霊能少女「本当の戦いはこれからってやつかな」

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136 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 21:41:16.91 ID:ek92bIojo
女「…」

女(…そうか。先生は…今までに何度もあのお婆さんのように、罪に問われない人間を何人も見てきたんだ)

女(それでも、その人達に手を下すことはなく、ただこの仕事を続けてきたんだ…一体どれほどの経験をしたんだろう。私には…想像することすら出来ない)



霊能少女「…まあ、もし地獄が存在したら、ワタシは真っ先に地獄行きだと思うけどね」


女「…そんなことないですよ」

女「私は…先生は天国に行くと思います。だって、先生は私を含めて…大勢の人を救っているんですから」


霊能少女「…」

霊能少女「…あ、ありがと」クルッ
137 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 21:42:31.00 ID:ek92bIojo
……………………………………………………
…………………………………



『23:03』



霊能少女「…」


女「もう11時…結局、向かいは家から一歩も出てきませんでしたね」

霊能少女「…」

女「…今日は何も動いてこないんでしょうか。と言っても、夜はまだまだこれからですけど」

霊能少女「…」

女「先生?」


霊能少女「…用心して、もうすぐ来る。そんな気配がする」


女「えっ…?」
138 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 21:43:25.72 ID:ek92bIojo
霊能少女「今度は…前の時と比較にならない。大きな気配がする」

女「お、大きな気配って…大丈夫なんですか!?」

霊能少女「…ちょっと、やばいかも」



ドンッ!!!!!!!

カチッ



女「て、停電!?」ビクッ

女「そ、それに、二階から音が…!!」

霊能少女「…ワタシから離れないで、降りてくる」




ゴトッ…ゴトッ……

ゴトトッ………
139 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 21:44:22.95 ID:ek92bIojo
女(か、階段を一段ずつ降りてくる音が聞こえる…?一体何が…?)




ゴトンッ……

ガチャッ

ギィィィィィィ……





影『』ズズズズズッ





女「ひぃっ!?」

女(お、大きい…天井近くまである、巨大な影…!)
140 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 21:45:32.42 ID:ek92bIojo
霊能少女「…面白い。真っ向から殺りに来た…こちらも少し、本気を出す」スッ

霊能少女「んっ…んっ…」ゴクゴクッ


女(水を…飲んでいる?あれって先生が持ってきたお祓いの水…)


霊能少女「ふぅ。あーまずい」ポイッ

霊能少女「…さぁ、来い。相手になってやる」





影『』ズズズズズッ




女(こ、こっちに手を伸ばしてきた)
141 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 21:46:32.41 ID:ek92bIojo
女(な、なにこれ…あの影、物凄く深い闇…辺りの暗さと比べても、一層黒く見える漆黒…)

女(ふ、震えが止まらなっ…息が出来ないっ……)ブルブル


霊能少女「はぁぁぁぁ……」スッ




ピカッ




女「!?」

女(せ、先生の手から光が!)


霊能少女「あああああああっ……」スゥゥ





影『』ズズズズッ

影『』ズズズッ
142 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 21:47:35.52 ID:ek92bIojo
女(う、嘘…光が、影を吸い込んで……)




影『』ズズズ゙ッ

影『』ズズッ



シュンッ




女「…!」

女「か、完全に吸い込まれた!影が消えた!」


霊能少女「…ふぅ」スッ


女「や、やったんですか!?先生!」


霊能少女「…ちょっと庭に出る。着いてきて」スタスタ


女「えっ?庭?」
143 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 21:49:00.59 ID:ek92bIojo
ガチャ



霊能少女「恐らく、起爆剤と爆弾はこの庭のどこかにある。間違いない」

霊能少女「でも…ワタシはあまり探知が得意ではない。だからアナタの力を貸してもらいたい」


女「えっ!?わ、私ですか!?」


霊能少女「長年、この家に住んでいたアナタなら、異物を発見することが出来るはず。さぁ目を閉じて」

女「そ、そんなこと言われても…何も感じないですよ?」ギュッ

霊能少女「本当に勘でいい。何となく、光とか見えない?」

女「光って言われても…」

霊能少女「なら気持ち悪い方は?どんな些細な感覚でもいいから」

女「…じゃ、じゃあこっちで」スタスタ
144 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 21:49:54.61 ID:ek92bIojo
霊能少女「どう?この辺り?」

女「は、はい…そこの…下、辺りですかね?」

霊能少女「…分かった。もう目を開けてもいい」

女「や、やっぱり何もないですよね。ごめんなさい」


霊能少女「…いや、当たり。ビンゴ」ガサゴソ

霊能少女「この鉢植えの裏に…」ゴソッ

霊能少女「…あった。この瓶が呪いの起爆剤」スッ


女「えっ!?本当にあったんですか!?」


霊能少女「中は…」キュポン



ポトンッ
145 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 21:50:57.75 ID:ek92bIojo
女「何か落ちましたけど…なんですか?これ」


霊能少女「これは…」スッ

霊能少女「猫の足、だにゃー」


女「うっ…!?」ウプッ


霊能少女「…ごめん、少しでも気分を紛らわせようとしたけど、逆効果だった」

霊能少女「とにかく、これで起爆剤の方は見つかった。あとは本体だけ」

霊能少女「まだ何か感じる?きっと本体も庭のどこかに埋まってある」


女「そ、そういえば…同じような気持ち悪さが、あっちの方から感じたような」


霊能少女「ここ?」スッ


女「あっ、はい。その辺りです」
146 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 21:52:12.44 ID:ek92bIojo
霊能少女「…」ザッザッ

霊能少女「…あった。ここに埋められてあったのか」スッ



箱『』



女「その箱みたいなのが…呪いの爆弾なんですか?」

霊能少女「間違いない。後は…」チラッ







婆「…!」ピシャッ







女「!?」ビクッ

女「えっ…さ、さっき見てましたよね!?あのお婆さん、こっちを!」
147 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 21:52:51.34 ID:ek92bIojo
霊能少女「…ハァッ!!!!」ブンッ






ガンッ!!!!!



ギャアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!






霊能少女「行くよ。最終決戦ってやつに」スタスタ

女(な、投げた…向かいの家に、呪いの爆弾を…)
148 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 21:54:12.10 ID:ek92bIojo
ピンポン!!!!ピンポン!!!!ピンポンピンポン!!!!!



霊能少女「…出てこない。居留守なんて使いやがって」

霊能少女「あ、そこに落ちてる箱取っておいて」

女「えっ!?い、いやっ…だ、大丈夫なんですか?触っても…呪いの爆弾ってさっき」

霊能少女「問題ない。火薬がないと爆弾なんて何の役にも立たないから。早く」


女「う、うぅっ…わ、分かりましたよ」トコトコ



箱『』



女「え、えいっ!」ギュッ

女「は、はいっ!早く受け取ってください!」サッ


霊能少女「ん、ありがと」

霊能少女「…出てくる気配がないな。仕方ない、強硬手段を…」スッ
149 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 21:55:02.33 ID:ek92bIojo
ガチャ


霊能少女「…ん?鍵が…」

女「あ、開いてる…」

霊能少女「…」スタスタ


女「えぇっ!?ちょ、ちょっと!」

女「い、いいんですか?勝手に入っても」


霊能少女「こんな状況だし仕方ない。それより、早くあの老婆を見つけ…」

霊能少女「うっ…この臭いは」サッ


女「臭い…?」クンクン

女「うっ!?く、臭いっ…!な、なにこれ!?」


霊能少女「…何かが腐っている。それも大量に」
150 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 21:56:33.74 ID:ek92bIojo
霊能少女「…」スタスタ


女(こ、こんな臭いでも先に行くんだ…は、鼻が曲がりそう)

女(…わ、私もっ!)ダッ


霊能少女「…見つけた」





婆「ああああっ…あああああっ…」コクコクッ





霊能少女「…これは」

女「な、なに…あれ…何かに祈っている?」






婆「あああああっ…あああああああっ…」コクッコクッ
151 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 21:57:31.49 ID:ek92bIojo
霊能少女「…聞いて、アナタが起こした悪事は全て把握している」

霊能少女「この人の家にかけた呪いと、その母親にかけた呪い…全部今すぐ解除して。さもないと…されたくないでしょ?呪詛返し」スッ




婆「…」ピクッ

婆「ウアアアアアアアアアア…アアアアアアアアアアア……」ギロッ




女「っ…!」

女(こ、こっちを見て…け、獣みたいに唸っている。これが…ほ、本当に同じ人間なの?)




婆「あっ…あっ…」

婆「カミッ…カマ…」ボソッ
152 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 21:58:24.77 ID:ek92bIojo
霊能少女「」ピクッ

霊能少女「…かみかま、それは何?アナタは何をやろうとしている」




婆「ハハッ…ハハハハハハハ」

婆「もう遅い…始まっている。止めることは…出来ない」




霊能少女(もう遅い…?)

女(は、始まっているって…)




婆「アアッ!!!!!」ジャキ




霊能少女「!!!!!!」

霊能少女「ワタシの後ろに隠れてっ!!!刃物を持っている!!!!」

女「!?」
153 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 21:59:33.72 ID:ek92bIojo
婆「アアアアアアアアアッ!!!!!!!」ブンッ






グサッ!!!!!!






霊能少女「…っ!?」

女「う、うそ…」





ポタッ…ポタッ…





婆「アガギィッ…グッ……ハハハ」グチャッ






霊能少女「自分で…首を…」

女「い、いやああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
154 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 22:01:56.05 ID:ek92bIojo
婆「わたっ…じは…!道しるべにな、るッ…!!!」グサッ

婆「ごのっ…大いなる旅路のッ…礎にッ…!!」グイッ


グラッ


婆「」バタッ




女「いやっ…やっ…!」ブルブル

霊能少女「…死んだ。自分で、首を刺して…自殺した」

霊能少女「…ん?」ピクッ




像『』




霊能少女(この像…神棚に置かれている。 まるで崇めているように)

霊能少女(…名前が彫られてある。まさか、これが…)
155 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 22:02:32.08 ID:ek92bIojo






『神彁混』







霊能少女「かみ…かま?」





156 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/14(水) 22:04:11.28 ID:ek92bIojo
今日はここまで
これで大体全体の半分だと思います
書き溜めが尽きたので次の投下は明後日頃になると思います
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/14(水) 22:27:59.26 ID:HeZbntfO0
作者様質問を良いでしょうか?
この霊能少女最初に出てきた和尚より腕が立つ霊能者というのは分かりましたが、和尚と比べて霊能者としての腕はどのくらい違うのでしょうか?
和尚の腕が10としたら、霊能少女の腕が100 とか?作者様の予想で良いので教えてください
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/14(水) 22:49:34.10 ID:eSJFk/y4o
やっぱり病院の幼女幽霊と戦った少女だったか
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/15(木) 03:36:56.67 ID:fV4haYmpO
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/15(木) 05:09:29.20 ID:FLSS2DloO

幼女書いた人なのかより楽しみになった
161 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/15(木) 06:55:32.21 ID:M8TjrCx/o
>>157
あんまり考えてないですけどイメージとしては和尚は中の上くらいはあると思います
霊能少女は上の上の上の…くらいですかね
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/15(木) 08:07:24.01 ID:t3f0gQU3o
そんな強いのかよ…
最初から少女呼んでれば死ななくて済んだのに
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/15(木) 08:49:20.85 ID:44enjf9p0
そこはしょうがない
少女出すための舞台装置みたいなもんだし
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/15(木) 09:05:12.31 ID:IQ+/VTiyo
一番強いのを酷使すると下が育たないし食い扶持奪っちゃうからな
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/15(木) 12:57:12.39 ID:VF3G6TZR0
回答感謝致します、なる程和尚は中の上ですか今回の事件は和尚には荷が重かったようですね
普通の除霊だったら和尚の腕でも十分だったんでしょうが、今回の事件は初めから少女が来ないとどうにもならないくらい不味かったのですね
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/16(金) 23:48:58.66 ID:uW4qNhSdO
今日はなしか
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/16(金) 23:59:46.09 ID:mqjYLsVQ0
明後日頃て言ったから今日は楽しみしてたのに、やらないなら事前にひとこと言って欲しかった
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/17(土) 00:27:56.44 ID:5hIRECXl0
>>167
sageられもしないゴミが贅沢言ってんじゃねぇぞ
169 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 01:21:54.79 ID:J4ZPO0Pgo
▢▢▢  八日目  ▢▢▢▢



女「…」

霊能少女「…」

女「…先生、今って…何時ですか?」

霊能少女「…18時、ちょっと過ぎくらい」

女「…そうですか」



女(あれから…私たちはすぐに警察に連絡をして、事情聴取を受けた)

女(最初は犯人かと疑われていたかもしれないけど…私と向かいの家には何も接点がなかったこと、近所でもあの人がかなりの変人で有名だったこと、そして遺体の状況からして…私たちが自殺とは全く関係がないことが分かったらしい)

女(なぜ自殺の現場に居合わせたのかは…向かいの家から叫び声が聞こえてきて、何かあったのかと思い家の中に入った…と、先生が説明してくれた)

女(…だって、正直にこれまでのことを話しても信じてくれるわけがないもんね。私だって…夢だと思いたい)
170 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 01:23:56.07 ID:J4ZPO0Pgo
女(それから、先生が警察の人たちに何かを話して…お昼過ぎくらいには解放された。一晩中拘束されていたから、疲れも眠気もあったけど…あれから一睡もしていない)

女(どうしても…あの時の光景が目から離れない。初めて、人が目の前で死ぬのを見た)

女(今まで自分に敵意を持っていた人間が、数秒後には大量の血を流して…動かなくなっていた。苦痛の表情、血が喉で溢れて聞こえてきた嗚咽のような音、そして…あの家の腐乱臭)

女(私の五感は一生この体験を忘れることはないと思う。恐らくこれから長い先ずっと…一生付き合って行くんだ)

女(…結局、あのお婆さんは私を呪うことに成功したことになる。自分の死を犠牲に、私の体と記憶にその身を刻んだ)




霊能少女「体の方は大丈夫?もう丸一日以上起きているけど」

女「…大丈夫、とは言えないかもしれません。あんなものを見てしまったら…」ブルッ

霊能少女「…そう、まあそう気に病むことはない。悪い夢だと思ってすぐ忘れるのが吉」

女「せ、先生は…平気なんですか?目の前で…人が死んだのに」
171 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 01:25:01.94 ID:J4ZPO0Pgo
霊能少女「…」

霊能少女「…まあ、ワタシは『死』という体験に慣れている。多少は動揺したけど、それでどうということはない」


女「す、凄いですね…羨ましいです。そんな強い心を持っていて」

女「私はもうだいぶ参ってしまいました…今日、眠るのが怖いくらいに…絶対夢に出てきそうで」

女「…やっぱり、先生は凄いです。昨日、家にあの大きな影が現れた時も…怖気づくこともなく、勇敢に立ち向かって…どうしたら先生のようになれるんでしょうか」


霊能少女「アナタの心が弱いとは言わない。あんな現場に立ち合わせたら、大体の人間は心を病む」

霊能少女「ワタシが特別なのは…これまで霊に触れ、それを祓ってきたから、別に死が特別なものだと認識していないせいだと思う。誰にでも訪れるものだから、それを見て何か感じるということはない」

霊能少女「…あと、恐怖に耐える訓練を幼い頃からしていたのもある」
172 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 01:26:41.70 ID:J4ZPO0Pgo
女「恐怖に耐える訓練…ですか?」


霊能少女「人間が恐れるものは理解出来ないものだと言われている。闇を恐れるのは何があるか見えないから、霊を恐れるのは存在を認識出来ないから、死を恐れるのは死の先を知らないから」

霊能少女「だから…ワタシはそれを理解しようとした。暗闇の中では目ではなく耳に頼れば空間を把握することが出来る。霊も倒せると分かれば何も恐れることはない」

霊能少女「まあハッキリ言うと、感覚が麻痺しているんだろうね…異常者と何ら変わらない」


女「…お、お化け屋敷とかホラー映画を見ても、何も感じないんですか?」


霊能少女「…お化け屋敷は現実のおばけを知っているから何も、でもホラー映画は…」

霊能少女「…あれは音響で怖がらせて来ることが多い。だからありとあらゆる映画を見まくって…パターンを把握したら慣れた」


女「…ぷっ。な、なんですかそれ…」クスッ


霊能少女「仕方ない…あれは現実の幽霊より怖い。だから慣れるしかない」


女「げ、現実の幽霊より怖いんですか?ホラー映画って…何かおかしいですね」クスクス


霊能少女(…やっと笑ってくれたか。これなら後に引きずることもないだろう)
173 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 01:28:02.14 ID:J4ZPO0Pgo
女「あー…何か久しぶりに笑った気がします。この一週間は…ずっと怖いことばっかりでしたから」

女「…」

女「…これで本当に終わったんでしょうか。全部…」


霊能少女「…」

霊能少女「…呪いをかけた張本人は自殺した。操縦士がいない飛行機が飛ぶことはない。これで呪いは全て消滅した」

霊能少女「今日、家の隅々を見回ってみたけど、何も感じなかった」


女「…数時間前にお母さんからメールが来たんです。何だか急に肩の荷が下りたみたいに気分が良くなったって」

女「私も…これで終わりだと思いたいんです。でも…何か残っているような気がして」


霊能少女「…」
174 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 01:29:32.77 ID:J4ZPO0Pgo
女「結局、あのお婆さんは何がしたかったんでしょうか。それに、私が見た妊婦の姿をした髪の長い女の人や、かみかまって…」


霊能少女「…呪いをかけた動機は分からない。本人が死んでしまった今、それを知る術はワタシ達にはない」

霊能少女「妊婦の女も…呪い自体が消滅してしまった。恐らく、何らかの怨念が具現化した姿だとは思うけど…真意は分からない」

霊能少女「ただ『かみかま』という言葉の意味は何となく分かるかもしれない」


女「えっ、本当ですか?どうやって?」


霊能少女「これ、あの老婆の家にあった像、警察にバレないように持ってきた」ゴトッ

霊能少女「ここに、しっかり名前が刻まれている。『神彁混』と。これが、かみかまの正体だと思う」
175 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 01:30:42.53 ID:J4ZPO0Pgo
女「!?」バッ

女「ちょ、ちょっと!!!な、なんてもんを盗んできたんですか!!!!捨ててきてくださいよ!!!!」


霊能少女「人聞きの悪い言い方はやめてほしい。今は所有者がいないんだから、これは誰のものでもない。だから盗んだではなく拾ったと言った方が正しい」

霊能少女「それに、この像自体には何の力もない。ただの木彫りで出来た人形、怖がることは何もない」


女「い、いやでも…あの家にあった物なんですし、何もないってことは…!」ビクビク


霊能少女「そう、そこが不思議なところ。ワタシも絶対にこの像には何かあると思って綿密に、隅から隅まで調べたけど…本当に何もなかった」

霊能少女「恐らく、偶像に近いものだと思う。何かを模って、この像は作られた」
176 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 01:32:01.55 ID:J4ZPO0Pgo
女「そ、その何かが…『神彁混』なんですか?」


霊能少女「そうだと思われる。でも…この『神彁混』という字は…明らかに不自然なところがある」

霊能少女「名には必ず意味がある。かみかま、という聞き覚えがない単語にも意味はある。だから…漢字さえ分かればどのような物なのか推測出来ると思っていた」


女「ど、どういう意味ですか…?それじゃまるで…その神彁混という字に意味がないって聞こえるんですけど…」


霊能少女「…この『神』と『混』という部分はそのままだと思う。神と何かが混じった物か、混ざった物が神になるという意味になると思う」

霊能少女「問題はこの『彁』の部分…ここだけは…分からない」
177 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 01:33:03.20 ID:J4ZPO0Pgo
女「わ、分からないって、そんなことはないんじゃないですか?どんな漢字にも意味はあるんですし」


霊能少女「…じゃあ逆に聞いてみる。この『彁』という字に見覚えはある?」


女「えっ…そ、そういえば見かけない文字ですね。普段の生活では使わないような」

女「で、でも私って漢検三級ですし、ただ知らないだけだと…」


霊能少女「…この『彁』は幽霊文字の一つ、意味は誰にも分からない」

霊能少女「漢検一級を持っていたとしても、大学の偉い先生でも、クイズ王でもね」


女「ゆ、幽霊文字…?」
178 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 01:37:26.31 ID:J4ZPO0Pgo
霊能少女「意味がなく、なぜ存在するのかも分からないものだと思っていい。典拠が不明で、歴史上から葬り去られた文字」

霊能少女「だから…何を指しているのか分からない。『神彁混』の謎が余計に深まった」

霊能少女「神と混ざって何かになるのか、『彁』が神になるのか…そもそも人物を指すのか、事象なのかも分からない」

霊能少女「なぜこの字を使ったのか意図すらも掴めない。こんなことは初めて」


女「そ、そんなものがあるんですか…何だか怖いですね。意味が存在しないなんて…」

女「で、でも…もう事件は解決したんですよね?ならそんなに気にすることも…」


霊能少女「…そうだといいんだけど」
179 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 01:38:38.25 ID:J4ZPO0Pgo
今日はここまで
ちょっと遅れて申し訳ないです
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/17(土) 01:52:51.77 ID:Vkrar8pF0
遅れた事は構いません作者にもリアルの都合がありますからね
次の更新は明日ですか、それとも明後日でしょうか
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/17(土) 01:54:37.40 ID:Y0OR69Hvo


幽霊文字なんてあるのか。初めて知った
次の更新とかあまり聞かない方がいいよ。プレッシャーになるし
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2018/03/17(土) 02:09:05.32 ID:8tn6Pxx40
霊能少女今回の事件ではあまり苦戦しなかったですね、それだけ少女が超一流の霊能者だって言う証拠なのでしょうが
個人的にはもっと霊との戦いに苦戦するシーンが合っても良いかなと感じます  乙でした
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/17(土) 03:20:47.86 ID:WDan/Ly20

ごちゃごちゃうるさいのが多いけど気にするな
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/17(土) 10:12:16.29 ID:wXpAw8+8O
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/17(土) 10:59:51.44 ID:imVVIxqfo
苦戦?寧ろこれからだろう
186 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:21:50.78 ID:J4ZPO0Pgo
▢▢▢▢  九日目  ▢▢▢▢



『アガギィッ…グッ……ハハハ』

『わたっ…じは…!道しるべにな、るッ…!!!』

『ごのっ…大いなる旅路のッ…礎にッ…!!』



女「!?」ガバッ

女「はぁっ…はぁっ…」キョロキョロ

女「や、やっぱり、夢に出てきた。あーもう……やだなぁ」




女「おはようございます…先生」

霊能少女「ん、おはよう」カキカキ

女「あれ?何を書いているんですか?」

霊能少女「今回の事件の報告書、みたいなの」
187 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:24:06.07 ID:J4ZPO0Pgo
女「報告書…ですか?」


霊能少女「一応、仕事をしたらこれを出さないといけない。記録にもなるし…もし、本人が死んだ時にも他の人に託すことが出来るから」


女「…!」

女「…和尚さんも、それを書いていたんですよね」


霊能少女「…そう、あれを事前に読んでいたから、ワタシも十分に対策が出来た。あの人たちの死は無駄じゃない」


女「…」

女「…ちょっと、私にも見せてもらっていいですか?」


霊能少女「別にいいけど、今はワタシが書いているから横から見て」カキカキ


女「どれどれ…」

女「ん?」
188 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:25:20.81 ID:J4ZPO0Pgo
女「すみません。この最初に書いてある強:狂ってなんですか?」


霊能少女「分かりやすく言うと、怪異の強さの目安。ワタシたちの世界では『強』という言葉を使ってどれほどの脅威があるか表している」

霊能少女「レベルは三段階あって、順番に『恐』『叫』『狂』これが後ろに行くほど危険度が上がる」


女「ということは…私の家って最強レベルに危なかった、ってことですか?」


霊能少女「まあそういうことになる。でもこれはあくまで目安に過ぎないから、そこまで信用出来るものでもない。仕方なく割り振っている状態に近い」


女「へぇ…どういう基準で決められるんですか?」
189 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:27:22.89 ID:J4ZPO0Pgo
霊能少女「まずは『恐』これは人を驚かしたり、怖がらせたりする幽霊などが該当する」

霊能少女「でも、精々出来るのはそれだけ。要するに人を殺す力がない下級霊やオーブかな」


女「害はそこまでないってことですか?」


霊能少女「まあそういうことになる。こいつらは放っておいても近いうちに自然消滅するから、そこまで危険なモノではない。勿論、依頼を受けたら祓うけど」

霊能少女「次は『叫』依頼が来るのは大体このレベルからになる。人に危害を加え、精神に異常をもたらす怪異が該当する」

霊能少女「死に至る、というケースは多くはないけど決してないわけではない。見つけたら即刻祓うべき対象」


女「何だか急に怖い感じになりましたね…と、なると最後の『叫』は…」
190 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:28:59.96 ID:J4ZPO0Pgo
霊能少女「お察しの通り『狂』は人を狂わせる程の精神汚染、そして積極的に殺戮を繰り返す怪異。危険度は最高で返り討ちに遭う霊能者も多い」

霊能少女「でも最近はこの『狂』に該当するモノは少なくなっている。あっても年に数件ぐらい」


女「えっ…そんなに少ないんですか?」


霊能少女「まず、現代が非常に死者が蘇りにくくなっていて、全体数が少なくなっていることが挙げられる。昔と比べてね」

霊能少女「原因は色々説があるけど…ワタシはこの世界に『生』が溢れているからだと思う。世界の人口はもう70億を超えている。死者は生気を吸い過ぎるとすぐ消滅するから、今の社会はとても厳しい環境なんだと思う」


女「確かに…最近オカルト系の話題ってすっかりなくなりましたよね。心霊系の番組も減りましたし」
191 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:31:04.18 ID:J4ZPO0Pgo
霊能少女「そして、もう一つは『狂』の奴等はある程度の知能を持っている。だから、中々尻尾を見せない」

霊能少女「ワタシたちは依頼を受けて、怪異を祓っている。依頼があるということは、何らかの目撃証言や被害に遭った人がいるということ」

霊能少女「…もし、目撃されることがなく、被害者の口を全員封じているとすれば…依頼が届くこともなく、安全に暮らすことが出来る」


女「そ、それって、私達の世界にそんな危険なのが紛れ込んでいるかもしれない…ってことですか?」


霊能少女「そういうことになる。現に、過去に都市伝説で有名だった『花子さん』『口裂け女』『ひきこさん』などは…実際に存在する怪異として有名。今でもどこかで潜んでいるはず」

霊能少女「まあ…今でも人殺しをしているやつは少ないと思うけどね。殺人はどうしても死体が残るから、証拠を消しにくいし」
192 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:32:23.38 ID:J4ZPO0Pgo
女「じ、実際にいるんですか?口裂け女って…昔に警察が動いたくらいの騒動になっていたのは知っていますけど」


霊能少女「こいつらは幽霊とは違って、肉体が存在する死者。怪物と呼ばれている存在」

霊能少女「噂で有名なのは大体オリジナルが存在する。あいつら自分の力を誇示するのが大好きだから」


女「じゃ、じゃあ…その実際にいる怪物の中で、一番強いのって誰なんですか?」

女「先生でも…勝てなかったりします?」


霊能少女「……」

霊能少女「…ワタシも、これらの相手とは対峙したことないから、どれだけの強さなのかは分からない。でも…」

霊能少女「この業界で、最も危険な怪異と呼ばれているモノは存在する。そいつは…『強』のどれらにも当てはまらない、専用の呼称で呼ばれている」


女「えっ…だ、誰なんですか?それ…」
193 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:33:42.50 ID:J4ZPO0Pgo
霊能少女「アナタも一度は聞いたことがある都市伝説だと思う。そいつは『凶』と分類されていて、誰にも倒すことは出来ないと言われている」

霊能少女「名は―――」



プルルルルルルル…プルルルルルルル…



女「あっ…ご、ごめんなさい!ちょっと失礼します」


女『もしもし?お母さん?…えっ!?』

女『ちょ、ちょっと!どういうこと?勝手に決め……』プツッ


女「あ…切れた」



霊能少女「どうしたの、何かあった?」
194 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:34:36.02 ID:J4ZPO0Pgo
女「ど、どうしましょう…先生。お母さん、元気になったからもう今日退院するって…大丈夫なんですかね」

霊能少女「…一応、まだ少し様子見をした方がいいと思う。まだ呪詛が体内に残っている可能性もあるし、あと一週間は安静にさせた方がいい」

女「で、ですよね!私、病院に行って、もうちょっと入院するように説得しに行ってきます!」ダッ

霊能少女「ん、いってらっしゃい」



バタンッ



霊能少女「…さて、ワタシも続きを書くか」スッ

霊能少女「…」ピクッ

霊能少女「…いや、その前に…確かめておこう。ちょうど一人だし」スクッ


霊能少女「本当に…これで終わったかどうかを」
195 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:35:56.06 ID:J4ZPO0Pgo
霊能少女「...」キョロキョロ

霊能少女(警察はいないか。あの家も、立ち入り禁止のテープが貼られているけど、恐らく鍵はそのまま開いているはず)



ガチャ



霊能少女「…当たり」




バタンッ



霊能少女(あの老婆が亡くなって、もう真実を知る者はいない。でも…)

霊能少女(何かの証拠が残っているかもしれない。『神彁混』に繋がる何かが…)
196 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:36:50.83 ID:J4ZPO0Pgo
スタスタ


霊能少女(…それにしても酷い臭いだ。何を腐らせたらこんな刺激臭になる?悪性のガスが発生してもおかしくない)

霊能少女(…ん?あそこにある黒い物って…もしかして、あれが臭いの元か)



肉『』プーン



霊能少女(…腐った肉だ。なるほど、これを放置していたせいか)

霊能少女(でも、これは何の肉?まさか人間、ということはないか。動物にしても、毛皮は残っていない)

霊能少女(そういえば…スーパーで肉を大量に買っていたと、尾行の時に言っていたな。食べるわけではなく、こうやって使っていたのか)

霊能少女(…何の意味がある?)
197 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:38:12.44 ID:J4ZPO0Pgo
霊能少女「…ふぅ」


霊能少女(ある程度探したけど…何も出てこない。本当にここで暮らしていたのか不思議なくらいに生活感がない家だ)

霊能少女(それに、私の他にも何者かが捜し回った跡がある。恐らく警察が身元を調べる為に触った跡か。この様子だと、向こうも何も見つからなかったと思うけど)

霊能少女(こうなると、どこかに隠している可能性があるな。でもどこに?)

霊能少女(…ひとつだけ、心当たりがあった)





霊能少女(この神棚だ。あの像が置いてあった…ここだけは掃除がされていて、埃が一つもない)

霊能少女(何かあるとしたら、ここのはず…とりあえず解体してみるか)
198 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:39:01.95 ID:J4ZPO0Pgo
パコッ


霊能少女「…!」

霊能少女(あった。奥の方に、紙のような物が挟まっている)

霊能少女(これが…最後の手掛かり。さて…何が書いてある?)



ペラッ



霊能少女「…」
199 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:39:54.58 ID:J4ZPO0Pgo
……………………………………………………
………………………………………



ガチャ



女「今帰りましたー」

女「何とかお母さんを説得させるのに成功しました!いやー本当に大変でしたよ」


霊能少女「…そう」


女「あ、今から晩ご飯作りますね。何か食べたい物ありますか…?」


霊能少女「何でもいい。それと、ちょっと大事な話がある」


女「?」
200 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:40:49.07 ID:J4ZPO0Pgo
霊能少女「もう事件は解決した。だから…」

霊能少女「ワタシは明日、この家を出て別の仕事に向かう。今まで世話になった。ありがとう」




女「……えっ」



201 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:41:31.13 ID:J4ZPO0Pgo
今日はここまで
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/17(土) 22:46:27.02 ID:AL0aN8bOO
おつ
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/17(土) 22:48:02.10 ID:Vkrar8pF0
花子さんやひきこさんの名前が出たけどこれは伏線ですね、後でボス枠として登場するかも
続きがますます楽しみになりました、今回も面白かったです
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/18(日) 00:31:32.82 ID:DeKjeuBuO
205 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:49:18.87 ID:NV+g2oZ6o
▢▢▢▢  十日目  ▢▢▢▢



女(…いつかは、こんな日が来るとは思っていた。いや、願っていた)

女(全部片付いて、先生が家からいなくなる日が…でも、まだどこか心の片隅で不安が残る)

女(本当に、終わったのか、先生がいなくなっても大丈夫なのか…と)

女(…駄目だ、どうしてもマイナス方向に考えてしまう。気持ちを切り替えよう)

女(もう…全て終わったのだから)



霊能少女「どうしたの?」

女「…いえ、何でもないです。あ、そろそろ新幹線が来る時間ですね」

霊能少女「わざわざ駅まで見送りに来なくてもいいのに」

女「今までお世話になったんですから、これぐらいはさせてください」
206 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:50:34.90 ID:NV+g2oZ6o
女「あの…この一週間、本当にありがとうございました。何とお礼を言っていいか、先生がいなかったら、今頃は…」

霊能少女「ワタシは出来ることをしたまで。アナタも頑張った。もっと胸を張っていい」

霊能少女「これ、残りの分の水。お母さんに飲ませてあげて」

女「あっ、ありがとうございます」


霊能少女「それと…アナタにこれを」スッ


女「何ですか?これ?」


霊能少女「清めの塩、厄払いの効果がある」

霊能少女「万が一、危険な状態に陥ったら…ワタシに連絡して。なるべくすぐ駆け付ける」


女「…!わ、分かりました!」
207 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:51:23.09 ID:NV+g2oZ6o
ブゥゥゥン



霊能少女「ん、来たみたい」

霊能少女「じゃあ、さようなら。幸運を祈っている」フッ



女「先生も…!頑張ってくださいね!」



ウィーン

ブゥゥゥン



女「…」

女「…行っちゃったか」


女「私も…帰るか」
208 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:52:14.51 ID:NV+g2oZ6o
ブゥゥゥン



霊能少女「幕の内弁当と牛鍋弁当、あの鮭弁ひとつ」



霊能少女「」モグモグ

霊能少女「」モグモグ




霊能少女(…家までは大体四時間ぐらい)

霊能少女(そこから準備で一日以上はかかるか、出発したとしても…)


霊能少女(何とか、間に合うかな)

209 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:53:15.25 ID:NV+g2oZ6o
ガチャ



女「ただいま…って、今は誰もいないのか」


女(お母さんも入院してるし…またしばらくは私一人だな。何だかちょっと寂しい)



女「はぁ〜…」ゴロン

女「あーカメラもないし、久しぶりにゆっくりのびのび出来るなぁ…」

女「大学も…しばらく休んでたし、そろそろ行かないと…」


女「……やっと、日常に戻れたんだな」


女「…………すぅ」
210 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:54:11.95 ID:NV+g2oZ6o
……………………………………………………
………………………………………



女「…ん」パチッ

女「ふわぁ…昼寝しちゃった。もう外が暗くなってるや」

女「お腹空いたし、ご飯作るか」スッ


ガチャ


女「…そうだった」

女「昨日…先生との最後の夜ってことで、冷蔵庫の中を全部使っちゃったんだった」

女「本当に何もないな…仕方ない。コンビニで何か買いに行こっと」



バタンッ
211 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:55:00.94 ID:NV+g2oZ6o
スタスタ スタスタ



女「明日は買い物に行かないとなぁ…」

女「あと、お母さんの退院祝いも準備しておかないと。強引に入院進めちゃったし、ちゃんと後で謝っておこう」



スタスタ スタスタ



女(…ん?)

女(あれ、後ろに誰かいる?)クルッ



シーーーーン



女「…誰もいない」

女(き、気のせいだよね。うん、きっと)
212 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:56:34.36 ID:NV+g2oZ6o
スタスタ スタスタ



女(…気のせいじゃない。確実に、誰かが後ろにいる)

女(歩幅を変えてみよう…もし、私を尾行しているのなら…!)ダッ



タッタッタ!!!!タッタッタ!!!!



女「はぁっ…!はぁっ…!」

女(お、追ってきている!私を!?誰がっ!?)

女(あのお婆さんはもう死んだはずっ…!!私を狙う人なんてもう誰も…!)


女(っ!家が見えてきた!!あと少し!!)



ガチャ
213 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:58:07.22 ID:NV+g2oZ6o
バタンッ



女「はぁっ…はぁっ…」ペタン

女「に、逃げ切った…早く、先生に連絡を……」フラッ



ドンドンドンッ!!!!!!ドンドンドンッ!!!!!!



女「ひぃっ!?」ビクッ

女「ド、ドアを叩く音が…や、やめて…」ビクビク



ドンドンドンッ!!!!!!ドンドンドンッ!!!!!!



女「うぅっ…も、もうやめてよぉ……お願いだからぁ……」ブルブル



シーーーーン



女「…や、止んだ?」

女「な、何がどうなって…一体、誰が……」
214 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:58:42.95 ID:NV+g2oZ6o
今日はここまで
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/18(日) 23:08:52.37 ID:rHRUVeWf0
やっぱり事件は終わってませんでしたね、寧ろこれから本番なのでしょうね
明日も楽しみしています 面白かったです
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/18(日) 23:45:57.56 ID:ETwFyM1wO
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/18(日) 23:47:24.63 ID:eoIVn4bIO
おつー
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 01:15:28.97 ID:hX03l7cp0
おつ
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 23:53:21.93 ID:Q91qEteI0
今日はなしかな?
220 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 01:56:22.34 ID:4qssLabbo
▢▢▢▢  十一日目  ▢▢▢▢



チュンチュン……チュン……



女「……」


女(先生に連絡を送ってから、半日が経った。あれから一睡もしていない)

女(まだ返事は来ていない。それどころか、既読も付いていない)

女(先生は別の仕事に向かうと言っていた。その仕事が忙しくて、携帯を見る余裕もないのか、それとも―――)


女(和尚さんと同じように、あの影に殺されたか)


女(…いや、それだけはないと断言できる。先生がやられるわけがない。絶対に、何があっても、それだけは断言できる)

女(恐らく、何らかの事情があって、連絡が取れない状況になっているんだ。きっと、先生は気付いたらすぐ飛んで来てくれるはず。それまで、私は持ちこたえないといけない)
221 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 01:57:23.72 ID:4qssLabbo
女(今、この場には私一人しかいないんだ…誰も、守ってくれる人がいない)

女(…怖い、死ぬほど怖い。一人でいることが。今すぐ逃げ出したいほどに)

女(でも…今、私が逃げたら…お母さんは一人になる。それに、過去の呪いで逃げ出そうとした人も事故で死んだ。私に残された道は…一つしかない)



女(先生のように、立ち向かわないと。背を見せたら殺される)



女(私が…この家を守るんだ)
222 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 01:58:27.34 ID:4qssLabbo
ガチャ



女「」コソッ

女(…人の気配はない。さすがに昼には襲ってこないのかな)

女(とりあえず…買い物に行こう。食べるものが何もないし)






女「これと、これと…あとこれも」ガサゴソ

女「これも買っておこう」



女(前に、ここのスーパーに来た時は…あのお婆さんを尾行してたんだったな)

女(ふっ、そして今の私は誰かに狙われているのか…笑えないよ、本当に)
223 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 01:59:28.57 ID:4qssLabbo
女(…あのお婆さんは何がしたかったんだろう。私たちを呪った理由、そして…なぜ自ら命を絶ったのか)

女(精神が錯乱していた、と言えば済む話だけど…何だかそれだけじゃない気がする)

女(三人目の犠牲者の人が書いた手記には…『かみかま つぎ あとすこし はじまる 4ね』と書いてあった。相変わらず『かみかま』の意味は分からないけど…何か、このメッセージは重要な鍵になる気がする)

女(そういえば…あのお婆さんが自殺する前に、何か言っていたな。確か…)



『わたっ…じは…!道しるべにな、るッ…!!!』

『ごのっ…大いなる旅路のッ…礎にッ…!!』



女(道しるべ、ってなんだろう?何かを残そうとしていた?)
224 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:00:22.74 ID:4qssLabbo
女(大いなる旅路の礎、っていうワードも気になる。どこかに行こうとしているようにも読み取れるな。でも、死んで行く場所と言ったら…あの世しかない)

女(…頭が痛くなってくるな。いずれにしても、不確定の情報が多すぎて…考えるだけ無駄かも)


女「…はぁ、大体買うものは買ったし、そろそろ帰るか」スタスタ


女(…あ、ここの曲がり角で鉢合わせしたんだったな。あの時は驚いたなぁ)




クルッ







婆「」ユラッ
225 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:01:39.03 ID:4qssLabbo
女「!?」ビクッ


女「えっ…う、うそ……あり得なっ……」

女(い、今さっき…あのお婆さんが角を曲がって…あ、あり得ない!なんでっ!?)バッ



女「…!…!」キョロキョロ

女(い、いない…どこに行った?)



女(そもそも…本当にいたの?あの人は間違いなく、私の目の前で死んだ。それがまた現れるなんて…幽霊じゃあるまいし)

女(っ…!ま、まさか本当に幽霊にっ!?)


女「…み、見間違いだよね。きっと…今日まだ寝てないし」

女「つ、疲れが溜まっているんだ…きっと、そうに違いない」


女「…!!!!」ダッ
226 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:03:18.26 ID:4qssLabbo
…………………………………………………
………………………………………



女「…もう日が沈んでいる。夜か…」

女(結局…何も出来ずに、時間だけが経って行った。唯一、私が持っている武器は…先生から貰った、この塩だけ)

女(一応、玄関に盛り塩をしておいたけど…どれぐらいの効果があるのか分からない。効くのかな、これ)


女(…先生がくれた物だもん。きっと、役に立つはず)


女(さぁ、来るなら来い。私は絶対に…負けない!)
227 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:04:18.66 ID:4qssLabbo
……………………………………………………………
…………………………………………



女「」コクッコクッ

女「……っは」パチッ

女「あ、危ない。寝ちゃうところだった。今何時だろ…」


『1:08』


女「一時か…もうとっくに昨日のドアを叩いてきた時間は過ぎてる。今日は攻め来ない…?」

女「…油断しちゃダメだ。もし寝込みを襲われたら…そのまま殺されるかもしれない。朝まで起きてないと」

女(こんなことなら…仮眠を取っておけばよかった。あー眠い、な…………)



女「……Zzz」スゥ
228 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:05:51.43 ID:4qssLabbo





ゾロゾロゾロ……ゾロゾロゾロ……



ズズズズズッ……




229 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:06:17.87 ID:4qssLabbo
女(…ん)

女(あれ、なんだろ…この感覚。沈んで行くみたいな)


女(…?あれ、ここってどこ?私は確か…自分の家に)


女(な、なに…?ここ…地下室みたいな雰囲気がするけど)


女(…奥に扉がある。どこかに繋がっているのかな)
230 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:07:04.98 ID:4qssLabbo
ゾクッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!



女「!?」ビクッッ

女「あうぅ…あっ…あっ……」ブルブル


女(だ、めだ…これ……こ、この中には…入っちゃいけない。ぜ、絶対に……)

女(い、今まで見てきたモノとは比較にならない…あの巨大な影でさえもくすむほどの…嫌な感じがする)


女(は、早く……ここから……離れないと)




女(うぐぅっ!?)ビクッ




女(な、何…急に息が……苦しくッ…がはっ……)

女(はぁっ…はぁっ…あっ…………)
231 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:08:12.56 ID:4qssLabbo
女「!?」パチッ



女(え、なに…ここは……私の家?今のは…夢?)

女(ゆ、夢にしては…リアリティがあった。汗もかいているし…ただの夢とは思えない)

女(…あれ?体が動かない。これって…金縛り?)




ズズズズズッ……




女「!?」ビクッ

女(へ、部屋の隅に……あの影がッ!?ど、どうしよっ…動けっ、ない)




影『』ズズズズズッ
232 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:09:21.15 ID:4qssLabbo
女(ち、近付いてきている!!そ、そうだっ!あの塩を…!少し、手を伸ばせば届くっ!!)

女(お願いっ…!動いて!)ピクッ



影『』ズズズズズッ



女(もう少しでっ……届くっ…!間に合えっ―――)プルプル


ガシッ


女「!!!!!」

女「う、うわあああああああああああ!!!!!!!」バサッ



影『』シュンッ
233 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:10:18.63 ID:4qssLabbo
女「はぁっ……はぁっ……」

女「塩を撒いたら…か、影が消えた?助かった、の……?」



ドサッ



女「!?」ビクッ

女「に、庭から物音がっ!?誰かいるっ!!」ダッ
234 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:11:31.65 ID:4qssLabbo
ガチャ



女「…誰もいない」



ジャリッ



女「…ん?何か踏んだ」ピクッ

女(これって…私が玄関に盛って置いた塩だ。それが倒されている)

女(間違いない…さっきまで誰かいたんだ。ここに)


女(この事件の…真犯人が)
235 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:12:03.97 ID:4qssLabbo
今日はここまで
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