霊能少女「本当の戦いはこれからってやつかな」

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184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/17(土) 10:12:16.29 ID:wXpAw8+8O
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/17(土) 10:59:51.44 ID:imVVIxqfo
苦戦?寧ろこれからだろう
186 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:21:50.78 ID:J4ZPO0Pgo
▢▢▢▢  九日目  ▢▢▢▢



『アガギィッ…グッ……ハハハ』

『わたっ…じは…!道しるべにな、るッ…!!!』

『ごのっ…大いなる旅路のッ…礎にッ…!!』



女「!?」ガバッ

女「はぁっ…はぁっ…」キョロキョロ

女「や、やっぱり、夢に出てきた。あーもう……やだなぁ」




女「おはようございます…先生」

霊能少女「ん、おはよう」カキカキ

女「あれ?何を書いているんですか?」

霊能少女「今回の事件の報告書、みたいなの」
187 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:24:06.07 ID:J4ZPO0Pgo
女「報告書…ですか?」


霊能少女「一応、仕事をしたらこれを出さないといけない。記録にもなるし…もし、本人が死んだ時にも他の人に託すことが出来るから」


女「…!」

女「…和尚さんも、それを書いていたんですよね」


霊能少女「…そう、あれを事前に読んでいたから、ワタシも十分に対策が出来た。あの人たちの死は無駄じゃない」


女「…」

女「…ちょっと、私にも見せてもらっていいですか?」


霊能少女「別にいいけど、今はワタシが書いているから横から見て」カキカキ


女「どれどれ…」

女「ん?」
188 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:25:20.81 ID:J4ZPO0Pgo
女「すみません。この最初に書いてある強:狂ってなんですか?」


霊能少女「分かりやすく言うと、怪異の強さの目安。ワタシたちの世界では『強』という言葉を使ってどれほどの脅威があるか表している」

霊能少女「レベルは三段階あって、順番に『恐』『叫』『狂』これが後ろに行くほど危険度が上がる」


女「ということは…私の家って最強レベルに危なかった、ってことですか?」


霊能少女「まあそういうことになる。でもこれはあくまで目安に過ぎないから、そこまで信用出来るものでもない。仕方なく割り振っている状態に近い」


女「へぇ…どういう基準で決められるんですか?」
189 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:27:22.89 ID:J4ZPO0Pgo
霊能少女「まずは『恐』これは人を驚かしたり、怖がらせたりする幽霊などが該当する」

霊能少女「でも、精々出来るのはそれだけ。要するに人を殺す力がない下級霊やオーブかな」


女「害はそこまでないってことですか?」


霊能少女「まあそういうことになる。こいつらは放っておいても近いうちに自然消滅するから、そこまで危険なモノではない。勿論、依頼を受けたら祓うけど」

霊能少女「次は『叫』依頼が来るのは大体このレベルからになる。人に危害を加え、精神に異常をもたらす怪異が該当する」

霊能少女「死に至る、というケースは多くはないけど決してないわけではない。見つけたら即刻祓うべき対象」


女「何だか急に怖い感じになりましたね…と、なると最後の『叫』は…」
190 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:28:59.96 ID:J4ZPO0Pgo
霊能少女「お察しの通り『狂』は人を狂わせる程の精神汚染、そして積極的に殺戮を繰り返す怪異。危険度は最高で返り討ちに遭う霊能者も多い」

霊能少女「でも最近はこの『狂』に該当するモノは少なくなっている。あっても年に数件ぐらい」


女「えっ…そんなに少ないんですか?」


霊能少女「まず、現代が非常に死者が蘇りにくくなっていて、全体数が少なくなっていることが挙げられる。昔と比べてね」

霊能少女「原因は色々説があるけど…ワタシはこの世界に『生』が溢れているからだと思う。世界の人口はもう70億を超えている。死者は生気を吸い過ぎるとすぐ消滅するから、今の社会はとても厳しい環境なんだと思う」


女「確かに…最近オカルト系の話題ってすっかりなくなりましたよね。心霊系の番組も減りましたし」
191 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:31:04.18 ID:J4ZPO0Pgo
霊能少女「そして、もう一つは『狂』の奴等はある程度の知能を持っている。だから、中々尻尾を見せない」

霊能少女「ワタシたちは依頼を受けて、怪異を祓っている。依頼があるということは、何らかの目撃証言や被害に遭った人がいるということ」

霊能少女「…もし、目撃されることがなく、被害者の口を全員封じているとすれば…依頼が届くこともなく、安全に暮らすことが出来る」


女「そ、それって、私達の世界にそんな危険なのが紛れ込んでいるかもしれない…ってことですか?」


霊能少女「そういうことになる。現に、過去に都市伝説で有名だった『花子さん』『口裂け女』『ひきこさん』などは…実際に存在する怪異として有名。今でもどこかで潜んでいるはず」

霊能少女「まあ…今でも人殺しをしているやつは少ないと思うけどね。殺人はどうしても死体が残るから、証拠を消しにくいし」
192 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:32:23.38 ID:J4ZPO0Pgo
女「じ、実際にいるんですか?口裂け女って…昔に警察が動いたくらいの騒動になっていたのは知っていますけど」


霊能少女「こいつらは幽霊とは違って、肉体が存在する死者。怪物と呼ばれている存在」

霊能少女「噂で有名なのは大体オリジナルが存在する。あいつら自分の力を誇示するのが大好きだから」


女「じゃ、じゃあ…その実際にいる怪物の中で、一番強いのって誰なんですか?」

女「先生でも…勝てなかったりします?」


霊能少女「……」

霊能少女「…ワタシも、これらの相手とは対峙したことないから、どれだけの強さなのかは分からない。でも…」

霊能少女「この業界で、最も危険な怪異と呼ばれているモノは存在する。そいつは…『強』のどれらにも当てはまらない、専用の呼称で呼ばれている」


女「えっ…だ、誰なんですか?それ…」
193 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:33:42.50 ID:J4ZPO0Pgo
霊能少女「アナタも一度は聞いたことがある都市伝説だと思う。そいつは『凶』と分類されていて、誰にも倒すことは出来ないと言われている」

霊能少女「名は―――」



プルルルルルルル…プルルルルルルル…



女「あっ…ご、ごめんなさい!ちょっと失礼します」


女『もしもし?お母さん?…えっ!?』

女『ちょ、ちょっと!どういうこと?勝手に決め……』プツッ


女「あ…切れた」



霊能少女「どうしたの、何かあった?」
194 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:34:36.02 ID:J4ZPO0Pgo
女「ど、どうしましょう…先生。お母さん、元気になったからもう今日退院するって…大丈夫なんですかね」

霊能少女「…一応、まだ少し様子見をした方がいいと思う。まだ呪詛が体内に残っている可能性もあるし、あと一週間は安静にさせた方がいい」

女「で、ですよね!私、病院に行って、もうちょっと入院するように説得しに行ってきます!」ダッ

霊能少女「ん、いってらっしゃい」



バタンッ



霊能少女「…さて、ワタシも続きを書くか」スッ

霊能少女「…」ピクッ

霊能少女「…いや、その前に…確かめておこう。ちょうど一人だし」スクッ


霊能少女「本当に…これで終わったかどうかを」
195 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:35:56.06 ID:J4ZPO0Pgo
霊能少女「...」キョロキョロ

霊能少女(警察はいないか。あの家も、立ち入り禁止のテープが貼られているけど、恐らく鍵はそのまま開いているはず)



ガチャ



霊能少女「…当たり」




バタンッ



霊能少女(あの老婆が亡くなって、もう真実を知る者はいない。でも…)

霊能少女(何かの証拠が残っているかもしれない。『神彁混』に繋がる何かが…)
196 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:36:50.83 ID:J4ZPO0Pgo
スタスタ


霊能少女(…それにしても酷い臭いだ。何を腐らせたらこんな刺激臭になる?悪性のガスが発生してもおかしくない)

霊能少女(…ん?あそこにある黒い物って…もしかして、あれが臭いの元か)



肉『』プーン



霊能少女(…腐った肉だ。なるほど、これを放置していたせいか)

霊能少女(でも、これは何の肉?まさか人間、ということはないか。動物にしても、毛皮は残っていない)

霊能少女(そういえば…スーパーで肉を大量に買っていたと、尾行の時に言っていたな。食べるわけではなく、こうやって使っていたのか)

霊能少女(…何の意味がある?)
197 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:38:12.44 ID:J4ZPO0Pgo
霊能少女「…ふぅ」


霊能少女(ある程度探したけど…何も出てこない。本当にここで暮らしていたのか不思議なくらいに生活感がない家だ)

霊能少女(それに、私の他にも何者かが捜し回った跡がある。恐らく警察が身元を調べる為に触った跡か。この様子だと、向こうも何も見つからなかったと思うけど)

霊能少女(こうなると、どこかに隠している可能性があるな。でもどこに?)

霊能少女(…ひとつだけ、心当たりがあった)





霊能少女(この神棚だ。あの像が置いてあった…ここだけは掃除がされていて、埃が一つもない)

霊能少女(何かあるとしたら、ここのはず…とりあえず解体してみるか)
198 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:39:01.95 ID:J4ZPO0Pgo
パコッ


霊能少女「…!」

霊能少女(あった。奥の方に、紙のような物が挟まっている)

霊能少女(これが…最後の手掛かり。さて…何が書いてある?)



ペラッ



霊能少女「…」
199 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:39:54.58 ID:J4ZPO0Pgo
……………………………………………………
………………………………………



ガチャ



女「今帰りましたー」

女「何とかお母さんを説得させるのに成功しました!いやー本当に大変でしたよ」


霊能少女「…そう」


女「あ、今から晩ご飯作りますね。何か食べたい物ありますか…?」


霊能少女「何でもいい。それと、ちょっと大事な話がある」


女「?」
200 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:40:49.07 ID:J4ZPO0Pgo
霊能少女「もう事件は解決した。だから…」

霊能少女「ワタシは明日、この家を出て別の仕事に向かう。今まで世話になった。ありがとう」




女「……えっ」



201 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/17(土) 22:41:31.13 ID:J4ZPO0Pgo
今日はここまで
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/17(土) 22:46:27.02 ID:AL0aN8bOO
おつ
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/17(土) 22:48:02.10 ID:Vkrar8pF0
花子さんやひきこさんの名前が出たけどこれは伏線ですね、後でボス枠として登場するかも
続きがますます楽しみになりました、今回も面白かったです
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/18(日) 00:31:32.82 ID:DeKjeuBuO
205 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:49:18.87 ID:NV+g2oZ6o
▢▢▢▢  十日目  ▢▢▢▢



女(…いつかは、こんな日が来るとは思っていた。いや、願っていた)

女(全部片付いて、先生が家からいなくなる日が…でも、まだどこか心の片隅で不安が残る)

女(本当に、終わったのか、先生がいなくなっても大丈夫なのか…と)

女(…駄目だ、どうしてもマイナス方向に考えてしまう。気持ちを切り替えよう)

女(もう…全て終わったのだから)



霊能少女「どうしたの?」

女「…いえ、何でもないです。あ、そろそろ新幹線が来る時間ですね」

霊能少女「わざわざ駅まで見送りに来なくてもいいのに」

女「今までお世話になったんですから、これぐらいはさせてください」
206 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:50:34.90 ID:NV+g2oZ6o
女「あの…この一週間、本当にありがとうございました。何とお礼を言っていいか、先生がいなかったら、今頃は…」

霊能少女「ワタシは出来ることをしたまで。アナタも頑張った。もっと胸を張っていい」

霊能少女「これ、残りの分の水。お母さんに飲ませてあげて」

女「あっ、ありがとうございます」


霊能少女「それと…アナタにこれを」スッ


女「何ですか?これ?」


霊能少女「清めの塩、厄払いの効果がある」

霊能少女「万が一、危険な状態に陥ったら…ワタシに連絡して。なるべくすぐ駆け付ける」


女「…!わ、分かりました!」
207 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:51:23.09 ID:NV+g2oZ6o
ブゥゥゥン



霊能少女「ん、来たみたい」

霊能少女「じゃあ、さようなら。幸運を祈っている」フッ



女「先生も…!頑張ってくださいね!」



ウィーン

ブゥゥゥン



女「…」

女「…行っちゃったか」


女「私も…帰るか」
208 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:52:14.51 ID:NV+g2oZ6o
ブゥゥゥン



霊能少女「幕の内弁当と牛鍋弁当、あの鮭弁ひとつ」



霊能少女「」モグモグ

霊能少女「」モグモグ




霊能少女(…家までは大体四時間ぐらい)

霊能少女(そこから準備で一日以上はかかるか、出発したとしても…)


霊能少女(何とか、間に合うかな)

209 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:53:15.25 ID:NV+g2oZ6o
ガチャ



女「ただいま…って、今は誰もいないのか」


女(お母さんも入院してるし…またしばらくは私一人だな。何だかちょっと寂しい)



女「はぁ〜…」ゴロン

女「あーカメラもないし、久しぶりにゆっくりのびのび出来るなぁ…」

女「大学も…しばらく休んでたし、そろそろ行かないと…」


女「……やっと、日常に戻れたんだな」


女「…………すぅ」
210 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:54:11.95 ID:NV+g2oZ6o
……………………………………………………
………………………………………



女「…ん」パチッ

女「ふわぁ…昼寝しちゃった。もう外が暗くなってるや」

女「お腹空いたし、ご飯作るか」スッ


ガチャ


女「…そうだった」

女「昨日…先生との最後の夜ってことで、冷蔵庫の中を全部使っちゃったんだった」

女「本当に何もないな…仕方ない。コンビニで何か買いに行こっと」



バタンッ
211 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:55:00.94 ID:NV+g2oZ6o
スタスタ スタスタ



女「明日は買い物に行かないとなぁ…」

女「あと、お母さんの退院祝いも準備しておかないと。強引に入院進めちゃったし、ちゃんと後で謝っておこう」



スタスタ スタスタ



女(…ん?)

女(あれ、後ろに誰かいる?)クルッ



シーーーーン



女「…誰もいない」

女(き、気のせいだよね。うん、きっと)
212 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:56:34.36 ID:NV+g2oZ6o
スタスタ スタスタ



女(…気のせいじゃない。確実に、誰かが後ろにいる)

女(歩幅を変えてみよう…もし、私を尾行しているのなら…!)ダッ



タッタッタ!!!!タッタッタ!!!!



女「はぁっ…!はぁっ…!」

女(お、追ってきている!私を!?誰がっ!?)

女(あのお婆さんはもう死んだはずっ…!!私を狙う人なんてもう誰も…!)


女(っ!家が見えてきた!!あと少し!!)



ガチャ
213 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:58:07.22 ID:NV+g2oZ6o
バタンッ



女「はぁっ…はぁっ…」ペタン

女「に、逃げ切った…早く、先生に連絡を……」フラッ



ドンドンドンッ!!!!!!ドンドンドンッ!!!!!!



女「ひぃっ!?」ビクッ

女「ド、ドアを叩く音が…や、やめて…」ビクビク



ドンドンドンッ!!!!!!ドンドンドンッ!!!!!!



女「うぅっ…も、もうやめてよぉ……お願いだからぁ……」ブルブル



シーーーーン



女「…や、止んだ?」

女「な、何がどうなって…一体、誰が……」
214 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/18(日) 22:58:42.95 ID:NV+g2oZ6o
今日はここまで
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/18(日) 23:08:52.37 ID:rHRUVeWf0
やっぱり事件は終わってませんでしたね、寧ろこれから本番なのでしょうね
明日も楽しみしています 面白かったです
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/18(日) 23:45:57.56 ID:ETwFyM1wO
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/18(日) 23:47:24.63 ID:eoIVn4bIO
おつー
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 01:15:28.97 ID:hX03l7cp0
おつ
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 23:53:21.93 ID:Q91qEteI0
今日はなしかな?
220 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 01:56:22.34 ID:4qssLabbo
▢▢▢▢  十一日目  ▢▢▢▢



チュンチュン……チュン……



女「……」


女(先生に連絡を送ってから、半日が経った。あれから一睡もしていない)

女(まだ返事は来ていない。それどころか、既読も付いていない)

女(先生は別の仕事に向かうと言っていた。その仕事が忙しくて、携帯を見る余裕もないのか、それとも―――)


女(和尚さんと同じように、あの影に殺されたか)


女(…いや、それだけはないと断言できる。先生がやられるわけがない。絶対に、何があっても、それだけは断言できる)

女(恐らく、何らかの事情があって、連絡が取れない状況になっているんだ。きっと、先生は気付いたらすぐ飛んで来てくれるはず。それまで、私は持ちこたえないといけない)
221 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 01:57:23.72 ID:4qssLabbo
女(今、この場には私一人しかいないんだ…誰も、守ってくれる人がいない)

女(…怖い、死ぬほど怖い。一人でいることが。今すぐ逃げ出したいほどに)

女(でも…今、私が逃げたら…お母さんは一人になる。それに、過去の呪いで逃げ出そうとした人も事故で死んだ。私に残された道は…一つしかない)



女(先生のように、立ち向かわないと。背を見せたら殺される)



女(私が…この家を守るんだ)
222 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 01:58:27.34 ID:4qssLabbo
ガチャ



女「」コソッ

女(…人の気配はない。さすがに昼には襲ってこないのかな)

女(とりあえず…買い物に行こう。食べるものが何もないし)






女「これと、これと…あとこれも」ガサゴソ

女「これも買っておこう」



女(前に、ここのスーパーに来た時は…あのお婆さんを尾行してたんだったな)

女(ふっ、そして今の私は誰かに狙われているのか…笑えないよ、本当に)
223 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 01:59:28.57 ID:4qssLabbo
女(…あのお婆さんは何がしたかったんだろう。私たちを呪った理由、そして…なぜ自ら命を絶ったのか)

女(精神が錯乱していた、と言えば済む話だけど…何だかそれだけじゃない気がする)

女(三人目の犠牲者の人が書いた手記には…『かみかま つぎ あとすこし はじまる 4ね』と書いてあった。相変わらず『かみかま』の意味は分からないけど…何か、このメッセージは重要な鍵になる気がする)

女(そういえば…あのお婆さんが自殺する前に、何か言っていたな。確か…)



『わたっ…じは…!道しるべにな、るッ…!!!』

『ごのっ…大いなる旅路のッ…礎にッ…!!』



女(道しるべ、ってなんだろう?何かを残そうとしていた?)
224 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:00:22.74 ID:4qssLabbo
女(大いなる旅路の礎、っていうワードも気になる。どこかに行こうとしているようにも読み取れるな。でも、死んで行く場所と言ったら…あの世しかない)

女(…頭が痛くなってくるな。いずれにしても、不確定の情報が多すぎて…考えるだけ無駄かも)


女「…はぁ、大体買うものは買ったし、そろそろ帰るか」スタスタ


女(…あ、ここの曲がり角で鉢合わせしたんだったな。あの時は驚いたなぁ)




クルッ







婆「」ユラッ
225 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:01:39.03 ID:4qssLabbo
女「!?」ビクッ


女「えっ…う、うそ……あり得なっ……」

女(い、今さっき…あのお婆さんが角を曲がって…あ、あり得ない!なんでっ!?)バッ



女「…!…!」キョロキョロ

女(い、いない…どこに行った?)



女(そもそも…本当にいたの?あの人は間違いなく、私の目の前で死んだ。それがまた現れるなんて…幽霊じゃあるまいし)

女(っ…!ま、まさか本当に幽霊にっ!?)


女「…み、見間違いだよね。きっと…今日まだ寝てないし」

女「つ、疲れが溜まっているんだ…きっと、そうに違いない」


女「…!!!!」ダッ
226 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:03:18.26 ID:4qssLabbo
…………………………………………………
………………………………………



女「…もう日が沈んでいる。夜か…」

女(結局…何も出来ずに、時間だけが経って行った。唯一、私が持っている武器は…先生から貰った、この塩だけ)

女(一応、玄関に盛り塩をしておいたけど…どれぐらいの効果があるのか分からない。効くのかな、これ)


女(…先生がくれた物だもん。きっと、役に立つはず)


女(さぁ、来るなら来い。私は絶対に…負けない!)
227 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:04:18.66 ID:4qssLabbo
……………………………………………………………
…………………………………………



女「」コクッコクッ

女「……っは」パチッ

女「あ、危ない。寝ちゃうところだった。今何時だろ…」


『1:08』


女「一時か…もうとっくに昨日のドアを叩いてきた時間は過ぎてる。今日は攻め来ない…?」

女「…油断しちゃダメだ。もし寝込みを襲われたら…そのまま殺されるかもしれない。朝まで起きてないと」

女(こんなことなら…仮眠を取っておけばよかった。あー眠い、な…………)



女「……Zzz」スゥ
228 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:05:51.43 ID:4qssLabbo





ゾロゾロゾロ……ゾロゾロゾロ……



ズズズズズッ……




229 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:06:17.87 ID:4qssLabbo
女(…ん)

女(あれ、なんだろ…この感覚。沈んで行くみたいな)


女(…?あれ、ここってどこ?私は確か…自分の家に)


女(な、なに…?ここ…地下室みたいな雰囲気がするけど)


女(…奥に扉がある。どこかに繋がっているのかな)
230 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:07:04.98 ID:4qssLabbo
ゾクッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!



女「!?」ビクッッ

女「あうぅ…あっ…あっ……」ブルブル


女(だ、めだ…これ……こ、この中には…入っちゃいけない。ぜ、絶対に……)

女(い、今まで見てきたモノとは比較にならない…あの巨大な影でさえもくすむほどの…嫌な感じがする)


女(は、早く……ここから……離れないと)




女(うぐぅっ!?)ビクッ




女(な、何…急に息が……苦しくッ…がはっ……)

女(はぁっ…はぁっ…あっ…………)
231 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:08:12.56 ID:4qssLabbo
女「!?」パチッ



女(え、なに…ここは……私の家?今のは…夢?)

女(ゆ、夢にしては…リアリティがあった。汗もかいているし…ただの夢とは思えない)

女(…あれ?体が動かない。これって…金縛り?)




ズズズズズッ……




女「!?」ビクッ

女(へ、部屋の隅に……あの影がッ!?ど、どうしよっ…動けっ、ない)




影『』ズズズズズッ
232 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:09:21.15 ID:4qssLabbo
女(ち、近付いてきている!!そ、そうだっ!あの塩を…!少し、手を伸ばせば届くっ!!)

女(お願いっ…!動いて!)ピクッ



影『』ズズズズズッ



女(もう少しでっ……届くっ…!間に合えっ―――)プルプル


ガシッ


女「!!!!!」

女「う、うわあああああああああああ!!!!!!!」バサッ



影『』シュンッ
233 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:10:18.63 ID:4qssLabbo
女「はぁっ……はぁっ……」

女「塩を撒いたら…か、影が消えた?助かった、の……?」



ドサッ



女「!?」ビクッ

女「に、庭から物音がっ!?誰かいるっ!!」ダッ
234 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:11:31.65 ID:4qssLabbo
ガチャ



女「…誰もいない」



ジャリッ



女「…ん?何か踏んだ」ピクッ

女(これって…私が玄関に盛って置いた塩だ。それが倒されている)

女(間違いない…さっきまで誰かいたんだ。ここに)


女(この事件の…真犯人が)
235 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/20(火) 02:12:03.97 ID:4qssLabbo
今日はここまで
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 02:53:10.68 ID:OKsire+G0
しかしこの女性の方も肝が座ってますね、霊能少女が居なくても1人で霊を撃退出来るとは
所で作者この物語の主人公て霊能少女の方ですか?、それともこっちの女性の方? 何か今回の話だけ見ると主人公てどっちだっけて思うんですけど
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 06:21:50.18 ID:pi513kq7O
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 11:27:09.27 ID:vgo018X70
いいね乙
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/20(火) 12:51:30.86 ID:zd0kejW40
しかし女の方も初期に比べれば成長したな第二の主人公と言っても過言ではないでは、乙
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 14:25:48.78 ID:N0r+4rCH0
>>239
うるせぇsageろks
241 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/21(水) 00:42:58.50 ID:stZE6577o
ごめんなさい今日は更新出来ないです
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/21(水) 00:52:02.16 ID:CRJI5WWh0
大丈夫ですよ、寧ろ今まで良く毎日毎日更新してくれたと感謝してますので・1日の遅れくらい気にしません
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 00:05:18.14 ID:4PN/sstL0
遅いな今日も無しか?
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 00:27:33.83 ID:HMKw7qbr0
>>242
こいつ何様のつもりなんだろう?
たぶん>>36,>>58,>>60,>>81,>>96,>>125,>>157,>>165,>>180,>>203,>>215,>>236辺りも同一人物だと思うけどなんかところどころ上から目線でうぜぇな
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 00:30:56.57 ID:MlrVfMjvo
その人よりやたらまだかまだかって催促する人の方が問題だろう
確かに慇懃無礼な感じはするが感想自体は作者のモチベにも繋がるし
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 00:59:45.19 ID:dUjdO81mO
感想はいいがどっちが主人公って重要かな?
W主人公でええやんって思ってしまった
247 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/22(木) 01:27:18.77 ID:b7Qa7IKPo
▢▢▢▢  十二日目  ▢▢▢▢



女「…よし、出来た」カチャカチャ


女(家の中に置いてあった監視カメラは全部先生が持って帰っちゃったけど…こうやって、庭の植木鉢のところに見えないようにカメラを置いて、録画ボタンを押せば…簡易監視カメラの完成)

女(これで、犯人の顔が分かるはず。まあ…人間だったらの話だけど)

女(あとは…もう一度、買い物に行こう。今度はアレを買わないと)








女(防犯グッズ…これなら非力な私でも、攻撃手段になるはず)
248 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/22(木) 01:28:24.53 ID:b7Qa7IKPo
女(何がいいのかな…このスプレー型のは扱いやすそうだしいいかも。あとは…)

女(あ、スタンガンだ。値段はちょっと高いけど…一発当てるだけで相手を行動不能にさせる、か。うーん…)


女(一応買ってみるかな)





女(よし、これで装備は万全。あとは夜が来るのを待つのみ)

女(…そうだ。先生からの返事は来たかな)スッ


女(…変わらず、か)


女(ここまで来たら、一人でやるしかない。私だけで…捕まえてやる)
249 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/22(木) 01:29:44.05 ID:b7Qa7IKPo
…………………………………………………………
………………………………………………



『1:10』



女(…来た。昨日の同じ時刻。もし今日も来るなら、大体この前後のはず)

女(昨日は寝ちゃったけど…今日は大丈夫。朝まで起きていられる)

女(準備も万端、玄関先には昨日より多く塩を盛ったし、屋内にもいくつか設置してある)

女(何も恐れるものはない。私ならやれる、自信を持て)




ガタッ




女「」ビクッ

女(も、物音がした?外じゃない、家のどこからか)

女(来たの…?でもそんな気配は感じなかった。いつも嫌な感じがするのに)
250 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/22(木) 01:30:34.40 ID:b7Qa7IKPo
ガタッ



女「!!!!」


女(き、聞こえた。今度は庭から、昨日と同じ位置からだ)

女(いる、確実に、今この瞬間に、数メートル以内に)

女(行こう!こっちには武器もあるし、塩も持っている。戦況的にはかなり有利のはず!ここを逃すわけにはいかない!)ダッ




ピクッ



女(…ッ!?)

女(なっ…ま、また金縛りッ!?う、動けなっ……)




ズズズズズッ
251 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/22(木) 01:31:36.18 ID:b7Qa7IKPo
女(!!!!!)

女(き、昨日と同じパターン!いや、違う。昨日より…力が強い!!!指一本すらも動かせない!)


女(こ、これ…かなりまずい展開なんじゃ……)





影『』ズズズズズッ





女(か、影が現れた…!動けっ…!動け!!)

女(ダ、ダメだ……これ、もう……)




影『』ズズズズズッ




女(だ、誰かっ……助けっ……)
252 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/22(木) 01:32:50.13 ID:b7Qa7IKPo
「…...」

「……」ニヤッ





「ようやく尻尾を見せたか。やっぱり…こういうことだったか」スタスタ





「「!?」」クルッ





霊能少女「警告したはず、呪いを解除しないと呪詛返しをするって」

霊能少女「じゃあ…これ、約束の呪詛返し」スッ




ズズズズズッ





「……アッ!」ビクッ

「あ、ああああああ…」ダッ





霊能少女「…さて」クルッ
253 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/22(木) 01:34:03.81 ID:b7Qa7IKPo
影『』ズズズズズッ

影『』シュンッ




女「!?」ピクッ

女「あ、あれ…消えた?それに、動けるようになった」

女「な、何がどうなって…もうダメかと思ったのに」




ガチャ



女「」ビクッ

女(だ、誰か家に入ってきた。どうしよう…まさか、直接私を殺しに来たの?)


女(…!こ、これはチャンスだ。一対一なら、私でもまだ勝てる可能性がある)
254 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/22(木) 01:35:01.36 ID:b7Qa7IKPo
スタスタ




女(…来る。姿が見えた瞬間に…スタンガンを喰らわせてやる)




スッ




女「今だあああああああああ!!!!!!!」ダッ

霊能少女「ん?」

女「死ねえええええええええええええええ!!!!!!」スッ



ビリビリビリビリビリィィィィィィ!!!!!!!



霊能少女「ッッッ!?!?!?」ビリビリ



バタッ



女「はぁっ…はぁっ…や、やった。倒した」

女「…ん?」


霊能少女「」ピクピクッ


女「…………えっ、先生?」
255 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/22(木) 01:35:51.03 ID:b7Qa7IKPo
……………………………………………………………
………………………………………………



女「ほ、本当にっっっっっっ!!!!!!ごめんなさいっっっっ!!!!!!」


霊能少女「…いや、もういい。紛らわしいことをしたワタシも悪かった」


女「いや!!!!全面的に私が悪いです!!!!!本当に、本当に、本当にごめんなさい!!!!!!」


霊能少女「…いい加減に頭を上げてほしい。これじゃあまともに話も出来ない」

霊能少女「アナタに作戦を伝えずに、囮のように使ったワタシにも非がある。だから、もう謝るのはやめて」


女「申し訳なっ……え?作戦?囮?」
256 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/22(木) 01:37:08.53 ID:b7Qa7IKPo
霊能少女「そう、別の仕事に行くというのは嘘。一度帰ったのは本当だけど、またすぐ戻ってきた」

霊能少女「奴等が…ワタシが居なくなった頃合いを見て、アナタの家に来るのは目に見えていたから、一網打尽にしたかった」


女「そ、そうだったんですか…でも、それならメールの返事くらいくれても…」


霊能少女「…メール?」スッ

霊能少女「…あっ、ごめん。素で忘れていた。忙しくて、普段あまり触らないから」


女「何のための携帯なんですか…連絡よこせって言っていたのに」

女「…あの、それで…さっきから私の家を呪っていたやつの正体が分かっていたような口振りですけど…結局誰なんですか?」
257 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/22(木) 01:37:45.75 ID:b7Qa7IKPo
霊能少女「それはこれを見た方が早いと思う。アナタが庭に置いていたカメラ。ここに姿がバッチリ映っている」


女「えっ、よく見つけましたね。それ…ちゃんと見つからないように隠していたのに」


霊能少女「…隠していた?庭に置いてあるだけのように見えたけど」


女「…もういいです」


霊能少女「そう、ならさっそく再生する。時間は…この辺りか」ピッ






ジー……
258 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/22(木) 01:39:00.99 ID:b7Qa7IKPo
男『』ユラッ







女「…!こ、こいつが…黒幕?」


霊能少女「…違う、もっとよく見て」







男『…』

爺『…』ユラッ







女「!?」ビクッ

女「えっ…ふ、二人っ!?ど、どういうことですか?これ!!」
259 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/22(木) 01:40:17.38 ID:b7Qa7IKPo
霊能少女「…二人だけじゃない。もっといる」






ゾロゾロゾロ……ゾロゾロゾロ……






女「う、うそ…十人近くいる……こ、これって本当に私の家の前…?」

霊能少女「そう、ほんの十分前のアナタの家の光景。こいつらは幽霊でも何でもない、実体が存在する人間」






『『『……!……!』』』ユラユラ





女「な、なにこれ…手招きしている。これってちょうど、影が現れた時間…」

女「あ、先生が出てきた…ん?この持っている箱って…」


霊能少女「呪いの爆弾。あいつらに呪詛返しする約束だったから」スッ
260 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/22(木) 01:41:48.96 ID:b7Qa7IKPo
女「うわっ!?そ、そんな気持ち悪いのここで出さないでくださいよ!!」

女「あ、あれ。でも呪詛返しって…返された人は死ぬんじゃ…」


霊能少女「あれだけの数なら、一人にかかる負担は少ない。だから死ぬことはない。多分ね」





ダッ





女「あっ!に、逃げた……ここで先生が家に入って……あの流れになったんですね」

女「ど、どういうことですか。私はてっきり…個人の仕業だと思っていました。あのお婆さんと同じように、でも、これは…」

女「どう見ても異常です。十人近い人が、私の家に集まって呪いをかけていたなんて……真犯人は、黒幕は…誰なんですか?」
261 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/22(木) 01:43:14.46 ID:b7Qa7IKPo
霊能少女「ざっくり言うと、この一連の事件を操っていたのはあの老婆ではなかった、ということ。さっき集まっていた奴等の一員だろうね」

霊能少女「本当の黒幕は……『カルト』だった」




女「カ、カルト…?」
262 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/22(木) 01:44:47.95 ID:b7Qa7IKPo
霊能少女「名前くらいは聞いたことがあるはず。邪悪な神を信仰してたり、社会に敵対するような行為をしている宗教団体ってやつ。ようは頭のイカれた危ないやつら」

霊能少女「…これ、あの老婆の家から見つけた紙切れ。そのカルトが老婆に宛てて書いた指令書のようなものだった」

霊能少女「呪いを行う手順と日程が事細かく、説明書付きで記載されている」


女「あのお婆さんが宗教にハマっていた、という話は聞きましたけど…その宗教団体が黒幕だった、ってことですか……まさか、そんな……」


霊能少女「まあこれで倒すべき敵がはっきりした。この地域周辺を調べたら、すぐそれらしき組織の名前が出てきた」

霊能少女「『天国の扉』こいつらをぶっ潰せば、それで全てが解決する」


女「天国の…扉?」
263 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/22(木) 01:45:46.96 ID:b7Qa7IKPo
今日はここまで
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 01:49:07.41 ID:4PN/sstL0
乙、ようやく黒幕のなまえが出てきましたね
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2018/03/22(木) 02:06:44.44 ID:O8GbvT6r0
霊能少女が今回初めて敗北しましたね、しかもその相手が幽霊でも怨霊でもない依頼者の女性だったとは
もしかして霊能少女の天敵てこの女性なのでは、餌付けもされてますし(笑) 乙
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 08:43:05.60 ID:9nDj5j/R0
>>245
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 08:45:54.63 ID:9nDj5j/R0
ごめん変なところに安価つけちゃった
あと催促してる奴と変に偉そうなガイジは同一人物だと思うよ
構わないことだ
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/22(木) 12:32:38.77 ID:/Kc3RANYO
269 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/23(金) 02:49:02.98 ID:9pIq5aoIo
▢▢▢▢  十三日目  ▢▢▢▢



女「おはようございます……ごめんなさい、寝過ぎました」


霊能少女「…ん、大丈夫」カチャカチャ


女「あれ?何してるんですか?部屋いっぱいに変な道具広げてますけど」


霊能少女「仕事道具の手入れ、これを持ってくる為に家に帰っていた」


女「道具って…今まで使ってた水とか塩みたいなやつですか?」


霊能少女「あれは持ち運びが容易で、手軽に使えるもの。普通ならあれで十分だけど、今回のケースは別」

霊能少女「ワタシも…本気を出す。これが完全装備の道具。過去に使ったのは一回だけしかない。用意するのにも時間がかかるし、並みの『狂』相手でも、ここまでする必要はない程の業物だから」
270 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/23(金) 02:49:57.84 ID:9pIq5aoIo
女「…」ゴクリ

女(ほ、本気の道具って……一体、どれほどの……)



プルルルルルルル……プルルルルルルル……



女「あ、電話…」スタスタ

女「もしもし?はい、はい…えぇ、そうですけど」

女「えぇっ!?ほ。本当ですか!?」ビクッ



霊能少女「…」



女「わ、分かりました!す、すぐに行きます!」ガチャ



霊能少女「…何かあったの?」
271 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/23(金) 02:51:19.99 ID:9pIq5aoIo
女「そ、それが…!お母さんの容態が悪くなってみたいで…!意識がないそうなんです!」

女「だ、だから…!すぐ病院に来るようにって!!」


霊能少女(…そうか、本来のリミットは十日、もう今日で九日目…時間は残っていないということか)

霊能少女「…すぐに病院に行ってあげて」


女「はい!!!!」ダッ




バタン




霊能少女「…モタモタしている暇はないか。こちらから仕掛けるしかない」

霊能少女「向こうも…それを待っているはず。いいよ、全面戦争といこうか」ピッ


プルルルルルルル…プルルルルルルル…

ガチャ



霊能少女「…もしもし?そちら『天国の扉』?」
272 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/23(金) 02:52:34.17 ID:9pIq5aoIo
…………………………………………………
……………………………………



ガチャ



女「……ただいま、戻りました」


霊能少女「どうだった?母親の様子は」


女「…よくないそうです。昨日までは普通だったのに、急に意識を失って…昏睡状態に」

女「原因もまったく分からないみたいで……もしかしたら今夜が山かもしれないって……」ポロッ

女「ど、どうしたらっ、どうしたらいいんですか…先生…」ポロポロ


霊能少女「…ワタシがアナタの母親の命が残り十日だって言ったの、まだ覚えてる?」

霊能少女「今日が…その日からちょうど九日目。あの老婆が死んで、アナタの母の呪いは自然に取れたと思っていたけど…呪いをかけていたのはカルトの方だったみたい」

霊能少女「現代医学ではどうすることも出来ない。残りあと一日で…どうにかしないといけない」
273 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/23(金) 02:53:23.34 ID:9pIq5aoIo
女「そ、そんな…!あと一日だなんて…!」


霊能少女「…安心して。言ったはずナタたちは必ず守ると」

霊能少女「病院に行っている間に、そのカルトの連中と連絡が取れた。明日、奴等の施設に行くことになった」

霊能少女「そこで…全てを終わらせる。これならギリギリ間に合うはず」


女「えっ…ほ、本当ですか!?」


霊能少女「でも…奴等はひとつだけ、条件を出してきた」

霊能少女「…アナタが同行するなら、話をしていいと」


女「…!わ、私も一緒に…ですか?」
274 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/23(金) 02:54:43.96 ID:9pIq5aoIo
霊能少女「…正直、かなり危険だと思う。ワタシ一人だけなら、襲われても対処出来るけど、集団で来られたら他人を守る余裕はないかもしれない」

霊能少女「ワタシは行くべきではないと―――」



女「行きます。先生と一緒に」



霊能少女「……え?」



女「こんな目に遭わされて…お母さんのことを苦しめている連中が、自ら会いたいと言ってきているんです」

女「なら…一発、いえ二発ぶん殴ってやります。そうしないと…私の腹の虫が治まりませんから」


霊能少女「……」

霊能少女「分かった。その目を見たら、来るなとは言えない。明日、一緒に行こう」


女「はいっ!」
275 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/23(金) 02:56:01.72 ID:9pIq5aoIo
……………………………………………………………
……………………………………………



女「……」

女「…眠れない」スッ


女(う、うっ…せ、先生の前では大口を叩いて、威勢のいいことを言ってしまったけど…やっぱり不安だ。明日…カルトのところに行くなんて)

女(私を指名してきたってことは…何か意味があるはず。もしかして、今度こそ殺されるんじゃ……)


女「…水飲も」スッ




スタスタ




霊能少女「……」カチャカチャ


女「あれ?先生まだ起きているんですか?」


霊能少女「最終確認。それに、今日に奴等が攻めてこないとも限らないし」

霊能少女「アナタは十分に睡眠を取った方がいい。恐らく明日は…一番長い日になるだろうから」
276 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/23(金) 02:56:52.86 ID:9pIq5aoIo
女「……」

女「…先生、ちょっと話しませんか?」スッ


霊能少女「話?」


女「はい、先生にちょっと聞きたいことがありまして」

女「先生の…家族って今は何をしているんですか?」


霊能少女「…」


女「私のお母さんのことになると…何だか、先生がいつもより優しく見えるような気がして。何か思い出があるのかなって」

女「あっ…言いたくないなら大丈夫ですよ。すぐ部屋に戻りますから」


霊能少女「…両親は、もう既に亡くなっている。残っているのは妹が一人だけ」
277 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/23(金) 02:58:06.72 ID:9pIq5aoIo
女「……」

女「そう、だったんですか。ごめんなさい、無神経なこと聞いちゃって」


霊能少女「…いや、そこまで気にしていない。両親が亡くなったのは15年も前のこと、その頃のワタシはまだ幼かったから、親の記憶はひとつもない」


女「…やっぱり、先生と同じ仕事をしていたんですか?ご両親は…」


霊能少女「そう聞いている。夫婦二人揃ってやり手で結構有名だったらしい」

霊能少女「まあ…最後は仕事に失敗して死んだんだけど」


女「失敗って…殺されたってことですか?」


霊能少女「…恐らくそう。でも、誰に殺られたのかは分からない」

霊能少女「依頼された仕事は無事に成功したらしい。けど、そこに何らかの介入があった。そいつに…父と母は殺された」

霊能少女「仲間の人たちも、必死になって二人を殺したヤツを探したけど…結局は見つからなかったと聞いている」
278 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/23(金) 02:59:07.24 ID:9pIq5aoIo
女「…もしかして、先生がこの仕事を続けているのって、仇討ちのためだったりします?」


霊能少女「それは…どうだろう。正直、あまり親という存在を知らないから、直接の関係はないと思う」

霊能少女「ただ、受け継がれているのかもしれない。父や母の…想いが、私の中で。この仕事を続けて行けば、いつか会えるような気が……」

霊能少女「…いや、何でもない。忘れて」


女「い、妹さんの方はどうなんですか?もしかして、先生と同じ仕事をしてたり…」


霊能少女「…妹も広い意味で言えばワタシと同じ仕事をしている。ただ…それは海の向こうでだけど」


女「海の向こうって、海外に住んでいるんですか?」


霊能少女「そう、12の時に家を飛び出して、そのまま向こうで生活している」
279 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/23(金) 03:00:17.26 ID:9pIq5aoIo
女「どうして海外に?」


霊能少女「…多分、ワタシと比べられるのが嫌だったんだと思う。あまり仲は良くなかったし、嫌われていた」

霊能少女「電話をしても、数秒で切られるし、ワタシの顔も見たくないんだと思う」


女「…そんなことないと思いますよ。私は一人っ子で、姉妹という関係はあんまり分からないですけど」

女「私の家も…父親が小さい頃に病気で亡くなって、今いる家族は母親一人だけなんです。そりゃたまには喧嘩しますけど…血の繋がった家族というものは早々断ち切れないですよ」

女「妹さんも…思春期とかで接し方が分からないだけだと思います。心の中では先生と同じように、家族のことを心配していますよ」


霊能少女「……そう、なのかな」

霊能少女「……ありがと」
280 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/23(金) 03:02:06.51 ID:9pIq5aoIo
女「…やっぱり、話してよかったです」

女「正直に言うと、私…心のどこかで、まだ先生のことを恐れていたのかもしれません」

女「先生の…その力が。味方だけど怖かったんです」



霊能少女「……」



女「…でも、今は違います」

女「先生も言っていたじゃないですか。人間は理解出来ないものを恐れるって。ちょっとだけですけど…先生の心を理解出来た気がします。これでもう、心残りはありません」

女「…明日、決着をつけに行きましょう。先生」


霊能少女「……うん」
281 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2018/03/23(金) 03:02:49.48 ID:9pIq5aoIo
今日はここまで
あと二回の更新で終わると思います
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 03:13:56.13 ID:3JEDWpyn0
あと2回なる程最終回もまじか何ですね、今日も楽しく読ませて貰いました
残り2回も楽しみに待っています
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 03:23:55.53 ID:DPiod9J0O
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