霊能少女「本当の戦いはこれからってやつかな」

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335 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 11:47:32.72 ID:NeYATrVbo
女「!?」ビクッ

女(う、うそ…まだいるの?だから声を出さずに…)


霊能少女「……」ポチポチ


『私が囮になって、アイツを引き付ける』

『アナタはその隙に逃げて』


女「…っ」

女(囮って…車を力ずくで倒すような化け物相手に無謀過ぎる…)


霊能少女「……」ポチポチ


『安心して、勝算はある』

『でも、もし私が一日を過ぎても帰らなかったら、この封筒を宛先の住所に送ってほしい』


霊能少女「……」スッ
336 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 11:48:34.21 ID:NeYATrVbo
女「……」

女(先生は…死を覚悟している。それほどの相手なんだ。あの神彁混という化け物は…)

女(それでも、先生は戦おうとしている。私を守る為に……先生は……)

女(…無力な私には、先生を止める権利もあの神彁混をどうにかする力もない。ただ…無事を祈ることしか出来ない)


女「……」ポチポチ


『分かりました。必ず、帰ってきてください』


霊能少女「…」コクッ


『ワタシが外に出て、あいつが車から離れる音がしたら、その正反対の方向に逃げて』

『道なりを行けば、道路に出ると思う』

『それと、そこに落ちている拳銃はアナタが持って行って。もしかしたら、信者の残党がいるかもしれないから武器はあった方がいい。安全装置は右上にある』
337 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 11:49:38.75 ID:NeYATrVbo
女(…右上、これかな?)


『じゃあ、行ってくる。町に出たら、急いで警察を呼んで。公衆電話を使って匿名で』


女「……」ポチポチ


『先生、御武運を祈っています』


霊能少女「……」コクッ

霊能少女「……ッッッ!!!!!!」ゴンッ



ダッ!!!!!



ドンッ



女(…!何かが飛び移る音がした。あれが…神彁混)

女(…先生、どうか―――生きて帰ってきてください)
338 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 11:51:02.53 ID:NeYATrVbo
ダダダダダダダダッ!!!!!



霊能少女「……ッ!!」ダダッ

霊能少女(よし、引き付けは成功。あとは走るだけ)

霊能少女(…不幸中の幸いだった。昨日、下見に来ておいて正解だった…この近くにはアレがある。アレなら…アイツをどうにか出来るかもしれない)チラッ


霊能少女(……あれが『神彁混』か)







神彁混「……......」バサッバサッ







霊能少女(身長は三メートル近くあるか、かなりでかい。尻尾を含めると四メートルはある。そして…あの翼、あれを使って追跡してきたのか)

霊能少女(闇より深い極黒の体色、羊の骸骨を彷彿とさせる頭部、そして、禍々しく、吐き気を催すほどのオーラ……)

霊能少女(あれのどこが神なんだ。どう見たって悪魔そのもの……あいつら、本当に何を呼び出しやがった)
339 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 11:52:18.73 ID:NeYATrVbo
霊能少女(この感覚、あいつは幽霊だとか、怪物だとかの類いではない。人外の魔物…ってところか。いや、魔物なんて生易しいモノならまだマシか)

霊能少女(ワタシなら、見ただけでその色から生きているか、死んでいるかを判別出来る。でも、あいつの色は…そのどちらでもない)

霊能少女(例えるなら、虚ろな色。こんなの初めて見た。生命のエネルギーを全く感じない。かと言って、死者特有の臭いがするわけでもない)

霊能少女(…恐らく、アイツを殺すことは出来ない。あれは災厄そのものと言っていい。個体ではなく事象に近い存在)

霊能少女(…なら、残る手はひとつ)






神彁混「…………」グンッ







霊能少女(ッ!来たか)サッ
340 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 11:53:27.02 ID:NeYATrVbo
ブゥゥン!!!!!!!!!


ザンッ!!!!!!!!






神彁混「…………」






霊能少女(…自分から降りて来てくれたか。そっちの方がやりやすいから助かった)

霊能少女(…例の地点まではあと数百メートルはある。そこまでは戦いながら、この化け物をやり過ごすしかない)

霊能少女(面白い。ワタシの力がどこまで通じるか…確かめさせてもらう)スッ






神彁混「…………」
341 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 11:55:38.39 ID:NeYATrVbo
……………………………………………………………………
…………………………………………………


ダダダダダダダダッ!!!!!




霊能少女「ハァッ……ハァッ……」ダダッ





神彁混「…………」




霊能少女(チッ…もう追ってきたか)

霊能少女(やっぱり、ワタシの道具だと殺せない。いや…正確に言うと、ダメージは与えられているけど…決定打にならない)

霊能少女(そこそこの効果はある。でも、すぐに動けるようになる。痛みは与えられるけど、ただそれだけ。致命傷にはならない)

霊能少女(戦って理解った。あの神彁混という化け物は…殺意の塊だ。ワタシたち人間が生から産まれ、生きるように…あいつは死の渦から産まれ、死を求めて彷徨う)

霊能少女(あんなやつを野放したら、何千、何万の命が犠牲になる。絶対にここで止めなくては……)
342 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 11:56:39.77 ID:NeYATrVbo
ブンッッッッ!!!!!!!!



霊能少女「!?」サッ



神彁混「…………」



霊能少女(くっ…!やはりこの身体能力は驚異的だ。的確に急所を狙ってくる)

霊能少女(あーもう…こういう飛んだり跳ねたりするのはワタシの専門外なのに、つくづく相性が悪い)

霊能少女(残りあと50メートルくらいか。そろそろ見えてくるはず。準備をしておかないと)



神彁混「…………」グッ



霊能少女(…っ!攻撃が来る。爆弾を使って時間稼ぎを…)ガサゴソ

霊能少女(―――っ!?しまった、もうストックが切れたのか。他の道具もほとんど来る途中で使い捨ててしまった。これは不味い)

霊能少女(…仕方ない。鎖を使うか)スッ


霊能少女「ッッッ!!!!!」ブンッ
343 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 11:58:02.25 ID:NeYATrVbo
ジャララララララ!!!!!!!



神彁混「…………」グッ



グルグルグルグルグルグル……




霊能少女(これでしばらくは動けないはず。あの鎖は過去に連続殺人鬼の怪物が絞殺に使用していた鎖。そいつの死後も、鎖は意識を持ち、目の前にある物体に所構わず纏わりつく)

霊能少女(ワタシたち人間に異形の力は使えない。でもそれを扱うことは出来るということ)




神彁混「…………」グイッ


ブチブチブチブチブチッ……



霊能少女「!?」

霊能少女(あ、あれを引き千切っているのか。なんてやつだ…)

霊能少女(でも、十数秒だけど時間は稼げた。これならっ…もうすぐっ…!)
344 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 11:58:43.12 ID:NeYATrVbo







井戸『』







霊能少女(あった…!あの井戸を使って神彁混を封印するッ!!)






345 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:00:48.81 ID:NeYATrVbo
霊能少女(殺すことは出来なくとも、封印するなら幽霊や怪物と変わらない。狭間で永久に隔離してやる)

霊能少女(下準備はしてある。万が一の為に…備えて正解だった)

霊能少女(あとは…あいつにマーキングを刻むだけ。そうすれば自動的に封印が始まる)

霊能少女(まあ…これが一番難しいんだけどね。あいつに接近しなくてはならない)

霊能少女(…やるか。これが最後の攻防だ)


ダッ!!!!!!!





神彁混「…………」





霊能少女(…目の前にすると、一層不気味だ。眼球がない、視覚がないのか?)

霊能少女(ワタシの位置をどうやって把握している。嗅覚か、聴覚か、それとも第六感に近い何か)

霊能少女(…瞳がない相手とやり合うのは初めてだな。眼を視れば…ある程度は相手の動きを予測出来るけど、それが通用しない。)


霊能少女(…やるしかない。もう逃げることは許されない)
346 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:02:21.33 ID:NeYATrVbo
ブンッ



霊能少女(…ッ!疾いな、まずは水で動きを止めるか)ブンッ



パシャッ



神彁混「…………」ビシャッ

神彁混「…………」ピクッ



霊能少女(来たっ…もらった!)ブンッ





ビュンッ





霊能少女「ガハッッ!?」ボゴォ
347 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:03:59.96 ID:NeYATrVbo
霊能少女(何が…起こった。い、息が……)

霊能少女(そうか…!尻尾で死角からの攻撃っ…まずい、まとも、に…食らっ―――)




神彁混「…………」ビュンッ




霊能少女(よ、避けられっ―――死)






















バンッ!!!!!!!!
348 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:05:38.22 ID:NeYATrVbo
神彁混「…………」ドンッ




霊能少女「!?」クルッ






女「はぁっ…はぁっ…」

女「う、うわああああああああああ!!!!!!!」カチッ






バンバンッ!!!!!!!バンッ!!!!!






神彁混「…………」ドンドンッ

神彁混「…………」ユラッ




霊能少女(な、んで…逃げてって言った、のに……)

霊能少女(…バカ、でも……助かった)


霊能少女「ハァッ!!!!!」ブンッ
349 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:06:58.95 ID:NeYATrVbo
神彁混「…………」ギュウン



霊能少女(これで…終わりっ!!!!)バンッ




ギュウウウウウウウウウン‼‼‼‼‼



神彁混「…………」ガッ

神彁混「…………」バサッ



霊能少女「逃げようとしても無駄。呑まれろ…!」グッ




神彁混「…………」ググッ

神彁混「…………」グイッ




井戸『』




神彁混「…………」ヒュンッ





女「い、井戸の中に…吸い込まれた」

女「せ、先生!やったんですか!?」
350 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:08:23.59 ID:NeYATrVbo
霊能少女「閉めてっ!そこの井戸の前にある蓋を使って!!」





女「ふ、ふたっ!?」

女「あっ…こ、これか!」グイッ





バタンッ





霊能少女「……はぁ」フッ

霊能少女「終わった…あー疲れた」ゴロン



女「やりましたね!!先生!!」ダッ



霊能少女「……」

霊能少女「…なんで来たの。先に逃げてって指示したでしょ」

霊能少女「一歩間違えたら…アナタも一緒に死ぬところだった。賢い判断とは言えない」
351 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:10:07.20 ID:NeYATrVbo
女「えっ…うっ、そ、それは……」

女「……私、この二週間ずっと、逃げてばかりでした」

女「和尚さんや先生にずっと助けられてて、自分でも足手まといだと自覚してます」


霊能少女「…アナタは依頼者なんだから、守られて当然。むしろ前に出られるとこっちが困るんだけど」


女「そ、そう言われると返す言葉がないんですけど……」

女「…どこか、自分の中で、追われるのが嫌になっていたんだと思います。ずっと、ずっと、狙われて死にかけて、また狙われるのを繰り返すのが」

女「もし、ここで先生が死んでしまって、私だけが生き残る結果になってしまったら…耐えられる自信がありませんでした。これからの人生に、ずっとその十字架を背負っていきそうで」

女「私は特別な力もないし、臆病で何の役にも立ちませんけど…反抗することは出来ると、和尚さんたちに教えられました。結果がどうであろうとも、最後まで立ち向かったあの人たちはとても立派だと思います」


霊能少女「…」


女「分かっているんです。下手に手を出すより、何もしないことの方がいいって。でも…少しでも、私もそっち側に立ってみたかったんです。あの人たちの勇気を、私も受け継ごうと」

女「先生の力に…少しでもなりたいと思いました。そうしたら、自然と足が違う方向に…」


女「…ごめんなさい、危ない真似をして。和尚さんは先生に、私を託したのに…自分勝手なことをして」
352 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:11:02.01 ID:NeYATrVbo
霊能少女「…」

霊能少女「確かに、アナタは和尚の願いを無視して、行動した」

霊能少女「でも…あの人はそれを咎めることはしないだろうね。結果的に言えばワタシの命を救ったのは他でもないアナタだし」



霊能少女「…ありがとう。アナタの勇気を、ワタシは一生忘れない。敬意を表する」ペコリ



女「えっ…そ、そんな!やめてくださいよ!頭を上げてください!お礼を山ほど言いたいのはこっちなんですし!」

女「…本当に終わったんですよね。これで」


霊能少女「うん、間違いない。これで…全てが終わった」

霊能少女「…帰ろうか」


女「…はいっ!」
353 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:12:34.31 ID:NeYATrVbo
▢▢▢▢  15日目  ▢▢▢▢



母「……」スゥ



霊能少女「…呪詛が完全に取れている。これでもう心配はいらない」

霊能少女「まだ二三日は体が回復するまで眠りが続くだろうけど、その後はいつもと同じ健康体に戻るはず」


女「ほ、本当ですか?よかった…」

女「昨日、あの教祖が死んだ時刻と同じくらいに…病院から連絡があったんです。母の意識が戻ったと…これで、もう呪いはなくなったんですね」


霊能少女「…そう、アナタたち家族は助かった」チラッ




『ここが天国の扉という宗教団体が集団自殺を遂げた現場です。この団体には総勢100人余りの信者が所属しており、現在その全ての身元の死亡が確認されています』

『これは、日本史上においても異例の事件であり、警察は捜査を―――』
354 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:14:16.78 ID:NeYATrVbo
女「…何かえらい事件になってますね。昨日からニュースがずっと取り上げてますし」

女「ネットも…すごい騒ぎになっていますよ。日本中があのカルトに注目しているなんて」


霊能少女「そりゃ、三桁近くの人間が一斉に死んだら…大騒動になるだろうね。隠しきれる規模じゃないし」

霊能少女「でも、一か月も経てば自然と落ち着いて来るよ。人間なんてそんなもの」


女「私たちだけなんですよね。あいつらが本当は何をしていたかも、神彁混の存在も…知っているのは私たちだけ」

女「…マスコミとかの取材が来ないですかね?一応、あの現場にいたんですし」


霊能少女「ワタシたちとあのカルトに接点はない。あの場にいたということを知っている人物は全員死んでしまった。よっぽどのことがない限りは来ないよ」

霊能少女「まあ一応、こっちもそういうのが来ないように手を回しておくから、安心していい」
355 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:14:58.86 ID:NeYATrVbo
女「安心していいって…何するつもりなんですか」


霊能少女「色々コネがあるってこと。さて…行くか」スッ


女「え?行くってどこに?」


霊能少女「もう一度、あそこに戻る」




女「えっ……」
356 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:16:10.44 ID:NeYATrVbo
……………………………………………………...
……………………………………………



女「だ、大丈夫ですか?先生…さっきすぐそこで警官が見張っていましたし、ここら一帯って立ち入り禁止なんじゃ」


霊能少女「そんなの知らない。もし見つかったらワタシが何とかする」


女「何とかするって…強引な」

女「…本当に、あの井戸に行くんですか?正直、行きたくないんですけど…」

女「私があの神彁混をまともに見たのは、銃を撃った一瞬だけですけど…全身から血が噴き出したみたいに、固まりました。家で見た影も怖かったですけど…アレに比べたら百倍マシです」


霊能少女「大丈夫、あの封印式は中から破ることは絶対に出来ない。神彁混が自力で出てくる可能性は万に一つもない」

霊能少女「…でも、外からなら蓋を開けるだけで簡単に出ることが出来てしまう。だから、それを防ぐ為に補強をしないといけない。二度とあいつがこの世界に出てこないように」
357 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:17:11.12 ID:NeYATrVbo
霊能少女「昨日は道具が足りなくて、そこら中に警察がウロウロしていたから無理だったけど、一晩経った今なら平気」


女「先生がそこまで言うならいいですけど…場所は覚えているんですか?」


霊能少女「ワタシは一度通った道は絶対に忘れない。もうじき見えてくる」

霊能少女「…あった。あそこに―――」






霊能少女「!?」ビクッ






女「どうしたんですか―――ッッ!?」

女「う、うそ…そんな……」ブルブル
358 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:17:43.84 ID:NeYATrVbo






井戸『』ボロボロ









女「い、井戸が壊されている……」





359 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:18:56.03 ID:NeYATrVbo
霊能少女「ッ!!」ダッ


女「あっ!先生!」



霊能少女(なんだ!?この惨状は…!まるでダンプカーでもぶつけたみたいに、井戸が破壊されている)

霊能少女(…ダメだ。もう中には誰もいない……逃がしてしまった。ワタシの失態だ)

霊能少女(…でも誰が逃がした?あのカルトに所属している奴等は全員死んだはず。他にも残党がいたのか?でもどうやって…...)



女「せ、先生……これって……」



霊能少女「…………どうやら」
360 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:19:42.21 ID:NeYATrVbo








霊能少女「本当の戦いはこれからってやつかな」










おわり







361 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:20:33.21 ID:NeYATrVbo






……………………………………………………………
………………………………………………





362 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:21:42.88 ID:NeYATrVbo
▢▢▢▢  16日目  ▢▢▢▢



女「あっ、もうすぐ新幹線が来るみたいですね」


霊能少女「うん、もうお別れ」


女「もう少しゆっくりしていったらどうですか?先生もかなり体力を消耗しましたし、もう一週間は家で休んでも…」


霊能少女「…ごめん、それは出来ない」

霊能少女「神彁混が世に放たれてしまった今、急いでそのことを知らせないといけない。対策も練らないといけないし、ゆっくり休んでいる暇はない」


女「…そう、ですよね。ごめんなさい」

女「あの、先生。今回は本当にお世話になりました。私、先生にこの二週間ちょっとで何回助けられたか…先生は命の恩人です」

女「あれ?前にもこんなこと言ったような…」
363 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:22:52.46 ID:NeYATrVbo
霊能少女「…私も礼を言わせてもらう。アナタがいなければ、あの神彁混に殺されていたかもしれない。アナタの勇気が、私を救ってくれた」

霊能少女「ワタシには力がある。でもアナタは力を持たずにあの化け物に立ち向かった。どれほどの恐怖や葛藤があったのかはワタシには想像がつかない。アナタのことは…一生忘れない」


霊能少女「ありがとう。アナタに出会えて本当に良かった」


女「…!そ、そんな真顔で恥ずかしいこと言わないでくださいよ。こっちが恥ずかしいです」

女「あ、これ……先生にいつか渡そうと思っていたんですけど、機会がなくて。はい、どうぞ」スッ


霊能少女「…?なにこれ」


女「今回のお礼というか…依頼料みたいなものです。さすがに何も渡さないのは私の気が晴れないので、黙ってもらってください」


霊能少女「…ちょっと手貸して」


女「え?手って…はい、これでいいですか?」
364 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:23:40.89 ID:NeYATrVbo
グイッ



女「うわっ!?」ギュッ

霊能少女「…お礼はこの握手でいい。ワタシは…人を守る為にこの仕事をしている。アナタのこの温もりこそが、何よりの褒美」

霊能少女「それに、既に私には和尚から指名料としてお金が振り込まれている。もうこれ以上は必要ない。そのお金で、母親と温泉旅行にでも行ってほしい」

女「…!わ、分かりました!来週さっそくいってきます!」

霊能少女「それでいい。楽しんでね」フッ




ピーッ




霊能少女「…ん、もう時間か。じゃあこれで本当にお別れ」
365 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:24:47.88 ID:NeYATrVbo
女「…あの!先生!最後にお願いしてもいいですか」


霊能少女「お願い?」


女「私が言うのもなんですけど…あんまり無茶はしないでください。先生にこんなことを言っても効かないって分かっています。でも…自分の身は大事にしてください」

女「もし先生が死んだら私、すごく…ものすごく悲しいですから」


霊能少女「……」

霊能少女「…ごめん、それだけは守れない」

霊能少女「ワタシは…戦わなければいけない。今までも、これからも、それが私の役目だと思っているから」

霊能少女「その過程で命を落とすことになったとしても、何の後悔もない」


女「…っ。そ、そうですよね。ごめんなさい」
366 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:26:53.64 ID:NeYATrVbo
女「じゃ、じゃあ…!たまに、たまにでいいですから、連絡してもいいですか?」

女「無事を確認したいっていうか、友達になりたいっていうか…あーっ!ご、ごめんなさい。何言ってるんだろ自分、忘れてください!」


霊能少女「…どうだろ。ワタシは忙しいから、あまり返事が出来ない」

霊能少女「それに……そういうことをするのに慣れていないというか、やり方が分からない」


霊能少女「……でも」


霊能少女「たまに…本当にたまにでいいなら……構わない」



女「!」

女「分かりました!また落ち着いたらメール送りますね!」
367 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:28:19.00 ID:NeYATrVbo
プルルルルルルル…


霊能少女「…じゃあこれで、さようなら」


女「はい!先生もお元気で!」

女「あっ…そうだ。妹さんとも仲良くやってくださいね!」


霊能少女「……善処する」




プーーーー

バタンッ


ブオオオオオオオオオオ




女「…!」フリフリ

女「…行っちゃった。これで本当に…お別れか」


女「…ありがとうございました。先生」
368 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:29:47.88 ID:NeYATrVbo






女(こうして、私が体験した恐怖の二週間は終わりを告げた)

女(でも、まだ全てが終わったわけではない。先生はこれからも…戦い続けるんだろう。その身を犠牲にしたとしても)

女(―――先生の顔を直接見たのは、この日が最後だった)





369 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:30:54.77 ID:NeYATrVbo
…………………………………………………………
………………………………………



霊能少女「牛鍋弁当と、そぼろ弁当ひとつ。あ、あとお茶も」


霊能少女「…さて」モグモグ


霊能少女(…この紙、あの自殺した教祖の部屋で見つけた物。拳銃と一緒に落ちていたから、その時は何となく、ついでに回収しておいたけど)ペラッ

霊能少女(…正解だった。これは......とても重要な鍵になる)
370 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:35:35.56 ID:NeYATrVbo
■■■■■■■■■■■■■■■■■■



 1978 ○ קין

  1987 ×

  1993 ×

  1994 ×

  1997 ×


2000 ×





 To the next level.


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371 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:37:24.74 ID:NeYATrVbo
霊能少女「……」


霊能少女(これは恐らく、奴等の計画の一部。もっとも、最後の文…『次のレベルへ』と書かれていることから、最新のものではないと思われるけど)

霊能少女(気になるのは…この数字と○×)

霊能少女(数字の方はこの並びだと西暦か…?この年に何かあったという意味か)

霊能少女(…上にある文字のような記号も分からない。後で調べてみるか)


霊能少女(とにかく、これを手に入れられたのは大きな収穫だ。『天国の扉』…奴等の計画がこれで終わりだとは思えない)

霊能少女(あの教祖は…この世界に扉を開けると言っていた。ワタシの勘だと、扉というものが開いたのは一瞬でしかない。その一瞬に…『神彁混』は出てきた)


霊能少女(…いや、元々あの『神彁混』しか呼び出す予定はなかったのか?地下に閉じ込められていたあの妊婦…あの人は助けを求めていた、教団の関係者ではない可能性が高い)
372 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:38:51.58 ID:NeYATrVbo
霊能少女(『神彁混』を呼び出す方法は…まず妊婦を用意して、その周辺で多くの死を起こす。そして、その妊婦の腹が扉となり、『神彁混』が出てくる…)

霊能少女(…つまり、死を産み堕とすことによって、扉は開かれる…?)

霊能少女(さしずめ、『堕死者』と言ったところか。あー…頭が痛くなる)

霊能少女(…もし、次にあの『神彁混』と対峙する時が来たら…今度は簡単にはいかないな。ワタシと殺り合ったのは、まだ扉から出てきてすぐの状態。言うなれば、この世界に馴染んでいない状態であの強さだった)

霊能少女(誰か…協力者がいる。ワタシと同等の力を、いやそれ以上の力を持っている者ではないと、仕留められない)



霊能少女「…ちょっと相談してみようかな。デッキに行こう」スッ
373 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:39:36.68 ID:NeYATrVbo
プルルルルルルル…


ピッ



霊能少女「あ、もしもし…ワタシだけど」



プツッ

ツーツーツー



霊能少女「……」

霊能少女「…やっぱり切られた。当分は仲良くなんて無理か」



プルルルルルルル…



霊能少女「ん、誰だ」ピッ

霊能少女「…もしもし?」
374 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:40:45.51 ID:NeYATrVbo
霊能少女「あーうん、今朝メールで送った通り、無事に依頼は終わった。今は帰りの新幹線に乗っている」

霊能少女「…え?追加の依頼?ちょっと待って、そんなことをしている時間はない。急いで知らせたいことが……」

霊能少女「…廃病院に住み着く霊?だから待ってって言っているでしょ。そもそも、もう道具を使い果たしてもほとんど残ってない。ボトルが数本と塩くらい」

霊能少女「ただの幽霊だから大丈夫だって……はぁ、分かった。で、場所は―――」











おわり…?
375 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:41:50.47 ID:NeYATrVbo
ってことで終わりです
実はこれ一年半くらい前に書いた

幼女幽霊「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」DQN幽霊「!?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1466012540/

の前日譚みたいな内容になってます。本当はもっと早く投下する予定だったんですけど…いつの間にかこんなに伸びてました


吸血娘「死なないハゲってさ、不老不死ってより不毛不死だよね」屍男「…」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1507896137/

ついでに関連作としてこんなのもあります。これで人間幽霊怪物3つの視点で一つの物語になると思います

多分この三作を読んでもらえたら、散らばってるある程度の内容は把握してもらえると思うんですが…予定だと全体でまだ半分以上あるので、かなり長くなると思います
しかもこの春からかなり書きづらくなる環境になるので、続きが出来るまでだいぶ時間がかかるかもしれません…
次は幼女幽霊の方を書こうと思っているので気長に待ってくれると嬉しいです
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/29(木) 12:46:24.58 ID:dlb0nB+L0
完結おめでとうございます、続編を書く予定だったらまた見に来ますね
今ままでお疲れ様でした
377 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 12:54:00.50 ID:NeYATrVbo
ごめんなさい最後に自分の専ブラだと>>370のところがバグっているので分かりにくいことになっているかもしれないです

https://i.imgur.com/DotvkKw.jpg

画像だとこんな感じになってます
特に深い意味はないです
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/29(木) 13:01:29.66 ID:/fo8R6I60

ゾクゾクした
379 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/29(木) 13:09:24.40 ID:NeYATrVbo
あ、ごめんなさいこれで本当の本当に最後なんですけどこのSSには元ネタになってる二つの映画があります

序盤から中盤は『カルト』終盤は『VHS ネクストレベル』の『Safe Haven』という作品からかなり影響受けてます
多分知っている人から見たら思った以上にまんまだと思います
とても面白い映画だと思うのでもし良かったら見てください
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/29(木) 13:39:38.67 ID:Ajfm76kDO

面白かった
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/29(木) 13:43:51.04 ID:waLv/id2O
少女幽霊の子分元気にしてるんかなw
呪い系のssはキムさんも好きだなぁ
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2018/03/29(木) 13:57:48.83 ID:7lsCnehJ0
幼女幽霊の方も読みました、霊能少女病院で幼女幽霊と戦った時は本調子では無かったですね
それどころか体力も消耗してろくな道具もない状態で戦っていたとは驚きです
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/29(木) 15:03:59.52 ID:5+4Y8CkPO

幼女も面白かったしこれも良かった
吸血娘はこれから読んでくる
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 16:38:55.47 ID:MxifRZEiO
>>381
マサさんじゃない?
祟られ屋ならね
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