったい、なんなんだこれ。

べリア「危ない所を助けてやったぞ凡念! さぁ! 我を称え! 我を崇め! 我を―――ん?」

パチパチパチとはじける音が大きくなった気がする。それになんだか暑くなったような・・・

べリア「………………これ我のせいか!?」

いつのまにか横に倒れていた火が校舎へ燃え移っていた。

152 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/19(月) 11:17:36.35 ID:NCWYoFgi0
少年「なんだこれ!? なんなんだよこれ!!?」

メラメラと燃える火はもう到底料理に使える火力ではない。

これじゃあキャンプファイヤーだな………じゃねぇ!

少年「み、水! 水を探せ!! もしくは水の魔法を!!」

べリア「み、水の魔法なら、我が―――」

ヒョウカ「なにを―――しているのですか?」

べリア「んなぁ!?」

びゅぉうと皮膚を切り裂く冷気が吹き付けてきた。もう火の熱さなんてものは感じない。痛いほどの冷気が制服を裾から凍らせていく。

ヒョウカ「なにを、しているのですか?」

べリア「こ、これはだな、決して我のせいでは、いや我のせいかもしれぬがその発端は」

ヒョウカ「―――問答無用。風紀委員権限にて封印凍結を実施。対象べリア」

べリア「なんで我だけ!?」

ヒョウカ「―――――執行」

景色が瞬いて

―――真っ白になった。
153 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/19(月) 11:38:24.95 ID:NCWYoFgi0
冷気を吹き付ければ火が消えるのは自明の理。これは燃焼四大要素のうちの一つであるマナ。対象平方センチメートル内に存在する火のマナの密度を氷―――すなわち水のマナの密度が超え、火のマナを減少させたからだ。

なんてことはどうでもいいか。

カルラ「そっちしっかり持てよっ。よし、それじゃ運ぶぞ! せーのっ」

ヒョウカ「無事、ですか?」

少年「大丈夫です」

俺はいつの日かと同じように風紀委員が凍ったべリアを運び出し、ヒョウカさんからもらった熱いホットミルクを啜っている。

火はヒョウカさんのおかげでちょっとしたボヤ程度ですみ、怪我人は一人もでなかった。

もしヒョウカさんがいなければ、なんてことを考えるとぞっとする。

本当に結局はヒョウカさんに助けてもらってばかりで。

ヒョウカ「また生徒会ですか」

男「なんで、あいつは俺のことをつけ狙うのでしょう」

ヒョウカ「………生徒会の考えることはわかりません」

男「そう、ですか」

接点があるとしたらあの日係わってしまったこと。それと家まで連れて帰ってもらったごとくらい。

あの日、ちょっとは見直したんだが―――

男「もう、生徒会に関わりたくはありませんね」

ヒョウカ「ところであの不良の件。イヅナはどうなりましたか?」

男「あぁ、それなら」

今まで見てきたことを話す。

学園内で刀を持ち歩くやつがいるのはもう今更なにも言わないが、その刀を抜いて切りかかろうとしたこと。

だけど猫を助けたり、焼きそばを作って売ろうとしたり、あまり不良の不良らしさが見えないということ。

だから俺はどうすればいいのか判断ができないこと。

ヒョウカ「そうですか」

ヒョウカ「校内での許可なき火気使用は禁止されています。今後執行対象として処罰する必要があります。ありがとうございました、少年さん」

確かにこの火事の原因はイヅナにもある。それでもその火を倒したのはべリアであるし………

ヒョウカ「どうか、しましたか?」

男「―――」

1.それはおかしい、と言う。

2.校則に則っているのだからなにも言えない。

>>154
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/19(月) 12:04:27.93 ID:mY9YmG28O
1
155 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/19(月) 13:18:32.98 ID:NCWYoFgi0
少年「それって、おかしいですよ」

ヒョウカ「何が、でしょうか」

何がおかしいのか。それが整理できない。

ヒョウカさんの言うことはもっともだ。校則で決められていることに違反したから罰せられる。当然のことで、否定はできない。

でも………実際そういうのは一面だけで捉えるもんじゃないだろ。

その過程が重要で。そいつの人となりが重要で。

なんというか、その

ヒョウカ「少年さんは、私が間違っていると?」

少年「いや、間違っているわけじゃなくて、その、処罰するほどのことでは」

ヒョウカ「危うく火事になるところでした」

少年「それはあの男のせいで」

ヒョウカ「そうですか。では少年さんは私に逆らうと?」

ヒョウカさんの口から冷気が漏れる。その瞳は涼やかにこちらを睨みつけている。

口に出さないが俺を責めている。逆らう俺を責めている。

でも

少年「………はい」

ヒョウカ「………」

人を切り殺せそうなほどの目線。おそらくさっきの刀よりもよっぽど切れ味はいいのだろう。年上だけど女性で、見た目は俺よりもか弱く見えて。

だけど凍り付いて動けない。その水色の瞳にねめつけられて動けない。

すっとヒョウカさんの手が上がり、そのまま俺の頬へあてられる。

産毛が凍り付く感覚。氷を当てられたよりもずっと冷たい。

暖かさなんてない。人のぬくもりとか優しさなんてものはない。

ただの悪意すらなくすべてを凍り付かせるような理に近い感覚。

ふぅ、とヒョウカさんの口から強く息が漏れた。

ヒョウカ「少年さん」

少年「………」

返事ができない。奥歯ががたがたなって口が思うように開かないし、呂律が回る気しないし。

ヒョウカ「………合格です」

そう言ってヒョウカさんは微かにほほ笑んだ。
156 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/19(月) 13:28:08.69 ID:NCWYoFgi0
少年「………ぇ」

なでり、なでり

ヒョウカ「合格、と言いました」

ヒョウカさんが俺の頭を撫でていた。

さっきとは違い、柔らかさをしっかりと感じる。暖かさは感じないけどやさしさは感じた。

クロ「おー、ちゃんと合格できたんですね?」

ヒョウカ「はい。合格です」

ひょっこりとクロさんが出てきてキラキラ光る笑顔をこちらへ向けてきた。

で結局男なのか、女なのか。

少年「合格、って、なんですか?」

クロ「おめでとうございます。今日から君は風紀委員です」キランッ

ちょっと待て

少年「ちょっと待ってください。俺は風紀委員に入ろうとした覚えはないですよ!?」

クロ「ヘッドハンティングです」

少年「拒否権は!?」

ヒョウカ「嫌、なのですか?」ビュォウ

寒い! 冷気がすごい!! さっきより酷い!!!

あっ、なんだか眠くなって………

少年「わ、わわわかかかりましたたたた」

ヒョウカ「ありがとうございます」

クロ「やったぁ」

そうか、ここもあそこと一緒で

強い奴が幅を利かす場所なんだなぁ。
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/19(月) 13:29:08.28 ID:fsea917dO
選択肢2にしてたら不合格やったんか
158 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/19(月) 14:26:10.96 ID:NCWYoFgi0
色々と不満もあるが、ヒョウカさんには色々とお世話になったし、お手伝いできることがあるなら喜んでしたい。

この変人だらけの学園でヒョウカさんといればなんとか過ごしていけるだろうし。

少年「それで、これが風紀委員の試験だったんですね」

ヒョウカ「はい」

クロ「脅しにも屈せず自分が思う正義を貫いたその姿勢をヒョウカさんは評価したんだよ。あ、今のは駄洒落ではないよ?」キラッ

少年「あ、あはは」

しかしなぜ俺が選ばれたのだろうか。勉学は他の人よりはできると自負しているが、風紀委員に勉強が重要であるとは思えない。

じゃあ俺が第二種だから?

そんなわけはない。俺が第二種だってバレてないはずだし

と、訝しんでいるとヒョウカさんは俺の考えを読み取ったらしく人差し指を立てこう言った。

ヒョウカ「優れた者も重要ですが自分をしっかり持って、自分を貫く人が欲しかったのです」

ヒョウカ「才あれど勇なきものは愚かであり、才あれど信なければすなわち逆賊。あなたは私の期待に応えようとして、勇気を奮い立たせ不良へと向かっていった」

ヒョウカ「手がかりを探しに番長連のところまでいってくれました」

ヒョウカ「やはりあなたは私が求めていた理想の人材でした」

ここまで手放しでほめられるとなんだか背筋がむず痒い。俺はミレイアほど傲岸不遜ではないし、そこまで勇はない。ただの弱者でしかないというのに。

ヒョウカ「それではもう一度訪ねます。風紀委員として働いてくれますね?」

男「………はいっ」

クロ「なんて感動的なんだろうね。ほら、握手握手」

クロさんがヒョウカさんの手を差し出させる。俺はその手をしっかりと握り返し

ヒョウカ「ようこそ、風紀委員へ」

男「よろしくお願いします」
159 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/19(月) 14:34:36.46 ID:NCWYoFgi0
ヒョウカ「それで、風紀委員になった男さんの初仕事ですが」

ヒョウカ「イヅナの処罰です」

男「………はい?」

男「え、でもこれって仕込みだったんですよね?」

クロ「違いますよ。見守ってはいましたけどイヅナを捕まえたいのは本当です」

男「だってさっき自分の信を通してって。だから俺はイヅナを捕まえなくてもいいって思って」

ヒョウカ「あなたは、私に逆らうのですか」ヒュォォゥ

男「だって、そんなに悪そうにないと思いましたし」

ヒョウカ「ですが規則は規則。処罰は必要です」

クロ「それを君にやってほしいんですよ」キラリンッ

男「えぇ!?」

ヒョウカ「それでイヅナの処罰ですが―――」

男「いやいやいや話がちが―――」

ヒョウカ「わちゃわちゃ、孤児院の子供たちと遊んで刑。です」
160 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/19(月) 14:41:15.92 ID:NCWYoFgi0
ヒョウカさんは眉尻一つ動かさず、そう言った。

まさか冗談? とも思ったがヒョウカさんの表情はいつもと変わらずぴくりとも動かない。

クロさんはいつも通りニコニコとしてるし、こちらも嘘とは思えない。

男「それが、処罰ですか?」

ヒョウカ「はい。彼は早弁、廊下を走る、授業をサボタージュなどの常習犯」

ヒョウカ「軽微なものであれ常習的なら話は別です。ですが素行調査により重い処罰を下すほどでないと考えました」

ヒョウカ「なので慈善活動がちょうどよいくらいと結論を下します」

男「で、その結果、えっと」

ヒョウカ「わちゃわちゃ、孤児院の子供たちと遊んで刑。です」

男「その孤児院の子供と遊ばせるのが」

ヒョウカ「わちゃわちゃ、孤児院の子供たちと遊んで刑。です」

男「………わちゃわちゃ、孤児院の子供たちと遊んで刑を行うと」

ヒョウカ「はい」

男「………」

本当に冗談じゃないんだよな!?
161 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/19(月) 15:05:04.07 ID:NCWYoFgi0
少年「ってことがあって風紀委員になりました」

ミレイア「ふ〜ん。まぁロード家の名を汚さないように心掛けているようね。確かに上級貴族にとって優雅であり気品溢れる所作は重要。風紀が乱れることはあってはならないことね」

風呂場に向かう途中で服を脱いでるやつが何を言ってるんだ?

ユキムラ「さすがお嬢様!貴族としての心意気、このユキムラ感服いたしました」

ミレイア「お〜っほっほ! 当たり前よ。この『紅目』のミレイア。生まれながらにしての貴族だもの」

ユキムラ「さすがですお嬢様!」ヤンヤヤンヤ

少年「…ごちそうさまです」

ミレイアを祭り上げるユキムラと口に手の甲を当てて高笑いするミレイア。

なんというか馬鹿らしい。

ミレイア「あら、もう部屋に戻るの?」

少年「勉強をしたいので」

ミレイア「私には及ばないまでも貴族としての心がけが見についてるみたいでちょっとは感心してあげるわ。感謝なさい」

ユキムラ「なんとお嬢様、お心の広い! ほら、感謝しなさい」

男「……ありがとうございます」

衣食住を提供してもらい、学校まで通わせてもらってる身分だけれども

やっぱりこの扱いは好きになれないな。

家族というより、なにか珍しいペットとして扱われているようで。
162 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/19(月) 15:12:42.90 ID:NCWYoFgi0
自室に戻って教科書を広げる。部屋の明かりはミレイアの要望からろうそくであり、勉強をするには少々暗い。

だがそれも慣れたものだ。そもそも俺にとって夜に本が読めるだけでもありがたい。

つらつらと教科書の文字を目で追っていくが脳裏に浮かぶのは今日の出来事で、教科書の内容なんてものは頭の中に入ってこない。

男「なんで俺、なんだろうな」

俺の中の蟠りだけれどやはり第二種ということは気が引ける。

生まれながらの差別環境にいて、運がよく生きながらえてる程度の命であるのに。

もちろん第二種も第一種も生物上なにも変わらないのだと知っていても優しさを向けられるだけで。期待されるだけで困惑してしまう。

みんな、俺に親しくしてくれるのは第一種だと思われているからだろう。

もし、俺が第二種だと知られてしまえばその時は………

少年「もう寝よう」

このまま考えても仕方がない。

時が、時だけがなんとかしてくれる。時だけが俺の背中を押してくれる。

今までなるようになってきた。だからこれからも。

きっと。

そう。
163 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/19(月) 15:30:14.29 ID:NCWYoFgi0
バジロウ「風紀委員になったぁ!?」

次の日、風紀委員になったためバジロウ達と遊ぶことはできないと言うとバジロウは驚き、ノヘジは興味深そうにメガネのブリッジに手を当てた。

ノヘジ「それはつまりあのヒョウカ先輩の蒼穹をハレーションしていると同等ということだろう」

少年「風紀を乱すと処罰するぞ」

ノヘジ「友達の頼みだ。見逃してくれ」

バジロウ「ってことは今日の放課後は忙しいのか」

少年「ヒョウカさんに呼ばれてるからな」

つい先ほど他の風紀委員からヒョウカさんが俺を呼んでいると教えられた。もちろん顔をだすつもりだったが、呼ばれるということは何かあったのだろう。

おそらく、例の処罰が。

少年「ってことで。俺はもう行かなきゃ」

バジロウ「おう、頑張れよ!」

ノヘジ「なんとか風紀委員に手心を加えてくれと頼んでくれると助かるだろう。俺はただ知的好奇心を満たしたいだけだろう」

バジロウ「それじゃあ今日の放課後は」

オル「オルレアンちゃんの手伝いにけって〜い☆」

バジロウ「げっ」

ノヘジ「………神よ」

オル「おい、そのリアクションなんだ★」
164 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/19(月) 15:41:55.91 ID:NCWYoFgi0
イヅナ「………んだよ」

風紀委員会室に入るとイヅナが捕まっていた。

さすがの逃げ足も簀巻きになってぐるぐるに縛り上げられていては発揮できないらしいな。

クロ「捕まえたよ♪」キラリン

捕まえようと思えばすぐに捕まえれたのか。

その程度だから俺に任せたと。

いやしかし、帯刀している相手は荷が重いぞ。

イヅナ「俺がなにしたってんだよ!」

クロ「んーまぁ。一番重いので放火かな」

イヅナ「身に覚えがねぇぞ!?」

クロ「まぁまぁ。認可されていない火気の使用はあったからね」

イヅナ「………けっ。俺は権力には屈しねぇぞ!!」

簀巻きになったままジタバタ暴れるイヅナ。

そんなイヅナの耳元でクロさんが何かをささやくとイヅナはぴたりと大人しくなった。

少年「何を言ったんですか?」

クロ「んー、秘密の交渉術♪ 大丈夫Win-Winだからさ」キラーン

イヅナ「処罰を受けることに不満はねぇよ。だけどなにをされても俺は俺を曲げねぇぞ!」

クロ「んっふふ〜。君に与えられる罰はこれさ! 題して!」

イヅナ「………」

クロ「ほら、少年君。題して!」

少年「え、えっと、わちゃわちゃ、孤児院の子供たちと遊んで刑。です」

イヅナ「………頭大丈夫か?」

不良に言われた!!

不良に言われた!!!
165 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/19(月) 16:21:56.52 ID:NCWYoFgi0
確かにわけがわかんないかもしれないが、これはあのヒョウカさんが選んだれっきとした処罰だ。いや、俺もネーミングはどうかと思うけどさ。

クロ「ということで君たち二人には今週末にこの孤児院へ行ってもらうよ」

少年「えぇっと」

手渡された地図はしっかりと書かれており、非常にわかりやすい。場所も遠くないし街中に出ることができれば歩いて行ける距離だ。

地図をイヅナに見せると、イヅナは小さく舌打ちをして頷いた。

クロ「いいかな?」

少年「わかりました」

イヅナ「やりゃいいんだろ、やりゃ」

クロ「約束だよ?」キラリンッ

しかし孤児院に俺とこの不良の二人でか。

かえって迷惑になりそうな………

クロ「あ、少年君は家が遠かったね。当日迎えを寄越すから」

少年「いいんですか?」

クロ「かまわないさ」キラランッ

クロさんの輝く笑顔を見ながら心の中でため息をつく。

なんだか不安だ。
166 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/19(月) 16:30:10.15 ID:NCWYoFgi0
そして当日。私服を持っていないので学生服で外にでるとユキムラに相変わらずの対応をされる。仕事を手伝わないとぼやかれても風紀委員の仕事があるのだから仕方ない。

まぁ、これでも撃たれない分マシな対応だ。孤児院に行く前に流血沙汰は避けたい。

誠心誠意誤ってこの場を潜り抜ける。口八丁で適当並べたので何を言ったのか忘れたがユキムラはじと目で小さくため息をつきながら許してくれた。小声で何か言ってたように思えたが何を言ったのかは聞き取れなかった。

外にでると天気は晴れ。遊びまわるにはちょうどいい天気。

気温もそれほど暑くなく過ごしやすいと言える絶好の日和だ。

しかし迎えとは誰なんだろうか。家を知っていると言えばカルラさんだが………

「うわっ、家大きい! さてはお前金持ちだな☆」

聞きなれた声がした。

見上げるとやはりオルレアン。この位置からだとスパッツがしっかりと見えるが言わないほうがいいのだろう。オルレアンの蹴りは普通に痛い。

というか飛ぶのだからズボンを穿けばいいのに。

オル「おっすおっす☆」

少年「なんでオルレアンが?」

オル「だって今日私の家に来るんでしょ? 迎えに来てやったぞ☆」

少年「へ? いや、そんな予定は」

オル「来るんでしょ、孤児院。私の家なんだ☆」

………へ?

オル「秘密だよ?」
167 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/19(月) 16:30:44.99 ID:NCWYoFgi0
今日はここまで
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/19(月) 16:37:43.06 ID:fsea917dO
乙乙
少年君の過労生活の始まりやの
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/19(月) 16:46:36.12 ID:ExH0KJTvO

アータル先生も来るんかね
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/19(月) 18:32:45.81 ID:t4giIHZXO
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/19(月) 20:17:52.57 ID:pOQhPXuWO
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/19(月) 22:09:38.63 ID:UPIwlQCx0
173 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/20(火) 11:49:16.15 ID:jQit6FKQ0
オルレアンが俺の肩をがっしり掴んで飛ぶ。そのままぶら下げられているために肩がかなり痛い。

しかし考えてみればこの運び方は当たり前だ。カルラさんと違ってオルレアンは両手が翼になっているのだから。

オル「見るなよっ。絶対に上を見るなよっ★」

少年「みないって」

さきほどから幾度となく注意されるこの言葉。もしオルレアンの機嫌を損ねて落とされでもしたら命に係わる。

いくらなんでもスパッツを覗き込んで死亡なんてことにはなりたくはない。

オル「それはそれで不満があるぞ★」

どっちなんだよ。見られたいのか見られたくないのか。

いや、見られたいと言われたら困るけど。

オル「さっすがロード家。良い暮らししてんだろ〜★」

少年「してないよ」

オル「本当かな〜」

そりゃあ管理区にいたころと比べたら天と地のような差だけれど、俺自身の生活は底辺から一般的なレベルまで上がったに過ぎない。

そりゃあ気まぐれで養子になっただけで、扱いはペットに近いんだからミレイアのような暮らしができるわけはない。

別にそのことが不満というわけではないけれど。

でも、オルレアンに比べたらいい生活をしているのかもしれない。

まさかオルレアンが孤児だったとはな。
174 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/20(火) 11:58:20.65 ID:jQit6FKQ0
しっかりつかまれているためじんわりと手の間隔が薄れてきたころにやっと孤児院が見えてきた。

オル「あれだよ〜」

赤屋根のレンガ造りの建物。孤児院にしてはあまり大きいとは呼べない規模だった。

オルレアンはゆっくりと降下し、地面に近づくとぱっと足を放して俺を放り投げた。

少年「いてっ」

オル「めんご☆」

少年「芝生だったから平気だ」

オル「んで、じゃじゃーん。ここが本邦初公開、オルレアンちゃんの家なのだ☆ バジロウとノヘジくらいしか知らないんだから、特別だぞ」

オル「君だけに特別♪」

少年「ありがとうと言えばいいのかな?」

オル「よきに計らえ☆」

オル「でも本当に秘密だよ。君にしか教えてあげない☆」

少年「なんで俺だけ?」

オル「君も養子だし。あ、気分悪くしたらごめんね」

少年「いやかまわないさ。もう知られてることだし、姉から胸を張れと言われてるしな。それにオルレアンが気を許してくれるのならうれしい」

オル「ふっへっ、い、いきなり恥ずかしいこと言うなしっ★ はっずっ★」

ばしんばしんと背中を叩くオルレアン、ふぁさっとするが痛い痛い。
175 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/20(火) 14:28:16.99 ID:jQit6FKQ0
「あらあら、もしかしてあなたが?」

オル「マザー! つれてきたよ♪」

声の主を見ると大きな杖を突いた年配の女性だった。目には丸いメガネをかけ、口元には柔和な笑みを浮かべている。確かにマザー然とした女性だ。たしかにマザー然とした女性だが

少年「あー、えっと、風紀委員で人間の少年です。今日は子供たちと」

マザー「まぁまぁ、子供たちも楽しみにしてたわ。ささ、こっちへ来てちょうだい」

少年「は、はい」

…………………………………………………………でけぇ!!

加齢からか腰が曲がってきてはいるがそれでも身長が俺よりも高い。見上げて話すほどには高い。

オル「びっくりした? ねぇねぇ、びっくりした?」

少年「あ、あぁ。でも優しそうな人だな。なんというかいい人を絵で描いたらあんな感じになるんだろうなって人だ。たぶん街中で100人中98人はいい人っていうと思う」

オル「あとの二人は?」

少年「………あんな大きいおばあさんがいるかって言うと思う」

オル「確かに!」ケラケラ

オル「マザー馬鹿にすんなやっ!」バシンッ

痛い。ならなんで笑ったんだよ。情緒不安定か。

オル「もうっ。マザーは私のお母さんなんだから、ぷんすこっ★」

少年「悪かったよ。許してくれないか」

オル「ぷんすこ〜っ★」バッ パパッ バーン

なんの構えだ。

ふざけているところを見る限り別に本当に怒っているわけではないようだ。

しかしオーガとかオークとかの長身の種族は老人になってもそのまま大きいみたいだ。やはりなんというか威圧感はある。あの杖なんか俺の身長と同じくらいあったし。

オル「マザーは入道だからね。日によって身長変わるけど、今日は割と小さいほうだよ☆」

少年「………本当に?」

オル「マジ☆」

うーむ、亜人ってすごいな。常識が通じない。
176 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/20(火) 14:50:04.08 ID:jQit6FKQ0
オル「入って入って〜」ガチャッ

扉もでけぇな。硬そうな材木でできていて、ぶつかってもびくともしなさそう。

しかもいくつもドアノブがあって、身長が高い奴にも低い奴にも対応している。亜人って色々体格差とか性質差があるから住居も千差万別なんだよな。ミレイアとかは俺と変わらないサイズだから気にしてなかったけど。そういえば学園にもいろいろな工夫がしてあったな。あぁ、なるほど。そうか、だから引き戸なのか。

オル「おはいりよ!」

少年「お邪魔します。あ、そういえばイヅナ、先に来たやつはいなかったか?」

オル「先に中入ってるよ☆」

少年「そっか」

オルレアンに案内され中に入る。

中は学園の寮みたいな感じで廊下にいくつもの部屋があった。

オル「食堂にいるよ☆」

窓から見る景色は緑色が多く、自然に囲まれている。子供を育てるには理想的な環境と言えるのかもしれない。花壇もあって名前は知らないが紫色の花が風に揺られていた。

少年「でもここって学園からは結構距離あるけど、毎日通ってるのか?」

オル「んーん。平日は寮で暮らしてるぞ☆ あっ、オルレアンちゃんに会いたいからって女子寮に男が入ってきたらダメなんだからな★」

少年「入る気ないよ」

変質者になりたくない。それに一応風紀委員になった身だ。問題を起こすわけにはいかない。

オル「どうしてもオルレアンちゃんに会いたかったらオルレアンちゃんの窓ガラスに小石をぶつけて合図してね☆ オルレアンちゃんの部屋は東側3階の右から5つ目の部屋だから☆」

少年「でもガラスだから一度しか合図できないな」

オル「やさしさを持って投げろーっ★」

無茶言うな。
177 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/20(火) 14:55:53.79 ID:jQit6FKQ0
オル「なんて話してたら食堂だぜぃ☆」

男「? なんかいい匂いがするな」

オル「あれ? ほんとだ」

ガチャッ

イヅナ「座って待ってろガキども!」

「はよ、はよ」

「おなかすいたん」

「むぇ〜」

不良がなんか作ってた。

マザー「皆さん、お兄さんの言うことを聞くのですよ」

イヅナ「もう少しでできるから待ってろ」

ジュォォォォォ

何か鍋を振るっている。

ソースが焦げる音と香り。空中を舞う米。 ごぉごぉと燃え上がる火。

不良がチャーハン作ってた。

オル「これは負けてられない戦いだよ☆」

少年「えぇ………なんでチャーハン作ってるんだ?」

イヅナ「焼き飯だ、ごらぁ!!」
178 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/20(火) 16:03:57.77 ID:jQit6FKQ0
怒られた。

違いってあるのか?

よくわからないがマザーに促され俺も席に着く。

同じく席についている(座ってはいないが)子供たちを見渡すと性別も種族もバラバラ。小さい子では1メートルないし、大きい子では幼い顔だが身長がすでに俺より高い。

角が生えている子もいれば、翼が生えている子もいるし、体が水のように透き通っている子だっている。

異種族がともに過ごすことはあるが、共に暮らすのは難しい。マザーもずいぶん苦労をしていることだろう。

イヅナ「おい、おいっ」

少年「え? 俺?」

イヅナ「お前も食うよな」

少年「あー。うん。食べる」

イヅナ「ちっ、待ってろ」

オル「私もー!」

イヅナ「てめぇも待ってろ!」

なんでいちいち怒鳴るんだ。不良だからか。不良だから怒鳴るのか。

そうか。

クイクイ

誰かが右袖を引っ張った。なんだと思いそっちを見ると

「あむあむ」

子供が俺の袖に食いついていた。

袖を引っ張ったのではない。食いついていたのだ。

咀嚼に合わせて額から生えている白色の触角が左右に揺れ、半透明の液が滴り落ちる。

少年「な、なにかな?」

「あむむ」

咀嚼をやめない。

次第にべとべとしてくる。感触でわかるが体が粘膜に覆われており、その下の皮膚は弾力がありぶよぶよとしている。

しかもその粘液はねっちょりとしており非常に不快だ。

少年「あ、あのぉ。お、オルレアンさぁん?」

オル「気に入られちゃったんだね〜☆」

気に入ったものを食べるのか? 咀嚼範囲は徐々に広がり俺の右手すら飲み込まんとしている。何とか腕を引っこ抜こうとするが吸引力がすごく、引き抜けない。咀嚼される感覚がひどくこそばゆいがどうやら歯はないみたいだ。ならかじられないからあんし―――

ゾリリッ

少年「いってぇ!?」

皮膚をやすり掛けされたような感覚。なにか細かい鱗のようなもので皮膚を削られてる。

「あむ〜」

少年「お願いだから、お願いだからたべるのやめて」

オル「食べるのはいいけど舐めちゃだめだよ〜」

少年「食べるのもやめさせて!」

「あんむ」

こくりと頷き俺の右手を食む。ぞわぞわと背筋に寒気が走る。

誰か助けてくれ。
179 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/20(火) 16:24:19.49 ID:jQit6FKQ0
子供は焼き飯が持ってこられたのを確認してやっと俺の右手から離れた。

少年「うへぇ…」

右手が粘液まみれのべとべとである。

オル「はい、これで拭きな☆」

オルレアンから布巾を手渡され、右手を拭く。できれば手を洗いに行きたいんだが。

「いただきまーす!」

オル「うっひょー、いただきまーす☆」

イヅナ「冷める前に食えやおらぁ!」

少年「……いただきます」

諦めてスプーンを手に取りチャーハン、もとい焼き飯を口に運ぶ。

うん、美味い。

当てにならない俺の感想だけど、周りを見ると子供が焼き飯をがっついていることから俺の感想は間違ってないのだろう。

オル「まぁ、私ほどじゃないけど。褒めてやってもいいぞ☆」

イヅナ「んだおらぁ!」

オル「ほんとのはなし☆」

イヅナを挑発するオルレアン。イヅナは肩をふるふると震わせているが大丈夫だろうか。

いざとなったら俺が………俺が止めれるのか?

イヅナ「ちっ………あのオルレアンじゃしかたねぇか」

オル「あれ、君、私のこと知ってるの?」

イヅナ「あんた、有名だろ。屋台やってて」

オル「むふふ〜。ちょっとは名を知られたものだからねっ☆」

イヅナ「ちっ」

どうやら暴力沙汰の事態にはならなかったようだ。

警戒を解いて焼き飯を口へ運ぶ。

「ちょーだい」

右を見るとさっきの子供。真正面から見てもだらりと下がった髪? 皮膚?で目元が見えない。その代わり大きな赤い口の中をのぞかせている。

「なくなったからちょーだい」

確かに皿の中にはもう米粒一つない。

別に腹が減っているわけじゃないから別にいいんだが。

「あーん」

こいつの口の中にスプーン突っ込みたくねぇな。

少年「全部あげるよ」

「いーのー?」

少年「いいよ。あげる」

「わぁーいー」

皿ごと子供に渡すと子供はそのままスプーンも使わず焼き飯を口の中へ流し込んだ。

オル「こらっ! 行儀が悪いでしょっ」

「んむむ、あむあむ」

オルレアンの説教なんてどこ吹く風で、口いっぱいにほおばったチャーハンを咀嚼している。乳白色のほっぺたが大きく膨らんだりしぼんだり。まるで風船のように動いていた。

オル「こらっ! レディーの食事姿をまじまじと見るんじゃありませんっ! 行儀悪いでしょっ!」

なんか俺も怒られた。

というかこれ、女だったのか

「あむ〜」
180 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/20(火) 16:39:04.96 ID:jQit6FKQ0
マザー「ご馳走様。ありがとうねぇ、イズナさん」

イズナ「これくらい、大したことねーっすよ」

マザー「それじゃあ私は洗い物をしてくるから子供たちを見ててくださるかしら?」

イヅナ「了解っす」

意外にもマザーの前では案外大人しいイヅナ。まぁ、二つの意味で逆らおうとは思わないもんな。

マザーが全員分の食器を持っていくとイヅナがこちらをぎらりとにらんだ。

少年「えぇっと、なにかな?」

イヅナ「言っとくが俺はこんなこと好きでやってるわけじゃねぇからな。てめぇんところの副委員長が脅してくっからやってるだけで。俺は反省も後悔もしてねぇぞおらぁ!!」

と吠える。

その頭をオルレアンがぽんと叩いた。

オル「言葉遣いが悪いっ。みんながまねしたらどーすんのさ★」

イヅナ「ちっ、うっす」

「てめっこらー」キャッキャッ

「すっぞこらー」キャッキャッ

手遅れみたいだぞ。

少年「あー。こんな感じで今日は夕方まで子供たちと遊んでくれればいいらしいから」

イヅナ「わかってるよ、んなこと」

イヅナがぎろりとこっちを睨む。

好かれようとは思ってないが、ここまで敵意を向けられるとどうもな。

でも様子を見てる限り、やはりそれほど悪い奴ではなさそうだ。

言葉遣いは悪いけども、まぁ不良らしいと言えば不良らしいし。

悪くはない、それほど悪くない不良がこのイヅナの立ち位置か。

あのドラゴンが言ってた意味も分かる。

なんだ。今日は特になんの問題もなく

べっちょり

男「うぐっ」

背中がねっとりする。首筋から粘液が服の中に入ってくる。

「もっちゃり」

オル「あはは、好かれてるね〜☆」

イヅナ「かかっ。ざまぁねぇな」

少年「ぬめぬめする」

「そとぉ、いこー」

少年「わ、わかったからどいてくれないかな?」

「れっごー」

少年「………」
181 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/20(火) 16:53:49.31 ID:jQit6FKQ0
言われた通り外に出る。

食堂にある大きな窓を開けるとそのまま外にできることができた。

子供たちも続いてぞくぞく外へ出る。わーっと広がっていく子供たちをオルレアンが慌てて追いかけていた。

外では風が心地よい。気温も暑くもなく寒くもなく、理想的ないい天気だった。

がその程度では背中の気色悪さは取り除けなかった。

いまだにあの子供は背中から降りないし、支えてないのに背中にぴったり張り付いている。

動けばずり落ちていくだろうと思ったが軽くジャンプしてもよろこぶだけだった。

少年「あー、なにがしたいんだ?」

「むっちょり」

意思疎通すらできない。

さっきまではできてたはずなのになにを聞いても背中で鳴くだけ。

諦めようかと思ったが、案外異物感が強い。それに割と重い。

少年「オルレアン。なんとかしてくれないか?」

オル「女の子にモテていーじゃない☆」

オルレアンに頼んでもそうやって一笑に付すだけで話にならない。

最後の希望とばかりにイヅナを見てみたがイヅナは俺より悲惨なことに子供たちに押しつぶされ団子みたいになっていた。
182 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/20(火) 16:54:17.61 ID:jQit6FKQ0
今日はここまで
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/20(火) 17:02:20.78 ID:Nt5OFK3Eo
乙乙
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/20(火) 17:08:53.30 ID:/9+bJDmjO
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/20(火) 18:58:35.33 ID:OZqi8ezDO

ナメクジの亜人かなにかかな
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/20(火) 19:05:53.58 ID:Q29Ntf6fo
もっちゃり
187 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/22(木) 14:50:33.64 ID:/zNP7FFb0
なぜ大人のほうが筋肉があるはずなのに子供の体力には勝てないのだろうか。

なんてことをイヅナをもみくちゃにしている子供たちを見ながら思う。

子供といってもイヅナと似たような身長の子もいるからなおさらたちが悪い。

どうやら子供たちはイヅナの逆立ったオールバックが珍しいらしく、自慢であろう髪型は子供たちの手によって乱され、欠片もない。

今にも怒りだしそうな顔をしながら、大人しくしているあたり、子供には優しいみたいだ。

イヅナ「おい、おい人間」

少年「なに」

イヅナ「助けろ」

少年「僕だって助けてほしい」

イヅナ「………ちっ」

結局子供たちが疲れ果てるまで抵抗しないのが一番らしく、その後もイヅナは子供のおもちゃとなることを甘んじていた。
188 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/22(木) 15:31:12.52 ID:/zNP7FFb0
子供たちが疲れ果てやっと眠りについたあと、僕たちは食堂でぐったりとしていた。

オル「おっつおっつ☆」

少年「本当に……疲れた」

イヅナ「けっ…だらしねぇ、奴だ」
と嘯くものの俺と同様に表情には元気がない。

オル「まぁまぁ、これでも飲みな☆」

少年「ありがとう」

オルレアンから手渡されたマグカップの中には淡黄色のとろりとした液体。

口に含むと暖かくて甘かった。飲んだことない味だ。

イヅナ「これ、うめぇな」

少年「なに、これ」

オル「オルレアンちゃんが産んだ卵で作ったミルクセーキ☆」

イヅナ「ぶふっ、ぐへっ、ぐへっ」

イヅナが勢いよく噴出した。つまり対面にいる俺に吹き付けたということで、熱くはなかったがぽたぽたと頬を伝って落ちるミルクセーキ。

べたべたする。

オル「きたねーっ」

イヅナ「なんてもん飲ませやがるんだ!!」

少年「なぁ、なんか拭くもの」

オル「は? 美少女が産んだ卵だぞ★」

イヅナ「腹を下したらどうする!」

オル「くださねーよ★ 美少女は健康で清潔なんだよ★」
189 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/22(木) 16:03:15.68 ID:/zNP7FFb0
少年「なんか拭くもん」

べたべたする顔と机をなんとかしたいのだが、オルレアンに俺の言葉は届かないらしい。

オルレアンの産んだ卵が清潔か清潔じゃないかの論争を繰り広げており、俺の言葉が入る隙間はないようで、自分で行かざるを得ないようだ。

ここは食堂だからキッチンまで行けば顔を洗えるし、布巾ももらえるだろう。

なんか今日はやけにぬめったりべたついたりする日だな。

食堂を抜け出しすぐ隣のキッチンに入るとマザーがオーブンの前にいた。

少年「すいません。水を借りてもいいですか?」

マザー「どうしたの。そんなに濡れちゃって」

少年「色々ありまして」

マザーから許可をもらい、水道の蛇口をひねる。

頭ごと流水に突っ込むと冷えた水が心地よかった。

マザー「タオルをどうぞ」

少年「ありがとうございます」

マザーからタオルを受け取り頭を拭く。やっと人心地つけたがいまだに食堂からは言い争う声が聞こえてきた。

というか無精卵だから清潔ってどういう理屈だ。

興味ないからどうでもいいか。

マザー「もうすぐクッキーが焼けるからみんなを起こしてきてくれるかしら」

男「わかりました。あの、申し訳ないんですけどあの二人のことよろしくお願いします」

マザー「あらあら、二人とも元気ねぇ」

俺じゃ止められそうにない。その点マザーであればなんにせよ止めれそうな気がする。

ということで二人のことはマザーに任せ、俺は子供たちを起こしに向かった。
190 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/22(木) 16:18:46.92 ID:/zNP7FFb0
子供たちは雑魚寝でおおいおもいの寝方をしていた。無秩序なという言葉が似あう微笑ましい光景だったがマザーから言われたのだから仕方ない。俺は寝ている子供たちをゆすって起こしていった。

中にはいきなり起こされてぐずる子供もいたが、割と問題なくことは進み、すぐに目を覚ましてくれた。これもおやつができたという言葉あってのものだろう。

少年「それじゃあみんな、おやつを食べに食堂へ」

と言っていると一人の子供が俺の服の裾を掴み、引っ張ってきた。

少年「どうかした?」

「ボンボリちゃんがいない」

少年「ボンボリちゃん?」

「あの、ぬめってなってる子だよ」

少年「え?」

そういえば起こした覚えがない。見渡してみるものが姿は見えなかった。

少年「みんなは食堂に行ってって。探すから」

「ん」

子供たちを食堂へ行くように促す。子供たちは少し不安そうな顔をしていたが素直に食堂へと向かってくれた。

少年「さて」

問題のあの子だが一体どこに消えたのだろうか。

上を向いても下を向いてもいない。それにこの部屋には隠れられそうな場所はなかった。

少年「ということは他の部屋か」

この孤児院はそこそこ広い。隠れる場所なら色々あるだろう。

長い闘いになりそうだと俺は長い溜息をついた。
191 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/22(木) 16:32:38.59 ID:/zNP7FFb0
少年「おーい、ボンボリちゃーん。でておいでー」

廊下で大声を出してみるものの返事はない。

仕方ないので一つ一つ部屋を探してみるが、姿は見えず。それに空き部屋もあり、かなり非効率だ。

オル「話は聞いたよ☆ ボンちゃんを探索隊に加わるぜい☆」

そうやって探していると子供たちから話を聞いたらしいオルレアンも一緒に探してくれることとなった。

オル「おーい、ボンちゃ〜ん、でっておいでー☆」

オルレアンが声をかけても返事はない。

そうしてあらかた部屋を探し回り、俺がとある部屋のドアノブに手をかけたとき、オルレアンが慌てた様子でドアノブにかけた手を掴んで止めた。

オル「そこは開かずの間ではいっちゃいけないんだよ」

少年「でもいるかもしれないだろ」

オル「私が探すから、そこで待ってて!」

そういうとオルレアンがドアを開けてさっと入っていった。ちらりと見えた部屋の中には本棚があると同時にきわどい女性の絵が飾られてあった。オルレアンの部屋? 違うように思えるが。

オル「はぁ、はぁ、ここにもいなかったよ」

少年「もう結構探したのにな、いったいどこへ?」

オル「ぶるるっ、ちょっと私行くところあるから」

少年「どこにいくんだ?」

オル「聞くなばかっ!」

なぜか普通に怒られた。

オルレアンは赤い顔をしてぱたぱたとどこかへ走り去っていく。

………あ、トイレか。それはデリカシーのないことをしてしまった。

そうだ、ついでに俺もトイレに―――

オル「キャーッ!!」

オルレアンの悲鳴が聞こえた。

オル「だ、だれか! 誰か来て! 助けて!!」

普段のしゃべり方ではない、本気で慌てたような叫びが聞こえる。

俺はとっさにオルレアンの声が聞こえたほうに向かって走った。
192 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/22(木) 16:33:10.77 ID:/zNP7FFb0
今日はここまで
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/22(木) 16:41:44.27 ID:RgcN/OUNO
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/22(木) 17:21:21.94 ID:NpOVzqsgO

キャラ作ってる子が素に戻る瞬間好き
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/22(木) 18:26:25.12 ID:0p5Mxia1O
乙乙
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/22(木) 19:41:56.11 ID:j4/hhpNdO
おつつ
197 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/28(水) 12:40:15.06 ID:lAJD/6By0
少年「大丈夫か!? どうしたオルレアン!!」

オル「しょ、少年………」

オルレアンはトイレにいた。一般家庭のそれと違い、数名が同時に使用できる学園と同じ規模のもの。オルレアンはよく掃除された青いタイル敷きの床の上でへたり込んでいた。

オル「ぼ、ぼ、ボンちゃんが」

オルレアンが震えた手で個室の中を指す。俺はトイレの中に入り、その指が指すものを見た。

少年「!!」

ボンボリが倒れていた。乳白色の肌は今は薄青色となり、ぐったりしている。

呼吸はある。ただし浅い。

外傷は見当たらないからどうやら襲われたとかいうわけではないようだ。

なら、病気かなにかだ。なら急ぐ必要がある。

少年「オルレアン、ボンボリを見ててくれ」

オル「う、うん」

マザーならわかるかもしれない。もしボンボリがなにか持病を持っているのなら把握しているはずだ。とにかくなぜ倒れたかがわからないと対処ができない。

そう判断して俺は食堂に向かって走った。

木張りの廊下を全力で蹴ると、ぎぃぎぃと古びた音がする。端から見れば実に慌ただしいことだろう。だったらその音で気づいてくれ。誰か早く。

少年「マザーさん!!」

食堂の扉を開け放つ。扉が壁にぶつかって派手な音をたてたが構わない。その音に驚いたみんながこっちを見た。
198 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/28(水) 12:41:52.36 ID:lAJD/6By0
俺は乱れた呼吸を押さえながら今起きていることを話すと、子供たちがざわめく。

慌ただしくなる子供たちを押さえながらマザーが立ち上がった。

少年「ボンボリちゃんにはなにか持病が?」

マザー「あります。最近は安定していたので安心していたのだけれど」

マザー「生まれつき突発性の発作があって、体内を循環する魔力の流れが乱れ、暴れることで内臓、血管、神経を圧迫するんです。でも、発作は本当に小さいころのことで」

イヅナ「おいババア! それより病院に連れてくべきなのか!? それとも寝かせとけばいいのか!?」

イヅナが勢いよく立ち上がり机を叩く。その音と倒れた椅子の音に動揺していたマザーがはっとした。

マザー「発作は治まるのを待つしかありませんが、その後の治療は病院で」

イヅナ「じゃあ病院につれてけばいいんだな?」

少年「今すぐ連絡をして」

イヅナ「それじゃあおせえだろうが! ガキはどこだ。俺が運ぶ!」

少年「病院まで!? マザーここから一番近い病院は?」

マザー「馬車で30分ほどのところに」

イヅナ「じゃあ俺が走った方が速ぇ」

イヅナ「案内しろ、風紀委員!!」

少年「! こっちだ!!」

トイレにいることを教えるとイヅナは本当に目にもとまらぬスピードで走って行った。

遅れて風が廊下に吹く。俺もそれに遅れてボンボリの元へと向かった。
199 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/28(水) 12:43:11.32 ID:lAJD/6By0
少年「ボンボリは大丈夫!?」

オル「う、うんっ、あのイタチの人が抱えて」

行動が速い。ただ病院の場所を知っているのだろうか。いや、流石にわかっているから行動したのだろう。おそらく。

少年「ごめん、オルレアン。飛べるか?」

オルレアンの顔色は青く、唇も紫色。ボンボリの状態を見て強くショックを受けたみたいだ。
でもオルレアンにいってもらわないと困る。

自分の無力な人間の体が恨めしい。俺では地を駆けることも空を往くことも難しい。

オル「うん、大丈夫」

少年「心配だからオルレアンもイヅナと一緒に」

オル「わ、わかったよ。えっと、少年くん」

少年「どうした?」

オル「一人じゃ、怖いよ。ついてきて、ほしいな」

少年「………わかった」

オル「ありがとう、少年」

少年「元気出せよオルレアン。絶対無事に決まってるだろ」

オル「そう、かな。大丈夫かな?」

少年「馬車よりずっと、風よりもずっと速いやつが病院までつれてってるんだから」

オル「………ありがと、少年くん」

オル「急ぐよ。めちゃくちゃ、急ぐよ!!」

そういってオルレアンは気丈にも立ち上がり、数度翼を羽ばたかせた。

オル「あのイタチやろうになんか負けないんだからねっ☆」

いつも通りのオルレアンの笑顔にほっとする。胸をなで下ろしたのもつかの間、オルレアンは大きく翼を羽ばたかせながら飛び、その強靱なかぎ爪で俺の肩をがっちりと掴み

オル「いくよっ☆」

俺を引きずりながらトイレの窓から飛び立った。
200 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/28(水) 12:47:30.22 ID:lAJD/6By0
離陸の際ににいろいろなところにぶつけた体が痛い。だがそんな弱音を言ってる暇もない。

オル「どこにいるかな?」

少年「えっと、あれか」

あたりを見渡すとすぐにイヅナの姿を見つけることができた。少しの間だというのにもう彼方にいる。

砂埃と揺れる木々がイヅナの場所と進行方向を教えてくれる。見失うことはなさそうだがあの速度。追いつけるだろうか。

少年「大丈夫か?」

オル「うんっ、頑張るからしっかり意識を保っててね! あと一生懸命だから私は下を見ないよ! それじゃ、アテンションっ☆☆☆」

加速。

加速。

加速。

一度羽ばたけば風がうねり

二度羽ばたけば空気が歪み

三度羽ばたけば身に風を纏う。

流石にカルラほどの速度はない。空気を裂き、風を貫くカラス天狗とは飛行の仕方が違うからだ。

だがしかしオルレアンの飛び方には自由があった。森という平坦でもまっすぐでもない道を行くには進行方向を何度も変えないといけない。オルレアンはそのイヅナの動きに柔軟に対応していた。

風がオルレアンを引き寄せ、導く。速度では決して勝てないその差をオルレアンは埋めてみせた。

少年「あともうちょっとだオルレアンっ!」

オル「へっへーん☆ 牛乳配達のアルバイトで鍛えたオルレアンちゃんの飛行テク、舐めんじゃねーぞ☆」

追いつけはしないがイヅナの背を捕らえる。大声をあげれば言葉が届く距離。これならば。

少年「イヅナっ!!」

イヅナ「! んだよっ!!」」

少年「病院の場所は知ってるのか!?」

イヅナ「………! どこだ!!」

少年「まじか…。俺が指示するから!!」

イヅナ「とちるんじゃねーぞ!!」

少年「そっちもな!!!」

イヅナ「はっ!! ざけんなっ!!」

イヅナの表情は見えない。だけれど今確かにイヅナは笑っていた。

確信が持てる。イヅナを信じれる。

必ずイヅナはボンボリを無事病院までつれていけると。

イヅナはボンボリを救えると。

根拠も理由もないのに、俺はそう思えた。
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/28(水) 17:29:09.97 ID:lJf8CxhoO
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/28(水) 18:16:37.35 ID:g8ecI/Azo
乙乙
203 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/29(木) 16:00:10.88 ID:mAogxCt70
イヅナは本当に馬車よりも早く病院までたどり着いた。俺を抱えて飛ぶオルレアンの速度に合わせていたので、場所さえ知っておけばもっと早くたどり着けただろう。

病院の先生にボンボリを引き渡すとただ待つことしかできなくなった俺たちは後をオルレアンに任せ喫茶店で待つことにした。

少年「助かったよ。イヅナ」

イヅナ「あん? なんでお前が礼を言うんだよ」

少年「オルレアンに代わってかな。にしてもイヅナは本当は悪い奴じゃないんだろ?」

俺がそう指摘するとイヅナはオールバックを逆立たせて否定をしてきた。

だが人を救うために何十キロも走り続ける悪人はない。普通の人でもそうはいない。なら迷わず走ったイヅナは実は善人ということになる。

イヅナ「俺はいい奴なんかじゃねぇよ! 目の前で人が死んだら飯が喉を通らなくなるだろうが」

あくまで自分勝手な理由であり、人助けではないと否定するイヅナ。

でも結局人から感謝されてるのならそれは人助けになるんじゃないだろうか。

少年「なぁ、イズナ」

イズナ「んだよ」

少年「焼きそばの屋台、やりたいのか?」

イヅナ「そりゃあ金が欲しいからな」

なら普通に仕事をすればいいのに。工事現場のアルバイトとか。と思ったが口に出さないでおこう。

少年「ヒョウカさんに頼んで火気使用の許可をもらってくるよ。確約はできないが」

イヅナ「……何が目的だ?」

少年「目的なんてないって。イヅナに人助けをする理由がないのと同じだ」

イヅナ「てめ、喧嘩売ってんのか?」

少年「喧嘩は売ってない。俺じゃあ相手にもならないだろうしな」

少年「それでどうするんだ?」

イヅナ「………………ちっ」

イヅナ「じゃあ……頼むわ」

そうぶっきらぼうに言い放つイヅナの口角はいつもより上がって見えたような気がした。

すぐにそっぽを向かれたので確認はできないが、もしかすると若干距離は縮んだんじゃないだろうか。

荒れたふうな演技をして、その実なり切れないいい奴。

そう、俺はイヅナを評価した。
204 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/29(木) 16:15:57.12 ID:mAogxCt70
少年「なんでイヅナを警戒しておく必要はないと思います」

次の日、俺はヒョウカさんに昨日あったことを報告していた。

あったことを大まかに話し、詳細を書いた復命書を渡すとヒョウカさんは銀縁のメガネをかけて復命書に眼を通した。

ヒョウカ「………この火気使用の許可とは?」

少年「彼の行動は我が学園の模範といえる行動です。学生の品位を貶めるものに罰を下すのなら、称えるべき行動を起こしたものにはなにかしらの恩賞が必要だと思いますが」

ヒョウカ「なるほど、この火気使用願いがイヅナに対する表彰となると」

ヒョウカさんはフレームのブリッジを中指で抑えると少し思案した後にこくりと頷いた。

ヒョウカ「ではその通りにしましょう。イヅナに対し火気使用許可を出すので書類を作成しておいてください」

少年「はい」

すんなりと話しは通った。以前のボヤ騒ぎの原因がイヅナにあるものではないということは理解してくれているようだ。

ヒョウカ「それと」

復命書を伏せて机の上に置くとヒョウカさんは眼鏡を外しながらこっちをじっと見つめた。

ヒョウカ「我が風紀委員には中心を担う私たち1課、荒事を担うクロ率いる2課、学園外での行動を担う3課、生徒からの要望や相談に答えるナタリー率いる4課があります」

ヒョウカ「あなたの所属ですが」

ヒョウカさんの水色の瞳に自分の顔が写る。所属に希望はない。だが身体能力に自信のない俺としてはできれば4課配属であればとも思う。

どの課でも依存はない。

ヒョウカ「生徒会に所属し、同行を見張る第5課となってもらいます」

ヒョウカ「特例の一人一課となりますが、もちろんサポートはしますので安心してください」

少年「」

前言撤回で。

5課以外でお願いします。

ヒョウカ「ダメです」

そう、ヒョウカさんは冷たく俺の望みを否定した。
205 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/29(木) 16:17:36.26 ID:mAogxCt70
今日はここまで

イヅナ編はこれにて終了となります。
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/29(木) 16:24:43.08 ID:VL/0hfK6O
乙乙
そんな理由で生徒会入ってたんやな
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/29(木) 16:26:18.04 ID:pcjMOiF8o
おつー
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/29(木) 17:25:59.25 ID:rCFNRe2PO

今まで生徒会入りしたのはべリアのせいかなって思ってたけど風紀委員の差し金だったのか(困惑)
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/29(木) 20:13:41.08 ID:coA8X47v0
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/29(木) 20:48:01.36 ID:6qYzfX3dO
おつ
211 :亜人好き ◆HQmKQahCZs :2018/12/03(月) 11:48:13.98 ID:KpvaPj/X0
【幕間】

ある日のことだ。

珍しく予定の無い放課後をバジロウとノヘジと一緒にのんびり享受していた時だ。

ノヘジ「俺は………イルミだろう。もちろんおっぱい的にだ」

バジロウ「俺は………セリカだな。ベタだけど優しい女の子ってのはあこがれるぜ。少年は?」

少年「あー、俺は………」

なんて年ごろらしい会話を途切れさせたのは聞き覚えのある。いや聞きなれた癇癪だった。

バジロウ「あれはお前の姉じゃあないか?」

少年「あれ、本当だ」

中庭を一人の男の手を引きながら爆走する小さな姿は見間違えることはない。立場上俺の姉であるミレイアだった。

少年「なにやってんだか」

手を引かれている男は見たことがある。ミレイアに勉学を教えている第一種の人間だ。ただでさえ少ない人間。しかもそれが教師ならなおさら記憶に残る。

しかしなんていうか、大変だな。あのミレイアの面倒を嫌な顔一つせず見て。

俺にはできない。絶対にできない。

ノヘジ「可愛らしい姉だろう。羨ましいのだろうっ」ダンッ

少年「背の小さいちんちくりんが?」

バジロウ「まぁ、顔立ちは整ってるな。スタイルは置いといて」

少年「はー。そうかねぇ」

いまいち納得できないのはミレイアを近くで見すぎたせいだろうか。

まぁ確かに、整ってなくはないと思うが、どうもフィルターを通してみてしまうから二人と言うように美少女であるとは思えなかった。
212 :亜人好き ◆HQmKQahCZs :2018/12/03(月) 11:57:10.28 ID:KpvaPj/X0
バジロウ「行かなくていいのか? 何か困ってるみたいだが」

少年「せっかく何もない放課後なんだからわざわざミレイアに係わりたくない」

どうせつまらない問題だろう。走り去るときにデザートという単語が聞こえたし。

少年「それより話を戻そうぜ。なんだっけ」

ノヘジ「少年のタイプの女学生の話だろう」

少年「あー、はいはい。えーっと俺は」

俺がタイプの女性………そもそも女性というものをそういう対象として認識したのは最近のことだからな。ぱっと出てこない。

メイドはそういう関係ではないし身近にいる女性とは言えば

オルレアン

リューン

リンネ

ヒョウカさん

ミレイア………は違うか。

俺の身近にいる女性で気になるのは

少年「あー。あえて言うならだけど>>213かな」

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