千歌「白球を追いかけろ!」

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58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 04:41:26.39 ID:PBjY6MVz0
ダイヤ「本当に野球をするのが大好きで、自分の弱い心を技術と努力で補おうと頑張る」

ダイヤ「その姿をずっと陰で観てきました」

ダイヤ「そうしている内に、私も1人の野球好きとして、貴女のプレーに引き込まれるようになった」

ダイヤ「だって心から楽しんで野球をするルビィは、とても魅力的だもの」


ダイヤ「今日練習も、密かに見学していたんですよ」

ダイヤ「最初は緊張している、弱々しいいつもの貴女」

ダイヤ「でも一度それが解けると、生き生きと、宝石のように輝いていた」

ダイヤ「私は見たいのです。姉として、一ファンとして、貴女が輝く姿を」

ダイヤ「だって素敵でしょう」

ダイヤ「大好きな妹が、私の大好きな舞台で躍動するなんて」

ルビィ「……」



ダイヤ「やるかやらないかは、あなたの自由です」

ダイヤ「でも、私の為に我慢する。そんな事だけは、絶対にしないで」

59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 05:47:08.92 ID:PBjY6MVz0
―翌日・野球部部室―



ルビィ「これで――よし!」


『入部届:黒澤ルビィ』


ルビィ「よろしくお願いします!」

梨子「うん、よろしくね」

曜「初めての後輩ゲットだよ!」ギュー

ルビィ「あはは、痛いですよぉ」

曜「嬉しいなぁ、練習の時からルビィちゃんと一緒に二遊間を組みたいって思ってたんだよね〜」

梨子「あら、投手はもういいの?」

曜「どっちもやるからいいの!」

梨子「ふふっ、相変わらず欲張りね」

曜「そりゃあ、千歌ちゃんとのバッテリーは外せないもんね!」

梨子「そうね――そういえば千歌ちゃんは?」

曜「あれ、確かにいないね」


ルビィ「……」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 05:55:44.53 ID:PBjY6MVz0
―図書室―



花丸「無事、終わりましたね」

千歌「うん」


花丸「協力してくれて、ありがとうございます」

千歌「ううん。私の方こそ、貴重な部員を確保できたんだから」

花丸「ルビィちゃんのこと、大事にしてあげてください」

千歌「うん、もちろんだよ」

花丸「マルも陰ながら、応援しますから――」



千歌「入るよね、花丸ちゃんも」


花丸「えっ」

千歌「花丸ちゃんも好きなんでしょ、野球」

花丸「そ、そんなことは」

花丸「だってマル、運動神経ないし……」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 05:57:57.91 ID:PBjY6MVz0
千歌「普通出来ないよ、好きじゃない人が、何時間も練習をするなんて」

花丸「それは、ルビィちゃんの為に」


千歌「それも本当なのは分かるよ」

千歌「ルビィちゃんの為に行動する姿は散々見てきたから」

千歌「でもね、私は見てた、花丸ちゃんが楽しそうにプレーする姿を」

花丸「それは、その……」


千歌「いいじゃん、好きなら始めちゃえば」

千歌「部員は足りないからね、どんな初心者でも大歓迎なんだよ」

千歌「きっと、花丸ちゃんが入ってくれた方がルビィちゃんも喜ぶと思う」

花丸「だけど、マルじゃ足を引っ張るだけなのは目に見えてるから」

花丸「せっかく野球を始められたルビィちゃんも、マルに気を遣ったりしたら……」

千歌「もう、じれったいなぁ」

千歌「じゃあ別の理由を作ろうか――」


千歌「ねっ、ルビィちゃん」

花丸「へっ」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 06:00:14.37 ID:PBjY6MVz0
ルビィ「えへへ、マルちゃん」

花丸「ルビィちゃん、なんで」


ルビィ「千歌さんに聴いたんだ、花丸ちゃんがルビィの為に動いてくれていたこと」

花丸「ち、千歌さん、内緒だって約束が」

千歌「ごめんね。最初は私も内緒にしておくつもりだったんだ」

千歌「でも必要だと思ったから、今の花丸ちゃんには」


ルビィ「花丸ちゃん、言ってたよね」

ルビィ「ルビィが一緒に練習に参加する時、『お礼はする』って」

花丸「!」

ルビィ「だからあの時のお礼に、ルビィのお願いをきいてほしいんだ」

花丸「……お願いって?」


ルビィ「ルビィ、花丸ちゃんと一緒に野球がやりたいの」

ルビィ「だから一緒に、野球部に入って」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 06:11:08.04 ID:PBjY6MVz0
花丸「ルビィちゃん……」

ルビィ「駄目、かな?」



花丸(……駄目なわけ、ない)

花丸「分かった、マルの負けだよ」

ルビィ「花丸ちゃん!」

花丸「ルビィちゃんのお願いを、無下にするわけにはいかないもんね」

ルビィ「えへへありがとう」


千歌「じゃあ、入部するってことでいいのかな」

花丸「はい、よろしくお願いします」

千歌「うん、よろしくね!」

ルビィ「マルちゃん、一緒に頑張ろうね!」

花丸「うん!」


千歌「それじゃあ早速、練習へ行こうか!」

ルビまる「「おー!」」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 03:04:05.87 ID:454QbkVE0
―沼津市内・某所―



善子「感じます」

善子「津島式フォーム修正法により、あなたが変化するのを」

善子「自分でも理解できる筈です、貴女が投げるボールのキレが増していることを」

善子「この野球界に降臨した堕天使ヨハネの魔眼は、全てのプレイヤーを高みへと導きます」

善子「すべてのリトルデーモンに授ける、津島式野球メソッド!」

善子「信じるのです、あのダル○ッシュも参考にした、堕天使の力を!」
注:勝手にDVDを送りつけただけです

善子「さすれば、貴女の道は開かれるでしょう――」





『放送は終了しました』
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 03:05:33.33 ID:454QbkVE0
―浦の星女学院2年生教室―



千歌「うーん」


梨子「どうしたの、変な顔して」

千歌「部員の勧誘について、ちょっとね」

梨子「部員? 5人揃ったから正式な部にはなったよね」

千歌「そうなんだけど、まだ試合をするには一人足りないし……」

梨子「確かにね」

千歌「それでね、実は勧誘しようと目をつけていた子がいるんだよ」

梨子「うん」

千歌「でも、いつまでたってもその子が見つからなくてさぁ」

梨子「どんな子なの?」

千歌「自己紹介で自分の野球理論を語りだすような子」

梨子「そ、それはなかなか強烈ね」

千歌「今日もね、曜ちゃんが探しに行ってくれているんだけど、見つかるかなぁ」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 03:06:50.61 ID:454QbkVE0
―バッティングセンター―


 カァン


善子「違う」


 カァン


善子「こうでもない」


 カキーン!


善子「!」

善子「今のは良かったわ!」


善子「くっくっくっ、徐々に新しいスイングが見つかってきたわね」



子供「パパ―、あそこに変なお姉ちゃんがいるー」

父親「しっ、絡まれると面倒だぞ」

子供「でも凄く綺麗だよ」

父親「あれは残念美人っていう、一番関わっちゃいけないタイプの人なんだ」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 03:08:14.32 ID:454QbkVE0
善子(学校をサボって、誰もいないバッティングセンターに来る、すっかり馴染んできたわね)

善子(沼津寄りのここなら、浦の星の生徒が来ることもないし、安心してバッティングに専念できるのもいいわよね――)



曜「ラッキー、人が全然いないじゃん」



善子(と思ったらうちの制服を着た人が)

善子(まあ制服的に上級生みたいだし、気にしなければ大丈夫でしょう)

善子(私の顔なんて知られてるわけないし)



曜(流石にバッセンに探しに来たは無理があるかな)

曜(でも探してくるとは言ったけど、結見つからないしなぁ)

曜(そもそも学校に来ない子をノーヒントで探すのは無理があるよね)

曜(……)

曜(気分転換も必要だし、たまにはいいよねっ)


曜(とりあえず、140辺りで――)
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 03:10:36.74 ID:454QbkVE0
善子(あ、あの人、女子なのに140キロを打つ気なの?)

善子(始めて見る顔だし、よく分かってない初心者なのかな)

善子(浦の星は野球部もないし、経験者じゃないわよね)

善子(教えてあげた方がいいのかな)



 カーン! カーン!



善子「えっ」

善子(凄い、平然と打ち返してる)


曜「うーん、いまいち」


善子(しかも恐ろしいこと呟いている)

善子(綺麗なスイング……もしかしてプロなのかな)

善子(女子プロ野球は詳しくないから、チェック漏れしててもおかしくないし)


 カキーン!


善子(どちらにしろ、あれは参考になるわ!)

善子(もっと、もっと近くで観なきゃ)
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 03:11:32.42 ID:454QbkVE0
花丸「――まずは打撃からだよね」

ルビィ「マルちゃんの場合、ほとんど打撃経験がないからね」

花丸「でもちょっと緊張するかも」

ルビィ「ここなら遅い球から打てるから、慣れるにはちょうどいいよ」

花丸「じゃあとりあえず、最初はルビィちゃんに見本を見せてほしいな」

ルビィ「えぇ、恥ずかしいよぉ」



善子『ビクッ』


善子「あの2人、クラスメイトの……」

善子(何でこんなところにいるの)

善子(全然野球をやるようなタイプには見えないのに)



 カキーン!



曜「よし、最後はいい感じで――」


花丸「あれ、曜ちゃん?」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 03:12:43.52 ID:454QbkVE0
曜「げっ、花丸ちゃん」


ルビィ「あれ、今日は新入部員を探しに行くって」

花丸「もしかして、サボり?」

曜「え、いや、その――」


善子(何か話してるわね、知り合いなのかしら……)


曜「!」


善子(ヤバっ、目が合った)


曜「……」ズンズン

善子(な、なに、こっちに来て――)


曜「この子だよ」

善子「はっ?」

曜「この子をスカウトしに来たんだよ!」

善子「はい!?」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/29(日) 10:43:32.81 ID:Gwh02PoW0
―浦の星女学院・野球部部室―



千歌「ってことは、あなたが例の!」

曜「そう、自己紹介で野球を語りだした子!」


千歌「凄いよ曜ちゃん! 本当に見つけてくるなんて!」

曜「えへへ」

千歌「これはまさに奇跡だよ〜」

花丸(絶対たまたまだろうけど、ツッコんだら負けなんだろうなぁ)


善子「なによ、いきなり連れてきて」

梨子「え、えっと、私たちは野球部なんだけど」

善子「野球部? 元々はなかったわよね」

曜「最近できたんだよ、正式な部になったのもほんの数日前だし」

善子「へぇ」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/29(日) 10:46:43.47 ID:Gwh02PoW0
千歌「というわけで津島善子ちゃん!」

善子「ヨハネよ!」

曜「はい?」

善子「あ、いや、何でもないわ」


千歌「野球部にようこそ!」

善子「いや、私は入らないわよ」

千歌「えー、なんでー」

善子「だって野球部に入ったら学校に来なきゃいけないじゃない」

千歌「確かにそうだね」

善子「嫌よ、クラスでは絶対ヤバい奴だと思われてるし」

ルビィ「そんなことないと思うけど」

花丸「みんな心配はしてるけど、変だなんて言ってる人はいないよ」

善子「えっ、そうなの?」

ルビィ「うん」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/29(日) 10:48:14.32 ID:Gwh02PoW0
花丸「そもそもそこまで自分が注目されていると考えてる辺り、自意識過剰ずら」

善子「うぐっ」


千歌「うわぁ、きつい」ヒソヒソ

梨子「花丸ちゃん、結構きつい言い方するわよね」ヒソヒソ


曜「どっちにしてもさ、野球部に入ればよっぽど野球が好きな子だって思って、みんな自己紹介の件も好意的に受け取ってくれるんじゃないかな」

善子「言われてみると……」

曜「しかも今なら部員も5人しかいないからレギュラー確定だよ〜」

善子「れ、レギュラー……」

善子(試合に出れる、選手にとって魅力的な話だけど)

善子「さすがにそんな簡単に決められないわよ」

千歌「じゃあ練習に出て決めてみる?」

善子「練習に?」

千歌「今から軽く練習する予定だったからさ」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/29(日) 10:50:31.25 ID:Gwh02PoW0
―グラウンド―



善子「新しい野球部にしては、ずいぶん立派なグラウンドね」

千歌「何か学校側が協力的でさ」

曜「とりあえずキャッチボールでもしようか」

千歌「善子ちゃん梨子ちゃん組んでね」

梨子「よろしくね、善子ちゃん」

善子「ええ」



善子「じゃあ、行くわよ」シュッ

善子(あっ、悪送球)

梨子「よっと」パシッ

善子「あっ、ナイス」

善子(上手いわね、この人)

梨子「それっ」シュッ
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/29(日) 10:52:25.46 ID:Gwh02PoW0
善子「んっ」パシッ

善子(今のは……)


善子「ねえ、少しいいかしら」

梨子「どうしたの?」

善子「梨子さん、投げる動作になると妙にぎこちなくなるわね」

梨子「あ、やっぱり分かる?」


千歌「梨子ちゃんね、投球イップスなんだよ」

善子「イップス……」

梨子「これでもだいぶマシにはなったんだけど、まだ完璧じゃなくて」


善子(イップス、か)

善子「くっくっくっ」

梨子「よ、善子ちゃん?」

梨子(この子、どこか変な部分があるわね)


善子「ねえ梨子さん、私はイップスに利く良い方法を知ってるんだけど」
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/29(日) 10:54:39.57 ID:Gwh02PoW0
梨子「!」

善子「どう、興味ない?」

梨子「……本当なら、もちろん教えてもらいたいけど」

善子「いいでしょう、教えてあげましょう」


曜「ねえ、どうしたの?」

ルビィ「何かあったんですか?」

梨子「それがね、善子ちゃんがイップスに利く方法を知ってるって」

千歌「本当!?」

善子「ええ、もちろんよ」

千歌「なになに、どんな方法?」

善子「落ち着きなさい、すぐに準備するから」

梨子「準備?」

善子「それはね」ゴソゴソ


『津島式野球メソッド』


千歌「な、なに、その真っ黒な仰々しい本は」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/29(日) 10:56:06.16 ID:Gwh02PoW0
善子「私の野球に関する理論が全て詰まった魔本よ!」

千歌「は、はぁ」


善子「さて、症例に照らし合わせると、あなたに必要なのは――催眠術!」

梨子「さ、催眠術?」

曜「それって、5円玉を揺らすあれ?」

善子「違うわよ、もっと本格的なもの」

花丸「怪しさ満点ずら……」

善子「うっさいわね、騙されたと思って受けてみなさい」

梨子「まあ、薬とかじゃないものね」

善子「物分かりが良いじゃない」

梨子「それで、催眠術っていうのはどこでやればいいの?」

善子「そうね……とりあえず一度部室に戻りましょう」

千歌「私たちはどうすればいいの?」

善子「練習を続けてていいわよ。そんなに時間かからないから」

千歌「分かったー」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/29(日) 10:59:07.20 ID:Gwh02PoW0
―部室―



善子「さて、じゃあそこの椅子に座って」

梨子「う、うん」

善子「それでこのボールを持って」

梨子「えっと、どっちの手で?」

善子「梨子さん、元から右利きよね」

梨子「そうだよ」

善子「じゃあ右手で」

梨子「握りは?」

善子「自分が野球を始めたばかりの頃にしていた握り方で」

梨子「それ、何か意味があるの」

善子「やってれば分かるわよ――目をつぶってくれる、電気消すから」

梨子「うん」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/29(日) 11:00:36.44 ID:Gwh02PoW0
善子「さて、まずは深呼吸をしてくれるかしら」

梨子「す――は――」

善子「いい感じね」

善子「それじゃあまず、自分が野球を始めた時のことを思い出して」

梨子「野球を?」

善子「完璧じゃなくてもいい、誰にでも最初、何も知らずにボールを握ってた事があるでしょ」

善子「何も考えずに投げて、捕って、そんなころのことよ」

梨子「昔の、私」




―――
――





千歌「梨子ちゃん、大丈夫かな」

花丸「流石に2人きりはマズかったんじゃ……」

ルビィ「うゅ……」

曜「まあ気にしても仕方ないし――あ、戻って来たんじゃない」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/02(水) 12:51:14.86 ID:cyUwxarK0
善子「ふっ、いま戻ったわ」

梨子「ただいま」

花丸「梨子さん、大丈夫?」

梨子「ええ」

曜「どう、効果ありそう?」

梨子「どうだろう、とりあえず投げてみないと」

曜「じゃあちゃちゃっとアップ済ませて、一度投げてみようか」

梨子「うん」



―――
――




梨子(マウンドの感触、不思議と前よりも馴染んでるように感じる)

千歌「梨子ちゃん、無理なくね」

梨子「うん」




曜「ねえ、実際催眠術って効果あるの?」

善子「正直、人によるわね」

善子「でも梨子さんみたいなタイプはきっと効果があるはずよ」
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/02(水) 12:53:30.76 ID:cyUwxarK0
梨子(善子ちゃんの催眠術を受けた後、不思議と身体が軽い)

梨子(まるで昔の私に戻ったみたいな感覚)ググッ


千歌(投球動作が、前よりもスムーズになって――)


 シュッ


千歌「!」バシッ



梨子「あっ……」

千歌「本当に、投げられるようになってる」



曜「凄いっ」

曜「あれは昔見た、全盛期の梨子ちゃんの球に近いよ」



梨子「ち、千歌ちゃん、もう一球」

千歌「う、うん」


 シュッ    バシッ



梨子「投げられる、私、普通に投げられる!」

千歌「梨子ちゃん!」
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/02(水) 12:55:09.01 ID:cyUwxarK0
善子「ふっ、これぞ津島式野球メソッドの力」

曜「凄いよ、善子ちゃん!」

ルビィ「うゅ!」

花丸「見直したずら!」


曜「ねえ、私にも何か教えて!」

善子「じゃあ津島式スイング理論を……」





曜「おぉ、何か逆方向にも鋭い打球が打てるようになった!」

千歌「す、すごいよ、善子ちゃん!」

善子「ざっとこんなものよ」

千歌「私にも教えて!」

花丸「ま、マルにも!」

善子「任せなさい!」

ルビィ「うゅ……」

花丸「ルビィちゃんはいいの?」

ルビィ「る、ルビィは自分のやり方を崩したくないから」
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/02(水) 12:59:02.54 ID:cyUwxarK0
―――
――




千歌「心なしか前より打てなくなった……」

花丸「マルも全然変わらないずら……」

善子「あれ?」

曜「うーん、何か私もボールとのコンタクトが難しくなったような」

花丸「やっぱり善子ちゃんの理論は欠陥品ずら」

善子「う、うるさいわね! 完璧じゃないのは仕方ないじゃない!」

善子「充分でしょ、イップス治したんだから」

梨子「そうよ、完璧じゃないのも高校生なんだから仕方ないわ」

花丸「まあ、それはそうだけど」

曜「でもこんな野球に関する情報量を持ってるなんて凄いね」

善子「そう?」

曜「うん、ここまで野球に詳しい同年代の人なんて、他にほとんど知らないよ」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/02(水) 13:02:13.94 ID:cyUwxarK0
千歌「善子ちゃん、中学はどこのチームでプレーしてたの?」

善子「どこにも所属してないわよ」

千歌「へっ」

善子「どこにいっても上手くいかなかったのよ、私は」

千歌「な、なんで?」

善子「色々あったのよ、本当に」

千歌「色々……」


善子「ごめん、悪いけど私、帰るわね」

千歌「よ、善子ちゃん?」

善子「別に気にしないで、久しぶりに人と話したら、ちょっと疲れちゃっただけ」

千歌「そう……」

花丸「ねえ、野球部には入るの」

善子「うーん、どうしようかしら」

千歌「私は善子ちゃんに入ってもらいたいと思ってるよ」

梨子「私も大歓迎よ、イップスを治してくれた恩人だもの」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/02(水) 13:03:15.43 ID:cyUwxarK0
善子「……ありがとう、今日は楽しかったわ」

花丸「善子ちゃん……」

善子「じゃあね、また学校に来ることがあったら会いましょう」


 タッタッ



千歌「無神経な事聞いちゃったのかな、私」

花丸「千歌ちゃんの所為じゃないよ、マルもキツイ言い方多かったし……」

梨子「2人の所為じゃないわよ」

ルビィ「そうだよ、いまのは不可抗力だもん」

千歌「そうかも、しれないけど」

「「「「……」」」」




曜(ふむ……)
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/02(水) 13:05:00.74 ID:cyUwxarK0
―バス車内―



善子「はぁ……」

善子(何であんな出ていき方しちゃったんだろう)

善子(みんな私を受け入れてくれて、せっかく楽しんでたのに)

善子(千歌さんだって悪気があって言ったわけじゃない)

善子(それなのに私はついキツイ返答をして。しかもパニックになって逃げだしてきて……)

善子「はぁぁぁ」



曜「中年サラリーマンみたいなため息だね、若者よ」

善子「うわっ!」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/02(水) 13:06:42.19 ID:cyUwxarK0
曜「同じ方面だったんね、ちょうどよかったよ」

善子「い、いつの間に乗ってたの?」

曜「善子ちゃんが出てった後、全力で走って先回りしたのさ」

善子「なによそれ……」

善子(バッセンの時といい、本当に滅茶苦茶だわ、この人……)


善子「それで、何の用なの?」

曜「よう? 曜は私だよ!」

善子「そうじゃなくて……」

曜「あはは、分かってるよ」

善子「ふざけないでよ、もう」

曜「ごめんね、こうすれば少しは元気になるかなぁと思って」

善子「……悪いわね、わざわざ」

曜「みんな心配してたよ」

善子「そりゃそうよね、あんな出て行き方をしたら」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/02(水) 13:08:18.79 ID:cyUwxarK0
曜「やっぱり、昔の話に突っ込まれたのが嫌だったの?」

善子「ハッキリ聞くわね、あなた」

曜「何となくね、その方がいいような気がして」

善子(変な人、本当に不思議)

曜「私で良ければ話を聴くよ。誰かにいいふらしたりもしないし」

善子「……ちょっとだけ昔話をしてもいいかしら」

曜「うん」




善子「私はね、お母さんが野球のコーチをやるような人で、小さい頃から野球が身近にある家に生まれたの」

善子「そんな環境で育ったからか、昔から野球が大好きで、ずっと野球のことばかり考えてた」

善子「そこそこセンスもあったし、始めた時期も早かったから、最初にチームに入った時は褒められたわ、天才だって」

善子「でも、良かったのはそこまで」

善子「私はとてもこだわりが強い人間だから、自分の考え方を譲れなかった」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/02(水) 13:20:35.19 ID:cyUwxarK0
善子「なまじ知識があったせいで、色んな動作が最初から我流で」

善子「当然、コーチはそれを正そうとする」

善子「でも私は指導を拒否して、意地になってさらに自分で研究を重ねるの」

善子「それで結果的に綺麗なスイングを作り出しても、大人たちはそれを否定する」

善子「そしてさらに意地になって――そんな繰り返し」


善子「結局、監督やコーチと喧嘩して、チームメイトからも孤立して」

善子「たまに試合に出れても、謎の不運が私に付き纏う」

善子「何故かデッドボールを当てられて怪我をして、無事でも守備では打球がイレギュラーばかり」

善子「いくら努力しても、周りはそれを認めてくれない。結果で見返そうとしても、不運に阻まれる」

善子「そんなことを繰り返し、色々なチームを転々としている内に、私が入れるところは一つも無くなってたの」


曜「………」

善子「どう、馬鹿みたいな話でしょ」

善子「別に理解してほしいわけじゃないの」

善子「貴女みたいな見るからに輝かしい場所を歩いてきた人には、分からない感覚でしょうから」
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/02(水) 13:52:00.72 ID:cyUwxarK0
曜「うーん、そんなことないよ」

善子「えっ?」


曜「私もさ、野球に関してはそんなに協調性があるほうじゃないんだよね」

曜「止められても勝手に練習始めるし、必要ないことだと思ったら拒否するし」

曜「自分のやりたいようにやって、勝手に突っ走ってさ」

曜「前に教わっていたコーチにも『個人競技の方が向いてるんじゃない』なんて皮肉言われたもん」

善子「意外ね、協調性高そうなのに」

曜「あはは、野球は別だよ」

曜「私は自分の感覚に従って努力していけば上手くいくと信じてる」

曜「そして、世界で一番の選手になるの」

曜「誰に負けない、凄い選手に」

善子「世界一の選手……」


曜「善子ちゃんはさ、上手くなりたい?」

善子「もちろんよ」

曜「だろうね、私と善子ちゃん、どこか似てるもの」

曜「きっと普通に野球ができてたら、いい選手になっていたと思うよ」

善子「……何が言いたいの」
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/02(水) 14:01:51.12 ID:cyUwxarK0
曜「私と善子ちゃんは違うってこと」

曜「私はどんなに事があっても、最終的にチームで受け入れられて、辞めたことは一度もないよ」

善子「なんで?」

曜「他の子に比べて、実力があったから」

曜「私だって変なエラーをしちゃうし、監督やコーチ、チームメイトとも揉める」

曜「でも実力があったから、使ってもらえたの」


善子「それ、私に実力がないっていう皮肉かしら」

曜「そんなことはないよ。そこまで多くのプレーを見たわけじゃないけど、善子ちゃんは十分実力はあると思う」

曜「努力家だろうし、頭もいい。きっと才能もある」

曜「不運っていう問題もあるから、私よりも大変だろうし」

善子「……」


曜「でもね、一番の問題はチームを変え続けること」

曜「すぐに辞めちゃうその癖が、良くないんだよ」

善子「仕方ないでしょ、居辛くなったらまともに練習だって――」

曜「私もね、最初はそうだったよ」
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/02(水) 14:04:14.22 ID:cyUwxarK0
曜「主張が強いから、みんなが私を非難した」

曜「でもね、そこで我慢したの」

曜「耐えて、1人でも必死に練習して、実力をつけてみんなから認められるようになった」


曜「善子ちゃんもきっとそれができる」

曜「だからね、今回は辞めないでほしい」

曜「ひきこもり、最初の悪印象、学校内での人間関係、きっと大変なことだらけ」

曜「でもそこで頑張って、耐えてほしいんだ」

曜「そうすればきっと、善子ちゃんは自分の欲しかった物が手に入ると思う」

曜「私も協力できることは何でもする。きっと花丸ちゃんとルビィちゃんも助けてくれる」

曜「これでも運はいい方だから、私といるば不運も吹き飛ばしちゃうよ」

善子「曜さん……」

曜「だからさ、野球部に入ってよ。みんな歓迎するよ」




善子「……ねえ、なんで出会ったばかりの私にそこまでしてくれるの」

曜「正直に言っちゃえばね、部員が欲しいっていうのはあるかな」

善子「まだ5人しかいないんだもんね」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/02(水) 14:08:37.25 ID:cyUwxarK0
曜「でもね、一番の理由はは善子ちゃんと一緒に野球がやりたいから」

曜「初めてなんだよ、こんなに面白そうな選手に出会ったの」

曜「それだけじゃ、駄目かな」

善子(……一緒に野球がやりたいから、か)


善子「――分かった」

曜「そ、それじゃあ」

善子「入るわよ、野球部に」

曜「善子ちゃん!」

善子「勘違いしないで、私は最初から入るつもりだったのよ」

善子「貴女がおせっかいを焼かなくても、最初から」

曜「ふふっ、そっか、余計な事しちゃったかな」

善子「堕天使を舐めない事ね、そんなにやわなメンタルしてないわよ」


『次は○○〜』


曜「あ、私ここで降りるよ!」

善子「あら、そうなの」

曜「じゃあまたね、善子ちゃん」

善子「ええ」



善子「ねえ、曜さん」

曜「なに?」

善子「……ありがとう」

曜「――うん!」
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/02(水) 14:11:08.89 ID:cyUwxarK0
第二部完

 第二部終了時点での能力一覧


千歌:弾道2 ミF パE 走E 肩E 守E 捕C 
    調子安定 怪我B チームプレー○ ムード○


曜:弾道3 ミC パB 走A 肩A 守B 捕D
  :球速132 コンF スタB カーブ5 スライダー1
    積極打法 積極盗塁 チャンスB エラー 併殺 人気者 広角打法
    テンポ○ 乱調 奪三振

梨子:弾道2 ミC パE 走D 肩C 守D 捕D
  :球速115 コンC スタD カーブ2 シンカー3 スライダー2
    キレC

ルビィ:弾道1 ミD パF 走C 肩F 守C 捕E 
    積極走塁 積極盗塁 選球眼 内野安打 盗塁A 走塁C 
    三振 チャンスF エラー バント職人

ルビィ(弱気状態)
:弾道1 ミF パF 走C 肩F 守F 捕G 
    積極走塁 積極盗塁 選球眼 内野安打 盗塁A 走塁C 
    扇風機 チャンスG エラー バント職人
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/02(水) 14:12:46.48 ID:cyUwxarK0
花丸:弾道4 ミG パG 走G 肩F 守G 捕D 
    エラー バント○

善子:弾道2 ミE パE 走D 肩E 守D 捕F 
    選球眼 悪球打ち 意外性 エラー

むつ:弾道1 ミG パG 走F 肩E 守E 捕F 
    

いつき:弾道1 ミG パF 走E 肩G 守F 捕F 
    

よしみ:弾道2 ミF パF 走F 肩F 守F 捕F 



 第三部以降はもう少し投稿ペースを上げていく予定です
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/02(水) 14:14:50.77 ID:f3zKojTn0
おつです
待ってます!
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/02(水) 14:15:02.44 ID:cyUwxarK0
 一応細かい補足

・μ’sとA-RISEの活躍で女子野球の人気が出ている世界

・全国には300校を超える女子野球部がある(μ's、A-RISEの活躍以前は全国で30校程度)

・全国大会は東京でおこなわれる

・道具の進化などにより、女子でも高いパフォーマンスが発揮できるようになっている



 次から試合に入っていきます
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 04:25:18.96 ID:ofD1V1rN0
 第三部




―生徒会室―



ダイヤ「千歌さん、あなたは素晴らしいですわ」

ダイヤ「まさかこんな短期間で部員を集めきってしまうなんて」

千歌「えへへ、それほどでも――あるかな」

梨子「こら、調子に乗らないの」

曜「まあいいじゃん、実際上手くやったんだし」

ダイヤ「そうですよ、助っ人も含めれば9人、試合ができる状態になったんですから」

ダイヤ「今だから言えますが、あまり期待してなかったんですよ、部員集めは」

曜「その割に諸々の環境を用意するの早かったですよね」

ダイヤ「まあ、いざとなれば、私が部員を用意するつもりでしたので」

千歌「えっ、ダイヤさんに当てがあったんですか」

ダイヤ「2人ほどですがね」

千歌「それなら最初からお願いすればよかったかも……」

ダイヤ「いいではないですか、おかげで質の高い部員が集まったんですから」
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 04:26:50.90 ID:ofD1V1rN0
梨子「質の高い、部員――」




ルビィ「ノック行くよ」カーン


善子「ちょ、どこに打ってるの――ってまたイレギュラー!?」


 ドスッ


花丸「あはは、善子ちゃんまたボールがぶつかってるずら」

善子「私の所為じゃないわよ!」

善子「そもそもさっきから自分へのボールを私に処理させてるあんたには笑われたくないんだけど!」

花丸「……マルは初心者だから仕方ないんだよ」

善子「言い訳するな!」




ダイヤ「……」

曜「あ、あはは」

千歌「さ、最初はあんなものだよ。みんな一年生なんだし」

梨子「そ、そうね」
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 04:27:56.04 ID:ofD1V1rN0
ダイヤ「まあ、気を取り直して、本題なのですが」

千歌「あ、はい」

ダイヤ「試合をできる人数が揃ったということで、早速練習試合を組んでおきました」

曜「おぉ、流石ダイヤさん、仕事が早いですね」

千歌「どんな相手なんですか?」

ダイヤ「全国大会に出場したこともある沼津の高校です」


梨子「えっ、それって大丈夫なんですか?」

ダイヤ「それなりの相手ですが、静岡は女子野球が強い地域ではないので、何とかなるレベルでしょう」

千歌「まあ、私たちには曜ちゃんと梨子ちゃんが居るからね」

ダイヤ「それに練習試合は負けてもいいのです、それもいい経験になります」

ダイヤ「皆さんはまだ2年生、今年一年じっくりと練習して、来年に賭けるぐらいの余裕を持ちましょう」

曜「えー、でも負けたくないよ」

千歌「そうだよ、今年から全国に行くんだー、ぐらいの意気込みじゃないと!」

ダイヤ「ふふっ、その意気です、頑張ってください」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 04:47:32.79 ID:ofD1V1rN0
―部室―



千歌「というわけで、練習試合をすることになりましたー」

ルビィ「し、試合……」バタン

花丸「あ、ルビィちゃんが緊張のあまり気絶しちゃったずら」

善子「本当にメンタル弱いわね、この子……」


曜「気合入るよね、私たちの初試合!」

善子「確かに、この堕天使ヨハネのデビュー戦だもの!」

曜「ねえ、時々入るその堕天使って何なの?」

善子「真顔で聞かないで、回答に困るから」


千歌「でも試合前に色々と決めなきゃいけないね」

曜「例えば?」

千歌「えーと、打順とか?」

梨子「そういえば、みんなのポジションは決まってたっけ?」

千歌「あ、忘れてた!」

梨子「忘れないで……」
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 04:49:17.65 ID:ofD1V1rN0
千歌「じゃあそれぞれ、希望ポジションを出していこう」

梨子「それでいいの?」

千歌「被ったら話し合って決めればいいし」


曜「私は当然ピッチャーとショートで!」

梨子「投手は私と曜ちゃんの二人制だね。投げない時、私はレフトかライトかな」

花丸「じゃあマルは残った方?」

千歌「ううん、花丸ちゃんはファーストだって捕球上手いもんね」

花丸「でもそれ以外は自信ないずら……」

曜「そこはほら、セカンドのルビィちゃんがフォローしてくれるからさ!」

ルビィ「う、うん」

千歌(そもそも、花丸ちゃんの傍からルビィちゃんを離すと色々心配なんだよね……)

曜「それで、当然キャッチャーは」



善子「私ね!」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 04:50:36.44 ID:ofD1V1rN0
梨子「へっ」

花丸「ずら?」

ルビィ「ピギィ!」

曜「はっ?」

善子「ひっ」


梨子「よ、曜ちゃん。善子ちゃん怖がってる」

曜「いやいや、どう考えてもキャッチャーは千歌ちゃんでしょ」

善子「い、いいじゃない。私だって津島式リード術が通用するか試したいのよ」

善子(ちょっとだけ、曜さんとバッテリーを組んでみたいし)

曜「むぅ、じゃあ私の球を捕れたら考えるよ」

善子「捕るだけ? そんなの余裕よ」

曜「ほー、言ったな。早速グラウンドへ行こうか」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 04:52:41.64 ID:ofD1V1rN0
―グラウンド―



梨子「ねえ、善子ちゃん大丈夫かな?」

千歌「まあ捕るだけならそこまで難しくない、はず」

梨子「でもいいの、簡単にポジション譲っちゃって」

千歌「大丈夫だよ、曜ちゃんも『考える』としか言ってないし」

梨子「あー、言われてみれば」




曜「さー、行くよ」

善子「ふっ、いつでも来なさい」


曜「喰らえよーしこー!」シュッ

善子「へっ、はやっ」


 ドカッ


曜「うわっ」

善子「だ、堕天……」バタン


ルビィ「よ、善子ちゃん!?」

千歌「うわぁ、あれは痛い……」

花丸「自業自得ずら」

梨子(そういえば善子ちゃん、曜ちゃんが投げるのを見るの初めてだったかも)
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 04:54:40.49 ID:ofD1V1rN0
曜「ご、ごめん、本当に当てる気はなかったんだけど……」

善子「……怖かった」ヒシッ

曜「ちょ、善子ちゃん」

善子「グスッ」

花丸「善子ちゃん、何か幼児化してるずら」

ルビィ「不謹慎だけど、ちょっと可愛いかも」





曜「というわけで、キャッチャーは千歌ちゃんになりました」

全員「わ〜」

千歌「善子ちゃんはセンターね」

善子「なるほど、この堕天使は中心こそが相応しいと――」

千歌「外野だったらイレギュラーしても防ぎやすいからだよ」

善子「分かってるわよ! 最後まで言わせないさいよ!」

曜「あはは」

千歌「さて、ポジションも決まったことだ、今日は帰ってゆっくりと――」


 ブンッ


千歌「あれ、素振りの音?」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/03(木) 04:57:08.78 ID:ofD1V1rN0
曜「でも全員いるよね」

千歌「じゃあ誰が?」

曜「見に行ってみよう!」




ダイヤ「……」ブンッ


梨子「えっ、あれって……」

千歌「ダイヤさん?」



ダイヤ「……」ブンッ



善子「綺麗なスイング……」

曜「ダイヤさん、もしかして野球上手なのかな」

千歌「かも、ね」

梨子「だけど家庭の事情でプレー出来ないんでしょ?」

千歌「でも、お願いすれば助っ人ぐらいなら――」


ルビィ「駄目っ!」

千歌「ルビィちゃん?」

ルビィ「駄目なんです、絶対に」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/17(木) 12:33:40.03 ID:TeYqiCSDO
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